説明

枝払昇降機

【課題】幹の下部と上部との直径差が大きく、また中間部での幹の直径差が極端に変化する樹木の形状に柔軟に対応し、垂直昇降で作業を効率化し、所望の枝を所望の形状で払うことができる枝払昇降機。
【解決手段】昇降駆動用モータと複数の駆動輪と補助輪で構成された走行部3、圧力制御用モータによって圧力調整を行うパンタグラフジャッキで構成された締め付け機構5、圧力センサと制御回路で構成された圧力制御装置7、及びチェンソーと旋回機構とチルト機構と回転機構と着脱機構で構成された枝払装置9を備えた枝払昇降機。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、林業における枝払昇降機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、「低圧タイヤー(18)の収縮力と予め湾曲整形した板バネ(5)の復元力と、ベルト(6)の両端を緊結した(7)の護謨緊結ロープの収縮及び低圧タイヤーの伸縮に依って、立木を確実に把握できる木登り枝払いロボット。」という記載がある。
【0003】
特許文献2には、「開閉アームと巻付きアームとを高応答性弾性材で引っ張り、且つ、開閉アーム同士を小ばね定数大弾発力弾性材で押し開いて主輪と副輪とによる幹への抱き締め力を発生させるとともに、このときの小ばね定数大弾発力弾性材の押し開き力を、副輪が幹に当たってある程度高応答性弾性材が延びたときに釣り合わせたことを特徴とする枝打機。」及び、「主輪と副輪とによる幹の抱き締め力を長い変位に亘ってばね定数の小さい小ばね定数大弾発力弾性材と、ばね定数は大きいが、変位に敏感に対応する高応答性弾性材によったものであるから、幹径の変化に対してもほぼ一定の押圧力を出せるとともに、幹の凹凸等にも敏感に対応して、スリップや脱輪等を起こさない。」という記載がある。
【0004】
特許文献3には、「駆動輪24、32を正転させると、枝打機はその傾斜角度の方向に幹10の周囲を螺旋回転しながら上昇し、逆転させると、傾斜角度の方向に螺旋回転しながら下降する。本例の場合、枝打機は、上昇時には反時計方向に回転し、下降時には時計方向に回転するように設定されている。」という記載がある。
【0005】
特許文献4には、「胴開き円筒形状本体の上部に電動で360°回転する移動アームに電動丸ノコが固定されている。尚、移動アームの中間部に案内小車と間接部に強力バネが設けられ常に丸ノコで枝の根元から切り落せるよう工夫されている。」という記載がある。
【0006】
特許文献5には、「駆動部とこれの装架される装架部とで幹周を抱持して螺旋状に上下行し、上行中に駆動部のチェンソーで枝を切断する枝打機において、駆動部と装架部の各々を独立の一体構造になすと共に、これら双方が簡易な操作により結合・分離される構成とする。」という記載がある。
【0007】
【特許文献1】特開2002−315453号公報
【特許文献2】特開2000−295931号公報
【特許文献3】特開平10−290637号公報
【特許文献4】特開2001−120084号公報
【特許文献5】特開平10−052181号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1および特許文献2では昇降する際の幹への締め付けに板バネやスプリング等の復元力を利用したものは、締め付け圧力を任意に調整できる機能を有していないため、同一幹上で直径差の小さい幹に対しては有効であるが、直径差の大きな幹に対しては締め付け圧力の差が大きくなり機体重量を維持できなくなるという問題点がある。
【0009】
また、特許文献3では螺旋状に昇降するものは、速度を速くすると遠心力により幹が大きく揺れ機体が振られて安定した昇降を得られず樹高の高いものには適していないという問題点がある。
【0010】
また、特許文献4では、チェンソーが固定式であるために、常に固定の位置でしか枝を切り落とせず、所望の枝払いを行うことが困難であるという問題点がある。
【0011】
また、特許文献5では、チェンソーの取り付けてある装架部を他の様々な昇降装置に簡単に取り付けられる構造になっていないという問題点がある。
【0012】
本発明は、幹の下部と上部との直径差が大きく、また中間部での幹の直径差が極端に変化する等の多様な特徴がある樹木の形状にも対応すること、垂直に昇降し作業の効率化を図ること、所望の枝を所望の形状に払うことを主要な特徴とする枝払昇降機を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本願発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究の結果、昇降と圧力制御を同期させること、及びチェンソーを可動式にすることにより発明を完成した。
