説明

果実育成診断システム、果樹情報入力端末および果実育成診断方法

【課題】果樹生産者の日々の記録の時間短縮を可能にし、安定生産・高品質化のための支援を行える、果実育成診断システム、果樹情報入力端末および果実育成診断方法を提供する。
【解決手段】果実育成診断システム1は、作業者が携帯可能で、かつ圃場で入力操作可能である。入力部11は、果樹または果実の状態を表す情報の入力操作を受け付ける。データ生成部12は、入力部11で受け付けた入力操作から果樹または果実の状態を表すコンピュータ読み取り可能な入力データを生成する。履歴データ記憶部13は、入力データと、その対象の果樹または果実を特定する識別情報および入力された日時とを対応づけて、果実履歴データとして記憶する。判断部14は、果実履歴データから、所定の判断基準で果実育成処置情報を生成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、果実育成診断システム、果樹情報入力端末および果実育成診断方法に関する。
【背景技術】
【0002】
果実生産を行うにあたって、生産者は、様々な情報を記録し、その日の状態や日々の変化を知り、状態や変化から灌水・防除・施肥・剪定といった営農活動を行い、果実を生産する。多くの場合経験に基づいてその判断を行うのであるが、経験の浅い生産者や経験したことのない気候の変動などの場合には、その判断が曖昧になる。
【0003】
そこで、安定して高品質な果樹を生産するために、様々な研究が行われている。例えば灌水については、果実の硬さによって判断する方法(特許文献1参照)、果実の大きさを測ることで判断する方法(特許文献2参照)、樹液の量を計測することによって判断する方法(特許文献3参照)、などの手法が開発されている。
【0004】
しかし、特許文献1にも記載されているとおり、特許文献2や特許文献3といった機械を利用する判断方法では、機械が高価であり、一般の生産者は機械を利用できないか、機械の値段に見合った収入が得られないことが多い。
【0005】
特許文献4の水管理方法は、目標の糖度と酸度の酸含量となるための果樹の開花後60日目から収穫日までの水ポテンシャルの栽培モデルを作製しておく。開花後60日目から10日間隔で水ポテンシャル値を実測し、60日目から90日目までの実測の水ポテンシャルの日積算値と、栽培モデルの水ポテンシャルの日積算値とを求め、実測から栽培モデルを差し引いた水ポテンシャル日積算値の差分△Sを求める。そして、この差分△Sを90日目からモデル終了までの期間で補償するように栽培モデルの水ポテンシャルを修正し、以後この修正モデル水ポテンシャル値に近づくように、灌水する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−136642号公報
【特許文献2】特開2009−236866号公報
【特許文献3】特開2009−240228号公報
【特許文献4】特開2008−43282号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
関連する技術では、計測した記録を手帳などに手で記載して持ち帰り、コンピュータなどに入力しなおして、現状と研究成果による数値を比較する必要があり、その手間と理解の難しさから導入がなかなか進んでいない。
【0008】
第1の問題点は、計測した果樹・果実の情報を入力するための作業量が多く、また管理が難しいことである。圃場で手帳などに記す屋外での記述作業は時間がかかり、またコンピュータ等でデータの継続的な管理を行うためには別途入力を行うことが必要である。このような記録作業では、転記のための時間を要すると共に、転記ミスが発生する可能性がある。
【0009】
第2の問題点は、生産者自らが、記録した値に基づいて灌水など育成に関する判断を行うことが難しいことである。その理由は、記録した値単体では育成に関する判断を行うことはできず、過去の蓄積データなどに基づく判断基準が必要であること、またそのような基準があった場合でも、比較を簡便に行うことが難しいためである。
【0010】
本発明は、上述のような事情に鑑みてなされたもので、果樹生産者の日々の記録の時間短縮を可能にし、安定生産・高品質化のための支援を行える、果実育成診断システム、果樹情報入力端末および果実育成診断方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の第1の観点に係る果実育成診断システムは、
作業者が携帯可能で、かつ圃場で入力操作可能であって、果樹または果実の状態を表す情報の入力操作を受け付ける入力手段と、
前記入力手段で受け付けた入力操作から前記果樹または果実の状態を表すコンピュータ読み取り可能な入力データを生成するデータ生成手段と、
前記入力データと、その対象の前記果樹または果実を特定する識別情報および入力された日時とを対応づけて、果実履歴データとして記憶する記憶手段と、
前記果実履歴データから、所定の判断基準で果実育成処置情報を生成する判断手段と、
を備えることを特徴とする。
【0012】
本発明の第2の観点に係る果樹情報入力端末は、
作業者が携帯可能で、かつ圃場で入力操作可能な果樹情報入力端末であって、
果樹または果実の状態を表す情報の入力操作を受け付ける入力手段と、
前記入力手段で受け付けた入力操作から前記果樹または果実の状態を表すコンピュータ読み取り可能な入力データを生成するデータ生成手段と、
前記入力データと、その対象の前記果樹または果実を特定する識別情報および入力された日時とを対応づけて、前記果樹または果実の状態を表す情報の果実履歴データから、所定の判断基準で果実育成処置情報を生成する判断手段に送信する通信手段と、
を備えることを特徴とする。
【0013】
本発明の第3の観点に係る果実育成診断方法は、
作業者が携帯可能で、かつ圃場で入力操作可能な入力手段を備える、果実育成診断システムが行う果実育成診断方法であって、
果樹または果実の状態を表す情報の入力操作を受け付ける入力ステップと、
前記入力ステップで受け付けた入力操作から前記果樹または果実の状態を表すコンピュータ読み取り可能な入力データを生成するデータ生成ステップと、
前記入力データと、その対象の前記果樹または果実を特定する識別情報および入力された日時とを対応づけて、果実履歴データとして記憶する記憶ステップと、
