柱付き架構体の設置方法
【課題】スパン方向に対向する柱と、両柱間に架設される梁を持つ例えば門形の架構体を構築した状態でスパン方向に交差する方向にスライドさせ、設置位置で柱脚部を定着部に定着させる上で、架構体(ブロック)のスライド時の安定性を確保するために、固定されるべき柱の柱脚部にスライド中は引き抜き力が生じないようにし、スライド後の定着位置での固定時に本来の応力状態にして柱を設置する。
【解決手段】対向する柱2,3と、両柱2,3間に架設される梁4を基本要素とする架構体1の対向する柱2,3の少なくともいずれか一方の柱3をスパン方向に並列する柱部材31,32から構成し、その少なくとも一方の柱3の設置位置での固定状態で鉛直上向きの力を受けるいずれかの柱部材32の脚部を浮かせた状態で、対向する柱2,3を軌道5,5上に載置したまま架構体1をスライドさせたところで、浮かせた状態の柱部材32を有する一方の柱3の並列する柱部材31,32を降下させた後、他方の柱2(柱部材21)を降下させる。
【解決手段】対向する柱2,3と、両柱2,3間に架設される梁4を基本要素とする架構体1の対向する柱2,3の少なくともいずれか一方の柱3をスパン方向に並列する柱部材31,32から構成し、その少なくとも一方の柱3の設置位置での固定状態で鉛直上向きの力を受けるいずれかの柱部材32の脚部を浮かせた状態で、対向する柱2,3を軌道5,5上に載置したまま架構体1をスライドさせたところで、浮かせた状態の柱部材32を有する一方の柱3の並列する柱部材31,32を降下させた後、他方の柱2(柱部材21)を降下させる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はスパン方向に対向する柱と、両柱間に架設される梁を持つ例えば門形の架構体を構築した状態でスパン方向に交差する方向である例えば桁行方向にスライドさせ、目標の設置位置に定着させる柱付き架構体の設置方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えばスパン方向に対向する柱と、両柱間に架設される梁と、桁行方向に隣接する柱間に架設される桁から構築され、門形の断面を持つ倉庫、工場等の構造物を構築する場合、桁行方向の長さが大きくなることで、周辺における作業空間の確保等の面から、設置位置で構造物全体を構築することが困難である等、桁行方向の構築区間が制約を受けることがある。このような場合には、図11に示すように構造物全体を桁行方向に複数のブロック(ユニット)に分割し、その分割されたブロックを構築する度に、順次、レールに沿って桁行方向に移動させて全体を完成させる方法が用いられる(特許文献1〜3参照)。
【0003】
門形のブロックを構成する対向する柱の定着状態は図15−(a)に示すように最終的な設置状態で、基礎(フーチング)等の定着部に曲げモーメントを負担しないピン接合状態で定着される場合と、(b)に示すように固定状態で定着される場合とに大別される。
【0004】
柱が図4−(a)に示すようにスパン方向に並列する複数本の柱部材21,22(31,32)から構成され、柱脚が固定支持される場合には、(b)に示すように柱の設置状態でブロックの自重等によりスパン方向外側の柱部材の脚部に鉛直上向きの引き抜き力が作用する。この外側の柱部材が引き抜き力に抵抗し得る状態を維持したまま、門形のブロックを移動させようとすれば、柱脚部では浮き上がりに対する反力を確保しながら、レールに沿って摺動(スライド)させなければならないため、移動中の反力を確保するための抵抗機構が大掛かりになる。
【0005】
柱脚部が固定される門形のブロックが設置状態にあるときの柱脚部には図15−(b)に示すように定着部(地盤)から水平反力と鉛直反力、及び曲げモーメントが作用した状態にある。この内、水平反力と鉛直反力は図16に示すようにそれぞれの反力を柱脚部に作用させるレールを軌道に敷設することで、柱脚部が反力を受けた状態を維持することができるが、柱脚部がレールから曲げモーメントを受けた状態を維持するには、レールは柱脚部のベースプレートを例えば上下方向に挟み込む形に形成されなければならない(特許文献1、2参照)。図16は柱脚部における反力の曲げモーメントに対する抵抗を確保しない場合での柱脚部のレールへの支持方法を示している。
【0006】
このような場合、柱脚部のベースプレートは下面と上面においてレールの底面(上向き面)と上面(下向き面)に接触したまま摺動することになるため、スライド(摺動)時の抵抗が大きくなる可能性がある。スライド時の抵抗を軽減するには、接触状態での抵抗を低減するための低摩擦材を介在させる必要があるか(特許文献1参照)、スライド(摺動)時の接触を回避するためのクリアランスを確保する必要がある(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平8−93059号公報(請求項2、段落0010〜0011、図4〜図8)
【特許文献2】特開2010−13870号公報(請求項5、段落0030〜0033、0055〜0061、図10)
【特許文献3】特開2007−284922公報(請求項1、段落0027〜0039、図1〜図5)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
但し、特許文献1、2のいずれの方法も、ブロックのスライド(摺動、あるいは滑動)時に上記スパン方向外側の柱部材の柱脚部に引き抜き力が作用することで、ブロックの走行中にはベースプレート(フランジ)の底面と上面の少なくともいずれか一方の面がレールに接触し、摩擦力を受けた状態になるため、柱脚部の安定性が損なわれる可能性がある。この場合、ベースプレートがレールから受ける摩擦力による抵抗力を低減する目的から、ベースプレートの上面とレールとの間にはクリアランスが確保され、クリアランスの範囲でベースプレートがレールに対して移動可能になるため、柱脚部のベースプレートの底面を常にレールの上面に接触させた状態に維持すること(安定性を確保すること)は難しい。
【0009】
また柱脚部を引き抜き力に抵抗させるには、前記のようにレールに、ベースプレート(フランジ)の上面に接触し、ベースプレートを上方から押さえ込む浮き上がり防止用の板(係合部)をレールに固定する必要がある。その上、係合部自体とレールとの接合部には引き抜き力に抵抗できるだけの強度を持たせる必要があり、引き抜き力が過大になれば、係合部が破損する可能性もある。
【0010】
本発明は上記背景より、柱がスパン方向に並列する柱部材からなる場合の柱脚部が最終定着時に固定状態で定着部に接合される門形等の架構体(ブロック)のスライド時の安定性を確保するために、スライド中は柱脚をピン支持させて柱脚部に引き抜き力が生じないようにすると共に、スライド後に所定位置で固定する際、本来あるべき応力状態、つまり並列する柱部材の内、スパン方向外側の柱部材に所定の応力が生じるようにするための柱付き架構体の設置方法を提案するものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項1に記載の発明の柱付き架構体のスライドによる設置方法は、スパン方向に対向する柱と、両柱間にスパン方向に架設される梁を基本要素とする架構体を構築状態でスパン方向に交差する方向にスライドさせ、前記架構体の設置位置で前記対向する柱の脚部を前記スライド時のレベルより下に位置する各定着部に固定状態で定着させる方法であり、
前記対向する柱の少なくともいずれか一方の柱はスパン方向に並列する柱部材を持ち、その少なくとも一方の柱の前記設置位置での固定状態で鉛直上向きの力を受けるいずれかの柱部材の脚部を浮かせた状態で、前記対向する柱を軌道上に載置したまま、前記架構体を前記設置位置までスライドさせた後、
前記浮かせた状態にある柱部材を有する前記一方の柱の前記並列する柱部材を降下させその並列する柱部材の脚部を定着部に定着させ、
その一方の柱に対向する他方の柱を降下させてその脚部を定着部に定着させることを構成要件とする。
【0012】
請求項1における「スパン方向に交差する方向」はスパン方向に直交する桁行方向の他、その方向に対して傾斜した方向を含む趣旨である。「スライド時のレベルより下に位置する定着部」は柱部材(柱脚部)の底面、例えばベースプレートの底面を軌道(レール)に沿ってスライドさせているときの軌道(レール)のレベル、例えばレール天端のレベルより定着部のレベルが下に位置することを言い、柱部材(柱脚部)はスライド(走行)終了後にレールより降下(ジャッキダウン)させられることにより基礎(フーチング)等の定着部上に着地する。請求項1における「軌道」は主に地盤上に、あるいは地中に敷設されたレールを指すが、構造物内の桁等、上部架構としての架構体を移動させるためのレールとして使用可能な構造物の部材も含む。以下では「軌道」をレールと言う。
【0013】
「対向する柱の少なくともいずれか一方の柱がスパン方向に並列する柱部材を持つ」ことは、並列する柱部材を持つ柱が定着部への最終定着時に、少なくとも並列する2本の柱部材で定着部に定着(固定)されること(柱が剛接合されること)であり、柱部材がスパン方向に並列することで、スパン方向に(桁行方向の水平軸回りに)作用する曲げモーメントに抵抗する能力を持つことを意味する。「少なくともいずれか一方の柱」であるから、対向する両側の柱(請求項1における「一方の柱」と「他方の柱」)が共に、並列する柱部材から構成されることもあり、「他方の柱」は1本の柱部材のみであることもある。「並列する柱部材」は3本以上のこともあり、例えば3本、もしくは4本の柱部材が三角形、もしくは四角形の頂点位置に配列し、組柱を構成することもある。
【0014】
「固定状態で鉛直上向きの力を受けるいずれかの柱部材の脚部を浮かせた状態」は、対向する柱2,3の内の一方の柱3が並列する柱部材31,32からなる図2−(a)の例で言えば、架構体1を構成するブロック1Aの走行(スライド)時に、並列する柱部材31(B),32(C)からなる柱3がいずれか1本の柱部材31(B)でのみレール5に支持され(接触し)、他の柱部材32(C)が図2−(b)に示すようにレール5から浮いた状態にあることを言う。「鉛直上向きの力」は柱部材の脚部に定着部への定着状態で作用する引き抜き力である。定着状態で引き抜き力の作用が想定される柱部材が架構体の移動(スライド)時に軌条レベル(レール)から浮いた状態に置かれる。図1、図2では柱部材21、31,32の各脚部21a、31a、32aの下面(底面)のレベルがレール5のレベルを示す。
【0015】
「並列する柱部材31,32から構成される柱3」は最終定着時に定着部(基礎)から反力として曲げモーメントを受ける状態になる柱を指す。図2、図4等では架構体1を構成する柱2,3と梁4を共にトラスで構成している場合を示しているが、柱2,3と梁4の形態(構成)は任意である。
【0016】
「浮かせた状態にある柱部材を有する前記一方の柱を降下させ」とは、浮かせた状態にある柱部材を含む、「一方の柱3」を構成する全並列する柱部材31,32を降下させることを言う。「一方の柱3に対向する他方の柱2を降下させ」は、先行して降下させた、並列する柱部材31,32を有する「一方の柱3」に対向する「他方の柱2」を構成する柱部材21を降下させることを言う。他方の柱2も複数本の並列する柱部材から構成される場合は、その全柱部材を降下させる。
【0017】
図2−(b)は「一方の柱3」を構成する並列する柱部材31,32の一方(柱部材31)と、「他方の柱2」を構成する柱部材21をレール5,5に支持させた状態で、架構体1を桁行方向にスライドさせるときの様子を示している。ここに示す並列する柱部材31,32は本来、共に地盤等(定着部)に支持された状態で、架構体1を成立させるから、並列する柱部材31,32の一方の柱部材32が地盤等から浮いた状態に置かれることで、架構体1は「他方の柱2」側へ水平変位δHを生ずる。
【0018】
