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核酸ハイブリダイゼーション用のマイクロ流路、マイクロチップ、カラム及び装置と核酸ハイブリダイゼーション方法
説明

核酸ハイブリダイゼーション用のマイクロ流路、マイクロチップ、カラム及び装置と核酸ハイブリダイゼーション方法

【課題】肺がんの早期診断マーカーとして応用が期待される、hnRNP−B1遺伝子mRNAを簡便かつ高感度に検出するための方法と装置の提供。
【解決手段】hnRNP−B1遺伝子mRNAが含まれるサンプル液が通流され、hnRNP−B1遺伝子mRNAに相補的な特定の塩基配列を有する捕捉鎖が固相化されたアガロースゲル担体(アガロースゲルビーズ)2が、サンプル液の送液方向下流側に配設されたフィルタ113によって保持された状態で充填された、核酸ハイブリダイゼーション用マイクロ流路11。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本技術は、核酸ハイブリダイゼーション用のマイクロ流路、マイクロチップ、カラム及び装置と核酸ハイブリダイゼーション方法に関する。より詳しくは、がん関連遺伝子であるhnRNP−B1遺伝子mRNAを核酸ハイブリダイゼーションによって検出するためのマイクロ流路等に関する。
【背景技術】
【0002】
hnRNP(heterogeneous nuclear ribonucleo- protein)は、pre−messenger RNAに結合し、その代謝や輸送に関与している。ヒトでは約20種類のhnRNPが同定されている。このうち「hnRNP−B1」は、肺がん組織において過剰発現することが知られ、他のがん組織でも多く発現することが明らかにされている。hnRNP−B1は、これらのがんの初期段階から発現するため、がんの早期診断マーカーとしての応用が検討されている(例えば、非特許文献1参照)。
【0003】
本技術に関連して、近年、核酸間のハイブリダイゼーション反応を流路やキャピラリー(以下、これらを「マイクロ流路」とも称する)内で進行させる技術が提案されている。例えば、特許文献1には、ポリヌクレオチドの増幅を行う部分と、検出用オリゴヌクレオチドが固定されている多孔質層を有するハイブリダイゼーション部分とが、流路によって連結されているポリヌクレオチドの分析用部材が開示されている。また、特許文献2には、毛細管状の流路の内壁にプローブ化合物を固定して、被検ポリヌクレオチドとハイブリダイゼーションを進行させるポリヌクレオチドの分析方法が開示されている。
【0004】
本発明者らは、特許文献3において、マイクロ流路内での目詰まりを防止し、内圧上昇を防止することが可能なマイクロ流路系を提供している。このマイクロ流路系は、標的核酸鎖に相補的な塩基配列を有し、捕捉鎖を多孔質担体に固相化した核酸分離用担体が充填されたものである(当該文献、請求項6参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−130795号公報
【特許文献2】特開2004−121226号公報
【特許文献3】特開2009−268385号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】"Establishment of a new method, transcription-reverse transcription concerted reaction, for detection of plasma hnRNP B1 mRNA, a biomarker of lung cancer." J. Cancer Res. Clin. Oncol., 2008, Vol.134, No.11, p.1191-1197
