説明

枕木

【課題】 寒冷地において、列車の底面に巻き上げた氷雪が付着して固まり状になって、列車の走行中に氷雪が離脱して飛来しても、線路上のレール間に配置されたレール駆動シャフトや信号用配線等の鉄道設置具に衝突するのを防ぐことができる枕木を提供することを目的とする。
【解決手段】 直方体形状の枕木本体1と、枕木本体1の上面に形成され、列車進行方向に登り勾配の傾斜面4を有する。傾斜面4には、複数の突部3が形成されている。そして、各突部3が、角錐状に形成されている。この枕木本体1は、線路上のレールの間に設置されたレール駆動シャフトや信号用配線よりも列車進行方向の後方に配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、線路上に敷設される枕木に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、寒冷地において線路上に敷設される枕木として、上枕木と下枕木に分離され、両者の間に電熱線を挟み込んで形成したものがあり、電熱線を通電して発熱させることで、枕木近傍の積雪を溶かして、列車の運行を支障なく行う枕木が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特許第3586299号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述の融雪用枕木によって、枕木近傍の積雪を溶かすことは可能であるが、寒冷地では、巻き上げた氷雪が走行する列車の底面に付着し、低温度により固まり状になることがある。その場合、列車が高速運転中にその氷雪が列車から離脱して、線路上のレール間に配置されたレール駆動シャフトや信号用配線に衝突して、それらを破壊することがあり、運行上大きな問題である。
【0005】
そこで、本発明は、寒冷地において、巻き上げた氷雪が列車の底面に付着して固まり状になって、列車の走行中に氷雪が離脱しても、レール間に配置されたレール駆動シャフトや信号用配線等に衝突するのを防ぐことができる枕木を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る枕木は、直方体形状の枕木本体と、該枕木本体の上面に形成され、列車進行方向に登り勾配の傾斜面を有し、該傾斜面には、複数の突部が形成されたものである。
そして、各上記突部が、角錐状に形成されている。あるいは、各上記突部が、でこぼこ状の不定形状に形成されている。
あるいは、本発明に係る枕木は、直方体形状の枕木本体と、該枕木本体の上面に形成され、列車進行方向に対し上り階段状に形成された傾斜面とを備えたものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、障害用膨張部を枕木本体の上に形成することにより、寒冷地において、列車の底面に、巻き上げた氷雪が固まり状に付着した場合に、列車が高速運転中に、その氷雪が、枕木間に設置されたレール駆動シャフトや信号用配線(以下、レール駆動シャフト等、という。)に衝突する前に、それらの(列車進行方向の)後方で粉砕させてガード(防護)できる。よって、固体状の氷雪が、レール駆動シャフト等に直接衝突するのを防ぐことができて、安全に運行を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は本発明に係る枕木の実施の一形態を示すものである。この枕木は、横長略直方体状の枕木本体1を備える。枕木本体1は、例えば、ガラス長繊維で補強された硬質ウレタン樹脂発泡体で、比重が0.74程度で強度が大きなものが好ましいが、コンクリート製であっても、または金属製や木製のものであってもよい。枕木本体1の横長寸法Lは、例えば、2600mmに形成され、(列車進行方向の)前後方向寸法Dは、略240mmに形成される。
また、線路上には、隣り合う枕木の間に、レール駆動シャフトや信号用配線等が設置されている。
【0009】
また、本発明の枕木は、列車進行方向に登り勾配の傾斜面4を有し列車の底面に付着した氷雪を取り除くための障害用膨張部2が形成されている。具体的には、膨張部2は、直角三角柱形状を有し、その斜面が列車進行方向に登り勾配の傾斜面4となるように、枕木本体1の上面の中央に配設され、接着剤等で固着したり、釘等で打ちつけて固定する。
