説明

枚葉輪転印刷機における排紙装置

【課題】 排紙されるシート状物の中だれを防止するための構造を簡素化し、製造コストの低減を図る。
【解決手段】 5個の吸引車10Aないし10Eのうち、両端の吸引車10A,10Eを支持部材に取り付けたままとし、残りの吸引車を取り外す。吸引車を取り外した支持部材には、3個のエア吹き箱80Aないし80Cを取り付ける。これらエア吹き箱80Aないし80Cには、搬送される紙の幅方向外側にエアを吐出する複数の吐出口87A,87Bと、上方にエアを吐出する多数のノズル88とが設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紙積台の紙搬送方向上流側に設けられ、シート状物としての枚葉紙(以下、単に紙という)の搬送速度を減速させる吸引装置を備えた枚葉輪転印刷機における排出装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の枚葉輪転印刷機では、印刷ユニットで印刷された紙が、圧胴の爪から排紙チェーンの爪にくわえ替えられて搬送され、搬送終端部で爪によるくわえが解放されて落下して紙積台上に積載される。排紙チェーンによって搬送される紙は、先端が爪でくわえられているだけであるから、紙尻がばたついたりあるいは紙が解放されて落下するときに紙の走行に伴う慣性で積載時に紙端が揃わないことがある。これを防止するために、紙積台の紙搬送方向上流側であって搬送される紙の下方側に、紙を摺接させながら吸引する吸引面を有し、紙の搬送速度よりも遅い周速度で回転する複数個の吸引車を紙の幅方向に並設し、爪のくわえ状態から解放された紙の走行速度を減速させることが行われている。紙の両面を印刷する場合、前記吸引車が紙の裏面に印刷された絵柄内に位置付けられると、吸引車の吸引面によって紙に印刷された画線部を傷付けてしまい印刷の品質が低下するので、印刷されていない非画線部に吸引車を位置付ける必要がある。
【0003】
しかしながら、紙の幅方向両端部分以外に非画線部が無かったり本数が少ない場合は吸引車の個数が制限されるため、吸引車間において紙の中央部がたるむ、いわゆる中だれが発生する。この中だれが発生すると、紙の両端部が吸引車から外れてしまうために、紙の搬送速度を充分に減速させることができずに紙がばたつき、積載時に紙端の紙揃いが悪かったり、吸引車のブラケットに接触して印刷面に傷が付くといった問題があった。
【0004】
これを解決するものとして、搬送される紙の幅方向に複数設けられた吸引車と、紙の下方であって紙の幅方向中央を挟んで両側に少なくとも一対設けられ、搬送される紙を上方に吹き上げるエアを吐出するノズルとを備えたものがある。この装置においては、ノズルからのエア吐出方向を紙の幅方向の外側に指向させることにより、紙はノズルから吐出されたエアによって形成されるエア層により下方側にたるむ中だれが矯正され、紙の両端部が吸引車から外れるようなことがない(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2000−95409号公報(段落「0005」、図1ないし図4)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した従来の枚葉輪転印刷機における排出装置においては、紙の中だれを防止するために、吸引車の他に予めノズルを設けた構造としている。このため、部品点数が増加するというだけではなく、吸引車に吸引エアを連通するためのホースの他に、ノズルに吐出エアを供給するためのホースも必要となるため、構造が複雑になり製造コストも嵩むという問題があった。
【0006】
本発明は上記した従来の問題に鑑みなされたものであり、その目的とするところは、排紙されるシート状物の中だれを防止するための構造を簡素化し、製造コストの低減を図った枚葉輪転印刷機における排出装置を提供するところにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的を達成するために、請求項1に係る発明は、紙積台のシート状物搬送方向の上流側であって搬送されるシート状物の下方側に設けられ、前記シート状物を摺接させながら吸引する吸引面を有しシート状物の幅方向に複数設けた吸引手段を備えた枚葉輪転印刷機における排紙装置において、前記両端部に位置する吸引手段以外の吸引手段と、搬送されるシート状物の幅方向外側にエアを吐出する吐出手段とのいずれか一方を選択的に支持部材に設け、前記支持部材に前記吸引手段が設けられたときは前記吸引手段に吸引エアが連通され、前記支持部材に前記吐出手段が設けられたときは前記吐出手段に吐出エアが連通される。
