説明

架空線被覆装置および架空線被覆工法

【課題】 架空線を移動させる際に、架空線に付着している油分や錆等の腐食生成物が落下し、架空線の下にある建造物に油分や錆等の腐食生成物などが降りかかるという問題があった。
【解決手段】 巻付ロール12から送り出された長尺物4を進行方向に沿って折り込んで架空線3を被覆させ、その長尺物4の両端部が縫合されるので、架空線被覆装置1の移動により架空線3に付着している油分や錆等の腐食生成物が落下することがない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、架空線にポリエステル系の布地などの長尺物を被覆させる架空線被覆装置および架空線被覆工法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、架空線の張替えなどの架空線に関する工事において、架空線に付着した油分や錆等の腐食生成物や難着雪リング等の付属品が落下することを防止するための装置が知られている。この種の装置として、たとえば、柱間に架け渡された架空線を挟んで対向する位置に配設された複数のローラからなるローラユニットと、架空線を挟んで対向する位置に配設されたテープ状のカバー材が巻回されたリールと、対向する複数のローラを相互に近接させるよう付勢する弾設機構とを備え、架空線に沿って移動可能な装置本体からなる架空線ラッピング装置であって、ローラユニットは、装置本体の架空線に対する進行方向前側から、第1ローラ、第2ローラの順に配設されて形成され、第1ローラ及び第2ローラは、弾設機構により架空線を挟持し、架空線に当接しながら回転可能であり、カバー材は、対向する他方のリールから繰り出されるカバー材との合わせ面で接着可能であり、第2ローラは、架空線に沿って複数個備わるものが知られている(たとえば、特許文献1)。そして、この架空線ラッピング装置では、第1ローラ及び第2ローラを架空線に沿って回転させ、装置本体を移動させることにより、一対のリールからそれぞれカバー材が繰り出され、これらのカバー材の合わせ面で架空線を挟んで接着するので、架空線をカバー材で密封して覆うことができ、例えば地線の張替えの際に事前に地線をカバー材で覆うことができ、作業中の錆の落下を防止できるというものであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−236969号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の架空線ラッピング装置は、架空線にセットされた装置本体を宙乗機上の作業者が引張ロープで引っ張って、架空線にカバー材をラッピングするので、作業者の労力が増大するとともに、作業者の安全性にも欠けるという問題があった。また、宙乗機が備え付けられている架空線上を宙乗機が移動すると、移動の際に架空線に付着している油分や錆等の腐食生成物や難着雪リング等の付属品が落下し、架空線の下にある建造物に油分や錆等の腐食生成物などが降りかかるという問題があった。また、架空線が細い場合は宙乗機上に作業者が乗ることができず、架空線にカバー材をラッピングすることができないという問題もあった。さらに、撤去されたカバー材でラッピングされた架空線からカバー材を分離させるためには、強力に貼り合わされたカバー材を剥がさなければならないが、その剥がすための労力が大きく、剥がすために長い時間を要していた。
【0005】
本発明は上記問題点に鑑みてなされたもので、架空線に付着した油分や錆等の腐食生成物などが架空線から落下することを確実に防止するとともに、作業員の労力を軽減し、作業員の安全性を確保することができる架空線被覆装置および架空線被覆方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決し上記目的を達成するために、本発明のうち第1の態様に係るものは、架空線に係合する周溝を持つ複数の車輪と、車輪の少なくとも1個を駆動する駆動モータと、回転軸を有し、該回転軸の外周に長尺物を巻き付ける巻付ロールと、巻付ロールから送り出された長尺物を進行方向に沿って折り込んで架空線に被覆させる架空線被覆手段と、架空線被覆手段により被覆された長尺物の両端部を縫合する縫合手段と、を有するものである。
