説明

果実収穫用エンドエフェクタ

【課題】本発明は、複雑な障害物の多い立体空間で、目標物を認識する機能を持ち、塾度の高い果実のみを選択して収穫することのできるロボットの果実収穫用エンドエフェクタを提供する。
【解決手段】左右旋回・上下移動・上下旋回・エンドエフェクタ(手首)6の左右振り・手首の回転の6つの自由度を有するマニピュレータ3と三次元視覚センサ4と、中央演算処理装置7と、を備えると共に前記マニピュレータ3に腕5を伸縮自在に設け、該腕5の先端部に、果実を収穫するため取り込むU字型金具11及びシュート12と果実の小果梗(W2)を押さえる小果梗押さえ14と該小果梗押さえ4を開閉駆動する第3の駆動手段M3と前記U字型金具11等を捻る第2の駆動手段M2と、前記二つの駆動手段やU字型金具11等を左右に振る第1の駆動手段M1とを備えた収穫用エンドエフェクタを設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、果実収穫用ロボットのエンドエフェクタ、特にミニトマトを自動的に収穫するミニトマト収穫用ロボットのハンド部分に相当する果実収穫用エンドエフェクタに関する。
【背景技術】
【0002】
ミニトマトのような果実(果菜類)の生産作業は、目で見て判断しながら人手によって行うものが多く機械化が伸展していない。農林水産省の平成18年産品目別経営統計によると、施設栽培大玉トマトの場合、10a当たり労働時間は933時間で、そのうち収穫作業に298時間(全労働時間の32.0%)を要している。ミニトマトの場合、10a当たり労働時間は1451時間であり、1戸当たり27.5aの作付面積で労働時間は3992時間に達している。ミニトマトは粒数が多いため、労働時間のうち収穫作業の占める割合は37.7%と一番多い。房ごと収穫する房取りが行われることもあるが、ミニトマトは果房の上部から順に赤熟し、下部まで赤塾する頃には上部が裂果することが多く、多くは1個ずつ収穫されている。
【0003】
トマト収穫の機械化は、一斉収穫される加工用トマトでは開発が進み、米国などで普及しているが、生食用トマトの収穫は人手に頼っている。このため1982年頃からトマト収穫ロボットの研究が行われているが、実用化には至っていない。果実(果菜類)収穫の場合、作目や栽培様式よっては、茎葉や支柱が障害になって収穫しにくいことや、果実が茎葉に隠れて見えないこともある。このため近年では、ロボット化に適した作目や栽培様式の果実を対象とした研究や、三次元視覚センサの画像を処理して障害物を認識し、避けて収穫する研究、障害物に隠れた果実は別の視点から走査して収穫する研究が行われている。トマト等の収穫に用いられている三次元視覚センサは、近赤外と赤色のレーザビームを走査する2波長式であり、本発明でもこの2波長三次元視覚センサを使用するが、詳細は発明を実施するための最良の形態の欄で後述する。
【0004】
従来の果実収穫装置の例として、上部に収穫取入口が開口される果実収納空間を備える果実捕捉部を設け、前記収納空間から延びる果梗を所定位置に支持する果梗支持部材を、前記果実取入口側に突出する支持作用位置と前記果実取入口から離れる側に引退する退避位置とに亘って切換自在に、前記果実捕捉部に設け、収穫対象果実を前記果実収納空間内に取り入れるように前記果実捕捉部を誘導する果実捕捉誘導手段、取入れられた果実の果梗を支持すべく前記果梗支持部材を支持作用位置側に操作する果梗爺部材操作手段をそれぞれ設けた果実収穫装置が知られている(特許文献1)。この文献では図8に示すように、収穫対象果実Mのある方向を確認する操作手段としてのテレビカメラ27を、第3アーム7cの上端部に、光軸がアーム伸縮方向と平行な状態で取付け、このカメラ27の撮像を写し出すモニター28を設け、モニター28に写し出される果実のうちの収穫対象Mに対して選択するライトペン29を設け、果実捕捉部Gが収穫対象果実Mに対して設定距離以内に接近したことを検出する赤外近接センサ30を、第3アーム7cの上端部に設け、そして、果実選択情報、近接センサ30からの検出情報、アーム駆動用モータm1、m2や旋回台5の回転情報、及び、あらかじめ記憶された制御情報に基づいて作動指令を出力する制御装置Cを設けた構成となっている。
【0005】