【0008】
請求項2に係る発明は、請求項1に係る発明において、前記両端部に位置する吸引手段以外の吸引手段の前記支持部材に対する取付構造と、前記吐出手段の前記支持部材に対する取付構造とが同一である。
【0009】
請求項3に係る発明は、請求項1に係る発明において、前記吸引手段に吸引エアを連通する吸気源と、前記吐出手段に吐出エアを連通するエア供給源と、前記吸気源から前記吸引手段に吸引エアを連通する、または前記エア供給源から前記吐出手段に吐出エアを連通するように切り替える切替手段とを備えたものである。
【0010】
請求項4に係る発明は、請求項1に係る発明において、前記吐出手段が搬送されるシート状物の中央部から外側方向にエアを吐出する。
【0011】
請求項5に係る発明は、請求項1に係る発明において、前記吸引手段を吸引車とする。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に係る発明によれば、吸引手段と吐出手段とを選択的に支持部材に取り付けられるようにしたことにより、予め吸引手段の他に吐出手段を備えておく必要がないから構造を簡素化できる。
【0013】
請求項2に係る発明によれば、吸引手段の取付け構造と吐出手段の取付け構造とを2種類必要としないから構造の簡素化と部品点数の削減とを図ることができる。
【0014】
請求項3に係る発明によれば、吸引手段と吐出手段とへのエアの連通を共通の配管で行うことができるため、構造の簡素化と製造コストの低減を図ることができる。
【0015】
請求項4に係る発明によれば、より確実に中だれを防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態を図に基づいて説明する。図1は本発明に係る枚葉輪転印刷機の排紙装置の概略を示す側面図、図2は同じく要部を示す平面図、図3は同じく要部を示す正面図、図4は図2におけるIV-IV 線断面図、図5は図2におけるV 矢視図、図6は図5におけるVI-VI 線断面図、図7はエア吹き箱の外観を示す斜視図、図8はエア吹き箱を支持部材に取り付けた状態を示す断面図、図9は本発明に係る枚葉輪転印刷機の排紙装置にエア吹き箱を取り付けた状態を示し、同図(A)は要部の平面図、同図(B)は要部の正面図、図10は同じくエアの連通の切り替えを説明するためのモデル図である。
【0017】
図1において、全体を符号1で示す枚葉輪転印刷機の排紙装置は、左右一対の排紙フレーム2が備えられており、各排紙フレーム2には、スプロケット3がそれぞれ軸支されており、これらのスプロケット3と、図示しない印刷ユニット側のスプロケットとの間には左右一対の排紙チェーン4が張架されている。左右の排紙チェーン4間に一定間隔をおいて支架された各爪竿には、図に模式化して示す爪と爪台とからなる複数組のくわえ爪装置5(以下、爪5という)が並設されており、印刷後、爪5にくわえられて排紙チェーン3の走行により搬送されてくる紙6は、スプロケット3の紙搬送方向上流側において爪5のくわえから解放されて落下するように構成されている。
【0018】
7は4本の昇降チェーン8によって4隅を吊下された紙積台であって、図示を省略したモータの正逆回転により昇降し、この紙積台7上には、フォークリフトの爪等を挿入できる孔を有する偏平な長方体状のパレット9が載置される。10は紙積台7の紙搬送方向上流側(矢印B方向)であって、搬送される紙6の下方側に設けられた吸引車としての吸引手段であって、図3に示すように、搬送される紙6の幅方向(矢印C−D方向)、すなわち紙6の搬送方向(矢印A−B方向)と直交する方向に5個(10Aないし10E)並設されている。11は落下する紙6の前端を当接させて揃える紙当てである。
【0019】
