説明

板挟み式漬物製造装置

【課題】伝統的な漬け物器は陶器製で、重石が入っているために重く、具材の容積に対して容器が非常に大きいため冷蔵庫にそのまま保存するには不適であり、漬け上がった漬け物は別の容器に移し替えなければ冷蔵庫に保存できなかったが、利便性と衛生面に優れ、塩分濃度の低い漬物を短時間に製造でき、製造も簡単で頑丈な漬物製造装置を提供する。
【解決手段】二枚の板の少なくとも一方に形状の復元性に富む低反発弾性材3や空気袋10の層を貼り付け、具材の入った袋を、中間層を介して二枚の板で挟んで一定の圧力で加圧できるようにして二枚の板が開閉可動できるように連結し、もう一方の端を開閉自在な平型ファスナーで連結できるようにすることで板挟みにされた袋内の具材を継続的に圧迫し、袋内の空気の排出と具材の脱水を促がす。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はビニール袋に入れた漬物の具材を復元力のある中間材を介して二枚の板で板挟みにしてビニール袋内の具材の脱水と空気の排出を促がす漬物の製造装置、及びその装置を用いた漬物の製造法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の技術として、容器に入れた具材の上に重石を乗せて脱水を促す伝統的な方法の他に、容器の蓋にバネとネジを取り付けてバネの反発力を利用して加圧し脱水を促す方法が知られている。
【0003】
【特許文献1】 特開2001−008616
【0004】
【特許文献2】 特開 平10−309163
【非特許文献1】
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の伝統的な漬け物器は陶器製であり、重石が入っているために重い。また、具材の容積に対して容器が非常に大きいため、冷蔵庫にそのまま保存するには不適であった。したがって、漬け上がった漬け物は別の容器に移し替えなければ冷蔵庫に保存できなかった。また、衛生上、使用後の重い容器と重石の洗浄は面倒でも不可欠であった。さらに、重石の表面は硬く平面なので、不定形に盛られた具材を均等に加圧するとは不可能で、漬け上がりにむらがあるとともに、全体が漬けあがるのに時間がかり、漬け上がりを早める浸透圧を高めるために、塩分濃度を高くしなければならなかった。
【0005】
蓋にバネと圧力板を取り付けたものは、加圧部のネジやバネ部分が蓋の上部に突出しているため、具材の容積に対して背が高く、冷蔵庫に収納しづらい。また、伝統的な漬物容器と同様に、漬けあがった漬物は別の容器に移し替えなければならず、衛生上、漬物容器の洗浄は不可欠である。また、加圧面が硬く平面なので漬けむらあり、塩分濃度を高くしないと漬け上がりに時間がかかった。さらに、構造も複雑で容器が薄いプラスティック製なので製造に手間がかかり、破損もしやすかった。
【0005】
本発明は、上記の問題点を克服し、利便性と衛生面に優れ、塩分濃度の低い健康によい漬物を短時間に製造でき、構造が単純で製造が簡単であり、長期間使用できる頑丈な漬物製造装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
二枚の板の少なくとも一方に形状の復元性と反発力を有する低反発弾性ウレタンや空気袋の層を中間材として貼り付け、具材の入ったビニール袋を、その中間層を介して二枚の板で挟んで一定の圧力を持続的に加圧できるように板の両端の一方をバネやゴムなどの強い弾性を有する素材を介して板が開閉可動できるように連結し、もう一方向の端に2枚の板を閉じた状態で固定できるように平型ファスナーなどの連結の長さを調節できる止め具を取り付ける。
【発明の効果】
【0007】
図2により本発明の原理を説明する。2枚の加圧板A1、B2により加えられた圧力は復元力がある柔軟な中間材3を介してビニール袋7に入れられた具材7を圧迫する。圧力は具材の形状に則して変形した中間材3を介して具材全体にほぼ均一に作用し、物理的な脱水を促がすとともに、具材間に存在する空気を押し出し、具材どうしが密着するため、毛細管現象により塩分を含む脱水された水分が具材全体にゆきわたり、浸透圧による脱水が具材全体で進行し、相乗的に脱水が促進されるため塩分濃度が低くても短時間で漬け上がる(具材全体が自ら排出した水分により水没する)。さらに、圧力が具材全体に作用するため漬け上がりも均一である。また、漬け上がりの時間が短いので雑菌の繁殖の時間も短くなる。
【0008】
構造上、平面であるものを縦に置いて使用するので、専有空間が少なく、冷蔵庫にそのまま収納できる。
【0009】
ビニール袋を容器としているため、漬け上がったものはビニール袋に入れたまま冷蔵庫に保存でき、他の容器に移し替える必要が無い。また、漬けるたびに新しいビニール袋が使用されるため、衛生的であり、漬物容器の洗浄の行程自体が存在しない。
【0010】
さらに、同原理を利用したものを直列もしくは並列に連結して長大化すれば、一度に複数の袋詰め漬物を製造できる。
【0011】
また、食品である具材に直接接触しないため、板状のものであればほとんどの素材が利用でき、セラミック、木、などの硬い素材やFRP、プラスティックなどの弾性を有する素材など素材の種類を選ばない。
構造も単純であるため製造しやすく破損しにくい。
【発明を実施するための最良の形態】
【00012】
