説明

柔軟性立体編物

【課題】寝具の芯材等として用いる場合に、良好なクッション性、反発性を維持し、寝具の折りたたみ性や収納性、洗濯等の取り扱い性を良好にできると共に、特に、掛け寝具の芯材に用いる場合に、掛け寝具の身体へのフィット性を良好にすることのできる、曲げに対する柔軟性が非常に高い立体編物を提供する。
【解決手段】表裏二層の編地とこれらを連結する連結糸からなる立体編物であって、立体編物の生機を編成した後、仕上げ加工工程で表裏二層の編地の少なくとも片側の編地を部分的に切断し、該切断部の長さが立体編物の1m角当り、1m以上90m以下であることを特徴とする立体編物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、曲げに対する柔軟性が非常に高く、寝具の芯材や、身体にフィットさせるためのサポーターや、衣類等に有効に用いることのできる立体編物に関するものである。この内、寝具の芯材等として用いる場合には、良好なクッション性、反発性を維持しながら、寝具の折りたたみ性や洗濯等の取り扱い性を良好にできると共に、特に、掛け寝具の芯材に用いる場合には、掛け寝具の身体へのフィット性を良好にすることのできる立体編物に関する。
【背景技術】
【0002】
立体編物は、優れた通気性とクッション性を活かし、ベッドパッド、マットレス、敷き布団、掛け布団等の寝具に多く使用されている。
この内、掛け布団の芯材等に使用する場合は、多くの空気層を持たせるためにより厚みのある立体編物が必要となるが、立体編物を厚くすると折れ曲がり難くなり、掛け布団に必要な身体への十分なフィット性が得られないものであった。
曲げに対する柔軟性を向上させるには、立体編物の片面を畝状や格子状に形成する方法が考えられ、このような立体編物として特許文献1には、立体編物の表側に畝状凸部を形成し、柔軟でクッション性が高く、意匠効果の高い立体編物が提案されている。しかしながら特許文献1に開示の立体編物は、生機段階で畝状に形成されるため、染色やヒートセット等の仕上げ加工工程で、凸部の表面が収縮したり凸部端部の厚みが減少することにより、凸形状が十分維持されずに略楕円形状となり、そのため凸部端部のクッション性が損なわれるという問題点があった。
又、特許文献2には、立体編物を経畝構造とし、経畝部の組織を鎖編と挿入編で構成し、かつ、鎖編みが所々で隣の経畝と結接構造を形成した立体編物が提案されている。しかしながら特許文献2に開示の立体編物も特許文献1と同様に、立体編物の生機の段階で経畝構造が形成されているため、染色やヒートセットの工程で、鎖編の結接部のないの畝部表面が収縮し、畝部端部の厚さが減少したり、クッション性が低下する問題点があった。又、畝部表面の収縮を防止するために鎖編の結接部を増やすと、曲げに対する柔軟性が得られないという問題点があった。
【0003】
【特許文献1】特開2003−113562号公報
【特許文献2】特開2004−232109号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、前記問題点を解決し、寝具の芯材や、サポーター、衣類等として用いる場合に、良好なクッション性、反発性を維持しながら、寝具や、サポーター、衣類の折りたたみ性や洗濯等の取り扱い性を良好にできると共に、特に、掛け寝具の芯材に用いる場合に、掛け寝具の身体へのフィット性を良好にすることのできる、曲げに対する柔軟性が非常に高い立体編物を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記の目的を達成するため、立体編物の製造方法および編地形態を鋭意検討した結果、立体編物の反発性を維持しながら、掛け寝具等の芯材等に用いる際の身体へのフィット性が良好となる立体編物の条件を見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は以下の通りである。