図2において、13A,13Bは左右のサブフレームであって、これらサブフレーム13A,13B間には、2本のステー14,15が横架されている。16はサブフレーム13A,13B間に回転自在に支持された駆動軸であって、図示を省略したモータによって回転する。17A,17Bはねじ軸であって、右側のサブフレーム13Bと、ステー14,15間に取り付けられた支持ステー18とに回転自在に支持され、かつ軸線方向への移動が規制された状態で左側のサブフレーム13A方向に延設されている。これらねじ軸17A,17Bの右側のサブフレーム13Bから突出した部位を手動により、正逆方向に回転操作することによって、吸引手段10A,10B,10D,10Eおよび後述する吐出手段80A,80Cが矢印C−D方向に移動する。
【0020】
19は左右のサブフレーム13A,13B間に回転自在に支持された回転軸であって、図示を省略したモータで正逆方向に回転させることによって、両端部に軸着させたピニオン20,20と図示を省略したラックとを介して、サブフレーム13A,13Bが排紙フレーム2,2に対して矢印A−B方向に移動する。21は紙積台9に落下する紙6の後端を当接させて揃える紙当てであって、多数のエア抜き孔21aが設けられており、矢印C−D方向に延在するようにステー14に取り付けられている。
【0021】
図3において、22は紙積台7の上昇限を検知する検知片であって、一端部が小軸23を揺動中心としてステー14に支持されたブロック22aに揺動自在に支持されている。この検知片22に上昇してきた紙積台7のパレット9が当接することにより、検知片22がこれを検知して紙積台7の上昇を停止させ、パレット9によって吸引手段10等が突き上げられるようなことがない。
【0022】
次に、図4ないし図6を用いて、吸引手段10Aないし10Eと、これら吸引手段10Aないし10Eが取り付けられる支持部材25Aないし25Eについて説明する。これら5個の吸引手段10Aないし10Eおよび支持部材25Aないし25Eは、基本的な構造はいずれも同一であるため、ここでは吸引手段10Eおよび支持部材25Eについてのみ説明し、必要に応じて他の吸引手段10Aないし10Dおよび支持部材25Aないし25Dについても説明する。
【0023】
図4において、25Eは偏平なブロック状に形成された支持部材であって、ステー14,15によって搬送される紙6の幅方向(矢印C−D方向)に移動自在に支持されており、傾斜した上面である取付面27にはねじ孔28が螺設されている。26Eは吸引手段10Eが設けられ、偏平なブロック状に形成された被支持部材であって、上下に貫通する挿通孔29が設けられている。この被支持部材26は、下面30を支持部材25Eの取付面27に対接させ、挿通孔29を挿通させたボルト31をねじ孔28に螺合させることによって、支持部材25に取り付けられる。
【0024】
支持部材25Eには、図6に示すように、大径の貫通孔32と2つの小径の貫通孔33,33(一方の貫通孔33は図示せず)が設けられており、貫通孔32は駆動軸16の外径よりも大きく形成されており、内周部にベアリング34が設けられている。35は駆動軸16に嵌挿されたスリーブであって、支持部材25Eの貫通孔32にベアリング34を介して回転自在に支持されており、止めねじ36を締めることより駆動軸16と一体的に回転する。37は駆動ギアであって、駆動軸16に嵌合させたリング状の摺動部材38Aとスリーブ35の一方の端面との間に挟持され、ボルトによってスリーブ35の一方の端面に取り付けられている。
【0025】
40は止めねじによってスリーブ35の他方の端部に取り付けられた抜け止め部材であって、スリーブ35に形成された段部42とで支持部材25Eを挟むことにより、支持部材25Eが矢印C−D方向に移動するときにスリーブ35も一体的に移動するように構成されている。抜け止め部材40の外面には、駆動軸36に嵌合させた摺動部材38Bが取り付けられている。
【0026】