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述のように、hnRNP−B1はがんの早期診断マーカーとして期待されており、hnRNP−B1遺伝子の発現検出はがんの診断及び治療のため非常に重要である。
【0008】
そこで、本技術は、hnRNP−B1遺伝子mRNAを簡便かつ高感度に検出するための技術を提供することを主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題解決のため、本技術は、hnRNP−B1遺伝子mRNAが含まれるサンプル液が通流され、hnRNP−B1遺伝子mRNAに相補的な配列番号1記載の塩基配列を有する捕捉鎖が固相化されたアガロースゲル担体が、サンプル液の送液方向下流側に配設されたフィルタによって保持された状態で充填された、核酸ハイブリダイゼーション用マイクロ流路を提供する。
このマイクロ流路では、核酸分離用担体として光透過性を有するアガロースゲル担体を充填しているため、励起光や蛍光の遮断や反射、散乱を抑制できる。また、アガロースゲル担体を保持するためのフィルタを送液方向下流側にのみ配設しているため、hnRNP−B1遺伝子mRNAを断片化していない状態で捕捉鎖に接触させることができる。
また、本技術は、上記マイクロ流路が形成され、マイクロ流路へのサンプル液の導入口と、マイクロ流路からのサンプル液の排出口と、が配設された核酸ハイブリダイゼーション用マイクロチップ及びカラムを提供する。
さらに、本技術は、上記マイクロチップと、前記導入口に導入されるサンプル液を加熱する加熱部、及び/又はマイクロ流路内の温度を制御する温度制御部と、を備える核酸ハイブリダイゼーション装置をも提供する。
【0010】
併せて、本技術は、hnRNP−B1遺伝子mRNAに相補的な配列番号1記載の塩基配列を有する捕捉鎖が固相化されたアガロースゲル担体が、サンプル液の送液方向下流側に配設されたフィルタによって保持された状態で充填されたマイクロ流路に、hnRNP−B1遺伝子mRNAを含むサンプル液を通流させる手順と、hnRNP−B1遺伝子mRNAに相補的な配列番号2記載の塩基配列を有する検出鎖を含む溶液を前記マイクロ流路に通流させる手順と、
を少なくとも含む核酸ハイブリダイゼーション方法を提供する。
【発明の効果】
【0011】
本技術により、hnRNP−B1遺伝子mRNAを簡便かつ高感度に検出するための技術が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本技術に係るマイクロ流路が形成された核酸ハイブリダイゼーション用マイクロチップの構成を説明する模式図である。(A)は上面図、(B)は(A)中P−P断面に対応する断面図である。
【図2】アガロースゲルビーズ2表面の物質構成を説明する模式図である。
【図3】本技術に係る核酸ハイブリダイゼーション方法の手順を説明するフローチャートである。
【図4】本技術に係る核酸ハイブリダイゼーション方法の各手順におけるアガロースゲルビーズ2表面の物質構成を説明する模式図である。
【図5】本技術に係る核酸ハイブリダイゼーション装置の構成を説明する模式図である。
【図6】実施例1において核酸ハイブリダイゼーション方法の各手順で測定された蛍光強度値を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本技術を実施するための好適な形態について図面を参照しながら説明する。なお、以下に説明する実施形態は、本技術の代表的な実施形態の一例を示したものであり、これにより本技術の範囲が狭く解釈されることはない。

1.核酸ハイブリダイゼーション用マイクロ流路及びマイクロチップ
(1)核酸ハイブリダイゼーション用マイクロチップ
(2)アガロースゲル担体
2.核酸ハイブリダイゼーション方法
(1)コンディショニング
(2)サンプル液の通流と洗浄
(3)検出鎖溶液の通流と洗浄
(4)検出
3.核酸ハイブリダイゼーション装置

【0014】
