説明

根菜収穫機

【課題】玉葱を圃場からピックアップする第1コンベヤ装置と、玉葱を第1コンベヤ装置から受け継いで走行機体に搬送する第2コンベヤ装置とが備えられた玉葱収穫機において、第1コンベヤ装置の対地追従性を向上させる。
【手段】第1コンベヤ装置7は第2コンベヤ装置8の下端部に相対回動可能に連結されている。第1コンベヤ装置7は、第2コンベヤ装置8に対する相対姿勢が変わることにより、ゲージホイール17が接地した状態が保持されている。コンベヤ装置7,8に、両コンベヤ装置7,8の夾角θ1の広がり限度と狭まり限度とを検知するリミットスィッチ71,72及びドグ45が設けられている。夾角θ1が所定範囲に保持されるように第2コンベヤ装置8が昇降制御される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば玉葱収穫機のように圃場から根菜を掬い上げて収穫する根菜収穫機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
根菜収穫機の一例として玉葱収穫機があり、その構成の例が例えば特許文献1に開示されている。すなわちこの玉葱収穫機は、まず、大きな要素として、エンジンを搭載すると共に運転席を備えたクローラ走行方式の走行機体と、玉葱を圃場から拾い上げる(掬いあげる)第1コンベヤ装置(拾上げコンベヤ装置)と、第1コンベヤ装置から玉葱を受け継いで走行機体に搬送する第2コンベヤ装置(持ち上げコンベヤ装置)とを備えている。第2コンベヤ装置は側面視で後傾した姿勢で走行機体に連結されており、第1コンベヤ装置はその後部を中心にして上下回動するように第2コンベヤ装置の下端部に連結されている。
【0003】
走行機体には、茎葉分離コンベヤ、小玉抜コンベヤ、選別コンベヤ等の選別処理用コンベヤが配置されている。玉葱がこれら処理用コンベヤでの移送途次において、土砂や小石や茎葉が落下すると共に、小玉や傷付き玉や腐敗玉等が除去され、規格玉だけがコンテナに収納される。
【0004】
第2コンベヤ装置はその上部を中心にして回動するように走行機体に連結されており、第2油圧シリンダによって傾斜姿勢を変えることにより、下端が地面に近接した状態(下降状態)から下端が地面から大きく離れた状態(上昇状態)とに変化する。第2コンベヤ装置は路上走行では上昇しており、作業状態では下降している。なお、特許文献1では、第2コンベヤ装置はその上端寄りの部分を中心にして屈曲する構成になっている。
【0005】
第1コンベヤ装置はその後部を中心にして回動するように第2コンベヤ装置の下部に連結されており、第1油圧シリンダによって回動操作できるようになっている。作業状態では第1コンベヤはその先端部が圃場に部分的に食い込んでおり、路上走行時には全体を上に持ち上げた姿勢になっている。
【0006】
更に、第1コンベヤ装置の前端には圃場面に当たる左右一対のゲージホイールが配置されており、ゲージホイールにより、第1コンベヤの前端と圃場との相対的な高さが一定に保持されている(或いは、圃場の凹凸に追従して第1コンベヤの前端の高さが自動調節されている。)。
【0007】
既述のとおり第1コンベヤの回動操作は第1油圧シリンダによって行われるが、作業状態では第1油圧シリンダはピストンロッドが自由に摺動し得るフリー状態になっている。従って、第1コンベヤ装置は第2コンベヤ装置に対して相対的に自由回動する状態になっており、第1コンベヤ装置は、第2コンベヤ装置に対する姿勢が自由に変わることにより(換言すると第1コンベヤ装置と第2コンベヤ装置との成す夾角が変化し得ることにより)、ゲージホイールが圃場に接地して第1コンベヤ装置を支持した状態が保持されている(すなわち、第1コンベヤ装置は圃場の凹凸に追従する。)。
【特許文献1】特開2001−346423号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
既述のとおり、第1コンベヤ装置は、第2コンベヤ装置に対する相対的な姿勢が変わることにより、前端部の高さが圃場の凹凸に追従するようになっている。ところが、第2コンベヤ装置に対して第1コンベヤ装置が姿勢変化し得る範囲(第1コンベヤ装置と第2コンベヤ装置との夾角の範囲)にはおのずと限界がある。すなわち、第1コンベヤ装置は、第1油圧シリンダが伸縮できる範囲内でしか第2コンベヤ装置に対して回動することはできない。
【0009】
