説明

架橋性ポリマー

【課題】分子量及び架橋密度の点で明確に規定されるポリマーを得ること。
【解決手段】一般式:


(式中、Qは、結合、−CO−、−SO2 −、又はアニオン重合若しくはカチオン重合を開始する試薬に対して無反応性であるとともにオキサ若しくはアザ置換基を任意に含んでいてもよくかつ1〜30個の炭素原子を含むアルキル型、アルキルアリール型、アリールアルキル型のn+p価の有機基を表し;Aはアニオン重合において反応性の基を表し;Yはカチオン重合において反応性でありかつアニオン重合を開始する試薬に対して無反応性である基を表し;nは1〜3の間で変動し;pは1〜6の間で変動する)により表されるアニオン重合の開始に続くカチオン架橋により得られる架橋性ポリマー。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アニオン開始により得られるポリマーであって、アニオン重合開始剤の存在下で反応性でないカチオン開始により活性化される官能基を有するポリマーに関する。そのようなカチオン開始官能基の存在によって、成形後のポリマー、特に薄いフィルム状のポリマーの効率的な架橋が可能となる。その結果、分子量及び架橋密度の点で明確に規定される特性を有するポリマーを得ることができる。
【背景技術】
【0002】
3つの型の重合機構、すなわちアニオン型、カチオン型及び遊離基を生成する型の重合は周知である。一般的に、共役した又は活性化された2重結合型官能基を有し、遊離基種の成長反応が可能なモノマーが主として使用される。しかしながら、特に遊離基が酸素により不活性化されるために、ポリマー分子量を制御することは困難である。最近になって、カチオン重合反応性が高いビニルエーテル型官能基CH2 =CHO−を有するモノマーが市販されている。カチオン重合は、非常に速いが、重合の伝播を可能にするカルボカチオンが反応媒体中に存在する水又は他の求核性化学種に敏感であるという事実のため、高分子量を得ることは難しい。
【0003】
フィルム、ワニス又はインクを製造するために主に使用される組成物は、概して、エポキシド型モノマーを、1個以上のビニルエーテル官能基を有するモノマーと組み合わせ、カチオン触媒により重合させたものである。エポキシドの重合及びビニルエーテルの重合は互いに非常に異なる速度で伝播されるため、得られる高分子固形物は通常、モノマーの各種類に対応する相互貫入網状構造からなる。従って、そのような系の重合度及び架橋密度を制御するのは困難である。機械的特性は、鎖の剛直性又は強い水素結合を与えるOH官能基の存在により強く依存する。それにもかかわらず、これらの組成物、特にグリコール又はトリオールビニルジエーテルが加えられたものは、対応するモノマー(いわゆる「反応性希釈剤」)の粘度が低いために、揮発性溶剤の消費量を最低限に抑えることができる。
【0004】
「反応性希釈剤」は、カチオン開始剤に加えられた遊離基開始剤が存在する場合に、アクリル型の遊離基を生じるモノマーとビニルエーテル型モノマーのモノマー混合物に対しても用いられる。しかしながら、この手法によると、酸素に対して遊離基重合が敏感であるために、重合/架橋速度を一定に制御しようとすることは困難である。この問題は、その表面の大部分が空気と接触している薄いフィルムの場合に顕著である。ビニルエーテル官能基を含む多官能性モノマーは米国特許第5,605,941号明細書に記載されている。これらの化合物は、(カチオン+カチオン)型又は(カチオン+遊離基)型の相互貫入網状構造物を使用する1段法を通じて高いガラス転移温度を有する架橋樹脂を得ることに使用される。
【0005】
アニオン重合は、分子量の正確な制御、特に狭い分子量分布Mw /Mn を得るための分子量の正確な制御の観点で種々の利点を有する。所定の分子量を有するポリマーが調製され、AB型、ABA型又は分枝型のブロックポリマーが生成する方法が一般的に好まれる。しかしながら、開始剤及び伝播を可能にするアニオン化学種は非常に反応性が高い。それらの化学種は、モノマーに結合しているほとんどの有機官能基、特にその後に容易な架橋を可能にする有機官能基、例えばエポキシド、アルコール若しくはアミン、又は1つ以上の共役2重結合、芳香核又はC=O、C≡Nのような電子吸引基により活性化されている2重結合を含む官能基と反応する有機金属又はアルカリ金属アルコキシドである。使用又は成形時ではない重合時の水又は他の求核性物質を排除する条件によって、特定の単位で構成されるポリマーが生成する。
【0006】
概してモル濃度40〜100%の高濃度でエーテル官能基を有するポリマー、特に単位−[(CH2 H(R)O)]n −(式中、4≦n≦2×104 、RはH若しくは炭素原子数1〜4のアルキル基又は重合性基、例えばアリルオキシメチル基である)を含むポリマーも周知である。コポリマー、特にRが主としてHであるものは、特定の塩、金属又はオニウム(アンモニウム、アミジニウム、グアニジニウム)を溶解させる性質を有し、導電性固溶体を形成する。一次又は二次バッテリー、スーパーキャパシティー(super capacities)、又は「エレクトロクロミック」とも呼ばれている調光装置で使用できる電解質を形成するのに特に有用である。それらの物質が作用する環境、特に、それらの物質が金属リチウムのような高還元性元素、それらの合金、又はグラファイト若しくはコークスのような種々の形態の炭素中に固溶体として存在するそれらの元素と接触する環境は、エーテル官能基のCH及びC−O結合に主に限られるポリマーの結合に関して高い安定性を必要とする。それにもかかわらず、これらの物質の低い極限粘度数のために、優れた機械的挙動を示す薄いフィルムが実現される。これは、高分子量物質を使用することによって、より都合良くは架橋過程を通じて得られる。しかしながら、後者の方法は、網状構造物のガラス転移温度(Tg )が増加するという欠点をもつ。ガラス転移温度は伝導性を決定する最も重要なパラメーターである。さらに、架橋、特に単量体アリルグリシジルエーテル(AGE)による架橋を可能にする官能基を提供し、アニオン重合用触媒の作用に抵抗性をもつアリルオキシメチル官能基は、その後の架橋結合の形成に対してさほど活性はなく、そのモノマーを含む物質の架橋密度を正確に制御することは不可能である。架橋時に2重結合の50%以上を関与させることは困難である。
【0007】
オリゴ(エチレンオキシド)ビニルエーテルから得られるポリマーは、例えば米国特許第4,886,716号、米国特許第5,064,548号、米国特許第5,173,205号、米国特許第5,264,307号、米国特許第5,411,819号及び米国特許第5,501,920号明細書において固体電解質として提案されており、許容可能な伝導性を有する。しかしながら、対応するモノマーの調製は細心の注意を要する。それらの物質は、架橋前に、カチオン重合に関しては、低い分子量を有する。そのモノマーは実に吸湿性が高く、精製するのが困難である。さらに、側鎖を有するポリマーに典型的な現象である絡み合いがないために、ポリマーの機械的特性は不十分である。ビニルジエーテル型の多官能性ポリマーを使用することによって、架橋生成物を得られるが、カチオン架橋プロセスから重合段階を分離することは不可能であり、それゆえに、架橋ポリマーを得るためのこのプロセスを制御することは実質的にできない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許第5,605,941号明細書
【特許文献2】米国特許第4,886,716号明細書
【特許文献3】米国特許第5,064,548号明細書
【特許文献4】米国特許第5,173,205号明細書
【特許文献5】米国特許第5,264,307号明細書
【特許文献6】米国特許第5,411,819号明細書
【特許文献7】米国特許第5,501,920号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明によると、一般式:
【0010】
【化1】

【0011】
(式中、
Qは、結合、−CO−、−SO2 −、又はアニオン重合若しくはカチオン重合を開始する試薬に対して無反応性であるとともにオキサ若しくはアザ置換基を任意に含んでいてもよくかつ1〜30個の炭素原子を含むアルキル型、アルキルアリール型、アリールアルキル型のn+p価の有機基を表し;
Aはアニオン重合において反応性の基を表し;
Yはカチオン重合において反応性でありかつアニオン重合を開始する試薬に対して無反応性である基を表し;
nは1〜3の間で変動し;
pは1〜6の間で変動する)
により表されるアニオン重合の開始に続くカチオン架橋により得られる架橋性ポリマーが提供される。
【0012】
好ましい態様において、Aは、
【0013】
【化2】

【0014】
を含み、Yは、
【0015】
【化3】

【0016】
を含む。ここでZはO又はCH2 を表し、RはH、炭素原子数1〜12のアルキル若しくはオキサアルキル基、CN又はCH2 COOR1 (式中、R1 はH又は炭素原子数1〜12のアルキル若しくはオキサアルキル基である)を表し、R’はH又は炭素原子数1〜12のアルキル基を表し、rは1〜6の間で変動する。
【0017】
本発明のポリマーは、固体電解質の調製のための伝導性をもたらすイオン性化合物を溶解することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明は、アニオン開始により得られるポリマーであって、カチオン開始により活性化され、成形後のポリマー、特に薄いフィルム状のポリマーの効率的な架橋を可能にする官能基を有するポリマーに関する。すなわち、カチオン重合において活性な官能基は、アニオン重合を可能にする試薬に対するそれらの安定性を勘案して選ばれる。従って、両方の型の重合に関する数々の利点を利用することによって、分子量及び架橋密度の点で明確に規定される特性を有するポリマーを得ることができる。架橋は、特に酸素の作用とは概して無関係に効率的に行われる。
【0019】
アニオン重合により得られ、カチオン的に架橋された、固体電解質の調製のための伝導性をもたらすイオン性化合物を溶解させることのできるポリマーも本発明の一部を構成し、本発明の重要な側面を示す。上記のように、系の化学的安定性又は電気化学的安定性を低下させずに及びガラス転移温度を顕著に増加させずに架橋を可能にする官能基を導入できるという必要性は重要である。本発明のポリマーは、カチオン重合に対して効率的かつ制御された架橋を可能にする活性基を選択するために、これらの規準を満足する。
【0020】
本発明に係るポリマーを得るために使用されるモノマーは、一般式:
【0021】
【化4】

【0022】
(式中、
Qは、結合、−CO−、−SO2 −、又はアニオン重合若しくはカチオン重合を開始する試薬に対して無反応性であるとともにオキサ若しくはアザ置換基を任意に含んでいてもよくかつ1〜30個の炭素原子を含むアルキル型、アルキルアリール型、アリールアルキル型のn+p価の有機基を表し;
Aはアニオン重合において反応性の基を表し;
Yはカチオン重合において反応性でありアニオン重合を開始する試薬に対して無反応性である基を表し;
nは1〜3の間で変動し;
pは1〜6の間で変動する)
により定義される。
【0023】
好ましくは、架橋した材料を直接処理することが都合良い場合及びその架橋をカチオン的に行うことが望ましい場合に、nは1である。nが2である場合に、同一モノマーに結合している2つの官能基は重合しあって、架橋せずに環状物の形成をもたらす。nが1であるモノマーを小さな割合、例えば0.1〜10%の多官能性モノマーに混合して、鎖の未処理の末端を補う枝分かれを生じさせることによって、分子量を増加させることも重要な場合がある。
【0024】
本発明のポリマーは、アニオン重合により調製されるものであって、先に定義した通りのモノマーを含む。ここで、Aは好ましくは、
【0025】
【化5】

