説明

核酸増幅反応を実施する装置、化学連鎖反応を実施する装置、変性、アニーリングおよびエクステンションプロセスを包含する核酸増幅反応を同時に実施する装置、ならびに核酸増幅反応を実施する方法

【目的】 少なくとも1つの毛管中、反応混合物中で核酸増幅反応、望ましくはポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を実施する装置および方法を提供する。
【構成】 増幅反応に必要な熱サイクルを実施するために、試料を2つのサーモスタット付液体浴を通過する毛管ループを通して循環させるか、毛管を2つの熱交換器の間で交番に経路定めし、試料を管にたんに1回通過で通すか、定置に維持した熱交換器の間で試料を移動させるか、あるいは毛管内に含有されている試料を通りすぎて熱交換器を自動的に移動または回転させる。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は熱サイクリングによる核酸の増幅、とくにポリメラーゼ連鎖反応(PCR)のような増幅反応のための自動化装置に関する。
【0002】
【従来の技術】DNA(デオキシリボ核酸)は、異なる温度における若干のインキュベーションを包含するポリメラーゼ連鎖反応プロトコルのような、プロトコルにより特異的に構成された液体反応混合物を熱サイクリングにより増幅することができる。反応混合物は、増幅すべきDNA(標的)のような種々の成分および標的DNAの一部に対し相補するように選択された少なくとも2つのオリゴヌクレオチドプライマーからなっている。反応混合物は、種々の緩衝液、酵素、およびdATP、dCTP、dGTPおよびdTTPのようなデオキシリボヌクレオチド三リン酸をも含有する。二本鎖DNA分子は2つの相補的一本鎖に変性される。次いで、プライマーは鎖にアニールし、次に、PCRにおいて、ヌクレオシド一リン酸塩残基が、熱安定のDNAポリメラーゼのような酵素の存在でプライマーに結合してプライマーエクステンション生成物をつくる。プライマーエクステンション後、多数の二重らせんDNA分子が2倍も存在する。このプロセスを繰返し、毎度存在するDNA量がほぼ倍加する。この結果は標的DNAの“増幅(amplification)”として公知の、標的DNAの濃度の指数関数的増加である。
【0003】ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)は、主として簡単で非常に融通性があり、かつ比較的低い操業費を必要とするので、遺伝分析に対する驚異的成功であることが証明された。この成功のかぎは、熱サイクリングの思想である:DNA溶融工程、短かいプライマーをアニーリングして一本鎖を得る工程およびこれらのプライマーをエクステンドして二本鎖DNAの新しいコピーをつくる工程の交番。
【0004】ポリメラーゼ連鎖反応の方法論は、米国特許第4683202号および米国特許第4683195号に詳述されており、これらは引用により本明細書の内容をなす。
【0005】ポリメラーゼ連鎖反応(以下PCR)は、小さいプラスチックの微量遠心管または試験管のような使い捨て反応管中で実施され、これらの管は熱制御される熱交換器を含有する装置内に入れられる。これらの装置の例は、米国特許第5038852号、米国特許出願番号07/709374号(1991年6月3日出願)および米国特許出願番号07/871264号(1992年4月20日出願)に記載されており、これらはすべて引用によってそれらの全体が本明細書の内容をなす。
【0006】これら装置中の熱交換器は代表的には金属ブロックである;しかし熱空気オーブンおよび水浴も使用された。反応管内の反応混合物の温度は、混合物中に変性、アニーリングおよびエクステンションを生起させるため周期的に変えられる。3つの別個のインキュベーション温度は、通例第1世代PCR熱サイクリング適用において使用された。これらは代表的には変性に対して約94℃、アニーリングに対して約55℃、およびエクステンションに対しては約72℃であった。最近、アニーリングおよびエクステンションインキュベーションはしばしば組合されて、2温度インキュベーション法(代表的には変性に対して約94℃およびアニーリングおよびエクステンションインキュベーションに対して約50〜65℃)が生じた。しかし、最適のインキュベーション温度および時間は標的が異なると相違する。
【0007】小規模の高速PCR毛管装置も出現した。たとえばアイダホテクノロジィ(Idaho Technology)は、反応混合物を毛管に入れ、次いで該毛管を密封して、管内の反応混合物の温度が循環する熱空気オーブンに入れる装置を導入した。類似のシステムはウィトワー(Wittwer)等により“少量試料に対し有効な熱伝達によるDNA増幅に必要な時間の最小化”なる論文(Analytical Bicchemistry第186巻第328〜第331頁(1990年))に記載された。細い毛管内に入れられた100μlの試料が、加熱コイル、ソレノイド活性化ドアおよびファンを備えるオーブンに入れられた。空気は、熱伝達媒体として使用された。非常に類似のシステムもウィトワー等により“熱空気による毛管内の自動化ポリメラーゼ連鎖反応”なるタイトルの論文(Nucleic Acids Research,第17巻、No.11、第4353頁〜第57頁(1989年))に記載されている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】PCRの体積は、反応混合物が微量遠心管内に保存されていた、常用の加熱ブロックまた液体浴熱交換PCR装置の設計においては、約10μlないし1.5mlの範囲に制限されていた。これらの体積を増大することは困難である。この困難は、管に対する熱交換ブロック中のウエル(くぼみ孔)の固定された大きさおよびすべてのウエルの間に均一な熱伝達を達成することの困難さが、大きさが大きくなると漸増しかつ熱勾配の問題が一そう顕著になることによる。先行技術の反応容器は体積が増大すると、表面/体積の割合が減少する。この変化が、各管内の反応混合物の温度が迅速に変化する能力を減少する。それというのも多くの熱交換は、管壁と試料ブロック中のウエルの壁の間で起きるからである。
【0009】先行技術の装置においては乏しい対流および伝導により惹起される、ブロックに対し試料の温度に実質的に漏れが存在したので、熱ランプが長かった。インキュベーション温度間の実質的な熱ランプ時間は、多くの装置において使用される金属ブロックの大きい熱質量のために生じる重要な温度勾配を防ぐためにしばしば必要である。これらの温度勾配は、温度勾配に沿った幾多の個所で添加される異なる試料に不均一な増幅を惹起しうる。温度ランプを使用するための化学的または生物学的理由は存在しない。
【0010】毛管PCR装置は、反応体積および試料収納濃度を最小にすることができるので、迅速な熱インキュベーショントラジションの利点を有する。かかる1つの装置は、米国特許第5176203号(発明者D.M.Larzel)に記載されている。ラルズール(Larzul)の特許は連続する毛管の閉ループまたはらせん形コイル内に含有された液体試料の自動熱サイクリング用のホィール形装置を記載する。管の各ループは3つのサーモスタット調温ゾーンを通っている。試料は、モータ付磁気系によりループを通して押され、該系においては、回転中央アームの一端にある磁石が懸濁金属粒子を含有する鉱油のスラッグ(Slug)を毛管を通して引く。スラッグは毛管内の試料に接するので、スラッグがループを通して試料を押す。モータ付系は、試料の移動を所定のプロトコルにより調節するために制御されたマイクロプロセッサであってもよい。
【0011】
【課題を解決するための手段】ここでは、特定の共通の利点を有する毛管PCR装置の多数の実施形が提案されている。ここに記載した装置はすべて、微量遠心管とは異なり、試料を保持するために薄壁毛管を使用する。ここで使用したような毛管は、3mmよりも小さい内径を有し、望ましくは内径が約1mm〜2mmの大きさである。これらの毛管は、ここに教示した実施形においては、プログラマブルコンピュータ中へ供給された、特定反応混合物の必要とするユーザ定義PCRプロトコルにより加熱および冷却され、該コンピュータはまた、通常の制御プログラミングを介してプロトコルを実行するため、試料処理(handling)、流れ、速度、圧力および温度を自動的に制御する。本発明の種々の実施形の間の相異はPCR反応混合物を加熱および冷却するために使用した異なる手段および反応混合物を移動させるために使用した異なる管および液体処理手段から起きる。
【0012】たとえば本発明の第1実施形は、反応混合物を、2つの異なるサーモスタット付液体浴(1つは変性温度、1つはアニール/エクステンド温度)を通る毛管の連続ループを通して繰返し自動的にポンプ輸送する。付加的浴は、インキュベーション温度の数を増加するために加えることができる。
【0013】第2実施形は、反応混合物を1つの毛管を1回だけ、つまりシングル・パスで通す。毛管は、変性温度に保たれた第1サーモスタット調温された熱交換器とアニール/エクステンド温度に保たれた第2熱交換器の間で前後に交番に通っている。また、アニール温度とエクステンド温度が異なる場合、第3熱交換器を使用することもできる。シングル・パス管を通して生成物捕集容器中へ反応混合物を押出すために、容積形ポンプまたは蠕動ポンプまたはシリンジが使用される。
【0014】本発明の第3実施形は数個の液体浴配置中の定置反応混合物を包含する。この実施形は、各試料に対し単一ループの毛管を使用する。試料を含有するループの部分は、反応室に封入されている。変性温度の熱い液体は第1サーモスタット調温された液体浴からこの反応室中へ圧送され、ここに変性インキュベーションの間保たれる。アニール/エクステンド温度の液体は第2温度安定浴から反応室中へ、アニール/エクステンドインキュベーションを実行するために第1温度安定浴から熱い液体を除去した後に圧送される。このプロセスはPCRプロトコルを完成するのに必要なだけ繰返される。
【0015】第4実施形は2つまたは3つの温度安定液体浴を使用し、それぞれの浴は液体が別個の導管を通って絶えず循環する。各液体の流れは必要なPCRインキュベーション温度の1つにサーモスタット調温されている。入力端に金網を備える単一の円筒熱交換室は、弁装置を通して液体の流れに連結されている。金網は個々の小さい毛管反応混合物容器を保持し、該容器は両端が、熱交換室内の適所に密封されている。容器は、各毛管容器の一端におけるシールが金網を通して嵌合するのには大きすぎるので、金網により間隔を置いた関係または配列に保持されている。弁装置は望ましくはコンピュータまたは他の自動化コントローラ下に、流れの1つを円筒熱交換室を一度に通過させ、他の流れまたは2つの流れは該熱交換室を迂回してバイパスされるように選択するために使用される。たとえば、変性インキュベーションを実施するためには、94℃の液体の流れを熱交換室に通すと共に、55℃のアニール流れおよび75℃のエクステンド流れは熱交換室を迂回する。
【0016】第5実施形は、それぞれが変性およびアニール/エクステンドインキュベーションに必要とされる2つの温度の1つに安定化された温度を有する2つの金属ブロックを使用する。端部の開いた薄壁の毛管は、これら2つの金属ブロックの間および該ブロックを通っている。蠕動ポンプまたはプランジャーおよびシール装置は、シリンジと同様、PCRプロトコルを実施するためプログラミングされたコンピュータの制御下に、毛管の一端に連結されている。ポンプまたはプランジャーは、反応混合物を毛管中へ引込み、変性ブロックにより取囲まれた区域中へ移動させるために活性化される、つまりブロックを変性温度に保ち、次いで反応混合物を毛管を通して、アニール/エクステンド温度に保たれたブロックにより取囲まれた毛管の区域中へ移動させる。このサイクルが、PCRプロトコルを完成するための必要な回数繰返される。次いで、プランジャーはPCR生成物を排出するために移動される。また、ブロック自体は、混合物を熱サイクルするため混合物を含有する定置の毛管に対して前後に移動させることができる。
【0017】本発明による毛管PCR装置の第6実施形は、間隔を置いた金属の熱交換ブロックを使用する点で、第5実施形と幾分類似である。この実施形は望ましくは、1対の間隔を置いた熱交換ブロック、それぞれのブロックを通る複数の開放端毛管および自動化された試料処理システムを有する。この処理システムは同時に、各毛管の端部を反応混合物容器中へ挿入し、反応混合物を毛管中へ吸上げ、次いで混合物は熱交換ブロックの間で移動し、PCR最終生成物を毛管から適当な容器中へ排出する(すべてはコンピュータ制御下に)。その上、処理システムは、毛管清浄化、すすぎおよび試料トレー移動および持上げ機能を、すべてコンピュータ制御下に実施するので、48または96試料のトレーは、必要に応じて、グループで、たとえば1回に12個、自動的に熱サイクルすることができる。
【0018】本発明の第7実施形は試料よりもむしろ熱源を移動するように設計されている。この実施形は、可動熱交換器(thermal heat exchanger)を有し、望ましくは2つ、3つ、4つ、またはそれ以上の軸方向に延びる放射状セグメントに分割された、円筒形の熱交換熱板(thermal plat)またはドラムを有する。各セグメントは、サーモスタットにより変性、エクステンションまたはアニーリングのための適当なインキュベーション温度に制御されている。2つだけのインキュベーション温度が要求されかつ3つのセグメントが設けられている場合、第3セグメントはアニール/エクステンション温度から変性温度へのトランジションを促進するために使用することができる。同様に、4つのセグメントが設けられていて、2つのインキュベーション温度が必要とされる場合には、他の2つのセグメントを、アニール/エクステンション温度と変性温度の間でトランジションを双方向に促進するために使用することができる。
【0019】それぞれのセグメントの弓形の外面は複数の平行なみぞを有し、それぞれのみぞは毛管を収容するため整列されている。毛管は、望ましくは全部の管が1つのセグメントのみぞの長さに沿って接するように経路定めされている。処理装置も、第6実施形におけるように包含されている。反応混合物を各毛管中へ吸込んで、接触している円筒形熱交換セグメントに隣接する位置へもたらすために、蠕動ポンプまたはシリンジ型プランジャーおよびシールアセンブリが使用される。次いで、PCRプロトコルが、円筒形熱交換板を、各セグメントが望ましくは必要とされるインキュベーション時間毛管と十分に接触している交番角位置の間で回転することによって実施される。
【0020】ここに記載したすべての装置は、所望のPCRプロトコルを定義するデータを受取り、必要なポンプおよび弁スイッチを操作するためおよび/または反応混合物を加熱または冷却するのに必要な熱交換媒体の移動を発生するための適当な制御信号を発することによりプロトコルを実施するように適合された、ユーザプログラマブルコンピュータ、たとえばパーソナルコンピュータ(PC)または通常の設計の制御装置を基礎とする内部マイクロプロセッサにより、制御される。
【0021】ここに記載したすべての装置は、反応混合物をアニール/エクステンドインキュベーション温度と変性温度の間で反応混合物を循環させるために、大きい熱質量の温度を変える必要がないという利点を享受する。この簡易化が熱勾配の問題を減少し、装置の熱設計を簡易化して、複数の反応混合物が全部、装置自体における不均一性により惹起される分散なしに、同時に同じPCRインキュベーションを受けることができるようにする。
【0022】実質的の熱トランジエントを受ける本発明の装置の主要部分は毛管壁である。装置のこれらの部分の低い熱質量および高い熱伝導率のため、試料の非常に迅速な熱サイクリングを実施することができる。ここに記載した多くの装置における毛管の使用も、熱交換器設計に対し処理される複数の試料間の温度の不均一性を最小にする必要なしに、出来上った生成物の量を簡単に評価できる。
【0023】
【実施例】
連続ループ毛管熱サイクラー図1に関し、本発明による毛管PCR装置の第1実施形が示されている。装置10は2つの異なる熱安定な液体浴を有し、それらの間で反応混合物が毛管ループでポンプ輸送される。この実施形は約1mlよりも大きい任意の大きさの反応体積でPCRが実施可能である。2つの反応温度は、変性およびアニーリング/エクステンションインキュベーションのために使用される。それぞれの温度におけるインキュベーション時間に関する完全な制御は、ポンプ12および各浴中の管長の比によって設けられている。
【0024】代表的な2温度PCRは、反応混合物を約60℃〜95℃の間で1〜300秒の範囲内の滞留またはインキュベーション時間で循環することを包含する。3つの温度安定液体浴は、3つの別個のインキュベーション時間のために使用することができる。キム(Kim)およびスミシーズ(Smithies)は、“ヌクレイックアシッドリサーチ(Nucleic Acids Research)”第16巻、第8887頁〜第8903頁に、中間“エクステンション”温度におけるインキュベーションは不必要であることを教示する論文を発表した。従って、図1の実施形は、この研究に基づき、2つの温度、1つはアニーリングおよびエクステンションのための37〜72℃の範囲内および1つは変性のための85〜98℃の範囲内の温度だけを使用する。
