説明

板状装飾材

【課題】植物材料の脱離や、植物材料からのアク溶出等が防止できるとともに、植物材料本来の質感が活かされ、自然な風合を表出することが可能な板状装飾材を提供する。
【解決手段】基層中に植物材料が散在した状態で埋設されている板状装飾材において、前記基層は、反応性官能基を有する結合材を含む基層形成用組成物の乾燥物からなるものとし、前記植物材料は撥水処理材によって表面処理されたものとする。当該撥水処理材としては、前記基層形成用組成物の結合材における反応性官能基と反応可能な官能基を有する撥水成分を含むものを使用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な板状装飾材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、花、葉、樹皮等の植物材料を板状物に固定化した装飾材が知られている。例えば、特許文献1(特公平5−50999号公報)には、樹脂が含浸された花、葉等の装飾用素材を台板の表面に接着し、台板表面の全体を透明塗膜で被覆した塗り物が記載されている。特許文献2(特開平6−239097号公報)には、化粧板の製造方法として、基板の表面に透明塗料を吹き付け、その硬化前に押し葉、押し花等を埋め込み、ついで透明塗料を塗り重ねる方法が記載されている。また、特許文献3(特開2000−238498号公報)には、天然装飾絵付け方法として、素地面に天然素材を貼着した後、その表面をウレタン系樹脂で覆う方法が記載されている。
このような特許文献に記載の装飾材は、十分な耐久性を有するものであり、植物材料の脱離防止、植物材料からのアク溶出防止等においても安定した効果が得られるものである。
【0003】
しかしながら、上記特許文献に記載の装飾板では、植物材料の表面が透明樹脂で完全に被覆されるため、植物材料本来の質感が損われ、人工的な外観を呈するおそれがある。
【0004】
【特許文献1】特公平5−50999号公報
【特許文献2】特開平6−239097号公報
【特許文献3】特開2000−238498号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上述のような問題点に鑑みなされたものであり、植物材料の脱離や、植物材料からのアク溶出等が防止できるとともに、植物材料本来の質感が活かされ、自然な風合を表出することが可能な板状装飾材を得ることを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上記目的を達成するため鋭意検討を行った結果、基層中に植物材料が散在した状態で埋設された板状装飾材において、反応性官能基を有する結合材を含む基層形成用組成物によって基層を形成し、植物材料としては、当該基層の結合材と反応可能な撥水処理材で表面処理されたものを使用することに想到し、本発明を完成させるに到った。
【0007】
すなわち、本発明は以下の特徴を有するものである。
【0008】
1.基層中に植物材料が散在した状態で埋設されている板状装飾材であって、
前記基層は、反応性官能基を有する結合材を含む基層形成用組成物の乾燥物からなるものであり、
前記植物材料は撥水処理材によって表面処理されたものであり、当該撥水処理材には、前記基層形成用組成物の結合材における反応性官能基と反応可能な官能基を有する撥水成分が含まれていることを特徴とする板状装飾材。
【0009】
2.基層中に植物材料が散在した状態で埋設されている板状装飾材の製造方法であって、
シート基材に、反応性官能基を有する結合材を含む基層形成用組成物を塗付する第1工程、
前記基層形成用組成物の結合材における反応性官能基と反応可能な官能基を有する撥水成分を含む撥水処理材によって表面処理された植物材料を散在させる第2工程、を有することを特徴とする板状装飾材の製造方法。
【0010】
3.基層中に植物材料が散在した状態で埋設されている板状装飾材の製造方法であって、
撥水処理材で濡れた状態の植物材料を、型枠内の底面に散在させる第1工程、