【0026】
(式中、ZはO又はCH2 を表し、RはH、炭素原子数1〜12のアルキル若しくはオキサアルキル基、CN又はCH2 COOR1 (式中、R1 はH又は炭素原子数1〜12のアルキル若しくはオキサアルキル基である)を表す)
を含む。
【0027】
同じモノマーにおいて、Yは、
【0028】
【化6】

【0029】
(式中、R’はH又は炭素原子数1〜12のアルキル基を表し、rは1〜6の間で変動する)
を含む。
【0030】
重合の伝播/架橋を可能にするカチオン化学種の寿命は、遊離基化学種の寿命と比較した場合に特に長く、Y基が完全に消費されるまで、カチオン重合開始剤による開始後に反応を続けることができる。特に、反応性化学種を開始させるのに熱又は光活性化作用のある放射線への短時間の暴露で十分であり、活性化剤の不在下であっても、特に空気中の酸素によりもたらされる停止反応がないために、重合を続けることができる。
【0031】
適切なアニオン型開始剤は、好ましくは、有機金属、アミド、アルコキシド、ジアルキルアミノホスフィンから誘導された強塩基を含む。好ましい有機金属には、ブチルリチウム(第1級、第2級又は第3級)、ヘキシルリチウムのようなアルキルリチウム誘導体;及び1,1’−ジフェニルエチレン、テトラフェニルエチレン、ナフタレン、ビフェニル又はベンゾフェノンのリチウム、ナトリウム又はカリウム誘導体が包含される。好ましいアミドには、NaNH2 、Ca(NH22 、エポキシドによるそれらの付加生成物、リチウムジイソプロピルアミドのようなジアルキルアミド誘導体が包含される。好ましいアルコキシドには、アルカリ金属のメトキシド、エトキシド、ブトキシド(第1級、第2級、第3級)又はtert−アミロキシド誘導体、炭素原子数8〜18の線状アルコールのアルコキシド、分子量400〜800のモノアルコールポリエチレン、多価アルコールのアルコキシド、例えばグリコール、グリセロール、オリゴエチレングリコール、ソルビトール、ペンタエリトリトール、トリメチロールプロパン、ビストリメチロールジエチルエーテル、ビスフェノールA及びそれらのポリエトキシル化誘導体のアルコキシドが包含される。好ましい強塩基には、ジアルキルアミノホスフィン誘導体、例えば「ホスファゼン塩基P4−t−bu」として周知の1−tert−ブチル−4,4,4−トリス[ジメチルアミノ−2,2−ビス(トリスジメチルアミノ)−ホスホラニリデンアミノ]−2λ5−4λ5−カテナジ(ホスファゼン)が包含される。一般的に、ブタジエン、スチレン及びアクリル酸又はメタクリル酸の誘導体のような他の共役2重結合C=C又はC=Oにより活性化される2重結合の重合を開始するのに有機金属及びジアルキルアミド誘導体、特にリチウム誘導体が好ましい。エポキシドの重合に対し、ナトリウム、特にカリウムの1価又は多価アルコールのような直鎖又は枝分かれ鎖の形成をもたらすアルカリ金属誘導体が好ましい。ジアルキルアミノホスフィンはアクリレート又はエポキシドに対して反応性である。有機金属、アミド又はアルコキシド誘導体の活性は、アルカリイオンを強く溶媒和する傾向をもつ分子、例えばTHF、2〜16個の炭素原子を含み、溶剤として使用可能なオリゴエチレングリコールジアルキルエーテルの存在下で増大する場合がある。2〜8個の窒素を有するペルアルキル(ポリエチレンイミン)、特にテトラメチルエチレンジアミン(TMDA)、ペンタメチルジエチレンジアミン、及びトリス(2−ジメチルアミノエチルアミン)は、特に魅力のある活性化特性を有する。
【0032】
最初のアニオン重合の後に得られる本発明のポリマーは、カチオン法の目的に合うように設計されたモノマー群を使用してカチオン法により架橋される。一般的に、重合/架橋の反応の伝播を可能にする触媒はルイス酸又はブレンステッド酸である。最も反応性の高いルイス酸には、B(Hal)3 ,Al(Hal)3 ,Zn(Hal)2 (式中、Halはハロゲン若しくは擬ハロゲン又はハロゲン化アルキル基、ハロゲン化アリール基若しくはハロゲン化亜鉛基である)の型のアルミニウム、ホウ素又は亜鉛の誘導体である。一方、ブレンステッド酸は、3×10-19 クーロン/Å2 よりも高い表面電荷を有するカチオンを与える傾向をもつ。前記の電荷の規準に対応する他のカチオンには、制限がなく、Li+ ,Mg2+,Ca2+,Zn2+,Sn2+,Al3+等が包含される。最も反応性の高い誘導体は強酸及び弱塩基性又は弱求核性のアニオンX- に対応する。そのようなアニオンの例は、AlCl4 - ,BF4 - ,PF6 - ,AsF6 - ,SbF6 - ,TeOF5 - ,R2 SO3 - 又はB(R24 - (式中、R2 はフッ素又は任意にハロゲン化されていてもよいアルキル若しくはアリール基である);(R2 SO22- ;(R2 SO22 C(R3- ,(R2 SO23- (式中、R3 はH又はR2 である)である。前記酸は、ポリマーに直接添加されても、潜在的な形態で添加されてもよい。窒素化塩基又はエーテルのような弱塩基の塩がこの用途に適し、その酸形態物が熱、好ましくは40〜180℃の温度で遊離される。分解して酸HXを生成するジアゾニウム塩RN=N+- から熱的に酸を遊離させること並びに溶剤又はモノマーからプロトンを抽出することによって窒素を遊離させることも可能である。
【0033】
非求核性アニオンに対応する酸エステルは有効なカチオン開始剤である。それらには、トルエンスルホネート、フルオロスルホネート、メタンスルホネート及びトリフルオロメタンスルホネートのメチル、エチル又はベンジル誘導体、並びにテトラメチレン−(CH24 −ジエステルが包含される。
【0034】
好ましい態様において、遊離性化合物に対する光活性化作用をもつ放射線に作用によって酸を遊離させることができる。光活性化作用をもつ放射線には、可視又はUVフォトン、γ線及びβ電子線のようなイオン化作用をもつ放射線が包含される。カチオン光開始剤、すなわち酸光開始剤は、イオン性化合物J+- (式中、X- は上記定義のとおりのアニオンであり、J+ はジアリールヨージオニウム、ジアリールブロモニウム、トリアリールスルホニウム、フェナシル−ジアルキルスルホニウム、アレーン−メタロセニウム、アリールジアゾニウム型のカチオンであり、有機基は任意に置換されていても良い)を含む。2つ以上のJ+ カチオンが互いに連結していても、J+ がポリマー鎖の繰返し単位の一部であってもよい。もう1つの群の光開始剤又は熱開始剤は、都合良くは、2−ニトロトルエンスルホネート,2,4−ジニトロベンジルトルエンスルホネート、特に2,4−ジニトロトルエンスルホネート又は2,6−ジニトロベンジルトルエンスルホネートのスルホン酸エステルを含む。これらの開始剤はイオン性でないためにわずかに極性をもつ又は無極性のモノマー及びポリマーに容易に混和する。
【0035】
他のカチオン開始剤も存在し、特にアリルオキシピリジニウム塩の誘導体は、遊離基発生剤の存在下で熱的に又は光活性化作用をもつ放射線により活性化され、アルキル又はピリジルカチオンを遊離する。そのようなカチオン開始剤としては、N−[2−エトキシカルボニルアリルオキシ]−α−ピコリニウムヘキサフルオロアンチモネートがある。
【0036】
本発明の技術は、酸素に対するカチオン重合プロセスの感受性がないために、特に遊離基プロセスを伴う他の技術と比較した場合に、フィルムの形態にあるポリマーの調製に対して特に有利である。しかしながら、このプロセスはそのような成形の種類に限定されない。架橋前に、潜伏性カチオン重合触媒の添加に続いて、ポリマーを種々の形態に成形することができ、それを熱により又は透過性の光活性化作用をもつ放射線により活性化させることができる。
【0037】
架橋を含むほとんどの重合プロセスに固有の容量収縮を最低限に抑えることは重要な場合がある。スピロ−オルトホルメート又はスピロ−オルトカーボネートの型のジオキソランの酸素化誘導体が関与するカチオンプロセスは、容量の増加により特徴付けられる。容量の変化を制御するために使用できるそのような官能基を有する本発明に係るモノマー及びポリマーは次式により例示される。
【0038】
【化7】

【0039】
完全かつ制御される架橋に加えて本発明のカチオン架橋性基にもたらされるもう1つの利点は、得られる副次網状構造物の柔軟性である。次の型の基:
【0040】
【化8】

