説明

核医学用データ収集方法および核医学診断装置

【課題】少なくともヒストグラムデータの取得が可能で、リストデータの処理内容に制限されずにヒストグラム化が可能な核医学用データ収集方法および核医学診断装置を提供することを目的とする。
【解決手段】核医学用データに関するリストデータを一時保存用HDD72に一時的に記憶する記憶処理と、そのリストデータをヒストグラム処理部74にてヒストグラム化するヒストグラム処理とを独立・並行して行うことで、少なくともヒストグラムデータの取得が可能で、リストデータ処理内容に制限されずにリストデータ収集およびヒストグラム化が可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、放射性薬剤が投与された被検体から発生した放射線に基づいた核医学用データを収集する核医学用データ収集方法および核医学診断装置に係り、特に、データ収集の最適化の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
上述した核医学診断装置、すなわちECT(Emission Computed Tomography)装置として、PET(Positron Emission Tomography)装置を例に採って説明する。PET装置は、陽電子(Positron)、すなわちポジトロンの消滅によって発生する複数本の光子を検出して複数個の検出器で光子を同時に検出したときのみ被検体の断層画像を再構成するように構成されている。
【0003】
具体的には、陽電子放出核種を含んだ放射性薬剤を被検体内に投与して、投与された被検体内から放出される511KeVの対消滅光子を多数の検出素子(例えばシンチレータ)群からなる検出器で検出する。そして、2つの検出器で一定時間内に光子を検出した場合に同時に検出したとして、それを一対の対消滅光子として計数し、さらに対消滅発生地点を、検出した検出器対の直線上と特定する。このような同時計数情報を蓄積して再構成処理を行って、陽電子放出核種分布画像(すなわち断層画像)を得る。
【0004】
このように、検出器の位置情報から光源の情報を求めて、その情報から画像を得て撮像を行う装置では、検出器の詳細な位置情報を得ることで画像の質を向上させている(例えば、特許文献1〜3参照)。なお、光子を検出する事象を「イベント」と言い、同時計数されたデータを「ダブルイベントデータ」と言い、同時計数されなかったデータを「シングルイベントデータ」と言う。
【0005】
PET装置のガントリから転送されてくるイベント毎のデータを「リストデータ」と呼ぶが、このリストデータは、例えば図6(a)に示すようにイベント毎のX座標,Y座標,Z座標などの位置情報や時間情報などがあって、これらの情報が時系列に並んでいる。このリストデータをハードディスクドライブ(HDD: Hard Disc Drive)等に保存するモードを「リストモード」と呼ぶ。このリストモードの場合には、事象(イベント)の数だけHDDのような大容量の記憶媒体が必要になる。
【0006】
そこで、一般的にはこのリストデータに対して時間で積分するヒストグラム処理を行うことでそのリストデータをヒストグラム化して、ヒストグラムデータを取得する。このヒストグラムデータは、例えば図6(b)に示すように所定の時間で積分されたデータである。このヒストグラム化するモードを「ヒストグラムモード」と呼ぶ。このヒストグラムモードの場合には、データ収集開始前にHDDに保存されるヒストグラムデータのデータサイズが一意に決まることと、収集されるデータの数が多ければ多いほど保存されるデータ量を圧縮する効果が大きいという利点がある(例えば、非特許文献1参照)。
【0007】
ところで、リストモードでのデータの流れは、図7(a)に示す通りであり、ヒストグラムモードでのデータの流れは、図7(b)に示す通りである。すなわち、リストモードの場合には、図7(a)に示すように、ガントリからのリストデータをバッファに一時的に書き込むことで一時的に記憶し、その記憶されたリストデータを読み出して、図示を省略するHDDに書き込んで記憶する。ここで、バッファは、データについて一括して書き込み・読み出しが可能な記憶領域を単数有しており、複数のイベント情報を一括して書き込み・読み出しが可能なデータサイズの分だけリストデータをバッファに一時的に記憶する。そして、新たにリストデータをバッファに書き込んで記憶する場合には、記憶されていたリストデータに上書きすることで、新たなリストデータをバッファに書き込むことが可能になる。
【0008】
一方、ヒストグラムモードの場合には、図7(b)に示すように、ガントリからのリストデータをバッファに一時的に書き込んで記憶するまでは、図7(a)のリストモードでのデータの流れと同じである。ヒストグラムモードの場合には、その記憶されたリストデータを読み出して、読み出されたリストデータをヒストグラム化して、ヒストグラムデータを取得する。そして、図示を省略するHDDに書き込んで記憶する。リストモードと同様に、新たにリストデータをバッファに書き込んで記憶する場合には、記憶されていたリストデータに上書きすることで、新たなリストデータをバッファに書き込むことが可能になる。
【0009】
また、リストモードとヒストグラムモードとを結合させた「リストモード+ヒストグラムモード」というモードもある。このリストモード+ヒストグラムモードの場合には、図7(c)に示すように、ガントリからのリストデータをバッファに一時的に書き込んで記憶するまでは、図7(a)や図7(b)の各モードでのデータの流れと同じである。リストモード+ヒストグラムモードの場合には、その記憶されたリストデータを読み出して、図示を省略するHDDに書き込んで記憶する。一方で、読み出されたリストデータをヒストグラム化して、ヒストグラムデータを取得して、図示を省略するHDDに書き込んで記憶する。各モードと同様に、新たにリストデータをバッファに書き込んで記憶する場合には、記憶されていたリストデータに上書きすることで、新たなリストデータをバッファに書き込むことが可能になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2004−245592号公報
【特許文献2】特開2007−271428号公報
【特許文献3】特開2007−071858号公報
