核酸分子の合成を増強するための組成物および方法
【課題】核酸分子、特にGCリッチ核酸分子の合成を増強させるための組成物および方法を提供する。
【解決手段】特定の構造式からなる群より選択される1つ以上の窒素含有有機化合物(それらの塩もしくは誘導体)、好ましくは4−メチルモルホリンN−オキシドまたはベタイン(カルボキシメチルトリメチルアンモニウム)を含む組成物、ならびにプロリンおよびN−アルキルイミダゾール化合物、より好ましくはプロリン、1−メチルイミダゾールもしくは4−メチルイミダゾールからなる群より選択される1つ以上の化合物をさらに含む組成物。増幅、逆転写、配列決定、高忠実度の核酸分子の合成方法。前記方法によって合成される核酸分子、もしくはその誘導体、ならびにこのような核酸分子、誘導体を含むベクターおよび宿主細胞。前記1つ以上の組成物を含む核酸分子の合成、増幅、逆転写または配列決定のためのキット。
【解決手段】特定の構造式からなる群より選択される1つ以上の窒素含有有機化合物(それらの塩もしくは誘導体)、好ましくは4−メチルモルホリンN−オキシドまたはベタイン(カルボキシメチルトリメチルアンモニウム)を含む組成物、ならびにプロリンおよびN−アルキルイミダゾール化合物、より好ましくはプロリン、1−メチルイミダゾールもしくは4−メチルイミダゾールからなる群より選択される1つ以上の化合物をさらに含む組成物。増幅、逆転写、配列決定、高忠実度の核酸分子の合成方法。前記方法によって合成される核酸分子、もしくはその誘導体、ならびにこのような核酸分子、誘導体を含むベクターおよび宿主細胞。前記1つ以上の組成物を含む核酸分子の合成、増幅、逆転写または配列決定のためのキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の背景)
(発明の分野)
本発明は、分子生物学および細胞生物学の分野にある。本発明は、一般に核酸分子、特にGCリッチ核酸鋳型の合成を増強するのに有用な化合物、組成物、および方法に関する。特に、本発明は、式Iおよび式IIからなる群より選択される式を有する1つ以上の化合物を含む組成物を提供する。好ましくは、4−メチルモルホリンN−オキシド、ベタイン(カルボキシメチルトリメチルアンモニウム)、任意のアミノ酸(またはその誘導体)、および/またはN−アルキルイミダゾール(例えば、1−メチルイミダゾールまたは4−メチルイミダゾール)が本発明に従って使用される。好ましい局面において、2つ以上の、3つ以上の、4つ以上などの本発明の化合物が組み合わされ、核酸合成を容易にする。
【0002】
本発明はまた、本発明の1つ以上の化合物、ならびに(i)1つ以上の核酸分子(核酸の鋳型を含む)、(ii)1つ以上のヌクレオチド、(iii)1つ以上のポリメラーゼまたは逆転写酵素、および(iv)1つ以上の緩衝塩からなる群より選択される1つ以上のさらなる成分を含む組成物に関する。
【0003】
本発明のこれらの化合物および組成物は、増幅(特に、PCR)、逆転写、および配列決定による方法を含む、核酸分子の増強された、高忠実度の合成のための方法において使用され得る。本発明はまた、これらの方法によって生成される核酸分子、フラグメントもしくはそれらの誘導体、ならびにこのような核酸分子、フラグメント、もしくは誘導体を含むベクターおよび宿主細胞に関する。本発明はまた、所望のポリペプチドを産生するこのような核酸分子の使用に関する。本発明はまた、本発明の組成物または化合物を含むキットに関する。
【背景技術】
【0004】
(関連分野)
(ゲノムDNA)
生物体、組織または細胞の構造および生理を試験する際、それらの遺伝的内容を決定することがしばしば所望される。生物体の遺伝的骨格(すなわち、ゲノム)は、生物体の体細胞および生殖細胞中に含まれるデオキシリボ核酸(DNA)中のヌクレオチド塩基の二本鎖配列においてコードされる。DNAの特定のセグメント、すなわち遺伝子の遺伝的内容は、この遺伝子が最終的にコードするタンパク質の生成によってのみ発現される。タンパク質を生成するために、DNA二重らせんの1本の鎖の相補的なコピー(「センス」鎖)が、ポリメラーゼ酵素によって生成され、その結果、メッセンジャーリボ核酸(mRNA)の特異的な配列が生じる。次いでこのmRNAは、細胞のタンパク質合成機構によって翻訳され、その結果、この遺伝子によってコードされる特定のタンパク質の生成が生じる。構造的、調節的または未知の機能の役割を果たし得るタンパク質をコードしないゲノム(すなわち、「非コード」領域)においてさらなる配列が存在する。従って、生物体または細胞のゲノムは、介在性非コードDNA配列とともにタンパク質コード遺伝子の完全な収集である。重要なことに、多細胞生物の各体細胞は、病巣感染または癌の場合を除いて、生物体のゲノムDNAの完全な相補体を含み、ここで、異種の1つ以上のDNA配列が特定の細胞のゲノムDNAに挿入され得、そしてその生物体の他の非感染細胞には挿入されないかもしれない。しかし以下に述べるように、ゲノムDNAを構成する遺伝子の発現は、個々の細胞の間で変化し得る。
【0005】
(cDNAおよびcDNAライブラリー)
所定の細胞、組織、または生物内には、無数のmRNA種が存在し、各々が別々のかつ特定のタンパク質をコードする。この事実は、組織または細胞における遺伝子発現を研究することに興味を抱く研究者に対して強力なツールを提供する。mRNA分子は、種々の分子生物学的技法により単離され、そしてさらに操作され得、それにより、細胞、組織、または生物の完全に機能的な遺伝子含有量の評価を可能にする。
【0006】
遺伝子発現の研究に対する1つの一般的なアプローチは、相補的DNA(cDNA)クローンの産生である。この技術において、ある生物由来のmRNA分子は、その生物の細胞または組織の抽出物から単離される。この単離は、しばしば、デオキシチミジン(dT)のオリゴマーがそこに複合体化される固相クロマトグラフィーマトリックス(例えば、セルロースまたはヒドロキシアパタイト)を利用する。全ての真核生物mRNA分子上の3’末端は、一繋ぎのデオキシアデノシン(dA)塩基を含み、そしてdAはdTに結合するので、mRNA分子は、組織または細胞抽出物における他の分子および物質から迅速に精製され得る。これらの精製されたmRNA分子から、cDNAコピーが、酵素リバーストランスクリプターゼ(逆転写酵素)を使用して作製され得る。これにより、一本鎖cDNA分子が産生される。次いで、一本鎖cDNAは、オリジナルのmRNA(従って、このmRNAをコードするオリジナルの二本鎖DNA配列であって、その生物のゲノムに含まれるもの)の完全な二本鎖DNAコピーに、DNAポリメラーゼの作用によって変換され得る。次いで、タンパク質特異的二本鎖cDNAは、プラスミドに挿入され得、これは次いで宿主細菌細胞へと導入される。次いで、細菌細胞は、培養培地において増殖され、目的の遺伝子を含有する(または、多くの場合、発現する)細菌細胞の集団を生じる。
【0007】
この全プロセス(mRNAの単離からcDNAのプラスミドへの挿入から、単離された遺伝子を含有する細菌集団の増殖まで)は、「cDNAクローニング」と呼ばれる。cDNAが多くの異なるmRNAから調製される場合、cDNAの得られるセットは、「cDNAライブラリー」と呼ばれ、供給源の細胞、組織、または生物に存在する異なる機能的(すなわち、発現された)遺伝子を表す。これらのcDNAライブラリーの遺伝子型分析は、それらが由来する生物の構造および機能に関する多くの情報を生み出し得る。
【0008】
(DNA増幅)
サンプル中のDNAの特定の配列のコピー数を増大させる、すなわち「増幅」させるために、研究者らは、多くの増幅技術に依存してきた。一般的に使用される増幅技術は、Mullisおよびその共同研究者らの記載するポリメラーゼ連鎖反応(「PCR」)法(米国特許第4,683,195号;同第4,683,202号;および同第4,800,159号)である。この方法は、増幅されるべきDNA配列上の対立する領域に相補的である「プライマー」配列を使用する。これらのプライマーは、DNA標的サンプルに、モル濃度過剰のヌクレオチド塩基およびDNAポリメラーゼ(例えば、Taqポリメラーゼ)とともに添加され、そしてそのプライマーは、それらの標的に塩基特異的結合相互作用(すなわち、アデニンはチミンに、シトシンはグアニンに結合する)を介して結合する。温度を増大させ、そして低下させるサイクルにその反応混合物を繰り返し通す(標的配列上の2つのDNA鎖の解離、ポリメラーゼによる各鎖の相補コピーの合成、および新たな相補鎖の再アニーリングを可能にするため)ことによって、DNAの特定の配列のコピー数が迅速に増大され得る。
【0009】
標的核酸配列の増幅についての他の技術がまた、開発されている。例えば、Walkerら(米国特許第5,455,166号;EP0684315)は、Strand Displacement Amplification(SDA)と呼ばれる方法を記載し、これは、単一の温度で操作され、そして標的DNA配列の一本鎖フラグメント(これは、次いで、相補DNA(cDNA)鎖を産生するための鋳型として役立つ)を生成する酵素のポリメラーゼ/エンドヌクレアーゼの組み合わせを使用する点で、PCRとは異なる。核酸配列に基づく増幅(Nucleic Acid Sequence−Based Amplification(NASBA))と呼ばれる代替の増幅手順は、Daveyら(米国特許第5,409,818号;EP0329822)に開示される。SDAと同様に、NASBAは、等温反応を使用するが、PCRまたはSDAにおけるようなDNAプライマーではなく、増幅のためにRNAプライマーの使用に基づいている。別の公知の増幅手順には、Berningerら(米国特許第5,194,370号)に記載されるプロモーター連結活性化転写酵素(Promoter Ligation Activated Transcriptase(LAT))が含まれる。
【0010】
(PCRに基づくDNAフィンガープリンティング)
種々の増幅技術が利用可能であるにもかかわらず、ほとんどのDNAフィンガープリンティング法は、増幅についてはPCRに依存し、この技術について利用可能である十分に特徴づけられたプロトコルおよび自動化を利用する。これらのPCRに基づくフィンガープリンティング技術の例には、ランダム増幅化多型DNA(Random Amplified Polymorphic DNA(RAPD))分析(Williams,J.G.K.ら、Nucl.Acids Res.18(22):6531−6535(1990))、任意のプライマーPCR(Arbitrarily Primed PCR)(AP−PCR;Welsh,J.,およびMcClelland,M.,Nucl.Acids Res.18(24):7213−7218(1990))、DNA増幅フィンガープリント法(DNA Amplification Fingerprinting)(DAF;Caetano−Anollesら、Bio/Technology 9:553−557(1991))、およびミニサテライト領域DNAのマイクロサテライトPCRまたは直接的増幅(Directed Amplificatoin of Minisatellite−region DNA)(DAMD;Heath,D.D.ら、Nucl.Acids Res.21(24):5782−5785(1993))が含まれる。これらの方法の全ては、任意に選択されたプライマーを使用するPCRによるランダムDNAフラグメントの増幅に基づく。
【0011】
(DNA配列決定)
一般に、2つの技術は、核酸を配列決定するために伝統的に使用されてきた。その共同開発者(Maxam,A.M.およびGilbert,W.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 74:560−564、1977)にちなんで「マキサムおよびギルバート配列決定法」と呼ばれる第一の方法においては、DNAが放射標識され、4つのサンプルに分割され、そしてDNA中の特定のヌクレオチド塩基を選択的に破壊し、そして損傷部位で分子を切断する化学物質で処理される。得られるフラグメントをゲル電気泳動により明確なバンドへと分離し、そしてそのゲルをX線フィルムに曝露することによって、オリジナルのDNA分子の配列がそのフィルムから読みとられ得る。この技術は、特定の複雑なDNA分子(霊長類ウイルスSV40(Fiers,W.ら、Nature 273:113−120,1978;Reddy,V.B.,ら、Science 200:494−502,1978)、および細菌プラスミドpBR322(Sutcliffe,G.,Cold Spring Harbor Symp. Quant. Biol.43:444−448,1975)を含む)の配列を決定するために使用されてきた。
【0012】
その開発者(Sanger,F.,およびCoulson,A.R.,J.Mol.Biol.94:444,448,1975)にちなんで「サンガー配列決定法」と命名された配列決定のための代替の技術は、より一般的に利用される。この方法は、DNAポリメラーゼのDNA合成活性を使用し、これは、反応終結ジデオキシヌクレオシドトリホスフェート(Sanger,F.,ら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 74:5463−5467,1977)および短いプライマー(そのいずれかが検出可能に標識され得る)の混合物と合わせた場合、4つのジデオキシ塩基の1つで特異的に終結された一連の新たに合成されたDNAフラグメントを生じる。次いで、これらのフラグメントは、ゲル電気泳動によって分離され、そしてその配列が、上記のマキサムおよびギルバート配列決定法について記載したように決定される。4つの別々の反応(各ddNTPについて一回)を行うことにより、かなり複雑なDNA分子の配列でさえ、迅速に決定され得る(Sanger,F.,ら、Nature 265:678−695,1977;Barnes,W.,Meth.Enzymol.152:538−556,1987)。サンガーの配列決定法は、通常、E.coliまたはT7 DNAポリメラーゼを利用する(米国特許第4,795,699号)が、T7ポリメラーゼ変異体を使用するこの技術の最近の改変は、配列決定が、4つ全ての鎖終結ddNTPを異なる濃度で含有する単回の配列決定反応(米国特許第4,962,020号および同第5,173,411号)を使用することによって達成されることを可能にする。反応混合物において反応を害するピロリン酸の蓄積を低減または排除するためのこの技術に対するさらなる改変はまた、記載されている(米国特許第5,498,523号)。核酸分子を配列決定するための他の改変がまた記載されている(Murray,Nucl.Acids.Res.17:8889,1989;およびCraxton,Methods:A Comparison to Methods in Enzymology、3:20−25,1991、を参照のこと)。
【0013】
(限定)
上記のように、鋳型核酸分子の信頼性のある、かつ高忠実度の複製は、増幅、逆転写、および配列決定プロトコルにおける核酸分子の合成における本質的な工程である。しかし、この合成を達成するための標準的な組成およびプロトコルの使用は、しばしば、次の点で非効率的である:それらが核酸鋳型における特定の二次構造(Gerard,G.F.,ら、FOCUS 11(4):60(1989);Myers,T.W.,およびGelfand,D.H.,Biochemistry 30:7661(1991))障壁、および配列(Messer,L.I.,ら、Virol.146:146(1985));Abbotts,J.,ら、J.Biol.Chem.268:10312−10323(1993))障壁で核酸合成を未完のまま終結させる傾向がある。これは、高グアニジン/シトシン含量を有する鋳型配列(すなわち、「GCリッチ」鋳型)およびかなり大きなサイズの鋳型配列(すなわち、約3〜5kb長よりも長い鋳型)について特に本当である。鋳型核酸分子におけるこれらの二次構造および配列の障壁は、ホモポリマーストレッチで頻繁に発生し(Messer.L.I.ら、Virol.146:146(1985));Huber,H.E.,ら、J.Biol.Chem.264:4669−4678(1989);Myers,T.W.,およびGelfand,D.H.,Biochemistry 30:7661(1991))、そして二次構造障壁よりむしろ、配列障壁がより頻繁である(Abbotts,J.,ら、J.Biol.Chem.268:10312−10323(1993))。これらの障壁が克服できる場合には、合成反応における合計のかつ全長の核酸産物の収量が増大し得る。
【0014】
反応混合物のイオン強度または浸透圧、特にNa+およびK+イオンの濃度、の調整が、インビボでと同様に(LeRudulier,D.,ら、Science 224:1064(1984);Buche,A.,ら、J.Biomolec.Struct.Dyn.8(3):601(1990);Marquet,R.,およびHoussier,C.,J.Biomolec.Struct.Dyn.9(1):159(1991);Buche,A.,ら,J.Biomolec.Struct.Dyn.11(1):95(1993);Woodford,K.,ら、Nucl.Acids Res.23(3):539(1995);Flock、S.ら、Biophys.J.70:1456(1996);Flock,S.、ら、Biophys.J.71:1519(1996);EP0821059A2)、インビトロで核酸の二次構造および縮合に影響を及ぼし得ることを、いくつかの報告が示していた。これらの研究のいくつかにおいて、インビトロ核酸コンホメーションおよび安定性が、トレハロースのようなポリサッカライド(Carninci,P.,ら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 95:520−524(1998))、グリセロールおよびジメチルスルホキシドのような特定の共溶媒(Varadaraj,K.,およびSkinner,D.M.,Gene 140:1(1994));グリシンおよびその誘導体(Buche,A.,ら、FEBS Lett.247(2):367(1989);Flock,S.,ら、J.Biomolec.Struct.Dyn.13(1):87(1995);Houssier,C.,ら、Comp.Biochem.Physiol.117A(3):313(1997));βアラニン、アスパラギン、およびシスタミンのような低分子量アミン(Kondakova,N.V.,ら、Mol.Biol.(Moscow)9(5):742(1975);Aslanian,V.M.,ら、Biofizika 29(4):564(1984));ならびに他の窒素含有化合物およびプロリン、ベタイン、およびエクトイン(ectoine)のようなアミノ酸(Rees,W.A.,ら、Biochemistry 32:137−144(1993);WO95/20682;DE4411588C1;DE4411594C1;Mytelka,D.S.,ら、Nucl.Acids Res.24(14):2774(1996);Baskaran,N.,ら、Genome Res.6:633(1996);Weissensteiner,T.,およびLanchbury,J.S.,BioTechniques 21(6):1102(1996);Rajendrakumar,C.S.V.,ら、FEBS Letts.410:201−205(1997);Henke,W.,ら、Nucl.Acids Res.25(19):3957(1997);Hengen,P.N.TIBS 22:225(1997))を含む多くの天然および合成の浸透保護剤化合物の任意のものを含有する緩衝溶液において改善されるべきであることが見出された。ベタインおよびエクトインは、種々の細菌および動物の細胞における天然の浸透圧保護剤である(Chambers,S.T.,ら、J.Bacteriol.169(10):4845(1987);Randall,K.,ら、Biochim.Biophys.Acta 1291(3):189(1996);Randall,K.,ら、Biochem.Cell Biol.74(2):283(1996);Malin,G.,およびLapidot,A.,J.Bacteriol.178(2):385(1996);Gouesbet,G.,ら、J.Bacteriol.178(2):447(1996);Canovas,D.,ら、J.Bacteriol.178(24):7221(1996);Canovas,D.,ら,J.Biol.Chem.272(41):25794−25801(1997)。
【0015】
しかし、当該分野には、核酸分子、特にGCリッチおよび/または比較的大きな核酸分子の合成を増強するのに有用である化合物、組成物、および方法についての必要性が存在する。
【発明の概要】
【0016】
(発明の簡単な要旨)
本発明は、一般に、核酸分子、特にGCリッチ核酸鋳型に由来する核酸分子の合成を増強するのに有用な化合物、組成物、および方法に関する。1つの局面において、本発明は、核酸分子の合成における使用のための、特に増幅、逆転写、および配列決定反応のような鋳型媒介合成のための化合物および組成物に関する。本発明の化合物および組成物は、式Iおよび式IIからなる群から選択される化学式を有する1つ以上の化合物、およびその塩または誘導体を含む。1つの好ましい局面において、本発明において使用される化合物には、任意のアミノ酸、任意のサッカライド(モノサッカライドまたはポリサッカライド)、任意のポリアルコール、またはこれらの塩もしくは誘導体が含まれる。本発明の化合物または組成物には、式Iまたは式IIに示される化学式を有する化合物、またはその塩もしくは誘導体が含まれ、ここで、そのアリール基は、フェニル基、ナフチル基、フェナントリル基、アントラシル基、インデニル基、アズレニル基、ビフェニル基、ビフェニレニル基、およびフルオレニル基からなる群から選択され;ここで、そのハロ基は、フッ素、塩素、臭素、およびヨウ素からなる群から選択され;ここで、そのアルキル基は、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、ペンチル、へキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、およびデシルからなる群から選択され、そして分枝鎖アルキル基であり得;ここで、そのアルケニル基は、エテニル基、プロペニル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基、ノネニル基、およびデシニル基からなる群から選択され、そして分枝鎖アルケニル基であり得;ここで、そのアルケニル基は、エチニル基、プロピニル基、ブチニル基、ペンチニル基、ヘキシニル基、へプチニル基、オクチニル基、ノニニル基、およびデシニル基からなる群から選択され、そして分枝鎖アルキニル基であり得;そしてここで低級アルコキシ(エーテル)基は、上記のアルキル基の1つによって酸素置換されている。本発明はまた、このような化合物の塩および誘導体に関する。本発明の特に好ましい局面において、化合物は、4−メチルモルホリンN−オキシド、ベタイン、カルニチン、エクトイン、プロリン、グリシン、ピペコリン酸、トリメチルアミンNオキシド、N−アルキルイミダゾール化合物(例えば、1−メチルイミダゾールもしくは4−メチルイミダゾール)、平均分子量約50,000〜約500,000ダルトンのポリ(2−エチル−2−オキサゾリン)、平均分子量約100,000〜約200,000ダルトンのポリ(ジアリルジメチルアンモニウムクロライド)、またはその塩もしくは誘導体からなる群から選択される。本発明はまた、本発明の化合物、ならびに(i)熱安定酵素であり得る核酸ポリメラーゼ活性有する1つ以上の酵素、(ii)1つ以上のヌクレオチド、(iii)1つ以上の緩衝化塩、および(iv)1つ以上の核酸分子からなる群から選択される1つ以上のさらなる成分を含む組成物に関する。本発明のこの局面に従う好ましいこのような酵素には、DNAポリメラーゼ(例えば、Taq、Tne、Tma、Pfu、VENTTM、DEEPVENTTM、およびTth DNAポリメラーゼ、ならびにそれらの変異体、改変体、および誘導体)、RNAポリメラーゼ(例えば、SP6、T7、またはT3 RNAポリメラーゼ、ならびにそれらの変異体、改変体、および誘導体)、および逆転写酵素(例えば、M−MLV逆転写酵素、RSV逆転写酵素、AMV逆転写酵素、RAV逆転写酵素、MAV逆転写酵素、およびHIV逆転写酵素、ならびにそれらの変異体、改変体、および誘導体)が含まれ得る。好ましくは、このような逆転写酵素は、RNaseHスペース活性が減少するか、または実質的に減少する。
【0017】
本発明はまた、核酸分子を合成するための方法に関し、この方法は、(a)核酸鋳型(cDNA分子のようなDNA分子またはmRNA分子のようなRNA分子であり得る)と1つ以上の(好ましくは2つ以上、3つ以上、4つ以上、5つ以上等)の本発明の化合物もしくは組成物とを混合して、混合物を形成する工程;および(b)その混合物を、その鋳型の全部もしくは一部と相補的な第一の核酸分子を作製するために十分な条件下でインキュベートする工程、を包含する。本発明のこのような方法には、必要に応じて、1つ以上のさらなる工程(例えば、上記の第一の核酸分子を、この第一の核酸分子の全部または一部に対して相補的な第二の核酸分子を作製するために十分な条件下でインキュベートする工程)が包含され得る。本発明はまた、これらの方法によって作製される核酸分子、これらの核酸分子を含むベクター(発現ベクターであり得る)、ならびにこれらの核酸分子もしくはベクターを含む宿主細胞に関する。本発明はまた、ポリペプチドを産生する方法に関し、この方法は、上記の宿主細胞を、この宿主による上記ポリペプチドの産生に都合のよい条件下で培養する工程、およびそのポリペプチドを単離する工程を包含する。本発明はまた、このような方法によって産生されるポリペプチドに関する。
【0018】
本発明はまた、核酸分子を増幅するための方法に関し、この方法は、(a)核酸鋳型を1つ以上の本発明の化合物もしくは組成物と混合して、混合物を形成する工程、および(b)その混合物を、その鋳型の全部もしくは一部に相補的な核酸分子を増幅するために十分な条件下でインキュベートする工程、を包含する。より詳細には、本発明は、DNA分子を増幅する方法に関し、この方法は、以下:
(a)第一および第二のプライマーを提供する工程であって、この第一のプライマーは、上記DNA分子の上記第一鎖の3’末端またはその付近の配列に対して相補的であり、そして上記第二のプライマーは、上記DNA分子の上記第二鎖の3’末端またはその付近の配列に対して相補的である、工程;
(b)上記第一のプライマーを上記第一鎖に、そして上記第二のプライマーを上記第二鎖に対して、本発明の1つ以上の化合物もしくは組成物の存在下で、この第一鎖に対して相補的な第3のDNA分子およびこの第二鎖に対して相補的な第4のDNAが合成されるような条件下でハイブリダイズする工程;
(c)上記第一鎖および第三鎖、そして上記第二鎖および第四鎖を変性させる工程;ならびに
(d)工程(a)〜(c)を一回以上繰り返す工程、
を包含する。
【0019】
このような条件は、一つ以上のポリメラーゼ、一つ以上のヌクレオチドおよび/または一つ以上の緩衝用塩の存在下でのインキュベーションを包含し得る。本発明はまた、これらの方法によって増幅された核酸分子に関する。
【0020】
本発明はまた、以下の工程:(a)配列決定されるべき核酸分子を、1つ以上のプライマー、本発明の1つ以上の化合物または組成物、1つ以上のヌクレオチド、および1つ以上の終結因子と混合させ、混合物を形成する工程;(b)配列決定されるべき分子の全部もしくは一部に対して相補的な分子の集団を合成するために十分な条件下でその混合物をインキュベートする工程;ならびに(c)配列決定されるべき分子の全部および一部のヌクレオチド配列を決定するためにその集団を分離する工程、を包含する核酸分子を配列決定するための方法に関する。本発明は、より詳細には、DNA分子を配列決定する方法に関し、その方法は、以下の工程を包含する:(a)第一のDNA分子にプライマーをハイブリダイズする工程;(b)上記工程(a)の分子を、デオキシリボヌクレオシド三リン酸、本発明の1つ以上の化合物または組成物、および1つ以上のターミネーターヌクレオチドと接触させる工程;(c)工程(b)の混合物を、上記第一のDNA分子に相補的なDNA分子のランダム集団と合成するために十分な条件下でインキュベートする工程であって、ここで、この合成されたDNA分子が、この第一のDNA分子よりも長さが短く、そしてこの合成されたDNA分子が、その3’末端のターミネーターヌクレオチドを含む、工程;ならびに(d)上記合成されたDNA分子を、サイズにより分離することにより、上記第一のDNA分子の少なくとも上記ヌクレオチド配列の一部が決定され得る工程。
【0021】
このようなターミネーターヌクレオチドには、ddNTP、ddATP、ddGTP、ddITP、もしくはddCTPが含まれる。このような条件には、1つ以上のDNAポリメラーゼおよび/または緩衝用塩の存在下でのインキュベーションが含まれ得る。
【0022】
本発明はまた、核酸分子の合成における使用のためのキットに関し、そのキットは、1つ以上の本発明の化合物または組成物を含む1つ以上の容器を含む。本発明のこれらのキットは、必要に応じて、1つ以上のヌクレオチド、1つ以上のポリメラーゼ、および/または逆転写酵素、適切な緩衝液、1つ以上のプライマー、および1つ以上の終結因子(例えば、1つ以上のジデオキシヌクレオチド)からなる群から選択される1つ以上のさらなる構成要素を含み得る。
【0023】
本発明の他の好ましい実施態様は、以下の図面および本発明の説明、ならびに請求の範囲に照らして、当業者に明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】図1は、指示した濃度のプロリン、1−メチルイミダゾール、4−メチルイミダゾール、ベタインの存在下、またはこれらの共溶媒のいずれも存在しない下で増幅したPCR反応混合物のサンプルの、エチジウムブロミド染色したアガロースゲルの写真である。M:DNAサイズマーカーである。
【図2】図2は、指示した濃度のベタインまたはMMNOの存在下で増幅したPCR反応混合物のサンプルの、エチジウムブロミド染色したアガロースゲルの写真である。M:DNAサイズマーカー。
【図3】図3は、種々の化合物の組合せの存在下または非存在下で、3つの異なるPseudomonas aeruginosaアンプリコン(AprD、AprEおよびAprF)の増幅のサンプルのエチジウムブロミド染色したアガロースゲルの写真である。レーン1:1Mベタイン;レーン2 1M TMANO;レーン3−7:2M(レーン3)、1M(レーン4)、0.5M(レーン6)、0.4M(レーン6)、または0.2M(レーン7)のMMNO;レーン8:化合物なしのコントロール、M:DNAサイズマーカー。
【図4】図4は、指示した濃度のベタイン、MMNOまたはプロリンの存在または非存在下で、異なる反応緩衝液条件の下でのp53エキソン10のPCR増幅のサンプルの臭化エチジウム染色アガロースゲルの写真である。
【図5】図5は、指示した濃度のベタイン、MMNOまたはプロリンの存在または非存在下で、異なる反応緩衝液条件の下でのDra DNAポリメラーゼIのPCR増幅のサンプルの臭化エチジウム染色アガロースゲルの写真である。
