説明

格納式架線

【課題】 既設の鉄道線路の架線に並行して架線を配置して現車試験に供するとともに、その架線を格納することができる鉄道線路の格納式架線を提供する。
【解決手段】 鉄道車両に電力を供給する格納式架線であって、既設の架線1に並行して配置可能な架線3と、この架線3を格納する格納機構とを具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄道線路の格納式架線に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、鉄道線路の架線の現車試験は、架線の一部区間を現車試験を行う架線に張り替えて行うようにしていた。つまり、当該一部区間に試験を行いたい架線を張って現車試験を行うようにしていた。
【0003】
なお、従来、電車線路へ臨ませた荷役機械の自由な作動を可能にするように、電車線路の架線を所定長さ分だけ側方に退避させるスライド架線式貨物車用ターミナル(下記特許文献1参照)が提案されているが、本発明とは用途が相違するとともに、その構成及び作用が全く異なるものである。
【特許文献1】特開2001−253271号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、鉄道線路の架線の張り替えによる現車試験では工事に手間がかかるといった問題があった。
【0005】
本発明は、上記状況に鑑みて、既設の鉄道線路の架線に並行して架線を配置して現車試験に供するとともに、その架線を格納することができる鉄道線路の格納式架線を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記目的を達成するために、
〔1〕鉄道車両に電力を供給する格納式架線であって、既設の架線に並行して配置可能な架線と、この架線を格納する格納機構とを具備することを特徴とする。
【0007】
〔2〕上記〔1〕記載の格納式架線において、前記格納機構が、電柱と、この電柱に設けられる電柱バンドと、この電柱バンドに回転ピン構造を介して接続されるアームと、このアームの先端部の架線の支持部分に架線との角度を変更可能な固定手段とを具備することを特徴とする。
【0008】
〔3〕上記〔1〕記載の格納式架線において、前記格納機構が、電柱と、この電柱に設けられる電柱バンドと、この電柱バンドに回転ピン構造を介して接続されるアームと、このアームを水平方向に伸縮可能な機構とを具備することを特徴とする。
【0009】
〔4〕上記〔1〕記載の格納式架線において、前記格納機構が、電柱と、この電柱に設けられる電柱バンドと、この電柱バンドに回転ピン構造を介して接続されるアームと、このアームの先端部を上下方向に移動可能な機構とを具備することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、次のような効果を奏することができる。
【0011】
(1)容易に、架線の現車試験を実施することができる。
【0012】
(2)架線を使用しないときは格納して、他の列車の走行に支障しないようにすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の格納式架線は、鉄道車両に電力を供給する格納式架線であって、既設の架線に並行して配置可能な架線と、この架線を格納する格納機構とを具備する。
【実施例】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0015】
図1は本発明の実施例を示す鉄道線路の格納式架線を示す模式図であり、図1(a)は格納式架線を既設架線と並行に配置した状態を示す図、図1(b)は格納式架線を格納した状態を示す図、図2はその格納式架線の工事の状況を示す写真である。
【0016】
図1において、1は既設架線、2は既設架線1を支持する電柱、3は既設架線1に並行に配置される架線、4はその架線3を支えるアーム、5はそのアーム4を支持する電柱である。
【0017】
図1(a)に示すように、架線3は既設架線1に並行に設置されて、架線3の現車試験を実施することができる。また、現車試験を行わないときには、図1(b)に示すように、既設架線1から離れた位置に架線3を格納するように構成することができる。
【0018】
図3は本発明の実施例を示す鉄道線路の架線の格納式機構の一例を示す図であり、図3(a)はその全体構成図、図3(b)は架線が既設架線に並行に設置された場合の架線部とアームとの取り付け機構を示す図、図3(c)は架線が既設架線から格納された場合の架線部とアームとの取り付け機構を示す図である。
【0019】
これらの図に示すように、架線3の支持には、アーム(等辺山形鋼)4を使用する。電柱5とアーム4とは、電柱バンド6により接続する。これにより、電柱5との接続部分ピン構造7となり、アーム4の水平方向の角度移動が可能となる。また、架線3の支持部分8はボルト9,10を2個の穴11,12に固定し、別途ボルト固定用の穴13を開けておく。架線3を格納する場合には、ボルト10を外すことにより、ボルト9を支持点としてピン節点とし架線3の回転が可能となる。架線3の回転後は別のボルト穴13にボルト10を用いてアーム4の一部を固定する。なお、アーム4と架線3の間には電気的絶縁を図るための碍子8Aが設けられている。
【0020】
上記したものは鉄道線路の架線の格納式機構の一例に過ぎず、以下のような機構としてもよい。
【0021】
図4は本発明の実施例を示す鉄道線路の架線の格納式機構の一例を示す図である。
【0022】
