説明

格子部材及び該格子部材を有する車両前部構造

【課題】車両前方から外力が加わった場合に、略水平状態のままの桟の後端部が、コンパートメント内部品と当接しても、該コンパートメント内部品の損傷を緩和させる。
【解決手段】車両前方からの外気をコンパートメント内に通すグリル補強部材4と、グリル補強部材4の車両後方に配される熱交換器3とを有する車両前部構造であって、グリル補強部材4は、縦桟上部10と縦桟下部11に脆弱部10B、11Bを形成した縦桟8と、この縦桟8と交差する横桟9とで構成し、車両前方からの外力Fによって、その縦桟8を座屈させて横桟9を回転させるようにして前記外力を受け流すように構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンパートメント内に外気を導入するために、車両の前部に配され、2つの桟が交差する格子状の格子部材及び該格子部材を有する車両前部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1及び2には、ラジエータグリルと、ラジエータグリルの車両後方に配されるラジエータ等を有した自動車の前部構造が開示されております。これら引用文献1及び2のラジエータグリルは、いずれも縦桟と、該縦桟と交差する横桟とを有した構造である。引用文献1のラジエータグリルでは、車両衝突すると、バンパフェイシャに固定されるラジエータグリル全体が車両後方へ弧状に撓み変形し、縦桟に形成された複数のスリットに応力集中することで、該縦桟を車両前後方向で湾曲させてラジエータグリル自体の破損を回避している。引用文献2のラジエータグリルでは、車両衝突すると、車体パネルに固定される上部を硬質樹脂材料としバンパに固定される下部を軟質樹脂材料とすることで、上部と下部の境界に形成した切欠部を境にして前記下部を車両後方へ湾曲させてラジエータグリル自体の破壊を回避している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−34771号公報
【特許文献2】実開昭56−134216号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、引用文献1及び2では、車両前部が潰れるような車両衝突時には、ラジエータグリルの縦桟が略水平状態のまま車両後方へ押されて、桟の後端部がその後ろに配置された熱交換器などのエンジンルーム内部品と当接し、車両前方からの外力が略水平状態の桟を伝って、エンジンルーム内部品に入力し、エンジンルーム内部品を損傷させる恐れがある。
【0005】
そこで、本発明は、車両前方から外力が加わった場合に、略水平状態のままの桟の後端部が、コンパートメント内部品と当接しても、該コンパートメント内部品の損傷を緩和することのできる格子部材及び該格子部材を有する車両前部構造を提供することを主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の車両前部構造は、車両前方からの外気をコンパートメント内に通す格子部材を、第1の桟と該第1の桟と交差する第2の桟とにより形成し、車両前方からの外力によって、前記第1の桟と前記第2の桟のいずれか一方を座屈させて、他方を回転させるように構成した。
【発明の効果】
【0007】
本発明の車両前部構造によれば、車両前方から外力が加わったときに、第1の桟と第2の桟のいずれか一方を座屈させて、他方を回転させるために、略水平状態のまま桟の後端部がコンパートメント内部品に当接しても、車両前方からの外力を受け流すことができ、それによりコンパートメント内部品の損傷を緩和させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】第1の実施形態を示し、車両前部構造の分解斜視図である。
【図2】第1の実施形態を示し、車両前部構造の正面図である。
【図3】第1の実施形態を示し、車両前部構造の平面図である。
【図4】第1の実施形態を示し、車両前部構造の要部拡大断面図である。
【図5】第1の実施形態を示し、フェイシャへのグリル補強部材の取り付け状態を示す図である。
