説明

板状ワークの搬送装置

【課題】きわめて簡易、かつ、低コストの構成であるにもかかわらず、種々のサイズの板状ワークを、傷発生のおそれを生じさせることなく搬送することができる搬送装置を提供する。
【解決手段】板状ワーク3の前端部を挟持する前側枠部10と、後端部を挟持する後側枠部11と、これら前後の枠部10,11間の距離を長短自在に調整しつつ両枠部間を連結する連結体16とからなる板状ワーク載置枠体1を、搬送体2に載置させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、プリント基板等の板状ワークの搬送に要する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
プリント基板等の板状ワークの搬送に関しては、駆動するローラ上に板状ワークを載置する方式がもっとも簡易である(例えば特開2007−217752号)。しかし、搬送対象となる板状ワークによっては繊細な板面状態が要求されることもあり、そこでローラとの接触面による傷発生を避ける手法が種々提案されている。その一つに、板状ワークの幅方向の両端部のみ上下のローラ(一方が駆動ローラ)で挟み込みながら搬送させる技術がある。この技術によれば、板状ワークの幅方向の両端部のみローラと接触するので、板状ワーク表面の大部分は非接触で搬送されることになり、接触による表面傷の発生が有効に防げることになる。
【特許文献1】特開2007−217752号(図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、幅方向両端部をローラで挟み込む機構は、板状ワークのサイズが変更になると、ローラの位置を変更する必要がある。上下ローラのうちいずれかは駆動機構が伴うので、位置変更機構を備えさせると、それに駆動機構を組み込ませる必要があり、機構が簡易化できず、またコストも増加する。
【0004】
この発明は、従来技術の以上のような問題に鑑み創案されたもので、サイズの異なる板状ワークの搬送に対しても有効に表面傷を防止できる技術であって、しかも簡易で低コストとなる技術を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
このため、本発明に係る板状ワークの搬送装置は、板状ワークの前端部を挟持する前側枠部と、後端部を挟持する後側枠部と、これら前後の枠部間の距離を長短自在に調整しつつ両枠部間を連結する連結体とからなる板状ワーク載置枠体を、搬送体に載置させてなることを特徴とする。
【0006】
本発明の装置では、板状ワークを直接、コンベアやローラ等の搬送体に載置させるのではなく、載置枠体に載置させたうえで、その載置枠体を搬送体に載置させる。このため、板状ワークは搬送体と接触することながなく、ワーク板面に接触による傷の発生のおそれはない。一方、載置枠体は、板状ワークの前後端部をそれぞれ前後の枠部で挟持して固定するが、それら前後の枠部は、相互間の距離を長短自在に調整できる連結体によって連結されているので、サイズの異なる板状ワークを搬送するときには、枠部間の距離を板状ワークのサイズに合わせるように調整すれば良い。連結体の枠部間の距離調整機構は、枠部及び連結体に、搬送体の駆動機構を特に連結させる必要がないので、例えば実施形態例に示すように、連結棒に対して枠部をスライド自在とする程度のきわめて簡易な機構(もちろん、他の公知機構でも良い)で構成できる。すなわち、板状ワークのサイズ変更に対しても、きわめて簡易かつ低コストの構成で対処できる。
【発明の効果】
【0007】
以上説明したように、この発明によれば、きわめて簡易かつ低コストの構成であるにもかかわらず、種々のサイズの板状ワークを、傷発生のおそれを生じさせることなく搬送できるという顕著な効果が認められる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本願の発明に係る具体的形態の一例を図面に基づき説明する。なお、以下に示す形態例はあくまで本発明の一例であって、それらの形態例に本発明が限定されないことは当然である。
【0009】
図1は搬送装置全体の平面図、図2は図1の正面図、図3は板状ワーク載置枠体の説明図、図4は搬送体の説明図である。なお、各図中、矢印が搬送ライン方向を示している。
【0010】
本形態例の搬送装置は、図1及び図2に示すように、板状ワーク載置枠体1と、該載置枠体1が載置された状態で板状ワーク3を搬送する搬送体2とから構成される(ただし、図1では板状ワーク3は省略)。
【0011】