【0025】第1実施形は潜在的に反応管ループの最大体積以外に上限を設けずに、約1ml以上の体積を有する分取的大きさのPCR用に設計されている。望ましい標的DNAセグメントは、約100〜10000の塩基対(bp)を有していてもよい。第1実施形は、PCR反応混合物に必要な最も高価な試薬、つまり2つのプライマーおよび化学量論的制限の最適消費のために設計されている。
【0026】図1には、高温浴が16で示され、低温浴は18で示されている。これら2つの浴は、2つの浴16および18の間の熱の流れを最小にするために選択された絶縁層20によって分離されている。浴16はユーザ定義温度、望ましくは85〜98℃±0.1〜0.5℃にサーモスタットにより制御されている。浴18は40〜70℃の間、望ましくは同じ許容差内のユーザ定義温度にサーモスタットで制御されている。各浴は、熱均一性を達成するために、混合羽根等のような通常の手段による乱流混合を使用するができる。
【0027】反応容器22はある長さの比較的薄壁のプラスチック毛管からなり、該毛管は、2つの浴の間の壁を、液面下に沈んでいる、2つのOリング24および26を通して貫通するループを形成する。反応管22の内径およびその長さは、反応体積の理論的上限を確定する。良好な温度制御を達成するためには大きい長さの狭い管が望ましい。
【0028】低温浴18内の液体中には4路弁14が浸漬され、液体流路を、反応混合物試料を反応容器22中へ導入し、出来上ったPCR生成物を取出すために変えるのに使用される。浴18内に位置定めされた蠕動ポンプ12も、反応混合物を、反応容器22中、外およびそれを通して循環させるために使用される。ポンプ12は厳密に制御され、校正された流量を有する。蠕動ポンプが選ばれ、反応混合物はプラスチックのみと接触する。
【0029】双方の浴中で使用される管が同じ内径および外径を有する場合、各浴中での反応混合物の滞留時間は、2つの浴中の管長の比によって制御される。一般に、浴16中で5〜15秒の変性インキュベーション時間を使用し、浴18中で数分までのアニーリング/エクステンションインキュベーション時間を使用するのが望ましい。この第1実施形では単一連続反応管22が2つの浴の間で漏れ止めOリングシール24,26を通り、両端は4路弁14に接続している。反応管が滑動しうるOリングシール24,26の使用により、インキュベーション時間を、各浴中の管の相対的長さを調節するためOリングを通して管を引くことにより手動での調節が可能となる。
【0030】4路弁は、低温浴18中の管22の長さから反応生成物が新しいサイクルを始めるため高温浴16中へ返送することのできる位置、PCRプロトコルの完成時にPCR生成物を排出する位置、および反応管22をフラッシング、清掃するため適当な操作を実施した後または必要に応じ反応管22を交換した後、新しい反応混合物を反応管22に導入することのできる位置を有する。
【0031】望ましくは1つのサイクルから別のサイクルへのPCR反応の進行をモニタするため、望ましくは低温浴内にセンサを有する浸漬可能のファイバオプチクスの分光光度計が包含されていてもよい。この分光測光(UV)検出器28は、dNTPsがDNA生成物中へ組込まれたときに期待されるハイポクロミズムを検出する。限界差動信号のみが典型的に認められ、その後にPCRプロトコル中に後の熱サイクルが認められる。類似のけい光検出器を、種々の“Tazman”式測定の実施に使用することもできる。
【0032】反応管22は、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、たとえばデュ・ポン社のテフロン(Teflon登録商標)のようなPCR相溶性材料からなり、3mmよりも小さく、望ましくは約1mm〜2mmの間の内径を有する毛細管である。この管は0.2〜0.5mmの間、望ましくは約0.3mmである壁厚を有する。反応管22の毛管寸法は、反応混合物が浴を通過する際管壁を横断する熱伝達勾配の効果を最小にする。さらに、小さい寸法は、反応混合物試料体積の終端を限定するための不連続部としておよび反応混合物を、予測できるように、蠕動ポンプ12および4路弁を経て浴16および18を通して駆動するための推進体として使用するための気泡または油のような混合しない液体の使用を可能にする。
【0033】反応管22を不連続的に移動する気泡または他の液体は、液体不連続部の通過を検出するのに適当な装置の使用により簡単な自動化可能のサイクルカウンタを設けるのに使用することができる。不連続部の通過を検出するのに適当な装置は再び双方の反応管22に取付けられた光電式または電気容量型センサ42を包含する。
【0034】第1実施形の操作は簡単である。反応混合物を4路弁14を通して管22中へ導入した後、反応混合物をサーモスタット制御された浴16および18を通して連続的にポンプで、ポンプ12の速度および管体積によって定義される全サイクル時間で圧送する。完全なループを通る混合物の毎回の通過が、1つの完全なPCRサイクルである。全反応体積は任意の1つの時間に単一の温度では存在しないかも知れないが、反応混合物の各体積要素は各温度においてほぼ均一な滞留時間を経験する。比較的狭い管孔および表面粗さのため、混合部分が管を通過する際混合部分内に若干の乱流混合が存在する。この混合が、温度制御の鮮鋭度を高める。所望数のサイクルが完成した後、出来上ったPCR生成物を4路弁によりポンプで排出する。
【0035】市場で入手できるサーモスタット付浴は、浴温度を0.1℃以内に制御することができ、これにより正確な温度調節が得られる。この実施形では特殊な流れ調整またはソフトウエアは必要でない。それというのも非常に正確な流量を有する蠕動ポンプも市場で購入できるからである。
【0036】反応管22中に大量の出来上った生成物が蓄積しはじめた後、PCRプロトコルにおけるアニーリング/エクステンションインキュベーション温度または時間の遅れを自動的に変えるのが望ましい。ポンプ流量または下方浴温整定値の自動的または手動的変更はポンプ速度制御入力および浴温制御に適当なインタフェースにより結合している適当にプログラミングされたCPU30によって実行することができる。全経過時間と正比例するように、全増幅期間にわたって変性温度を徐々に増加するのが望ましい。このプロトコルは、高温浴の温度制御入力およびサイクルカウンターに結合した適当にプログラミングされたCPUによって達成することができる。かかる制御図式は、低温浴18、蠕動ポンプ12および高温浴16にそれぞれ結合した制御線路32,34および36と共に図1に点線で示したCPU30により概略的に表わされている。
【0037】PCRプロトコルによるかまたは若干の別の実施形におけるあとのサイクル中でdNTPs、酵素またはプライマーのような補充的試薬添加物を供給するのも望ましい。これは、制御母線40における信号により制御されるブロック38により略示された試薬添加弁操作機構を介してCPU30の制御下に自動的に行なうことができる。試薬の連続的添加またはあとのサイクルにおいてのみの添加のために、種々の実施形の弁装置が設けられている。CPU30は、完成されたサイクル数をモニタする必要のある実施形、たとえば試薬をPCRプロトコルにおけるあとの特殊な時点で添加される実施形においては、制御母線44を介してサイクルカウンタに結合されている。プロトコルにおけるあとでの試薬添加は総収率を最大にすることができる。たとえば、忠実度はdNTP濃度を10〜50ミクロモルの範囲内に保つことにより改善することができるが、これらのレベルはあとのサイクルにおいて化学量論的制限であることを立証する。従って増幅プロトコルにおけるあとのMg−dNTP濃度のオーダ規模の飛躍は、忠実度に対する小さい正味効果で、収率を劇的に改善することができる。同様に、あとのサイクルにおけるプライマー濃度を増加して総収率を上昇させることができる。この手段は生成物純度を同様に改善する。
【0038】毛細管の内面は、管壁に隣接する試料液部分に対するかじりを形成する。気泡または他の液体不連続部は、各試料の間で全試料を、細管流路に沿って1ユニットとして押すのに有用である。他の場合には、毛管を横断する放物面の流れ断面形が存在する。試料または試料部分の間の気泡の使用は“スラッグ(Slug)”流れを生じ、この中で試料“スラッグ”は毛管を通して押される。
【0039】単流路毛管熱サイクラー図2には、比較的大体積にPCRを実施するための毛管PCR装置の第2実施形の概略図が示されている。この実施形は、適当な温度の熱および冷源の内および外で多数回経路定めされた毛管50の長さを使用する。図2の実施例は毛管50の連続ループの形の反応室を使用する。各ループは平衡された熱ゾーン52を通る部分および平衡された冷ゾーン54を通る部分を有する。代表的には、熱ゾーン52は、液体がPCRプロセスにおける変性を行なうのに必要な温度範囲内の一定温度、代表的には約95℃を有する液体浴である。同様に、冷ゾーンは通常、アニーリングおよびエクステンションに必要な温度範囲内の一定温度、代表的には約60℃を維持するように制御された温度を有する液体を有する液体浴である。
【0040】他の温度は、変性およびアニーリング/エクステンド範囲内で使用することができ、熱および冷ゾーン52,54のそれぞれは、金属ブロックのような管50が通過する温度制御された固体ブロックであってもよい。また、熱ガスオーブンも変性のために使用することができ、冷ガスオーブンは冷ゾーンに対して使用される。しかし、熱および冷温度制御されたゾーンに対する好ましい構造は、2つの温度制御された金属ブロックまたは2つの温度制御された水浴のいずれかである。管50の長さ、その内径、熱および冷ゾーンの各々における管の長さ、および管内での反応混合物の流量は、増幅の制御におけるすべてのファクタである。
【0041】図2の第2実施形においてはPCR反応混合物が管50に沿って移動するための移動力は、反応混合物53の大きい体積を保持しうる無菌の使い捨てシリンジである。シリンジ51は当業者に周知の反応混合物成分および増幅される試料核酸が充てんされる。次いで、シリンジ51は手により圧縮ガスまたはシリンジポンプ作用を使用して反応混合物53を管50中へおよびこれを通して移動させるために操作する。
【0042】空気または鉱油のような混じらない液体を含有するもう1つのシリンジ55はシリンジ51と並列に管50に結合することができる。シリンジ55は断続的に気泡または混じらない液体泡を管50内の反応混合物53の流れ中へ注入するため操作する。これは、スラッグ流れが流路を通じて支配し、反応混合物53の各体積要素が同じ数および期間の熱インキュベーションを経験するのを確実にする。スラッグ流を惹起するため空気の使用は、流体が存在する場合、出来上ったPCR生成物のみが容器56中に集められるので望ましい。シリンジ55の使用は、分取スケールのPCRに対しては、プライマーの濃度を消尽するのに十分なサイクルを実施する限りおよび各ゾーン内で動的滞留時間が試料の多くをインキュベーション温度に到達させるのに十分である限り必要である。シリンジ55は、“ホットスタート(hot start)”を実施するためのそう失試薬(missing reagent)を導入するために使用することもできる。
【0043】各ゾーン内の管50の長さはそれぞれの時間に単位体積の反応混合物が熱ゾーンを1回通過し、冷ゾーンを1回通過し、1つの完全なサイクルが完成されるように選択される。系中のループ数が、実施されるサイクルの数を定める。望ましい操作法は増幅されたすべての生成物を強制的に完全に管を通して排出するためシリンジ51の頂部にエアポケットの残留を包含する。
【0044】反応管50の管材料はガラス(適当なシラン化剤で塗布)、金属またはPCR法に干渉しないタイプのプラスチックであってもよい。望ましくは、管材料は1回使用のもの(使い捨てタイプ)である。プラスチック、ポリプロピレンまたはテフロンが望ましい。しかし、この実施形ではパリレン(parylene)で塗布された金属管材料が望ましい。それというのも金属管材料は良好な熱コンダクタンスを有し、曲げた後にその形を保持し、管の内径はスラッグ流れの間、プラスチック管よりも多くの乱流混合を得るためより小さくてもよく、かつ金属は加熱されたブロックと、プラスチックよりも一そう熱的に相容性であるからである。
【0045】図2に示した第2実施形の主要な利点は1回通過(ワン・パス)で得ることのできる増幅された生成物の大きい体積である。これは大量の増幅された生成物を得るため多数の個々の100μlの反応混合物を製造しなければならない通常型のPCR装置よりも操作が一そう便利である。個々の反応混合物は通常、増幅し、プールし、再分割しなければならず、これは冗長で時間のかかる操作である。
【0046】多重水浴毛管熱サイクラー図3には、毛管が存在する室の温度を変えるため水浴を使用する比較的小規模の非常に迅速なPCRを実施するための、本発明による毛管PCR装置の第3実施形の図が示されている。この装置においては液密の室60は、室から液密のグロメットを通って突出する両端64および66を有する少なくとも1つの毛管反応室62を含有する。ここに記載したすべての毛管装置がそうであるように、毛管62は望ましくはパリレンで塗装された金属、またはプラスチック実施形に対して望まれるテフロンまたはポリプロピレンで塗装されたプラスチックから製造されていてもよい。PCR反応混合物1〜25μlを、任意の適当な手段により室60中の毛管62の部分中へ注入する。
【0047】室60は、2つまたは3つの温度制御された液体浴とは液体連絡されている。図3には2つの浴だけが示されている:高温浴68は95℃のような変性温度範囲内の一定温度を保ち、冷温浴70は、60℃のようなアニーリング/エクステンション範囲内の一定温度を保つ。変性、アニーリングおよびエクステンション工程に対する3つの別個のインキュベーションが望まれる実施形は、図3に点線により指示した、第3の温度制御された液体浴72を必要とする。
【0048】各液体浴は、浴68に対し、管74および76のような入力管および出力管に結合した、それ自身の内蔵液体ポンプを有していてもよい。これらの実施形においては浴68から室60中へ熱い液体を、変性工程に対する所定時間(代表的には1秒から3分まで)、毛管62を十分に浸漬するのに十分なレベルにポンプで圧送するために使用される。室中へおよび室からの水の流れは代表的には、温度間の切換を急速にするため毎分少なくとも1 lに設定される。
【0049】変性インキュベーションの完結後、適当な制御信号が、室60内の95℃の液体を熱い液体浴68中へのポンプにより返送させるために発せられ、室60内の液体水位が十分に低い場合、浴70からの冷たい液体を室60中へ圧送させるために適当な制御信号が発せられる。フロートスイッチ(図示せず)のような液体水位センサ機構はアニール/エクステンドインキュベーションを実施するため室60をある温度の液体で充てんしはじめるため溜め70中のポンプにスイッチを入れる時間を定めるために使用することができる。反応混合物は、室60が異なる温度の液体で充てんされる場合に温度を迅速に変える。それというのも小さい熱質量を構成する毛管が使用されるからである。この第3の実施形においては、各水浴68,70または72からの液体は、該温度におけるインキュベーションが終った場合、そのもとの浴68,70,72中へポンプで返送することができる。しかし、この操作は毛管62を、次の浴から液体が室60に入る前に、一時的に空気中に懸吊状態にとどめる。室60および水浴の相対的体積は、室60の体積が水浴の体積に比べて非常に小さいようなものである。このため、液体を室60から水浴へ移動させ、該水浴が、室60の排水に先立つことなしに、次のインキュベーションのための新しい液体を用意する。換言すれば、液体は簡単にそれぞれの浴と各インキュベーション用室の間の管路によって移送することができる。室60からの液体の温度が新しいインキュベーションのためポンプで圧入される液体浴中の液体の温度と相違するとしても、水浴の熱質量は、浴温に著しい変化が存在しないほど大きく、浴の制御は一定の浴温を維持することができる。この設計は代表的には1秒以下で温度変化を完成するのを可能にする。
【0050】図4は、任意の浴から液体を汲出すために1つのポンプを使用する、図3に示した第3実施形と類似の毛管PCR装置のもう1つの実施形を表わす。図3および図4における同じ番号を有する機素は、構造が同じでありかつそれらが同じ機能を発揮することを意味する。図4において、単一の双方向ポンプ78は入力管80および出力管82によって室60に結合されている。このポンプは、入力管86および出力管88によって液体マルチプレクサ84の出力部に接続されている。液体マルチプレクサ84は、複数の入力部を有し、その各々は2つまたは3つの温度制御された浴68,70および72の1つに接続されている。各入力部は、液体浴68の入力管86および出力管88のような2つの管によって相応する液体浴に接続されている。
【0051】液体マルチプレクサ84およびポンプ78は、順次インキュベーションの所望のPCRプロトコルを実施するため、ポンプ78によるポンプ作用の方向の適当な切換および液体流出力部へ接続するため液体流入力部の1つの適当な位置選択を有する通常の適当なプログラマブル制御装置(図示せず)によって制御される。