【図6】第1の実施形態を示し、フェイシャへのグリル補強部材の取り付け状態を示す要部拡大斜視図である。
【図7】第1の実施形態を示し、リブを脆弱部に形成したフェイシアの背面図である。
【図8】第1の実施形態を示し、グリル補強部材の斜視図である。
【図9】第1の実施形態を示し、オーナメント支持部材の両側にグリル補強部材を配置させた状態の正面図である。
【図10】第1の実施形態を示し、グリル補強部材の縦桟部分を車両外方に傾けて該グリル補強部材を車両外方へ変形させる様子を示す図である。
【図11】第1の実施形態を示し、オーナメント支持部材の斜視図である。
【図12】第1の実施形態を示し、縦桟部分を取り出して示す要部拡大斜視図である。
【図13】第1の実施形態を示し、グリル補強部材の要部拡大側面図である。
【図14】第1の実施形態を示し、衝突によりグリル補強部材が潰れる様子を示す動作図である。
【図15】第1の実施形態を示し、衝突時にグリル補強部材に加わる力の向きを示す図である。
【図16】第1の実施形態を示し、衝突時に縦桟部分の一部が折れることを示す図である。
【図17】第2の実施形態を示し、縦桟上部の車両前方を脆弱部、後方を高強度部、縦桟下部の車両前方を高強度部、後方を脆弱部としたグリル補強部材の要部拡大側面図である。
【図18】第2の実施形態を示し、縦桟上部の車両前方を高強度部、後方を脆弱部、縦桟下部の車両前方を脆弱部、後方を高強度部とし且つ脆弱部と高強度部の面積を同一としたグリル補強部材の要部拡大側面図である。
【図19】第2の実施形態を示し、縦桟上部及び縦桟下部に貫通孔を形成して脆弱部としたグリル補強部材の要部拡大側面図である。
【図20】第3の実施形態を示し、衝突によりグリル補強部材が潰れる様子を示す動作図である。
【図21】第4の実施形態を示し、縦桟上部の車両前方を脆弱部、後方を高強度部、縦桟下部の車両前方を高強度部、後方を脆弱部としたグリル補強部材の要部拡大側面図である。
【図22】第4の実施形態を示し、衝突によりグリル補強部材が潰れる様子を示す動作図である。
【図23】第5の実施形態を示し、横桟を斜めにしたグリル補強部材の要部拡大側面図である。
【図24】第5の実施形態を示し、衝突によりグリル補強部材が潰れる様子を示す動作図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を適用した具体的な実施形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0010】
「第1の実施形態」
図1から図16は、第1の実施形態の車両前部構造に関する図である。先ず、車両前部構造の構成について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0011】
車両前部構造は、図1から図4に示すように、支持部材としてのフェイシア1に形成された外気を導入させるグリル部2と、このグリル部2の車両後方に配されるコンパートメント内部品(エンジンルーム内部品)であるコンデンサー3Aやラジエータ3B等の熱交換器3と、このグリル部2の近傍でかつ熱交換器3の前方に配される格子部材であるグリル補強部材4と、を備えて構成される。なお、グリル部2とグリル補強部材4は、車両前方からの外気をコンパートメント内に通す外気導入部として機能する。
【0012】
フェイシア1は、例えばエンジンを搭載するコンパートメントであるエンジンルームの前側に配される図示しないバンパーレインフォースなどを含む車体構成部品を覆うように形成されている。そして、このフェイシア1は、バンパーレインフォースを覆うように車両幅方向に延設されると共に車両前方に突出した突出部であるバンパー部17と、その上方中央部に形成される前記グリル部2と、前記グリル部2の両外端部にランプを収容するために切り欠かれたランプ配置部16と、を有する。
【0013】
グリル部2には、中央部に配されるオーナメント部材23を支持するオーナメント支持部5が形成されている。そして、このグリル部2は、中央のオーナメント支持部5を車幅方向で挟むように形成されている。かかるグリル部2は、縦桟2Aと横桟2Bとで格子状とされ、外気をコンパートメント内へと導入させる外気導入口として機能する。
