架空線点検装置
【課題】傾斜した架空線に沿って自走が容易な架空線点検装置を提供する。
【解決手段】架空線点検装置100は、一対の移動フレーム20・30を備える。これらの移動フレーム20・30は、架空線Wを軌道として転動する車輪40a、及び架空線Wの中心に向かって架空線Wの外周を両側から等圧に把持するチャック装置10をそれぞれ有する。架空線点検装置100は、一対の移動フレーム20・30を連結し、移動フレーム20に対して移動フレーム30を架空線Wの軸方向に沿って略平行に伸縮させる伸縮手段70を備える。一対のチャック装置10・10が架空線Wを把持又は解放する動作と一対の移動フレーム20・30が伸縮する動作とを繰り返すことにより、架空線Wに沿って間欠的に移動できる。
【解決手段】架空線点検装置100は、一対の移動フレーム20・30を備える。これらの移動フレーム20・30は、架空線Wを軌道として転動する車輪40a、及び架空線Wの中心に向かって架空線Wの外周を両側から等圧に把持するチャック装置10をそれぞれ有する。架空線点検装置100は、一対の移動フレーム20・30を連結し、移動フレーム20に対して移動フレーム30を架空線Wの軸方向に沿って略平行に伸縮させる伸縮手段70を備える。一対のチャック装置10・10が架空線Wを把持又は解放する動作と一対の移動フレーム20・30が伸縮する動作とを繰り返すことにより、架空線Wに沿って間欠的に移動できる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、架空線点検装置に関する。特に、OPGW(Optical fiber composite overhead ground wire:光ファイバ複合架空地線)などの架空線の損傷状況を点検する装置であって、架空線に沿って自走する架空線点検装置の構造に関する。
【背景技術】
【0002】
OPGWは、架空電線の内部に光ファイバを収納している。光ファイバは、雷や交流電磁界の影響を受けずに通信が可能であり、光ファイバを架空電線に収納することによって、既存の送電線網を利用して、大容量の通信回線網を構築できるという利点がある。OPGWは、このような利点があることから、国内外の電力会社に広く利用されている。
【0003】
例えば、OPGWは、多芯光ファイバユニットをアルミ管に挿通し、更に、このアルミ管をアルミ覆鋼線で覆っている。そして、アルミ管又はアルミ覆鋼線に損傷が発生すると、これに起因して、光通信に障害がでる心配がある。したがって、電力会社では、自走式の架空線点検装置などを用いて、OPGWの損傷を定期的又は不定期に点検している。
【0004】
このような自走式の架空線点検装置としては、安定性が良好であり、かつ、架空線上の障害物が大きい場合にも走行可能であり、更に、この装置の搬入及び搬出に障害とならないようにコンパクトな退避装置を備えた架空線点検装置が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
特許文献1による架空線点検装置は、一対の走行ローラが架空地線や電力線などの架空線を走行することにより、送配電線路に架設する架空線の損傷状況を遠隔操作により点検して撮影している。走行ローラの下部には、走行ローラと共に架空線を挟持して転動可能な押さえローラを配設している。この押さえローラは、積雪防止用ダンパ(障害物)の上を通過するときには、ダンパとの干渉を避けるために、架空線から一時的に退避可能な退避装置に連結している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−242476号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1による架空線点検装置は、一対の走行ローラが架空線に懸架され、これらの走行ローラが架空線上を摩擦転動することによって、架空線に沿って自走するように構成している。このため、急角度に傾斜した架空線に沿って、架空線点検装置を走行することが困難であるという問題がある。
【0008】
一方、走行ローラと押さえローラとの挟持力を強くすれば、架空線点検装置を傾斜した架空線に沿って走行することがあるいは可能となるが、架空線を損傷しかねないという問題がある。架空線を損傷することなく、傾斜した架空線に沿って走行(自走)が容易な架空線点検装置が求められている。
【0009】
又、特許文献1による架空線点検装置は、架空線を上側又は下側から撮影するCCDカメラを備えており、映像機器で記録された架空線の映像を観察することにより、架空線の損傷状況を点検できる、としている。
【0010】
しかし、特許文献1による架空線点検装置は、架空線の観察方向が限定又は制約されており、架空線の全体(全周囲)を点検することを困難としている、という問題がある。架空線の全周囲を点検可能な架空線点検装置が求められている。そして、以上のことが本発明の課題といってよい。
【0011】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであり、傾斜した架空線に沿って自走が容易であり、かつ、架空線の全周囲を点検可能な架空線点検装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、架空線の中心に向かって架空線の外周を等圧的に把持するチャック装置、及び架空線上を転動する車輪を備える一対の移動フレームと、これらの移動フレームを架空線に沿って相対的に伸縮させる伸縮装置とで架空線点検装置を構成し、一方の移動フレームが架空線を把持しているときは、他方の移動フレームが架空線を解放して、一対の移動フレームを相対的に離れる方向に移動させ、他方の移動フレームが架空線を把持しているときは、一方の移動フレームが架空線を解放して、一対の移動フレームを相対的に近づく方向に移動させ、これらの動作を繰り返すことにより、架空線を損傷することなく、傾斜した架空線に沿って自走が容易なことを見出し、これに基づいて、以下のような新たな架空線点検装置を発明するに至った。
【0013】
(1)本発明による架空線点検装置は、架空線をその外周方向から導入可能な切り欠き部を下部に設ける円形状の開口を有し、この開口の略中心に架空線が位置するように配置し、架空線を軌道として転動する車輪、及び架空線の中心に向かって架空線の外周を両側から等圧に把持するチャック装置を有する一対の対向する移動フレームと、これらの移動フレームを連結し、一方の前記移動フレームに対して他方の前記移動フレームを架空線の軸方向に沿って略平行に伸縮させる伸縮手段と、を備え、一方の前記チャック装置が架空線を把持しているときは、他方の前記チャック装置が架空線を解放して、前記伸縮手段が一対の前記移動フレームを相対的に離れる方向に移動させ、他方の前記チャック装置が架空線を把持しているときは、一方の前記チャック装置が架空線を解放して、前記伸縮手段が一対の前記移動フレームを相対的に近づく方向に移動させ、一対の前記チャック装置が架空線を把持又は解放する動作と一対の前記移動フレームが伸縮する動作とを繰り返すことにより、架空線に沿って移動する。
【0014】
(2)前記チャック装置は、V字状に開角した溝部を設けるパッドを有すると共に、これらのパッドの溝部が架空線の外周を両側から等圧に把持する一対の開閉レバー、これらの開閉レバーが開閉する方向と略直交する方向に進退するように配置されたピストンロッド、及びこのピストンロッドの進退運動を一対の前記開閉レバーの開閉運動に変換する変換機構を内蔵する本体を有するハンド装置と、前記ピストンロッドの先端面を輪郭に従動させて、当該ピストンロッドを進退させる偏心カム板と、この偏心カム板を回動するモータと、を備え、このモータを一方の方向に回転すると、一対の前記開閉レバーを閉じて架空線を把持でき、このモータを他方の方向に回転すると、一対の前記開閉レバーを開いて架空線を解放できることが好ましい。
【0015】
(3)前記伸縮手段は、対向する二組のリンク棒の両端部の連結点がそれぞれ等しい距離を有し、これら四つの前記リンク棒の両端部が相互に回転自在に連結することによって変形する菱形の四節回転連鎖を構成する二組の平行クランク機構と、一対の前記移動フレームの間に配置される中間基板と、この中間基板と一方の前記移動フレームとの間に配置される第1移動基板と、この中間基板と他方の前記移動フレームとの間に配置される第2移動基板と、一端部が一方の前記移動フレームに支持され、他端部が他方の前記移動フレームに向かって延び、前記第1移動基板、前記中間基板、前記第2移動基板、及び他方の前記移動フレームがそれぞれ平行移動するようにスライド可能に案内する複数のスライド軸と、を含み、前記第1移動基板は、一方の前記平行クランク機構に設けた二組の前記リンク棒が互いに開角又は閉角するように、二組の前記リンク棒の連結中心が移動する移動連結点を互いに進退させるピストンロッドを設ける一対の第1電動シリンダを有し、前記第2移動基板は、他方の前記平行クランク機構に設けた二組の前記リンク棒が互いに開角又は閉角するように、二組の前記リンク棒の連結中心が移動する移動連結点を互いに進退させるピストンロッドを設ける一対の第2電動シリンダを有し、一方の前記移動フレームは、一方の前記平行クランク機構に設けた二組の前記リンク棒の一方の端部同士の連結中心が固定された第1固定連結点を連結する第1連結ピンを中央部に有し、他方の前記移動フレームは、他方の前記平行クランク機構に設けた二組の前記リンク棒の他方の端部同士の連結中心が固定された第2固定連結点を連結する第2連結ピンを中央部に有し、前記中間基板は、一方の前記平行クランク機構に設けた二組の前記リンク棒の他方の端部同士を回動可能に連結すると共に、他方の前記平行クランク機構に設けた二組の前記リンク棒の一方の端部同士を回動可能に連結する第3連結ピンを中央部に有し、一対の前記第1電動シリンダのピストンロッドを同期して進出すると、一方の前記平行クランク機構に設けた二組の前記リンク棒が互いに開角して、一方の前記移動フレームに対して前記第1移動基板及び前記中間基板を離れる方向に移動させ、一対の前記第2電動シリンダのピストンロッドを同期して進出すると、他方の前記平行クランク機構に設けた二組の前記リンク棒が互いに開角して、前記中間基板に対して前記第2移動基板及び他方の前記移動フレームを離れる方向に移動させ、一対の前記第1電動シリンダのピストンロッドを同期して後退すると、一方の前記平行クランク機構に設けた二組の前記リンク棒が互いに閉角して、一方の前記移動フレームに対して前記第1移動基板及び前記中間基板を近づく方向に移動させ、一対の前記第2電動シリンダのピストンロッドを同期して後退すると、他方の前記平行クランク機構に設けた二組の前記リンク棒が互いに閉角して、前記中間基板に対して前記第2移動基板及び他方の前記移動フレームを近づく方向に移動させてもよい。
【0016】
(4)前記スライド軸は、他方の前記移動フレームの脱落を防止する停止部材を他方の端部に備えることが好ましい。
【0017】
(5)前記移動フレームは、前記車輪に対向して配置された一対のプランジャ型の電磁ソレノイドを更に備え、この電磁ソレノイドは、架空線の外周に部分的に当接可能なV形溝を外周に形成して架空線に転動可能な溝付きローラと、この溝付きローラを基端部に取り付ける可動鉄芯と、この可動鉄芯を吸引して保持できる本体と、前記可動鉄芯の基端部を前記本体から突出するように力を付勢する圧縮コイルばねと、前記可動鉄芯の先端部側に突出したプッシュバーと、を有し、前記移動フレームは、前記プッシュバーに係合して前記可動鉄芯の回転を防止する回り止め手段を有し、一対の前記電磁ソレノイドを励磁すると、これらの溝付きローラが架空線から退避するように後退し、一対の前記電磁ソレノイドを消磁すると、これらの溝付きローラが架空線の外周を付勢するように前進させてもよい。
【0018】
(6)他方の前記移動フレームは、一方の前記移動フレームと反対側に突出するように配置されると共に、架空線の全外周を検査可能に架空線の回りに等間隔に配置された三つ以上のカメラを備えることが好ましい。
【発明の効果】
【0019】
本発明による架空線点検装置は、架空線を軌道として転動する車輪、及び架空線の中心に向かって架空線を両側から等圧に把持するチャック装置を有する一対の対向する移動フレーム、及びこれらの移動フレームを連結し、一方の前記移動フレームに対して他方の前記移動フレームを架空線の軸方向に沿って略平行に伸縮させる伸縮手段とで構成し、一方の移動フレームが架空線を把持しているときは、他方の移動フレームが架空線を解放して、一対の移動フレームを相対的に離れる方向に移動させ、他方の移動フレームが架空線を把持しているときは、一方の移動フレームが架空線を解放して、一対の移動フレームを相対的に近づく方向に移動させ、これらの動作を繰り返すことにより、架空線を損傷することなく、傾斜した架空線に沿って自走が容易である。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の一実施形態による架空線点検装置の構成を示す斜視図である。