【0041】
を有するカチオン架橋から得られる官能基は本質的に柔軟であり、対応するホモポリマーは低いガラス転移温度(Tg )を有する。例えば、ポリビニルメチルエーテルに対してTg =−31℃であり、一方、メチルポリメタクリレートに対してはTg =−114℃である。これらの特性は、アニオン基をカチオン基に連結する柔軟な結合の選択に依存してポリマーのカチオン副次網状構造レベルで保つことができる。単純なアルキレン−(CH2n −(式中、2≦n≦12)及びオキシアルキレン−[CH2 OCH(R)]n −(式中、1≦n≦6)は、モノマー及び/得られるポリマー中のアニオン基とカチオン基の間の結合を請け負う2価有機結合を形成することにとって特に好ましい。
【0042】
本発明のポリマーは、ホモポリマー又は2官能性のモノマーと1種以上の他のモノマーを含む統計コポリマーであることができる。例えば、モノマーA,B及びCをモル比a,b及びcで含むターポリマーはAa −stat−Bb −stat−Cc で表される。本発明のポリマーは、A−bloc−B又はA−bloc−B−bloc−A,A−bloc−B−bloc−C型のブロックポリマーであることもできる。各セグメントA,B又はCは種々の割合で2官能性モノマーを含む。別の態様において、A,B又はCのみが、ホモポリマー又はコポリマーの形態で、少なくとも1個の2官能性モノマーを含む。本発明のポリマーは当然のことながら3種のモノマーに限られず、当業者であればアニオン重合のリビング特性により与えられる可能な種々の態様を理解するであろう。T(Aa −stat−Bb −stat−Cct ,T(A−bloc−B)t 又はT(A−bloc−B−bloc−A)t さらにはT(A−bloc−B−bloc−C)t 型の多官能性開始剤から星形ポリマー又はデンドリマーを形成することもできる。ここで、Tは価数tの多官能性基であり、2≦t≦104 であり、好ましくは、星型構造物に対しては2≦t≦10であり、デンドリマーに対しては104 である。アニオン重合において1個以上の反応性官能基を有するモノマーを小さい割合で使用することにより分枝ポリマーを得ることができる。
【0043】
成形及び架橋工程を続けるか、又は成形中の流動学的性質を変えるため及び/又は最終製品に改良された機械的特性や難燃性を付与するための種々の添加剤、例えば、粉末、繊維のフレークの形態にある固形物の分散体の添加と同時に成形及び架橋工程を行うことができる。ナノパーティクルの形態にあるシリカ分散体、カーボンブラック、マグネシアのような単純酸化物;又はLiAlO2 のような錯体;金属窒化物及び炭化物;フレーク状シリケート、特に、マイカ、ヘクトライト、モンモリロナイト、バーミキュライト、グラファイト(膨張した形態にあるものを包含する);KAlF4 型のフルオロアルミネート錯体;ポリオレフィン又はポリイミド型(芳香族のものを包含する)の繊維;場合に応じて織物又は不織布層の形態にある酸化物、窒化物若しくは炭化物又はオキシ窒化物又はオキシ炭化物を含むセラミック繊維の炭素繊維、特に有機物質の熱分解から得られるものが挙げられる。ポリマーに独特の他の特性を付与する添加剤を加えることもできる。例えば、イオン伝導性又は電気伝導性を有する添加剤は、アルミナβ又はβ”、窒化リチウム、炭素の任意形態物、共役ポリマー、特にベンゼン、チオフェン、ピロール及び縮合複素芳香環状物の誘導体のようなものである。ペロブスカイト構造型添加剤は、得られる複合材料にピエゾ電気特性を生じさせることによって、誘電率を増加させる寄与をする場合がある。
【0044】
2官能性モノマーのモル濃度は、望ましい架橋密度に依存して0.1〜100モル%の間で選ぶことができる。本発明に係る好ましい組成物は1〜35モル%の2官能性モノマーを含む。
【0045】
完成した状態又は成形中にポリマーの柔軟性を高める液体又は可塑剤を添加することができる。そのような液体又は可塑剤は多数存在し、どの当業者にも周知である。一般的に、材料は、ポリマー鎖との適合性及びそれらの低い揮発性に基づいて選ばれる。フタレート、シトレート、炭素原子数3〜12のアルキルのα,ω−二酸又は炭素原子数2〜18のアルキレングリコール、並びに難燃性を付与するリン酸若しくはホスホン酸のエステルを挙げることができる。
【0046】
必要であれば、可塑剤の添加によって、低温でのポリマー電解質の伝導性をさらに高めることができる。可塑剤は、その誘電率及びポリマー電解質を使用する条件でのその電気化学的安定性に考慮して選ばれる。その目的に最も有用な可塑剤には、環式及び非環式カーボネート、特にエチレンカーボネート及びプロピレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチル−メチルカーボネート及びメチル−プロピルカーボネート;γ−ブチロラクトン;ギ酸エステル、酢酸エステル、炭素原子数1〜6のアルキルプロピオネートのようなカルボン酸エステル;テトラアルキルスルファミド;炭素原子数1〜8のアルキル基含むモノ−、ジ−、トリ−及びテトラエチレングリコールのジアルキル化エーテル;分子量2000g/モル未満のオリゴオキシエチレンのジアルキル化エーテル(それらのアルキル基は1〜18個の炭素原子を有する)が包含される。そのような可塑剤は、単独で又はそれら同士の混合物で使用できる。
【0047】
可塑剤の濃度は、概して、0.5〜90重量%、好ましくは3〜70重量%の間で変動しうる。可塑剤の濃度が高いと、伝導性が高い材料が得られる。鎖の可動性が顕著になると、これは機械的特性の認識可能な低下になって現れる。本発明のポリマーによって得られる高い架橋密度は、良好な機械的特性を維持するのに都合良い。
【0048】
加えられる可塑剤も、カチオン架橋反応中に反応しうる。ポリマーに加えられる1種又は複数種の可塑剤は、少なくとも1個のカチオン重合反応性官能基を含んでいなくてはならない。この型に属する種々の可塑剤、特にビニルエーテル官能基を有するものは、周知及び/又は商業的に入手可能である。これらは、グリコールのビニルエーテル、特にブタンジオールのビニルエーテル、ジ−、トリ−及びテトラエチレングリコールのビニルエーテル並びにそれらのモノアルキルエーテル及びトリメチロールプロパンが挙げられる。特に魅力のある添加剤は、その高い誘電率と、極性化合物、金属塩又はオニウム塩(カチオン光開始剤等)へのその溶解のし易さのために、プロペニルプロピレンカーボネートエーテル:
【0049】
【化9】

【0050】
である。
【0051】
当業者に周知でモノマー構造物及びそれより得られるポリマーに適合する他の任意の着色剤、抗酸化剤又は抗紫外線剤を本発明のポリマーに使用することができる。
【0052】
架橋は、カチオン重合反応性環状物、例えばエポキシド、1,3−ジオキソラン、1,3−ジオキサン、1,3−ジオキセパン及びそれらの誘導体、上記のようなオルトホルメート又はオルトカーボネート型のスピラン、例えば、モノ−及びジホルマルペンタエリトリトールの誘導体の存在下で行うこともできる。Yがビニルエーテルである場合には、電子欠乏2重結合を有するモノマーを含めることがさらに可能である。例としては、フマレート、マレエート、無水マレイン酸、マレイミド並びにアクリレート及びメタクリレートが挙げられる。これらの化合物は、ビニルエーテルと電荷移動錯体を形成し、それらが重合によって架橋副次網状構造を形成する別のポリマーが形成される。そのような種類の重合は、光開始剤が存在する場合であっても、熱により活性化されるか又は熱的に生成する若しくは光化学作用をもつ放射線により生成する遊離基源により自発的に活性化される。マレイミド誘導体は、特に、紫外線の存在下で自発的に重合可能な錯体を与え、酸素に対してわずかに感受性である。この化合物は1官能性又は2官能性、例えば、
【0053】
【化10】

【0054】
(式中、R4 は2〜18個の炭素原子を含むアルキレン基又はオキシアルキレン−CH2 CH2 (OCH2 CH2n OCH2 CH2 −(nは0〜60で変わる)であり)
であることができる。
【0055】
ポリマー電解質の調製のために本発明の化合物を使用することによって、特に好ましい態様が与えられる。そのようなポリマー電解質は、電気化学分野において種々の用途がある。それらは、吸収性伝導性粉末の添加を必要としない帯電防止性も有する。上記のように、ポリエーテルは、金属塩又はプロトン化された窒素化塩基(アンモニウム、イミダゾリウム、グアニジニウム等)に対するそれらの解離力及び可溶化力のために、好ましい材料である。ポリマーは線状、星形、又は側鎖を有するくし状のものであってもよい。1種以上の溶媒和作用をもつエポキシドと基Aとしてエポキシドを有する本発明のモノマーとの共重合により線状ポリマーは容易に得られる。溶媒和作用をもつエポキシドは好ましくは、エチレンオキシド、プロピレンオキシド及びブチレンオキシドを含む。エチレンオキシドは、その高い錯化力及びその高いアニオン重合反応性のために分子量の制御を可能にするため、特に好ましい。
【0056】
ポリマー電解質の使用条件に依存して、エチレンオキシドの組織化したドメインを形成する傾向からもたらされる結晶化度を最低限にすることが好ましい場合がある。エチレンオキシドの組織化したドメインの存在は導電率から予測される。この理由から、エチレンオキシドと出発モノマーとターポリマーの間のターポリマーの調製が選ばれる。ターポリマーは好ましくはプロピレンオキシド、ブチレンオキシド、メチルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、又は、
【0057】
【化11】

【0058】
のようなイオン性官能基を有するモノマーを、好ましくは0.5〜25モル%の割合で含む。カリウムは、カチオン重合を妨げず、その後に他のイオン、例えばリチウムカチオンと交換できるため、都合良い。
【0059】
本発明のポリマー電解質のモノマーには好ましくは、次の化合物:
【0060】
【化12】

【0061】
(式中、R5 は0〜12個の炭素原子を有する2価アルキル又はオキサアルキルであり、R’は上記定義の通りである)
が包含される。
【0062】
5 は好ましくは−CH2 −,−C24 −,−C48 −,−C612−,−C24 OC24 −又は−C24 OC24 OC24 O−であり、R’は好ましくは水素、メチル又はエチルを含む。R5 が−CH2 −である場合に、R’は好ましくはメチル又はエチルである。対応するモノマーは、ホスフィン又は鉄ペンタカルボニル誘導体によるRuCl2 の存在下での2重結合の異性化によって市販のアリルグリシジルエーテルから容易に得られる。
【0063】
ポリマー電解質のもう1つの態様において、スチレンのアニオン重合を使用してエチレンオキシド側鎖を有するポリマー鎖を形成する。そのような化合物の一般式は、
【0064】
【化13】

【0065】
(式中、pは2〜60の間で変動し;
6 は1〜18個の炭素原子を有する1価アルキル又は5〜18個の炭素原子を有する1価アリールであり;
Qは(CH2q ,−CO−又は−SO2 −であり;
qは0〜4の間で変動する)
である。
【0066】
そのような化合物の好ましい例は、Qが(CH2q でありqが1である場合に、オルト−又はパラ−クロロメチルスチレンにアルコキシオリゴオキシエチレンアルカリ金属誘導体R6 (OCH2 CH2p OM(式中、MはLi,Na,Kである)を反応させることにより容易に調製できる。
【0067】
本発明の好ましいポリマーの調製を可能にするモノマーには、
【0068】
【化14】

【0069】
(式中、R’及びQは上記定義の通りであり、R7 はR5 である)
が包含される。
【0070】
特に好ましい化合物は、(−CH2 −)q においてqが1であるものである。
【0071】
g 、接着性、極性等に関して種々の変化が得られるように、スチレン型ターポリマーを導入することが都合良い場合がある。種々の官能基を有するビニルベンゼン誘導体が好ましく、それらの誘導体は多数存在し、当業者に周知である。関係のある官能基には、局部的誘電率を変化させるための極性基、例えばNO2 ,RCO及びRCOOを有するもの、又は表面張力を変化させるための極性基、例えば8個より多くの炭素原子を有するアルキル鎖が包含される。ハロゲンは不燃性に影響を及ぼす。主にカチオンによるイオン伝導性を発現させるためにイオン性官能基を有するモノマーを導入することも重要であり、電気化学用途に対して最も重要である。モノマー塩:
【0072】
【化15】