1.核酸ハイブリダイゼーション用マイクロ流路及びマイクロチップ
(1)核酸ハイブリダイゼーション用マイクロチップ
図1は、本技術に係る核酸ハイブリダイゼーション用マイクロ流路が形成された核酸ハイブリダイゼーション用マイクロチップの構成を説明する模式図である。図1(A)は上面図、(B)は(A)中P−P断面に対応する断面図である。
【0015】
図中、符号1で示す核酸ハイブリダイゼーション用マイクロチップ(以下、「マイクロチップ」と略記する)には、hnRNP−B1遺伝子mRNAが含まれる溶液(以下、「サンプル液」と称する)が通流されるマイクロ流路11が形成されている。符号111は、マイクロ流路11へのサンプル液の導入口を示す。また、符号112は、マイクロ流路11からのサンプル液の排出口を示す。導入口111から送液されたサンプル液は、マイクロ流路11内を通流して排出口112から排液される。
【0016】
マイクロ流路11内には、hnRNP−B1遺伝子mRNAを分離するための核酸分離用担体としてアガロースゲル担体(以下、「アガロースゲルビーズ」と称する)が充填されている。アガロースゲルビーズ2のサンプル液送液方向下流側には、フィルタ113が配設されている。フィルタ113には細孔が形成されており、この細孔はサンプル液やサンプル液中のhnRNP−B1遺伝子mRNAや塩、界面活性剤等の物質を透過させるが、アガロースゲルビーズ2を通過させないような孔径とされている。これにより、フィルタ113は、マイクロ流路11内に充填されたアガロースゲルビーズ2を保持して、流路内を通流するサンプル液とともにアガロースゲルビーズ2が排出口112から排出されるのを防止する。フィルタ113の細孔径は、アガロースゲルビーズ2の大きさに応じて適宜設計され得るが、例えば0.5〜20μm程度、より好ましくは10μm程度とされる。
【0017】
フィルタ113は、マイクロ流路11内に充填されたアガロースゲルビーズ2の送液方向下流側のみに設けられ、上流側には配されていない。フィルタを上流側に設けた場合、アガロースゲルビーズ2をマイクロ流路11内により安定的に保持することができる。しかし、サンプル液中に含まれるhnRNP−B1遺伝子mRNAがフィルタを通過する際に切断、断片化されてしまうおそれが生じる。hnRNP−B1遺伝子mRNAがアガロースゲルビーズ2と接触する前に断片化してしまうと、アガロースゲルビーズ2に固相化された捕捉鎖との間のハイブリダイゼーション反応の効率が低下する。
【0018】
マイクロチップ1は、マイクロ流路11が成形された基板層1bと、導入口111及び排出口112が形成された基板層1aと、を貼り合せて構成されている。基板層1a,1bの材質は、hnRNP−B1遺伝子mRNAの光学検出のため光透過性を有する材質とされ、例えばガラスや各種プラスチック(PP,PC,COP、PDMS)とされる。基板層1a,1bの材質は、自家蛍光が少なく、波長分散が小さいために、光学誤差の少ない材質を選択することが好ましい。
【0019】
マイクロ流路11等の基板層1a,1bへの成形は、ガラス製基板層のウェットエッチングやドライエッチングによって、またプラスチック製基板層のナノインプリントや射出成型、切削加工によって行うことができる。そして、マイクロ流路11等を形成した基板層1a,1bを貼り合せることで、マイクロチップ1を形成できる。基板層の貼り合せは、例えば、熱融着、接着剤、陽極接合、粘着シートを用いた接合、プラズマ活性化結合、超音波接合等の公知の手法により行うことができる。なお、ここでは、マイクロチップ1にマイクロ流路11を一つ設ける場合を例に説明するが、マイクロ流路11の配設数は2以上としてもよい。
【0020】
(2)アガロースゲル担体
図2は、アガロースゲルビーズ2表面の物質構成を説明する模式図である。ここでは、アガロースゲル担体としてアガロースゲルビーズを用いる場合を例に説明する。
【0021】