(1)表裏二層の編地とこれらを連結する連結糸からなる立体編物であって、立体編物の生機を編成した後、仕上げ加工工程で表裏二層の編地の少なくとも片側の編地を部分的に切断し、該切断部の長さが立体編物の1m角当り、1m以上90m以下であることを特徴とする立体編物。
(2)寝具の芯材用であることを特徴とする上記(1)に記載の立体編物。
(3)掛け寝具の芯材用であることを特徴とする上記(1)または(2)に記載の立体編物。
(4)上記(1)に記載の立体編物を芯材に使用していることを特徴とする寝具。
【発明の効果】
【0006】
本発明の立体編物は、表裏の編地の少なくとも片側の編地が仕上げ加工工程で部分的に切断されているため、ヒートセット等の熱収縮により編地の切断端部の厚みがつぶれることなく、クッション性、反発性が損なわれることがない。又、表裏の少なくとも片側の編地に一定長さの切断部を有することにより、立体編物の曲げに対する柔軟性が極めて向上し、掛け寝具に用いる際の身体へのフィット性が極めて向上するものである。
さらに本発明の立体編物を寝具の芯材に用いることにより、身体へのフィット性、折りたたみ性、収納性、洗濯性等の取り扱い性が良好な寝具が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明でいう立体編物とは、表裏2層の編地を連結糸で連結した、表層、連結層、裏層の少なくとも3層で形成される立体的な編地のことをいい、ダブルラッセル編機やダブル丸編機等、2列の針列を有する編機で形成される編地を指す。
立体編物の連結糸に用いる繊維素材としては、ポリトリメチレンテレフタレート繊維、ポリエチレンテレフタレート繊維、ポリブチレンテレフタレート繊維、ポリアミド繊維、ポリプロピレン繊維、ポリ塩化ビニル繊維、ポリエステル系エラストマー繊維等の任意の合成繊維を用いることができるが、より良好なクッション性とするために、連結糸はモノフィラメントが好ましい。特に連結糸がポリトリメチレンテレフタレート繊維のモノフィラメントであると、立体編物の圧縮回復性がより向上し、ヘタリ難い立体編物となり好ましい。
【0008】
又、表裏の編地を形成する繊維素材としては、ポリエステル系繊維、ポリアミド系繊維、ポリアクリル系繊維、ポリプロピレン系繊維等の合成繊維、綿、麻、ウール等の天然繊維、キュプラレーヨン、ビスコースレーヨン、リヨセル等の再生繊維等の任意の繊維を用いることができる。立体編物表面の肌触りをより良好にするには、表面の編地を構成する繊維に嵩高糸を用いることが好ましく、例えば、仮撚加工糸、ジェットスタッファー加工糸、押し込み加工糸、紡績糸、ループ状毛羽を有する流体噴射加工糸等の嵩高性が付与された糸が好ましい。又、綿、レーヨン等の吸湿性の高い繊維を用いると、蒸れ防止性を改善する上で好ましい。特に吸放湿性の高いキュプラレーヨンを用いると、蒸れ防止性がより良好となる。
又、立体編物表面の肌触りをさらに良好にするためには、編地表面へのモノフィラメントの出現面積を低く抑えることが好ましく、表側編地の同一編目における表側編地用のマルチ糸の総繊度D(dtex)と、連結糸のモノフィラメントの繊度d(dtex)の関係であるD/dが1.1以上であることが好ましく、より好ましくは1.5〜15.0である。
【0009】
本発明の立体編物は、立体編物を編成する際、生機までは表裏の編地に切断部がない様に編成する必要がある。その後、生機を仕上げ加工する際に、表裏の編地の少なくとも片側の編地を部分的に切断する。生機の段階で切断部が形成されている場合は、後の染色や、ヒートセット等の仕上げ加工工程で、編地の切断部の形状が熱収縮により崩れ、良好なクッション性が得られなくなる。尚、生機は、編地を部分的に切断する前にプレセットすることが切断部の形状維持のために好ましい。