【0073】
を挙げることができる。
【0074】
ポリマー電解質のさらに好ましい態様において、カルボニル基により活性化される2重結合のアニオン重合を使用してエチレンオキシド側鎖を有するポリマー鎖を形成する。そのようなポリマーの合成を可能にする主なモノマーの一般式は、
【0075】
【化16】

【0076】
(式中、Z,R,R6 及びpは上記定義の通りである)
である。
【0077】
特に好ましい態様において、ZはOであり、Rはメチルである。
【0078】
本発明に係るポリマーの調製に関して他の好ましいモノマーには、
【0079】
【化17】

【0080】
(式中、R’は上記定義の通りであり、R8 はR5 である)
が包含される。
【0081】
上記のように、イオン性官能基を含むモノマーを導入することは重要である。そのような場合に、モノマー塩:
【0082】
【化18】

【0083】
を挙げることができる。
【0084】
上記ポリマー電解質の調製において、ポリエーテルセグメントを溶媒和する鎖に溶解された塩により伝導性が確実に得られる。概して、塩は、金属塩又はプロトン化された窒素化塩基の塩、例えば、M2+カチオンを遊離する傾向のあるアンモニウム、イミダゾリウム、グアニジニウムと、好ましくは、ClO4 - ,BF4 - ,PF6 - ,AsF6 - ,SbF4 - ,Rf SO3 - ,Cn2n+1SO3 - (式中、nは0〜8の間で変動する),(Rx SO2 NSO2 R’x- ,(Rx SO2 C(SO2 R’x )Rx ”)- (式中、Rx 及びRx ’は同じであっても相異なっていてもよく、その少なくとも1つはハロゲンのような電気陰性原子であり、特に少なくとも1つのRx 及びRx ’はCn2n+1に等しく、nは0〜8の間で変動し、Rx ”はRx 、Rx SO2 - 又はRx ’SO2 - である)のような弱塩基性及び非求核性アニオン、電子吸引基を有するシクロペンタジエン及びそのアザ類似体から誘導されるアニオン、電子吸引基を有するピリミジン−トリオン又は1,3−ジオキサン−4,5−ジオンから誘導されるアニオン、特にCN又はCF3 SO2 型のもの、並びにマロニトリル誘導体から選ばれるアニオンとの塩から選ばれる。最も好ましいアニオンには、ClO4 - ,BF4 - ,PF6 - ,CF3 SO3 - ,(FSO22-,(CF3 SO22- ,(C25 SO22-,[(CF3 SO22 CH]- ,[CF3 SO2 )C(CN)2- ,[(CF3 SO23 C]- ,(CF3 SO2 )NSO2 N(R92- (式中、R9 は1〜30個の炭素原子を有するアルキル、4,5−ジシアノ−1,2,3−トリアゾール、3−5−ビストリフルオロメチル−1,2,4−トリアゾール又はトリシアノメタンから誘導されるアニオンである)が包含される。塩の濃度は好ましくは、カチオン当たりのオキシエチレンセグメントの酸素数である比(O/M)により表される。概して、この数は0.5〜1000である。
【0085】
非常に多種にわたるカチオン又はそれらの混合物が本発明のポリマー中の溶液を与える。リチウム、ナトリウム、カリウム、カルシウム、スズ、アンモニウム及びイミダゾリウムのカチオンが好ましい。リチウムイオン及びリチウムイオンとカリウムイオンの混合物が電気化学的用途に対して特に好ましい。
【0086】
塩のアニオン部分又はカチオン部分は、イオン型の上記の若しくは他のターモノマーの導入を通じて本発明のポリマーを含む高分子鎖の一部となることもできる。負電荷の少なくとも一部がポリマー上に固定されているポリマーが、バッテリー及び蓄電池、スーパーキャパシター又はエレクトトクロミック系用の固体電解質として有用である。
【0087】
上記のように、使用されるモノマーのカチオン官能基の反応性のために、本発明のポリマーを高い架橋率が達成されるまで架橋させることができる。ポリマー電解質に対し、優れた機械的特性を生じさせるという目的のために、ガラス転移温度が顕著に増加しなければ、高い架橋率が有用である。カチオン副次網状構造物にアニオン鎖を連結する結合の柔軟性並びにその副次網状構造物の本質的柔軟性は、前述のようにポリマー電解質の利点である。
【0088】
ポリマー電解質を薄いフィルムに成形することは、溶液からの塗布又は押出により都合良く実施される。経済上の理由から並びに環境に及ぼす影響がより小さくなるように、できるだけ少量の溶剤を使用することが好ましい。その観点において、小さい分子量を有するポリマーは、それらの成形を濃縮溶液から又は純粋な状態から行えることができるため、重要である。エポキシドに関して、鎖の末端が概してヒドロキシル官能基である。低分子量ポリマーの場合に、それらの官能基が特にリチウムに対して反応性であるために、それら濃度が高いことは有害である。カチオン架橋剤の利点は、ヒドロキシル官能基を中和し、架橋反応に関与するリチウムのポテンシャルに近いポテンシャルに対して安定なアセタール結合を形成する可能性があることである。そのような可能性は、カチオン官能基がビニルエーテルである場合に、以下のように例示される。
【0089】
【化19】

【0090】
本発明のポリマーを、少なくとも1種の塩Mn+n - (式中、Mn+は電荷がnの無機、有機又は有機金属カチオンであり、X- は1価アニオンであり、2個以上のX- が共有結合鎖又はポリマーに属する鎖により連結されていてもよい)との組み合わせで使用できる。そのような組み合わせは、少なくとも1つの負極と少なくとも1つの正極を含み、その少なくとも1つの正極が少なくとも一部にイオン性化合物を含む1次若しくは2次ジェネレーター又はスーパキャパシティーのような電気エネルギーを貯蔵する装置において有用である。正極は、単独又は混合物で使用さえる、もう1つの電極材料、例えば酸化バナジウムLiy VOx (式中、2x−5≦y≦2x−3;2.15≦x≦2.5)、Liy1-x-z Cox Alz2 (式中、0≦x+y≦1及び0≦y≦1)、マンガンスピネルLiy Mn2-xx4 (MはLi,Cr,Al,V,Niであり、0≦x≦0.5及び0≦y≦2である)、有機ポリジスルフィド、ロジゾネートのようなポリキノン、FeS、FeS2 、硫酸鉄、オリビン型若しくはナシコン型構造の鉄及びリチウムのホスフェート及びホスホシリケート、又はこれらの鉄をマンガンで置換した生成物を含む。
【0091】
本発明の好ましい態様を説明するために次の実施例を示すが、本発明の範囲を限定するものと解釈されるべきではない。
【実施例】
【0092】
例1
500ml反応器内で、1,1,1−トリス(ヒドロキシメチル)プロパンからエチレンオキシドのアニオン重合により調製された市販の3官能性ポリマー110gを250mlのTHFに溶解させた。33.6gのカリウムtert−ブトキシドを加え、続いて86gの4−ビニロキシ−グリシドキシ−ブタン:
【0093】
【化20】

【0094】
を加えた。
【0095】
この混合物を50℃で3時間加熱した。反応の末期に、37gのメチルスルフェートの添加によるメチル基から鎖の停止反応を得た。ブロックポリマーは式:
【0096】
【化21】

【0097】
(式中、n+n’+n”は20程度であり、p+p’+p”は5程度である)
により表される。
【0098】
ポリマー溶液を遠心分離し、THFを除去した。ジクロロメタン200mlに溶解させ、水(400ml)で抽出することにより精製を行った。次に、ポリマーを−20℃に保たれた2リットルのエチルエーテル中で沈澱させた。
【0099】
そのように得られたポリマーを、リチウムイオン当たりのオキシエチレン基の酸素数が16:1となるように過塩素酸リチウムが存在するアセトン(55重量%)混合物に溶解させることによりポリマー電解質を得た。この溶液に、溶液中のポリマーに対して1重量%の(C49 OC64 IC65+ [FSO22 N]- の溶液を加えた。このポリマーを溶液から高密度ポリエチレン基材上に厚さ35μmのフィルムの形態に拡げ、35ミリジュール/cm2 のエネルギーに対応する365nmで20秒間の紫外線照射により架橋させた。得られたポリマーは、25℃で10-5Scm-1の導電率を有する弾性エラストマーであった。
【0100】
例2
Hibbert 等の方法(J. Am. Chem. Soc. 50, 3120 (1928) )に従って市販のグリセロールホルマールをその2種の異性体(4−ヒドロキシメチル−1,3−ジオキソラン及び5−ヒドロキシ−1,3−ジオキサン)に分割した。激しく攪拌しながら、10.4gの4−ヒドロキシメチル−1,3−ジオキソラン(異性体1)に、ミキサーで粉砕されたKOH5.8g、相間移動触媒として作用するテトラブチルアンモニウムクロリド200mgを加えた。次に、外部冷却により温度が30℃未満に保たれるように9.2gのエピクロロヒドリンを徐々に加えた。形成されたKClを濾過により分離し、得られた(4−グリシドキシメチル)−1,3−ジオキソランを2回の蒸留を通じて精製した。
【0101】
【化22】

【0102】
このモノマーを、カリウムtert−ブトキシドをアニオン開始剤として使用することにより例12の条件でエチレンオキシドと共重合させた。これらのモノマーのモル比は、95(EO):5(2官能性モノマー)から選択した。ポリマーをヘキサン中で沈澱させた。立体排除クロマトグラフィーにより求められた分子量は45×103 gである。塩Li(CF3 SO22 NをO/Li=24:1となるような濃度で一般的な溶剤アセトニトリルに溶解させ、これに1%のジメチル−フェナシル−スルホニルムの塩[C65 (=O)CH2 S(CH32+ (CF3 SO22- を加えることによりポリマー電解質を調製した。溶液を拡げ、溶剤の蒸発後に厚さ24μmのフィルムが形成された。照射量40mJ/cm2 のHanovia 型の紫外線ランプを用いて照射することによって、架橋を行った。得られたポリマーも導電性エラストマー(25℃で10-5Scm-1及び80℃で10-3Scm-1)。
【0103】
例3
メタクリロイルクロリドによりモノビニルエーテルジエチレングリコール(BASF)をエステル化して
【0104】
【化23】