【0014】
請求項1に記載の発明は、走行装置と、締め付け機構と、締め付け圧力調整機能を有する圧力制御装置と、枝払装置を備えたことを特徴とする枝払昇降機である。
【0015】
請求項2に記載の発明は、走行装置が、幹中心に向かって対向する駆動輪と補助輪及び駆動輪に昇降用動力を付与する昇降駆動用モータで構成されてなる。
【0016】
請求項3に記載の発明は、駆動輪と補助輪が、弾性車輪である。
【0017】
請求項4に記載の発明は、締め付け機構が、パンタグラフジャッキである。
【0018】
請求項5に記載の発明は、パンタグラフジャッキが、角螺子に直結した圧力制御用モータで締め付けるようにされてなる。
【0019】
請求項6に記載の発明は、圧力制御装置が、圧力センサと3点の圧力スイッチとを有する制御回路からなる。
【0020】
請求項7に記載の発明は、制御回路が、昇降に伴う圧力の変化を、締め付け機構を駆動させることによって補正するようにされてなる。
【0021】
請求項8に記載の発明は、枝払装置が、チェンソーと、旋回機構と、チルト機構と、回転機構と、着脱機構で構成されてなる。
【0022】
請求項9に記載の発明は、チルト機構が、チェンソーと切断対象の枝との角度を任意に調整できるようにされてなる。
【0023】
請求項10に記載の発明は、回転機構が、チェンソーの切断対象の枝に対する切断進入角度を任意に調整できるようにされてなる。
【0024】
請求項11に記載の発明は、昇降駆動用モータと複数の駆動輪と補助輪で構成された走行装置、圧力制御用モータによって圧力調整を行うパンタグラフジャッキで構成された締め付け機構、圧力センサと制御回路で構成された圧力制御装置、及びチェンソーと旋回機構とチルト機構と回転機構で構成された枝払装置を備えたことを特徴とする枝払昇降機である。
【0025】
本発明で用いる用語は以下の定義に従う。
「走行装置」とは、走行対象部に圧接された車輪を回転運動させることにより走行する装置をいう。
「弾性車輪」とは、ゴム材や樹脂材等の弾性材料でリムを被覆した車輪をいう。
「締め付け機構」とは、収縮可能な帯状ベルト、スパイラルばね、パンタグラフジャッキ等を用い、対象物に直接又は間接的に圧着する圧力を発生させる装置をいう。
「圧力スイッチ」とは、圧力センサにかかる圧力が任意に決定した圧力値以上になると起ち上がる(ON)か、又は決定した圧力値以下で起ち下がる(OFF)スイッチをいう。
「制御回路」とは、圧力負荷によって支持される枝打装置に用いられる圧力制御回路であって、圧力センサ等により検出された昇降に伴う圧力変化でもって、締め付け機構を連
動させて補正する回路をいう。
「枝払装置」とは、旋回機構とチルト機構と回転機構とを有し、所望の枝払いができる装置をいう。
「チルト機構」とは、チェンソーと切断対象の枝との切断角度が任意に調整できる装置をいう。
「回転機構」とは、チェンソーの切断対象の枝に対する切断進入角度が任意に調整できる装置をいう。
「着脱機構」とは、本装置の昇降機に簡単に取り付け、取り外しができる装置をいう。
【発明の効果】
【0026】
本発明の枝払昇降機は、螺旋運動を行うことなく樹木の垂直昇降を行うことができた。また、幹に急激な形状の変化があっても、圧力センサが働き安定して昇降を行うことができた。幹への締め付けは、パンタグラフ機構の一端に取り付けた圧力センサで締め付け圧力を感知し、常に一定圧になるように圧力制御用モータの回転方向を切り替えることができた。枝払装置は、チェンソーが所望の枝へ的確に移動し、枝や幹との角度を自在に変えることで所望の切断ができた。これらにより、樹木の種類に応じて、枝払い作業を効率的に行うことが可能になった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
本発明の枝払昇降機の一例を示す図1、及びこれを樹木の幹に装着した状態で示す図2において、枝払昇降機は、走行装置3と、締め付け機構5と、締め付け圧力調整機能を有する圧力制御装置7と、枝払装置9からなるものである。これらの構成について具体的に説明する。
【0028】
〔走行装置3〕