アガロースゲルビーズ2の表面には、hnRNP−B1遺伝子mRNAをビーズ上に捕捉するための捕捉鎖21が固相化されている。捕捉鎖21は、hnRNP−B1遺伝子mRNAに対し相補的な配列番号1記載の塩基配列を有し、hnRNP−B1遺伝子mRNAと相互作用して二本鎖(ハイブリッド)を形成する。相補鎖21は、DNAやRNAに加えて、これらのリボース部分の構造を改変して得られる核酸類似体(例えば、LNA(Locked Nucleic Acid))等からなるオリゴマーとされる。
【0022】
【表1】

【0023】
捕捉鎖21の塩基配列の長さ(塩基数)は、hnRNP−B1遺伝子mRNAの塩基配列の少なくとも一部に相補的な塩基配列を有することにより、hnRNP−B1遺伝子mRNAと相互作用して二本鎖を形成し得る限りにおいて、配列番号1よりも長くあるいは短くされてもよい。また、捕捉鎖21は、hnRNP−B1遺伝子mRNAの塩基配列に対し完全に相補的な塩基配列を有している必要はなく、hnRNP−B1遺伝子mRNAとの二本鎖形成が可能な限りにおいて、配列番号1中に1塩基又は2塩基以上のミスマッチ(非相補塩基)を有していてもよい。捕捉鎖21の塩基配列は、hnRNP−B1遺伝子mRNAとの解離温度(Tm)が、後述する検出鎖とhnRNP−B1遺伝子mRNAとの解離温度と同程度となるように設計することが好ましい。
【0024】
アガロースゲルビーズ2表面への捕捉鎖21の固相化は、従来公知の手法によって行うことができ、例えばアビジン−ビオチン結合やカップリング反応(ジアゾカップリング反応など)によって行うことができる。アビジン−ビオチン結合を利用する場合には、アガロースゲルビーズ2表面にストレプトアビジンを固定化し、末端にビオチンを修飾した捕捉鎖21をアビジン−ビオチン間の結合によって固相化する。また、捕捉鎖21の固相化は、本発明者らが上記特許文献3に開示するイオン交換結合による手法を採用してもよい。
【0025】
以上では、本技術に係るマイクロ流路を核酸ハイブリダイゼーション用マイクロチップとして実施する場合を例に説明した。本技術に係るマイクロ流路は上記特許文献3に開示されるような核酸ハイブリダイゼーション用カラムとしても好適に実施可能である。
【0026】
2.核酸ハイブリダイゼーション方法
図3は、本技術に係る核酸ハイブリダイゼーション方法の手順を説明するフローチャートである。また、図4は、本技術に係る核酸ハイブリダイゼーション方法の各手順におけるアガロースゲルビーズ2表面の物質構成を説明する模式図である。
【0027】
(1)コンディショニング
図3、ステップS1では、導入口111からハイブリダイゼーション反応用の緩衝液を導入しマイクロ流路11内に通液させて、アガロースゲルビーズ2のコンディショニングを行う。コンディショニングは、マイクロ流路11内の液体を置換し、脱気するために行われる。ステップS1におけるアガロースゲルビーズ2表面の物質構成を図4(A)に示す。
【0028】
(2)サンプル液の通流と洗浄
図3、ステップS2では、導入口111からサンプル液を導入しマイクロ流路11内に通液させる。サンプル液は、骨髄細胞あるいは末梢血細胞から抽出したmRNA溶液等を用いることができる。本ステップでは、hnRNP−B1遺伝子mRNAに対し相補的な塩基配列を有する捕捉鎖21とhnRNP−B1遺伝子mRNAとが二本鎖を形成し、hnRNP−B1遺伝子mRNAがアガロースゲルビーズ2表面に捕捉される。
【0029】
ステップS2後のアガロースゲルビーズ2表面の物質構成を、図4(B)に示す。図中、符号Tはサンプル液に含まれるhnRNP−B1遺伝子mRNA、符号NはhnRNP−B1遺伝子mRNA以外の核酸鎖(非標的核酸鎖)を示す。
【0030】