前記果実履歴データから、所定の判断基準で果実育成処置情報を生成する判断ステップと、
を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、果樹生産者の日々の記録の時間短縮を可能にし、安定生産・高品質化のための支援を行うことができる。その理由は、圃場において直接に値を果実育成診断システムに入力することで転記作業のための時間を減らすと共に転記作業に伴う転記ミスを減らすことができるためである。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施の形態1に係る果実育成診断システムの構成例を示すブロック図である。
【図2】実施の形態1に係る果実育成診断システムの異なる構成例を示すブロック図である。
【図3】果実の水分ストレス測定具を示す図である。
【図4】果実の硬さから灌水の要否を判定する判断基準の一例を示す図である。
【図5A】実施の形態1に係る果実育成診断の動作の一例を示すフローチャートである。
【図5B】実施の形態1に係る果実育成診断の動作の他の一例を示すフローチャートである。
【図6】本発明の実施の形態2に係る果実育成診断システムの構成例を示すブロック図である。
【図7】実施の形態2に係る果実育成診断の動作の一例を示すフローチャートである。
【図8】本発明の実施の形態3に係る果実育成診断システムの構成例を示すブロック図である。
【図9】実施の形態3に係る果実育成診断システムの異なる構成例を示すブロック図である。
【図10】実施の形態3に係る果実育成診断の動作の一例を示すフローチャートである。
【図11】本発明の実施の形態4に係る果実育成診断システムの構成例を示すブロック図である。
【図12】実施の形態4に係る果実育成診断の動作の一例を示すフローチャートである。
【図13】本発明の実施の形態5に係る果実育成診断システムの構成例を示すブロック図である。
【図14】果実履歴データのグラフ表示の例を示す図である。
【図15】実施の形態5に係る果実育成診断の動作の一例を示すフローチャートである。
【図16】本発明の実施の形態に係る果実育成診断システムまたは果樹情報入力端末の物理的な構成例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。なお図中、同一または同等の部分には同一の符号を付す。
【0017】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1に係る果実育成診断システムの構成例を示すブロック図である。図1の果実育成診断システム1は、作業者が携帯して圃場で入力操作できる端末の形態である。果実育成診断システム1は、果樹または果実の状態を表す情報を入力として、果実履歴データとして記憶し、果実履歴データから、所定の判断基準で果実育成のために必要な処置の情報を生成して表示する。果実育成診断システム1は、入力部11、データ生成部12、履歴データ記憶部13、判断部14および表示部15を備える。
【0018】
図2は、実施の形態1に係る果実育成診断システムの異なる構成例を示すブロック図である。図2の果実育成診断システム2は、果樹情報入力端末3と果実育成診断装置4がネットワークNで接続する構成である。果樹情報入力端末3と果実育成診断装置4は、主に無線通信でデータを送受信する。果樹情報入力端末3は、入力部11、データ生成部12、通信部16および表示部15を備える。果実育成診断装置4は、通信部17、履歴データ記憶部13および判断部14を備える。入力部11、データ生成部12、表示部15、履歴記憶部および判断部14は、図1の構成とほぼ同じである。
【0019】
図1または図2の入力部11は、作業者が圃場で入力操作できるように、例えばキーボードまたはタッチパネルを備える。入力部11は、文字を入力する方法よりも、カーソルキーでメニューから選択する方法、またはラジオボタンで選択する方法などが好ましい。入力部11は、果樹または果実を指定する入力操作、および、果樹または果実の状態を表す情報の入力操作を受け付け、操作されて発生した信号を、データ生成部12に送る。
【0020】
入力部11が、マイクと音声認識手段を備えて、音声でデータを入力できるように構成してもよい。果樹または果実を指定するのは、例えば、果実育成診断システム1にカメラを備えて、果樹または果実に付けられたバーコードまたはQRコードを撮影した画像から、果樹または果実を特定する識別情報を認識する方法を用いてもよい。
【0021】
果樹または果実の状態を表す情報としては、例えば、果実の大きさ、果実の色、果実の硬さ、果樹の葉が巻いている割合、果実の糖度、果実の酸度、果樹の樹液流、果樹の根本の土壌の水分量などがあげられる。これらの情報は、連続する数値の場合もあるし、段階的な評価値の場合もある。
【0022】
図3は、果実の水分ストレス測定具を示す図である。水分ストレス測定具は、果実を模した、硬さが互いに異なる複数種類の合成樹脂製の果実モデルを、数珠つなぎにしたものである。各果実モデル22は、柑橘類の液胞発達期における果実を模した形状とされており、合成樹脂材料で形成されている。なお、合成樹脂材料としては、弾性を有するものが好適に採用される。例えば、シリコーン等が採用され得る。柑橘類の液胞発達期において、果実の硬さを手指で触取すると共に、硬さの異なる複数の果実モデル22と硬さの触感を比較することにより、果実の硬さを識別できる。
【0023】
例えば、硬さのそれぞれ違う果実モデル26、14、18において、図3に示すように、果実モデル26をレベル1、果実モデル24をレベル3、果実モデル28をレベル5とし、果実モデル26と14の間の硬さである場合にはレベル2、果実モデル24と18の間の硬さである場合にはレベル4とする。図3の水分ストレス測定具を用いて識別した果実の硬さを入力部11から入力して、その果実の硬さのデータとすることができる。
【0024】
図1または図2のデータ生成部12は、入力部11で受け付けた入力操作から、果樹または果実の状態を表すコンピュータ読み取り可能なデータを生成する。データ生成部12は、そのときの日時の情報を出力する計時手段を備える。データ生成部12は、生成したデータに入力されたときの日時を対応づけて、果実履歴データとして履歴データ記憶部13に記憶する。