【0010】
そして、膨張部2は、頂辺部12の高さ寸法Tが30mmから130mmの範囲となるように形成される。30mm未満であると、走行中の列車から離脱した氷雪が膨張部2の上面を滑って、氷雪の衝撃力が直に枕木本体1の表面に加わってしまい、枕木を損傷させる虞がある。また、氷雪が水平方向に近い角度で膨張部2に飛来した場合、氷雪が膨張部2上を滑って、列車の底面に再び戻ってしまい、底面を損傷させる虞もある。また、130mmを超えると、膨張部2の頂辺部がレールよりも高く形成されてしまい、列車の車両間に設置してあるモータや、列車の底面の配管に接触する虞がある。
なお、膨張部2は、真比重が1.2〜1.8(好ましくは略1.5)の枕木本体の研削粉とウレタン樹脂とを含んだ材質を有する。研削粉とウレタン樹脂の含有比率は特には限られないが、例えば、枕木本体の研削粉を70%と、ウレタン樹脂を30%含んだものとする。
【0011】
具体的な寸法の一例を述べると、膨張部2の横幅寸法Pを略1000mmに形成し、また、膨張部2の頂辺部12の高さ寸法Tは、120mmに形成するとよい。
【0012】
さらに、枕木の膨張部2の傾斜面4には、飛来してくる氷雪を受け止めつつ衝撃を分散させる複数の突部3が形成されている。図1の枕木の各突部3は、四角錐形状を有し、複数の突部3が、障壁部の傾斜面4に、縦横に均等に配列されている。この突部3は鋭い頂点部を有するので、飛来してくる氷雪を効率よく粉砕することができる。なお、突部3は、三角錐形状や五角錐形状等の複数角錐形状や、円錐形状であってもよい。
【0013】
突部3の材質について、例えば、膨張部2と同じように、固体充填材を含むウレタン樹脂から成る素材で形成されてもよく、この場合、枕木本体1の研削粉を含むウレタン樹脂接着剤で膨張部2に接着される。あるいは、突部3は、表面に防食加工した鉄等の金属から形成してもよく、この場合は、ねじ釘等で、膨張部2に固定される。また、突部3は、鉄道用バラスト(石つぶて)をポリエステル樹脂とチョップガラスを混合した樹脂で形成してもよい。さらには、固体充填材を多く含んだ熱硬化性樹脂成型体や金属製や石を埋め込んだものもよい。このように、突部3は、圧縮や衝撃に対して弱い材料から形成されると、氷雪を砕く性能や耐久性に劣り、望ましくない。
【0014】
なお、突部3の数量については、10〜40個程度となるように(図例では24個)すればよい。少ないと、氷雪が膨張部2の突部3以外の傾斜面4に衝突する可能性があるので効率よく粉砕することが出来ない。また、多すぎると、各突部3が小さくなってしまい、効率よく粉砕できない虞がある。また、突部3は平面視縦横方向に整然と形成され、氷雪がどの部位に衝突しても均等に砕くことができる。
【0015】
図2は、本発明の枕木の第2の実施の形態を示し、図1の枕木との相違点は、突部3が、不定形のでこぼこ状の石つぶて(砂利)から形成されている点である。この突部3の先端形状は鋭利状のものでも、あるいは、丸みを帯びた形状のものでもよい。
図3は、本発明の枕木の第3の実施の形態を示し、図1の枕木との相違点は、膨張部2の上面には、突部3に換えて、横長の複数の三角柱形状の小壁部が階段状となるように形成されている点である。飛来した氷雪が、各小壁部の(進行方向の)後ろ面に衝突して、効率よく粉砕される。
【0016】
図4は、本発明の枕木の第4の実施の形態を示し、直方体形状の枕木本体1の上面には、列車進行方向に対し上り階段状に形成された傾斜面5が形成されている。この枕木によっても、飛来した氷雪が、階段状の傾斜面5の後ろ側の衝突壁面6に衝突するので、氷雪は効率よく粉砕される。
【0017】
そして、枕木本体1に膨張部2を形成した枕木の設置位置について説明すると、レール駆動シャフト等の(進行方向における)後方とは、レール駆動シャフト等に隣接する直ぐ後方を指したり、あるいは、レール駆動シャフト等から後方に数本空けた枕木を指す。あるいは、レール駆動シャフト等の後方の数本の枕木の全てを、膨張部2を有する枕木としてもよい。
【0018】
作用について説明すると、冬季では、列車の底面に氷雪が巻き上げて固まり状に付着する場合がある。列車は、この氷雪が列車の底面から下方に突出した状態で、走行する。そして、列車の高速走行中に、氷雪が、膨張部2の突部3に衝突して、レール駆動シャフト等に到達する前に粉砕される。よって、レール駆動シャフト等が氷雪により破壊されることがない。
