説明

架空電線路

【課題】従来の架空電線路は架空ケーブルにオフセット部を形成して架空ケーブルの熱による伸び出しを吸収していたが、オフセット部を形成する作業が非常に面倒であるという問題があった。
【課題を解決するための手段】
支持柱1と、該支持柱1間に張ったメッセンジャーワイヤー2と、該メッセンジャーワイヤー2に添設されると共にラッシングワイヤー4によってメッセンジャーワイヤー2に一体化された架空ケーブル3とを備えてなる架空電線路において、前記架空ケーブル3はオフセット部が形成されない状態で前記支持柱1間に架設されており、架空ケーブル3を長手方向に蛇行させることによって架空ケーブル3の熱による伸び出しを吸収するように構成したものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は架空電線路に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の架空電線路は、特許文献1に記載されているように、支持柱と、該支持柱間に張ったメッセンジャーワイヤーと、該メッセンジャーワイヤーに添設されると共にラッシングワイヤーによってメッセンジャーワイヤーに一体化された架空ケーブルとを備えており、架空ケーブルには、オフセット部が設けられている。
オフセット部は、架空ケーブルの熱による伸び出しを吸収するために形成されるものである。
【0003】
【特許文献1】特開平9−233664号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、架空電線路にオフセット部を形成するには、支持柱間に架空ケーブルを延線した後、オフセット部を形成するために架空ケーブルを引き戻す作業等が必要になり、該オフセット部を形成する作業が非常に面倒であるという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記問題点を解決した架空電線路を提供するもので、請求項1記載の発明は、支持柱と、該支持柱間に張ったメッセンジャーワイヤーと、該メッセンジャーワイヤーに添設されると共にラッシングワイヤーによってメッセンジャーワイヤーに一体化された架空ケーブルとを備えてなる架空電線路において、前記架空ケーブルはオフセット部が形成されない状態で前記支持柱間に架設されており、架空ケーブルを長手方向に蛇行させることによって架空ケーブルの熱による伸び出しを吸収することを特徴とする架空電線路である。
【0006】
また請求項2記載の発明は、支持柱間に位置したメッセンジャーワイヤー、ラッシングワイヤーおよび架空ケーブルに、これらを一括して把持する拘束具を取付け、該拘束具に位置した架空ケーブル部分を不動点として架空ケーブルを長手方向に蛇行させることを特徴とする請求項1記載の架空電線路である。
【0007】
更に請求項3記載の発明は、支持柱の両側に位置した架空ケーブルの熱による伸び出しに伴う支持柱側に向かって生じる軸力が等しくなるように支持柱の両側に架空ケーブルを架設し、支持柱に位置した架空ケーブル部分を不動点として架空ケーブルを長手方向に蛇行させることを特徴とする請求項1記載の架空電線路である。
【0008】
更に請求項4記載の発明は、支持柱の両側に位置した架空ケーブルの熱による伸び出しに伴う支持柱側に向かって生じる軸力が異なるように支持柱の両側に架空ケーブルを架設し、支持柱部分に位置した架空ケーブルの外周長手方向に所定長のパイプを被せ、パイプ内に位置した架空ケーブル部分を不動点として架空ケーブルを長手方向に蛇行させることを特徴とする請求項1記載の架空電線路である。
【発明の効果】
【0009】
本発明は以下のような効果がある。
請求項1に係る架空電線路のように、架空ケーブルを、オフセット部が形成されない状態で支持柱間に架設し、架空ケーブルを長手方向に蛇行させることによって架空ケーブルの熱による伸び出しを吸収するように構成すると、オフセット部形成のための作業が不要となり、架空電線路の形成が容易となる。
【0010】
また請求項2に係る架空電線路のように、支持柱間に位置したメッセンジャーワイヤー、ラッシングワイヤーおよび架空ケーブルに、これらを一括して把持する拘束具を取付け、該拘束具に位置した架空ケーブル部分を不動点として架空ケーブルが長手方向に蛇行するように構成すると、メッセンジャーワイヤー、ラッシングワイヤーおよび架空ケーブル相互が線路方向に動くのを防止して、架空ケーブルを長手方向に容易に蛇行させることができ、架空ケーブルの熱による伸び出しを容易に吸収することができる。
【0011】
更に請求項3に係る架空電線路のように、支持柱の両側に位置した架空ケーブルの熱による伸び出しに伴う支持柱側に向かって生じる軸力が等しくなるように支持柱の両側に架空ケーブルを架設し、支持柱に位置した架空ケーブル部分を不動点として架空ケーブルが長手方向に蛇行するように構成すると、拘束具を必要としないで容易に架空ケーブルの熱による伸び出しを吸収することができる。
【0012】