【0052】図3および4に示した装置は、混合物はPCRプロトコルの間一定不変であるので、油または他の液体不連続手段を使用することなく、10μl以下の体積でPCR増幅を実施することができる。図3および4に示した装置は1秒のような短かい時間内にPCRインキュベーション工程を実施することもでき、2つのインキュベーションPCRプロトコルサイクルの合計時間は1秒の変性時間および7〜30秒のアニール/エクステンド時間の使用により8秒のような短時間に減少することができる。しかし、アニール/エクステンド時間が短かい場合には、試料体積中に、大濃度のTaqポリメラーゼのような熱安定酵素が必要とされうる。
【0053】定常循環液体浴毛管熱サイクラー本発明の毛管PCR装置の第4実施形は図5に示されている。この図示された実施形は、3つのサーモスタットを備える液体浴および反応混合物試料を保持する密封毛管を有する単一の反応室を有する。しかし、PCRプロトコルに対し2つの温度だけが必要な場合には、第3浴は省略することができる。第3浴を完全のためここに記載する。
【0054】第1浴98は、大部分の液体を、55℃のようなアニーリング温度の範囲内の若干の温度に維持する。第2浴100はそれに含有されている液体の温度を、エクステンションインキュベーションに対し有効な温度範囲内の温度、たとえば75℃に維持する。第3浴102は、それに含有されている液体の温度を、変性に有効な温度範囲内の温度:代表的には95℃に維持する。各液体浴はその中にポンプを有し、該ポンプは、液体を出力管108から、反応室106の入力側にある弁装置104により浴中へ圧送する。同様に、浴100の出力管110および浴102の出力管112も弁装置104に接続する。反応室106からの液体は出力弁装置120によりその浴に戻り、各浴は帰り管、つまりそれぞれ浴98,100および102に対する管114,116および118を包含する。
【0055】コンピュータ122は、望ましい実施形において液体流量を制御するため、制御母線を介して種々の浴のポンプに結合されている。一定流量は別の実施形において使用することもでき、この場合にはコンピュータ122にポンプを連結するのは必要でない。それというのもポンプは同じ流量で連続的に回転するからである。
【0056】コンピュータ122は入力弁装置104および出力弁装置120にも結合されている。弁装置のコンピュータ制御の目的は選択的に1つの温度の液体の流れを反応室106中へ向け、所望のPCRプロトコルを定義するコンピュータ122に記憶されたデータにより他の流れをバイパスすることである。
【0057】米国特許分類番号No.07/871264号(1922年4月20日出願)に記載されているような他のPCR装置のように、PCRプロトコルはすべての所望のPCRインキュベーションの温度および時間、実施されるサイクル数を定義するチェックポイントデータおよび与えられたプロトコルの完結した際に他の所望のプロトコルに結合して操作されるデータによって定義することができる。所望のプロトコルを定義するデータはユーザによって入力することもできるし、またはあらかじめ定義されたプログラムであってもよい。
【0058】PCRプロトコルは、コンピュータ122により、入力弁装置104を制御して、1つの浴からの1つの流れだけが任意の特定時間に反応室を通過するように志向され、すべての他の流れは、反応室106を通過しない別の流路によりバイパスされるようにすることにより実施される。弁装置104は、当業者に周知の円筒または回転ソレノイド操作または空気圧式のマルチポート弁であってもよい。流れの順序は、反応室106の1つの配列および種々のバイパス状態における別の流路を示す図6〜9につき良好に理解される。
【0059】管反応室106は、望ましくは、室(管状)106の外側に取付けられた2つまたは3つの浴からのバイパス管路を有する。弁装置104および120は、室106の反対側端部に存在する。この装置を横断する断面図は、バイパス管路により取囲まれた室106の内部を示す。この断面図は、図6ないし図9に略示されている。
【0060】アニールおよびエクステンション温度が同じ場合には、2つの浴およびバイパス流路のみが必要であり、図5ないし図9における装置は3つのバイパス流路よりむしろ2つのバイパス流路を必要とするにすぎない。
【0061】図6は、3つの流れ全部が、その別の流路を通ってバイパスされている、空の反応室106を示す。アニール温度の液体はバイパス流路130を通って流れ、エクステンション温度の液体はバイパス流路134を通って流れる。
【0062】図7は、アニールインキュベーションのための弁装置を示す。このインキュベーションにおいては、浴98からの55℃の液体は、反応室106を通過するようにするため、コンピュータ122を介して、弁装置104中のソレノイド操作弁によって切換えられる。この場合、反応室中の毛管内の反応混合物の温度は急速に55℃に平衡化される。浴100からの75℃の液体および浴102からの95℃の液体の双方は、それぞれのバイパス流路132および134に結合されたままである。
【0063】適当なアニーリングインキュベーション時間が経過した後、コンピュータ122が弁装置104および120を活性化して、図8に示した装置への流れをエクステンションインキュベーションを実施するために切換える。このインキュベーションにおいては、95℃および55℃の液体の流れはバイパスされ、75℃の流れは反応室106を通過するように切換えられる。
【0064】エクステンションインキュベーションの完結の際、二本鎖のエクステンション生成物を、次のサイクルのための一本鎖の鋳型に分割するための変性を行なわねばならない。コンピュータ122は再び弁104および120を活性化し、流れを図9に示した形状に切換える。ここで55℃の液体の流れおよび75℃の液体の流れはバイパスされ、95℃の液体の流れは反応室106を通過するように切換えられる。この工程が1つのPCRサイクルを完成する。次いでコンピュータ122は、代表的には、PCRプロトコルを完成するため、サイクルを所望の回数繰返す。
【0065】反応室106は反応室中、入力端に、横に取付けられた金網を有する管状室である。反応混合物は、完成生成物の所望体積により種々の直径の、不活性でパンクなしの継目なしプラスチック毛管の薄壁(0.1〜0.3mm)の区間に蓄積される。2mmまでの内径および0.075mmのような小さい内径が有効である。管は代表的には300℃の最大連続使用温度定格を有し、大量の液体によって影響を受けない。たとえば、この目的のために使用することのできる管は、Micro ML Tubing Sales社(45−10 94th Street,Elmhurst,NY11373)から購入できる。
【0066】反応混合物は、管のそれぞれに注入され、各管は両端で、望ましくは管の端部から反応混合物を隔離するために、各端部で気泡で閉鎖されている。1端部におけるクランプまたは他のクロージャーは金網を通して適合させるため十分に小さい。他端部におけるクランプは、望ましくは金網を通して適合させるため十分に大きい。所望のように多数の管中へ反応混合物を注入した後、複数の毛管を金網を通してねじ締めし、金網により懸吊する。管の束および金網を反応室106中に取付け、室を閉じて密封する。クランプ144は簡単には、拡大されたクランプを形成する毛管の溶封された端部である。次いで、コンピュータを活性化して、上述したように液体の流れが毛管をめぐって室106を通るように切換えを開始させる。
【0067】図10は、反応室106中の典型的毛管の配置を示す。この図中で、単一の毛管140は、反応室106の一端を横切る金網142により適所に保持されて示されている。毛管140の上流側端部における管クランプ144は毛管140を、反応室106内の乱流の流れに振動することのない下流側端部の適所に保持する。それというのも上述したように、金網142の継目を通して適合するためには大きすぎるからである。毛管140の端部における気泡146および148は、反応混合物150を毛管の端部から隔離する。この望ましい実施形においては、上流側クランプ144は、符号を付したタブまたは試料を識別するのに役立つスタンプを有する。また、パドル形クランプ144は液体流れ中で動揺し、こうして循環する液体がそれを通過する際に乱流を生成する。
【0068】図11は、毛管140に既知量のPCR反応混合物を装入し、処理後PCR生成物を取出すための系を示す。シリンジ151は気密嵌合を有する毛管140のマウス152中へ挿入される。毛管140はそれ自体目盛を有していてもよいし、または図示のように管に近接して、目盛を有するホルダ154中に置くこともできる。毛管140の開放端部は、反応混合物の溜め150中へ浸漬している。次いで、シリンジのプランジャーを引出し、毛管からその中の圧力を大気圧以下にさげるのに十分な空気を吸込む。この場合、PCR反応混合物は、反応混合物溜めに働く外側の高い大気圧によって毛管140中へ押込まれる。反応混合物の水位または量は、毛管140内のメニスカスの位置によって定められる。メニスカスの位置は、±2〜5%内で体積の消費を指示する。毛管140を満たした後、端部を密封し、締付けるかまたは蓋締めし、PCR処理を続行する。出来上ったPCR生成物の取出しは、毛管140の端部クランプを切取り、上記操作を逆にすることによって達成される。この方法においては、毛管140はそれ自体のピペットであることに注意。シリンジは決して反応液に触れず、これにより相互汚染の機会は最小になる。
【0069】図5ないし9に関連して記載した第4実施形は、分析的大きさからセミプレプおよび分取的大きさまでの異なる試料体積をすべて同時に処理できるという利点を有する。処理される体積は、毛管の長さ、反応室内の毛管の数および/または管の内径を変えることによって変えることができる。また、反応室内の乱流は、ある温度工程後の反応混合物の温度平衡を促進する。望ましくは、反応室の体積は、それぞれの浴の体積の10%よりも小さい。コンピュータによる、反応室を通る流量の可変制御は、異なる数の毛管およ試料体積(この場合反応室の異なる割合が試料管によって占められる)に対して作用するPCRランの間のタイムレスポンスおよび温度平衡時間の最適化を可能にする。毛管内の反応混合物の温度における非常に迅速かつ正確に制御された温度変化は高い精度の浴温制御、たとえば±0.1℃の浴精度が市場で利用しうるので達成することができる。これに加えて、毛管の低い熱容量、反応混合物と熱交換液の間の高い熱流量、毛管をめぐる乱流、および室106中に空所の不在のすべてが、全PCRプロトコル時間を最小にするのを助ける。
【0070】図5に示した装置のすぐれた利点は、上述した多数の他の毛管PCR装置のように、製造された出来上った生成物の体積を、金属のブロック熱交換器に対する新しい熱計画を設計する必要なしにかつ熱サイクルパラメーターを妨げることなしに、増大することができることである。この柔軟性は、PCR基礎製造方法に対し従前技術のPCR装置を使用する複雑さを軽減しうる。図5に示した装置の設計は、実質的にすべてのその成分、たとえば水浴、パーソナルコンピュータソレノイド弁、毛管、シリンジ等は容易に購入しうる(特註でない)ので、組立が廉価である。
【0071】金属ブロック毛管熱サイクラー本発明による毛管PCR熱サイクラーの第4実施形は、図12に示されている。その最も簡単な形では、この装置は絶縁材の層174により分離された2つの金属ブロック熱交換器170および172を包含する。熱交換器170および172は、サーモスタットで制御される一定温度の液体浴のような他のタイプの熱交換器であってもよい。各金属ブロック熱交換器170および172は、望ましくは、その中の温度勾配を最小にするため、アルミニウムまたは若干の他の良熱伝導性金属からなっていてもよい。
【0072】各金属ブロックの温度は、金属ブロック170に対しボックス176および金属ブロック172に対しボックス178によって象徴されるように、適当な温度制御系により一定温度に維持される。金属ブロック熱交換器170の温度は、温度制御系176によりPCR変性に適当な温度範囲、代表的には94℃に維持される。金属ブロック熱交換器172の温度は、温度制御系178により、PCRアニーリングおよびエクステンションに適当な温度範囲内(代表的には50〜75℃)にほぼ一定に維持される。使用することのできる適当にプログラムしうる制御系は、米国特許第5038852号および米国特許出願No07/871264号(1992年4月20日出願)に記載されている。
【0073】金属ブロックの温度を制御するためにはペルティエ(Peltier)の装置が理想的である。それというのもこれらの金属ブロック熱交換器がそれぞれ一定温度に維持されるからである。適当な公知温度検出およびフィードバック制御回路(図示せず)は、ブロックが熱すぎる場合に熱を取出し、冷すぎる場合に熱を加えることにより、ブロック温度を一定に維持するためペルティエ装置を流れる電流の方向を制御するのに必要である。ブロックに対しては、抵抗加熱装置および/または金属ブロック内の通路を循環する加熱/冷却された液体(冷却された液体は、ブロックの所望温度に依存して、水道水または冷却回路のフレオンを循環することにより冷却される不凍液である)のような他の温度制御系も働く。温度制御系は図12に1回だけ示し、不必要な反覆をさけるため、引き続き記載された装置を用いてPCR方法を実施する工程を図面につき説明するのは省略する。
【0074】この実施形においては、少なくとも1つの薄壁毛管反応室180は2つの金属ブロック170および172を通り、金属ブロック熱交換器170により取囲まれた管180の一部分および金属ブロック熱交換器172により取囲まれた他の部分で働く。薄壁毛管はプラスチック、金属またはガラスであってもよく、プラスチックが望ましい。ガラスは、鋳型鎖またはポリメラーゼを壁に粘着させることによりPCR反応に干渉し、これによりアニーリング/エクステンドプロセスに干渉しうる。望ましくは、毛管と金属ブロック熱交換器の間の相互連結は、管およびブロックが相互に定置にとどまるように設計されている場合には軽い摩擦嵌合であって、毛管180は迅速かつ容易に、新しい毛管を金属ブロック中へ溶入することにより交換することができ、これにより該毛管は投棄される。この特徴は、相互汚染の危険を最小にし、PCR実験の間毛管を洗浄および/または滅菌する必要性を省略することにより装置の使用を簡単にする。また、管はPCR実験の間清浄にすることもできる。
【0075】反応混合物試料の導入および毛管180内での移動は、シリンジまたは蠕動ポンプのような容量置換型ポンプ装置を用いて達成しうる。さらに、容量置換型ポンプ装置と反応混合物試料の間に、空気または液体緩衝剤を使用することもできる。
【0076】管180中への試料および反応混合物の導入は図12に示したように、自動シリンジにより達成される。その一端にピストン184を形成する細いロッド182を、ステップモータ186によりブロック170および172を通して毛管180中へ挿入する。ピストン184は毛管180の壁とシールを形成する。このステップモータ186は、適当にプログラミングされたコンピュータ188のような制御装置によって制御される。ステップモータ186の機能は、空気圧系によって行なうこともできる。毛管180の一端190は、混合物導入の間試料および反応混合物の溜め(図示せず)と液体連通している。ステップモータ186はピストン184を毛管180で通して引出すために動作し、これによってその中の圧力は大気圧以下に低下する。この工程は、反応混合物192を毛管180中へ、図13および図14に示したように、1つのブロック内の毛管体積を完全に充てんするのに十分な反応混合物が毛管180中に存在するまで、押したり引いたりさせる。
【0077】変性の間、図13に示したように、制御装置188およびステップモータ186はロッド182の位置をとり、ピストン184は熱交換器170の左縁にあるので、毛管180内の反応混合物192は熱交換器170内に包含されている。こうして、反応混合物192は急速に94℃に加熱される。ピストン184はPCRプロトコルの1サイクルの変性インキュベーションに所望の時間を定義するコンピュータ188内に記憶されたデータによって定められた時間この位置にとどまる。これらのデータは使用者により、ユーザインタフェースによって制御装置中にプログラミングすることができるかまたは永久的に制御装置のメモリに記憶することもできる。
【0078】アニール/エクステンドインキュベーションは、コンピュータ188およびステップモータ186がロッド182およびピストン184を、図14に示したように熱交換器172により完全に取囲まれている毛管内の位置に反応混合物192を押す方向に動かす場合に始動する。ここで、反応混合物は、プライマーを一本鎖鋳型にアニールさせ、長いエクステンション生成物の形成を開始させるため、70〜70℃の間の温度、代表的には60℃に急速に冷却される。アニール/エクステンドインキュベーションの完結時に、混合物192は二本鎖エクステンション生成物を一本鎖鋳型に分断するため、図13に示したように、新しい変性サイクルの用意ができている。
【0079】次に、制御装置およびステップモータはロッド184およびピストン182を熱交換器170中へ引戻して、他の変性インキュベーションを開始する。インキュベーションのサイクルは、ユーザによりプログラミングされたかまたはコンピュータ188のデータベースに永久的に記憶された回数繰返される。