【0105】
を形成した。このモノマーと、オキシエチレンセグメント重量が900であるω−メトキシ(オリゴオキシエチレン)メタクリレートとのアニオン重合により統計ポリマーを得た。2種のモノマーの比は85:15(オリゴEO/ジオキソラン)であった。アニオン開始剤は、無水THF中のホスファゼン塩基P4−t−buであった。重合は25℃で24時間行った。ジエチルエーテルを用いてポリマーを沈澱させ、THF/エーテル中での2回の溶解/沈澱により精製した。リチウム塩に対するエーテル型酸素原子の濃度比が20:1になるような濃度でリチウムトリフルオロメタンスルホネートを含むアセトニトリル溶液から拡げることによりポリマーを薄いフィルムに成形した。次に、0.8重量%の熱カチオン開始剤、すなわち2−ニトロベンジルトルエンスルホネートを加えた。コロイドシリカもポリマーの12重量%の量で加えた。蒸発後に厚さ45μmのフィルムが形成されるように、混合物の粘度を調節した。そのようにして得られたフィルムを、80℃で1時間加熱することにより架橋させた。得られたポリマー電解質は、25℃で2×10-5Scm-1の導電率を有する弾性エラストマーであった。
【0106】
例4
11.6gのモノビニルエーテル1,4−ブタンジオール(BASF)を、2.6gの水素化ナトリウムを含む100mlのTHFで処理した。得られた溶液を還流しながら窒素雰囲気中で15.2gの市販のクロロメチル−4−スチレン(Aldrich )と反応させた。4−ビニロキシブトキシメチル−4−スチレン:
【0107】
【化24】

【0108】
を濾過及びTHFの蒸発後に得た。蒸留によりモノマーを精製した。スチレンと4−ビニロキシブトキシメチル−4−スチレンのポリマー(モル比91:9)を、−30℃のトルエン中のsec −ブチルリチウム(5×103 モル/全モノマー)により開始することにより調製した。8時間後、ポリマーをメタノールに沈澱させた。
【0109】
カチオン光開始剤4−オクチロキシオキシフェニル(ジフェニル)スルホニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドを、対応するスルホニウムヘキサフルオロホスフェートとイミドのカリウム塩K(CF3 SO22 Nの間の交換により調製した。置換ポリスチレンのコポリマーと0.5重量%の光開始剤のトルエン溶液を蒸発させることによって、アルミニウム基材上に厚さ10mmのフィルムを得た。ポリマーに、40mJ/cm2 で254nmの紫外線ビームを照射した。架橋ポリマーは全ての常用の溶剤に不溶であり、優れた誘電剛さ(dielectric rigidity )を有する。
【0110】
例5
例4のスチレン系ポリマー5gと無水マレイン酸400mgを15mlのTHFに溶解させ、アルミニウム基材上に厚さ8μmのフィルム状に拡げた。ポリマーに60mJ/cm2 の照射量で254nmの紫外線ビームを照射した。得られた架橋フィルムは全ての常用の溶剤に不溶であり、アルミニウム基材へのその接着性からポリマーの目立った剥離を生じずに変形することができた(マンドレル試験:4mm,ASTM標準D3359 クロスハッチ接着試験:5)。
【0111】
例6
10.4gの5−ヒドロキシ−2,3−ジオキサン(例2の異性体2)を、50mlのTHF中の9.65mlのメタクリロイルクロリドと8gのピリジンの存在下で0℃で反応させ、5−メタクリロキシ−1,3−ジオキサンを生成させ、この5−メタクリロキシ−1,3−ジオキサンを蒸留により精製した。
【0112】
【化25】

【0113】
メチルメタクリレート、ブチル及び5−メタクリロキシ−2,3−ジオキサンのコポリマーを、THF中のテトラブチルアンモニウムチオフェノキシド(FLUKA )を用いるアニオン開始により調製した。モル比は65:25:10であった。このポリマーをエタノール中で沈澱させ、THF:エタノール中での2回の溶解/沈澱により精製した。0.8重量%の2,4−ジニトロ−ベンジルトルエンスルホネートを添加したこのポリマーのフィルムを、そのTHF溶液からポリテトラフルオロエチレン基材上に拡げ、80℃で4分間加熱することにより架橋させた。このポリマーは透明で、全ての常用の溶剤に不溶であった。300℃で、ポリマーは、そのモノマーに再転化し、従って、リサイクルすることができた。
【0114】
例7
3−ヒドロキシプロピオン酸とアミノメタノールの間で形成された塩の共沸脱水により2−ヒドロキシエチルオキサゾリンを調製した。0℃でトリエチルアミンの存在下、ヒドロキシル化誘導体にメタクリロイルクロリドを反応させることによって4−(2−メタクリロキシエチル)−1,3−オキサゾリンを調製した。このモノマーは式:
【0115】
【化26】

【0116】
により表される。
【0117】
無水THF中の「ホスファゼンP4塩基(Fluka )」を用いるアニオン重合によってビニルメタクリレートと4−(2−メタクリロキシ−エチル)−1,3−オキサゾリンのコポリマー(モル比90:10)を調製した。このポリマーをエタノール中で沈澱させた。このポリマーの10重量%ジクロロメタン溶液に0.5重量%のbusulfan(登録商標)(1,4−ブタンジオールジメタンスルホネート)をポリテトラフルオロエチレン基材上に拡げ、溶剤を蒸発させた。ポリマーを乾燥空気雰囲気中70℃で10分間加熱した。オキサゾリン環のカチオン開環による架橋によって、基材を取り外した後、透明かつ常用の溶剤に不溶の可撓性フィルムが得られた。
【0118】
例8
12.4mlのジエトキシメタンに13.4gの市販の1,2,6−ヘキサントリオールを加え、その混合物を、アセタール交換触媒として作用するトルエンスルホン酸500mgの存在下で還流させた。エタノールを80℃で蒸発させ、得られた4−(4−ヒドロキシブチル)−1,2−ジオキソランを蒸留により精製した。この生成物7.3g及びエピクロロヒドリン4.6gを、2.8gの水酸化カリウム(粉末)及びテトラブチルアンモニウムクロリドの存在下で反応させ、4−[(4−グリシジルオキシ)−ブチル]−1,3−ジオキソラン:
【0119】
【化27】

【0120】
を形成させた。
【0121】
エチレンオキシドとこのモノマーのモル比93:7のコポリマーを、THF中のカリウムtert−ブトキシドを用いるアニオン開始により調製した。遠心分離及びエーテル中での沈澱によりこのポリマーを精製した。O/Li比=18:1でリチウム塩Li[CF3 SO2 C(CN)2 ]を加えることによりポリマー電解質を形成した。0.8重量%の開始剤[CH3 CH(CH3 )C65 Fe(C55+ [(FSO22 N]- を加え、続いて40mJ/cm2 で紫外線照射することにより架橋させた。ポリマーは、全ての常用の溶剤に不溶であり、その導電性は55℃で10-4Scm-1を超えるものであった。
【0122】
例9
13.2gの市販の3−アリルオキシ−1,2−プロパンジオール、12mlのトリメチルオルトホルメート及び11.1mlのγ−カプロラクトンを500mgのトルエンスルホン酸の存在下で90℃で加熱した。形成されたメタノール及び過剰のメチルオルトホルメートを蒸留により除去し、得られたスピロ−エステルを蒸留により精製した。アセトニトリル中のモノペルオキシ−ペルオキシフタル酸のマグネシウム塩によりアリル基をエポキシ化した。得られたモノマー:
【0123】
【化28】

【0124】
を蒸留により精製し、例12の条件でモル比93:7でエチレンオキシドと共重合させた。得られたポリマーを、塩Li[(CH32 NSO2 NSO2 CF3 ]をO/Li比=14:1で加えることによりイオン伝導体に変換した。4−フルオロピリジニウムビス−トリフルオロメタンスルホネート(1重量%)の添加によって、容量増加を伴って80℃でポリマーを架橋することができた。
【0125】
例10
分子量900の市販のω−メトキシ(ポリエチレングリコール)15gを、600mgの水素化ナトリウムを含む100mlのTHF中で処理した。水素発生の終了に続いて、遠心分離により過剰の水素化ナトリウムを除去し、2.5gの4−クロロメチルスチレンを溶液に加えた。遠心分離により反応副生成物(NaCl)を除去し、−20℃に保たれたエーテル−ヘキサン(50:50)混合物中での沈澱により高分子を分離した。このモノマーと例4のスチレン系ビニルエーテルのコポリマーを、sec −ブチルリチウム及びテトラメチルジアミンを用いる開始によりモル比85:15でアニオン重合させることにより調製し、2.5×103 の分子量を有するポリマーを得た。このポリマーを、Li(CF3 SO22 Nを25:1のOether /Li比で溶解させることによりポリマー電解質に変換した。[C65 C(=O)CH2 S(CH32+ (CF3 SO22- (1重量%)を加え、40mJ/cm2 の照射量で265nmで照射することによりポリマーを架橋させた。
【0126】
例11
既にドープト酸化スズ(SnO2 :F)(100nm)により被覆された厚さ60μmのポリエチレンテレフタレート(PET)上に700nmの酸化タングステン層を陰極吹付けすることにより軟質基材上にエレクトロクロミック系を得た。対電極は、同じ基材上の混合酸化物Li0.5 TiO2 CeO2 のフィルム(800nm)であった。両方の電極の片面に例1に記載のポリマー電解質のフィルム(30μm)を貼り合わせた。電流結線(厚さ20μmの0.5cmの銅ストリップ)を付けた後に両端をシールした、そのようにして集成された系は、太陽スペクトルの光の透過に関して25℃で2Vの電圧を300秒間加えることにより85%から8%までの変化を可能にした。極性の反転によって、透過率はその元の値に戻った。この系は、光学的特性の低下を伴わずに104 サイクル循環できた。
【0127】
例12
この例は、本発明に係る架橋性ポリエポキシドの調製を例示するものである。攪拌機及び反応器をその底部から空にするハッチを備えた市販の容量が2リットルのステンレススチールParr(登録商標)内でアニオン重合を行った。全てのトランスファー操作は、特別に乾燥されたアルゴン又は窒素を使用することにより酸素を含まない不活性雰囲気中で行った。他の設備を備えた反応器やガラスで内張りされた反応器を使用を使用してもよい。
【0128】
反応器を次のように乾燥させた。250mlの乾燥トルエンを真空下で導入し、続いて反応器を150℃で15分間加熱した。次に、熱トルエンをハッチを開けることにより除去した。次に反応器を約10分間真空下においた。
【0129】
KOH(粉末)及び相間移動触媒、すなわちテトラブチルアンモニウム硫酸水素塩の存在下でモノビニルエーテルブタンジオール(BASF)をエピクロロヒドリンと反応させることにより2官能性モノマー:
【0130】
【化29】