【0014】
熱交換器3は、車両前方から後方に向かってコンデンサー3A、ラジエータ3Bの順でラジエータコア6に固定されている。また、熱交換器3の前方には、外気をこの熱交換器3に供給するための前記グリル部2が相対応して設けられている。
【0015】
ラジエータコア6には、熱交換器3の他に、前記グリル部2から導入した外気を前記熱交換器3へ効率良く導くためのエアガイド部材7が取り付けられている。このエアガイド部材7は、車幅方向における熱交換器3の両側にそれぞれ取り付けられ、後述するグリル補強部材4の外側面と同一延長上に設けられて外気が熱交換器3以外の部位に漏れることを抑制する。
【0016】
グリル補強部材4は、図5から図7に示すように、前記グリル部2と対向する前記フェイシア1の後面(裏面)1aに、このフェイシア1とは別部品として別体に取り付けられている。以下、便宜上、オーナメント支持部5を中央に挟んでその車両右側に配置されるグリル補強部材4を右側グリル補強部材、車両左側に配置されるグリル補強部材4を左側グリル補強部材と称する。
【0017】
かかるグリル補強部材4は、図8及び図9に示すように、右側グリル補強部材及び左側グリル補強部材のいずれも縦桟(第1の桟)8と横桟(第2の桟)9とからなる格子状とされ、前記グリル部2の外形状とほぼ同一形状の矩形体として形成されている。グリル補強部材4の縦桟8及び横桟9は、グリル部2の縦桟2A及び横桟2Bに対応した位置に設けられており、グリル部2から導入された外気をコンパートメント内へ導いている。縦桟8と横桟9は、互いに交差するように形成されている。具体的には、横桟9は車幅方向に略水平に形成されるのに対して、縦桟8は上下に設けられた横桟9間を連結するように形成されると共に、上部を横桟9に対して車両外方に傾けて設けられている。
【0018】
そして、このグリル補強部材4は、車両前方から外力がフェイシア1に加わったとき、これら縦桟8と横桟9の何れか一方を座屈させて他方を回動させる回動促進手段を有している。回動促進手段は、図12及び図13に示すように、車両前後方向における前側に高強度部10A及びその後側に脆弱部10Bを有した縦桟上部(桟上部)10と、前記縦桟上部10の脆弱部10Bとは前後反対側(前側)に脆弱部11B及び後側に高強度部11Aを有した縦桟下部(桟下部)11と、からなる縦桟構造(桟構造)である。縦桟上部10と縦桟下部11は、図12中矢印A方向から見たときに、いずれも車両前後方向において一方から他方に向かってその肉厚を次第に厚くする平面視略台形状とされ、それらの境界線において180度反転した配置位置とされている。
【0019】
高強度部10A、11Aは、脆弱部10B、11Bに比べて肉厚の厚い厚肉部とされている。これに対して、脆弱部10B、11Bは、高強度部10A、11Aに比べて肉厚の薄い薄肉部とされている。これにより、縦桟上部10では、外力が加わったときに、車両前側の高強度部10Aよりも車両後側の肉厚の薄い脆弱部10Bの方が座屈し易くなる。縦桟下部11では、縦桟上部10とは逆に、車両後側の高強度部11Aよりも車両前側の肉厚の薄い脆弱部11Bの方が座屈し易くなる。
【0020】
また、この回動促進手段では、縦桟8の回転をより一層促進させるために、上記のような肉厚構造の異なる縦桟上部10と縦桟下部11との間に形成される肉厚境界部12を、脆弱部10B、11Bの面積が高強度部10A、11Aに比べて大きくなるように形成されている。つまり、第1の実施形態においては、肉厚境界部12を後下がりになるように傾斜させて形成し、縦桟上部10の後側である脆弱部10Bと縦桟下部11の前側である脆弱部11Bの面積を大きくしている。
【0021】
また、グリル補強部材4は、車両高さ方向において上方から下方へ向かって徐々に車両前方に突出するように形成されている。つまり、第1の実施形態においては、上側に形成される横桟9より下側に形成される横桟9を、車両前方に配置している。
【0022】