サンプル液の導入は、ステップS1で用いたハイブリダイゼーション反応用の緩衝液を液相に用いて行うことが好ましく、より好ましくはアガロースが添加された前記緩衝液を液相に用いて行うことが好ましい。アガロース添加の液相を用いることで、マイクロ流路11内のアガロースゲルビーズ2同士を緩やかに粘着させて安定させることができる。アガロースの液相への添加量は、0.02〜0.2%程度、好ましくは0.05%程度とされる。アガロース添加の液相は、本技術に係る核酸ハイブリダイゼーション方法の各ステップにおいても用いることができる。
【0031】
捕捉鎖21とhnRNP−B1遺伝子mRNAとのハイブリダイゼーション反応は、ハイブリダイゼーション反応用緩衝液の組成(例えば、塩や界面活性剤の濃度)やマイクロ流路11内の温度を調整し、適当なハイブリッド形成条件下において行われる。hnRNP−B1遺伝子mRNAの自己ハイブリッド形成を抑制するため、サンプル液を予め加温してマイクロ流路11内に導入することが有効である。また、hnRNP−B1遺伝子mRNAの捕捉鎖21への非特異的な吸着を抑制するため、サンプル液の通流時のマイクロ流路11内を加温することが有効である。
【0032】
サンプル液の通液後、導入口111から洗浄液を導入しマイクロ流路11内に通液させ、アガロースゲルビーズ2の洗浄を行う。洗浄は、捕捉鎖2とhnRNP−B1遺伝子mRNAとのハイブリッド形成が維持される条件にて行い、非標的核酸鎖と捕捉鎖21に非特異的に吸着したhnRNP−B1遺伝子mRNAとをマイクロ流路11内から除去するために行う。
【0033】
(3)検出鎖溶液の通流と洗浄
続いて、図3、ステップS3では、アガロースゲルビーズ2表面に捕捉されたhnRNP−B1遺伝子mRNAを検出するための検出鎖溶液を導入口111からマイクロ流路11内に導入する。本ステップでは、hnRNP−B1遺伝子mRNAに対し相補的な配列番号2記載の塩基配列を有する検出鎖とhnRNP−B1遺伝子mRNAとが二本鎖を形成し、捕捉鎖21−hnRNP−B1遺伝子mRNA−検出鎖のサンドイッチハイブリッドが形成される。なお、本ステップは、上記のステップS2と同時に行ってもよい。
【0034】
【表2】

【0035】
検出鎖は、捕捉鎖21と同様に、hnRNP−B1遺伝子mRNAに対し相補的な塩基配列を有し、hnRNP−B1遺伝子mRNAと相互作用して二本鎖を形成する。検出鎖も、DNAやRNA、核酸類似体等からなるオリゴマーとされる。また、検出鎖の塩基配列の長さ(塩基数)も、hnRNP−B1遺伝子mRNAの塩基配列の少なくとも一部に相補的な塩基配列を有することにより、hnRNP−B1遺伝子mRNAと相互作用し二本鎖を形成し得る限りにおいて、配列番号2よりも長くあるいは短くされてもよい。さらに、検出鎖は、hnRNP−B1遺伝子mRNAの塩基配列に対し完全に相補的な塩基配列を有している必要はなく、hnRNP−B1遺伝子mRNAとの二本鎖形成が可能な限りにおいて、配列番号2中に1塩基又は2塩基以上のミスマッチを有していてもよい。検出鎖の塩基配列は、hnRNP−B1遺伝子mRNAとの解離温度(Tm)が、捕捉鎖21とhnRNP−B1遺伝子mRNAとの解離温度と同程度となるように設計することが好ましい。
【0036】
検出鎖には、蛍光物質や化学発光物質、放射性物質などの標識物質Lが標識(ラベル)される。次に説明するステップS4において、これらの標識物質Lから発生する蛍光や発光、放射線を検知することで、hnRNP−B1遺伝子mRNAの検出が行われる。
【0037】
ステップS3後のアガロースゲルビーズ2表面の物質構成を、図4(C)に示す。図中、符号Dは検出鎖を示す。検出鎖Dの溶液をマイクロ流路11内に通液すると、捕捉鎖21とハイブリッドを形成するhnRNP−B1遺伝子mRNA(符号T)に対し、さらに検出鎖Dがハイブリダイズする。これにより、hnRNP−B1遺伝子mRNA(符号T)は捕捉鎖21及び検出鎖Dとハイブリッドを形成し、サンドイッチハイブリッド(ダブルハイブリッド)となる。
【0038】