【図2】前記実施形態による架空線点検装置の構成を示す正面図であり、一方の移動フレームに配置されたチャック装置に設けた一対の開閉レバーが開いた状態図である。
【図3】前記実施形態による架空線点検装置の構成を示す右側面図であり、架空線点検装置の下部の図示を省略している。
【図4】前記実施形態による架空線点検装置の構成を示す縦断面図であり、架空線点検装置の縦断面を右側面側から観ている。
【図5】前記実施形態による架空線点検装置の構成を示す平面図であり、一対の移動フレームが最も近づいた状態図である。
【図6】前記実施形態による架空線点検装置の構成を示す背面図である。
【図7】前記実施形態による架空線点検装置に備わる第1移動基板の正面図である。
【図8】前記実施形態による架空線点検装置に備わる中間基板の正面図である。
【図9】前記実施形態による架空線点検装置に備わる二組の平行クランク機構の斜視分解組立図である。
【図10】前記実施形態による架空線点検装置に備わる第1移動フレームの背面図である。
【図11】前記実施形態による架空線点検装置の構成を示す平面図であり、一対の移動フレームが最も離れた状態図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照して本発明を実施するための形態を説明する。
[架空線点検装置の構成]
(架空線点検装置の概略構成)
最初に、本発明の一実施形態による架空線点検装置の概略構成を説明する。図1は、本発明の一実施形態による架空線点検装置の構成を示す斜視図である。
【0022】
図1を参照すると、本発明の第1実施形態による架空線点検装置100は、一対の対向する移動フレーム20・30を備えている。一対の移動フレーム20・30は、架空線Wの中心に向かって架空線Wの外周を両側から等圧に把持するチャック装置10をそれぞれ有している。
【0023】
図1を参照すると、一方の移動フレーム20は、所定の板厚を有する第1基板2bにチャック装置10を装着している。同様に、他方の移動フレーム30は、所定の板厚を有する第2基板3bにチャック装置10を装着している。一方の移動フレーム20と他方の移動フレーム30とは、同様に構成しているが、これらのチャック装置10に備わるハンド装置11が互いに外側を向くように、一対の移動フレーム20・30を相反する向きに配置している。
【0024】
図1を参照すると、架空線点検装置100は、第1基板2bと第2基板3bとの間に配置される中間基板4を備えている。又、架空線点検装置100は、第1移動基板5と第2移動基板6を備えている。第1移動基板5は、中間基板4と第1基板2bとの間に配置されている。第2移動基板6は、中間基板4と第2基板3との間に配置されている。
【0025】
図1を参照すると、架空線点検装置100は、四つのスライド軸23を備えている。スライド軸23は、その一端部にナット23nを締結して(図2参照)、第1基板2bに支持されている。又、スライド軸23の他端部は、他方の移動フレーム30に向かって延びている。そして、これらのスライド軸23は、第1移動基板5、中間基板4、第2移動基板6、及び第2基板3bがそれぞれ平行移動するようにスライド可能に案内している。
【0026】
(チャック装置の構成)
次に、本発明の実施形態によるチャック装置の構成を説明する。図2は、前記実施形態による架空線点検装置の構成を示す正面図であり、一方の移動フレームに配置されたチャック装置に設けた一対の開閉レバーが開いた状態図である。
【0027】
図3は、前記実施形態による架空線点検装置の構成を示す右側面図であり、架空線点検装置の下部の図示を省略している。図4は、前記実施形態による架空線点検装置の構成を示す縦断面図であり、架空線点検装置の縦断面を右側面側から観ている。
【0028】
図1から図4を参照すると、チャック装置10は、ハンド装置11、偏心カム板12、及びモータ13mを備えている。ハンド装置11は、市販のメカニカルハンドを用いることができる。ハンド装置11は、一対の開閉レバー11a・11b、ピストンロッド11c、及び箱状の本体11hを有している。
【0029】
図1から図4を参照すると、一対の開閉レバー11a・11bの内側には、パッド11pを一組の六角穴付きボルトなどで固定している。パッド11pの片面には、V字状に開角した溝部11vを設けており、一対の溝部11v・11vが対向するように配置している。そして、一対の開閉レバー11a・11bを閉じると、これらのパッド11p・11pの溝部11vが架空線Wの外周を両側から等圧に把持できる。パッド11pは、架空線Wを損傷しないように、弾性を有する合成樹脂からなることが好ましい。
【0030】
図1から図4を参照すると、ピストンロッド11cは、一対の開閉レバー11a・11bが開閉する方向と略直交する方向に進退するように配置されている。一対の開閉レバー11a・11bの先端部には、ボタン11dを固定している。圧縮コイルばね11sは、ボタン11dと本体11hとの間に介装され、ピストンロッド11cが復帰する力を付勢している。
【0031】
図1から図4を参照すると、本体11hは、ピストンロッド11cの進退運動を一対の開閉レバー11a・11bの開閉運動に変換する変換機構(図示せず)を内蔵している。一方の本体11hは、その広い面が第1基板2bに取り付けられている。同様に、他方の本体11hは、その広い面が第2基板3bに取り付けられている(図6参照)。
【0032】
図1から図4を参照して、ボタン11dを押すと、一対の開閉レバー11a・11bを閉じることができる。そして、架空線Wを把持できる。ボタン11dを解放すると、一対の開閉レバー11a・11bを初期の状態に開くことができる。そして、架空線Wを解放できる。
【0033】
図1から図4を参照すると、偏心カム板12は、円板の中心から所定距離、偏心した位置に回転中心を有している。そして、偏心カム板12を一方の方向に90度、回動すると、偏心カム板12の輪郭12aにボタン11dの先端面(ピストンロッド11cの先端面)が従動して、ピストンロッド11cを本体11hに向けて進出できる。一方、この状態から、偏心カム板12を他方の方向(逆方向)に90度、回動すると、圧縮コイルばね11sに付勢されて、偏心カム板12の輪郭12aにボタン11dの先端面(ピストンロッド11cの先端面)が従動して、ピストンロッド11cを本体11hから後退できる。
【0034】
図1から図4を参照すると、偏心カム板12の回転中心は、回転シャフト121の一端部に固定されている。回転シャフト121の他端部には、大歯車12gを固定している。一方の回転シャフト121の中間部は、図示しないベアリングを介して、第1基板2bに回動自在に保持されている。又、他方の回転シャフト121の中間部は、図示しないベアリングを介して、第2基板3bに回動自在に保持されている。そして、大歯車12gは、モータ13mの出力軸に固定した小歯車13gに噛み合っている。
【0035】
図1から図4を参照して、モータ13mを一方の方向に所定回転数だけ回転すると、小歯車13g→大歯車12g→偏心カム板12→ピストンロッド11cの経路で運動が伝動され、一対の開閉レバー11a・11bを閉じて架空線Wの外周を把持できる。一方、この状態から、モータ13mを他方の方向(逆方向)に所定回転数だけ回転すると、前述と同じ経路で運動が伝動され、一対の開閉レバー11a・11bを開いて架空線Wを解放できる。
【0036】
例えば、モータ13mは、回転数が検出可能な回転検出板付きのリバーシブルモータを用いてもよく、正逆運転が可能であり、回転数を制御が容易なパルスモータを用いることもできる。
【0037】
(架空線点検装置の構成)
引き続き、実施形態による架空線点検装置100の構成を説明する。図5は、前記実施形態による架空線点検装置の構成を示す平面図であり、一対の移動フレームが最も近づいた状態図である。
【0038】
図6は、前記実施形態による架空線点検装置の構成を示す背面図である。図7は、前記実施形態による架空線点検装置に備わる第1移動基板の正面図である。図8は、前記実施形態による架空線点検装置に備わる中間基板の正面図である。
【0039】
図9は、前記実施形態による架空線点検装置に備わる二組の平行クランク機構の斜視分解組立図である。図10は、前記実施形態による架空線点検装置に備わる第1移動フレームの背面図である。図11は、前記実施形態による架空線点検装置の構成を示す平面図であり、一対の移動フレームが最も離れた状態図である。
【0040】
図2又は図10を参照すると、第1基板2bは、架空線Wをその外周方向から導入可能な、逆V字状に開角した切り欠き部21bを下部に設けている。又、第1基板2bは、切り欠き部21bに連通した円形状の開口22bを設けている。
【0041】
同様に、図6を参照すると、第2基板3bは、架空線Wをその外周方向から導入可能な、逆V字状に開角した切り欠き部31bを下部に設けている。又、第2基板3bは、切り欠き部31bに連通した円形状の開口32bを設けている。
【0042】
又、図7を参照すると、第1移動基板5及び第2移動基板6は、架空線Wをその外周方向から導入可能な、逆V字状に開角した切り欠き部51b及び切り欠き部61bを下部にそれぞれ設けている。そして、第1移動基板5及び第2移動基板6は、切り欠き部51b及び切り欠き部61bにそれぞれ連通する円形状の開口52b及び円形状の開口62bを設けている。
【0043】
更に、図8を参照すると、中間基板4は、架空線Wをその外周方向から導入可能な、逆V字状に開角した切り欠き部41bを下部に設けている。又、中間基板4は、切り欠き部41bに連通した方形の開口42bを設けている。
【0044】
図3又は図4を参照すると、一方の移動フレーム20は、架空線Wを軌道として転動する車輪40aを有している。又、フレーム40bは、この車輪40aの両軸を回転可能に支持すると共に、第1基板2bに片持ち状に支持されている。そして、この車輪40aは、開口22bの略中心に架空線Wが位置するように配置されている(図10参照)。つまり、この車輪40aは、開口22bの略中心に架空線Wが位置するように、架空線Wを制限している。なお、図7に示されたフレーム40bは、第1基板2bに取り付けている。
【0045】
同様に、図3又は図4を参照すると、他方の移動フレーム30は、架空線Wを軌道として転動する車輪40aを有している。又、フレーム40bは、この車輪40aの両軸を回転可能に支持すると共に、第2基板3bに片持ち状に支持されている。そして、この車輪40aは、開口32bの略中心に架空線Wが位置するように配置されている(図6参照)。つまり、この車輪40aは、開口32bの略中心に架空線Wが位置するように、架空線Wを制限している。
【0046】
更に、図8を参照すると、中間基板4は、架空線Wを軌道として転動する車輪40aを有している。この車輪40aは、回動軸40によって、中間基板4に両軸支持されている。そして、この車輪40aは、開口42bの略中央部に架空線Wが位置するように配置されている。つまり、この車輪40aは、開口52b及び開口62bの略中心に架空線Wが位置するように、架空線Wを制限している(図4及び図7参照)。
【0047】
図2及び図4を参照すると、一方の移動フレーム20は、開口22bの両側に比較的近接して、車輪40aと一対の開閉レバー11a・11bを配置している。したがって、一対の開閉レバー11a・11bの略中間に架空線Wが位置するので、架空線Wを等圧で把持できる。
【0048】
同様に、図4及び図6を参照すると、他方の移動フレーム30は、開口22bの両側に比較的近接して、車輪40aと一対の開閉レバー11a・11bを配置している。したがって、一対の開閉レバー11a・11bの略中間に架空線Wが位置するので、架空線Wを等圧で把持できる。
【0049】
(伸縮手段の構成)
次に、架空線点検装置100に備わる伸縮手段の構成を説明する。図5又は図9及び図11を参照すると、架空線点検装置100は、一対の移動フレーム20・30を連結し、一方の移動フレーム20に対して他方の移動フレーム30を架空線Wの軸方向に沿って略平行に伸縮させる伸縮手段70を備えている。伸縮手段70は、二組の平行クランク機構71・72を含み、中間基板4、第1移動基板5、第2移動基板6、及び四つのスライド軸23を含んでいる。
【0050】
図5又は図9及び図11を参照すると、平行クランク機構71は、四つのリンク棒7a・7b・7c・7dの両端部が相互に回転自在に連結することによって、変形する菱形の四節回転連鎖を構成している。これらのリンク棒7a・7b・7c・7dは、互いに等しい長さを有すると共に、各両端部の連結点(実体として、連結穴の中心点)がそれぞれ等しい距離を有している。
【0051】
同様に、図5又は図9及び図11を参照すると、平行クランク機構72は、四つのリンク棒7e・7f・7g・7hの両端部が相互に回転自在に連結することによって、変形する菱形の四節回転連鎖を構成している。これらのリンク棒7e・7f・7g・7hは、互いに等しい長さを有すると共に、各両端部の連結点(実体として、連結点の中心点)がそれぞれ等しい距離を有している。
【0052】
なお、図9を参照すると、例えば、リンク棒7aとリンク棒7b、リンク棒7gとリンク棒7h、又はリンク棒7aとリンク棒7hは、同じものであるが説明の便宜上、符号を変えて区別している。