【図6】図6は、異なるの比でのMMNOおよびプロリンの混合物の存在または非存在下で、あるいはベタイン、MMNOまたはプロリン単独の存在下で、異なる反応緩衝液条件(Mg++濃度)の下でのp53エキソン10のPCR増幅のサンプルの臭化エチジウム染色アガロースゲルの写真である。
【図7】図7は、異なるの比でのMMNOおよびプロリンの混合物の存在または非存在下で、あるいはベタイン、MMNOまたはプロリン単独の存在下で、異なる反応緩衝液条件(Mg++濃度)の下でのDra DNAポリメラーゼIのPCR増幅のサンプルの臭化エチジウム染色アガロースゲルの写真である。
【図8】図8は、GCリッチなP32D9テンプレートのPCR増幅のサンプルの臭化エチジウム染色アガロースゲルの写真であり、これは、MMNOおよびプロリンの混合物、またはベタインの、最適アニーリング温度に対する効果を示す。
【図9】図9は、ベタインまたはMMNOとプロリンとの1:1の混合物のいずれかの種々の濃度の存在下での、K562細胞株のゲノムDNA由来の脆弱X遺伝子座のPCR増幅のサンプルの臭化エチジウム染色アガロースゲルの写真である。レーン1:共溶媒なし;レーン2:0.25M;レーン3:0.5M;レーン4:0.75M、レーン5:1M、レーン6:1.25M、レーン7:1.5M、レーン8:1.75M、レーン9:2M。M:DNAサイズマーカー。
【図10】図10は、異なる濃度のMMNOとプロリンとの1;1混合物の存在下または非存在下での、2つの異なる長GCリッチアデノウイルスDNAフラグメントのPCR増幅のサンプルの臭化エチジウム染色アガロースゲルの写真である。レーン1:共溶媒なし;レーン2:0.25M;レーン3:0.5M;レーン4:1.0M。M:DNAサイズマーカー。
【図11】図11は、MMNOとプロリンとの1;1混合物(レーンA)、ベタイン(レーンB)、L−カルニチン(レーンC)、またはDL−ピペコリン酸(レーンD)の種々の濃度の存在下または非存在下でのK562ゲノムDNAのGCリッチフラグメントのPCR増幅のサンプルの臭化エチジウム染色アガロースゲルの写真である。レーン1:共溶媒なし;レーン2:0.25M;レーン3:0.5M;レーン4:1M;レーン5:1.5M;レーン6:2M。M:DNAサイズマーカー。
【図12】図12は、ベタイン(レーンA)またはエクトイン(ectoin)(レーンB)の種々の濃度の存在下または非存在下でのK562ゲノムDNAのGCリッチフラグメントのPCR増幅のサンプルの臭化エチジウム染色アガロースゲルの写真である。レーン1:共溶媒なし;レーン2:0.25M;レーン3:0.5M;レーン4:1M;レーン5:1.5M;レーン6:2M。M:DNAサイズマーカー。
【図13】図13は、本発明に従って使用され得る多数の例示的な化合物の構造を示す。
【発明を実施するための形態】
【0025】
(発明の詳細な説明)
(定義)
以下の説明において、組換えDNA技術において使用される多数の用語が広汎に利用される。そのような用語によって与えられる範囲を含め、発明の詳細な説明および請求の範囲のより明確かつ一貫した理解を提供するために、以下の定義が提供される。
【0026】
ライブラリー。本明細書において使用される場合、用語「ライブラリー」または「核酸ライブラリー」とは、1つの生物のDNA内容物の全部または有意な部分を代表する1セットの核酸分子(環状または直鎖状)(「ゲノムライブラリー」)または細胞、組織、器官もしくは生物において発現された遺伝子の全部または有意な部分を代表する1セットの核酸分子(「cDNAライブラリー」)を意味する。そのようなライブラリーは、1以上のベクター中に含まれていても、含まれていなくてもよい。
【0027】
ベクター。本明細書において使用される場合、「ベクター」とは、プラスミド、コスミド、ファージミドまたはファージDNAもしくは他のDNA分子であって、宿主中で自立複製し得、そして1つまたは少数の制限エンドヌクレアーゼ認識部位によって特徴付けられるものである。この認識部位では、このようなDNA配列では、そのベクターの本質的な生物学的機能を喪失することなく決定可能な様式で切断され得、そしてそこに、DNAが挿入されてその複製およびクローニングをなされ得る。そのベクターは、そのベクターを用いて形質転換された細胞の同定において使用するために適切なマーカーをさらに含み得る。例えば、マーカーとしては、テトラサイクリン耐性またはアンピシリン耐性が挙げられるがそれらに限定されない。
【0028】
プライマー。本明細書において使用される場合、「プライマー」とは、一本鎖のオリゴヌクレオチドであって、DNA分子の複製または重合化の間のヌクレオチドモノマーの共有結合によって伸長されるものをいう。
【0029】
テンプレート。用語「テンプレート」とは、本明細書において使用される場合、二本鎖または一本鎖の核酸分子であって、増幅され、合成され、または配列決定されるべきものをいう。二本鎖分子の場合において、その鎖を変性させて第一鎖および第二鎖を形成することは、好ましくは、これらの分子が増幅され得、合成され得、または配列決定され得る前に行われるか、あるいは、二本鎖分子は、直接テンプレートとして使用され得る。一本鎖テンプレートについて、そのテンプレートの一部と相補的なプライマーは、適切な条件下でハイブリダイズし、次いで1つ以上のポリメラーゼがそのテンプレートの全部または一部に相補的な核酸分子を合成し得る。あるいは、二本鎖テンプレートについて、1つ以上のプロモーター(例えば、SP6プロモーター、T7プロモーターまたはT3プロモーター)を、1つ以上のポリメラーゼと組み合せて使用して、そのテンプレートの全部または一部と相補的な核酸分子を作製し得る。本発明に従って、新たに合成された分子は、もとのテンプレートと等しい長さかまたはそれより短くあり得る。
【0030】
取り込み。用語「取り込み(む)」とは、本明細書において使用される場合、DNA分子および/またはRNA分子あるいはプライマーの一部となることを意味する。
【0031】
増幅。本明細書において使用される場合、「増幅」とは、ポリメラーゼの使用によってヌクレオチド配列のコピー数を増加させるための任意のインビトロ方法をいう。核酸増幅によって、DNA分子および/またはRNA分子あるいはプライマーへのヌクレオチドの組込みがおこり、それによって、テンプレートと相補的な新しい分子が形成される。形成された核酸分子およびそのテンプレートは、さらなる核酸分子を合成するためのテンプレートとして使用され得る。本明細書において使用される場合、1つの増幅反応は、多数回の複製からなり得る。DNA増幅反応としては、例えば、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)が挙げられる。1つのPCR反応は、5〜100の「サイクル」のDNA分子の変性および合成からなり得る。
【0032】
オリゴヌクレオチド。「オリゴヌクレオチド」とは、1つのヌクレオチドのデオキシリボースまたはリボースの3’位と、隣接するヌクレオチドのデオキシリボースまたはリボースの5’位との間のホスホジエステル結合によって結合されるヌクレオチドの共有結合配列を含む、合成または天然の分子をいう。ヌクレオチド。本明細書において使用される場合、「ヌクレオチド」とは、塩基−糖−リン酸の組合せをいう。ヌクレオチドは、核酸配列のモノマー単位(DNAおよびRNA)である。用語ヌクレオチドには、リボヌクレオシド三リン酸(ATP、UTP、CTP、GTPおよびデオキシリボヌクレオシド三リン酸(例えば、dATP、dCTP、dITP、dUTP、dGTP、dTTPまたはそれらの誘導体)が含まれる。そのような誘導体としては、例えば、[αS]dATP、7−デアザ−dGTPおよび7−デアザ−dATPおよびそれらを含む核酸分子に対してヌクレアーゼ耐性を与えるヌクレオチド誘導体が含まれる。用語ヌクレオチドはまた、本明細書において使用される場合、ジデオキシリボヌクレオシド三リン酸(ddNTP)およびその誘導体という。ジデオキシリボヌクレオシド三リン酸の例示的な例としては、ddATP、ddCTP、ddGTP、ddITPおよびddTTPが含まれるがそれらに限定されない。本発明に従って、「ヌクレオチド」は、標識されていていなくても、または周知技術によって検出可能に標識されていてもよい。検出可能な標識としては、例えば、放射性同位体、蛍光標識、化学発光標識、生物発光標識および酵素標識が挙げられる。
【0033】
ハイブリダイゼーション。用語「ハイブリダイゼーション」および「ハイブリダイズ(する)」とは、2つの相補的な一本鎖核酸分子(RNAおよび/またはDNA)の塩基対が二本鎖分子を与えることをいう。本明細書において使用される場合、2つの核酸分子は、塩基対が完全に相補的でなくても、ハイブリダイズし得る。従って、ミスマッチの塩基は、当該分野で周知な適切な条件が使用される場合2つの核酸分子のハイブリダイゼーションを妨害しない。
【0034】
単位。用語「単位」は、本明細書において使用される場合、酵素の活性をいう。例えば、熱耐性DNAポリメラーゼに言及する場合、1単位の活性は、30分間に、標準的なプライムされたDNA合成条件下で、10ナノモルのdNTPを酸不溶性材料(すなわち、DNAまたはRNA)へ取り込む酵素の量をいう。
【0035】
本明細書において使用されるような組換えDNA技術ならびに分子生物学および細胞生物学の分野で使用される他の用語は、適用される技術分野の当業者によって一般的に理解される。
【0036】
(概説)
本発明は、一般に、核酸分子、特に、GCリッチな核酸テンプレートの合成を増強するにおいて有用な化合物、組成物および方法に関する。特に、本発明は、以下の式Iおよび式IIからなる群より選択される式を有する化合物および1つ以上の化合物を含む組成物、またはその塩もしくは誘導体を提供する。好ましくは、少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、少なくとも5つ、少なくとも6つなどのこのような化合物または組成物が、本発明に従って使用される。最も好ましくは、2〜6、2〜5、2〜4、または2〜3のこのような化合物または組成物が使用される。本発明の化合物または組成物は、塩の形態で存在し得る。
式I
【0037】
【化6】
ここで、Aは、
【0038】
【化7】
であり、ここで、Xは、
【0039】
【化8】
であり、ここでZは、Yと同じであっても、異なっていてもよく、
ここで、YおよびZは各々独立して、−OH、−NH2、−SH、PO3H、−CO2H、−SO3Hおよび水素からなる群より選択され、fは、0〜2の整数であり、mは0〜20の整数であり、そしてeは、0〜2の整数であり;
ここで、R4、R5およびR6は、同一であっても、異なっていてもよく、そして独立して、水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アミノ、チオール、メルカプタン、ハロ、ニトロ、ニトリロ、ヒドロキシ、ヒドロキシアルキル、ヒドロキシアリール、ホスファト、アルコキシ、オキシド、エーテル、エステル(アルカノイルオキシ)、カルボキシ、カルボニル、スルホニル、スルホン基およびアミド基からなる群より選択され、そしてdは、0〜2の整数であり;
ここで、a、bおよびcは、独立して0〜1の整数であり、ただし、a、bおよびcの2つ以下が0であり;
ここで、R1、R2およびR3は、同じであっても、異なっていてもよく、そして独立して、以下からなる群より選択され:
a)=O
b)(W)g
|
−(CR7)n;
ここで、R7およびWは各々、同じであっても、異なっていてもよく、そして独立して、水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アミノ、チオール、メルカプタン、ハロ、ニトロ、ニトリロ、ヒドロキシ、ヒドロキシアルキル、ヒドロキシアリール、ホスファト、アルコキシ、オキシド、エーテル、エステル(アルカノイルオキシ)、カルボキシ、カルボニル、スルホニル、スルホン基およびアミド基からなる群より選択され;gは、0〜2の整数であり;そしてnは0〜20の整数であり;そして
ここで、qは、1〜100,000であり得る。
【0040】
式Iの化合物において、q=1である場合、式Iの化合物は、モノマーと考えられ得、そしてq=2〜100,000である場合、式Iの化合物は、2〜100,000のモノマーから構成されるマルチマーまたはポリマーであると考えられ得る。このモノマーは、各々が同じ構造を有していても、異なる構造を有していてもよく、そして1つ以上の基を通じて1つ以上の結合によって結合されて式Iの化合物のマルチマー(例えば、ポリマー)を形成し得る。
【0041】
好ましい局面において、a、bまたはcが0である場合、対応するR基は、電子対である。
【0042】
別の好ましい実施態様において、q=1であり、そして(R1)a、(R2)bおよび(R3)cが=Oであり、そして他の2つのR基が同じであるかまたは異なっており、そして独立して水素、メチル、エチルおよびプロピルからなる群より選択される場合、Aは、メチルでも、エチルでも、プロピルでもない。
式II
【0043】
【化9】
ここで、式IIは、飽和であるか、または不飽和であり;
ここで、qは、1〜100,000であり得;
ここで、Xは、N、C、O、PおよびSからなる群より選択され;
Yは、O、N、S、P、C、−O−NH−、−O−CH2−O−、−O−S−、−O−CH2−S−、−O−CH2−NH−、−NH−S−、−NH−CH2−NH−、−O−CH(CH3)−NH−、−NH−CH(CH3)−NH−、−O−CH(CH3)−O−、−NH−C(CH3)2−NH−、−NH−CH2−S−、および他のメルカプタン、ホスファト、アルコキシ、オキシド、エーテル、エステル(アルカノイルオキシ)、カルボキシ、スルホニル、スルホン基、およびアミド基からなる群より選択され;そして
ここで、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7およびR8は、同一であっても、異なっていてもよく、そして独立して、水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アミノ、チオール、メルカプタン、ハロ、ニトロ、ニトリロ、ヒドロキシ、ヒドロキシアルキル、ヒドロキシアリール、ホスファト、アルコキシ、オキシド、エーテル、エステル(アルカノイルオキシ)、カルボキシ、スルホニル、スルホン基およびアミド基からなる群より選択され;
ここで、a、b、c、d、e、m、n、およびoは、整数であって、同じであっても、異なっていてもよく、そして独立して、a、b、c、dおよびeについては、0〜2から選択され、そしてm、nおよびoについては、0〜5から選択される。
【0044】
式IIの化合物において、q=1である場合、式IIの化合物は、モノマーと考えられ得、そしてq=2〜100,000である場合、式IIの化合物は、2〜100,000のモノマーから構成されるマルチマーまたはポリマーであると考えられ得る。このモノマーは、各々が同じ構造を有していても、異なる構造を有していてもよく、そして1つ以上の基を通じて1つ以上の結合によって結合されて式IIの化合物のマルチマー(例えば、ポリマー)を形成し得る。
【0045】
本発明の1つの好ましい局面において、Yおよび/またはZはNであり、そしてm、nおよびoは1である。別の好ましい局面において、Yおよび/またはXは、Nおよび/またはOであり、そしてmおよびnは、1であり、そしてoは2である。好ましくは、a、b、c、dおよび/またはeは0である場合、対応するR基は、電子対であるか、または、不飽和構造の形成に関与する。
【0046】
式Iおよび式IIの化合物について:
代表的なC6-14アリール基は、以下を含むがそれらに限定されない:フェニル基、ベンジル基、メチルインドリル基、ナフチル基、フェナントリル基、アントラシル基、インデニル基、アズレニル基、ビフェニル基、ビフェニレニル基、およびフルオレニル基;
代表的なハロ基は、以下を含むがそれらに限定されない:フッ素、塩素、臭素およびヨウ素;
代表的なC1-15アルキル基は、以下を含むがそれらに限定されない:メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、へプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ならびに分枝鎖アルキル基;
代表的なC2-15アルケニル基は、以下を含むがそれらに限定されない:エテニル基、プロペニル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、へプテニル基、オクテニル基、ノネニル基、デセニル基など、ならびに分枝鎖アルケニル基;
代表的なC2-15アルキニル基は、以下を含む:エチニル基、プロピニル基、ブチニル基、ペンチニル基、ヘキシニル基、へプチニル基、オクチニル基、ノニニル基、デシニル基など、ならびに分枝鎖アルキニル基;
代表的な低級アルコキシ(エーテル)基は、上記において言及したC1-4アルキル基の1つによる酸素置換物を含み;そして
代表的なC2-6アルカノイルオキシ基は、アセトキシ、プロピオニルオキシ、ブタノイルオキシ、ペンタノイルオキシ、ヘキサノイルオキシおよびそれらの分枝鎖異性体を含む。
【0047】
本発明に従って使用され得る化合物は、糖類、アミノ酸および多価アルコールならびにそれらの誘導体を含む。糖類の例は、オリゴ糖、および単糖類(例えば、トレハロース、マルトース、グルコース、スクロース、ラクトース、キシロビオース、アガロビオース、セロビオース、レバンビオース(levanbiose)、キトビオース(quitobiose)、2−β−グルクロノシルグルクロン酸(2−β−glucuronosylglucuronic acid)、アロース、アルトロース、ガラクトース、グロース、イドース、マンノース、タロース、ソルビトール、レブロース、キシリトールおよびアラビトール)を含むが、これらに限定されない。
【0048】
このようなアミノ酸は、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、トリプトファン、メチオニン、グリシン、セリン、スレオニン、システイン、チロシン、アスパラギン、グルタミン、アスパラギン酸、グルタミン酸、リジン、アルギニン、およびヒスチジン、ならびにそれらの誘導体を含み得るが、それらに限定されない。アミノ酸のD型およびL型、ならびに非タンパク質アミノ酸の両方が、本発明にしたがって使用され得る。例としては、N−(3’−オン−5’−メチル)−ヘキシルアラニン、ロイシンベタイン、N−メチルイソロイシン、およびγ−グルタミルロイシンが挙げられる。
【0049】
多価アルコールの例としては、グリセロール、エチレングリコール、ポリエチレングリコールなどを含むが、これらに限定されない。
【0050】
本発明の好ましい化合物は、4−メチルモルホリン N−オキシド(MMNO)、およびN−アルキルイミダゾール化合物(例えば、1−メチルイミダゾール、2−メチルイミダゾール、および4−メチルイミダゾール、ベタイン(カルボキシメチル−トリメチルアンモニウム)、タウリン、エクトイン、ピペコリン酸(pipecolinic acid)、ピペコリン酸、2−モルフォリノエタンスルホン酸、ピリジン N−オキシド、N,N−ジメチルオクチルアミン N−オキシド、3−メチルイソキサゾール−5(4H)−オンモルホリン塩、グリシン、ソルコシン(sorcosine)、N−N−ジメチルグリシン、N−メチル−プロリン、4−ヒドロキシ−プロリン、1−メチル−2−ピロールカルボン酸、1−メチルインドール−2−カルボン酸、2−ピラジンカルボン酸、5−メチル−2−ピラジンカルボン酸、4−メチル−5−イミダゾール−カルボキシアルデヒド(carboxoaldehyde)、1−メチルピロール−2−カルボン酸、硝酸1−エチル−3−メチルイミダゾリウム(methylimidazolium)、エチルアゼチジン−1−プロピオネート、N,N−ジメチル−フェニルアラニン、S−カルボキシメチル−システイン、2−イミダゾールカルボキシアルデヒド(imidazolecarboxaldehyde)、4−イミダゾール酢酸、4−イミダゾールカルボン酸、4,5−イミダゾールジカルボン酸(imidazdedicarboxylic acid)、カルニチンNe−アセチル−b−リジン、γ−アミノ酪酸、トランス−4−ヒドロキシスタキドリン、Nα−カルバモイル−L−グルタミン l−アミド、コリン、ジメチルテチン、(スルホベタインおよびジメチルアセトテチン、ならびにそれらの誘導体)、N−アセチルグルタミニルグルタミンアミド、ジメチルスルホニオプロピオネート(dimethylsulfoniopropionate)、エクトイン(1,4,5,6−テトラヒドロ−2メチル−4−ピリミジン(pirymidine)カルボン酸)、ヒドロキシエクトイン、グルタミン酸、β−グルタミン(glutammine)、オクトピン、サルコシン、ならびにトリメチルアミン N−オキシド(TMAO)、平均分子量が約50,000〜約500,000ダルトンのポリ(2−エチル−2−オキサゾリン)、平均分子量が約100,000〜約200,000ダルトンのポリ(ジアリルジメチル塩化アンモニウム)ならびに他のアミノ酸およびその誘導体を含み得るが、それに限定されない。
【0051】
さらに好ましい化合物には、式IおよびIIの化合物の誘導体および塩を含む。例えば、式Iまたは式IIの化合物が、カルボキシル(C=O)基を含む場合、本発明の化合物は、化学合成の慣用的な方法(例えば、カルボキシル含有化合物とアルコールまたはアミノ化合物を凝集させることによって)を使用して調製され得るカルボキシル基のエステルおよびアミドを含む。本発明のこの側面に従った有用なアルコールの例は、C1-6アルコールおよびC7-12アラルカノール(aralkanol)化合物を含み、これらはメタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、およびそれらの分枝鎖アイソマーを含むが、これに限定されない。本発明のこの局面に従った有用なアミノ化合物の例は、C1-6アミノ化合物およびC7-12アラルクアミノ(aralkamino)化合物を含み、これらはメチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、ペンチルアミン、ヘキシルアミンおよびそれらの分枝鎖アイソマーを含むが、これに限定されない。式Iまたは式IIの化合物が、ヒドロキシ(−OH)基を含む場合、本発明の化合物は、ヒドロキシ含有化合物と、例えば、C1-6アルカン酸、C6-12アラルカン酸(aralkanoic acid)またはC2-12ジアルカン酸またはその無水物(例えば、蟻酸、酢酸、プロピオン酸、ブタン酸、ペンタン酸、ヘキサン酸およびそれらの分枝鎖アイソマー、ならびにコハク酸、無水コハク酸、フマル酸、マレイン酸など)との凝集により調製され得るそのような化合物のエステルを含む。本発明に従って調製され、そして使用され得る式Iおよび式IIの化合物の他の誘導体は、本明細書に含まれる教示および当該分野の知識を考慮すると当業者に明らかである。
【0052】
式IおよびIIの化合物の塩もまた本発明の範囲内に含まれる。式IおよびIIの化合物の酸を付加した塩は、慣用的な化学合成の方法(例えば、塩酸、フマル酸、マレイン酸、コハク酸、酢酸、クエン酸、酒石酸、カルボン酸、リン酸、シュウ酸などを含む酸の溶液との特定の化合物溶液の混合による)により形成され得る。式IおよびIIの化合物の塩基性塩は、化学合成の慣用的な方法(例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化コリン、炭酸ソーダ、Trisなどのような塩基性の溶液との特定の化合物溶液の混合による)を使用して形成され得る。本発明に従って調製されそして使用され得る式IおよびIIの化合物の他の塩は、本明細書中に含まれる教示および当該分野の知識を考慮すると当業者に明らかである。
【0053】
上記の化合物および組成物は、単独でまたはそれらの任意の組み合わせで使用され得る。好ましくは、少なくとも2つの組み合わせ、少なくとも3つの組み合わせ、少なくとも4つの組み合わせ、少なくとも5つの組み合わせなどが、本発明に従って使用される。好ましい局面において、2〜10個、2〜9個、2〜8個、2〜7個、2〜6個、2〜5個、2〜4個、および2〜3個のこのような化合物が、使用される。好ましい局面において、本発明は、上記の化合物の任意の組み合わせを混合することにより得られる組成物に関する。このような化合物と共に混合する場合、特定の相互作用が生じ得、これは、混合されている化合物の1つ以上の構造を変化し得、そして新規なまたは異なる化合物を生じ得る。
【0054】
これらの組成物は、核酸分子の増強された、高性能な合成のための方法に使用され得、これらは、増幅方法(特にPCR)、逆転写方法、および配列決定方法を含む。本発明はまた、これらの方法により生成される核酸分子、それらのフラグメントまたはそれらの誘導体、およびこのような核酸分子、フラグメントまたは誘導体を含むベクターおよび宿主細胞に関する。本発明はまた、所望のポリペプチドを生成するためのこのような核酸分子の使用に関する。本発明はまた、本発明の化合物または組成物を含むキットに関する。
【0055】
(合成方法)
式IおよびIIの化合物は、以下のように当業者に公知な有機化学合成の標準的な技術を使用して合成され得る。
【0056】
式Iの化合物の合成は、以下のように実行され得る:
【0057】
【化10】
例えば、ここでR4およびZはHであり、Yは−CO2Hであり、d,e、f、およびmは、1であり、次いで、出発化学物質は、市販のBrCH2CH2CO2Hである。
【0058】
式IIの化合物の合成は、以下のように実行され得る:
【0059】
【化11】
例えば、ここで、R2およびR3は、Hであり;bおよびmは、1であり、;c−1およびn−1は、0であり、次いで、出発化学物質は、市販のNH2−CH2−COHである。
【0060】
BrCH2CO2H、CH3CH(Br)CO2H、CH2CH2CH(Br)CO2H、BrCH2CH2CH2CO2H、Cl−CH2−CH2−Cl(CH3)2CHCH(Br)CO2、CH3CH2CH(Br)CO2H、BrCH2CH2CH2CO2H、BrCH2CH2CO2H、HO2CCH2CH(Br)CO2Hもまた、市販されている。このような化合物は、Aldrich(St.Louis、MO)から入手し得る。
【0061】
アミノ酸、およびそれらの誘導体、糖類、およびそれらの誘導体、ならびにN−アルキルイミダゾール化合物(1−メチルイミダゾールおよび4−メチルイミダゾールを含む)のような、本発明において使用するための、多数の化合物は、例えば、Sigma(St.Louis、MO)から、商業的に入手され得る。
【0062】
本発明の組成物を処方するために、上記の1つ以上の化合物が,任意の様式で一緒に混合され得る。このような混合物は、それらの粉末の形態でこれらの化合物を混合させる工程、水溶性溶媒または有機溶媒中で各化合物の溶液を調製する工程、ならびに本発明の組成物を形成するために、溶液を混合する工程、あるいは少なくとも1つの化合物の溶液を調製する工程、および1つ以上のさらなる化合物の粉末形態を混合する工程により、達成され得る。
【0063】
本発明のさらなる好ましい局面において、本発明の組成物は、核酸ポリメラーゼ活性を有する1つ以上のポリペプチドをさらに含み得る。核酸ポリメラーゼ活性を有するこのような好ましい酵素は、DNAポリメラーゼ活性を有するポリペプチド、RNAポリメラーゼ活性を有するポリペプチド、および逆転写酵素活性を有するポリペプチドを含み得るが、これらに限定されない。
【0064】
さらに好ましくは、本発明の組成物は、作業濃度で、または濃縮物(2×、5×、10×、50×など)として提供される。このような組成物は、種々の温度での保存の際に、好ましくは安定である。用語「安定」および「安定性」は、本明細書において使用される場合、一般的に、組成物が、約4℃の温度での約1週間、約−20℃の温度で約6ヶ月間保存された後、元の酵素および/または化合物の活性の、少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、および最も好ましくは約90%の成分(例えば、組成物の化合物または酵素)を保持することを意味する。本明細書で使用する場合、用語「作業濃度」は、特定の機能(例えば核酸の合成)を行なうために、溶液中で使用される最適濃度または最適に近い濃度である化学化合物または酵素の濃度を意味する。
【0065】
本発明の組成物の形成において使用され得る水は、好ましくは、蒸留され、脱イオン化され、および滅菌濾過され(0.1〜0.2μmフィルターを通して)、ならびにDNase酵素およびRNase酵素によって汚染されていない水である。このような水は、例えば、Sigma Chemical Company(Saint Louis、Missouri)から市販されているか、または必要な場合は、当業者に周知の方法に従って作製され得る。
【0066】
化学(および必要に応じてポリペプチド)成分に加えて、本発明の組成物は、好ましくは、1つ以上の緩衝液および核酸分子の合成に必要なコファクターを含む。本発明の組成物の形成に使用するための特に好ましい緩衝液は、酢酸塩、硫酸塩、塩酸塩、リン酸塩、またはトリス−(ヒドロキシメチル)アミノメタン(TRIS(登録商標))の遊離酸形態であるが、等価な結果を有するTRIS(登録商標)と、ほぼ同じイオン強度およびpKaの代替緩衝液が、使用され得る。緩衝液の塩に加えて、カリウム塩(好ましくは、塩化カリウムまたは酢酸カリウム)およびマグネシウム塩(好ましくは、塩化マグネシウムまたは酢酸マグネシウム)のようなコファクター塩が、組成物中に含まれる。
【0067】
しばしば、最初に緩衝液およびコファクター塩を作業濃度で水に溶解すること、ならびに化学化合物(および必要に応じてポリペプチド)を添加する前に溶液のpHを調整することは、好ましい。この方法において、任意のpH感受性化学化合物およびポリペプチドは、本発明の組成物の処方の間、酸媒介のまたはアルカリ媒介の不活化または分解をあまり受けない。
【0068】
緩衝化塩溶液を処方するために、好ましくは、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン(TRIS(登録商標))の塩であり、そして最も好ましくは、その塩酸塩の塩である緩衝剤の塩は、十分な量の水と合わされ、5〜150ミリモーラーの濃度のTRIS(登録商標)を、好ましくは、10〜60ミリモーラーのTRIS(登録商標)を、最も好ましくは、約20〜60ミリモーラーのTRIS(登録商標)を有する溶液を生じる。この溶液にマグネシウム塩(好ましくは、その塩化物または酢酸塩のいずれか)が添加され、1〜10ミリモーラー、好ましくは1.5〜8.0ミリモーラー、および最も好ましくは、約3〜7.5ミリモーラーのその作業濃度を提供し得る。カリウム塩(最も好ましくは、塩化カリウム)もまた、10〜100ミリモーラーの作業濃度で、および最も好ましくは、約75ミリモーラーの作業濃度で溶液に添加され得る。ジチオスレイトールのような還元剤は、好ましくは約1〜100mMの終濃度で、より好ましくは、約5〜50mMまたは約7.5〜20mMの濃度で、そして最も好ましくは、約10mMの濃度で、溶液に添加され得る。エチレンジアミン四酢酸(EDTA)二ナトリウムのような少量のEDTAの塩もまた添加され得るが(好ましくは、約0.1mM)、EDTAの含有は、本発明の組成物の機能または安定性に必須ではないようである。全ての緩衝液および塩を添加した後、この緩衝化塩溶液は、すべての塩が溶解するまでよく混合され、そしてpHは、当該分野で公知の方法を使用して、7.4〜9.2のpH値、好ましくは8.0〜9.0のpH値、ならびに最も好ましくは、約8.4のpH値に調整される。