柱3が並列する複数本の柱部材31,32から構成されながらも、走行時には1本の柱部材31においてレール5に支持されることで、柱3(1本の柱部材31)は曲げモーメントを受けない状態に保持される。図2−(a)における左側の柱2(「他方の柱」)のように柱2が1本の柱部材21(A)から構成される場合には、その1本の柱部材21(A)がレール5に支持された状態でスライドさせられる。図2−(b)、図3−(a)、(b)においては請求項1で言う「一方の柱3」の並列する柱部材31,32をB、Cで示し、それぞれの下端のレベルをb、cで示している。同様に請求項1で言う「他方の柱2」の柱部材21をAで示し、その下端のレベルをaで示している。
【0019】
最終定着時に定着部から曲げモーメントを受ける状態になる柱3がいずれかの柱部材31(B)においてレール5に支持されたまま、定着位置(設置位置)までスライドさせられることで、架構体1のスパン方向(柱部材31,32の並列する方向)には、並列する全柱部材31,32ではなく、その内、1本の柱部材31でのみレール5に支持されるため、そのレール5に支持される柱部材31はレール5からは鉛直上向きの反力のみを受けた状態に維持される。その結果、柱3が並列する複数本の柱部材31,32から構成されながらも、2本以上の柱部材が同時にレール5に支持される場合のように、いずれかの柱部材が引き抜き力を受けることがなくなるため、柱3はレール5上に位置する柱部材31(B)でのみ、鉛直上向きの反力のみを受けた状態に保たれる。
【0020】
並列する柱部材31,32の内、いずれの柱部材が自重(鉛直荷重)により、あるいは水平荷重負担時に引き抜き力を受けるかは、原則的に対向する柱の地盤等(定着部)への接合状態によって決まる。対向する両側の柱が共に、図15−(b)に示すように固定状態で(剛に)接合(定着)される場合と、図2−(a)に示すように他方の柱2(柱部材21)がピン接合され、一方の柱3が固定状態で接合される場合には、固定状態の柱脚部は内側に向かう反力の曲げモーメントが作用するため、前記のように外側に位置する柱部材32に引き抜き力が作用する。並列する柱部材31,32からなる一方の柱3はその並列する柱部材31,32のそれぞれが定着部に接合されることで、結果として柱3が固定状態(剛接合状態)になる。
【0021】
但し、柱3が並列する柱部材31,32から構成される場合に、いずれかの柱部材31(32)の柱脚部31a,32a(ベースプレート)に引き抜き力が作用する場合には、その柱部材31(32)であるか否かに拘わらず、いずれか1本の柱部材31(32)でのみレール5に支持され、他の柱部材32(31)がレール5に支持されない状態にあれば、レール5に支持された柱部材31(32)にのみ鉛直上向きの反力が作用するから、他の柱部材32(31)に引き抜き力が作用することはない。
【0022】
並列する柱部材からなる柱2,3がレール5上を走行するときに、引き抜き力を受けることがなくなることで、柱2,3(柱部材)としては引き抜き力に抵抗するための、レール5からの反力を受けるための部位(フランジ)を持つ必要がなく、レール5は柱部材のフランジを拘束するための部位(係合部)を持つ必要もなくなる。この結果、柱部材31,32の柱脚部31a,32aとレール5の構造(形状)が簡素化され、レール5に係合部が形成される場合の係合部の破損を招く危険性も回避される。
【0023】
図4−(a)に示すようにスパン方向に対向する柱2,3のそれぞれが並列する柱部材21,22、31,32から構成される場合に、並列する柱部材21,22、31,32を共にレール上に載置すれば、前記のように(b)に示すように対向する方向の外側の柱部材22,32が自重等によりレールから浮き上がろうとする力を受ける。
【0024】
この場合に、並列する柱部材の内のいずれかの柱部材に引き抜き力を作用させないようにするには、基本的に図6に示すように内側の柱部材をレールに支持させればよい。並列する柱部材の内の一方(内側)の柱部材のみがレールに支持されることで、その柱部材には引き抜き力が作用する余地がなくなるからである。前記の通り、図4−(b)においてスパン方向外側の柱部材22,32への地盤からの反力が鉛直方向下向きになっている状態は、外側の柱部材22,32に引き抜き力が作用することを意味している。
【0025】
例えば並列する柱部材の底面に図4−(b)に示すような反力が生じている場合に、図6に示すように外側の柱部材をレールへの支持(拘束)から解放させ、内側の柱部材のみをレールに支持させれば、その内側の柱部材の底面には図6に示すような反力が生ずる。この図6において対向する柱の内、並列する柱部材の内側の柱部材が支点に支持されている左側の柱に着目すると、図7−(a)に示すように支点に支持されていない外側の柱部材の底面は支点(レール)からの拘束を受けないことで、浮き上がりを生じようとする。この場合は、架構体1(ブロック1A)の移動終了後に浮き上がりを生ずる柱部材を強制的に降下させることで、並列する柱部材の底面のレベルを統一することが可能である。
【0026】
図7−(a)の場合にまた、例えば浮き上がりを生じようとする柱部材の底面をレールに支持させる一方、図7−(a)においてレールに支持されている柱部材の底面を支持状態から解放させた場合には、支持から解放された柱部材の底面は降下しようとする。但し、その底面を走行時に地盤に接触しない状態に保つことができれば、架構体の移動後にそのレールに支持されていない柱部材をジャッキアップさせることにより、柱部材を定着部に定着させることができ、並列する柱部材の底面のレベルを統一することも可能である。
【0027】
このようにスパン方向に対向する柱2,3のそれぞれが並列する柱部材から構成される場合には、架構体の走行時に並列する柱部材の内のいずれかの柱部材のみをレールに載置し、支持させることで、走行時にいずれかの柱部材に引き抜き力を作用させない状態を得ることができ、最終定着時には浮き上がりを生じようとする柱部材を含め、全柱部材の底面を任意のレベルの定着部に定着させることができることになる。
【0028】
スパン方向に並列する柱部材31,32は最終定着時には共に定着部に固定状態で接合(固定)され、そのときには両(全)柱部材31,32の底面(ベースプレートの底面)は同一水平面上に位置する。あるいは定着部のレベルが相違する場合には互いに平行な水平面上に位置し、両柱部材の底面は互いに平行な(底面間のなす角度は0度の)状態にある。これに対し、図2−(b)に示すように軌条レベル(レール5)から浮き上がりを生じた状態にある柱部材32(C)の底面はレール5に支持された(接触した)状態にある柱部材31(B)(柱脚部31a)の底面との間に、桁行方向に見たときに浮き上がりに伴う相対的な回転による角度θが生じている。
【0029】
具体的には図2−(b)に示すようにレール5に支持された状態にある柱部材31(B)(柱脚部31a)の底面(レールとの接触面)と浮き上がりを生じた状態にある柱部材32(C)(柱脚部32a)の底面を通る直線(平面)と水平面との間には、立面(断面)上、反時計回りに角度θが生まれ、双方の底面間には距離L2と角度θに応じたレベル差δ(柱部材32(C)の浮き上がり量)が生じている。最終定着時の前に浮き上がりを生じている柱部材32(C)が降下(ジャッキダウン)するときには、レール5に支持されている柱部材31(B)に対してこの角度θだけ、逆回り(時計回り)に回転させられることにより相対的な回転状態が解消される。θとδは並列する柱部材31,32の水平断面上の中心間距離をL2とすると、θ(tanθ)=δ/L2の関係にある。
【0030】
図2−(a)は図2−(b)に模式的に示すような、「一方の柱3」が並列する2本の柱部材31,32(B、C)からなる架構体1の走行時における並列する柱部材31,32とレール5,5との関係を示している。ここでは「他方の柱2」が1本の柱部材21(A)からなる場合を示しているが、図4のように「他方の柱2」も複数本の柱部材21,22から構成されることもある。図2−(b)に示す状態のとき、「他方の柱2」を構成する柱部材21(A)の底面と「一方の柱3」を構成する柱部材31(B)の底面は共にそれぞれの側に敷設されているレール5,5の上に載置されているため、同一の水平面上に位置している。
【0031】
図2−(b)では架構体1の内側に位置する柱部材21、31がレール5,5上に載り、外側に位置する柱部材32が何にも支持されていない(宙に浮いた)状態にある様子を示している。図2−(b)における「軌条レベル(スライドレベル)」はレール5の上面(天端)を示し、架構体1がスライド(走行)させられるときの各柱部材21,31の下面(ベースプレートの下面)のレベル(スライドするレベル)を指す。並列する柱部材31,32の内、一方の柱部材31の下端(底面)がレール5上に位置するときに、他方の柱部材32の下端(底面)はレール5の上面(軌条レベル)より上記δだけ、上に位置している。図3における「定着レベル」は定着部の上面(天端)を示している。
【0032】
「一方の柱3」を構成する並列する柱部材31,32の内、一方の柱部材31(柱脚部31a)の下端(底面)がレール5上に位置するときに、前記した図7−(a)、(b)のように他方の柱部材32(柱脚部32a)の下端(底面)が、架構体1のブロック1Aが移動中にあるときの地盤面等から浮いた状態にあるか、レール5のレベルより降下した状態にあるかは問われない。最終的に並列する柱部材31,32の底面がそれぞれの定着部に着地すればよいため、必ずしも両底面が同一水平面内に位置する必要もない。
【0033】
図3に示す「想定レベル」は、図3−(a)に示すようにレール5に支持されている柱部材31(B)の脚部31a(底面)と、δの変位を生じている柱部材32(C)の脚部32a(底面)を共に「定着レベル」にまで降下(ジャッキダウン)させたときに、柱部材21(A)の底面と柱部材31(B)の底面が同一平面上に位置すると仮定したときの、他方の柱部材21(A)の脚部21a(底面)に想定されるレベルを指す。
【0034】
このレベル(「想定レベル」)は柱部材21(A)の底面と柱部材31(B)の底面が水平面に対して傾斜した同一平面上に位置すると仮定し、柱部材31(B)の底面と柱部材32(C)の底面が共に同一水平面上に位置することを前提としたときに、柱部材21(A)の底面が位置すると想定される、柱部材31(B)の底面と柱部材32(C)の底面を含む水平面からの高さΔ(H−h)を指している。図1に示すように「H」は柱部材21,31,32の最終定着時に柱部材21,31,32の底面が位置するレベル(「定着レベル」)からの上記「軌条レベル」までの高さを表し、「h」は上記「想定レベル」から上記「軌条レベル」までの高さを表している。
【0035】
この高さΔはまた、図2−(b)において点bと点cを通る直線と点aとの距離でもあり、点bと点aとの間の距離をL1とし、線分bcの水平面とのなす角度をθとすれば、θ(tanθ)=Δ/L1であるから、Δ=θ・L1の関係にある。前記のようにθ=δ/L2であるから、Δ=L1/L2・δと表せる。
【0036】
Δ=L1/L2・δの式は、引き抜き力による浮き上がりが生ずる柱部材32の底面の浮き上がり量δを、想定される引き抜き力から架構体1の解析により予め算出しておけば、柱部材21(A)の中心と柱部材31(B)の中心との間の距離L1、及び柱部材31(B)の中心と柱部材32(C)の中心との間の距離L2から、「定着レベル」から「想定レベル」までの高さΔ(H−h)を求めることができることを意味している。
【0037】
またδは引き抜き力による浮き上がりが生ずる柱部材32の底面の浮き上がり量であるから、図3−(b)、図1−(c)、(d)に示すように最終定着時にこの浮き上がり量δを0にした状態で柱部材32を定着部に定着させることで、柱部材32の柱脚部32aに定着状態で本来、生ずる引き抜き力が作用した状態に保ち、並列する柱部材31,32によって反力の曲げモーメントに抵抗した状態に保つことが可能である。
【0038】
