説明

板材加工機の搬送用テーブル

【課題】 板材の下面を傷付けにくい板材加工機の搬送用テーブルを提供する。
【解決手段】 搬送用テーブル2は、板材に対してパンチ加工を行う板材加工機に設けられ、板材の下面をサポートし板材を水平方向に摺らせて送る。搬送用テーブル2は、水平に設置されたテーブル本体2Aと、このテーブル本体2A上に毛先側を上向きにして分散配置された複数のブラシ12とを備える。各ブラシ12は、樹脂製の単繊維13を多数本結束したものである。各単繊維13は、根元側から中途部にかけては一定太さの直線状とされ、中途部から毛先側にかけては撓み可能な先細り形状とされている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、板材に対してパンチ加工を行う板材加工機に設けられ、板材の下面をサポートし板材を水平方向に摺らせて送るための搬送用テーブルに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、板材加工機の搬送用テーブルでは、板材の板材加工機への搬入、加工機の送り、板材加工機からの搬出等の際に板材送りが円滑に行えるように、例えば図7に示すように、ボールによる搬送ベアリング20やローラ等をテーブル上面に多数設けている。しかし、これら搬送ベアリング20やローラでは、板材Wが柔らかい材質であったり、鏡面加工や塗装されたもの等である場合に、板材Wの下面を傷付けることがある。
【0003】
また、搬送ベアリング20やローラを用いた搬送用テーブル2は、板材Wが搬送用テーブル2上を送られるときに大きな走行音を発するという問題がある。特に板材Wが薄くて撓み易い場合、図8に示すように、板材Wの端部Waが下向きに撓み、その撓んだ端部Waが搬送ベアリング20やローラに衝突して大きな音を発するのである。板材Wが下向きに突出した成形部(図示せず)を有する場合は、この成形部が搬送ベアリング20やローラに衝突して大きな音が発生するだけでなく、成形部が損傷するという問題もある。
【0004】
近年、板材の傷付き防止および走行音の低減を目的として、図9に示すように、板材Wの支持にブラシ22を用いた搬送用テーブル2が採用されている(例えば特許文献1)。搬送用テーブル2は、ブラシ22と、このブラシ22を支持するベース26とでなる。ブラシ22は、例えば、繊維径0.1〜0.2mmの単繊維23を約200〜500本束ね、これを所定の長さに揃えたものである。具体的には、図10に示すように、U字状に折り返した各単繊維23の折り返し部を植設金具24に引っ掛け、この植設金具24をブロック体25に打ち込んで固定する。そして、各単繊維23の先端を切断して長さを揃える。
【0005】
1ブラシ22当たりの単繊維23の本数、ブラシ22全体の剛性は、板材加工機の加工対象としての材料のサイズや重量、ブラシ22の目標耐久時間等を考慮して決定される。このブラシ22を用いた搬送用テーブル2によると、板材Wの端部Wa(図8)が下向きに撓んでいたり、板材Wが下向きに突出した成形部を有していたりしても、板材Wの走行音を低減することができ、かつ下向きに突出した成形部の損傷を防ぐことができる。
【0006】
また、特許文献2には、ブラシ全体の断面形状を山形、丸形等にすることや、各ブラシ毛(単繊維)の先端形状を半球状にすることで、板材とブラシの摺動抵抗を減少させて、ブラシの寿命を延ばす提案がされている(特許文献2の請求項2、請求項3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第4200615号公報
【特許文献2】実用新案登録第2562747号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、図9のようなブラシ22を用いた搬送用テーブル2は、板材Wとの接触抵抗が増大し、電力消費量が多くなるという別の問題がある。また、ブラシ22の耐久性を向上するにはブラシ22の剛性を高くする必要があり、その場合、板材Wの傷付きが多くなってしまう。ブラシ22の素材やブラシ22の形状、例えばブラシ22を構成する単繊維23の直径、本数、丈、束形状等について改良が試みられているが、解決に至っていないのが現状である。