このため、例えば走行機体が前上がりになったり逆に前下がりになったりというように走行機体の側面視での姿勢が大きく変わると、第1コンベヤ装置の前端を圃場の凹凸に的確に追従させることができなくなったり、第1コンベヤ装置から第2コンベヤ装置への玉葱のスムースな移し替えが阻害されたりといった不具合の発生が懸念される。
【0010】
具体的に述べると、
a)例えば走行機体が過度に後ろ下がり姿勢になることで第2コンベヤ装置の下端が圃場から上がり過ぎると、第1コンベヤ装置はその前端部が所定高さに下がる前に下向き回動不能(前倒し不能)になってしまい、第1コンベヤ装置に浮き現象が生じて玉葱を掬い上げできなくなる(或いは掬い残しがでる)、
b)例えば走行機体が過度に前下がり姿勢になることで第2コンベヤ装置の下端が圃場に近づき過ぎる(下がり過ぎる)と、第1コンベヤ装置が過度に圃場に圧接した状態でありながら前端部を上昇させるように起こし回動させることができず、このため第1コンベヤ装置が圃場に突っ込み状態になってしまう、
c)走行機体が過度に前傾した状態で第1コンベヤ装置のゲージホイールが対地追従することで第1コンベヤ装置と第2コンベヤ装置との夾角が小さくなり、その結果、第2コンベヤ装置の後傾角度が小さくなって玉葱が持ち上げられずに転がり落ちてしまう、
といった不具合が懸念される。
【0011】
本願発明は、このような現状に鑑みなされたものであり、改善された根菜収穫機を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本願発明に係る根菜収穫機は、主要要素として、エンジンを搭載すると共に運転席が備えられた走行機体と、前記走行機体の進行方向前方において圃場の根菜を掬い上げる第1コンベヤ装置と、前記第1コンベヤ装置から根菜を受け継いで走行機体に移送する第2コンベヤ装置とを備えている。
【0013】
そして、前記第2コンベヤ装置は側面視後傾姿勢であって圃場面からの高さを変え得る状態で走行機体に連結されている一方、前記第1コンベヤ装置は、前記第2コンベヤ装置に対して相対回動し得るようにその後部が第2コンベヤ装置の下部に連結されており、このため第1コンベヤ装置と第2コンベヤ装置とは側面視でくの字状の形態になっていて夾角を変更可能であり、更に、前記第1コンベヤ装置の前端部には圃場に接地する回転自在なゲージホイールが設けられており、第1コンベヤ装置と第2コンベヤ装置との夾角を変えることでゲージホイールの接地状態が保持されるようになっている。
【0014】
そして、請求項1の発明は、上記の構成において、前記第1コンベヤ装置と第2コンベヤ装置とのうち何れか一方又は両方に、第2コンベヤ装置に対する第1コンベヤ装置の相対姿勢を検知する検知手段が設けられており、両コンベヤ装置の成す夾角が下限角度よりも小さくなると第2コンベヤ装置を上昇させ、両コンベヤ装置の成す夾角が上限角度よりも大きくなると第2コンベヤ装置を下降させる、というように検知手段に基づいて第2コンベヤ装置の昇降が制御される。
【0015】
請求項2の発明は、請求項1において、前記第1コンベヤ装置と第2コンベヤ装置とはそれぞれ油圧シリンダで姿勢変更させられるようになっている一方、前記検知手段は、下限角度検知用リミットスイッチと上限角度検知用リミットスイッチとこれらをON・OFFさせるドグとから成っている。
【0016】
請求項3の発明は、請求項2において、前記第1コンベヤ装置と第2コンベヤ装置とはそれぞれ回転軸が軸支された左右の側枠を備えており、前記リミットスイッチを第2コンベヤ装置における側枠の外面に取付けており、第1コンベヤ装置の側枠には棒状のドグを横向きに突設している。
【発明の効果】
【0017】
根菜収穫機において、第1コンベヤ装置は、第2コンベヤ装置と成す夾角が変化することでゲージホイールを圃場の凹凸に追従させているのであるが、ゲージホイールは接地すべきものであるから、両コンベヤ装置の成す夾角が小さくなり過ぎるのは第2コンベヤ装置が過度に下降していることに他ならず、逆に、両コンベヤ装置の成す夾角が大きくなり過ぎるのは第2コンベヤ装置が過度に上昇していることに他ならない。逆に言うと、第2コンベヤ装置が過度に下降すると両コンベヤ装置の成す夾角は過度に小さくなり、第2コンベヤ装置が過度に上昇すると両コンベヤ装置の成す夾角は過度に大きくなる。
【0018】
そして、本願発明では、両コンベヤ装置の成す夾角が過度に小さくなると第2コンベヤ装置が上昇することで夾角は大きくなり、ゲージホイールの接地状態が保持されて第1コンベヤ装置の対地追従が維持される。逆に、両コンベヤ装置の成す夾角が過度に大きくなると第2コンベヤ装置が上昇することで夾角は大きくなり、これまたゲージホイールの接地状態が保持されて第1コンベヤ装置の対地追従が維持される。
