説明

核酸検出カセット

【課題】 核酸増幅及びその他の必要な処理と標的核酸の検出までを一貫して自動的に処理するのに適する小型閉鎖型の核酸検出カセットを提供するにある。
【解決手段】 核酸検出カセットにおいては、加熱処理チャンバと送液流路とが固定部材及び可撓性部材により構成されている核酸検出カセットにおいて、加熱処理チャンバの両側から凸状加熱部が挟み込むことにより、加熱処理チャンバと送液流路とを空間的に分離する。従って、対象サンプルの核酸増幅及びその他の必要な処理と標的核酸の検出までの一貫した処理を自動的に行うことが出来る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、前処理工程及びこの前処理工程に続く標的核酸の検出を全自動で処理するに適する核酸検出カセットに関する。
【背景技術】
【0002】
近年の遺伝子工学の発展に伴い、医療分野では、遺伝子による病気の診断或いは予防が可能となりつつある。このような診断は、遺伝子診断と称せられ、遺伝子診断によって、病気の原因となるヒトの遺伝子欠陥或いは変化を検出して病気の発症前若しくは極めて初期の段階での病気の診断或いは病気の予測をすることが出来る。また、ヒトゲノムの解読とともに、遺伝子型と疫病との関連に関する研究が進み、各個人の遺伝子型に合わせた治療(テーラーメイド医療)も現実化しつつある。
【0003】
また、バイオテロと呼ばれる、毒ガスや劇薬等の化学物質を用いた犯罪も増えており、社会的な脅威になっている。犯罪で使用された物質を迅速に特定することは、人命救助の観点から必須である。従って、簡便に且つ迅速に遺伝子を検出し、また、遺伝子型を決定することは非常に重要となっている。
【0004】
従来、核酸を検出するシステムとしては、核酸抽出装置、核酸増幅装置、ハイブリダイゼーション装置、核酸検出装置、データ解析装置等の各装置が個別に利用されるシステムが知られている。このようなシステムにおいては、これら装置で実現される以外のサンプルの調製或いは装置間のサンプルの移動等は、人手を必要とされている。
【0005】
核酸増幅においては、増幅前のサンプルに極僅かでも別な核酸が混入するとその核酸をも大量に増幅し、誤検出を引き起こすという問題がある。核酸分子は、乾燥状態でも安定であり、様々な物質に吸着し、更には、空気中を浮遊することもあることが知られている。従って、誤検出を防ぐために、核酸抽出をおこなう場所には増幅後のサンプルを持ち込まない等の厳重な管理体制を必要としている。
【0006】
近年、ハイブリダイゼーション反応からデータ解析までの工程を自動で行う装置が開発され、最近になって核酸抽出からデータ解析までを自動で行う全自動核酸検出装置も開発されている。
【0007】
しかし、現存する全自動核酸検出装置は、上記の検出非対象核酸分子の混入に対して確実な対策が取られたものではなく、また、大型のものが多かったため、研究用途向けのものとなっている。例えば、特許文献1には、自動処理に対応可能な核酸検出装置として核酸増幅及び核酸増幅に引き続いて核酸を検出する核酸検出装置が開示されている。
【0008】
核酸解析装置の開発にあたっての重要な課題は、検出非対象核酸分子の混入であり、また、核酸サンプルの外部への漏れ出しであるとされている。
【特許文献1】特開平3−7571号公報
【特許文献2】特開2005−261298公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
一般に核酸の抽出及び増幅工程においては、試料となる溶液を加熱する手法がとられている。従来の核酸解析装置にあっては、特許文献2にも開示されるように溶液の送液経路を切り替えるためにバルブが搭載されている。このようなバルブによって送液経路を切り替える構造にあっては、開放流路部に対しては、加熱処理部で発生した蒸気が流出し、加熱処理による反応制御性が劣ってしまう問題がある。
【0010】
そこで、加熱処理部を孤立させるために、流路切り替えのためのバルブをすべて閉じてしまう方法が思い付くが、加熱処理部分とバルブにより閉鎖される位置とが同一でないため、加熱処理部に連通されている領域に非加熱部が生じてしまう。その結果、加熱部において加熱された溶液が蒸気となって拡散し、非加熱領域において結露してしまう。この結露現象が発生すると、加熱により反応した溶液部と、加熱時に蒸気となり、反応せずに結露した溶液部とが乖離してしまう問題がある。従って、1)反応時の溶液濃度が加熱開始時から変化してしまうため、有効な反応が遂行されない虞がある。また、2)溶液が分断されてしまうため、処理済溶液を送液する際に、所望の溶液を所望の位置に移動させることに困難が生じる場合がある。更に、上記の問題が発生しないように、バルブの位置の領域まで広げて加熱することも考えられる。しかし、加熱領域を広げることにより、隣接する処理チャンバへの距離が短くなってしまうため、温度上昇を望まない領域への熱伝導が顕著に発生するようになる。このような熱伝導を防止するためには、距離を充分に取ることが必要となり、結果として、検出カセットが大型化してしまう問題もある。
【0011】
また、核酸の反応をカセット内で処理するためには、予め、カセット内に必要試薬が内蔵される。ところが、これらの試薬量は、非常に微量であり、必要位置に保持したままにおくことが困難とされる。例えば、チャンバ内に保持していた試薬がチャンバからの流出流路に接触してしまうと、毛細管現象により、流路を伝って、チャンバ外に流出してしまうことがしばしば発生する。
【0012】
また、流路等を小型していくと、カセット内の微妙な体積変動により、試薬同士が混合してしまい、標的核酸の検出を阻害してしまうことがしばしば発生する。
【0013】
このように、小型カセットにおいて、加熱による反応領域を限定でき、且つ、必要な溶液移動が確実にさせることが望まれている。また、その小型カセット内に内蔵試薬を確実に保持しておくことが要求されている。更には、試薬の動きを確実に制御することが要求されている。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、上記問題点を解決するためになされてものであり、その目的は、核酸増幅及びその他の必要な処理と標的核酸の検出までを一貫して自動的に処理するのに適する小型閉鎖型の核酸検出カセットを提供することにある。
【0015】
この核酸検出カセットは、加熱処理による反応制御性並びに送液の確実性が両立しされることが好ましいとされる。
【0016】
また、この核酸検出カセットでは、内蔵している試薬を確実に所定位置に保持移動しておく構造を有することが好ましいとされる。
【0017】
この発明によれば、
表面及びこの表面に対向する対向面を有し、剛性を有する材料で作られ、前記表面に開口部を有する第1の空間(BV)を有するプレート状部材と、
前記表面及び対向面を覆う第1並びに第2のシート状部材と、
前記プレート状部材に形成され、気体圧力を供給するポンプ部と、
前記プレート状部材に形成され、前記ポンプ部と連通し、核酸サンプルを保持するサンプル・チャンバ部と、
前記ポンプ部と前記サンプル・チャンバ部間を連通させるポンプ部−サンプル・チャンバ部間流路と、
前記プレート状部材に形成され、前記サンプル・チャンバ部に連通し、前記核酸サンプルを受け、前記核酸サンプルから標的核酸を検出する検出部と、
前記サンプル・チャンバ部と前記検出部とを連通するサンプル・チャンバ部−検出部間流路と、
前記検出部と前記ポンプ部を連通する還流流路と、
前記プレート状部材に形成され、前記ポンプ部及び前記検出部に連通し、洗浄液を保持する洗浄液チャンバ部と、
前記プレート状部材に形成され、前記ポンプ部と前記洗浄液チャンバ部を連通するポンプ部−洗浄液チャンバ部間流路と、
前記プレート状部材の前記ポンプ部−洗浄液チャンバ部間流路に設けられ、
前記第1の空間(BV)が前記第1のシート状部材で覆われ、前記第1のシート状部材が前記開口部に押付けられ、前記第1の空間の容積が封鎖されることにより前記ポンプ部−洗浄液チャンバ部間流路を閉鎖し、前記第1のシート状部材の前記開口部への押し付けが開放され、第1の空間(BV)の容積が確保されることにより前記ポンプ部−洗浄液チャンバ部間流路を開放するバルブ部(B)と、
前記洗浄液チャンバ部と前記検出部とを連通する洗浄液チャンバ部−検出部間流路と、
前記サンプル・チャンバ部−検出部間流路と、
前記洗浄液チャンバ部−検出部間流路とが合流する合流部(SB)と
を具備し、
前記第1の空間(BV)の容積が、前記洗浄液チャンバ部−検出部間流路の容積の内、前記洗浄液チャンバ部と前記合流部(SB)の間の容積よりも小さいことを特徴とする核酸検出カセットが提供される。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、外部環境への核酸の漏れ、また、外部からの核酸の混入を防ぎ、核酸増幅及びその他の必要な処理と目的核酸の検出までを一貫して自動的に処理することができる。
【0019】
また、予め内部に保存されている試薬が、所定の位置に保持され、不本意な流出が発生しない、またバルブ動作等によるカセット内容積変化があっても、試薬同士の混合等が起こらないため、安定した反応処理及び検出を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、必要に応じて図面を参照しながら、この発明の実施の形態に係る核酸検出カセット及び核酸検出装置について説明する。
【0021】
図1は、本発明の第1実施形態に係わる核酸検出カセット100を概略的に示す分解斜視図である。
【0022】
この核酸検出カセット100は、カセット本体1及びシート状部材2、3を備えた流路閉鎖型のカセットである。
【0023】
カセット本体1は、剛性を有するプレート状部材により構成され、表面側並びに対向面に溝及び溝に連通した窪みが形成されると共に表面側(上面側)から対向面側(下面側)に貫通する貫通孔が形成されている。シート状部材2、3及びカセット本体1間の溝並びに貫通孔によって連続する流路がカセット本体1に形成される。シート状部材2、3がカセット本体1の両面に貼付され、カセット本体1の表面側並びに対向面に形成された溝、窪み及び貫通孔が流路に規定されている。以下の説明で、上面側の溝或いは窪みで定められる流路は、上面側流路と称し、また、下面側の溝或いは窪みで定められる流路は、下面側流路と称する。
【0024】
カセット本体1は、チャンバ間で熱が伝達されないように、熱伝導率が比較的低いポリカーボネート、ポリプロピレン、POM、PMMA、ポリ乳酸系樹脂、PET、PEEK、PTFE、PFE、PPS等の高分子材料で作られている。また、シート状部材2、3は、少なくとも一部が可撓性材料で作られている。可撓性材料としては加熱用のヒータから熱がチャンバ内に伝わるように、比較的熱伝導率が高いシリコンゴム、ポリプロピレンゴム、ウレタンゴム、エラストマー等が望ましい。により作られている。シート状部材は、膜厚を薄くすることにより、必ずしも熱伝導率が高い材料を選択しなくても、同様の効果を得ることが出来る。溝及び貫通孔は、プレート状部材を切削加工して作られても良く、射出成型や、成形時にプレス加工して形成されても良い。
【0025】
(第1の構成)
図16は第1の構成の核酸検出カセットの機能ブロック図、図17は第1の構成の核酸検出カセットのサンプル・チャンバ部(S)及びその周辺を示す概略断面図である。図18A、図18B、図18C及び図18Dは第1の構成の核酸検出カセットの洗浄液チャンバ部(B)、及びバルブ部(B)及びその周辺を示す概略断面図である。図19は第1の構成の核酸検出カセットの検出部(D)及びその周辺を示す概略断面図である。
【0026】
図16に示すように、第1の構成の核酸検出カセットには、気体圧力を供給するポンプ部(P)と、核酸サンプルを保持するサンプル・チャンバ部(S)、核酸サンプルから標的核酸を検出する検出部(D)、及びハイブリダイゼーション反応後に検出部(D)内の例えばDNAチップを洗浄するための洗浄液が予め保持されている洗浄液チャンバ部(B)が同一のカセット本体に設けられている。ポンプ部(P)と、サンプル・チャンバ部(S)と、検出部(D)は、互いに流路によって環状に連通している。またこのカセットはポンプ部(P)とサンプル・チャンバ部(S)間の流路から分岐する流路と、この流路に接続する洗浄液チャンバ部(B)と、洗浄液チャンバ部(B)に接続し、サンプル・チャンバ部(S)と検出部(D)との間の流路に合流点(SB)にて合流する流路を有する。また、このカセットはポンプ部(P)とサンプル・チャンバ部(S)間の開放/閉鎖を切り替えるバルブ部(S)、及びポンプ部(P)と洗浄液チャンバ部(B)間の開放/閉鎖を切り替えるバルブ部(B)を有する。
【0027】
検出の際には、まず、サンプル・チャンバ部(S)に設けられた投入孔から核酸サンプルが投入される。サンプル・チャンバ部(S)内には必要に応じて、予め核酸抽出や核酸増幅などのサンプル前処理の試薬が用意されており、検出時に投入したサンプル・チャンバ部(S)にて核酸サンプルに対して前処理が自動で行われても良い。
【0028】
次に、バルブ部(S)が開放され、バルブ部(B)を閉鎖した状態で、ポンプ部(P)を動作させ、ポンプ部(P)から流路を通じてサンプル・チャンバ部(S)に気体圧力を供給することによって、サンプル・チャンバ部(S)中の核酸サンプルが、流路に吐出される。
【0029】
吐出された核酸サンプルは流路を通じて検出部(D)に供給される。検出部(D)には、例えば、核酸プローブが基板に固定化されたDNAチップ等サンプル中の標的核酸の検出を行う装置が設けられている。
【0030】
検出部にDNAチップを設けた場合、次に核酸サンプルとDNAチップをハイブリダイゼーション条件下におくことにより、核酸サンプルと核酸プローブとがハイブリダイゼーション反応する。
【0031】
次に、バルブ部(S)を閉鎖し、バルブ部(B)を開放した状態で、ポンプ部(P)を動作させることにより、ポンプ部(P)から流路を通じて洗浄液チャンバ部(B)に気体圧力が与えられ、洗浄液が、洗浄液チャンバ部(B)から検出部(D)に供給され、DNAチップ上に洗浄液が供給された状態にて、DNAチップを洗浄条件下におくことにより、核酸サンプルと核酸プローブとの間で生じている非特異ハイブリダイゼーションサンプルを洗浄し、廃液となった核酸サンプルが検出部(D)から排出される。ここでは、ハイブリダイゼーション反応後、バルブ部(B)を開放して洗浄液を検出部(D)に供給することにより、核酸サンプルの排出を同時に行う場合を示したが、核酸サンプルを検出部(D)から排出してからバルブ部(S)及びバルブ部(B)を切替えて、洗浄液を検出部(D)に供給するという動作を逐次実行しても良い。
【0032】
次に検出部(D)で核酸サンプルと核酸プローブとのハイブリダイゼーションを既知の方法(蛍光検出法、挿入剤を用いた電気化学的検出方法等)にて検出することにより、核酸サンプル中の標的核酸の存在を検出する。
【0033】
検出部(D)から排出された核酸サンプル、洗浄液及びポンプ部(P)から供給された気体圧力は、最終的には検出部(D)からポンプ部(P)方向に還流する。
【0034】
図17に第1の構成の核酸検出カセットのサンプル・チャンバ部(S)の周辺の断面概略構造例を示す。
【0035】
表面および裏面を有するプレート状部材211に、第1の貫通孔(S)212、第2の貫通孔(S)213、表面側に第1の溝(S1)214と、 表面側に第1の溝(S2)215、及び裏面側に第2の溝(S)216が設けられている。
【0036】
このプレート状部材の表面及び対向面は、第1のシート状部材217と、第2のシート状部材218にて覆われている。第1並びに第2のシート状部材217、218の少なくとも第1の貫通孔(S)212を覆う領域219、220は可撓性材料にて形成されている。第1のシート状部材217と、第2のシート状部材218全体が可撓性材料にて形成されていてもよい。
【0037】
サンプル・チャンバ部(S)は第1の貫通孔(S)212が前記第1並びに第2のシート状部材217、218によって閉じられることによって定められる。表面側の第1の溝(S1)214が第1のシート状部材217によって覆われることによって上面側流路である第1の流路(1S1)が定められる。表面側の第1の溝(S2)215が前記第1のシート状部材217によって覆われることによって上面側流路である第1の流路(1S2)が定められる。対向面側の第2の溝(S)216が前記第2のシート状部材218によって覆われることによって下面側流路である第2の流路(2S)が定められる。また、第2の貫通孔(S)213が前記第1のシート状部材217及び第2のシート状部材218によって覆われることによって貫通流路である第3の流路(3S)が定められる。
【0038】
サンプル・チャンバ部(S)には第1の流路(1S1)及び第2の流路(2S)が接続している。第2の流路(2S)には第3の流路(3S)が接続している。第3の流路(3S)には第1の流路(1S2)が接続している。また、第1の流路(1S1)はポンプ部(P)に通じている。第1の流路(1S2)は検出部(D)に通じている。
【0039】
外部から押圧力を与え、第1のシート状部材217の第1の貫通孔(S)212を覆う領域219を、サンプル・チャンバ部(S)の第1の貫通孔(S)212の表面側の開口部に押し付けることによって第1の流路(1S1)が閉鎖する。また外部から与えた押圧力を開放することにより、第1の流路(1S1)が開放する。
【0040】
また、外部から押圧力を与え、第2のシート状部材218の第1の貫通孔(S)212を覆う領域220を、サンプル・チャンバ部(S)の第1の貫通孔(S)212の対向面側の開口部に押し付けることによって第2の流路(2S)が閉鎖する。また外部から与えた押圧力を開放することにより、第2の流路(2S)が開放する。
【0041】
外部から第1並びに第2シート状部材217、218に押圧力を与えるタイミングと、ポンプ部(P)からの気体圧力を与えるタイミングを調節することで、核酸サンプルの移動のタイミングを制御することが出来る。
【0042】