【0131】
を調製した。エチレンオキシドを蒸留し、溶剤及び他のモノマーを、反応器への導入前に分子篩により乾燥させ、それらの含水量を100ppm未満に減少させた。この値はKarl-Fisher 法により確認される。
【0132】
20℃で、30.03gの(4−ビニルオキシブチル)−グリシジルエーテル、50.05gのブチレンオキシド及び120.2gのエチレンオキシドを、上記のように清浄にした空の反応器に導入した。次に、20×10-3モルのカリウムtert−ブトキシドを20mlのTHFに加えた。温度を25℃に23時間保つと、室温で液状の混合物190gが得られ、これに0.2gのSantonox R(登録商標)を酸化防止剤及び安定剤として加えた。上記開始剤とモノマーの割合では、分子量は10,000よりも小さかった。
【0133】
例13
この例に対し、例12に記載の手順に従って重合を行い、モノマーを同様に乾燥させた。
【0134】
151gのトルエンを含む反応器に、11.39gの(4−ビニルオキシブチル)−グリシジルエーテル及び88.6gのエチレンオキシドを加えた。反応器の温度を100℃に上昇させ、2mlのTHF中の2×10-3モルのカリウムtert−ブトキシドを導入した。反応器の温度を100℃に4.5時間保った。圧力は6.8×105 Paから1.2×105 Paに低下した。次に、温度を50℃に下げ、8mlのトルエンに溶解された0.1gのSantonox R(登録商標)を加えた。ハッチを通じて反応器から溶液を回収した。溶剤の蒸発後、39,000の平均分子量Mv を有するコポリマーを得た。このポリマーの溶液の粘度と既知の分子量を有するポリエチレンオキシドの溶液の粘度とを比較することにより平均分子量を推定した。
【0135】
例14
この例に対し、例12に記載の手順に従って重合を行い、モノマーを同様に乾燥させた。
【0136】
151gのトルエンを含む反応器に、11.42gの(4−ビニルオキシブチル)−グリシジルエーテル、3.2gのブチレンオキシド及び79.8gのエチレンオキシドを加えた。反応器の温度を100℃に上昇させ、1mlのTHF中の112mgのカリウムtert−ブトキシドを導入した。1.5時間後、0.5mlのTHF中の5×10-4モルのカリウムtert−ブトキシドを加えた。温度を100℃にさらに17時間保った。圧力は5.9×105 Paから1.5×105 Paに低下した。温度を70℃に下げ、8mlのトルエンに溶解された0.1gのSantonox R(登録商標)を加えた。ハッチを通じて反応器から溶液を回収した。溶剤の蒸発後、例13に記載の比較法により求めた場合に平均分子量が46,000であるコポリマーを得た。
【0137】
例15
この例に対し、グローブボックス内の不活性な無水雰囲気(≦1vpm H2 O,O)中で全ての操作を行った。例13のポリマーをアセトニトリル:トルエン(4:1)混合物100mlに0.5g/ccの濃度で溶解させることにより溶液Aを得た。ポリマーの完全な溶解後、リチウムに対するポリマーの酸素の比O/Liが30:1になるように溶液AにLiN(SO2 CF32 を溶解させることにより溶液Bを得た。溶液Bに、ポリマーに対して1重量%の[N(SO2252- [C652 I]+ を溶解させることにより溶液Cを得た。[N(SO2252- [C652 I]+ は紫外線に暴露すると活性化されるカチオン重合開始剤である。溶液Cの常用の溶剤コーティング法により28μmの剥離可能なポリプロピレン基材上で約30μmの薄いフィルムの形態にポリマーマトリックスを成形し、続いて乾燥させた。得られたポリマーマトリックスに、続いて、出力3300μW/cm2 で中心波長365nmの紫外線を10秒間照射した。得られたポリマー電解質は優れた機械的特性を有するとともにアセトニトリル:トルエン(4:1)混合物に不溶であった。ポリマーマトリックスを続いて85℃で2時間減圧乾燥した。溶融状態のマトリックスに対して行ったDSCによる測定から、半値でのガラス転移温度が−65℃であることが示された。この測定及び以下の例に対して行った測定から、ガラス転移温度は架橋により影響を受けないことが示された。比較のために、PEOホモポリマーは−66℃のガラス転移温度を有する。
【0138】
例16
例15の操作条件で、例13のポリマーをアセトニトリル:トルエン(4:1)混合物100mlに0.5g/ccの濃度で溶解させることにより溶液Aを得た。ポリマーの完全な溶解後、溶液Aにポリマーに対して1重量%の[N(SO2252- [C652 I]+ を溶解させることにより溶液Bを得た。溶液Bの常用の溶剤コーティング法により28μmの剥離可能なポリプロピレン基材上で約30μmの薄いフィルムの形態にポリマーマトリックスを成形した。得られたポリマーマトリックスに、続いて、出力3300μW/cm2 で波長365nmの紫外線を10秒間照射した。得られたマトリックスは優れた機械的特性を有するとともにもとのポリマーの溶剤に不溶であった。ポリマーマトリックスを続いて85℃で2時間乾燥させた。溶融したマトリックスに関するDSC測定から半値でのガラス転移温度が−68℃であることが示された。
【0139】
例17
例15の操作条件で、例14のポリマーをアセトニトリル:トルエン(4:1)混合物100mlに0.5g/ccの濃度で溶解させることにより溶液Aを得た。ポリマーの完全な溶解後、O/Li比が30:1になるようにポリマーに対して1重量%のLiN(SO2 CF32 を溶液Aに溶解させることにより溶液Bを得た。溶液Bに、ポリマーに対して1重量%の[N(SO2252- [C652 I]+ を溶解させることにより溶液Cを得た。ポリプロピレン支持体上で約30μmの薄いフィルムの形態にポリマーマトリックスを成形し、先に記載したものと同じように架橋させた。得られたポリマーマトリックスは優れた機械的特性を有するとともにアセトニトリル:トルエン(4:1)混合物に不溶であった。ポリマーマトリックスを続いて85℃で2時間減圧乾燥した。溶融状態のマトリックスのDSC測定から、半値でのガラス転移温度が−64℃であることが示された。
【0140】
例18
例15の操作条件で、例14のポリマーをアセトニトリル:トルエン(4:1)混合物100mlに0.5g/ccの濃度で溶解させることにより溶液Aを得た。ポリマーの完全な溶解後、溶液Aに、ポリマーに対して1重量%の[N(SO2252- [C652 I]+ を溶解させることにより溶液Bを得た。ポリプロピレン支持体上で約30μmの薄いフィルムの形態にポリマーマトリックスを拡げた。例14の条件で架橋及び乾燥させた後、得られたポリマーマトリックスのガラス転移温度は、DSCにより−66℃であると求められた。
【0141】
例19
例15の操作条件で、例12のポリマーにO/Liが30:1になるようにLiN(SO2 CF32 を溶解させることにより溶液を得た。この溶液にポリマーに対して1重量%の[N(SO2252- [C652 I]+ を加えた。例15に記載の手順に従ってポリマーマトリックスを薄いフィルムの形状に拡げた。出力3300μW/cm2 で波長365nmの紫外線を10秒間作用させてポリマーマトリックスを架橋させた。得られたマトリックスは優れた機械的特性を有するとともに架橋前のポリマーの溶剤に不溶であった。溶融したマトリックスに関するDSC測定からガラス転移温度が−65℃であることが示された。
【0142】
例20
この例は、可塑化電解質を調製することに対する本発明のポリマーの使用を例示するものである。グローブボックス内の不活性な無水雰囲気(≦1vpm H2 O,O)中で全ての操作を行った。例1のポリマーをγ−ブチロラクトンとエチレンカーボネートの(50:50v:v)混合物であって、1リットル当たり1モルのリチウムヘキサフルオロホスフェートを含むものに溶解させた。次に、この混合物に、ポリマーに対して1重量%の[N(SO2252- [C652 I]+ を加えた。混合物を、28μmの剥離可能なポリプロピレン基材上で約30μmの薄いフィルムの形態に拡げ、乾燥させなかった。可塑化ポリマーマトリックスを例15の条件に従って10秒間照射することにより架橋させると、優れた機械的特性を有するエラストマーが得られたが、そのエラストマーは高レベルの液状可塑剤を含み、その可塑剤はにじみ出なかった。導電率は25℃で10-3Scm-1であった。
【0143】
例15の操作条件で、例13のポリマーをアセトニトリル:トルエン(4:1)混合物100mlに0.5g/ccの濃度で溶解させることにより溶液Aを得た。ポリマーの完全な溶解後、O/Li比が30:1になるようにLiN(SO2 CF32 を溶液Aに溶解させることにより溶液Bを得た。アセトニトリル:トルエン(4:1)混合物100mlに0.5g/ccの濃度でモル重量200,000のポリオキシエチレンを溶解させることにより溶液Cを得た。ポリオキシエチレンの完全な溶解後、O/Li比が30:1になるようにLiN(SO2 CF32 を溶液Cに溶解させることにより溶液Dを得た。溶液Eにおける溶液Bのポリマーの容量の割合が80%で、溶液Dのポリマーの容量の割合が20%となるように溶液B及びDの割合を調節した。溶液Eにポリマーに対して1重量%の[N(SO2252- [C652 I]+ を溶解させることにより溶液Fを得た。溶液Fを前述の技術により拡げた。得られたポリマーを例15に記載の手順に従って架橋させた。得られたマトリックスは優れた機械的特性を有し、そのガラス転移温度は−62℃であった。
【0144】
例22
この例は、共重合性反応性可塑剤の添加を例示するものである。例15の操作条件で、例13のポリマーをアセトニトリル:トルエン(4:1)混合物100mlに0.5g/ccの濃度で溶解させることにより溶液Aを得た。ポリマーの完全な溶解後、O/Li比が30:1になるようにLiN(SO2 CF32 を溶液Aに溶解させることにより溶液Bを得た。O/Li比が30:1になるようにLiN(SO2 CF32 をトリエチレングリコールジビニルエーテル(DVE−3)に溶解させることにより溶液Cを得た。溶液B及びCのそれぞれの一部を混合することにより溶液Dを得た。溶液Dにおいて溶液Bのポリマー容量の割合が80%となり溶液Cのポリマーの容量の割合が20%となるように、溶液B及びCの割合を調節した。溶液Dにポリマーに対して1.2重量%の[N(SO2252- [C652 I]+ を溶解させることにより溶液Eを得た。溶液Eを前述の手順に従って薄いフィルムの形態に拡げた。得られたポリマーマトリックスを出力3300μW/cm2 で波長365nmの紫外線を10秒間照射することにより架橋させた。得られたフィルムは優れた機械的特性を有し、ポリマーの溶剤に不溶であった。溶液CのDVE−3の代わりにトリメチロールプロパントリビニルエーテルを使用することによって同様なポリマーを得た。溶液Bと溶液Cの70:30の割合の混合物を調製した。