【0025】
図2の果樹情報入力端末3では、データ生成部12は、生成した果実履歴データを通信部16に送る。通信部16は、果実履歴データを果実育成診断装置4に送信する。果実育成診断装置4は、通信部17で受信した果実履歴データを履歴データ記憶部13に記憶する。履歴データ記憶部13は、果樹または果実ごとに、その状態を表す果実履歴データを日時に対応づけて時系列に記憶する。
【0026】
図1または図2の判断部14は、例えば、果実履歴データから果実育成のために必要な処置の情報を生成する判断式を保持している。判断部14は、果実履歴データから、判断式に従って、果実育成処置情報を生成する。以下、具体的な例を挙げて果実育成処置情報を生成する方法を説明する。
【0027】
図4は、果実の硬さから灌水の要否を判定する判断基準の一例を示す図である。図4の上の罫線に囲った表形式は、判断基準を見やすくまとめたものである。図4の下に、上の表形式の判断基準を論理式に展開した判断式を示す。
【0028】
判断基準は、例えば図3に示す果実モデルを用いて識別された果実の硬さを用いる。図4の例では、時期が8月15日までは、複数の果実の硬さの平均が、レベル4.5以上で灌水は不要であると判断し、硬さがレベル4.5未満で灌水が必要と判断し、硬さがレベル3.0以下では灌水が必須とする判断を行う。8月15日以降は、果実の硬さが変わるため、基準を変更し、2.7以上で灌水不要、2.7未満で灌水必要、中でも2.0以下で灌水必須の判断を行う。
【0029】
判断部14で用いる判断式は、研究成果と記録者が記録したデータとを比較して設定した判断基準を用いることができる。判断部14は、研究成果から設定した判断基準を読み込み、複数ある判断基準について、それぞれを数値的な判断式に変換する。
【0030】
判断部14は、履歴データ記憶部13から果実履歴データを読み込み、有効桁の設定や単位変換や数値の整列を行う。そして、果実履歴データを設定した判断式に照らして、適合する条件に対応する果実育成処置情報を生成する。判断部14は、生成した果実育成処置情報を表示部15に送る。
【0031】
表示部15は、判断部14から送られた果実育成処置情報を作業者が内容を認識できる形で表示する。表示部15は、例えば、日時と対象の果樹を特定する識別符号とをつけて、果実育成処置情報を表す文章を画面に表示する。表示する方法は、文章を画面に表示する方法に限らず、音声で読み上げたり、記録紙に印刷したり、それらを複合して表示したりしてもよい。
【0032】
図2の果樹情報入力端末3と果実育成診断装置4がネットワークNで接続する構成では、判断部14が生成した果実育成処置情報を、通信部17が果樹情報入力端末3に送信する。果樹情報入力端末3の通信部16は、受信した果実育成処置情報を表示部15に送る。表示部15は、図1の表示部15と同様に、果実育成処置情報を表示する。
【0033】
果実育成診断システム1、2は、圃場の環境の状態を表す種々のデータを収集するフィールドサーバ(図示せず)に、ネットワークを介して接続し、フィールサーバからデータを取得してもよい。フィールドサーバは、圃場の気温、湿度、降水量、日射量(日照時間)、風向、風速および土壌水分などのセンサを備え、圃場に設置されて、それらのデータを収集する。果実育成診断システム1、2は、果実履歴データだけでなく、フィールドサーバから取得する圃場の環境状態の条件を加えて、果実育成処置情報を生成するように構成してもよい。
【0034】
また、果実育成診断システム1、2は、インターネットを介して気象情報を提供するサイトにアクセスして、気象情報(天気予報)のデータを参照してもよい。果実育成診断システム1、2は、果実履歴データだけでなく、気象情報の条件を加えて、果実育成処置情報を生成するように構成してもよい。
【0035】
図5Aは、実施の形態1に係る果実育成診断の動作の一例を示すフローチャートである。図5Aは、図1の果実育成診断システム1の構成に対応している。圃場に居る作業者に携帯される果実育成診断システム1の入力部11は、診断の対象果樹または果実を指定する入力を待ち受ける(ステップS01、ステップS02;NO)。果樹または果実を指定する入力があれば(ステップS02;YES)、その対象の果樹または果実の状態を表す情報の項目の入力操作を受け付ける(ステップS03)。そして、入力操作から果実履歴データを生成する(ステップS04)。
【0036】
対象の果樹または果実に他の入力項目があれば(ステップS05;YES)、ステップに戻ってその項目入力を受け付ける。対象の果樹または果実に他の入力項目がなければ(ステップS05;NO)、生成した果実履歴データを履歴データ記憶部13に追加して記憶する(ステップS06)。
【0037】
判定部は、履歴データを読み出して(ステップS07)、上述のように判断式の適合する条件に対応する果実育成処置情報を生成し(ステップS08)、表示部15に送る。表示部15は、果実育成処置情報を表示する(ステップS09)。作業者の居る圃場に診断の対象果樹または果実の残りがあれば(ステップS10;YES)、ステップS01に戻って、対象果樹または果実を指定する入力の受付から繰り返す。対象果樹または果実の残りがなければ(ステップS10;NO)、果実育成診断処理を終了する。
【0038】
図5Bは、実施の形態1に係る果実育成診断の動作の他の一例を示すフローチャートである。図5Bは、図2の果実育成診断システム2の構成に対応している。図5Bの動作は、図5Aの動作を果樹情報入力端末3と果実育成診断装置4に分けて、データ生成と履歴データ追加記憶の間、および、判定、処置情報生成と処置情報表示の間に、果実履歴データまたは果実育成処置情報の送受信の動作を追加した構成である。
【0039】
図5Bの対象果樹または果実指定入力受付(ステップS11)から他の入力項目の有無を判定する(ステップS15)までは、図5AのステップS01〜ステップS05と同様である。図5Bでは、1つの対象の果樹または果実の果実履歴データを生成すると(ステップS15;NO)、生成した果実履歴データを果実育成診断装置4に送信する(ステップS16)。
【0040】