【0019】
従って、本願発明によると、作業状態において、走行機体の姿勢や圃場の状態に関係なく第2コンベヤ装置の対地高さが所定の高さの範囲に保持されるため、第1コンベヤ装置はゲージホイールを接地させた状態で対地追従して回動する状態が維持されており、これにより、第1コンベヤ装置の浮き現象や圃場突っ込み現象を防止して的確な収穫作業を実現できる。
【0020】
また、第1コンベヤ装置の対地姿勢が過度に変化することを防止できるため、根菜の掬いあげのムラも無くすことができ、更に、両コンベヤ装置の成す夾角が一定の範囲に保たれるため、第1コンベヤ装置から第2コンベヤ装置への根菜の移し替えもスムースに行われる。
【0021】
更に本願発明では、第1コンベヤ装置と第2コンベヤ装置との相対姿勢を検知して第2コンベヤ装置の対地高さを制御するものであるため、検知手段は圃場の状態に影響を受けることはない。このため、検知手段は高い耐久性を確保できると共にメンテナンスの手間も軽くなる。
【0022】
ところで、接触式センサーの一例として、信頼性の高いリミットスイッチが安価でしかも多種類市販されている。このため請求項2のように構成すると、安価なリミットスイッチを使用してコスト抑制に貢献できる。更に請求項3のように構成すると、リミットスイッチはコンベヤの外側に配置されているので、収穫物や土の影響を受けずに作動が確実であると共にメンテナンスも容易である利点がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本願発明を玉葱収穫機に適用した実施形態を図面に基づいて詳述する。図1は全体の側面図、図2は概略平面図、図3は略前半部の側面図、図4は更に前部の側面図、図5は図4の拡大図でかつ要部の側面図、図6のうち(A)は図5の部分拡大図で(B)は(A)のB−B視断面図、図7は作用を示す図である。なお、以下の説明で方向を示すために前後左右の文言を使用するが、この前後左右は玉葱収穫機の前進方向を向いた状態を基準にしている。
【0024】
(1).玉葱収穫機の概略
まず、玉葱収穫機の概略を説明する。玉葱収穫機は左右のクローラ2で走行する走行機体1を備えており、走行機体1のうち左右クローラ2で挟まれた部分の前半部には、エンジン4やミッション5等を内蔵したエンジン部3が配置されている。走行機体1の前部のうちエンジン部3の右横部には、ハンドルや操作レバー類が配置された運転席(操縦部)6を設けている。
【0025】
玉葱収穫機には、更に、圃場Gの玉葱を掬い上げる(拾い上げる又は掻き上げると表現することもできる)第1コンベヤ装置7と、第1コンベヤ装置7から玉葱を受け継いで走行機体1に搬送する第2コンベヤ装置8とが備えられている。第2コンベヤ装置8は、側面視で下端が前に位置して上端が後ろに位置した後傾姿勢であり、かつ、平面視で後半部が走行機体1と部分的に重なる状態に配置されている。
【0026】
第2コンベヤ装置8は、その大部分を構成する主部8aと、上部を構成して主部8aよりも寝た姿勢の補助部8bとから成っており、主部8aと補助部8bとは互いに屈曲し得る状態に中間連結軸9で連結されている。従って、第2コンベヤ装置8は全体としてくの字状の形態になっている。主部8aの下端部は左右のリフトアーム10を介して走行機体1に連結されており、他方、補助部8bの後端(上端)は上連結軸11によって走行機体1に回動可能に連結されている。
【0027】
リフトアーム10の後端部と走行機体1とは第2油圧シリンダ12で連結されている。従って、第2油圧シリンダ12が伸縮することによって第2コンベヤ装置8は後傾角度が変化し、これにより、第2コンベヤ装置8は地面(圃場面Gや路面)に対して昇降する(対地高さが変化する)。なお、第2コンベヤ装置8は、その上端は走行機体1に連結されているので全体が昇降するとは言えないが、地面との関係では昇降している。
【0028】
第1コンベヤ装置7は、その後部を中心にして前部が上下動するように第2コンベヤ装置8の下端部に後部連結軸13で連結されており、かつ、第2コンベヤ装置8に対する相対姿勢を変化させ得るように第1油圧シリンダ32で連結されている。
【0029】
更に、第1コンベヤ装置7は、玉葱を圃場Gから縁切りする掘取刃14、玉葱を圃場Gから掬い上げる拾い上げ拾上コンベヤ15、圃場Gの玉葱を拾上コンベヤ15の上面に強制移動させる掻込コンベヤ16、圃場G面に回転自在に当たっているゲージホイール17、を備えている。掻込コンベヤ16は、拾上コンベヤ15の上面に重なるようにして周回する多数枚の掻込羽根16aを有している。なお、第1コンベヤ装置7はピックアップ装置と呼び換えることも可能である。
