説明

栓体

【課題】元節の内径の変化に対応して確実に元節に固定され得る栓体の提供。
【解決手段】この栓体10は、本体11とコア部材12と操作キャップ13とを有する。本体11は弾性変形しやすいゴム又は樹脂からなる。コア部材12は、本体11に嵌め込まれている。コア部材12の軸部20は本体11の支持孔16に支持され、コア部材12の頭部21は本体11の保持孔17に収容されている。頭部21は楕円形である。軸部20は本体11を貫通している。操作キャップ13は軸部20の端面に固定されている。操作キャップ13は、本体11に対して回転自在に嵌め込まれている。軸部20が回転すると、頭部21が本体11を押圧して弾性変形させる。これにより、本体11の外形寸法が拡縮する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、釣竿を構成するブランクの端部に装着される栓体の構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
たとえば釣竿は、単一の棒状部材から構成される場合もあるが、一般には外径及び内径が異なる複数のブランクからなる。釣竿がn本のブランクから構成される場合は、各ブランクは、外径が小さいものから順に第1番節、第2番節と称され、最も外径が大きいブランクが元節、この元節に隣り合うブランクが元上節と称される。
【0003】
各ブランクが振出方式あるいは継ぎ方式で連結されることにより、所定の長さの釣竿として使用される。振出方式では、各ブランクがいわゆる入れ子形式で組み合わされ、第1番節が第2番節から引き出され、第2番節が第3番節から引き出され、同様に、隣り合うブランクのうち小径のブランクが大径のブランクから引き出されることによって当該釣竿が伸長する。また、継ぎ方式では、小径のブランクの後端部が大径のブランクの先端部に嵌め合わされることによって伸長状態の釣竿が形成される。
【0004】
釣竿が使用されないときには、各ブランクは入れ子形式で収納される。すなわち、大径のブランクの中に小径のブランクが収容される。釣竿は、元節の先端に装着される栓部材を備えている場合がある。この栓部材は、釣竿が収納状態にあるときに元節に嵌め込まれることにより、元節に収容されているブランクが飛び出すことを防止する。
【0005】
ところで、釣竿の機種は、ターゲットとなる魚の種類や釣場環境に対応するためにきわめて多様である。そのため、元節の外径及び内径も釣竿の機種によって異なる。したがって、従来の栓部材は当該機種に対応した専用設計がなされており、栓部材及び釣竿のコストアップにつながっていた。従来では、かかる問題が解決されるために、元節の内径が変化したとしても、これに対応することができる栓部材が提案されている(たとえば、特許文献1〜特許文献4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−143474号公報
【特許文献2】特開2002−17210号公報
【特許文献3】特開平10−191842号公報
【特許文献4】特開平7−79667号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来の栓体は、元節の内径の変化に対応するために、単に弾性変形可能な材料から構成されていたり、より弾性変形がしやすいように栓体に襞が形成されているのみである。したがって、従来の栓体は、元節に装着されても当該元節から脱落しやすいという問題があった。
【0008】
そこで、本発明の目的は、元節の内径の変化に対応して確実に元節に固定され得る栓体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(1) 本発明に係る栓体は、弾性変形可能な材料からなり、内部に収容空間が形成された本体と、上記収容空間内で所定の回転中心軸の周りに回転可能な状態で当該収容空間に嵌め合わされたコア部と、上記本体に回転可能に連結され且つ上記コア部が固定された操作部とを有する。上記コア部は、回転されることによって上記回転中心軸に直交する方向の外形寸法が変化する楕円形頭部を備える。
【0010】
この構成によれば、コア部が本体に嵌め合わされた状態で、当該コア部は、当該本体の収容空間内で回転することができる。このコア部に操作部が固定されており、この操作部は、上記本体に回転可能に連結されている。したがって、操作部が回転操作されることにより、上記コア部が上記収容空間内で回転する。このコア部が上記回転中心軸の周りに回転すると上記楕円形頭部も回転し、当該コアの回転中心軸に直交する方向の外形寸法が変化する。上記本体は弾性変形が可能であるから、回転するコアによって上記本体の外形寸法も変化される。
【0011】
(2) 上記本体は、ブランクの端部に圧入され得る硬度のゴムないし樹脂から構成されるのが好ましい。上記コア部は、断面が楕円形の柱状に形成された頭部及び当該頭部に延設された軸部を備えていてもよい。上記収容空間は、上記本体の一端面から内部に延びるように形成され、上記軸部が嵌合し得る支持孔及び当該支持孔に連続し、上記コア部を収容保持し得る保持孔を備えていてもよい。上記軸部は上記本体に上記一端面から挿通され且つ上記支持孔に回転自在に支持されており、上記頭部は上記保持孔を区画する壁面と摺動自在な状態で囲繞保持されているのが好ましい。
【0012】