【0069】
これらの緩衝化塩溶液に、本発明の化合物および必要に応じて、核酸ポリメラーゼ活性を有する1つ以上のポリペプチドを添加し、本発明の組成物を生成する。
【0070】
好ましい組成物において、本発明の化合物は、約10:1、約9:1、約8:1、約7:1、約6:1、約5:1、約4:1、約3:1、約2.5:1、約2:1、約1.75:1、約1.5:1、約1.25:1、約1:1、約1:1.25、約1:1.5、約1:1.75、約1:2、約1:2.5、約1:3、約1:4、約1:5、約1:6、約1:7、約1:8、約1:9、または約1:10のモル比あるいは化学量論比で混合される。より好ましくは、化合物は、約1:1のモル比または化学量論比で混合される。他のモル比または化学量論比が、慣用的な最適化により決定され得る。2つより多い化合物を使用して、本発明の組成物を形成する場合、各化合物の量が、核酸合成に対する効果を試験することにより容易に最適化され得る。次いで、これらの化合物は、以下に記載の核酸合成方法で使用するために、約0.01〜5M、約0.05〜5M、約0.1〜4M、約0.25〜3M、約0.3〜2.5M、約0.4〜2M、約0.4〜1.5M、約0.4〜1M、または約0.4〜0.8Mの作業濃度で好ましくは組成物中に処方される。使用される化合物によって、他のモル量が、所望の結果に依存して使用され得る。次いで、本発明の組成物は、核酸分子の合成に使用するまで、65℃で2〜4週間、室温〜37℃で1〜2ヶ月、4℃で1〜6ヶ月、そして−20℃で3ヶ月から1年以上保存され得る。
【0071】
ポリメラーゼ活性を有する種々のポリペプチドは、本発明に従って有用である。核酸ポリメラーゼ(DNAポリメラーゼおよびRNAポリメラーゼを含む)のような酵素が、これらのポリペプチドの中に含まれる。このようなポリメラーゼは、以下を含むがそれに限定されない:Thermus thermophilus(Tth)DNAポリメラーゼ、Thermus aquaticus(Taq)DNAポリメラーゼ、Thermotoga neopolitana(Tne)DNAポリメラーゼ、Thermotoga maritima(Tma)DNAポリメラーゼ、Thermococcus litoralis(TliまたはVENTTM)DNAポリメラーゼ、Pyrococcus furiosus(Pfu)DNAポリメラーゼ、DEEPVENTTMDNAポリメラーゼ、Pyrococcus woosii(Pwo)DNAポリメラーゼ、Pyrococcus sp KDD2(KOD)DNAポリメラーゼ、Bacillus sterothermophilus(Bst)DNAポリメラーゼ、Bacillus caldophilus(Bca)DNAポリメラーゼ、Sulfolobus acidocaldarius(Sac)DNAポリメラーゼ、Thermoplasma acidophilum(Tac)DNAポリメラーゼ、Thermusflavus(Tfl/Tub)DNAポリメラーゼ、Thermus ruber(Tru)DNAポリメラーゼ、Thermus brockianus(DYNAZYMETM)DNAポリメラーゼ、Methanobacterium thermoautotrophicum(Mth)DNAポリメラーゼ、mycobacterium DNAポリメラーゼ(Mtb、Mlep)、ならびにそれらの変異体、改変体および誘導体。T3、T5およびSP6、ならびにそれらの変異体、改変体および誘導体のようなRNAポリメラーゼもまた、本発明に従って使用され得る。
【0072】
本発明おいて使用される核酸ポリメラーゼは、中温性または好熱性であり得、そして好ましくは、好熱性である。好ましい中温性のDNAポリメラーゼは、T7 DNAポリメラーゼ、T5 DNAポリメラーゼ、クレノウ断片DNAポリメラーゼ、DNAポリメラーゼIIIなどを含む。本発明の方法および組成物において使用され得る、好ましい耐熱性DNAポリメラーゼは、Taq、Tne、Tma、Pfu、Tfl、Tth、Stoffel断片、VENTTMおよびDEEPVENTTM DNAポリメラーゼ、ならびにそれらの変異体、改変体、および誘導体を含む(米国特許第5,436,149号;米国特許第4,889,818号;米国特許第4,965,188号;米国特許第5,079,352号;米国特許第5,614,365号;米国特許第5,374,553号;米国特許第5,270,179号;米国特許第5,047,342号;米国特許第5,512,462号;WO92/06188;WO92/06200;WO96/10640;Barnes、W.M.、Gene 112:29−35(1992);Lawyer、F.C.ら、PCR Meth.Appl.2:275−287(1993);Flaman、J.−Mら、Nucl.Acids Res.22(15):3259−3260(1994))。長い核酸分子(例えば、約3〜5Kb長より長い核酸分子)の増幅のために、少なくとも2つのDNAポリメラーゼ(一方は、3’エキソヌクレアーゼ活性を実質的に欠いており、そして片方は、3’エキソヌクレアーゼ活性を有する)が、代表的に使用される。米国特許第5,436,149号;米国特許第5,512,462号;Barnes、W.M.、Gene 112:29−35(1992);および同時係属中の米国特許出願第08/801,720号(1997年2月14日出願)(これらの開示の全体が参考として本明細書中に援用される)を参照のこと。実質的に3’エキソヌクレアーゼ活性を欠くDNAポリメラーゼの例は、Taq、Tne(exo-)、Tma(exo-)、Pfu(exo-)、Pwo(exo-)およびTth DNAポリメラーゼ、ならびにそれらの変異体改変体および誘導体を含むが、それらに限定されない。
【0073】
本発明において使用するための逆転写活性を有するポリペプチドは、逆転写活性を有する任意のポリペプチドを含む。このような酵素は、レトロウイルス逆転写酵素、レトロトランスポゾン逆転写酵素、B型肝炎逆転写酵素、カリフラワーモザイクウイルス逆転写酵素、細菌性逆転写酵素、Tth DNAポリメラーゼ、Taq DNAポリメラーゼ(Saiki、R.K.ら、Science 239:487−491(1988);米国特許第4,889,818号および同第4,965,188号)、Tne DNAポリメラーゼ(WO96/10640)、Tma DNAポリメラーゼ(米国特許第5,374,553号)、ならびにそれらの変異体、改変体、および誘導体(例えば、A.John HughesおよびDeb K.Chatterjeeの同時係属中の米国特許出願第08/706,702号および同第08/706,706号(ともに、1996年9月9日出願))(これらは、その全体が参考として本明細書中に援用される)を含む、がそれらに限定されない。本発明の使用のために好ましい酵素は、RNase H活性において減少または実質的に減少する酵素を含む。「RNase H活性において実質的に減少する」酵素とは、酵素が、対応する野生型またはRNase H+酵素(例えば、野生型モロニーマウス白血病ウイルス(M−MLV)逆転写酵素、鳥類骨髄芽球症ウイルス(AMV)逆転写酵素、またはラウス肉腫ウイルス(RSV)逆転写酵素)のRNase H活性の約20%未満、より好ましくは約15%、10%、または5%未満、そして最も好ましくは約2%未満の活性を有することを意味する。任意の酵素のRNase酵素活性は、様々なアッセイ(例えば、米国特許第5,244,797号、Kotewicz,M.L.ら、Nucl.Acids Res.16:265(1988)およびGerard、G.F.ら、FOCUS 14(5):91(1992)に記載されるアッセイ)によって決定され得、この開示の全ては、本明細書中に参考として全てが援用される。本発明の使用のために特に好ましいこのようなポリペプチドは、M−MLV H-逆転写酵素、RSV H-逆転写酵素、AMV H-逆転写酵素、RAV(ラウス関連ウイルス)H-逆転写酵素、MAV(骨髄芽球症関連ウイルス)H-逆転写酵素およびHIV H-逆転写酵素を含むが、これらに限定されない。しかし、RNase H活性が実質的に減少しているリボ核酸分子(すなわち、逆転写酵素活性を有する)から、DNA分子を生成し得る任意の酵素は、本発明の組成物、方法およびキットにおいて同価に使用され得ることが当業者に理解される。
【0074】
本発明において使用するための、DNAポリメラーゼおよびRNAポリメラーゼは、例えば、Life Technologies、Inc.(Rockville、Maryland)、Perkin−Elmer(Branchburg、New Jersey)、New England BioLabs(Beverly、Massachusetts)またはBoehringer Mannheim Biochemicals(Indianapolis、Indiana)から商業的に入手され得る。本発明における使用のための逆転写活性を有するポリペプチドは、例えば、Life Technologies、Inc.(Rockville、Maryland)、Pharmacia(Piscataway、New Jersey)、Sigma(Saint Louis、Missouri)またはBoehringer Mannheim Biochemicals(Indianapolis、Indiana)から商業的に入手され得る。あるいは、逆転写活性を有するポリペプチドは、それらの天然のウイルスまたは細菌供給源から、当業者に周知の天然のタンパク質を単離および精製するための標準的な手順に従って、単離され得る(例えば、Houts、D.E.ら、J.Virol.29:517(1979)を参照のこと)。さらに、逆転写活性を有するポリペプチドは、当業者に知られる組換えDNA技術により調製され得る(例えば、Kotewicz、M.L.ら、Nucl.Acids Res.16:265(1988);Soltis、D.A.およびSkalka A.M.、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85:3372−3376(1988)を参照のこと)。
【0075】
ポリメラーゼ活性または逆転写酵素活性を有するポリペプチドは、好ましくは、約0.1〜200単位/ml、約0.1〜50単位/ml、約0.1〜40単位/ml、約0.1〜36単位/ml、約0.1〜34単位/ml、約0.1〜32単位/ml、約0.1〜30単位/ml、または約0.1〜20単位/mlの溶液中の最終濃度で、そして最も好ましくは約20〜40単位/mlの濃度で、本発明の組成物および方法において使用される。もちろん、本発明における使用に適切なこのようなポリメラーゼまたは逆転写酵素の他の適切な濃度は、当業者に明らかである。
【0076】
(核酸合成の方法)
本発明の化合物および組成物は、核酸の合成のための方法において使用され得る。特に、本発明の化合物および組成物は、特に、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)のような増幅反応を介して、高含量のグアニンおよびシトシンを有する核酸分子(すなわち、「GCリッチ」核酸分子)の合成を容易にすることが発見されている。従って、本発明の化合物および組成物は、核酸分子(例えば、DNA(特に、cDNA)分子およびRNA(特に、mRNA)分子)の合成を必要とする任意の方法において使用され得る。本発明の化合物または組成物が有利に使用され得る方法としては、核酸合成方法、核酸増幅方法、核酸逆転写酵素、および核酸配列決定方法が挙げられるが、これらに限定されない。
【0077】
(合成)
本発明のこの局面に従う核酸合成方法は、1以上の工程を包含し得る。例えば、本発明は、(a)核酸テンプレートと本発明の1以上の上記の化合物および組成物を混合して、混合物を形成する工程;および(b)そのテンプレートの全てまたは一部に相補的な第一の核酸分子を生成するのに十分な条件下で、その混合物をインキュベートする工程を含む、核酸分子を合成するための方法を提供する。本発明のこの局面に従って、核酸テンプレートは、DNA分子(例えば、cDNA分子またはライブラリー)、あるいはRNA分子(例えば、mRNA分子)であり得る。
【0078】
本発明に従って、投入する(input)核酸分子またはライブラリーは、天然の供給源(例えば、種々の細胞、組織、器官または生物体)から得られた核酸分子の集団から調製され得る。核酸分子の供給源として使用され得る細胞は、原核生物(以下の属の種の細胞を含む、細菌細胞;Escherichia、Bacillus、Serratia、Salmonella、Staphylococcus、Streptococcus、Clostridium、Chlamydia、Neisseria、Treponema、Mycoplasma、Borrelia、Legionella、Pseudomonas、Mycobacterium、Helicobacter、Erwinia、Agrobacterium、Rhizobium、およびStreptomyces)または真核生物(以下を含む;真菌(特に、酵母)、植物、原生生物、および他の寄生動物、ならびに昆虫(特に、Drosophila種細胞)、線虫(特に、Caenorhabditis elegans細胞)、および哺乳動物(特に、ヒト細胞)を含む動物)であり得る。
【0079】
核酸分子の供給源または核酸分子のライブラリーとして使用され得る哺乳動物体細胞としては以下が挙げられる;血球(網状赤血球および白血球)、内皮細胞、上皮細胞、神経細胞(中枢神経系または末梢神経系由来)、筋肉細胞(骨格筋、平滑筋、または心筋由来の筋細胞および筋芽細胞を含む)、結合組織細胞(線維芽細胞、脂肪細胞、軟骨細胞、軟骨芽細胞、骨細胞および骨芽細胞を含む)、および他の間質細胞(例えば、マクロファージ、樹状細胞、シュヴァン細胞)。哺乳動物生殖細胞(精母細胞および卵母細胞)もまた、本発明での使用のための核酸の供給源またはライブラリーとして使用され得る。上記の体細胞および生殖細胞を生じる前駆体(progenitor)、前駆体(precursor)および幹細胞も、同様に使用され得る。以下のような哺乳動物の組織または器官もまた、核酸の供給源としての使用に適切である;脳組織、腎臓組織、肝臓組織、膵臓組織、血液組織、骨髄組織、筋肉組織、神経組織、皮膚組織、尿生殖組織、循環組織、リンパ組織、胃腸組織および結合組織の供給源、ならびに哺乳動物(ヒトを含む)胚または胎児由来の組織または器官。
【0080】
上記の任意の原核生物または真核生物の、細胞、組織、および器官は、正常、病的状態、形質転換体、樹立体、前駆体(progenitor)、前駆体(precursor)、胎性、または胚性であり得る。病的細胞は、例えば、感染性疾患(細菌、真菌または酵母、ウイルス(HIVを含む)あるいは寄生動物により引き起こされる)、遺伝的または生化学的病理(例えば、嚢胞性線維症、血友病、アルツハイマー病、筋ジストロフィーまたは多発性硬化症)、あるいは癌性プロセスに関与する細胞を含み得る。形質転換動物細胞株または樹立動物細胞株としては、例えば、COS細胞、CHO細胞、VERO細胞、BHK細胞、HeLa細胞、HepG2細胞、K562細胞、F9細胞などが挙げられ得る。本発明の方法での使用のための核酸供給源として適切な、他の細胞、細胞株、組織、器官および生物体は、当業者に明らかである。これらの細胞、組織、器官および生物体は、これらの天然の供給源から得られ得るか、またはアメリカンタイプカルチャーコレクション(Rockville,Maryland)のような供給源および他の当業者に公知の供給源から商業的に得られ得る。
【0081】
一旦、出発細胞、出発組織、出発器官、または他の出発サンプルが得られたら、核酸分子(例えば、DNA、RNA(例えば、mRNAまたはポリA+RNA)分子)が単離され得るか、あるいは、それらからcDNA分子またはcDNAライブラリーが、当該分野で周知の方法(例えば、Maniatis,T.ら、Cell 15:687−701(1978);Okayama,H.およびBerg,P.、Mol.Cell.Biol.2:161−170(1982);Gubler,U.およびHoffman,B.J.、Gene 25:263−269(1983))によって調製され得る。
【0082】
本発明のこの局面の実施において、第一の核酸分子を、上記のように得られた核酸テンプレート(好ましくはDNA分子(例えば、cDNA分子)、またはRNA分子(例えば、mRNA分子またはポリA+RNA分子))を、本発明の上記の1以上の化合物または組成物と混合して混合物を生成することにより合成され得る。投入された核酸分子の、逆転写(RNAテンプレートの場合)および/または重合化に都合のよい条件下で、その核酸テンプレートの全てまたは一部に相補的な第一の核酸分子の合成が、達成される。このような合成は、通常、ヌクレオチド(例えば、デオキシリボヌクレオシド三リン酸(dNTP)、ジデオキシリボヌクレオシド三リン酸(ddNTP)、またはそれらの誘導体)の存在下で達成される。
【0083】
あるいは、本発明の化合物、組成物および方法は、二本鎖核酸分子の単一の管における合成に使用され得る。このアプローチにおいて、上記で合成された第一の核酸分子は、第一の核酸分子の全てまたは一部に相補的である第二の核酸分子を生成するのに十分な条件下でインキュベートされる。この第二鎖の合成は、例えば、改変Gubler−Hoffman反応(D’Alessio,J.M.ら、Focus 9:1(1987))により達成され得る。
【0084】
もちろん、本発明の組成物および方法が有利に利用され得る核酸合成の他の技術は、当業者に容易に明らかである。
【0085】
(増幅および配列決定の方法)
本発明の他の局面において、本発明の組成物は、核酸分子の増幅または配列決定のための方法において使用され得る。本発明のこの局面に従う核酸増幅方法は、一工程(例えば、一工程RT−PCR)または二工程(例えば、二工程RT−PCR)逆転写酵素増幅反応として当該分野で一般に公知の方法において、逆転写酵素活性を有する1以上のポリペプチドの使用をさらに含み得る。長い核酸分子(すなわち、長さ約3〜5Kbより大きい)の増幅のために、本発明の組成物は、1997年2月14日に出願の同一人の、同時係属中の米国出願第08/801,720号(この開示は、その全体が参考として本明細書中に援用される)に詳細に記載されるような、DNAポリメラーゼ活性を有するポリペプチドの組み合わせを含み得る。
【0086】
本発明のこの局面に従う増幅方法は、1以上の工程を含み得る。例えば、本発明は、(a)核酸テンプレートと本発明の1以上の上記の化合物または組成物を混合して、混合物を形成する工程;および(b)そのテンプレートの全てまたは一部に相補的な核酸分子を増幅するのに十分な条件下で、その混合物をインキュベートする工程を含む、核酸分子を増幅するための方法を提供する。本発明はまた、このような方法によって増幅された核酸分子を提供する。
【0087】
核酸分子またはフラグメントの増幅あるいは分析のための一般的な方法は、当業者に周知である(例えば、米国特許第4,683,195号;同第4,683,202号;および同第4,800,159号;Innis,M.A.ら編、PCR Protocols:A Guide to Methods and Applications,San Diego,California:Academic Press,Inc.(1990);Griffin,H.G.およびGriffin,A.M.編、PCR Technology:Current Innovations,Boca Raton,Florida:CRC Press(1994)を参照のこと)。例えば、本発明に従って使用され得る増幅方法は、PCR(米国特許第4,683,195号および同第4,683,202号)、鎖置換増幅(SDA;米国特許第5,455,166号;EP0684315)、核酸配列ベース増幅(NASBA;米国特許第5,409,818号;EP0329822)。
【0088】
代表的に、これらの増幅方法は、以下の工程を包含する;核酸サンプルを1以上のプライマー配列の存在下で、核酸ポリメラーゼ活性を有する1以上のポリペプチドを含む化合物または組成物(例えば、本発明の化合物または組成物)に接触させる工程、その核酸サンプルを、好ましくはPCRまたは等価の自動増幅技術によって増幅して、増幅された核酸フラグメントの収集物を生成する工程、ならびに必要に応じて、その増幅された核酸フラグメントを、好ましくはゲル電気泳動によって大きさで分離する工程、および核酸フラグメントの存在について、例えば、エチジウムブロマイドのような核酸染色色素でゲルを染色することにより、そのゲルを分析する工程。
【0089】
本発明の方法による増幅後、その増幅された核酸フラグメントを、さらなる使用または特徴付けのために単離し得る。この工程は、通常、任意の物理的または生化学的方法(ゲル電気泳動、キャピラリー電気泳動、クロマトグラフィー(サイズクロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー、およびイムノクロマトグラフィーを含む)、密度勾配遠心および免疫吸着を含む)によって、その増幅された核酸フラグメントを大きさで分離することにより達成される。ゲル電気泳動による核酸フラグメントの分離が、とくに好ましい。なぜなら、それは、多くの核酸フラグメントの迅速で、かつ高い再現性のある厳密な分離方法を提供し、そして核酸のいくつかのサンプル中のフラグメントの直接的な、同時比較を可能にするからである。別の好ましい実施態様において、このアプローチを拡大して、これらのフラグメントまたは本発明の方法によって増幅された任意の核酸フラグメントを単離し得、そして特徴付け得る。従って、本発明はまた、本発明の増幅または合成方法によって生成された、単離された核酸分子に関する。
【0090】
この実施態様において、1以上の増幅された核酸分子フラグメントは、標準的な技術(例えば、電気溶出または物理的な切り出し)に従って、同定(上記を参照のこと)に使用されたそのゲルから取り出される。次いで、その単離された独特の核酸フラグメントを、種々の原核生物(細菌)細胞または真核生物(酵母、植物、またはヒトおよび他の哺乳動物を含む動物)細胞のトランスフェクションまたは形質転換に適切な、標準的なヌクレオチドベクター(発現ベクターを含む)に挿入され得る。あるいは、本発明の化合物、組成物および方法を使用して、増幅されそして単離された核酸分子は、例えば、配列決定法(すなわち、核酸フラグメントのヌクレオチド配列を決定すること)によって、以下に記載の方法、および当該分野で標準的な他の方法(例えば、米国特許第4,962,022および同第5,498,523号(これらは、DNA配列決定法に関する)を参照のこと)によって、さらに特徴付けられ得る。
【0091】
本発明に従う核酸配列決定方法は、1以上の工程を含み得る。例えば、本発明は、以下を含む核酸分子の配列決定のための方法を提供する;(a)配列決定されるべき核酸分子を、1以上のプライマー、本発明の1以上の上記の化合物および組成物、1以上のヌクレオチド、および1以上の終結物質(例えば、ジデオキシヌクレオチド)を混合して、混合物を形成する工程;(b)配列決定されるべきその分子の全てまたは一部に相補的な分子の集団を合成するのに十分な条件下で、その混合物をインキュベートする工程;および(c)配列決定されるべきその分子の全てまたは一部のヌクレオチド配列を決定するために、その集団を分離する工程。
【0092】
本発明の組成物を使用し得る核酸配列決定技術として、米国特許第4,962,022号および同第5,498,523号に開示されるような、ジデオキシ配列決定法が挙げられる。
【0093】
(ベクターおよび宿主細胞)
本発明はまた、本発明の単離された核酸分子を含むベクター、組換えベクターで遺伝子操作された宿主細胞、およびこれらのベクターおよび宿主細胞を使用する、組換えポリペプチドの生成方法に関する。
【0094】
本発明で使用されるベクターは、例えば、ファージまたはプラスミドであり得、そして好ましくは、プラスミドである。目的のポリペプチドをコードする核酸に対する、シス作用性の制御領域を含むベクターが好ましい。適切なトランス作用性因子は、宿主により供給され得るか、補完ベクターにより供給され得るか、または宿主内への導入の際にそのベクター自体により供給され得る。
【0095】
これに関する特定の好ましい実施態様において、ベクターは、本発明の核酸分子によりコードされるポリペプチドの特異的発現を提供し;このような発現ベクターは、誘導性および/または細胞型特異的であり得る。このようなベクターの中で、操作しやすい環境因子(例えば、温度および栄養添加物)により誘導されるベクターが、特に好ましい。
【0096】
本発明において有用である発現ベクターとしては、染色体由来ベクター、エピソーム由来ベクターおよびウイルス由来ベクター(例えば、細菌プラスミドまたはバクテリオファージに由来するベクター、ならびにそれらの組み合わせに由来するベクター(例えば、コスミドおよびファージミド))が挙げられる。
【0097】
DNA挿入物は、ファージλPLプロモーター、E.coli lac、trp、およびtacプロモーターのような、適切なプロモーターに作動可能に連結されるべきである。他の適切なプロモーターは、当業者に公知である。遺伝子融合構築物は、転写開始、終結のための部位、および転写領域において、翻訳のためのリボソーム結合部位をさらに含む。その構築物により発現された成熟転写物のコード部分は、好ましくは、翻訳されるべきポリヌクレオチドの、その始まりで翻訳開始コドン、およびその末端で適切に配置される終止コドン(UAA、UGAまたはUAG)を含む。
【0098】
発現ベクターは、好ましくは少なくとも1つの選択マーカーを含む。そのようなマーカーとしては、E.coliおよび他の細菌における培養のためのテトラサイクリンまたはアンピシリン耐性遺伝子が挙げられる。
【0099】
本発明での使用にとりわけ好ましいベクターとしては、以下が挙げられる;pQE70、pQE60およびpQE−9(Qiagenから入手可能);pBSベクター、Phagescriptベクター、Bluescriptベクター、pNH8A、pNH16a、pNH18A、pNH46A(Stratageneから入手可能);pcDNA3(Invitrogenから入手可能);ならびにpGEX、pTrxfus、pTrc99a、pET−5、pET−9、pKK223−3、pKK233−3、pRD540、pRIT5(Pharmaciaから入手可能)。他の適切なベクターは、当業者に容易に明らかである。
【0100】
適切な宿主細胞の代表的な例としては、E.coli、Streptomyces種、Erwinia種、Klebsiella種、およびSalmonella typhimuriumのような細菌細胞が挙げられるが、これらに限定されない。E.coliが宿主細胞として好ましく、そしてE.coli株DH10BおよびStbl2が、とくに好ましい。これらは、市販されている(Life Technologies,Inc;Rockville,Maryland)。
【0101】
(ペプチド生成)
上記のように、本発明の方法は、上記の核酸分子またはベクターの宿主細胞への挿入、およびその宿主細胞による目的のポリペプチドをコードするヌクレオチド配列の発現を経て、任意の長さの任意のポリペプチドの生成に適している。形質転換宿主細胞を作製するための、宿主細胞内への核酸分子またはベクターの導入は、リン酸カルシウムトランスフェクション、DEAE−デキストラン媒介トランスフェクション、陽イオン性脂質媒介トランスフェクション、エレクトロポレーション、形質導入、感染、または他の方法によりもたらされ得る。そのような方法は、例えば、Davisら、Basic Methods In Molecular Biology(1986)のような、多くの標準的な実験マニュアルに記載される。一旦、形質転換宿主細胞が得られたら、その細胞は、pHおよび温度の任意の生理学的適合条件下で、宿主細胞の増殖を補助する、炭素、窒素、および必須ミネラルの同化可能な供給源を含む、任意の適切な栄養培地中で培養され得る。組換えポリペプチド産生培養条件は、その宿主細胞を形質転換するために使用されたベクターの型に従って変化する。例えば、特定の発現ベクターは、その組換えポリペプチドの産生を生じる遺伝子発現を開始するために、特定の温度での細胞増殖、またはその細胞増殖培地への特定の化学物質または誘導物質の添加を必要とする調節領域を含む。従って、本明細書中で使用される、用語「組換えポリペプチド産生条件」は、培養条件の任意の1つのセットに限定されるよう意味されない。上記の宿主細胞およびベクターについての適切な培養培地および条件は、当該分野で周知である。宿主細胞でのその産生の後、目的のポリペプチドは、いくつかの技術によって単離され得る。その宿主細胞から目的のポリペプチドを遊離するために、その細胞を溶解するか、または破壊する。この溶解は、その細胞に低張液を接触することによってか、リゾチームのような細胞壁破壊酵素で処理することによってか、超音波処理によってか、高圧での処理によってか、または上記の方法の組み合わせによって達成され得る。当業者に公知の、他の細菌細胞の破壊および溶解の方法もまた、使用され得る。
【0102】
破壊後に、そのポリペプチドは、複合混合物中の粒子の分離に適切な任意の技術により、細胞細片から分離され得る。次いで、そのポリペプチドは、周知の単離技術により精製され得る。精製のための適切な技術としては、硫酸アンモニウム沈殿またはエタノール沈殿、酸抽出、電気泳動、免疫吸着、陰イオン交換クロマトグラフィーまたは陽イオン交換クロマトグラフィー、ホスホセルロースクロマトグラフィー、疎水的相互作用クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー、免疫親和性クロマトグラフィー、サイズ排除クロマトグラフィー、液体クロマトグラフィー(LC)、高速(high performance)LC(HPLC)、高速(fast performance)LC(FPLC)、ヒドロキシルアパタイトクロマトグラフィーおよびレクチンクロマトグラフィーが挙げられるが、これらに限定されない。
【0103】
(キット)
本発明はまた、核酸分子の合成、増幅、または配列決定のためのキットを提供する。本発明のこの局面に従うキットは、1以上の容器(例えば、バイアル、管、アンプル、ビンなど)を含み得、これらは、本発明の1以上の組成物を含み得る。
【0104】
本発明のキットは、以下の1以上の成分を含み得る:(i)本発明の1以上の化合物または組成物、(ii)1以上のポリメラーゼまたは逆転写酵素、(iii)1以上の適切な緩衝液、(iv)1以上のヌクレオチド、および(v)1以上のプライマー。
【0105】
本明細書中に記載される方法および適用に対する、他の適切な改変ならびに順応は自明であり、そして本発明またはそれらのいずれの実施態様の範囲から逸脱することなくなされ得ることは、当業者に容易に明らかである。ここで、本発明が詳細に記載されたが、本発明は、以下の実施例を参照することによって、より明らかに理解され、この以下の実施例は、例示の目的のみで本明細書中に含まれ、そして本発明を限定することは意図されない。
【実施例】
【0106】
(導入)