そして、このグリル補強部材4には、フェイシア1によって支持される支持部13A〜13Dが4ヶ所に設けられている(図6参照)。第1支持部13Aは、車両高さ方向の最上段の横桟9に設けられ、締結手段である第1スクリュー14Aにてフェイシア1の上部に取り付けられる。第2支持部13Bは、グリル補強部材4の最外側の縦桟8に設けられ、第2スクリュー14Bにてフェイシア1の後面1aに形成されたリブ15に取り付けられる。
【0023】
リブ15は、フェイシア1のグリル部2とランプ配置部16との間で、バンパー部17との境となる部分に設けられている。この部分は、グリル部2が格子状に形成されることからバンパー部17を固定端とした片持ち状態となって応力集中する部位であり、該部位の補強リブとしても機能している。また、リブ15は、グリル部2の横桟2Bまたはグリル補強部材4の横桟9と連なるようにして該フェイシア1の後面1aから車両後方へと突出して形成されているため、より補強リブとしての機能を向上している。
【0024】
第3支持部13Cと第4支持部材13Dは、グリル補強部材4の最内側の縦桟8に設けられ、第3スクリュー14Cまたは第4スクリュー14Dにてフェイシア1の後面1aに取り付けられる。第3支持部13Cは、グリル補強部材4の最上段の横桟9から車幅方向に延在して形成され、第4支持部13Dは、最下段の横桟9から同様に車幅方向に延在して形成されている。
【0025】
このような構成とされたグリル補強部材4は、第1支持部13Aと第2支持部13Bを第1スクリュー14Aと第2スクリュー14Bで前記フェイシア1に取り付けられると共に、第3支持部13Cと第4支持部13Dを第3スクリュー14Cと第4スクリュー14Dで前記フェイシア1のオーナメント支持部5及びオーナメント部材23と共締めされる。
【0026】
オーナメント部材23は、図11に示すように、その背後に配置されるセンサーなどを保護するために、車両前後に起伏する波型断面となる複数の突条部19を車幅方向に延設して形成して剛性を高めている。また、このオーナメント部材23の四隅には、前記フェイシア1及びグリル補強部材4と共締めするためのスクリュー取付け部20が設けられている。
【0027】
次に、車両前方から外力が車両前部構造に加わったときのグリル補強部材4の挙動について説明する。本実施形態の車両前部構造では、図14(A)に示すように、車両の最も突出し、且つグリル補強部材4の下方に配されるバンパー部17に車両前方から外力Fが加わると、フェイシア1が変形して、グリル補強部材4が、図14(A)中矢印Bで示すように下方側に回動する。
【0028】
そして、グリル補強部材4は、この外力Fによって回動された後、図14(B)に示すように、支持部13A〜Dを破断し、コンパートメント内方へ移動する。このとき、グリル補強部材4全体が回動することによって、略水平だった横桟9が前下がりに傾く。
【0029】
次に、グリル補強部材4は、フェイシア1と熱交換器3との間に挟み込まれ、図14(C)に示すように、横桟9に該横桟9の後端部9Aを上方に移動させる方向の回転モーメントMが掛ると共に、上下の横桟9間が狭まり、縦桟8を上下方向(グリル補強部材4が回動する前の状態における上下方向)に圧縮する力が掛る。この圧縮力によって、縦桟8の脆弱部10B、11Bが高強度部10A、11Aよりも先に座屈し、横桟9の後端部9Aを上方に移動させる方向の回動をさらに促進させる。
【0030】
また、縦桟8の脆弱部10B、11Bと横桟9との接地部(図16波線部)は、高強度部10A、11Aと横桟9との接地部よりも接地面積が小さいため、剥離しやすい。脆弱部10B、11Bと横桟9との接地部が剥離することによって、縦桟8の脆弱部10B、11Bがより座屈し易くなり、横桟9の後端部9Aを上方に移動させる方向の回動をさらに促進させる。
【0031】
そして最終的には、図14(D)に示すように、高強度部10A、11Aも外力Fによるエネルギーを吸収しながら座屈する。縦桟8が座屈することによって略水平だった横桟9が、グリル補強部材4の前後幅を縮小させるように回動し、横桟9が略水平状態のままで、その後端部9Aが熱交換器3に当接しても、車両前方からの外力を受け流すことができる。つまり、横桟9は、フェイシア1と熱交換器3とに挟まれたときに発生する回転モーメントによって回転し、その回転により車両前方からの外力Fが熱交換器3へダイレクトに伝達されるのを抑制し、当該外力Fを受けていなす。したがって、グリル補強部材4による熱交換器3の損傷を緩和させることができる。