また、ロボットハンドの誘導のための構成の簡素化を図るべく軽量化と、果実を傷つけず所定位置の果梗を切断するカッタの軽量化を図ったものとして、アームの先端に連設した果実取入用筒状ケースに、突出動作に伴って果梗を所定位置に押圧支持する果梗押圧部材を出退駆動自在に設けると共に、長手方向に相対移動されて切断作用する一対の円弧帯板状刃体を重ね合わせてなる果梗切断用カッタを、前記所定位置の果梗に対する切断位置に突出動作させるべく出退揺動自在に前記ケース側に設けた果実収穫用ロボットハンドであって、前記一対の刃体のそれぞれを、長手方向視にて湾曲する形状に形成してある果実収穫用ロボットハンドが知られている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特公平04−11162号
【特許文献2】実開昭61−80627号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来から研究が行われているトマト収穫ロボットでは、果実をもぎ取るときに萼(ヘタ)がとれることが多かった。生食用トマトは、萼を付けたまま収穫する必要があり、この萼付きで収穫することが課題であった。本出願に係る発明者は、図23(A)、図23(B)に示すようなロボットハンドを用いてトマト収穫用ロボットハンドの研究を重ねて来た。このロボットハンドは、マニピュレータ23先端部の下部にモータm1を取り付けて、このマニピュレータ23より先端部に設けたU字型金具21及び該U字型金具21に取り付けたシュート22や果実収納容器25や小果梗押さえ24等がこのモータm1により、手を左右に大きく回転(左右振り)できるようにしてある。更に、モータm2は、前記U字型金具21及び該U字型金具21に取り付けたシュート22や果実収納容器25や小果梗押さえ24等を果実方向の軸回りに回転(手首回転)できるようにしてある。また、モータm3は、リンク機構を利用して果実をU字型金具21の中に入れ、小果梗押さえ24で取り込み、小果梗をU字型金具21で引っ掛けてちぎって萼付きで収穫できるようにしてある。取り込んだ果実はU字型金具21の下部に設けたシュート22に入れ、果実収納容器25に入れて収穫するように構成してある。
【0008】
しかし図23に示すロボットハンドの構造は複雑で、やや大型であるため、茎葉等の障害物の間の狭い空間では使用しにくく、特定の吊り下げ移動栽培施設では使用可能であるが、果実農家のハウスで使用するとエンドエフェクタが茎等を傷つける結果となる。また、マニュピレータのエンドエフェクタとしては、複雑な形状で繊細な作物を扱うこと、すなわち、立体的に存在する茎葉の間にある果実を扱ったり、柔らかい苗などを傷付けずに扱う必要がある。対象物を認識する機能を持つこと、すなわち、人間が対象物を見て判断しながらきめ細かく行っている作業をロボットにより代替させるためには、対象物の形状、位置、塾度などを認識して、行動決定できる能力が必要で画像処理によって認識する場合、照明条件が変化する温室や野外でも対応できるようにしなければならない。一般に移動ロボットであること、すなわち、作物の間を移動して無人作業を行うためには不整地走行性、安全性、自動走行機能をもつ移動部等の移動機構を要する。その他季節に応じて農作業を行えること等も必要である。
【0009】
本発明は上記する課題に対処するためになされたものであり、複雑な障害物の多い立体空間で、目標物を認識する機能を持ち、塾度の高い果実のみを選択して収穫することのできるロボットの果実収穫用エンドエフェクタを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1に記載の発明は、走行部と、左右旋回・上下移動・上下旋回・エンドエフェクタ(手首)(6)の左右振り・手首の回転の6つの自由度を有するマニピュレータ(3)と、三次元視覚センサ(4)と、中央演算処理装置(7)と、を備えると共に前記マニピュレータ(3)に腕(5)を設けて伸縮自在として、先端部で果実を取り込むようにしたロボットの収穫用エンドエフェクタにおいて、前記マニピュレータ(3)の腕(5)の先端部に、果実を収穫するため取り込むU字型金具(11)及びシュート(12)と、前記U字型金具(11)に取り込んだ果実の小果梗(W2)を押さえる小果梗押さえ(14)と、該小果梗押さえ(14)をリンク機構でU字型金具(11)の口部を開閉駆動する第3の駆動手段(M3)と、前記U字型金具(11)とシュート(12)を捻る(手首の左右回転)第2の駆動手段(M2)と、前記二つの駆動手段(M3、M2)とU字型金具(11)とシュート(12)を左右に振る(手首の左右振り)第1の駆動手段(M1)と、を備えてなることを特徴としている。
【0011】