【0030】
走行機体1に配置したエンジン部3は山形ボンネット18を備えており、山形ボンネット18の上方でかつ第2コンベヤ装置8の後端部(上端部)下方には、茎葉分離コンベヤ19が配置されている。茎葉分離コンベヤ19は水平に対して後傾した姿勢であり、玉葱は第2コンベヤ装置8から茎葉分離コンベヤ19に移行し、茎葉分離コンベヤ19の箇所で作業員によって茎葉が切り取られる。
【0031】
図2に簡単に示すように、走行機体1の後端には後ろ向きに延びるフォーク20aを有するフォークリフト20が昇降自在及び水平回動自在に装備されており、フォークリフト20には収穫物集積用のコンテナ21が搭載されている。フォークリフト20によってコンテナ21を圃場Gから持ち上げたり圃場Gに降ろしたりすることができる。走行機体1の後半部には上面開放の貯留箱22が配置されている。貯留箱22は内部が十字形の隔壁23で仕切られており、このため、貯留箱22は4つの受箱24に区分されている。
【0032】
図1及び図2に符号26で示すのは選別コンベヤであり、この選別コンベヤ26は、茎葉分離コンベヤ19の後側から貯留箱22の上方を通過してコンテナ21に向かうように後部をやや高くした傾斜姿勢に配置されている。符号27で示すのは、選別コンベヤ26の左右外側部から下方の後部左右受箱24に延設されたシュートである。選別コンベヤ26の左右外側には、選別作業者を搭乗させるための左右の作業用ステップ28が横方向に張り出す状態で設けられている。
【0033】
図2に示す符号29は、運転席6と反対側に位置した作業用ステップ28に設けたはしごを示している。符号30で示すのは、茎葉分離コンベヤ19と選別コンベヤ26の間に配置された小玉抜コンベヤである。
【0034】
ゲージホイール17を圃場Gに接地させた状態で走行機体1を前進させると、圃場Gの玉葱は、掘取刃9と掻込コンベヤ16とを介して拾上コンベヤ15に拾上げられ、拾上げられた玉葱は拾上コンベヤ15を経て順次、第2コンベヤ装置8、茎葉分離コンベヤ19、小玉抜コンベヤ30、選別コンベヤ装置20に搬送され、規格品は選別コンベヤ26の終端からコンテナ21に積み込まれる。
【0035】
圃場Gの玉葱と一緒に土砂や茎葉類が拾上コンベヤ15に拾上げられるが、土砂類は拾上コンベヤ15及び第2コンベヤ装置8で搬送される途中で抜落ちて圃場Gに戻る。茎葉類の多くは第2コンベヤ装置8を経て玉葱と一緒に茎葉分離コンベヤ19に移行する。茎葉分離コンベヤ19はその上面が前進するように周回しているが、後傾姿勢であるため、玉葱は茎葉分離コンベヤ19を転がり落ちて小玉抜コンベヤ30に移行する。
【0036】
他方、茎葉類は柔らかくて長いため摩擦によって茎葉分離コンベヤ19に止まって前送りされ、茎葉分離コンベヤ19の前端から下方のボンネット18の前下がり傾斜面上に落下し、ボンネット18の前下がり傾斜面上に滑落して走行機体1の前側から圃場Gに落ちる。
【0037】
規格サイズ以下の小玉の玉葱は小玉抜コンベヤ30から下方に抜け落ちて、ボンネット18の後下がり傾斜面上に落下し、下方の前部左右受箱24に収集される。規格サイズ以上の玉葱は小玉抜コンベヤ30で選別コンベヤ26に送られてコンテナ21に溜められる。そして、規格サイズ以上の玉葱が選別コンベヤ装置20で搬送される過程で、作業用ステップ28に載った作業者によって傷付玉や腐敗玉等の不良品が除去され、不良品は放出シュート27を介して下方の後部左右受箱24に落とされて収集される。
【0038】
このようにして、規格サイズ以上でかつ傷や腐りのない良品の玉葱だけが選別コンベヤ26からコンテナ21に積込まれる。コンテナ21を挟んだ左右両側には、均平作業用ステップ31が設けられている。コンテナ21に溜まっている玉葱群は、均平作業用ステップ31に載った作業者によって上面が平になるように均される。
【0039】
既述のように、コンテナ21の玉葱が所定量になるとコンテナは圃場Gに降ろされ、次の空コンテナ21が積み込まれる。なお、フォークリフト20は油圧シリンダで駆動されるが、詳細は省略する。
【0040】
(2).第2コンベヤ装置の構造
次に、本願発明の要部が組み込まれている第1コンベヤ装置7及び第2コンベヤ装置8とを詳述する。まず、第2コンベヤ装置8の構造から説明する。
【0041】
第2コンベヤ装置8は、主部8aの構成要素である左右の主第2側枠33と、補助部8bの構成要素である左右の副第2側枠34とを備えており、主第2側枠33の上端部と副第2側枠34の前端部とは既述した中間連結軸9によって相対回動可能に連結されており、副第2側枠34の後端は既述した上連結軸11によって走行機体1に相対回動可能に連結されている。