【0009】
上記従来の搬送用テーブル2が板材Wの傷付きを十分に軽減させられないのは、次の理由による。本来、ブラシ22の各単繊維23がほぼ均等に板材Wの荷重を受けることを前提に設計されるが、各単繊維23の長さが不揃いであったり、単繊維23が捩れたりといった品質のバラツキにより、現実には、すべての単繊維23の先端が板材Wの下面に接触せずに、一部の単繊維23のみで板材Wの荷重を受けている。単繊維の剛性が高いために、最初に板材Wに接触する繊維が、板材Wが短い単繊維23に接触するまでに十分に撓まずに、長い単繊維23のみで支えてしまうので、荷重が平均化されず、長い単繊維23にかかった集中的な荷重によって板材Wに傷が付く。
一般的に、板材Wの荷重を受けている単繊維23のブラシ22に対する割合(接地率)は、小さくなってしまう。このように接地率が小さいと、1本当たりの単繊維23にかかる負荷荷重が大きくなり、板材表面の傷付き荷重許容値を超えてしまい、板材Wの下面に傷を付けると考えられる。したがって、特許文献2のようにブラシ全体の断面形状を山形、丸形等にすると、接地率の低下を助長することとなり、板材Wの下面をより傷を付ける結果となる可能性がある。
【0010】
また、板材Wの下面の傷付きが問題になるのは、主に板材Wが薄板である場合であるとされている。これは、板材Wが薄板であると、ブラシ22への負荷荷重が低いため、図11のように、単繊維23の先端が寝ないで直立状態のまま板材Wの下面に接触して接地率が低くなることによる。つまり、接地率が小さいと、板材Wの重量が軽いにもかかわらず、1本当たりの単繊維23にかかる負荷荷重は逆に大きくなるからである。したがって、特許文献2のように各ブラシ毛(単繊維)の先端形状を半球状しても、1本当たりのブラシ毛にかかる負荷荷重の減少には結びつかず、板材Wの下面の傷付きを軽減する効果は薄いと思われる。
【0011】
この発明の目的は、板材の下面を傷付けにくい板材加工機の搬送用テーブルを提供することである。
この発明の他の目的は、板材支持用のブラシの製作およびテーブル本体への固定が容易な搬送用テーブルとすることである。
この発明のさらに他の目的は、板材の下面をより一層傷付けにくくすることである。
この発明のさらに他の目的は、板材加工機の搬送用テーブルに用いられる、板材の下面を傷付けにくいブラシを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この発明の板材加工機の搬送用テーブルは、板材に対してパンチ加工を行う板材加工機に設けられ、板材の下面をサポートし板材を水平方向に摺らせて送るための搬送用テーブルであって、水平に設置されたテーブル本体と、このテーブル本体上に毛先側を上向きにして分散配置された複数のブラシとを備え、各ブラシは、樹脂製の単繊維を多数本結束したものであり、前記各単繊維は、根元側から中途部にかけては一定太さの直線状とされ、中途部から毛先側にかけては撓み可能な先細り形状とされる。なお、この明細書で言う「単繊維」とは、1本のブラシ毛のことを言う。また、前記多数本とは、3本以上のことであり、例えば数百本である。
【0013】
この構成によると、搬送用テーブル上の板材は、分散配置された複数のブラシによって下面がサポートされて送られる。ブラシの各単繊維は、中途部から毛先側にかけては撓み可能な先細り形状とされているため、板材の荷重により、単繊維は毛先側の先細り形状部が板材の下面に沿って寝た状態となる。つまり、単繊維は、先端だけでなく、ある長さをもって板材と接触する。また、単繊維の先細り形状部が板材の下面に沿って寝ることにより、ブラシの多数本の単繊維のうち多くの単繊維が板材と接触する。つまり、接地率が大きい。このように、単繊維の形状を先細り形状とすることで、単繊維全長のばらつきを吸収することができ、接地率が大きくなる。