【0007】
本発明によれば、駆動モータにより車輪を駆動させて架空線被覆装置を移動させるので、たとえば、作業者がリモコンなどを操作して架空線被覆装置を移動させることができ、作業者の労力が軽減できるとともに、作業者の安全も確保することができる。また、作業者が宙乗機に乗って架空線上を移動しないので、宙乗機の移動による架空線に付着している油分や錆等の腐食生成物や難着雪リング等の付属品が落下することもない。さらに、巻付ロールから送り出された長尺物を進行方向に沿って折り込んで架空線を被覆させ、その長尺物の両端部が縫合されるので、架空線被覆装置の移動により架空線に付着している油分や錆等の腐食生成物が落下することがないとともに、縫合している糸をほどくことにより架空線を被覆している長尺物と架空線を簡単に分離することができる。
【0008】
本発明のうち第2の態様に係るものは、第1の態様に係る架空線被覆装置であって、架空線被覆手段より進行方向前方側に設けられ、架空線の中心軸から所定の距離離れた略対称位置に2個備えられたガイドローラを、有し、ガイドローラは、ガイドローラ回転軸を中心に回転し、該ガイドローラ回転軸の外周に弾力性を有する弾性体を備えられたものである。
【0009】
本発明によれば、架空線被覆手段より進行方向前方側に架空線の中心軸から所定の距離離れた略対称位置にガイドローラが設けられているので、架空線に難着雪リング等の付属品が取り付けられている場合でも、その付属品が2個のガイドローラに包み込まれ、2個のガイドローラにより付属品を架空線が被服される長尺物内に確実に導くことができる。さらに、その2個のガイドローラのガイドローラ回転軸の外周に弾力性を有する弾性体が設けられているので、架空線に取り付けられている付属品を2個のガイドローラにより確実に捕らえることができ、2個のガイドローラにより付属品を架空線が被服される長尺物内に確実に導くことができる。
【0010】
本発明のうち第3の態様に係るものは、第1または第2の態様に係る架空線被覆装置であって、縫合手段より進行方向後方側に設けられ、駆動モータにより回転駆動され、長尺物を進行方向後方側に送る送りローラを、有し、駆動モータにより駆動される車輪の周速度と送りローラにより長尺物が送られる速度とを同調させたことを特徴とするものである。
【0011】
送りローラにより長尺物が送られる速度が速い場合は縫合手段の針に負担がかかることになり、駆動モータにより駆動される車輪の周速度が速い場合は長尺物がたるみ長尺物の両端部を的確に縫合することができないが、本発明によれば、駆動モータにより駆動される車輪の周速度と送りローラにより長尺物が送られる速度を同調させているので、架空線被覆装置の進行速度で長尺物が縫合手段に送られ、縫合手段により長尺物の両端部を確実に縫合することができる。
【0012】
本発明のうち第4の態様に係るものは、第1〜第3のいずれかの態様に係る架空線被覆装置であって、車輪および駆動モータを備える自走機部と、該自走機部と分割可能に構成され、架空線被覆手段および縫合手段を備えるソ―イング部と、車輪の中心軸を貫通するとともに、自走機部とソーイング部を連結させる連結ピンと、ソーイング部に設けられ、架空線に係合する周溝が形成されたソーイング部姿勢制御ローラと、を有し、ソーイング部は、架空線がソーイング部姿勢制御ローラに係合することにより、連結ピンを軸として、回転することを特徴とするものである。
【0013】
本発明によれば、架空線がソーイング部姿勢制御ローラに係合することにより、連結ピンを軸としてソーイング部が回転するので、車輪に係合している架空線の接線方向の向きと架空線被覆装置の進行方向前方の架空線の方向(向き)が異なる場合でも、ソーイング部の向きを架空線被覆装置の進行方向前方の架空線の方向(向き)に向けることができる。これにより、長尺物が縫合されやすくなり、長尺物を架空線に確実に被覆させることができる。