【0042】
エンジン部3の左右外側にはガードフレーム35が立設されており、このガードフレーム35の上に左右のトップフレーム36を立設しており、第2コンベヤ装置8を構成する補助第2側枠34は、上連結軸11によってトップフレーム36の上端部に回動可能に連結(枢支)されている。左右の主第2側枠33の下部に前記リフトアーム10の前端部が連結されている。
【0043】
また、第2コンベヤ装置8は、主要要素として搬送用の第2コンベヤ37を備えているが、この第2コンベヤ37は、主第2側枠33の下端部を繋ぐ下連結軸38に設けた下スプロケット39と、前記中間連結軸9と同軸に設けた中間スプロケット40と、前記上連結軸11と同軸に設けた上スプロケット41とに巻き掛けている。また、前記中間スプロケット39の近傍には、第2コンベヤ37を行きと戻りが平行になるように保持するためのアイドルスプロケット42を設けている。アイドルスプロケット42は主第2側枠33に取付けられている。
【0044】
第2コンベヤ37は、例えば、網状のベルト体に多数の横長樋状バケット37aを適宜間隔で取付けた形式になっている。なお、第2コンベヤ37は持ち上げコンベヤや中継コンベヤと呼び変えることも可能である。
【0045】
第2コンベヤ装置8を構成する片側(前進方向を向いた左側)の主第2側枠33の下端部に、回動式接触子43を有する補助リミットスイッチ44が取付けられている一方、第1コンベヤ装置7を構成する片側の第1側枠37には、前記補助リミットスイッチ44の接触子43に当たり得るドグ(操作ピン)45が横向きに突設されている。
【0046】
拾上コンベヤ15を略水平姿勢で地面からある程度の高さ(設定高さ)に上昇させるとドグ45が接触子43に当たって、補助リミットスイッチ44はオフ状態に保持される。拾上コンベヤ15を設定高さ以下に下降させると、ドグ45が接触子43から離れて補助リミットスイッチ44がオン状態に保持される。従って、拾上コンベヤ装置11の高さが設定高さ以上か以下かが補助リミットスイッチ44で検出される。
【0047】
前記第1油圧シリンダ32は単動形であり、油圧ポンプから電磁弁を介して圧油がピストンロッドの送りポートと戻しポートとに供給される。詳細は省略するが、油圧ポンプと第2油圧シリンダ40とを繋ぐ油圧回路には、補助リミットスイッチ44のON・OFFによって作動が入り・切りされるフローティング機構を設けている。このフローティング機構により、第1コンベヤ装置7を地面から所定高さに保持する態様と、第1コンベヤ装置7を所定高さよりも高く上昇させる態様と、第2油圧シリンダ40の圧力を開放して圃場Gの凹凸に追従させる態様、の3つの態様を選択できる(詳細は既述の特許文献1に開示されている。)。
【0048】
(3).第1コンベヤ装置の構造
次に、第1コンベヤ装置7の構造を説明する。例えば図4に示すように、第1コンベヤ装置7は左右の第1側枠(側板)47を備えており、この第1側枠47に掘取刃9と拾上コンベヤ15とが取付けられている。拾上コンベヤ15は例えば網状のベルト方式になっている。掘取刃9は第1側枠47に固定されており、他方、拾上コンベヤ15は側枠47に対して、前後連結軸48,13及びこれらに回転自在に設けた前後スプロケット49,50を介して周回自在に取付けられている。
【0049】
第1コンベヤ装置7を構成する左右の第1側枠47は、拾上コンベヤ15の後部連結軸13によって第2主側枠33に相対回動可能に連結されている。また、第1コンベヤ装置7の後部スプロケット50が固定された回転軸13と第2コンベヤ装置8の下スプロケット39が固定された回転軸38とには、伝動スプロケットを介して伝動チェン51が巻き掛けられている。従って、拾上コンベヤ15は第2コンベヤ37によって駆動される。
【0050】
左右の第1側枠47の後部はそれぞれ上向きに突出しており、左右の第1側枠47の後部上端と左右の第2主側枠33とにそれぞれ第1油圧シリンダ32が相対可能に連結されている。正確に述べると、第1油圧シリンダ32の後端は主第2側枠33にピンで相対回動可能に連結されており、第1油圧シリンダ32におけるピストンロッド32aの前端は第1側枠47の後部上端にピンで相対回動可能に連結されている。
【0051】
従って、第2油圧シリンダ32を伸縮駆動することにより、第1コンベヤ装置7は前倒れしたり起きたりというように第2コンベヤ装置8に対して相対回動する(第1コンベヤ装置7が昇降すると言い換えてもよい。)。