反応性官能基を有する結合材を含む基層形成用組成物を、型枠内全体に塗付する第2工程、
型枠内の組成物を乾燥させた後、脱型する第3工程、を有し、
前記撥水処理材には、前記基層形成用組成物の結合材における反応性官能基と反応可能な官能基を有する撥水成分が含まれていることを特徴とする板状装飾材の製造方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、植物材料本来の質感が活かされ、自然な風合を表出することができる。しかも、植物材料の脱離や、植物材料からのアク溶出等を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明を実施するための最良の形態について説明する。
【0013】
本発明の板状装飾材は、撥水処理材で覆われた植物材料が、基層中に散在した状態で埋設されたものである。
このうち、基層は、基層形成用組成物の乾燥物からなるものであり、当該基層形成用組成物には、反応性官能基を有する結合材が必須成分として含まれる。このような結合材としては、有機質結合材が好適である。具体的には、例えば、酢酸ビニル樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、アクリルシリコン樹脂、フッ素樹脂等の有機質結合材が使用できる。これら有機質結合材としては、水可溶性及び/または水分散性の材料が好適である。
【0014】
基層形成用組成物における結合材は、後述の撥水処理材との相互作用により、植物材料の脱離防止や、植物材料からのアク溶出防止等に寄与するものである。本発明では、このような両成分の相互作用により、洗浄、結露等によって水等が繰り返し接触した場合であっても、上述の効果を安定して得ることができる。これら両成分の官能基の組み合わせとしては、例えば、カルボキシル基とカルボジイミド基、カルボキシル基とエポキシ基、カルボキシル基とアジリジン基、カルボキシル基とオキサゾリン基、水酸基とイソシアネート基、カルボニル基とヒドラジド基、エポキシ基とアミノ基、アルコキシシリル基どうし等が挙げられる。このうち、基層形成用組成物の結合材における反応性官能基としては、アミノ基、カルボキシル基、エポキシ基等が好適である。
【0015】
本発明における基層形成用組成物は、上記結合材以外の成分を含むものであってもよく、例えば、平均粒子径0.01〜1mmの有色骨材を含むことができる。このような有色骨材としては、自然石の粉砕物、陶磁器の粉砕物、及び着色骨材から選ばれる少なくとも一種以上が使用できる。このような有色骨材を必須成分とすることにより、植物材料の意匠性を活かしつつ、装飾材全体の美観性を高めることができる。有色骨材の色相は、無彩色、有彩色のいずれであってもよく、透明性を有するものであってもよい。具体的に、有色骨材としては、例えば大理石、御影石、蛇紋岩、花崗岩、蛍石、寒水石、長石、珪石、珪砂等の粉砕物、陶磁器粉砕物、セラミック粉砕物、ガラス粉砕物、ガラスビーズ、樹脂粉砕物、樹脂ビーズ、樹脂チップ、金属粒、木粉等や、それらの表面を着色コーティングしたもの等が挙げられる。
【0016】
基層形成用組成物における結合材と有色骨材の比率は、結合材の固形分100重量部に対し、有色骨材を100〜4000重量部(好ましくは300〜3000重量部、より好ましくは500〜2000重量部)とすることが望ましい。両成分の比率がこのような範囲内であれば、美観性向上の点で好適である。さらに、基層に通気性を付与することができ、植物材料が多孔質性を有する場合は、その多孔質性に基づく呼吸作用を活かすことが可能となる。また、基層の厚膜化(通常0.5〜8mm、好ましくは0.6〜4mm、より好ましくは0.8〜2mm)を図ることもできる。
【0017】
基層形成用組成物には、上述の成分の他に必要に応じ、例えば顔料、繊維、可塑剤、抗菌剤、光触媒、吸着剤、防黴剤、防虫剤、難燃剤、架橋剤、滑剤、造膜助剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、ブロッキング防止剤等が含まれていてもよい。