42は略円筒状に形成された移動子であって、内周部に設けたねじ部42aがねじ軸17Bに螺合し、支持部材25Eの貫通孔33に嵌合している。この移動子42は一端部に軸着したリング部材43と段部42bとによって支持部材25Eを挟んでおり、この移動子42の矢印C−D方向の移動にともなって、支持部材25Eも矢印C−D方向に一体的に移動する。図5に示すように、他方のねじ軸17Aには、移動子42と同じ機能を有する移動子44が設けられており、ねじ軸17A,17Bを回転操作することにより、これら移動子42,44を介して支持部材25Eが矢印C−D方向に一体的に移動する。図4において、45は支持部材25Eの上面と側面間を貫通するエア通路であって、上端開口部45aと下端開口部45bとが設けられており、下端開口部45bにはホース継手46が取り付けられている。
【0027】
図6において、50は被支持部材26に植設された軸であって、この軸50にはベアリング51を介して大径プーリ52が回転自在に支持され、軸50の先端部にはベアリング53を介してギア54が回転自在に支持されている。ギア54は大径プーリ52の端面にボルトによって取り付けられており、ワッシャー55を介して軸50の端面に螺合したボルト56によって大径プーリ52とギア54との軸50からの抜けが規制されている。
【0028】
図5において、60,61は被支持部材26の上部に植設された軸であって、各軸60,61にはベアリングを介して小径プーリ62,63が回転自在に支持されており、これら小径プーリ62,63は、図6に示すように抜け止め部材64,65によって軸60,61からの抜けが規制されている。これら小径プーリ62および小径プーリ63ならびに上記した大径プーリ52の間には、周面に多数の吸引口66aを有する吸引ベルト66が張架されている。
【0029】
小径プーリ62と小径プーリ63との間には、図5に示すように吸引ベルト66に対向するようにエアダクト67が設けられており、このエアダクト67は吸引ベルト66に対向する上方が開口するように断面コ字状に形成されている。このエアダクト67には、後述する吸気源101から吸引エアが連通されることにより、吸引ベルト66のエアダクト67に対向する部位66bが、搬送される紙6を摺接させながら吸引する吸引面を形成する。68はエアダクト67の下方に設けられ被支持部材26を上下に貫通するエア通路であって、上端開口部68aがエアダクト67の底部に設けた連通孔67aに連通されており、被支持部材26の下面30に下端開口部68bが設けられている。
【0030】
上述したように、被支持部材26Eの下面30を支持部材25Eの取付面27に対接させ、挿通孔29を挿通させたボルト31をねじ孔28に螺合させ、被支持部材26Eを支持部材25Eに取り付けることにより、図4に示すようにエア通路45の上端開口部45aとエア通路68の下端開口部68bとが対接し、エア通路45とエア通路68とが連通される。同時に、支持部材25Eの駆動ギア37と被支持部材26Eのギア54とが噛合する。
【0031】
図5において、70は上記した排紙チェーン4の下方に設けられ、爪5にくわえられて搬送される紙6を案内するベルトであって、従動ローラ71と図示を省略した駆動ローラおよびテンションローラとの間に張架されており、排紙チェーン4の走行速度と同じ速度で走行する。
【0032】
次に、図7および図8を用いて、吐出手段としてのエア吹き箱80Aないし80Cについて説明する。これら3個のエア吹き箱80Aないし80Cは、基本的な構造は同一であるため、ここでは、エア吹き箱80Cについてのみ説明し、必要に応じて適宜他のエア吹き箱80A,80Bについて説明する。エア吹き箱80Cは、図7に示すように、断面が台形状に形成された基台81と、この基台81上に取り付けられた中空体82とによって構成されており、この中空体82は細長く形成され中空部83が設けられている。基台81には、上端が中空体82の中空部83に連通し、下端に下端開口部84aを有するエア通路84と、上記したボルト31が挿通される挿通孔85とが設けられている。この基台81は、下面86を上記した支持部材25Eの取付面27に対接させ、挿通孔85に挿通させたボルト31を支持部材25Eのねじ孔28に螺合させることにより、支持部材25E上に取り付けられる。
【0033】
中空体82の上面部には、搬送される紙6の幅方向外側(矢印D方向)にエアを吹き付ける5個のエア吹き口87Bと、エアを上方に吐出する多数の小径の吐出口88が設けられており、前面部には一対のねじ孔89,89が設けられている。図8において、90は案内部材であって、薄板によって断面が円弧状に形成されており、一端部が折り曲げ形成され、この折曲部90aが中空体82のねじ孔89に螺合させるボルト91によって、中空体82の前面部に取り付けられる。中空体82に取り付けられたこの案内部材90の下端は紙当て21を指向している。