図3−(a)のように柱部材31(B)の底面(ベースプレート)と柱部材32(C)の底面(ベースプレート)が同一水平面内にある定着部にそれぞれ定着された状態からは、柱部材21(A)の底面(ベースプレート)を降下(ジャッキダウン)させられることにより、図3−(b)に示すように柱部材21(A)の底面(ベースプレート)が柱部材31,32(B,C)の底面を同一平面内にある定着部上に着地させられる。その状態で柱部材21(A)の底面(ベースプレート)が定着部に定着させられる。柱部材31,32(B,C)の底面と柱部材21(A)の底面はそれぞれ地盤中、あるいは基礎中に定着させられているアンカーボルト、地盤アンカー等の図9に示すアンカー13に緊結されることにより定着された状態になる。
【0039】
ここで、一方の柱3の並列する柱部材31,32(B,C)をそれぞれの定着部にまで降下(着地)させる以前に、図3−(a)に示すように一方の柱3の並列する柱部材31,32(B,C)がそれぞれの定着部に着地したときに、他方の柱2を構成する柱部材21(A)の底面が位置するレベル(上記「想定レベル」)まで、架構体1を一斉に、あるいは一様に降下させることをすれば(請求項2)、他方の柱部材2(A)がレール5のレベルに留まる場合に想定される架構体1の内部に生ずる軸方向力、曲げモーメント等の応力の発生を回避することが可能である。
【0040】
図3−(a)に示すように一方の柱3の並列する柱部材31,32(B,C)がそれぞれの定着部に着地したとき、それに対向する側の他方の柱2(柱部材21(A))は架構体1の一部として柱部材31,32に引き摺られるように上記した「想定レベル」にまで自ずから降下しようとする。このとき、他方の柱2(柱部材21)を上記「軌条レベル」に置いておくとすれば、本来のレベルでないレベルに強制的に留まらせることになるため、架構体1を構成する柱2,3と梁4の内部に軸方向力、曲げモーメント等の応力を生じさせる可能性がある。
【0041】
そこで、図1−(a)、(b)に示すように一方の柱3の並列する柱部材31,32(B,C)を定着部にまで降下(着地)させる以前に、他方の柱2を構成する柱部材21(A)の底面が位置するレベル(「想定レベル」)まで、架構体1を一斉に、あるいは一様に降下させておくことをすれば(請求項2)、架構体1に強制的な変形を与えることがないため、架構体1を構成する柱2,3と梁4の内部に軸方向力、曲げモーメント等の応力を生じさせる事態を回避することが可能になる。
【発明の効果】
【0042】
対向する柱の少なくともいずれか一方の柱がスパン方向に並列する柱部材を持ち、その一方の柱の設置位置での固定状態で鉛直上向きの力を受けるいずれかの柱部材の脚部を浮かせた状態で、対向する柱を軌道上に載置したまま、設置位置までスライドさせ、浮かせた状態にある柱部材を降下させて定着部に定着させた後、一方の柱に対向する他方の柱を降下させてその脚部を定着部に定着させるため、そのレールに支持される柱部材をレールからは鉛直上向きの反力のみを受けた状態に維持することができる。
【0043】
その結果、柱が並列する複数本の柱部材から構成されながらも、2本以上の柱部材が同時にレールに支持される場合のように、いずれかの柱部材が引き抜き力を受けることがなくなるため、柱はレール上に位置する柱部材でのみ、鉛直上向きの反力のみを受けた状態に保つことができる。従って架構体(ブロック)のスライド中は柱脚をピン支持させた状態で柱脚部に引き抜き力が生じないようにしながら、スライド後に所定(定着部)位置で固定する際、本来あるべき応力状態、つまり並列する柱部材の内、スパン方向外側の柱部材に所定の応力が生じるようにすることができる。
【0044】
またレール上を走行する柱が引き抜き力を受けることがなくなることで、柱(柱部材)は引き抜き力に抵抗するための、レールからの反力を受ける部位(フランジ)を持つ必要がなく、レールは柱部材のフランジを拘束するための部位(係合部)を持つ必要もなくなる。この結果、柱部材の柱脚部とレールの構造(形状)が簡素化され、レールに係合部が形成される場合の係合部の破損を招く危険性も回避される。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】(a)〜(d)は架構体の対向する柱の内、一方の柱が並列する2本の柱部材からなり、他方の柱が1本の柱部材からなる架構体のブロック1Aを対向する内側の柱部材においてレールに支持させた状態で、設置位置まで移動させ、各柱部材を定着部に定着させるまでの施工の手順を示した立面図である。
【図2】(a)は対向する柱の内、一方の柱が地盤等(定着部)に固定状態で接合され、他方の柱がピン接合される場合に、一方の柱を並列する複数本の柱部材から構成した架構体を示した立面図、(b)は(a)に示す架構体における一方の柱を構成する並列する柱部材の一方と、他方の柱を構成する柱部材をレールに支持させた状態で、架構体を桁行方向にスライドさせるときの様子を示した立面図である。
【図3】(a)は図2−(b)の状態で架構体のスライドが終了した後、図2−(b)で浮いた状態にある柱部材を降下(ジャッキダウン)させたときの全柱部材の底面(ベースプレート)のレベルを示した立面図、(b)は(a)の状態から更に図2−(b)における他方の柱(柱部材)を降下(ジャッキダウン)させたときの全柱部材の底面(ベースプレート)のレベルを示した立面図である。
【図4】(a)は対向する両側の柱が共に、地盤等(定着部)に固定状態で(剛に)接合(定着)される場合に、両側の柱を並列する複数本の柱部材から構成した架構体(ブロック)を示した立面図、(b)は(a)に示す柱部材に作用する反力を示した反力図である。
【図5】(a)は図4−(b)に示す断面の架構体の複数のブロックをレール(支点)上に沿ってスライドさせる場合に、各柱脚部がレールから受ける反力を示した斜視図、(b)は並列する柱部材の内、一方の柱部材をレール(支点)に支持させてスライドさせるときの様子を示した斜視図である。
【図6】図5−(b)に示す架構体における並列する柱部材の一方を支点(レール)に支持させたときに、その柱部材の柱脚部が支点(レール)から受ける反力を示した立面図である。
【図7】(a)は図6に示す柱部材の支持状態のときに、支点に支持されない柱部材に浮き上がりが生じることを想定したときの様子を示した図6の拡大図、(b)は(a)において支点に支持されない柱部材をレールに支持させ、支点に支持されている柱部材の支持を解放させた(支持させない)ことを想定したときの様子に示した立面図である。
【図8】レールに支持される柱部材を束柱に仮支持させ、柱部材の側面に突設された支持プレートとレールとの間にジャッキを介在させたときの様子を示した斜視図である。
【図9】図8におけるジャッキに代え、あるいはジャッキと共に、支持プレートとレールとの間に台車(滑動装置)を介在させたときの様子を示した斜視図である。
【図10】台車(滑動装置)を介してレールに支持された柱部材を牽引により移動させているときの様子を示した斜視図である。
【図11】(a)は1本のレール上に配列し、架構体の一ブロックを構成する複数本の柱部材が繋ぎ部材によって互いに連結されている様子を示した立面図、(b)は(a)の平面図である。
【図12】(a)は図11における1本の柱部材のブラケットの下に台車のみが配置されている様子を示した立面図、(b)は(a)のレール軸方向の断面図である。
【図13】(a)は図11における1本の柱部材のブラケットの下にジャッキのみが配置されている様子を示した立面図、(b)は(a)のレール軸方向の断面図である。
【図14】門形の形状をする架構体のブロックをレールに沿って移動(スライド)させる方法の要領(概要)を示した斜視図である。
【図15】(a)は門形の架構体の柱が地盤等にピン接合される場合の柱脚部の反力を示した反力図、(b)は柱が剛接合される場合の柱脚部の反力を示した反力図である。
【図16】図14に示す移動方法において従来の水平反力と鉛直反力の確保方法を示した立面図である。
【発明を実施するための形態】
【0046】
以下、図面を用いて本発明を実施するための最良の形態を説明する。
【0047】
図1−(a)はスパン方向に対向する柱2,3と、両柱2,3間にスパン方向に架設される梁4を基本要素とし、(b)〜(d)に示すスライドによる設置方法で使用される架構体1の構成例の立面を示す。架構体1の対向する柱2,3の内、少なくともいずれか一方の柱3はスパン方向に並列する柱部材31,32を持ち、他方の柱2は図1,図2に示すように1本の柱部材21のみからなる場合と、図4に示すように柱3と同じく並列する柱部材21,22からなる場合がある。
【0048】
図1−(b)〜(d)は図1−(a)に示す架構体1、あるいは架構体1をスライド方向に分割した形のブロック1Aを構築状態でスパン方向に交差する方向にスライドさせ、架構体1(ブロック1A)の設置位置で対向する柱2,3の脚部をスライド時(レール5)のレベルより下に位置する各定着部に固定状態で定着させる方法の要領を示したレール5の軸方向の立面を示す。
【0049】
架構体1の構築位置から設置位置までの移動(スライド)は、架構体1(ブロック1A)の少なくとも一方の柱3の設置位置での固定状態で鉛直上向きの力を受けるいずれかの柱部材32(31)の脚部を浮かせた状態で、対向する柱2,3を軌道(レール5)上に載置したまま、架構体1(ブロック1A)を設置位置までスライドさせた後、浮かせた状態にある前記柱部材32(31)を有する一方の柱3の並列する柱部材31,32を降下させ、その並列する柱部材31,32の脚部31a,32aを基礎14等の定着部に定着させる、という要領で行われる。その後、その一方の柱3に対向する他方の柱2の柱部材21を降下させてその脚部21aを定着部に定着させることが行われる。
【0050】
図1−(a)では対向する柱2,3の内の一方の柱3がスパン方向に並列する複数本の柱部材31、32から構成される場合の例を示しているが、図4〜図6に示すように両側の柱2,3が共に、並列する複数本の柱部材から構成される場合もある。
【0051】
図1−(a)は図2−(a)に示す立面形状の架構体1を構成する一施工単位となるブロック1Aを各柱2,3の下に敷設されたレール5,5に沿って移動(スライド)させているときの各柱部材21,31,32の底面のレベルを示している。図1−(a)〜(d)では支点の印が各柱脚部21a,31a,32aの底面のレベルを示している。図1−(a)に示す、柱部材21,31がレール5,5に支持された状態は図2−(b)に示す状態でもある。図2−(b)では支点の印はレール5,5のレベルを示している。
【0052】
図1〜図3では対向する柱2,3の内、一方の柱3がスパン方向に並列する複数本の柱部材31,32から構成され、他方の柱2が1本の柱部材21から構成されている場合に、一方の柱3のスパン方向内側の柱部材31と、他方の柱2の柱部材21がレール5,5の上に載置され、支持されている場合の例を示している。いずれか一方の柱3、もしくは他方の柱2が複数本の柱部材から構成される場合に、レール5に支持されるいずれかの柱部材31(32)がスパン方向内側である必要はなく、スパン方向外側の柱部材32である場合もある。
【0053】
レール5はレール5に支持されるべき各柱部材、図面ではスパン方向内側の柱部材21,31の下に桁行方向等、スパン方向に交差する方向に直線状に、架構体1の設置位置にまで敷設される。設置位置にまで移動させられた架構体1はレール5,5上からジャッキダウンさせられることにより地盤、もしくは図12に示す基礎14等上に設置された定着部上に載置され、図9に示すようにその定着部位置の地盤、もしくは基礎14に定着(埋設)されているアンカー13に定着される。
【0054】
柱部材21,31,32の脚部21a,31a,32aが定着される定着部は基礎14であることもある。図12、図13に示すようにレール5の下にレール5に沿って連続して基礎14が構築されている場合には、その連続する基礎14の一部が定着部になる。
【0055】
図1−(a)、図2−(b)の状態のとき、前記一方の柱3は複数本の柱部材31,32から構成されながら、レール5には1本の柱部材31において支持されることで、レール5に支持されない残りの柱部材32の底面は地盤等から浮いた状態にある。
【0056】