更に請求項4記載に係る架空電線路のように、支持柱の両側に位置した架空ケーブルの熱による伸び出しに伴う支持柱側に向かって生じる軸力が異なるように支持柱の両側に架空ケーブルを架設し、支持柱部分に位置した架空ケーブルの外周長手方向に所定長のパイプを被せ、パイプ内に位置した架空ケーブル部分を不動点として架空ケーブルが長手方向に蛇行するように構成すると、支持柱の両側に位置した架空ケーブルの熱による伸び出しを考慮しないで架空ケーブルを架設する事が出来るので架空ケーブルの架設が容易になり、また不動点に位置した架空ケーブルに座屈を生じさせないという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明を実施するための最良の形態実施につき、図を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明に係る架空電線路の概略構成図である。図において、1は支持柱、2はメッセンジャーワイヤー、3は架空ケーブル、4はラッシングワイヤーである。
【0014】
支持柱1は所定間隔を開けて複数本設けられており、該支持柱1間にはメッセンジャーワイヤー2が張り渡されている。メッセンジャーワイヤー2は鋼撚線等で形成されており、該メッセンジャーワイヤー2には架空ケーブル3が添設されている。架空ケーブル3は、導体上に絶縁層やシース等を被覆した単心ケーブルを3本束ねたものである。3本の単心ケーブルは緩く撚り合わされることによって束ねられている。メッセンジャーワイヤー2と架空ケーブル3とはラッシングワイヤー4によって一体化されている。
【0015】
上記構成は従来の架空電線路と同様の構成であるが、本発明に係る架空電線路は、架空ケーブル3を略直線状に張って、線路の長手方向にオフセット部が形成されていない点に特徴がある。なお本発明においてオフセット部が形成されないとは、支持柱部分において架空ケーブルが若干たるんで敷設される場合を含むものである。すなわち支持柱の部分に位置した架空ケーブルは、メッセンジャーワイヤーと離されて敷設されるので完全な直線上にならずたるんで架設されるが、これは架空ケーブルの熱による伸び出しを考慮したオフセットではないので、本発明の、架空ケーブルはオフセット部が形成されない状態で支持柱間に架設されている、という概念に含まれるものである。また支持柱1間の中央部付近に位置した架空ケーブル3も自重等で若干垂れ下がるが、このような垂れ下がりも上述の架空ケーブル3を略直線状に張るという概念に含まれるものである。このような支持柱1間の中央部付近に位置した架空ケーブル3の自重等による垂れ下がりは、例えば夏のような高温期にケーブルを布設した場合、冬の低温期にケーブルが収縮することがあるが、このケーブル収縮を吸収するという効果がある。
【0016】
図1に示すように、架空ケーブル3は支持柱1間に略直線状に張られており、オフセット部が形成されていない。このようにオフセット部を形成しない場合には、架空ケーブルの熱伸縮、特に架空ケーブルの熱による伸び出しが問題となる。
【0017】
本発明は、架空ケーブルの熱による伸び出しを、従来のようにオフセット部で吸収するのではなく、架空ケーブルの長手方向に蛇行を生じさせることによって吸収するものである。
すなわち図1の架空電線路のように、架空ケーブルにオフセット部を形成しないで架空ケーブルを架設し、架空ケーブルを長手方向に蛇行させることによって架空ケーブルの熱による伸び出しを吸収するものである。
【0018】
なお図1において符号30は、架空ケーブル3とメッセンジャーワイヤー2との分離位置に取付けられた分離金具である。この分離金具は架空ケーブルが線路方向に動くのを許容し架空ケーブルを拘束していないものである。この分離金具は無くてもよい。
【0019】
図2は本発明の他の実施形態を示すもので、前記実施形態と異なる点は、支持柱間に位置したメッセンジャーワイヤー、ラッシングワイヤーおよび架空ケーブルに、これらを一括して把持固定する拘束具10を取付けた点である。
【0020】
図2における拘束具10は、支持柱1の両側に位置したメッセンジャーワイヤー2、ラッシングワイヤー4および架空ケーブル3を一括して把持固定している。拘束具10の構造は、メッセンジャーワイヤー2、ラッシングワイヤー4および架空ケーブル3を一括して把持固定できる構造であればよく、特に限定するものではない。例えば2つ割の部材でメッセンジャーワイヤー2、ラッシングワイヤー4および架空ケーブル3を一括して把持し、該2つ割の部材をボルト・ナットで締付けることによって、メッセンジャーワイヤー2、ラッシングワイヤー4および架空ケーブル3を一括把持固定することができる。
【0021】
上記のように、支持柱間に位置したメッセンジャーワイヤー2、ラッシングワイヤー4および架空ケーブル3に、これらを一括して把持固定する拘束具10を取付けると、架空ケーブル3に熱による伸び出しが生じた場合、該拘束具に位置した架空ケーブル部分を不動点として架空ケーブル1を長手方向に蛇行させることができる。したがって架空ケーブルの熱による伸び出しを容易に吸収することができるものである。
【0022】