【0145】
例23
例15の操作条件で、8μmのニッケル製集電体上に貼り合わされた厚さ30μmの金属リチウム製の負極を使用することにより電気化学ジェネレーターを作製した。セパレーターは例19のポリマーマトリックスから製造されたものであった。正極は、酸化バナジウム粉末と、カーボンブラック(Shawinigan black(登録商標))と、O/Liモル比が30:1になるようにLiN(SO2 CF32 を含むポリエーテル系ターポリマーとを含む混合物であり、この正極は6クーロン/cm2 の容量を有していた。この複合材料を、厚さ45μmのフィルムが得られるように厚さ8μmのアルミニウム集電体上に溶液から拡げた。真空中80℃での熱加圧成形により電気化学ジェネレーターを集成した。80℃で12サイクルの後、このジェネレーターは、クーロン効率(coulombic efficiency)及び容量に関して非常に優れたサイクル挙動を示し、このサイクル挙動は一定のままであった。
【0146】
例24
例15の操作条件で、O/Li比が30:1になるように例1のポリマーにリチウムヘキサフルオロホスフェートを溶解させることにより溶液Aを得た。溶液Aにポリマーに対して1重量%の[N(SO2252- [C652 I]+ を加えることにより溶液Bを得た。溶液Bをコーティングすることにより28μmの剥離可能なポリプロピレン基材上で約30μmの薄いフィルムの形態にポリマーマトリックスを成形した。得られたポリマーマトリックスを出力3300μW/cm2 で波長365nmの紫外線を10秒間照射することにより架橋させた。
【0147】
90%の重量分率でグラファイトを及び10%の重量分率でビニリデン−co−ヘキサフルオロプロペンフルオリドを含む負極を使用して電気化学ジェネレーターを作製した。この負極は3.56C/cm2 の容量を有していた。溶剤相(アセトン)で厚さ16μmの銅集電体上に56μmのフィルムが生じるようにコーティングすることにより電極を得た。セパレーターは、先の段落で規定した通りのポリマー膜(O/Liモル比30:1でリチウムヘキサフルオロホスフェートを含む厚さ15μmの膜)を含んでいた。正極は、91.6%の重量分率でリチウムコバルタイトLiCoO2 を、2.7%の重量分率でカーボンブラックを、5.7%の重量分率でビニリデン−co−ヘキサフルオロプロペンフルオリドのポリマーを含む混合物を含んでいた。この正極は4.08C/cm2 の容量を有していた。溶剤相(アセトン)で厚さ8μmのアルミニウム集電体上に厚さ49μmのフィルムが生じるようにコーティングすることにより電極を得た。電気化学ジェネレーターを集成する際に、セパレーターを、リチウムヘキサフルオロホスフェートを1モル濃度で含む溶剤エチル−メチルカーボネート/エチレンカーボネートの(1:1)混合物に30分間浸漬し、負極及び正極を同じ溶液に10分間浸漬した。浸漬後、溶剤はセパレーターの容量の41%を占有し、負極の容量の51%を占有し、正極の容量の45%を占有していた。電気化学ジェネレーターを、続いて、25℃で、負極、セパレーター及び正極の軽くプレスにより素早く集成し、密閉バッグ内に入れた。25℃で12サイクルの後、ジェネレーターはクーロン効率及び容量に関して非常に優れたサイクル挙動を示し、このサイクル挙動は一定のままであった。
【0148】
例25
例15の操作手順で、γ−ブチロラクトンとエチレンカーボネートの(50:50v:v)混合物であって、1モル濃度のリチウムヘキサフルオロホスフェートを含むものに、ポリマーの容量比が50%及び溶剤混合物の容量比が50%になるように例12のポリマーを溶解させることにより溶液Aを得た。溶液Aにポリマーに対して1重量%の[N(SO2252- [C652 I]+ を加えることにより溶液Bを得た。
【0149】
58%の重量分率でグラファイトを、5.8%の重量分率でビニリデン−co−ヘキサフルオロプロペンフルオリドを、3.2%の重量分率で例12のポリマーを及び33%の重量分率でγ−ブチロラクトンとエチレンカーボネートの(50:50v:v)混合物であって、1モル濃度のLiPF6 を含む混合物を使用して電気化学ジェネレーターを作製した。例12のポリマーに対して1重量%の[N(SO2 F)2- [C55 )NH]+ も加えた。これは熱的に活性化させることのできるカチオン重合開始剤である。溶剤相(2−ブタノン)で厚さ16μmの銅集電体上にコーティングし、続いて80℃で3時間加熱して電極中の例12のポリマーを架橋させた。この負極は3.6C/cm2 の容量を有していた。正極は、58%の重量分率でリチウムホスフェート(LiFePO4 )を、5.8%の重量分率でビニリデン−co−ヘキサフルオロプロペンフルオリドを、3.2%の重量分率で例12のポリマーを、及び33%の重量分率でγ−ブチロラクトン/エチレンカーボネート(50:50)混合物であって、1モル濃度のリチウムヘキサフルオロホスフェートを含む混合物を含む混合物であった。例12のポリマーに対して1重量%の[N(SO2252- [C652 I]+ も加えた。溶剤相(ブタノン)中で厚さ8μmのアルミニウム集電体上にコーティングし、続いて80℃で3時間加熱して電極中の例12のポリマーを架橋させることにより電極を得た。この正極は3.99C/cm2 の容量を有していた。溶液Bを負極上に15μmの薄いフィルムの形態に直接コーティングすることにより溶液Bを拡げ、出力3300μW/cm2 で波長365nmの紫外線を10秒間照射することにより架橋させた。次に、電気化学ジェネレーターを、続いて、負極、セパレーター及び正極により構成される半電池を25℃でわずかにプレスすることにより素早く集成し、密閉バッグ内に入れた。25℃で8サイクルの後、ジェネレーターはクーロン効率及び容量に関して非常に優れたサイクル挙動を示し、このサイクル挙動は一定のままであった。
【0150】
例26
この例に対し、例12に記載の手順に従って反応器で重合行い、モノマーを同様に乾燥させた。
【0151】
0.5モル%のRuCl2 [P(C6523 触媒を用いて120℃で市販のアリルグリシジルエーテルを異性化することにより1−プロペニルグリシジルエーテルを調製した。水及び不純物を除去した空の反応器に500gのトルエンを入れたものに、5.67gの1−プロペニルグリシジルエーテル、16.1gのブチレンオキシド及び177.6gのエチレンオキシドを室温で導入した。反応器の温度を99℃に上昇させ、2mlのトルエン中の2×10-3モルのカリウムtert−アミレートを加えた。温度を99℃に24時間保った。
【0152】
圧力が12.3×105 Paから3.4×105 Paに低下した。温度を45℃に下げ、次に8mlのトルエンに溶解された0.2gのSantonox R(登録商標)を加えた。ハッチを通じて反応器から溶液を回収した。溶剤の蒸発後、例13に記載の比較法により求めた場合に平均分子量が44,000であるコポリマー180gを得た。
【0153】
例27
この例に対し、例12に記載の手順に従って反応器で重合行い、モノマーを同様に乾燥させた。
【0154】
水及び不純物を除去した空の反応器に、20.05gの1−プロペニルグリシジルエーテル、60.10gのブチレンオキシド及び119.9gのエチレンオキシドを室温で導入した。次に、20mlのTHF中の20×10-3モルのカリウムtert−ブタノレートを加え、反応器の温度を25℃に26時間保った。圧力が6.3×105 Paから3.6×105 Paに低下した。次に、8mlのトルエンに溶解された0.2gのSantonox R(登録商標)を加えた。反応器のハッチから粘稠液状混合物180gを回収した。モノマー及びカリウムtert−ブタノレートの割合を考慮して、分子量が10,000程度であると推定された。
【0155】
例28
例15の操作条件で、例26のポリマーをアセトニトリル:トルエン(4:1)混合物100mlに0.5g/ccの濃度で溶解させることにより溶液Aを得た。ポリマーの完全な溶解後、O/Li比が30:1になるようにLiN(SO2 CF32 を溶液Aに溶解させることにより溶液Bを得た。溶液Bにポリマーに対して1重量%の[N(SO2252- [C652 I]+ を溶解させることにより溶液Cを得た。上記の手順に従ってポリマーマトリックスを薄いフィルムの形態に拡げた。得られたポリマーマトリックスを出力3200μW/cm2 で波長365nmの紫外線を12秒間照射することにより架橋させた。得られたマトリックスは優れた機械的特性を有し、照射前のポリマー溶剤に不溶であった。ポリマーマトリックスを続いて真空中85℃で2時間乾燥させた。溶融マトリックスのDSC測定によりガラス転移温度は−62℃であった。
【0156】
例29
例15の操作条件で、O/Li比が30:1になるように例20のポリマーにLiN(SO2 CF32 を溶解させることにより溶液Aを得た。溶液Aにポリマーに対して1重量%の[N(SO2252- [C652 I]+ を溶解させることにより溶液Bを得た。上記のように溶液Bを薄いフィルムの形態に拡げ、出力3200μW/cm2 で波長365nmの紫外線を12秒間照射することにより架橋させた。得られたマトリックスは優れた機械的特性を有し、照射前のポリマー溶剤に不溶であった。求められたDSCによるガラス転移温度は−64℃であった。
【0157】
例30
例15の操作条件で、ポリマーが50%及び溶剤混合物が50%の割合(容量)となるように、テトラエチルスルファミド−エチレンカーボネート(60:40)の混合物であって、1モル濃度でリチウムヘキサフルオロホスフェートを含む混合物に、例27のポリマーを溶解させることにより溶液Aを得た。ポリマーに対して1重量%の[N(SO2252- [C652 I]+ を溶解させることにより溶液Bを得た。ポリプロピレン基材上に厚さ30μmのフィルムを形成するように、溶剤を蒸発させずに溶液Bを拡げた。得られたポリマーマトリックスを出力3200μW/cm2 で波長365nmの紫外線を12秒間照射することにより架橋させた。得られたマトリックスは優れた機械的特性を有し、いかなる溶剤もにじみ出さなかった。
【0158】
本発明を特定の態様に関連して説明してきたが、さらなる改良が可能であり、本願は本発明の原理に概して従う本発明のいかなる変更、使用又は応用も包含するものであり、当該技術分野で周知又は慣例となっているとともに上記の基本的態様及び特許請求の範囲に従うような本明細書の記載からの逸脱も包含する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式:
【化1】