【0034】
エア吹き箱80B,80Cが上述したエア吹き箱80Aと異なる点は、エア吹き口87から吐出されるエアの向きにある。すなわち、エア吹き箱80Aに設けられた5個のエア吹き口87Aは、図9(A)に示すように、いずれも矢印C方向を指向している。エア吹き箱80Bには、4個のエア吹き口87A,87Bが設けられており、このうち、左側の2個のエア吹き口87A,87Aは矢印C方向を指向し、右側の2個のエア吹き口87B,87Bは矢印D方向を指向している。
【0035】
図10に全体を符号100Aないし100Eで示すものは、各支持部材25Aないし25Eに吐出エアまたは吸引エアを連通する5個のエア供給装置である。101は各支持部材25Aないし25Eを介して上記した吸引手段10Aないし10Eに吸引エアを共通で連通する1個の吸気源である。102は各支持部材25Aないし25Eを介して上記したエア吹き箱80Aないし80Cに吐出エアを共通で連通する1個のエア供給源である。103は切替手段であって、吸気源101にホース104を介して接続されたエア吸い通路105と、エア供給源102にホース106を介して接続されたエア吹き通路107と、共通のホース108を介して上記したホース継手46に接続されたエア供給通路109とを備えている。
【0036】
110は切替バルブであって、断面半月状に形成された切欠き110aを備えており、この切欠き110aは図中二点鎖線で示す位置において、エア吸い通路105とエア供給通路109とを連通させ、この位置から略90°回動させた実線で示す位置においてエア吹き通路107とエア供給通路109とを連通させる。111はくの字状に形成されたレバーであって、装置固定部に植設された軸112を揺動中心として中央部が揺動自在に支持されている。このレバー111の一端部には操作レバー113が取り付けられており、他端部には連結バー114の一端部が枢着されている。115は切替バルブ110に植設された切替レバーであって、先端部が連結バー114の他端部に枢着されている。
【0037】
次に、このように構成された枚葉輪転印刷機の排紙装置における排紙動作について説明する。先ず、5個の吸引手段10Aないし10Eによって排紙される紙の搬送速度を減速する場合を説明する。この場合は、全ての吸引手段10Aないし10Eの各支持部材25Aないし25Eの取付面27に、図4に示すように、被支持部材26をボルト31によって取り付ける。この状態で、全てのエア供給装置100Aないし100Eの各操作レバー113を、図10に二点鎖線で示すように反時計方向に回動操作することにより、エア吸い通路105とエア供給通路109とを連通させる。したがって、全ての吸引手段10Aないし10Eの各支持部材25Aないし25Eのエア通路45に吸引エアが連通されるから、このエア通路45と連通する各被支持部材26Aないし26Eの各エア通路68に吸引エアが連通される。各エア通路68に連通された吸引エアはエアダクト67に連通されるため、エアダクト67に対向する吸引ベルト66の吸引面66bに搬送される紙6が吸引される状態になる。
【0038】
図示を省略したモータを駆動し駆動軸16を回転させると、図6において支持部材25Aないし25Eのスリーブ35が回転し、この回転にともない駆動ギア37が一体的に回転するので、これと噛合する被支持部材26Aないし26Eのギア54が回転する。したがって、大径プーリ52が一体的に回転するため、この大径プーリ52と小径プーリ62,63間に張架されている吸引ベルト66が矢印A方向に紙6の搬送速度よりもやや遅い速度で走行する。また、ベルト70が図示を省略したモータの駆動によって、矢印A方向に排紙チェーン4の走行速度を略同じ速度で走行する。
【0039】
したがって、排紙装置1の搬送終端部で爪5によるくわえが解放されて落下する紙6は、紙尻が5個の吸引ベルト67の吸引面67bに吸引され摺接することにより、走行速度が減速され紙積台7のパレット9上に積載される。
【0040】
