説明

【課題】 快適な睡眠を取るために、フィット感及び通気性に優れ、且つ睡眠時に首部を的確にサポートする枕を提供する。
【解決手段】 小さな粒子7を充填した高伸縮性の生地からなる内袋4を、硬質で空孔状の合成樹脂からなる平板状芯材5の上面に載置するとともに、高伸縮性の生地からなる外袋2で前記内袋及び平板状芯材5を内包し、前記平板状芯材5の上面中央部には、睡眠時に後頭部が嵌り込む後頭載置部5aを設け、且つ該後頭載置部の容積に対応する粒子7の量も含めて前記内袋に粒子7を充填してなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、快適な睡眠を取るために、フィット感及び通気性に優れ、且つ睡眠時に首部を的確にサポートする枕に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、睡眠時のイビキ対策や疲労回復を目的として、快適な睡眠を得るための環境を確保すべく、通気性に優れた枕又は素材や形状などのフィット感に優れた枕を選択する風潮が高まっている。特に、睡眠中の首部のサポートに関しては、枕の高さが低いと頚椎が伸び、逆に高いと頚椎が圧迫されてイビキ等の睡眠障害又は頭痛や肩凝り等の症状を引き起こす原因になるため、各自の頚椎の形状にあった枕を選択することは非常に重要である。しかしながら、従来提供されている枕の形状以上に人の体格や首部の形状は多様であるため、自分の頚椎の形状にあった枕を見つけるのは非常に困難である。そんな中、多数のパウダー枕やビーズ枕が市販されており、また、以下のような枕が提供されている。
【0003】
例えば、発泡粒子をツーウェイトリコット生地で包んでなる内袋と、該内袋を収納する外袋とを備え、該外袋の裏面の一部とその表面の一部とを接続するこのよって、各内袋の収納されるべき場所が使用者の身長方向に区分されている安眠まくらが提供されている。この安眠まくらによれば、睡眠時に内袋内の発泡粒子が左右に流動して頭部全体を包むようにフィットするので、各人の体型にかかわらず快適な寝姿を実現することができる(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−344586号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、市販のパウダー枕やビーズ枕、特許文献1に記載の安眠まくらでは、頭部を包み込むようにフィットすることで、各人の体型に対応した寝姿を実現することができるものの、これら枕の後頭部に接する部分が頭部の重みにより押圧されて、発泡粒子が過剰に左右に流れてしまい、該後頭部に接するこれら枕の該当箇所が硬化してしまう。そのため、これら枕が頭部の形状にフィットしたとしても、後頭部に接する部分が硬化しているので不快である。
【0006】
また、発泡粒子が充填された内袋及び外袋のみで構成される該安眠まくらは、通気性が悪いために熱がこもって蒸れてしまい、特に夏場などは暑くて、快適な睡眠などとても期待できるものではない。
【0007】
さらに、上記したように、頭部の重みに押圧されて発泡粒子が左右に移動してしまうと、安眠まくらの首部と接する面が下がりすぎて首部が伸びてしまい、負担が掛かってイビキ等の睡眠障害又は頭痛や肩凝り等の症状を引き起こす可能性もある。
【0008】
そこで、本発明は、快適な睡眠を取るために、フィット感及び通気性に優れ、且つ睡眠時に首部を的確にサポートする枕を提供することを課題とした。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明は次のように構成した。すなわち、本発明に係る請求項1に記載の発明は、小さな粒子を充填した高伸縮性の生地からなる内袋を、硬質で空孔状の合成樹脂からなる平板状芯材の上面に載置するとともに、高伸縮性の生地からなる外袋で前記内袋及び平板状芯材を内包し、前記平板状芯材の上面中央部には、睡眠時に後頭部が嵌り込む後頭載置部を設け、且つ該後頭載置部の容積に対応する粒子の量も含めて前記内袋に粒子を充填することを特徴としている。
【0010】
また、請求項2に記載の発明は、前記請求項1に記載の枕であって、前記内袋が、睡眠時、身長方向に対して直交する方向に複数に分割してなることを特徴としている。
【0011】
また、請求項3に記載の発明は、前記請求項1又は2のいずれかに記載の枕であって、前記外袋が、その底面の生地が無伸縮又は難伸縮であることを特徴とすることを特徴としている。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る請求項1に記載の枕によれば、平板状芯材の後頭載置部に対応する内袋の中央部分に他部よりも多くの粒子が満たされているため、高伸縮性の生地と頭部の押圧により粒子が左右へと流動して、睡眠時に後頭部にフィット感を得ることができるとともに、該後頭載置部に嵌り込んでいる内袋からは、該後頭載置部の周側面が壁となって粒子の流動を阻害するので、内袋の後頭部接触面に充填された多数の粒子が頭部の押圧によって硬化することを防止し、寝心地が悪くなることもない。