【0080】PCRプロトコルが完成した後、反応混合物182は図15に示したような適当な容器中へ排出される。ピストンはブロック170および172を通して混合物192を押し、毛管180から容器194中へ排出する。
【0081】図16〜19は、ロッド182およびピストン184の機能が不活性油203に代えられている点を除き、上述したものと類似の毛管PCR装置の別の第5実施形を表わす。不活性油203は、油溜め204から試料弁ループ202を通って導かれる。油は、PCR反応混合物をブロック170と毛管172の間でその前面で、前後に押しかつ引くために試料弁ループ202を通して空気圧下に圧送または駆動することができる。油に対するこのポンプ作用または空気力作用は、所望のPCRプロトコルを規定する記憶されたデータに応答するコンピュータ結合の制御装置(図示せず)の制御下にある。弁ループ位置および溜め圧力は、毛管180が図16R>6に示したように油で完全に充てんするため最初にステップモータを介してコンピュータ制御される。次いで、反応混合物試料192は、油203が、溜め204中へ引戻されるときに、管180中へ引込まれて、反応混合物試料192は、変性インキュベーションにつき図17に示したように、熱交換器170により完全に取囲まれる。
【0082】変性インキュベーションが完結した後、油203は再び、PCR反応混合物が、図18に示したように熱交換器172によって完全に取囲まれている毛管内の位置に押すように、制御装置によりさらに圧送される。ここで、混合物は迅速にアニール/エクステンド温度に冷却される。アニール/エクステンドインキュベーションの完結の際、制御装置(図示せず)は、PCR反応混合物を熱交換器170中へ引込んで新しいサイクルを開始するため不活性油の方向を逆にする。このインキュベーションのサイクルは、プログラマブル制御装置に記憶されたPCRプロトコルデータ中に指定された回数繰返される。所望のサイクル数が完結した後、制御装置は毛管180を通して十分に油を圧送する制御信号を発して、出来上った生成物を補集容器194中へ放出するかまたは試料弁ループ202に結合していない毛管の端部に結合している試料検出系中へ放出する。
【0083】試料は、静止位置につき上述したように毛管中へ引込むことができ、次いで毛管または熱交換ブロックを相互に相対的に移動させて反応混合物試料に対して熱サイクルを実施する。かかる1実施形において、毛管および試料は静止のままであり、ブロックを前後に移動させる。もう1つの実施形においては、ブロックは静止のままであり、試料混合物を含有する毛管はその間で移動される。これらの実施形においては、ブロックと細い毛管との間の摩擦は移動を容易にするため比較的低くなければならない。この特徴はブロックと毛管との間の熱コンダクタンスを減少し、そのため熱応答を制限し、こうして全サイクル回数を増加する。熱コンダクタンスはこれらの実施形においては、熱伝導グリースまたは鉱油またはエチレングリコールポリマーのような潤滑剤の使用によって最大にすることができる。
【0084】金属ブロック多重毛管熱サイクラー本発明の第6実施形の“ブレッドボード”レイアウトは図20に表わされている。ブレッドボード毛管熱循環装置210は、少なくとも2つの金属ブロック熱交換器212および214を包含し、これらは、この予備設計においては、台板216に固定されている。図20に点線で示した第3熱交換器218は別個のアニーリング温度およびエクステンション温度を要求するプロトコルを利用する場合には熱交換器212と214の間に位置定めされていてもよい。熱交換器212および214は、2つの熱交換器を相互に絶縁する空隙によって分離されている。また、これら熱交換器は、ガラス、ウールまたは発泡ポリマーのような適当な絶縁層によって分離されていてもよい。パーソナルコンピュータ220は、入力制御データを、線路222を介してサーモスタット制御装置224および226に送信する。これらの制御装置はそれぞれの熱交換器212および214を、変性のための一定温度(代表的には94℃または95℃)またはアニーリングおよびエクステンションのための一定温度(約37〜65℃の間、代表的には60℃)に維持する。複数の毛管228は、試料移動装置230から、支持クランプ232、それぞれの熱交換器212および214および管リフトアセンブリ236におけるクランプバー234を通るように経路定めされている。
【0085】各毛管は、デュ・ポン社のテフロン(Teflon登録商標)からなり、望ましくは約1.5mmの内径および約0.3mmの壁厚を有する。この管はゼウス・インダストリアル・プロダクツ社(Zeus Industrial Products,Inc)から購入することができる。毛管228の先端238は、管リフトアセンブリ236により微量滴定トレー240の垂直上方へ線形列で配置される。コンピュータ制御のステップモータ242はクランプバー234を上げたり下げたりする親ねじを回転し、管先端238をトレー240と共に配置された試料容器244の列中へおよび列から順番に上下する。この実施形においては、95ウエルの微量滴定トレー240中のウエル(くぼみ)中の試料容器の1つの完全な列を同時に処理できるようにするため12個の毛管228が設けられている。しかし、同時に操作する反応管の他の数は明らかに本発明とむじゅんしない。
【0086】ブレッドボード装置210は、熱交換器212および214中に埋設されたカートリッジヒーターを使用する。カートリッジヒーター用温度制御装置224および226は、ワトロウ(Watlow)社の922A210リアルタイム比例制御装置であり、該装置は熱サイクラーブロック212および214中に埋設されたRTDまたはサーモカップル温度センサ(図示せず)を有する。表面取付けの電気ヒータまたは一定温度の溜めから循環される液体のような他の調節される熱源を使用することもできる。
【0087】微量滴定トレー240は、代表的には8×12アレーのウエルを有するプラスチックトレーである。トレー240は可動プレートまたは移動アセンブリの部分であるすべりステージ246に取付けられている。移動アセンブリ247は、ステージ246、台板216に取付けられたステップモータおよび親ねじ250を包含する。ステップモータ248はコンピュータ220により制御され、親ねじを通して、ステージ246に取付けられている固定アーム252に連結している。ステップモータ248は親ねじを回転して、ステージ246をリフトアセンブリ236下方の種々の位置へ前後に割送りする。ステップモータ248およびステップモータ242は、線路253を介してコンピュータ220によりプログラマブルに制御されている。
【0088】ステージ246上の微量滴定トレー240に隣接して清浄トレー254が取付けられている。ステージ246およびトレー240および254の拡大部分側面図は図21に示されている。トレー254は3つの平行なトラフC,RおよびWを有する。これらのトラフはそれぞれ洗浄液、すすぎ液および廃液を含有する。洗浄液は10%の塩素漂白液であってもよい。すすぎ液は、プリンス(Prince,A.M.)およびアンドルス(Andrus,L.)[“PCR:Howto kill unwanted DNA”、Bio Techniques,第12巻、3号、第358頁〜第360頁(1992年)]に記載されているような2.8モルのチオ硫酸ナトリウム溶液であってもよい。このトレー254は、ステージ246が試料容器244の列の間へ割送りされる前に、毛管228を清浄およびすすぐために使用される。清浄トレー254は、清浄およびすすぎトラフを充満状態に保ちかつ廃液容器を廃液ドレンから廃液流出分を受取る状態に保つため液体供給溜めに連結することができる。トレー240および254は、試料ステージ246に取外し可能に取付けられている。試料ステージ246は、毛管先端238の列を適当なトラフまたは試料の列の上方に整列させるために、コンピュータ制御下に線路253を介してステップモータ248へ前後に割送りされる。
【0089】管リフトアセンブリ236は、1対の親ねじ258で回転する軸受けに乗っている駆動バー256を包含する。親ねじ258は、駆動バー256を上げ下げするため、コンピュータ制御のステップモータ242により同期的に駆動される。クランプバー234は駆動バー256にボルト締めされかつ清浄トレー254および微量滴定トレー240を水平に位置定めする移動アセンブリ247の上方で垂直整列で毛管228の先端238を固定するボルト締め板を包含する。
【0090】このブレッドボード設計における試料移送装置230は、図22にカバーを取外して一そう明瞭に示されている。試料移送装置230は、毛管228に連結されかつ固定ステージ260に間隔を置いた配列で水平に取付けられ、固定されたシリンジを12個まで有する。シリンジ262のシリンダ264は、毛管228の端部に個々に連結されていてもよく、一緒にグループにまとめられていてもよい。たとえば、合計6個のシリンジ262は、2個の毛管228に供給する各シリンジと共に使用することができる。
【0091】プランジャ266は可動プランジャ、締付板268とクランプバー270の間に捕獲されている。締付板268は、ステップモータ274により駆動される水平に滑動可能のステージ272上に取付けられている。ステップモータ274は、コンピュータ220により線路275を介して制御され、ステージ272を、PCR反応混合物試料を吸引、移送し、それぞれの毛管228中へ排出するため、ステージ272を前後に動かす。場合により、シリンジは同じ機能を実施するため1つ以上の蠕動ポンプに代えることもできる。
【0092】この第6実施形は、1列の試料に対し各PCRプロトコルを実施する前に、コンピュータ制御下に、毛管清浄サイクルにより操作する。第一に、試料ステージステップモータ248は、毛管先端238が直接に清浄トラフC上にある位置へ試料ステージ246を割送りする。次に、リフトアセンブリ236、ステップモータ242は管先端238をトラフC中へ下げる。次いで、試料移送装置230中のステップモータ274が付勢され、プランジャ266を引出して、熱板212および214を通過した位置で、漂白液のような清浄液のスラッグを毛管228中へ吸引する。次に、リフトアセンブリ236が、トラフC中の液体から先端238を引上げる。次いで、試料ステージ246が、ステップモータ248により、廃液トラフWを毛管先端238の下方に位置定めするため水平に移動する。次に、試料移送装置230が前後に振動して、完全な清浄を確保するため、所定数の時間および間隔で、清浄液を毛管228中で前後に移動させる。この清浄サイクルが終ったとき、リフトアセンブリ236が先端238をステップモータ242により、トラフ“W”中へ下げる。この時点で、試料移送装置230はプランジャ266を押込み、清浄液を毛管228から廃液トラフW中へ吐出する。
【0093】第二に、リフトアセンブリ236が管先端238を廃液トラフ“W”から持上げ、次いで試料ステージ246が、すすぎトラフ“R”上へ毛管先端238を位置定めするため割送りされる。次いで、リフトアセンブリ236が先端238をすすぎトラフ“R”中へ下げ、次に試料移送装置230がすすぎ液を毛管228中へ吸引する。すすぎ液は、管状態を次のPCRランの準備中に回復するためチオ硫酸ナトリウムのような還元剤を含有しうる。次に、管先端228が持上げられ、試料移送装置230は、毛管を有効にすすぐことが要求される場合、再び前後に振動しうる。次いで、リフトアセンブリ236、移送装置230および移動アセンブリ247は毛管先端238の列を廃液トラフ“W”の上方へ位置定めし、すすぎ液を毛管228から廃液トラフ中へ排出するため操作される。
【0094】第三に、リフトアセンブリ236および移動アセンブリ247は、コンピュータ220の命令下に操作されて、試料容器244の列を毛管先端238の下方に位置定めする。
【0095】次いで、リフトアセンブリ236が管先端238を試料容器244中へ下げ、試料移送装置230のステップモータ274がプランジャ266を引戻して、所定量の反応混合物試料が各毛管228内の最初の位置へ吸引される。次に、リフトアセンブリ236のステップモータ242が逆に動作して、先端238を試料容器244の列から持上げる。
【0096】次いで、ステップモータ274はプランジャ266を引出し続け、毛管228内のこれら反応混合物試料を熱交換器214を通して引き、試料が完全に熱交換器212内に存在する位置にもたらす。ステップモータ274は、管先端238と熱交換器214の間で試料を緩慢に動かすため間欠的に操作される。間欠運動は、試料スラグの真正メニスカスにある液体が、毛管内に分離気泡を形成せずに、試料スラッグの大部分をつかみ上げるのを可能にする。この表面張力の効果は、熱交換器212および214の外部の毛管長さを高めた温度に維持することにより、最小にすることができる。しかし、ここに記載したブレッドボード装置210は室温環境で操作されたので、モータ274の間欠的運動は、メニスカスにある液体が試料スラッグの大部分をつかみ上げるのを許容するために必要とされた。この現象は、しばしば“ドラッグアウト(dragout)”と呼ばれる。ドラッグアウトは、管材料の内部表面のあらさを最小にしおよび/または内壁をパリレンのようなポリマーで塗装することにより最小にすることもできる。
【0097】試料が一度熱交換器214に達したら、試料を完全に熱交換器212内に位置定めするために連続的に運転することができる。試料が完全に熱交換器212内に位置定めされている場合、PCRプロトコルの最初のインキュベーションがはじまる。次いで、プランジャ266は、コンピュータ220内に記憶されたPCRプロトコルにより、熱交換器212と214の間で反応混合物試料を移送するため、ステップモータ274を介して交互に挿入および引出される。プロトコルの完了時に、リフトアセンブリ230のステップモータ242は再び毛管先端278を試料容器244中へ下げる。次いで、ステップモータ274が付勢されて、プランジャ266を挿入し、PCR生成物を再び試料容器244中へ排出する。
【0098】次いで、清浄サイクルおよび熱サイクル工程が、微量滴定トレー240中の試料容器244の次の列に対し、上述したように繰返される。上記工程におけるステップモータの運転は、ユーザによりコンピュータ中にプログラミングされる。プログラミングされた工程は変えることができ、PCR生成物を、上述したと異なる試料容器の列への排出を包含しうる。上記の順序は説明のためのみである。
【0099】場合により、微量滴定トレー240と清浄トレー254の間に、毛管圧力シール固定装置280が取付けられる。固定装置280は図21に示され、拡大断面図が図28に示されている。このシール固定装置280は、毛管先端238の列に隣接して整列されていてもよい12個のウエル284の1列を有するプラスチックまたは金属ブロック282である。各ウエル284はブロック282の頂面における凹所内に支承されたOリングシール286によって取囲まれていてもよいし、または1つの連続Oリング286が12個のウエル284全部のわまりに延びていてもよい。ブロック282は、図28に示したように、クランプバー234の底面が、その間に圧縮されたOリングシール286およびウエル284内に入れられた管先端238と係合するように設計されている。毛管228は1つのクランプバー234によってプレスばめされているか、またはクランプバー234は、図28に示されているように、各毛管228を取囲む上方の部片と下方の部片の間にサンドイッチされたOリングシール288を有する2部片配置であってもよい。
【0100】圧力シール固定装置280は、毛管内の試料が、PCRプロトコルの間加圧された環境中へ移すのを可能にする。この固定装置は望ましくは、装置を、反応混合物試料の沸点がPCRプロトコルにおいて要求される変性温度に等しいかまたはそれよりも低い高い標高地で操作する場合に使用される。しかし、この固定装置の使用は、反応混合物にホルムアミドのような変性剤の添加によってさけることができる。変性剤の添加は、変性に必要な温度を下げ、溶液の沸点を僅かに上げる。
【0101】試料がプロトコルの実施の間加圧された環境で循環させることが必要な場合、さきに記載した試料処理順序が僅かに変更される。プロトコルを開始するため熱交換器212中へ試薬混合試料を引出す代りに、試料移送装置230が試料を熱交換器212の後方所定の距離に存在する位置に吸引し続ける。次に、リフトアセンブリ236および移動アセンブリ247が、管先端238を固定装置280の上方へ位置定めするために動き、次いで先端238をウエル282中へ、Oリングシール286が固定装置280とクランプバー234の下側面の間に圧縮されるまで下げる。この位置において、管228は環境圧から分離されている。次いで、試料移送装置230が毛管228内の試料を、最初の変性インキュベーションのために熱交換器212中へ押戻し、同時に試料体積、毛管内の空気および試料ウエル内の管先端238の下方の封入された空気体積を大気圧よりも僅かに高い圧力に加圧する。次いで、試料移送装置230は、コンピュータ220中へユーザによって提供された命令データセットにより熱サイクリングプロトコルを実施するため、試料を交番に熱交換器212と214の間に位置定めするために操作される。