次に、この排紙装置を片面刷りから両面刷りに使用する場合で、かつ非画線部の本数が限られ紙6の幅方向中央部に非画線部が設けられていない場合や設けられていても非画線部の幅が狭い場合は、搬送される紙6の幅方向中央部に位置する吸引手段10B,10C,10Dを設けることができず、その替わりにエア吹き箱80A,80B,80Cを設ける場合を説明する。この場合は、先ず、被支持部材26B,26C,26Dを支持部材25B,25C,25Dに取り付けているボルト31の螺合を解除し、支持部材25B,25C,25Dから被支持部材26B,26C,26Dといっしょに吸引手段10B,10C,10Dを取り外す。次いで、支持部材25B,25C,25Dのそれぞれにエア吹き箱80A,80B,80Cをボルト31によって取り付ける。
【0041】
この状態で、エア供給装置100A,100Eの各操作レバー113を、図10に二点鎖線で示すように反時計方向に回動操作することにより、エア吸い通路105とエア供給通路109とを連通させる。したがって、吸引手段10A,10Eに吸引エアが連通されるから、各吸引手段10A,10Eの吸引ベルト66に吸引エアが連通される。同時に、エア供給装置100B,100C,100Dの各操作レバー113を、図10に実線で示すように時計方向に回動操作することにより、エア吹き通路107とエア供給通路109とを連通させる。
【0042】
したがって、支持部材25B,25C,25Dの各エア通路45に吐出エアが連通されるから、このエア通路45と連通する各エア吹き箱80A,80B,80Cの各エア通路84に吐出エアが連通される。各エア通路84に連通された吐出エアは、各エア吹き箱80A,80B,80Cの各エア吹き口87,87A,87Bおよび各吐出口88から吐出される。図示を省略したモータを駆動し駆動軸16を回転させると、支持部材25A,25Eに取り付けられている吸引手段10A,10Eの吸引ベルト66が矢印A方向に紙6の搬送速度よりもやや遅い速度で走行する。
【0043】
この状態で、排紙動作を行うと、排紙装置1の搬送終端部で爪5によるくわえが解放されて落下する紙6の下方には、3個のエア吹き箱80A,80B,80Cのエア吹き口87A,87Bから吐出されるエアによって、紙6の幅方向外側に流れるエア層が形成される。このエア層によって、紙6はエア吹き箱80A,80B,80Cからわずかに浮き上がった状態に保持されて搬送され、紙6の中だれを規制することができるから、紙6の両端部が吸引手段10A,10Eの吸引ベルト66,66から外れるようなことがない。このため、紙6の搬送速度を充分に減速することができるから、紙6がばたつくことがなく、積載時に紙端の紙揃いが悪かったり、吸引車のブラケットに接触して印刷面に傷が付くというようなことがない。
【0044】
また、エア吹き箱80A,80B,80Cに吐出口88を設け、この吐出口88から搬送される紙6側、すなわち上方にエアを吐出しているため、このエアによって紙6を浮き上がせるようにしていることにより、紙6の中だれを確実に防止することができる。吸引手段10A,10Eに吸引されて搬送速度が減速された紙6の後端部は、案内部材90によって紙当て21に案内されるため、紙6が円滑かつ確実にパレット9上に積載される。
【0045】
このように、吸引手段10Bないし10Dとエア吹き箱80Aないし80Cとを選択的に支持部材25Bないし25Dに取り付けられるようにしたことにより、予め吸引手段の他に吐出手段を備えておく必要がないから構造を簡素化できる。また、吸引手段10Bないし10Dの支持部材25Bないし25Dに対する取付構造と、吐出手段80Aないし80Cの支持部材25Bないし25Dに対する取付構造とを、共に支持部材のねじ孔28に螺合させるボルト31によって行うというように同じ取付構造としている。このため、取付構造を2種類必要としないから構造の簡素化と部品点数の削減とを図ることができる。また、吸気源101とエア供給源102からの吸引手段10と吐出手段80とへのエアの連通を切り替える切替手段103を設けたことにより、共通のホース108によって吸引手段10と吐出手段80とへのエアを連通することができるため、構造の簡素化と製造コストの低減を図ることができる。
【0046】