また、核酸サンプルの温度制御のために、外部から押圧力を与える際の加圧部材として発熱体を使用することによってサンプル・チャンバ部(S)中の試薬や核酸サンプルの加熱処理を行うことも可能である。カセットの上下から発熱体を使用して圧力を与えることにより、加熱処理部を孤立させることができ、意図せざる蒸気の流出を防ぐと共に、加熱処理による反応制御性が向上する。
【0043】
核酸サンプルの移動は、以下のように行われる。
【0044】
サンプル・チャンバ部(S)に設けられた投入孔から核酸サンプルが投入される。このとき外部から押圧力を与え、第2のシート状部材218をサンプル・チャンバ部(S)に押し付けることによって、第2の流路(2S)が閉鎖されている。核酸サンプル投入後は、投入孔は封止する。封止後、さらに外部から押圧力を与え、第1のシート状部材217をサンプル・チャンバ部(S)に押し付けて、第1の流路(1S1)を閉鎖する。このとき第1、第2のシート状部材に圧力を与える加圧部材として発熱体を使用し、上下からサンプル・チャンバ部(S)を加熱してもよい。
【0045】
次に第1、第2のシート状部材217、218への押圧力を開放することによって、第1の流路(1S1)及び第2の流路(2S)を開放する。第1の流路(1S1)からポンプ部(P)が供給した気体圧力が与えられることによって、核酸サンプルは、第2の流路(2S)、第3の流路(3S)及び第1の流路(1S2)を経由して吐出される。吐出された核酸サンプルは、検出部(D)方向に供給される。
【0046】
図19に核酸検出カセットの検出部(D)の周辺の断面概略構造例を示す。プレート状部材211に、側面部に凹凸を有する貫通孔300が設けられている。また、表面側に第1の溝(D1)302と、 表面側に第1の溝(D2)303が設けられている。
【0047】
このプレート状部材の表面は、第1のシート状部材217にて覆われている。
【0048】
検出部(D)貫通孔300の側面部に設けられた凹凸にDNAチップ301が貫通孔をふさぐように嵌合されている。DNAチップ301は核酸プローブが固定化された基板を備えている。DNAチップ301は、基板上に例えばAuなどの金属電極が配置され、その上に核酸プローブが固定化された構造であってもよい。またDNAチップ301のプローブ固定化面に核酸サンプルや、洗浄液、挿入剤溶液などの試薬が晒されるように、プローブ固定化面側に流入口及び流出口を有する流路304が形成されている。この流路を形成するためにDNAチップ301表面に溝が形成された部材305が積層されている。また、DNAチップ301上の温度制御をするためにプローブ固定化面とは反対側の面は開口されて、外部に晒されている。DNAチップ301は外部から加熱手段などにより温度制御できる構造となっている。なお本例ではDNAチップ301はプレート状部材211の貫通孔中に設置されているが、プレート状部材に凹部を形成し、その凹部中に載置されていても良い。
【0049】
また、表面側の第1の溝(D1)302、第1の溝(D2)303が第1のシート状部材217によって覆われることによって上面側流路である第1の流路(1D1)が定められる。表面側の第1の溝(D2)が前記第1のシート状部材217によって覆われることによって上面側流路である第1の流路(1D2)が定められる。第1の流路(1D1)は流路304の流入口に接続している。また第1の流路(1D2)には流路304の流出口に接続している。
【0050】
ポンプ部(P)からの気体圧力が与えられることによりサンプル・チャンバ部(S)方向から流出した核酸サンプル溶液或いは後述する洗浄液、挿入剤溶液などの試薬は、第1の流路(1D1)を経由して、流路304の流入口から供給され、DNAチップ上の流路304を充填し、各種反応を行った後、流出口を通してDNAチップ上から排出され、第1の流路(1D2)を経由して排出される。上記のように第1の構成の核酸検出カセットは、核酸サンプルの投入後、閉じた還流流路を形成することが出来るため、検出非対象核酸分子の混入や、核酸サンプルの外部への漏れ出しを防止することができる。また、核酸サンプル等の液体を制御性良く保持、移動させることができる。 図18A、図18B、図18C及び図18Dに第1の構成の核酸検出カセットの洗浄液チャンバ部(B)及びバルブ部(B)周辺の断面概略構造を示す。図18A、図18B、図18C及び図18Dは一部を除き同一構造であるため、同一のパーツは同一符号にて示している。
【0051】
プレート状部材211に、第1の貫通孔(B)221、第2の貫通孔(B)222、表面側に第1の溝(B1)223と、 表面側に第1の溝(B2)224、及び対向面に第2の溝(B)225が設けられている。
【0052】
洗浄液チャンバ部(B)は前記第1の貫通孔(B)221が前記第1並びに第2のシート状部材217、218によって閉じられることによって定められる。表面側の第1の溝(B1)223が第1のシート状部材217によって覆われることによって上面側流路である第1の流路(1B1)が定められる。表面側の第1の溝(B2)224が第1のシート状部材217によって覆われることによって上面側流路である第1の流路(1B2)が定められる。対向面側の前記第2の溝(B)225が前記第2のシート状部材218によって覆われることによって下面側流路である第2の流路(2B)が定められる。また、第2の貫通孔(B)222が前記第1のシート状部材217及び前記第2のシート状部材218によって覆われることによって貫通孔流路である第3の流路(3B)が定められる。図18A及び図18Bに示すように第3の流路(3B)の断面積は流路方向に沿って均一であってもよいし、図18C及び図18Dに示すように、表面側で、断面積が途中から大きくなっていてもよい。表面側で断面積が大きくなる流路構造とすることにより、チャンバ内に保持していた洗浄液が流路の毛細管現象により、チャンバ外に流出してしまうような意図しない現象を防止することができる。
【0053】
洗浄液チャンバ部(B)は、必ずしも、プレート状部材211の貫通孔により構成されている必要はない。プレート状部材211の表面側の凹部を前記第1のシート状部材217によって覆われることによって定められても、プレート状部材211の対向面側の凹部を前記第2のシート状部材218によって覆われることによって定められても良い。
【0054】
洗浄液チャンバ部(B)には第1の流路(1B1)及び第2の流路(2B)が接続している。第2の流路(2B)には第3の流路(3B)が接続している。第3の流路(3B)には第1の流路(1B2)が接続している。また、第1の流路(1B1)はバルブ部(B)に通じている。第1の流路(1B2)は合流点(SB)に通じている。
【0055】
第1の流路(1B1)に連通する流路には各々流路の開放/閉鎖を切り替えるバルブ部(B)226が設けられている。(バルブ部(B)の構造については後述する。)
洗浄液の移動は以下のように行われる。
【0056】
洗浄液は、洗浄液チャンバ部(B)に予め保持されている。このときバルブ部(B)は閉鎖している。
【0057】
次にバルブ部(S)は閉鎖、バルブ部(B)を開放する。ポンプ部(P)からの気体圧力が、第1の流路(1B1)を通って洗浄液チャンバ部(B)に与えられる。洗浄液は第2の流路(2B)、第3の流路(3B)及び第1の流路(1B2)を経由して吐出され、検出部(D)に供給される。
【0058】
上記のようにポンプ部(P)からの気体圧力を与えるタイミングと、バルブ部(S),(B)の開放/閉鎖のタイミングを調整することで、洗浄液供給のタイミングを制御することが出来る。
【0059】
図18A〜図18Dに示されるバルブ部(B)226について説明する。
【0060】
プレート状部材211に、第1の貫通孔(BV)181、第2の貫通孔(BV)182、表面側に第1の溝(BV1)183と、 表面側に第1の溝(BV2)184、及び裏面側に第2の溝(BV)185が設けられている。
【0061】
第1並びに第2のシート状部材217、218の少なくとも第1の貫通孔(BV)181を覆う領域は可撓性材料にて形成されている。第1のシート状部材217と、第2のシート状部材218全体が可撓性材料にて形成されていてもよい。
【0062】
第1の貫通孔(BV)181が前記第1並びに第2のシート状部材217、218によって閉じられることによって流路(BV)が定められる。また表面側の第1の溝(BV1)183が第1のシート状部材217によって覆われることにより上面側流路である第1の流路(1BV1)が定められる。表面側の第1の溝(BV2)184が前記第1のシート状部材217によって覆われることによって上面側流路である第1の流路(1BV2)が定められる。対向面側の第2の溝(BV)185が前記第2のシート状部材218によって覆われることによって下面側流路である第2の流路(2BV)が定められる。また、第2の貫通孔(BV)182が前記第1のシート状部材217及び第2のシート状部材218によって覆われることによって貫通流路である第3の流路(3BV)が定められる。
【0063】
流路(BV)には第1の流路(1BV1)及び第2の流路(2BV)が接続している。第2の流路(2BV)には第3の流路(3BV)が接続している。第3の流路(3BV)には第1の流路(1BV2)が接続している。また、第1の流路(1BV1)はポンプ部(P)に通じている。第1の流路(1BV2)は第1の流路(1B1)と接続しており、これらは同一の流路であってよい。第1の流路(1BV2)は洗浄液チャンバ部(B)に通じている。よって一連の第1の流路(1BV1)−流路(BV)−第2の流路(2BV)−第3の流路(3BV)―第1の流路(1BV2)はポンプ部(P)−洗浄液チャンバ(B)間流路の一部をなしている。
【0064】
ポンプ部(P)−洗浄液チャンバ(B)間流路に設けられたバルブ部(B)226とは、シート状部材217で覆われた流路(BV)の表面側開口部付近の空間(以下、「第1の空間」(図面上では226で示す。)とする。)がこれに相当する。
【0065】
バルブ部(B)226を閉鎖、すなわちポンプ部(P)−洗浄液チャンバ(B)間流路を閉鎖するには、流路(BV)の開口部上の第1のシート状部材217に対し、外部からプッシャ186にて押圧力を付与して、第1のシート状部材217をプレート部材221の流路(BV)の開口部に押し付けることにより行う。シート状部材217をプレート部材221の開口部に押し付けることにより、押し付ける前に比べて減少する流路(BV)の容積を第1の空間226の容積、即ちバルブ部(B)の容積とする。この押圧力の付与により第1の空間226の容積が封鎖され、バルブ部(B)226が閉鎖する。
【0066】
またバルブ部(B)を開放、すなわちポンプ部(P)−洗浄液チャンバ(B)間流路を開放するには、この押圧力を開放し、シート状部材217のこの押し付けを開放されることにより行う。これにより第1の空間226の容積が確保される。
【0067】
流路(BV)181の開口端、即ち外部からプッシャ186が押し付けられる部分には、図に示すようにテーパー状であってもよいし、テーパー状でなくとも良い。テーパー状であることが望ましい。それによりプッシャ186との接触面積を増やし、バルブの封止力を向上させることが出来る。
【0068】
バルブ部(B)の容積は、図18Aや図18Cに記載のバルブ部(B)226のように、第1の貫通孔(BV)181の径を大きくし、テーパーを深くすることによって大きな容積としても良いし、図18Bや図18Dに記載のバルブ部(B)226のように、径を小さくし、テーパーを浅くすることによって小さな容積にしても良い。しかしながら、バルブ部(B)の容積は適切な容積を有している必要がある。
【0069】
バルブ部(B)226の容積について以下に説明する。図20A及び図20Bは図18Aと、図20C及び図20Dは図18Bと、図20E及び図20Fは、図18Cと、図20G及び図20Hは図18Dと、各々同様な構造の洗浄液チャンバ(B)に、洗浄液が保持された状態を示す図である。図20A〜図20Hは、図18A〜図18Dと一部を除き同一構造であるため、同一のパーツは同一符号にて示している。
【0070】
図20A、図20B、図20E及び図20Fは、バルブ部(B)226の容積が大きすぎる場合について示す。図20A、図20Eに示すようにバルブ部(B)226は開放された状態で、洗浄液チャンバ(B)に液体が保持されているとする。この状態から図20B、図20Fに示すように、プッシャ186による押圧力が第1のシート217に付与されバルブ部(B)の第1の空間226の容積が封鎖したときには、プッシャ186により押された分核酸検出カセット100内の容積が圧縮される。その圧力は、第1の流路(1B1)を通って洗浄液チャンバ部(B)に与えられる。そして洗浄液の液面に圧力がかかり、洗浄液が、第2の流路(2B)から第1の流路(1B2)に流出し、核酸サンプルや他の試薬と不本意に混合してしまうことになる。
【0071】
これに対し、図20C、図20D、図20G及び図20Hに示すように、バルブ部(B)の容量が適切である場合は、図20C及び図20Gに示すように、バルブ部(B)226が開放され、洗浄液チャンバ(B)に洗浄液が保持された状態から、図20D及び図20Fに示すように、プッシャ186によってバルブ部(B)226が閉鎖し、洗浄液の液面に圧力がかかったとしても、かかる圧力は少なく、第2の流路(2B)から第1の流路(1B2)に洗浄液が流出することはない。
【0072】
ここでバルブ部(B)226の容積、すなわちシート状部材217をプレート部材221の開口部に押し付けることにより減少する流路(BV)の容積をVbとする。また、洗浄液チャンバ部(B)からの洗浄液流出路である、第2の流路(2B)の容積をV2b、第3の流路(3B)の容積をV3b、更に接続されている第1の流路(1B2)のサンプル・チャンバ部−検出部間流路との合流点(SB)までの容積をV1b2とする。
【0073】
プッシャ186による押圧力が第1のシート217に付与されバルブ部(B)が閉鎖したときには、核酸検出カセット100内の容積は、Vb圧縮される。その圧力は、第1の流路(1B1)を通って洗浄液チャンバ部(B)に与えられる。洗浄液チャンバ部(B)に予め洗浄液が保持されている場合には、洗浄液の液面に圧力がかかり、第2の流路(2B)から最大でVbの体積の洗浄液が、洗浄液チャンバ部(B)から流出することになる。第2の流路(2B)、第3の流路(3B)及び第1の流路(1B2)が撥水性処理されており、洗浄液チャンバ部(B)に圧力が印加されていない状態で、第2の流路(2B)に洗浄液が侵入していない場合には、
Vb < V2b + V3b + V1b2・・・式(1)
であれば、バルブ部(B)が動作した際に、洗浄液が合流点(SB)を超えて流出し、核酸サンプルや他の試薬と不本意に混合してしまうことはない。
【0074】
図18C及び図18Dに示すように、第3の流路(3B)の断面積が途中で大きくなっている場合、第2の流路(2B)に接続されている側の容積をV3b1、第1の流路(1B2)に接続されている側の容積をV3b2とすると、
V3b = V3b1 + V3b2
の下で、
Vb < V3b2 + V1b2・・・式(2)
が成り立っていれば、たとえ、流路が撥水性処理されておらず、洗浄液が毛細管現象により、第3の流路の断面積が大きくなる境界部分まで予め流出していたとしても、バルブ部(B)が動作した際に、洗浄液が合流点(SB)を超えて流出し、核酸サンプルや他の試薬と不本意に混合してしまうことはない。
【0075】
また、さらに望ましくは、 Vb < V1b2・・・式(3)
が成り立っていれば、洗浄液が毛細管現象によって、洗浄液チャンバ部(B)から、第3の流路(3B)を満たすまで予め流出していても、バルブ部(B)が動作した際に、洗浄液が合流点(SB)を超えて流出し、核酸サンプルや他の試薬と不本意に混合してしまうことはない。
【0076】
なおバルブ部(S)もバルブ部(B)と同様の構造であってよい。
【0077】
また、図18A〜図18Dに示されるバルブ部(B)とは異なるバルブ部の構造について以下に説明する。第1並びに第2のシート状部材217、218の少なくとも第1の貫通孔(B)221を覆う領域を可撓性材料とし、外部から押圧力を与え、第1のシート状部材217を第1の貫通孔(B)221の表面側の開口部に押し付けることによって、第1の流路(1B1)を閉鎖することができる。また押圧力を開放することにより、第1の流路(1B1)を開放することができる。また、外部から押圧力を与え、第2のシート状部材218を第1の貫通孔(B)221の対向面側の開口部に押し付けることによって、第2の流路(2B)を閉鎖することができる。また押圧力を開放することにより、第2の流路(2B)を開放することができる。すなわち洗浄液チャンバ部(B)に接続する第1の流路(1B1)がバルブの機能を果たす。この場合も式(1)、式(2)若しくは式(3)を満たすようにする。
【0078】
このような外部からの押圧力を利用した流路の開放/閉鎖の制御を、ポンプ部や他のバルブ部の制御と併用することにより、液が意図せざる流路へ流出することを防止することが可能となる。
【0079】
第1の構成のカセットは、核酸サンプルの投入後、閉じた還流流路を形成することが出来るため、検出非対象核酸分子の混入や、核酸サンプルの外部への漏れ出しを防止することができる。また、核酸サンプル、洗浄液などの種類の異なる液体をその種類毎に目的に応じて制御性良く保持、移動させることができる。
【0080】
図16では、サンプル・チャンバ部(S)に接続されている流路にバルブ部(S)が設置されている機能ブロック図を示しているが、サンプル・チャンバ部(S)において、外部から押圧力を与えることにより、上面側流路である第1の流路(1S1)及び下面側流路である第2の流路(2S)を閉鎖することが可能である。即ち、サンプル・チャンバ部(S)そのものがバルブの機能を果たしていることになるので、必ずしも、別途、バルブ部(S)を具備している必要はない。
【0081】
(第2の構成)
図21は第2の構成の核酸検出カセットの機能ブロック図、図22は第2の構成の核酸検出カセットの廃液チャンバ部(W)及びその周辺を示す概略断面図である。