この構成では、本体が上記材料からなるため、ブランクの端部に確実に圧入状態で固定される。また、上記コア部の軸部が上記支持孔に嵌め合わされた状態で上記本体に支持され、しかも、上記コア部の頭部が上記保持孔を区画する壁面によって囲繞保持されている。すなわち、上記コア部及び本体によって軸及び軸受けの構造が形成されており、コア部が確実に本体に支持され且つ当該本体に対して回転自在となっている。このため、コア部の回転に応じて本体の外形寸法が変化する。
【0013】
(3) 上記本体は筒状に形成され、上記収容空間が上記本体の外面に開口しているのが好ましい。
【0014】
この構成によれば、コア部を本体に嵌め込む作業が簡単であり、栓体の製造が容易になる。
【発明の効果】
【0015】
この発明によれば、コア部が回転することにより本体の外形寸法が変化するので、操作部が回転操作されることにより本体の外形寸法が調整され得る。したがって、本体がブランクの端部に嵌め込まれる場合に、当該端部の内径に応じて本体の外形寸法が変化されるので、内径が異なるさまざまなブランクに対して栓体が確実に固定される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】図1は、本発明の一実施形態に係る栓体10を示す図である。
【図2】図2は、図1におけるII−II断面図である。
【図3】図3は、コア部材12が回転したときの本体11の挙動を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の好ましい実施形態が、適宜図面が参照されながら説明される。
【0018】
図1は、本発明の一実施形態に係る栓体10を示す図である。(a)は正面図、(b)は右側面図、(c)は左側面図である。また、図2は、図1におけるII−II断面図である。
【0019】
この栓体10は、主として複数のブランクからなる釣竿に装着されるものであって、釣竿を構成するブランク(典型的には元節)の端部に圧入固定される。なお、複数のブランクは振出形式又は継ぎ形式で連結され、所定長さの釣竿が構成される。この栓体10の特徴とするところは、当該栓体10の外形寸法がブランクの内径に対応して適切に変更されるようになっており、これにより、当該栓体10が様々な機種の釣竿等について共通部品として機能することができるようになっている。
【0020】
栓体10は、本体11と、コア部材12(請求項に記載された「コア部」に対応)と、操作キャップ13(請求項に記載された「操作部」に対応)とを備えている。コア部材12は、図2が示すように本体11の内部に嵌め込まれている。コア部材12の端部(図中の右端部)は本体11から突出しており、このコア部材12に操作キャップ13が設けられている。操作キャップ13が回転されるとコア部材12も回転し、これにより、本体11の外形が後述のように変形するようになっている。
【0021】
本体11は、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)、ウレタンゴム(U)その他のゴムのほかエチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)その他の樹脂から構成され得る。なお、本体11を構成する材料は、弾性変形しやすいものであれば特に限定されない。具体的には、本体11を構成するゴム又は樹脂の硬度は70(JIS K6253 タイプAデュロメータ硬度)が好ましい。ただし、本体11の硬度は、60〜80の範囲で適宜設定され得る。
【0022】
本実施形態では、本体11は円筒状に形成されており、軸方向14(請求項に記載された「回転中心軸」に対応)に沿って内部に収容室15(請求項に記載された「収容空間」に対応)が形成されている。図2が示すように、この収容室15は、支持孔16と保持孔17とを備えており、両者は、軸方向14に沿って連続している。支持孔16は本体11の一端面18に開口を有し、当該開口から本体11の内側に延びている。保持孔17は本体11の他端面19に開口を有し、当該開口から本体11の内側に延びている。保持孔17は、本体11の内部で支持孔16と連通している。
【0023】
支持孔16は円形に形成されており、支持孔16の内径は、後述されるコア部材12の軸部20の外径に対応している。また、保持孔17は、図1(c)が示すように楕円形に形成されている。保持孔17の形状は、後述されるコア部材12の頭部21の形状に対応している。すなわち、この保持孔17を区画する壁面22によって当該保持孔17が楕円形を呈しており、この壁面22が上記頭部21を囲繞し保持するようになっている。
【0024】
コア部材12は、金属又は硬度が90(JIS K6253 タイプAデュロメータ硬度)以上の樹脂から構成され得る。なお、コア部材12を構成する材料は特に限定されるものではなく、当該コア部材12が本体11と接触した場合に本体11を弾性変形させるために十分な硬度を備えたものであればよい。図2及び図1(c)が示すように、コア部材12は上記軸部20及び上記頭部21を有し、両者は連続している。
【0025】
軸部20は断面が円形の円柱状に形成されている。頭部21は、断面形状が楕円形に形成された柱状に形成されている。軸部20の中心軸と頭部21の中心軸とが一致した状態で両者が一体的に形成されている。コア部材12は、図2が示すように本体11の収容室15に嵌め込まれ、この状態で、軸部20及び頭部21の中心軸は、上記軸方向14に沿って配置される。具体的には、軸部20が上記収容室15の支持孔16を貫通し、当該支持孔16の内壁面によって支持される。また、頭部21が上記保持孔17内に配置され、保持孔17を区画する壁面22によって囲繞され保持される。ただし、この状態で、頭部21は、壁面22と摺動可能である。したがって、軸部20が回転されると頭部21も回転するが、当該頭部21が楕円形状であるから、上記保持孔17が頭部21によって押圧され変形される。