まず、図4(a)に示すように、既設架線1の近くに並行になるように架線3を配置して、架線3の現車試験が行えるようにする。次いで、架線3を格納する場合には、図4(b)に示すように、架線3のアーム4を電柱5側に移動させ、既設架線1から十分離して格納するようにする。
【0023】
これらの図に示すように、アーム4を水平方向に伸縮できる機構21を用いることにより、架線3は既設架線1に対して水平方向に移動させてた位置に隔離して格納するようにしてもよい。なお、図示しないが、電柱5側には駆動用モータを配置して、この駆動用モータの駆動により、アーム4の水平方向への移動を行わせるようにしてもよい。
【0024】
図5は鉄道線路の架線の格納式機構(その2)を示す模式図である。
【0025】
まず、図5(a)に示すように、既設架線1の近くに並行になるように架線3を配置して、架線3の現車試験が行えるようにする。次いで、架線3を格納する場合には、図5(b)に示すように、架線3のアーム4を電柱5側の上方に移動させ、既設架線1から十分上方に離して格納するようにする。
【0026】
これらの図に示すように、アーム4を上部へ移動できる機構とする。例えば、電柱バンド6とアーム4の間には垂直方向に可動の軸受機構31を配置し、架線3と電柱5の上方の電柱バンド6との間には支線32を張り、その支線32を巻き上げ可能な巻き上げ機構33を電柱バンド6に配置する。これにより、架線3を既設架線1に対して上方に移動させた位置に離隔して格納するようにしてもよい。なお、図示していないが、巻き上げ機構33には駆動用モータを内蔵し、駆動用モータの駆動により、アーム4の上方向への移動を行わせるようにしてもよい。
【0027】
なお、上記実施例では、架線の現車試験について述べたが、これに代えて、新設建設時の線路切り替えや保守点検時の架線の設置に利用することができ、広範囲の利用が展開でき、その効果は著大である。
【0028】
また、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づき種々の変形が可能であり、これらを本発明の範囲から排除するものではない。
【産業上の利用可能性】
【0029】
本発明の格納式架線は、架線の現車試験を容易に実施するのに利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の実施例を示す鉄道線路の格納式架線を示す模式図である。
【図2】本発明の実施例を示す鉄道線路の格納式架線の工事の状況を示す写真である。
【図3】本発明の実施例を示す鉄道線路の架線の格納式機構の一例を示す図である。
【図4】鉄道線路の架線の格納式機構(その1)を示す模式図である。
【図5】鉄道線路の架線の格納式機構(その2)を示す模式図である。
【符号の説明】
【0031】
1 既設架線
2 既設架線を支持する電柱
3 架線
4 架線を支えるアーム
5 アームを支持する電柱
6 電柱バンド
7 接続部分ピン構造
8 架線の支持部分
8A 碍子
9,10 ボルト
11,12,13 穴
21 アームを水平方向に伸縮できる機構
31 垂直方向に可動の軸受機構
32 支線
33 巻き上げ機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄道車両に電力を供給する格納式架線であって、
(a)既設の架線に並行して配置可能な架線と、
(b)該架線を格納する格納機構とを具備することを特徴とする格納式架線。
【請求項2】
請求項1記載の格納式架線において、前記格納機構が、電柱と、該電柱に設けられる電柱バンドと、該電柱バンドに回転ピン構造を介して接続されるアームと、該アームの先端部の架線の支持部分に架線との角度を変更可能な固定手段とを具備することを特徴とする格納式架線。
【請求項3】
請求項1記載の格納式架線において、前記格納機構が、電柱と、該電柱に設けられる電柱バンドと、該電柱バンドに回転ピン構造を介して接続されるアームと、該アームを水平方向に伸縮可能な機構とを具備することを特徴とする格納式架線。
【請求項4】
請求項1記載の格納式架線において、前記格納機構が、電柱と、該電柱に設けられる電柱バンドと、該電柱バンドに回転ピン構造を介して接続されるアームと、該アームの先端部を上下方向に移動可能な機構とを具備することを特徴とする格納式架線。

【図1】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−189207(P2008−189207A)
【公開日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−27425(P2007−27425)
【出願日】平成19年2月7日(2007.2.7)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成18年8月21日〜23日 電気学会主催の「平成18年電気学会産業応用部門大会」に文書をもって発表
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成17年度、独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構、「エネルギー使用合理化技術戦略的開発/エネルギー有効利用基盤技術先導研究開発/エネルギー回生利用バッテリー駆動型省エネLRV車両の研究開発」、産業活力再生特別措置法第30条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000173784)財団法人鉄道総合技術研究所 (1,666)
【出願人】(501284767)株式会社ジェイアール総研電気システム (17)
【出願人】(390031934)千歳電気工業株式会社 (7)