ここで、図2−(b)に示すように並列する柱部材31,32の底面が同一の水平面内にある状態から、浮き上がりが生ずる柱部材32の底面が水平面から反時計回りに回転したと仮定したときの回転角度をθとする。一方、レール5,5に支持される柱部材21,31の中心間距離をL1、並列する柱部材31,32の中心間距離をL2とし、浮き上がりを生じている柱部材32の底面の、レール天端からの高さをδとすれば、θ=δ/L2であるから、柱部材32の底面はδ=L2・θだけレール5の天端から浮いている。
【0057】
架構体1、もしくはブロック1Aは図1−(a)、図2−(b)に示す状態を維持したまま、設置位置にまで移動させられる。架構体1(ブロック1A)の移動(スライド)は、対向するレール5,5に支持されるべき各柱2,3の柱部材21,32をレール5上に載置し、架構体1(ブロック1A)を移動させるときに、柱脚部21a、31aの底面がレール5から受ける抵抗を低減し、架構体1(ブロック1A)の移動を円滑に行うための滑動装置(後述の台車10)をレール5との間に介在させた状態で、例えば滑動装置を設置位置側から牽引することにより行われる。
【0058】
柱部材21,31の柱脚部21a、31aとレール5との間には図11に示すように滑動装置(台車10)と共に、移動終了後に柱部材21,31,32をジャッキダウンさせるためのジャッキ11を介在させておくこともある。図9、図12は柱部材21,32の周囲に滑動装置(台車10)のみを介在させた柱部材21,32回りの状況を示し、図8、図13はジャッキ11のみを介在させた柱部材21,32回りの状況を示している。滑動装置(台車10)は一架構体1(ブロック1A)に付き、その移動時に架構体1(ブロック1A)を支持しながら移動させるのに十分な数、配置されればよく、必ずしも全柱部材21,31の下に配置される必要はない。
【0059】
滑動装置には主に滑り支承、あるいは図9、図11に示すような転がり支承(コロ)が使用される。滑動装置は柱部材31の柱脚部31aを、レール5上を移動させるために配置され、ジャッキ11は目標設置位置で柱部材31を降下させるために配置され、図8に示すように架構体1(ブロック1A)の構築時に設置される。レール5は地盤上、あるいは図12,図13に示すように基礎14上に敷設されているコンクリートやモルタル等の均し材15上に分解自在に組み立てられ、架構体1(ブロック1A)の移動が終了した時点で解体され、撤去される。
【0060】
図面では具体的な転がり支承として、構造物(柱部材21,31)が載置され、これを支持する載荷プレート10aと、その幅方向両側に一体化するサイドプレート10b,10bと、サイドプレート10b,10b間に水平に架設される水平プレート10cと、水平プレート10cの回りを循環自在に張架されるチェーン10dと、チェーン10dの軸に軸支され、レール5上を転動するローラ10eを持つ構造をした既製品の台車10を使用している。
【0061】
この台車10はクローラ(無限軌道)式にローラ10eがレール5上を転動しながら、チェーン10dが循環することによりレール5上を走行する。柱部材21,31は台車10に支持された状態で、台車10が移動先側から牽引ワイヤ12等により引張力を受けることにより、あるいは移動方向後方から油圧シリンダ(アクチュエータ)等により押されることにより移動させられる。
【0062】
レール5上に載置される柱部材21,31は柱部材を含む柱2,3、及び架構体1(ブロック1A)の構築開始時からレール5上に構築(設置)され、図8に示すように構築時にはレール5天端との間に上記台車10を設置(挿入)するための空間を確保するために、柱脚部21a,31aのベースプレート31bがレール5の天端より浮いた状態で束柱6に仮支持される。束柱6は例えば地盤上、もしくは基礎14上に敷設される敷きモルタル61上に設置される。
【0063】
1本のレール5には架構体1(ブロック1A)を構成する1本、もしくはレール5の軸方向に配列する複数本の柱部材31,31(21,21)が支持されるが、レール5の軸方向に配列する複数本の柱部材31,31は図9、図11に示すように繋ぎ部材33によって互いに連結され、連結された状態で移動させられる。
【0064】
架構体1(ブロック1A)の移動終了後には柱部材31(21)のベースプレート31bは設置位置にある定着部に定着されることから、架構体1(ブロック1A)の移動時にはベースプレート31b以外の部分で架構体1(ブロック1A)を上記台車10に支持させる必要があるため、柱部材31(21)のレール5側の側面には架構体1(ブロック1A)とレール5との間に台車10を介在させるためのブラケット7が突設される。このブラケット7の底面に、柱部材31(21)を含むブロック1Aを台車10、もしくはジャッキ11に載置するための支持プレート8が接合(突設)される。
【0065】
架構体1(ブロック1A)は台車10の走行により目標位置まで移動させられた後、支持プレート8とレール5との間、あるいは地盤(基礎14)との間に差し込まれるジャッキ11によって定着部上に降下させられるが、定着部上への降下時にはレール5の解体、撤去のための空間を確保するために、架構体1(ブロック1A)は一旦、ジャッキ11によって上昇させられる。支持プレート8とレール5等との間に介在させられるジャッキ11は柱部材31の台車10上への載置と、最終設置位置での降下(ジャッキダウン)の他、柱部材31(ベースプレート31b)の高さ調整の役目も果たし得るため、支持プレート8の下には柱部材31の定着が完了するまでジャッキ11が配置されていることが望ましい。
【0066】
柱部材31(21)の、レール5の軸方向に直交する方向の両側にはレール5上に載置された状態にある柱部材31(21)のレール5からの離脱(外れ)防止のためのガイド部材9が接合され、柱部材31のレール5からの離脱に対する安定性が確保される。ガイド部材9は柱部材31がレール5の幅方向のいずれの側にも落下しないよう、レール5の幅方向両側に配置される。
【0067】
架構体1(ブロック1A)を牽引ワイヤ12による牽引により移動させる場合、架構体1(ブロック1A)の移動方向前方側(先頭)に位置する柱部材31(21)のブラケット7には牽引ワイヤ12の一端が接続され、他端に牽引ワイヤ12を巻き上げ、架構体1(ブロック1A)を引き寄せる巻き上げ装置が設置される。
【0068】
柱部材31(21)のベースプレート31bがジャッキ11によりレール5から浮かされた状態で、上記支持プレート8とレール11との間に台車10が差し込まれる。台車10は1本の柱部材31(21)に付き、1個、あるいは柱部材31(21)を挟んだ両側に2個以上、設置される。柱3が並列する複数本の柱部材31,32からなる場合の、レール5に支持される柱部材31以外の柱部材32は図10に示すように宙に浮いた状態にある。
【0069】
柱部材31(21)を含む架構体1(ブロック1A)は台車10に支持された後、巻き上げ装置による牽引ワイヤ12の巻き上げにより設置位置側へ向けて移動させられる。
【0070】
架構体1(ブロック1A)の移動が終了した時点で、図1−(c)に示すように並列する柱部材31,32が降下させられ、定着部に定着される。前記のようにブロック1Aの移動中は図1−(a)に示すように他方の柱2の柱部材21と、これに対向する一方の柱3の柱部材31,32の内、例えばスパン方向内側の柱部材31,21がレール5,5に支持された状態にあり、レール5に支持されていない柱部材32はレール5の天端のレベルからδ、浮いた状態にある。
【0071】
図1−(a)に示す状態からは、(c)に示すように並列する柱部材31,32の組を有する柱3が定着部のレベル(定着レベル)まで降下させられることもあるが、(a)の状態から(c)の状態へ直接、移行させることは架構体1(ブロック1A)を構成する柱2,3と梁4等に無理な力を加える可能性が想定される。このような事態を回避する上では、(a)の状態から一旦、(b)に示す状態(想定レベル)まで架構体1(ブロック1A)の全体を一斉に降下させることが行われる。架構体1(ブロック1A)全体の一斉降下は架構体1を支持している全ジャッキ11を均等に降下させることにより行われる。
【0072】
図1−(b)に示す「想定レベル」は前記のように図3−(a)に示すようにレール5に支持されている、並列する柱部材31,32からなる一方の柱3の柱部材31の底面と、そのレベルより上方へδの変位を生じている柱部材32の底面を共に最終定着時の「定着レベル」にまで降下(ジャッキダウン)させたときに、他方の柱2の柱部材21の底面と柱部材31の底面が同一平面上に位置すると仮定したときの、他方の柱部材21の底面に想定されるレベルである。この「想定レベル」は「定着レベル」よりΔ=L1/L2・δだけ上に位置する。
【0073】
移動が終了し、柱部材21,31の底面が「軌条レベル」にある図1−(a)に示す架構体1(ブロック1A)の降下は一斉降下により、柱部材21,31の底面が「想定レベル」にある(b)の状態を経てから、柱部材31,32の底面が「定着レベル」にある(c)の状態まで移行させられる。
【0074】
図1−(a)の段階でレール5に載置され、「軌条レベル」にある柱部材21,31の底面は(b)に示す「想定レベル」まではh(「想定レベル」から「軌条レベル」までの高さ)だけ降下(ジャッキダウン)させられる。柱部材31の降下に伴い、柱部材32も降下する。柱部材21,31,32の降下の際には、少なくとも柱部材21,31,32の底面下に敷設されているレール5が解体され、撤去される。
【0075】
「想定レベル」から「定着レベル」までは図1−(b)の段階でレール5に載置されている柱部材31の底面はΔ(L1/L2・δ)分、降下させられ、図1−(a)、(b)の段階ではレール5からδだけ浮いた状態にある柱部材32の底面はΔ+δ分、降下させられる。柱部材31の降下(ジャッキダウン)はその下に介在するジャッキ11に支持されたまま行われ、その柱部材31の降下に伴って柱部材32が降下する。
【0076】
柱部材31,32の底面が「定着レベル」まで降下させられた後、柱部材31,32の底面(ベースプレート31b)が定着部(基礎14等)に定着され、アンカー13に緊結される。柱部材31,32の定着部への定着後、柱部材21,31,32の底面下以外の区間に残されているレール5が解体され、撤去される。
【0077】
図1−(c)の状態からは、(d)に示すように降下済みの一方の柱3(柱部材31,32)に対向する他方の柱2(柱部材21)を「定着レベル」まで降下させ、その柱部材21の脚部21aを定着部に定着させ、アンカー13に緊結することが行われる。柱部材21の降下量はΔ(L1/L2・δ)である。
【符号の説明】
【0078】
1……架構体、1A……ブロック、
2……柱、21……柱部材、21a……柱脚部、22……柱部材、
3……柱、31……柱部材、31a……柱脚部、31b……ベースプレート、32……柱部材、32a……柱脚部、33……繋ぎ部材、
4……梁、
5……レール、6……束柱、61……敷きモルタル、
7……ブラケット、8……支持プレート、9……ガイド部材、
10……台車、10a……載荷プレート、10b……サイドプレート、10c……水平プレート、10d……チェーン、10e……ローラ、
11……ジャッキ、12……牽引ワイヤ、13……アンカー、
14……基礎、15……均し材。
【技術分野】
【0001】
本発明はスパン方向に対向する柱と、両柱間に架設される梁を持つ例えば門形の架構体を構築した状態でスパン方向に交差する方向である例えば桁行方向にスライドさせ、目標の設置位置に定着させる柱付き架構体の設置方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えばスパン方向に対向する柱と、両柱間に架設される梁と、桁行方向に隣接する柱間に架設される桁から構築され、門形の断面を持つ倉庫、工場等の構造物を構築する場合、桁行方向の長さが大きくなることで、周辺における作業空間の確保等の面から、設置位置で構造物全体を構築することが困難である等、桁行方向の構築区間が制約を受けることがある。このような場合には、図11に示すように構造物全体を桁行方向に複数のブロック(ユニット)に分割し、その分割されたブロックを構築する度に、順次、レールに沿って桁行方向に移動させて全体を完成させる方法が用いられる(特許文献1〜3参照)。