【0082】
図22に示すように、第2の構成の核酸検出セットは、カセット本体に廃液チャンバ部(W)をさらに有している点で、第1の構成と基本的に異なる。廃液チャンバ部(W)は、検出部(D)から排出された前記核酸サンプル等の廃液を受け、保持する。廃液チャンバ部(W)は検出部(D)ポンプ部(P)との間に流路を介して設けられている。廃液チャンバ部(W)、検出部(D)、サンプル・チャンバ部(S)もしくは洗浄液チャンバ部(B)、及びポンプ部(P)は互いに流路によって環状に連通している。また、ポンプ部(P)とサンプル・チャンバ部(S)間の開放/閉鎖を切り替えるバルブ部(S)、及びポンプ部(P)と前記洗浄液チャンバ部(S)間の開放/閉鎖を切り替えるバルブ部(B)が設けられている。
【0083】
検出の方法は、第1の構成と同様の手順であってよい。
【0084】
検出部(D)からポンプ部(P)方向に排出された核酸サンプルや洗浄液などの廃液は、廃液チャンバ部(W)内に流入、保持される。ポンプ部(P)から供給された気体圧力はポンプ部(P)方向に還流する。
【0085】
図22に第2の構成の核酸検出カセットの廃液チャンバ部(W)の周辺の断面概略構造を示す。なお、廃液チャンバ部(W)以外の各部およびその周辺構造は第1の構成と同様であってよい。第1の構成と同一パーツは同一符号にて示している。
【0086】
プレート状部材211に、第1の貫通孔(W)231が設けられている。またプレート状部材211の表面側に第1の溝(W1)232、表面側に第1の溝(W2)233が形成されている。
【0087】
廃液チャンバ部(W)は、前記第1の貫通孔(W1)231が前記第1のシート状部材217並びに第2のシート状部材218によって閉じられることによって定められる。また、表面側の第1の溝(W1)232が前記第1のシート状部材によって覆われることによって上面側流路である第1の流路(1W1)が定められている。表面側の第1の溝(W2)233が第1のシート状部材217によって覆われることによって上面側流路である第1の流路(1W2)が定められている。廃液チャンバ部(W)は、必ずしも、プレート状部材211の貫通孔により構成されている必要はない。プレート状部材211の表面側の凹部を前記第1のシート状部材217によって覆われることによって定められても、プレート状部材211の対向面側の凹部を前記第2のシート状部材218によって覆われることによって定められても良い。
【0088】
廃液チャンバ部(W)には第1の流路(1W1)および第1の流路(1W2)が接続している。
【0089】
廃液の移動は以下のように行われる。
【0090】
廃液チャンバ部(W)では、ポンプ部(P)が供給した気体圧力によって、第1流路(1W1)を通って、検出部(D)からの廃液が流入する。重力によって、廃液は廃液チャンバ部(W)内に保持されるが、気体圧力は、第1流路(1W1)から、第1の流路(1W2)を通ってポンプ部方向に排出される。
【0091】
第2の構成のカセットは、核酸サンプルの投入後は、閉じた還流流路を形成することが出来るため、検出非対象核酸分子の混入や、核酸サンプルの外部への漏れ出しを防止することができる。また、核酸サンプル、洗浄液、廃液をその種類毎に、目的に応じて制御性良く保持、移動させることができる。また、廃液チャンバ部(W)の上部に液体の流入、排出のための流路を形成しているため、液体と気体を分離して、液体のみをチャンバ内に保持し、気体のみを排出することが出来る。
【0092】
本構成には、第1の構成に廃液チャンバを設けた構成を記載したが、その他の構成に本構成の廃液チャンバを設けてもよい。
【0093】
図21では、サンプル・チャンバ部(S)に接続されている流路にバルブ部(S)が設置されている機能ブロック図を示しているが、サンプル・チャンバ部(S)において、外部から押圧力を与えることにより、上面側流路である第1の流路(1S1)及び下面側流路である第2の流路(2S)を閉鎖することが可能である。即ち、サンプル・チャンバ部(S)そのものがバルブの機能を果たしていることになるので、必ずしも、別途、バルブ部(S)を具備している必要はない。
【0094】
また、バルブ部(B)の内部容量に関しては、式(1)、式(2)若しくは式(3)を満たすようにする。
【0095】
(第3の構成)
図23は第3の構成の核酸検出カセットの機能ブロック図、図24A及び図24Bは第3の構成の核酸検出カセットの挿入剤チャンバ部(I)及びその周辺を示す概略断面図である。 図23A示すように、第3の構成の核酸検出カセットは、カセット本体に挿入剤チャンバ部(I)をさらに有している点で第2の構成と基本的に異なる。
【0096】
挿入剤チャンバ部(I)には、挿入剤溶液が保持されている。挿入剤溶液は、検出部(D)のDNAチップにて核酸サンプルと核酸プローブとのハイブリダイゼーションを電気化学的検出法にて検出する場合に用いられる。挿入剤は2本鎖核酸と特異的に結合する性質を有すると共に、電気化学的な酸化還元反応を生じる物質である。電気化学的検出法は、核酸サンプルと核酸プローブのハイブリダイゼーション反応後に、挿入剤溶液を供給する。2本鎖核酸に結合した挿入剤から電気化学的信号を検出することで、標的核酸の存在を検出することができる。
【0097】
挿入剤チャンバ部(I)の追加に伴い、このカセットに、ポンプ部(P)とサンプル・チャンバ部(S)との間の流路から分岐する流路と、この流路に接続する挿入剤チャンバ部(I)と、挿入剤チャンバ部(I)に接続し、サンプル・チャンバ部(S)と検出部(D)との間の流路もしくは洗浄液チャンバ部(B)と検出部(D)との間の流路に合流点(BI)にて合流する流路を有する。また、このカセットは、ポンプ部(P)と挿入剤チャンバ部(I)間の開放/閉鎖を切り替えるバルブ部(I)を有する。
【0098】
ポンプ部(P)と、サンプル・チャンバ部(D)若しくは洗浄液チャンバ部(B)もしくは挿入剤チャンバ部(I)と、検出部(D)は、互いに流路によって環状に連通している。
【0099】
検出の際には、まず、第1の構成と同様の手順で、サンプル・チャンバ部(S)から検出部(D)に核酸サンプルが供給され、核酸サンプルが核酸プローブとハイブリダイゼーション反応し、核酸サンプルが検出部(D)から排出される。このときバルブ部(I)は閉鎖されている。
【0100】
次に第1の構成と同様の手順で、洗浄液チャンバ部(B)から検出部(D)に洗浄液が供給されて、例えばDNAチップ上を洗浄し、洗浄液は検出部(D)から排出される。このときバルブ部(I)は閉鎖されている。
【0101】
次に、挿入剤溶液が挿入剤チャンバ部(I)から検出部(D)に供給される。このときバルブ部(S)およびバルブ部(B)は閉鎖、バルブ部(I)は開放されている。またポンプ部(P)から流路を通じて挿入剤チャンバ部(I)に気体圧力が与えられる。供給された挿入剤はDNAチップ上の2本鎖核酸に結合する。
【0102】
次に検出部(D)でのハイブリダイゼーション反応を電気化学的検出方法にて検出することにより核酸サンプル中の標的核酸の存在を検出する。
【0103】
最終的には、検出部(D)から排出された核酸サンプル、洗浄液は廃液チャンバ部(W)に排出される。ポンプ部(P)から供給された気体圧力は、検出部(D)から廃液チャンバ部(W)を通ってポンプ部(P)方向に還流する。
【0104】
図24A、図24Bに第3の構成の核酸検出カセットのバルブ部(I)及び挿入剤チャンバ部(I)周辺の断面概略構造を示す。なお、バルブ部(I)及び挿入剤チャンバ部(I)以外の各部およびその周辺構造は第1の構成及び第2の構造と同様であってよい。第1及び第2の構成と同一パーツは同一符号にて示している。
【0105】
プレート状部材211に、第1の貫通孔(I)241、第2の貫通孔(I)242、表面側に第1の溝(I1)243と、表面側に第1の溝(I2)244、及び対向面に第2の溝(I)245が設けられている。
【0106】
挿入剤チャンバ部(I)は前記第1の貫通孔(I)241が前記第1並びに第2のシート状部材217、218によって閉じられることによって定められる。表面側の第1の溝(I1)243が第1のシート状部材217によって覆われることによって上面側流路である第1の流路(1I1)が定められる。表面側の第1の溝(I2)244が第1のシート状部材217によって覆われることによって上面側流路である第1の流路(1I2)が定められる。対向面側の前記第2の溝(I)245が前記第2のシート状部材218によって覆われることによって下面側流路である第2の流路(2I)が定められる。また、第2の貫通孔(I)242が前記第1のシート状部材217及び前記第2のシート状部材218によって覆われることによって貫通孔流路である第3の流路(3I)が定められる。
【0107】
図24Aに示すように第3の流路(3B)の断面積は流路方向に沿って均一であってもよいし、図24Bに示すように、表面側で、断面積が途中から大きくなっていてもよい。図24Bに示すように表面側で断面積が大きくなる流路構造とすることにより、チャンバ内に保持していた挿入剤が流路の毛細管現象により、チャンバ外に流出してしまうような意図しない現象を防止することができる。
【0108】
挿入剤チャンバ部(I)は、必ずしも、プレート状部材211の貫通孔により構成されている必要はない。プレート状部材211の表面側の凹部を前記第1のシート状部材217によって覆われることによって定められても、プレート状部材211の対向面側の凹部を前記第2のシート状部材218によって覆われることによって定められても良い。
【0109】
挿入剤チャンバ部(I)には第1の流路(1I1)及び第2の流路(2I)が接続している。第2の流路(2I)には第3の流路(3I)が接続している。第3の流路(3I)には第1の流路(1I2)が接続している。また、第1の流路(1I1)はバルブ部(I)に通じている。第1の流路(1I2)は合流点(BI)に通じている。
【0110】
第1の流路(1I1)に連通する流路途中には各々流路の開放/閉鎖を切り替えるバルブ部(I)247が設けられている。(バルブ部(I)の構造については後述する。)
挿入剤の移動は以下のように行われる。
【0111】
挿入剤チャンバ部(I)に予め挿入剤溶液が保持されている。このときバルブ部(I)は閉鎖している。
【0112】
次にバルブ部(S)、バルブ部(B)は閉鎖、バルブ部(I)を開放し、ポンプ部(P)からの気体圧力が、第1の流路(1I1)を通って挿入剤チャンバ部(I)に与えられる。挿入剤溶液は第2の流路(2I)、第3の流路(3I)及び第1の流路(1I2)を経由して吐出され、検出部(D)に供給される。
【0113】
上記のようにて、ポンプ部(P)からの気体圧力を与えるタイミングと、バルブ部(S),(B),(I)の開放/閉鎖のタイミングを調整することで、核酸サンプル、洗浄液、挿入剤溶液供給のタイミングを制御することが出来る。
【0114】
図24A、図24Bに示されるバルブ部(I)247について説明する。
【0115】
プレート状部材211に、第1の貫通孔(IV)251、第2の貫通孔(IV)252、表面側に第1の溝(IV1)253と、 表面側に第1の溝(IV2)254、及び裏面側に第2の溝(IV)255が設けられている。
【0116】
第1並びに第2のシート状部材217、218の少なくとも第1の貫通孔(IV)251を覆う領域は可撓性材料にて形成されている。第1のシート状部材217と、第2のシート状部材218全体が可撓性材料にて形成されていてもよい。
【0117】
第1の貫通孔(IV)251が前記第1並びに第2のシート状部材217、218によって閉じられることによって流路(IV)が定められる。また表面側の第1の溝(IV1)253が第1のシート状部材217によって覆われることにより上面側流路である第1の流路(1IV1)が定められる。表面側の第1の溝(IV2)254が前記第1のシート状部材217によって覆われることによって上面側流路である第1の流路(1IV2)が定められる。対向面側の第2の溝(IV)255が前記第2のシート状部材218によって覆われることによって下面側流路である第2の流路(2IV)が定められる。また、第2の貫通孔(IV)252が前記第1のシート状部材217及び第2のシート状部材218によって覆われることによって貫通流路である第3の流路(3IV)が定められる。
【0118】
流路(IV)には第1の流路(1IV1)及び第2の流路(2IV)が接続している。第2の流路(2IV)には第3の流路(3IV)が接続している。第3の流路(3IV)には第1の流路(1IV2)が接続している。また、第1の流路(1IV1)はポンプ部(P)に通じている。第1の流路(1IV2)は第1の流路(1I1)と接続しており、これらは同一の流路であってよい。第1の流路(1IV2)は挿入剤チャンバ部(I)に通じている。よって一連の第1の流路(1IV1)−流路(BV)−第2の流路(2IV)−第3の流路(3IV)―第1の流路(1IV2)はポンプ部(P)−挿入剤溶液チャンバ(I)間流路の一部をなしている。
ポンプ部(P)−挿入剤溶液チャンバ(I)間流路に設けられたバルブ部(I)247とは、シート状部材217で覆われた流路(IV)の表面側開口部付近の空間(以下、「第1の空間」(図面上では247で示す。)とする。)がこれに相当する。
【0119】
バルブ部(I)247を閉鎖、すなわちポンプ部(P)−挿入剤溶液チャンバ(I)間流路を閉鎖するには、流路(IV)の開口部上の第1のシート状部材217に対し、外部からプッシャ256にて押圧力を付与して、第1のシート状部材217をプレート部材221の流路(IV)の開口部に押し付けることにより行う。シート状部材217をプレート部材221の開口部に押し付けることにより、押し付ける前に比べて減少する流路(IV)の容積を第1の空間247の容積、即ちバルブ部(I)の容積とする。この押圧力の付与により第1の空間247の容積が封鎖され、バルブ部(I)247が閉鎖する。
【0120】
またバルブ部(I)を開放、すなわちポンプ部(P)−挿入剤溶液チャンバ(I)間流路を開放するには、この押圧力を開放し、シート状部材217のこの押し付けを開放されることにより行う。これにより第1の空間247の容積が確保される。
【0121】
流路(IV)251の開口端、即ち外部からプッシャ256が押し付けられる部分には、図に示すようにテーパー状であってもよいし、テーパー状でなくとも良い。テーパー状であることが望ましい。それによりプッシャ256との接触面積を増やし、バルブの封止力を向上させることが出来る。
【0122】
バルブ部(I)の容積は、第1の貫通孔(IV)251の径を大きくし、テーパーを深くすることによって大きな容積としても良いし、径を小さくし、テーパーを浅くすることによって小さな容積にしても良い。しかしながら、バルブ部(I)の容積は適切な容積を有している必要がある。
【0123】
バルブ部(I)247の容積について以下に説明する。図24C、図24Dは、図24Aと同様な構造の挿入剤チャンバ(I)挿入剤溶液が保持された状態を示す図である。図24A〜図24Dは一部を除き同一構造であるため、同一のパーツは同一符号にて示している。
【0124】
図24C、24Eに示すようにバルブ部(I)256は開放された状態で、挿入剤チャンバ(I)に液体が保持されているとする。この状態から図24D、24Fに示すように、プッシャ256による押圧力が第1のシート217に付与されバルブ部(I)247が閉鎖したときには、プッシャ256により押された分、核酸検出カセット100内の容積が圧縮される。その圧力は、第1の流路(1I1)を通って挿入剤チャンバ部(I)に与えられる。そして挿入剤溶液の液面に圧力がかかり、第2の流路(2I)から挿入剤溶液が、挿入剤チャンバ部(I)から流出する方向に移動する。このとき、バルブ部(I)の容積が大きすぎ、プッシャ256により押される容積が大きすぎると、大きな圧力がかかり、第2の流路(2I)から挿入剤溶液が、挿入剤チャンバ部(I)から流出し、核酸サンプルや他の試薬と不本意に混合してしまうことになる。したがってバルブ部(I)247の容積を適切にする必要がある。
【0125】
ここでバルブ部(I)247の容積、すなわちシート状部材217をプレート部材221の開口部に押し付けることにより減少する流路(IV)の容積をViとする。また、挿入剤チャンバ部(I)からの挿入剤流出路である、第2の流路(2I)の容積をV2i、第3の流路(3I)の容積をV3i、更に接続されている第1の流路(1I2)のサンプル・チャンバ部−検出部間流路との合流点もしくは洗浄液チャンバ部−検出部間流路との合流点のうち、挿入剤チャンバ部(I)までの容積が小さい合流点(I)までの容積をV1i2とする。
【0126】
プッシャ256による押圧力が第1のシート217に付与されバルブ部(I)が閉鎖したときには、核酸検出カセット100内の容積は、Vi圧縮される。その圧力は、第1の流路(1I1)を通って挿入剤チャンバ部(I)に与えられる。挿入剤チャンバ部(I)に予め挿入剤が保持されている場合には、挿入剤の液面に圧力がかかり、第2の流路(2I)から最大でViの体積の挿入剤が、挿入剤チャンバ部(I)から流出することになる。第2の流路(2I)、第3の流路(3I)及び第1の流路(1I2)が撥水性処理されており、挿入剤チャンバ部(I)に圧力が印加されていない状態で、第2の流路(2I)に挿入剤が侵入していない場合には、
Vi < V2i + V3i + V1i2・・・式(4)
であれば、バルブ部(I)が動作した際に、挿入剤が合流点(I)を超えて流出し、核酸サンプルや他の試薬と不本意に混合してしまうことはない。
【0127】
図24Bに示すように、第3の流路(3I)の断面積が途中で大きくなっている場合、第2の流路(2I)に接続されている側の容積をV3i1、第1の流路(1I2)に接続されている側の容積をV3i2とすると、
V3i = V3i1 + V3i2
の下で、
Vi < V3i2 + V1i2・・・・式(5)
が成り立っていれば、たとえ、流路が撥水性処理されておらず、挿入剤が毛細管現象により、第3の流路の断面積が大きくなる境界部分まで予め流出していたとしても、バルブ部(I)が動作した際に、挿入剤が合流点(I)を超えて流出し、核酸サンプルや他の試薬と不本意に混合してしまうことはない。