【0019】
また、単線の線路の場合、列車が一方向のみでなく他方向にも走行する。この場合、膨張部2を有する枕木を、レール駆動シャフト等に対して進行方向における前後両側に設ければよい。これにより、列車がどっちの方向に走行しても、氷雪は、膨張部2に衝突して除去される。
【0020】
なお、上述したように、図例の枕木では、膨張部2は、枕木本体1の左右方向の中央に形成されているが、線路上にレール駆動シャフト等が敷設されている位置に合わせてずらして形成してもよい。あるいは、膨張部2を、枕木本体1の左右方向の全長にわたる範囲に形成してもよい(図示省略)。同様に、図4においても、傾斜面5が、左右方向のどちらかに片寄って形成されたり、あるいは、枕木本体1の左右方向の全長にわたる範囲に形成されてもよい。
【0021】
以上のように、本発明に係る枕木は、直方体形状の枕木本体1と、枕木本体1の上面に形成され、列車進行方向に登り勾配の傾斜面4を有し、傾斜面4には、複数の突部3が形成されたものなので、寒冷地において、列車の底面に巻き上げた氷雪が固まり状に付着しても、走行する列車に付着した氷雪を、氷雪膨張部2で粉砕させることができる。よって、レール駆動シャフトや信号用配線に衝突する前に、それらの(列車進行方向の)後方でガードすることができ、衝突による故障を防ぐことができる。また、氷雪膨張部2には、複数の突部3が形成されており、氷雪が突部3に衝突して粉砕させることができるので、レール駆動シャフト等が破壊するのを確実に防ぐことが出来る。
【0022】
また、各突部3が、角錐状に形成されたものなので、衝突してきた氷雪を細かく粉砕することができるため、氷雪がレール駆動シャフト等に衝突するのを確実に防ぐことができる。
【0023】
また、各突部3が、でこぼこ状の不定形状に形成されたものなので、衝突してきた氷雪を細かく粉砕することができるため、氷雪がレール駆動シャフト等に衝突するのを確実に防ぐことができる。
【0024】
また、本発明に係る枕木は、直方体形状の枕木本体1と、枕木本体1の上面に形成され、列車進行方向に対し上り階段状に形成された傾斜面5とを備えたものなので、寒冷地において、列車の底面に巻き上げた氷雪が固まり状に付着しても、走行する列車に付着した氷雪を、氷雪膨張部5の頂辺部で粉砕させることができる。よって、レール駆動シャフトや信号用配線に衝突する前に、それらの(列車進行方向の)後方でガードすることができ、衝突による故障を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明に係る枕木の第1の実施の形態を示す斜視図である。
【図2】本発明に係る枕木の第2の実施の形態を示す斜視図である。
【図3】本発明に係る枕木の第3の実施の形態を示す斜視図である。
【図4】本発明に係る枕木の第4の実施の形態を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0026】
1 枕木本体
2 膨張部
3 突部
4 傾斜面
5 膨張部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
直方体形状の枕木本体と、該枕木本体の上面に形成され、列車進行方向に登り勾配の傾斜面を有し、該傾斜面には、複数の突部が形成されたことを特徴とする枕木。
【請求項2】
各上記突部が、角錐状に形成された請求項1記載の枕木。
【請求項3】
各上記突部が、でこぼこ状の不定形状に形成された請求項1記載の枕木。
【請求項4】
直方体形状の枕木本体と、該枕木本体の上面に形成され、列車進行方向に対し上り階段状に形成された傾斜面とを備えたことを特徴とする枕木。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−41254(P2009−41254A)
【公開日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−206906(P2007−206906)
【出願日】平成19年8月8日(2007.8.8)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】