【0003】
門形のブロックを構成する対向する柱の定着状態は図15−(a)に示すように最終的な設置状態で、基礎(フーチング)等の定着部に曲げモーメントを負担しないピン接合状態で定着される場合と、(b)に示すように固定状態で定着される場合とに大別される。
【0004】
柱が図4−(a)に示すようにスパン方向に並列する複数本の柱部材21,22(31,32)から構成され、柱脚が固定支持される場合には、(b)に示すように柱の設置状態でブロックの自重等によりスパン方向外側の柱部材の脚部に鉛直上向きの引き抜き力が作用する。この外側の柱部材が引き抜き力に抵抗し得る状態を維持したまま、門形のブロックを移動させようとすれば、柱脚部では浮き上がりに対する反力を確保しながら、レールに沿って摺動(スライド)させなければならないため、移動中の反力を確保するための抵抗機構が大掛かりになる。
【0005】
柱脚部が固定される門形のブロックが設置状態にあるときの柱脚部には図15−(b)に示すように定着部(地盤)から水平反力と鉛直反力、及び曲げモーメントが作用した状態にある。この内、水平反力と鉛直反力は図16に示すようにそれぞれの反力を柱脚部に作用させるレールを軌道に敷設することで、柱脚部が反力を受けた状態を維持することができるが、柱脚部がレールから曲げモーメントを受けた状態を維持するには、レールは柱脚部のベースプレートを例えば上下方向に挟み込む形に形成されなければならない(特許文献1、2参照)。図16は柱脚部における反力の曲げモーメントに対する抵抗を確保しない場合での柱脚部のレールへの支持方法を示している。
【0006】
このような場合、柱脚部のベースプレートは下面と上面においてレールの底面(上向き面)と上面(下向き面)に接触したまま摺動することになるため、スライド(摺動)時の抵抗が大きくなる可能性がある。スライド時の抵抗を軽減するには、接触状態での抵抗を低減するための低摩擦材を介在させる必要があるか(特許文献1参照)、スライド(摺動)時の接触を回避するためのクリアランスを確保する必要がある(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平8−93059号公報(請求項2、段落0010〜0011、図4〜図8)
【特許文献2】特開2010−13870号公報(請求項5、段落0030〜0033、0055〜0061、図10)
【特許文献3】特開2007−284922公報(請求項1、段落0027〜0039、図1〜図5)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
但し、特許文献1、2のいずれの方法も、ブロックのスライド(摺動、あるいは滑動)時に上記スパン方向外側の柱部材の柱脚部に引き抜き力が作用することで、ブロックの走行中にはベースプレート(フランジ)の底面と上面の少なくともいずれか一方の面がレールに接触し、摩擦力を受けた状態になるため、柱脚部の安定性が損なわれる可能性がある。この場合、ベースプレートがレールから受ける摩擦力による抵抗力を低減する目的から、ベースプレートの上面とレールとの間にはクリアランスが確保され、クリアランスの範囲でベースプレートがレールに対して移動可能になるため、柱脚部のベースプレートの底面を常にレールの上面に接触させた状態に維持すること(安定性を確保すること)は難しい。
【0009】
また柱脚部を引き抜き力に抵抗させるには、前記のようにレールに、ベースプレート(フランジ)の上面に接触し、ベースプレートを上方から押さえ込む浮き上がり防止用の板(係合部)をレールに固定する必要がある。その上、係合部自体とレールとの接合部には引き抜き力に抵抗できるだけの強度を持たせる必要があり、引き抜き力が過大になれば、係合部が破損する可能性もある。
【0010】
本発明は上記背景より、柱がスパン方向に並列する柱部材からなる場合の柱脚部が最終定着時に固定状態で定着部に接合される門形等の架構体(ブロック)のスライド時の安定性を確保するために、スライド中は柱脚をピン支持させて柱脚部に引き抜き力が生じないようにすると共に、スライド後に所定位置で固定する際、本来あるべき応力状態、つまり並列する柱部材の内、スパン方向外側の柱部材に所定の応力が生じるようにするための柱付き架構体の設置方法を提案するものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項1に記載の発明の柱付き架構体のスライドによる設置方法は、スパン方向に対向する柱と、両柱間にスパン方向に架設される梁を基本要素とする架構体を構築状態でスパン方向に交差する方向にスライドさせ、前記架構体の設置位置で前記対向する柱の脚部を前記スライド時のレベルより下に位置する各定着部に固定状態で定着させる方法であり、
前記対向する柱の少なくともいずれか一方の柱はスパン方向に並列する柱部材を持ち、その少なくとも一方の柱の前記設置位置での固定状態で鉛直上向きの力を受けるいずれかの柱部材の脚部を浮かせた状態で、前記対向する柱を軌道上に載置したまま、前記架構体を前記設置位置までスライドさせた後、
前記浮かせた状態にある柱部材を有する前記一方の柱の前記並列する柱部材を降下させその並列する柱部材の脚部を定着部に定着させ、
その一方の柱に対向する他方の柱を降下させてその脚部を定着部に定着させることを構成要件とする。
【0012】
請求項1における「スパン方向に交差する方向」はスパン方向に直交する桁行方向の他、その方向に対して傾斜した方向を含む趣旨である。「スライド時のレベルより下に位置する定着部」は柱部材(柱脚部)の底面、例えばベースプレートの底面を軌道(レール)に沿ってスライドさせているときの軌道(レール)のレベル、例えばレール天端のレベルより定着部のレベルが下に位置することを言い、柱部材(柱脚部)はスライド(走行)終了後にレールより降下(ジャッキダウン)させられることにより基礎(フーチング)等の定着部上に着地する。請求項1における「軌道」は主に地盤上に、あるいは地中に敷設されたレールを指すが、構造物内の桁等、上部架構としての架構体を移動させるためのレールとして使用可能な構造物の部材も含む。以下では「軌道」をレールと言う。
【0013】
「対向する柱の少なくともいずれか一方の柱がスパン方向に並列する柱部材を持つ」ことは、並列する柱部材を持つ柱が定着部への最終定着時に、少なくとも並列する2本の柱部材で定着部に定着(固定)されること(柱が剛接合されること)であり、柱部材がスパン方向に並列することで、スパン方向に(桁行方向の水平軸回りに)作用する曲げモーメントに抵抗する能力を持つことを意味する。「少なくともいずれか一方の柱」であるから、対向する両側の柱(請求項1における「一方の柱」と「他方の柱」)が共に、並列する柱部材から構成されることもあり、「他方の柱」は1本の柱部材のみであることもある。「並列する柱部材」は3本以上のこともあり、例えば3本、もしくは4本の柱部材が三角形、もしくは四角形の頂点位置に配列し、組柱を構成することもある。
【0014】
「固定状態で鉛直上向きの力を受けるいずれかの柱部材の脚部を浮かせた状態」は、対向する柱2,3の内の一方の柱3が並列する柱部材31,32からなる図2−(a)の例で言えば、架構体1を構成するブロック1Aの走行(スライド)時に、並列する柱部材31(B),32(C)からなる柱3がいずれか1本の柱部材31(B)でのみレール5に支持され(接触し)、他の柱部材32(C)が図2−(b)に示すようにレール5から浮いた状態にあることを言う。「鉛直上向きの力」は柱部材の脚部に定着部への定着状態で作用する引き抜き力である。定着状態で引き抜き力の作用が想定される柱部材が架構体の移動(スライド)時に軌条レベル(レール)から浮いた状態に置かれる。図1、図2では柱部材21、31,32の各脚部21a、31a、32aの下面(底面)のレベルがレール5のレベルを示す。
【0015】
「並列する柱部材31,32から構成される柱3」は最終定着時に定着部(基礎)から反力として曲げモーメントを受ける状態になる柱を指す。図2、図4等では架構体1を構成する柱2,3と梁4を共にトラスで構成している場合を示しているが、柱2,3と梁4の形態(構成)は任意である。
【0016】
「浮かせた状態にある柱部材を有する前記一方の柱を降下させ」とは、浮かせた状態にある柱部材を含む、「一方の柱3」を構成する全並列する柱部材31,32を降下させることを言う。「一方の柱3に対向する他方の柱2を降下させ」は、先行して降下させた、並列する柱部材31,32を有する「一方の柱3」に対向する「他方の柱2」を構成する柱部材21を降下させることを言う。他方の柱2も複数本の並列する柱部材から構成される場合は、その全柱部材を降下させる。
【0017】
図2−(b)は「一方の柱3」を構成する並列する柱部材31,32の一方(柱部材31)と、「他方の柱2」を構成する柱部材21をレール5,5に支持させた状態で、架構体1を桁行方向にスライドさせるときの様子を示している。ここに示す並列する柱部材31,32は本来、共に地盤等(定着部)に支持された状態で、架構体1を成立させるから、並列する柱部材31,32の一方の柱部材32が地盤等から浮いた状態に置かれることで、架構体1は「他方の柱2」側へ水平変位δHを生ずる。
【0018】
柱3が並列する複数本の柱部材31,32から構成されながらも、走行時には1本の柱部材31においてレール5に支持されることで、柱3(1本の柱部材31)は曲げモーメントを受けない状態に保持される。図2−(a)における左側の柱2(「他方の柱」)のように柱2が1本の柱部材21(A)から構成される場合には、その1本の柱部材21(A)がレール5に支持された状態でスライドさせられる。図2−(b)、図3−(a)、(b)においては請求項1で言う「一方の柱3」の並列する柱部材31,32をB、Cで示し、それぞれの下端のレベルをb、cで示している。同様に請求項1で言う「他方の柱2」の柱部材21をAで示し、その下端のレベルをaで示している。
【0019】
最終定着時に定着部から曲げモーメントを受ける状態になる柱3がいずれかの柱部材31(B)においてレール5に支持されたまま、定着位置(設置位置)までスライドさせられることで、架構体1のスパン方向(柱部材31,32の並列する方向)には、並列する全柱部材31,32ではなく、その内、1本の柱部材31でのみレール5に支持されるため、そのレール5に支持される柱部材31はレール5からは鉛直上向きの反力のみを受けた状態に維持される。その結果、柱3が並列する複数本の柱部材31,32から構成されながらも、2本以上の柱部材が同時にレール5に支持される場合のように、いずれかの柱部材が引き抜き力を受けることがなくなるため、柱3はレール5上に位置する柱部材31(B)でのみ、鉛直上向きの反力のみを受けた状態に保たれる。
【0020】
並列する柱部材31,32の内、いずれの柱部材が自重(鉛直荷重)により、あるいは水平荷重負担時に引き抜き力を受けるかは、原則的に対向する柱の地盤等(定着部)への接合状態によって決まる。対向する両側の柱が共に、図15−(b)に示すように固定状態で(剛に)接合(定着)される場合と、図2−(a)に示すように他方の柱2(柱部材21)がピン接合され、一方の柱3が固定状態で接合される場合には、固定状態の柱脚部は内側に向かう反力の曲げモーメントが作用するため、前記のように外側に位置する柱部材32に引き抜き力が作用する。並列する柱部材31,32からなる一方の柱3はその並列する柱部材31,32のそれぞれが定着部に接合されることで、結果として柱3が固定状態(剛接合状態)になる。
【0021】
但し、柱3が並列する柱部材31,32から構成される場合に、いずれかの柱部材31(32)の柱脚部31a,32a(ベースプレート)に引き抜き力が作用する場合には、その柱部材31(32)であるか否かに拘わらず、いずれか1本の柱部材31(32)でのみレール5に支持され、他の柱部材32(31)がレール5に支持されない状態にあれば、レール5に支持された柱部材31(32)にのみ鉛直上向きの反力が作用するから、他の柱部材32(31)に引き抜き力が作用することはない。