【0128】
また、さらに望ましくは、
Vi < V1i2・・・・式(6)
が成り立っていれば、挿入剤が毛細管現象によって、挿入剤チャンバ部(I)から、第3の流路(3I)を満たすまで予め流出していても、バルブ部(I)が動作した際に、挿入剤が合流点(I)を超えて流出し、核酸サンプルや他の試薬と不本意に混合してしまうことはない。
【0129】
なお、また、図24A〜図24Fに示されるバルブ部(I)とは異なるバルブ部の構造を以下に示す。第1並びに第2のシート状部材217、218の少なくとも第1の貫通孔(I)241を覆う領域を可撓性材料とし、外部から押圧力を与え、第1のシート状部材217を第1の貫通孔(I)241の表面側の開口部に押し付けることによって、第1の流路(1I1)を閉鎖することができる。また押圧力を開放することにより、第1の流路(1I1)を開放することができる。また、外部から押圧力を与え、第2のシート状部材218を第1の貫通孔(I)241の対向面側の開口部に押し付けることによって、第2の流路(2I)を閉鎖することができる。また押圧力を開放することにより、第2の流路(2I)を開放することができる。すなわち挿入剤チャンバ部(I)に接続する第1の流路(1I1)そのものがバルブの機能を果たす。この場合も式(4)、式(5)若しくは式(6)を満たすようにする。
【0130】
このような外部からの押圧力を利用した流路の開放/閉鎖の制御を、ポンプ部やバルブ部の制御と併用することにより、液が意図せざる流路へ流出することを防止することが可能となる。
【0131】
第3の構成のカセットは、核酸サンプルの投入後は、閉じた還流流路を形成することが出来るため、検出非対象核酸分子の混入や、核酸サンプルの外部への漏れ出しを防止することができる。また、核酸サンプル、洗浄液、挿入剤溶液などの種類の異なる液体をその種類毎に目的に応じて制御性良く移動させることができる。
【0132】
図23では、サンプル・チャンバ部(S)に接続されている流路にバルブ部(S)が設置されている機能ブロック図を示しているが、サンプル・チャンバ部(S)において、外部から押圧力を与えることにより、上面側流路である第1の流路(1S1)及び下面側流路である第2の流路(2S)を閉鎖することが可能である。即ち、サンプル・チャンバ部(S)そのものがバルブの機能を果たしていることになるので、必ずしも、別途、バルブ部(S)を具備している必要はない。
【0133】
(第4の構成)
図25は第4の構成の核酸検出カセットの機能ブロック図、図26Aは第4の構成の核酸検出カセットのサンプル・チャンバ部(S)、増幅チャンバ部(A)及びその周辺を示す概略断面図、図26Bは、増幅チャンバ部(A)の、図26Aとは異なる方向での断面図、図27Aは試料保持チャンバ部(M)及びその周辺を示す概略断面図、図27Bは試料保持チャンバ部(M)の図27Aとは異なる方向での断面図である。
【0134】
図25に示すように、第4の構成の核酸検出カセットは、カセット本体に増幅チャンバ部(A)及び試料保持チャンバ部(M)をさらに有している点で第2の構成と基本的に異なる。
【0135】
増幅チャンバ部(A)は、プライマーやバッファといった核酸サンプルの増幅を行なう試薬があらかじめ保持されている。サンプル・チャンバ部(S)では、投入された核酸サンプルに対して、核酸抽出などの前処理を行い、増幅チャンバ部(A)にて必要な領域の核酸増幅反応を行なうようにしても良い。 試料保持チャンバ部(M)は、検出部(D)での検出のために核酸サンプルの塩濃度を調製するバッファなどの試薬があらかじめ保持されていてもよい。
【0136】
増幅チャンバ部(A)及び試料保持チャンバ部(M)は、サンプル・チャンバ部(S)と検出部(D)との間に流路を介して設けられている。ポンプ部(P)と、サンプル・チャンバ部(S)と、増幅チャンバ部(A)と、試料保持チャンバ部(M)と検出部(D)は、互いに流路によって環状に連通している。さらに、増幅チャンバ部(A)から、検出部(D)とポンプ部(P)間の流路に合流点(A)にて合流するバイパス流路(A)(還流流路)及びこのバイパス流路(A)の開放/閉鎖を切り替えるバルブ部(A)が設けられている。さらに、試料保持チャンバ部(M)から、検出部(D)と合流点(A)との間の流路に合流点(M)にて合流するバイパス流路(M)(還流流路)及びこのバイパス流路(M)の開放/閉鎖を切り替えるバルブ部(M)が設けられている。また、検出部(D)と合流点(M)との間の流路の開放/閉鎖を切り替えるバルブ部(D)が設けられている。
【0137】
検出は、以下のように行われる。
【0138】
まず、第1の構成と同様の手順で、サンプル・チャンバ部(S)に設けられた投入孔から核酸サンプルが投入される。次にサンプル・チャンバ部(S)から核酸サンプルが吐出される。このときバルブ部(B)は閉鎖、バルブ部(A)は開放、バルブ部(M)、(D)は閉鎖しておく。吐出された核酸サンプルは、流路を通じて増幅チャンバ部(A)に供給される。このとき液体の核酸サンプルのみが増幅チャンバ部(A)に残り、ポンプ部(P)から供給された気体圧力のみがバイパス経路(A)を通ってポンプ部(P)方向に還流する。
【0139】
次に、増幅チャンバ部(A)にて核酸サンプルの増幅が行われる。
【0140】
次に、バルブ部(A)を閉鎖、バルブ部(M)を開放、バルブ部(D)を閉鎖し、ポンプ部(P)が供給した気体圧力が増幅チャンバ部(A)に与えられることによって、核酸サンプルは増幅チャンバ部(A)から核酸サンプルが吐出される。吐出された核酸サンプルは、流路を通じて試料保持チャンバ部(M)に供給される。このとき液体の核酸サンプルのみが試料保持チャンバ部(M)に残り、ポンプ部(P)から供給された気体圧力のみがバイパス経路(M)を通ってポンプ部(P)方向に還流する。
【0141】
次に、試料保持チャンバ部(M)にてバッファとの混合が行われる。
【0142】
次に、バルブ部(A)を閉鎖、バルブ部(M)を閉鎖、バルブ部(D)を開放し、ポンプ部(P)が供給した気体圧力が保持チャンバ部(M)に与えられることによって、核酸サンプルは検出部(D)に供給される。
【0143】
次に第1の構成と同様に、検出部(D)にて標的核酸の存在を検出する。
【0144】
廃液を検出部(D)から排出する際は、バルブ部(A)は閉鎖、バルブ部(D)は開放し、ポンプ部(P)から検出部(D)に気体圧力が与えられる。最終的に、廃液及びポンプ部(P)から供給された気体圧力は、ポンプ部(P)方向に還流する。
【0145】
図26A及び図26Bで増幅チャンバ部(A)及び試料保持チャンバ部(M)以外の各部およびその周辺構造は第2の構成と同様であってよい。第2の構成と同一パーツは同一符号にて示している。
【0146】
サンプル・チャンバ部(S)、第1の流路(1S1、1S2)、第2の流路(2S)、及び第3の流路(3S)の構造、検出部(D)の構造は第1の構成と同等である。
【0147】
さらにプレート状部材211には、第1の貫通孔(A)251、第2の貫通孔(A)252が設けられている。さらに表面側に第1の溝(A1)253が設けられている。第1の溝(A1)253は、第1の溝(S2)215と連通して設けられる。これらは同一の溝であってよい。さらに表面側に形成された第1の溝(A2)254及び対向面に第2の溝(A)255が設けられている。さらに、表面側に第1の溝(A3)258が設けられている。
【0148】
このプレート状部材211の表面及び対向面は、第1のシート状部材217並びに第2のシート状部材218にて覆われている。第1並びに第2のシート状部材217、218の少なくとも第1の貫通孔(A)251を覆う領域256、257は可撓性材料にて形成されている。
【0149】
増幅チャンバ部(A)は前記第1の貫通孔(A)251が前記第1並びに第2のシート状部材217、218によって閉じられることによって定められる。表面側の第1の溝(A1)253が第1のシート状部材217によって覆われることによって上面側流路である第1の流路(1A1)が定められる。これは第1の流路(1S2)と連続した流路であり、同一の流路であっても良い。表面側の第1の溝(A2)254が第1のシート状部材217によって覆われることによって上面側流路である第1の流路(1A2)が定められる。表面側の第1の溝(A3)258が、第1のシート状部材217によって覆われることによって上面側流路である第1の流路(1A3)が定められる。対向面側の前記第2の溝(A)255が前記第2のシート状部材218によって覆われることによって下面側流路である第2の流路(2A)が定められる。また、第2の貫通孔(A)252が前記第1のシート状部材217及び前記第2のシート状部材218によって覆われることによって貫通孔流路である第3の流路(3A)が定められる。
【0150】
増幅チャンバ部(A)には第1の流路(1A1、1A3)及び第2の流路(2A)、が接続している。第2の流路(2A)には第3の流路(3A)が接続している。第3の流路(3A)には第1の流路(1A2)が接続している。また、第1の流路(1A1)はポンプ部(P)に通じている。第1の流路(1A2)は検出部(D)に通じている。第1の流路(1A3)は検出部(D)からポンプ部(P)にいたる流路中に合流点(A)にて合流するバイパス流路(A)(還流流路)である。
【0151】
第1の流路(1A3)途中にはバイパス流路(A)の開放/閉鎖を切り替えるバルブ部(A)が設けられている。第1のシート状部材217の、第1の流路(1A3)251の少なくとも一部(バルブ部(A)に相当)を覆う領域は可撓性材料にて形成されている。バルブ部(A)を閉鎖するには、第1の流路(1A3)を覆う第1のシート状部材217に対し、外部から押圧力を付与し、第1のシート状部材217を第1の溝(A3)258に押し付けることにより行うことができる。またバルブ部(A)を開放するにはこの押圧力を開放することにより行う。
【0152】
図27A及び図27Bで増幅チャンバ部(A)と試料保持チャンバ部(M)以外の各部およびその周辺構造は第3の構成と同様であってよい。第3の構成と同一パーツは同一符号にて示している。
【0153】
サンプル・チャンバ部(S)、第1の流路(1S1、1S2)、第2の流路(2S)、及び第3の流路(3S)の構造、増幅チャンバ部(A)の構造、第1の流路(1A1、1A2、1A3)、第2の流路(2A)、及び第3の流路(3A)の構造、検出部(D)及びその周辺の構造は第3の構成と同等である。
【0154】
さらにプレート状部材211には、第1の貫通孔(M)261、第2の貫通孔(M)262が設けられている。さらに表面側に第1の溝(M1)263が設けられている。第1の溝(M1)263は、第1の溝(A2)254と連通して設けられる。これらは同一の溝であってよい。さらに表面側に形成された第1の溝(M2)264及び対向面に第2の溝(M)265が設けられている。さらに、表面側に第1の溝(M3)268が設けられている。
【0155】
試料保持チャンバ部(M)は前記第1の貫通孔(M)251が前記第1並びに第2のシート状部材217、218によって閉じられることによって定められる。表面側の第1の溝(M1)263が第1のシート状部材217によって覆われることによって上面側流路である第1の流路(1M1)が定められる。これは第1の流路(1A2)と連通した流路であり、同一の流路であっても良い。表面側の第1の溝(M2)264が第1のシート状部材217によって覆われることによって上面側流路である第1の流路(1M2)が定められる。表面側の第1の溝(M3)268が、第1のシート状部材217によって覆われることによって第1の流路(1M3)が定められる。対向面側の前記第2の溝(M)265が前記第2のシート状部材218によって覆われることによって下面側流路である第2の流路(2M)が定められる。また、第2の貫通孔(M)262が前記第1のシート状部材217及び前記第2のシート状部材218によって覆われることによって貫通孔流路である第3の流路(3M)が定められる。ここで、試料保持チャンバ部(M)は、必ずしも、プレート状部材211の貫通孔により構成されている必要はない。プレート状部材211の表面側の凹部を前記第1のシート状部材217によって覆われることによって定められても、プレート状部材211の対向面側の凹部を前記第2のシート状部材218によって覆われることによって定められても良い。
【0156】
試料保持チャンバ部(M)には第1の流路(1M1、1M3)及び第2の流路(2M)、が接続している。第2の流路(2M)には第3の流路(3M)が接続している。第3の流路(3M)には第1の流路(1M2)が接続している。また、第1の流路(1M1)は増幅チャンバ(A)に通じている。第1の流路(1M2)は検出部(D)に通じている。また、試料保持チャンバ部(M)には第1の流路(1M3)が接続している。第1の流路(1M3)は検出部(D)からポンプ部(P)にいたる流路中に合流点(M)にて合流するバイパス流路(M)(還流流路)である。
【0157】
第1の流路(1M3)途中にはバイパス流路(M)の開放/閉鎖を切り替えるバルブ部(M)が設けられている。第1のシート状部材217の、第1の流路(1M3)の少なくとも一部(バルブ部(M)に相当)を覆う領域は可撓性材料にて形成されている。バルブ部(M)を閉鎖するには、第1の流路(1M3)を覆う第1のシート状部材217に対し、外部から押圧力を付与し、第1のシート状部材217を第1の溝(M3)268に押し付けることにより行うことができる。またバルブ部(M)を開放するにはこの押圧力を開放することにより行う。
【0158】
また、検出部(D)から合流点(M)に至る流路途中には検出部(D)から合流点(M)間の流路の開放/閉鎖を切り替えるバルブ部(D)が設けられている。第1のシート状部材217の、第1の流路(1D2)の少なくとも一部(バルブ部(D)に相当)を覆う領域は可撓性材料にて形成されている。バルブ部(D)の切り替えは、バルブ部(M)と同様、第1の流路(1D2)を覆う第1のシート状部材217に対し、外部から押圧力の付与/開放することにより行うことができる。
【0159】
また、外部から押圧力を与え、第1のシート状部材217の第1の貫通孔(A)251を覆う領域256を、第1の貫通孔(A)251の表面側の開口部に押し付けることによって増幅チャンバ部(A)と、第1の流路(1A1)、(1A3)の間の接続が阻止される。また外部から与えた押圧力を開放することにより、増幅チャンバ部(A)と、第1の流路(1A1)、(1A3)の間が接続する。
【0160】
また、外部から圧力を与え、第2のシート状部材218の第1の貫通孔(A)251を覆う領域257を、第1の貫通孔(A)251の対向面側の開口部に押し付けることによって増幅チャンバ部(A)と、第2の流路(2A)の間の接続が阻止される。また外部から与えた圧力を開放することにより、増幅チャンバ部(A)と、第2の流路(2A)の間が接続する。外部からサンプル・チャンバ部(S)、増幅チャンバ部(A)を覆う第1並びに第2のシート状部材に圧力を与えるタイミングと、ポンプ部(P)からの気体圧力を与えるタイミングと、バルブ部(A),(D)の開放/閉鎖のタイミングを調整することで、核酸サンプル移動のタイミングを制御することが出来る。また、サンプル・チャンバ部(S)と同様、外部から圧力を与える際の加圧部材として発熱体を使用することによって増幅チャンバ中の加熱処理を行うことも可能である。
【0161】
核酸サンプルの移動は以下のように行われる。
【0162】
サンプル・チャンバ部(S)に設けられた投入孔から核酸サンプルが投入される。このとき外部から押圧力を与え、第2のシート状部材218をサンプル・チャンバ部(S)に押し付けることによって、第2の流路(2S)が閉鎖されている。核酸サンプル投入後は、投入孔は封止する。封止後、さらに外部から押圧力を与え、第1のシート状部材217をサンプル・チャンバ部(S)に押し付けて、第1の流路(1S1)を閉鎖する。このとき第1、第2のシート状部材に圧力を与える加圧部材として発熱体を使用し、上下からサンプル・チャンバ部(S)を加熱してもよい。
【0163】
次に第1、第2のシート状部材217、218への押圧力を開放することによって、第1の流路(1S1)及び第2の流路(2S)を開放する。第1の流路(1S1)からポンプ部(P)が供給した気体圧力が与えられることによって、核酸サンプルは、第2の流路(2S)、第3の流路(3S)及び第1の流路(1S2)を経由して吐出される。このときバルブ部(A)を開放、バルブ部(D)は閉鎖しておく。
【0164】
核酸サンプルは、第1の流路(1S2=1A1)から増幅チャンバ部(A)に供給される。この時、増幅チャンバ部(A)には第2のシート状部材218が押し付けられることによって、第2の流路(2A)が封鎖されている。気体圧力は第1の流路(1A3)からバイパス流路(A)を経由し、ポンプ部(P)方向に還流する。液体の核酸サンプルのみ、重力によって増幅チャンバ部(A)内に流入する。
【0165】
次に増幅チャンバ部(A)に第1のシート状部材217を押し付け、第1の流路(1A1、1A3)を封鎖する。シート状部材に圧力を与える加圧部材として発熱体を使用し、上下から増幅チャンバ部(A)を加熱することにより、核酸増幅が行われる。
【0166】
次にバルブ部(A)を閉鎖し、バルブ部(M)を開放する。第1、第2のシート状部材217、218の増幅チャンバ部(A)に対する押し付け力を開放し、第1の流路(1A1,1A3)、第2の流路(2A)を開放する。またさらにポンプ部(P)からの気体圧力を第1の経路(1A1)から増幅チャンバ部(A)に与えることにより、増幅チャンバ部(A)に保持されている核酸サンプルは、第2の流路(2A)から、第3の流路(3A)、第1の流路(1A2)に吐出され、試料保持チャンバ部(M)に供給される。
【0167】
核酸サンプルは、第1の流路(1A2=1M1)から試料保持チャンバ部(M)に供給される。気体圧力は第1の流路(1M3)からバイパス流路(M)を経由し、ポンプ部(P)方向に還流する。液体の核酸サンプルのみ、重力によって試料保持チャンバ部(M)内に流入する。流入した核酸サンプルは試薬と混合する。