走行装置3は、図3及び図4及び図5に示すように、フレーム10とサブフレーム12はヒンジ金具14で連接されており、自在に回転できる。フレーム10とサブフレーム12は、構造材で構成されている。フレーム10の上部と下部に取り付けた掛金錠16を外しサブフレーム12と二つに胴割れ開きにして中央に幹1を入れてから胴割れを掛金錠16で閉じる構成である。掛金錠16が開閉しやすいようにガイド18を設けている。
【0029】
フレーム10には、プレート20が取り付けられている。プレート20には、駆動輪50と補助輪52を取り付けられている。駆動輪50は、トルクを伝達する車輪である。補助輪52は、トルクを伝達しない車輪である。図5に示すように、駆動輪50は、フレーム10の上部に取り付けられている。補助輪52は、フレーム10の下部に取り付けられている。駆動輪50および補助輪52は、幹1に当接する配置で左右一対設けられ、それぞれハの字型に取り付けられている。駆動輪54、55は締め付け機構5に取り付けられており、昇降駆動用モータ72の両側に平行に取り付けられている。駆動輪50と補助輪52及び駆動輪54、55は幹中心に向かって対向するように配置されている。駆動輪50、54、55と補助輪52は、弾性車輪を用い、表皮の損傷を防いでいる。
【0030】
〔締め付け機構5〕
締め付け機構5は、図3に示すように、サブフレーム12の中央部には、パンタグラフジャッキ22が幹中心に向かって取り付けられている。図5に示すように、このパンタグラフジャッキ22に駆動輪54、55と圧力センサ60、圧力制御用モータ74が取り付けけられている。図6に示すように、サブフレーム12の内側にはパンタグラフジャッキ22を誘導するレール24が取り付けられている。プレート26が、駆動輪54、55に取り付けられている。プレート26とレール24は軸28で連結されており、パンタグラフジャッキ22を誘導することが可能となっている。パンタグラフジャッキ22は圧力センサ60によって圧力制御用モータ74が作動し、伸縮を行う。パンタグラフジャッキ22には切断中の切粉やチェンソーオイルの汚れと枝との接触とを防ぐため図示されない保護カバーを装着するとよい。
【0031】
〔圧力制御装置7〕
圧力制御装置7は、図5に示すように、昇降駆動用モータ70、72は、それぞれ駆動輪50、54、55と接続されている。これらを用いて、上昇下降を制御する。圧力制御用モータ74を正転又は逆転させて、パンタグラフジャッキ22を拡げる又は縮める動きをさせる。パンタグラフジャッキ22と接続された駆動輪54、55は、押し込まれるか又は引き出されて、樹木を締め込むか又は緩める動きをする。この一連の流れにより、圧力の制御が行われる。
【0032】
圧力センサ60は、圧力を電圧として取り出し、その電圧値によって、圧力の強さを監視するものである。また、圧力センサ60には、圧力値により、ON又はOFFするスイッチを3点接続した。これら3点の圧力スイッチは、下限スイッチ100、中間スイッチ101、上限スイッチ102で与えられ、それぞれ、下限の値、中間の値、上限の値を定めている。これら3点のスイッチを用い、図7に示すように、圧力を、下限を下回る範囲110、下限と中間の間の範囲120、中間と上限の間の範囲130、上限を超える範囲140の4つの範囲に分類した。
【0033】
本発明の圧力制御装置の内部回路150は、自動制御ON/OFFスイッチ151をONすることで作動する。
【0034】
〔静止時の圧力制御〕
本発明の静止時の圧力制御法を、図8に示すフローチャート図で説明する。下限スイッチ100がOFFであるならば、圧力制御用モータ74を正転させ、締め込み、中間スイッチ101がONするまで圧力を強くする。下限スイッチ100がONで、上限スイッチ102がOFFであるならば、圧力制御用モータ74は運転させない。下限スイッチ100と上限スイッチ102がONであるならば、圧力制御用モータ210を逆転させ、緩めて中間スイッチ101がOFFするまで圧力を弱くする。上述の通り、静止時には、常に圧力が中間の範囲120、又は130の範囲に向うように制御した。
【0035】
〔上昇時の圧力制御〕
本発明の上昇時の圧力制御法を、図9に示すフローチャート図で説明する。昇降駆動用モータ70、72を上昇方向に運転させ、上昇を開始する。上昇開始から一定時間(0.1〜2.0秒)経過後、圧力制御用モータ74を正転させて締め込む。昇降駆動用モータ70、72を運転中、上限スイッチ102がONし、現在の圧力が上限を超える範囲140に入ったら、圧力制御用モータ74を逆転させ、緩めて中間スイッチ101がOFFするまで圧力を弱くする。中間スイッチ101がOFFになったら、圧力制御用モータ74を正転させて締め込む。