(式中、Qは、結合、−CO−、−SO2 −、又はアニオン重合若しくはカチオン重合を開始する試薬に対して無反応性であるとともにオキサ若しくはアザ置換基を任意に含んでいてもよくかつ1〜30個の炭素原子を含むアルキル型、アルキルアリール型、アリールアルキル型のn+p価の有機基を表し;
Aはアニオン重合において反応性の基を表し;
Yはカチオン重合において反応性でありかつアニオン重合を開始する試薬に対して無反応性である基を表し;
nは1〜3の間で変動し;
pは1〜6の間で変動する)
により表されるアニオン重合の開始に続くカチオン架橋により得られる架橋性ポリマー。
【請求項2】
Aが、
【化2】

を含み、Yが、
【化3】

を含み、ZがO又はCH2 を表し、RがH、炭素原子数1〜12のアルキル若しくはオキサアルキル基、CN又はCH2 COOR1 (式中、R1 はH又は炭素原子数1〜12のアルキル若しくはオキサアルキル基である)を表し、R’がH又は炭素原子数1〜12のアルキル基を表し、rが1〜6の間で変動する請求項1記載のポリマー。
【請求項3】
化合物(A)n Q(Y)p のA基のみがポリマーに組み込まれている、請求項1記載のコモノマーを含むことを特徴とするアニオン開始により得られるポリマー。
【請求項4】
A基とコモノマーの重合が逐次行われてジブロック型又はトリブロック型ポリマーを形成する請求項3記載のポリマー。
【請求項5】
ポリマーの成形がA基の重合後に行われる請求項3記載のポリマー。
【請求項6】
架橋、ポリマーの硬化又は相互貫入網状構造の形成がY基の重合により行われる請求項3記載のポリマー。
【請求項7】
Y基の重合が、カチオン重合、遊離基重合又はこれらの両方を開始する試薬により活性化されうる官能基を有する他のモノマー、オリゴマー又はポリマーの存在下で行われる請求項5記載のポリマー。
【請求項8】
その表面がポリマー又はポリマー混合物と混和性でありポリマー又はポリマー混合物に付着するように場合に応じて処理されていてもよい粉末の形態をとっている添加剤、繊維の形態をとっている添加剤又はこれらの両方をさらに含む請求項5記載のポリマー。
【請求項9】
Y基と、モノマー、オリゴマー又はポリマーの形態にある任意の添加剤との重合が、場合に応じて開始剤又は増感剤の存在下で、熱、老化学作用をもつ放射線又はこれらの両方により行われる請求項5記載のポリマー。
【請求項10】
少なくとも1種の可塑剤をさらに含む請求項3記載のポリマー。
【請求項11】
添加剤が有機又は無機物であり、イオン伝導性、固有の電子特性、光学的特性、高い誘電率、ピエゾ電気特性又はこれらの組み合わせを場合に応じて有する請求項8記載のポリマー。
【請求項12】
ポリエポキシドであること及びAが、
【化4】

を含むことを特徴とする請求項3記載のポリマー。
【請求項13】
上記のような(A)n Q(Y)p で表されるモノマーを少なくとも1種含むエチレンオキシド系コポリマーであることを特徴とする請求項12記載のポリマー。
【請求項14】
モノマーが、
【化5】

【化6】

(式中、R5 は炭素原子数0〜12の2価アルキル又はオキサアルキルであり、R’は上記定義の通りである。)
を含む請求項12記載のポリマー。
【請求項15】
Aが、
【化7】

である場合に、エチレンオキシドに加えて少なくとも1種のコモノマーが使用されることを特徴とする請求項13記載のポリマー。
【請求項16】
コモノマーが、プロピレンオキシド;ブチレンオキシド;炭素原子数4〜10のジエンのモノエポキシド;メチル、エチル及びアリル基を有するグリシドールエーテルを含む請求項15記載のポリマー。
【請求項17】
Aが、
【化8】

を含む、スチレン単位をベースとする請求項3記載のポリマー。
【請求項18】
一般式:
【化9】

(式中、pは2〜60の間で変動し、R6 は炭素原子数1〜18の1価アルキル又は炭素原子数5〜18の1価アリールであり、Qは(CH2q 、−CO−又は−SO2 −であり、qは0〜4の間で変動する)
により表されるα−アルキル(オリゴエトキシ)−ω−ビニルベンジルのコポリマーであることを特徴とする請求項17記載のポリマー。
【請求項19】
モノマーが、
【化10】

(式中、R’及びQは上記定義の通りであり、R7 はR5 である)
を含む請求項17記載のポリマー。
【請求項20】
Aが、
【化11】

を含む場合に、α−アルキル(オリゴエトキシ)−ω−ビニルベンジルに加えて少なくとも1種の他のモノマーが使用される請求項17記載のポリマー。
【請求項21】
アクリレート系であること及びAが、
【化12】

(式中、Rは上記定義の通りである)
を含むことを特徴とする請求項3記載のポリマー。
【請求項22】
一般式:
【化13】

(式中、pは2〜60の間で変動し、RはH、炭素原子数1〜12のアルキル若しくはオキサアルキル基、CN又はCHCOOR1 (式中、R1 はH又は炭素原子数1〜12のアルキル基若しくはオキサアルキル基である)であり、R6 は炭素原子数1〜18の1価アルキル又は炭素原子数5〜18の1価アリールである)
により表されるα−アルキル(オリゴエトキシ)エチルアクリレート、メタクリレート又はイタコネートのコポリマーであることを特徴とする請求項21記載のポリマー。
【請求項23】
モノマーが、
【化14】

(式中、R7 、R及びR’は上記定義の通りである)
を含む請求項21記載のポリマー。
【請求項24】
α−アルキル(オリゴエトキシ)エチルアクリレート、メタクリレート又はイタコネートに加えて有機又は金属アクリレート型の少なくとも1種の他のモノマーを使用することを特徴とする請求項21記載のポリマー。
【請求項25】
少なくとも1種の請求項3記載のポリマーと、少なくとも1種の塩Mn+n - (Mn+は電荷nの無機、有機又は有機金属カチオンであり、X- は1価アニオンであり、アニオンX- の二つ以上が共有結合鎖又はポリマー鎖に属する鎖で連結されている)とを含むイオン伝導性材料。
【請求項26】
カチオンの少なくとも一部がリチウムイオンである請求項25記載の材料。
【請求項27】
アニオンX- の少なくとも一部がClO4 - ,BF4 - ,PF6 - ,AsF6 - ,SbF4 - ,Rf SO3 - ,(Rx SO2 NSO2 R’x- ,(Rx SO2 C(SO2 R’x )Rx ”)- (式中、Rx 及びR’x は互いに同じであるか又は異なり、それらの少なくとも一方が電気陰性原子を有し、Rx ”はRx ,Rx SO2 - 又はRx ’SO2 - である),電子吸引基を有するシクロペンタジエンから誘導されたアニオン及びそのアザ類似体、電子吸引基を有するピリミジントリオン又は1,3−ジオキサン−4,5−ジオンから誘導されたアニオン並びにマロニトリル誘導体を含む請求項25記載の材料。
【請求項28】
アニオンの少なくとも一部がClO4 - ,BF4 - ,PF6 - ,CF3 SO3 - ,(FSO22- ,(CF3 SO22- ,(C25 SO22- ,[(CF3 SO22 CH]- ,[CF3 SO2 )C(CN)2- ,[(CF3 SO23 C]- ,(CF3 SO2 )NSO2 N(R92- (式中、R9 は炭素原子数1〜30のアルキルである)、4,5−ジシアノ−1,2,3−トリアゾール、3,5−ビストリフルオロメチル−1,2,4−トリアゾール又はトリシアノメタンから誘導されるアニオンを含む請求項27記載の材料。
【請求項29】
アニオンの少なくとも一部がポリマー鎖に結合しているか若しくは混合物中の別のポリマーの鎖の一部であるか又はポリマーと相互貫入網状構造を形成している請求項25記載の材料。
【請求項30】
アニオンの少なくとも一部が独立に又は同時にA基又はY基を有し、ビニル結合がカチオン重合ステップ若しくはアニオン重合ステップの間に又はカチオン重合とラジカル重合とが組合わさった過程を通じてポリマー鎖中に組み込まれる請求項25記載の材料。
【請求項31】
アニオン重合後に得られる鎖末端がY基の活性化の間に反応して架橋又は共架橋を引き起し、アセタール型の安定な結合を生成する請求項11記載の材料。
【請求項32】
架橋前のポリマーの重量が2×103 〜60×103 g/モルである請求項31記載の材料。
【請求項33】
電解質が請求項25に記載の材料を少なくとも一部に含む電気化学セル。
【請求項34】
請求項25に記載の材料を少なくとも一部に含む少なくとも1つの正極及び少なくとも1つの負極を含む、1次若しくは2次ジェネレーター型の電気的エネルギー貯蔵装置又はスーパーキャパシティー。
【請求項35】
電極反応に関与するイオンがリチウムイオンである請求項34記載の装置。
【請求項36】
負極が、場合に応じて酸化リチウム、リチウムと遷移金属の複窒化物、一般式:Li1+y Ti2-x/44 (式中、X≧0及びy≦1)、MoO2 ,WO2 、炭素及び有機物質の熱分解から得られる炭化生成物、リチウム−アルミニウム合金又はリチウム−ケイ素合金中にナノメートル分散体の形態にあってもよい金属リチウム又はその合金を含む請求項34記載の装置。
【請求項37】
正極が、単独で又は組み合わされて使用される酸化バナジウムLiy VOx (2x−5≦y≦2x−3;2.15≦x≦2.5),Liy1-x-z Cox Alz2 (0≦x+y≦1及び0≦y≦1),マンガンスピネルLiy Mn2-xx4 (MはLi,Cr,Al,V,Niであり、0≦x≦0.5及び0≦y≦2である)、有機ポリジスルフィド、ポリキノン様ロジゾネート、FeS、FeS2 、硫酸鉄、オリビン型若しくはナシコン型構造の鉄及びリチウムのホスフェート及びホスホシリケート、又はこれらの鉄をマンガンで置換した生成物を含むもう1つの材料をさらに含む請求項34記載の装置。
【請求項38】
前記材料が、非環式及び環式カーボネート、γ−ブチロラクトン、カルボン酸エステル、テトラアルキルスルファミド、モノ−、ジ−、トリ−及びテトラエチレングリコールのジアルキル化エーテル、及び分子量2000g/モル未満のオリゴマー、並びにこれらの混合物からなる群から選ばれる極性液体を含む可塑剤をさらに含む請求項34記載の装置。
【請求項39】
2つの支持体とエレクトロクロミック材料層と対電極を含み、前記2つの支持体のうちの一方が透明で酸化スズ系導電体又はドープト酸化インジウム導電体で被覆されており、電解質が請求項25記載の材料であることを特徴とする調光装置。
【請求項40】
その酸化度に依存して変色する着色剤をさらに含む請求項39記載の装置。

【公開番号】特開2011−137176(P2011−137176A)
【公開日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−56011(P2011−56011)
【出願日】平成23年3月14日(2011.3.14)
【分割の表示】特願平11−180143の分割
【原出願日】平成11年6月25日(1999.6.25)
【出願人】(591117930)
【Fターム(参考)】