【0022】
並列する柱部材からなる柱2,3がレール5上を走行するときに、引き抜き力を受けることがなくなることで、柱2,3(柱部材)としては引き抜き力に抵抗するための、レール5からの反力を受けるための部位(フランジ)を持つ必要がなく、レール5は柱部材のフランジを拘束するための部位(係合部)を持つ必要もなくなる。この結果、柱部材31,32の柱脚部31a,32aとレール5の構造(形状)が簡素化され、レール5に係合部が形成される場合の係合部の破損を招く危険性も回避される。
【0023】
図4−(a)に示すようにスパン方向に対向する柱2,3のそれぞれが並列する柱部材21,22、31,32から構成される場合に、並列する柱部材21,22、31,32を共にレール上に載置すれば、前記のように(b)に示すように対向する方向の外側の柱部材22,32が自重等によりレールから浮き上がろうとする力を受ける。
【0024】
この場合に、並列する柱部材の内のいずれかの柱部材に引き抜き力を作用させないようにするには、基本的に図6に示すように内側の柱部材をレールに支持させればよい。並列する柱部材の内の一方(内側)の柱部材のみがレールに支持されることで、その柱部材には引き抜き力が作用する余地がなくなるからである。前記の通り、図4−(b)においてスパン方向外側の柱部材22,32への地盤からの反力が鉛直方向下向きになっている状態は、外側の柱部材22,32に引き抜き力が作用することを意味している。
【0025】
例えば並列する柱部材の底面に図4−(b)に示すような反力が生じている場合に、図6に示すように外側の柱部材をレールへの支持(拘束)から解放させ、内側の柱部材のみをレールに支持させれば、その内側の柱部材の底面には図6に示すような反力が生ずる。この図6において対向する柱の内、並列する柱部材の内側の柱部材が支点に支持されている左側の柱に着目すると、図7−(a)に示すように支点に支持されていない外側の柱部材の底面は支点(レール)からの拘束を受けないことで、浮き上がりを生じようとする。この場合は、架構体1(ブロック1A)の移動終了後に浮き上がりを生ずる柱部材を強制的に降下させることで、並列する柱部材の底面のレベルを統一することが可能である。
【0026】
図7−(a)の場合にまた、例えば浮き上がりを生じようとする柱部材の底面をレールに支持させる一方、図7−(a)においてレールに支持されている柱部材の底面を支持状態から解放させた場合には、支持から解放された柱部材の底面は降下しようとする。但し、その底面を走行時に地盤に接触しない状態に保つことができれば、架構体の移動後にそのレールに支持されていない柱部材をジャッキアップさせることにより、柱部材を定着部に定着させることができ、並列する柱部材の底面のレベルを統一することも可能である。
【0027】
このようにスパン方向に対向する柱2,3のそれぞれが並列する柱部材から構成される場合には、架構体の走行時に並列する柱部材の内のいずれかの柱部材のみをレールに載置し、支持させることで、走行時にいずれかの柱部材に引き抜き力を作用させない状態を得ることができ、最終定着時には浮き上がりを生じようとする柱部材を含め、全柱部材の底面を任意のレベルの定着部に定着させることができることになる。
【0028】
スパン方向に並列する柱部材31,32は最終定着時には共に定着部に固定状態で接合(固定)され、そのときには両(全)柱部材31,32の底面(ベースプレートの底面)は同一水平面上に位置する。あるいは定着部のレベルが相違する場合には互いに平行な水平面上に位置し、両柱部材の底面は互いに平行な(底面間のなす角度は0度の)状態にある。これに対し、図2−(b)に示すように軌条レベル(レール5)から浮き上がりを生じた状態にある柱部材32(C)の底面はレール5に支持された(接触した)状態にある柱部材31(B)(柱脚部31a)の底面との間に、桁行方向に見たときに浮き上がりに伴う相対的な回転による角度θが生じている。
【0029】
具体的には図2−(b)に示すようにレール5に支持された状態にある柱部材31(B)(柱脚部31a)の底面(レールとの接触面)と浮き上がりを生じた状態にある柱部材32(C)(柱脚部32a)の底面を通る直線(平面)と水平面との間には、立面(断面)上、反時計回りに角度θが生まれ、双方の底面間には距離L2と角度θに応じたレベル差δ(柱部材32(C)の浮き上がり量)が生じている。最終定着時の前に浮き上がりを生じている柱部材32(C)が降下(ジャッキダウン)するときには、レール5に支持されている柱部材31(B)に対してこの角度θだけ、逆回り(時計回り)に回転させられることにより相対的な回転状態が解消される。θとδは並列する柱部材31,32の水平断面上の中心間距離をL2とすると、θ(tanθ)=δ/L2の関係にある。
【0030】
図2−(a)は図2−(b)に模式的に示すような、「一方の柱3」が並列する2本の柱部材31,32(B、C)からなる架構体1の走行時における並列する柱部材31,32とレール5,5との関係を示している。ここでは「他方の柱2」が1本の柱部材21(A)からなる場合を示しているが、図4のように「他方の柱2」も複数本の柱部材21,22から構成されることもある。図2−(b)に示す状態のとき、「他方の柱2」を構成する柱部材21(A)の底面と「一方の柱3」を構成する柱部材31(B)の底面は共にそれぞれの側に敷設されているレール5,5の上に載置されているため、同一の水平面上に位置している。
【0031】
図2−(b)では架構体1の内側に位置する柱部材21、31がレール5,5上に載り、外側に位置する柱部材32が何にも支持されていない(宙に浮いた)状態にある様子を示している。図2−(b)における「軌条レベル(スライドレベル)」はレール5の上面(天端)を示し、架構体1がスライド(走行)させられるときの各柱部材21,31の下面(ベースプレートの下面)のレベル(スライドするレベル)を指す。並列する柱部材31,32の内、一方の柱部材31の下端(底面)がレール5上に位置するときに、他方の柱部材32の下端(底面)はレール5の上面(軌条レベル)より上記δだけ、上に位置している。図3における「定着レベル」は定着部の上面(天端)を示している。
【0032】
「一方の柱3」を構成する並列する柱部材31,32の内、一方の柱部材31(柱脚部31a)の下端(底面)がレール5上に位置するときに、前記した図7−(a)、(b)のように他方の柱部材32(柱脚部32a)の下端(底面)が、架構体1のブロック1Aが移動中にあるときの地盤面等から浮いた状態にあるか、レール5のレベルより降下した状態にあるかは問われない。最終的に並列する柱部材31,32の底面がそれぞれの定着部に着地すればよいため、必ずしも両底面が同一水平面内に位置する必要もない。
【0033】
図3に示す「想定レベル」は、図3−(a)に示すようにレール5に支持されている柱部材31(B)の脚部31a(底面)と、δの変位を生じている柱部材32(C)の脚部32a(底面)を共に「定着レベル」にまで降下(ジャッキダウン)させたときに、柱部材21(A)の底面と柱部材31(B)の底面が同一平面上に位置すると仮定したときの、他方の柱部材21(A)の脚部21a(底面)に想定されるレベルを指す。
【0034】
このレベル(「想定レベル」)は柱部材21(A)の底面と柱部材31(B)の底面が水平面に対して傾斜した同一平面上に位置すると仮定し、柱部材31(B)の底面と柱部材32(C)の底面が共に同一水平面上に位置することを前提としたときに、柱部材21(A)の底面が位置すると想定される、柱部材31(B)の底面と柱部材32(C)の底面を含む水平面からの高さΔ(H−h)を指している。図1に示すように「H」は柱部材21,31,32の最終定着時に柱部材21,31,32の底面が位置するレベル(「定着レベル」)からの上記「軌条レベル」までの高さを表し、「h」は上記「想定レベル」から上記「軌条レベル」までの高さを表している。
【0035】
この高さΔはまた、図2−(b)において点bと点cを通る直線と点aとの距離でもあり、点bと点aとの間の距離をL1とし、線分bcの水平面とのなす角度をθとすれば、θ(tanθ)=Δ/L1であるから、Δ=θ・L1の関係にある。前記のようにθ=δ/L2であるから、Δ=L1/L2・δと表せる。
【0036】
Δ=L1/L2・δの式は、引き抜き力による浮き上がりが生ずる柱部材32の底面の浮き上がり量δを、想定される引き抜き力から架構体1の解析により予め算出しておけば、柱部材21(A)の中心と柱部材31(B)の中心との間の距離L1、及び柱部材31(B)の中心と柱部材32(C)の中心との間の距離L2から、「定着レベル」から「想定レベル」までの高さΔ(H−h)を求めることができることを意味している。
【0037】
またδは引き抜き力による浮き上がりが生ずる柱部材32の底面の浮き上がり量であるから、図3−(b)、図1−(c)、(d)に示すように最終定着時にこの浮き上がり量δを0にした状態で柱部材32を定着部に定着させることで、柱部材32の柱脚部32aに定着状態で本来、生ずる引き抜き力が作用した状態に保ち、並列する柱部材31,32によって反力の曲げモーメントに抵抗した状態に保つことが可能である。
【0038】
図3−(a)のように柱部材31(B)の底面(ベースプレート)と柱部材32(C)の底面(ベースプレート)が同一水平面内にある定着部にそれぞれ定着された状態からは、柱部材21(A)の底面(ベースプレート)を降下(ジャッキダウン)させられることにより、図3−(b)に示すように柱部材21(A)の底面(ベースプレート)が柱部材31,32(B,C)の底面を同一平面内にある定着部上に着地させられる。その状態で柱部材21(A)の底面(ベースプレート)が定着部に定着させられる。柱部材31,32(B,C)の底面と柱部材21(A)の底面はそれぞれ地盤中、あるいは基礎中に定着させられているアンカーボルト、地盤アンカー等の図9に示すアンカー13に緊結されることにより定着された状態になる。
【0039】
ここで、一方の柱3の並列する柱部材31,32(B,C)をそれぞれの定着部にまで降下(着地)させる以前に、図3−(a)に示すように一方の柱3の並列する柱部材31,32(B,C)がそれぞれの定着部に着地したときに、他方の柱2を構成する柱部材21(A)の底面が位置するレベル(上記「想定レベル」)まで、架構体1を一斉に、あるいは一様に降下させることをすれば(請求項2)、他方の柱部材2(A)がレール5のレベルに留まる場合に想定される架構体1の内部に生ずる軸方向力、曲げモーメント等の応力の発生を回避することが可能である。
【0040】
図3−(a)に示すように一方の柱3の並列する柱部材31,32(B,C)がそれぞれの定着部に着地したとき、それに対向する側の他方の柱2(柱部材21(A))は架構体1の一部として柱部材31,32に引き摺られるように上記した「想定レベル」にまで自ずから降下しようとする。このとき、他方の柱2(柱部材21)を上記「軌条レベル」に置いておくとすれば、本来のレベルでないレベルに強制的に留まらせることになるため、架構体1を構成する柱2,3と梁4の内部に軸方向力、曲げモーメント等の応力を生じさせる可能性がある。
【0041】
そこで、図1−(a)、(b)に示すように一方の柱3の並列する柱部材31,32(B,C)を定着部にまで降下(着地)させる以前に、他方の柱2を構成する柱部材21(A)の底面が位置するレベル(「想定レベル」)まで、架構体1を一斉に、あるいは一様に降下させておくことをすれば(請求項2)、架構体1に強制的な変形を与えることがないため、架構体1を構成する柱2,3と梁4の内部に軸方向力、曲げモーメント等の応力を生じさせる事態を回避することが可能になる。
【発明の効果】
【0042】
対向する柱の少なくともいずれか一方の柱がスパン方向に並列する柱部材を持ち、その一方の柱の設置位置での固定状態で鉛直上向きの力を受けるいずれかの柱部材の脚部を浮かせた状態で、対向する柱を軌道上に載置したまま、設置位置までスライドさせ、浮かせた状態にある柱部材を降下させて定着部に定着させた後、一方の柱に対向する他方の柱を降下させてその脚部を定着部に定着させるため、そのレールに支持される柱部材をレールからは鉛直上向きの反力のみを受けた状態に維持することができる。