【0053】
図1又は図5、及び図7又は図11を参照すると、第1移動基板5は、一対の第1電動シリンダ73a・73bを備えている。これらの第1電動シリンダ73a・73bは、対向するように配置され、固定板731を介して、第1移動基板5の両側面に支持されている。
【0054】
同様に、図1又は図5、及び図8又は図11を参照すると、第2移動基板6は、一対の第2電動シリンダ73e・73fを備えている。これらの第2電動シリンダ73e・73fは、対向するように配置され、固定板731を介して、第2移動基板6の両側面に支持されている。
【0055】
なお、第1電動シリンダ73a・73bと第2電動シリンダ73e・73fは、同じものであるが説明の便宜上、符号を変えて区別している。そして、これらの電動シリンダは、市販品を用いることができる。これらの電動シリンダの本体は、モータとボールねじ(いずれも図示せず)を内蔵している。このモータを一方の方向に回転すると、ピストンロッド73pを進出でき、このモータを他方の方向に回転すると、ピストンロッド73pを後退できる。そして、図示された電動シリンダは、ピストンロッド73pのストロークが固定されたものを使用している。
【0056】
図5又は図7、及び図9又は図11を参照すると、第1電動シリンダ73aのピストンロッド73pは、第1連結具74aを介して、リンク棒7aとリンク棒7cの一方の端部同士を回転自在に連結している。そして、リンク棒7aとリンク棒7cの端部同士の連結点は、第1移動基板5に対して、リンク棒7aとリンク棒7cとの連結中心がピストンロッド73pの進退する方向に移動する第1移動連結点M1となっている。
【0057】
同様に、図5又は図7、及び図9又は図11を参照すると、第1電動シリンダ73bのピストンロッド73pは、第2連結具74bを介して、リンク棒7bとリンク棒7dの一方の端部同士を回転自在に連結している。そして、リンク棒7bとリンク棒7dの端部同士の連結点は、第2移動基板6に対して、リンク棒7bとリンク棒7dとの連結中心がピストンロッド73pの進退する方向に移動する第2移動連結点M2となっている。
【0058】
図5又は図7、及び図9又は図11を参照すると、リンク棒7aとリンク棒7bの他方の端部同士は、第1連結ピン741で回転自在に連結している。第1連結ピン741は、その先端部が第1基板2bに固定したフレーム40bに締結している。つまり、第1連結ピン741の中心は、リンク棒7aとリンク棒7bとの端部同士の連結中心が第1基板2bに固定された第1固定連結点Q1となっている。
【0059】
又、図5又は図7、及び図9又は図11を参照すると、リンク棒7cとリンク棒7dの他方の端部同士は、第3連結ピン743で回転自在に連結している。第3連結ピン743は、その先端部が中間基板4に締結している。つまり、第3連結ピン743の中心は、リンク棒7cとリンク棒7bとの端部同士の連結中心が中間基板4に固定された第3固定連結点Q3となっている。
【0060】
図5に示された状態から、第1電動シリンダ73aのピストンロッド73pを進出して、第1移動連結点M1を平行クランク機構71の中心部に向かう方向に移動すると、リンク棒7aとリンク棒7cの開き角を角度αから角度βに開角できる(図11参照)。この場合、第1基板2bは、四つのスライド軸23の端部を固定しているので、第1移動基板5(第1移動連結点M1)及び中間基板4(第3固定連結点Q3)は、第1基板2b(第1固定連結点Q1)から離れる方向に移動できる。
【0061】
同様に、図5に示された状態から、第1電動シリンダ73bのピストンロッド73pを進出して、第2移動連結点M2を平行クランク機構71の中心部に向かう方向に移動すると、リンク棒7bとリンク棒7dの開き角を角度αから角度βに開角できる(図11参照)。この場合、第1基板2b(第1固定連結点Q1)は、四つのスライド軸23の端部を固定しているので、第1移動基板5(第1移動連結点M1)及び中間基板4(第3固定連結点Q3)は、第1基板2bから離れる方向に移動できる。
【0062】
一方、図11に示された状態から、第1電動シリンダ73aのピストンロッド73pを後退して、第1移動連結点M1を平行クランク機構71の中心部から離れる方向に移動すると、リンク棒7aとリンク棒7cの開き角を角度βから角度αに閉角できる(図5参照)。この場合、第1基板2bは、四つのスライド軸23の端部を固定しているので、第1移動基板5(第1移動連結点M1)及び中間基板4(第3固定連結点Q3)は、第1基板2b(第1固定連結点Q1)に近づく方向に移動できる。
【0063】
同様に、図11に示された状態から、第1電動シリンダ73bのピストンロッド73pを後退して、第2移動連結点M2を平行クランク機構71の中心部から離れる方向に移動すると、リンク棒7bとリンク棒7dの開き角を角度βから角度αに閉角できる(図5参照)。この場合、第1基板2bは、四つのスライド軸23の端部を固定しているので、第1移動基板5(第1移動連結点M1)及び中間基板4(第3固定連結点Q3)は、第1基板2b(第1固定連結点Q1)に近づく方向に移動できる。
【0064】
図5及び図11を参照すると、第1電動シリンダ73aと第1電動シリンダ73bのいずれか一方のみで、平行クランク機構71の運動が可能であるが、平行クランク機構71の運動を確実にするために、第1電動シリンダを一対に配置した。そして、第1電動シリンダ73aと第1電動シリンダ73bとは、同期して動作させることが好ましい。
【0065】
図5又は図8、及び図9又は図11を参照すると、第2電動シリンダ73eのピストンロッド73pは、第3連結具74eを介して、リンク棒7eとリンク棒7gの一方の端部同士を回転自在に連結している。そして、リンク棒7eとリンク棒7gの端部同士の連結点は、リンク棒7eとリンク棒7gとの連結中心がピストンロッド73pの進退する方向に移動する第3移動連結点M3となっている。
【0066】
同様に、図5又は図8、及び図9又は図11を参照すると、第2電動シリンダ73fのピストンロッド73pは、第4連結具74fを介して、リンク棒7fとリンク棒7hの一方の端部同士を回転自在に連結している。そして、リンク棒7fとリンク棒7hの端部同士の連結点は、リンク棒7fとリンク棒7hとの連結中心がピストンロッド73pの進退する方向に移動する第4移動連結点M4となっている。
【0067】
図5又は図8、及び図9又は図11を参照すると、リンク棒7gとリンク棒7hの他方の端部同士は、第2連結ピン742で回転自在に連結している。第2連結ピン742は、その先端部が第2基板3bに固定したフレーム40bに締結している。つまり、第2連結ピン742の中心は、リンク棒7gとリンク棒7hとの端部同士の連結中心が第2基板3bに固定された第2固定連結点Q2となっている。
【0068】
又、図5又は図8、及び図9又は図11を参照すると、リンク棒7eとリンク棒7fの他方の端部同士は、第3連結ピン743で回転自在に連結している。第3連結ピン743は、その先端部が中間基板4に締結している。つまり、第3連結ピン743の中心は、リンク棒7eとリンク棒7fとの端部同士の連結中心が中間基板4に固定された第3固定連結点Q3となっている。又、第3連結ピン743の中心は、平行クランク機構71と平行クランク機構72とが共有する連結点となっている。更に、第1固定連結点Q1、第3固定連結点Q3、及び第2固定連結点Q2は、スライド軸23と平行な直線上に位置している。
【0069】
図5に示された状態から、第2電動シリンダ73eのピストンロッド73pを進出して、第3移動連結点M3を平行クランク機構72の中心部に向かう方向に移動すると、リンク棒7eとリンク棒7gの開き角を角度αから角度βに開角できる(図11参照)。この場合、中間基板4は、平行クランク機構71で保持された状態となっているので、第2移動基板6(第3移動連結点M3)及び第2基板3b(第2固定連結点Q2)は、中間基板4(第3固定連結点Q3)から離れる方向に移動できる。
【0070】
同様に、図5に示された状態から、第2電動シリンダ73fのピストンロッド73pを進出して、第4移動連結点M4を平行クランク機構72の中心部に向かう方向に移動すると、リンク棒7fとリンク棒7hの開き角を角度αから角度βに開角できる(図11参照)。この場合、中間基板4は、平行クランク機構71で保持された状態となっているので、第2移動基板6(第3移動連結点M3)及び第2基板3b(第2固定連結点Q2)は、中間基板4(第3固定連結点Q3)から離れる方向に移動できる。
【0071】
一方、図11に示された状態から、第2電動シリンダ73eのピストンロッド73pを後退して、第3移動連結点M3を平行クランク機構72の中心部から離れる方向に移動すると、リンク棒7eとリンク棒7gの開き角を角度βから角度αに閉角できる(図5参照)。この場合、中間基板4は、平行クランク機構71で保持された状態となっているので、第2移動基板6(第3移動連結点M3)及び第2基板3b(第2固定連結点Q2)は、中間基板4(第3固定連結点Q3)に近づく方向に移動できる。
【0072】
同様に、図11に示された状態から、第2電動シリンダ73fのピストンロッド73pを後退して、第4移動連結点M4を平行クランク機構72の中心部から離れる方向に移動すると、リンク棒7fとリンク棒7hの開き角を角度βから角度αに閉角できる(図5参照)。この場合、中間基板4は、平行クランク機構71で保持された状態となっているので、第2移動基板6(第3移動連結点M3)及び第2基板3b(第2固定連結点Q2)は、中間基板4(第3固定連結点Q3)に近づく方向に移動できる。
【0073】
図5及び図11を参照すると、第2電動シリンダ73eと第2電動シリンダ73fのいずれか一方のみで、平行クランク機構72の運動が可能であるが、平行クランク機構72の運動を確実にするために、第2電動シリンダを一対に配置した。そして、第2電動シリンダ73eと第2電動シリンダ73fとは、同期して動作させることが好ましい。
【0074】
このように、実施形態による伸縮手段70は、一対の第1電動シリンダ73a・73bを同期して駆動することにより、一方の移動フレーム20に対して他方の移動フレーム30を離れる方向又は近づく方向に移動できる。又、一対の第2電動シリンダ73e・73fを同期して駆動することにより、一方の移動フレーム20に対して他方の移動フレーム30を離れる方向又は近づく方向に移動できる。つまり、平行クランク機構71と平行クランク機構72とは、互いに独立して運動することができる。
【0075】
実施形態による伸縮手段70は、一対の第1電動シリンダ73a・73bを先に駆動して、一対の第2電動シリンダ73e・73fを後に駆動するような段階的な制御もでき、一対の第1電動シリンダ73a・73bと一対の第2電動シリンダ73e・73fを同時に駆動するような制御もできる。
【0076】
図1又は図3、及び図5又は図11を参照すると、第1移動基板5、中間基板4、第2移動基板6、及び第2基板3bは、リニアモーションベアリングmbを介して、スライド軸23とスライド可能に連結している。これにより、前述の各基板を円滑に移動できる。なお、これらのリニアモーションベアリングmbは、一対のC型止め輪srを用いて、前述の各基板に保持されている。
【0077】
図1又は図3、及び図5又は図11を参照すると、スライド軸23の他方の端部には、停止部材となるワッシャ23wを取り付けている。ワッシャ23wは、ナット23nでスライド軸23の他方の端部に固定されている。更に、ワッシャ23wには、クッションリング23rを貼着している。これにより、第2基板3bの不用意な脱落が防止される。
【0078】
図5及び図6を参照すると、第2基板3bには、架空線Wが延びる方向に4本の支柱33を立設している。これらの支柱33の先端には、台座板34を固定している。台座板34は、架空線Wを導入できるように、一部が二股に分岐している。そして、台座板34には、架空線Wの全外周を撮像できるように、架空線の回りに、三つのCCDカメラ35を放射状に等間隔に配置している。このように、他方の移動フレーム30には、三つのCCDカメラ35を取り付けているので、架空線Wの全外周を検査できる。
【0079】
図2と図6を参照して、一方の移動フレーム20の第1基板2bと他方の移動フレーム30の第2基板3bとは、実質的に同じものであるが、第2基板3bには、三つのCCDカメラ35を取り付けている点が異なっている。
【0080】
図2及び図10を参照すると、一方の移動フレーム20は、一対のプランジャ型の電磁ソレノイド8・8を更に備えている。同様に、図6を参照すると、他方の移動フレーム30は、一対のプランジャ型の電磁ソレノイド8・8を備えている。
【0081】
図3及び図4を参照すると、一方の移動フレーム20に設けた一対の電磁ソレノイド8・8は、一方の移動フレーム20に設けた車輪40aに対向して配置している。同様に、他方の移動フレーム30に設けた一対の電磁ソレノイド8・8は、他方の移動フレーム30に設けた車輪40aに対向して配置している。