【0014】
これらのことから、板材の単繊維に対する単位面積当たりの接触荷重が低くなり、板材の下面を傷付けにくい。また、単位面積当たりの接触荷重が低いと、単繊維の摩耗が少なく、ブラシの耐久性が高い。さらに、単繊維の先細り形状部が板材の下面に沿って寝ていると、単繊維の先端部が摩耗で擦り減ったとしても、それによる板材の沈み込みが少なく、加工に与える影響が少ない。
【0015】
単繊維は樹脂製であるため、単繊維の中途部から毛先側にかけての部分を先細り形状とする加工が容易である。例えば、全体が同一直径の単繊維に対して、余分な部分を薬品で溶かして除去して所定の先細り形状とする方法が採用できる。
【0016】
この発明において、前記ブラシは、前記多数本の単繊維と、これら単繊維の根元部を溶融させかつ固化して一体化されて、単繊維の束よりも外周に拡がったフランジ部とを有し、このフランジ部の下面に接する第1のブラシボードと前記フランジ部の上面に接する第2のブラシボードとで前記フランジ部を挟んで前記ブラシを固定してなるブラシ付き天板を設け、このブラシ付き天板をテーブル本体の上面に固定した構成としてもよい。
【0017】
ブラシを上記構成とすると、製作が容易である上に、各単繊維の向きが揃った状態に保ち易い。また、ブラシのフランジ部を第1および第2のブラシボードを挟んでブラシを固定することで、各ブラシを適正位置に分散配置させることが容易となり、かつテーブル本体へ容易に固定することができる。
【0018】
この発明において、前記単繊維は、中途部から毛先側にかけての部分が、単位長さ当りの断面積の低下率が大きい中途部側先細り形状部と、同低下率が小さい毛先側先細り形状部とで構成されていてもよい。
【0019】
上記のように単繊維の中途部から毛先側にかけての部分を単位長さ当りの断面積の低下率、つまり先細り率が2段階に変化する先細り形状とすると、先細り率が直線的に低くなる場合と比べて、単繊維の毛先側端部を細くすることができ、単繊維の毛先側端部が撓み易くなる。それにより、単繊維の板材の下面と接触する長さが長くなり、かつ単繊維の接地率が高まり、単繊維と板材の単位面積当たりの接触荷重が低くなって、より一層板材の下面を傷付けにくい。
【0020】
この発明のブラシは、板材に対してパンチ加工を行う板材加工機に設けられた搬送用テーブルに、板材の下面をサポートし板材を水平方向に摺らせて送るために、毛先側を上向きにして複数分散配置されるブラシであって、樹脂製の単繊維を多数本結束したものであり、前記各単繊維は、根元側から中途部にかけては一定太さの直線状とされ、中途部から毛先側にかけては撓み可能な先細り形状とされる。
【0021】
この構成によると、ブラシの各単繊維は、中途部から毛先側にかけては撓み可能な先細り形状とされているため、板材の荷重により、単繊維は毛先側の先細り形状部が板材の下面に沿って寝た状態となる。つまり、単繊維は、先端だけでなく、ある長さをもって板材と接触する。また、単繊維の先細り形状部が板材の下面に沿って寝ることにより、ブラシの多数本の単繊維のうち多くの単繊維が板材と接触する。つまり、接地率が大きい。これらのことから、単繊維と板材の単位面積当たりの接触荷重が低くなり、板材の下面を傷付けにくい。
【発明の効果】
【0022】
この発明の板材加工機の搬送用テーブルは、板材に対してパンチ加工を行う板材加工機に設けられ、板材の下面をサポートし板材を水平方向に摺らせて送るための搬送用テーブルであって、水平に設置されたテーブル本体と、このテーブル本体上に毛先側を上向きにして分散配置された複数のブラシとを備え、各ブラシは、樹脂製の単繊維を多数本結束したものであり、前記各単繊維は、根元側から中途部にかけては一定太さの直線状とされ、中途部から毛先側にかけては撓み可能な先細り形状とされているため、板材の下面を傷付けにくい。
【0023】