【0043】
その結果、柱が並列する複数本の柱部材から構成されながらも、2本以上の柱部材が同時にレールに支持される場合のように、いずれかの柱部材が引き抜き力を受けることがなくなるため、柱はレール上に位置する柱部材でのみ、鉛直上向きの反力のみを受けた状態に保つことができる。従って架構体(ブロック)のスライド中は柱脚をピン支持させた状態で柱脚部に引き抜き力が生じないようにしながら、スライド後に所定(定着部)位置で固定する際、本来あるべき応力状態、つまり並列する柱部材の内、スパン方向外側の柱部材に所定の応力が生じるようにすることができる。
【0044】
またレール上を走行する柱が引き抜き力を受けることがなくなることで、柱(柱部材)は引き抜き力に抵抗するための、レールからの反力を受ける部位(フランジ)を持つ必要がなく、レールは柱部材のフランジを拘束するための部位(係合部)を持つ必要もなくなる。この結果、柱部材の柱脚部とレールの構造(形状)が簡素化され、レールに係合部が形成される場合の係合部の破損を招く危険性も回避される。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】(a)〜(d)は架構体の対向する柱の内、一方の柱が並列する2本の柱部材からなり、他方の柱が1本の柱部材からなる架構体のブロック1Aを対向する内側の柱部材においてレールに支持させた状態で、設置位置まで移動させ、各柱部材を定着部に定着させるまでの施工の手順を示した立面図である。
【図2】(a)は対向する柱の内、一方の柱が地盤等(定着部)に固定状態で接合され、他方の柱がピン接合される場合に、一方の柱を並列する複数本の柱部材から構成した架構体を示した立面図、(b)は(a)に示す架構体における一方の柱を構成する並列する柱部材の一方と、他方の柱を構成する柱部材をレールに支持させた状態で、架構体を桁行方向にスライドさせるときの様子を示した立面図である。
【図3】(a)は図2−(b)の状態で架構体のスライドが終了した後、図2−(b)で浮いた状態にある柱部材を降下(ジャッキダウン)させたときの全柱部材の底面(ベースプレート)のレベルを示した立面図、(b)は(a)の状態から更に図2−(b)における他方の柱(柱部材)を降下(ジャッキダウン)させたときの全柱部材の底面(ベースプレート)のレベルを示した立面図である。
【図4】(a)は対向する両側の柱が共に、地盤等(定着部)に固定状態で(剛に)接合(定着)される場合に、両側の柱を並列する複数本の柱部材から構成した架構体(ブロック)を示した立面図、(b)は(a)に示す柱部材に作用する反力を示した反力図である。
【図5】(a)は図4−(b)に示す断面の架構体の複数のブロックをレール(支点)上に沿ってスライドさせる場合に、各柱脚部がレールから受ける反力を示した斜視図、(b)は並列する柱部材の内、一方の柱部材をレール(支点)に支持させてスライドさせるときの様子を示した斜視図である。
【図6】図5−(b)に示す架構体における並列する柱部材の一方を支点(レール)に支持させたときに、その柱部材の柱脚部が支点(レール)から受ける反力を示した立面図である。
【図7】(a)は図6に示す柱部材の支持状態のときに、支点に支持されない柱部材に浮き上がりが生じることを想定したときの様子を示した図6の拡大図、(b)は(a)において支点に支持されない柱部材をレールに支持させ、支点に支持されている柱部材の支持を解放させた(支持させない)ことを想定したときの様子に示した立面図である。
【図8】レールに支持される柱部材を束柱に仮支持させ、柱部材の側面に突設された支持プレートとレールとの間にジャッキを介在させたときの様子を示した斜視図である。
【図9】図8におけるジャッキに代え、あるいはジャッキと共に、支持プレートとレールとの間に台車(滑動装置)を介在させたときの様子を示した斜視図である。
【図10】台車(滑動装置)を介してレールに支持された柱部材を牽引により移動させているときの様子を示した斜視図である。
【図11】(a)は1本のレール上に配列し、架構体の一ブロックを構成する複数本の柱部材が繋ぎ部材によって互いに連結されている様子を示した立面図、(b)は(a)の平面図である。
【図12】(a)は図11における1本の柱部材のブラケットの下に台車のみが配置されている様子を示した立面図、(b)は(a)のレール軸方向の断面図である。
【図13】(a)は図11における1本の柱部材のブラケットの下にジャッキのみが配置されている様子を示した立面図、(b)は(a)のレール軸方向の断面図である。
【図14】門形の形状をする架構体のブロックをレールに沿って移動(スライド)させる方法の要領(概要)を示した斜視図である。
【図15】(a)は門形の架構体の柱が地盤等にピン接合される場合の柱脚部の反力を示した反力図、(b)は柱が剛接合される場合の柱脚部の反力を示した反力図である。
【図16】図14に示す移動方法において従来の水平反力と鉛直反力の確保方法を示した立面図である。
【発明を実施するための形態】
【0046】
以下、図面を用いて本発明を実施するための最良の形態を説明する。
【0047】
図1−(a)はスパン方向に対向する柱2,3と、両柱2,3間にスパン方向に架設される梁4を基本要素とし、(b)〜(d)に示すスライドによる設置方法で使用される架構体1の構成例の立面を示す。架構体1の対向する柱2,3の内、少なくともいずれか一方の柱3はスパン方向に並列する柱部材31,32を持ち、他方の柱2は図1,図2に示すように1本の柱部材21のみからなる場合と、図4に示すように柱3と同じく並列する柱部材21,22からなる場合がある。
【0048】
図1−(b)〜(d)は図1−(a)に示す架構体1、あるいは架構体1をスライド方向に分割した形のブロック1Aを構築状態でスパン方向に交差する方向にスライドさせ、架構体1(ブロック1A)の設置位置で対向する柱2,3の脚部をスライド時(レール5)のレベルより下に位置する各定着部に固定状態で定着させる方法の要領を示したレール5の軸方向の立面を示す。
【0049】
架構体1の構築位置から設置位置までの移動(スライド)は、架構体1(ブロック1A)の少なくとも一方の柱3の設置位置での固定状態で鉛直上向きの力を受けるいずれかの柱部材32(31)の脚部を浮かせた状態で、対向する柱2,3を軌道(レール5)上に載置したまま、架構体1(ブロック1A)を設置位置までスライドさせた後、浮かせた状態にある前記柱部材32(31)を有する一方の柱3の並列する柱部材31,32を降下させ、その並列する柱部材31,32の脚部31a,32aを基礎14等の定着部に定着させる、という要領で行われる。その後、その一方の柱3に対向する他方の柱2の柱部材21を降下させてその脚部21aを定着部に定着させることが行われる。
【0050】
図1−(a)では対向する柱2,3の内の一方の柱3がスパン方向に並列する複数本の柱部材31、32から構成される場合の例を示しているが、図4〜図6に示すように両側の柱2,3が共に、並列する複数本の柱部材から構成される場合もある。
【0051】
図1−(a)は図2−(a)に示す立面形状の架構体1を構成する一施工単位となるブロック1Aを各柱2,3の下に敷設されたレール5,5に沿って移動(スライド)させているときの各柱部材21,31,32の底面のレベルを示している。図1−(a)〜(d)では支点の印が各柱脚部21a,31a,32aの底面のレベルを示している。図1−(a)に示す、柱部材21,31がレール5,5に支持された状態は図2−(b)に示す状態でもある。図2−(b)では支点の印はレール5,5のレベルを示している。
【0052】
図1〜図3では対向する柱2,3の内、一方の柱3がスパン方向に並列する複数本の柱部材31,32から構成され、他方の柱2が1本の柱部材21から構成されている場合に、一方の柱3のスパン方向内側の柱部材31と、他方の柱2の柱部材21がレール5,5の上に載置され、支持されている場合の例を示している。いずれか一方の柱3、もしくは他方の柱2が複数本の柱部材から構成される場合に、レール5に支持されるいずれかの柱部材31(32)がスパン方向内側である必要はなく、スパン方向外側の柱部材32である場合もある。
【0053】
レール5はレール5に支持されるべき各柱部材、図面ではスパン方向内側の柱部材21,31の下に桁行方向等、スパン方向に交差する方向に直線状に、架構体1の設置位置にまで敷設される。設置位置にまで移動させられた架構体1はレール5,5上からジャッキダウンさせられることにより地盤、もしくは図12に示す基礎14等上に設置された定着部上に載置され、図9に示すようにその定着部位置の地盤、もしくは基礎14に定着(埋設)されているアンカー13に定着される。
【0054】
柱部材21,31,32の脚部21a,31a,32aが定着される定着部は基礎14であることもある。図12、図13に示すようにレール5の下にレール5に沿って連続して基礎14が構築されている場合には、その連続する基礎14の一部が定着部になる。
【0055】
図1−(a)、図2−(b)の状態のとき、前記一方の柱3は複数本の柱部材31,32から構成されながら、レール5には1本の柱部材31において支持されることで、レール5に支持されない残りの柱部材32の底面は地盤等から浮いた状態にある。
【0056】
ここで、図2−(b)に示すように並列する柱部材31,32の底面が同一の水平面内にある状態から、浮き上がりが生ずる柱部材32の底面が水平面から反時計回りに回転したと仮定したときの回転角度をθとする。一方、レール5,5に支持される柱部材21,31の中心間距離をL1、並列する柱部材31,32の中心間距離をL2とし、浮き上がりを生じている柱部材32の底面の、レール天端からの高さをδとすれば、θ=δ/L2であるから、柱部材32の底面はδ=L2・θだけレール5の天端から浮いている。
【0057】
架構体1、もしくはブロック1Aは図1−(a)、図2−(b)に示す状態を維持したまま、設置位置にまで移動させられる。架構体1(ブロック1A)の移動(スライド)は、対向するレール5,5に支持されるべき各柱2,3の柱部材21,32をレール5上に載置し、架構体1(ブロック1A)を移動させるときに、柱脚部21a、31aの底面がレール5から受ける抵抗を低減し、架構体1(ブロック1A)の移動を円滑に行うための滑動装置(後述の台車10)をレール5との間に介在させた状態で、例えば滑動装置を設置位置側から牽引することにより行われる。
【0058】
柱部材21,31の柱脚部21a、31aとレール5との間には図11に示すように滑動装置(台車10)と共に、移動終了後に柱部材21,31,32をジャッキダウンさせるためのジャッキ11を介在させておくこともある。図9、図12は柱部材21,32の周囲に滑動装置(台車10)のみを介在させた柱部材21,32回りの状況を示し、図8、図13はジャッキ11のみを介在させた柱部材21,32回りの状況を示している。滑動装置(台車10)は一架構体1(ブロック1A)に付き、その移動時に架構体1(ブロック1A)を支持しながら移動させるのに十分な数、配置されればよく、必ずしも全柱部材21,31の下に配置される必要はない。
【0059】
滑動装置には主に滑り支承、あるいは図9、図11に示すような転がり支承(コロ)が使用される。滑動装置は柱部材31の柱脚部31aを、レール5上を移動させるために配置され、ジャッキ11は目標設置位置で柱部材31を降下させるために配置され、図8に示すように架構体1(ブロック1A)の構築時に設置される。レール5は地盤上、あるいは図12,図13に示すように基礎14上に敷設されているコンクリートやモルタル等の均し材15上に分解自在に組み立てられ、架構体1(ブロック1A)の移動が終了した時点で解体され、撤去される。
【0060】