本発明においては、立体編物の表裏二層の編地の少なくとも片側の編地が部分的に切断されていることを特徴とする。少なくとも片側の編地を部分的に切断する方法には以下の方法を用いることが好ましい。
一つの方法は、立体編物の表裏編地の切断したい部分に、溶解性繊維を編み込んで生機を作製し、乾熱ヒートセット(プレセット)により厚みや表裏のメッシュ形状等の立体編物の構造を熱固定する。その後、溶解性繊維を溶解する工程により、表裏の編地に切断部を形成させる。続いて、立体編物の形態を安定させるための乾熱ヒートセット(ファイナルセット)をプレセットと同温以下の温度で行い、目的の立体編物を得ることが出来る。ここで、溶解性繊維に用いる繊維には水溶性ポリビニルアルコール繊維や、易アルカリ溶解性ポリエステル繊維等の繊維を用いることができるが、水溶性繊維を用いることが、工程や環境への負荷が少なくより好ましい。
【0010】
別の方法としては、前記方法の溶解性繊維の代わりに、抜き糸を用い、立体編物をファイナルセットした後に、抜き糸を抜き取り、表裏の編地に切断部を形成することが出来る。
さらに別の方法として、立体編物を通常一般に形成し、ファイナルセットした後、レーザーカット機を用い、レーザーの焦点・強度を調整することによって立体編物の片側表面の編地のみカットして、切断部を形成することができる。
前述の方法により切断部を形成することにより、熱収縮等により切断部の端部の厚みが減少したり、切断部分の編地が大きく収縮することがないため、立体編物の切断端部が良好なクッション性を維持できる。
【0011】
本発明の立体編物において、少なくとも片側の編地に形成される切断部は、立体編物を寝具の芯材に用いる際に、折りたたみ性や掛け布団の身体へのフィット性を良好にするために、切断部の長さが、立体編物の1m角当りに1m以上90m以下であることが必要である。切断部の長さが1m未満の場合、立体編物の表裏の編地に切断部を形成した効果が殆どなく、又、切断部の長さが90mを超えると、良好なクッション性、特に反発感を維持できなくなり、極端に柔らかく、又、ヘタリ易い立体編物となる。切断部のより好ましい長さは、2m以上70m以下、更に好ましくは5m以上50m以下である。切断部の切断形態は、立体編物の長さ方向、或いは幅方向にストライプ状に切断する方法や、格子状に切断する方法や、千鳥状に切断する方法等の形態で切断することができる。
【0012】
本発明の立体編物全体のクッション性、及び、切断部の端部のクッション性を良好にし、かつ、切断時の切断部端部の厚み減少を防止するために、立体編物の連結糸は少なくとも2本の連結糸が表裏の編地を互いに逆方向に斜めに傾斜してクロス状(X状)又はトラス状に連結すること好ましい。この際、クロス状、トラス状共に連結糸が2本の連結糸で構成されていてもよく、1本の同一の連結糸が表面又は裏面で折り返し、見かけ上2本となっている場合であってもよい。
尚、表裏の編地の切断部の幅は任意に設定できるが、立体編物のクッション性を良好に維持するために、切断部の幅は2cm以下であることが好ましい。又、切断部は連結糸がクロスしない様に糸抜きされていることが、立体編物の柔軟性をより向上させる上で好ましい。
【0013】
本発明の立体編物は寝具の芯材に用いることにより、寝具が柔軟となり、折りたたみ易く、収納や洗濯等の取り扱い性も良好となる。尚、本発明でいう寝具の芯材とは、従来から一般的に用いられる綿やポリエステル等の織編物の表皮材の中に充填される材料のことをいい、従来では綿やポリエステルの綿、発泡ウレタン、羽毛、不織布、立体編物等の材料が用いられていたものである。
立体編物を寝具の芯材に用いる場合は、芯材の少なくとも1層あるいは一部に本発明の立体編物を用い、織編物や立体編物等による表皮材で本発明の立体編物による芯材を覆い、表皮材の周囲を縫製で固定したり、あるいは、キルティングにより芯材と表皮材を固定することにより、立体編物を芯材に用いた寝具を得ることが出来る。