【0014】
本発明のうち第5の態様に係るものは、架空線に係合する周溝を持つ複数の車輪の少なくとも1個を駆動モータにより駆動する車輪駆動工程と、回転軸の外周に長尺物が巻き付けられた巻付ロールから送り出された長尺物を進行方向に沿って折り込んで架空線に被覆させる架空線被覆工程と、架空線被覆工程により被覆された長尺物の両側縁部を縫合する縫合工程と、を有するものである。
【0015】
本発明によれば、駆動モータにより車輪を駆動させて架空線被覆装置を移動させるので、たとえば、作業者がリモコンなどを操作して架空線被覆装置を移動させることができ、作業者の労力が軽減できるとともに、作業者の安全も確保することができる。また、作業者が宙乗機に乗って架空線上を移動しないので、宙乗機の移動による架空線に付着している油分や錆等の腐食生成物や難着雪リング等の付属品が落下することもない。さらに、巻付ロールから送り出された長尺物を進行方向に沿って折り込んで架空線を被覆させ、その長尺物の両端部が縫合されるので、架空線被覆装置の移動により架空線に付着している油分や錆等の腐食生成物が落下することがないとともに、縫合している糸をほどくことにより架空線を被覆している長尺物と架空線を簡単に分離することができる。
【発明の効果】
【0016】
以上のように本発明の架空線被覆装置や架空線被覆工法によれば、架空線に付着した油分や錆等の腐食生成物などが架空線から落下することを確実に防止することができるとともに、作業員の労力を軽減し、作業員の安全性を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の一実施形態における架空線被覆装置の左側面図である。
【図2】同架空線被覆装置の右側面図である。
【図3】同架空線被覆装置の前方上面図である。
【図4】同架空線被覆装置の自走機部とソーイング部を分割させた図である。
【図5】同架空線被覆装置のソーイング部が回転する原理を説明した図である。
【図6】本発明の一実施形態における架空線被覆工程を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の架空線被覆装置の一実施形態について図1〜図4を参照にしながら説明する。図1は、本発明の一実施形態における架空線被覆装置の左側面図であり、図2は、同架空線被覆装置の右側面図であり、図3は、同架空線被覆装置の前方上面図であり、図4は、同架空線被覆装置の自走機部とソーイング部を分割させた図である。
【0019】
図1〜図4に示すように、架空線被覆装置1は、架空線被覆装置1を駆動する自走機部2(図4参照)と、電線3(架空線)にポリエステル系の布4(長尺物)を被覆させるソーイング部5(図4参照)からなる。なお、本実施形態では、架空線として電線を例示したが、これに限らず、コンクリート柱や鉄塔などによって空中に張り渡した架線であれば電線に限らない。また、本実施形態では、長尺物としてポリエステル系の布を例示したが、これに限らず、架空線を被覆できるものであれば他のものも含まれる。
【0020】
自走機部2は、車輪6を回転させることにより電線3に沿って架空線被覆装置1を移動させるものであり、電線3に係合する周溝を持つ2個の車輪6と、その車輪6を駆動する駆動モータ7、動力源であるバッテリ(図示略)、制御装置(図示略)などを有している。なお、本実施形態では、車輪6を2個設けたが、3個以上設けてもよい。
【0021】
自走機部2は、駆動モータ7の駆動軸(図示略)の回転を駆動モータ7の駆動軸(図示略)に取り付けられているモータ側車輪駆動ギア103、車輪回転チェーン9、車輪駆動ギア10にそれぞれ伝達し、車輪6を回転させている。これにより、架空線被覆装置1が電線3上を自走することができる。なお、本実施形態では、駆動モータ7により、2個の車輪6を回転させたが、これに限らず、車輪6の少なくとも1個を駆動するものであればよい。
【0022】