検出鎖とhnRNP−B1遺伝子mRNAとのハイブリダイゼーション反応は、ハイブリダイゼーション反応用緩衝液の組成(例えば、塩や界面活性剤の濃度)やマイクロ流路11内の温度を調整し、適当なハイブリッド形成条件下において行われる。検出鎖のhnRNP−B1遺伝子mRNAへの非特異的な吸着を抑制するため、検出鎖溶液の通流時のマイクロ流路11内を加温することが有効である。
【0039】
検出鎖溶液の通液後、導入口111から洗浄液を導入しマイクロ流路11内に通液させ、アガロースゲルビーズ2の洗浄を行う。洗浄は、検出鎖とhnRNP−B1遺伝子mRNAとのハイブリッド形成が維持される条件にて行い、hnRNP−B1遺伝子mRNAに非特異的に吸着した検出鎖をマイクロ流路11内から除去するために行う。
【0040】
(4)検出
図3、ステップS4では、アガロースゲルビーズ2表面に捕捉されたhnRNP−B1遺伝子mRNAを、検出鎖に標識された標識物質から発生する蛍光や発光、放射線を検知することによって検出する。具体的には、例えば検出鎖に蛍光物質を標識した場合、アガロースゲルビーズ2に励起光を照射し、励起された蛍光物質から発生する蛍光を検知する。蛍光等の強度を測定すれば、蛍光強度等に基づいてhnRNP−B1遺伝子mRNAを定量的に検出することもできる。
【0041】
本技術においては、核酸分離用担体として光透過性を有するアガロースゲルビーズ2を用いている。アガロースゲルビーズ2では、励起光を照射した際に、励起光がビーズによって遮断されたり、反射あるいは散乱されたりすることがないため、これを充填したマイクロ流路11では励起光が深部にまで到達でき、発生する蛍光も強い。また、励起光の戻り光を少なくでき、光検出器のダイナミックレンジを広くとることができる。さらに、アガロースゲルビーズ2では、蛍光物質から発せられる蛍光が担体によって遮断されたり、反射あるいは散乱されたりすることがない。従って、励起光や蛍光が担体によって遮断されるために生じる蛍光検出強度の減衰やバックグラウンドの上昇を排除して、hnRNP−B1遺伝子mRNAを高感度、高精度に検出できる。
【0042】
3.核酸ハイブリダイゼーション装置
図5は、本技術に係る核酸ハイブリダイゼーション装置の構成を説明する模式図である。
【0043】
核酸ハイブリダイゼーション装置は、マクロチップ1と、マイクロチップ1のマイクロ流路11内の温度を制御するヒートブロック103と、マイクロチップ1の導入口111に溶液を送液して排出口112から排液させる送液手段と、マイクロチップ1のマイクロ流路11内に充填されたアガロースゲルビーズ2に励起光を照射し、発生する蛍光を検出するための光学検出手段と、を備えている。
【0044】
ヒートブロック103は、マイクロチップ1のマイクロ流路11内を加熱又は冷却する温度制御部として機能する。ヒートブロック103は、上述のステップS3においてhnRNP−B1遺伝子mRNAの捕捉鎖21への非特異的な吸着を抑制するため、サンプル液の通流時にマイクロ流路11内を加温する。また、ヒートブロック103は、上述のステップS4において検出鎖のhnRNP−B1遺伝子mRNAへの非特異的な吸着を抑制するため、検出鎖溶液の通流時にもマイクロ流路11内を加温する。なお、ヒートブロック103は、通常使用されるヒーターであってよく、ペルチェ素子やジュール・トムソン素子等に置換してもよい。ヒートブロック103の温度は例えば60℃とされる。
【0045】
送液手段は、通常使用されるポンプやシリンジポンプ、チューブやバルブ等によって構成できる。送液手段には、導入口111に導入されるサンプル液を加熱する加熱部としてインラインヒーター102が含まれる。インラインヒーター102は、上述のステップS2においてhnRNP−B1遺伝子mRNAの自己ハイブリッド形成を抑制するため、サンプル液を予め加温してマイクロ流路11内に導入する。インラインヒーター102における加熱(熱変性)後、マイクロ流路11のアガロースゲルビーズ2の充填領域まで送液される間に、サンプル液を急冷させることで、hnRNP−B1遺伝子mRNAの自己ハイブリッド形成を抑制できる。インラインヒーター102の温度は例えば95℃とされる。