本発明の立体編物を寝具の芯材に用いる場合は、羽毛や綿やポリエステルの綿と立体編物を積層して用いることにより、他素材の芯材による吸湿効果や、断熱効果を寝具に付与することができるため好ましい。
【0014】
本発明の立体編物は、寝具の芯材に用い、蒸れ防止性や断熱性能に有効な厚みの空気層と、寝具としての十分なクッション性を持たせるために、厚みを3.5〜50mmとすることが好ましい。より好ましくは4〜25mmである。この際、連結糸には50〜1000デシテックスのモノフィラメントを用いることが好ましい。
尚、本発明の立体編物は、敷き寝具に用いる場合は敷き寝具としてのクッション性や体圧分散性をより良好にするためには、立体編物2.54cm平方の面積中にある連結糸の本数をN(本/2.54cm平方)、連結糸のデシテックスをT(g/1×106 cm)、連結糸の比重をρ0 (g/cm3 )とした時に、立体編物2.54cm平方の面積中にある連結糸の総断面積(N・T/1×106 ・ρ0 )を、は0.03〜0.3cm2 とすることが好ましい。又、立体編物を掛け寝具に用いる場合は寝具の身体へのフィット性をより良好にするために、連結糸の総断面積を0.02〜0.25cm2 とすることが好ましい。
【0015】
又、本発明の立体編物を寝具の芯材に用いる場合、立体編物の連結糸のモノフィラメントが表面に飛び出して皮膚に刺激を与えることを抑えるために、寝具の周囲、或いは芯材の立体編物の周囲に、突き刺し強度が0.5〜20Nの範囲の縁部カバー材を用いることが好ましい。尚、縁部カバー材は突き刺し強度は、ミシン針(オルガン株式会社製TV×7#19)をテンシロンのチャックに取り付け、縁部カバー材を直径30mmの円形のピン枠に固定した状態で、ミシン針を50mm/minの速度で突き刺し、貫通時の最大応力を求める方法で測定されるものである。
本発明に用いる立体編物は、本発明の目的を損なわない範囲で、通常の繊維加工に用いられている樹脂加工、吸水加工、制電加工、抗菌加工、撥水加工、難燃加工などの仕上げ加工を適用できる。
本発明の立体編物の仕上げ工程で用いる熱処理機としては、ピンテンター、クリップテンター、ショートループドライヤー、シュリンクサーファードライヤー、ドラムドライヤー、連続およびバッチ式タンブラー等が使用できる
【実施例】
【0016】
以下に、本発明を実施例などにより更に具体的に説明するが、本発明はこれら実施例などにより何ら限定されるものではない。尚、例中の各特性の評価および測定は下記の方法で行った。
(1)切断部の長さ
立体編物を1m角採取し、表面の個々の切断部の長さを巻尺で測定し、1m角中にある切断部の長さを合計する。尚、切断部が直線で1m角の端から端まである場合は1mとする。尚、切断部の長さの測定方法は、立体編物が1m角未満の大きさの場合、20〜50cm角の立体編物の切断部の長さを測定し、1m角に換算しても良い。
(2)反発感
剛体面上に置いた立体編物を手のひらで上から垂直に押さえ込み、以下の基準で反発感を官能評価する。
◎:弾力があり非常に反発感に優れている、
○:弾力があり反発感が良好である
△:弾力がやや乏しく反発感に劣る
×:弾力がなく反発感が殆どない
【0017】
(3)柔軟性
直径100mm、高さ200mmの木製円柱を円形面を上に立て、その上に、300mm角の立体編物を中心を合わせて置き、立体編物の周囲の垂れ下がり具合を、以下の基準で目視評価する。
◎:ほぼ円柱の側面に沿って垂れ下がる
○:かなり円柱の側面に沿って垂れ下がる
△:やや垂れ下がる
×:殆ど垂れ下がらない
(4)フィット性
幅1m、長さ2mの立体編物を仰向きに寝た男性(伸長176cm、体重65kg)の上に掛け、身体へのフィット具合を以下の基準で官能評価する。
◎:身体との隙間が殆どなく非常にフィットする
○:身体との隙間がややあるが、かなり身体にフィットする
△:身体との隙間がかなり多く身体にフィットしない