果実育成診断装置4は、果実履歴データの受信を待機している(ステップS20、ステップS21;NO)。果実履歴データを果樹情報入力端末3から受信すると(ステップS21;YES)、果実履歴データを該当する対象の果樹または果実の果実履歴データとして、果実履歴データ記憶部13に追加して記憶する(ステップS22)。図5Bの、ステップS22〜ステップS24の動作は、図5AのステップS06〜ステップS08の動作と同様である。果実育成診断装置4は、果実育成処置情報を生成すると(ステップS24)、生成した果実育成処置情報を果樹情報入力端末3に送信する(ステップS25)。
【0041】
果樹情報入力端末3は、果実育成処置情報を受信すると(ステップS17)、表示部15に表示する(ステップS18)。図5BのステップS18およびステップS19の動作は、図5AのステップS09およびステップS10の動作と同様である。
【0042】
以上説明したように、本実施の形態1の果実育成診断システム1、2によれば、果樹生産者の日々の記録の時間短縮を可能にする。そして、果実の安定生産と高品質化を支援することが可能となる。
【0043】
さらに、営農指導員などに問い合わせることなく作業者自らが、記録した値に基づいて灌水など育成に関する判断を行うことが可能となる。その理由は、育成の基準を予め記憶し、入力データとの比較判断を自動的に行うことで判断結果を参照することができるためである。
【0044】
(実施の形態2)
図6は、本発明の実施の形態2に係る果実育成診断システムの構成例を示すブロック図である。実施の形態2では、果樹情報入力端末3と果実育成診断装置4が通信できない状態でも、果樹または果実の情報を入力して記憶する。図6の果樹情報入力端末3は、図2の果樹情報入力端末3の構成に加えて履歴データ記憶部18を備える。図6の果実育成診断装置4の構成は図2と同様である。
【0045】
図6の果樹情報入力端末3は、データ生成部12で生成した果実履歴データを、履歴データ記憶部18に追加して記憶する。それから、果実履歴データを果実育成診断装置4に送信する。対象の果樹または果実の果実履歴データを生成している間、果実育成診断装置4との間で通信できない状態、例えば、圃場または対象の果樹が電波到達範囲からはずれている場合には、通信を行わず、履歴データ記憶部18に記憶するだけである。したがって、その間は、判断部14に入力した最新の果実履歴データが送られないので、果実育成処置情報も表示されない。
【0046】
果樹情報入力端末3は、果実育成診断装置4と通信可能になったときに、それまで送信せずに記憶しておいた果実履歴データを果実育成診断装置4に送信する。果実育成診断装置4では、果実履歴データを受信したときに、その対象の果実の果実育成処置情報を生成して、果樹情報入力端末3に送信する。
【0047】
なお、通信部16、17は、送信するデータに誤り検出符号または誤り訂正符号を付加して送信することが好ましい。通信部16、17は、受信したデータに誤りを検出した場合に再送を要求し、送信側の通信部16または17は、再送要求を受信した場合、または、データを送信したのち受信確認を所定の時間内に受信できない場合に、データを再送するように構成してもよい。
【0048】
図7は、実施の形態2に係る果実育成診断の動作の一例を示すフローチャートである。図7のステップS31〜ステップS35の動作は、図5BのステップS11〜ステップS15と同様である。実施の形態2では、果実履歴データを記憶(ステップS36)したのち、果実育成診断装置4と通信可能かどうか判断する(ステップS37)。通信可能なら(ステップS37;YES)、果実履歴データを果実育成診断装置4に送信し(ステップS38)、以降ステップS38〜ステップS41の動作は、図5BのステップS16〜ステップS19と同様である。また、果実育成診断装置4の動作(ステップS42〜ステップS47)は、図5BのステップS20〜ステップS25と同様である。
【0049】
ステップS37で、通信可能でなければ(ステップS37;NO)、果実履歴データを送信せず、果実育成処置情報を受信して表示することなく、作業者の居る圃場に診断の対象果樹または果実の残りがあるかどうかを判断する(ステップS41)。
【0050】
本実施の形態2の果実育成診断システム2によれば、果樹情報入力端末3と果実育成診断装置4が通信できない場合でも、圃場で対象の果樹または果実の状態を表す情報を入力して、果実履歴データを生成することができる。その結果、果実育成診断装置4に改めてデータを入力する作業が不要になり、転記誤りの発生する虞がない。
【0051】
(実施の形態3)
実施の形態3では、状態を表す情報を入力する対象の果樹または果実を特定する識別情報を表示する。図8は、本発明の実施の形態3に係る果実育成診断システムの構成例を示すブロック図である。図9は、実施の形態3に係る果実育成診断システムの異なる構成例を示すブロック図である。図8の果実育成診断システム1は、図1のように、作業者が携帯して圃場で入力操作できる端末の形態である。図9の果実育成診断システム2は、図6のように、果樹情報入力端末3と果実育成診断装置4がネットワークNで接続する構成である。
【0052】
実施の形態3の果実育成診断システム1、2では、図8または図9に示すように、図1または図6の構成に加えて対象識別表示生成部19を備える。対象識別表示生成部19は、履歴データ記憶部13、18に記憶されている果実履歴データから、対象の果樹または果実を特定する識別情報を抽出し、識別情報を表示するデータを生成する。そして、識別情報を表示するデータを表示部15に送る。表示部15は、対象の果樹または果実の状態を表す情報の入力操作に先だって、対象の果樹または果実の識別情報を表示する。作業者は、その表示を参照して、入力操作に先だって、状態を表す情報を入力すべき対象の果樹または果実を知ることができる。
【0053】
対象の果樹または果実を特定する識別情報の表示は、例えば、果樹または果実に付与したラベルに記載した名称の表示である。このような表示によって、作業者は対象の果樹または果実を特定することができる。あるいは、圃場の形を表示して、その中に対象の果樹の位置を記号もしくはアイコンで表示したり、さらに、対象の果樹の形を表示して、その中に対象の果実の位置を記号もしくはアイコンで表示したりしてもよい。このように表示することによって、作業者は、圃場における対象の果樹または果実の位置を知ることができる。