【0102】回転熱板毛管PCR熱サイクラー本発明による毛管熱サイクラー装置の第7実施形は図23R>3〜図27に示されている。この実施形は、熱交換ブロック212および214が回転円筒ドラム熱交換アセンブリ300により代えられていることを除き、上述した第6実施形と類似である。第7実施形298の操作は、試料処理の面で記載した第6実施形と同一である。重要な相違は熱交換アセンブリ300の操作にある。熱交換アセンブリ300はこの実施形では毛管228に対し相対的に動かされ、毛管228内の試料は静止したままである。
【0103】第6実施形からの同一の番号は、下記の記載における第7実施形において同じ成分を表わす。この第7実施形の簡略化側面図は図23に示されている。装置298の斜視図は図24に示されている。
【0104】この装置298中の微量滴定トレー240、圧力シール固定装置280および清浄トラフプレート254は、移動アセンブリ247により、前述したように、パーソナルコンピュータ220から母線253を介してコンピュータ制御下に、毛管先端リフトアセンブリ236の下方で前後に、移動アセンブリ247により移動される。試料移送装置230は反応混合物試料を毛管先端238中へ引込み、次いで熱交換器300の直接下方の位置へ引戻すように動作される。しかし、この実施形において、試料はPCRプロトコルの間前後に移動されない。試料は静止状態にとどまり、熱交換アセンブリ300は、試料にプロトコルの種々の温度インキュベーションを実施するために回転される。第6実施形におけるように、第7実施形の熱サイクリング装置298は、図22に示したような、試料移送装置230、ガングシリンジアセンブリを利用する。試料移送装置230は蠕動ポンプ装置または空気力ポンプ装置(いずれもコンピュータ220により母線275を介して自動的に制御される)であってもよい。移動アセンブリ247は、微量滴定トレー240、清浄トレー254および毛管先端238の列下方の加圧固定装置280を割送る。リフトアセンブリ236は毛管先端238を、上述したように、試料容器240、トラフC、RおよびWおよび試料ウエル286中へおよびこれから上げ下げする。
【0105】熱交換器300は軸方向に延びる、4つのくさび形セグメント302,303,304および306に分割された円筒ドラム形ボデイであり、各セグメントは“X”形の放射状絶縁層308の脚によって他方から分離されている。ドラムセグメント302および306はPCRインキュベーションに利用される。セグメント302は、温度制御装置301により、代表的には、約60℃およびアニーリングおよびエクステンションに相応する他の温度に維持される。セグメント306は、温度制御装置305により、変性温度、代表的には95℃に維持される。他の2つのセグメント303および304は、トランジションセグメントである。これらセグメントの温度は、インキュベーションセグメント302および306よりも2℃〜20℃高いかまたは低い範囲である。セグメント304は約95℃の変性温度よりも2℃〜20℃高い温度に維持され、セグメント306はこの温度に維持され、代表的には温度制御装置307により約100℃に維持される。セグメント304はトランジションを促進する、つまりアニーリング/エクステンション温度から変性温度へのランプ速度を増加し、全プロトコル時間を最小にするために使用される。これに対して、残りのセグメント303は、代表的には約60℃のアニーリングおよびエクステンション温度よりも著しく低い温度に維持される。セグメント303はトランジション温度よりも約2℃〜20℃低い範囲内に維持され、代表的には温度制御装置309により約50℃に維持される。
【0106】4つの熱交換セグメント302,303,304および306を有する第7実施形は、単一の変性インキュベーション温度および単一のアニーリング/エクステンションインキュベーション温度が使用されるPCRプロトコルに対して最適であると信じられる。それぞれインキュベーション温度よりも高い温度および低い温度に保たれる第3および第4セグメントは、アニーリング/エクステンション温度と変性温度の間のランプの上下を有効に最大にするために望まれる。その理由はこれらのトランジション回数は与えられた時間内に反応生成物の生産を最大にするためには最小にしなければならいからである。実施するのに必要とされる特別のプロトコルに依存して、2、3またはそれ以上のセグメントのような異なる数のセグメントを有する別の実施形も考えられることは明らかである。たとえば、5または6セグメントの熱交換器は、2−または3温度インキュベーションプロトコルに対して最適である。
【0107】熱交換アセンブリ300は望ましくは、セグメントへの液体および/または電気的接続の複雑さを最小にするために温度を所望の範囲内に維持するため前後に回転する。例示したブレッドボード実施形298においては、セグメントは各アルミニウムセグメントに埋設されたヒータにより温度に維持される。さらに、RTDまたはサーモカップルは、温度制御装置301,305,307および309に対する必要な制御信号を提供するために、各セグメントに埋設されている。また、熱交換アセンブリ300は、ヒータ電流を供給しかつ温度検出および制御を提供するために、適当なスリップリング電気接続が行なわれる場合、一方向に連続的に回転させることができる。この別法は、リード線疲労を最小にするため製造機械において望ましい。
【0108】回転熱交換アセンブリ300の側面図は、図26に示されている。熱交換アセンブリの背面図は図2727に示されている。熱交換アセンブリ300は、2つの定置の支持ポスト310により、ブレッドボード台板216から水平かつ回転可能に支持されている。各支持ポストは軸受(図示せず)を収容し、該軸受はまた軸方向シャフト312を回転可能に支持する。軸方向シャフト312は一端に固定されたプーリ314を有し、該プーリはまたベルト316を介して図25の端面図に示したようにステップモータ318に連結されている。ステップモータ318はコンピュータ220に連結され、制御されている。セグメント302,303,304および306の各々は、くさび形の固形アルミニウムセグメントであり、相対する端部が円形端板320にボルト締めされている。端板320はまたそれぞれ、定置の支持ポスト310により保持された軸受に支承された軸方向シャフト312に固定されている。
【0109】プーリ314に隣接するシャフト312には割出し板322が固定されている。この割出し板は、シャフト312のプーリ端で、定置のポスト310に取付けられた光位置センサ324に結合されている。位置センサ324は、コンピュータ220を通してステップ駆動モータ318に連結されている。光位置センサは、熱交換ドラム300が正しく位置定めされていることを指示するため、割出し板322におけるノッチ326の存在を検知する。
【0110】セグメント302,303,304および306はそれぞれは望ましくは、セグメントの長さに沿って等間隔に存在する、12の平行な半円形みぞ330を有する湾曲外面328を有する。各みぞ330は毛管228の1つを収容するように寸法定めされているので、管228の円周の少なくとも半分は十分にセグメントの外面328と接触している。各セグメントの間の間隔は、望ましくはファイバガラス、プラスチックまたは空気のような熱絶縁材料で充てんされている。目的は、セグメント302,303,304および306間の熱伝達を最小にすることである。
【0111】各セグメント302,303,304および306は、発熱体334を収容する軸方向に延びる通し孔332を有する。単一の抵抗発熱体334は、図示の実施形298においては各セグメント内で利用される。しかし、双対の発熱体を使用することもできる。各セグメントは温度制御用のRTDまたはサーモカップル温度検出器のための凹みを含有する。それに加えてまたは二者択一的に、各セグメントはそれを貫通する1つ以上に流路を有することができ、該流路を通って所望の範囲内のセグメント温度を維持するために一定温度の液体が循環する。各発熱体および温度検出器は、その制御装置301,305,307または309に通常のリード線336を介して接続されている。
【0112】熱交換ドラム300および試料は熱サイクルの間静止位置に維持されるているので、操作の間毛管228における摩耗を減少させ、管と熱交換器の間の不変の熱接触を確保するために引張り装置400および402が設けられている。図25に関して、引張り装置400および402はそれぞれ、台板216に取付けられた、傾斜した定置の支持ブロック404およびすべりブロック406、およびブロック406にボルト締めされたキャップ408を包含し、該キャップは毛管228を平行位置に締付ける。ブロック406およびキャップ408は、熱交換アセンブリ300のセグメントの表面328内のみぞ330に対する接線に沿って毛管228を位置定めする。すべりブロック406はそれぞれ、コイルばね410により接線方向に熱交換器300から離れるようにばね負荷されている。定置の支持ブロック404のそれぞれの傾斜した上面に対して各すべりブロックを保持するために、ブロック406の表面に対して垂直に働く1対の止めばね412が使用される。
【0113】引張り装置400および402は台板216上に位置定めされているので、それぞれの毛管228は、それぞれのセグメントが、図24および図25に示されているように“6時”の位置に位置定めされている場合、各特定のセグメント302,303,304および306の湾曲した外面328のみぞの全長に接触する。ばね410および412は協力して、熱交換器300下方の毛管228の部分が各セグメントの外面328と良好な熱接触状態に維持されかつ各管がそのみぞ330内に保持されているのを確保する。
【0114】引張られた毛管228における摩耗を減少させるために、ステップモータ422により駆動される引張り力レリーズ装置420が、熱交換セグメントの間で回転する間、管228における引張り力を自動的にレリーズする。コンピュータ220を介し母線423によりモータ422によって駆動される水平に取付けられた回転シャフト424は、すべりブロック406に対し偏心ローブ426を、ばね410のばね負荷に抗して位置定めする。偏心ローブ426はすべりブロック406を熱交換器300に向って押し、コンピュータ220から熱交換ステップモータ318に伝達される駆動信号と同時にまたは直前に毛管228における引張り力をレリーズする。
【0115】光学的に透明な熱シールド340を、毛管228と接触しているセグメントの下方で密に隣接して位置定めすることができる。この熱シールド340はDNA増幅工程の間反応生成物の生産をモニタするため、図26および図30に示したように、熱交換器300の下方に取付けられたけい光検出器350に対する窓として作用することもできる。
【0116】臭化エチジウム(挿入染料)を反応混合物に、PCRと干渉しないレベルで溶かす。エチジウムイオンは、DNA中に挿入した場合、約615nmで、溶液中に存在しない場合よりも高い強さでけい光を発する。それ故、けい光の強さは、増幅したDNA集団の濃度の尺度として使用することができる。
【0117】検出器350は、インキュベーションの間毛管228の12個すべてからのけい光を同時に検出するホトダイオードアレー(PDA)を使用する。検出器350は図30に略示されている。ドラム300の下方で引張り装置400と402の間には紫外線光源354およびミラー356を含有しかつ支持するハウジング352が取付けられている。UV光源354はドラム300と接触している12個の毛管の部分に向けられている。ミラーは、ドラム300の下方で毛管により放射されるかまたは毛管から反射された光がハウジング352中の窓358および集束レンズ360を通ってホトダイオードアレー362に向けられるように位置定めされている。ホトダイオードアレー362の出力は、通常の増幅回路364を通ってデイスプレー用コンピュータ220に供給される。
【0118】このブレッドボード設計においては、12個の毛管のそれぞれからの光はアレー中の別個のホトダイオードに向けられるので、各毛管内での増幅は同時にかつ個々にモニタすることができる。使用されるこのダイオードアレーは、直線配列の35個のダイオードからなる。それぞれの第3ダイオードは、光学的に信号ダイオードとして毛管228の1つに結合されている。
【0119】ドラム300のアニーリング/エクステンション区間は、モニタする間毛管228に対して位置定めされている。検出されたけい光強さは、PCRプロトコルの間のPCR生成物の成長のリアルタイムモニタを生じる。この情報は、増幅の大部分の間、成長速度は簡単な指数プロセスであるので、増幅に先立ち、最初に存在していた標的DNAの量を見積るのに使用することもできる。
【0120】ハウジング352の内部は、散乱光を吸収するため均一なブラックに塗装され、外界光を排除するため、ドラム300の底に隣接して密に嵌合されている。アニーリング/エクステンションセグメント302の外面328も、散乱光を吸収するため均一なブラックに塗装されている。各アニーリング/エクステンションセグメント302の湾曲面は、けい光の最大量を反射するようにするためミラー仕上げに磨かれている。
【0121】また、他のセグメントも検出のために使用することができる。しかし、長時間のアニーリング/エクステンションインキュベーションは、サイクルごとに蓄積するPCR生成物をモニタするためには最適の機会を与えるように感じられる。検出系350中では、けい光データがアニーリング/エクステンションインキュベーションの間毎秒1回受信される。さらに、全検出系は望ましくはそれ自体製造装置中に含有されている。
【0122】上記の検出系は、UV光および可視光が通るように、毛管が比較的透明である限り、ここに記載した多数の実施形に取付けることができる。さらに、検出系信号は最適インキュベーション時間を計算および調節するための入力として使用することができる。また、検出器出力は、PCRプロトコルに対する終端信号を提供するために使用することができる。換言すれば、現在技術におけるプラスチックであるようなサイクルの総数よりもむしろPCR生成物の所望量をコンピュータ220に指定することができる。最後に、他の検出系も利用することができる。たとえば、分解能および感度を高めるため、ダイオードアレーの代りに、CCD装置を使用することができる。検出器も、ポリクロメータに結合することができ、異なる発光スペクトルを有する若干のけい光を、反応混合物の種々の成分を識別するために使用することができる。たとえば、DNA増幅と干渉しない染料により発せられた1つのけい光信号を、けい光光学素子を連続的に再校正するために使用することができる。光校正染料は光退色に耐えるかまたはDNAリポーター染料が光退色する場合には、類似の感光性を示すように選択すべきである。エチジウムのようなデュフレックスDNAに結合する際に強いけい光増強を経験する染料(核酸分析法において周知の挿入染料)または二重らせんDNAの小溝に結合することが知られている、多数のビス−ベンズイミド部類の染料によって第2けい光信号を提供することができる。樋口(Higuchi等)(Biotechnology,第10巻(1992年4月)第413頁〜第417頁、“特殊なDNA配列の同時増幅および検出”)は、エチジウムはPCR混合物中でリアルタイムに二重らせんDNAの蓄積をモニタするために使用することができたことを示した。この第2けい光信号に対し選択的に、染料およびけい光消光剤を、PCR鋳型にアニーリングするプローブに、PCRが5′→3′エキソヌクレアーゼ活性を有するDNAポリメラーゼを用いて行なわれる場合、ポリメラーゼのニックトランスレーション活性がプローブを消化するように結合することができる。ホランド(Holland等)[PCT Publ.No.WO92/02638]により記載されたように、この消化活性は、染料が消光剤から分離する際にけい光信号を発する。異なる鋳型に対し特異的なプローブに結合した、スペクトルが異なる、若干のけい光消光剤対を使用すれば、若干のPCR生成物の蓄積を同時にモニタすることが可能である。
【0123】装置298は、コンピュータ220の制御下に、下記のように自動的に動作する。反応混合物の試料は、上述したように、リフトセグメント236および試料移送装置230を介して毛管228のそれぞれに引込まれる。試料は、試料容器244から毛管228中へ吸引され、熱交換ドラム300のすぐ下の位置に達する。図24に示したように、セグメント306は試料を含有する毛管228の区間と接触する。毛管228内の試料の温度は、95℃の変性温度にまで迅速に上昇する。毛管内の変性温度は必要なインキュベーション時間維持される。
【0124】この時間の終りに、セグメント300を時計方向に90°回転して、セグメント303が反応混合物試料を含有する毛管区間と接触する位置にもたらす。セグメント303は約50℃に維持されるので、試料は約60℃の温度に迅速に冷却する。適当な時間に、セグメント300を時計方向にさらに90°回転して、セグメント302を、試料を含有する毛管区間に向合う位置にもたらす。セグメント302は60℃に維持される。アセンブリは再び、PCRプロトコルにより指示される必要なインキュベーション時間この位置にとどまる。アニーリングおよびエクステンションインキュベーションの終りに、ドラムを時計方向にさらに90°回転し、その結果セグメント304(代表的には100℃の温度を有する)は毛管228と、反応混合物温度を迅速に約95℃に上げるのに必要な時間接触している。95℃に達した際、熱交換アセンブリ300を反時計方向に迅速にさらに270°回転して、セグメント306を再び、次の必要な変性インキュベーションのため毛管228と接触する位置にもたらす。このプロセスを、PCRプロトコルを完成するのに必要であるように繰返す。各回転時間の間偏心カム426をモータ422により回転して、セグメントの外面328から毛管228をゆるめる。回転が停止した場合、インキュベーションの間適切な熱接触を確保するため、偏心カム426を回転して引張り装置400および402を再係合する。