【0032】
以上のように構成された車両前部構造によれば、車両前方から外力が加わったときに縦桟8を座屈させて、横桟9を回転させることができるため、横桟9の後端部9Aがコンパートメント内部品である熱交換器3に当接しても、車両前方からの外力を受け流すことができ、それによりコンパートメント内部品の損傷を緩和させることができる。
【0033】
また、本実施形態の車両前部構造によれば、グリル補強部材4をグリル部2の近傍で且つコンパートメント内部品の前方に配することによって、グリル部2からコンパートメント内部品(コンデンサー3Aやラジエータ3Bなど)を見難くすることができ、車両の前方からの見栄えを良くすることができる。
【0034】
また、本実施形態の車両前部構造によれば、車両前方から外力Fが加わったときに、縦桟上部10と縦桟下部11の脆弱部10B、11Bが高強度部10A、11Aよりも先に座屈することにより、横桟9の回動を促進させることができる。
【0035】
また、本実施形態の車両前部構造によれば、肉厚境界部12により脆弱部10B、11Bの面積を高強度部10A、11Aよりも大きくしているので、縦桟上部10及び縦桟下部11が座屈し易くなり、横桟9の回動を促進させることができる。
【0036】
また、本実施形態の車両前部構造によれば、グリル補強部材4の下方に、フェイシア1の中で最も車両前方に突出したバンパー部17を有しているので、車両前方から外力が加わったときに、グリル補強部材4よりも先にバンパー部17に外力が入力されるので、フェイシア1全体が上方を中心に回動し、これに伴ってグリル補強部材4も回動し、横桟9の後端部9Aを上方に移動させる方向の回動をさらに促進させる。
【0037】
また、本実施形態の車両前部構造によれば、左右のグリル補強部材4の縦桟8が共に車両外方に傾けて設けられているので、グリル補強部材4が車両外方へ伸びるように変形されることを促進させることができる。これによって、左右のグリル補強部材4が共に内方へ変形することで、互いの変形を抑制し合うのを防止することができる。
【0038】
また、本実施形態の車両前部構造によれば、フェイシア1とは別体に形成したグリル補強部材4をグリル部2の後面に配置したので、このグリル部2からコンパートメント内部品が見え難くなる。
【0039】
また、本実施形態の車両前部構造によれば、高強度に形成されたオーナメント部材23とフェイシア1のオーナメント支持部5とグリル補強部材4を締結手段であるスクリューで共締めしたので、車両幅方向における剛性をより一層高めることができる。
【0040】
また、本実施形態のグリル補強部材4によれば、車両前方から外力Fが加わったときに、縦桟上部10と縦桟下部11の脆弱部10B、11Bが高強度部10A、11Aよりも先に座屈することにより、横桟9の回動を促進させることができる。
【0041】
また、本実施形態のグリル補強部材4によれば、肉厚境界部12により脆弱部10B、11Bの面積を高強度部10A、11Aよりも大きくしているので、縦桟上部10及び縦桟下部11が座屈し易くなり、横桟9の回動を促進させることができる。
【0042】
なお、この実施形態では、車両の最も突出したフェイシア1の突出部17をグリル補強部材4の下方側に設けたが、グリル補強部材4の上方側に突出部17を設けても同様の作用効果を得ることができる。
【0043】
「第2の実施形態」
図17から図19は第2の実施形態を示す図である。第2の実施形態は、図17に示すように、第1の実施形態とは逆に、縦桟上部10の車両方向における前側を脆弱部10B、後側を高強度部10Aとし、縦桟下部11の前側を高強度部11A、後側を脆弱部11Bとした。このような縦桟構造としても第1の実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