制御装置(図示略)は、架空線被覆装置1を制御するものであり、本実施形態では、地上の作業者により架空線被覆装置1を無線誘導するリモコン(図示略)が操作され、そのリモコン(図示略)からの操作信号が架空線被覆装置1に設けられている受信手段により受信されることにより、その操作信号に沿った架空線被覆装置1の制御が制御装置(図示略)により行われる。
【0023】
ソーイング部5は、電線3に布4を被覆させるとともに、その電線3に被覆した布4の両端部を縫合するものであり、布回転軸11(回転軸)の外周に布を巻き付ける巻付ロール12と、巻付ロール12から送り出された布4を進行方向に沿って折り込んで電線3を被覆させるラッパ管13(架空線被覆手段)と、ラッパ管13により被覆された布4の両端部を縫合するミシン部14(縫合手段)と、ミシン部14に供給される糸を収納する糸収納部15と、ラッパ管13より架空線被覆装置1の進行方向前方側に設けられ、電線3の中心軸から所定の距離離れた略対称位置に2個備えられたガイドローラ16(16a、16b)と、ミシン部14より進行方向後方側に設けられ、駆動モータ7により回転駆動され、布4を進行方向後方側に送る送りローラ17などを有している。なお、本実施形態では、架空線被覆手段としてラッパ管13を例示したが、これに限らず、巻付ロール12から送り出された布を進行方向に沿って折り込んで電線3に被覆させるものであれば他のものでもよい。また、縫合手段としてミシン部14を例示したが、これに限らず、ラッパ管13により被覆された布4の両端部を縫合するものであれば他のものでもよい。
【0024】
ラッパ管13は、内側面と外側面を有し、巻付ロール12から送られてきた布4を内側面と外側面の間に挟みながら折り込むことにより、その折り込まれた布4により電線3が被覆される。
【0025】
ミシン部14は、ラッパ管13により被覆された布4の両端部を縫合するための針を有し、駆動モータ7の駆動軸(図示略)の回転が駆動モータ7の駆動軸(図示略)に取り付けられているソーイング部駆動ギア104、ソーイング部駆動チェーン100、減速機18の軸の一方側に取り付けられている減速機ギア101、減速機18の軸の他方側に取り付けられているミシン部駆動ギア19、ミシン部駆動チェーン20、針送りギア21にそれぞれ伝達され、ミシン部14の針が上下運動する。これにより、ミシン部14は、糸収納部15から送られてきた糸を用いて、電線3を被覆する布4の両端部を縫合することができる。
【0026】
送りローラ17は、電線3を被覆している布4を架空線被覆装置1の進行方向後方側(進行方向の逆方向)に送るものであり、駆動モータ7の駆動軸(図示略)の回転が駆動モータ7の駆動軸(図示略)に取り付けられているソーイング部駆動ギア104、ソーイング部駆動チェーン100、減速機18の軸の一方側に取り付けられている減速機ギア101、減速機18の軸の他方側に取り付けられている送りローラ駆動ギア22、送りローラ駆動チェーン23、減速機102の一方側に取り付けられている布送りギア24、減速機102の他方側に取り付けられている減速機ローラ25、送りローラ駆動ベルト26、布送りローラ27にそれぞれ伝達され、送りローラ17が回転する。これにより、電線3を被覆している布4を架空線被覆装置1の進行方向後方側(進行方向の逆方向)に送ることができる。本実施形態では、送りローラ17を用いて、架空線被覆装置1の進行方向後方側(進行方向の逆方向)に布4を送っているので、送り刃をなくすことができ、構造の簡略化と軽重量化を図ることができる。
【0027】
ガイドローラ16は、ガイドローラ回転軸28(28a、28b)を中心に回転し、ガイドローラ回転軸28の外周にウレタン樹脂を材料とする弾性体29(29a、29b)が設けられている。この弾力性を有する弾性体18を外周に備えたガイドローラ16により、電線3に難着雪リング等の付属品が取り付けられている場合でも、その付属品を2個のガイドローラ16に確実に捕らえることができ、2個のガイドローラ16により付属品を電線3が被服される布4内に確実に導くことができる。
【0028】