【0018】
本発明装飾材における植物材料としては、植物の花、葉、樹皮、茎、幹、枝、根等、あるいはこれらを所望の大きさに適宜粉砕加工したもの等を使用することができる。また、これら植物材料は、必要に応じ、乾燥処理、難燃処理、変色抑制処理等が施されたものであってもよい。但し、植物材料の自然感を十分に活かすには、無着色品を用いることが望ましい。
【0019】
具体的に、これらの原料となる植物としては、例えば、アシ、ラン、イグサ、イネ、ムギ、ケナフ、フキ、コウゾ等の草本類、マツ、スギ、ヒノキ、モミ、ケヤキ、ナラ、ラワン、ヒバ、キリ、ブナ、カシ、コルクガシ等の木本類等が挙げられる。この他、果物の皮や種子、海草、鋸屑、籾殻、花弁等を使用することもできる。植物材料の形状としては、例えば、球状、繊維状、板状、棒状、リン片状等が挙げられ、これらは目的とする意匠性等に応じ適宜選定すればよい。
【0020】
本発明において、植物材料は撥水処理材によって表面処理されたものであり、撥水処理材には、基層形成用組成物の結合材における反応性官能基と反応可能な官能基を有する撥水成分が含まれる。本発明では、この撥水成分と、基層形成用組成物における結合材との相互作用によって、前述の通り、植物材料の脱離防止や、植物材料からのアク溶出防止等において優れた効果を得ることができる。また、撥水処理材で表面処理された植物材料には、基層形成用組成物の結合材が浸入し難くなるため、植物材料本来の質感を活かすことが可能となる。
【0021】
このような撥水処理材は、反応性を有する撥水成分を1種以上含むものであればよい。撥水成分としては、例えば、パラフィンワックス、ポリエチレンワックス、アクリル・エチレン共重合体ワックス等のワックス系撥水剤;シリコーン樹脂、ポリジメチルシロキサン、アルキルアルコキシシラン等のシリコン系撥水剤;パーフロロアルキルカルボン酸塩、パーフロロアルキルリン酸エステル、パーフロロアルキルトリメチルアンモニウム塩等のフッ素系撥水剤等が挙げられる。撥水処理材には、本発明の効果が損われない範囲内で、必要に応じ有機質結合材、紫外線吸収剤等を混合することもできる。
【0022】
基層形成用組成物の結合材がエポキシ基を有する場合、撥水処理材中の撥水成分としてはアミノ基及び/またはカルボキシル基を有するものが使用でき、基層形成用組成物の結合材がカルボキシル基を有する場合は、撥水成分としてエポキシ基を有するものが使用できる。また、基層形成用組成物の結合材がアミノ基を有する場合は、撥水成分としてエポキシ基を有するものを使用することができる。この中でも特に、基層形成用組成物の結合材がエポキシ基を有するもの、撥水成分がアミノ基を有するものの組合せが好適である。
【0023】
撥水処理材による植物材料の表面処理は、少なくとも植物材料の表面が撥水処理材で覆われた状態であればよく、植物材料の内部にまで撥水処理材が浸透した状態であってもよい。
【0024】
植物材料には通常、多種多様な成分、例えば、各種糖類の他、タンニン、セサミン、パウロニン、ピノレジノール、ロイコアントシアニン、アクテオシド等の成分が含まれている。このような成分は、水分等との接触によってアクとして溶出し、装飾材の色調等に悪影響を及ぼすおそれがあるが、本発明では、これら成分の溶出を防止することができる。
また本発明では、植物材料として多孔質性を有する材料を用いた場合、その多孔質性に基づく吸水作用を活かすことが可能となる。このような多孔質な植物材料を用いた場合は、撥水処理が簡便であるという利点もある。
【0025】
本発明装飾材は、例えば以下の工程を含む方法で製造することができる。この方法によれば、目的とする装飾材を安定して製造することができ、効果発現の点でも好適である。
(1)第1工程:シート基材に、反応性官能基を有する結合材を含む基層形成用組成物を塗付する。