【0082】
前述したように、一対の電磁ソレノイド8・8は、一方の移動フレーム20と他方の移動フレーム30に同様に構成されているので、一方の移動フレーム20に取り付けられた一対の電磁ソレノイド8・8を代表して、以下に説明する。
【0083】
図10を参照すると、電磁ソレノイド8は、溝付きローラ8a、可動鉄芯8b、及び本体8cを有している。又、電磁ソレノイド8は、圧縮コイルばね8dとプッシュバー8eを有している。溝付きローラ8aは、架空線Wの外周に部分的に当接可能なV形溝81vを外周に形成している。そして、電磁ソレノイド8は、溝付きローラ8aを架空線Wの外周に当接して転動できる(図3又は図4参照)。
【0084】
図10を参照すると、可動鉄芯8bは、溝付きローラ8aを基端部に取り付けている。本体8cは、可動鉄芯を吸引して保持できる。本体8cは、第1基板2bに固定されている。圧縮コイルばね8dは、可動鉄芯8bの基端部を本体8cから突出するように力を付勢している。プッシュバー8eは、可動鉄芯8bの先端部側に突出している。
【0085】
図10を参照すると、第1基板2bは、プッシュバー8eをスライド可能に保持するブロック8fを取り付けている。プッシュバー8eは、四角棒状に形成され、ブロック8fは、プッシュバー8eの回転が困難な四角状の係合穴を開口している。プッシュバー8eとブロック8fは、可動鉄芯8bの回転を防止する回り止め手段を構成している。
【0086】
図2及び図6を参照して、一対の電磁ソレノイド8・8を励磁すると、一対の溝付きローラ8a・8aが架空線Wから退避するように後退できる。一方、図10を参照して、一対の電磁ソレノイド8・8を消磁すると、一対の溝付きローラ8a・8aが架空線Wの外周を付勢するように前進できる。これにより、電力を消費することなく、一対の溝付きローラ8a・8aが架空線Wを支持できる。
【0087】
[架空線点検装置の作用]
次に、実施形態による架空線点検装置100の動作を説明しながら、架空線点検装置100の作用及び効果を説明する。
【0088】
図1及び図3を参照すると、中間基板4の下部には、架空線点検装置100の姿勢を安定させるためのバランサ(図示せず)を支持しておくことが好ましく、一対のモータ13m・13m、一対の第1電動シリンダ73a・73b、及び一対の第2電動シリンダ73e・73fを駆動するバッテリ及び駆動回路(いずれも図示せず)をこのバランサに搭載しておくことが好ましい。又、このバランサには、地上から架空線点検装置100を運転操作が可能な通信設備を設けてことが好ましい。
【0089】
図1を参照して、架空線点検装置100で架空線Wを点検するに当たっては、予め、架空線点検装置100を架空線Wに装着する。この場合、図2及び図6を参照して、チャック装置10に設けた一対の開閉レバー11a・11bが開いた状態にしておく。
【0090】
又、図2及び図6を参照して、一対の電磁ソレノイド8・8を励磁して、一対の溝付きローラ8a・8aを架空線Wから退避させておく。次に、架空線Wを開口22b及び開口32bに挿通しておく。そして、一対の車輪40a・40aを架空線Wに懸架し、一対の電磁ソレノイド8・8を消磁して、一対の溝付きローラ8a・8aが架空線Wを支持した状態で、架空線点検装置100を走行することができる。
【0091】
最初に、図5に示すように、一対の移動フレーム20・30を最も近づけた状態で、一方の移動フレーム20に設けたチャック装置10の一対の開閉レバー11a・11bを閉じて、架空線Wを把持しておく(図2参照)。又、他方の移動フレーム30に設けたチャック装置10の一対の開閉レバー11a・11bを開き、架空線Wを解放しておく(図6参照)。
【0092】
次に、図5を参照して、一対の第1電動シリンダ73a・73b及び一対の第2電動シリンダ73e・73fを同時に駆動し、これらのピストンロッド73pを進出して、一対の移動フレーム20・30を相対的に離れる方向に移動させる。この場合、一方の移動フレーム20は、架空線Wを把持しているので、架空線Wに対して、他方の移動フレーム30が進行方向に移動する(図11参照)。又、この場合、他方の移動フレーム30は、車輪40aが架空線Wを支持しているので、開口32bが架空線Wに接触することが防止される(図4参照)。そして、この間、三つのCCDカメラ35で架空線Wの全外周を検査する(図5及び図6参照)。
【0093】
次に、図11に示すように、一対の移動フレーム20・30が最も離れた状態で、他方の移動フレーム30に設けたチャック装置10の一対の開閉レバー11a・11bを閉じて、架空線Wを把持しておく(図6参照)。又、一方の移動フレーム20に設けたチャック装置10の一対の開閉レバー11a・11bを開き、架空線Wを解放しておく(図2参照)。
【0094】
次に、図11を参照して、一対の第1電動シリンダ73a・73b及び一対の第2電動シリンダ73e・73fを同時に駆動し、これらのピストンロッド73pを後退して、一対の移動フレーム20・30を相対的に近づく方向に移動させる。この場合、他方の移動フレーム30は、架空線Wを把持しているので、架空線Wに対して、一方の移動フレーム20が進行方向に移動する。又、この場合、一方の移動フレーム20は、車輪40aが架空線Wを支持しているので、開口22bが架空線Wに接触することが防止される(図2参照)。以下、架空線Wの終端までこれらの動作を繰り返しながら、架空線点検装置100を間欠的に進行させる。
【0095】
このように、架空線点検装置100は、一対のチャック装置10・10が架空線Wを把持又は解放する動作と一対の移動フレーム20・30が伸縮する動作とを繰り返すことにより、架空線Wに沿って移動することができる。
【0096】
実施形態による架空線点検装置100は、チャック装置10が架空線Wの外周を両側から等圧に把持しているので、従来のように、架空線Wへの挟持力を強くすることなく、架空線Wを確実に把持できる。したがって、実施形態による架空線点検装置100は、架空線Wを損傷することなく、傾斜した架空線Wに沿って走行(自走)が容易であるというメリットがある。
【0097】
実施形態による架空線点検装置100は、リモートコントロール装置を用いて、地上から遠隔操作してもよく、前述のバランサに搭載した制御部に格納したプログラミングによって、架空線を自動走行することも可能である。
【0098】
本発明は、架空線を損傷することなく、傾斜した架空線に沿って自走が容易な架空線点検装置を開示したが、本発明による架空線点検装置のステップ・バイ・ステップ走行を応用すれば、例えば、プラントの円筒や配管などを垂直登坂する自走式のロボットも実現できると考えられる。
【符号の説明】
【0099】
4 中間基板(伸縮手段)
5 第1移動基板(伸縮手段)
6 第2移動基板(伸縮手段)
10 チャック装置
20 移動フレーム(一方の移動フレーム)
21b・31b 切り欠き部
22b・32b 開口(円形状の開口)
23 スライド軸(伸縮手段)
30 移動フレーム(他方の移動フレーム)
40a 車輪
70 伸縮手段
100 架空線点検装置
W 架空線
【技術分野】
【0001】
本発明は、架空線点検装置に関する。特に、OPGW(Optical fiber composite overhead ground wire:光ファイバ複合架空地線)などの架空線の損傷状況を点検する装置であって、架空線に沿って自走する架空線点検装置の構造に関する。
【背景技術】
【0002】
OPGWは、架空電線の内部に光ファイバを収納している。光ファイバは、雷や交流電磁界の影響を受けずに通信が可能であり、光ファイバを架空電線に収納することによって、既存の送電線網を利用して、大容量の通信回線網を構築できるという利点がある。OPGWは、このような利点があることから、国内外の電力会社に広く利用されている。
【0003】
例えば、OPGWは、多芯光ファイバユニットをアルミ管に挿通し、更に、このアルミ管をアルミ覆鋼線で覆っている。そして、アルミ管又はアルミ覆鋼線に損傷が発生すると、これに起因して、光通信に障害がでる心配がある。したがって、電力会社では、自走式の架空線点検装置などを用いて、OPGWの損傷を定期的又は不定期に点検している。
【0004】
このような自走式の架空線点検装置としては、安定性が良好であり、かつ、架空線上の障害物が大きい場合にも走行可能であり、更に、この装置の搬入及び搬出に障害とならないようにコンパクトな退避装置を備えた架空線点検装置が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
特許文献1による架空線点検装置は、一対の走行ローラが架空地線や電力線などの架空線を走行することにより、送配電線路に架設する架空線の損傷状況を遠隔操作により点検して撮影している。走行ローラの下部には、走行ローラと共に架空線を挟持して転動可能な押さえローラを配設している。この押さえローラは、積雪防止用ダンパ(障害物)の上を通過するときには、ダンパとの干渉を避けるために、架空線から一時的に退避可能な退避装置に連結している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−242476号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1による架空線点検装置は、一対の走行ローラが架空線に懸架され、これらの走行ローラが架空線上を摩擦転動することによって、架空線に沿って自走するように構成している。このため、急角度に傾斜した架空線に沿って、架空線点検装置を走行することが困難であるという問題がある。
【0008】
一方、走行ローラと押さえローラとの挟持力を強くすれば、架空線点検装置を傾斜した架空線に沿って走行することがあるいは可能となるが、架空線を損傷しかねないという問題がある。架空線を損傷することなく、傾斜した架空線に沿って走行(自走)が容易な架空線点検装置が求められている。
【0009】
又、特許文献1による架空線点検装置は、架空線を上側又は下側から撮影するCCDカメラを備えており、映像機器で記録された架空線の映像を観察することにより、架空線の損傷状況を点検できる、としている。
【0010】
しかし、特許文献1による架空線点検装置は、架空線の観察方向が限定又は制約されており、架空線の全体(全周囲)を点検することを困難としている、という問題がある。架空線の全周囲を点検可能な架空線点検装置が求められている。そして、以上のことが本発明の課題といってよい。
【0011】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであり、傾斜した架空線に沿って自走が容易であり、かつ、架空線の全周囲を点検可能な架空線点検装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、架空線の中心に向かって架空線の外周を等圧的に把持するチャック装置、及び架空線上を転動する車輪を備える一対の移動フレームと、これらの移動フレームを架空線に沿って相対的に伸縮させる伸縮装置とで架空線点検装置を構成し、一方の移動フレームが架空線を把持しているときは、他方の移動フレームが架空線を解放して、一対の移動フレームを相対的に離れる方向に移動させ、他方の移動フレームが架空線を把持しているときは、一方の移動フレームが架空線を解放して、一対の移動フレームを相対的に近づく方向に移動させ、これらの動作を繰り返すことにより、架空線を損傷することなく、傾斜した架空線に沿って自走が容易なことを見出し、これに基づいて、以下のような新たな架空線点検装置を発明するに至った。
【0013】
(1)本発明による架空線点検装置は、架空線をその外周方向から導入可能な切り欠き部を下部に設ける円形状の開口を有し、この開口の略中心に架空線が位置するように配置し、架空線を軌道として転動する車輪、及び架空線の中心に向かって架空線の外周を両側から等圧に把持するチャック装置を有する一対の対向する移動フレームと、これらの移動フレームを連結し、一方の前記移動フレームに対して他方の前記移動フレームを架空線の軸方向に沿って略平行に伸縮させる伸縮手段と、を備え、一方の前記チャック装置が架空線を把持しているときは、他方の前記チャック装置が架空線を解放して、前記伸縮手段が一対の前記移動フレームを相対的に離れる方向に移動させ、他方の前記チャック装置が架空線を把持しているときは、一方の前記チャック装置が架空線を解放して、前記伸縮手段が一対の前記移動フレームを相対的に近づく方向に移動させ、一対の前記チャック装置が架空線を把持又は解放する動作と一対の前記移動フレームが伸縮する動作とを繰り返すことにより、架空線に沿って移動する。
【0014】
(2)前記チャック装置は、V字状に開角した溝部を設けるパッドを有すると共に、これらのパッドの溝部が架空線の外周を両側から等圧に把持する一対の開閉レバー、これらの開閉レバーが開閉する方向と略直交する方向に進退するように配置されたピストンロッド、及びこのピストンロッドの進退運動を一対の前記開閉レバーの開閉運動に変換する変換機構を内蔵する本体を有するハンド装置と、前記ピストンロッドの先端面を輪郭に従動させて、当該ピストンロッドを進退させる偏心カム板と、この偏心カム板を回動するモータと、を備え、このモータを一方の方向に回転すると、一対の前記開閉レバーを閉じて架空線を把持でき、このモータを他方の方向に回転すると、一対の前記開閉レバーを開いて架空線を解放できることが好ましい。