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】“ポジトロンCT”、[online]、日本光学会(Optical Society of Japan)、インターネット< URL : http://annex.jsap.or.jp/OSJ/50th_cd/main/keyword/poji_018.htm>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、一般にリストモードでは収集時間や薬剤の投与量などによって事象数が変わるので、収集開始前の段階でデータサイズがどれほどになるのかがわからない。さらに、一回の収集でデータ量が数10Gbyteになることも珍しくないので、最近になるまではデータ量を圧縮する効果のあるヒストグラムモードが一般的である。
【0013】
しかしながら、近年のHDD容量の増大に伴い、リストモードでの収集を行うことが増えている。これは、リストデータがあれば、様々な条件での画像を作成することが可能になることや、リストデータから再構成することでヒストグラムモードにはない効果がある等の利点もあるためである。また、相互作用を起こした深さ方向の光源位置(DOI: Depth of Interaction) を弁別するためのDOI検出器のように結晶数の多いシステムでは、ヒストグラムモードにすると結晶対毎が1画素(ピクセル)となるが、結晶対数に比べて事象数(リストデータ数)が少ない場合などには、画素値が“0”になるピクセルが発生し易く、リストデータから再構成を行うなどのようにリストモードでの要求がある。
【0014】
しかし、リストデータはただの数字の羅列でしかないので、正常なデータ収集が行えているのかをモニタすることはできない。一方、ヒストグラムモードではヒストグラムデータを逐次に作成することができるので、正常なデータ収集が行えているか否かなどの判定を収集中にモニタすることができる。
【0015】
しかし、ヒストグラムモードの場合には、リストデータをバッファに記憶するバッファへの書き込みに関する転送速度が、バッファから読み出してヒストグラム化する処理速度よりも速いと、バッファに記憶されたリストデータのヒストグラム化を完了することができない場合がある。つまり、新たなリストデータをバッファに書き込んで記憶するには、バッファに記憶されたリストデータの読み出しを終了する必要があるが、高計数率下などで、ガントリから転送されてくるイベント毎のデータ量がヒストグラム化する処理能力よりも多いと、バッファに記憶されていたリストデータを全て処理する前に読み出しを終了し、新たなリストデータを上書きするので,データの一部を欠落してしまう。また、処理速度はパーソナルコンピュータ(PC)の処理能力とその処理内容に依存するので収集によって可変である。一般的にヒストグラム処理を行うとリストモードのときよりもPCの負荷が大きくなるので、処理速度が遅くなってしまい、例えば処理可能な計数率の制限が厳しくなる。
【0016】
これを解決するために、バッファの替わりに40Gbyte程度の大容量のデータ保存が可能なHDDを用意して、HDDに書き込むことが考えられる。
【0017】
しかし、ヒストグラムモードにおいて、このようなHDDを用意した場合には、HDDに書き込むべきリストデータがなくなるまで、あるいはHDDの各記憶領域の全てにリストデータを書き込んで記憶するまで、過去に記憶された全リストデータをHDDに記憶する必要があり、HDDからのリストデータの読み出しに時間がかかる。また、大容量のHDDを用意するにしても、上述したように収集開始前の段階でデータサイズがどれほどになるのかがわからないので、どれだけの容量のHDDを用意すればいいのかわからない。したがって、予想を超えた容量だと、バッファのときと同様に、全てのリストデータがHDDから全て読み出されずに欠落してしまう。
【0018】
以上のように、リストモードでの利点・問題点およびヒストグラムモードでの利点・問題点をまとめると、リストモードでは様々な条件での画像を作成することができる利点がある反面、収集開始前の段階でデータサイズがどれほどになるのかがわからない、大容量のHDDが必要になる、データ収集が行えているのかをモニタすることはできないなどの問題点がある。ヒストグラムモードではデータ量を圧縮する効果がある、データ収集が行えているか否かなどの判定を収集中にモニタすることができる利点がある反面、書き込みに関する転送速度が処理速度よりも速いと高計数率時にリストデータが欠落する、どれだけの容量のHDDを用意すればいいのかわからない、リストモードのときよりもPCの負荷が大きいなどの問題点がある。
【0019】
そこで、リストデータもヒストグラムデータも取得できる上述したリストモード+ヒストグラムモードが望まれる。しかし、リストモード+ヒストグラムモードの場合には、リストデータへの転送およびヒストグラム処理を行うので、ヒストグラムモードのときよりもさらにPCの負荷が大きくなり、処理可能な計数率の制限がさらに厳しくなる。
【0020】
この発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、少なくともヒストグラムデータの取得が可能で、リストデータの処理内容に制限されずにヒストグラム化が可能な核医学用データ収集方法および核医学診断装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0021】
この発明は、このような目的を達成するために、次のような構成をとる。
すなわち、請求項1に記載の発明は、放射性薬剤が投与された被検体から発生した放射線に基づいた核医学用データを収集する核医学用データ収集方法であって、前記核医学用データに関するリストデータを一時的に記憶する記憶工程と、そのリストデータをヒストグラム化するヒストグラム化工程とを備え、前記記憶工程と前記ヒストグラム化工程とを独立・並行して行うことを特徴とするものである。
【0022】