(2)第2工程:前記基層形成用組成物の結合材における反応性官能基と反応可能な官能基を有する撥水成分を含む撥水処理材によって表面処理された植物材料を基層中に散在させる。
【0026】
上記(1)において使用するシート基材としては、例えば、合成紙、ガラス繊維、ポリエステル繊維、ビニロン繊維等の繊維からなる繊維布又は不織布、セラミックペーパー、ガラスクロス、メッシュ等が挙げられる。また、基層形成用組成物を塗付する際には、例えばスプレー、ローラー、こて、レシプロ、コーター、流し込み等の手段を用いた方法を採用することができる。ここで、基層形成用組成物の粘度を3〜100Pa・s(好ましくは5〜80Pa・s)程度に設定しておけば、目的とする装飾材が容易に得られる。なお、ここに言う粘度は、BH型粘度計による20rpmにおける粘度であり、測定温度は23℃である。
【0027】
上記(2)では、基層形成用組成物の硬化前、植物材料が撥水処理材で濡れた状態であるうちに、植物材料を散在させることが望ましい。このような方法によれば、基層形成用組成物中の結合材と、撥水処理材中の撥水成分との相互作用がより確実なものとなり、本発明の効果がいっそう顕著となる。このような方法は、装飾材表面の仕上り性の点においても好適である。
【0028】
上記(2)において、植物材料の撥水処理材による表面処理方法としては、例えば、以下の方法で挙げられる。
(a)植物材料を散在させ、ついで撥水処理材を塗付する方法、
(b)撥水処理材を塗付し、ついで植物材料を散在させる方法、
(c)撥水処理材を塗付し、ついで植物材料を散在させ、再度撥水処理材を塗付する方法、
(d)撥水処理材に植物材料を浸漬させた後、これを取り出し散在させる方法、
(e)植物材料を分散させた撥水処理材を塗付する方法、
等が挙げられる。
【0029】
また、上記(2)第2工程の後、本発明の効果を阻害しない範囲内で植物材料を圧着することができる。圧着することで、植物材料と模様層をより強固に固定することができる。圧着方法としては、ローラー、こて、プレス機等を用いる方法が挙げられる。
【0030】
上記方法では、本発明の効果を阻害しない範囲内であれば、装飾性等を高める目的で、模様層形成用組成物塗付後に凹凸模様を形成させることができ、植物材料の圧着と同時に凹凸模様を形成させることもできる。また、模様層形成用組成物に平均粒子径1mm超の骨材を混合したり、このような骨材を植物材料とともに散布したりすることもできる。このような骨材としては、例えば前述の有色骨材と同材質のものの他、マイカ、貝殻片等が挙げられる。
【0031】
また、本発明装飾材は以下の工程を含む方法でも製造することができる。
(1´)第1工程:撥水処理材で濡れた状態の植物材料を、型枠内の底面に散在させる。
(2´)第2工程:反応性官能基を有する結合材を含む基層形成用組成物を、型枠内全体に塗付する。
(3´)第3工程:型枠内の組成物を乾燥させた後、脱型する。
【0032】
上記(1´)において使用する型枠としては、例えばシリコン樹脂製、ウレタン樹脂製、金属製等の型枠、あるいは離型紙を設けた型枠等が使用できる。上記方法では型枠側が装飾材表面となるため、型枠内側の形状を調整することで、装飾材表面に所望の凹凸模様を付与することもできる。植物材料を型枠内の底面に散在させる際には、公知または市販の散布機等を用いればよい。また、撥水処理材で濡れた状態にするときは、上記(a)〜(e)のいずれかの方法を適宜採用すればよい。
【0033】
上記(2´)において基層形成用組成物を塗付する際には、例えばスプレー、ローラー、こて、レシプロ、コーター、流し込み等の手段を用いた方法を採用することができる。ここで、基層形成用組成物の粘度を3〜100Pa・s(好ましくは5〜50Pa・s)程度に設定しておけば、目的とする装飾材が容易に得られる。なお、ここに言う粘度は、BH型粘度計による20rpmにおける粘度であり、測定温度は23℃である。
【0034】