【0015】
(3)前記伸縮手段は、対向する二組のリンク棒の両端部の連結点がそれぞれ等しい距離を有し、これら四つの前記リンク棒の両端部が相互に回転自在に連結することによって変形する菱形の四節回転連鎖を構成する二組の平行クランク機構と、一対の前記移動フレームの間に配置される中間基板と、この中間基板と一方の前記移動フレームとの間に配置される第1移動基板と、この中間基板と他方の前記移動フレームとの間に配置される第2移動基板と、一端部が一方の前記移動フレームに支持され、他端部が他方の前記移動フレームに向かって延び、前記第1移動基板、前記中間基板、前記第2移動基板、及び他方の前記移動フレームがそれぞれ平行移動するようにスライド可能に案内する複数のスライド軸と、を含み、前記第1移動基板は、一方の前記平行クランク機構に設けた二組の前記リンク棒が互いに開角又は閉角するように、二組の前記リンク棒の連結中心が移動する移動連結点を互いに進退させるピストンロッドを設ける一対の第1電動シリンダを有し、前記第2移動基板は、他方の前記平行クランク機構に設けた二組の前記リンク棒が互いに開角又は閉角するように、二組の前記リンク棒の連結中心が移動する移動連結点を互いに進退させるピストンロッドを設ける一対の第2電動シリンダを有し、一方の前記移動フレームは、一方の前記平行クランク機構に設けた二組の前記リンク棒の一方の端部同士の連結中心が固定された第1固定連結点を連結する第1連結ピンを中央部に有し、他方の前記移動フレームは、他方の前記平行クランク機構に設けた二組の前記リンク棒の他方の端部同士の連結中心が固定された第2固定連結点を連結する第2連結ピンを中央部に有し、前記中間基板は、一方の前記平行クランク機構に設けた二組の前記リンク棒の他方の端部同士を回動可能に連結すると共に、他方の前記平行クランク機構に設けた二組の前記リンク棒の一方の端部同士を回動可能に連結する第3連結ピンを中央部に有し、一対の前記第1電動シリンダのピストンロッドを同期して進出すると、一方の前記平行クランク機構に設けた二組の前記リンク棒が互いに開角して、一方の前記移動フレームに対して前記第1移動基板及び前記中間基板を離れる方向に移動させ、一対の前記第2電動シリンダのピストンロッドを同期して進出すると、他方の前記平行クランク機構に設けた二組の前記リンク棒が互いに開角して、前記中間基板に対して前記第2移動基板及び他方の前記移動フレームを離れる方向に移動させ、一対の前記第1電動シリンダのピストンロッドを同期して後退すると、一方の前記平行クランク機構に設けた二組の前記リンク棒が互いに閉角して、一方の前記移動フレームに対して前記第1移動基板及び前記中間基板を近づく方向に移動させ、一対の前記第2電動シリンダのピストンロッドを同期して後退すると、他方の前記平行クランク機構に設けた二組の前記リンク棒が互いに閉角して、前記中間基板に対して前記第2移動基板及び他方の前記移動フレームを近づく方向に移動させてもよい。
【0016】
(4)前記スライド軸は、他方の前記移動フレームの脱落を防止する停止部材を他方の端部に備えることが好ましい。
【0017】
(5)前記移動フレームは、前記車輪に対向して配置された一対のプランジャ型の電磁ソレノイドを更に備え、この電磁ソレノイドは、架空線の外周に部分的に当接可能なV形溝を外周に形成して架空線に転動可能な溝付きローラと、この溝付きローラを基端部に取り付ける可動鉄芯と、この可動鉄芯を吸引して保持できる本体と、前記可動鉄芯の基端部を前記本体から突出するように力を付勢する圧縮コイルばねと、前記可動鉄芯の先端部側に突出したプッシュバーと、を有し、前記移動フレームは、前記プッシュバーに係合して前記可動鉄芯の回転を防止する回り止め手段を有し、一対の前記電磁ソレノイドを励磁すると、これらの溝付きローラが架空線から退避するように後退し、一対の前記電磁ソレノイドを消磁すると、これらの溝付きローラが架空線の外周を付勢するように前進させてもよい。
【0018】
(6)他方の前記移動フレームは、一方の前記移動フレームと反対側に突出するように配置されると共に、架空線の全外周を検査可能に架空線の回りに等間隔に配置された三つ以上のカメラを備えることが好ましい。
【発明の効果】
【0019】
本発明による架空線点検装置は、架空線を軌道として転動する車輪、及び架空線の中心に向かって架空線を両側から等圧に把持するチャック装置を有する一対の対向する移動フレーム、及びこれらの移動フレームを連結し、一方の前記移動フレームに対して他方の前記移動フレームを架空線の軸方向に沿って略平行に伸縮させる伸縮手段とで構成し、一方の移動フレームが架空線を把持しているときは、他方の移動フレームが架空線を解放して、一対の移動フレームを相対的に離れる方向に移動させ、他方の移動フレームが架空線を把持しているときは、一方の移動フレームが架空線を解放して、一対の移動フレームを相対的に近づく方向に移動させ、これらの動作を繰り返すことにより、架空線を損傷することなく、傾斜した架空線に沿って自走が容易である。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の一実施形態による架空線点検装置の構成を示す斜視図である。
【図2】前記実施形態による架空線点検装置の構成を示す正面図であり、一方の移動フレームに配置されたチャック装置に設けた一対の開閉レバーが開いた状態図である。
【図3】前記実施形態による架空線点検装置の構成を示す右側面図であり、架空線点検装置の下部の図示を省略している。
【図4】前記実施形態による架空線点検装置の構成を示す縦断面図であり、架空線点検装置の縦断面を右側面側から観ている。
【図5】前記実施形態による架空線点検装置の構成を示す平面図であり、一対の移動フレームが最も近づいた状態図である。
【図6】前記実施形態による架空線点検装置の構成を示す背面図である。
【図7】前記実施形態による架空線点検装置に備わる第1移動基板の正面図である。
【図8】前記実施形態による架空線点検装置に備わる中間基板の正面図である。
【図9】前記実施形態による架空線点検装置に備わる二組の平行クランク機構の斜視分解組立図である。
【図10】前記実施形態による架空線点検装置に備わる第1移動フレームの背面図である。
【図11】前記実施形態による架空線点検装置の構成を示す平面図であり、一対の移動フレームが最も離れた状態図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照して本発明を実施するための形態を説明する。
[架空線点検装置の構成]
(架空線点検装置の概略構成)
最初に、本発明の一実施形態による架空線点検装置の概略構成を説明する。図1は、本発明の一実施形態による架空線点検装置の構成を示す斜視図である。
【0022】
図1を参照すると、本発明の第1実施形態による架空線点検装置100は、一対の対向する移動フレーム20・30を備えている。一対の移動フレーム20・30は、架空線Wの中心に向かって架空線Wの外周を両側から等圧に把持するチャック装置10をそれぞれ有している。
【0023】
図1を参照すると、一方の移動フレーム20は、所定の板厚を有する第1基板2bにチャック装置10を装着している。同様に、他方の移動フレーム30は、所定の板厚を有する第2基板3bにチャック装置10を装着している。一方の移動フレーム20と他方の移動フレーム30とは、同様に構成しているが、これらのチャック装置10に備わるハンド装置11が互いに外側を向くように、一対の移動フレーム20・30を相反する向きに配置している。
【0024】
図1を参照すると、架空線点検装置100は、第1基板2bと第2基板3bとの間に配置される中間基板4を備えている。又、架空線点検装置100は、第1移動基板5と第2移動基板6を備えている。第1移動基板5は、中間基板4と第1基板2bとの間に配置されている。第2移動基板6は、中間基板4と第2基板3との間に配置されている。
【0025】
図1を参照すると、架空線点検装置100は、四つのスライド軸23を備えている。スライド軸23は、その一端部にナット23nを締結して(図2参照)、第1基板2bに支持されている。又、スライド軸23の他端部は、他方の移動フレーム30に向かって延びている。そして、これらのスライド軸23は、第1移動基板5、中間基板4、第2移動基板6、及び第2基板3bがそれぞれ平行移動するようにスライド可能に案内している。
【0026】
(チャック装置の構成)
次に、本発明の実施形態によるチャック装置の構成を説明する。図2は、前記実施形態による架空線点検装置の構成を示す正面図であり、一方の移動フレームに配置されたチャック装置に設けた一対の開閉レバーが開いた状態図である。
【0027】
図3は、前記実施形態による架空線点検装置の構成を示す右側面図であり、架空線点検装置の下部の図示を省略している。図4は、前記実施形態による架空線点検装置の構成を示す縦断面図であり、架空線点検装置の縦断面を右側面側から観ている。
【0028】
図1から図4を参照すると、チャック装置10は、ハンド装置11、偏心カム板12、及びモータ13mを備えている。ハンド装置11は、市販のメカニカルハンドを用いることができる。ハンド装置11は、一対の開閉レバー11a・11b、ピストンロッド11c、及び箱状の本体11hを有している。
【0029】
図1から図4を参照すると、一対の開閉レバー11a・11bの内側には、パッド11pを一組の六角穴付きボルトなどで固定している。パッド11pの片面には、V字状に開角した溝部11vを設けており、一対の溝部11v・11vが対向するように配置している。そして、一対の開閉レバー11a・11bを閉じると、これらのパッド11p・11pの溝部11vが架空線Wの外周を両側から等圧に把持できる。パッド11pは、架空線Wを損傷しないように、弾性を有する合成樹脂からなることが好ましい。
【0030】
図1から図4を参照すると、ピストンロッド11cは、一対の開閉レバー11a・11bが開閉する方向と略直交する方向に進退するように配置されている。一対の開閉レバー11a・11bの先端部には、ボタン11dを固定している。圧縮コイルばね11sは、ボタン11dと本体11hとの間に介装され、ピストンロッド11cが復帰する力を付勢している。
【0031】
図1から図4を参照すると、本体11hは、ピストンロッド11cの進退運動を一対の開閉レバー11a・11bの開閉運動に変換する変換機構(図示せず)を内蔵している。一方の本体11hは、その広い面が第1基板2bに取り付けられている。同様に、他方の本体11hは、その広い面が第2基板3bに取り付けられている(図6参照)。
【0032】
図1から図4を参照して、ボタン11dを押すと、一対の開閉レバー11a・11bを閉じることができる。そして、架空線Wを把持できる。ボタン11dを解放すると、一対の開閉レバー11a・11bを初期の状態に開くことができる。そして、架空線Wを解放できる。
【0033】
図1から図4を参照すると、偏心カム板12は、円板の中心から所定距離、偏心した位置に回転中心を有している。そして、偏心カム板12を一方の方向に90度、回動すると、偏心カム板12の輪郭12aにボタン11dの先端面(ピストンロッド11cの先端面)が従動して、ピストンロッド11cを本体11hに向けて進出できる。一方、この状態から、偏心カム板12を他方の方向(逆方向)に90度、回動すると、圧縮コイルばね11sに付勢されて、偏心カム板12の輪郭12aにボタン11dの先端面(ピストンロッド11cの先端面)が従動して、ピストンロッド11cを本体11hから後退できる。
【0034】
図1から図4を参照すると、偏心カム板12の回転中心は、回転シャフト121の一端部に固定されている。回転シャフト121の他端部には、大歯車12gを固定している。一方の回転シャフト121の中間部は、図示しないベアリングを介して、第1基板2bに回動自在に保持されている。又、他方の回転シャフト121の中間部は、図示しないベアリングを介して、第2基板3bに回動自在に保持されている。そして、大歯車12gは、モータ13mの出力軸に固定した小歯車13gに噛み合っている。
【0035】
図1から図4を参照して、モータ13mを一方の方向に所定回転数だけ回転すると、小歯車13g→大歯車12g→偏心カム板12→ピストンロッド11cの経路で運動が伝動され、一対の開閉レバー11a・11bを閉じて架空線Wの外周を把持できる。一方、この状態から、モータ13mを他方の方向(逆方向)に所定回転数だけ回転すると、前述と同じ経路で運動が伝動され、一対の開閉レバー11a・11bを開いて架空線Wを解放できる。
【0036】
例えば、モータ13mは、回転数が検出可能な回転検出板付きのリバーシブルモータを用いてもよく、正逆運転が可能であり、回転数を制御が容易なパルスモータを用いることもできる。
【0037】
(架空線点検装置の構成)