【0054】
また、表示した記号もしくはアイコンを指でタップしたり、画面上でポインタを重ねて特定のスイッチを押下することによって、対象の果樹または果実を指定するように構成できる。さらに、対象の果樹または果実を選択した状態で、入力すべき項目を表示するように構成してもよい。このように構成することによって、作業者は簡単に対象の果樹または果実を指定する入力操作を行うことができる。
【0055】
図10は、実施の形態3に係る果実育成診断の動作の一例を示すフローチャートである。図10のフローチャートは、図8の果実育成診断システム1の構成を想定している。実施の形態3では、入力部11で対象の果樹または果実を指定する入力操作の受付に先だって、
【0056】
圃場に居る作業者に携帯される果実育成診断システム1の表示部15は、診断の対象果樹または果実を特定する識別情報(ここでは、対象果樹/果実候補の情報)を表示する(ステップS51)。その後のステップS52〜ステップS62の動作は、図5AのステップS01〜ステップS10と同様である。作業者の居る圃場に診断の対象果樹または果実の残りがあれば(ステップS62;YES)、ステップS51に戻って、対象果樹または果実を特定する識別情報の表示から繰り返す。
【0057】
図9の果実育成診断システム2においても、同様に、図5Bのフローチャートに対象果樹/果実候補表示を最初に追加した動作として構成することができる。
【0058】
実施の形態3の果実育成診断システム1、2によれば、対象の果樹または果実を特定する情報を表示するので、作業者は迷うことなく対象の果樹または果実を選択することができる。そして、対象の果樹または果実の状態を表す情報の入力を失念することを防止できる。その結果、確実に対象の果樹または果実について、果実履歴データを収集することが期待できる。
【0059】
(実施の形態4)
図11は、本発明の実施の形態4に係る果実育成診断システムの構成例を示すブロック図である。実施の形態4では、実際に果実の育成処置を実行する装置に対して、生成した果実育成処置情報に基づいて、その処置を実行させる。実施の形態4の果実育成診断システム1は、図1の構成に加えて作動指令生成部20および指令部21を備える。果実育成診断システム1の指令部21に育成処置装置5が接続する。育成処置装置5は、例えば、果樹に灌水する装置、果樹の下の土壌に肥料を施す(散布する)装置、または、果樹に薬剤を散布する装置などである。
【0060】
作動指令生成部20は、判断部14が生成した果実育成処置情報に基づいて、育成処置装置5に実行させる作動指令を生成する。例えば図4に示す判断式で生成される灌水必要または灌水必須に対応して、灌水する装置を作動させる指令を生成する。作動指令は具体的には、灌水を行うチューブの栓を開ける命令であったり、肥料を加える命令であったりする。
【0061】
図11の指令部21は、作動指令生成部20で生成された指令に従って、育成処置装置5を作動させる指令を育成処置装置5に送信する。その結果、作動する指令を受けた育成処置装置5が作動し、果実育成処置情報に従った処置が実行される。これにより、判断部14が生成した果実育成処置情報から自動的に果実育成処置装置5を操作することが可能になる。
【0062】
図12は、実施の形態4に係る果実育成診断の動作の一例を示すフローチャートである。図12のステップS71〜ステップS78の動作は、図5AのステップS01〜ステップS08と同様である。果実育成診断システム1は、判断部14で果実育成処置情報を生成した(ステップS78)のち、作動指令生成部20は、育成処置装置5を作動させる(作動させないことも含めて)指令を生成する(ステップS79)。指令部21は、作動指令を育成処置装置5に送信する(ステップS80)。
【0063】
判断部14は、この場合、育成処置装置5を作動させたことを示す処置情報を表示部15から表示させる(ステップS81)。果樹または果実の状態を表す情報を入力した作業者は、入力に基づいて育成処置装置5が作動したことを知ることができる。作業者の居る圃場に診断の対象果樹または果実の残りがあれば(ステップS82;YES)、最初のステップに戻ることは図5Aと同様である。
【0064】
本実施の形態4の果実育成診断システム1によれば、果実履歴データに基づいて生成した果実育成処置情報から、自動的に育成処置装置5を作動させることができる。
【0065】
なお、実施の形態4では、作業者が携帯して圃場で入力操作できる端末の形態を説明した。実施の形態4の構成を、図2、図6または図9の果樹情報入力端末3と果実育成診断装置4の構成に、組み合わせることができるのはいうまでもない。
【0066】
(実施の形態5)
図13は、本発明の実施の形態5に係る果実育成診断システムの構成例を示すブロック図である。実施の形態5では、果実履歴データを視認できるグラフにして表示する。実施の形態5の果実育成診断システム1は、図1の構成に加えて、グラフ生成部22を備える。
【0067】
グラフ生成部22は、履歴データ記憶部13から果実履歴データを読み込んで、予め設定されたグラフの形式の中から選択した、所定のグラフの形式に果実履歴データを当てはめて、グラフデータを生成する。
【0068】
表示部15は、グラフ生成部22で生成されたグラフデータを用いてグラフを画面に表示する。表示部15は、判断部14で生成した果実育成処置情報に加えて果実履歴データのグラフを表示してもよいし、または、果実育成処置情報に代えて果実履歴データのグラフを表示してもよい。
【0069】
図14は、果実履歴データのグラフ表示の例を示す図である。図14では、2つの果樹の果実の硬さが時間とともに変化している様子を示す。果実履歴データのグラフ表示は時間的変化に限らない。例えば、ある日時における複数の対象の果樹または果実について、比較するグラフを生成することができる。例えば、圃場の形を表示して、その上に各点の水分ストレスを色分けして水分ストレスの分布を表わすこともできる。さらに、水分ストレスの分布の時間的変化をアニメーションまたはコマ送りで表示するようなことも可能である。