【0036】
上限スイッチ102がONしている状態が一定時間(0.1〜2.0秒)継続するようであれば、昇降駆動用モータ70、72の運転を、中間スイッチ101がOFFするまで停止する。中間スイッチ101がOFFになったら、圧力制御用モータ74の運転を停止し、昇降駆動用モータ70、72の運転を再開する。この時、圧力制御用モータ74の運転は、上述の上昇開始時にならい、上昇運転の再開から一定時間(0.1〜2.0秒)経過後再開する。
【0037】
昇降駆動用モータ70、72、圧力制御用モータ74運転中、下限スイッチ100がOFFした状態が、一定時間(0.05〜1.5秒)継続するようであれば、中間スイッチ101がONするまで昇降駆動用モータ70、72の運転を停止する。中間スイッチ101がONになったら、圧力制御用モータ74の運転を停止し、昇降駆動用モータ70、72の運転を再開する。この時、圧力制御用モータ74の運転は、上述の上昇開始時にならい、上昇運転の再開から一定時間(0.1〜2.0秒)経過後再開する。
【0038】
〔下降時の圧力制御〕
本発明の下降時の圧力制御法を、図10に示すフローチャート図で説明する。昇降駆動用モータ70、72を下降運転させ、下降を開始する。下降開始時、中間スイッチ101がONであるならば、圧力制御用モータ74を逆転させ、緩めて中間スイッチ101がOFFするまで圧力を弱くする。
【0039】
昇降駆動用モータ70、72、圧力制御用モータ74運転中、上限スイッチ102がONし、その状態を、一定時間(0.1〜2.0秒)継続するようであれば、中間スイッチ101がOFFするまで、昇降駆動用モータ70、72の運転を停止する。中間スイッチ101がOFFになったら、圧力制御用モータ210の運転を停止し、昇降駆動用モータ70、72の運転を再開する。再開後は、上述の下降開始時にならう。
【0040】
昇降駆動用モータ70、72運転中、下限スイッチ100がOFFになったら、圧力制御用モータ74を正転させ、締め込み中間スイッチ101がONするまで圧力を強くする。この時、下限スイッチ100がOFFの状態が一定時間(0.05〜1.5秒)継続するようであれば、中間スイッチ101がONするまで昇降駆動用モータ70、72の運転を停止する。中間スイッチ101がONになったら、昇降駆動用モータ70、72の運転を再開する。再開後は、上述の下降開始時にならう。
【0041】
上記のとおり、圧力が常に中間近傍の下限と中間の間の範囲120、又は中間と上限の間の範囲130の範囲にあるように制御し、コブなどによる瞬間的又は一時的な圧力の変化にも柔軟に対応する制御を行う。
【0042】
〔枝払装置9〕
旋回機構は、図12に示すように、レール部200と旋回部210を主要部として構成される。レール部200は上部レール201と下部レール202その中央部に駆動用案内板203とこれらを平行に支持するためのブラケット204で固定されている。またレール部200は取り付け用パイプ205で走行部にボルトで脱着し固定できる構造になっている。
【0043】
このレール部200の形状に沿って枝払装置が動くことができる。また、駆動用案内板203は駆動時の駆動力を伝達するためのものであり駆動用案内板203の上側表面に滑り止めが貼り付けてある。
【0044】
旋回部210は木の幹の周りを旋回できるようにレール部200の内側に旋回するためのプレート211に上2個、下1個の計3個のV溝形のローラ212が取り付けられている。駆動時の外力や振動によりレール部200よりV溝形のローラ212が脱輪しないようにV溝形のローラ212の上にはずれ止め213が取り付けられている。
【0045】
プレート211には旋回駆動用モータ214が取り付けられ、旋回駆動用モータ214の軸には旋回駆動用ゴムローラ215が取り付けられ、旋回駆動用ゴムローラ215が駆動用案内板203の上側に取り付けられている。また、駆動用案内板203の下側にカムフロア216が取り付けられている。このカムフロア216は駆動用案内板203の厚みに応じて旋回駆動用ゴムローラ215との位置を可変できる構造になっている。
【0046】
上下のV溝形ローラ212によりレール部200を挟んだ状態で取り付ける。旋回駆動用ゴムローラ215とカムフロア216で駆動用案内板203を挟みつける事により、その圧力と摩擦力により旋回駆動用モータ214の駆動力を駆動用案内板203に伝達することができる。旋回駆動用モータ214を駆動するとV溝形ローラ212がレール部200の形状に沿って旋回することができる。