引き続き、実施形態による架空線点検装置100の構成を説明する。図5は、前記実施形態による架空線点検装置の構成を示す平面図であり、一対の移動フレームが最も近づいた状態図である。
【0038】
図6は、前記実施形態による架空線点検装置の構成を示す背面図である。図7は、前記実施形態による架空線点検装置に備わる第1移動基板の正面図である。図8は、前記実施形態による架空線点検装置に備わる中間基板の正面図である。
【0039】
図9は、前記実施形態による架空線点検装置に備わる二組の平行クランク機構の斜視分解組立図である。図10は、前記実施形態による架空線点検装置に備わる第1移動フレームの背面図である。図11は、前記実施形態による架空線点検装置の構成を示す平面図であり、一対の移動フレームが最も離れた状態図である。
【0040】
図2又は図10を参照すると、第1基板2bは、架空線Wをその外周方向から導入可能な、逆V字状に開角した切り欠き部21bを下部に設けている。又、第1基板2bは、切り欠き部21bに連通した円形状の開口22bを設けている。
【0041】
同様に、図6を参照すると、第2基板3bは、架空線Wをその外周方向から導入可能な、逆V字状に開角した切り欠き部31bを下部に設けている。又、第2基板3bは、切り欠き部31bに連通した円形状の開口32bを設けている。
【0042】
又、図7を参照すると、第1移動基板5及び第2移動基板6は、架空線Wをその外周方向から導入可能な、逆V字状に開角した切り欠き部51b及び切り欠き部61bを下部にそれぞれ設けている。そして、第1移動基板5及び第2移動基板6は、切り欠き部51b及び切り欠き部61bにそれぞれ連通する円形状の開口52b及び円形状の開口62bを設けている。
【0043】
更に、図8を参照すると、中間基板4は、架空線Wをその外周方向から導入可能な、逆V字状に開角した切り欠き部41bを下部に設けている。又、中間基板4は、切り欠き部41bに連通した方形の開口42bを設けている。
【0044】
図3又は図4を参照すると、一方の移動フレーム20は、架空線Wを軌道として転動する車輪40aを有している。又、フレーム40bは、この車輪40aの両軸を回転可能に支持すると共に、第1基板2bに片持ち状に支持されている。そして、この車輪40aは、開口22bの略中心に架空線Wが位置するように配置されている(図10参照)。つまり、この車輪40aは、開口22bの略中心に架空線Wが位置するように、架空線Wを制限している。なお、図7に示されたフレーム40bは、第1基板2bに取り付けている。
【0045】
同様に、図3又は図4を参照すると、他方の移動フレーム30は、架空線Wを軌道として転動する車輪40aを有している。又、フレーム40bは、この車輪40aの両軸を回転可能に支持すると共に、第2基板3bに片持ち状に支持されている。そして、この車輪40aは、開口32bの略中心に架空線Wが位置するように配置されている(図6参照)。つまり、この車輪40aは、開口32bの略中心に架空線Wが位置するように、架空線Wを制限している。
【0046】
更に、図8を参照すると、中間基板4は、架空線Wを軌道として転動する車輪40aを有している。この車輪40aは、回動軸40によって、中間基板4に両軸支持されている。そして、この車輪40aは、開口42bの略中央部に架空線Wが位置するように配置されている。つまり、この車輪40aは、開口52b及び開口62bの略中心に架空線Wが位置するように、架空線Wを制限している(図4及び図7参照)。
【0047】
図2及び図4を参照すると、一方の移動フレーム20は、開口22bの両側に比較的近接して、車輪40aと一対の開閉レバー11a・11bを配置している。したがって、一対の開閉レバー11a・11bの略中間に架空線Wが位置するので、架空線Wを等圧で把持できる。
【0048】
同様に、図4及び図6を参照すると、他方の移動フレーム30は、開口22bの両側に比較的近接して、車輪40aと一対の開閉レバー11a・11bを配置している。したがって、一対の開閉レバー11a・11bの略中間に架空線Wが位置するので、架空線Wを等圧で把持できる。
【0049】
(伸縮手段の構成)
次に、架空線点検装置100に備わる伸縮手段の構成を説明する。図5又は図9及び図11を参照すると、架空線点検装置100は、一対の移動フレーム20・30を連結し、一方の移動フレーム20に対して他方の移動フレーム30を架空線Wの軸方向に沿って略平行に伸縮させる伸縮手段70を備えている。伸縮手段70は、二組の平行クランク機構71・72を含み、中間基板4、第1移動基板5、第2移動基板6、及び四つのスライド軸23を含んでいる。
【0050】
図5又は図9及び図11を参照すると、平行クランク機構71は、四つのリンク棒7a・7b・7c・7dの両端部が相互に回転自在に連結することによって、変形する菱形の四節回転連鎖を構成している。これらのリンク棒7a・7b・7c・7dは、互いに等しい長さを有すると共に、各両端部の連結点(実体として、連結穴の中心点)がそれぞれ等しい距離を有している。
【0051】
同様に、図5又は図9及び図11を参照すると、平行クランク機構72は、四つのリンク棒7e・7f・7g・7hの両端部が相互に回転自在に連結することによって、変形する菱形の四節回転連鎖を構成している。これらのリンク棒7e・7f・7g・7hは、互いに等しい長さを有すると共に、各両端部の連結点(実体として、連結点の中心点)がそれぞれ等しい距離を有している。
【0052】
なお、図9を参照すると、例えば、リンク棒7aとリンク棒7b、リンク棒7gとリンク棒7h、又はリンク棒7aとリンク棒7hは、同じものであるが説明の便宜上、符号を変えて区別している。
【0053】
図1又は図5、及び図7又は図11を参照すると、第1移動基板5は、一対の第1電動シリンダ73a・73bを備えている。これらの第1電動シリンダ73a・73bは、対向するように配置され、固定板731を介して、第1移動基板5の両側面に支持されている。
【0054】
同様に、図1又は図5、及び図8又は図11を参照すると、第2移動基板6は、一対の第2電動シリンダ73e・73fを備えている。これらの第2電動シリンダ73e・73fは、対向するように配置され、固定板731を介して、第2移動基板6の両側面に支持されている。
【0055】
なお、第1電動シリンダ73a・73bと第2電動シリンダ73e・73fは、同じものであるが説明の便宜上、符号を変えて区別している。そして、これらの電動シリンダは、市販品を用いることができる。これらの電動シリンダの本体は、モータとボールねじ(いずれも図示せず)を内蔵している。このモータを一方の方向に回転すると、ピストンロッド73pを進出でき、このモータを他方の方向に回転すると、ピストンロッド73pを後退できる。そして、図示された電動シリンダは、ピストンロッド73pのストロークが固定されたものを使用している。
【0056】
図5又は図7、及び図9又は図11を参照すると、第1電動シリンダ73aのピストンロッド73pは、第1連結具74aを介して、リンク棒7aとリンク棒7cの一方の端部同士を回転自在に連結している。そして、リンク棒7aとリンク棒7cの端部同士の連結点は、第1移動基板5に対して、リンク棒7aとリンク棒7cとの連結中心がピストンロッド73pの進退する方向に移動する第1移動連結点M1となっている。
【0057】
同様に、図5又は図7、及び図9又は図11を参照すると、第1電動シリンダ73bのピストンロッド73pは、第2連結具74bを介して、リンク棒7bとリンク棒7dの一方の端部同士を回転自在に連結している。そして、リンク棒7bとリンク棒7dの端部同士の連結点は、第2移動基板6に対して、リンク棒7bとリンク棒7dとの連結中心がピストンロッド73pの進退する方向に移動する第2移動連結点M2となっている。
【0058】
図5又は図7、及び図9又は図11を参照すると、リンク棒7aとリンク棒7bの他方の端部同士は、第1連結ピン741で回転自在に連結している。第1連結ピン741は、その先端部が第1基板2bに固定したフレーム40bに締結している。つまり、第1連結ピン741の中心は、リンク棒7aとリンク棒7bとの端部同士の連結中心が第1基板2bに固定された第1固定連結点Q1となっている。
【0059】
又、図5又は図7、及び図9又は図11を参照すると、リンク棒7cとリンク棒7dの他方の端部同士は、第3連結ピン743で回転自在に連結している。第3連結ピン743は、その先端部が中間基板4に締結している。つまり、第3連結ピン743の中心は、リンク棒7cとリンク棒7bとの端部同士の連結中心が中間基板4に固定された第3固定連結点Q3となっている。
【0060】
図5に示された状態から、第1電動シリンダ73aのピストンロッド73pを進出して、第1移動連結点M1を平行クランク機構71の中心部に向かう方向に移動すると、リンク棒7aとリンク棒7cの開き角を角度αから角度βに開角できる(図11参照)。この場合、第1基板2bは、四つのスライド軸23の端部を固定しているので、第1移動基板5(第1移動連結点M1)及び中間基板4(第3固定連結点Q3)は、第1基板2b(第1固定連結点Q1)から離れる方向に移動できる。
【0061】
同様に、図5に示された状態から、第1電動シリンダ73bのピストンロッド73pを進出して、第2移動連結点M2を平行クランク機構71の中心部に向かう方向に移動すると、リンク棒7bとリンク棒7dの開き角を角度αから角度βに開角できる(図11参照)。この場合、第1基板2b(第1固定連結点Q1)は、四つのスライド軸23の端部を固定しているので、第1移動基板5(第1移動連結点M1)及び中間基板4(第3固定連結点Q3)は、第1基板2bから離れる方向に移動できる。
【0062】
一方、図11に示された状態から、第1電動シリンダ73aのピストンロッド73pを後退して、第1移動連結点M1を平行クランク機構71の中心部から離れる方向に移動すると、リンク棒7aとリンク棒7cの開き角を角度βから角度αに閉角できる(図5参照)。この場合、第1基板2bは、四つのスライド軸23の端部を固定しているので、第1移動基板5(第1移動連結点M1)及び中間基板4(第3固定連結点Q3)は、第1基板2b(第1固定連結点Q1)に近づく方向に移動できる。
【0063】
同様に、図11に示された状態から、第1電動シリンダ73bのピストンロッド73pを後退して、第2移動連結点M2を平行クランク機構71の中心部から離れる方向に移動すると、リンク棒7bとリンク棒7dの開き角を角度βから角度αに閉角できる(図5参照)。この場合、第1基板2bは、四つのスライド軸23の端部を固定しているので、第1移動基板5(第1移動連結点M1)及び中間基板4(第3固定連結点Q3)は、第1基板2b(第1固定連結点Q1)に近づく方向に移動できる。
【0064】
図5及び図11を参照すると、第1電動シリンダ73aと第1電動シリンダ73bのいずれか一方のみで、平行クランク機構71の運動が可能であるが、平行クランク機構71の運動を確実にするために、第1電動シリンダを一対に配置した。そして、第1電動シリンダ73aと第1電動シリンダ73bとは、同期して動作させることが好ましい。
【0065】
図5又は図8、及び図9又は図11を参照すると、第2電動シリンダ73eのピストンロッド73pは、第3連結具74eを介して、リンク棒7eとリンク棒7gの一方の端部同士を回転自在に連結している。そして、リンク棒7eとリンク棒7gの端部同士の連結点は、リンク棒7eとリンク棒7gとの連結中心がピストンロッド73pの進退する方向に移動する第3移動連結点M3となっている。
【0066】
同様に、図5又は図8、及び図9又は図11を参照すると、第2電動シリンダ73fのピストンロッド73pは、第4連結具74fを介して、リンク棒7fとリンク棒7hの一方の端部同士を回転自在に連結している。そして、リンク棒7fとリンク棒7hの端部同士の連結点は、リンク棒7fとリンク棒7hとの連結中心がピストンロッド73pの進退する方向に移動する第4移動連結点M4となっている。
【0067】
図5又は図8、及び図9又は図11を参照すると、リンク棒7gとリンク棒7hの他方の端部同士は、第2連結ピン742で回転自在に連結している。第2連結ピン742は、その先端部が第2基板3bに固定したフレーム40bに締結している。つまり、第2連結ピン742の中心は、リンク棒7gとリンク棒7hとの端部同士の連結中心が第2基板3bに固定された第2固定連結点Q2となっている。
【0068】
又、図5又は図8、及び図9又は図11を参照すると、リンク棒7eとリンク棒7fの他方の端部同士は、第3連結ピン743で回転自在に連結している。第3連結ピン743は、その先端部が中間基板4に締結している。つまり、第3連結ピン743の中心は、リンク棒7eとリンク棒7fとの端部同士の連結中心が中間基板4に固定された第3固定連結点Q3となっている。又、第3連結ピン743の中心は、平行クランク機構71と平行クランク機構72とが共有する連結点となっている。更に、第1固定連結点Q1、第3固定連結点Q3、及び第2固定連結点Q2は、スライド軸23と平行な直線上に位置している。
【0069】