4−メチルモルホリンN−オキシド(本明細書中以降、「MMNO」という)を、高GC含量(例えば、CAG反復、PseudomonasゲノムDNAなど)を含む、多くの異なるPCRアンプリコンで試験した。試験したアンプリコンは、通用している標準的PCR反応混合液を用いて増幅することが困難であった。高GC含量アンプリコンからのPCR実行における新規の共溶媒の有効性を試験するために、MMNOおよび他の共溶媒を異なる濃度でPCR反応混合液に添加した。
【0107】
(方法)
以下の章は、実施例において使用された化学物質の調製を記載する。
【0108】
(2.2×PCR混合液の調製(実施例1−3))
実施例1−3において、テンプレートDNAおよびプライマーを除いて以下に列挙された全ての成分を含有する2.2×PCR混合液を調製した。以下の表は、2.2×PCR混合液の調製方法を例示する。
【0109】
【表1】
(実施例1−9についての物質):ベタイン一水和物([カルボキシメチル]トリメチル−アンモニウム)、L−プロリン、4−メチルモルホリン−4−オキシド(MMNO)、エクトイン(THP[B];[S]−2−メチル−1,4,5,6−テトラヒドロピリミジン−4−カルボン酸)、DL−ピペコリン酸(DL−2−ピペリジンカルボン酸)、およびL−カルニチン([−]−b−ヒドロキシ−g−[トリメチルアンモニオ]酪酸塩)を、Sigma(St.Louis、MO)から購入し、そして滅菌蒸留水中に4Mストック溶液として調製し、そして濾過滅菌した。PCR試薬:プラチナ(Platinum)Taq DNAポリメラーゼ、プラチナTaq DNAポリメラーゼ高忠実度、10×Taq緩衝液(1×=20mM Tris−HCl(pH8.4)、50mM KCl)、50mM塩化マグネシウム、10×Taq高忠実度緩衝液(1×=60mM Tris−SO4(pH8.9)、18mM(NH4)2SO4、50mM硫酸マグネシウム、10mM dNTP混合物、K562ヒトゲノムDNA,および滅菌蒸留水を、Life Technologies,Inc.(Rockville、MD)から入手した。オリゴヌクレオチドプライマーを、Life Technologies,Inc.から脱塩調製物として購入し、そしてさらなる精製なしで使用した。
【0110】
(実施例1:GCリッチテンプレートからのPCR増幅を改善するための、プロリン,1−メチルイミダゾールおよび4−メチルイミダゾールの滴定)
いくつかの化学物質を試験して、それらがGCリッチテンプレートを使用するPCR実行を改善するか否かを調べた。第1の実施例において、GCリッチテンプレートP55G12を、以下の3つの異なる化学物質のうちの1つの種々の濃度で試験した:アミノ酸プロリン、1−メチルイミダゾールおよび4−メチルイミダゾール。以下の成分を0.2mlチューブ内で組合わせた:2.2×PCR混合液13ml、テンプレートDNA 0.5ml(10pg)、プライマー混合物(各10mM)0.5ml、および4Mの化学物質溶液(プロリン、1−メチルイミダゾール、または4−メチルイミダゾールのいずれか)13ml。そしてこの溶液を、ピペッティングによって混合した。PCRのプログラムは、以下の通りであった:95℃で3分間;94℃で30秒間、55℃で30秒間、72℃で1分間を30サイクル。PCRを実行した後、5mlのローディング(loading)色素を各チューブに添加し、そして12mlの混合液を電気泳動用アガロースゲルにローディングし、次いでDNAフラグメントの存在について、このゲルをエチジウムブロマイド染色した。
【0111】
図1に示されるように、これら3つの化学物質の各々の特定の濃度は、他の濃度よりも良好に機能した。プロリンの場合、300〜600mMがP55G12の最適な増幅を提供したが、600mMより高い濃度は全く産物を提供しなかった。1−メチルイミダゾールの場合、100mMおよび200mMが最良に働いたが、より高いかもしくはより低い濃度は、全く働かないかまたは非常により少ない産物を生成するかのいずれかであった。4−メチルイミダゾールの場合、わずかにより低い範囲の濃度が、増幅を改善した:60〜100mM。PCR反応へのこれらの化合物の添加がない場合には増幅産物は全く存在せず、そして1Mのベタインが、反応を生産性にするのに有効であったことに留意のこと。
【0112】
(実施例2:GCリッチテンプレートのPCRについての4−メチルモルホリンN−オキシド(MMNO)の滴定;MMNOおよびベタインの比較)
実施例1において、MMNOを、GCリッチテンプレートでのPCR実行を改善するための新規の試薬として同定した。取り組まれるべき次の問題は、PCR混合液中のその濃度に対する、MMNOの実行の依存性であった。GCリッチアンプリコンP55G12は、1Mベタインまたは種々の濃度のMMNOの存在下で、実施例1において上記されたように増幅された。
【0113】
図2に示されるように、PCR反応混合液中の400〜1000mMのMMNOの含有が、1MベタインでのPCR産物の生成に強度において匹敵するPCR産物の生成を生じた。400mMより低いMMNO濃度は、PCR産物の生成を生じなかった。
【0114】
(実施例3:高GC含量アンプリコンのPCR増幅:Pseudomonas aeruginosaアンプリコン)
Pseudomonas aeruginosaのゲノムは、高GC含量(70%のGC)を含み、従ってPCRによる増幅にとって興味深いものである。従って、サイズが1.3kb〜1.8kbの範囲にある3つの異なるPseudomonas aeruginosaアンプリコンを、PCR反応混合液中のベタイン、MMNOまたはトリメチルアミン N−オキシド(TMANO)を使用する本発明のPCR方法において試験した。これら反応物中のテンプレートDNAが、30ngのP.aeruginosaゲノムDNAからなることを除いて、実施例1において記載されたものと同じ反応調製物を使用した。以下のPCRプログラムを、DNA増幅について使用した:95℃で5分間;94℃で2分間、58℃で30秒間、および72℃で2分間の35サイクル。
【0115】
図3に示されるように、Pseudomonas aeruginosaの配列Dは、ベタインまたはMMNOの存在下で増幅され、一方で、配列EおよびFは、ベタイン、MMNOまたはTMANOの存在下で増幅された。これらの結果は、長い天然のGCリッチ配列(例えば、P.aeruginosaのゲノム由来の配列)が、本発明の組成物および方法を使用して効率的に増幅され得ることを示す。
【0116】
(実施例4:GCリッチテンプレートのPCR増幅の増強についての、ベタイン、プロリン、およびMMNOの比較)
変動する濃度のベタイン、プロリン、およびMMNOを、ヒトp53エキソン10の156bpフラグメント(62.2%のGC)またはDeinococus radiodurans由来のDNAポリメラーゼI遺伝子についての2782bpのコード領域(66.7%のGC)のPCR増幅を増強するそれらの効力について試験した。反応パラメータを変動させて、緩衝液組成およびマグネシウム濃度の効果を評価した。
【0117】
PCR増幅を、薄壁の0.2mlチューブを用いて、以下を含む50ml反応物中で実行した:2.5UのプラチナTaq、1×Taq緩衝液(20mMのTris−HCl(pH8.4)、50mMのKCl)または1×Taq高忠実度緩衝液(60mMのTris−SO4(pH8.9)、18mMの(NH4)2SO4)のいずれか、200mMの各dNTP、および200nMの各プライマー。マグネシウム濃度として、塩化マグネシウム(Taq緩衝液反応)または硫酸マグネシウム(Taq高忠実度緩衝液反応)のいずれかを、1.0mMと2.5mMとの間を変動させた。各共溶媒(ベタイン、MMNO、またはプロリン)の量を、各図に示されるように変動させた。反応を、Prekin Elmerモデル9600または2400サーマルサイクラーのいずれかを使用して温度サイクルした。ヒトp53エキソン10配列の増幅について、反応物は100ngのK562ヒトゲノムDNAを含有し、そして95℃で1分間、次いで95℃で30秒間の変性;60℃で30秒間のアニーリングおよび68℃で1分間の伸長の35サイクルでインキュベートした。DNA pol I遺伝子の増幅について、反応物は20ngのDeinococcus radioduransゲノムDNAを含有し、そして95℃で1分間、次いで95℃で30秒間の変性;55℃で30秒間のアニーリング、および68℃で3分間の伸長の35サイクルでインキュベートした。10mlの各PCRを、アガロースゲル電気泳動およびエチジウムブロマイド染色によって、予期されるDNAフラグメントの存在について分析した。
【0118】
図4に示されるように、156bpのヒトp53配列の首尾良い増幅は、マグネシウム濃度および特定の緩衝液条件に依存した。添加される共溶媒の非存在下で、標準的PCR緩衝液を含有する反応物中で特定の産物は検出されず、そして1.0mMのMgSO4でのみ硫酸アンモニウム緩衝液(Taq高忠実度緩衝液)を有するPCRにおいて検出可能であった。ベタイン、MMNOまたはプロリン共溶媒の添加は、両方の緩衝液系において、より広範なマグネシウム濃度にわたり、増幅産物の特異性および収率を改善した。最適マグネシウム濃度範囲でのMMNOの効果は、ベタインまたはプロリンのいずれかの効果よりもあまり明白でなかった。広範なマグネシウム最適条件を生成するベタインまたはプロリンの濃度は、Taq高忠実度緩衝液よりもTaq緩衝液において高かった。
【0119】
p53エキソン10の増幅で得られた結果とは対照的に、MMNOは、1.0〜2.5mMの広範なマグネシウム濃度範囲にわたり、Dra DNA pol Iについてより長い2.8kbアンプリコンのPCRを増強するのに高度に有効であった(図5)。この効果は、0.4Mと0.8Mとの間のMMNO濃度に対して得られ、そして1Mのベタインについて観察された効果と類似した。プロリンの添加もまた、DNA pol Iフラグメントの増幅を増強するのに有効であった:しかし、プロリンについての有効濃度の範囲は非常により狭く、そしてマグネシウム濃度範囲に対するその効果は、ベタインまたはMMNOについて観察された効果よりも明白でなかった。一般に、Taq高忠実度緩衝液を含有する反応物中よりも標準的Taq緩衝液反応物中において、より高い濃度の各共溶媒がPCRを増強するために必要とされた。これは、p53エキソン10の増幅について得られた結果と一致する。Dra DNA pol IのPCR産物は、共溶媒を含有しない反応物中において観察されなかった。
【0120】
(実施例5:MMNOおよびプロリンの混合液はGCリッチテンプレートのPCR増幅を増強する)
前述の実施例の結果は、プロリンが短いGCリッチテンプレートの増幅について反応の最適条件を増強するのに高度に有効であり、そしてMMNOが長いGCリッチテンプレートの増幅を増強するのに有効であることを実証したので、この2つの化合物の混合物を試験して、これらがフラグメントのサイズとは無関係にGCリッチテンプレート増幅の増強を提供するか否かを調べた。この可能性を試験するために、GCリッチテンプレートを、プロリン、MMNO、またはその両方を含む組成の存在下で増幅した。
【0121】
混合物組成において、MMNOおよびプロリンの4M溶液を、それぞれ3:1、2:1、1:1、1:2および1:3の比率で組合わせて、4Mのハイブリッド共溶媒混合物を組成した。次いで、これらの混合物を、p53エキソン10およびDra DNA pol IのPCR増幅に対する効果についてアッセイした。PCR反応を、上記のように1×Taq高忠実度緩衝液中にプラチナTaq DNAポリメラーゼを有する50ml容量において実施した。硫酸マグネシウム濃度を、試験される共溶媒の各濃度に対して1.0〜2.5mMの間で変動させた。MMNO、MMNOおよびプロリンの混合物、プロリン、ならびにベタインの濃度は、各図に示される通りである。
【0122】
図6において示されるように、MMNOおよびプロリンの混合物は、いずれかの共溶媒単独で得られるより広範なマグネシウム濃度範囲および共溶媒濃度範囲にわたって、156bpのp53エキソン10フラグメントの特異的増幅を増強するのに有効であった。MMNO:プロリン混合物の使用はまた、2.8kbのDra DNA pol Iフラグメントの増幅を促進するのに高度に有効であり、そしてプロリン単独で得られる範囲よりも有効マグネシウム濃度範囲および共溶媒濃度範囲を有意に拡大した(図7)。以前に観察されたように、MMNOは、試験されたマグネシウム濃度および共溶媒濃度の全範囲にわたってPCR増幅を増強した。ひとまとめにして、これらの結果は、N−アルキルカルボン酸およびN−アルキルアミン酸化物の混合物を含む組成物の使用が、GCリッチテンプレートのPCR増幅を増強するために活用され得る新規の特性を生じることを実証する。詳細には、2:1〜1:2の比率で組合わせられたMMNOおよびプロリンの混合物を使用して、広範なサイズの範囲にわたりGCリッチテンプレートのPCR増幅を増強し得、そしてより広範なマグネシウム濃度にわたってPCR増幅の信頼度を増加し得る。
【0123】
(実施例6:MMNO:プロリン混合物は、広範なアニーリング温度最適にわたりGCリッチテンプレートのPCRを増強する)
PCR反応の間の最適アニーリング温度に対するPCR共溶媒の効果を評価するために、GCリッチテンプレートP32D9を、上記のMMNO:プロリン混合組成物を使用するPCRによって増幅した。PCR反応を、薄壁の0.2mlチューブ(Stratagene,Inc.)を用いて、以下を含む50ml反応物中で50ml容量において実行した:2.5UのプラチナTaq、1×Taq高忠実度緩衝液(60mMのTris−SO4(pH8.9)、18mMの(NH4)2SO4)、1.5mMのMgSO4、200mMの各dNTP、200nMの各プライマー、100ngのK562ヒトゲノムDNA、および0.5Mのベタインもしくは0.5Mの1:1のMMNO:プロリンのいずれかの添加共溶媒または添加共溶媒なし。濃縮したMMNO:プロリン混合物を、等容量の4MのMMNOおよび4Mプロリンを混合することによって調製した。アニーリング温度の最適条件を、オイルなしの操作のために加温した蓋を有する勾配ブロックRobo−cycler(Stratagene)を使用して研究した。95℃での1分間の変性に続き、反応を95℃で45秒間;55〜66℃で45秒間、68℃で1分間で35回サイクルした。各PCRの10mlを、0.5×TBE中のアガロースゲル電気泳動(1%アガロース1000、Life Technologies、Inc.)、およびエチジウムブロマイド染色によって分析した。
【0124】
図8において示されるように、PCR共溶媒の非存在下において、特異的なPCR産物(149bp、78.5%GCのフラグメント)は、66℃でのみ得られた。アニーリング温度を減少させるにつれて、産物の収率は迅速に減少し、非特異的産物の増幅を生じた。対照的に、ベタインおよびMMNO:プロリン混合物の両方は、有効なアニーリング温度の範囲を拡大した。MMNO:プロリン混合物の使用は、ベタインで得られる産物収率よりも高い産物収率を生じ、そして66℃から55℃の全てのアニーリング温度勾配にわたり特異的産物の検出を可能にした。
【0125】
(実施例7:脆弱X CGG反復配列の増幅に対するMMNO:プロリン混合物の使用)
MMNO:プロリン混合物を、非常に高いGC含量のDNA配列のPCR増幅を促進するその能力についてベタインと比較した。プライマーを、脆弱X遺伝子座にあるヒトFMR−1遺伝子(GenBank登録番号X61378)のCGG反復配列を含むように設計した。PCR増幅を、2.5UプラチナTaq DNAポリメラーゼ高忠実度、100ngのK562ゲノムDNA、および2mM硫酸マグネシウム(最終濃度)を補充された1×Taq高忠実度緩衝液を使用して、上記のように実施した。上記のように調製された4MのMMNO:プロリン混合物、または4Mのベタインのアリコートを、いずれかの共溶媒の0.25M〜2Mの最終濃度を生成するように量を変動してPCRに添加した。PCRを、95℃で1分間、次いで95℃で30秒間;58℃で30秒間;68℃で30秒間の35サイクルでインキュベートした。これらの研究結果のアガロースゲル分析を図9に示す。
【0126】
これらの研究結果は、ベタインと比較した場合に、極めて高い(80%を超える)GC含量の標的配列のPCR増幅を促進するMMNO:プロリン混合物の優れた能力を実証する。PCR共溶媒の非存在下において、特異的なPCR産物は全く検出されなかった。しかし、1.75Mのベタインを含有する反応物中において、予期されるサイズのわずかなバンドが認識できた。対照的に、CGG反復配列の頑健(robust)な増幅は、1.5〜2MのMMNO:プロリンを含有する反応物中において実証された。
【0127】
(実施例8:長いPCR(long PCR)におけるMMNO:プロリン混合物の使用)
Taq DNAポリメラーゼ、およびプルーフリーディング活性を保有する古細菌DNAポリメラーゼからなるDNAポリメラーゼ混合液が、40kbまでのDNAフラグメントの増幅のために使用されている(Barnes,W.M.Proc.Natl.Acad.Sci.USA 91:2216−2220(1994))。長いGCリッチの配列の増幅を促進するMMNO:プロリン混合物の能力を、2型アデノウイルスDNAの7.77kbフラグメントまたは9.75kbフラグメント(約60%のGC)を増幅するように設計されたプライマーを使用して試験した。PCRを、プラチナTaq DNAポリメラーゼの代わりに2.5UプラチナTaq DNAポリメラーゼ高忠実度(これは、Thermus aquaticusおよびPyrococcus種GB−D由来のDNAポリメラーゼの酵素混合物である)を用いることを除いて本質的に上記のように、1pgの2型アデノウイルスDNA(Life Technologies,Inc.)、1.5mMの硫酸マグネシウムで補充された1×Taq高忠実度緩衝液、および変動量(0〜1M)のMMNO:プロリン混合物を使用して実施した。反応物を、95℃で1分間、次いで95℃で30秒間、58℃で30秒間、68℃で10分間の35サイクルでインキュベートした。
【0128】
図10に示されるように、予期された7.77kbおよび9.75kbのDNAフラグメントの首尾良い増幅は、MMNO:プロリン共溶媒の含有に依存した。特異的な産物は、MMNO:プロリンを有さない反応物中において検出されなかった;しかし、0.25MのMMNO:プロリン混合物を含有することによって、頑健な増幅および高産物収率が得られた。長いPCRにおける産物収率は、MMNO:プロリンの濃度が増加するにつれて7.3kbおよび9.7kbの両方の標的についての産物収率が減少するように、使用されたMMNO:プロリンの量に感受性であった。
【0129】
(実施例9:GCリッチテンプレートのPCR増幅を増強するための補償溶質の比較)
広範な種々のアミノ化合物が、浸透圧ストレスから生物体を保護する際に重要な機能を果たすことが示されている。ベタインおよびプロリンは、E.coliにおける主要な浸透圧保護物質(osmoprotectant)である。これらの両方の化合物はDNAヘリックスの安定性を破壊し、それによってGCリッチテンプレートの増幅を促進するので、他の公知の浸透圧調節化合物および市販の浸透圧調節化合物のPCRにおける効果を研究した。
【0130】
PCR混合液を、以下を含む50ml容量中に調製した:2.5UのプラチナTaq DNAポリメラーゼ、60mMのTris−SO4(pH8.9)、18mM(NH4)2SO4、1.5mMのMgSO4、200mMのdNTP(各々)、200nMのプライマー(各々)、100ngのK562ヒトゲノムDNA。そして変動量のPCR共溶媒を調製した。反応を、95℃で1分間、次いで95℃で30秒間;58℃で30秒間;68℃で1分間の35サイクルでインキュベートした。
【0131】
MMNO:プロリン混合物、ベタイン、L−カルニチン、およびDL−ピペコリン酸の効力の比較を図11に示す。一方、ベタインに対してエクトインを比較した別個の実験の結果を、図12に示す。実験条件は、最終反応物の容量が25mlであることを除き、本質的に上記と同じ条件であった。
【0132】
これらの実験において試験された全てのオスモライト(osmolyte)は、P32D9配列の増幅を可能にするのに効果的であり、そして広範な種々のN−アルキルカルボン酸誘導体が、困難なテンプレート(例えば、GC含量が高いテンプレート)のPCR増幅を促進するために使用され得ることを実証する。
【0133】
ここで、理解の明確化の目的で、例示および実施例によって幾分詳細に本発明を十分に記載してきたが、同じことが本発明またはその任意の特定の実施態様の範囲に影響することなく、条件、処方、および他のパラメータの広範かつ等価な範囲内で本発明を改変または変更することによって実施され得、そしてそのような改変または変更が添付の特許請求の範囲内に包含されることが意図されることは、当業者に明らかである。
【0134】
本明細書中で言及した全ての刊行物、特許、および特許出願は、本発明の属する技術分野の当業者の技術レベルの指標であり、そして各個々の刊行物、特許、または特許出願が明確および個々に参考として援用されることが示される場合と同じ程度に、本明細書中で参考として援用される。
【技術分野】
【0001】
(発明の背景)
(発明の分野)
本発明は、分子生物学および細胞生物学の分野にある。本発明は、一般に核酸分子、特にGCリッチ核酸鋳型の合成を増強するのに有用な化合物、組成物、および方法に関する。特に、本発明は、式Iおよび式IIからなる群より選択される式を有する1つ以上の化合物を含む組成物を提供する。好ましくは、4−メチルモルホリンN−オキシド、ベタイン(カルボキシメチルトリメチルアンモニウム)、任意のアミノ酸(またはその誘導体)、および/またはN−アルキルイミダゾール(例えば、1−メチルイミダゾールまたは4−メチルイミダゾール)が本発明に従って使用される。好ましい局面において、2つ以上の、3つ以上の、4つ以上などの本発明の化合物が組み合わされ、核酸合成を容易にする。
【0002】
本発明はまた、本発明の1つ以上の化合物、ならびに(i)1つ以上の核酸分子(核酸の鋳型を含む)、(ii)1つ以上のヌクレオチド、(iii)1つ以上のポリメラーゼまたは逆転写酵素、および(iv)1つ以上の緩衝塩からなる群より選択される1つ以上のさらなる成分を含む組成物に関する。
【0003】
本発明のこれらの化合物および組成物は、増幅(特に、PCR)、逆転写、および配列決定による方法を含む、核酸分子の増強された、高忠実度の合成のための方法において使用され得る。本発明はまた、これらの方法によって生成される核酸分子、フラグメントもしくはそれらの誘導体、ならびにこのような核酸分子、フラグメント、もしくは誘導体を含むベクターおよび宿主細胞に関する。本発明はまた、所望のポリペプチドを産生するこのような核酸分子の使用に関する。本発明はまた、本発明の組成物または化合物を含むキットに関する。
【背景技術】
【0004】
(関連分野)
(ゲノムDNA)
生物体、組織または細胞の構造および生理を試験する際、それらの遺伝的内容を決定することがしばしば所望される。生物体の遺伝的骨格(すなわち、ゲノム)は、生物体の体細胞および生殖細胞中に含まれるデオキシリボ核酸(DNA)中のヌクレオチド塩基の二本鎖配列においてコードされる。DNAの特定のセグメント、すなわち遺伝子の遺伝的内容は、この遺伝子が最終的にコードするタンパク質の生成によってのみ発現される。タンパク質を生成するために、DNA二重らせんの1本の鎖の相補的なコピー(「センス」鎖)が、ポリメラーゼ酵素によって生成され、その結果、メッセンジャーリボ核酸(mRNA)の特異的な配列が生じる。次いでこのmRNAは、細胞のタンパク質合成機構によって翻訳され、その結果、この遺伝子によってコードされる特定のタンパク質の生成が生じる。構造的、調節的または未知の機能の役割を果たし得るタンパク質をコードしないゲノム(すなわち、「非コード」領域)においてさらなる配列が存在する。従って、生物体または細胞のゲノムは、介在性非コードDNA配列とともにタンパク質コード遺伝子の完全な収集である。重要なことに、多細胞生物の各体細胞は、病巣感染または癌の場合を除いて、生物体のゲノムDNAの完全な相補体を含み、ここで、異種の1つ以上のDNA配列が特定の細胞のゲノムDNAに挿入され得、そしてその生物体の他の非感染細胞には挿入されないかもしれない。しかし以下に述べるように、ゲノムDNAを構成する遺伝子の発現は、個々の細胞の間で変化し得る。
【0005】
(cDNAおよびcDNAライブラリー)
所定の細胞、組織、または生物内には、無数のmRNA種が存在し、各々が別々のかつ特定のタンパク質をコードする。この事実は、組織または細胞における遺伝子発現を研究することに興味を抱く研究者に対して強力なツールを提供する。mRNA分子は、種々の分子生物学的技法により単離され、そしてさらに操作され得、それにより、細胞、組織、または生物の完全に機能的な遺伝子含有量の評価を可能にする。
【0006】
遺伝子発現の研究に対する1つの一般的なアプローチは、相補的DNA(cDNA)クローンの産生である。この技術において、ある生物由来のmRNA分子は、その生物の細胞または組織の抽出物から単離される。この単離は、しばしば、デオキシチミジン(dT)のオリゴマーがそこに複合体化される固相クロマトグラフィーマトリックス(例えば、セルロースまたはヒドロキシアパタイト)を利用する。全ての真核生物mRNA分子上の3’末端は、一繋ぎのデオキシアデノシン(dA)塩基を含み、そしてdAはdTに結合するので、mRNA分子は、組織または細胞抽出物における他の分子および物質から迅速に精製され得る。これらの精製されたmRNA分子から、cDNAコピーが、酵素リバーストランスクリプターゼ(逆転写酵素)を使用して作製され得る。これにより、一本鎖cDNA分子が産生される。次いで、一本鎖cDNAは、オリジナルのmRNA(従って、このmRNAをコードするオリジナルの二本鎖DNA配列であって、その生物のゲノムに含まれるもの)の完全な二本鎖DNAコピーに、DNAポリメラーゼの作用によって変換され得る。次いで、タンパク質特異的二本鎖cDNAは、プラスミドに挿入され得、これは次いで宿主細菌細胞へと導入される。次いで、細菌細胞は、培養培地において増殖され、目的の遺伝子を含有する(または、多くの場合、発現する)細菌細胞の集団を生じる。
【0007】
この全プロセス(mRNAの単離からcDNAのプラスミドへの挿入から、単離された遺伝子を含有する細菌集団の増殖まで)は、「cDNAクローニング」と呼ばれる。cDNAが多くの異なるmRNAから調製される場合、cDNAの得られるセットは、「cDNAライブラリー」と呼ばれ、供給源の細胞、組織、または生物に存在する異なる機能的(すなわち、発現された)遺伝子を表す。これらのcDNAライブラリーの遺伝子型分析は、それらが由来する生物の構造および機能に関する多くの情報を生み出し得る。
【0008】
(DNA増幅)
サンプル中のDNAの特定の配列のコピー数を増大させる、すなわち「増幅」させるために、研究者らは、多くの増幅技術に依存してきた。一般的に使用される増幅技術は、Mullisおよびその共同研究者らの記載するポリメラーゼ連鎖反応(「PCR」)法(米国特許第4,683,195号;同第4,683,202号;および同第4,800,159号)である。この方法は、増幅されるべきDNA配列上の対立する領域に相補的である「プライマー」配列を使用する。これらのプライマーは、DNA標的サンプルに、モル濃度過剰のヌクレオチド塩基およびDNAポリメラーゼ(例えば、Taqポリメラーゼ)とともに添加され、そしてそのプライマーは、それらの標的に塩基特異的結合相互作用(すなわち、アデニンはチミンに、シトシンはグアニンに結合する)を介して結合する。温度を増大させ、そして低下させるサイクルにその反応混合物を繰り返し通す(標的配列上の2つのDNA鎖の解離、ポリメラーゼによる各鎖の相補コピーの合成、および新たな相補鎖の再アニーリングを可能にするため)ことによって、DNAの特定の配列のコピー数が迅速に増大され得る。
【0009】
標的核酸配列の増幅についての他の技術がまた、開発されている。例えば、Walkerら(米国特許第5,455,166号;EP0684315)は、Strand Displacement Amplification(SDA)と呼ばれる方法を記載し、これは、単一の温度で操作され、そして標的DNA配列の一本鎖フラグメント(これは、次いで、相補DNA(cDNA)鎖を産生するための鋳型として役立つ)を生成する酵素のポリメラーゼ/エンドヌクレアーゼの組み合わせを使用する点で、PCRとは異なる。核酸配列に基づく増幅(Nucleic Acid Sequence−Based Amplification(NASBA))と呼ばれる代替の増幅手順は、Daveyら(米国特許第5,409,818号;EP0329822)に開示される。SDAと同様に、NASBAは、等温反応を使用するが、PCRまたはSDAにおけるようなDNAプライマーではなく、増幅のためにRNAプライマーの使用に基づいている。別の公知の増幅手順には、Berningerら(米国特許第5,194,370号)に記載されるプロモーター連結活性化転写酵素(Promoter Ligation Activated Transcriptase(LAT))が含まれる。
【0010】
(PCRに基づくDNAフィンガープリンティング)
種々の増幅技術が利用可能であるにもかかわらず、ほとんどのDNAフィンガープリンティング法は、増幅についてはPCRに依存し、この技術について利用可能である十分に特徴づけられたプロトコルおよび自動化を利用する。これらのPCRに基づくフィンガープリンティング技術の例には、ランダム増幅化多型DNA(Random Amplified Polymorphic DNA(RAPD))分析(Williams,J.G.K.ら、Nucl.Acids Res.18(22):6531−6535(1990))、任意のプライマーPCR(Arbitrarily Primed PCR)(AP−PCR;Welsh,J.,およびMcClelland,M.,Nucl.Acids Res.18(24):7213−7218(1990))、DNA増幅フィンガープリント法(DNA Amplification Fingerprinting)(DAF;Caetano−Anollesら、Bio/Technology 9:553−557(1991))、およびミニサテライト領域DNAのマイクロサテライトPCRまたは直接的増幅(Directed Amplificatoin of Minisatellite−region DNA)(DAMD;Heath,D.D.ら、Nucl.Acids Res.21(24):5782−5785(1993))が含まれる。これらの方法の全ては、任意に選択されたプライマーを使用するPCRによるランダムDNAフラグメントの増幅に基づく。
【0011】
(DNA配列決定)
一般に、2つの技術は、核酸を配列決定するために伝統的に使用されてきた。その共同開発者(Maxam,A.M.およびGilbert,W.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 74:560−564、1977)にちなんで「マキサムおよびギルバート配列決定法」と呼ばれる第一の方法においては、DNAが放射標識され、4つのサンプルに分割され、そしてDNA中の特定のヌクレオチド塩基を選択的に破壊し、そして損傷部位で分子を切断する化学物質で処理される。得られるフラグメントをゲル電気泳動により明確なバンドへと分離し、そしてそのゲルをX線フィルムに曝露することによって、オリジナルのDNA分子の配列がそのフィルムから読みとられ得る。この技術は、特定の複雑なDNA分子(霊長類ウイルスSV40(Fiers,W.ら、Nature 273:113−120,1978;Reddy,V.B.,ら、Science 200:494−502,1978)、および細菌プラスミドpBR322(Sutcliffe,G.,Cold Spring Harbor Symp. Quant. Biol.43:444−448,1975)を含む)の配列を決定するために使用されてきた。