なお拘束具10の取付け個数や、取付け間隔は、架空ケーブルの長さ等を考慮して適宜選定するものである。
【0023】
図3は本発明の更に他の実施形態を示すもので、前記実施形態と異なる点は、支持柱1の両側に位置した架空ケーブル3の熱による伸び出しに伴う支持柱側に向かって生じる軸力A,Bが等しくなるように支持柱1の両側に架空ケーブル3を架設した点である。
【0024】
このようにし、軸力A,Bが等しくなるように支持柱1の両側に架空ケーブル3を架設すると、軸力A,Bが等しくなる架空ケーブル部分が不動点となり、架空ケーブル1が熱によって伸び出した際、前記不動点が基点となって架空ケーブル1が長手方向に蛇行し、これによって架空ケーブル1の熱による伸び出しを吸収することができる。
【0025】
図4は本発明の更に他の実施形態を示すもので、前記実施形態と異なる点は、支持柱1の両側に位置した架空ケーブル3の熱による伸び出しに伴う支持柱側に向かって生じる軸力A,Bが異なるように支持柱1の両側に架空ケーブル3を架設し、かつ支持柱1部分に位置した架空ケーブル3の外周長手方向に所定長のパイプ20を被せた点である。なお、パイプ20は支持柱1に固定してある。
【0026】
上記のように、支持柱の両側に位置した架空ケーブルの熱による伸び出しに伴う支持柱側に向かって生じる軸力が異なるように支持柱の両側に架空ケーブルを架設すると、架空ケーブルの架設が容易になるというを効果がある。また支持柱部分に位置した架空ケーブルの外周長手方向に所定長のパイプを被せると、熱による伸び出しに伴ってパイプ20内を架空ケーブルが長手方向に移動し、軸力が釣り合った点で変形してパイプの内壁にあたり、該位置が不動点となって架空ケーブルの長手方向に蛇行を生じさせることができる。したがって容易に架空ケーブルの熱による伸び出しを吸収することができる。更に不動点に位置した架空ケーブルはパイプ20によって過度の曲がりが規制されているので、不動点となった架空ケーブルに座屈を生じさせないという効果がある。
【0027】
なお架空ケーブルに不動点を形成する手段は、前記各実施形態に限定されるものではなく、例えば、支持柱1に位置した架空ケーブル3に把持具等を固定し、該把持具等を支持柱1に固定することにより、該固定した架空ケーブル3の部分を不動点としてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明に係る架空電線路の一実施形態を示す概略構成図、
【図2】本発明の他の実施形態を示す要部構成図、
【図3】本発明の更に他の実施形態を示す要部構成図
【図4】本発明の更に他の実施形態を示す要部構成図
【符号の説明】
【0029】
1 支持柱
2 メッセンジャーワイヤー
3 架空ケーブル
4 ラッシングワイヤー
10 拘束具
20 パイプ
30 分離金具

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持柱と、該支持柱間に張ったメッセンジャーワイヤーと、該メッセンジャーワイヤーに添設されると共にラッシングワイヤーによってメッセンジャーワイヤーに一体化された架空ケーブルとを備えてなる架空電線路において、前記架空ケーブルはオフセット部が形成されない状態で前記支持柱間に架設されており、架空ケーブルを長手方向に蛇行をさせることによって架空ケーブルの熱による伸び出しを吸収することを特徴とする架空電線路。
【請求項2】
支持柱間に位置したメッセンジャーワイヤー、ラッシングワイヤーおよび架空ケーブルに、これらを一括して把持する拘束具を取付け、該拘束具に位置した架空ケーブル部分を不動点として架空ケーブルを長手方向に蛇行させることを特徴とする請求項1記載の架空電線路。
【請求項3】
支持柱の両側に位置した架空ケーブルの熱による伸び出しに伴う支持柱側に向かって生じる軸力が等しくなるように支持柱の両側に架空ケーブルを架設し、支持柱に位置した架空ケーブル部分を不動点として架空ケーブルを長手方向に蛇行させることを特徴とする請求項1記載の架空電線路。
【請求項4】
支持柱の両側に位置した架空ケーブルの熱による伸び出しに伴う支持柱側に向かって生じる軸力が異なるように支持柱の両側に架空ケーブルを架設し、支持柱部分に位置した架空ケーブルの外周長手方向に所定長のパイプを被せ、パイプ内に位置した架空ケーブル部分を不動点として架空ケーブルを長手方向に蛇行させることを特徴とする請求項1記載の架空電線路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−87252(P2006−87252A)
【公開日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−270702(P2004−270702)
【出願日】平成16年9月17日(2004.9.17)
【出願人】(000213297)中部電力株式会社 (811)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【出願人】(502308387)株式会社ビスキャス (205)
【Fターム(参考)】