【0070】
図15は、実施の形態5に係る果実育成診断の動作の一例を示すフローチャートである。図15のステップS91〜ステップS98の動作は、図5AのステップS01〜ステップS08と同様である。果実育成診断システム1は、判断部14で果実育成処置情報を生成した(ステップS98)のち、グラフ生成部22は、果実履歴データを読み込んで所定のグラフの形式に果実履歴データを当てはめて、グラフ(履歴グラフ)を生成する(ステップS99)。グラフ生成部22は、生成したグラフを表示部15から表示させる(ステップS100)。
【0071】
判断部14は、果実育成処置情報を表示部15から表示させる(ステップS101)。果樹または果実の状態を表す情報を入力した作業者は、入力に基づく果実育成処置情報とともに果実履歴データのグラフを見ることができる。作業者の居る圃場に診断の対象果樹または果実の残りがあれば(ステップS102;YES)、最初のステップに戻ることは図5Aと同様である。
【0072】
本実施の形態5の果実育成診断システム1によれば、果実履歴データからグラフを生成して表示するので、作業者は、判断部14が生成した果実育成処置情報だけででなく、記録したデータをグラフ形式という分かりやすい状態で閲覧することができる。
【0073】
なお、実施の形態5では、作業者が携帯して圃場で入力操作できる端末の形態を説明した。実施の形態5の構成を、図6または図9の果樹情報入力端末3と果実育成診断装置4の構成に、組み合わせることができる。
【0074】
図16は、本発明の実施の形態に係る果実育成診断システムまたは果樹情報入力端末の物理的な構成例を示すブロック図である。図16は、図1、図8、図11または図13の果実育成診断システム1、または、図2、図6または図9の果樹情報入力端末3の構成を示す。
【0075】
果実育成診断システム1または果樹情報入力端末3は、図15に示すように、制御部31、主記憶部32、外部記憶部33、操作部34、表示部35、入出力部36および送受信部37を備える。主記憶部32、外部記憶部33、操作部34、表示部35、入出力部36および送受信部37はいずれも内部バス30を介して制御部31に接続されている。
【0076】
制御部31はCPU(Central Processing Unit)等から構成され、外部記憶部33に記憶されている制御プログラム39に従って、果実育成診断または果樹情報入力のための処理を実行する。
【0077】
主記憶部32はRAM(Random-Access Memory)等から構成され、外部記憶部33に記憶されている制御プログラム39をロードし、制御部31の作業領域として用いられる。
【0078】
外部記憶部33は、フラッシュメモリ、ハードディスク、DVD−RAM(Digital Versatile Disc Random-Access Memory)、DVD−RW(Digital Versatile Disc ReWritable)等の不揮発性メモリから構成され、上述の処理を制御部31に行わせるための制御プログラム39を予め記憶し、また、制御部31の指示に従って、この制御プログラム39が記憶するデータを制御部31に供給し、制御部31から供給されたデータを記憶する。
【0079】
操作部34はキーボードおよびマウスまたはタッチパネルなどのポインティングデバイス等と、キーボードおよびポインティングデバイス等を内部バス30に接続するインタフェース装置から構成されている。操作部34を介して、果樹または果実を指定する入力操作、および、果樹または果実の状態を表す情報の入力操作を受付ける。
【0080】
表示部35は、LCD(Liquid Crystal Display)もしくは有機ELディスプレイ、およびスピーカなどから構成され、果実育成処置情報または果実履歴データのグラフを表示する。
【0081】
入出力部36は、シリアルインタフェースまたはパラレルインタフェースから構成されている。入出力部36に育成処置装置21が接続される。また、位置センサ、撮像装置およびマイク(いずれも図示せず)などが接続される場合がある。
【0082】
送受信部37は、無線送受信機、無線モデムまたは網終端装置、およびそれらと接続するシリアルインタフェースまたはLAN(Local Area Network)インタフェースから構成されている。果樹情報入力端末3は、送受信部37を介して、果実履歴データを果実育成診断装置4に送信し、果実育成処置情報を果実育成診断装置4から受信する。
【0083】
果実育成診断システム1または果樹情報入力端末3の 入力部11、データ生成部12、履歴データ記憶部13、18、判断部14、表示部15、通信部16、対象識別表示生成部19、作動指令生成部20、指令部21、グラフ生成部22などの処理は、制御プログラム39が、制御部31、主記憶部32、外部記憶部33、操作部34、表示部35、入出力部36および送受信部37などを資源として用いて処理することによって実行する。
【0084】
その他、前記のハードウエア構成やフローチャートは一例であり、任意に変更および修正が可能である。
【0085】
制御部31、主記憶部32、外部記憶部33、操作部34、内部バス30などから構成される制御処理を行う中心となる部分は、専用のシステムによらず、通常のコンピュータシステムを用いて実現可能である。たとえば、前記の動作を実行するためのコンピュータプログラムを、コンピュータが読み取り可能な記録媒体(フレキシブルディスク、CD−ROM、DVD−ROM等)に格納して配布し、当該コンピュータプログラムをコンピュータにインストールすることにより、前記の処理を実行する果実育成診断システム1または果樹情報入力端末3を構成してもよい。また、インターネット等の通信ネットワーク上のサーバ装置が有する記憶装置に当該コンピュータプログラムを格納しておき、通常のコンピュータシステムがダウンロード等することで果実育成診断システム1または果樹情報入力端末3を構成してもよい。
【0086】
また、果実育成診断システム1または果樹情報入力端末3の機能を、OS(オペレーティングシステム)とアプリケーションプログラムの分担、またはOSとアプリケーションプログラムとの協働により実現する場合などには、アプリケーションプログラム部分のみを記録媒体や記憶装置に格納してもよい。