前記ブラシは、前記多数本の単繊維と、これら単繊維の根元部を溶融させかつ固化して一体化されて、単繊維の束よりも外周に拡がったフランジ部とを有し、このフランジ部の下面に接する第1のブラシボードと前記フランジ部の上面に接する第2のブラシボードとで前記フランジ部を挟んで前記ブラシを固定してなるブラシ付き天板を設け、このブラシ付き天板をテーブル本体の上面に固定した場合は、ブラシの製作およびテーブル本体への固定が容易である。
【0024】
前記単繊維は、中途部から毛先側にかけての部分が、単位長さ当りの断面積の低下率が大きい中途部側先細り形状部と、同低下率が小さい毛先側先細り形状部とで構成されている場合は、板材の下面をより一層傷付けにくくなる。
【0025】
この発明のブラシは、板材に対してパンチ加工を行う板材加工機に設けられた搬送用テーブルに、板材の下面をサポートし板材を水平方向に摺らせて送るために、毛先側を上向きにして複数分散配置されるブラシであって、樹脂製の単繊維を多数本結束したものであり、前記各単繊維は、根元側から中途部にかけては一定太さの直線状とされ、中途部から毛先側にかけては撓み可能な先細り形状とされた場合は、板材加工機の搬送用テーブルに用いられる、板材の下面を傷付けにくい。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】この発明の一実施形態にかかる搬送用テーブルを備えた板材加工機の平面図である。
【図2】同板材加工機の正面図である。
【図3】(A)は同板材加工機の搬送用テーブルの部分断面図、(B)は同搬送用テーブルのブラシを構成する単繊維の拡大図である。
【図4】同単繊維の先細り形状部の加工方法の一例を示す説明図である。
【図5】同搬送用テーブルにおける板材移動動作を示す説明図である。
【図6】異なる単繊維を示す図である。
【図7】従来の搬送用テーブルの部分断面図である。
【図8】同搬送用テーブルにおける板材移動動作を示す説明図である。
【図9】従来の異なる搬送用テーブルの部分断面図である。
【図10】同搬送用テーブルのブラシの植毛過程を示す説明図である。
【図11】同搬送用テーブルにおける板材移動動作を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
この発明の一実施形態を図面と共に説明する。図1、図2は、この発明の搬送用テーブルを備えた板材加工機の平面図および正面図である。この板材加工機1はパンチプレスであって、板材Wを載せて搬送する搬送用テーブル2と、板材Wを搬送用テーブル2で移動させる板材送り装置3と、搬送用テーブル2上の板材Wを加工する加工部4とを備える。
【0028】
搬送用テーブル2は、固定テーブル2a,2bと、可動テーブル2cとで構成される。すなわち、搬送用テーブル2は、中央の固定テーブル2aの両側に、一対の固定テーブル2bを離して配置し、これら中央と側部の固定テーブル2a,2bの間に、後記キャリッジ7と共に移動する可動テーブル2cを設けたものである。搬送用テーブル2の詳細な構造については、後で説明する。
【0029】
板材送り装置3は、フレーム5のレール6上を前後方向(Y軸方向)に移動可能なキャリッジ7に、左右方向(X軸方向)に移動可能にクロススライド8を設置し、板材Wの端部を把持するワークホルダ9を、クロススライド8に設置したものである。
【0030】
加工部4は、上下一対のタレット10と、このタレット10の円周方向複数箇所に保持されたパンチ金型(図示せず)を所定のパンチ位置Pで叩くパンチ駆動機構(図示せず)とで構成されている。
【0031】
次に、搬送用テーブル2の詳細な構造について説明する。搬送用テーブル2の固定テーブル2a,2bおよび可動テーブル2cの全面に、毛先側を上向きにした多数のブラシ12が分散して配置されている。各ブラシ12は、上端の高さが略同じとされている。なお、図1には、固定テーブル2bの一部のブラシ12のみが図示されている。
【0032】