【0013】
また、空孔性に優れたウレタンフォームなどの合成樹脂からなる平板状芯材を枕の下部に設けることにより、通気性を確保し、夏場でも蒸れることなく快適に枕を使用して睡眠することができる。
【0014】
さらに、平板状芯材に設けられた後頭載置部の断面凹状の両端とその上面に載置された内袋により、睡眠時の首部をサポートする。すなわち、平板状芯材の上面に粒子を充填した内袋を載置したことにより、内袋が首部のフィット感に貢献するとともに、平板状芯材が首部の押圧による内袋の過度な下がりを防止するため、枕の表面が睡眠時の頚椎の曲線に沿った形状となり、頚椎を伸ばしたり圧迫したりすることなく的確に首部をサポートすることができる。
【0015】
また、請求項2に記載の枕によれば、内袋を分割したことにより、各区域内でのみに粒子の流動する範囲が限定されるので、頭部の押圧によって枕の表面が下がることを防止し、且つ押圧による枕の表面の硬化を防止することができる。
【0016】
また、請求項3に記載の枕によれば、外袋の底面の生地を無伸縮又は難伸縮にしたことにより、睡眠時に、頭部の重みのために底面の生地がズレ上がってくるのを防止することができる。すなわち、本件枕に頭部を載置した際、頭部の重みによって底面の生地がズレ上がってしまうと枕全体が撓るため、内袋に充填された粒子が圧迫されて枕の表面が硬化し、睡眠時に不快感を与えてしまうが、外袋底面の生地を伸縮困難か伸縮しない生地で構成すれば、生地のズレ上がりを抑制することができるので、枕表面の硬化を防止し、フィット感に優れた枕を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明に係る枕を示す斜視図である。
【図2】該枕の内袋及び平板状芯材を示す斜視図である。
【図3】該平板状芯材を示す斜視図である。
【図4】該内袋及び平板状芯材を示す断面図である。
【図5】該内袋及び平板状芯材の使用状態を示す断面図である。
【図6】該枕の使用状態を示す斜視図である。
【図7】他の実施例の平板状芯材を示す斜視図である。
【図8】他の実施例の枕を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面に基づいて本発明を具体的に説明する。
【0019】
まず、図1は、本発明に係る枕1を示す斜視図である。外袋2は、高伸縮のツーウェイ生地で縫製され、短手方向のどちらか一方の側面にファスナー3やホックなどの係止具が設けられて、該ファスナー3の開閉により、以下の図2で説明する内袋4及び平板状芯材5の出し入れをする袋状に形成される。一般に、ツーウェイ生地は、二方向又は四方八方へとソフトに伸縮し、生地が柔らかで肌触りが良いので、本発明に係る枕の素材として最適であるが、布製やプラスチックシート製など柔軟なものであれば素材は問わない。ただ、この外袋2の底面は、難伸縮或いは無伸縮の生地で縫製されており、枕1の側面下端で上側面の高伸縮性の生地と縫合されている。なお、図示はしないが、外袋2の内面でファスナー3の開口部両端には、外袋2と下記の内袋4とを接続するための紐が設けてある。
【0020】
この外袋2に内包される内袋4及び平板状芯材5は、図2に示す通り、平板状芯材5の上面に内袋4を載置した状態で、外袋2に内包される。外袋2と同様に、内袋4は、高伸縮のツーウェイ生地で縫製されるが、布製やプラスチック製など柔軟なものであれば素材は問わない。内袋4の四隅には紐6が設けられ、外袋2への収納後に、上記した外袋に設けた紐と接続することにより、外袋2と内袋4とをズレないように結合する。なお、紐6以外にもホック、クリップ又はピンなどで外袋2及び内袋4を結合してもよい。
【0021】
また、平板状芯材5は、ウレタンフォームやEVAなどの発泡合成樹脂で形成され、三次元の編目構造を構成することにより、空孔性を高めて通気性の良さを確保する。また、該平板状芯材5には、図3に示すように、上面の中央部に睡眠時に後頭部が嵌り込む程度の大きさで陥没した後頭載置部5aが形成されている。内袋4は、この後頭載置部5aの睡眠時身長方向の両端部で三分割に縫製され、身長方向と直交する方向に縫い付けることにより、図2に示した三区域の内袋4が形成される。この後頭載置部5aには、粒子7を充填した内袋4が嵌り込むが、その様子を以下の図4に示した断面図を用いて説明する。
【0022】
図4は、図2で示したA−A断面図である。内袋4には、小さな粒子7が充填されている。該粒子7は、発泡スチロール製で、径0.5mm〜0.7mmの球形ビーズであり、高伸縮性のツーウェイ生地で縫製された内袋4内に満たされている。また、平板状芯材5の後頭載置部5aの前後方向の幅に対応して三分割された中央の内袋4には、陥没した後頭載置部5aの容積に対応する粒子7の量も含めて前記内袋に粒子7が充填されている。よって、平板状芯材5に後頭載置部5aを設けたからといって、平板状芯材5に載置した内袋4の中央部分が陥没するものではない。なお、小さな粒子7は、発泡スチロールに素材を限定するものではなく、角や尖端のない球状の小さな粒体であればよく、例えば、微細な砂や炭の粉などであってもよい。