図5に示された状態から、第2電動シリンダ73eのピストンロッド73pを進出して、第3移動連結点M3を平行クランク機構72の中心部に向かう方向に移動すると、リンク棒7eとリンク棒7gの開き角を角度αから角度βに開角できる(図11参照)。この場合、中間基板4は、平行クランク機構71で保持された状態となっているので、第2移動基板6(第3移動連結点M3)及び第2基板3b(第2固定連結点Q2)は、中間基板4(第3固定連結点Q3)から離れる方向に移動できる。
【0070】
同様に、図5に示された状態から、第2電動シリンダ73fのピストンロッド73pを進出して、第4移動連結点M4を平行クランク機構72の中心部に向かう方向に移動すると、リンク棒7fとリンク棒7hの開き角を角度αから角度βに開角できる(図11参照)。この場合、中間基板4は、平行クランク機構71で保持された状態となっているので、第2移動基板6(第3移動連結点M3)及び第2基板3b(第2固定連結点Q2)は、中間基板4(第3固定連結点Q3)から離れる方向に移動できる。
【0071】
一方、図11に示された状態から、第2電動シリンダ73eのピストンロッド73pを後退して、第3移動連結点M3を平行クランク機構72の中心部から離れる方向に移動すると、リンク棒7eとリンク棒7gの開き角を角度βから角度αに閉角できる(図5参照)。この場合、中間基板4は、平行クランク機構71で保持された状態となっているので、第2移動基板6(第3移動連結点M3)及び第2基板3b(第2固定連結点Q2)は、中間基板4(第3固定連結点Q3)に近づく方向に移動できる。
【0072】
同様に、図11に示された状態から、第2電動シリンダ73fのピストンロッド73pを後退して、第4移動連結点M4を平行クランク機構72の中心部から離れる方向に移動すると、リンク棒7fとリンク棒7hの開き角を角度βから角度αに閉角できる(図5参照)。この場合、中間基板4は、平行クランク機構71で保持された状態となっているので、第2移動基板6(第3移動連結点M3)及び第2基板3b(第2固定連結点Q2)は、中間基板4(第3固定連結点Q3)に近づく方向に移動できる。
【0073】
図5及び図11を参照すると、第2電動シリンダ73eと第2電動シリンダ73fのいずれか一方のみで、平行クランク機構72の運動が可能であるが、平行クランク機構72の運動を確実にするために、第2電動シリンダを一対に配置した。そして、第2電動シリンダ73eと第2電動シリンダ73fとは、同期して動作させることが好ましい。
【0074】
このように、実施形態による伸縮手段70は、一対の第1電動シリンダ73a・73bを同期して駆動することにより、一方の移動フレーム20に対して他方の移動フレーム30を離れる方向又は近づく方向に移動できる。又、一対の第2電動シリンダ73e・73fを同期して駆動することにより、一方の移動フレーム20に対して他方の移動フレーム30を離れる方向又は近づく方向に移動できる。つまり、平行クランク機構71と平行クランク機構72とは、互いに独立して運動することができる。
【0075】
実施形態による伸縮手段70は、一対の第1電動シリンダ73a・73bを先に駆動して、一対の第2電動シリンダ73e・73fを後に駆動するような段階的な制御もでき、一対の第1電動シリンダ73a・73bと一対の第2電動シリンダ73e・73fを同時に駆動するような制御もできる。
【0076】
図1又は図3、及び図5又は図11を参照すると、第1移動基板5、中間基板4、第2移動基板6、及び第2基板3bは、リニアモーションベアリングmbを介して、スライド軸23とスライド可能に連結している。これにより、前述の各基板を円滑に移動できる。なお、これらのリニアモーションベアリングmbは、一対のC型止め輪srを用いて、前述の各基板に保持されている。
【0077】
図1又は図3、及び図5又は図11を参照すると、スライド軸23の他方の端部には、停止部材となるワッシャ23wを取り付けている。ワッシャ23wは、ナット23nでスライド軸23の他方の端部に固定されている。更に、ワッシャ23wには、クッションリング23rを貼着している。これにより、第2基板3bの不用意な脱落が防止される。
【0078】
図5及び図6を参照すると、第2基板3bには、架空線Wが延びる方向に4本の支柱33を立設している。これらの支柱33の先端には、台座板34を固定している。台座板34は、架空線Wを導入できるように、一部が二股に分岐している。そして、台座板34には、架空線Wの全外周を撮像できるように、架空線の回りに、三つのCCDカメラ35を放射状に等間隔に配置している。このように、他方の移動フレーム30には、三つのCCDカメラ35を取り付けているので、架空線Wの全外周を検査できる。
【0079】
図2と図6を参照して、一方の移動フレーム20の第1基板2bと他方の移動フレーム30の第2基板3bとは、実質的に同じものであるが、第2基板3bには、三つのCCDカメラ35を取り付けている点が異なっている。
【0080】
図2及び図10を参照すると、一方の移動フレーム20は、一対のプランジャ型の電磁ソレノイド8・8を更に備えている。同様に、図6を参照すると、他方の移動フレーム30は、一対のプランジャ型の電磁ソレノイド8・8を備えている。
【0081】
図3及び図4を参照すると、一方の移動フレーム20に設けた一対の電磁ソレノイド8・8は、一方の移動フレーム20に設けた車輪40aに対向して配置している。同様に、他方の移動フレーム30に設けた一対の電磁ソレノイド8・8は、他方の移動フレーム30に設けた車輪40aに対向して配置している。
【0082】
前述したように、一対の電磁ソレノイド8・8は、一方の移動フレーム20と他方の移動フレーム30に同様に構成されているので、一方の移動フレーム20に取り付けられた一対の電磁ソレノイド8・8を代表して、以下に説明する。
【0083】
図10を参照すると、電磁ソレノイド8は、溝付きローラ8a、可動鉄芯8b、及び本体8cを有している。又、電磁ソレノイド8は、圧縮コイルばね8dとプッシュバー8eを有している。溝付きローラ8aは、架空線Wの外周に部分的に当接可能なV形溝81vを外周に形成している。そして、電磁ソレノイド8は、溝付きローラ8aを架空線Wの外周に当接して転動できる(図3又は図4参照)。
【0084】
図10を参照すると、可動鉄芯8bは、溝付きローラ8aを基端部に取り付けている。本体8cは、可動鉄芯を吸引して保持できる。本体8cは、第1基板2bに固定されている。圧縮コイルばね8dは、可動鉄芯8bの基端部を本体8cから突出するように力を付勢している。プッシュバー8eは、可動鉄芯8bの先端部側に突出している。
【0085】
図10を参照すると、第1基板2bは、プッシュバー8eをスライド可能に保持するブロック8fを取り付けている。プッシュバー8eは、四角棒状に形成され、ブロック8fは、プッシュバー8eの回転が困難な四角状の係合穴を開口している。プッシュバー8eとブロック8fは、可動鉄芯8bの回転を防止する回り止め手段を構成している。
【0086】
図2及び図6を参照して、一対の電磁ソレノイド8・8を励磁すると、一対の溝付きローラ8a・8aが架空線Wから退避するように後退できる。一方、図10を参照して、一対の電磁ソレノイド8・8を消磁すると、一対の溝付きローラ8a・8aが架空線Wの外周を付勢するように前進できる。これにより、電力を消費することなく、一対の溝付きローラ8a・8aが架空線Wを支持できる。
【0087】
[架空線点検装置の作用]
次に、実施形態による架空線点検装置100の動作を説明しながら、架空線点検装置100の作用及び効果を説明する。
【0088】
図1及び図3を参照すると、中間基板4の下部には、架空線点検装置100の姿勢を安定させるためのバランサ(図示せず)を支持しておくことが好ましく、一対のモータ13m・13m、一対の第1電動シリンダ73a・73b、及び一対の第2電動シリンダ73e・73fを駆動するバッテリ及び駆動回路(いずれも図示せず)をこのバランサに搭載しておくことが好ましい。又、このバランサには、地上から架空線点検装置100を運転操作が可能な通信設備を設けてことが好ましい。
【0089】
図1を参照して、架空線点検装置100で架空線Wを点検するに当たっては、予め、架空線点検装置100を架空線Wに装着する。この場合、図2及び図6を参照して、チャック装置10に設けた一対の開閉レバー11a・11bが開いた状態にしておく。
【0090】
又、図2及び図6を参照して、一対の電磁ソレノイド8・8を励磁して、一対の溝付きローラ8a・8aを架空線Wから退避させておく。次に、架空線Wを開口22b及び開口32bに挿通しておく。そして、一対の車輪40a・40aを架空線Wに懸架し、一対の電磁ソレノイド8・8を消磁して、一対の溝付きローラ8a・8aが架空線Wを支持した状態で、架空線点検装置100を走行することができる。
【0091】
最初に、図5に示すように、一対の移動フレーム20・30を最も近づけた状態で、一方の移動フレーム20に設けたチャック装置10の一対の開閉レバー11a・11bを閉じて、架空線Wを把持しておく(図2参照)。又、他方の移動フレーム30に設けたチャック装置10の一対の開閉レバー11a・11bを開き、架空線Wを解放しておく(図6参照)。
【0092】
次に、図5を参照して、一対の第1電動シリンダ73a・73b及び一対の第2電動シリンダ73e・73fを同時に駆動し、これらのピストンロッド73pを進出して、一対の移動フレーム20・30を相対的に離れる方向に移動させる。この場合、一方の移動フレーム20は、架空線Wを把持しているので、架空線Wに対して、他方の移動フレーム30が進行方向に移動する(図11参照)。又、この場合、他方の移動フレーム30は、車輪40aが架空線Wを支持しているので、開口32bが架空線Wに接触することが防止される(図4参照)。そして、この間、三つのCCDカメラ35で架空線Wの全外周を検査する(図5及び図6参照)。
【0093】
次に、図11に示すように、一対の移動フレーム20・30が最も離れた状態で、他方の移動フレーム30に設けたチャック装置10の一対の開閉レバー11a・11bを閉じて、架空線Wを把持しておく(図6参照)。又、一方の移動フレーム20に設けたチャック装置10の一対の開閉レバー11a・11bを開き、架空線Wを解放しておく(図2参照)。
【0094】
次に、図11を参照して、一対の第1電動シリンダ73a・73b及び一対の第2電動シリンダ73e・73fを同時に駆動し、これらのピストンロッド73pを後退して、一対の移動フレーム20・30を相対的に近づく方向に移動させる。この場合、他方の移動フレーム30は、架空線Wを把持しているので、架空線Wに対して、一方の移動フレーム20が進行方向に移動する。又、この場合、一方の移動フレーム20は、車輪40aが架空線Wを支持しているので、開口22bが架空線Wに接触することが防止される(図2参照)。以下、架空線Wの終端までこれらの動作を繰り返しながら、架空線点検装置100を間欠的に進行させる。
【0095】
このように、架空線点検装置100は、一対のチャック装置10・10が架空線Wを把持又は解放する動作と一対の移動フレーム20・30が伸縮する動作とを繰り返すことにより、架空線Wに沿って移動することができる。
【0096】
実施形態による架空線点検装置100は、チャック装置10が架空線Wの外周を両側から等圧に把持しているので、従来のように、架空線Wへの挟持力を強くすることなく、架空線Wを確実に把持できる。したがって、実施形態による架空線点検装置100は、架空線Wを損傷することなく、傾斜した架空線Wに沿って走行(自走)が容易であるというメリットがある。
【0097】
実施形態による架空線点検装置100は、リモートコントロール装置を用いて、地上から遠隔操作してもよく、前述のバランサに搭載した制御部に格納したプログラミングによって、架空線を自動走行することも可能である。
【0098】
本発明は、架空線を損傷することなく、傾斜した架空線に沿って自走が容易な架空線点検装置を開示したが、本発明による架空線点検装置のステップ・バイ・ステップ走行を応用すれば、例えば、プラントの円筒や配管などを垂直登坂する自走式のロボットも実現できると考えられる。
【符号の説明】
【0099】
4 中間基板(伸縮手段)
5 第1移動基板(伸縮手段)
6 第2移動基板(伸縮手段)
10 チャック装置
20 移動フレーム(一方の移動フレーム)
21b・31b 切り欠き部
22b・32b 開口(円形状の開口)
23 スライド軸(伸縮手段)
30 移動フレーム(他方の移動フレーム)
40a 車輪
70 伸縮手段
100 架空線点検装置
W 架空線
【特許請求の範囲】
【請求項1】
架空線をその外周方向から導入可能な切り欠き部を下部に設ける円形状の開口を有し、この開口の略中心に架空線が位置するように配置し、架空線を軌道として転動する車輪、及び架空線の中心に向かって架空線の外周を両側から等圧に把持するチャック装置を有する一対の対向する移動フレームと、
これらの移動フレームを連結し、一方の前記移動フレームに対して他方の前記移動フレームを架空線の軸方向に沿って略平行に伸縮させる伸縮手段と、を備え、