【0087】
また、搬送波にコンピュータプログラムを重畳し、通信ネットワークを介して配信することも可能である。たとえば、通信ネットワーク上の掲示板(BBS:Bulletin Board System)に前記コンピュータプログラムを掲示し、ネットワークを介して前記コンピュータプログラムを配信してもよい。そして、このコンピュータプログラムを起動し、OSの制御下で、他のアプリケーションプログラムと同様に実行することにより、前記の処理を実行できるように構成してもよい。
【0088】
上記の実施形態の一部または全部は、以下の付記のようにも記載されうるが、以下には限られない。
【0089】
(付記1)
作業者が携帯可能で、かつ圃場で入力操作可能であって、果樹または果実の状態を表す情報の入力操作を受け付ける入力手段と、
前記入力手段で受け付けた入力操作から前記果樹または果実の状態を表すコンピュータ読み取り可能な入力データを生成するデータ生成手段と、
前記入力データと、その対象の前記果樹または果実を特定する識別情報および入力された日時とを対応づけて、果実履歴データとして記憶する記憶手段と、
前記果実履歴データから、所定の判断基準で果実育成処置情報を生成する判断手段と、
を備えることを特徴とする果実育成診断システム。
【0090】
(付記2)
無線通信でデータを送受信する通信手段を備え、
前記通信手段は、前記入力データを前記データ生成手段から前記記憶手段に無線通信で送受信する、
ことを特徴とする付記1に記載の果実育成診断システム。
【0091】
(付記3)
前記状態を表す情報を入力すべき対象の果樹または果実を特定する識別情報を表示する手段を備えることを特徴とする付記1または2に記載の果実育成診断システム。
【0092】
(付記4)
前記データ生成手段は、果実を模した合成樹脂製の果実モデルと、前記果実の硬さの触感を比較した結果を含む入力データを生成し、
前記判断手段は、果実を模した合成樹脂製の果実モデルと、前記果実の硬さの触感を比較した結果に基づいて、該果樹における水分ストレスの適否を判断し、その判断結果に基づいて土壌水分をコントロールする果実育成処置情報を生成する、
ことを特徴とする付記1ないし3のいずれかに記載の果実育成診断システム。
【0093】
(付記5)
前記果実育成処置情報を表示する表示手段を備えることを特徴とする付記1ないし4のいずれかに記載の果実育成診断システム。
【0094】
(付記6)
前記記憶手段に記憶された履歴データから視認可能なグラフを生成するグラフ化手段を備え、
前記表示手段は、前記果実育成処置情報に加えて、または前記果実育成処置情報に代えて、前記グラフ化手段で生成したグラフを表示する、
ことを特徴とする付記5に記載の果実育成診断システム。
【0095】
(付記7)
前記判断手段は、前記果実育成処置情報から、果実育成処置を実行する育成処置装置に指令する指令データを生成し、
前記育成処置装置に前記指令データを送信する指令手段を備える、
ことを特徴とする付記1ないし6のいずれかに記載の果実育成診断システム。
【0096】
(付記8)
作業者が携帯可能で、かつ圃場で入力操作可能な果樹情報入力端末であって、
果樹または果実の状態を表す情報の入力操作を受け付ける入力手段と、
前記入力手段で受け付けた入力操作から前記果樹または果実の状態を表すコンピュータ読み取り可能な入力データを生成するデータ生成手段と、
前記入力データと、その対象の前記果樹または果実を特定する識別情報および入力された日時とを対応づけて、前記果樹または果実の状態を表す情報の果実履歴データから、所定の判断基準で果実育成処置情報を生成する判断手段に送信する通信手段と、
を備えることを特徴とする果樹情報入力端末。
【0097】
(付記9)
前記入力データと、その対象の前記果樹または果実を特定する識別情報および入力された日時とを対応づけて、果実履歴データとして記憶する記憶手段を備えることを特徴とする付記8に記載の果樹情報入力端末。
【0098】
(付記10)
前記状態を表す情報を入力すべき対象の前記果樹または果実を特定する識別情報を表示する手段を備えることを特徴とする付記8または9に記載の果樹情報入力端末。
【0099】
(付記11)
前記通信手段は前記判断手段から前記果実育成処置情報を受信し、
前記果実育成処置情報を表示する表示手段を備える、
ことを特徴とする付記8ないし10のいずれかに記載の果樹情報入力端末。
【0100】
(付記12)
作業者が携帯可能で、かつ圃場で入力操作可能な入力手段を備える、果実育成診断システムが行う果実育成診断方法であって、
果樹または果実の状態を表す情報の入力操作を受け付ける入力ステップと、
前記入力ステップで受け付けた入力操作から前記果樹または果実の状態を表すコンピュータ読み取り可能な入力データを生成するデータ生成ステップと、
前記入力データと、その対象の前記果樹または果実を特定する識別情報および入力された日時とを対応づけて、果実履歴データとして記憶する記憶ステップと、
前記果実履歴データから、所定の判断基準で果実育成処置情報を生成する判断ステップと、
を備えることを特徴とする果実育成診断方法。
【産業上の利用可能性】
【0101】
本発明によれば、携帯電話対応のウェブサービスにすれば、いつでも判断結果を閲覧できる。また、コンピュータ用ウェブサービスで表示させることで、果樹・果実の詳細な情報を圃場以外でも閲覧が可能になる。
【0102】
他には、警報装置の類へ命令を行うことで、注意の喚起を行える。また、灌水を行う機械に命令を行うことで、自動灌水システムとしても利用することが可能になる。判断基準を変えることによって、施肥・防除・せん定といった各種判断にも利用可能となる。さらに、生産者へ記録データをグラフ化して表示することも可能になる。
【0103】
本発明の実施の形態に係る果実育成診断システムは、すでにできあがった判断条件で果実履歴データから果実育成処置情報を生成するだけでなく、新たな判断基準を作ったり、判断条件を改変(ブラッシュアップ)するために有効である。
【0104】