【0052】
左右の側枠47の外側には前向きに延びる左右の支持フレーム52が配置されている。支持フレーム52は、その後端部を中心にして上下回動し得るように第1側枠47に軸で連結されており、かつ、支持フレーム52の先端に、ブラケット52aを介してゲージホイール17が回転自在に取付けられている。
【0053】
図4に一点差線で示すように、左右の支持フレーム52の前寄り部位には上向きのブラケット53が固定されており、左右のブラケット53に横杆54が固定されている。横杆54の左右両端部には側面視後傾姿勢のアーム55がその後端を中心に回動し得るようにそれぞれ連結されており、左右アーム55の上下中途部と左右の第1側枠47とが連結杆56で相対回動可能に連結されている。更に、左右アーム55の下端と支持フレーム52とは、前後方向に延びる第3油圧シリンダ57を介して相対回動可能に連結されている。
【0054】
従って、第3油圧シリンダ57が伸縮すると、アーム55と連結杆56との回動を介して支持フレーム52が回動し、その結果、ゲージホイール17が第1側枠47に対して昇降する。すなわち、第3油圧シリンダ57の伸縮によってゲージホイール17と拾上コンベヤ15との相対的な高さが変化するのであり、これによって拾上コンベヤ15の先端部の対地高さを調節できる。
【0055】
掻込コンベヤ16は、チェン等の無体帯に多数の掻き込み羽根16aを取付けた構造になっており、前後のスプロケット16c,16dによって周回する。リアスプロケット58は、左右第1側枠47の上向き後部にリア回転軸59を介して回転自在に取付けられており、フロントスプロケット16cは、第1主側枠47の前部に突設したブラケット60にフロント軸を介して取付けられている。掻込コンベヤ16のリア回転軸16bには、拾上コンベヤ15の後部連結軸13の箇所から伝動チェン61及びアイドルスプロケットを介して動力が伝達されている。
【0056】
第1コンベヤ装置7及び第2コンベヤ装置8への動力伝達機構は図3に大まかに示されている。すなわち、エンジン4の出力軸の回転は変速ケース62の出力軸であるPTO軸63に伝達され、このPTO軸63から複数のチェン64,65を介して第2コンベヤ装置8の上スプロケット41に伝達される。第1コンベヤ装置7の動力が第2コンベヤ37を介して行われることは既に述べた。
【0057】
(4).第2コンベヤ装置の高さ規制
図3に全体を示して図4に一部を示すように、第2コンベヤ装置8における主第2側枠33のうち運転席6に近い側の第2側枠33には、作業状態で第2コンベヤ装置8の主部8aの下降をロックしたりロック解除したりできるレバー67やストッパー68が設けられている。
【0058】
すなわち、平坦な圃場Gで機体が前後に傾いていない状態では、第2コンベヤ装置8を地面から所定高さ(約100ミリ前後の高さ)に保持してそれ以下に下降するのを規制するものであり、ストッパー68で第2コンベヤ装置8の下降が阻止され、レバー67により、ストッパー68が機能する状態と機能しない状態とに切り替えられる。
【0059】
ストッパー68は、主第2側枠33の下部外面のうちリフトアーム10の上側部分に前後方向の軸回りに回動自在に取付けられており、かつ、内面が主第2側枠33の外面に当接した下向き姿勢となる作用位置にコイルばね69で付勢されている。ストッパー68が下向き姿勢のときは、ストッパー68がリフトアーム10の上面に当たることにより、第2コンベヤ装置8は設定高さ以下に下降しない通常作業位置に保持される。
【0060】
レバー67を例えば上向きに回動させると、ワイヤー70の引っ張りによってストッパー68は横向き姿勢となり、その結果、第2コンベヤ装置8は通常作業位置よりも下方に下降させ得る。本願発明では、一般に、ストッパー68が機能していない規制解除モードに適用される(すなわち、第2コンベヤ装置8は通常作業位置を境にした上下に昇降できる。)。
【0061】
(5).第2コンベヤ装置の対地高さ制御
次に、図5〜図7を参照して本願発明の要点部の具体例を説明する。本実施形態では、第1コンベヤ装置7と第2コンベヤ装置8との成す夾角θ1の限度を検知する手段として第1リミットスィッチ71と第2リミットスィッチ72とを使用している。図5では両リミットスィッチ71,72は簡略して表示しており、図6では正確に表示している。なお、図5以下の図面では既述したストッパー68は表示していない。
【0062】