【0012】
その開発者(Sanger,F.,およびCoulson,A.R.,J.Mol.Biol.94:444,448,1975)にちなんで「サンガー配列決定法」と命名された配列決定のための代替の技術は、より一般的に利用される。この方法は、DNAポリメラーゼのDNA合成活性を使用し、これは、反応終結ジデオキシヌクレオシドトリホスフェート(Sanger,F.,ら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 74:5463−5467,1977)および短いプライマー(そのいずれかが検出可能に標識され得る)の混合物と合わせた場合、4つのジデオキシ塩基の1つで特異的に終結された一連の新たに合成されたDNAフラグメントを生じる。次いで、これらのフラグメントは、ゲル電気泳動によって分離され、そしてその配列が、上記のマキサムおよびギルバート配列決定法について記載したように決定される。4つの別々の反応(各ddNTPについて一回)を行うことにより、かなり複雑なDNA分子の配列でさえ、迅速に決定され得る(Sanger,F.,ら、Nature 265:678−695,1977;Barnes,W.,Meth.Enzymol.152:538−556,1987)。サンガーの配列決定法は、通常、E.coliまたはT7 DNAポリメラーゼを利用する(米国特許第4,795,699号)が、T7ポリメラーゼ変異体を使用するこの技術の最近の改変は、配列決定が、4つ全ての鎖終結ddNTPを異なる濃度で含有する単回の配列決定反応(米国特許第4,962,020号および同第5,173,411号)を使用することによって達成されることを可能にする。反応混合物において反応を害するピロリン酸の蓄積を低減または排除するためのこの技術に対するさらなる改変はまた、記載されている(米国特許第5,498,523号)。核酸分子を配列決定するための他の改変がまた記載されている(Murray,Nucl.Acids.Res.17:8889,1989;およびCraxton,Methods:A Comparison to Methods in Enzymology、3:20−25,1991、を参照のこと)。
【0013】
(限定)
上記のように、鋳型核酸分子の信頼性のある、かつ高忠実度の複製は、増幅、逆転写、および配列決定プロトコルにおける核酸分子の合成における本質的な工程である。しかし、この合成を達成するための標準的な組成およびプロトコルの使用は、しばしば、次の点で非効率的である:それらが核酸鋳型における特定の二次構造(Gerard,G.F.,ら、FOCUS 11(4):60(1989);Myers,T.W.,およびGelfand,D.H.,Biochemistry 30:7661(1991))障壁、および配列(Messer,L.I.,ら、Virol.146:146(1985));Abbotts,J.,ら、J.Biol.Chem.268:10312−10323(1993))障壁で核酸合成を未完のまま終結させる傾向がある。これは、高グアニジン/シトシン含量を有する鋳型配列(すなわち、「GCリッチ」鋳型)およびかなり大きなサイズの鋳型配列(すなわち、約3〜5kb長よりも長い鋳型)について特に本当である。鋳型核酸分子におけるこれらの二次構造および配列の障壁は、ホモポリマーストレッチで頻繁に発生し(Messer.L.I.ら、Virol.146:146(1985));Huber,H.E.,ら、J.Biol.Chem.264:4669−4678(1989);Myers,T.W.,およびGelfand,D.H.,Biochemistry 30:7661(1991))、そして二次構造障壁よりむしろ、配列障壁がより頻繁である(Abbotts,J.,ら、J.Biol.Chem.268:10312−10323(1993))。これらの障壁が克服できる場合には、合成反応における合計のかつ全長の核酸産物の収量が増大し得る。
【0014】
反応混合物のイオン強度または浸透圧、特にNa+およびK+イオンの濃度、の調整が、インビボでと同様に(LeRudulier,D.,ら、Science 224:1064(1984);Buche,A.,ら、J.Biomolec.Struct.Dyn.8(3):601(1990);Marquet,R.,およびHoussier,C.,J.Biomolec.Struct.Dyn.9(1):159(1991);Buche,A.,ら,J.Biomolec.Struct.Dyn.11(1):95(1993);Woodford,K.,ら、Nucl.Acids Res.23(3):539(1995);Flock、S.ら、Biophys.J.70:1456(1996);Flock,S.、ら、Biophys.J.71:1519(1996);EP0821059A2)、インビトロで核酸の二次構造および縮合に影響を及ぼし得ることを、いくつかの報告が示していた。これらの研究のいくつかにおいて、インビトロ核酸コンホメーションおよび安定性が、トレハロースのようなポリサッカライド(Carninci,P.,ら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 95:520−524(1998))、グリセロールおよびジメチルスルホキシドのような特定の共溶媒(Varadaraj,K.,およびSkinner,D.M.,Gene 140:1(1994));グリシンおよびその誘導体(Buche,A.,ら、FEBS Lett.247(2):367(1989);Flock,S.,ら、J.Biomolec.Struct.Dyn.13(1):87(1995);Houssier,C.,ら、Comp.Biochem.Physiol.117A(3):313(1997));βアラニン、アスパラギン、およびシスタミンのような低分子量アミン(Kondakova,N.V.,ら、Mol.Biol.(Moscow)9(5):742(1975);Aslanian,V.M.,ら、Biofizika 29(4):564(1984));ならびに他の窒素含有化合物およびプロリン、ベタイン、およびエクトイン(ectoine)のようなアミノ酸(Rees,W.A.,ら、Biochemistry 32:137−144(1993);WO95/20682;DE4411588C1;DE4411594C1;Mytelka,D.S.,ら、Nucl.Acids Res.24(14):2774(1996);Baskaran,N.,ら、Genome Res.6:633(1996);Weissensteiner,T.,およびLanchbury,J.S.,BioTechniques 21(6):1102(1996);Rajendrakumar,C.S.V.,ら、FEBS Letts.410:201−205(1997);Henke,W.,ら、Nucl.Acids Res.25(19):3957(1997);Hengen,P.N.TIBS 22:225(1997))を含む多くの天然および合成の浸透保護剤化合物の任意のものを含有する緩衝溶液において改善されるべきであることが見出された。ベタインおよびエクトインは、種々の細菌および動物の細胞における天然の浸透圧保護剤である(Chambers,S.T.,ら、J.Bacteriol.169(10):4845(1987);Randall,K.,ら、Biochim.Biophys.Acta 1291(3):189(1996);Randall,K.,ら、Biochem.Cell Biol.74(2):283(1996);Malin,G.,およびLapidot,A.,J.Bacteriol.178(2):385(1996);Gouesbet,G.,ら、J.Bacteriol.178(2):447(1996);Canovas,D.,ら、J.Bacteriol.178(24):7221(1996);Canovas,D.,ら,J.Biol.Chem.272(41):25794−25801(1997)。
【0015】
しかし、当該分野には、核酸分子、特にGCリッチおよび/または比較的大きな核酸分子の合成を増強するのに有用である化合物、組成物、および方法についての必要性が存在する。
【発明の概要】
【0016】
(発明の簡単な要旨)
本発明は、一般に、核酸分子、特にGCリッチ核酸鋳型に由来する核酸分子の合成を増強するのに有用な化合物、組成物、および方法に関する。1つの局面において、本発明は、核酸分子の合成における使用のための、特に増幅、逆転写、および配列決定反応のような鋳型媒介合成のための化合物および組成物に関する。本発明の化合物および組成物は、式Iおよび式IIからなる群から選択される化学式を有する1つ以上の化合物、およびその塩または誘導体を含む。1つの好ましい局面において、本発明において使用される化合物には、任意のアミノ酸、任意のサッカライド(モノサッカライドまたはポリサッカライド)、任意のポリアルコール、またはこれらの塩もしくは誘導体が含まれる。本発明の化合物または組成物には、式Iまたは式IIに示される化学式を有する化合物、またはその塩もしくは誘導体が含まれ、ここで、そのアリール基は、フェニル基、ナフチル基、フェナントリル基、アントラシル基、インデニル基、アズレニル基、ビフェニル基、ビフェニレニル基、およびフルオレニル基からなる群から選択され;ここで、そのハロ基は、フッ素、塩素、臭素、およびヨウ素からなる群から選択され;ここで、そのアルキル基は、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、ペンチル、へキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、およびデシルからなる群から選択され、そして分枝鎖アルキル基であり得;ここで、そのアルケニル基は、エテニル基、プロペニル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基、ノネニル基、およびデシニル基からなる群から選択され、そして分枝鎖アルケニル基であり得;ここで、そのアルケニル基は、エチニル基、プロピニル基、ブチニル基、ペンチニル基、ヘキシニル基、へプチニル基、オクチニル基、ノニニル基、およびデシニル基からなる群から選択され、そして分枝鎖アルキニル基であり得;そしてここで低級アルコキシ(エーテル)基は、上記のアルキル基の1つによって酸素置換されている。本発明はまた、このような化合物の塩および誘導体に関する。本発明の特に好ましい局面において、化合物は、4−メチルモルホリンN−オキシド、ベタイン、カルニチン、エクトイン、プロリン、グリシン、ピペコリン酸、トリメチルアミンNオキシド、N−アルキルイミダゾール化合物(例えば、1−メチルイミダゾールもしくは4−メチルイミダゾール)、平均分子量約50,000〜約500,000ダルトンのポリ(2−エチル−2−オキサゾリン)、平均分子量約100,000〜約200,000ダルトンのポリ(ジアリルジメチルアンモニウムクロライド)、またはその塩もしくは誘導体からなる群から選択される。本発明はまた、本発明の化合物、ならびに(i)熱安定酵素であり得る核酸ポリメラーゼ活性有する1つ以上の酵素、(ii)1つ以上のヌクレオチド、(iii)1つ以上の緩衝化塩、および(iv)1つ以上の核酸分子からなる群から選択される1つ以上のさらなる成分を含む組成物に関する。本発明のこの局面に従う好ましいこのような酵素には、DNAポリメラーゼ(例えば、Taq、Tne、Tma、Pfu、VENTTM、DEEPVENTTM、およびTth DNAポリメラーゼ、ならびにそれらの変異体、改変体、および誘導体)、RNAポリメラーゼ(例えば、SP6、T7、またはT3 RNAポリメラーゼ、ならびにそれらの変異体、改変体、および誘導体)、および逆転写酵素(例えば、M−MLV逆転写酵素、RSV逆転写酵素、AMV逆転写酵素、RAV逆転写酵素、MAV逆転写酵素、およびHIV逆転写酵素、ならびにそれらの変異体、改変体、および誘導体)が含まれ得る。好ましくは、このような逆転写酵素は、RNaseHスペース活性が減少するか、または実質的に減少する。
【0017】
本発明はまた、核酸分子を合成するための方法に関し、この方法は、(a)核酸鋳型(cDNA分子のようなDNA分子またはmRNA分子のようなRNA分子であり得る)と1つ以上の(好ましくは2つ以上、3つ以上、4つ以上、5つ以上等)の本発明の化合物もしくは組成物とを混合して、混合物を形成する工程;および(b)その混合物を、その鋳型の全部もしくは一部と相補的な第一の核酸分子を作製するために十分な条件下でインキュベートする工程、を包含する。本発明のこのような方法には、必要に応じて、1つ以上のさらなる工程(例えば、上記の第一の核酸分子を、この第一の核酸分子の全部または一部に対して相補的な第二の核酸分子を作製するために十分な条件下でインキュベートする工程)が包含され得る。本発明はまた、これらの方法によって作製される核酸分子、これらの核酸分子を含むベクター(発現ベクターであり得る)、ならびにこれらの核酸分子もしくはベクターを含む宿主細胞に関する。本発明はまた、ポリペプチドを産生する方法に関し、この方法は、上記の宿主細胞を、この宿主による上記ポリペプチドの産生に都合のよい条件下で培養する工程、およびそのポリペプチドを単離する工程を包含する。本発明はまた、このような方法によって産生されるポリペプチドに関する。
【0018】
本発明はまた、核酸分子を増幅するための方法に関し、この方法は、(a)核酸鋳型を1つ以上の本発明の化合物もしくは組成物と混合して、混合物を形成する工程、および(b)その混合物を、その鋳型の全部もしくは一部に相補的な核酸分子を増幅するために十分な条件下でインキュベートする工程、を包含する。より詳細には、本発明は、DNA分子を増幅する方法に関し、この方法は、以下:
(a)第一および第二のプライマーを提供する工程であって、この第一のプライマーは、上記DNA分子の上記第一鎖の3’末端またはその付近の配列に対して相補的であり、そして上記第二のプライマーは、上記DNA分子の上記第二鎖の3’末端またはその付近の配列に対して相補的である、工程;
(b)上記第一のプライマーを上記第一鎖に、そして上記第二のプライマーを上記第二鎖に対して、本発明の1つ以上の化合物もしくは組成物の存在下で、この第一鎖に対して相補的な第3のDNA分子およびこの第二鎖に対して相補的な第4のDNAが合成されるような条件下でハイブリダイズする工程;
(c)上記第一鎖および第三鎖、そして上記第二鎖および第四鎖を変性させる工程;ならびに
(d)工程(a)〜(c)を一回以上繰り返す工程、
を包含する。
【0019】
このような条件は、一つ以上のポリメラーゼ、一つ以上のヌクレオチドおよび/または一つ以上の緩衝用塩の存在下でのインキュベーションを包含し得る。本発明はまた、これらの方法によって増幅された核酸分子に関する。
【0020】
本発明はまた、以下の工程:(a)配列決定されるべき核酸分子を、1つ以上のプライマー、本発明の1つ以上の化合物または組成物、1つ以上のヌクレオチド、および1つ以上の終結因子と混合させ、混合物を形成する工程;(b)配列決定されるべき分子の全部もしくは一部に対して相補的な分子の集団を合成するために十分な条件下でその混合物をインキュベートする工程;ならびに(c)配列決定されるべき分子の全部および一部のヌクレオチド配列を決定するためにその集団を分離する工程、を包含する核酸分子を配列決定するための方法に関する。本発明は、より詳細には、DNA分子を配列決定する方法に関し、その方法は、以下の工程を包含する:(a)第一のDNA分子にプライマーをハイブリダイズする工程;(b)上記工程(a)の分子を、デオキシリボヌクレオシド三リン酸、本発明の1つ以上の化合物または組成物、および1つ以上のターミネーターヌクレオチドと接触させる工程;(c)工程(b)の混合物を、上記第一のDNA分子に相補的なDNA分子のランダム集団と合成するために十分な条件下でインキュベートする工程であって、ここで、この合成されたDNA分子が、この第一のDNA分子よりも長さが短く、そしてこの合成されたDNA分子が、その3’末端のターミネーターヌクレオチドを含む、工程;ならびに(d)上記合成されたDNA分子を、サイズにより分離することにより、上記第一のDNA分子の少なくとも上記ヌクレオチド配列の一部が決定され得る工程。
【0021】
このようなターミネーターヌクレオチドには、ddNTP、ddATP、ddGTP、ddITP、もしくはddCTPが含まれる。このような条件には、1つ以上のDNAポリメラーゼおよび/または緩衝用塩の存在下でのインキュベーションが含まれ得る。
【0022】
本発明はまた、核酸分子の合成における使用のためのキットに関し、そのキットは、1つ以上の本発明の化合物または組成物を含む1つ以上の容器を含む。本発明のこれらのキットは、必要に応じて、1つ以上のヌクレオチド、1つ以上のポリメラーゼ、および/または逆転写酵素、適切な緩衝液、1つ以上のプライマー、および1つ以上の終結因子(例えば、1つ以上のジデオキシヌクレオチド)からなる群から選択される1つ以上のさらなる構成要素を含み得る。
【0023】
本発明の他の好ましい実施態様は、以下の図面および本発明の説明、ならびに請求の範囲に照らして、当業者に明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】図1は、指示した濃度のプロリン、1−メチルイミダゾール、4−メチルイミダゾール、ベタインの存在下、またはこれらの共溶媒のいずれも存在しない下で増幅したPCR反応混合物のサンプルの、エチジウムブロミド染色したアガロースゲルの写真である。M:DNAサイズマーカーである。
【図2】図2は、指示した濃度のベタインまたはMMNOの存在下で増幅したPCR反応混合物のサンプルの、エチジウムブロミド染色したアガロースゲルの写真である。M:DNAサイズマーカー。
【図3】図3は、種々の化合物の組合せの存在下または非存在下で、3つの異なるPseudomonas aeruginosaアンプリコン(AprD、AprEおよびAprF)の増幅のサンプルのエチジウムブロミド染色したアガロースゲルの写真である。レーン1:1Mベタイン;レーン2 1M TMANO;レーン3−7:2M(レーン3)、1M(レーン4)、0.5M(レーン6)、0.4M(レーン6)、または0.2M(レーン7)のMMNO;レーン8:化合物なしのコントロール、M:DNAサイズマーカー。
【図4】図4は、指示した濃度のベタイン、MMNOまたはプロリンの存在または非存在下で、異なる反応緩衝液条件の下でのp53エキソン10のPCR増幅のサンプルの臭化エチジウム染色アガロースゲルの写真である。
【図5】図5は、指示した濃度のベタイン、MMNOまたはプロリンの存在または非存在下で、異なる反応緩衝液条件の下でのDra DNAポリメラーゼIのPCR増幅のサンプルの臭化エチジウム染色アガロースゲルの写真である。
【図6】図6は、異なるの比でのMMNOおよびプロリンの混合物の存在または非存在下で、あるいはベタイン、MMNOまたはプロリン単独の存在下で、異なる反応緩衝液条件(Mg++濃度)の下でのp53エキソン10のPCR増幅のサンプルの臭化エチジウム染色アガロースゲルの写真である。
【図7】図7は、異なるの比でのMMNOおよびプロリンの混合物の存在または非存在下で、あるいはベタイン、MMNOまたはプロリン単独の存在下で、異なる反応緩衝液条件(Mg++濃度)の下でのDra DNAポリメラーゼIのPCR増幅のサンプルの臭化エチジウム染色アガロースゲルの写真である。
【図8】図8は、GCリッチなP32D9テンプレートのPCR増幅のサンプルの臭化エチジウム染色アガロースゲルの写真であり、これは、MMNOおよびプロリンの混合物、またはベタインの、最適アニーリング温度に対する効果を示す。
【図9】図9は、ベタインまたはMMNOとプロリンとの1:1の混合物のいずれかの種々の濃度の存在下での、K562細胞株のゲノムDNA由来の脆弱X遺伝子座のPCR増幅のサンプルの臭化エチジウム染色アガロースゲルの写真である。レーン1:共溶媒なし;レーン2:0.25M;レーン3:0.5M;レーン4:0.75M、レーン5:1M、レーン6:1.25M、レーン7:1.5M、レーン8:1.75M、レーン9:2M。M:DNAサイズマーカー。
【図10】図10は、異なる濃度のMMNOとプロリンとの1;1混合物の存在下または非存在下での、2つの異なる長GCリッチアデノウイルスDNAフラグメントのPCR増幅のサンプルの臭化エチジウム染色アガロースゲルの写真である。レーン1:共溶媒なし;レーン2:0.25M;レーン3:0.5M;レーン4:1.0M。M:DNAサイズマーカー。
【図11】図11は、MMNOとプロリンとの1;1混合物(レーンA)、ベタイン(レーンB)、L−カルニチン(レーンC)、またはDL−ピペコリン酸(レーンD)の種々の濃度の存在下または非存在下でのK562ゲノムDNAのGCリッチフラグメントのPCR増幅のサンプルの臭化エチジウム染色アガロースゲルの写真である。レーン1:共溶媒なし;レーン2:0.25M;レーン3:0.5M;レーン4:1M;レーン5:1.5M;レーン6:2M。M:DNAサイズマーカー。
【図12】図12は、ベタイン(レーンA)またはエクトイン(ectoin)(レーンB)の種々の濃度の存在下または非存在下でのK562ゲノムDNAのGCリッチフラグメントのPCR増幅のサンプルの臭化エチジウム染色アガロースゲルの写真である。レーン1:共溶媒なし;レーン2:0.25M;レーン3:0.5M;レーン4:1M;レーン5:1.5M;レーン6:2M。M:DNAサイズマーカー。
【図13】図13は、本発明に従って使用され得る多数の例示的な化合物の構造を示す。
【発明を実施するための形態】
【0025】
(発明の詳細な説明)
(定義)
以下の説明において、組換えDNA技術において使用される多数の用語が広汎に利用される。そのような用語によって与えられる範囲を含め、発明の詳細な説明および請求の範囲のより明確かつ一貫した理解を提供するために、以下の定義が提供される。
【0026】
ライブラリー。本明細書において使用される場合、用語「ライブラリー」または「核酸ライブラリー」とは、1つの生物のDNA内容物の全部または有意な部分を代表する1セットの核酸分子(環状または直鎖状)(「ゲノムライブラリー」)または細胞、組織、器官もしくは生物において発現された遺伝子の全部または有意な部分を代表する1セットの核酸分子(「cDNAライブラリー」)を意味する。そのようなライブラリーは、1以上のベクター中に含まれていても、含まれていなくてもよい。
【0027】
ベクター。本明細書において使用される場合、「ベクター」とは、プラスミド、コスミド、ファージミドまたはファージDNAもしくは他のDNA分子であって、宿主中で自立複製し得、そして1つまたは少数の制限エンドヌクレアーゼ認識部位によって特徴付けられるものである。この認識部位では、このようなDNA配列では、そのベクターの本質的な生物学的機能を喪失することなく決定可能な様式で切断され得、そしてそこに、DNAが挿入されてその複製およびクローニングをなされ得る。そのベクターは、そのベクターを用いて形質転換された細胞の同定において使用するために適切なマーカーをさらに含み得る。例えば、マーカーとしては、テトラサイクリン耐性またはアンピシリン耐性が挙げられるがそれらに限定されない。
【0028】
プライマー。本明細書において使用される場合、「プライマー」とは、一本鎖のオリゴヌクレオチドであって、DNA分子の複製または重合化の間のヌクレオチドモノマーの共有結合によって伸長されるものをいう。
【0029】
テンプレート。用語「テンプレート」とは、本明細書において使用される場合、二本鎖または一本鎖の核酸分子であって、増幅され、合成され、または配列決定されるべきものをいう。二本鎖分子の場合において、その鎖を変性させて第一鎖および第二鎖を形成することは、好ましくは、これらの分子が増幅され得、合成され得、または配列決定され得る前に行われるか、あるいは、二本鎖分子は、直接テンプレートとして使用され得る。一本鎖テンプレートについて、そのテンプレートの一部と相補的なプライマーは、適切な条件下でハイブリダイズし、次いで1つ以上のポリメラーゼがそのテンプレートの全部または一部に相補的な核酸分子を合成し得る。あるいは、二本鎖テンプレートについて、1つ以上のプロモーター(例えば、SP6プロモーター、T7プロモーターまたはT3プロモーター)を、1つ以上のポリメラーゼと組み合せて使用して、そのテンプレートの全部または一部と相補的な核酸分子を作製し得る。本発明に従って、新たに合成された分子は、もとのテンプレートと等しい長さかまたはそれより短くあり得る。
【0030】
取り込み。用語「取り込み(む)」とは、本明細書において使用される場合、DNA分子および/またはRNA分子あるいはプライマーの一部となることを意味する。
【0031】
増幅。本明細書において使用される場合、「増幅」とは、ポリメラーゼの使用によってヌクレオチド配列のコピー数を増加させるための任意のインビトロ方法をいう。核酸増幅によって、DNA分子および/またはRNA分子あるいはプライマーへのヌクレオチドの組込みがおこり、それによって、テンプレートと相補的な新しい分子が形成される。形成された核酸分子およびそのテンプレートは、さらなる核酸分子を合成するためのテンプレートとして使用され得る。本明細書において使用される場合、1つの増幅反応は、多数回の複製からなり得る。DNA増幅反応としては、例えば、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)が挙げられる。1つのPCR反応は、5〜100の「サイクル」のDNA分子の変性および合成からなり得る。
【0032】
オリゴヌクレオチド。「オリゴヌクレオチド」とは、1つのヌクレオチドのデオキシリボースまたはリボースの3’位と、隣接するヌクレオチドのデオキシリボースまたはリボースの5’位との間のホスホジエステル結合によって結合されるヌクレオチドの共有結合配列を含む、合成または天然の分子をいう。ヌクレオチド。本明細書において使用される場合、「ヌクレオチド」とは、塩基−糖−リン酸の組合せをいう。ヌクレオチドは、核酸配列のモノマー単位(DNAおよびRNA)である。用語ヌクレオチドには、リボヌクレオシド三リン酸(ATP、UTP、CTP、GTPおよびデオキシリボヌクレオシド三リン酸(例えば、dATP、dCTP、dITP、dUTP、dGTP、dTTPまたはそれらの誘導体)が含まれる。そのような誘導体としては、例えば、[αS]dATP、7−デアザ−dGTPおよび7−デアザ−dATPおよびそれらを含む核酸分子に対してヌクレアーゼ耐性を与えるヌクレオチド誘導体が含まれる。用語ヌクレオチドはまた、本明細書において使用される場合、ジデオキシリボヌクレオシド三リン酸(ddNTP)およびその誘導体という。ジデオキシリボヌクレオシド三リン酸の例示的な例としては、ddATP、ddCTP、ddGTP、ddITPおよびddTTPが含まれるがそれらに限定されない。本発明に従って、「ヌクレオチド」は、標識されていていなくても、または周知技術によって検出可能に標識されていてもよい。検出可能な標識としては、例えば、放射性同位体、蛍光標識、化学発光標識、生物発光標識および酵素標識が挙げられる。
【0033】
ハイブリダイゼーション。用語「ハイブリダイゼーション」および「ハイブリダイズ(する)」とは、2つの相補的な一本鎖核酸分子(RNAおよび/またはDNA)の塩基対が二本鎖分子を与えることをいう。本明細書において使用される場合、2つの核酸分子は、塩基対が完全に相補的でなくても、ハイブリダイズし得る。従って、ミスマッチの塩基は、当該分野で周知な適切な条件が使用される場合2つの核酸分子のハイブリダイゼーションを妨害しない。
【0034】
単位。用語「単位」は、本明細書において使用される場合、酵素の活性をいう。例えば、熱耐性DNAポリメラーゼに言及する場合、1単位の活性は、30分間に、標準的なプライムされたDNA合成条件下で、10ナノモルのdNTPを酸不溶性材料(すなわち、DNAまたはRNA)へ取り込む酵素の量をいう。
【0035】
本明細書において使用されるような組換えDNA技術ならびに分子生物学および細胞生物学の分野で使用される他の用語は、適用される技術分野の当業者によって一般的に理解される。
【0036】
(概説)
本発明は、一般に、核酸分子、特に、GCリッチな核酸テンプレートの合成を増強するにおいて有用な化合物、組成物および方法に関する。特に、本発明は、以下の式Iおよび式IIからなる群より選択される式を有する化合物および1つ以上の化合物を含む組成物、またはその塩もしくは誘導体を提供する。好ましくは、少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、少なくとも5つ、少なくとも6つなどのこのような化合物または組成物が、本発明に従って使用される。最も好ましくは、2〜6、2〜5、2〜4、または2〜3のこのような化合物または組成物が使用される。本発明の化合物または組成物は、塩の形態で存在し得る。
式I
【0037】
【化6】
ここで、Aは、
【0038】
【化7】
であり、ここで、Xは、
【0039】
【化8】
であり、ここでZは、Yと同じであっても、異なっていてもよく、
ここで、YおよびZは各々独立して、−OH、−NH2、−SH、PO3H、−CO2H、−SO3Hおよび水素からなる群より選択され、fは、0〜2の整数であり、mは0〜20の整数であり、そしてeは、0〜2の整数であり;
ここで、R4、R5およびR6は、同一であっても、異なっていてもよく、そして独立して、水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アミノ、チオール、メルカプタン、ハロ、ニトロ、ニトリロ、ヒドロキシ、ヒドロキシアルキル、ヒドロキシアリール、ホスファト、アルコキシ、オキシド、エーテル、エステル(アルカノイルオキシ)、カルボキシ、カルボニル、スルホニル、スルホン基およびアミド基からなる群より選択され、そしてdは、0〜2の整数であり;
ここで、a、bおよびcは、独立して0〜1の整数であり、ただし、a、bおよびcの2つ以下が0であり;
ここで、R1、R2およびR3は、同じであっても、異なっていてもよく、そして独立して、以下からなる群より選択され:
a)=O
b)(W)g
|
−(CR7)n;
ここで、R7およびWは各々、同じであっても、異なっていてもよく、そして独立して、水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アミノ、チオール、メルカプタン、ハロ、ニトロ、ニトリロ、ヒドロキシ、ヒドロキシアルキル、ヒドロキシアリール、ホスファト、アルコキシ、オキシド、エーテル、エステル(アルカノイルオキシ)、カルボキシ、カルボニル、スルホニル、スルホン基およびアミド基からなる群より選択され;gは、0〜2の整数であり;そしてnは0〜20の整数であり;そして
ここで、qは、1〜100,000であり得る。
【0040】