果実育成処置情報を生成するための判断条件は、試験場で収集したデータに基づいて作成される場合が多い。しかし、果実の生育条件は圃場ごとに異なるので、同じ判断基準で生成した育成処置情報を適用しても同じ品質の果実ができるとは限らない。本発明の果実育成診断システムは、圃場における果実履歴データ収集を容易にするので、圃場ごとのデータ収集を簡単に行うことができる。圃場ごとに収集した果実履歴データを用いて、圃場ごとに異なる条件を分析し、圃場に適した判断基準または判断条件を作成することが可能になる。
【符号の説明】
【0105】
1、2 果実育成診断システム
3 果樹情報入力端末
4 果実育成診断装置
5 育成処置装置
11 入力部
12 データ生成部
13 履歴データ記憶部(果実育成診断システム)
14 判断部
15 表示部
16 通信部(果樹情報入力端末)
17 通信部(果実育成診断装置)
18 履歴データ記憶部(果樹情報入力端末)
19 対象識別表示生成部
20 作動指令生成部
21 指令部
22 グラフ生成部
30 内部バス
31 制御部
32 主記憶部
33 外部記憶部
34 操作部
35 表示部
36 入出力部
37 送受信部
39 制御プログラム
N ネットワーク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業者が携帯可能で、かつ圃場で入力操作可能であって、果樹または果実の状態を表す情報の入力操作を受け付ける入力手段と、
前記入力手段で受け付けた入力操作から前記果樹または果実の状態を表すコンピュータ読み取り可能な入力データを生成するデータ生成手段と、
前記入力データと、その対象の前記果樹または果実を特定する識別情報および入力された日時とを対応づけて、果実履歴データとして記憶する記憶手段と、
前記果実履歴データから、所定の判断基準で果実育成処置情報を生成する判断手段と、
を備えることを特徴とする果実育成診断システム。
【請求項2】
無線通信でデータを送受信する通信手段を備え、
前記通信手段は、前記入力データを前記データ生成手段から前記記憶手段に無線通信で送受信する、
ことを特徴とする請求項1に記載の果実育成診断システム。
【請求項3】
前記状態を表す情報を入力すべき対象の果樹または果実を特定する識別情報を表示する手段を備えることを特徴とする請求項1または2に記載の果実育成診断システム。
【請求項4】
前記データ生成手段は、果実を模した合成樹脂製の果実モデルと、前記果実の硬さの触感を比較した結果を含む入力データを生成し、
前記判断手段は、果実を模した合成樹脂製の果実モデルと、前記果実の硬さの触感を比較した結果に基づいて、該果樹における水分ストレスの適否を判断し、その判断結果に基づいて土壌水分をコントロールする果実育成処置情報を生成する、
ことを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の果実育成診断システム。
【請求項5】
前記果実育成処置情報を表示する表示手段を備えることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載の果実育成診断システム。
【請求項6】
前記記憶手段に記憶された履歴データから視認可能なグラフを生成するグラフ化手段を備え、
前記表示手段は、前記果実育成処置情報に加えて、または前記果実育成処置情報に代えて、前記グラフ化手段で生成したグラフを表示する、
ことを特徴とする請求項5に記載の果実育成診断システム。
【請求項7】
前記判断手段は、前記果実育成処置情報から、果実育成処置を実行する育成処置装置に指令する指令データを生成し、
前記育成処置装置に前記指令データを送信する指令手段を備える、
ことを特徴とする請求項1ないし6のいずれか1項に記載の果実育成診断システム。
【請求項8】
作業者が携帯可能で、かつ圃場で入力操作可能な果樹情報入力端末であって、
果樹または果実の状態を表す情報の入力操作を受け付ける入力手段と、
前記入力手段で受け付けた入力操作から前記果樹または果実の状態を表すコンピュータ読み取り可能な入力データを生成するデータ生成手段と、
前記入力データと、その対象の前記果樹または果実を特定する識別情報および入力された日時とを対応づけて、前記果樹または果実の状態を表す情報の果実履歴データから、所定の判断基準で果実育成処置情報を生成する判断手段に送信する通信手段と、
を備えることを特徴とする果樹情報入力端末。
【請求項9】
前記入力データと、その対象の前記果樹または果実を特定する識別情報および入力された日時とを対応づけて、果実履歴データとして記憶する記憶手段を備えることを特徴とする請求項8に記載の果樹情報入力端末。
【請求項10】
作業者が携帯可能で、かつ圃場で入力操作可能な入力手段を備える、果実育成診断システムが行う果実育成診断方法であって、
果樹または果実の状態を表す情報の入力操作を受け付ける入力ステップと、
前記入力ステップで受け付けた入力操作から前記果樹または果実の状態を表すコンピュータ読み取り可能な入力データを生成するデータ生成ステップと、
前記入力データと、その対象の前記果樹または果実を特定する識別情報および入力された日時とを対応づけて、果実履歴データとして記憶する記憶ステップと、
前記果実履歴データから、所定の判断基準で果実育成処置情報を生成する判断ステップと、
を備えることを特徴とする果実育成診断方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2012−181633(P2012−181633A)
【公開日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−43245(P2011−43245)
【出願日】平成23年2月28日(2011.2.28)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.QRコード
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成22年度研究成果実用化促進事業(農林水産省補助事業)、「高品質ミカン生産のためのフィールドサーバ利用技術の確立」の研究開発に係る委託事業、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(390001395)NECシステムテクノロジー株式会社 (438)
【出願人】(594156880)三重県 (58)