【0168】
次にバルブ部(M)を閉鎖し、バルブ部(D)を開放する。さらにポンプ部(P)からの気体圧力を第1の経路(1M1)から試料保持チャンバ部(M)に与えることにより、試料保持チャンバ部(M)に保持されている核酸サンプルは、第2の流路(2M)から、第3の流路(3M)、第1の流路(1M2)に吐出され、検出部(D)に供給される。
【0169】
第1並びに第2のシート状部材217、218の少なくとも第1の貫通孔(M)261を覆う領域266、267は可撓性材料にて形成してもよいし、しなくとも良い。
【0170】
この場合、外部から押圧力を与え、第1のシート状部材217の第1の貫通孔(M)261を覆う領域266を、第1の貫通孔(M)261の表面側の開口部に押し付けることによって試料保持チャンバ部(M)と、第1の流路(1M1)、(1M3)の間の接続が阻止される。また外部から与えた押圧力を開放することにより、増幅チャンバ部(M)と、第1の流路(1M1)、(1M3)の間が接続する。
【0171】
また、外部から圧力を与え、第2のシート状部材218の第1の貫通孔(M)261を覆う領域267を、第1の貫通孔(M)261の対向面側の開口部に押し付けることによって保持チャンバ部(M)と、第2の流路(2M)の間の接続が阻止される。また外部から与えた圧力を開放することにより、試料保持チャンバ部(M)と、第2の流路(2M)の間が接続する。外部からサンプル・チャンバ部(S)、増幅チャンバ部(A)、試料保持チャンバ部(M)を覆う第1並びに第2のシート状部材に圧力を与えるタイミングと、ポンプ部(P)からの気体圧力を与えるタイミングと、バルブ部(A),(M)、(D)の開放/閉鎖のタイミングを調整することで、核酸サンプル移動のタイミングを制御することが出来る。
【0172】
このような構成にすることにより、核酸サンプルの投入後は、閉じた還流流路を形成することが出来るため、検出非対象核酸分子の混入や、核酸サンプルの外部への漏れ出しを防止することができる。また、増幅前の核酸サンプル、増幅後の核酸サンプルなど種類の異なる液体をその種類毎に目的に応じて制御性良く移動させることができる。
【0173】
(変形例)
第4の構成には、第2の構成に増幅チャンバ部(A)及び試料保持チャンバ部(M)を設けた構成を記載したが、更に、第3の構成で記載した挿入剤チャンバ部(I)が分岐した流路及びバルブ部と共に設けられていてもよい(図28)。
【0174】
図25に示すようにバイパス流路(A)もしくは(M)が廃液チャンバ部(W)に接続していてもよいし、廃液チャンバ部(W)を、合流点(A)からポンプ部(P)に至る流路上あるいは、合流点(M)からポンプ部(P)に至る流路上に設けてもよいことを説明したが、また、その構成にさらに投入された核酸サンプルに対し複数の異なる条件で増幅するために、増幅チャンバ部(A)を複数設けてもよい。その場合サンプル・チャンバ部(S)から検出部(D)に至る流路が、複数に分岐し、各々分岐した流路に増幅チャンバ部(A)が設けられ、再びそれらの流路を合流させ、検出部(D)に至るようしてもよい(図29)。
【0175】
また、その構成において廃液チャンバ部(W)を合流点(A)からポンプ部(P)に至る流路上に設けてもよい。この場合増幅チャンバ部(A)、試料保持チャンバ部(M)、検出部(D)からの流路を合流させてから廃液チャンバ部(W)に連結していてよい(図30)。
【0176】
(第1の実施形態)
以下に、図29にその機能ブロック図を示した核酸検出カセットの構造例を示す。
【0177】
図2及び図3は、図29に機能ブロック図、図1に概略斜視図を示した核酸検出カセット100を概略的に透視して示す透視上面図及び下面図である。図2及び図3において、上面から下面に貫通する貫通孔は、チャンバに定められ、全て実線で示されている。図2においては、上面側に形成される流路(第1の流路)は実線で示され、下面側に形成される流路(第2の流路)は破線で示されている。また貫通孔による流路(第3の流路)同様に、図3においては、下面側に形成される流路は実線で示され、上面側に形成される流路は破線で示されている。後に説明されるように、サンプル、洗浄液、或いは、挿入剤は、必ず対応するチャンバに直接連通する下面側流路から流れ出し、他のチャンバ或いは検出部には、必ず上面側流路から吐出される。従って、気体圧力が与えられていない工程では、サンプル、洗浄液、或いは、挿入剤は、対応するチャンバの下面側又は下面側流路に留められる。
【0178】
この核酸検出カセット100は、核酸サンプルを注入する為のサンプル・チャンバ部(S)11を備えている。可撓性シート2には、サンプル・チャンバ部(S)11に相当する位置401が開放されており、その開放口401から、核酸サンプルを注入し、その後に、シール等402により密閉する。ここで、図1では、シール402は、別部品として図示されているが、検出カセット100と一部接続されており、一部分一体構成となっていると、開放口401とシール402の位置決めの確実性の観点からも好ましい。このサンプル・チャンバ部(S)11は、上面側流路(1S1)を介してバルブ部(S)17aに接続され、このバルブ17a(S)は、上面側流路を介してポンプ部(P)16に接続されている。次に、サンプル・チャンバ部(S)11が開放、バルブ17aによりポンプ部(P)−廃液チャンバ部(W)間を閉鎖、バルブ部17cにより、ポンプ部(P)−洗浄液チャンバ部(B)間を閉鎖、バルブ部15bによりポンプ部(P)−挿入剤チャンバ(I)間を閉鎖、バルブ部(M)17e及びバルブ部(D)17fを閉鎖、増幅チャンバ部(A)12a、12b、12cの下面側流路(2A)を閉鎖、バルブ部(A)17dを開放した状態で、ポンプ部(P)16が動作すると、サンプル・チャンバ部(S)11内のサンプルに圧力が加えられて、それぞれ増幅チャンバ部(A)12a、12b、12cに連通されているサンプル・チャンバ部(S)11の下面側流路(2S)に3分割されて流出する。
【0179】
この3つのサンプルは、夫々下面側流路(2S)から貫通路(3S)を介して上面側流路(1S2)に戻され、上面側流路(1A1)を介して増幅チャンバ12a〜12cに供給される。増幅チャンバ部(A)が複数設けられているのは、同一のサンプルを異なる条件の増幅するためである。増幅チャンバ部(A)数は、3に限らず1以上であればよい良い。増幅チャンバ部(A)12a〜12cは、夫々上面側流路(1A3)を介してバルブ部(A)17dに連通されている。このバルブ部(A)17dが開放されている状態では、増幅チャンバ部(A)12a〜12cに供給された気体圧力は、このバルブ部(A)17dを介して廃液チャンバ部(W)18に排気され、液体である核酸サンプルのみが重力に従って、増幅チャンバ部(A)内に供給される。更に、増幅チャンバ部(A)12a〜12cの各々の上面側流路(1A1、1A3)を閉鎖し、各増幅チャンバ部(A)をそれぞれ密閉した状態で、増幅チャンバ部(A)12a〜12cでは、3つのサンプルがそれぞれ核酸増幅される。次に、バルブ部(A)17dを閉鎖、増幅チャンバ部(A)12aの上面側流路(1A1、1A3)及び下面側流路(2A)を開放し、バルブ部(M)17eを開放した状態で、ポンプ部(P)16を動作させると、増幅チャンバ部(A)12aに供給された気体圧力によって増幅チャンバ部(A)12a内の3つのサンプルは、下面側流路(2A)に供給される。下面側流路は、貫通路(3A)を介して上面側流路(1A2)に連通され、上面側流路(1A2=1M1)を介して混合チャンバ部(保持チャンバ部(M))13に連通されている。混合チャンバ部(M)13の開口部には、テーパーが付けられていることからスムーズにサンプルが供給される。増幅チャンバ部(A)12a内のサンプルを混合チャンバ部(M)13に供給後、増幅チャンバ部(A)12aの上面側流路(1A1、1A3)及び下面側流路(2A)を閉鎖した後に、増幅チャンバ部(A)12bの上面側流路(1A1、1A3)及び下面側流路(2A)を開放した状態で同様にポンプ部(P)16を動作させることにより、今度は、増幅チャンバ部(A)12b内のサンプルを混合チャンバ部(M)13にサンプルを供給することが出来る。増幅チャンバ部(A)12c内のサンプルについても、同様の動作により、混合チャンバ部(M)13に供給することが出来る。このようにして、上面側流路(1M1)から吐出された3つのサンプルは、混合チャンバ部(M)13に供給され、混合チャンバ部(M)13において3つのサンプルが混合される。ここで、混合チャンバ部(M)13の下面側流路(2M)を閉鎖した状態で、増幅チャンバ部(A)から混合チャンバ部(M)へのサンプル供給動作を行えば、より好ましい。続いて、バルブ部17dを閉鎖したまま、増幅チャンバ部(A)12a、12b、12cの上面側流路(1A1、1A3)及び下面側流路(2A)を開放し、バルブ部(M)17eを閉鎖し、混合チャンバ部(M)13の下面側流路(2M)を開放し、更に、バルブ部(D)17fを開放した状態で、ポンプ(P)16を動作させ混合チャンバ部(M)13内の圧力が高まると、混合されたサンプルは、混合チャンバ13から下面側流路(2M)並びに貫通路(3M)を介して上面側流路(1M2)に供給され、この上面側流路(1M2)から検出部(D)19に吐出されて標的核酸を検出する検出部(D)19に供給される。この検出部(D)19は、カセット本体1に組み込み固定されている。
【0180】
検出部(D)19には、この検出部(D)19に洗浄液を供給する洗浄液チャンバ部(B)14及びこの検出部(D)19に挿入剤を供給する挿入剤チャンバ部(I)15aが連通されている。洗浄液チャンバ部(B)14内の圧力が高められると、洗浄液チャンバ部(I)14内の洗浄液は、下面側流路(2B)を通り、貫通孔(3B)を介して上面側流路(1B2)に供給され、この上面側流路(1B2)から検出部(D)19に吐出されて検出部(D)19に供給される。同様に、挿入剤チャンバ部(I)15a内の挿入剤は、挿入剤チャンバ部(I)15aの圧力が高められると、下面側流路(2I)を介して貫通孔(3I)に供給され、上面側流路(1I2)から吐出されて検出部(D)19に供給される。挿入剤チャンバ部(I)15a及び洗浄液チャンバ部(B)14は、バルブ部(B)17c及びバルブ部(I)15bに接続され、このバルブ部(B)17c及びバルブ部(I)15bによって選択的にポンプ部(P)16に連通される。即ち、バルブ部(D)17fを開放した状態で、サンプル・チャンバ部(S)11を閉鎖、増幅チャンバ部(A)12a〜12c及びバルブ部(I)15bを閉鎖し、バルブ部(B)17cを開放することによって洗浄液チャンバ部(B)14がポンプ部(P)16に連通され、ポンプ部(P)16が動作されると、洗浄液チャンバ部(B)14内の圧力が高められ、洗浄液が上面側流路(1B2)から吐出されて検出部(D)19に供給される。また、バルブ部(D)17fを開放、サンプル・チャンバ部(S)11を閉鎖、増幅チャンバ部(A)12a〜12cを閉鎖した状態で、バルブ部(B)17cを閉鎖しバルブ部(I)15bを開放することによって挿入剤チャンバ部(I)15aがポンプ部(P)16に連通され、ポンプ部(P)16が動作されると、挿入剤チャンバ部(I)15a内圧力が高められ、挿入剤が上面側流路(1I2)から吐出されて検出部(D)19に供給される。
【0181】
検出部19は、上面側流路(1D2)及びバルブ部(D)17fを介して廃液チャンバ部(W)18に連通されている。従って、バルブ部(D)17fが開放され、検出部19(D)内の流路に気体圧力が与えられることによって検出部(D)19内の液体は、廃液として廃液チャンバ部(W)18に排出される。サンプル・チャンバ部(S)11とポンプ部(P)16との間に設けたバルブ部(S)17aは、下面側流路及び貫通孔並びに上面側流路を介して廃液チャンバ部(W)18に連結されている。
【0182】
尚、サンプル・チャンバ部(S)11は、プレート状のカセット本体に貫通孔として形成されるとともにその周囲には、サンプル・チャンバ部(S)11の円筒状の側壁面を定めるように削りとられた堀込部20が形成されている。この堀込部20は、特に増幅チャンバ部(A)12a、12b、12cとの間を分断するように形成され、残された底部にサンプル・チャンバ部(S)11と増幅チャンバ部(A)12a、12b、12cとを連通する下面側流路(2S)が形成されている。核酸サンプルが注入されたサンプル・チャンバ部(S)が加熱された際に、この堀込部20は、試薬酵素が保持されている隣接する増幅チャンバ部(A)12a、12b、12cに熱が進入されることを抑制している。また、増幅チャンバ(A)12a,12b,12c周囲にも、掘込部20が形成されていると好ましい。この場合には、増幅チャンバ部(A)12a、12b、12cが加熱された際に、この掘込部20は、混合チャンバ(M)13、洗浄液チャンバ(B)14、挿入剤チャンバ(I)15a、検出部(D)19に熱が侵入することを抑制している。熱伝導の観点から、サンプル・チャンバ部(S)11及び増幅チャンバ部(A)12a,12b,12cを構成する壁の厚さは、機械的強度が保持できる範囲において、出来るだけ薄いことが好ましい。壁の厚さは、例えば2mm以下に、より好ましくは、1mm以下に設定する。
【0183】
検出部(D)19は、例えばDNAチップ(図示せず)を備えている。電流検出タイプであっても蛍光検出タイプであっても良い。電流検出タイプのDNAチップの場合、日本特許2573443で知られるようにハイブリダイゼーション反応並びに核酸検出反応の為の核酸検出用基板が装着されている。核酸検出用基板上には、Au個別電極が配置され、Au個別電極上の夫々に核酸プローブDNAが固定されている。プローブDNAが配列された検出空間(反応部)を介して対極や参照極といった共通電極が配置され、前記検出空間内に挿入剤を充填した状態で、共通電極と個別電極との間に電圧を印加して個別電極に電流が流れたことを検知してターゲットDNAを特定している。当然ながらDNAチップも密閉構造を有し、DNAチップの基板上には、流路が形成され、サンプル・チャンバ部(S)11、洗浄液チャンバ部(B)14及び挿入剤チャンバ部(I)15aに通じているポートを備えている。DNAチップ内の流路には、個別電極及び共通電極が配置され、個別電極及び共通電極上を液体が送液される。DNAチップの配線は、この個別電極及び共通電極に接続され、また、電極パッド(図示せず)に接続されている。電極パッドは、核酸検出カセット100上に露出するように配列され、電流検出時には、核酸検出装置側の電極コネクタに接触接続される。
【0184】
この明細書では、電流検出タイプのDNAチップの詳細については、説明を省略する。このDNAチップのより詳細な説明については、1998年7月7日に特許されたUSP 5,776,672 and1999年10月26日に特許されたUSP 5,972,692(いずれもKoji Hashimoto et. al and Assignee Kabushiki Kaisha Toshiba)並びに対応する日本特許2573443を参照されたい。この米国特許の明細書の記載は、この明細書の一部をなすものとする。さらには、電流検出タイプのDNAチップの測定装置については、特願2002-223393もしくは特願2003−200440を参照されたい。
【0185】
核酸検出カセット100は、核酸検出装置に装着されて後に述べる手順でサンプルの前処理並びに検査が実施されるが、核酸検出装置には、核酸検出カセット100の各部に対応する駆動機構が図4に示すように設けられている。即ち、核酸検出装置は、ポンプ部16に対応したポンプ機構26を備えている。既に説明したようにポンプ部16は、プレート部材1に設けた貫通孔及びにこの貫通孔を覆う可撓性部材2、3で構成され、このポンプ部16を動作させるポンプ機構16は、可撓性膜をプレスするプレス機構として実現される。核酸検出装置は、バルブ17a、17b、17c、17d、17e、17fに対応したバルブ機構27a、27b、27c、27d、27e、27fを備えている。バルブ17a、17b、17c、17d、17e、17fは、プレート部材1に設けた窪み及びにこの窪みを覆う可撓性部材2、3で構成され、このバルブ17a、17b、17c、17d、17e、17fの開閉を制御するバルブ機構27a、27b、27c、27d、27e、27fは、可撓性部材2、3を窪み内に押し付けて流路を閉鎖し、可撓性部材2、3を窪み内から離脱させて流路を開放するプレス機構として実現される。サンプル・チャンバ11,増幅チャンバ12a、12b、12cは、貫通孔及びこの貫通孔を塞ぐ可撓性部材2、3で構成され、可撓性部材2、3を貫通孔に押し付けることによって貫通孔に連通する流路を閉鎖することができ、可撓性部材2、3を貫通孔から離脱させることによって流路を開放することができる。
【0186】
また、核酸検出装置によって、サンプル・チャンバ11,増幅チャンバ12a、12b、12cは、前処理工程において、サンプルが加熱される。従って、核酸検出装置は、サンプル・チャンバ11,増幅チャンバ12a、12b、12cに対応してこれらをバルブとして動作させる共にこれらサンプル・チャンバ11,増幅チャンバ12a、12b、12c内のサンプルを加熱するヒータを備えたプッシュ機構としてヒータ付きのバルブ機構21、22a、22b、22cを備えている。
【0187】
サンプル・チャンバ11及び増幅チャンバ12a、12b、12cは、より具体的には、図5に示すような構造を有し、各々ヒータ付きのバルブ機構21、22a、22b、22cのヘッドで加熱される。サンプル・チャンバ11及び増幅チャンバ12a、12b、12cでは、夫々剛性プレート部材、即ち、本体1に空けられた貫通孔303、302の開口部にヘッド201bが適合されるようなテーパーが形成されている。プレート部材、即ち、本体1の上面側と可撓性部材2との間には、流路204、206、208が形成され、本体1の下面側と可撓性部材3との間には、流路203、205が形成されている。また、上面側流路206と下面側流路203を連通させるために貫通流路207がプレート部材に形成されている。
【0188】