【0046】
光学検出手段は、励起光光源と、マイクロ流路11内に充填されたアガロースゲルビーズ2に対して励起光を集光・照射する集光レンズやダイクロイックミラー、バンドパスフィルター等からなる照射系と、励起光の照射によって検出鎖に標識された蛍光物質から発生する蛍光を検出する検出系と、によって構成される。検出系は、例えば、PMT(photo multiplier tube)や、CCDやCMOS素子等のエリア撮像素子等によって構成される。なお、図では、光学検出手段として集光レンズ101のみを示している。また、図では、照射系と検出系を同一の光学経路により構成した場合を示したが、照射系と検出系は別個の光学経路により構成してもよい。
【実施例】
【0047】
<実施例1>
1.hnRNP−B1遺伝子mRNA、捕捉鎖、検出鎖の合成
ヒトhnRNP−B1遺伝子をクローニングし、cDNAからポリ(A)を付加したmRNAを合成した。また、この合成mRNAに相補的な塩基配列を有する捕捉鎖と検出鎖を合成した(「表3」参照)。捕捉鎖と検出鎖は、hnRNP−B1遺伝子の塩基配列において重複しない領域に相補的となるように設計した。捕捉鎖の3´末端はビオチン化した。また、検出鎖の5´末端を蛍光色素(Cy3)により標識した。捕捉鎖及び検出鎖の解離温度(Tm)は、それぞれ71℃及び73℃と計算された。
【0048】
【表3】

【0049】
2.アガロースゲルビーズへの捕捉鎖の固相化
表面にストレプトアビジンが固定されたアガロースゲルビーズ懸濁液(Streptavidin Agarose Resin,Thermo Scientific)と捕捉鎖溶液を混合し、ストレプトアビジン−ビオチン結合によってアガロースゲルビーズ表面に捕捉鎖を固相化した。
【0050】
3.核酸ハイブリダイゼーション用マイクロチップの作製
流路(流路幅0.5 mm,流路深さ0.5 mm,流路長24 mm)を切ったテフロン(登録商標)基板を2枚のアクリル基板で挟んで積層したマイクロチップを用意し、流路下流側に孔径10μmのフィルタを装着した。アガロースゲルビーズを流路に注入し、充填した。流路内のアガロースゲルビーズ充填領域の長さは20mm程度とした。流路に流路切換バルブとシリンジポンプを配管した。
【0051】
4.核酸ハイブリダイゼーション装置の構成
マイクロチップの流路と流路切換バルブとの間に、印加電圧制御により温度調節が可能なインラインヒーターを配管した。マイクロチップは、ヒートブロック上に設置した。
【0052】
緑色LED光源を用意し、Cy3励起用フィルタと組み合わせて、Cy3の励起光源とした。分光器を用意し、Cy3蛍光用フィルタと組み合わせて、Cy3の蛍光検出器とした。2つの光ファイバを同軸にバンドルした光ファイバケーブルを用意し、励起光用光ファイバを励起光源に、受光用光ファイバを蛍光検出器に結線した。光ファイバケーブルの先端に設けた対物レンズを、流路内のアガロースゲルビーズに対向させた。これにより、流路内に充填されたアガロースゲルビーズに励起光を照射し、発生する蛍光を検出する光学系を構成した。なお、励起光の照射スポット径は500μmとした。
【0053】
5.測定
mRNAと検出鎖を0.2% SDS、0.3 M 塩化ナトリウム水溶液に溶解し,サンプル液を調製した。サンプル液350μlには、mRNAと検出鎖がそれぞれ5μg、3 μg含まれた。
【0054】
インラインヒーターを95℃、ヒートブロックを60℃に設定し,0.2% SDS、0.3 M 塩化ナトリウム水溶液を流路に送液し、アガロースゲルビーズのコンディショニングを行い、蛍光測定を行った。送液速度は50μl/分とした。
【0055】