[作用・効果]請求項1に記載の発明によれば、核医学用データに関するリストデータを一時的に記憶する記憶工程と、そのリストデータをヒストグラム化するヒストグラム化工程とを独立・並行して行う。記憶工程ではリストデータを一時的に記憶して、次に新たなリストデータを記憶するとしても、新たなリストデータを一時的に記憶する記憶工程と、前回に一時的に記憶されたリストデータをヒストグラム化するヒストグラム化工程とを独立・並行して行うことで、少なくともヒストグラムデータの取得が可能で、リストデータの処理内容に制限されずにヒストグラム化が可能となる。仮に書き込み(記憶)に関する転送速度が(ヒストグラム化のための)処理速度よりも速くても、記憶工程とヒストグラム化工程とを独立・並行して行っているので、前回に記憶されたリストデータが読み出されずに欠落するという事態を防止することができる。
【0023】
上述した発明(請求項1に記載の発明)において、記憶工程で一時的に記憶されたリストデータをヒストグラム化工程でヒストグラム化したら、そのヒストグラム化の対象となったリストデータを削除してもよいし(請求項2に記載の発明)、削除しなくてもよい。削除する場合(請求項2に記載の発明の場合)には、記憶工程で用いられている記憶媒体の容量を抑えることができる。また、削除しない場合には、ヒストグラムデータのみならずリストデータも取得することができ、ヒストグラム化することでの問題点を、リストデータで補うことができる。例えば、リストデータに基づいて様々な条件での画像を作成することができ、リストデータから再構成を行うこともできる。
【0024】
また、請求項3に記載の発明は、放射性薬剤が投与された被検体から発生した放射線に基づいて被検体の核医学用データを求める核医学診断装置であって、前記核医学用データに関するリストデータについて一括して書き込み・読み出しが可能な記憶領域を複数有した第1記憶媒体と、前記リストデータに対してヒストグラム処理を行うことでそのリストデータをヒストグラム化するヒストグラム処理手段とを備え、前記リストデータを前記記憶領域に一時的に書き込むことで一時的に記憶する記憶処理と、前記ヒストグラム化するヒストグラム処理とを独立・並行して行うことを特徴とするものである。
【0025】
[作用・効果]請求項3に記載の発明によれば、請求項1に記載の発明に係る核医学用データ収集方法を好適に実施することができる。すなわち、核医学用データに関するリストデータについて一括して書き込み・読み出しが可能な記憶領域を第1記憶媒体は複数有している。一方、ヒストグラム処理手段は、リストデータに対してヒストグラム処理を行うことでそのリストデータをヒストグラム化する。したがって、リストデータを第1記憶媒体の所定の記憶領域に書き込んで記憶して、次に新たなリストデータを記憶するとしても、前回に一時的に記憶されたリストデータとは別に、別の記憶領域にその新たなリストデータを一時的に書き込むことで一時的に記憶する記憶処理と、前回に一時的に記憶されたリストデータをヒストグラム化するヒストグラム処理とを独立・並行して行うことで、少なくともヒストグラムデータの取得が可能で、リストデータの処理内容に制限されずにヒストグラム化が可能となる。仮に書き込み(記憶)に関する転送速度が(ヒストグラム化のための)処理速度よりも速くても、記憶処理とヒストグラム処理とを独立・並行して行っているので、前回に記憶されたリストデータが読み出されずに欠落するという事態を防止することができる。さらに、従来のように、第1記憶媒体(例えばHDD)の各記憶領域の全てにリストデータを書き込んで記憶したときに、過去に記憶された全リストデータを第1記憶媒体から読み出すことをせずに、請求項3に記載の発明では、第1記憶媒体の記憶領域では一時的に書き込んで一時的に記憶し、次の新たなリストデータの処理内容に制限されずに読み出してヒストグラム処理を行うので、第1記憶媒体からのリストデータの読み出し、ひいてはヒストグラム処理までの時間を短縮することができる。
【0026】
上述した発明(請求項3に記載の発明)において、請求項2に記載の発明と同様に、記憶領域に一時的に記憶されたリストデータをヒストグラム処理手段でヒストグラム化したら、そのヒストグラム化の対象となったリストデータを削除してもよいし(請求項4に記載の発明)、削除しなくてもよい。削除する場合(請求項4に記載の発明の場合)には、第1記憶媒体の容量を抑えることができる。
【0027】
上述したこれらの発明において、リストデータについて一括して書き込み・読み出しが可能な記憶領域を単数有した第2記憶媒体を備え、その第2記憶媒体で読み出されたリストデータを第1記憶媒体に書き込んで記憶してもよい(請求項5に記載の発明)。従来の第2記憶媒体(例えばバッファ)の後段に第1記憶媒体に接続するだけで、請求項5に記載の発明の構成を実現することができる。
【発明の効果】
【0028】
この発明に係る核医学用データ収集方法および核医学診断装置によれば、核医学用データに関するリストデータを一時的に記憶するのと、そのリストデータをヒストグラム化するのとを独立・並行して行うことで、少なくともヒストグラムデータの取得が可能で、リストデータの処理内容に制限されずにヒストグラム化が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】実施例に係るトランスミッション型のPET装置の側面図である。
【図2】実施例に係るトランスミッション型のPET装置のブロック図である。
【図3】光子検出器の具体的構成の概略図である。
【図4】(a)はバッファおよび一時保存用HDDの具体的構成の概略図であり、(b)および(c)はリストデータの流れを示した概略図である。
【図5】一連のリストデータおよびヒストグラムデータに関する処理の流れを示すフローチャートである。
【図6】(a)はリストデータの模式図であり、(b)はヒストグラムデータの模式図である。
【図7】(a)はリストモードでのデータの流れ、(b)はヒストグラムモードでのデータの流れ、(c)はリストモード+ヒストグラムモードでのデータの流れを示した概略図である。
【実施例】
【0030】
以下、図面を参照してこの発明の実施例を説明する。
図1は、実施例に係るトランスミッション型のPET装置の側面図であり、図2は、実施例に係るトランスミッション型のPET装置のブロック図である。なお、本実施例では、核医学診断装置として、PET (Positron Emission Tomography) 装置とトランスミッション装置とを組み合わせたトランスミッション型のPET装置を例に採って説明する。