【0026】
図2が示すように、操作キャップ13は、上記軸部20の端面23に固定されている。この操作キャップ13は、円形の器状に形成されており(図1参照)、本体11の端部に外嵌されている。操作キャップ13は、本体11に対して回転することが可能である。したがって、操作キャップ13が回転されると、上記軸部20及び頭部21も収容室15内で回転することになる。
【0027】
栓体10の組立要領は、次のとおりである。すなわち、コア部材12が本体11の収容室15に嵌め込まれる。このとき、コア部材12の軸部20が保持孔17側から支持孔16側へ挿入される。軸部20が支持孔16を貫通した状態で、コア部材12の頭部21が保持孔17にぴったりと嵌め合わされる(図2及び図1(c)参照)。上記支持孔16を貫通した軸部20に操作キャップ13が固定され、当該操作キャップ13が本体11に嵌め合わされる。
【0028】
図3は、操作キャップ13が回転され、上記軸部20及び頭部21が回転したときの本体11の挙動を示す図である。
【0029】
同図(a)が示すように、コア部材12の頭部21が楕円形状を呈しているから、当該頭部21のN1方向及びN2方向の外形寸法は異なる。ここで、N1方向とは、上記軸方向14に直交する方向であり、N2方向とは、N1方向に直交し且つ上記軸方向14にも直交する方向である。すなわち、頭部21のN1方向の外形寸法はL2であり、N2方向の外形寸法はL1(L2>L1)である。同図において、コア部材12が軸方向14(紙面に垂直な方向)の周りに回転されると、頭部21のN1方向の外形寸法L2及びN2方向の外形寸法L1が変化する。
【0030】
頭部21が90°(degree)だけ回転されると、頭部21が保持孔17の壁面22に囲繞されているから、当該頭部21が当該壁面22を押圧し、本体11を変形させる。具体的には、同図(b)が示すように、頭部21によって本体11がN2方向に伸ばされてN2方向の外形寸法L1が寸法2sだけ大きくなる。すなわち、操作キャップ13が回転操作されることにより、本体11の外形が寸法2sだけ拡縮する。
【0031】
本実施形態に係る栓体10がブランクの先端に嵌め込まれるとき、この栓体10の本体11の外形寸法が変化するから、内径が異なるさまざまなブランクに対して確実に装着固定される。これにより、当該栓体10がさまざな機種の釣竿等に共通部品として使用され得る。
【0032】
特に本実施形態では、本体11が弾性変形しやすいゴムや樹脂からなるので、栓体10はブランクに確実に圧入状態で固定され得る。したがって、ブランクの内径にかかわらず栓体10がブランクから容易に脱落することが防止される。
【0033】
加えて、操作キャップ13の回転角度は、コア部材12の回転角度に等しいから、操作キャップ13の回転角度に応じて本体11の外形寸法が変化する。したがって、本体11の外形寸法がブランクの内径に対応して適切に調整され得る。
【0034】
さらに、本実施形態では、コア部材12が収容される収容室15は、本体11の一端面18及び他端面19に開口しており、本体11が筒状に形成されているので、コア部材12を本体11に嵌め込む作業が簡単であり、栓体10の組立作業が容易であるという利点がある。
【符号の説明】
【0035】
10・・・栓体
11・・・本体
12・・・コア部材
13・・・操作キャップ
14・・・軸方向
15・・・収容室
16・・・支持孔
17・・・保持孔
18・・・一端面
19・・・他端面
20・・・軸部
21・・・頭部
22・・・壁面
23・・・端面




【特許請求の範囲】
【請求項1】
弾性変形可能な材料からなり、内部に収容空間が形成された本体と、
上記収容空間内で所定の回転中心軸の周りに回転可能な状態で当該収容空間に嵌め合わされたコア部と、
上記本体に回転可能に連結され且つ上記コア部が固定された操作部とを有し、
上記コア部は、回転されることによって上記回転中心軸に直交する方向の外形寸法が変化する楕円形頭部を備えている栓体。
【請求項2】
上記本体は、ブランクの端部に圧入され得る硬度のゴムないし樹脂からなり、
上記コア部は、断面が楕円形の柱状に形成された頭部及び当該頭部に延設された軸部を有し、
上記収容空間は、上記本体の一端面から内部に延びるように形成され、上記軸部が嵌合し得る支持孔及び当該支持孔に連続し、上記コア部を収容保持し得る保持孔を含み、
上記軸部は上記本体に上記一端面から挿通され且つ上記支持孔に回転自在に支持されており、上記頭部は上記保持孔を区画する壁面と摺動自在な状態で囲繞保持されている請求項1に記載の栓体。
【請求項3】
上記本体は筒状に形成され、上記収容空間が上記本体の外面に開口している請求項1又は2に記載の栓体。





【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−55291(P2012−55291A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−204558(P2010−204558)
【出願日】平成22年9月13日(2010.9.13)
【出願人】(000002439)株式会社シマノ (1,038)
【Fターム(参考)】