請求項2に記載の発明は、前記第1の駆動手段(M1)と前記第2の駆動手段(M2)との間には、前記U字型金具(11)と小果梗押さえ(14)と第2の駆動手段(M2)とを左右に振る動力伝達機構が設けられていることを特徴としている。
【0012】
請求項3に記載の発明は、エンドエフェクタの収穫経路は、三次元視覚センサ(4)の受光画像の主茎、葉、未熟果実、果梗、小果梗等の三次元画素数と、U字型金具に当たる位置にある果梗と経路上にある他の赤未熟果実の画素数をカウントして決定するようにしたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0013】
果実収穫用エンドエフェクタを上記手段とすれば、複雑な立体空間に位置している塾度の高い果実のみを収穫し、且つ複雑な立体空間における茎葉や支柱或いは未熟な果実を避け効率良く果実を収穫することができる。このため、従来特に作業時間の多いミニトマトの収穫の作業時間を大幅に短縮することができる。また、収穫作業時間を短縮すると作付面積を増やすことが可能となるので経済的効果も大きい。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の果実収穫用エンドエフェクタの組み込まれたロボットの全体側面図である。
【図2】本発明のエンドエェクタの使用されるロボットの側面図である。
【図3】本発明のエンドエェクタの使用されるロボットの背面図である。
【図4】本発明のエンドエェクタの使用されるロボットの前から見た正面図である。
【図5】本発明のエンドエェクタの三次元センサの光学系の構成を示す図である。
【図6】本発明のエンドエェクタの光学系で、対象花軸にレーザビームを照射してから反射光を結像しパソコン画像処理するフローチャートを示す。
【図7】本発明のエンドエェクタで使用される2波長式三次元視覚センサの信号の流れを示すフローチャートである。
【図8】本発明のエンドエェクタで使用される2波長三次元視覚センサにより測定したミニトマトの分光反射特性を示すグラフである。
【図9】近赤外画像であって、近赤外レーザ反射光の強度を示す図である。
【図10】赤色画像であって、赤色レーザ反射光の強度を示す図である。
【図11】ガルバノメータで測定した果実の位置までの距離画像を示す図である。
【図12】赤色画像と近赤外画像を画素ごとに比較して領域を区分した図である。
【図13】さらに画像処理を行い、各果実の中心、果梗、茎葉等に分けた図である。
【図14】本発明の果実収穫用エンドエフェクタの構成を示す側面図である。
【図15】小果梗押さえでU字型金具内に取り込んだ果実の小果梗を切った状態の果実収穫用エンドエフェクタの図である。
【図16】図16(A)は、本発明の果実収穫用エンドエフェクタの構成を示す平面図であり、図16(B)は、一部の拡大平面図である。
【図17】図17(A)は、左傾斜の姿勢を示す図であり、図17(B)はエンドエフェクタを真っ直ぐにして収穫する姿勢を示す図であり、図17(C)は、エンドエフェクタを90°左に振って右から収穫する姿勢を示す図であり、図17(D)は、エンドエフェクタを左に110°振るとともに、45°傾斜させて収穫する姿勢を示す図である。
【図18】果実を収穫する場合の上記図17(A)〜(D)の各傾斜の関係を示す図である。
【図19】三次元視覚センサの画像処理によりエンドエフェクタが果実を収穫しに行く場合の経路を選択するまでのフローチャートである。
【図20】U字型金具11に取り込んだ果実の小果梗をU字型金具との間で小果梗押さえで押さえ、引いて離層で離脱させ収穫する場合する場合を示す図である。
【図21】U字型金具を小果梗押さえに押し付けて小果梗に曲げを加えて離層で離脱させる場合を示す図である。
【図22】U字型金具と小果梗押さえとの間に小果梗が曲げを加えられた状態で押さえられ、この状態で曲げを加えて離層で離脱させる。
【図23】従来の萼付きで収穫するためのロボットハンド先端部の構成を示す図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
図1は本発明の果実収穫用エンドエフェクタの組み込まれたロボット1の全体側面図である。このロボット1はレールR上を走行可能としてある。トマトWは株間45cm間隔で定植され、45°の傾斜をつけて麻紐で誘引されている中玉トマトWを対象とした。図2は前記ロボット1の側面図であり、図3は前記ロボット1の背面図であり、図4はロボット1の前から見た正面図である。