【0031】
図1に示すように、本実施例に係るトランスミッション型のPET装置1は、水平姿勢の被検体Mを載置する天板2を備えている。この天板2は、上下に昇降移動、被検体Mの体軸に沿って平行移動するように構成されている。トランスミッション型のPET装置1は、天板2に載置された被検体Mを診断するPET装置3とトランスミッション装置4とを備えている。トランスミッション型のPET装置1は、この発明における核医学診断装置に相当する。
【0032】
PET装置3は、開口部31aを有したガントリ31と被検体Mから発生した光子を検出する光子検出器32とを備えている。光子検出器32は、被検体Mの体軸周りを取り囲むようにしてリング状に配置されており、ガントリ31内に埋設されている。光子検出器32は、シンチレータブロック32aとライトガイド32bと光電子増倍管(PMT)32c(図3を参照)とを備えている。シンチレータブロック32aは、複数個のシンチレータからなる。放射性薬剤が投与された被検体Mから発生した光子をシンチレータブロック32aが光に変換して、変換されたその光をライトガイド32bが案内して、光電子増倍管32cが光電変換して電気信号に出力する。光子検出器32の具体的な構成については、図3で後述する。後述するトランスミッション装置4のトランスミッション検出器43も、光子検出器32と同様の構成となっている。
【0033】
一方、トランスミッション装置4は、開口部41aを有したガントリ41を備えている。ガントリ41内には放射線を照射させる線源42と、被検体Mを透過した光子を検出するトランスミッション検出器43とを配設している。モータ(図示省略)の駆動によってガントリ41内で線源42を被検体Mの体軸の軸心周りに回転させる。トランスミッション検出器43については被検体Mの体軸の軸心周りにリング状に配設しており、静止させている。もちろん、線源42と同様に、トランスミッション検出器43を被検体Mの体軸の軸心周りに回転させてもよい。
【0034】
図1(a)では、PET装置3のガントリ31とトランスミッション装置4のガントリ41とを互いに別体としたが、図1(b)に示すように、一体型に構成してもよい。
【0035】
続いて、トランスミッション型のPET装置1のブロック図について説明する。図2に示すように、トランスミッション型のPET装置1は、上述した天板2やPET装置3やトランスミッション装置4の他に、コンソール7を備えている。PET装置3は、上述したガントリ31や光子検出器32の他に、増幅器33とAD変換器34とエミッションデータ収集基板5とを備えている。トランスミッション装置4は、上述したガントリ41や線源42やトランスミッション検出器43の他に、AD変換器45とエミッションデータ収集基板6とを備えている。
【0036】
エミッションデータ収集基板5は、プログラムデータに応じて内部の使用するハードウェア回路(例えば論理回路)が変更可能なプログラマブルデバイス(例えばFPGA(Field Programmable Gate Array))で構築される。エミッションデータ収集基板5は、光子検出器32で検出されたデータであるエミッションデータを収集し、同時計数回路51とエネルギウィンドウ判定部52とを備えている。
【0037】
トランスミッションデータ収集基板6は、エミッションデータ収集基板5と同様にプログラマブルデバイスで構築される。トランスミッションデータ収集基板6は、線源42からの放射線がトランスミッション検出器43で検出されたデータであるトランスミッションデータを収集する。
【0038】
コンソール7は、バッファ71と一時保存用HDD72とリストデータ用HDD73とヒストグラム処理部74とヒストグラムデータ用HDD75とデータ収集部76と画像再構成部77とメモリ部78と入力部79と出力部80とコントローラ81とを備えている。バッファ71は、この発明における第2記憶媒体に相当し、一時保存用HDD72は、この発明における第1記憶媒体に相当し、ヒストグラム処理部74は、この発明におけるヒストグラム処理手段に相当する。
【0039】
増幅器33は、光子検出器32で検出されて出力された電気信号を増幅させる。AD変換器34は、増幅器33で増幅された電気信号のアナログ値をディジタル値に変換してディジタル出力する。
【0040】
同時計数回路51は、光子が光子検出器32で同時に検出(すなわち同時計数)されたか否かを判定する。同時計数回路51で同時計数されたエミッションデータをリストデータとして、バッファ71,一時保存用HDD72およびリストデータ用HDD73を介してデータ収集部76に送り込む。
【0041】
エネルギウィンドウ判定部52は、光子検出器32で検出された光子のうち所望のエネルギ幅を持った光子のみを取り出すために、予め設定されたエネルギウィンドウ(例えば400KeV〜600KeV)に光子があるか否かを判定する。放射線薬剤から放出される光子のエネルギは511KeVであるので、もし光子がエネルギウィンドウ内にあれば、511KeVの対消滅光子であると判定する。そして、エネルギウィンドウ内にある光子のみが同時計数回路51にて同時計数される。なお、光子検出器32から増幅器を通さずに同時計数回路51に送られた情報は時間情報であって、タイミングウィンドウ(例えば10nsec)が設けられており、そのタイミングウィンドウ内のタイミングで2つの光子が光子検出器32でそれそれ検出された場合には、同時に検出(すなわち同時計数)されたと判定する。
【0042】
一方、トランスミッション装置4の増幅器44は、PET装置3の増幅器33と同様に、トランスミッション検出器43で検出されて出力された電気信号を増幅させ、トランスミッション装置4のAD変換器45は、PET装置3のAD変換器34と同様に、増幅器44で増幅された電気信号のアナログ値をディジタル値に変換してディジタル出力する。トランスミッションデータ収集基板6は、トランスミッション検出器43で検出された光子に基づいて光子吸収係数の分布データをトランスミッションデータ(吸収補正データ)として収集する。トランスミッションデータ収集基板6で収集されたトランスミッションデータをデータ収集部76に送り込む。
【0043】
