説明

果樹の育成方法

【課題】煩雑な作業によらず果実が地面に接触するのを抑制できる果樹の育成方法を提供する。
【解決手段】果実(マンゴー4)が生る果樹(マンゴーの木1)の育成方法において、マンゴーの木1の高さ方向に、マンゴーの木1の幹の周囲からマンゴーの木1の幅方向の範囲に渡り、完熟状態の果実よりも網目が小さい平面状の第1のネットを複数段配置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、果樹の育成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
果樹の育成に際して、完熟状態の果実の落下を防止するため、収穫前の個々の果実に袋状のネットを被せる技術が提案されている(特許文献1参照)。ここで、袋状のネットを用いている理由は、ネットの網目を通った日光が果実に当たるようにするためである。
【0003】
【特許文献1】特開2006−42658号公報(段落0002)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1の技術では、果実の重みで枝がたわみ、袋状のネットを被せた果実が地面に接触して果実が傷む場合がある。また、個々の果実に袋状のネットを被せる作業は煩雑である。
【0005】
そこで、本発明の目的は、煩雑な作業によらず果実が地面に接触するのを抑制できる果樹の育成方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の果樹の育成方法は、果実が生る果樹の育成方法において、果樹の高さ方向に、果樹の幹の周囲から果樹の幅方向の範囲に渡り、完熟状態の果実よりも網目が小さい平面状のネットを複数段配置する。
【0007】
本発明の果樹の育成方法によれば、ネットを配置したことによって果実が落下してもネットがその果実を受け止めるため、果実が地面に接触するのを抑制できる。また、果樹の高い位置に生っている果実が落下しても上方のネットによって小さい衝撃で受け止めることができる。また、個々の果実を袋状のネットに収容するような煩雑な作業を要しない。
【0008】
また、他の本発明の果樹の育成方法は、上述の発明に加え、複数段に配置されるネットにおいて、上方のネットの網目が、その直下にある下方のネットの網目の大きさと比べて同一若しくは大きくする。この方法を採用することによって、果実よりも大きな葉がある場合に、上方のネットを通り抜けさせて下方のネットで受け止め、下方のネットの上で葉を収集しやすくすることが可能となる。
【0009】
また、他の本発明の果樹の育成方法は、上述の発明に加え、ネットは、隣接する複数の果樹に渡って配置する。この方法を採用することによって、1枚のネットで複数の果樹の果実を受け止めることができ、効率的である。
【0010】
また、他の本発明の果樹の育成方法は、上述の発明に加え、ネットの網目の形状が四角形である場合に、四角形の対角線が50mm以上80mm以下である。この方法を採用することによって。落下した果実をより確実に受け止めると共に、果実への日光の照射をネットによって阻害されないようにできる。
【0011】
また、他の本発明の果樹の育成方法は、上述の発明に加え、ネットの網目の形状が円形である場合に、円形の直径が50mm以上80mm以下である。この方法を採用することによって。落下した果実をより確実に受け止めると共に、果実への日光の照射をネットによって阻害されないようにできる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によって、煩雑な作業によらず果実が地面に接触するのを抑制できる果樹の育成方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本実施の形態に係る果樹の育成方法について、図面を参照しながら説明する。図1は、本実施の形態に係る果樹の育成方法の概要を示す図である。図2は図1を上から見た概要図である。なお図2では、第1のネット5および第2のネット6の網目およびマンゴー4の描写を省略している。
【0014】
果樹の一種であるマンゴーの木1は、1本毎に鉢2に植えられる。図2に示すように、複数の鉢2が隣接して地面に置かれている。鉢2は、陶器製のものであってもよいが、プラスチック製のものが好ましい。プラスチック製の鉢2は、陶器製の鉢2より軽量であり、且つ持ち運びが容易であるからである。
【0015】
鉢2の内側には、図1に示すように、鹿沼土などの樹木用の土壌3が、加熱による減菌処理を施された上で収容される。マンゴーの木1には、木の幹から派生する枝と葉が密集している枝葉群8を有しており、枝葉群8には複数のマンゴー4が生っている。マンゴーの木1には、当初、マンゴー4の花毎に小さい果実が多数生る。マンゴー4が完熟すると枝が下にたわみやすくなる。
【0016】
マンゴーの木1には、土壌3の表面から所定距離の高さ以下には枝葉の無い、マンゴーの木1の幹が露出する部分がある。その幹の露出部分と枝葉群8との境目よりも若干低く、マンゴー4が生る位置よりも低い位置には、平面状の第1のネット(下方のネット)5が水平に配置される。第1のネット5は、第1のネット5を支持する固定具(図示省略)によって固定されている。第1のネット5を配置する時期は、マンゴーの木1が第1のネット5の高さに達する前であることが好ましい。かかる時期に第1のネット5を配置すると、マンゴーの木1が第1のネット5の高さに達しても、第1のネット5の網目を通って伸びることができる。この第1のネット5は、図2に示すように、マンゴーの木1の幹の周囲からマンゴーの木1の幅方向、すなわち枝葉群8および果実であるマンゴー4が存在する範囲を少なくとも約100%〜110%程度覆う範囲に渡って配置される。枝葉群8の中で育成した枝葉から生ったマンゴー4の一部は、自重によって第1のネット5の上へと落下しているものがある。