前記ロボット1はレールRを走行する車輪X、Xや補助輪Y、Yを取り付けた台座2に、肩や腰に相当するマニピュレータ3と目に相当する三次元視覚センサ4と伸縮自在な腕5の手に相当するエンドエフェクタ6等を備えた前半部1Aと、コンピュータ(中央演算処理装置:CPU)7やテレビモニター8を電源ドラム9及び駆動機構10を設置した後半部1Bと、から構成されている。なお、エンドエフェクタ6は、マニピュレータ3の腕5の先端に取り付けてある。
【0016】
マニピュレータ3は、腕5が伸縮するほか左右旋回・上下移動・上下旋回・エンドエフェクタ(手首)の左右振り・手首の回転の6つの自由度を有する。このうち、マニピュレータ3の左右旋回、上下移動、上下旋回、腕の伸縮の動作は100WのACサーボモータを用い、エンドエフェクタ(手首)の左右振りには4.5WのDCサーボモータを用いた。また、手首の回転にはプロポ用サーボモータを用いてある。本発明のエンドエフェクタ6の果実への接近、後退は、マニピュレータ3の腕5の伸縮による。
【0017】
三次元視覚センサ4は図3や図4に示すようにマニピュレータ3に取り付け、マニピュレータ3の左右旋回、上下移動、上下旋回を利用して三次元視覚センサ4の位置を変え、2種類の位置で走査できるようにしてある。この三次元視覚センサ4は、2波長三次元視覚センサであるが、その特徴として次のものがあげられる。
(1)ビデオカメラの二次元画像では認識しにくい作物の三次元形状を計測できる。
(2)距離画像(三次元)以外に近赤外画像(二次元)、赤色画像(二次元)が得られる。
(3)アクティブレンジファインダ方式であるので、環境光の明るさや色温度の影響を受けにくい。
ロボットのエンドエフェクタ6による果実収穫では、果実の三次元位置だけでなく、周囲の障害物も認識して衝突しないように収穫する必要があり、茎、支柱、果梗、葉などの認識も行われている。また、このように作物の各部位を認識できれば、摘葉、誘引などの作業にも適用できると考えられる。このため、本発明でも赤色と近赤外のレーザビームを重ね合わせて一本とし、これを垂直・水平方向に走査して三次元情報を得るこれは2波長三次元視覚センサ4を用いている。後述するように、エンドエフェクタ6の経路は2波長三次元視覚センサ4に結像する画像の画素数によって判断する。
【0018】
前記2波長三次元視覚センサ4は、対象からの反射光をレンズによりPSD(Position Sensitive Device)の受光面に結像させ、三角測量方式で距離を計測する。図3及び図4に示す2波長三次元視覚センサ4は、迷光除去型PSDで、投光ミラーと受光ミラーと赤色フィルタとレンズとコールドフィルタと赤外レーザとガルバノメータとから構成してある。PSDは受光位置によって、2つの電極(アノードA、アノードB)からの出力する電流の比が代わる。その特性を利用して三角測量方式で距離が計測できる。赤色レーザは波長685nm、近赤外レーザは830nmのものを用いた。赤色フィルタは太陽光のうち赤より波長が短い成分を遮断するためレンズの上に取り付けてある。すなわち、図5に示すように、コールドフィルタは近赤外レーザを反射し、赤色レーザを透過する。近赤外レーザと赤色レーザを同軸上に重ね合わせるために用いてある。ガルバノメータは、コールドフィルタを高速度で揺動させ、レーザビームの垂直走査のため、走査用ミラーを垂直方向に動かすために用いてある。図6は、対象果実にレーザビームを照射してから反射光を結像しパソコン画像処理するフローチャートを示す。
【0019】
図7は、2波長式三次元視覚センサ4の信号の流れを示すフローチャートである。近赤外と赤色のレーザビームは同軸上に照射され、対象物からの反射光は、レンズを介してPSD上に結像される。レーザビームを点滅させることにより、定常光である太陽光と区別し、太陽光の影響を受けずに計測できるようにした。これにより昼夜の区別なく使用可能である。さらに、PSDは近赤外光と赤色光の両方の感度を有するものを用いたため、近赤外レーザと赤色レーザを別の周波数で点滅させ、近赤外と赤色の受光成分を分離した。PSDから得られる電流は微弱であるため増幅器で増幅させ、信号を電流から電圧に変換させる。
【0020】