【0047】
図13に示すように、チルト機構220は旋回部210のプレート211の両側にチェンソーを取り付けるためのブラケット221が取り付けられている。このブラケット221はチルト旋回軸222で固定されている。ブラケット221の先にチェンソー224を取り付けるためのプレート223がありチェンソー224をボルトで簡単に脱着し固定できる構造になっている。また、プレート211に回転運動を直道に変換するためのギアボックスを有するチルト用モータ225が蝶番226で固定してある。このチルト用モータ225のギアヘッドに歯車を設けた。歯車の回転はリニアガイド227にあるラックに伝達する。それにより、リニアガイド227は往復運動する。また、リニアガイド227の先にブラケット228が取り付けられている。さらに、軸229でブラケット228とブラケット221をつないでいる。
【0048】
チルト用モータ225が回転するとギアボックス内にある歯車に回転運動が伝わる。この回転運動がリニアガイド227に伝わりリニアガイド227を往復運動させる。この往復運動はブラケット228の穴に取り付けてある軸229からブラケット221に伝え、チェンソー224と枝との角度を任意に調整する。
【0049】
回転機構230はチェンソー固定用のブラケット221に固定してある回転用モータ231がある。このモータの軸の先に取り付けられた回転板232があるその先にチェンソー223を取り付けてあることにより、回転用モータ231の回転軸を中心にチェンソー224が回転できる構造になっている。
【0050】
チェンソー固定用ブラケット221に固定してある回転用モータ231が回転するとその回転運動が回転板232に伝わり、この回転板232に取り付けてあるチェンソー224を回転する事により任意の角度で調整できる。
【実施例】
【0051】
以下、本発明にかかる枝払昇降機を、図14に示すようにワシントン椰子に適用した実施例について説明する。
【0052】
フレーム10に取り付けた掛金錠16を外し二つに胴割れ開きにする。本装置の内側距離が幹1の外径を越える程度までサブフレーム12を開かせる。中央に樹木を入れてから胴割れしたサブフレーム12を掛金錠16で閉じる。この状態のとき、駆動輪54、55は幹1から離れている。そのため、圧力センサ60にかかる圧力は、下限を下回る範囲110にあり、圧力制御用モータ74が働き、パンタグラフジャッキ22が幹1に向かって伸びる。パンタグラフジャッキ22はレール24により誘導されるため、幹芯に垂直に向かっていく。駆動輪54、55が幹1に接し、圧力センサ60にかかる圧力が、中間と上限の間の範囲130に入るとパンタグラフジャッキ22は停止し、駆動輪50と補助輪52、駆動輪54、55とで抱き、機体は安定する。駆動輪50、54、55と補助輪52は幹1の周りに完全に圧接され、本装置は走行可能となる。
【0053】
圧力センサ60は幹1と駆動輪54、55の圧着力を監視しながら、樹木に対し直進して上昇もしくは下降する。昇降中に機体にかかる圧力が過大となると、圧力制御用モータ74が働き、パンタグラフジャッキ22を縮める。逆に、昇降中に機体にかかる圧力が過少となると、圧力制御用モータ74が働き、パンタグラフジャッキ22を拡げる。また、圧力が過大又は過少の状態が継続するようであれば、圧力制御用モータ74を働かせ、圧力が安定した範囲に入るまで昇降を中断する。しかし、コブなどによる凹凸により一時的に圧力が過大又は過少となってしまった場合は、この限りではない。このようにして、圧力センサ60により、常時圧着力を監視し、機体に安定した圧力をかけ続ける。
【0054】
樹幹径の変化に応じて圧力センサ60により、常時圧着力を監視し、制御する。そのため、駆動輪50、54と補助輪52が確実に樹幹に当接し、機体がスリップや脱輪等を起こさずに常に安定した状態で昇降動作を行なうことができる。
【0055】
枝払装置は、昇降機に固定され、所定の高さまで移動する。チェンソー224を動かし、旋回部210により旋回させることにより枝の切断ができる。それと同時にチルト機構220と回転機構230とを動かし、チェンソー224の角度を変化させることで、所望の枝を所望の形状で払うことができた。
【0056】