なお、本実施の形態においては、吐出手段80Aないし80Cを3個とした例を説明したが、中央は吸引手段とし、左右一対を吐出手段としてもよい。また、搬送される紙6の幅方向における吐出手段80と吸引手段10との間隔は、紙6のサイズに合わせて調節してもよく、エア吹き箱82Aないし82Cの長手方向の寸法も紙のサイズに合わせて変更してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明に係る枚葉輪転印刷機の排紙装置の概略を示す側面図である。
【図2】本発明に係る枚葉輪転印刷機の排紙装置の概略を示す平面図である。
【図3】本発明に係る枚葉輪転印刷機の排紙装置の要部を示す正面図である。
【図4】図2におけるIV-IV 線断面図である。
【図5】図2におけるV 矢視図である。
【図6】図5におけるVI-VI 線断面図である。
【図7】本発明に係る枚葉輪転印刷機の排紙装置において、エア吹き箱の外観を示す斜視図である。
【図8】本発明に係る枚葉輪転印刷機の排紙装置において、エア吹き箱を支持部材に取り付けた状態を示す断面図である。
【図9】本発明に係る枚葉輪転印刷機の排紙装置にエア吹き箱を取り付けた状態を示し、同図(A)は要部の平面図、同図(B)は要部の正面図である。
【図10】本発明に係る枚葉輪転印刷機の排紙装置において、エアの連通の切り替えを説明するためのモデル図である。
【符号の説明】
【0048】
1…枚葉輪転印刷機の排紙装置、6…枚葉紙、10,10Aないし10E…吸引手段、25Aないし25E…支持部材、26Aないし26E…被支持部材、27…取付面、28…ねじ孔、29,85…挿通孔、31…ボルト、66…吸引ベルト、66b…吸引面、80Aないし80C…エア吹き箱(吐出手段)、81…基台、82Aないし82C…中空体、87A,87B…エア吹き口、88…吐出口、90…案内部材、100…エア供給手段、101…吸気源、102…エア供給源、103…切替手段、108…共通のホース。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙積台のシート状物搬送方向の上流側であって搬送されるシート状物の下方側に設けられ、前記シート状物を摺接させながら吸引する吸引面を有しシート状物の幅方向に複数設けた吸引手段を備えた枚葉輪転印刷機における排紙装置において、
前記両端部に位置する吸引手段以外の吸引手段と、搬送されるシート状物の幅方向外側にエアを吐出する吐出手段とのいずれか一方を選択的に支持部材に設け、
前記支持部材に前記吸引手段が設けられたときは前記吸引手段に吸引エアが連通され、前記支持部材に前記吐出手段が設けられたときは前記吐出手段に吐出エアが連通されることを特徴とする枚葉輪転印刷機における排紙装置。
【請求項2】
請求項1記載の枚葉輪転印刷機における排紙装置において、
前記両端部に位置する吸引手段以外の吸引手段の前記支持部材に対する取付構造と、前記吐出手段の前記支持部材に対する取付構造とが同一であることを特徴とする枚葉輪転印刷機における排紙装置。
【請求項3】
請求項1記載の枚葉輪転印刷機における排紙装置において、
前記吸引手段に吸引エアを連通する吸気源と、
前記吐出手段に吐出エアを連通するエア供給源と、
前記吸気源から前記吸引手段に吸引エアを連通する、または前記エア供給源から前記吐出手段に吐出エアを連通するように切り替える切替手段とを備えたことを特徴とする枚葉輪転印刷機における排紙装置。
【請求項4】
請求項1記載の枚葉輪転印刷機における排紙装置において、
前記吐出手段が搬送されるシート状物の中央部から外側方向にエアを吐出することを特徴とする枚葉輪転印刷機における排紙装置。
【請求項5】
請求項1記載の枚葉輪転印刷機における排紙装置において、
前記吸引手段を吸引車としたことを特徴とする枚葉輪転印刷機における排紙装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2007−70075(P2007−70075A)
【公開日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−260355(P2005−260355)
【出願日】平成17年9月8日(2005.9.8)
【出願人】(000184735)株式会社小森コーポレーション (403)
【Fターム(参考)】