バッファ71は、エミッションデータ収集基板5で収集されたエミッションデータ(ここではリストデータ)を一時的に書き込んで一時的に記憶し、新たなエミッションデータがエミッションデータ収集基板5から転送されると、前回に記憶されたエミッションデータを読み出して、一時保存用HDD72に送り込む。バッファ71の具体的な機能については、図4、図5で後述する。
【0044】
一時保存用HDD72は、バッファ71で読み出されたエミッションデータを一時的に書き込んで一時的に記憶し、コンソール7に余力があるときにはヒストグラム処理部74でのヒストグラム処理を行うために、記憶されたエミッションデータを読み出して、ヒストグラム処理部74に送り込むとともに、リストデータ用HDD73にも送り込む。なお、エミッションデータ(リストデータ)を削除する場合にはリストデータ用HDD73は不要である。一時保存用HDD72の具体的な機能についても、図4、図5で後述する。
【0045】
リストデータ用HDD73は、一時保存用HDD72で読み出されたエミッションデータ(リストデータ)を書き込んで記憶し、適宜必要に応じて読み出して、データ収集部76に送り込む。ヒストグラム処理部74は、一時保存用HDD72で読み出されたエミッションデータ(リストデータ)に対してヒストグラム処理を行うことでそのエミッションデータ(リストデータ)をヒストグラム化する。ヒストグラム処理部74の具体的な機能についても、図4、図5で後述する。ヒストグラムデータ用HDD75は、ヒストグラム処理部74でヒストグラム化されたヒストグラムデータを書き込んで記憶し、適宜必要に応じて読み出す。
【0046】
データ収集部76は、同時計数回路51で同時計数されて収集されたエミッションデータに、トランスミッションデータ収集基板6で収集されたトランスミッションデータを作用させて、被検体Mの体内での光子の吸収を考慮した投影データに補正する。すなわち、トランスミッションデータをエミッションデータに作用させてエミッションデータの吸収補正を行う。データ収集部76は、吸収補正された投影データ(エミッションデータ)を画像再構成部77に送り込む。画像再構成部77は、吸収補正された投影データを再構成して断層画像を生成する。
【0047】
メモリ部78は、コントローラ81を介して、エミッションデータ収集基板5やトランスミッションデータ収集基板6やデータ収集部76で収集された各々のデータや画像再構成部77で再構成された断層画像などのデータを書き込んで記憶し、適宜必要に応じて読み出して、コントローラ81を介して、各々のデータを出力部80に送り込んで出力する。上述したバッファ71や一時保存用HDD72やリストデータ用HDD73やヒストグラムデータ用HDD75も含めて、メモリ部78は、ROM(Read-only Memory)やRAM(Random-Access Memory)などに代表される記憶媒体で構成されている。
【0048】
入力部79は、オペレータが入力したデータや命令をコントローラ81に送り込む。入力部79は、マウスやキーボードやジョイスティックやトラックボールやタッチパネルなどに代表されるポインティングデバイスで構成されている。出力部80は、モニタなどに代表される表示部やプリンタなどで構成されている。
【0049】
コントローラ81は、実施例に係るトランスミッション型のPET装置1を構成する各部分を統括制御する。コントローラ81は、中央演算処理装置(CPU)などで構成されている。エミッションデータ収集基板5やトランスミッションデータ収集基板6やデータ収集部76で収集された各々のデータや画像再構成部77で再構成された断層画像などのデータを、コントローラ81を介して、メモリ部78に書き込んで記憶、あるいは出力部80に送り込んで出力する。出力部80が表示部の場合には出力表示し、出力部80がプリンタの場合には出力印刷する。
【0050】
放射性薬剤が投与された被検体Mから発生した光子を光子検出器32のうち該当する光子検出器32のシンチレータブロック32a(図3を参照)が光に変換して、変換されたその光を光子検出器32の光電子増倍管32c(図3を参照)が光電変換して電気信号に出力する。その電気信号を画像情報(画素値)として同時計数回路51とともに増幅器33に送り込む。
【0051】
具体的には、被検体Mに放射性薬剤を投与すると、ポジトロン放出型のRIのポジトロンが消滅することにより、2本の光子が発生する。同時計数回路51は、光子検出器32のシンチレータブロック32a(図3を参照)の位置と光子の入射タイミングとをチェックし、被検体Mを挟んで互いに対向位置にある2つのシンチレータブロック32aで光子が同時に入射したとき(すなわち同時計数したとき)のみ、送り込まれた画像情報を適正なデータと判定する。一方のシンチレータブロック32aのみに光子が入射したときには、同時計数回路51は、ポジトロンの消滅により生じた光子ではなくノイズとして扱い、そのときに送り込まれた画像情報もノイズと判定してそれを棄却する。
【0052】
同時計数回路51に送り込まれた画像情報を投影データ(エミッションデータ)として、バッファ71,一時保存用HDD72およびリストデータ用HDD73を介してデータ収集部76に送り込む。一方、線源42から被検体Mに光子を照射して、被検体Mの外部から照射されて被検体Mを透過した光子をトランスミッション検出器43が電気信号に変換することで光子を検出する。トランスミッション検出器43で変換された電気信号を画像情報(画素値)として、増幅器44およびAD変換器45を介してトランスミッションデータ収集基板5に送り込む。トランスミッションデータ収集基板5は、送り込まれた画像情報に基づいてトランスミッションデータ(吸収補正データ)を求める。トランスミッションデータ収集基板6は、光子またはX線の吸収係数とエネルギとの関係を表す演算を利用することで、X線吸収係数の分布データを光子吸収係数の分布データに変換して、光子吸収係数の分布データをトランスミッションデータ(吸収補正データ)として収集する。トランスミッションデータ収集基板6は、トランスミッションデータをデータ収集部76に送り込む。
【0053】
データ収集部76は、エミッションデータの吸収補正を行って、画像再構成部77に送り込み、送り込まれた吸収補正後の投影データを画像再構成部77は再構成して、被検体Mの体内での光子の吸収を考慮した断層画像を生成する。
【0054】