上記(2´)では、植物材料が撥水処理材で濡れた状態であるうちに、基層形成用組成物を塗付することが望ましい。このような方法によれば、基層形成用組成物中の結合材と、撥水処理材中の撥水成分との相互作用がより確実なものとなり、本発明の効果がいっそう顕著となる。このような方法は、装飾材表面の仕上り性の点においても好適である。
【0035】
上記方法では、本発明の効果を阻害しない範囲内であれば、装飾性等を高める目的で、基層形成用組成物に平均粒子径1mm超の骨材を混合したり、このような骨材を植物材料とともに散布したりすることもできる。このような骨材としては、例えば前述の有色骨材と同材質のものの他、マイカ、貝殻片等が挙げられる。
また、基層形成用組成物の塗付後、何らかのペースト状組成物を重ねて塗付することもできる。
【0036】
上記(3´)において、型枠内の組成物を乾燥する際の雰囲気温度は、常温ないし高温で適宜設定することができる。高温下で乾燥を行う場合は、種々の加熱手段を採用することができる。
【0037】
装飾材の製造時には、本発明の効果を阻害しない限り、例えば、補強材(織布、不織布、セラミックペーパー、合成紙、ガラスクロス、メッシュ等)を積層することができる。その他、当業者の知識に基づき種々の変更を加えることもできる。
【0038】
本発明装飾材は、主に建築物の内装仕上げに適用できる。すなわち、流通時には板状成形体として取り扱い、これを建築物内装面の各部位に施工して内装仕上げを行うことができる。具体的には、住宅、マンション、学校、病院、店舗、事務所、工場、倉庫、食堂等における壁、間仕切り、扉、天井等に適用できる。このような部位を構成する基材としては、例えば、石膏ボード、合板、コンクリート、モルタル、タイル、繊維混入セメント板、セメント珪酸カルシウム板、スラグセメントパーライト板等が挙げられる。これら基材は、その表面に既存塗膜を有するものや、既に壁紙が貼り付けられたもの等であってもよい。本発明装飾材は、このような基材に対し、植物材料を有する面が室内側を向くようにして施工すればよい。
【0039】
本発明装飾材を施工する際には、接着剤、粘着剤、粘着テープ、釘、鋲等を用いて基材に貼着すればよい。その他、ピン、ファスナー、レール等を用いて固定化することもできる。また、本発明装飾材は、施工時に任意の形状に切断することも可能であり、切断面の小口処理等を適宜行うこともできる。
【実施例】
【0040】
以下に実施例を示し、本発明の特徴をより明確にする。
【0041】
(基層形成用組成物の製造)
・基層形成用組成物1
骨材100重量部、結合材A8重量部(固形分)、造膜助剤2重量部及び水25重量部を均一に攪拌・混合することにより、基層形成用組成物1を製造した。
【0042】
・基層形成用組成物2
骨材100重量部、結合材B8重量部(固形分)、造膜助剤2重量部及び水25重量部を均一に攪拌・混合することにより、基層形成用組成物2を製造した。
【0043】
なお、基層形成用組成物の製造においては、以下の原料を使用した。
・結合材A:カルボキシル基・エポキシ基含有アクリル樹脂エマルション(ガラス転移温度15℃、固形分50重量%)
・結合材B:カルボキシル基含有アクリル樹脂エマルション(ガラス転移温度15℃、固形分55重量%)
・骨材:着色珪砂(淡黄色、平均粒子径120μm)
・造膜助剤:2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールモノイソブチレート
【0044】
(撥水処理材の製造)
・撥水処理材1
撥水成分A30重量部(固形分)、結合材C20重量部(固形分)、造膜助剤6重量部、消泡剤0.5重量部、及び水60重量部を、均一に混合して撥水処理材1を製造した。この撥水処理材1の粘度は0.1Pa・sであった。
【0045】
・撥水処理材2
撥水成分B30重量部(固形分)、結合材C20重量部(固形分)、造膜助剤6重量部、消泡剤0.5重量部、及び水60重量部を、均一に混合して撥水処理材2を製造した。この撥水処理材2の粘度は0.1Pa・sであった。
【0046】
・撥水処理材3