サンプル液300μlを送液し、捕捉鎖とmRNAと検出鎖のサンドイッチハイブリダイゼーションを行った。0.2% SDS、0.3 M 塩化ナトリウム水溶液を2.1ml送液して洗浄し、蛍光測定を行った。
【0056】
次に、ヒートブロックを80℃に昇温し、液相を純水に変更して1.8ml送液することにより、ハイブリッドを解離(変性)させた。変性操作後に蛍光測定を行った。
【0057】
コンディショニング後(A)、サンプル液及び洗浄液の送液後(B)、変性操作後(C)の蛍光測定結果を図6に示す。コンディショニング後(A)に比べて、サンプル液及び洗浄液の送液後(B)の蛍光強度が増大していることから、捕捉鎖とhnRNP−B1遺伝子mRNAと検出鎖のサンドイッチハイブリッドの形成が確認される。また、変性操作後(C)、蛍光強度が減少したことから、上記の蛍光強度の増大が、捕捉鎖とhnRNP−B1遺伝子mRNAと検出鎖の特異的なハイブリダイゼーションによるものであり、非特異的な吸着によるものではないことが確認できた。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本技術に係る核酸ハイブリダイゼーション用のマイクロ流路等によれば、hnRNP−B1遺伝子mRNAを簡便かつ高感度に検出できる。従って、本技術は、肺がん等のがんの診断及び治療を目的としたhnRNP−B1遺伝子の発現検出のため有用である。
【符号の説明】
【0059】
1:マイクロチップ、1a,1b:基板層、101:集光レンズ、102:インラインヒーター、103:ヒートブロック、11:マイクロ流路、111:導入口、112:排出口、113:フィルタ、2:アガロースゲルビーズ、21:捕捉鎖、D:検出鎖、L:標識物質、N:非標的核酸鎖、T:hnRNP−B1遺伝子mRNA

【特許請求の範囲】
【請求項1】
hnRNP−B1遺伝子mRNAが含まれるサンプル液が通流され、
hnRNP−B1遺伝子mRNAに相補的な配列番号1記載の塩基配列を有する捕捉鎖が固相化されたアガロースゲル担体が、サンプル液の送液方向下流側に配設されたフィルタによって保持された状態で充填された、核酸ハイブリダイゼーション用マイクロ流路。
【請求項2】
請求項1記載のマイクロ流路が形成され、
マイクロ流路へのサンプル液の導入口と、マイクロ流路からのサンプル液の排出口と、が配設された核酸ハイブリダイゼーション用マイクロチップ。
【請求項3】
請求項2記載のマイクロチップと、
前記導入口に導入されるサンプル液を加熱する加熱部、及び/又はマイクロ流路内の温度を制御する温度制御部と、を備える核酸ハイブリダイゼーション装置。
【請求項4】
hnRNP−B1遺伝子mRNAに相補的な配列番号1記載の塩基配列を有する捕捉鎖が固相化されたアガロースゲル担体が、サンプル液の送液方向下流側に配設されたフィルタによって保持された状態で充填されたマイクロ流路に、hnRNP−B1遺伝子mRNAを含むサンプル液を通流させる手順と、
hnRNP−B1遺伝子mRNAに相補的な配列番号2記載の塩基配列を有する検出鎖を含む溶液を前記マイクロ流路に通流させる手順と、
を少なくとも含む核酸ハイブリダイゼーション方法。
【請求項5】
請求項1記載のマイクロ流路が形成され、
マイクロ流路へのサンプル液の導入口と、マイクロ流路からのサンプル液の排出口と、が配設された核酸ハイブリダイゼーション用カラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−235709(P2012−235709A)
【公開日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−105210(P2011−105210)
【出願日】平成23年5月10日(2011.5.10)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】