×:身体との隙間が非常に多く全く身体にフィットしない
【0018】
(5)ヘタリ性
剛体面上に200mm角の立体編物を置き、上に、直径100mm、重さ2kgの金属製円柱を円形面を下にして置き、24時間放置し、円柱を取り除き30分後の立体編物の厚さ(T1)を測定し、初期の厚さT0に対し、以下の式にて圧縮残留ひずみ率(ε)を測定する。尚、立体編物の厚さは0.5g/cm2 (49Pa)の荷重を掛けて測定した。
ε=(T0−T1)/T0×100
測定は3点のサンプルで行い平均値を求める。
【0019】
[実施例1〜4、比較例1、2]
6枚筬を装備した18ゲージ、釜間15mmのダブルラッセル編機を用い、表側の編地を形成する筬(L1、L2)から167dtex/48フィラメントのポリエチレンテレフタレート原糸を、連結糸用の筬(L3、L4)から200dtexのポリトリメチレンテレフタレートモノフィラメント(ソロテックス社製)を、又、裏側の編地を形成する筬(L5、L6)から、167dtex/48フィラメントのポリエチレンテレフタレート原糸を、L1、L3、L5の筬に1イン1アウトの配列で、L2、L4、L6の筬に1アウト1インの配列で供給した。下記の(編組織1)に示す編組織で、機上コース18コース/2.54cmの密度で生機を編成し、得られた生機を70℃で精錬後、180℃×2分で幅出し乾熱ヒートセットを行い、26コース/2.54cm、8.5ウエール/2.54cm、厚さ10.0mmの立体編物を得た。
【0020】
(編組織1)
L1:2022/2422/2022/2422/2444/
4644/4244/4644/4244/4222/
L2:4644/4244/4644/4244/4222/
2022/2422/2022/2422/2444/
L3:6464/6868/6464/6868/2020/
4646/4242/4646/4242/810810/
L4:4646/4242/4646/4242/810810/
6464/6868/6464/6868/2020/
L5:2220/2224/2220/2224/2224/
4446/4442/4446/4442/4442/
L6:4446/4442/4446/4442/4442/
2220/2224/2220/2224/2224/
【0021】
得られた立体編物の表側編地部分を2cm角、4cm角、10cm角の格子状にレーザーカットしたもの、長さ方向に50cm間隔、1m間隔のストライプでレーザーカットしたもの、及び、レーザーカットなしのものの各種特性を表1に示す。
レーザーカットなしのもの(比較例1)は、柔軟性及びフィット性に劣り、レーザーカットが2cm角の格子状のもの(比較例2)は反発感がなく、ヘタリ易いものであった。これに対し、レーザーカットが4cm角、10cm角の格子状もの(実施例1、2)、レーザーカットが50cm間隔、1m間隔のもの(実施例3、4)は、反発感、柔軟性、フィット性、ヘタリ性の何れの特性も良好なものであった。
【0022】
[実施例5]
実施例1と同様の編機により立体編物の生機を編成する工程において、表側の編地を形成するL1の筬に繊維を1イン1アウトで配置する際に、右から167dtex/48フィラメントのポリエチレンテレフタレート原糸を9本、110dtex/30フィラメントの水溶性ポリビニルアルコール繊維(ニチビ社製;「ソルブロン」溶解温度55℃以上)を1本配置し、以降、ポリエチレンテレフタレート原糸を8本、水溶性ポリビニルアルコール繊維を1本の配置を繰り返す。
又、表側の編地を形成するL2の筬に繊維を1アウト1インで配置する際に、右から167dtex/48フィラメントのポリエチレンテレフタレート原糸を8本、110dtex/30フィラメントの水溶性ポリビニルアルコール繊維(ニチビ社製;「ソルブロン」溶解温度55℃以上)を1本の配置を繰り返す。さらに、連結糸用の筬L3に200dtexのポリトリメチレンテレフタレートモノフィラメント(ソロテックス社製)を(1イン1アウト)×7、6アウトを繰り返して配置する。又、連結糸用の筬L4に200dtexのポリトリメチレンテレフタレートモノフィラメント(ソロテックス社製)を(1アウト1イン)×7、6アウトを繰り返して配置する。