図8は、上記2波長三次元視覚センサ4により測定したミニトマトの分光反射特性を示すグラフである。この図で赤塾果実は太線で示す線であり、葉や未熟果実は他の細線や点線で示す。図9は、近赤外画像であって、近赤外レーザ反射光の強度を示す。図10は、赤色画像であって、赤色レーザ反射光の強度を示す。また、図11は、ガルバノメータで測定した果実の位置までの距離画像を示している。図12は、赤色画像と近赤外画像を画素ごとに比較して領域を区分した図である。誘引ひも等も赤く表示される。図13は、さらに画像処理を行い、各果実の中心、果梗、茎葉等に分けた図である。この図において、果実中心は、果実表面に光沢があるため中央部からの反射光が強いことを利用し、赤色画像のピークを探すことにより認識する。距離画像と合わせて果実の三次元位置を計算する。
【0021】
次に、本発明の果実収穫用エンドエフェクタ6の構成について説明する。
図14は、本発明の果実収穫用エンドエフェクタの構成を示す側面図であり、マニピュレータ3の腕5の先端部に装着される。この果実収穫用エンドエフェクタ6は、これより先端部に装着され、狙った果実を収穫するため取り込むU字型金具11及びシュート12と、該シュート12より排出した果実を取り入れる果実収納箱13と、前記U字型金具11に入った果実の小果梗W2を押さえる小果梗押さえ14と、該小果梗押さえ14をリンク機構でU字型金具11の口部を開閉駆動するモータM3と、前記U字型金具11やシュート12を捻る(手首の左右回転)モータM2と、モータM2やモータM3やU字型金具11やシュート12を左右に振る(手首の左右振り)モータM1と、で構成されている。この場合、詳細は省略するが、モータM1は台座15を介してモータM2を左右に振る動力伝達機構が設けられている。また、前記小果梗押さえ14は弾性材が好ましい。従って、台座15上でモータM2のフレーム部分は自在に回転する。なお、各モータはサーボモータを使用する。
【0022】
図15は、前記小果梗押さえ14でU字型金具11内に取り込んだ果実の小果梗W2を切った状態の果実収穫用エンドエフェクタ6の図である。U字型金具11及びシュート12に取り込まれた果実はその小果梗W2がU字型金具11と小果梗押さえ14との間で押さえられる。この状態でモータM2を使用して少し捻るか、或いはモータM1で左右に振ると該小果梗W2はちぎれて萼のついた状態で果実を収穫することができる。なお、16は、モータM2部分に点線で示す図は小果梗押さえ14を開閉するためのカムである。
【0023】
図16(A)は、本発明の果実収穫用エンドエフェクタ6の構成を示す平面図であり、図16(B)は、一部の詳細平面図である。上記するように、モータM1は、モータM2やU字金具11及び小果梗押さえ14を左右に振るように駆動され、モータM2は、前記U字型金具11やシュート12を捻る(手首の左右回転)よう駆動され、モータM3は、小果梗押さえ14をリンク機構とカム16(図14、図15参照)を利用してU字型金具11に蓋をするよう開けたり、取り込んだ果実の小果梗W2を押さえるよう閉めるよう駆動される。この場合、小果梗押さえ14の前端部とモータM3の固定部18との間には針金17が連結され、小果梗押さえ14が上の移動したときには該小果梗押さえ14の前端部は凹状に曲がる。そして、モータM3で小果梗押さえ14を上げてU字型金具11の口へ果実Wが入るような状態となったときには、果実はより一層U字型金具11内に入り易くなる。
【0024】
図17は、本発明の果実収穫用エンドエフェクタ6で果実を収穫する際の各姿勢を示す図である。図17(A)は、左傾斜の姿勢を示す図である。左傾斜は、この図のように果実収穫用エンドエフェクタ6を右に30°振るとともに、45°傾斜させて収穫する姿勢である。このロボットが対象とする果実Wは、図1に示すように斜めに誘引されており、果房の左側にある主茎までの距離が近い。このため、エンドエフェクタ6を大きく振れないので、左から収穫すべき果実は左傾斜の姿勢とした。図17(B)はエンドエフェクタ6を真っ直ぐにして収穫する姿勢を示す図である。図17(C)は、エンドエフェクタ6を90°左に振って右から収穫する姿勢を示す図である。図17(D)は、エンドエフェクタ6を左に110°振るとともに、45°傾斜させて収穫する姿勢を示す図である。主として、果房の向こう側の果実を収穫する姿勢である。左傾斜、右、右傾斜では、図に示した姿勢のまま果実Wに近づく経路をとると、途中で障害物に当たり安いので、果実に近づくときはエンドエフェクタ6を真っ直ぐにし、果実に近づいてから右か左に振るようにした。
図18は、果実Wを収穫する場合の上記(A)〜(D)の各傾斜の関係を示す図である。
【0025】
上記4つの収穫経路の中から1つを選択するのは、エンドエフェクタ6がそれぞれの経路をとった場合に、障害物がエンドエフェクタ6に当たる位置にあるかどうかを、次のように画素数をカウントすることによって調べる。