【0044】
また、図18に示すように、肉厚境界部12を水平としてもよい。第1の実施形態のように脆弱部10B、11Bの面積を高強度部10A、11Aよりも大きくするように斜めに形成した場合に比べて多少変形度合いが減るが、この構成でも本発明効果を十分に出すことができる。
【0045】
また、図19に示すように、脆弱部10B、11Bは、高強度部10A、11Aに対してその肉厚を薄くして剛性を低下させるのではなくて、貫通孔18やスリットなどを縦桟上部10と縦桟下部11に形成することで脆弱部10B、11Bとしてもよい。この場合は、縦桟上部10と縦桟下部11は、車両前後方向において前方から後方にかけて同一の肉厚とされる。
【0046】
「第3の実施形態」
図20は第3の実施形態を示す図である。第3の実施形態は、グリル補強部材4の支持部13A、13Bを、上側にのみ設けるとともに、突出部17をフェイシア1に設けるのではなく、グリル補強部材4の支持部13Aが設けられていない下側の車両前方に突出させた部位を突出部21としている。なお、その他の構成は、第1の実施形態のグリル補強部材4と同一である。
【0047】
この実施形態では、図20(A)で示すように、グリル補強部材4の下端側の突出部21に外力Fが直接作用すると、第1支持部13A及び第2支持部13Bを中心としてグリル補強部材4が、同図中矢印Bで示すように下方側に回動する。そして、このグリル補強部材4は、第1の実施形態と同様、図20(B)のように第1支持部13A及び第2支持部13Bを破断してコンパートメント内方へ移動し、グリル補強部材4全体が回動して横桟9が前下がりになる。さらに、図20(C)で縦桟8が潰れて座屈することで横桟9に回転モーメントMが掛かり、その回転モーメントMで横桟9が回転する。そして、グリル補強部材4は、最終的に図20(D)に示すように、前後幅を縮小させるように回動し、横桟9が略水平状態のままで、その後端部9Aが熱交換器3に当接しても、車両前方からの外力Fを受け流す。したがって、グリル補強部材4による熱交換器3の損傷を緩和させることができる。
【0048】
「第4の実施形態」
図21及び図22は第4の実施形態を示す図である。第4の実施形態は、第1の実施形態とは異なり、グリル補強部材4の支持部13A、13Bを、下側にのみ設けるとともに、突出部17をフェイシア1に設けるのではなく、グリル補強部材4の支持部13Aが設けられていない上側を車両前方に突出させ、その突出させた部位を突出部22としている。また、第4の実施形態では、第1及び第3の実施形態とは異なり、図21に示すように、縦桟上部10の脆弱部10Bを車両前側に、高強度部10Aを後側に、縦桟下部11の脆弱部11Bを車両後側に、高強度部11Aを前側としている。
【0049】
この実施形態では、図22(A)で示すように、グリル補強部材4の上端側の突出部22に外力Fが直接作用すると、グリル補強部材4の下端側に設けられた第1支持部13A及び第2支持部13Bを中心としてグリル補強部材4が、同図中矢印Bで示すように上方側に回動する。そして、このグリル補強部材4は、第1の実施形態と同様、図22(B)のように第1支持部13A及び第2支持部13Bを破断してコンパートメント内方へ移動し、グリル補強部材4全体が回動して横桟9が前上がりになる。さらに、図22(C)で縦桟8が潰れて座屈することで横桟9に回転モーメントMが掛かり、その回転モーメントMで横桟9が回転する。そして、グリル補強部材4は、最終的に図22(D)に示すように、前後幅を縮小させるように回動し、横桟9が略水平状態のままで、その後端部9Aが熱交換器3に当接しても、車両前方からの外力Fを受け流す。したがって、グリル補強部材4による熱交換器3の損傷を緩和させることができる。
【0050】
「第5の実施形態」
図23及び図24は第5の実施形態を示す図である。第5の実施形態は、横桟9を水平にした第1、第3及び第4の実施形態とは異なり、横桟9を斜めにしたグリル補強部材4を使用することで、車両前方から外力Fが作用すると、このグリル補強部材全体を回転させずに縦桟8を座屈させて横桟9を回動させるようにした例である。
【0051】