図面では具体的な転がり支承として、構造物(柱部材21,31)が載置され、これを支持する載荷プレート10aと、その幅方向両側に一体化するサイドプレート10b,10bと、サイドプレート10b,10b間に水平に架設される水平プレート10cと、水平プレート10cの回りを循環自在に張架されるチェーン10dと、チェーン10dの軸に軸支され、レール5上を転動するローラ10eを持つ構造をした既製品の台車10を使用している。
【0061】
この台車10はクローラ(無限軌道)式にローラ10eがレール5上を転動しながら、チェーン10dが循環することによりレール5上を走行する。柱部材21,31は台車10に支持された状態で、台車10が移動先側から牽引ワイヤ12等により引張力を受けることにより、あるいは移動方向後方から油圧シリンダ(アクチュエータ)等により押されることにより移動させられる。
【0062】
レール5上に載置される柱部材21,31は柱部材を含む柱2,3、及び架構体1(ブロック1A)の構築開始時からレール5上に構築(設置)され、図8に示すように構築時にはレール5天端との間に上記台車10を設置(挿入)するための空間を確保するために、柱脚部21a,31aのベースプレート31bがレール5の天端より浮いた状態で束柱6に仮支持される。束柱6は例えば地盤上、もしくは基礎14上に敷設される敷きモルタル61上に設置される。
【0063】
1本のレール5には架構体1(ブロック1A)を構成する1本、もしくはレール5の軸方向に配列する複数本の柱部材31,31(21,21)が支持されるが、レール5の軸方向に配列する複数本の柱部材31,31は図9、図11に示すように繋ぎ部材33によって互いに連結され、連結された状態で移動させられる。
【0064】
架構体1(ブロック1A)の移動終了後には柱部材31(21)のベースプレート31bは設置位置にある定着部に定着されることから、架構体1(ブロック1A)の移動時にはベースプレート31b以外の部分で架構体1(ブロック1A)を上記台車10に支持させる必要があるため、柱部材31(21)のレール5側の側面には架構体1(ブロック1A)とレール5との間に台車10を介在させるためのブラケット7が突設される。このブラケット7の底面に、柱部材31(21)を含むブロック1Aを台車10、もしくはジャッキ11に載置するための支持プレート8が接合(突設)される。
【0065】
架構体1(ブロック1A)は台車10の走行により目標位置まで移動させられた後、支持プレート8とレール5との間、あるいは地盤(基礎14)との間に差し込まれるジャッキ11によって定着部上に降下させられるが、定着部上への降下時にはレール5の解体、撤去のための空間を確保するために、架構体1(ブロック1A)は一旦、ジャッキ11によって上昇させられる。支持プレート8とレール5等との間に介在させられるジャッキ11は柱部材31の台車10上への載置と、最終設置位置での降下(ジャッキダウン)の他、柱部材31(ベースプレート31b)の高さ調整の役目も果たし得るため、支持プレート8の下には柱部材31の定着が完了するまでジャッキ11が配置されていることが望ましい。
【0066】
柱部材31(21)の、レール5の軸方向に直交する方向の両側にはレール5上に載置された状態にある柱部材31(21)のレール5からの離脱(外れ)防止のためのガイド部材9が接合され、柱部材31のレール5からの離脱に対する安定性が確保される。ガイド部材9は柱部材31がレール5の幅方向のいずれの側にも落下しないよう、レール5の幅方向両側に配置される。
【0067】
架構体1(ブロック1A)を牽引ワイヤ12による牽引により移動させる場合、架構体1(ブロック1A)の移動方向前方側(先頭)に位置する柱部材31(21)のブラケット7には牽引ワイヤ12の一端が接続され、他端に牽引ワイヤ12を巻き上げ、架構体1(ブロック1A)を引き寄せる巻き上げ装置が設置される。
【0068】
柱部材31(21)のベースプレート31bがジャッキ11によりレール5から浮かされた状態で、上記支持プレート8とレール11との間に台車10が差し込まれる。台車10は1本の柱部材31(21)に付き、1個、あるいは柱部材31(21)を挟んだ両側に2個以上、設置される。柱3が並列する複数本の柱部材31,32からなる場合の、レール5に支持される柱部材31以外の柱部材32は図10に示すように宙に浮いた状態にある。
【0069】
柱部材31(21)を含む架構体1(ブロック1A)は台車10に支持された後、巻き上げ装置による牽引ワイヤ12の巻き上げにより設置位置側へ向けて移動させられる。
【0070】
架構体1(ブロック1A)の移動が終了した時点で、図1−(c)に示すように並列する柱部材31,32が降下させられ、定着部に定着される。前記のようにブロック1Aの移動中は図1−(a)に示すように他方の柱2の柱部材21と、これに対向する一方の柱3の柱部材31,32の内、例えばスパン方向内側の柱部材31,21がレール5,5に支持された状態にあり、レール5に支持されていない柱部材32はレール5の天端のレベルからδ、浮いた状態にある。
【0071】
図1−(a)に示す状態からは、(c)に示すように並列する柱部材31,32の組を有する柱3が定着部のレベル(定着レベル)まで降下させられることもあるが、(a)の状態から(c)の状態へ直接、移行させることは架構体1(ブロック1A)を構成する柱2,3と梁4等に無理な力を加える可能性が想定される。このような事態を回避する上では、(a)の状態から一旦、(b)に示す状態(想定レベル)まで架構体1(ブロック1A)の全体を一斉に降下させることが行われる。架構体1(ブロック1A)全体の一斉降下は架構体1を支持している全ジャッキ11を均等に降下させることにより行われる。
【0072】
図1−(b)に示す「想定レベル」は前記のように図3−(a)に示すようにレール5に支持されている、並列する柱部材31,32からなる一方の柱3の柱部材31の底面と、そのレベルより上方へδの変位を生じている柱部材32の底面を共に最終定着時の「定着レベル」にまで降下(ジャッキダウン)させたときに、他方の柱2の柱部材21の底面と柱部材31の底面が同一平面上に位置すると仮定したときの、他方の柱部材21の底面に想定されるレベルである。この「想定レベル」は「定着レベル」よりΔ=L1/L2・δだけ上に位置する。
【0073】
移動が終了し、柱部材21,31の底面が「軌条レベル」にある図1−(a)に示す架構体1(ブロック1A)の降下は一斉降下により、柱部材21,31の底面が「想定レベル」にある(b)の状態を経てから、柱部材31,32の底面が「定着レベル」にある(c)の状態まで移行させられる。
【0074】
図1−(a)の段階でレール5に載置され、「軌条レベル」にある柱部材21,31の底面は(b)に示す「想定レベル」まではh(「想定レベル」から「軌条レベル」までの高さ)だけ降下(ジャッキダウン)させられる。柱部材31の降下に伴い、柱部材32も降下する。柱部材21,31,32の降下の際には、少なくとも柱部材21,31,32の底面下に敷設されているレール5が解体され、撤去される。
【0075】
「想定レベル」から「定着レベル」までは図1−(b)の段階でレール5に載置されている柱部材31の底面はΔ(L1/L2・δ)分、降下させられ、図1−(a)、(b)の段階ではレール5からδだけ浮いた状態にある柱部材32の底面はΔ+δ分、降下させられる。柱部材31の降下(ジャッキダウン)はその下に介在するジャッキ11に支持されたまま行われ、その柱部材31の降下に伴って柱部材32が降下する。
【0076】
柱部材31,32の底面が「定着レベル」まで降下させられた後、柱部材31,32の底面(ベースプレート31b)が定着部(基礎14等)に定着され、アンカー13に緊結される。柱部材31,32の定着部への定着後、柱部材21,31,32の底面下以外の区間に残されているレール5が解体され、撤去される。
【0077】
図1−(c)の状態からは、(d)に示すように降下済みの一方の柱3(柱部材31,32)に対向する他方の柱2(柱部材21)を「定着レベル」まで降下させ、その柱部材21の脚部21aを定着部に定着させ、アンカー13に緊結することが行われる。柱部材21の降下量はΔ(L1/L2・δ)である。
【符号の説明】
【0078】
1……架構体、1A……ブロック、
2……柱、21……柱部材、21a……柱脚部、22……柱部材、
3……柱、31……柱部材、31a……柱脚部、31b……ベースプレート、32……柱部材、32a……柱脚部、33……繋ぎ部材、
4……梁、
5……レール、6……束柱、61……敷きモルタル、
7……ブラケット、8……支持プレート、9……ガイド部材、
10……台車、10a……載荷プレート、10b……サイドプレート、10c……水平プレート、10d……チェーン、10e……ローラ、
11……ジャッキ、12……牽引ワイヤ、13……アンカー、
14……基礎、15……均し材。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
スパン方向に対向する柱と、両柱間にスパン方向に架設される梁を基本要素とする架構体を構築状態でスパン方向に交差する方向にスライドさせ、前記架構体の設置位置で前記対向する柱の脚部を前記スライド時のレベルより下に位置する各定着部に固定状態で定着させる方法であり、
前記対向する柱の少なくともいずれか一方の柱はスパン方向に並列する柱部材を持ち、その少なくとも一方の柱の前記設置位置での固定状態で鉛直上向きの力を受けるいずれかの柱部材の脚部を浮かせた状態で、前記対向する柱を軌道上に載置したまま、前記架構体を前記設置位置までスライドさせた後、
前記浮かせた状態にある柱部材を有する前記一方の柱の前記並列する柱部材を降下させ、その並列する柱部材の脚部を定着部に定着させ、
その一方の柱に対向する他方の柱を降下させてその脚部を定着部に定着させることを特徴とする柱付き架構体の設置方法。
【請求項2】
前記一方の柱の並列する柱部材を前記定着部にまで降下させる以前に、前記一方の柱の並列する柱部材が前記定着部に着地したときに、前記他方の柱を構成する柱部材の底面が位置するレベルまで、前記架構体を一斉に降下させることを特徴とする請求項1に記載の柱付き架構体の設置方法。
【請求項1】
スパン方向に対向する柱と、両柱間にスパン方向に架設される梁を基本要素とする架構体を構築状態でスパン方向に交差する方向にスライドさせ、前記架構体の設置位置で前記対向する柱の脚部を前記スライド時のレベルより下に位置する各定着部に固定状態で定着させる方法であり、
前記対向する柱の少なくともいずれか一方の柱はスパン方向に並列する柱部材を持ち、その少なくとも一方の柱の前記設置位置での固定状態で鉛直上向きの力を受けるいずれかの柱部材の脚部を浮かせた状態で、前記対向する柱を軌道上に載置したまま、前記架構体を前記設置位置までスライドさせた後、
前記浮かせた状態にある柱部材を有する前記一方の柱の前記並列する柱部材を降下させ、その並列する柱部材の脚部を定着部に定着させ、
その一方の柱に対向する他方の柱を降下させてその脚部を定着部に定着させることを特徴とする柱付き架構体の設置方法。
【請求項2】
前記一方の柱の並列する柱部材を前記定着部にまで降下させる以前に、前記一方の柱の並列する柱部材が前記定着部に着地したときに、前記他方の柱を構成する柱部材の底面が位置するレベルまで、前記架構体を一斉に降下させることを特徴とする請求項1に記載の柱付き架構体の設置方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2013−2094(P2013−2094A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−132824(P2011−132824)
【出願日】平成23年6月15日(2011.6.15)
【出願人】(000001373)鹿島建設株式会社 (1,387)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年6月15日(2011.6.15)
【出願人】(000001373)鹿島建設株式会社 (1,387)
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