次に、本実施例に係る光子検出器32の具体的な構成について、図3を参照して説明する。図3は、光子検出器の具体的構成の概略図である。
【0055】
光子検出器32は、深さ方向に減衰時間が互いに異なる検出素子であるシンチレータを複数組み合わせて構成されたシンチレータブロック32aと、シンチレータブロック32aに光学的に結合されたライトガイド32bと、ライトガイド32bに光学的に結合された光電子増倍管32cとを備えて構成されている。シンチレータブロック32a中の各シンチレータは、入射された光子によって発光して光に変換することでγ線を検出する。なお、シンチレータブロック32aについては、必ずしも深さ方向(図3ではr)に減衰時間が互いに異なるシンチレータを組み合わせる必要はない。また、深さ方向に2層のシンチレータを組み合わせたが、単層のシンチレータでシンチレータブロック32aを構成してもよい。
【0056】
次に、データ収集部にまで送り込まれるエミッションデータの流れについて、図4、図5を参照して説明する。図4(a)は、バッファおよび一時保存用HDDの具体的構成の概略図であり、図4(b)および図4(c)は、リストデータの流れを示した概略図であり、図5は、一連のリストデータおよびヒストグラムデータに関する処理の流れを示すフローチャートである。図4、図5では、エミッションデータ収集基板5からのエミッションデータを「リストデータ」と統一して、以下を説明する。
【0057】
図4(a)に示すように、バッファ71は、リストデータについて一括して書き込み・読み出しが可能な記憶領域71aを単数有している。一方、一時保存用HDD72は、リストデータについて一括して書き込み・読み出しが可能な記憶領域72aを複数有している。
【0058】
従来と同様に、新たにリストデータをバッファ71に書き込んで記憶する場合には、前回に記憶されたリストデータをバッファから消去することで、新たなリストデータをバッファ71に書き込む。従来のヒストグラムモードと相違して、バッファ71を介して単にリストデータを一時保存用HDD72に転送するリストモードであるので、リストデータの欠損がヒストグラム化に関する処理速度に依存しない。
【0059】
従来と同様に、一時保存用HDD72は記憶領域72aを複数有している。一方で、従来と相違して、リストデータを一時保存用HDD72に一時的に書き込むことで一時的に記憶する記憶処理と、ヒストグラム化するヒストグラム処理とを独立・並行して行う。具体的には、コンソール7に余力があるときには一時保存用HDD72へのリストデータの記憶処理と独立・並行してヒストグラム処理部74でのヒストグラム処理を行うために、過去に記憶されたエミッションデータを一時保存用HDD72から読み出して、ヒストグラム処理部74に送り込む。
【0060】
(ステップS1)最初のリストデータの記憶
一時保存用HDD72の各記憶領域72aのいずれにもリストデータが記憶されていない状態のときに、最初のリストデータを、バッファ71を介して一時保存用HDD72に書き込んで記憶する。それ以降のステップについては、ステップS2とステップS3〜S6とを独立・並行して行う。したがって、ステップS2の処理によってステップS3〜S6の処理が影響されることはない。また、ステップS2の処理は、一時保存用HDD32への書き込みあるいは一時保存用HDD32からの読み出しに関するもので、ステップS3〜S6の処理は、ヒストグラム処理部74に関するものである。
【0061】
(ステップS2)リストデータの記憶
最初のリストデータ以降のリストデータを、バッファ71を介して一時保存用HDD72の各記憶領域72aに書き込んで記憶する。このステップS2を行うことで、リストデータに既に記憶された記憶領域72aの数が1つずつ増えることになる。このステップS2での処理は、この発明における記憶工程に相当する。
【0062】
(ステップS3)余力があるか?
ステップS2と独立・並行して、ステップS3ではコンソール7に余力があるか否かを判定する。コンソール7に余力がないときには余力があるときまでステップS3をループさせて待機させる。コンソール7に余力があるときにはヒストグラム処理部74でのヒストグラム処理が行えるとして、ステップS4に進む。
【0063】
(ステップS4)処理対象となるリストデータがあるか?
コンソール7に余力があったとしても、ヒストグラム処理部74でのヒストグラム化の対象となるリストデータがなければ、ステップS2でリストデータが記憶されて、読み出しが可能になるまでステップS4をループさせて待機させる。ステップS2でリストデータが記憶されて、読み出し可能なリストデータがあれば、ヒストグラム処理部74でのヒストグラム処理が行えるとして、ステップS5に進む。
【0064】
(ステップS5)ヒストグラム処理
ステップS3で余力があり、かつステップS4で処理対象となるリストデータがあると判断された場合には、一時保存用HDD72の記憶領域72aに既に記憶されたリストデータのうち最古となるリストデータがヒストグラム化の対象となるリストデータとなるので、その最古となるリストデータを一時保存用HDD72から読み出して、ヒストグラム処理部74は、一時保存用HDD72で読み出された最古のリストデータに対してヒストグラム処理を行うことでそのリストデータをヒストグラム化する。このステップS5での処理は、この発明におけるヒストグラム化工程に相当する。
【0065】
例えば、図4(b)に示すように、最初のリストデータを一時保存用HDD72の記憶領域72aに書き込んで記憶する。そして、図4(c)に示すように、新たなリストデータを一時保存用HDD72の記憶領域72aに書き込んで記憶したときに、あるいは記憶している最中に、コンソール7に余力があると判断された場合には、過去に記憶されたリストデータは前回のリストデータでもある最初のリストデータであって、その最初のリストデータが最古となるリストデータでもあって、その最初のリストデータを一時保存用HDD72から読み出して、ヒストグラム処理部74は、一時保存用HDD72で読み出された最初のリストデータをヒストグラム化して、ヒストグラムを取得する。図4(b)および図4(c)では、右上斜線のハッチングで図示した部分を最初のリストデータとし、左上斜線のハッチングで図示した部分を新たなリストデータとする。また、図4(b)および図4(c)中の記憶領域72aに向かう矢印(すなわち「→」)は、リストデータを一時保存用HDD72の記憶領域72aに書き込んで記憶する動作を図示し、逆に図4(b)および図4(c)中の記憶領域72aから出た矢印は、リストデータを一時保存用HDD72から読み出して、ヒストグラム処理を行う動作を図示している。