【0023】
図5は、枕1の使用状態を示す断面図である。上記のような枕1を使用して睡眠すると、平板状芯材5の後頭載置部5aに対応する内袋4の中央部分には他部よりも多くの粒子7が満たされているため、ツーウェイ生地の高伸縮性により小さな粒子7が左右へと流動し、睡眠時に後頭部にフィット感を得ることができるとともに、該後頭載置部に嵌り込んでいる内袋4からは、後頭載置部の周側面が壁となって粒子7の流動を阻害するので、内袋4の後頭部接触面の硬化を防止し、寝心地が悪くなることもない。
【0024】
また、空孔性に優れたウレタンフォームなどの合成樹脂からなる平板状芯材5を枕1の下部に設けることにより、通気性を確保し、夏場でも蒸れることなく快適に枕1を使用して睡眠することができる。
【0025】
さらに、平板状芯材5の陥没した後頭載置部5aの断面凹状の両端とその上面に載置された内袋4により、睡眠時の首部を的確にサポートする。すなわち、平板状芯材5の上面に粒子7を充填した内袋4を載置したことにより、内袋4が首部のフィット感に貢献するとともに、平板状芯材5が首部の押圧による枕1の過度な下がりを防止するために、枕1の表面が睡眠時の頚椎の曲線に沿った形状となり、的確に首部をサポートすることができる。
【0026】
図6は、枕1の使用状態を示す斜視図である。睡眠時、枕1に頭部を載せると、中央の粒子7が左右に流れてしまうものの、中央近傍の粒子は他部に比べて多いため、枕1のクッション性が損なわれることはない。また、平板状芯材5が空孔性に優れた合成樹脂で形成されることにより、平板状芯材5は通気性にも優れている。また、このように内袋4を三分割したことにより、該分割された区域内でしか粒子7が移動しないので、枕1に頭部を載置しても粒子7が移動しにくくなり、その結果、枕1の硬化を防止して快適に睡眠をとることができる。
【0027】
上記実施例の枕1では、平板状芯材5の上面に後頭載置部5aのみを設けたが、図7で示すような突起部8を設けてもよい。これにより、枕1の前後を入れ替えれば、首部に対応する部分の高さ調整をすることができる。
【0028】
また、上記実施例の枕1では、外袋2及び内袋4をそれぞれ設けたが、外袋2と内袋4を一体的に上下2層の袋を形成し、その上部に小さな粒子7を充填し、且つその下部に平板状芯材5を挿入できるような構成にしてもよい。
【0029】
また、上記実施例の枕1では、内袋4を睡眠時身長方向と直交する方向に三分割して構成したが、分割せず一体的に構成してもよく、また二分割或いは四分割等、複数分割して構成してもよい。但し、上記実施例の枕1のように、内袋4を複数の袋に分割した方が、粒子7の流動する範囲が限定されるので、頭部の押圧による枕1表面の下がりを防止でき、且つ押圧による枕1の表面の硬化を防止することができる。
【0030】
また、上記実施例の枕1において、図8に示すように、平板状芯材5の上面に後頭載置部5aを設けずに、首部に接触する上面端部に突起部8を設けてもよい。このように構成しても、上記実施例の枕1が断面凹状の端部によって首部を的確にサポートしたように、突起部8が首部を的確にサポートすることができるとともに、突起部8と平板状芯材5の上面との段差が上記実施例の後頭載置部5aの周側面と同様に粒子7の移動を阻害するために、頭部の押圧によって粒子7を内包した内袋4が硬化することなく快適に睡眠を摂ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0031】
上記実施例で示した枕1の他にも、上記平板状芯材5の上面で陥没した後頭載置部5aに臀部が嵌り込むように構成したクッション等としても使用することができる。
【符号の説明】
【0032】
1 枕
2 外袋
3 ファスナー
4 内袋
5 平板状芯材
5a 後頭載置部
6 紐
7 粒子
8 突起部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
小さな粒子を充填する高伸縮性の生地からなる内袋を、空孔状の合成樹脂からなる平板状芯材の上面に載置するとともに、高伸縮性の生地からなる外袋で前記内袋及び平板状芯材を内包し、前記平板状芯材の上面中央部には、睡眠時に後頭部が嵌り込む後頭載置部を設け、且つ該後頭載置部の容積に対応する粒子の量も含めて前記内袋に粒子を充填してなることを特徴とする枕。
【請求項2】
前記内袋は、睡眠時、身長方向に対して直交する方向に複数に分割してなることを特徴とする請求項1に記載の枕。
【請求項3】
前記外袋は、その底面の生地が無伸縮又は難伸縮であることを特徴とする請求項1又は2のいずれかに記載の枕。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−207405(P2010−207405A)
【公開日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−56902(P2009−56902)
【出願日】平成21年3月10日(2009.3.10)
【出願人】(502059984)株式会社 一歩 (15)
【Fターム(参考)】