板状ワーク載置枠体1は、図3に示すように、板状ワーク3の前端部を挟持する機構を備えた前側フレーム10(前側枠部)と、後端部を挟持する機構を備えた後側フレーム11(後側枠部)と、両フレーム10,11間の距離を長短自在に調整する調整機構を備えた両フレーム10,11の連結体16とから構成される。
【0012】
前側及び後側の各フレーム10,11はほぼ同様の構成となっており、各フレーム10,11の対向側の側端部12は櫛歯状に切り欠かれるとともに、その櫛歯状の側端部12にその長方向に沿って離接自在となる棒状クランプ13が、任意の中間部に配置される軸受け19を介して回動自在に支持されながら配置される。棒状クランプ13は、1本の棒体がクランク状に曲成加工されて2箇所の突出部13aが設けられ、それが回動されて下降したとき、その突出部13aが前記櫛歯状側端部12の凸部12aに当接する。この当接動作により、後述する板状ワーク3の前後端を挟持することになるが、棒状クランプ13突出部13aの当接箇所には、その挟持を確実にするためのリング状押部出張り13bがそれぞれ形成されている。
【0013】
各フレーム10,11の両端には、3つの板材14a〜14cによって断面逆U字状のガイド走行部14が形成される。該ガイド走行部14は、後述する搬送体2のガイドレール20に沿って走行する部分となる。
内側板材14aは、各フレーム10,11の両端から立ち上がるように固着され、中間板材14bは、内側板材14aの上端に固着され、外側板材14cは、その中間板材14bの他端面に、前記内側板材14aと対向するように固着される。
このようなガイド走行部14のうち一方側の内側板材14aには、前記棒状クランプ13を回動させるためのレバー機構15が形成される。レバー機構15は、内側板材14a内にその基端部を有し、その支点軸15eを介して傾動自在となるレバー本体15aと、該レバー本体15aの側面に前記支点軸15eを介して固着される揺動リンク15bと、該揺動リンク15bの端部から突出するガイドピン15cと、該ガイドピン15cが嵌挿され摺動するガイド溝15fを備えたトグルリンク15dとから構成される。該トグルリンク15dには前記棒状クランプ13の一端が固着される。
以上より、レバー本体15aはトグルリンク15dのガイド溝15fの摺動範囲で傾動動作が行われ、その傾動動作により棒状クランプ13が回動され、そのクランク状突出部13aが昇降自在となる。なお、レバー機構15には、図示しないスプリングによりレバー本体15または棒状クランプ13に張力が付与されるものとなっており、クランク状突出部13aの下降方向への動作に付勢することで、棒状クランプ13による板状ワーク3の挟持を確実にさせている。
中間板材14bには、後述する連結棒16aを支持する貫通孔14gが穿設される。該貫通孔14gは、そこに嵌挿される連結棒16aを摺動自在に支持する。
外側板材14cの下端には、後述する搬送体2ガイドレール20の二段部20bを走行するローラ14hが備えられ、また外面にはブロック片14iが固着される。該ブロック片14iの下端には、後述する搬送体2のチェーンベルト21の櫛歯間21aに係合するフック14jが、一方向にのみ傾動するようにストッパ(図示なし)を備えながら軸支されている。
【0014】
前記連結体16は、本形態例では棒状の連結棒16aとなっており、該連結棒16aは、上記のように、両フレーム10,11の中間部材14bの各貫通孔14gに摺動自在に嵌挿される。この摺動自在な嵌挿機構がフレーム10,11間の距離調整機構となっている。両フレーム10,11は、前記櫛歯状側端部12の凸部12aを対向させた状態で、それぞれの中間板材14bに穿設された貫通孔14gに、連結棒16aを嵌挿させることで連結される。そして、その嵌挿状態で、各フレーム10,11を連結棒16aに対して適宜摺動させれば、両フレーム10,11間の距離を長短自在に調整できる。距離調整後は、固定ピン等(図示なし)で連結棒16aの固定を行えば良い。
【0015】
前記搬送体2は、図2及び図4に示すように、ラインに沿って平行に配置される1対のガイドレール20と、該ガイドレール20の外縁側に、駆動スプロケット22によって可動自在に周設されるチェーンベルト21とから構成される。ガイドレール20は、断面が内側から外側に向かって頂段部20a、二段部20b、三段部20cと高さが低くなる階段状に形成され、二段部20bと三段部20cとの間には溝20dが形成される。チェーンベルト21は一端側に櫛歯(図中21aが櫛歯間を示す)が形成され、ガイドレール20の溝20d上に、その櫛歯が位置するように配置される。この櫛歯間21aには、前記ブロック片14i下端のフック14jが係合することになる。