本発明を解りやすくするため、図1、図2、図3を用いて説明する。本発明は基本的に図1のaのように中間材3を貼り付けた加圧板A1、と加圧板B2から成り、二枚の加圧板の一端はバネ5により蝶番状に連結されている。もう一方の加圧板の端には自在に接着面の長さを調節できる一対の平型ファスナー4が接着されていて、図1のbのように二枚の加圧板A1、B2を閉じたま任意の接着面の長さで接合できる。図2のように食塩をまぶした具材をビニール袋に入れたものを低反発弾性ウレタン中間材3と加圧板B2の間に入れて挟み、圧力を加えた状態で平型ファスナー4を接合させて固定できるような形態である。
【0013】
尚、加圧板A1、B2や中間材3が十分な反発力と復元力を有している場合は、図3の一実施例のように特にバネやゴムなどの反発力を利用する機能を付加する必要は無い。
【実施例】
【00014】
次に、本発明を実施例に基づいて更に具体的に説明するが、本発明がこれらによって制限されるものではない。本発明を解りやすくするため、図1、図2、図3、図4を用いて説明する。
本発明は低反発弾性ウレタン中間材3を貼り付けた加圧板A1と加圧板B2の端が加圧バネ5で蝶番状に連結さ、加圧バネ留め具6で保持されている。もう一方の加圧板の端には自在に接着面の長さを調節できる平型ファスナー4が一組接着されていて二枚の加圧板A1、B2を閉じたま接合できる。加圧板B2を開き、具材8の入ったファスナー付ビニール袋7を中間材3の上に置き、加圧板B2を圧力を加えながら閉じると低反発弾性ウレタン中間材3は具材の形状に合わせて変形すると同時に加圧バネ5は具材8を支点にして伸ばされる。この状態で平型ファスナー4を密着させて固定し、ファスナー付ビニール袋7の口を上にして縦に置く。具材8は加圧バネ5と低反発弾性ウレタン中間材3の復元力で圧迫される。低反発弾性ウレタン中間材3が具材8の形状に則して変形しているため、圧力は具材全体にほぼ均一に作用し、具材間に存在する空気を押し出し、具材どうしを密着させ、毛細管現象により具材から染み出た塩分を含む水分を具材全体にゆきわたらせる。このことにより、物理的な圧力と浸透圧により脱水が相乗的に加速する。図2のように、側面からビニール袋の一部が目視できるので、水位の状態で漬け上がりが判断できる。また、加圧板B2が透明アクリル製であれば、加圧板を透かして漬け上がりが判断できる。漬け上がったら平型ファスナー4を剥がし、加圧板B2を開いてビニール袋を取り出し、そのまま冷蔵庫に保存できる。
【0015】
図3は本発明の実施例の一例である。加圧板A1、B2が曲げからの十分な復元力を有している場合や中間材3が十分な復元力を有しており、挟まれた具材8は曲がった加圧板A1、B2や変形した中間材3の反発力により継続的に加圧され、ビニール袋7内の空気の排出と具材8の脱水を促がす構造の実施例である。
【0016】
図4は本発明の実施例の一例である。加圧板A1、B2に挟まれた具材は中間材の柔軟な空気袋を介して加圧され、脱水が促がされる。また、圧力が十分でない場合、外部にある空気ポンプ11から空気ホース12を介して空気が注入され、空気袋10内の気圧を高くすることで具材に加圧しビニール袋7内の空気の排出と具材8の脱水を促がす構造の実施例である。
【0017】
製造例1
本発明の板挟み式漬物製造装置の原理を用い、漬け込みと袋詰めを同時に行う袋詰め浅漬けを製造する方法。
【0018】
実施例1
予め、食塩、調味料をまぶした具材8をファスナー付ビニール袋7に入れ、図2のように低反発ウレタン中間材3を取り付けた加圧版A1と加圧板B2の間に挟み、圧力を加えたまま平型ファスナー3を連結して縦に置き、具材が自ら放出した水分で水没したら、空気を追い出した状態でビニール袋の口を溶接して密封し、完成品とするビニール袋詰め漬物の製造法。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】 本発明の板ばさみ式漬物製造装置の一例を示す斜視図である。aは加圧板が開いた状態であり、bは加圧板を閉じた状態である。
【図2】 本発明の板ばさみ式漬物製造装置に漬物の具材の入ったビニール袋を挟んで加圧している状を側面から見た図である。
【図3】 本発明の板ばさみ式漬物製造装置の一例を示す斜視図であり、加圧板、若しくは、中間材が十分な反発力と復元力を有している。
【図4】 本発明の板ばさみ式漬物製造装置の一例を示す斜視図であり、中間材を空気袋としている。
【符号の説明】
【0020】
1・・・加圧板A
2・・・加圧板B
3・・・低反発弾性ウレタン中間材
4・・・平型ファスナー
5・・・加圧バネ
6・・・加圧バネ止め金具
7・・・ファスナー付ビニール袋
8・・・具材
9・・・蝶番部
10・・・空気袋
11・・・空気ポンプ
12・・・空気ホース

【特許請求の範囲】
【請求項1】
二枚の板の少なくとも一方の板の内面にウレタンスポンジや空気などの流動体を入れた袋のように柔軟で復元力のある層を中間材として配置し、その中間材を介して漬物の具材の入ったビニール袋を上記の二枚の板で挟んで加圧し、その板や中間材、バネ、ゴムなどの復元力を利用して一定の圧力を加え続け、ビニール袋内の具材の脱水と空気の排出を促がす機能を有する漬物製造装置、及び、上記の原理を用いて漬け込みと袋詰めを同時に行うプラスティック袋詰め漬物製品の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−100645(P2012−100645A)
【公開日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−268799(P2010−268799)
【出願日】平成22年11月12日(2010.11.12)
【出願人】(591062191)
【Fターム(参考)】