図5には、サンプル・チャンバ11から、増幅チャンバ12a、12b、12cにサンプルSを送液する場合を示す。図5には、代表して、増幅チャンバ12aに送液する場合を示しているが、増幅チャンバ12b、12cへの送液も対称であるため、同様の機構である。まず、サンプル・チャンバ11内にサンプルSが貯蔵されている状態では、ヒータ付きバルブ機構21が動作され、ヘッドが貫通孔303の開口部に可撓性部材2及び可撓性部材3を押し付け、サンプル・チャンバ11に連通されている流路204、203、207はいずれも閉鎖されている。次にサンプル・チャンバ11から増幅チャンバ12aにサンプルSを送液する場合には、まず、送液先である増幅チャンバ12aのヒータ付きバルブ機構22aの内、下面側のヒータ付きバルブ機構のみを動作させ、ヘッド201bを貫通孔302の開口部に可撓性部材3を押し付け、流路205を閉鎖する。続いて、サンプル・チャンバ11の開口部303の可撓性部材2及び可撓性部材3を押し付けているヒータ付きバルブ機構21のヘッドを上下ともに開放することにより、サンプル・チャンバ11に連通している上面側流路204及び下面側流路203をいずれも開放する。更に、この状態において、ポンプ部16を動作させ、サンプル・チャンバ11に流路204を介して圧力を加えることにより、サンプルSは、サンプル・チャンバ11の下面側流路203、貫通流路207及び上面側流路206を通して、増幅チャンバ12aに流入する。増幅チャンバ12b、及び増幅チャンバ12cへも全く相似の構造であるので、同様な構成でサンプルSが供給される。なお、サンプルSの増幅チャンバ12a、12b、12cへの供給の際には、上面側流路208が確保されていることから、サンプルSと共に増幅チャンバ12a、12b、12cに掛かる圧力及び気体は、流路208を介して廃液チャンバ18に排出され、液体であるサンプルSのみが重力により、増幅チャンバ12a内に供給される。所定量のサンプルSが増幅チャンバ12aに供給されると、上面側ヒータ付きのバルブ機構22aも動作して、増幅チャンバ12aの上面側流路206及び208をヘッド201aが閉鎖し、増幅チャンバ12aが密閉された状態とする。続いて、ヒータつきバルブ機構22aのヒータ(図示せず)が通電されてヘッドによってサンプルSが所定温度まで加熱される。
【0189】
図6A〜6Cは、サンプル・チャンバ11から、増幅チャンバ12aもしくは12bもしくは12cにサンプル溶液を供給する際の手順を示している。図6A〜6Cにおいては、図5に示したと同一の符号を同一箇所に付してその説明を省略する。
【0190】
図6A〜6Cに示す増幅チャンバ12aもしくは12bもしくは12cにおいては、貫通孔302の上面側及び下面側開口部にヘッド201a、201bが適合されるようなテーパーが形成され、図6Aに示されるように、この開口部に夫々対向してヘッド201a、201bが配置されている。
【0191】
このような増幅チャンバ12a、12b、12cにおいては、図6Bに示すようにヒータ(図示せず)が非通電の状態に維持されたまま、ヒータ付きのバルブ機構21、22a、22b、22cが動作されてヘッド201bが貫通孔302の開口部に可撓性部材3を押しけ、流路205が遮断される。この流路205の遮断状態でサンプルSが増幅チャンバ12a、12b、12cに供給される。図6Cに示すように所定量のサンプルSが増幅チャンバ12a、12b、12cに供給されると、バルブ機構21、22a、22b、22cが動作されてヘッド201aが貫通孔302の開口部に可撓性部材2を押し付け、流路206、208が遮断される。その後、ヒータ付きのバルブ機構21、22a、22b、22cのヒータ(図示せず)が通電されてヘッド201a、201bによってサンプルSが所定温度まで加熱される。図6A〜6Cに示す構造では、サンプルSの加熱時にサンプルの蒸発が生じる可能性があるが、この蒸発されたサンプルは、増幅チャンバ12a、12b、12c内に閉じこめられることから、蒸発サンプルによる悪影響を防止することができる。また、加熱後においては、ヘッド201bが貫通孔302から離れてサンプルSが流路205を介して混合チャンバ13に供給される。特に、上述したように加熱ヒータにシール機能を与えることで、カセットを小型化することができ、また、核酸検出カセット100の上下からチャンバが挟み込まれていることから、チャンバ内の均熱化が図ることができ、結露による液残りを防止することができる。
【0192】
図5及び図6A〜6Cにおいては、サンプル・チャンバ11から増幅チャンバ12a、12b、12cへのサンプルSの送液手順を例に説明したが、増幅チャンバ12a、12b、12cに限らず、他のチャンバで液を制御する際には他のチャンバも同様の構造を有し、同様に液が制御されても良いことは明らかである。
【0193】
混合チャンバ13も、増幅チャンバ12と同様に、チャンバ下面側を可撓性部材で構成し、チャンバ下面側流路を閉鎖してから、サンプル溶液を混合チャンバ13に供給し、混合チャンバ13から検出部19に供給する際に、混合チャンバ13下面側流路を開放して、サンプル溶液を移動させる、というカセット及び装置構成、また、カセット動作としても良い。
【0194】
図2〜図4に示される構造では、増幅チャンバ12a、12b、12cは、放射状に延出する流路によってサンプル・チャンバ11に並列的に連結されている。図5及び図6A〜6Cを参照して説明したようにサンプル・チャンバ11に圧力を加えることによってサンプルSが3分割されて均一な量のサンプルSが増幅チャンバ12a、12b、12cに供給されるとしている。この場合には、増幅チャンバ12aを介する流路抵抗と、増幅チャンバ12bを介する流路抵抗と、増幅チャンバ12cを介する流路抵抗が等しく形成されていることが望ましい。例えば、流路断面積が共通の場合には、流路長を共通にすることにより実現することが可能である。このように増幅チャンバ12a、12b、12cがサンプル・チャンバ11に並列的に連結されるに代えて、図7A〜7C及び図8に示すように増幅チャンバ12a、12b、12cがサンプル・チャンバ11に直列的に連結されても良い。図8に示されるような接続にあっては、サンプル・チャンバ11に溜められている溶液を前記送液方法により送液する際、チャンバ間の流路203,207,206、208、209、210の長さ並びに流路断面形状が同一でなくとも、適切な流速で送液することにより、均等に分配することができる。
【0195】
尚、図7A〜7Cにおいては、図5及び図6A〜6Cに示した符号と同一符号は同一箇所を示すものとしてその説明を省略する。また、図8は、図7A〜7Cに示されるチャンバ及び流路の接続関係を模示的に示している。
【0196】
図7A〜7Cに示す核酸検出カセット100の構造においては、サンプル・チャンバ11には、上面側流路204及び増幅チャンバ12aに連通している下面側流路203のみが接続されている。また、増幅チャンバ12a、12b、12cには、それぞれ下面側の流路(図示せず)が混合チャンバ13に連通されている。サンプル・チャンバから増幅チャンバにサンプルSを送液する際には、図7A〜7Cにおいては、この下面側の流路(図示せず)は、ヘッド201b、201e、201fで押し付けられた可撓性部材3で閉鎖されているものとする。増幅チャンバ12aが上面側の流路206、208を介してサンプル・チャンバ11及び増幅チャンバ12bに連通され、増幅チャンバ12bが上面側の流路208、209を介して増幅チャンバ12a、12cに連通され、更に、増幅チャンバ12cが上面側流路209、210を介して増幅チャンバ12b及び廃液チャンバ18に連通されている。また、ヘッド201b、201e、201fが貫通孔302の開口部に可撓性部材3を押し付けた状態における増幅チャンバ12a、12b、12cに貯蔵することができるサンプルの容積Vaとすると、サンプル・チャンバ11に貯蔵されるサンプルの容積Vsは、3Va以上になるように定められている。(Vs≧3Va)このように定めることによってサンプル・チャンバ11内のサンプルSで増幅チャンバ12aが満たされ、あふれた分で12bが満たされ、更にあふれた分で12c内が満たされ、増幅チャンバ12a、12b、12cにほぼ均等にサンプルSを配分することができる。従って、この場合には、各増幅チャンバに充填されるサンプル量は、各増幅チャンバの容積によって規定される。ここでは、増幅チャンバの容量は共通になるようにしている例を示しているが、増幅を行う液量を変える要請がある場合には、増幅チャンバの容積を適宜変更することにより対応することができ、基本的なカセット構成を変更する必要がない。
【0197】
図7A〜7Cに示す構造においては、図7Aに示すように始めにサンプル・チャンバ11に貯蔵されたサンプルSは、圧力P1によって流路203、207、206を介して第1の増幅チャンバ12aに供給される。図7Bに示すように第1の増幅チャンバ12aに供給されたサンプルSで第1の増幅チャンバ12aが満たされると、圧力P1によって更にサンプルSが第1の増幅チャンバ12aから流路208を介して第2の増幅チャンバ12bに供給される。更に、図7Cに示すように第2の増幅チャンバ12bに供給されたサンプルSで第2の増幅チャンバ12bが満たされると、圧力P1によって更にサンプルSが第2の増幅チャンバ12bから流路209を介して第3の増幅チャンバ12cに供給される。第3の増幅チャンバ12cがサンプルSで満たされることによって全ての増幅チャンバ12a、12b、12cにサンプルSが配分される。なお、サンプルSをサンプル・チャンバ11から増幅チャンバ12a、12b、12cへ供給する際には、廃液チャンバ18に連通された上面側流路210が確保されていることから、サンプルSと共に増幅チャンバ12a、12b、12cに掛かる圧力及び気体は、流路210を介して廃液チャンバ18に排出され、液体であるサンプルSのみが重力により、増幅チャンバ12a、12b、12c内に供給される。
【0198】
図1〜図8に示される構造においては、サンプル、洗浄液及び挿入剤がサンプル・チャンバ11、洗浄液チャンバ14及び挿入剤チャンバ15aから他のチャンバに供給される際には、必ず、下面側流路から流出し、上面側流路から供給される。従って、サンプル、洗浄液及び挿入剤がカセット構造内で容易に移動することが防止され、カセット搬送時等においてカセット構造が傾いてしまったとしても、各チャンバに圧力を掛けない限り、液の移動を防止することができる。
【0199】
図9A及び9Bは、ポンプ部16及びポンプ機能26の構造の一例を示している。
【0200】
図9A及び9Bには、サンプル・チャンバ11に連通するポンプ部16に関してサンプル・チャンバ11から送液する動作について説明する。図9A及び9Bにおいては、説明を簡略化する為にサンプル・チャンバ11、ポンプ16及びバルブ17aを展開した図式としている。このバルブ17aは、ポンプ部16と廃液チャンバ18の開放/閉鎖の切り替えを行なう。
【0201】
ポンプ部16も同様に貫通孔305が本体1に形成されて定められている。このポンプ部16は、上面側流路204を介してサンプル・チャンバ11に連通されている。ポンプ部16は、更に上面側流路214を介して貫通流路306で構成されるバルブ部17aに連通されている。このバルブ部17aは、下面側流路310を介して廃液チャンバ18に連通されている。ポンプ部16に対向してポンプ機構26のポンプ・プッシャ502が配置され、また、バルブ部17aに対向してバルブ・プッシャ501が配置されている。
【0202】
図9Aに示されるような構造においては、貫通流路306の開口部に向けてバルブ・プッシャ501が可撓性部材2を押し付けると、図9Bに示すように貫通流路306の開口部306が可撓性部材2で塞がれる。この状態で、ポンプ・プッシャ501が可撓性シート2を加圧すると、ポンプ部16内の圧力及び気体が上面側流路204を介して、サンプル・チャンバ11に送り込まれる。従って、サンプル・チャンバ11内のサンプルSが下面側流路203に押しだされ、サンプル・チャンバ11から吐出される。次に、図9Aに示すように、バルブ・プッシャ501が戻されて貫通流路306の開口部が開放されてから、ポンプ・プッシャ502が戻されると、下面側流路310を介して気体がポンプ部16に流入される。このようにバルブ・プッシャ501及びポンプ・プッシャ502が繰り返し動作されると、連続してサンプルSがサンプル・チャンバ11から送り出されると共にポンプ部16に加圧用の気体が流入される。
【0203】
ここで、ポンプ部16が機能する条件として、吐出側(流路204及びサンプル・チャンバ11側)における圧力損失よりも、吸い込み側(流路310の側)における圧力損失の方が小さい必要がある。従って、空気入り口310側の流路は、空気出口側の流路204より流路断面積を大きくするのが好ましい。
【0204】
上述したように流路内にサンプルS、洗浄液及び挿入剤は、流路内に空気(気体)を介して分離され、ポンプ部16によって空気(気体)に圧力を付すことによって流路内を移動される。後に説明されるように、バルブを適切に制御することによってサンプルS、洗浄液及び挿入剤を個別に流路内を移動させることができ、結果として適切な反応を検出部19内で生じさせることができる。
【0205】
また、上述した核酸検出カセット100においては、図10に示すように、温度が加熱制御される増幅チャンバ12a、12b、12c並びにサンプル・チャンバ11等の反応チャンバ10は、バルブ機構21、22a〜22cによって隣接するチャンバ8,9から流路遮断して熱的に隔離されている。即ち、バルブ機構21,22a〜22cのヘッド及び可撓性部材2及び可撓性部材3でバルブ7が構成され、ヘッドが可撓性部材2及び可撓性部材3を流路に押し付けることによってこれら反応チャンバ10が隔離される。従って、反応チャンバ10からサンプルが蒸発して漏れ出すような事態を防止することができる。より具体的には、反応チャンバ10内を加熱する際には、ヘッドで反応チャンバ10が上下から挟み込まれている。反応チャンバ10の上面及び下面はテーパ形状に形成され、ヘッドは凸形状に形成され、反応チャンバ10に可撓性部材2及び可撓性部材3が押し付けられてチャンバ10が密閉される。このような構造を取ることによって、反応チャンバ10内の加熱と、反応チャンバ10の密閉を同時に実現することが可能となる。
【0206】
図10に示される構造に対比して模示的に描かれている比較例1が図11に示されている。図11に示される比較例1では、温度制御領域としての反応チャンバ10から分離してバルブ6A,6Bが設けられ、反応チャンバ10のみが加熱制御される。このような比較例1では、反応チャンバ10とバルブ6A,6Bとの間の流路に反応液が蒸発して流出し、流路内で結露して反応液が反応チャンバ10外に流失する虞がある。また、反応液がチャンバからの流出流路に接触してしまうと、毛細管現象により、流路を伝って、反応チャンバ外に流出する虞もある。
【0207】
図10に示される構造に対比して模式的に描かれている比較例2が図12にも示されている。図12に示される比較例2においては、反応チャンバ10から分離してバルブ6A,6Bが設けられ、比較例1の結露防止のため、温度制御領域としての反応チャンバ10並びに反応チャンバ10及びバルブ6A,6B間の流路が加熱制御される。温度制御範囲がバルブ6A,6Bにまで広げられる比較例2においては、熱が隣接するチャンバ8、9にまで伝達して不所望な反応が隣接チャンバ9、10で生じる虞がある。
【0208】
図13は、図1から図4に示される核酸検出カセット100におけるチャンバ11、12a、12b、12c、13、14、15b、ポンプ部16、検出部19及びこれらチャンバ11、12a、12b、12c、13、14、15b、ポンプ16及び検出部19を接続する流路を示している。なお、簡略化のため、流路を制御するためのバルブ類は図示していない。
【0209】
また、図14は、図13に示される核酸検出カセット100を制御する検出装置のブロック図を示している。また、図15は、核酸検出カセット100を図14に示される制御システムで制御して核酸を検出するに至る手順を示すフローチャートを示している。
【0210】
核酸検出装置(測定ユニット)は、図14に示されるように、核酸検出カセット100内のサンプル・チャンバ、増幅チャンバ、検出部での温度等を測定し、ヒータ付きバルブ機構21、22a、22b、22cのヘッドに内蔵されているヒータ出力に温度情報のフィードバックを掛けることにより、所望の温度に制御するための、温度制御部102を備え、また、流路におけるサンプルS等の送液を制御する送液制御部104を備えている。この送液部104は、既に説明したポンプ部16及びポンプ機構26及びヒータ付きバルブ機構21、22a、22b、22cを含んでいる。核酸検出装置は、更に検出部19、即ち、DNAチップに生じる反応を測定する測定部106を備えている。測定部106は、図1に示される電気接触コネクタを利用して電気接触パッドから検出信号を検出し、導通する電極を特定して核酸を特定している。これら温度制御部102、送液制御部104及び測定部106は、コンピュータユニット110の制御下にある制御機構108で制御されている。
【0211】
このような核酸検出装置においては、次のように図15に示す手順で核酸の検出が実施される。
【0212】
核酸検出カセット100は、ユーザに供給される際には、サンプル・チャンバ11が密閉されないまま提供され、チャンバ11の開口部(サンプル投入口)404が開放可能な状態で供される。この状態で提供された核酸検出カセット100では、始めにサンプル・チャンバ11の下側流路が密閉される。(ステップS10)次に、サンプル・チャンバ11の上側開口部からサンプル・チャンバ11にサンプルSが注入される。(ステップS12)その後、サンプル・チャンバ11の上側開口部が蓋(もしくはシール)402で閉じられる。(ステップS14)そして、ヒータ付きバルブ機構21のヘッド(図示せず)が可撓性部材にて構成されている蓋(シール)402及び密着され一体となった可撓性部材2に押し付けられてサンプル・チャンバS14の上側流路が閉じられてサンプルSがサンプル・チャンバ11に密閉される。(ステップS16)