上記したように、ガイドレール20の頂段部20aと二段部20bに、前記ガイド走行部14が嵌合しながら走行する。すなわち、ガイドレール20の内側の頂段部20aに、前記フレーム10,11の中間板材14bの底面が対面しながら、同二段部20bに、外側板材14cの底面ローラ14hが当接する。このとき、前記溝20dには、ブロック片14i下端のフック14j先端がチェーンベルト21の櫛歯間21aに係合した状態で入り込み、チェーンベルト21が移動していくと、係合したフック14j先端がそれに従動し、前記底面ローラ14hがガイドレール20二段部20b上を滑動していくので、これにより前記ガイド走行部14がライン方向に進行していくことになる。
【0016】
以上のような本形態例の使用例を次に説明する。
【0017】
まず、板状ワーク3を載置枠体1にセットするが、そのセット動作は、板状ワーク3のサイズに合わせて、載置枠体1の前側フレーム10または後側フレーム11を連結棒16aに対してスライドさせてフレーム10,11間の距離を調整し、板状ワーク3の前後端が各フレーム10,11の対向側櫛歯状凸部12a上に位置するようにする。位置を調整したら、板状ワーク3を載置する前に、レバー本体15aを引き上げ、棒状クランプ13を回動させて、そのクランプ状突出部13aを上昇させておく。板状ワーク3の前後端を各フレーム10,11の櫛歯状凸部12a上に合わせて載置したら、レバー本体15aを引き下げ、棒状クランプ13を逆に回動させて、そのクランプ状突出部13aを下降させ、該突出部13aのリング状押部13bを板状ワーク3前後端部に押し付けることで、板状ワーク3前後端部をフレーム10,11と棒状クランプ13とで挟持させる。
【0018】
以上のように板状ワーク3がセットされた載置枠体1を、所定の移載手段(図示なし)により、搬送体2のガイドレール20に載置させる。このとき、上述したように、載置枠体1両端のガイド走行部14をガイドレール20の段部に嵌合させつつ、係合フック14jをチェーンベルト21の櫛歯間21aに係合させる。チェーンベルト21が可動すると、係合フック14jが従動して載置枠体1はガイドレール20上を進行していくことになる。
【0019】
本形態例によれば、以上のようなきわめて簡易な構造にもかかわらず、移送する板状ワーク3のサイズが異なる場合でも、前後のフレーム10,11間の距離を単にスライドさせて調整すれば、フレーム10,11と連結棒16aの長さの範囲内のサイズである限り問題なく挟持することができる。そして、板状ワーク3は、その前後端を挟持されながら移送され、板状ワーク3の表面には何も接触しないので、傷が発生するおそれもない。
【0020】
なお、本発明が以上の実施形態例に限定されるものでないことは上述のとおりであり、本発明の構成を逸脱しない限り、前後フレーム10,11(枠体)の形状や挟持構造等の変更(例えば挟持構造として上下とも専用クランプで把持する等)、連結体16の距離調整機構の変更(例えばラックピニオンを用いる機構等)、搬送体2の形状や構造等の変更(例えばローラ上に載置枠体1を直接載置させて移送する構造等)等を行っても良いことは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0021】
この発明は、プリント基板等種々の板状ワークを搬送する装置としてその処理ラインに適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】搬送装置全体の平面図(ただし、板状ワーク3は省略)である。
【図2】図1の正面図である。
【図3】板状ワーク載置枠体の説明図(ただし、軸受け19は省略)である。
【図4】搬送体の説明図である。
【符号の説明】
【0023】
1 板状ワーク載置枠体
2 搬送体
3 板状ワーク
10 前側フレーム(前側枠部)
11 後側フレーム(後側枠部)
16 連結体(連結棒16a)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
板状ワークの前端部を挟持する前側枠部と、後端部を挟持する後側枠部と、これら前後の枠部間の距離を長短自在に調整しつつ両枠部間を連結する連結体とからなる板状ワーク載置枠体を、搬送体に載置させてなることを特徴とする板状ワークの搬送装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−249164(P2009−249164A)
【公開日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−102585(P2008−102585)
【出願日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【出願人】(591175963)株式会社ファシリティ (2)
【Fターム(参考)】