第5の実施形態では、図23に示すように、横桟9を車両前方下方へ傾斜させると共にその横桟9の前端9Bと後端9Aを揃えたグリル補強部材4を使用している。このグリル補強部材4では、縦桟上部10の脆弱部10Bを車両後側に、高強度部10Aを前側に、縦桟下部11の脆弱部11Bを車両前側に、高強度部11Aを後側としている。また、脆弱部10B、11Bと高強度部10A、11Aの縦桟8に対する占める面積の割合は、同一としている。
【0052】
この実施形態では、図24(A)で示すように、グリル補強部材4の上端部と下端部にそれぞれ支持部13A、13Bを設け、その支持部13A、13Bを車体に固定させている。このグリル補強部材4に車両前方から外力Fが直接作用すると、横桟9の前端9Bは上下方向で同一面上にあることから、図24(B)に示すように、第1支持部13A及び第2支持部13Bを破断してグリル補強部材4はそのまま水平にコンパートメント内方向へ移動する。そして、図24(C)で縦桟8が潰れて座屈することで横桟9に回転モーメントMが掛かり、その回転モーメントMで横桟9が回転する。そして、グリル補強部材4は、最終的に図24(D)に示すように、前後幅を縮小させるように回動し、横桟9が略水平状態のままで、その後端部9Aが熱交換器3に当接しても、車両前方からの外力Fを受け流す。したがって、グリル補強部材4による熱交換器3の損傷を緩和させることができる。
【0053】
「第6の実施形態」
第6の実施形態は、前記した第1〜第5の実施形態におけるグリル補強部材4の縦桟8及び横桟9からなる格子構造を、フェイシア1に形成されるグリル部2に適用してもよい。グリル部2に前記したグリル補強部材4の縦桟構造を採用することで、第1〜第5の実施形態と同様の作用効果を発揮させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明は、コンパートメント内に外気を導入するために車両の前部に配される格子部材及び該格子部材を有する車両前部構造に利用することができる。
【符号の説明】
【0055】
1…フェイシア(支持部材)
2…グリル部(外気導入部)
3…熱交換器
3A…コンデンサー(コンパートメント内部品)
3B…ラジエータ(コンパートメント内部品)
4…グリル補強部材(格子部材、外気導入部)
5…オーナメント支持部(中央部材)
7…エアガイド部材
8…縦桟(第1の桟)
9…横桟(第2の桟)
10…縦桟上部(桟上部)
11…縦桟下部(桟下部)
10A、11A…高強度部
10B、11B…脆弱部
12…肉厚境界部
13…支持部
14…スクリュー(締結手段)
17、22…突出部
23…オーナメント部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両前方からの外気をコンパートメント内に通す格子部材と、
前記格子部材の車両後方に配されるコンパートメント内部品と、
を有する車両前部構造であって、
前記格子部材は、第1の桟と、該第1の桟と交差する第2の桟とを有し、車両前方からの外力によって、前記第1の桟と前記第2の桟のいずれか一方を座屈させて、他方を回転させる
ことを特徴とする車両前部構造。
【請求項2】
車両前方からの外気をコンパートメント内に通す格子部材と、
前記格子部材の車両後方に配されるコンパートメント内部品と、
を有する車両前部構造であって、
前記格子部材は、第1の桟と、該第1の桟と交差する第2の桟とを有し、前記第1の桟と前記第2の桟の何れか一方の桟は、脆弱部と脆弱部よりも肉厚が厚い高強度部を有し且つ車両前後方向における前側または後側のいずれか一方に脆弱部或いは高強度部を設けた桟上部と、同じく脆弱部と高強度部を有し且つ該桟上部の脆弱部とは前後反対側に脆弱部を設けた桟下部と、からなり、
車両前方からの外力を受けて前記格子部材が前記コンパートメント内部品に干渉することによって、前記第1の桟と前記第2の桟のいずれか一方を、前記高強度部よりも前記脆弱部を先に座屈させて、他方を回転させる
ことを特徴とする車両前部構造。
【請求項3】
請求項2記載の車両前部構造であって、