【0017】
第1のネット5の網目の大きさは、完熟状態のマンゴー4の径よりも小さく、50mm四方とするのが好ましい。また第1のネット5の材質は、好ましくは、ナイロン製である。マンゴーの木1の幹の周囲に第1のネット5を配置する別の方法としては、次のような方法もある。一旦第1のネット5の網の部分の一部を端から切ってその切れ目からマンゴーの木1の幹を通し、第1のネット5のほぼ中央領域に幹を配置させ、その後切った網の部分を結び直して修復する。
【0018】
第1のネット5よりも高い位置であってマンゴーの木1の枝葉群8の上に、マンゴーの木1の幅方向、すなわち図2に示すように枝葉群8および果実であるマンゴー4が存在する範囲を少なくとも約100%〜110%程度覆う範囲に渡って、第2のネット(上方のネット)6が水平に配置される。第2のネット6は、完熟状態のマンゴー4よりも網目が小さく、かつ第1のネット5よりも網目が大きい。具体的には、第2のネット6の網目は、60〜80mm四方とするものが好ましい。第2のネット6は、第1のネット5と同様に、隣接する複数のマンゴーの木1に渡って配置される。また、第2のネット6は、第2のネット6を支持する固定具(図示省略)によって、第1のネット5と同様に固定されている。第1のネット5または第2のネット6の張力は、マンゴー4が載置された第1のネット5または第2のネット6の部分が若干凹み、その部分からマンゴー4がさらに転がって移動しない程度の張力とするのが好ましい。なお、枝葉群8からは、一部第2のネット6の網目を貫通して枝葉が育成し、その先端には果実であるマンゴー4が生っているものがある。また、第2のネット6の網目を貫通して育成した枝葉から生ったマンゴー4の一部は、自重によって第2のネット6の上へと接するものがある。
【0019】
完熟したマンゴー4を収穫する際には、自重によって第1のネット5または第2のネット6の上に落下したマンゴー4を拾い、あるいはマンゴーの木1に生っているマンゴー4をもいで収穫する。収穫の前または後には、第1のネット5の上に直接落ちた葉7および第2のネット6の網目を通過して落ちた葉7を収集する。
【0020】
(本発明の実施の形態で主として得られる効果)
マンゴー4が落下しても第1のネット5および第2のネット6がそのマンゴー4を受け止めるため、マンゴー4が地面に接触するのを抑制できる。また、そのためには煩雑な作業を要しない。また、従来の袋状のネットに果実を収容する技術に比較し、第1のネット5および第2のネット6は、マンゴー4の表面を覆う必要がないため、果実への日光の照射量を増加させることができる。さらに第1のネット5および第2のネット6を水平に配置することによって、受け止められたマンゴー4が転がって傷を負うことを抑制できる。さらに隣接する複数の果樹に渡って第1のネット5および第2のネット6を配置することによって、複数のマンゴーの木1に効率良くマンゴー4と地面との接触の抑制効果を発揮させることができる。
【0021】
第2のネット6の網目を第1のネット5の網目よりも大きくすることで、マンゴーの木1の高い位置から落ちた葉7が第2のネット6を容易に抜け、第2のネット6を抜けた葉7は、第1のネット5にて収集することができる。ここで、80mm四方の網目を有する第2のネット6は、マンゴーの木1等の通常の大きさの葉7を通過させるが、50mm四方の網目を有する第1のネット5は、マンゴーの木1等の通常の大きさの葉7を通過させない。また、50mm四方の網目を有する第1のネット5は、マンゴー4等の果実への日光の照射を阻害しない。
【0022】
(他の形態)
上述した本実施の形態に係る果樹の育成方法は、本発明の好適な形態の一例ではあるが、これに限定されるものではなく本発明の要旨を変更しない範囲において以下のように種々変形実施が可能である。
【0023】
上述した本実施の形態に係る果樹には、マンゴーの木1を用いているが、リンゴの木等、他の果実が生る果樹を用いることができる。ただし、マンゴー4は重たくマンゴーの木1から比較的落下し易いため、マンゴーの木1は他の果樹よりも第1のネット5または第2のネット6の重要性は高い。
【0024】
上述した本実施の形態に係る鉢2は、必須の構成要素ではないため省略することができる。またマンゴーの木1は、地面の土壌に直接植えられたものであっても良い。
【0025】
上述した本実施の形態に係るネット5および第2のネット6は、水平に配置されている。しかし第1のネット5および第2のネット6に傾斜を設けたり、ネット面に袋状部(凹部)等を設けても良い。傾斜を設けることにより、収穫作業が容易になって作業効率が上がる場合がある。また、袋状部を設け、その中に果実を収容することによって、第1のネット5および第2のネット6に落下したマンゴー4をより安定的に保持させることができる。また第1のネット5を配置する高さは、図1に示すよりも低い位置にすることができる。
【0026】