撥水成分C30重量部(固形分)、結合材C20重量部(固形分)、造膜助剤6重量部、消泡剤0.5重量部、及び水60重量部を、均一に混合して撥水処理材3を製造した。この撥水処理材3の粘度は0.1Pa・sであった。
【0047】
なお、撥水処理材における原料としては下記に示すものを使用した。
・撥水成分A:シリコーンエマルション(アミノ基含有ジメチルポリシロキサン化合物の乳化物、固形分50重量%)
・撥水成分B:シリコーンエマルション(エポキシ基含有ジメチルポリシロキサン化合物の乳化物、固形分50重量%)
・撥水成分C:シリコーンエマルション(ジメチルポリシロキサン化合物の乳化物、固形分50重量%)
・結合材C:アクリル樹脂エマルション(ガラス転移温度25℃、固形分50重量%)
・造膜助剤:2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールモノイソブチレート
・消泡剤:鉱物油系消泡剤
【0048】
(実施例1)
シリコン樹脂製型枠(縦300mm×横300mm×深さ5mm)の内面に、散布機を用いて植物材料(長さ約5〜15mm、幅約2〜3mmの藁)を散在させ、撥水処理材1をスプレーにより塗付(塗付量150g/m)して表面処理を施した後、水希釈剤により粘度を10Pa・sに調製した基層形成用組成物1を直ちに流し込み、こてを用いて平滑にならした。23℃下で24時間乾燥後、脱型して装飾材を得た。この装飾材の厚みは約2mmであり、植物材料は自然な質感を保持していた。得られた装飾材につき以下の試験を実施した。結果を表1に示す。
【0049】
・試験1
装飾材の表面を上向きにして水平に静置し、スポイドを用いて、装飾材の中央付近に水を2cc滴下し、5分放置後、ウエスで装飾材表面を拭いた。このときの装飾材表面の状態を目視にて確認した。評価基準は、外観変化が認められなかったものを◎、外観に大きな変化が認められたものを×とする4段階(◎>○>△>×)とした。
【0050】
・試験2
装飾材の表面を上向きにして水平に静置し、スポイドを用いて、装飾材の中央付近に水を2cc滴下した後、直ちにウエスで装飾材表面を拭いた。この操作を計100回繰り返し行った。このときの装飾材表面の状態を目視にて、試験1と同様の評価基準で確認した。
【0051】
・試験3
装飾材の表面に感圧付着テープを貼り付け、指先でテープをこすった後、0.5〜1.0秒でテープを引きはがした。このときの装飾材表面の状態を目視にて確認した。評価基準は、異常が認められなかったものを○、明らかに植物材料の脱離が生じたものを×とする3段階(○>△>×)とした。
【0052】
(実施例2)
撥水処理材1に代えて撥水処理材2を使用し、基層形成用組成物1に代えて基層形成用組成物2(水希釈により粘度を12Pa・sに調製)を使用した以外は、実施例1と同様の方法で装飾材を製造し試験を行った。結果を表1に示す。実施例2の装飾材において、植物材料は自然な質感を保持しており、試験1〜3の結果も良好であった。
【0053】
(実施例3)
シリコン樹脂製型枠(縦300mm×横300mm×深さ5mm)の内面に、撥水処理材1をスプレーにより塗付(塗付量75g/m)した後、散布機を用いて植物材料(長さ約5〜15mm、幅約2〜3mmの藁)を散在させ、再度撥水処理材1をスプレーにより塗付(塗付量75g/m)することにより、植物材料に表面処理を施した。次いで、水希釈剤により粘度を10Pa・sに調製した基層形成用組成物1を直ちに流し込み、こてを用いて平滑にならした。23℃下で24時間乾燥後、脱型して装飾材を得た。この装飾材の厚みは約2mmであり、植物材料は自然な質感を保持していた。得られた装飾材につき実施例1と同様の方法で試験を実施した。結果を表1に示す。
【0054】
(実施例4)