前記桟上部と前記桟下部との間の境界のうちそれら桟上部と桟下部の肉厚が一致している部位を肉厚境界部とし、その肉厚境界部を挟んだ前後の部位を脆弱部と高強度部とし、それら脆弱部と高強度部を側面から見たときの側面積を、前記高強度部に対して前記脆弱部の方を大きくするように形成した
ことを特徴とする車両前部構造。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか一つに記載の車両前部構造であって、
前記格子部材は、支持部材に取り付けられ、
該支持部材は、前記格子部材の上下いずれか一方側に車両前方に突出した突出部を有している
ことを特徴とする車両前部構造。
【請求項5】
請求項1から請求項3のいずれか一つに記載の車両前部構造であって、
前記格子部材は、該格子部材の上下いずれか一方側に設けられた支持部を、支持部材に取り付けられ、該支持部が設けられていない他方側を車両前方に突出させた突出部を有している
ことを特徴とする車両前部構造。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれか一つに記載の車両前部構造であって、
前記第1の桟は、車両前方からの外力によって座屈する縦桟であり、
前記第2の桟は、該縦桟と交差する横桟であって、
前記格子部材を車両左側に配した左側格子部材と、前記格子部材を車両右側に配した右側格子部材と、の2つの格子部材を車幅方向に並列に配置し、
前記縦桟は、前記横桟に対して車幅方向において上部を下部に対して車両外方に傾けて設けられた
ことを特徴とする車両前部構造。
【請求項7】
請求項4、5又は請求項4、5を引用する請求項6に記載の車両前部構造であって、
前記格子部材は、車両前方に配される外気導入部の後面に配され、且つ該外気導入部を有する前記支持部材とは別体に形成された
ことを特徴とする車両前部構造。
【請求項8】
請求項6又は請求項6を引用する請求項7に記載の車両前部構造であって、
前記左右の格子部材の中央部には、格子部材よりも高強度に形成された中央部材が配され、その中央部材と前記支持部材と前記格子部材を締結手段で共締めした
ことを特徴とする車両前部構造。
【請求項9】
第1の桟と、該第1の桟と交差する第2の桟とを有し、
前方からの外力によって、前記第1の桟と前記第2の桟のいずれか一方を座屈させて、他方が回転する
ことを特徴とする格子部材。
【請求項10】
第1の桟と、該第1の桟と交差する第2の桟とを有し、前方からの外力によって、前記第1の桟と前記第2の桟のいずれか一方を座屈させて、他方が回転する格子部材であって、
前方からの外力によって座屈する、前記第1の桟と前記第2の桟のいずれか一方の桟は、脆弱部と脆弱部よりも肉厚が厚い高強度部を有し且つ車両前後方向における前側または後側のいずれか一方に脆弱部或いは高強度部を設けた桟上部と、同じく脆弱部と高強度部を有し且つ前記桟上部の脆弱部とは前後反対側に脆弱部を設けた桟下部と、からなり、
車両前方からの外力を受けて前記格子部材がコンパートメント内部品に干渉することによって、前記第1の桟と前記第2の桟のいずれか一方を、前記高強度部よりも前記脆弱部を先に座屈させて、他方を回転させる
ことを特徴とする格子部材。
【請求項11】
請求項9又は請求項10に記載の格子部材であって、
車両前方に配されて、外気を導入する格子状の外気導入部の後面に、前記格子部材が配された
ことを特徴とする格子部材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【公開番号】特開2012−30798(P2012−30798A)
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−251407(P2011−251407)
【出願日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【分割の表示】特願2007−272397(P2007−272397)の分割
【原出願日】平成19年10月19日(2007.10.19)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)