図3(A)は、搬送用テーブル2の部分断面図である。ブラシ12は、ポリアミド樹脂等の樹脂製の単繊維13を多数本結束したものであり、これら単繊維13の根元部を溶融させた後に固化して一体化してある。例えば、単繊維13の繊維径0.1〜0.2mmであり、一つのブラシ12に約200〜500本の単繊維13が結束されている。溶融された単繊維13の根元部は、外周部が単繊維13の束よりも外周に拡がったフランジ部材14とされている。ブラシ12を上記構成とすると、製作が容易である上に、各単繊維13の向きが揃った状態に保ち易い。
【0033】
各ブラシ12は、フランジ部14の下面に接する第1のブラシボード15とフランジ部14の上面に接する第2のブラシボード16とでフランジ部14を挟むことで、第1および第2のブラシボード15,16に固定されている。第2のブラシボード16は、各ブラシ12の単繊維13の束がそれぞれ挿通可能で、かつフランジ部14の外径寸法よりも内径寸法が小さい複数の貫通孔16aを有する。この貫通孔16aの内周には、単繊維13の束を挿通されるカラー17が嵌合している。これら複数のブラシ12と、第1および第2のブラシボード15,16と、カラー17とで、ブラシ付き天板2Bが構成されている。このブラシ付き天板2Bは、搬送用テーブル2のテーブル本体2Aの上面に、ボルト等の固定具18により固定される。このように、ブラシ12のフランジ部14を第1および第2のブラシボード15,16を挟んで固定することで、各ブラシ12を適正位置に分散配置させることが容易となり、かつテーブル本体2Aへ容易に固定することができる。
【0034】
図3(B)は、ブラシ12を構成する単繊維13の拡大図である。図のように、単繊維13は、根元側から中途部にかけての部分は一定太さの直線状部13aとされ、中途部から毛先側にかけての部分は撓み可能な先細り形状部13bとされている。この例の先細り形状部13bは、単位長さ当りの断面積の低下率、つまり先細り率が直線的に小さくなっている。この例の単繊維13は横断面が円形であるため、直径ΦD,ΦDの低下率としても同義である。単繊維13の全体長さLに対する先細り形状部13bの長さLの比率は、任意に定めればよい。
【0035】
先細り形状部13bの加工は、例えば図4(A),(B)のように、全体が同一直径の単繊維13に対して、余分な部分を液状の薬品19で溶かして除去して所定の先細り形状とする方法が採用できる。先細り形状部13bの部位ごとに薬品19の濃度、温度、浸す時間等の調整項目により、先細りの形状を任意に決められる。
【0036】
この構成の搬送用テーブル2によると、搬送用テーブル2上の板材Wは、分散配置された複数のブラシ12によって下面がサポートされて送られる。ブラシ12の各単繊維13は、中途部から毛先側にかけて撓み可能な先細り形状部13bとされているため、板材Wの荷重により、図5のように、先細り形状部13bが板材Wの下面に沿って寝た状態となる。つまり、単繊維13は、先端だけでなく、ある長さをもって板材Wと接触する。また、単繊維13の先細り形状部13bが板材Wの下面に沿って寝ることにより、ブラシ12の多数本の単繊維13のうち多くの単繊維13が板材Wと接触する。つまり、接地率が大きい。このように、単繊維13の形状を先細り形状とすることで、単繊維全長のばらつきを吸収することができ、接地率が大きくなる。単繊維13が先細り形状でない場合は、「発明が解決しようとする課題」の欄で説明したように、単繊維23が先端で板材Wに接し、板材Wと接する単繊維23は全体の中の一部に過ぎない(図11参照)。
【0037】
これらのことから、単繊維13が先細り形状であると、板材Wの単繊維13に対する単位面積当たりの接触荷重が低くなり、板材Wの下面を傷付けにくい。例えば、板材Wが鏡面加工板や塗装板、樹脂板等であっても、下面の傷が生じ難い。また、単位面積当たりの接触荷重が低いと、単繊維13の摩耗が少なく、ブラシ12の耐久性が高い。さらに、単繊維13の先細り形状部13bが板材Wの下面に沿って寝ていると、単繊維13の先端部分が摩耗で擦り減ったとしても、それによる板材Wの沈み込みは少なく、加工に与える影響が少ない。