本発明における枝払昇降機は、離れた場所からの有線又は無線操作で作業を行い、高所の枝切りをした枝の落下による危険を回避した。昇降及び枝払いは自動操作であるが、自動制御ON/OFFスイッチ151の切り替えにより手動操作で行うことも可能である。そして、昇降駆動用モータの作用機構によって昇降する複数の駆動輪と補助輪とを構成とする走行部、及び、圧力制御用モータの作用機構によって圧力調整を行うパンタグラフジャッキを構成とする締め付け機構、及び、圧力センサと制御回路を構成とする圧力制御装置によって、上記したような樹木の形状に対応し、安定した昇降を行い、並びに、チェンソーと旋回機構とチルト機構と回転機構とを構成とする枝払装置によって、所望の枝を所望の形状に払うことを主要な特徴とする新規な枝払昇降機を実現したものである。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明の枝払昇降機の一例を示す斜視図である。
【図2】本発明の枝払昇降機を幹に装着した状態を示す側面図である。
【図3】本発明の枝払昇降機を幹に装着した状態を示す平面図である。
【図4】本発明の枝払昇降機を幹に装着する前の状態を示す平面図である。
【図5】図2の部分詳細図である。
【図6】パンタグラフジャッキのスライド機構を示す断面図である。
【図7】圧力の監視・制御スイッチング機構を示す図面である。
【図8】静止時の圧力制御を示すフローチャート図である。
【図9】上昇時の圧力制御を示すフローチャート図である。
【図10】下降時の圧力制御を示すフローチャート図である。
【図11】制御回路を示す制御回路図である。
【図12】枝払装置の一例を示す装置斜視図である。
【図13】枝払装置の旋回機構とチルト機構と回転機構の詳細を示す斜視図である。
【図14】ワシントン椰子の枝払の実施例を示す図面である。
【符号の説明】
【0058】
1 幹
3 走行装置
5 締め付け機構
7 圧力制御装置
9 枝払装置
22 パンタグラフジャッキ
30、角螺子
50、54、55 駆動輪
52 補助輪
60 圧力センサ
70、72 昇降駆動用モータ
74 圧力制御用モータ
210 旋回部
220 チルト機構
224 チェンソー
230 回転機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行装置と、締め付け機構と、締め付け圧力調節機能を有する圧力制御装置と、枝払装置を備えたことを特徴とする枝払昇降機。
【請求項2】
走行装置が、幹中心に向かって対向する駆動輪と補助輪及び駆動輪に昇降用動力を付与する昇降駆動用モータで構成されてなる請求項1に記載の枝払昇降機。
【請求項3】
駆動輪と補助輪が、弾性車輪である請求項2に記載の枝払昇降機。
【請求項4】
締め付け機構が、パンタグラフジャッキである請求項1から請求項3のいずれかに記載の枝払昇降機。
【請求項5】
パンタグラフジャッキが、角螺子に直結した圧力制御用モータで締め付けるようにされてなる請求項4に記載の枝払昇降機。
【請求項6】
圧力制御装置が、圧力センサと3点の圧力スイッチを有する制御回路からなる請求項1から請求項5のいずれかに記載の枝払昇降機。
【請求項7】
制御回路が、昇降に伴う圧力の変化を、締め付け機構を駆動させることによって補正するようにされてなる請求項6に記載の枝払昇降機。
【請求項8】
枝払装置が、チェンソーと、旋回機構と、チルト機構と、回転機構と、着脱機構で構成されてなる請求項1から請求項7のいずれかに記載の枝払昇降機。
【請求項9】
チルト機構が、チェンソーと切断対象の枝との角度を任意に調整できるようにされてなる請求項8に記載の枝払昇降機。
【請求項10】
回転機構が、チェンソーの切断対象の枝に対する切断進入角度を任意に調整できるようにされてなる請求項8又は請求項9に記載の枝払昇降機。
【請求項11】
幹中心に向かって対向する駆動輪と補助輪及び駆動輪に昇降用動力を付与する昇降駆動用モータで構成された走行装置、圧力制御用モータによって圧力調整を行うパンタグラフジャッキで構成された締め付け機構、圧力センサと制御回路で構成された圧力制御装置、並びにチェンソーと旋回機構とチルト機構と回転機構で構成された枝払装置を備えたことを特徴とする枝払昇降機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2006−87326(P2006−87326A)
【公開日】平成18年4月6日(2006.4.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−274948(P2004−274948)
【出願日】平成16年9月22日(2004.9.22)
【出願人】(504237050)独立行政法人国立高等専門学校機構 (656)
【出願人】(301069030)株式会社トヨタ車体研究所 (4)