一方の前記チャック装置が架空線を把持しているときは、他方の前記チャック装置が架空線を解放して、前記伸縮手段が一対の前記移動フレームを相対的に離れる方向に移動させ、他方の前記チャック装置が架空線を把持しているときは、一方の前記チャック装置が架空線を解放して、前記伸縮手段が一対の前記移動フレームを相対的に近づく方向に移動させ、一対の前記チャック装置が架空線を把持又は解放する動作と一対の前記移動フレームが伸縮する動作とを繰り返すことにより、架空線に沿って移動する架空線点検装置。
【請求項2】
前記チャック装置は、
V字状に開角した溝部を設けるパッドを有すると共に、これらのパッドの溝部が架空線の外周を両側から等圧に把持する一対の開閉レバー、これらの開閉レバーが開閉する方向と略直交する方向に進退するように配置されたピストンロッド、及びこのピストンロッドの進退運動を一対の前記開閉レバーの開閉運動に変換する変換機構を内蔵する本体を有するハンド装置と、
前記ピストンロッドの先端面を輪郭に従動させて、当該ピストンロッドを進退させる偏心カム板と、
この偏心カム板を回動するモータと、を備え、
このモータを一方の方向に回転すると、一対の前記開閉レバーを閉じて架空線を把持でき、
このモータを他方の方向に回転すると、一対の前記開閉レバーを開いて架空線を解放できる請求項1記載の架空線点検装置。
【請求項3】
一方の前記移動フレームは、前記チャック装置を装着して架空線の軸方向に移動可能な第1基板を備え、
他方の前記移動フレームは、前記チャック装置を装着して架空線の軸方向に移動可能な第2基板を備え、
前記伸縮手段は、
対向する二組のリンク棒の両端部の連結点がそれぞれ等しい距離を有し、これら四つの前記リンク棒の両端部が相互に回転自在に連結することによって変形する菱形の四節回転連鎖を構成する二組の平行クランク機構と、
前記第1基板と前記第2基板との間に配置される中間基板と、
この中間基板と前記第1基板との間に配置される第1移動基板と、
この中間基板と前記第2基板との間に配置される第2移動基板と、
一端部が前記第1基板に支持され、他端部が前記第2基板に向かって延び、前記第1移動基板、前記中間基板、前記第2移動基板、及び前記第2基板がそれぞれ平行移動するようにスライド可能に案内する複数のスライド軸と、を含み、
前記第1移動基板は、一方の前記平行クランク機構に設けた二組の前記リンク棒が互いに開角又は閉角するように、二組の前記リンク棒の連結中心が移動する移動連結点を互いに進退させるピストンロッドを設ける一対の第1電動シリンダを有し、
前記第2移動基板は、他方の前記平行クランク機構に設けた二組の前記リンク棒が互いに開角又は閉角するように、二組の前記リンク棒の連結中心が移動する移動連結点を互いに進退させるピストンロッドを設ける一対の第2電動シリンダを有し、
前記第1基板は、一方の前記平行クランク機構に設けた二組の前記リンク棒の一方の端部同士の連結中心が固定された第1固定連結点を連結する第1連結ピンを中央部に有し、
前記第2基板は、他方の前記平行クランク機構に設けた二組の前記リンク棒の他方の端部同士の連結中心が固定された第2固定連結点を連結する第2連結ピンを中央部に有し、
前記中間基板は、一方の前記平行クランク機構に設けた二組の前記リンク棒の他方の端部同士を回動可能に連結すると共に、他方の前記平行クランク機構に設けた二組の前記リンク棒の一方の端部同士を回動可能に連結する第3連結ピンを中央部に有し、
一対の前記第1電動シリンダのピストンロッドを同期して進出すると、一方の前記平行クランク機構に設けた二組の前記リンク棒が互いに開角して、前記第1基板に対して前記第1移動基板及び前記中間基板を離れる方向に移動させ、
一対の前記第2電動シリンダのピストンロッドを同期して進出すると、他方の前記平行クランク機構に設けた二組の前記リンク棒が互いに開角して、前記中間基板に対して前記第2移動基板及び前記第2基板を離れる方向に移動させ、
一対の前記第1電動シリンダのピストンロッドを同期して後退すると、一方の前記平行クランク機構に設けた二組の前記リンク棒が互いに閉角して、前記第1基板に対して前記第1移動基板及び前記中間基板を近づく方向に移動させ、
一対の前記第2電動シリンダのピストンロッドを同期して後退すると、他方の前記平行クランク機構に設けた二組の前記リンク棒が互いに閉角して、前記中間基板に対して前記第2移動基板及び他方の前記第1基板を近づく方向に移動させる請求項1又は2記載の架空線点検装置。
【請求項4】
前記スライド軸は、前記第2基板の脱落を防止する停止部材を他方の端部に備える請求項3記載の架空線点検装置。
【請求項5】
前記移動フレームは、前記車輪に対向して配置された一対のプランジャ型の電磁ソレノイドを更に備え、
この電磁ソレノイドは、
架空線の外周に部分的に当接可能なV形溝を外周に形成して架空線に転動可能な溝付きローラと、
この溝付きローラを基端部に取り付ける可動鉄芯と、
この可動鉄芯を吸引して保持できる本体と、
前記可動鉄芯の基端部を前記本体から突出するように力を付勢する圧縮コイルばねと、
前記可動鉄芯の先端部側に突出したプッシュバーと、を有し、
前記移動フレームは、前記プッシュバーに係合して前記可動鉄芯の回転を防止する回り止め手段を有し、
一対の前記電磁ソレノイドを励磁すると、これらの溝付きローラが架空線から退避するように後退し、
一対の前記電磁ソレノイドを消磁すると、これらの溝付きローラが架空線の外周を付勢するように前進する請求項1から4のいずれかに記載の架空線点検装置。
【請求項6】
他方の前記移動フレームは、一方の前記移動フレームと反対側に突出するように配置されると共に、架空線の全外周を検査可能に架空線の回りに等間隔に配置された三つ以上のカメラを備える請求項1から5のいずれかに記載の架空線点検装置。
【請求項1】
架空線をその外周方向から導入可能な切り欠き部を下部に設ける円形状の開口を有し、この開口の略中心に架空線が位置するように配置し、架空線を軌道として転動する車輪、及び架空線の中心に向かって架空線の外周を両側から等圧に把持するチャック装置を有する一対の対向する移動フレームと、
これらの移動フレームを連結し、一方の前記移動フレームに対して他方の前記移動フレームを架空線の軸方向に沿って略平行に伸縮させる伸縮手段と、を備え、
一方の前記チャック装置が架空線を把持しているときは、他方の前記チャック装置が架空線を解放して、前記伸縮手段が一対の前記移動フレームを相対的に離れる方向に移動させ、他方の前記チャック装置が架空線を把持しているときは、一方の前記チャック装置が架空線を解放して、前記伸縮手段が一対の前記移動フレームを相対的に近づく方向に移動させ、一対の前記チャック装置が架空線を把持又は解放する動作と一対の前記移動フレームが伸縮する動作とを繰り返すことにより、架空線に沿って移動する架空線点検装置。
【請求項2】
前記チャック装置は、
V字状に開角した溝部を設けるパッドを有すると共に、これらのパッドの溝部が架空線の外周を両側から等圧に把持する一対の開閉レバー、これらの開閉レバーが開閉する方向と略直交する方向に進退するように配置されたピストンロッド、及びこのピストンロッドの進退運動を一対の前記開閉レバーの開閉運動に変換する変換機構を内蔵する本体を有するハンド装置と、
前記ピストンロッドの先端面を輪郭に従動させて、当該ピストンロッドを進退させる偏心カム板と、
この偏心カム板を回動するモータと、を備え、
このモータを一方の方向に回転すると、一対の前記開閉レバーを閉じて架空線を把持でき、
このモータを他方の方向に回転すると、一対の前記開閉レバーを開いて架空線を解放できる請求項1記載の架空線点検装置。
【請求項3】
一方の前記移動フレームは、前記チャック装置を装着して架空線の軸方向に移動可能な第1基板を備え、
他方の前記移動フレームは、前記チャック装置を装着して架空線の軸方向に移動可能な第2基板を備え、
前記伸縮手段は、
対向する二組のリンク棒の両端部の連結点がそれぞれ等しい距離を有し、これら四つの前記リンク棒の両端部が相互に回転自在に連結することによって変形する菱形の四節回転連鎖を構成する二組の平行クランク機構と、
前記第1基板と前記第2基板との間に配置される中間基板と、
この中間基板と前記第1基板との間に配置される第1移動基板と、
この中間基板と前記第2基板との間に配置される第2移動基板と、
一端部が前記第1基板に支持され、他端部が前記第2基板に向かって延び、前記第1移動基板、前記中間基板、前記第2移動基板、及び前記第2基板がそれぞれ平行移動するようにスライド可能に案内する複数のスライド軸と、を含み、
前記第1移動基板は、一方の前記平行クランク機構に設けた二組の前記リンク棒が互いに開角又は閉角するように、二組の前記リンク棒の連結中心が移動する移動連結点を互いに進退させるピストンロッドを設ける一対の第1電動シリンダを有し、
前記第2移動基板は、他方の前記平行クランク機構に設けた二組の前記リンク棒が互いに開角又は閉角するように、二組の前記リンク棒の連結中心が移動する移動連結点を互いに進退させるピストンロッドを設ける一対の第2電動シリンダを有し、
前記第1基板は、一方の前記平行クランク機構に設けた二組の前記リンク棒の一方の端部同士の連結中心が固定された第1固定連結点を連結する第1連結ピンを中央部に有し、
前記第2基板は、他方の前記平行クランク機構に設けた二組の前記リンク棒の他方の端部同士の連結中心が固定された第2固定連結点を連結する第2連結ピンを中央部に有し、
前記中間基板は、一方の前記平行クランク機構に設けた二組の前記リンク棒の他方の端部同士を回動可能に連結すると共に、他方の前記平行クランク機構に設けた二組の前記リンク棒の一方の端部同士を回動可能に連結する第3連結ピンを中央部に有し、
一対の前記第1電動シリンダのピストンロッドを同期して進出すると、一方の前記平行クランク機構に設けた二組の前記リンク棒が互いに開角して、前記第1基板に対して前記第1移動基板及び前記中間基板を離れる方向に移動させ、
一対の前記第2電動シリンダのピストンロッドを同期して進出すると、他方の前記平行クランク機構に設けた二組の前記リンク棒が互いに開角して、前記中間基板に対して前記第2移動基板及び前記第2基板を離れる方向に移動させ、
一対の前記第1電動シリンダのピストンロッドを同期して後退すると、一方の前記平行クランク機構に設けた二組の前記リンク棒が互いに閉角して、前記第1基板に対して前記第1移動基板及び前記中間基板を近づく方向に移動させ、
一対の前記第2電動シリンダのピストンロッドを同期して後退すると、他方の前記平行クランク機構に設けた二組の前記リンク棒が互いに閉角して、前記中間基板に対して前記第2移動基板及び他方の前記第1基板を近づく方向に移動させる請求項1又は2記載の架空線点検装置。
【請求項4】
前記スライド軸は、前記第2基板の脱落を防止する停止部材を他方の端部に備える請求項3記載の架空線点検装置。
【請求項5】
前記移動フレームは、前記車輪に対向して配置された一対のプランジャ型の電磁ソレノイドを更に備え、
この電磁ソレノイドは、
架空線の外周に部分的に当接可能なV形溝を外周に形成して架空線に転動可能な溝付きローラと、
この溝付きローラを基端部に取り付ける可動鉄芯と、
この可動鉄芯を吸引して保持できる本体と、
前記可動鉄芯の基端部を前記本体から突出するように力を付勢する圧縮コイルばねと、
前記可動鉄芯の先端部側に突出したプッシュバーと、を有し、
前記移動フレームは、前記プッシュバーに係合して前記可動鉄芯の回転を防止する回り止め手段を有し、
一対の前記電磁ソレノイドを励磁すると、これらの溝付きローラが架空線から退避するように後退し、
一対の前記電磁ソレノイドを消磁すると、これらの溝付きローラが架空線の外周を付勢するように前進する請求項1から4のいずれかに記載の架空線点検装置。
【請求項6】
他方の前記移動フレームは、一方の前記移動フレームと反対側に突出するように配置されると共に、架空線の全外周を検査可能に架空線の回りに等間隔に配置された三つ以上のカメラを備える請求項1から5のいずれかに記載の架空線点検装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2012−161118(P2012−161118A)
【公開日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−17240(P2011−17240)
【出願日】平成23年1月28日(2011.1.28)
【出願人】(000211307)中国電力株式会社 (6,505)
【出願人】(503320061)株式会社エネルギア・コミュニケーションズ (92)
【公開日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年1月28日(2011.1.28)
【出願人】(000211307)中国電力株式会社 (6,505)
【出願人】(503320061)株式会社エネルギア・コミュニケーションズ (92)
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