【0213】
ヒータ付きバルブ機構21のヒータが動作されてこのヒータが温度制御され、所定温度でサンプルSが煮沸処理される。(ステップS18)例えば、95℃で5分間加熱されることにより、サンプルS中の核酸が抽出される。次に、ヒータ付きバルブ機構21のヘッド(図示せず)が可撓性部材2,3から離されてサンプル・チャンバ11に連通する下側流路が開放される。(ステップS20)また、ヒータ付きバルブ機構22a、22b、22cの下側ヘッドが増幅チャンバ12a、12b、12cの下面側開口部に可撓性部材3に押しつけて増幅チャンバ12a、12b、12cに連通する下側流路が閉鎖される。その後、ポンプ26が動作されて気体圧力がサンプル・チャンバ11に付加される。従って、サンプル・チャンバ11から下側流路、貫通流路及び上側流路を介してサンプルSが増幅チャンバ12a、12b、12cに供給される。(ステップS24)
【0214】
更に、ヒータ付きバルブ機構22a、22b、22cの上部ヘッドが増幅チャンバ12a、12b、12cの開口部に上から押し付けられ、増幅チャンバ12a、12b、12cが密閉された状態で、ヒータ付きバルブ機構22a、22b、22cのヒータが動作してヒータが温度制御された状態で増幅チャンバ12a、12b、12cが加熱される。従って、増幅チャンバ12a、12b、12c内のサンプルSが加熱されてDNAが増幅される。(ステップS28)例えば、65℃で60分に亘ってサンプルSが加熱されることにより、サンプルS中の核酸が増幅される。その後、ヒータ付きバルブ機構22a、22b、22cのヘッドが増幅チャンバ12a、12b、12cの上側開口部及び下側開口部から離されて増幅チャンバ12a、12b、12cの上側及び下側で連通する流路が開放される。(ステップS30)次に、バルブ17dをバルブ機構27dにて押し付けることにより、空気抜き孔としての上側流路を介して廃液チャンバ18に連通される経路を遮断する。(ステップS32)ここで、ポンプ26が動作されると、気体圧力が増幅チャンバ12a、12b、12cに付加され、増幅チャンバ12a、12b、12c内のサンプルSは、下側流路、貫通孔及び上側流路を介して混合チャンバ13に供給される。(ステップS34)バルブ17eが閉じ、混合チャンバ13の空気抜き孔としての上側流路が封鎖されている状態(ステップS36)で、ポンプ26が動作されると、気体圧力が混合チャンバ13に与えられて混合チャンバ13からサンプルSが下側流路、貫通流路及び上側流路を介して検出部19のDNAチップ基板に供給される。(ステップS38)検出部19のDNAチップ基板は、温度制御された状態で加熱されてその内でハイブリタイゼーションが生じさせられる。即ち、DNAチップ内において、DNAチップが温度制御された状態でプローブDNAにターゲットDNAが結合(ハイブリタイゼーション)される。
【0215】
その後、バルブ17cが開放されることにより、ポンプ部から洗浄液チャンバ14、更にはDNAチップ基板に通じる流路が連通された状態で、バルブ17a及びバルブ15bが閉鎖される。(ステップS42)この状態で、ポンプ26が動作されると、気体圧力が洗浄液チャンバ14に与えられ、洗浄液が検出部19のDNAチップ基板に供給される。(ステップS44)従って、検出部19のDNAチップ基板内のサンプルSは、バルブ17fを介して廃液チャンバ18に供給されると共に供給された洗浄液で検出部19のDNAチップ基板上の不必要な(ハイブリダイゼーションに寄与しない)DNAサンプルが洗浄される。この洗浄時には、検出部19のDNAチップ基板の温度が制御され、所定温度の洗浄液で洗浄される。(ステップS46)即ち、DNAチップ内においては、DNAチップが所定温度に維持された状態でプローブDNAと相補的な配列を持つターゲットDNAを除くDNAがこの洗浄液によって洗浄される。
【0216】
洗浄液用のバルブ17cが閉鎖され、バルブ15bが開放されることにより、洗浄液チャンバ14への連通から挿入剤供給用に切り替えられる。ここで、ポンプ26が動作されて気体圧力が挿入剤チャンバ15aに与えられ、挿入剤が検出部19のDNAチップ基板に供給される。(ステップS52)この挿入剤の供給に伴い、検出部19のDNAチップ基板内の洗浄液は、バルブ17fを介して廃液チャンバ18に排出される。検出部19が温度制御されて挿入剤が所定温度に維持されると、挿入剤がDNAチップ基板上でのハイブリダイゼーションしたDNAに結合する。(ステップS54)この挿入剤溶液が注入された状態で対極及び個別電極間の電圧印加を行うことにより、挿入剤が酸化還元反応を生じ、それに伴う電流が個別電極で検出され、ハイブリダイゼーション反応が行われた電極が特定される。(ステップS56)DNAチップのプローブDNAの塩基配列は既知であることから、この酸化還元電流が検出された個別電極が特定されることによってターゲットDNAの塩基配列を特定することができる。即ち、ターゲットDNAの検出対象領域の塩基配列は電流検出電極のプローブDNA配列と相補的であることが判明する。
【0217】
この発明の実施の形態に係る核酸検出カセット及び核酸検出カセットは、上述したような構成並びに構造を有しているが、下記に説明するように種々の改良が与えられても良い。
【0218】
洗浄液チャンバ14や挿入剤チャンバ15aのように保持しておくべき試薬量が、チャンバ容積と同等の量程度に多い場合、また、チャンバ下面側流路を直接閉鎖する構造を有していない場合、不本意に試薬がチャンバから流出してしまう恐れがある。
【0219】
そこで、図31〜33に記載のように、流出路の一部の断面積を大きくすることにより、流出量を最小限に制御することが可能になる。毛細管現象によりチャンバから流出する溶液が、断面積が変化している地点で停止するためである。図31には洗浄液チャンバ14の断面を、図32には挿入剤チャンバ15aの断面を示してある。図中には、予め保持されている液体試薬の液面を模式的に記載してある。また、カセット内での他の領域の動作中に、当該チャンバ内の圧力が若干変動した場合にも、流路断面積が一部大きくなっていることにより、試薬先端位置が大きく変動することがなく、例えば隣接する領域に試薬が不本意に到達してしまう、という状態を防止することが可能である。
【0220】
このような効果は、図33に示した混合チャンバ13に対しても同様に有効である。即ち、混合チャンバ13には、予め液体状態の試薬が保持されている場合も、固体状態の試薬が保持されている場合も想定できる。また、チャンバ下面側流路を直接閉鎖できる構造を有している場合だけでなく、有していない場合も想定できる。液体状態の試薬が保持されている場合には、前記洗浄液チャンバ14及び挿入剤チャンバ15aと全く同様である。混合チャンバ13に保持されている試薬が固体状態であり、最初に混合チャンバ13内に液体が存在していない場合には、サンプル溶液が増幅チャンバ12から混合チャンバ13に供給された時点で、その効果を発揮することが分かる。即ち、混合チャンバ13に液体が供給されるとほぼ同時に、混合チャンバ下面側流路から毛細管現象で溶液が流出してしまうが、図33に記載のように、流出路の一部の断面積を大きくすることにより、毛細管現象による流出を断面積が変化している地点で停止させることが出来るので、流出を制御することが可能になる。また、洗浄液チャンバ14や挿入剤チャンバ15aの場合と同様に、カセット内での他の領域の動作中に、当該チャンバ内の圧力が若干変動した場合にも、溶液先端位置が大きく変動しない効果も期待できる。
【0221】
図31〜図33に示す試料保持チャンバ310、320、330は各々洗浄液チャンバ14、挿入剤チャンバ15a、混合チャンバ13に相当する。チャンバ310、320には、試薬312、322が貯蔵されている。また、チャンバ330にはサンプル溶液332が保持される。各々下面側流路2B、2I、2Mに、貫通孔流路3B、3I、3Mが接続している。このとき貫通孔流路3B,3I、3Mの上側3B2、3I2,3M2の断面積が下側よりも大きくなっている。また断面積の大きい貫通孔流路3B2、3I2,3M2に上面側流路1B2,1I2、1M2がそれぞれ接続している。このように貫通孔流路の上側の断面積を大きくすることにより、試薬312、322、サンプル溶液332の流出量を最小限に制御することが可能になる。例えば、3B、3I、3Mの断面はφ1mmとし、3B2、3I2、3M2の断面をφ2mmとすることにより、前記の効果を得ることが可能である。
【0222】
また、洗浄液チャンバ14、挿入剤チャンバ15a、混合チャンバ13からの溶液の不本意な流出を防止する手段として、流路の疎水性処理を行うことが望ましい。図34に示す試料保持チャンバ340は各々洗浄液チャンバ14、挿入剤チャンバ15a、もしくは混合チャンバ13に相当する。図34において、チャンバ340には、試薬341が貯蔵されている。チャンバ340には上面側流路1R1、下面側流路2Rが接続し、下面側流路2Rには貫通孔流路3Rを介して上面側流路1R2が接続している。少なくともチャンバ下面側流路2Rを疎水性処理することにより、チャンバ内に溶液が流入した際に、チャンバ内圧が上昇しない限り、下面側流路内に溶液が侵入することがないため、毛細管現象により溶液が下面側流路を介して流出してしまう恐れがない。洗浄液チャンバ14及び挿入剤チャンバ15aについては、チャンバに予め装填されている洗浄液及び挿入剤溶液を確実にチャンバ内に充填しておくことが可能となる。混合チャンバ13については、予め液体状態の試薬を装填しておく場合には、前記洗浄液チャンバ、挿入剤チャンバと同様に確実にチャンバ内に試薬を充填しておく効果を期待でき、混合チャンバに予め装填しておく試薬が固体状態である場合にも、サンプル溶液が混合チャンバに供給された際に、サンプル溶液がチャンバ下面側流路から毛細管現象により不本意に流出してしまうことを防止することが出来る。疎水性処理を行う流路は、前記の2Rに加えて、それぞれ、3R、1R2に施されていればより確実に上記の作用を得ることが出来る。また、上面側流路、即ち1R1に対して疎水性処理を行うことにより、カセットを誤って転倒してしまった際にも、チャンバ内の溶液が逆流することを防止する効果がある。混合チャンバの上面側流路1R1に対しては、チャンバ内に液体試薬を充填しておく場合には、洗浄液チャンバや挿入剤チャンバと同様にカセット転倒の際の逆流防止の効果が、また、増幅チャンバからのサンプル溶液流入のための流路でもあるため、圧力により疎水性流路1R1から親水性のチャンバMに到達したサンプル溶液が、容易にチャンバ内に流入することが出来る。即ち、所謂「液切れ」を良くする効果も期待できる。
【0223】
流路の断面積を一部大きくする構成と、疎水性処理を施す手法を両方とも施すことにより、より一層の効果を期待することも可能である。即ち、疎水性処理を施すことにより、溶液が毛細管現象により流路に侵入するのを防止し、チャンバ内の内圧が変動することにより溶液が流路内に侵入してしまった場合には、途中で流路の断面積が大きくなっている箇所で、溶液の先端の移動量が小さくなる。それによって、隣接する機能、即ち、他の試薬との混合、他の溶液との混合、隣接するチャンバへの流入、他の部位への溶液の侵入等を防止することが可能である。
【0224】
更には、流路の疎水性処理は、洗浄液チャンバ、挿入剤チャンバ、混合チャンバだけでなく、サンプル・チャンバ11の流路や、増幅チャンバ12の流路に施しても、有効である。図35Aのチャンバ350はサンプル・チャンバ11に相当し、図35Aにおいて、チャンバ350には上面側流路1S1、下面側流路2Sが接続し、下面側流路2Sには貫通孔流路3Sを介して上面側流路1S2が接続している。サンプル・チャンバ350の下面側流路2Sを疎水性処理することにより、カセットを装置にセットしてサンプル・チャンバ下面側流路2Sを閉鎖してからサンプル溶液を注入しなくても、下面側流路2Sを開放したままサンプル溶液を注入しても、下面側流路2Sからサンプル溶液は流出しないため、より厳密な検査が可能になる。更に、サンプル・チャンバの上面側流路1S1を疎水性処理することにより、前記洗浄液チャンバ・挿入剤チャンバと同様に、サンプル溶液注入後のカセット転倒の際のサンプル溶液流出を防止する効果を期待できる。
【0225】
図35Bのチャンバ355は増幅チャンバ12を示す。図35Bにおいて、チャンバ355には上面側流路1A1、下面側流路2Aが接続し、下面側流路2Aには貫通孔流路3Aを介して上面側流路1A2が接続している。
【0226】
増幅チャンバ355に関しては、下面側流路2Aの疎水性処理は、サンプル・チャンバと同様にサンプル溶液注入後の流出を防止する効果が期待できる。増幅チャンバの上面側流路1A1の疎水性処理は、サンプル・チャンバからの疎水性流路1A1から親水性の増幅チャンバ355内に達したサンプル溶液が、容易にチャンバ内に流入することが期待できる。必ずしも、増幅チャンバ355内全体が親水性でなく、増幅チャンバ355内の、上面側流路1A1との接続部の領域のみが親水性であっても、同様の効果が期待できる。即ち、上面側流路1A1から増幅チャンバ355に到達した溶液が、増幅チャンバ355の上面側流路1A1との接続部の親水性領域に誘導されるようにして、増幅チャンバ355に落下することが可能となる。また、混合チャンバに対しても、同様に上面側流路1M1との接続部を部分的に親水性にすることにより同様の効果を期待できる。
【0227】
更には、流路の疎水性処理は、増幅チャンバ12からのバイパス流路や、混合チャンバ13からのバイパス流路に施しても、有効である。図36Aのチャンバ360は増幅チャンバ12のバイパス流路側断面を示す。図36Aにおいて、チャンバ360には上面側流路1A3が接続している。チャンバ360に関しては、上面側流路1A3の疎水性処理は、サンプル・チャンバから増幅チャンバへサンプル溶液を送液する際に、ポンプ部からの気体圧力排出経路である上面側流路1A3にサンプル溶液が誤って進入してしまうことを防止する効果を期待できる。図36Bのチャンバ365は混合チャンバ13のバイパス流路側断面を示す。図36Bにおいて、チャンバ365には上面側流路1M3が接続している。チャンバ365に関しては、上面側流路1M3の疎水性処理は、増幅チャンバから混合チャンバへサンプル溶液を送液する際に、ポンプ部からの気体圧力排出経路である上面側流路1M3にサンプル溶液が誤って進入してしまうことを防止する効果を期待できる。図34、図35A、図35B、図36A及び図36Bにおいて、斜線で示した流路の領域は、疎水性であることが好ましい領域を示してある。それに対して、他の領域は親水性であることが好ましい。このように、チャンバ内を親水性に、流路内を疎水性にすることにより、溶液の制御をより厳密に行うことが可能になる。
【0228】
また、バルブ動作において、チャンバ内の液体が不本意に移動して、試薬同士の混合もしくは試薬と核酸サンプルとの混合が不本意に起こることが防止するため、バルブ内容量を規定しておくと効果的である。特に液体状態で試薬を保持して置くことが想定される洗浄液チャンバ部(B)に対するバルブ部(B)及び挿入剤チャンバ部(I)に対するバルブ部(I)に対して、規定することが効果的である。
【0229】
本実施例においては、バルブ部(B)及びバルブ部(I)ともに、直径1.5mmの半球状の内部容量とし、それに対して、洗浄液チャンバ部(B)の第1の流路(1B2)を断面積0.25mmで、合流点(SB)までの距離を10mmで、挿入剤チャンバ部(I)も同様に第1の流路(1I2)を断面積0.25mm2で、合流点(I)までの距離を10mmで構成したため、いずれも、
Vb < V1b2
Vi < V1i2
を満足しているため、バルブ動作による不本意な液混合は発生しない。
【0230】
以上説明したように、この発明によれば、核酸の抽出、増幅、検出等の工程を自動でおこない、標的核酸を検出することを目的とした核酸検出カセット及びこの核酸検出カセットを用いた核酸検出装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0231】
【図1】本発明の実施形態に係わる核酸検出カセットの全体構成を概略的に示す斜視図である。
【図2】図1に示される核酸検出カセットの上面を概略的に示す平面図である。
【図3】図1に示される核酸検出カセットの下面を概略的に示す平面図である。
【図4】図1に示される核酸検出カセットを動作させる核酸検出装置に備えられる各動作部を核酸検出カセットと共に示すブロック図である。
【図5】図1に示される核酸検出カセットにおけるサンプル・チャンバから増幅チャンバへのヒータ付きバルブ機能における送液動作を概略的に示す断面図である。
【図6A】図1に示される核酸検出カセットにおける増幅チャンバを加熱する際のヒータ付きバルブ機能における加熱動作を概略的に示す断面図である。
【図6B】図1に示される核酸検出カセットにおける増幅チャンバを加熱する際のヒータ付きバルブ機能における加熱動作を概略的に示す断面図である。
【図6C】図1に示される核酸検出カセットにおける増幅チャンバを加熱する際のヒータ付きバルブ機能における加熱動作を概略的に示す断面図である。
【図7A】図1に示される核酸検出カセットにおけるサンプル・チャンバから増幅チャンバにサンプルを分配する図1から図3に示す構造とは異なる他の構造例をその分配動作と共に概略的に示す断面図である。
【図7B】図1に示される核酸検出カセットにおけるサンプル・チャンバから増幅チャンバにサンプルを分配する図1から図3に示す構造とは異なる他の構造例をその分配動作と共に概略的に示す断面図である。
【図7C】図1に示される核酸検出カセットにおけるサンプル・チャンバから増幅チャンバにサンプルを分配する図1から図3に示す構造とは異なる他の構造例をその分配動作と共に概略的に示す断面図である。
【図8】図6に示される構造においてサンプルを3分割する流路配置を模示的に示すブロック図である。
【図9A】図1に示される核酸検出カセットにおけるポンプ部及びこのポンプ部を作動させるポンプ機構の動作を概略的に示す断面図である。
【図9B】図1に示される核酸検出カセットにおけるポンプ部及びこのポンプ部を作動させるポンプ機構の動作を概略的に示す断面図である。