ここで、駆動モータ7により駆動される車輪6の周速度と送りローラ17により布4が送られる速度とを同調させている。すなわち、減速機などを用いて、駆動モータ7により駆動される車輪6の周速度と送りローラ17により布4が送られる速度とを同じにしている。このように、駆動モータ7により駆動される車輪6の周速度と送りローラ17により布4が送られる速度を同調させることにより、架空線被覆装置1の進行速度で布4がミシン部14に送られ、ミシン部14により布4の両端部を確実に縫合することができる。
【0029】
次に、車輪6に係合している電線3の接線方向の向きと架空線被覆装置1の進行方向前方の電線3の方向(向き)が異なる場合に、架空線被覆装置1のソーイング部5が上下に回転する原理について説明する。ここで、図5は、本発明の一実施形態における架空線被覆装置のソーイング部が回転する原理を説明した図である。
【0030】
自走機部2とソーイング部5とは連結ピン30により連結されている。この連結ピン30は、車輪6の中心軸を貫通させて、自走機部2とソーイング部5を連結させている。また、ソーイング部5には、電線3に係合する周溝が形成されたソーイング部姿勢制御ローラ31が設けられている。そして、ソーイング部姿勢制御ローラ31が電線3に係合することにより、連結ピン30を軸としてソーイング部5が上下に回転することとなる。このように、電線3がソーイング部姿勢制御ローラ31に係合することにより、連結ピン30を軸としてソーイング部5が回転するので、車輪3に係合している電線3の接線方向の向きと架空線被覆装置1の進行方向前方の電線3の方向(向き)が異なる場合でも、ソーイング部5の向きを架空線被覆装置1の進行方向前方の電線3の方向に向けることができる。これにより、電線3に被覆される布4をミシン部14により縫合されやすくなり、布4を電線3に確実に被覆させることができる。
【0031】
次に、架空線被覆装置を用いて行われる架空線被覆工程について説明する。図6は、本発明の一実施形態における同架空線被覆工程を示すフローチャートである。
【0032】
まずS1において、電線3上に架空線被覆装置1を設置する。この架空線被覆装置1の設置は、作業者により行われる。そして、S2により、架空線被覆装置1の電源をONにする。この架空線被覆装置1の電源ONは作業者によりリモコンを用いて行われる。なお、架空線被覆装置1の電源は、作業者により架空線被覆装置1のON/OFFスイッチ(図示略)を直接操作し、電源ONとしてもよい。そして、S3に進む。
【0033】
S3において、作業者により駆動モータ7がONにされる。具体的には、作業者によりリモコン(図示略)が操作され、そのリモコンからの操作信号(ON信号)により架空線被覆装置1の駆動モータ7がONになる。このように、駆動モータ7がONになると駆動モータ7の駆動軸(図示略)が回転し、電線3と係合する車輪6が駆動される(車輪駆動工程)。これにより、架空線被覆装置1が電線3上を自走することができる。なお、本実施形態では、上述したように、駆動モータ7により2個の車輪6を回転させたが、これに限らず、車輪6の少なくとも1個を駆動するものであればよい。
【0034】
S4において、駆動モータ7が回転することにより布回転軸11の外周に巻き付けられた布4が巻付ロール12から送り出され、その送り出された布4はラッパ管13により架空線被覆装置1の進行方向に沿って折り込まれ、電線3が被覆される(架空線被覆工程)。そして、S5に進む。
【0035】
S5において、電線3に被覆された布4の両側縁部がミシン部14により縫合される(縫合工程)。そして、S6により、リモコン(図示略)からの駆動モータの操作信号(OFF信号)が受信されたかが判断され、受信されていない場合は、S3〜S5の処理が継続して行われる。そして、駆動モータの操作信号(OFF信号)を受信したと判断された場合は、S7により、駆動モータ7の駆動がOFFにされる。
【0036】