撥水処理材1に植物材料(長さ約5〜15mm、幅約2〜3mmの藁)を浸した後、これを取り出し、シリコン樹脂製型枠(縦300mm×横300mm×深さ5mm)の内面に散在させた。次いで、水希釈剤により粘度を10Pa・sに調製した基層形成用組成物1を直ちに流し込み、こてを用いて平滑にならした。23℃下で24時間乾燥後、脱型して装飾材を得た。この装飾材の厚みは約2mmであり、植物材料は自然な質感を保持していた。得られた装飾材につき実施例1と同様の方法で試験を実施した。結果を表1に示す。
【0055】
(実施例5)
ガラス不織布(縦300mm×横300mm×厚さ0.3mm)上に、水希釈により粘度を10Pa・sに調製した基層形成用組成物1を塗付した後、散布機を用いて植物材料(長さ約5〜15mm、幅約2〜3mmの藁)を散在させ、撥水処理材1をスプレーにより塗付(塗付量150g/m)し表面処理を施した。23℃下で24時間乾燥し、装飾材を得た。この装飾材の厚みは、約2mmであり、植物材料は自然な質感を保持していた。得られた装飾材につき実施例1と同様の方法で試験を実施した。結果を表1に示す。
【0056】
(実施例6)
ガラス不織布(縦300mm×横300mm×厚さ0.3mm)上に、水希釈により粘度を10Pa・sに調製した基層形成用組成物1を塗付した後、撥水処理材1をスプレーにより塗付(塗付量300g/m)した後、散布機を用いて植物材料(長さ約5〜10mm、幅約0.5〜1mmの藁)を散在させ、表面処理を施した。23℃下で24時間乾燥し、装飾材を得た。この装飾材の厚みは、約2mmであり、植物材料は自然な質感を保持していた。得られた装飾材につき実施例1と同様の方法で試験を実施した。結果を表1に示す。
【0057】
(実施例7)
ガラス不織布(縦300mm×横300mm×厚さ0.3mm)上に、水希釈により粘度を10Pa・sに調製した基層形成用組成物1を塗付した後、撥水処理材1をスプレーにより塗付(塗付量75g/m)した後、散布機を用いて植物材料(長さ約5〜15mm、幅約2〜3mmの藁)を散在させ、再度撥水処理材1をスプレーにより塗付(塗付量75g/m)し表面処理を施した。
【0058】
(比較例1)
撥水処理材1に代えて撥水処理材3を使用した以外は、実施例1と同様の方法で装飾材を製造し試験を行った。結果を表2に示す。比較例1の装飾材において、植物材料は自然な質感を保持していたが、試験2では植物材料からのアク溶出による変色が認められた。また、試験3では、部分的に植物材料の脱離が認められた。
【0059】
(比較例2)
撥水処理材1に代えて撥水処理材3を使用し、基層形成用組成物1に代えて基層形成用組成物2を使用した以外は、実施例1と同様の方法で装飾材を製造し試験を行った。結果を表2に示す。比較例2の装飾材において、植物材料は自然な質感を保持していたが、試験2では植物材料からのアク溶出による変色が認められた。また、試験3では、部分的に植物材料の脱離が認められた。
【0060】
(比較例3)
撥水処理材による表面処理を省いた以外は、実施例1と同様の方法で装飾材を製造し試験を行った。結果を表2に示す。比較例3の装飾材では、植物材料の自然な質感が損われており、また試験1、試験2のいずれにおいても植物材料からのアク溶出による変色が認められた。試験3では、植物材料の脱離が認められた。
【0061】
(比較例4)
撥水処理材による表面処理を省いた以外は、実施例5と同様の方法で装飾材を製造し試験を行った。結果を表2に示す。比較例4の装飾材では、植物材料は自然な質感を保持していた。また試験1、試験2のいずれにおいても植物材料からのアク溶出による変色が認められた。試験3では、植物材料の脱離が認められた。
【0062】
【表1】

【0063】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
基層中に植物材料が散在した状態で埋設されている板状装飾材であって、
前記基層は、反応性官能基を有する結合材を含む基層形成用組成物の乾燥物からなるものであり、
前記植物材料は撥水処理材によって表面処理されたものであり、当該撥水処理材には、前記基層形成用組成物の結合材における反応性官能基と反応可能な官能基を有する撥水成分が含まれていることを特徴とする板状装飾材