式Iの化合物において、q=1である場合、式Iの化合物は、モノマーと考えられ得、そしてq=2〜100,000である場合、式Iの化合物は、2〜100,000のモノマーから構成されるマルチマーまたはポリマーであると考えられ得る。このモノマーは、各々が同じ構造を有していても、異なる構造を有していてもよく、そして1つ以上の基を通じて1つ以上の結合によって結合されて式Iの化合物のマルチマー(例えば、ポリマー)を形成し得る。
【0041】
好ましい局面において、a、bまたはcが0である場合、対応するR基は、電子対である。
【0042】
別の好ましい実施態様において、q=1であり、そして(R1)a、(R2)bおよび(R3)cが=Oであり、そして他の2つのR基が同じであるかまたは異なっており、そして独立して水素、メチル、エチルおよびプロピルからなる群より選択される場合、Aは、メチルでも、エチルでも、プロピルでもない。
式II
【0043】
【化9】
ここで、式IIは、飽和であるか、または不飽和であり;
ここで、qは、1〜100,000であり得;
ここで、Xは、N、C、O、PおよびSからなる群より選択され;
Yは、O、N、S、P、C、−O−NH−、−O−CH2−O−、−O−S−、−O−CH2−S−、−O−CH2−NH−、−NH−S−、−NH−CH2−NH−、−O−CH(CH3)−NH−、−NH−CH(CH3)−NH−、−O−CH(CH3)−O−、−NH−C(CH3)2−NH−、−NH−CH2−S−、および他のメルカプタン、ホスファト、アルコキシ、オキシド、エーテル、エステル(アルカノイルオキシ)、カルボキシ、スルホニル、スルホン基、およびアミド基からなる群より選択され;そして
ここで、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7およびR8は、同一であっても、異なっていてもよく、そして独立して、水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アミノ、チオール、メルカプタン、ハロ、ニトロ、ニトリロ、ヒドロキシ、ヒドロキシアルキル、ヒドロキシアリール、ホスファト、アルコキシ、オキシド、エーテル、エステル(アルカノイルオキシ)、カルボキシ、スルホニル、スルホン基およびアミド基からなる群より選択され;
ここで、a、b、c、d、e、m、n、およびoは、整数であって、同じであっても、異なっていてもよく、そして独立して、a、b、c、dおよびeについては、0〜2から選択され、そしてm、nおよびoについては、0〜5から選択される。
【0044】
式IIの化合物において、q=1である場合、式IIの化合物は、モノマーと考えられ得、そしてq=2〜100,000である場合、式IIの化合物は、2〜100,000のモノマーから構成されるマルチマーまたはポリマーであると考えられ得る。このモノマーは、各々が同じ構造を有していても、異なる構造を有していてもよく、そして1つ以上の基を通じて1つ以上の結合によって結合されて式IIの化合物のマルチマー(例えば、ポリマー)を形成し得る。
【0045】
本発明の1つの好ましい局面において、Yおよび/またはZはNであり、そしてm、nおよびoは1である。別の好ましい局面において、Yおよび/またはXは、Nおよび/またはOであり、そしてmおよびnは、1であり、そしてoは2である。好ましくは、a、b、c、dおよび/またはeは0である場合、対応するR基は、電子対であるか、または、不飽和構造の形成に関与する。
【0046】
式Iおよび式IIの化合物について:
代表的なC6-14アリール基は、以下を含むがそれらに限定されない:フェニル基、ベンジル基、メチルインドリル基、ナフチル基、フェナントリル基、アントラシル基、インデニル基、アズレニル基、ビフェニル基、ビフェニレニル基、およびフルオレニル基;
代表的なハロ基は、以下を含むがそれらに限定されない:フッ素、塩素、臭素およびヨウ素;
代表的なC1-15アルキル基は、以下を含むがそれらに限定されない:メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、へプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ならびに分枝鎖アルキル基;
代表的なC2-15アルケニル基は、以下を含むがそれらに限定されない:エテニル基、プロペニル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、へプテニル基、オクテニル基、ノネニル基、デセニル基など、ならびに分枝鎖アルケニル基;
代表的なC2-15アルキニル基は、以下を含む:エチニル基、プロピニル基、ブチニル基、ペンチニル基、ヘキシニル基、へプチニル基、オクチニル基、ノニニル基、デシニル基など、ならびに分枝鎖アルキニル基;
代表的な低級アルコキシ(エーテル)基は、上記において言及したC1-4アルキル基の1つによる酸素置換物を含み;そして
代表的なC2-6アルカノイルオキシ基は、アセトキシ、プロピオニルオキシ、ブタノイルオキシ、ペンタノイルオキシ、ヘキサノイルオキシおよびそれらの分枝鎖異性体を含む。
【0047】
本発明に従って使用され得る化合物は、糖類、アミノ酸および多価アルコールならびにそれらの誘導体を含む。糖類の例は、オリゴ糖、および単糖類(例えば、トレハロース、マルトース、グルコース、スクロース、ラクトース、キシロビオース、アガロビオース、セロビオース、レバンビオース(levanbiose)、キトビオース(quitobiose)、2−β−グルクロノシルグルクロン酸(2−β−glucuronosylglucuronic acid)、アロース、アルトロース、ガラクトース、グロース、イドース、マンノース、タロース、ソルビトール、レブロース、キシリトールおよびアラビトール)を含むが、これらに限定されない。
【0048】
このようなアミノ酸は、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、トリプトファン、メチオニン、グリシン、セリン、スレオニン、システイン、チロシン、アスパラギン、グルタミン、アスパラギン酸、グルタミン酸、リジン、アルギニン、およびヒスチジン、ならびにそれらの誘導体を含み得るが、それらに限定されない。アミノ酸のD型およびL型、ならびに非タンパク質アミノ酸の両方が、本発明にしたがって使用され得る。例としては、N−(3’−オン−5’−メチル)−ヘキシルアラニン、ロイシンベタイン、N−メチルイソロイシン、およびγ−グルタミルロイシンが挙げられる。
【0049】
多価アルコールの例としては、グリセロール、エチレングリコール、ポリエチレングリコールなどを含むが、これらに限定されない。
【0050】
本発明の好ましい化合物は、4−メチルモルホリン N−オキシド(MMNO)、およびN−アルキルイミダゾール化合物(例えば、1−メチルイミダゾール、2−メチルイミダゾール、および4−メチルイミダゾール、ベタイン(カルボキシメチル−トリメチルアンモニウム)、タウリン、エクトイン、ピペコリン酸(pipecolinic acid)、ピペコリン酸、2−モルフォリノエタンスルホン酸、ピリジン N−オキシド、N,N−ジメチルオクチルアミン N−オキシド、3−メチルイソキサゾール−5(4H)−オンモルホリン塩、グリシン、ソルコシン(sorcosine)、N−N−ジメチルグリシン、N−メチル−プロリン、4−ヒドロキシ−プロリン、1−メチル−2−ピロールカルボン酸、1−メチルインドール−2−カルボン酸、2−ピラジンカルボン酸、5−メチル−2−ピラジンカルボン酸、4−メチル−5−イミダゾール−カルボキシアルデヒド(carboxoaldehyde)、1−メチルピロール−2−カルボン酸、硝酸1−エチル−3−メチルイミダゾリウム(methylimidazolium)、エチルアゼチジン−1−プロピオネート、N,N−ジメチル−フェニルアラニン、S−カルボキシメチル−システイン、2−イミダゾールカルボキシアルデヒド(imidazolecarboxaldehyde)、4−イミダゾール酢酸、4−イミダゾールカルボン酸、4,5−イミダゾールジカルボン酸(imidazdedicarboxylic acid)、カルニチンNe−アセチル−b−リジン、γ−アミノ酪酸、トランス−4−ヒドロキシスタキドリン、Nα−カルバモイル−L−グルタミン l−アミド、コリン、ジメチルテチン、(スルホベタインおよびジメチルアセトテチン、ならびにそれらの誘導体)、N−アセチルグルタミニルグルタミンアミド、ジメチルスルホニオプロピオネート(dimethylsulfoniopropionate)、エクトイン(1,4,5,6−テトラヒドロ−2メチル−4−ピリミジン(pirymidine)カルボン酸)、ヒドロキシエクトイン、グルタミン酸、β−グルタミン(glutammine)、オクトピン、サルコシン、ならびにトリメチルアミン N−オキシド(TMAO)、平均分子量が約50,000〜約500,000ダルトンのポリ(2−エチル−2−オキサゾリン)、平均分子量が約100,000〜約200,000ダルトンのポリ(ジアリルジメチル塩化アンモニウム)ならびに他のアミノ酸およびその誘導体を含み得るが、それに限定されない。
【0051】
さらに好ましい化合物には、式IおよびIIの化合物の誘導体および塩を含む。例えば、式Iまたは式IIの化合物が、カルボキシル(C=O)基を含む場合、本発明の化合物は、化学合成の慣用的な方法(例えば、カルボキシル含有化合物とアルコールまたはアミノ化合物を凝集させることによって)を使用して調製され得るカルボキシル基のエステルおよびアミドを含む。本発明のこの側面に従った有用なアルコールの例は、C1-6アルコールおよびC7-12アラルカノール(aralkanol)化合物を含み、これらはメタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、およびそれらの分枝鎖アイソマーを含むが、これに限定されない。本発明のこの局面に従った有用なアミノ化合物の例は、C1-6アミノ化合物およびC7-12アラルクアミノ(aralkamino)化合物を含み、これらはメチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、ペンチルアミン、ヘキシルアミンおよびそれらの分枝鎖アイソマーを含むが、これに限定されない。式Iまたは式IIの化合物が、ヒドロキシ(−OH)基を含む場合、本発明の化合物は、ヒドロキシ含有化合物と、例えば、C1-6アルカン酸、C6-12アラルカン酸(aralkanoic acid)またはC2-12ジアルカン酸またはその無水物(例えば、蟻酸、酢酸、プロピオン酸、ブタン酸、ペンタン酸、ヘキサン酸およびそれらの分枝鎖アイソマー、ならびにコハク酸、無水コハク酸、フマル酸、マレイン酸など)との凝集により調製され得るそのような化合物のエステルを含む。本発明に従って調製され、そして使用され得る式Iおよび式IIの化合物の他の誘導体は、本明細書に含まれる教示および当該分野の知識を考慮すると当業者に明らかである。
【0052】
式IおよびIIの化合物の塩もまた本発明の範囲内に含まれる。式IおよびIIの化合物の酸を付加した塩は、慣用的な化学合成の方法(例えば、塩酸、フマル酸、マレイン酸、コハク酸、酢酸、クエン酸、酒石酸、カルボン酸、リン酸、シュウ酸などを含む酸の溶液との特定の化合物溶液の混合による)により形成され得る。式IおよびIIの化合物の塩基性塩は、化学合成の慣用的な方法(例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化コリン、炭酸ソーダ、Trisなどのような塩基性の溶液との特定の化合物溶液の混合による)を使用して形成され得る。本発明に従って調製されそして使用され得る式IおよびIIの化合物の他の塩は、本明細書中に含まれる教示および当該分野の知識を考慮すると当業者に明らかである。
【0053】
上記の化合物および組成物は、単独でまたはそれらの任意の組み合わせで使用され得る。好ましくは、少なくとも2つの組み合わせ、少なくとも3つの組み合わせ、少なくとも4つの組み合わせ、少なくとも5つの組み合わせなどが、本発明に従って使用される。好ましい局面において、2〜10個、2〜9個、2〜8個、2〜7個、2〜6個、2〜5個、2〜4個、および2〜3個のこのような化合物が、使用される。好ましい局面において、本発明は、上記の化合物の任意の組み合わせを混合することにより得られる組成物に関する。このような化合物と共に混合する場合、特定の相互作用が生じ得、これは、混合されている化合物の1つ以上の構造を変化し得、そして新規なまたは異なる化合物を生じ得る。
【0054】
これらの組成物は、核酸分子の増強された、高性能な合成のための方法に使用され得、これらは、増幅方法(特にPCR)、逆転写方法、および配列決定方法を含む。本発明はまた、これらの方法により生成される核酸分子、それらのフラグメントまたはそれらの誘導体、およびこのような核酸分子、フラグメントまたは誘導体を含むベクターおよび宿主細胞に関する。本発明はまた、所望のポリペプチドを生成するためのこのような核酸分子の使用に関する。本発明はまた、本発明の化合物または組成物を含むキットに関する。
【0055】
(合成方法)
式IおよびIIの化合物は、以下のように当業者に公知な有機化学合成の標準的な技術を使用して合成され得る。
【0056】
式Iの化合物の合成は、以下のように実行され得る:
【0057】
【化10】
例えば、ここでR4およびZはHであり、Yは−CO2Hであり、d,e、f、およびmは、1であり、次いで、出発化学物質は、市販のBrCH2CH2CO2Hである。
【0058】
式IIの化合物の合成は、以下のように実行され得る:
【0059】
【化11】
例えば、ここで、R2およびR3は、Hであり;bおよびmは、1であり、;c−1およびn−1は、0であり、次いで、出発化学物質は、市販のNH2−CH2−COHである。
【0060】
BrCH2CO2H、CH3CH(Br)CO2H、CH2CH2CH(Br)CO2H、BrCH2CH2CH2CO2H、Cl−CH2−CH2−Cl(CH3)2CHCH(Br)CO2、CH3CH2CH(Br)CO2H、BrCH2CH2CH2CO2H、BrCH2CH2CO2H、HO2CCH2CH(Br)CO2Hもまた、市販されている。このような化合物は、Aldrich(St.Louis、MO)から入手し得る。
【0061】
アミノ酸、およびそれらの誘導体、糖類、およびそれらの誘導体、ならびにN−アルキルイミダゾール化合物(1−メチルイミダゾールおよび4−メチルイミダゾールを含む)のような、本発明において使用するための、多数の化合物は、例えば、Sigma(St.Louis、MO)から、商業的に入手され得る。
【0062】
本発明の組成物を処方するために、上記の1つ以上の化合物が,任意の様式で一緒に混合され得る。このような混合物は、それらの粉末の形態でこれらの化合物を混合させる工程、水溶性溶媒または有機溶媒中で各化合物の溶液を調製する工程、ならびに本発明の組成物を形成するために、溶液を混合する工程、あるいは少なくとも1つの化合物の溶液を調製する工程、および1つ以上のさらなる化合物の粉末形態を混合する工程により、達成され得る。
【0063】
本発明のさらなる好ましい局面において、本発明の組成物は、核酸ポリメラーゼ活性を有する1つ以上のポリペプチドをさらに含み得る。核酸ポリメラーゼ活性を有するこのような好ましい酵素は、DNAポリメラーゼ活性を有するポリペプチド、RNAポリメラーゼ活性を有するポリペプチド、および逆転写酵素活性を有するポリペプチドを含み得るが、これらに限定されない。
【0064】
さらに好ましくは、本発明の組成物は、作業濃度で、または濃縮物(2×、5×、10×、50×など)として提供される。このような組成物は、種々の温度での保存の際に、好ましくは安定である。用語「安定」および「安定性」は、本明細書において使用される場合、一般的に、組成物が、約4℃の温度での約1週間、約−20℃の温度で約6ヶ月間保存された後、元の酵素および/または化合物の活性の、少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、および最も好ましくは約90%の成分(例えば、組成物の化合物または酵素)を保持することを意味する。本明細書で使用する場合、用語「作業濃度」は、特定の機能(例えば核酸の合成)を行なうために、溶液中で使用される最適濃度または最適に近い濃度である化学化合物または酵素の濃度を意味する。
【0065】
本発明の組成物の形成において使用され得る水は、好ましくは、蒸留され、脱イオン化され、および滅菌濾過され(0.1〜0.2μmフィルターを通して)、ならびにDNase酵素およびRNase酵素によって汚染されていない水である。このような水は、例えば、Sigma Chemical Company(Saint Louis、Missouri)から市販されているか、または必要な場合は、当業者に周知の方法に従って作製され得る。
【0066】
化学(および必要に応じてポリペプチド)成分に加えて、本発明の組成物は、好ましくは、1つ以上の緩衝液および核酸分子の合成に必要なコファクターを含む。本発明の組成物の形成に使用するための特に好ましい緩衝液は、酢酸塩、硫酸塩、塩酸塩、リン酸塩、またはトリス−(ヒドロキシメチル)アミノメタン(TRIS(登録商標))の遊離酸形態であるが、等価な結果を有するTRIS(登録商標)と、ほぼ同じイオン強度およびpKaの代替緩衝液が、使用され得る。緩衝液の塩に加えて、カリウム塩(好ましくは、塩化カリウムまたは酢酸カリウム)およびマグネシウム塩(好ましくは、塩化マグネシウムまたは酢酸マグネシウム)のようなコファクター塩が、組成物中に含まれる。
【0067】
しばしば、最初に緩衝液およびコファクター塩を作業濃度で水に溶解すること、ならびに化学化合物(および必要に応じてポリペプチド)を添加する前に溶液のpHを調整することは、好ましい。この方法において、任意のpH感受性化学化合物およびポリペプチドは、本発明の組成物の処方の間、酸媒介のまたはアルカリ媒介の不活化または分解をあまり受けない。
【0068】
緩衝化塩溶液を処方するために、好ましくは、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン(TRIS(登録商標))の塩であり、そして最も好ましくは、その塩酸塩の塩である緩衝剤の塩は、十分な量の水と合わされ、5〜150ミリモーラーの濃度のTRIS(登録商標)を、好ましくは、10〜60ミリモーラーのTRIS(登録商標)を、最も好ましくは、約20〜60ミリモーラーのTRIS(登録商標)を有する溶液を生じる。この溶液にマグネシウム塩(好ましくは、その塩化物または酢酸塩のいずれか)が添加され、1〜10ミリモーラー、好ましくは1.5〜8.0ミリモーラー、および最も好ましくは、約3〜7.5ミリモーラーのその作業濃度を提供し得る。カリウム塩(最も好ましくは、塩化カリウム)もまた、10〜100ミリモーラーの作業濃度で、および最も好ましくは、約75ミリモーラーの作業濃度で溶液に添加され得る。ジチオスレイトールのような還元剤は、好ましくは約1〜100mMの終濃度で、より好ましくは、約5〜50mMまたは約7.5〜20mMの濃度で、そして最も好ましくは、約10mMの濃度で、溶液に添加され得る。エチレンジアミン四酢酸(EDTA)二ナトリウムのような少量のEDTAの塩もまた添加され得るが(好ましくは、約0.1mM)、EDTAの含有は、本発明の組成物の機能または安定性に必須ではないようである。全ての緩衝液および塩を添加した後、この緩衝化塩溶液は、すべての塩が溶解するまでよく混合され、そしてpHは、当該分野で公知の方法を使用して、7.4〜9.2のpH値、好ましくは8.0〜9.0のpH値、ならびに最も好ましくは、約8.4のpH値に調整される。
【0069】
これらの緩衝化塩溶液に、本発明の化合物および必要に応じて、核酸ポリメラーゼ活性を有する1つ以上のポリペプチドを添加し、本発明の組成物を生成する。
【0070】
好ましい組成物において、本発明の化合物は、約10:1、約9:1、約8:1、約7:1、約6:1、約5:1、約4:1、約3:1、約2.5:1、約2:1、約1.75:1、約1.5:1、約1.25:1、約1:1、約1:1.25、約1:1.5、約1:1.75、約1:2、約1:2.5、約1:3、約1:4、約1:5、約1:6、約1:7、約1:8、約1:9、または約1:10のモル比あるいは化学量論比で混合される。より好ましくは、化合物は、約1:1のモル比または化学量論比で混合される。他のモル比または化学量論比が、慣用的な最適化により決定され得る。2つより多い化合物を使用して、本発明の組成物を形成する場合、各化合物の量が、核酸合成に対する効果を試験することにより容易に最適化され得る。次いで、これらの化合物は、以下に記載の核酸合成方法で使用するために、約0.01〜5M、約0.05〜5M、約0.1〜4M、約0.25〜3M、約0.3〜2.5M、約0.4〜2M、約0.4〜1.5M、約0.4〜1M、または約0.4〜0.8Mの作業濃度で好ましくは組成物中に処方される。使用される化合物によって、他のモル量が、所望の結果に依存して使用され得る。次いで、本発明の組成物は、核酸分子の合成に使用するまで、65℃で2〜4週間、室温〜37℃で1〜2ヶ月、4℃で1〜6ヶ月、そして−20℃で3ヶ月から1年以上保存され得る。
【0071】
ポリメラーゼ活性を有する種々のポリペプチドは、本発明に従って有用である。核酸ポリメラーゼ(DNAポリメラーゼおよびRNAポリメラーゼを含む)のような酵素が、これらのポリペプチドの中に含まれる。このようなポリメラーゼは、以下を含むがそれに限定されない:Thermus thermophilus(Tth)DNAポリメラーゼ、Thermus aquaticus(Taq)DNAポリメラーゼ、Thermotoga neopolitana(Tne)DNAポリメラーゼ、Thermotoga maritima(Tma)DNAポリメラーゼ、Thermococcus litoralis(TliまたはVENTTM)DNAポリメラーゼ、Pyrococcus furiosus(Pfu)DNAポリメラーゼ、DEEPVENTTMDNAポリメラーゼ、Pyrococcus woosii(Pwo)DNAポリメラーゼ、Pyrococcus sp KDD2(KOD)DNAポリメラーゼ、Bacillus sterothermophilus(Bst)DNAポリメラーゼ、Bacillus caldophilus(Bca)DNAポリメラーゼ、Sulfolobus acidocaldarius(Sac)DNAポリメラーゼ、Thermoplasma acidophilum(Tac)DNAポリメラーゼ、Thermusflavus(Tfl/Tub)DNAポリメラーゼ、Thermus ruber(Tru)DNAポリメラーゼ、Thermus brockianus(DYNAZYMETM)DNAポリメラーゼ、Methanobacterium thermoautotrophicum(Mth)DNAポリメラーゼ、mycobacterium DNAポリメラーゼ(Mtb、Mlep)、ならびにそれらの変異体、改変体および誘導体。T3、T5およびSP6、ならびにそれらの変異体、改変体および誘導体のようなRNAポリメラーゼもまた、本発明に従って使用され得る。
【0072】
本発明おいて使用される核酸ポリメラーゼは、中温性または好熱性であり得、そして好ましくは、好熱性である。好ましい中温性のDNAポリメラーゼは、T7 DNAポリメラーゼ、T5 DNAポリメラーゼ、クレノウ断片DNAポリメラーゼ、DNAポリメラーゼIIIなどを含む。本発明の方法および組成物において使用され得る、好ましい耐熱性DNAポリメラーゼは、Taq、Tne、Tma、Pfu、Tfl、Tth、Stoffel断片、VENTTMおよびDEEPVENTTM DNAポリメラーゼ、ならびにそれらの変異体、改変体、および誘導体を含む(米国特許第5,436,149号;米国特許第4,889,818号;米国特許第4,965,188号;米国特許第5,079,352号;米国特許第5,614,365号;米国特許第5,374,553号;米国特許第5,270,179号;米国特許第5,047,342号;米国特許第5,512,462号;WO92/06188;WO92/06200;WO96/10640;Barnes、W.M.、Gene 112:29−35(1992);Lawyer、F.C.ら、PCR Meth.Appl.2:275−287(1993);Flaman、J.−Mら、Nucl.Acids Res.22(15):3259−3260(1994))。長い核酸分子(例えば、約3〜5Kb長より長い核酸分子)の増幅のために、少なくとも2つのDNAポリメラーゼ(一方は、3’エキソヌクレアーゼ活性を実質的に欠いており、そして片方は、3’エキソヌクレアーゼ活性を有する)が、代表的に使用される。米国特許第5,436,149号;米国特許第5,512,462号;Barnes、W.M.、Gene 112:29−35(1992);および同時係属中の米国特許出願第08/801,720号(1997年2月14日出願)(これらの開示の全体が参考として本明細書中に援用される)を参照のこと。実質的に3’エキソヌクレアーゼ活性を欠くDNAポリメラーゼの例は、Taq、Tne(exo-)、Tma(exo-)、Pfu(exo-)、Pwo(exo-)およびTth DNAポリメラーゼ、ならびにそれらの変異体改変体および誘導体を含むが、それらに限定されない。
【0073】
本発明において使用するための逆転写活性を有するポリペプチドは、逆転写活性を有する任意のポリペプチドを含む。このような酵素は、レトロウイルス逆転写酵素、レトロトランスポゾン逆転写酵素、B型肝炎逆転写酵素、カリフラワーモザイクウイルス逆転写酵素、細菌性逆転写酵素、Tth DNAポリメラーゼ、Taq DNAポリメラーゼ(Saiki、R.K.ら、Science 239:487−491(1988);米国特許第4,889,818号および同第4,965,188号)、Tne DNAポリメラーゼ(WO96/10640)、Tma DNAポリメラーゼ(米国特許第5,374,553号)、ならびにそれらの変異体、改変体、および誘導体(例えば、A.John HughesおよびDeb K.Chatterjeeの同時係属中の米国特許出願第08/706,702号および同第08/706,706号(ともに、1996年9月9日出願))(これらは、その全体が参考として本明細書中に援用される)を含む、がそれらに限定されない。本発明の使用のために好ましい酵素は、RNase H活性において減少または実質的に減少する酵素を含む。「RNase H活性において実質的に減少する」酵素とは、酵素が、対応する野生型またはRNase H+酵素(例えば、野生型モロニーマウス白血病ウイルス(M−MLV)逆転写酵素、鳥類骨髄芽球症ウイルス(AMV)逆転写酵素、またはラウス肉腫ウイルス(RSV)逆転写酵素)のRNase H活性の約20%未満、より好ましくは約15%、10%、または5%未満、そして最も好ましくは約2%未満の活性を有することを意味する。任意の酵素のRNase酵素活性は、様々なアッセイ(例えば、米国特許第5,244,797号、Kotewicz,M.L.ら、Nucl.Acids Res.16:265(1988)およびGerard、G.F.ら、FOCUS 14(5):91(1992)に記載されるアッセイ)によって決定され得、この開示の全ては、本明細書中に参考として全てが援用される。本発明の使用のために特に好ましいこのようなポリペプチドは、M−MLV H-逆転写酵素、RSV H-逆転写酵素、AMV H-逆転写酵素、RAV(ラウス関連ウイルス)H-逆転写酵素、MAV(骨髄芽球症関連ウイルス)H-逆転写酵素およびHIV H-逆転写酵素を含むが、これらに限定されない。しかし、RNase H活性が実質的に減少しているリボ核酸分子(すなわち、逆転写酵素活性を有する)から、DNA分子を生成し得る任意の酵素は、本発明の組成物、方法およびキットにおいて同価に使用され得ることが当業者に理解される。
【0074】
本発明において使用するための、DNAポリメラーゼおよびRNAポリメラーゼは、例えば、Life Technologies、Inc.(Rockville、Maryland)、Perkin−Elmer(Branchburg、New Jersey)、New England BioLabs(Beverly、Massachusetts)またはBoehringer Mannheim Biochemicals(Indianapolis、Indiana)から商業的に入手され得る。本発明における使用のための逆転写活性を有するポリペプチドは、例えば、Life Technologies、Inc.(Rockville、Maryland)、Pharmacia(Piscataway、New Jersey)、Sigma(Saint Louis、Missouri)またはBoehringer Mannheim Biochemicals(Indianapolis、Indiana)から商業的に入手され得る。あるいは、逆転写活性を有するポリペプチドは、それらの天然のウイルスまたは細菌供給源から、当業者に周知の天然のタンパク質を単離および精製するための標準的な手順に従って、単離され得る(例えば、Houts、D.E.ら、J.Virol.29:517(1979)を参照のこと)。さらに、逆転写活性を有するポリペプチドは、当業者に知られる組換えDNA技術により調製され得る(例えば、Kotewicz、M.L.ら、Nucl.Acids Res.16:265(1988);Soltis、D.A.およびSkalka A.M.、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85:3372−3376(1988)を参照のこと)。
【0075】
ポリメラーゼ活性または逆転写酵素活性を有するポリペプチドは、好ましくは、約0.1〜200単位/ml、約0.1〜50単位/ml、約0.1〜40単位/ml、約0.1〜36単位/ml、約0.1〜34単位/ml、約0.1〜32単位/ml、約0.1〜30単位/ml、または約0.1〜20単位/mlの溶液中の最終濃度で、そして最も好ましくは約20〜40単位/mlの濃度で、本発明の組成物および方法において使用される。もちろん、本発明における使用に適切なこのようなポリメラーゼまたは逆転写酵素の他の適切な濃度は、当業者に明らかである。
【0076】
(核酸合成の方法)
本発明の化合物および組成物は、核酸の合成のための方法において使用され得る。特に、本発明の化合物および組成物は、特に、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)のような増幅反応を介して、高含量のグアニンおよびシトシンを有する核酸分子(すなわち、「GCリッチ」核酸分子)の合成を容易にすることが発見されている。従って、本発明の化合物および組成物は、核酸分子(例えば、DNA(特に、cDNA)分子およびRNA(特に、mRNA)分子)の合成を必要とする任意の方法において使用され得る。本発明の化合物または組成物が有利に使用され得る方法としては、核酸合成方法、核酸増幅方法、核酸逆転写酵素、および核酸配列決定方法が挙げられるが、これらに限定されない。
【0077】
(合成)
本発明のこの局面に従う核酸合成方法は、1以上の工程を包含し得る。例えば、本発明は、(a)核酸テンプレートと本発明の1以上の上記の化合物および組成物を混合して、混合物を形成する工程;および(b)そのテンプレートの全てまたは一部に相補的な第一の核酸分子を生成するのに十分な条件下で、その混合物をインキュベートする工程を含む、核酸分子を合成するための方法を提供する。本発明のこの局面に従って、核酸テンプレートは、DNA分子(例えば、cDNA分子またはライブラリー)、あるいはRNA分子(例えば、mRNA分子)であり得る。