第1リミットスィッチ71及び第2リミットスィッチ72は、第2コンベヤ装置8を構成する片側(前進方向に向いた左側)の主第2側枠33のうち下部でかつ第1コンベヤ装置7に寄った部位に配置されている。より正確に述べると、両リミットスィッチ71,72は、片側の主第2側枠33のうち、両コンベヤ装置7,8の相対回動支点(13)を挟んで第1コンベヤ装置7に寄った部位に配置されている。
【0063】
両リミットスィッチ71,72は回動式の接触子73,74を備えており、各接触子73,74は、左右横長の軸心回りに回動するようになっており、第1コンベヤ装置7の方向に向いている。また、第1リミットスィッチ71で夾角θ1の上限値が検知され、第2リミットスィッチ72で夾角θ1の最大値が検知されるが、両リミットスィッチ71,72は、第1リミットスィッチ71が下で第2リミットスィッチ72が上に位置するように配置されている。
【0064】
他方、第1コンベヤ装置7を構成する片側の第1側枠47には、両リミットスィッチ71,72の接触子73,74に当接し得る棒状のドグ45が横向きに突設されている。ドグ45は既述したものであり、本実施形態では、片側の側枠47のうち第2リミットスィッチ72の上方の部分に既述した補助リミットスイッチ44を配置しており、1本のドグ45で3個の第1リミットスイッチ71,72,45を作動(ON・OFF)させている。
【0065】
各リミットスイッチ71,72,44の接触子73,74,45が干渉しないように、リミットスイッチ71,72,44は横方向の高さを互いに異ならせている。すなわち、図6(B)に示すように、補助リミットスィッチ44は主第2側枠33の本体部に固定し、第2リミットスイッチ72は主第2側枠33の一部を構成するカバー板33aに固定、第1リミットスイッチ71はカバー板33aにブラケット75を介して固定している。
【0066】
第1コンベヤ装置7は、図5に示すように、第2コンベヤ装置8に対して相対的にθ2だけ回動し得る。従って、第1コンベヤ装置7と第2コンベヤ装置8との成す夾角θ1はθ2の範囲で変化し得る。図5では、夾角θ1が上限値(広がり最大値)よりもやや小さい角度である状態を示している。
【0067】
そして、図7(A)では、両コンベヤ装置7,8の成す夾角θ1が最大に広がった状態を描いており、この状態ではドグ45は白丸で示すように第1リミットスィッチ71の接触子73から離反しており、従って、第1及び第2のリミットスィッチ71,72はOFFになっている。
【0068】
両コンベヤ装置7,8の成す夾角θ1が最大値からある程度小さくなるとドグ45は第1リミットスィッチ71の接触子72に当たり、第1リミットスィッチ71はONになる。両コンベヤ装置7,8の成す夾角θ1が更に小さくなると、ドグ45が第2リミットスィッチ72の接触子74に当たって第2リミットスィッチ72はONになる。そして、第1リミットスィッチ71がONで第2リミットスィッチ72がOFFの状態を自動作業可能状態に設定しており、この状態では第2コンベヤ装置8は昇降操作されない。
【0069】
両コンベヤ装置7,8の夾角θ1が広がり過ぎて第1リミットスィッチ71及び第2リミットスィッチ72ともOFFになると、第2油圧シリンダ12を伸ばし操作して第2コンベヤ装置8を上昇させ、逆に、夾角θ1が狭まり過ぎて第1リミットスィッチ71及び第2リミットスィッチ72ともONになると、第2油圧シリンダ12を縮め操作して第2コンベヤ装置8を下降させる。
【0070】
このように、第1リミットスィッチ71はONで第2リミットスィッチ72はOFFの状態が保持されるように第2油圧シリンダ12を自動的に制御することにより、第1コンベヤ装置7はゲージホイール17が接地してなおかつ回動し得る状態に保持される。これにより、圃場Gの凹凸に的確に追従して収穫作業を行えるのである。
【0071】
なお、第2油圧シリンダ12が過敏に応答するのは好ましくないので、第1リミットスィッチ71がONになってから第2コンベヤ装置8を下降させるとき、及び、第2リミットスィッチ72がONになってから第2コンベヤ装置8を上昇させるときに、若干の時間だけ第2油圧シリンダ12を作動させ続けることにより、両コンベヤ装置7,8の夾角θ1が作業許容範囲のおおむね中間点あたりに位置するように設定しておくのが好ましい。
【0072】
補助リミットスィッチ44の機能は既述したとおりであり、第1リミットスィッチ71及び第2リミットスィッチ72が機能しているモードでは補助リミットスィッチ44は機能していない。第2コンベヤ装置8の主側枠33には、上限高さ位置を検知する第3リミットスィッチ76を設けている。第3リミットスィッチ76も回動式の接触子77を備えており、リフトアーム10に設けたドグ78が接触子77に当たるように設定している。