以上より本実施形態によれば、駆動モータ7により車輪6を駆動させて架空線被覆装置1を移動させるので、作業者の地上からのリモコン(図示略)の操作で架空線被覆装置1を移動させることができ、作業者の労力が軽減できるとともに、作業者の安全も確保することができる。また、巻付ロール12から送り出された布4を架空線被覆装置1の進行方向に沿って折り込んで電線6を被覆させ、その布4の両端部がミシン部14により縫合されるので、架空線被覆装置1の移動により電線3に付着している油分や錆等の腐食生成物などが落下することがないとともに、縫合している糸をほどくことにより電線3を被覆している布4と電線3を簡単に分離することができる。
【0037】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0038】
1 架空線被覆装置
2 自走機部
3 電線(架空線)
4 布(長尺物)
5 ソーイング部
6 車輪
7 駆動モータ
9 車輪回転チェーン
10 車輪駆動ギア
11 布回転軸(回転軸)
12 巻付ロール
13 ラッパ管(架空線被覆手段)
14 ミシン部(縫合手段)
15 糸収納部
16 ガイドローラ
17 送りローラ
18 減速機
19 ミシン部駆動ギア
20 ミシン部駆動チェーン
21 針送りギア
22 送りローラ駆動ギア
23 送りローラ駆動チェーン
24 布送りギア
25 減速機ローラ
26 布送り駆動ベルト
27 布送りローラ
28 ガイドローラ回転軸
29 弾性体
30 連結ピン
31 ソーイング部姿勢制御ローラ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
架空線に係合する周溝を持つ複数の車輪と、
前記車輪の少なくとも1個を駆動する駆動モータと、
回転軸を有し、該回転軸の外周に長尺物を巻き付ける巻付ロールと、
前記巻付ロールから送り出された長尺物を進行方向に沿って折り込んで架空線に被覆させる架空線被覆手段と、
前記架空線被覆手段により被覆された長尺物の両端部を縫合する縫合手段と、を有する架空線被覆装置。
【請求項2】
前記架空線被覆手段より進行方向前方側に設けられ、架空線の中心軸から所定の距離離れた略対称位置に2個備えられたガイドローラを、有し、
前記ガイドローラは、ガイドローラ回転軸を中心に回転し、該ガイドローラ回転軸の外周に弾力性を有する弾性体を備えられた請求項1記載の架空線被覆装置。
【請求項3】
前記縫合手段より進行方向後方側に設けられ、前記駆動モータにより回転駆動され、長尺物を進行方向後方側に送る送りローラを、有し、
前記駆動モータにより駆動される車輪の周速度と前記送りローラにより長尺物が送られる速度とを同調させたことを特徴とする請求項1または2記載の架空線被覆装置。
【請求項4】
前記車輪および前記駆動モータを備える自走機部と、
該自走機部と分割可能に構成され、前記架空線被覆手段および前記縫合手段を備えるソ―イング部と、
前記車輪の中心軸を貫通するとともに、前記自走機部と前記ソーイング部を連結させる連結ピンと、
前記ソーイング部に設けられ、架空線に係合する周溝が形成されたソーイング部姿勢制御ローラと、を有し、
前記ソーイング部は、架空線がソーイング部姿勢制御ローラに係合することにより、前記連結ピンを軸として、回転することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の架空線被覆装置。
【請求項5】
架空線に係合する周溝を持つ複数の車輪の少なくとも1個を駆動モータにより駆動する車輪駆動工程と、
回転軸の外周に長尺物が巻き付けられた巻付ロールから送り出された長尺物を進行方向に沿って折り込んで架空線に被覆させる架空線被覆工程と、
前記架空線被覆工程により被覆された長尺物の両側縁部を縫合する縫合工程と、を有する架空線被覆工法。














【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−16157(P2012−16157A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−149563(P2010−149563)
【出願日】平成22年6月30日(2010.6.30)
【出願人】(000141015)株式会社かんでんエンジニアリング (16)