【0078】
本発明に従って、投入する(input)核酸分子またはライブラリーは、天然の供給源(例えば、種々の細胞、組織、器官または生物体)から得られた核酸分子の集団から調製され得る。核酸分子の供給源として使用され得る細胞は、原核生物(以下の属の種の細胞を含む、細菌細胞;Escherichia、Bacillus、Serratia、Salmonella、Staphylococcus、Streptococcus、Clostridium、Chlamydia、Neisseria、Treponema、Mycoplasma、Borrelia、Legionella、Pseudomonas、Mycobacterium、Helicobacter、Erwinia、Agrobacterium、Rhizobium、およびStreptomyces)または真核生物(以下を含む;真菌(特に、酵母)、植物、原生生物、および他の寄生動物、ならびに昆虫(特に、Drosophila種細胞)、線虫(特に、Caenorhabditis elegans細胞)、および哺乳動物(特に、ヒト細胞)を含む動物)であり得る。
【0079】
核酸分子の供給源または核酸分子のライブラリーとして使用され得る哺乳動物体細胞としては以下が挙げられる;血球(網状赤血球および白血球)、内皮細胞、上皮細胞、神経細胞(中枢神経系または末梢神経系由来)、筋肉細胞(骨格筋、平滑筋、または心筋由来の筋細胞および筋芽細胞を含む)、結合組織細胞(線維芽細胞、脂肪細胞、軟骨細胞、軟骨芽細胞、骨細胞および骨芽細胞を含む)、および他の間質細胞(例えば、マクロファージ、樹状細胞、シュヴァン細胞)。哺乳動物生殖細胞(精母細胞および卵母細胞)もまた、本発明での使用のための核酸の供給源またはライブラリーとして使用され得る。上記の体細胞および生殖細胞を生じる前駆体(progenitor)、前駆体(precursor)および幹細胞も、同様に使用され得る。以下のような哺乳動物の組織または器官もまた、核酸の供給源としての使用に適切である;脳組織、腎臓組織、肝臓組織、膵臓組織、血液組織、骨髄組織、筋肉組織、神経組織、皮膚組織、尿生殖組織、循環組織、リンパ組織、胃腸組織および結合組織の供給源、ならびに哺乳動物(ヒトを含む)胚または胎児由来の組織または器官。
【0080】
上記の任意の原核生物または真核生物の、細胞、組織、および器官は、正常、病的状態、形質転換体、樹立体、前駆体(progenitor)、前駆体(precursor)、胎性、または胚性であり得る。病的細胞は、例えば、感染性疾患(細菌、真菌または酵母、ウイルス(HIVを含む)あるいは寄生動物により引き起こされる)、遺伝的または生化学的病理(例えば、嚢胞性線維症、血友病、アルツハイマー病、筋ジストロフィーまたは多発性硬化症)、あるいは癌性プロセスに関与する細胞を含み得る。形質転換動物細胞株または樹立動物細胞株としては、例えば、COS細胞、CHO細胞、VERO細胞、BHK細胞、HeLa細胞、HepG2細胞、K562細胞、F9細胞などが挙げられ得る。本発明の方法での使用のための核酸供給源として適切な、他の細胞、細胞株、組織、器官および生物体は、当業者に明らかである。これらの細胞、組織、器官および生物体は、これらの天然の供給源から得られ得るか、またはアメリカンタイプカルチャーコレクション(Rockville,Maryland)のような供給源および他の当業者に公知の供給源から商業的に得られ得る。
【0081】
一旦、出発細胞、出発組織、出発器官、または他の出発サンプルが得られたら、核酸分子(例えば、DNA、RNA(例えば、mRNAまたはポリA+RNA)分子)が単離され得るか、あるいは、それらからcDNA分子またはcDNAライブラリーが、当該分野で周知の方法(例えば、Maniatis,T.ら、Cell 15:687−701(1978);Okayama,H.およびBerg,P.、Mol.Cell.Biol.2:161−170(1982);Gubler,U.およびHoffman,B.J.、Gene 25:263−269(1983))によって調製され得る。
【0082】
本発明のこの局面の実施において、第一の核酸分子を、上記のように得られた核酸テンプレート(好ましくはDNA分子(例えば、cDNA分子)、またはRNA分子(例えば、mRNA分子またはポリA+RNA分子))を、本発明の上記の1以上の化合物または組成物と混合して混合物を生成することにより合成され得る。投入された核酸分子の、逆転写(RNAテンプレートの場合)および/または重合化に都合のよい条件下で、その核酸テンプレートの全てまたは一部に相補的な第一の核酸分子の合成が、達成される。このような合成は、通常、ヌクレオチド(例えば、デオキシリボヌクレオシド三リン酸(dNTP)、ジデオキシリボヌクレオシド三リン酸(ddNTP)、またはそれらの誘導体)の存在下で達成される。
【0083】
あるいは、本発明の化合物、組成物および方法は、二本鎖核酸分子の単一の管における合成に使用され得る。このアプローチにおいて、上記で合成された第一の核酸分子は、第一の核酸分子の全てまたは一部に相補的である第二の核酸分子を生成するのに十分な条件下でインキュベートされる。この第二鎖の合成は、例えば、改変Gubler−Hoffman反応(D’Alessio,J.M.ら、Focus 9:1(1987))により達成され得る。
【0084】
もちろん、本発明の組成物および方法が有利に利用され得る核酸合成の他の技術は、当業者に容易に明らかである。
【0085】
(増幅および配列決定の方法)
本発明の他の局面において、本発明の組成物は、核酸分子の増幅または配列決定のための方法において使用され得る。本発明のこの局面に従う核酸増幅方法は、一工程(例えば、一工程RT−PCR)または二工程(例えば、二工程RT−PCR)逆転写酵素増幅反応として当該分野で一般に公知の方法において、逆転写酵素活性を有する1以上のポリペプチドの使用をさらに含み得る。長い核酸分子(すなわち、長さ約3〜5Kbより大きい)の増幅のために、本発明の組成物は、1997年2月14日に出願の同一人の、同時係属中の米国出願第08/801,720号(この開示は、その全体が参考として本明細書中に援用される)に詳細に記載されるような、DNAポリメラーゼ活性を有するポリペプチドの組み合わせを含み得る。
【0086】
本発明のこの局面に従う増幅方法は、1以上の工程を含み得る。例えば、本発明は、(a)核酸テンプレートと本発明の1以上の上記の化合物または組成物を混合して、混合物を形成する工程;および(b)そのテンプレートの全てまたは一部に相補的な核酸分子を増幅するのに十分な条件下で、その混合物をインキュベートする工程を含む、核酸分子を増幅するための方法を提供する。本発明はまた、このような方法によって増幅された核酸分子を提供する。
【0087】
核酸分子またはフラグメントの増幅あるいは分析のための一般的な方法は、当業者に周知である(例えば、米国特許第4,683,195号;同第4,683,202号;および同第4,800,159号;Innis,M.A.ら編、PCR Protocols:A Guide to Methods and Applications,San Diego,California:Academic Press,Inc.(1990);Griffin,H.G.およびGriffin,A.M.編、PCR Technology:Current Innovations,Boca Raton,Florida:CRC Press(1994)を参照のこと)。例えば、本発明に従って使用され得る増幅方法は、PCR(米国特許第4,683,195号および同第4,683,202号)、鎖置換増幅(SDA;米国特許第5,455,166号;EP0684315)、核酸配列ベース増幅(NASBA;米国特許第5,409,818号;EP0329822)。
【0088】
代表的に、これらの増幅方法は、以下の工程を包含する;核酸サンプルを1以上のプライマー配列の存在下で、核酸ポリメラーゼ活性を有する1以上のポリペプチドを含む化合物または組成物(例えば、本発明の化合物または組成物)に接触させる工程、その核酸サンプルを、好ましくはPCRまたは等価の自動増幅技術によって増幅して、増幅された核酸フラグメントの収集物を生成する工程、ならびに必要に応じて、その増幅された核酸フラグメントを、好ましくはゲル電気泳動によって大きさで分離する工程、および核酸フラグメントの存在について、例えば、エチジウムブロマイドのような核酸染色色素でゲルを染色することにより、そのゲルを分析する工程。
【0089】
本発明の方法による増幅後、その増幅された核酸フラグメントを、さらなる使用または特徴付けのために単離し得る。この工程は、通常、任意の物理的または生化学的方法(ゲル電気泳動、キャピラリー電気泳動、クロマトグラフィー(サイズクロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー、およびイムノクロマトグラフィーを含む)、密度勾配遠心および免疫吸着を含む)によって、その増幅された核酸フラグメントを大きさで分離することにより達成される。ゲル電気泳動による核酸フラグメントの分離が、とくに好ましい。なぜなら、それは、多くの核酸フラグメントの迅速で、かつ高い再現性のある厳密な分離方法を提供し、そして核酸のいくつかのサンプル中のフラグメントの直接的な、同時比較を可能にするからである。別の好ましい実施態様において、このアプローチを拡大して、これらのフラグメントまたは本発明の方法によって増幅された任意の核酸フラグメントを単離し得、そして特徴付け得る。従って、本発明はまた、本発明の増幅または合成方法によって生成された、単離された核酸分子に関する。
【0090】
この実施態様において、1以上の増幅された核酸分子フラグメントは、標準的な技術(例えば、電気溶出または物理的な切り出し)に従って、同定(上記を参照のこと)に使用されたそのゲルから取り出される。次いで、その単離された独特の核酸フラグメントを、種々の原核生物(細菌)細胞または真核生物(酵母、植物、またはヒトおよび他の哺乳動物を含む動物)細胞のトランスフェクションまたは形質転換に適切な、標準的なヌクレオチドベクター(発現ベクターを含む)に挿入され得る。あるいは、本発明の化合物、組成物および方法を使用して、増幅されそして単離された核酸分子は、例えば、配列決定法(すなわち、核酸フラグメントのヌクレオチド配列を決定すること)によって、以下に記載の方法、および当該分野で標準的な他の方法(例えば、米国特許第4,962,022および同第5,498,523号(これらは、DNA配列決定法に関する)を参照のこと)によって、さらに特徴付けられ得る。
【0091】
本発明に従う核酸配列決定方法は、1以上の工程を含み得る。例えば、本発明は、以下を含む核酸分子の配列決定のための方法を提供する;(a)配列決定されるべき核酸分子を、1以上のプライマー、本発明の1以上の上記の化合物および組成物、1以上のヌクレオチド、および1以上の終結物質(例えば、ジデオキシヌクレオチド)を混合して、混合物を形成する工程;(b)配列決定されるべきその分子の全てまたは一部に相補的な分子の集団を合成するのに十分な条件下で、その混合物をインキュベートする工程;および(c)配列決定されるべきその分子の全てまたは一部のヌクレオチド配列を決定するために、その集団を分離する工程。
【0092】
本発明の組成物を使用し得る核酸配列決定技術として、米国特許第4,962,022号および同第5,498,523号に開示されるような、ジデオキシ配列決定法が挙げられる。
【0093】
(ベクターおよび宿主細胞)
本発明はまた、本発明の単離された核酸分子を含むベクター、組換えベクターで遺伝子操作された宿主細胞、およびこれらのベクターおよび宿主細胞を使用する、組換えポリペプチドの生成方法に関する。
【0094】
本発明で使用されるベクターは、例えば、ファージまたはプラスミドであり得、そして好ましくは、プラスミドである。目的のポリペプチドをコードする核酸に対する、シス作用性の制御領域を含むベクターが好ましい。適切なトランス作用性因子は、宿主により供給され得るか、補完ベクターにより供給され得るか、または宿主内への導入の際にそのベクター自体により供給され得る。
【0095】
これに関する特定の好ましい実施態様において、ベクターは、本発明の核酸分子によりコードされるポリペプチドの特異的発現を提供し;このような発現ベクターは、誘導性および/または細胞型特異的であり得る。このようなベクターの中で、操作しやすい環境因子(例えば、温度および栄養添加物)により誘導されるベクターが、特に好ましい。
【0096】
本発明において有用である発現ベクターとしては、染色体由来ベクター、エピソーム由来ベクターおよびウイルス由来ベクター(例えば、細菌プラスミドまたはバクテリオファージに由来するベクター、ならびにそれらの組み合わせに由来するベクター(例えば、コスミドおよびファージミド))が挙げられる。
【0097】
DNA挿入物は、ファージλPLプロモーター、E.coli lac、trp、およびtacプロモーターのような、適切なプロモーターに作動可能に連結されるべきである。他の適切なプロモーターは、当業者に公知である。遺伝子融合構築物は、転写開始、終結のための部位、および転写領域において、翻訳のためのリボソーム結合部位をさらに含む。その構築物により発現された成熟転写物のコード部分は、好ましくは、翻訳されるべきポリヌクレオチドの、その始まりで翻訳開始コドン、およびその末端で適切に配置される終止コドン(UAA、UGAまたはUAG)を含む。
【0098】
発現ベクターは、好ましくは少なくとも1つの選択マーカーを含む。そのようなマーカーとしては、E.coliおよび他の細菌における培養のためのテトラサイクリンまたはアンピシリン耐性遺伝子が挙げられる。
【0099】
本発明での使用にとりわけ好ましいベクターとしては、以下が挙げられる;pQE70、pQE60およびpQE−9(Qiagenから入手可能);pBSベクター、Phagescriptベクター、Bluescriptベクター、pNH8A、pNH16a、pNH18A、pNH46A(Stratageneから入手可能);pcDNA3(Invitrogenから入手可能);ならびにpGEX、pTrxfus、pTrc99a、pET−5、pET−9、pKK223−3、pKK233−3、pRD540、pRIT5(Pharmaciaから入手可能)。他の適切なベクターは、当業者に容易に明らかである。
【0100】
適切な宿主細胞の代表的な例としては、E.coli、Streptomyces種、Erwinia種、Klebsiella種、およびSalmonella typhimuriumのような細菌細胞が挙げられるが、これらに限定されない。E.coliが宿主細胞として好ましく、そしてE.coli株DH10BおよびStbl2が、とくに好ましい。これらは、市販されている(Life Technologies,Inc;Rockville,Maryland)。
【0101】
(ペプチド生成)
上記のように、本発明の方法は、上記の核酸分子またはベクターの宿主細胞への挿入、およびその宿主細胞による目的のポリペプチドをコードするヌクレオチド配列の発現を経て、任意の長さの任意のポリペプチドの生成に適している。形質転換宿主細胞を作製するための、宿主細胞内への核酸分子またはベクターの導入は、リン酸カルシウムトランスフェクション、DEAE−デキストラン媒介トランスフェクション、陽イオン性脂質媒介トランスフェクション、エレクトロポレーション、形質導入、感染、または他の方法によりもたらされ得る。そのような方法は、例えば、Davisら、Basic Methods In Molecular Biology(1986)のような、多くの標準的な実験マニュアルに記載される。一旦、形質転換宿主細胞が得られたら、その細胞は、pHおよび温度の任意の生理学的適合条件下で、宿主細胞の増殖を補助する、炭素、窒素、および必須ミネラルの同化可能な供給源を含む、任意の適切な栄養培地中で培養され得る。組換えポリペプチド産生培養条件は、その宿主細胞を形質転換するために使用されたベクターの型に従って変化する。例えば、特定の発現ベクターは、その組換えポリペプチドの産生を生じる遺伝子発現を開始するために、特定の温度での細胞増殖、またはその細胞増殖培地への特定の化学物質または誘導物質の添加を必要とする調節領域を含む。従って、本明細書中で使用される、用語「組換えポリペプチド産生条件」は、培養条件の任意の1つのセットに限定されるよう意味されない。上記の宿主細胞およびベクターについての適切な培養培地および条件は、当該分野で周知である。宿主細胞でのその産生の後、目的のポリペプチドは、いくつかの技術によって単離され得る。その宿主細胞から目的のポリペプチドを遊離するために、その細胞を溶解するか、または破壊する。この溶解は、その細胞に低張液を接触することによってか、リゾチームのような細胞壁破壊酵素で処理することによってか、超音波処理によってか、高圧での処理によってか、または上記の方法の組み合わせによって達成され得る。当業者に公知の、他の細菌細胞の破壊および溶解の方法もまた、使用され得る。
【0102】
破壊後に、そのポリペプチドは、複合混合物中の粒子の分離に適切な任意の技術により、細胞細片から分離され得る。次いで、そのポリペプチドは、周知の単離技術により精製され得る。精製のための適切な技術としては、硫酸アンモニウム沈殿またはエタノール沈殿、酸抽出、電気泳動、免疫吸着、陰イオン交換クロマトグラフィーまたは陽イオン交換クロマトグラフィー、ホスホセルロースクロマトグラフィー、疎水的相互作用クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー、免疫親和性クロマトグラフィー、サイズ排除クロマトグラフィー、液体クロマトグラフィー(LC)、高速(high performance)LC(HPLC)、高速(fast performance)LC(FPLC)、ヒドロキシルアパタイトクロマトグラフィーおよびレクチンクロマトグラフィーが挙げられるが、これらに限定されない。
【0103】
(キット)
本発明はまた、核酸分子の合成、増幅、または配列決定のためのキットを提供する。本発明のこの局面に従うキットは、1以上の容器(例えば、バイアル、管、アンプル、ビンなど)を含み得、これらは、本発明の1以上の組成物を含み得る。
【0104】
本発明のキットは、以下の1以上の成分を含み得る:(i)本発明の1以上の化合物または組成物、(ii)1以上のポリメラーゼまたは逆転写酵素、(iii)1以上の適切な緩衝液、(iv)1以上のヌクレオチド、および(v)1以上のプライマー。
【0105】
本明細書中に記載される方法および適用に対する、他の適切な改変ならびに順応は自明であり、そして本発明またはそれらのいずれの実施態様の範囲から逸脱することなくなされ得ることは、当業者に容易に明らかである。ここで、本発明が詳細に記載されたが、本発明は、以下の実施例を参照することによって、より明らかに理解され、この以下の実施例は、例示の目的のみで本明細書中に含まれ、そして本発明を限定することは意図されない。
【実施例】
【0106】
(導入)
4−メチルモルホリンN−オキシド(本明細書中以降、「MMNO」という)を、高GC含量(例えば、CAG反復、PseudomonasゲノムDNAなど)を含む、多くの異なるPCRアンプリコンで試験した。試験したアンプリコンは、通用している標準的PCR反応混合液を用いて増幅することが困難であった。高GC含量アンプリコンからのPCR実行における新規の共溶媒の有効性を試験するために、MMNOおよび他の共溶媒を異なる濃度でPCR反応混合液に添加した。
【0107】
(方法)
以下の章は、実施例において使用された化学物質の調製を記載する。
【0108】
(2.2×PCR混合液の調製(実施例1−3))
実施例1−3において、テンプレートDNAおよびプライマーを除いて以下に列挙された全ての成分を含有する2.2×PCR混合液を調製した。以下の表は、2.2×PCR混合液の調製方法を例示する。
【0109】
【表1】
(実施例1−9についての物質):ベタイン一水和物([カルボキシメチル]トリメチル−アンモニウム)、L−プロリン、4−メチルモルホリン−4−オキシド(MMNO)、エクトイン(THP[B];[S]−2−メチル−1,4,5,6−テトラヒドロピリミジン−4−カルボン酸)、DL−ピペコリン酸(DL−2−ピペリジンカルボン酸)、およびL−カルニチン([−]−b−ヒドロキシ−g−[トリメチルアンモニオ]酪酸塩)を、Sigma(St.Louis、MO)から購入し、そして滅菌蒸留水中に4Mストック溶液として調製し、そして濾過滅菌した。PCR試薬:プラチナ(Platinum)Taq DNAポリメラーゼ、プラチナTaq DNAポリメラーゼ高忠実度、10×Taq緩衝液(1×=20mM Tris−HCl(pH8.4)、50mM KCl)、50mM塩化マグネシウム、10×Taq高忠実度緩衝液(1×=60mM Tris−SO4(pH8.9)、18mM(NH4)2SO4、50mM硫酸マグネシウム、10mM dNTP混合物、K562ヒトゲノムDNA,および滅菌蒸留水を、Life Technologies,Inc.(Rockville、MD)から入手した。オリゴヌクレオチドプライマーを、Life Technologies,Inc.から脱塩調製物として購入し、そしてさらなる精製なしで使用した。
【0110】
(実施例1:GCリッチテンプレートからのPCR増幅を改善するための、プロリン,1−メチルイミダゾールおよび4−メチルイミダゾールの滴定)
いくつかの化学物質を試験して、それらがGCリッチテンプレートを使用するPCR実行を改善するか否かを調べた。第1の実施例において、GCリッチテンプレートP55G12を、以下の3つの異なる化学物質のうちの1つの種々の濃度で試験した:アミノ酸プロリン、1−メチルイミダゾールおよび4−メチルイミダゾール。以下の成分を0.2mlチューブ内で組合わせた:2.2×PCR混合液13ml、テンプレートDNA 0.5ml(10pg)、プライマー混合物(各10mM)0.5ml、および4Mの化学物質溶液(プロリン、1−メチルイミダゾール、または4−メチルイミダゾールのいずれか)13ml。そしてこの溶液を、ピペッティングによって混合した。PCRのプログラムは、以下の通りであった:95℃で3分間;94℃で30秒間、55℃で30秒間、72℃で1分間を30サイクル。PCRを実行した後、5mlのローディング(loading)色素を各チューブに添加し、そして12mlの混合液を電気泳動用アガロースゲルにローディングし、次いでDNAフラグメントの存在について、このゲルをエチジウムブロマイド染色した。
【0111】
図1に示されるように、これら3つの化学物質の各々の特定の濃度は、他の濃度よりも良好に機能した。プロリンの場合、300〜600mMがP55G12の最適な増幅を提供したが、600mMより高い濃度は全く産物を提供しなかった。1−メチルイミダゾールの場合、100mMおよび200mMが最良に働いたが、より高いかもしくはより低い濃度は、全く働かないかまたは非常により少ない産物を生成するかのいずれかであった。4−メチルイミダゾールの場合、わずかにより低い範囲の濃度が、増幅を改善した:60〜100mM。PCR反応へのこれらの化合物の添加がない場合には増幅産物は全く存在せず、そして1Mのベタインが、反応を生産性にするのに有効であったことに留意のこと。
【0112】
(実施例2:GCリッチテンプレートのPCRについての4−メチルモルホリンN−オキシド(MMNO)の滴定;MMNOおよびベタインの比較)
実施例1において、MMNOを、GCリッチテンプレートでのPCR実行を改善するための新規の試薬として同定した。取り組まれるべき次の問題は、PCR混合液中のその濃度に対する、MMNOの実行の依存性であった。GCリッチアンプリコンP55G12は、1Mベタインまたは種々の濃度のMMNOの存在下で、実施例1において上記されたように増幅された。
【0113】
図2に示されるように、PCR反応混合液中の400〜1000mMのMMNOの含有が、1MベタインでのPCR産物の生成に強度において匹敵するPCR産物の生成を生じた。400mMより低いMMNO濃度は、PCR産物の生成を生じなかった。
【0114】
(実施例3:高GC含量アンプリコンのPCR増幅:Pseudomonas aeruginosaアンプリコン)
Pseudomonas aeruginosaのゲノムは、高GC含量(70%のGC)を含み、従ってPCRによる増幅にとって興味深いものである。従って、サイズが1.3kb〜1.8kbの範囲にある3つの異なるPseudomonas aeruginosaアンプリコンを、PCR反応混合液中のベタイン、MMNOまたはトリメチルアミン N−オキシド(TMANO)を使用する本発明のPCR方法において試験した。これら反応物中のテンプレートDNAが、30ngのP.aeruginosaゲノムDNAからなることを除いて、実施例1において記載されたものと同じ反応調製物を使用した。以下のPCRプログラムを、DNA増幅について使用した:95℃で5分間;94℃で2分間、58℃で30秒間、および72℃で2分間の35サイクル。
【0115】
図3に示されるように、Pseudomonas aeruginosaの配列Dは、ベタインまたはMMNOの存在下で増幅され、一方で、配列EおよびFは、ベタイン、MMNOまたはTMANOの存在下で増幅された。これらの結果は、長い天然のGCリッチ配列(例えば、P.aeruginosaのゲノム由来の配列)が、本発明の組成物および方法を使用して効率的に増幅され得ることを示す。
【0116】
(実施例4:GCリッチテンプレートのPCR増幅の増強についての、ベタイン、プロリン、およびMMNOの比較)
変動する濃度のベタイン、プロリン、およびMMNOを、ヒトp53エキソン10の156bpフラグメント(62.2%のGC)またはDeinococus radiodurans由来のDNAポリメラーゼI遺伝子についての2782bpのコード領域(66.7%のGC)のPCR増幅を増強するそれらの効力について試験した。反応パラメータを変動させて、緩衝液組成およびマグネシウム濃度の効果を評価した。
【0117】
PCR増幅を、薄壁の0.2mlチューブを用いて、以下を含む50ml反応物中で実行した:2.5UのプラチナTaq、1×Taq緩衝液(20mMのTris−HCl(pH8.4)、50mMのKCl)または1×Taq高忠実度緩衝液(60mMのTris−SO4(pH8.9)、18mMの(NH4)2SO4)のいずれか、200mMの各dNTP、および200nMの各プライマー。マグネシウム濃度として、塩化マグネシウム(Taq緩衝液反応)または硫酸マグネシウム(Taq高忠実度緩衝液反応)のいずれかを、1.0mMと2.5mMとの間を変動させた。各共溶媒(ベタイン、MMNO、またはプロリン)の量を、各図に示されるように変動させた。反応を、Prekin Elmerモデル9600または2400サーマルサイクラーのいずれかを使用して温度サイクルした。ヒトp53エキソン10配列の増幅について、反応物は100ngのK562ヒトゲノムDNAを含有し、そして95℃で1分間、次いで95℃で30秒間の変性;60℃で30秒間のアニーリングおよび68℃で1分間の伸長の35サイクルでインキュベートした。DNA pol I遺伝子の増幅について、反応物は20ngのDeinococcus radioduransゲノムDNAを含有し、そして95℃で1分間、次いで95℃で30秒間の変性;55℃で30秒間のアニーリング、および68℃で3分間の伸長の35サイクルでインキュベートした。10mlの各PCRを、アガロースゲル電気泳動およびエチジウムブロマイド染色によって、予期されるDNAフラグメントの存在について分析した。
【0118】
図4に示されるように、156bpのヒトp53配列の首尾良い増幅は、マグネシウム濃度および特定の緩衝液条件に依存した。添加される共溶媒の非存在下で、標準的PCR緩衝液を含有する反応物中で特定の産物は検出されず、そして1.0mMのMgSO4でのみ硫酸アンモニウム緩衝液(Taq高忠実度緩衝液)を有するPCRにおいて検出可能であった。ベタイン、MMNOまたはプロリン共溶媒の添加は、両方の緩衝液系において、より広範なマグネシウム濃度にわたり、増幅産物の特異性および収率を改善した。最適マグネシウム濃度範囲でのMMNOの効果は、ベタインまたはプロリンのいずれかの効果よりもあまり明白でなかった。広範なマグネシウム最適条件を生成するベタインまたはプロリンの濃度は、Taq高忠実度緩衝液よりもTaq緩衝液において高かった。
【0119】
p53エキソン10の増幅で得られた結果とは対照的に、MMNOは、1.0〜2.5mMの広範なマグネシウム濃度範囲にわたり、Dra DNA pol Iについてより長い2.8kbアンプリコンのPCRを増強するのに高度に有効であった(図5)。この効果は、0.4Mと0.8Mとの間のMMNO濃度に対して得られ、そして1Mのベタインについて観察された効果と類似した。プロリンの添加もまた、DNA pol Iフラグメントの増幅を増強するのに有効であった:しかし、プロリンについての有効濃度の範囲は非常により狭く、そしてマグネシウム濃度範囲に対するその効果は、ベタインまたはMMNOについて観察された効果よりも明白でなかった。一般に、Taq高忠実度緩衝液を含有する反応物中よりも標準的Taq緩衝液反応物中において、より高い濃度の各共溶媒がPCRを増強するために必要とされた。これは、p53エキソン10の増幅について得られた結果と一致する。Dra DNA pol IのPCR産物は、共溶媒を含有しない反応物中において観察されなかった。
【0120】
(実施例5:MMNOおよびプロリンの混合液はGCリッチテンプレートのPCR増幅を増強する)
前述の実施例の結果は、プロリンが短いGCリッチテンプレートの増幅について反応の最適条件を増強するのに高度に有効であり、そしてMMNOが長いGCリッチテンプレートの増幅を増強するのに有効であることを実証したので、この2つの化合物の混合物を試験して、これらがフラグメントのサイズとは無関係にGCリッチテンプレート増幅の増強を提供するか否かを調べた。この可能性を試験するために、GCリッチテンプレートを、プロリン、MMNO、またはその両方を含む組成の存在下で増幅した。
【0121】
混合物組成において、MMNOおよびプロリンの4M溶液を、それぞれ3:1、2:1、1:1、1:2および1:3の比率で組合わせて、4Mのハイブリッド共溶媒混合物を組成した。次いで、これらの混合物を、p53エキソン10およびDra DNA pol IのPCR増幅に対する効果についてアッセイした。PCR反応を、上記のように1×Taq高忠実度緩衝液中にプラチナTaq DNAポリメラーゼを有する50ml容量において実施した。硫酸マグネシウム濃度を、試験される共溶媒の各濃度に対して1.0〜2.5mMの間で変動させた。MMNO、MMNOおよびプロリンの混合物、プロリン、ならびにベタインの濃度は、各図に示される通りである。
【0122】