【0125】上述した第6実施形におけるように、熱交換アセンブリおよびセグメントの温度制御の回転調整および制御はコンピュータ220によって維持される。PCRプロトコルの終りに、コンピュータ220は、試料移送装置230に、プランジャ266を挿入して反応生成物を微量滴定トレー240中のウエルにある試料容器244中へ戻すように指示する。次いで、第6実施形に関して記載した清浄およびすすぎの工程配列を、毛管から汚染物および処理した試料の残留物をフラッシングするために実施する。次に、移動アセンブリ247が、微量滴定トレー240を次列のウエル保持試料容器244に再位置定めし、全工程を繰返す。
【0126】上述した第6および第7実施形における毛管先端238は、図29に先端238の拡大図で示したように、特殊な物理的配置を有する。毛管を単に管の軸に対して横方向に切断する場合、排出される試料の最終滴はしばしば管端にぶらさがる。こうして、試料ウエル中への反応生成物の完全な排出が阻止される。先端壁290を図29に示したように先細にすることによって、反応生成物の最終滴は毛管228の末端238から確実に排出される。
【0127】試料は第6実施形において熱交換器の間で前後に移動するので、毛管228内の試料の、第7実施形における熱交換ドラム300下方の位置への“ドラッグアウト(Dragout)”は、最小の内面あらさを有するテフロン管においては、管壁に隣接する液体が管壁に進行的に管壁に付着する傾向があり、試料スラッグの端部に一般に放物線の細長い断面形を形成する毛管内の表面張力現象を最小になる。ドラッグアウトが厳しい場合、引きずる端部はスラッグ移動の間大部分の試料スラッグから分離するかまたは“ドラッグアウト”し、合体し、場合により試料の末端部分の間気泡を捕えることができ、こうして試料の全長が延びる。前述したように、毛管内の試料の外界温度条件はドラッグアウトに寄与する。従って毛管中への吸込みの間試料および毛管の高めた温度を維持すると、ドラッグアウトを最小にすることができる。ドラッグアウトを最小にするもう1つの有効な手段は、試料を、多数の離散過程および休止期の位置へ試料を吸込むプロセスを中断することである。これらの休止期は、試料のひきずり端が毛管内の試料の大部分を捕えるのを可能にする。
【0128】水の沸点が93.5℃に低下するデンバー、コロラドのような高地において加圧固定装置を使用する別法が存在する。この別法は、反応混合物へホルムアミドのような変性剤の添加であるこの手段は、パナジオ(Panaddio等)(Biotechniques、第14巻、No2(1993年)、第238頁〜第243頁、“Folt PCR:全血から直接にDNAを増幅するための簡単なPCRプロトコル”)に提案されている。著者は、Taqポリメラーゼよりむしろ熱安定のTthポリメラーゼを使用し、95°−50°−70℃プロトコルはホルムアミド18%を含有する反応混合物に対して85°−40°−60℃プロトコルに変えることができることを示した。
【0129】Taqポリメラーゼは、グリセロールおよびアセトアミドを包含する多数のDNA変性剤を寛容する。実際に、上述した本発明の第7実施形において使用した反応混合物試料中の2.5%のホルムアミドは、89℃の変性温度および63℃のアニーリング/エクステンション温度において満足な増幅を生じ、プロトコル温度を一律に約5℃下げる。
【0130】以下の節は、本発明の第7実施形の操作を制御するために使用されるソフトウエアの系統図を提示する図31〜図34に関する。コンピュータ220中のソフトウエアは、5つのステップモータを制御する。これらのステップモータは次のものである:ポンプ230中のシリンジ262を操作するモータ274;熱交換ドラム300を駆動するステップモータ318;試料ステージ246を水平に移動するステップモータ248;毛管228の先端238を垂直に上下するステップモータ242;および熱交換ドラム300に対して毛管228を引張りおよびためカムを回転するステップモータ422。
【0131】ソフトウエアはベーシックでまたは当業者に公知の常用のプログラミング言語でプログラミングされていてもよい。下記に記載したブレッドボード設計はベーシックでプログラミングされている。
【0132】図31に関し、ユーザはブロック501で開始し、熱サイクリングプロトコルに必要な変数を負荷する。これらの変数は、変性温度、アニーリング温度、変性温度におけるインキュベーション時間、アニーリング温度におけるインキュベーション時間、熱サイクルA、BおよびCにおけるサイクル数、試料体積、オーバシュートインキュベーション時間、アンダシュートインキュベーション時間、熱交換ドラム300の下方で6時の位置に試料の真中を正確に置く絶対ポンプ配置、負荷時のポンプ回転速度、無負荷時のポンプ回転速度および検出時間を包含する。これらすべての変数がエラーなしに入力された場合、ソフトウエアはブロック502に進み、検出器ポートがコンピュータ220に開かれる。
【0133】次いで、処理は図32に示した試料負荷サブルーチン503に移る。このサブルーチン503は、付勢されるステップモータ242で、毛管先端238を微量滴定トレー240中の管の少なくとも約1cm上方の位置へ持上げはじめる。ブロック503において、シリンジポンプ230の回転速度が設定される。ステップモータ274の回転速度は、ブロック506においてシリンジポンプ230を閉じるため動作する。この作用はシリンジプランジャ266を十分に挿入する。
【0134】次いで、ステップモータ248は、ブロック507において母線253を介して付勢されて微量滴定プレート240を、試料管または容器の所定列の最初のものが管先端238の直接下方に位置するように位置定めする。次に、ブロック508において、シリンジポンプ230が作動される。ここで、ステップモータ274が逆方向に動いて、PCRプロトコルの終りに管228から試料を完全に吐出するのに使用することのできるシリンダ内の空気体積が存在するのを確実にするため、プランジャ266を僅かな引戻し位置にもたらす。
【0135】次いで、コンピュータ220は信号を母線222を介してステップモータ242に送って、ブロック509において管先端238を下げる。毛管先端238は、試料管中へほとんど管の底に下げられる。この工程は、管先端を、試料反応混合物の最大体積を毛管228中へ引上げるように位置定めする。
【0136】次いで、シリンジポンプ230が、ブロック510において、望ましくは50μlの試料を毛管228中へ吸上げるため動作される。次いで、シリンダにより必要量が吸上げられた場合、ブロック511においてステップモータ242が付勢されて管先端238を試料管から持上げる。この操作が、図32に示した負荷サブルーチン503を完結する。
【0137】再び図31に関して、制御はブロック503に戻り、ブロック512に進む。ブロック512において、ステップモータ422が、毛管228とドラム300の間の引張り力をレリーズするために動作される。とくに、ステップモータ422はカム426を回転して、すべりブロック406を熱サイクリングドラム300に向って、毛管を変性するのに十分な数mm動かす。引張り力がレリーズされると、ブロック513において、熱サイクリングドラム300がステップモータ318により回転され、最低温度にあるセグメント303は、6時の位置に対称に位置定めされている位置もたらされる。この位置において、毛管228はこのセグメント中のみぞ330を十分に覆う。
【0138】ドラム300がセグメント303を正確に6時位置に位置定めすると直ちに、制御はブロック514に進む。ここで、ステップモータ422が再び動作され、カム426をすべてブロック406と引き続き係合しないように回転し、ばね410が管228を6時の位置にあるドラムのこのセグメント中でみぞ330の表面に対して伸張するのを許す。次いで、ステップモータ274が、ブロック515において間欠的に“緩速負荷(slow load)”方式で付勢されて、試料を毛管先端238上方から6時の位置にあるセグメント303に直接隣接する毛管内の位置へ移動する。プランジャ226を少し引上げ、次いで所定時間、代表的に数秒間待ってステップモータ274を付勢するこの順序は、試料を40または50の短かい工程の連続で移動させ、代表的には試料をドラム300の下方の近接位置へ動かすのに約2分かかる。この間欠的運動は、“ドラッグアウト”現象が試料体積の後端を分離させ、気泡の形成を阻止するのに必要である。かかる気泡は試料体積を有効に伸長し、試料中の核酸の増幅を悪化しうる。この緩速負荷法は、毛管の内面をパリレンで塗布するかまたは毛管の長さを予備加熱すれば必要でない。
【0139】最後に、ブロック516において、ステップモータ274が、試料をセグメント303の下方で正確かつ対称に位置定めするため動作される。
【0140】再び図31に関して、熱サイクリングサブルーチンが実施される。熱サクリングプロトコルは、代表的には交番する変性インキュベーションおよびアニーリング/エクステンションインキュベーションからなる20〜30の熱サイクルである。このブレッドボード設計においては、プロトコルは3つのシーケンスA,BおよびCに分割されており、これらは各シーケンス中のサイクルの数を除き同一である。図33に示された熱サイクリングサブルーチンのブロック図は、それぞれの順序で使用される。第一に、熱サイクルAにおいて実施されるべきサイクルの数はカウンタN(ブロック519)中にセットされている。毛管に対する引張り力は、上述したように、ステップモータ426を付勢することによってレリーズされる(ブロック520)。次に、ドラム300がステップモータ318を介して時計方向に回転され、セグメント304を6時の位置に位置定めする(ブロック521)。ドラム300は最初、セグメント303と共に6時の位置に位置定めされるので、第1サイクル回転は時計方向に180°である。次のサイクルにおける回転(ブロック521)は、セグメント302が6時の位置にあるアニーリング/エクステンションインキュベーション位置から時計方向に90°である。ステップモータ422が再び付勢され、カム426をすべりブロック406と係合しないように回転して、毛管228に再び引張り力を復元するブロック522)。ブロック523は試料温度を95℃の変位温度に急速にランプするのに必要な、セグメント304が毛管と接触している待ち時間を表わす。この時間は、比較的短いく、数秒の大きさである。セグメント304の温度が高ければ高いほど、必要な時間はますます短かくなる。
【0141】必要な待つ時間後、毛管228における引張り力はレリーズされる(ブロック524)。次いで、ブロック525においてドラム300が時計方向に90°回転され、セグメント306を6時の位置に位置定めする。ブロック526において、ステップモータ422が再び付勢されて、カム426が回転し、すべりブロック406がレリーズされ、毛管228とドラム300の底の間の引張り力が復元される。この過程が、ブロック527に象徴された変性インキュベーションを開始する。この変性インキュベーションは、代表的には1分の大きさである。このインキュベーションの終りに、ステップモータ422が再び付勢されて、毛管228とドラム300の間の引張り力がレリーズされる(ブロック528)。次いで、ドラム300は、反時計方向に270°回転して、冷セグメントを6時の位置に戻す(ブロック529)。
【0142】順次に時計方向に270°回転し、反時計方向に戻すのは、温度制御装置からのリード線がドラム300のまわりに巻付くのを阻止する。ドラム300が、セグメント303が6時の位置にある位置に達した場合、引張り力が再び復元される(ブロック530)。ドラムセグメント303と接触すると、試料の温度は迅速に60℃のアニーリング/エクステンション温度に下がる。従って、待ち(ブロック531)は比較的短かい。再び、ブロック531における待ちの後、管に対する引張り力はレリーズされ(ブロック532)、ドラム300時計方向に90°回転してセグメント302を6時の位置に位置定めする。ブロック534において、管228とドラム300の間の引張り力は再び復元される。ブロック535において、けい光検出がはじまり、代表的に約119秒の時間、アニーリング/エクステンションインキュベーションの間継続する。アニーリングおよびエクステンションのインキュベーションは、ブロック536において実施される。アニーリング/エクステンションインキュベーション時間および検出時間はほぼ同じである。
【0143】アニーリング/エクステンションインキュベーションの終りに、管228とドラム300の間の引張り力は上記のように再びレリーズされる(ブロック537)。ブロック538においてカウンタは減分され、ゼロに照会される。カウンタがゼロに等しい場合、サブルーチンは主プログラムに戻る(ブロック540)。カウンタがゼロでない場合、制御は再びブロック520に志向される。
【0144】ブロック540において、ポンプ230は、試料を前後におよび再び後に押して気泡を試料から追出するために動作される。変性温度とアニーリング/エクステンション温度の間の連続的熱サイクリングの間、試料は小気泡を生成し、該気泡が試料の末端を伸張するかまたは相互に引離し、こうして試料体積はセグメントの下方から部分的に離れる。試料を25μl、50μlだけ前後に動かし、それから後に50μl動かすと、これらの気泡が試料から追出され、こうして試料体積はそのもとの大きさに復元することが判明した。気泡掃引ブロック540が完了すると、熱サイクルBシーケンスがブロック541に示したように開始される。
【0145】熱サイクルBは操作過程においては上述した熱サイクルAと同一である。再び熱サイクルB後、気泡は“気泡掃引(bubble sweep)”で試料を前後に動かすことによって掃引される。(ブロック542)。
【0146】代表的には熱サイクルAは約5つのサイクルからなり、熱サイクルBは約10のサイクルからなる。熱サイクルCは、ブロック543に示したように、プロトコル中の残存サイクル、プロトコルにおける30〜35サイクルに対し代表的には15〜20の間のサイクルを包含する。熱サイクルCの完結後、管228と熱サイクルドラム300の間の引張り力は、ブロック544において指示したようにレリーズされ、必要に応じ、ドラム300が回転して、ブロック303を6時の位置に位置定めする(ブロック545)。
【0147】試料無負荷サブルーチンがブロック546において行なわれる。このサブルーチンは図34に示されている。はじめに、毛管の先端238は、熱サイクリングの間、上昇位置にある。第一に、微量滴定トレー240がユーザによりプログラミングされたように次の列または他の列に割送りされる(ブロック547)。ブロック548及び549においては、毛管先端を上方位置に持上げ、ポンプ回転速度がセットする(ステップモータ274)命令が与えられる。無負荷時のパンピング速度は、負荷サブルーチンにおけるよりも迅速である。それというのも絶対的位置定めおよびドラッグアウト効果は重要ではないからである。さらに、ブロック550においてはバックラッシは中断されている。バックラッシは、シリンジの交番挿入および引戻しの間に蓄積する種々の許容誤差を考慮するため相関因子がステップモータ274に適用される。無負荷サブルーチンにおいては、試料の末端位置は毛管から排出されようとする。従って、絶対位置は重要でない。それ故、パンピングアセンブリにおけるバックラッシの補償は、このサブル−チンにおいては必要でない。
【0148】ブロック551においては試料約20mlを6時の位置におけるその現在の位置から移動させるために、ポンプ230(ステップモータ274)が動作される。ブロック552においては試料は、毛管内の気泡形成からドラッグアウトを阻止するために、負荷順序と類似に、緩速“無負荷(unload)”法においてポンプ230を介して輸送される。緩速度無負荷法においてはポンプが試料を約8ml動かし、次いで1秒間待つ、次いで、ポンプ230が再び動作して、毛管内でさらに8mlの距離を、試料が微量滴定トレー240内の試料管中へ排出されるまで移動させる。最後に、ブロック553において、シリンジポンプ230が完全に閉じられ、管の先端238から試料の最後の残留量を、図32に示した試料負荷サブルーチンのブロック508において、シリンジの最初の弁動作からの空気スラッグで試料中へ押込む。