(1)エンドエフェクタにある画素数をカウント
三次元画像の各画素の三次元位置を調べ、エンドエフェクタ6のどこかに衝突する位置にある画素をカウントする。主茎、葉、未熟果実、果梗、小果梗などがカウントされる。
(2)U字型金具11に当たる位置にある果梗をカウント。
果実周辺にある果梗の画素をカウントする。
(3)エンドエフェクタの経路上にある他の赤未熟果実があるか。
画像処理により、上記(1)〜(3)を行って収穫経路を決定した。その際、果梗の側から果実に近づくとU字型金具11が果梗を押すため収穫できないので、(2)でカウントした画素数に重みをつけて(1)と(2)の画素数が少なく、(3)で調べた他の赤熟果実がない経路を選択するようにした。
図19は、以上の動作を行わせる場合の経路を選択するまでのフローチャートである。
【0026】
次に、小果梗をちぎる場合の態様について説明する。
図20は、U字型金具11に取り込んだ果実の小果梗を引いて収穫する場合の図である。この場合は、果実をU字型金具11との間で小果梗押さえ14で押さえ、引いて離層で離脱させる。
図21は、小果梗に曲げを加えて離層で離脱させる場合を示す図である。この場合、U字型金具11の端に小果梗W2を縦に押さえ、曲げを加えて離層で離脱させる。
図22は、やはり曲げを加えて離層で離脱させる場合を示す図である。この場合、U字型金具22と小果梗押さえ14との間に小果梗W2が曲げを加えられた状態で押さえられ、この状態で曲げを加えて離層で離脱させる。
【符号の説明】
【0027】
1 ロボット
2 ロボット台座
3 マニピュレータ
4 三次元視覚センサ
5 腕
6 エンドエフェクタ
7 CPU(コンピュータ)
8 テレビモニター
11 U字型金具
12 シュート
14 小果梗押さえ
16 カム
M1 第1の駆動手段
M2 第2の駆動手段
M3 第3の駆動手段
W 果実
W2 小果梗

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行部と、左右旋回・上下移動・上下旋回・エンドエフェクタ(手首)の左右振り・手首の回転の6つの自由度を有するマニピュレータと、三次元視覚センサと、中央演算処理装置と、を備えると共に前記マニピュレータに腕を設けて伸縮自在として、先端部で果実を取り込むようにしたロボットの収穫用エンドエフェクタにおいて、
前記マニピュレータの腕の先端部に、果実を収穫するため取り込むU字型金具及びシュートと、前記U字型金具に取り込んだ果実の小果梗を押さえる小果梗押さえと、該小果梗押さえをリンク機構でU字型金具の口部を開閉駆動する第3の駆動手段と、前記U字型金具とシュートを捻る(手首の左右回転)第2の駆動手段と、前記二つの駆動手段とU字型金具とシュートを左右に振る(手首の左右振り)第1の駆動手段と、を備えてなる果実収穫用エンドエフェクタ。
【請求項2】
前記第1の駆動手段と前記第2の駆動手段との間には、前記U字型金具と小果梗押さえと第2の駆動手段とを左右に振る動力伝達機構が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の果実収穫用エンドエフェクタ。
【請求項3】
エンドエフェクタの収穫経路は、三次元視覚センサの受光画像の主茎、葉、未熟果実、果梗、小果梗等の三次元画素数と、U字型金具に当たる位置にある果梗と経路上にある他の赤未熟果実の画素数をカウントして決定するようにした請求項1に記載の果実収穫用エンドエフェクタ。

【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図23】
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【図1】
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【図8】
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【図12】
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【図13】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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