【図10】図1に示される核酸検出カセットにおける増幅チャンバの加熱を模示的に示す説明図である。
【図11】図1に示される核酸検出カセットと比較する為の比較例1における増幅チャンバの加熱を模示的に示す説明図である。
【図12】図1に示される核酸検出カセットと比較する為の比較例2における増幅チャンバの加熱を模示的に示す説明図である。
【図13】図1に示される核酸検出カセットにおけるチャンバ、流路、ポンプ、並びに、検出部の流路配置を示す模式図である。
【図14】図1に示される核酸検出カセットにおける核酸検査を実施する為の核酸件室装置を示すブロック図である。
【図15】図1に示される核酸検出カセット及び図14に示された核酸検出装置における検査工程を示すフローチャートである。
【図16】核酸検査を実施する為の第1の構成の核酸検出カセットの機能ブロック図である。
【図17】核酸検出カセットのサンプル・チャンバ部及びその周辺を示す概略断面図である。
【図18A】洗浄液チャンバ部(B)とバルブ部(B)の断面構造を示した図。
【図18B】洗浄液チャンバ部(B)とバルブ部(B)の断面構造を示した図。(バルブ容積が小さい例)。
【図18C】洗浄液チャンバ部(B)とバルブ部(B)の断面構造を示した図。(流路断面積を大きくした例)
【図18D】洗浄液チャンバ部(B)とバルブ部(B)の断面構造を示した図。(流路断面積を大きくした例)
【図19】核酸検査を実施する為の核酸検出カセットの検出部及びその周辺を示す概略断面図である。
【図20A】洗浄液チャンバ部(B)とバルブ部(B)の断面構造を示した図。(洗浄液が洗浄液チャンバに保持された図。)
【図20B】洗浄液チャンバ部(B)とバルブ部(B)の断面構造を示した図。(バルブ部が動作した際の洗浄液の動きを示した図。)
【図20C】洗浄液チャンバ部(B)とバルブ部(B)の断面構造を示した図。(洗浄液が洗浄液チャンバに保持された図。)
【図20D】洗浄液チャンバ部(B)とバルブ部(B)の断面構造を示した図。(バルブ部が動作した際の洗浄液の動きを示した図。)
【図20E】洗浄液チャンバ部(B)とバルブ部(B)の断面構造を示した図。(洗浄液が洗浄液チャンバに保持された図。)
【図20F】洗浄液チャンバ部(B)とバルブ部(B)の断面構造を示した図。(バルブ部が動作した際の洗浄液の動きを示した図。)
【図20G】洗浄液チャンバ部(B)とバルブ部(B)の断面構造を示した図。(洗浄液が洗浄液チャンバに保持された図。)
【図20H】洗浄液チャンバ部(B)とバルブ部(B)の断面構造を示した図。(バルブ部が動作した際の洗浄液の動きを示した図。)
【図21】核酸検査を実施する為の第2の構成の核酸検出カセットの機能ブロック図である。
【図22】図21に示される核酸検出カセットの廃液チャンバ部及びその周辺を示す概略断面図である。
【図23】核酸検査を実施する為の第3の構成の核酸検出カセットの機能ブロック図である。
【図24A】挿入剤チャンバ部(I)とバルブ部(I)の断面構造を示した図。
【図24B】挿入剤チャンバ部(I)とバルブ部(I)の断面構造を示した図。(流路断面積を大きくした例を示した図。)
【図24C】挿入剤チャンバ部(I)とバルブ部(I)の断面構造を示した図。(挿入剤が挿入剤チャンバに保持された図。)
【図24D】挿入剤チャンバ部(I)とバルブ部(I)の断面構造を示した図。(バルブ部が動作した際の挿入剤の動きを示した図。)
【図24E】挿入剤チャンバ部(I)とバルブ部(I)の断面構造を示した図。(挿入剤が挿入剤チャンバに保持された図。)
【図24F】挿入剤チャンバ部(I)とバルブ部(I)の断面構造を示した図。(バルブ部が動作した際の挿入剤の動きを示した図。)
【図25】核酸検査を実施する為の第4の構成の核酸検出カセットの変形例を示す機能ブロック図である。
【図26A】核酸検出カセットのサンプル・チャンバ部、増幅チャンバ部及びその周辺を示す概略断面図である。
【図26B】増幅チャンバ部(A)の図26Aとは異なる方向での断面図である
【図27A】核酸検出カセットの試料保持チャンバ部及びその周辺を示す概略断面図である。
【図27B】試料保持チャンバ部(M)の図27Aとは異なる方向での概略断面図である。
【図28】核酸検出カセットの変形例を示す機能ブロック図である。
【図29】核酸検出カセットの更なる変形例を示す機能ブロック図である。
【図30】核酸検出カセットの更なる変形例を示す機能ブロック図である。
【図31】洗浄液チャンバ部の、流路断面積を大きくした場合の効果を説明する図である。
【図32】挿入剤チャンバ部の流路断面積を大きくした場合の効果を説明する図である。
【図33】試料保持チャンバ部の流路断面積を大きくした場合の効果を説明する図である。
【図34】流路内面を疎水性処理した場合の効果を説明する図である。
【図35A】サンプル・チャンバ部の流路内面を疎水性処理した場合の効果を説明する図である。
【図35B】増幅チャンバ部の流路内面を疎水性処理した場合の効果を説明する図である。
【図36A】増幅チャンバ部の流路内面を疎水性処理した場合の効果を説明する図である。
【図36B】試料保持チャンバ部の流路内面を疎水性処理した場合の効果を説明する図である。
【符号の説明】
【0232】
1…カセット本体、2、3…可撓性部材、11…サンプル・チャンバ、12a〜12c…増幅チャンバ、13…混合チャンバ、14…洗浄剤チャンバ、15…挿入剤チャンバ、16…ポンプ部、17a〜17e…バルブ、18…廃液チャンバ、19…目的核酸検出部、20…断熱用掘り込み部、21、22a、22b、22c…ヒータ付きのバルブ機構、27a、27b、27c、27d、27e、27f…バルブ機構、50a〜50c…流路、100…核酸検出カセット、112…測定ユニット、201a〜201f…ヘッド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面及びこの表面に対向する対向面を有し、剛性を有する材料で作られ、前記表面に開口部を有する第1の空間(BV)を有するプレート状部材と、
前記表面及び対向面を覆う第1並びに第2のシート状部材と、
前記プレート状部材に形成され、気体圧力を供給するポンプ部と、
前記プレート状部材に形成され、前記ポンプ部と連通し、核酸サンプルを保持するサンプル・チャンバ部と、
前記ポンプ部と前記サンプル・チャンバ部間を連通させるポンプ部−サンプル・チャンバ部間流路と、
前記プレート状部材に形成され、前記サンプル・チャンバ部に連通し、前記核酸サンプルを受け、前記核酸サンプルから標的核酸を検出する検出部と、
前記サンプル・チャンバ部と前記検出部とを連通するサンプル・チャンバ部−検出部間流路と、
前記検出部と前記ポンプ部を連通する還流流路と、
前記プレート状部材に形成され、前記ポンプ部及び前記検出部に連通し、洗浄液を保持する洗浄液チャンバ部と、
前記プレート状部材に形成され、前記ポンプ部と前記洗浄液チャンバ部を連通するポンプ部−洗浄液チャンバ部間流路と、
前記プレート状部材の前記ポンプ部−洗浄液チャンバ部間流路に設けられ、
前記第1の空間(BV)が前記第1のシート状部材で覆われ、前記第1のシート状部材が前記開口部に押付けられ、前記第1の空間の容積が封鎖されることにより前記ポンプ部−洗浄液チャンバ部間流路を閉鎖し、前記第1のシート状部材の前記開口部への押し付けが開放され、第1の空間(BV)の容積が確保されることにより前記ポンプ部−洗浄液チャンバ部間流路を開放するバルブ部(B)と、
前記洗浄液チャンバ部と前記検出部とを連通する洗浄液チャンバ部−検出部間流路と、
前記サンプル・チャンバ部−検出部間流路と、
前記洗浄液チャンバ部−検出部間流路とが合流する合流部(SB)と
を具備し、
前記第1の空間(BV)の容積が、前記洗浄液チャンバ部−検出部間流路の容積の内、前記洗浄液チャンバ部と前記合流部(SB)の間の容積よりも小さいことを特徴とする核酸検出カセット。
【請求項2】
前記プレート状部材は、前記表面もしくは前記対向面に開口部を有する第2の空間(B)と、第2の貫通孔(B)と、前記表面に形成された第1の溝(B1)と、前記表面に形成された第1の溝(B2)、及び前記対向面に設けられた第2の溝(B)を具備し、
前記核酸検出カセットは、
前記第1の溝(B1)が前記第1のシート状部材によって覆われることによって定められる第1の流路(1B1)と、
前記第1の溝(B2)が前記第1のシート状部材によって覆われることによって定められる第1の流路(1B2)と、
前記第2の溝(B)が前記第2のシート状部材によって覆われることによって定められる第2の流路(2B)と、
前記第2の貫通孔(B)が前記第1のシート状部材及び前記第2のシート状部材によって覆われることによって定められる第3の流路(3B)と、を具備し、
前記洗浄液チャンバ部は、前記第2の空間(B)の少なくとも開口部が前記第1のシート状部材もしくは前記第2のシート状部材によって閉じられることによって定められ、
前記洗浄液チャンバ部には、前記第1の流路(1B1)及び前記第2の流路(2B)が接続し、
前記第2の流路(2B)には前記第3の流路(3B)が接続し、
前記第3の流路(3B)には前記第1の流路(1B2)が接続し、
前記バルブ部(B)は、前記第1の流路(1B1)に接続し、
前記洗浄液チャンバ部−検出部間流路は、前記第2の流路(2B)及び前記第3の流路(3B)及び前記第1の流路(1B2)を有することを特徴とする請求項1記載の核酸検出カセット。
【請求項3】
前記プレート状部材は、更に、前記表面に開口部を有する第1の空間(IV)を具備し、
前記核酸検出カセットは、
前記ポンプ部及び前記検出部に連通し、挿入剤を保持する挿入剤チャンバ部と、
前記プレート状部材に形成され、前記ポンプ部と前記挿入剤チャンバ部を連通するポンプ部−挿入剤チャンバ部間流路と、
前記プレート状部材の前記ポンプ部−挿入剤チャンバ部間流路に設けられ、
前記第1の空間(IV)が前記第1のシート状部材で覆われ、前記第1のシート状部材が前記開口部に押し付けられ、前記第1の空間(IV)の容積が封鎖されることにより前記ポンプ部−挿入剤チャンバ部間流路を閉鎖し、前記第1のシート状部材の前記開口部への押し付けを開放し、前記第1の空間(IV)の容積が確保されることにより、前記ポンプ部−挿入剤チャンバ部間流路を開放するバルブ部(I)と、
前記挿入剤チャンバ部と前記検出部を連通する挿入剤チャンバ部−検出部間流路と、
前記サンプル・チャンバ部−検出部間流路もしくは前記洗浄液チャンバ部−検出部間流路と、前記挿入剤チャンバ部−検出部間流路とが合流する合流部(SI)とを具備し、
前記第1の空間(IV)の容積が、前記挿入剤チャンバ部−検出部間流路の容積の内、前記挿入剤チャンバ部と前記合流部(SI)の間の容積よりも小さいことを特徴とする請求項1記載の核酸検出カセット。
【請求項4】
前記プレート状部材は、前記表面もしくは前記対向面に開口部を有する第2の空間(I)と、第2の貫通孔(I)と、前記表面に形成された第1の溝(I1)と、前記表面に形成された第1の溝(I2)、及び前記対向面に設けられた第2の溝(I)を具備し、
前記核酸検出カセットは、
前記第1の溝(I1)が前記第1のシート状部材によって覆われることによって定められる第1の流路(1I1)と、
前記第1の溝(I2)が前記第1のシート状部材によって覆われることによって定められる第1の流路(1I2)と、
前記第2の溝(I)が前記第2のシート状部材によって覆われることによって定められる第2の流路(2I)と、
前記第2の貫通孔(I)が前記第1のシート状部材及び前記第2のシート状部材によって覆われることによって定められる第3の流路(3I)と、を具備し、
前記挿入剤チャンバ部は、前記第2の空間(I)の少なくとも開口部が前記第1のシート状部材もしくは前記第2のシート状部材によって閉じられることによって定められ、
前記挿入剤チャンバ部には、前記第1の流路(1I1)及び前記第2の流路(2I)が接続し、
前記第2の流路(2I)には前記第3の流路(3I)が接続し、
前記第3の流路(3I)には前記第1の流路(1I2)が接続し、
前記バルブ部(I)は、前記第1の流路(1I1)に接続し、
前記挿入剤チャンバ部−検出部間流路は、前記第2の流路(2I)及び前記第3の流路(3I)及び前記第1の流路(1I2)を有することを特徴とする請求項3記載の核酸検出カセット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6A】
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【図6B】
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【図6C】
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【図7A】
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【図7B】
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【図7C】
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【図8】
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【図9A】
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【図9B】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18A】
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【図18B】
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【図18C】
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【図18D】
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【図19】
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【図20A】
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【図20B】
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【図20C】
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【図20D】
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【図20E】
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【図20F】
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【図20G】
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【図20H】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24A】
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【図24B】
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【図24C】
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【図24D】
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【図24E】
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【図24F】
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【図25】
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【図26A】
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【図26B】
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【図27A】
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【図27B】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35A】
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【図35B】
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【図36A】
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【図36B】
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【公開番号】特開2010−75072(P2010−75072A)
【公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−244744(P2008−244744)
【出願日】平成20年9月24日(2008.9.24)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成20年度、文部科学省、独立行政法人科学技術振興機構「生物剤検出用DNAチップおよび自動検知システムの開発に関する研究」委託事業、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】