【0066】
このように、従来では、新たなリストデータを書き込んで記憶するには、前回に記憶されたリストデータ(図4(b)および図4(c)の例では最初のリストデータ)を読み出さないと、新たなリストデータの書き込みが行えない。これに対して、本実施例の場合には、新たなリストデータの記憶に関わらず、ヒストグラム化の対象となるリストデータがあって、コンソール7に余力さえあれば、記憶と独立・並行して過去に記憶されたリストデータ(図4(b)および図4(c)の例では最初のリストデータ)のヒストグラム化が可能である。
【0067】
なお、図4(b)および図4(c)では、新たなリストデータを一時保存用HDD72の記憶領域72aに書き込んで記憶したときに、あるいは記憶している最中に、コンソール7に余力があると判断された場合に、前回のリストデータをヒストグラム化する例であったが、新たなリストデータを一時保存用HDD72の記憶領域72aを逐次に書き込んで記憶しても、コンソール7に余力がないと判断され、記憶領域72aに記憶された過去のリストデータが複数あった場合でも同様である。最古となるリストデータが、図4(b)および図4(c)の例では前回のリストデータであったのに対して、過去のリストデータが複数ある場合には最古となるリストデータが前回以外のリストデータとなる。つまり、過去のリストデータが複数ある場合には前回のリストデータは最古のリストデータとならない。次々と、記憶領域72aに記憶された古い順からリストデータを逐次にヒストグラム化することになる。
【0068】
(ステップS6)処理完了?
ヒストグラム処理が完了し、処理対象となるリストデータがない場合には、一連のステップを終了する。ヒストグラムが完了しない場合には、新たなる処理対象となるリストデータがあるか否かを判定するために、ステップS3に戻って、ステップS3〜S6を繰り返し行う。
【0069】
また、ステップS5でヒストグラム処理を行う際に、リストデータを一時保存用HDD72から読み出して、ヒストグラム処理部74に送り込むとともに、リストデータ用HDD73にも送り込む。このようにリストデータを削除せずに、リストデータ用HDD73にもリストデータを送り込むことでヒストグラムデータとともにリストデータも取得してもよい。逆に、リストデータをヒストグラム化したら、そのヒストグラム化の対象となったリストデータを削除してもよい。前者のようにリストデータを削除せずに、ヒストグラムデータのみならずリストデータも取得する場合には、ハードディスク(HDD)上でヒストグラムデータおよびリストデータを連結するという意味で、「リスト連結モード+ヒストグラムモード」と便宜上呼び、後者のようにリストデータを一時保存用HDD72に一時的に記憶した後にヒストグラム化の対象となったリストデータを削除する場合には、「リスト一時保存モード+ヒストグラムモード」と便宜上呼ぶ。
【0070】
従来の「ヒストグラムモード」や「リストモード」や「リストモード+ヒストグラムモード」と、本実施例の「リスト一時保存モード+ヒストグラムモード」や「リスト連結モード+ヒストグラムモード」の各モードについて、使い分けと計数率限界の一例を下記に挙げる。
【0071】
*ヒストグラムモード:計数率限界≒3000kcps
*リストモード:計数率限界≒7000kcps
*リストモード+ヒストグラムモード:計数率限界≒2000kcps
*リスト一時保存モード+ヒストグラムモード:計数率限界≒7000kcps
*リスト連結モード+ヒストグラムモード:計数率限界≒7000kcps
ただし、kcpsの単位は、k count/secで1秒当たりのキロ計数率である。
【0072】
上述の一例から、従来のモード(ヒストグラムモード,リストモードおよびリストモード+ヒストグラムモード)での各々の計数率限界において、ヒストグラム処理を行わないリストモードで最も計数率が高く、次いでヒストグラム処理を行うヒストグラムモードで計数率が高く、リストデータへの転送およびヒストグラム処理を行うリストモード+ヒストグラムモードが最も計数率が低いのがわかる。また、従来のモードと本実施例でのモード(リスト一時保存モード+ヒストグラムモードおよびリスト連結モード+ヒストグラムモード)での各々の計数率限界において、本実施例ではヒストグラム処理をともに行っているのにも関わらず、従来のヒストグラム処理を行わないリストモードと同程度での計数率を保っているのがわかる。
【0073】
上述の本実施例に係る方法によれば、核医学用データに関するリストデータ(本実施例ではエミッションデータ)を一時的に記憶するステップS2(リストデータの記憶)と、そのリストデータをヒストグラム化するステップS5(ヒストグラム処理)とを独立・並行して行う。ステップS2ではリストデータを一時的に記憶して、次に新たなリストデータを記憶するとしても、新たなリストデータを一時的に記憶するステップS2と、前回に一時的に記憶されたリストデータをヒストグラム化するステップS5とを独立・並行して行うことで、少なくともヒストグラムデータの取得が可能で、リストデータの処理内容に制限されずにヒストグラム化が可能となる。仮に書き込み(記憶)に関する転送速度が(ヒストグラム化のための)処理速度よりも速くても、ステップS2とステップS5とを独立・並行して行っているので、前回に記憶されたリストデータが読み出されずに欠落するという事態を防止することができる。
【0074】
本実施例でも述べたように、ステップS2で一時的に記憶されたリストデータをステップS5でヒストグラム化したら、そのヒストグラム化の対象となったリストデータを削除してもよい(リスト一時保存モード+ヒストグラムモード)し、削除しなくてもよい(リスト連結モード+ヒストグラムモード)。削除する場合(リスト一時保存モード+ヒストグラムモードの場合)には、ステップS2で用いられている記憶媒体(本実施例では一時保存用HDD)の容量を抑えることができる。また、削除しない場合(リスト連結モード+ヒストグラムモードの場合)には、ヒストグラムデータのみならずリストデータも取得することができ、ヒストグラム化することでの問題点を、リストデータで補うことができる。例えば、リストデータに基づいて様々な条件での画像を作成することができ、リストデータから再構成を行うこともできる。