上述した本実施の形態に係る第1のネット5の網目は50mm四方、第2のネット6の網目は80mm四方としている。しかしそれ以外の寸法または形状の網目としても良い。たとえば形状は、菱形、長方形、平行四辺形、台形、円形、楕円形等、またはこれらの形状を2以上含むものである。網目の寸法としては、果実が通過できない大きさであれば良く、果実の種類、品種、寸法等を総合的に判断して適宜決定できる。なお、果実に日光が当たるのを妨げない大きさの網目であることが好ましい。また、第1のネット5および第2のネット6の網目の形状が円形である場合に、円形の直径が50mm以上80mm以下であることが好ましい。
【0027】
また、第1のネット5、第2のネット6以外に、第3のネット、第4のネット等のネットを配置し、3段あるいは4段以上のネットを配置することができる。その場合、上下に隣り合うネットにおいて、上方のネットの網目の大きさは、下方のネットの網目と比べて同一若しくは大きくするのが好ましい。たとえば、3段にネットを配置した場合、上段、中段、下段と、徐々に網目を小さくしたり、上段と中段とを同じ網目の大きさとして下段の網目よりもより小さくしたり、中段と下段とを同じ網目の大きさとして上段の網目をより大きくするのが好ましい。
【0028】
また第1のネット5および第2のネット6は、材質がナイロン製のものであるが、麻等の異なる材質のものを用いても良い。さらに、第1のネット5および第2のネット6を構成する糸の断面形状は円形としているが、他の断面形状としても良い。たとえば、糸の形状を細長い帯状とし、外観の面積の大きい面でマンゴー4を受け止めるように第1のネット5および第2のネット6を構成することによって、受け止める際の衝撃を和らげて、マンゴー4の損傷をより抑制することができる。
【0029】
また上述した本実施の形態に係る第1のネット5をマンゴーの木1の幹の周囲に配置する際には、ネット5の網の一部を端から切っている。しかし、このような網を切る過程は必ずしも必要ではない。たとえば2枚の平面状の第1のネット5をマンゴーの木1の幹の周囲を囲うように配置することで、幹の周囲にネットを配置させても良い。
【0030】
上述した本実施の形態に係る第1のネット5および第2のネット6は、図2に示すように隣接する複数の果樹に渡って配置されている。しかし、個々の果樹毎に第1のネット5または第2のネット6を配置することができる。鉢2を個々の果樹毎に用いている場合は、第1のネット5および第2のネット6を鉢2に固定することができる。そのようにすることで、個々のマンゴーの木1の取り扱い性が良好となる場合があり、または個々のマンゴーの木1の管理の容易さがより増す場合がある。
【0031】
上述した本実施の形態に係るネット5および第2のネット6は、枝葉群8および果実であるマンゴー4が存在する範囲を約100%〜110%程度覆う範囲に渡って配置されている。しかし、その範囲は約110%を超える範囲としても良い。また、枝葉群8の内側に集中して果実が生る果樹の場合等には、その範囲を約100%未満の範囲としても良い。
【0032】
上述した本実施の形態に係る収穫の際には、マンゴーの木1に生っているマンゴー4はもいで収穫している。しかし、マンゴーの木1に振動を与える等して故意にマンゴー4を第1のネット5または第2のネット6の上に落下させた上で収穫し、収穫作業の効率を上げることができる。葉7の収集も同様にマンゴーの木1に振動を与える等して故意に葉7をネット5の上に落下させた上で収集して、収集作業の効率を上げることができる。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明は、果実の生産方法に関する産業に利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本実施の形態に係る果樹の育成方法の概要を示す図である。
【図2】図1を上から見た概要図である。
【符号の説明】
【0035】
1 マンゴーの木(果樹)
4 マンゴー(果実)
5 第1のネット(下方のネット)
6 第2のネット(上方のネット)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
果実が生る果樹の育成方法において、
果樹の高さ方向に、上記果樹の幹の周囲から上記果樹の幅方向の範囲に渡り、完熟状態の上記果実よりも網目が小さい平面状のネットを複数段配置することを特徴とする果樹の育成方法。
【請求項2】
前記複数段に配置されるネットにおいて、上方のネットの網目が、その直下にある下方のネットの網目の大きさと比べて同一若しくは大きいことを特徴とする請求項1記載の果樹の育成方法。
【請求項3】
前記ネットは、隣接する複数の前記果樹に渡って配置することを特徴とする請求項1または2記載の果樹の育成方法。
【請求項4】
前記ネットの網目の形状が四角形である場合に、上記四角形の対角線が50mm以上80mm以下であることを特徴とする請求項1、2または3記載の果樹の育成方法。
【請求項5】
前記ネットの網目の形状が円形である場合に、上記円形の直径が50mm以上80mm以下であることを特徴とする請求項1、2または3記載の果樹の育成方法。

【図1】
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【図2】
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