【0149】最後に、ブロック554においてバックラッシが復元され、ブロック555において検出器ポートが閉じられる。ブロック556において、プログラムが他の試料ランへの連結を探索する。他の試料ランが要求される場合には、ブロック557により象徴されている清浄サブルーチンが実施される。清浄サブルーチンはたんに、微量滴定トレー移送ステージ247を適当な洗滌、すすぎまたは排水トラフ上へ位置定めし、管先端238を清浄トレー中へ下し、清浄液のスラッグを、熱交換ドラム300の後方位置へ毛管228中へ吸込み、毛管228の内面を乱流的にこするため、ポンプ230を前後に振動することを包含する。次に、清浄液を排水トラフ中へ放出させる。次に、すすぎ液を毛管中へ吸込み、前後に振動し、次いで排水する。最後に、コンデショニング液を次のサイクルのため準備中の毛管中へ吸込む。このコンデショニング液が排水された後、ソフトウエア制御は、熱サイクルされる試料の次の列のためブロック502に戻る。
【0150】上記の記載は本発明のすぐれた実施形の説明であるが、本発明による毛管サイクル装置の発明思想は詳述したとは別の方法で実施できることは明らかである。たとえば、本発明による熱サイクリング装置の種々の実施形はPCRのほかに、少なくとも1つの熱サイクリングを必要とする他の核酸増幅および/または反応技術に適用できる。上記例はたんに説明的なものにすぎない。
【0151】これらの技術は、リガーゼ連鎖反応およびエーブラムソン(Abramson)当(Current Opinion in Biotechnology,1993年、第4巻第41頁、“核酸増幅技術”)に討議されているような修復連鎖反応を包含する。リガーゼ連鎖反応は、バラニイ(Francis Barany)により(PCR Methods and Applicaticns1:5−16(1991年))の“PCRの世界におけるリガーゼ連鎖反応”においても討議されている。本発明が使用することのできる他の方法は、フェイ(Fahy)等(PCR Methods and Applicaticns1:25〜33(1991年)、“自己支持されるシーケンス複製”:PCRに対する等温度転写を基礎とする増幅系別法)により討議された3SR法およびウオーカー(Walker)等により(Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.89:392−396(1992年)、“制限酵素/DNAポリメターゼ系によるDNAの等温的試験管内増幅”)において討議された標準置換検定(SDA)を包含しうる。
【0152】これらの反応はいずれも、反応混合物が変性、アニーリングおよびエクステンションプロセスを受ける。これらは主として、アニーリングされたオリゴヌクレオチドが標的鎖を複製するためエクステンドされるプライマーエクステンション法において使用される特異的エクステンション機構のみが異なる。修復連鎖反応およびLCRは反覆熱サイクリングを包含する。3SRおよびSDA法は最初の変性工程、それに続くアニーリングおよびエクステンションプロセスのための等温インキュベーションを包含する。
【0153】上述した装置の他の可能な適用例は、PCRに先立つcDNA合成、DNAの連結およびキナージング、および引き続くインキュベーションまたは熱サイクリングの間試薬の添加が要求されうる酵素処理を包含しうる。こうして、本発明の実施形は、特許請求の範囲の本来の範囲および公平な意味を逸脱することなく、修正、変更および変化で加えられる。従って、特許請求の範囲の思想および広い範囲に入るすべてのかかる変更、修正および変化を包含するものとする。ここで引用したすべての特許明細書、特許および刊行物は、引用によってその全体が組込まれる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施形による毛管PCR熱サイクラー装置のブロック図。
【図2】本発明の第2実施形による毛管PCR装置のブロック図。
【図3】小規模の迅速PCRを実施するための、本発明の第3実施形による毛管PCR装置のブロック図。
【図4】本発明の別の第3実施形による毛管装置のブロック図。
【図5】3つのサーモスタット付循環液体浴および単一反応室を使用する、本発明の第4実施形による毛管PCR装置のブロック図。
【図6】すべての流れがバイパスされた、図5に示した装置の反応室の線6−6による概略断面図。
【図7】55℃の流れが反応室を通り、他のすべての流れがバイパスされている、図6におけるような装置の反応室の概略断面図。
【図8】75℃の流れが反応室を通り、他のすべての流れがバイパスされている、図6におけるような装置の反応室の概略断面図。
【図9】95℃の流れが反応室を通り、他のすべての流れがバイパスされている、図6に示した装置の反応室の概略断面図。
【図10】金網により適所に保持された例示的な単一毛管反応管を示す、図5に示した装置の反応室の概略図。
【図11】毛管中へ反応混合物を漸変量で注入する装置の図。
【図12】一定温度に保たれた2つの金属ブロック熱交換器およびその間に延びる、反応混合物が前後にパンピングされる毛管反応室を使用する第5実施形の毛管PCR装置の概念図。
【図13】PCRプロトコルの変性ステージによる、図1212に示したPCRの図。
【図14】PCRプロトコルのアニール/エクステンドステージにおける図12に示したPCR装置の図。
【図15】PCRプロトコルの完成した生成物排出ステージにおける、図12に示したPCR装置の図。
【図16】PCRプロトコルの試料導入ステージにおける、図12に示したPCR装置の別の第5実施形の図。
【図17】PCRプロトコルの変性ステージにおける、図16に示したPCR装置の図。
【第18】PCRプロトコルのアニール/エクステンドステージにおける、図16に示したPCR装置の図。
【図19】PCRプロトコルの試料排出ステージにおける、図16に示したPCR装置の図。
【図20】本発明による毛細反応管アレーのPCR装置の第6実施形概略斜視図。
【図21】図20に示した装置中の試料移動アセンブリを拡大して示す部分的側面図。
【図22】図20に示した装置中の試料移送装置の拡大側面図。
【図23】本発明による毛細反応管配列用回転ドラム熱交換器を有する毛管PCR装置の第7実施形の概略側面図。
【図24】図23に示した毛管PCR装置のブレッドボードバージョンの斜視図。
【図25】図24に示した装置中の回転ドラム熱交換アセンブリの拡大して示す部分的正面図。
【図26】図24に示した回転熱交換アセンブリの部分的側面図。
【図27】本発明による図24に示した熱交換アセンブリの拡大部分的背面図。
【図28】図20および図24に示した試料処理アセンブリの部分的断面図。
【図29】図28に示した毛管先端の拡大して示す断面図。
【図30】本発明による第7実施形に結合した検出系の略図。
【図31】本発明の第7実施形のための制御ソフトウエアの系統図。
【図32】図31に示した図の試料負荷サブルーチンの系統図。
【図33】図31に関する熱サイクリングサブルーチンの系統図。
【図34】図31に関する試料無負荷サブルーチンの系統図。
【符号の説明】
10 装置
12 ポンプ
16,18 浴
20 絶縁層
22 反応管
24,26 Oリングシール
28 分光測光検出器
30 CPU
32,34,36 制御線路
38 ブロック
40,44 制御母線
50 毛管
51,55 シリンダ
52 熱ゾーン
53 反応混合部
54 冷ゾーン
56 容器
60 液密室
62 毛管
64,66 両端部
68 高温浴
70 低温浴
78 ポンプ
84 液体マルチプレクサ
86,110 入力管
88,112 出力管
98,100,102 浴
104,120 弁装置
106 反応室
112,114,116,118 管
122 コンピュータ
124 制御母線
132,134 バイパス流路
140 毛管
142 金網
144 クランプ
152 マウス
154 ホルダ
170,172 金属ブロック熱交換器
176,178 温度制御装置
180 毛管
182 ロッド
184 ピストン
186 ステップモータ
194 容器
202 試料弁ループ
204 溜め
212,214 金属ブロック熱交換器
224,226 サーモスタット制御装置
230 試料移送装置
232 支持クランプ
234,270 クランプバー
236 管リフトアセンブリ
238 管先端
240 微量滴定トレー
242,248 ステップモータ
247 移動アセンブリ
248,274 ステップモータ
254 清浄トレー
258 親ねじ
266 プランジャ
280 圧力シール固定装置
284 ウエブ
286 Oリングシール
300 熱交換アセンブリ(ドラム)
302,303,304,306 熱交換セグメント
310 支持板
312 シャフト
316 ベルト
320 端板
322 割送り円板
324 位置センサ
328 湾曲外面
350 検出器
354 UV光線
362 ホトダイオードアレー
400,402 引張り装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】 変性、アニーリングおよびエクステンションプロセスを包含する、標的核酸セグメントを含有する反応混合物中で核酸増幅反応を実施する装置において、反応混合物を含有するのに適合された部分を有する開放毛管反応室;反応混合物中で変性プロセスを生起させるのに適当な第1温度を反応混合物に受けさせるため、毛管反応室の部分と接触させるのに適合した第1加熱手段;混合物中でアニーリングおよびエクステンションプロセスを生起させるのに適当な第2温度を混合物に受けさせるため、毛管反応室の部分と接触させるのに適合した第2加熱手段;反応混合物を毛管反応室中および外へ自動的に移動させるため、毛管反応室に連結した試料処理手段;および毛管反応室の部分と接触している第1および第2加熱手段を自動的に位置定めするための位置定め手段を包含する核酸増幅反応を実施する装置。
【請求項2】 毛管の部分に第1温度以上の温度を受けさせるため該部分と接触するのに適合した第3加熱手段を包含する、請求項1記載の装置。
【請求項3】 それぞれの加熱手段は、円筒熱交換ドラムの放射状セグメントである、請求項1記載の装置。
【請求項4】 円筒熱交換ドラムが少なくとも2つの軸方向に延びる放射状セグメントであり、それぞれが熱絶縁材層によって相互に分離されている、請求項3記載の装置。
【請求項5】 それぞれのセグメントが弓形外面および弓形外面内のみぞを有し、それぞれ毛管反応室の部分を収容するのに適合されている、請求項4記載の装置。
【請求項6】 ドラムはその中心軸のまわりでそれぞれのセグメントが毛管反応室の部分と接触する位置の間で回転可能である、請求項5記載の装置。
【請求項7】 加熱手段および回転可能なドラムに連結され、加熱および冷却手段の温度およびドラムの位置をユーザ定義パラメーターにより制御するため操作しうるプログラマブルコンピュータを包含する、請求項6記載の装置。
【請求項8】 それぞれが反応混合物を収容するのに適合した部分を有する複数の開放毛管反応室を包含する、請求項1記載の装置。
【請求項9】 それぞれの加熱手段は、サーモスタットにより制御される、円筒熱交換ドラムのセグメントである、請求項8記載の装置。
【請求項10】 それぞれのセグメントは、弓形外面および弓形外面内の複数の平行なみぞを有し、それぞれは毛管反応室の1つの位置を受取るのに適合している、請求項9記載の装置。
【請求項11】 ドラムはその中心軸のまわりで、それぞれのセグメントが、各毛管反応室の少なくとも1つの部分と接触する位置の間で回転可能である、請求項10記載の装置。
【請求項12】 加熱手段および回転可能なドラムに連結されたプログラマブルコンピュータを包含し、該コンピュータがドラムの回転位置をユーザ定義パラメーターにより制御する、請求項11記載の装置。
【請求項13】 毛管中で、標的核酸を含有する反応混合物中で、変性、アニーリングおよびエクステンションプロセスを包含する連鎖反応を実施する装置において、反応混合物を含有するための毛管反応室;反応混合物中で変性プロセスを生起させるのに適当な第1温度を毛管の第1部分に受けさせるため、毛管に結合した第1加熱手段;反応混合物中でアニーリングおよびエクステンションプロセスを生起させるのに適当な第2温度を毛管の第2部分に受けさせるため毛管に結合した第2加熱手段;反応混合物を毛管反応室中および外へおよび2つの部分の間で自動的に移動させる手段を包含する、標的核酸を含有する反応混合物中で連鎖反応を実施する装置。
【請求項14】 毛管反応室が1つの開放端を有する、請求項13記載の装置。
【請求項15】 自動的に移動させる手段がコンピュータ制御の蠕動ポンプである、請求項13記載の装置。
【請求項16】 毛管中の反応混合物中で、変性、アニーリングおよびエクステンションプロセスを包含する核酸増幅反応を実施する装置において、(a)反応混合物中で変性プロセスを生起させるのに適当な温度範囲内の温度に、第1熱交換器の温度を安定化するための温度調節系を含有する第1熱交換器;
(b)反応混合物内でアニーリングおよびエクステンションプロセスを生起させるのに適当な温度範囲内の温度に、第2熱交換器の温度を安定化するための温度調節系を含有する第2熱交換器;
(c)第1熱交換器と熱接触している第1部分および第2熱交換器と熱接触している第2部分を有するように径路定めされている毛管;
(d)管中へ反応混合物を収容するため毛管に結合した入力ポートおよび管から出来上った反応生成物を送出するための出力ポートを有し、新しい反応混合物を第1位置へ注入し、反応混合物を毛管中で第2位置で第1および第2熱交換器の間で循環させ、出来上った反応生成物を第3位置で排出するのを許す弁アセンブリ;および(e)反応混合物を毛管中で、反応混合物が第1および第2熱交換器を順次にかつ周期的に通過するように循環させるため、毛管に結合した熱交換器の1つ中のポンプ装置を包含する、毛管内の反応混合物中で核酸増幅反応を実施する装置。
【請求項17】 核酸増幅反応の間、反応混合物中の変化を表わすデータを発生するため毛管に光学的に結合した分光光度検出器を包含する、請求項16記載の装置。
【請求項18】 試薬、付加的プライマーまたは付加的酵素を毛管中の反応混合物に添加することのできる入力ポートを設けるため毛管に結合した弁装置を包含する、請求項16記載の装置。
【請求項19】 毛管中の反応混合物に隣接して不連続部を混入するための手段を有する、請求項16記載の装置。
【請求項20】 不連続部の通過をカウントするため毛管に結合されたサイクルカウンタを有する、請求項19記載の装置。
【請求項21】 コンピュータ志向制御装置に記憶されたデータにより核酸増幅反応プロトコルを自動的に実行するため、ポンプ装置および弁アセンブリに制御信号を発生するため、ポンプ装置および弁アセンブリに結合したコンピュータ志向制御装置を包含する、請求項16記載の装置。
【請求項22】 コンピュータ志向制御装置がユーザプログラマブルであり、異なる核酸増幅反応プロトコルを定義するデータがユーザにより入力することができる、請求項21記載の装置。
【請求項23】 反応混合物中で核酸増幅反応を実施する装置が、反応混合物中で変性プロセスを生起させるのに適当な第1温度に第1熱交換器を維持するための第1熱交換器系;反応混合物中でアニーリングプロセスを生起させるのに適当な第2温度に第2熱交換器を維持するための第2熱交換器系;反応混合物中でエクステンションプロセスを生起させるのに適当な温度に第3熱交換器を維持するための第3熱交換器系;第1、第2および第3熱交換器を通る反応混合物を含有する開放毛管;反応混合物に第1、第2および第3温度を連続的に繰返し受けさせ、反応混合物中に核酸増幅反応が生起するようにするため、反応混合物を毛管を通しておよび熱交換器の間で移動させるため、反応混合物と連通しかつ毛管の一端に結合した手段を包含する、反応混合物中で核酸増幅反応を実施する装置。
【請求項24】 反応混合物を毛管を通して流す手段がシリンジポンプ装置である、請求項23記載の装置。
【請求項25】 熱交換器が金属ブロックである、請求項23記載の装置。
【請求項26】 生起手段が毛管に接続されたコンピュータ制御のポンプ装置を包含する、請求項23記載の装置。
【請求項27】 反応混合物を含有するための毛管;異なる温度の液体を収容するための少なくとも1つの入力ポートおよび液体を室から取出すことのできる少なくとも1つの出力ポートを有する、毛管を取囲む室;入力および出力ポートを通して室に結合され、反応混合物中に核酸変性を生起させるのに適当な温度に温度安定化された大部分の液体を含有する、第1サーモスタット付浴;反応混合物中に核酸アニーリングおよびエクステンションを生起させるのに適当な温度に温度安定化された大部分の液体を含有する、室の入力および出力ポートに結合した第2サーモスタット付浴;および反応混合物が変性およびアニーリング温度を交番に受けるように、第1および第2浴からの液体を室中へおよび外へ交番に移動させるためのポンプ装置を有する、反応混合物中で核酸増幅反応を実施する装置。
【請求項28】 パンピング手段が、第1および第2浴のそれぞれに1つのポンプを有し、それぞれが室の別個の入力および出力ポートに結合しておりかつそれぞれが液体を室の中および外へ選択的にポンプ輸送するため、コンピュータ志向制御装置によって制御される、請求項27記載の装置。
【請求項29】 パンピング手段が、室の1つのポートに結合されかつ液体マルチプレクサに結合した単一の共有双方向ポンプであり、該マルチプレクサは、浴の1つをポンプに選択的に結合するため、第1浴に結合した1つの双方向ポートおよび第2浴に結合した第2の双方向ポートを有し、ポンプおよびマルチプレクサは、液体を第1および第2浴から室中へ周期的かつ交番に選択的にポンプ輸送して、コンピュータ志向制御装置に記憶されたデータにより定義された核酸増幅反応プロトコルを実行するように、ポンプおよび液体マルチプレクサを制御するためのコンピュータ志向制御装置の制御下にある、請求項28記載の装置。