【0075】
トランスミッション型のPET装置1の観点から作用・効果を述べる。上述の構成を備えた本実施例に係るトランスミッション型のPET装置1によれば、本実施例に係る方法を好適に実施することができる。すなわち、核医学用データに関するリストデータ(本実施例ではエミッションデータ)について一括して書き込み・読み出しが可能な記憶領域72aを一時保存用HDD72は複数有している。一方、ヒストグラム処理部74は、リストデータに対してヒストグラム処理を行うことでそのリストデータをヒストグラム化する。したがって、リストデータを一時保存用HDD72の所定の記憶領域72aに書き込んで記憶して、次に新たなリストデータを記憶するとしても、前回に一時的に記憶されたリストデータとは別に、別の記憶領域72aにその新たなリストデータを一時的に書き込むことで一時的に記憶する記憶処理(ステップS2)と、前回に一時的に記憶されたリストデータをヒストグラム化するヒストグラム処理(ステップS5)とを独立・並行して行うことで、少なくともヒストグラムデータの取得が可能で、リストデータの処理内容に制限されずにヒストグラム化が可能となる。仮に書き込み(記憶)に関する転送速度が(ヒストグラム化のための)処理速度よりも速くても、記憶処理とヒストグラム処理とを独立・並行して行っているので、前回に記憶されたリストデータが読み出されずに欠落するという事態を防止することができる。さらに、従来のように、HDDの各記憶領域の全てにリストデータを書き込んで記憶したときに、過去に記憶された全リストデータをHDDから読み出すことをせずに、本実施例では、一時保存用HDD72の記憶領域72aでは一時的に書き込んで一時的に記憶し、次の新たなリストデータの処理内容に制限されずに読み出してヒストグラム処理を行うので、一時保存用HDD72からのリストデータの読み出し、ひいてはヒストグラム処理までの時間を短縮することができる。
【0076】
また、本実施例では、リストデータについて一括して書き込み・読み出しが可能な記憶領域71aを単数有したバッファ71を備え、そのバッファ71で読み出されたリストデータを一時保存用HDD72に書き込んで記憶している。従来のバッファの後段に一時保存用HDD72に接続するだけで、図2に示す本実施例の構成を実現することができる。
【0077】
この発明は、上記実施形態に限られることはなく、下記のように変形実施することができる。
【0078】
(1)上述した実施例では、PET装置とトランスミッション装置とを組み合わせた装置を例に採って説明したが、PET装置単体に適用してもよいし、PET装置とX線CT装置とを組み合わせた装置や、PET装置とMR装置とを組み合わせた装置などに例示されるように、PET装置と他の装置を組み合わせた組み合わせ型PET装置に適用してもよい。また、この発明は、単一の光子を検出して被検体の断層画像を再構成するSPECT(Single Photon Emission CT)装置などにも適用することができる。
【0079】
(2)上述した実施例では、核医学用データに関するリストデータはエミッションデータであったが、トランスミッションデータに例示されるように、核医学用データに関するリストデータであれば特に限定されない。
【0080】
(3)上述した実施例では、リストデータについて一括して書き込み・読み出しが可能な記憶領域を単数有した第2記憶媒体(実施例ではバッファ71)を備えたが必ずしも第2記憶媒体を備える必要はない。第1記憶媒体(実施例では一時保存用HDD72)を直接に接続してもよい。
【符号の説明】
【0081】
1 … トランスミッション型のPET装置
71 … バッファ
72 … 一時保存用HDD
74 … ヒストグラム処理部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射性薬剤が投与された被検体から発生した放射線に基づいた核医学用データを収集する核医学用データ収集方法であって、前記核医学用データに関するリストデータを一時的に記憶する記憶工程と、そのリストデータをヒストグラム化するヒストグラム化工程とを備え、前記記憶工程と前記ヒストグラム化工程とを独立・並行して行うことを特徴とする核医学用データ収集方法。
【請求項2】
請求項1に記載の核医学用データ収集方法において、前記記憶工程で一時的に記憶された前記リストデータを前記ヒストグラム化工程でヒストグラム化したら、そのヒストグラム化の対象となったリストデータを削除することを特徴とする核医学用データ収集方法。
【請求項3】
放射性薬剤が投与された被検体から発生した放射線に基づいて被検体の核医学用データを求める核医学診断装置であって、前記核医学用データに関するリストデータについて一括して書き込み・読み出しが可能な記憶領域を複数有した第1記憶媒体と、前記リストデータに対してヒストグラム処理を行うことでそのリストデータをヒストグラム化するヒストグラム処理手段とを備え、前記リストデータを前記記憶領域に一時的に書き込むことで一時的に記憶する記憶処理と、前記ヒストグラム化するヒストグラム処理とを独立・並行して行うことを特徴とする核医学診断装置。
【請求項4】
請求項3に記載の核医学診断装置において、前記記憶領域に一時的に記憶された前記リストデータを前記ヒストグラム処理手段でヒストグラム化したら、そのヒストグラム化の対象となったリストデータを削除することを特徴とする核医学診断装置。
【請求項5】
請求項3または請求項4に記載の核医学診断装置において、前記リストデータについて一括して書き込み・読み出しが可能な記憶領域を単数有した第2記憶媒体を備え、その第2記憶媒体で読み出された前記リストデータを前記第1記憶媒体に書き込んで記憶することを特徴とする核医学診断装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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