【0038】
図6は、単繊維13の異なる先細り形状を示す。この単繊維13の先細り形状部13bは、先細り率が大きい中途部側先細り形状部13baと、先細り率が小さい毛先側先細り形状部13bbとで構成されている。中途部側先細り形状部13baの最小直径ΦD、および毛先側先細り形状部13bbの最小直径ΦDは、任意に定めればよい。また、単繊維13の全体長さLに対する先細り形状部13bの長さLの比率、および先細り形状部13bの全体長さLに対する毛先側先細り形状部13bbの長さLの比率は、任意に定めればよい。
【0039】
このように先細り形状部13bを先細り率が2段階に変化する先細り形状とすると、図3(B)の例のように直線的に小さくなる場合と比べて、単繊維13の毛先側端部(毛先側先細り形状部13bb)を細くすることができ、単繊維13の毛先側端部が撓み易くなる。それにより、単繊維13の板材Wの下面と接触する長さが長くなり、かつ単繊維13の接地率が高まり、単繊維13と板材Wの単位面積当たりの接触荷重が低くなって、より一層板材Wの下面を傷付けにくい。
【符号の説明】
【0040】
1…板材加工機
2…搬送用テーブル
2A…テーブル本体
2B…ブラシ付き天板
12…ブラシ
13…単繊維
13b…先細り形状部
13ba…中途部側先細り形状部
13bb…毛先側先細り形状部
14…フランジ部
15…第1のブラシボード
16…第2のブラシボード
W…板材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
板材に対してパンチ加工を行う板材加工機に設けられ、板材の下面をサポートし板材を水平方向に摺らせて送るための搬送用テーブルであって、
水平に設置されたテーブル本体と、このテーブル本体上に毛先側を上向きにして分散配置された複数のブラシとを備え、
各ブラシは、樹脂製の単繊維を多数本結束したものであり、
前記各単繊維は、根元側から中途部にかけては一定太さの直線状とされ、中途部から毛先側にかけては撓み可能な先細り形状とされた、
板材加工機の搬送用テーブル。
【請求項2】
前記ブラシは、前記多数本の単繊維と、これら単繊維の根元部を溶融させかつ固化して一体化されて、単繊維の束よりも外周に拡がったフランジ部とを有し、このフランジ部の下面に接する第1のブラシボードと前記フランジ部の上面に接する第2のブラシボードとで前記フランジ部を挟んで前記ブラシを固定してなるブラシ付き天板を設け、このブラシ付き天板をテーブル本体の上面に固定した請求項1記載の板材加工機の搬送用テーブル。
【請求項3】
前記単繊維は、中途部から毛先側にかけての部分が、単位長さ当りの断面積の低下率が大きい中途部側先細り形状部と、同低下率が小さい毛先側先細り形状部とで構成されている請求項1または請求項2記載の板材加工機の搬送用テーブル。
【請求項4】
板材に対してパンチ加工を行う板材加工機に設けられた搬送用テーブルに、板材の下面をサポートし板材を水平方向に摺らせて送るために、毛先側を上向きにして複数分散配置されるブラシであって、
樹脂製の単繊維を多数本結束したものであり、前記各単繊維は、根元側から中途部にかけては一定太さの直線状とされ、中途部から毛先側にかけては撓み可能な先細り形状とされたブラシ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2013−81977(P2013−81977A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−222607(P2011−222607)
【出願日】平成23年10月7日(2011.10.7)
【出願人】(000006297)村田機械株式会社 (4,916)
【出願人】(511202816)株式会社ソリトンコーポレーション (2)