【請求項30】 入力ポートおよび出力ポートを有しかつ少なくとも室の横断面部分を横切る金網を有する細長い室;室を迂回する液体流路を提供する少なくとも第1および第2液体バイパス管;反応混合物中に変性を生起させるのに適当な温度に大部分の液体の温度を維持するための第1サーモスタット付浴;反応混合物中にアニーリングおよびエクステンション反応を生起させるのに適当な温度に大部分の液体の温度を維持するための第2サーモスタット付浴;第1および第2浴のそれぞれから室へ液体をポンプ輸送するため室とそれぞれの浴の間を連結しているパンピング手段;浴の1つからの液体の流れが室を通り、第2浴からの液体のもう1つの流れがバイパス管の1つを通るように選択的に結合し、次いで第2浴からパンピング手段によって圧送される流れが室を通り、第1浴からパンピング手段によって圧送される流れがバイパス管の他の1つを通るように結合するための弁装置を包含する、毛管中で化学的連鎖反応を実施する装置。
【請求項31】 第1金属ブロック熱交換器;反応混合物中で変性を生起させるのに適当な第1温度に第1金属ブロック熱交換器を維持するため、第1金属ブロックに連結された第1熱制御系;第2金属ブロック熱交換器;反応混合物中でアニーリングおよび/またはエクステンションプロセスを生起させるのに適当な第2温度に第2金属ブロック熱交換器の温度を維持するため第2熱交換器に連結された第2熱制御系;第1および第2金属ブロックを分離する熱絶縁層;それぞれが第1および第2金属ブロックと接触しかつ絶縁層を通る複数の毛管;およびPCR反応混合物を毛管中へ導入するためおよび核酸増幅反応プロトコルを定義する記憶されたデータにより第1および第2金属ブロックに対し反応混合物を位置定めするため管に連結され、反応混合物が交番に、記憶されたデータにより特定されたインキュベーション時間、第1および第2金属ブロックの温度を受けるようにする試料処理手段を包含する、複数の毛管中に含有された複数の反応混合物中で核酸増幅反応プロセスを実施する装置。
【請求項32】 試料処理手段が、管およびプログラマブル制御装置により制御される、ステップモータに結合した少なくとも1つのシリンジポンプを包含する、請求項31記載の装置。
【請求項33】 それぞれの毛管は1つの開放端を有し、試料処理手段はさらに、管の開放端を少なくとも1つの予選された試料容器中および外へ自動的および選択的に移動させる手段を包含する、請求項32記載の装置。
【請求項34】 複数の毛管中の反応混合物中で変性、アニーリングおよびエクステンドプロセスを包含する核酸増幅反応を実施する装置において、核酸増幅反応で標的核酸コピーをつくらせるのに適当な反応混合物を含有するのに適合された、複数の開放端毛管;混合物中で核酸増幅反応における変性プロセスを生起させるのに適当な第1温度を、それぞれの毛管の少なくとも1つの部分に同時に受けさせる第1手段;混合物中で核酸増幅反応におけるアニーリングおよびエクステンションプロセスを生起させるのに適当な第2温度を、それぞれの毛管の少なくとも1つの部分に同時に受けさせる第2手段;および反応混合物に第1および第2温度を受けさせる手段を有する、複数の毛管中で核酸増幅反応を同時に実施する装置。
【請求項35】 それぞれの毛管の開放端を、反応混合物を含有する相応する反応管に操作可能に連結しかつ毛管を清浄にするための処理手段を包含する、請求項34記載の装置。
【請求項36】 処理手段が反応管配列並進および持上系を包含する、請求項35記載の装置。
【請求項37】 処理手段が、それぞれの反応管からそれぞれの毛管を挿入および取出すための装置を包含する、請求項34記載の装置。
【請求項38】 生起手段が、処理手段および第1および第2手段を、ユーザ定義のパラメーター組により受けさせるため制御するプログラマブルコンピュータを包含する、請求項35記載の装置。
【請求項39】 複数の毛管に含有されている複数の反応混合物に、核酸増幅反応生成物を生成するための変性、アニーリングおよびエクステンションプロセスを包含する核酸増幅反応を実施する装置において、複数の反応混合物中で核酸増幅反応における変性プロセスを生起させるのに適当な温度範囲内の温度に、第1熱交換器の温度を安定化させるための熱制御装置を有する第1熱交換器;混合物中で核酸増幅反応におけるアニーリングおよびエクステンションプロセスを生起させるのに適当な温度範囲内の温度に、第2熱交換器の温度を安定化するための他の熱制御装置を有する第2熱交換器;それぞれの毛管が第1および第2熱交換器の少なくとも1つと熱接触している位置を有するように経路をとる複数の毛管;反応混合物を管中へ引込むためおよび出来上った反応生成物を管から排出するためのそれぞれの毛管に結合している手段;および毛管内の混合物中で核酸増幅反応を生起させるために、第1および第2熱交換器を、毛管の部分内の混合物と熱接触するように順次に位置定めするための手段を有する、複数の毛管に含有されている複数の反応混合物中で同時に核酸増幅反応を実施する装置。
【請求項40】 混合物中の光学的変化を検出するため、毛管に光学的に結合された検出手段を有する請求項39記載の装置。
【請求項41】 検出手段がホトダイオードアレイを含有する、請求項40記載の装置。
【請求項42】 検出手段が分光光度計に結合されている、請求項40記載の装置。
【請求項43】 検出手段が、核酸増幅反応の一部の間混合物中に起きるけい光変化を検出する、請求項40記載の装置。
【請求項44】 検出手段が、コンピュータに結合されたホトダイオードデバイスまたはCCD検出器を含有する、請求項43記載の装置。
【請求項45】 第1および第2熱交換器が細長い回転可能ドラムの各部分である請求項42記載の装置。
【請求項46】 それぞれの熱交換器が円筒ドラムの弓形セグメントであり、各セグメントが弓形外面を有する、請求項45記載の装置。
【請求項47】 表面が、複数の毛管の部分を収容する複数の平行なみぞを有する、請求項46記載の装置。
【請求項48】 熱交換セグメントが絶縁層により分離されている、請求項47記載の装置。
【請求項49】 みぞが円周にある、請求項48記載の装置。
【請求項50】 位置定め手段が、回転可能の円筒ドラムに結合したコンピュータ制御ステップモータであり、該モータはドラムを、第1熱交換器が毛管の各部分と熱接触している第1角位置および第2熱交換器が毛管の各部分と熱接触している第2角位置の間で回転する、請求項49記載の装置。
【請求項51】 モータが円筒ドラムを、第1および第2熱交換セグメントよりも高い温度を有する第3熱交換セグメントが管の部分と接触する第3角位置に回転するために操作しうる、請求項49記載の装置。
【請求項52】 モータが円筒ドラムを、第1、第2または第3熱交換セグメントよりも低い温度を有する第4熱交換セグメントが管の部分と接触する第4角位置に回転するために操作しうる、請求項50記載の装置。
【請求項53】 引込むための手段が、毛管に連結している少なくとも1つのシリンジポンプを有する、請求項40記載の装置。
【請求項54】 引込むための手段が、各管の一端を少なくとも1つの試料容器中および外へ挿入および引戻すため、各毛管の開放端に結合したリフト装置を有する、請求項53記載の装置。
【請求項55】 引戻すための手段が、管の端を間隔を置いた配置で保持する持上げクランプバーに機械的に連結した、コンピュータ制御ステップモータを有する、請求項54記載の装置。
【請求項56】 試料容器を、毛管の少なくとも1つの端部と整列している位置へおよびそれから割送りするために操作しうるステージに結合した移動装置を有する、請求項55記載の装置。
【請求項57】 ステージが清浄液容器を含有し、移動装置は、管端が清浄液容器と整列している、清浄およびすすぎ位置制御可能に位置定めするために操作しうる、請求項56記載の装置。
【請求項58】 第1および第2熱交換器に操作結合したプログラマブルコンピュータ、リフト装置、移動装置、位置定め手段、および反応混合物を自動的に操作し、反応生成物を生成するためのユーザ定義パラメーターにより、反応混合物に対し核酸増幅反応を実施するための熱制御システムを有する、請求項57記載の装置。
【請求項59】 第1および第2熱交換器がそれぞれ定置の金属ブロックである、請求項39記載の装置。
【請求項60】 それぞれの熱交換器が一般に長方形のブロックである、請求項59記載の装置。
【請求項61】 それぞれの熱交換器が、複数の毛管の部分を収容する複数の平行なみぞを有する平坦な表面を有する、請求項60記載の装置。
【請求項62】 熱交換器が絶縁層により分離されている、請求項61記載の装置。
【請求項63】 絶縁層が空気である、請求項62記載の装置。
【請求項64】 位置定め手段が、それぞれの管に結合したコンピュータ制御シリンジポンプであり、該ポンプが反応混合物を熱交換器の間で、核酸増幅反応を実施する工程のユーザ定義順序により移動させる、請求項63記載の装置。
【請求項65】 複数の毛管中に含有されている複数の反応混合物中で同時に変性、アニーリングおよびエクステンションを包含する核酸増幅反応を実施し、各混合物が増幅すべき標的核酸を含有する方法において、(a)試料を複数の毛管の第1部分中へ引込む工程;
(b)第1部分を、反応混合物中にエクステンションプロセスを生起させるのに有効なエクステンション温度に加熱する工程;
(c)第1部分を、反応混合物中に変性プロセスを生起させるのに有効な変性温度に加熱する工程;
(d)毛管の第1部分を、毛管の第1部分内の反応混合物中にアニーリングプロセスを生起させるのに有効な温度範囲内のアニーリング温度に冷却する工程、および(e)工程(b)〜(d)を、試料中に核酸が所望量に達するのに所望回数繰返す工程を包含する、複数の毛管中に含有されている複数の反応混合物中に同時に核酸増幅反応を実施する方法。
【請求項66】 工程(c)が、(i)毛管の第1部分に、変性温度よりも高い温度を、反応混合物を変性温度にランプさせるのに必要な時間だけ受けさせ、次いで(i)混合物中に生起する変性プロセスのための所定時間混合物中に変性温度を保持する工程を包含する、請求項65記載の方法。
【請求項67】 冷却工程(d)が、(i)毛管の第1部分にアニーリング温度よりも低い温度を、反応混合物の温度をアニーリング温度にランプさせるのに有効な時間受けさせ、(ii)第1部分を、反応混合物中にアニーリングプロセスを生起させるのに有効な時間アニーリング温度に維持する工程を包含する、請求項65記載の方法。
【請求項68】 冷却工程(d)が、(i)毛管の第一部分に、アニーリング温度よりも低い温度を、反応混合物の温度をアニーリング温度にランプするのに有効な時間を受けさせ、(ii)第1部分を、混合物中にアニーリングプロセスを生起させるのに有効な時間アニーリング温度に維持する工程を包含する、請求項66記載の方法。
【請求項69】 複数の反応混合物のそれぞれ1つにおいて少なくとも1つの標的核酸シーケンスを、核酸増幅反応(変性、アニーリングおよびエクステンションプロセスを包含するPCR)により増幅する方法において、(a)混合物を複数の毛管の第一部分中へ引込む工程;
(b)混合物を、混合物中にエクステンションプロセスを生起させるのに適当な温度に維持する可動熱交換器の第1表面部分に対し、毛管の第2部分に位置定めする工程;
(c)熱交換器を、変性温度よりも高い温度を有する熱交換器の第2表面部分が毛管の第2部分と接触する第2部分へ移動させる工程;
(d)熱交換器を、混合物中に変性プロセスを生起させるのに有効な温度範囲内の温度を有する熱交換器の第3表面部分が毛管の第2部分と接触する第3部分へ移動させる工程;
(e)熱交換器を、混合物中でアニーリング反応を生起させるのに適当な温度範囲内の温度を有する熱交換器の第4表面部分が毛管の第2部分と接触する第4部分へ移動させる工程;
(f)工程(b)〜(e)を、標的核酸の量を所望量に増幅するのに十分な回数繰返す工程を包含する、複数の反応混合物のそれぞれ1つ中で少なくとも1つの標的核酸シーケンスを、核酸増幅反応によって増幅する方法。
【請求項70】 移動工程(d)が、可動熱交換器を第3位置に所定時間保持する工程を包含する、請求項69記載の方法。
【請求項71】 移動工程(e)が、熱交換器を第4位置に所定時間保持する工程を包含する、請求項69記載の方法。
【請求項72】 移動工程(e)が、熱交換器を第4位置に所定時間保持する工程を包含する、請求項70記載の方法。
【請求項73】 第1表面部分および第2表面部分が同じである、請求項71記載の方法。
【請求項74】 第1表面部分および第2表面部分が同じである、請求項72記載の方法。
【請求項75】 複数のの反応混合物のそれぞれ1つ中で、少なくとも1つの標的核酸シーケンスを、変性、アニーリングおよびエクステンションプロセスを包含する核酸増幅反応により増幅する方法において、(a)混合物を複数の毛管の第1部分中へ引込む工程;
(b)混合物を、混合物中でエクステンションプロセスを生起させるのに適当な温度に維持する回転可能の熱交換器の第1表面部分に対し毛管の第2部分に位置定めする工程;
(c)熱交換器を中心軸のまわりで回転させて、混合物中で変性プロセスを生起させるのに有効な温度範囲以上の温度を有する熱交換器の第2表面部分が毛管の第2部分と接触する第2位置にもたらす工程;
(d)熱交換器を、混合物中で変性プロセスを生起させるのに有効な温度範囲内の温度を有する熱交換器の第3表面部分が毛管の第2部分と接触する第3位置に回転させる工程;
(e)熱交換器を、混合物中でアニーリングプロセスを生起させるのに適当な温度範囲内の温度を有する熱交換器の第4表面部分が毛管の第2部分と接触させる工程;
(f)工程(b)〜(e)を、標的核酸シーケンスの量を所望量増幅するのに十分な回数繰返す工程を包含する、複数の反応混合物のそれぞれ1つ中で、少なくとも1つの標的核酸シーケンスを核酸増幅反応により増幅する方法。
【請求項76】 回転工程(d)が、回転可能な熱交換器を第3位置に所定時間保持する工程を包含する、請求項75記載の方法。
【請求項77】 回転工程(e)が、熱交換器を第4位置に所定時間保持する工程を包含する、請求項75記載の方法。
【請求項78】 回転工程(e)が、熱交換器を第4位置に所定時間保持する工程を包含する、請求項76記載の方法。
【請求項79】 第1表面部分および第2表面部分が同じである、請求項77記載の方法。
【請求項80】 第1表面部分および第2表面部分が同じである、請求項78記載の方法。
【請求項81】 増幅すべき標的核酸セグメントを含有する毛管内の反応混合物中で、変性、アニーリングおよびエクステンションプロセスを包含する核酸増幅反応を自動的に実施する方法において、(a)反応混合物を容器から、反応混合物を含有するのに適合した部分を有する開放毛管反応室中へ自動的に移動させる工程;
(b)毛管反応室中の混合物を、混合物中で変性プロセスを生起させるのに適当な温度範囲内の第1温度に加熱する工程;
(c)混合物を、混合物中でアニーリングおよびエクステンションプロセスを惹起させるのに適当な第2温度に冷却する工程;
(d)工程(b)および(c)をユーザ定義回数繰返す工程;
(e)反応混合物を、毛管反応室から容器中へ自動的に排出する工程;
(f)異なる反応混合物を、他の容器から反応室部分中へ自動的に移動させる工程、および(g)工程(b)〜(e)を自動的に繰返す工程を包含する、増幅すべき標的核酸セグメントを含有する毛管内の反応混合物中で核酸増幅反応を自動的に実施する方法。

【図2】
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【図3】
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【図5】
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【図1】
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【図4】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図27】
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【図29】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図28】
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【図32】
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【図30】
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【図31】
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【図33】
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【図34】
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