図6において示されるように、MMNOおよびプロリンの混合物は、いずれかの共溶媒単独で得られるより広範なマグネシウム濃度範囲および共溶媒濃度範囲にわたって、156bpのp53エキソン10フラグメントの特異的増幅を増強するのに有効であった。MMNO:プロリン混合物の使用はまた、2.8kbのDra DNA pol Iフラグメントの増幅を促進するのに高度に有効であり、そしてプロリン単独で得られる範囲よりも有効マグネシウム濃度範囲および共溶媒濃度範囲を有意に拡大した(図7)。以前に観察されたように、MMNOは、試験されたマグネシウム濃度および共溶媒濃度の全範囲にわたってPCR増幅を増強した。ひとまとめにして、これらの結果は、N−アルキルカルボン酸およびN−アルキルアミン酸化物の混合物を含む組成物の使用が、GCリッチテンプレートのPCR増幅を増強するために活用され得る新規の特性を生じることを実証する。詳細には、2:1〜1:2の比率で組合わせられたMMNOおよびプロリンの混合物を使用して、広範なサイズの範囲にわたりGCリッチテンプレートのPCR増幅を増強し得、そしてより広範なマグネシウム濃度にわたってPCR増幅の信頼度を増加し得る。
【0123】
(実施例6:MMNO:プロリン混合物は、広範なアニーリング温度最適にわたりGCリッチテンプレートのPCRを増強する)
PCR反応の間の最適アニーリング温度に対するPCR共溶媒の効果を評価するために、GCリッチテンプレートP32D9を、上記のMMNO:プロリン混合組成物を使用するPCRによって増幅した。PCR反応を、薄壁の0.2mlチューブ(Stratagene,Inc.)を用いて、以下を含む50ml反応物中で50ml容量において実行した:2.5UのプラチナTaq、1×Taq高忠実度緩衝液(60mMのTris−SO4(pH8.9)、18mMの(NH4)2SO4)、1.5mMのMgSO4、200mMの各dNTP、200nMの各プライマー、100ngのK562ヒトゲノムDNA、および0.5Mのベタインもしくは0.5Mの1:1のMMNO:プロリンのいずれかの添加共溶媒または添加共溶媒なし。濃縮したMMNO:プロリン混合物を、等容量の4MのMMNOおよび4Mプロリンを混合することによって調製した。アニーリング温度の最適条件を、オイルなしの操作のために加温した蓋を有する勾配ブロックRobo−cycler(Stratagene)を使用して研究した。95℃での1分間の変性に続き、反応を95℃で45秒間;55〜66℃で45秒間、68℃で1分間で35回サイクルした。各PCRの10mlを、0.5×TBE中のアガロースゲル電気泳動(1%アガロース1000、Life Technologies、Inc.)、およびエチジウムブロマイド染色によって分析した。
【0124】
図8において示されるように、PCR共溶媒の非存在下において、特異的なPCR産物(149bp、78.5%GCのフラグメント)は、66℃でのみ得られた。アニーリング温度を減少させるにつれて、産物の収率は迅速に減少し、非特異的産物の増幅を生じた。対照的に、ベタインおよびMMNO:プロリン混合物の両方は、有効なアニーリング温度の範囲を拡大した。MMNO:プロリン混合物の使用は、ベタインで得られる産物収率よりも高い産物収率を生じ、そして66℃から55℃の全てのアニーリング温度勾配にわたり特異的産物の検出を可能にした。
【0125】
(実施例7:脆弱X CGG反復配列の増幅に対するMMNO:プロリン混合物の使用)
MMNO:プロリン混合物を、非常に高いGC含量のDNA配列のPCR増幅を促進するその能力についてベタインと比較した。プライマーを、脆弱X遺伝子座にあるヒトFMR−1遺伝子(GenBank登録番号X61378)のCGG反復配列を含むように設計した。PCR増幅を、2.5UプラチナTaq DNAポリメラーゼ高忠実度、100ngのK562ゲノムDNA、および2mM硫酸マグネシウム(最終濃度)を補充された1×Taq高忠実度緩衝液を使用して、上記のように実施した。上記のように調製された4MのMMNO:プロリン混合物、または4Mのベタインのアリコートを、いずれかの共溶媒の0.25M〜2Mの最終濃度を生成するように量を変動してPCRに添加した。PCRを、95℃で1分間、次いで95℃で30秒間;58℃で30秒間;68℃で30秒間の35サイクルでインキュベートした。これらの研究結果のアガロースゲル分析を図9に示す。
【0126】
これらの研究結果は、ベタインと比較した場合に、極めて高い(80%を超える)GC含量の標的配列のPCR増幅を促進するMMNO:プロリン混合物の優れた能力を実証する。PCR共溶媒の非存在下において、特異的なPCR産物は全く検出されなかった。しかし、1.75Mのベタインを含有する反応物中において、予期されるサイズのわずかなバンドが認識できた。対照的に、CGG反復配列の頑健(robust)な増幅は、1.5〜2MのMMNO:プロリンを含有する反応物中において実証された。
【0127】
(実施例8:長いPCR(long PCR)におけるMMNO:プロリン混合物の使用)
Taq DNAポリメラーゼ、およびプルーフリーディング活性を保有する古細菌DNAポリメラーゼからなるDNAポリメラーゼ混合液が、40kbまでのDNAフラグメントの増幅のために使用されている(Barnes,W.M.Proc.Natl.Acad.Sci.USA 91:2216−2220(1994))。長いGCリッチの配列の増幅を促進するMMNO:プロリン混合物の能力を、2型アデノウイルスDNAの7.77kbフラグメントまたは9.75kbフラグメント(約60%のGC)を増幅するように設計されたプライマーを使用して試験した。PCRを、プラチナTaq DNAポリメラーゼの代わりに2.5UプラチナTaq DNAポリメラーゼ高忠実度(これは、Thermus aquaticusおよびPyrococcus種GB−D由来のDNAポリメラーゼの酵素混合物である)を用いることを除いて本質的に上記のように、1pgの2型アデノウイルスDNA(Life Technologies,Inc.)、1.5mMの硫酸マグネシウムで補充された1×Taq高忠実度緩衝液、および変動量(0〜1M)のMMNO:プロリン混合物を使用して実施した。反応物を、95℃で1分間、次いで95℃で30秒間、58℃で30秒間、68℃で10分間の35サイクルでインキュベートした。
【0128】
図10に示されるように、予期された7.77kbおよび9.75kbのDNAフラグメントの首尾良い増幅は、MMNO:プロリン共溶媒の含有に依存した。特異的な産物は、MMNO:プロリンを有さない反応物中において検出されなかった;しかし、0.25MのMMNO:プロリン混合物を含有することによって、頑健な増幅および高産物収率が得られた。長いPCRにおける産物収率は、MMNO:プロリンの濃度が増加するにつれて7.3kbおよび9.7kbの両方の標的についての産物収率が減少するように、使用されたMMNO:プロリンの量に感受性であった。
【0129】
(実施例9:GCリッチテンプレートのPCR増幅を増強するための補償溶質の比較)
広範な種々のアミノ化合物が、浸透圧ストレスから生物体を保護する際に重要な機能を果たすことが示されている。ベタインおよびプロリンは、E.coliにおける主要な浸透圧保護物質(osmoprotectant)である。これらの両方の化合物はDNAヘリックスの安定性を破壊し、それによってGCリッチテンプレートの増幅を促進するので、他の公知の浸透圧調節化合物および市販の浸透圧調節化合物のPCRにおける効果を研究した。
【0130】
PCR混合液を、以下を含む50ml容量中に調製した:2.5UのプラチナTaq DNAポリメラーゼ、60mMのTris−SO4(pH8.9)、18mM(NH4)2SO4、1.5mMのMgSO4、200mMのdNTP(各々)、200nMのプライマー(各々)、100ngのK562ヒトゲノムDNA。そして変動量のPCR共溶媒を調製した。反応を、95℃で1分間、次いで95℃で30秒間;58℃で30秒間;68℃で1分間の35サイクルでインキュベートした。
【0131】
MMNO:プロリン混合物、ベタイン、L−カルニチン、およびDL−ピペコリン酸の効力の比較を図11に示す。一方、ベタインに対してエクトインを比較した別個の実験の結果を、図12に示す。実験条件は、最終反応物の容量が25mlであることを除き、本質的に上記と同じ条件であった。
【0132】
これらの実験において試験された全てのオスモライト(osmolyte)は、P32D9配列の増幅を可能にするのに効果的であり、そして広範な種々のN−アルキルカルボン酸誘導体が、困難なテンプレート(例えば、GC含量が高いテンプレート)のPCR増幅を促進するために使用され得ることを実証する。
【0133】
ここで、理解の明確化の目的で、例示および実施例によって幾分詳細に本発明を十分に記載してきたが、同じことが本発明またはその任意の特定の実施態様の範囲に影響することなく、条件、処方、および他のパラメータの広範かつ等価な範囲内で本発明を改変または変更することによって実施され得、そしてそのような改変または変更が添付の特許請求の範囲内に包含されることが意図されることは、当業者に明らかである。
【0134】
本明細書中で言及した全ての刊行物、特許、および特許出願は、本発明の属する技術分野の当業者の技術レベルの指標であり、そして各個々の刊行物、特許、または特許出願が明確および個々に参考として援用されることが示される場合と同じ程度に、本明細書中で参考として援用される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
核酸分子を合成する際に使用するための組成物であって、該組成物が、以下の式Iもしくは式IIからなる群より選択される化学式を有する1つ以上の化合物、またはそれらの塩もしくは誘導体を含む組成物であって、
【化1】
ここで、Aは
【化2】
であり;
ここで、Xは
【化3】
であり;
ここで、q=1〜100,000であって、ここでq=2〜100,000である場合、式Iの各モノマーは式Iの他のモノマーと同じであっても異なっていてもよく;
ここで、ZはYと同じであっても異なっていてもよく;
ここで、各YおよびZは、−OH、−NH2、−SH、−PO3H、−CO2H、−SO3Hおよび水素からなる群より独立して選択され;
ここで、fは0〜2の整数であり、mは0〜20の整数であり、そしてeは0〜2の整数であり;
ここで、R4、R5およびR6は同じであっても異なっていてもよく、そして水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アミノ、メルカプタン、チオール、ハロ、ニトロ、ニトリロ、ヒドロキシ、ヒドロキシアルキル、ヒドロキシアリール、ホスファト、アルコキシ、オキシド、エーテル、エステル(アルカノイルオキシ)、カルボキシ、カルボニル、スルホニル、スルホンおよびアミド基からなる群より独立して選択され、そしてdは0〜2の整数であり;
ここで、a、b、およびcは独立して、0〜1の整数であり、ただし、a、d、およびcのうち2つより多くは0でなく;
ここで、R1、R2およびR3は、同じであっても異なっていてもよく、そして以下:
a)=O;
b)
【化4】
からなる群より独立して選択され;
ここで、各R7およびWは、同じであっても異なっていてもよく、そして水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アミノ、チオール、メルカプタン、ハロ、ニトロ、ニトリロ、ヒドロキシ、ヒドロキシアルキル、ヒドロキシアリール、ホスファト、アルコキシ、オキシド、エーテル、エステル(アルカノイルオキシ)、カルボキシ、カルボニル、スルホニル、スルホンおよびアミド基からなる群より独立して選択され;gは0〜2の整数であり、そしてnは0〜20の整数であり;
【化5】
ここで、式IIは飽和または不飽和であり;
ここで、q=1〜100,000であり、ここでq=2〜100,000の場合、式IIの各モノマーは式IIの他の各モノマーと同じであっても異なっていてもよく;
ここで、XはN、C、O、PおよびSからなる群より選択され;
ここで、YはO、N、S、P、C、−O−NH−、−O−CH2−NH−、−O−CH2−O−、−NH−CH2−NH−、−O−CH(CH3)−NH−、−NH−CH(CH3)−NH−、−O−CH(CH3)−O−、−NH−C(CH3)2−NH−、−O−S−、−O−CH2−S−、−NH−S−、−NH−CH2−S−および他のメルカプタン、ホスファト、アルコキシ、オキシド、エーテル、エステル(アルカノイルオキシ)、カルボキシ、スルホニル、スルホンおよびアミド基からなる群より選択され;
ここで、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、およびR8は、同じてあっても異なっていてもよく、そして水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アミノ、チオール、メルカプタン、ハロ、ニトロ、ニトリロ、ヒドロキシ、ヒドロキシアルキル、ヒドロキシアリール、ホスファト、アルコキシ、オキシド、エーテル、エステル(アルカノイルオキシ)、カルボキシ、スルホニル、スルホンおよびアミド基からなる群より独立して選択され;そして
ここで、a、b、c、d、e、m、n、およびoは、同じであっても異なっていてもよい整数であり、そしてa、b、c、d、およびeについては0〜2より、そしてm、n、およびoについては0〜5より独立して選択される、
組成物。
【請求項2】
請求項1に記載の組成物であって、ただし、q=1および(R1)a、(R2)b、および(R3)cのうち1つが酸素であり、そして他の2つが同じかまたは異なり、そして水素、メチル、エチルおよびプロピルからなる群より独立して選択されるならば、Aはメチル、エチルまたはプロピルではない、組成物。
【請求項3】
a、b、またはcが0である場合、対応するR基が電子対である、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
Yおよび/またはXがNであり、そしてm、nおよびoが1である、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
Yおよび/またはXがNおよび/またはOであり、そしてmおよびnが1であり、そしてoが2である、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
前記組成物が、式IまたはIIを有する少なくとも2つの化合物、あるいはそれらの塩または誘導体を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
前記組成物が、式IまたはIIを有する2〜5の化合物、あるいはそれらの塩または誘導体を含む。請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
前記組成物が、プロリンまたはそれらの誘導体を含む、請求項6に記載の組成物。
【請求項9】
前記組成物がN−アルキルイミダゾール化合物を含む、請求項6に記載の組成物。
【請求項10】
前記N−アルキルイミダゾール化合物が1−メチルイミダゾールまたは4−メチルイミダゾールである、請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
前記化合物が、4−メチルモルホリンN−オキシド、ベタイン、カルニチン、エクトイン(ectoine)、平均分子量約50,000〜約500,000ダルトンのポリ(2−エチル−2−オキサゾリン)、および平均分子量約100,000〜約200,000ダルトンのポリ(ジアリルジメチルアンモニウムクロリド)からなる群より選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項12】
前記化合物が、4−メチルモルホリンN−オキシド、ベタイン、カルニチン、エクトイン、平均分子量約50,000〜約500,000ダルトンのポリ(2−エチル−2−オキサゾリン)、および平均分子量約100,000〜約200,000ダルトンのポリ(ジアリルジメチルアンモニウムクロリド)からなる群より選択される、請求項6に記載の組成物。
【請求項13】
核酸ポリメラーゼ活性を有する1つ以上の酵素をさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項14】
核酸ポリメラーゼ活性を有する1つ以上の酵素をさらに含む、請求項6に記載の組成物。
【請求項15】
核酸ポリメラーゼ活性を有する前記酵素が、DNAポリメラーゼ、RNAポリメラーゼおよび逆転写酵素からなる群より選択される、請求項13に記載の組成物。
【請求項16】
核酸ポリメラーゼ活性を有する前記酵素が、DNAポリメラーゼ、RNAポリメラーゼおよび逆転写酵素からなる群より選択される、請求項14に記載の組成物。
【請求項17】
前記DNAポリメラーゼがTaq、Tne、Tma、Pfu、VENTTM、DEEPVENTTM、およびTth DNAポリメラーゼ、ならびにそれらの変異体、改変体および誘導体からなる群より選択される、請求項15に記載の組成物。
【請求項18】
前記逆転写酵素が、M−MLV逆転写酵素、RSV逆転写酵素、AMV逆転写酵素、RAV逆転写酵素、MAV逆転写酵素、およびHIV逆転写酵素、ならびにそれらの変異体、改変体および誘導体からなる群より選択される、請求項15に記載の組成物。
【請求項19】
前記逆転写酵素のRNaseH活性が実質的に減少している、請求項15に記載の組成物。
【請求項20】
1つ以上のアミノ酸、1つ以上のサッカリド、1つ以上のポリアルコール、またはそれらの誘導体、あるいはそれらの組み合わせからなる群から選択される1つ以上の成分を含む核酸分子を合成する際に使用するための、組成物。
【請求項21】
請求項1または20のいずれか1項に記載の2つ以上の化合物または成分を組み合わせることによって得られる、組成物。
【請求項22】
核酸分子を合成するための方法であって、該方法は:
(a)核酸の鋳型を、請求項1または20に記載の1つ以上の組成物と混合し、混合物を形成する工程;および
(b)該鋳型の全体または一部に相補的な第1の核酸分子を作製するのに充分な条件下で該混合物をインキュベートする工程、
を包含する、方法。
【請求項23】
前記第1の核酸分子の全体または部分に相補的な第2の核酸分子を作製するのに充分な条件下で、該第1の核酸分子をインキュベートする工程をさらに包含する、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
請求項22に記載の方法に従って作製される、核酸分子。
【請求項25】
核酸分子を増幅するための方法であって、該方法は、以下:
(a)核酸の鋳型を、請求項1または20に記載の1つ以上の組成物と混合し、混合物を形成する工程;および
(b)該鋳型の全体または一部に相補的な核酸分子を増幅するのに充分な条件下で該混合物をインキュベートする工程、
を包含する、方法。
【請求項26】
核酸分子を配列決定するための方法であって、該方法は、以下:
(a)配列決定されるべき核酸分子を、1つ以上のプライマー、請求項1または20に記載の1つ以上の組成物、1つ以上のヌクレオチド、および1つ以上の終結因子と混合し、混合物を形成する工程;
(b)配列決定されるべき該分子の全体または一部に相補的な分子の集団を合成するのに充分な条件下で該混合物をインキュベートする工程;および
(c)該集団を分離して、配列決定されるべき該分子の全体または一部のヌクレオチド配列を決定する工程、
を包含する、方法。
【請求項27】
核酸分子を合成する際に使用するためのキットであって、該キットが、請求項1または20に記載の1つ以上の化合物または成分を含む、キット。
【請求項28】
前記キットが、少なくとも2つの前記化合物または成分を含む、請求項27に記載のキット。
【請求項29】
前記キットが、1つ以上のヌクレオチド、1つ以上のDNAポリメラーゼ、1つ以上の転写酵素、1つ以上の適切な緩衝液、1つ以上のプライマー、および1つ以上の終結因子からなる群より選択される1つ以上の成分をさらに含む、請求項27に記載のキット。
【請求項1】
核酸分子を合成する際に使用するための組成物であって、該組成物が、以下の式Iもしくは式IIからなる群より選択される化学式を有する1つ以上の化合物、またはそれらの塩もしくは誘導体を含む組成物であって、
【化1】
ここで、Aは
【化2】
であり;
ここで、Xは
【化3】
であり;
ここで、q=1〜100,000であって、ここでq=2〜100,000である場合、式Iの各モノマーは式Iの他のモノマーと同じであっても異なっていてもよく;
ここで、ZはYと同じであっても異なっていてもよく;
ここで、各YおよびZは、−OH、−NH2、−SH、−PO3H、−CO2H、−SO3Hおよび水素からなる群より独立して選択され;
ここで、fは0〜2の整数であり、mは0〜20の整数であり、そしてeは0〜2の整数であり;
ここで、R4、R5およびR6は同じであっても異なっていてもよく、そして水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アミノ、メルカプタン、チオール、ハロ、ニトロ、ニトリロ、ヒドロキシ、ヒドロキシアルキル、ヒドロキシアリール、ホスファト、アルコキシ、オキシド、エーテル、エステル(アルカノイルオキシ)、カルボキシ、カルボニル、スルホニル、スルホンおよびアミド基からなる群より独立して選択され、そしてdは0〜2の整数であり;
ここで、a、b、およびcは独立して、0〜1の整数であり、ただし、a、d、およびcのうち2つより多くは0でなく;
ここで、R1、R2およびR3は、同じであっても異なっていてもよく、そして以下:
a)=O;
b)
【化4】
からなる群より独立して選択され;
ここで、各R7およびWは、同じであっても異なっていてもよく、そして水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アミノ、チオール、メルカプタン、ハロ、ニトロ、ニトリロ、ヒドロキシ、ヒドロキシアルキル、ヒドロキシアリール、ホスファト、アルコキシ、オキシド、エーテル、エステル(アルカノイルオキシ)、カルボキシ、カルボニル、スルホニル、スルホンおよびアミド基からなる群より独立して選択され;gは0〜2の整数であり、そしてnは0〜20の整数であり;
【化5】
ここで、式IIは飽和または不飽和であり;
ここで、q=1〜100,000であり、ここでq=2〜100,000の場合、式IIの各モノマーは式IIの他の各モノマーと同じであっても異なっていてもよく;
ここで、XはN、C、O、PおよびSからなる群より選択され;
ここで、YはO、N、S、P、C、−O−NH−、−O−CH2−NH−、−O−CH2−O−、−NH−CH2−NH−、−O−CH(CH3)−NH−、−NH−CH(CH3)−NH−、−O−CH(CH3)−O−、−NH−C(CH3)2−NH−、−O−S−、−O−CH2−S−、−NH−S−、−NH−CH2−S−および他のメルカプタン、ホスファト、アルコキシ、オキシド、エーテル、エステル(アルカノイルオキシ)、カルボキシ、スルホニル、スルホンおよびアミド基からなる群より選択され;
ここで、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、およびR8は、同じてあっても異なっていてもよく、そして水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アミノ、チオール、メルカプタン、ハロ、ニトロ、ニトリロ、ヒドロキシ、ヒドロキシアルキル、ヒドロキシアリール、ホスファト、アルコキシ、オキシド、エーテル、エステル(アルカノイルオキシ)、カルボキシ、スルホニル、スルホンおよびアミド基からなる群より独立して選択され;そして
ここで、a、b、c、d、e、m、n、およびoは、同じであっても異なっていてもよい整数であり、そしてa、b、c、d、およびeについては0〜2より、そしてm、n、およびoについては0〜5より独立して選択される、
組成物。
【請求項2】
請求項1に記載の組成物であって、ただし、q=1および(R1)a、(R2)b、および(R3)cのうち1つが酸素であり、そして他の2つが同じかまたは異なり、そして水素、メチル、エチルおよびプロピルからなる群より独立して選択されるならば、Aはメチル、エチルまたはプロピルではない、組成物。
【請求項3】
a、b、またはcが0である場合、対応するR基が電子対である、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
Yおよび/またはXがNであり、そしてm、nおよびoが1である、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
Yおよび/またはXがNおよび/またはOであり、そしてmおよびnが1であり、そしてoが2である、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
前記組成物が、式IまたはIIを有する少なくとも2つの化合物、あるいはそれらの塩または誘導体を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
前記組成物が、式IまたはIIを有する2〜5の化合物、あるいはそれらの塩または誘導体を含む。請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
前記組成物が、プロリンまたはそれらの誘導体を含む、請求項6に記載の組成物。
【請求項9】
前記組成物がN−アルキルイミダゾール化合物を含む、請求項6に記載の組成物。
【請求項10】
前記N−アルキルイミダゾール化合物が1−メチルイミダゾールまたは4−メチルイミダゾールである、請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
前記化合物が、4−メチルモルホリンN−オキシド、ベタイン、カルニチン、エクトイン(ectoine)、平均分子量約50,000〜約500,000ダルトンのポリ(2−エチル−2−オキサゾリン)、および平均分子量約100,000〜約200,000ダルトンのポリ(ジアリルジメチルアンモニウムクロリド)からなる群より選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項12】
前記化合物が、4−メチルモルホリンN−オキシド、ベタイン、カルニチン、エクトイン、平均分子量約50,000〜約500,000ダルトンのポリ(2−エチル−2−オキサゾリン)、および平均分子量約100,000〜約200,000ダルトンのポリ(ジアリルジメチルアンモニウムクロリド)からなる群より選択される、請求項6に記載の組成物。
【請求項13】
核酸ポリメラーゼ活性を有する1つ以上の酵素をさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項14】
核酸ポリメラーゼ活性を有する1つ以上の酵素をさらに含む、請求項6に記載の組成物。
【請求項15】
核酸ポリメラーゼ活性を有する前記酵素が、DNAポリメラーゼ、RNAポリメラーゼおよび逆転写酵素からなる群より選択される、請求項13に記載の組成物。
【請求項16】
核酸ポリメラーゼ活性を有する前記酵素が、DNAポリメラーゼ、RNAポリメラーゼおよび逆転写酵素からなる群より選択される、請求項14に記載の組成物。
【請求項17】
前記DNAポリメラーゼがTaq、Tne、Tma、Pfu、VENTTM、DEEPVENTTM、およびTth DNAポリメラーゼ、ならびにそれらの変異体、改変体および誘導体からなる群より選択される、請求項15に記載の組成物。
【請求項18】
前記逆転写酵素が、M−MLV逆転写酵素、RSV逆転写酵素、AMV逆転写酵素、RAV逆転写酵素、MAV逆転写酵素、およびHIV逆転写酵素、ならびにそれらの変異体、改変体および誘導体からなる群より選択される、請求項15に記載の組成物。
【請求項19】
前記逆転写酵素のRNaseH活性が実質的に減少している、請求項15に記載の組成物。
【請求項20】
1つ以上のアミノ酸、1つ以上のサッカリド、1つ以上のポリアルコール、またはそれらの誘導体、あるいはそれらの組み合わせからなる群から選択される1つ以上の成分を含む核酸分子を合成する際に使用するための、組成物。
【請求項21】
請求項1または20のいずれか1項に記載の2つ以上の化合物または成分を組み合わせることによって得られる、組成物。
【請求項22】
核酸分子を合成するための方法であって、該方法は:
(a)核酸の鋳型を、請求項1または20に記載の1つ以上の組成物と混合し、混合物を形成する工程;および
(b)該鋳型の全体または一部に相補的な第1の核酸分子を作製するのに充分な条件下で該混合物をインキュベートする工程、
を包含する、方法。
【請求項23】
前記第1の核酸分子の全体または部分に相補的な第2の核酸分子を作製するのに充分な条件下で、該第1の核酸分子をインキュベートする工程をさらに包含する、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
請求項22に記載の方法に従って作製される、核酸分子。
【請求項25】
核酸分子を増幅するための方法であって、該方法は、以下:
(a)核酸の鋳型を、請求項1または20に記載の1つ以上の組成物と混合し、混合物を形成する工程;および
(b)該鋳型の全体または一部に相補的な核酸分子を増幅するのに充分な条件下で該混合物をインキュベートする工程、
を包含する、方法。
【請求項26】
核酸分子を配列決定するための方法であって、該方法は、以下:
(a)配列決定されるべき核酸分子を、1つ以上のプライマー、請求項1または20に記載の1つ以上の組成物、1つ以上のヌクレオチド、および1つ以上の終結因子と混合し、混合物を形成する工程;
(b)配列決定されるべき該分子の全体または一部に相補的な分子の集団を合成するのに充分な条件下で該混合物をインキュベートする工程;および
(c)該集団を分離して、配列決定されるべき該分子の全体または一部のヌクレオチド配列を決定する工程、
を包含する、方法。
【請求項27】
核酸分子を合成する際に使用するためのキットであって、該キットが、請求項1または20に記載の1つ以上の化合物または成分を含む、キット。
【請求項28】
前記キットが、少なくとも2つの前記化合物または成分を含む、請求項27に記載のキット。
【請求項29】
前記キットが、1つ以上のヌクレオチド、1つ以上のDNAポリメラーゼ、1つ以上の転写酵素、1つ以上の適切な緩衝液、1つ以上のプライマー、および1つ以上の終結因子からなる群より選択される1つ以上の成分をさらに含む、請求項27に記載のキット。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2011−41573(P2011−41573A)
【公開日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−238335(P2010−238335)
【出願日】平成22年10月25日(2010.10.25)
【分割の表示】特願2000−535767(P2000−535767)の分割
【原出願日】平成11年3月15日(1999.3.15)
【出願人】(502221282)ライフ テクノロジーズ コーポレーション (113)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年10月25日(2010.10.25)
【分割の表示】特願2000−535767(P2000−535767)の分割
【原出願日】平成11年3月15日(1999.3.15)
【出願人】(502221282)ライフ テクノロジーズ コーポレーション (113)
【Fターム(参考)】
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