【0073】
図8に別形態として示すように、第1リミットスィッチ71に対応した第1ドグ79と、第2リミットスィッチ72に対応した第2ドグ80とを設けることも可能である。
【0074】
(6).その他
本願発明は上記の実施形態の他にも様々の態様に具体化できる。例えば両コンベヤ装置の相対的姿勢(夾角)の広狭限度を検知する手段としては、リミットスィッチに限らず、ロータリー式又はリニア式のエンコーダ、ポテンショメータ、各種の近接スイッチ、光電スイッチ等の非接触式センサなどの各種のものを使用できる。リミットスィッチ等のセンサを第1コンベヤ装置に設けてドグを第2コンベヤ装置に設けたり、或いは、両コンベヤ装置にセンサとドグとを設けることも可能である。
【0075】
センサ類を使用せずに、第2油圧シリンダへの圧油の送りを切り替えるバルブを第1コンベヤ装置又は第2コンベヤ装置に設けて、バルブを直接に作動させることも可能である。
【0076】
更に本願発明の適用対象は玉葱収穫機に限られるものではなく、例えばじゃがいも収穫機等の芋類収穫機、人参収穫機などの各種の根菜収穫機に適用できる(なお、本願発明では落花生収穫機も根菜収穫機に含まれる)。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】根菜収穫機の一例である玉葱収穫機の全体の側面図である。
【図2】玉葱収穫機の概略平面図である。
【図3】玉葱収穫機の略前半部の側面図である。
【図4】玉葱収穫機の前部の側面図である。
【図5】図4の拡大図でかつ要部の側面図である。
【図6】(A)は図5の部分拡大図、(B)は(A)のB−B視断面図である。
【図7】作用を示す図である。
【図8】他の実施形態を示す図である。
【0078】
1 走行機体
4 エンジン
6 運転席
7 第1コンベヤ装置
8 第2コンベヤ装置
14 掘取刃
15 拾上コンベヤ
16 掻込コンベヤ
17 ゲージホイール
37 第2コンベヤ
33 第2コンベヤ装置を構成する主第2側枠
47 第1コンベヤ装置を構成する第1側枠
45 ドグ
71 第1リミットスィッチ
72 第2リミットスィッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンを搭載すると共に運転席が備えられた走行機体と、前記走行機体の進行方向前方において圃場の根菜を掬い上げる第1コンベヤ装置と、前記第1コンベヤ装置から根菜を受け継いで走行機体に移送する第2コンベヤ装置とを備えており、
前記第2コンベヤ装置は側面視後傾姿勢であって圃場面からの高さを変え得る状態で走行機体に連結されている一方、前記第1コンベヤ装置は、前記第2コンベヤ装置に対して相対回動し得るようにその後部が第2コンベヤ装置の下部に連結されており、このため第1コンベヤ装置と第2コンベヤ装置とは側面視でくの字状の形態になっていて夾角を変更可能であり、
更に、前記第1コンベヤ装置の前端部には圃場に接地する回転自在なゲージホイールが設けられており、第1コンベヤ装置と第2コンベヤ装置との夾角を変えることでゲージホイールの接地状態が保持されるようになっている、
という根菜収穫機であって、
前記第1コンベヤ装置と第2コンベヤ装置とのうち何れか一方又は両方に、第2コンベヤ装置に対する第1コンベヤ装置の相対姿勢を検知する検知手段が設けられており、両コンベヤ装置の成す夾角が下限角度よりも小さくなると第2コンベヤ装置を上昇させ、両コンベヤ装置の成す夾角が上限角度よりも大きくなると第2コンベヤ装置を下降させる、というように検知手段に基づいて第2コンベヤ装置の昇降が制御される、
根菜収穫機。
【請求項2】
前記第1コンベヤ装置と第2コンベヤ装置とはそれぞれ油圧シリンダで姿勢変更させられるようになっている一方、前記検知手段は、下限角度検知用リミットスイッチと上限角度検知用リミットスイッチとこれらをON・OFFさせるドグとから成っている、
請求項1に記載した根菜収穫機。
【請求項3】
前記第1コンベヤ装置と第2コンベヤ装置とはそれぞれ回転軸が軸支された左右の側枠を備えており、前記リミットスイッチを第2コンベヤ装置における側枠の外面に取付けており、第1コンベヤ装置の側枠には棒状のドグを横向きに突設している、
請求項2に記載した根菜収穫機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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