【0023】
尚、裏側の編地を形成する筬(L5、L6)から、167dtex/48フィラメントのポリエチレンテレフタレート原糸をL5に1イン1アウト、L6に1アウト1インの配列で供給し、前記の(編組織1)に示す編組織で、機上コース18コース/2.54cmの密度で生機を編成した。得られた生機を180℃×1分で幅出ししながら乾熱ヒートセットを行い25コース/2.54cm、8.5ウエール/2.54cm厚さ10.2mmの立体編物を得た。得られた立体編物をロール状で80℃のバスで20分間精錬し、水溶性繊維を溶解した。さらにこの立体編物を170℃×1分で乾熱ヒートセットし、表面に約5cm間隔のストライプ状の切断部を有する、26コース/2.54cm、8.5ウエール/2.54cm、厚さ10.1mmの立体編物を作製した。
得られた立体編物の各種特性を表1に示す。本立体編物は反発感、柔軟性、フィット性、ヘタリ性の何れの特性も良好なものであった。
【0024】
[実施例6]
実施例5で得られた立体編物を2層重ねて芯材とし、表皮材としてポリエステル/綿混の織物を表裏に配して、表皮材の周囲を縫製した長さ2m、幅1mの掛け布団を作製した。尚、芯材の立体編物と表皮材がずれない様、中央4箇所を縫い糸で固定した。
得られた掛け布団のフィット性を評価した結果、非常に身体にフィットするものであった。又、折りたたみ易く収納が容易で、かつ家庭用洗濯機で容易に洗濯できるものであった。
【0025】
[実施例7]
実施例1で得られた立体編物(サイズ20cm×15cm)を、ストレッチ性の高い2wayトリコット編地で出来たスパッツの膝部の外側に、立体編物の裏側編地がスパッツ側と接するように重ねて、周囲を縫製して取り付けた。本スパッツは膝部が非常に柔軟で、違和感なく膝を曲げることが出来、又、緩衝効果も良好なものであった。
【0026】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0027】
本発明は、曲げに対する柔軟性が非常に高い立体編物に関するものであり、本発明の立体編物を寝具の芯材や、サポーター、衣類等として用いることにより、良好なクッション性、反発性を維持しながら、折りたたみ性や収納性、洗濯等の取り扱い性の良好な寝具や、サポーター、衣類等を得ることが出来る。特に、掛け寝具の芯材に用いる場合に、掛け寝具の身体へのフィット性を良好にすることができるものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表裏二層の編地とこれらを連結する連結糸からなる立体編物であって、立体編物の生機を編成した後、仕上げ加工工程で表裏二層の編地の少なくとも片側の編地を部分的に切断し、該切断部の長さが立体編物の1m角当り、1m以上90m以下であることを特徴とする立体編物。
【請求項2】
寝具の芯材用であることを特徴とする請求項1に記載の立体編物。
【請求項3】
掛け寝具の芯材用であることを特徴とする請求項1または2に記載の立体編物。
【請求項4】
請求項1に記載の立体編物を芯材に使用していることを特徴とする寝具。

【公開番号】特開2007−224441(P2007−224441A)
【公開日】平成19年9月6日(2007.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−44984(P2006−44984)
【出願日】平成18年2月22日(2006.2.22)
【出願人】(303046303)旭化成せんい株式会社 (548)
【Fターム(参考)】