説明

栽培装置及びそれを使用した園芸生産システム

【課題】簡易な構造且つ移動機構を原因とする装置の破損を抑制し、作業通路のスペース減・栽培面積増加・必要に応じて作業通路を作ることが可能な園芸生産システムを提供する。
【解決手段】栽培装置1は栽培容器を載置する培地保持体B,Cと載置台Aを備え、載置台Aは、水平方向に移動可能なスライド部3、スライド部が取着された基台部2、スライド部と基台部間に設けた移動機構4を備え、移動機構4は、2本の円筒又は中実の円棒である回動体41a、41b、挿通した回動体が内部で回転可能に形成された一対の保持管422、各保持管を横方向に繋ぐスペーサー桿424を備え、スライド部と基台部には、スライド移動を止めるストッパー部材344、スライド部の脱落防止部材346が設けられ、各部材の協働によりスライド部が基台部から外れないか又は外れにくく構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、栽培装置及びそれを使用した園芸生産システムに関する。
更に詳しくは、園芸生産に用いる栽培装置であって、簡易な構造でありながらも移動機構を原因とする装置の破損を抑制しうる構造を備えたもの、及び、該栽培装置を使用した園芸生産システムであって、作業通路のスペースを減じて栽培面積を増加させ、栽培装置の移動により必要に応じて作業通路を作ることができるものに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、園芸生産において、面積が限られた作業場において栽培面積を増加させ且つ作業を効率的に行うことができるようにすべく、移動機構を備えた栽培装置が提案されている。
前記栽培装置としては、例えば、フラットベッド状或いはベンチ状の載置台(載置枠)に培地、栽培容器又は栽培槽が設けられており、載置台等にキャスターの付いた脚部等の移動機構を備えたものが挙げられる。
【0003】
前記栽培装置によれば、本来固定的な通路を設ける予定の分のスペースに栽培装置を配置して栽培面積を増加させることができる(栽培装置間に複数の固定的な通路を設ける必要が無く、通路は一つで済む。)。また、必要に応じて栽培装置を移動させることで作業が必要な栽培装置への通路を作ることができるので、作業も効率的に行うことができるという利点がある。
【0004】
前記栽培装置の一例として、特許文献1に示すような水耕栽培装置が提案されている。
特許文献1に係る水耕栽培装置は、移動機構として、支持台の脚部下端にローラー体が取着され、該ローラー体がパイプ状の回動体の上に配置されており、回動体と直交するように地面に敷設された軌道上を水耕栽培装置が移動するように設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−46025号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1にかかる水耕栽培装置は多数のローラー体が必要であり、製造コストが高くなるになるという課題があった。
【0007】
他方で、ローラー体をなくして前記課題を解決すべく、上部にレールを備えた架台を組んで、その上に複数のパイプ状の回動体(以下「転(ころ)パイプ」という。)を所定間隔で配置し、転パイプの上に載置台を置くという構造も考えられる。
しかし、単に複数の転パイプを置いただけでは、転パイプが定置せず、転パイプがレールに対して斜めになったり、転パイプ間の間隔が変わることがある。この結果、載置台に設計時に想定していないような負荷が加わったり又はバランスの変化が起こり、載置台が転覆したり破損する可能性がある。
このため、転パイプを架台に取着された軸受部材で保持する必要があったが、設備の規模を大きくすると、軸受部材が多数必要になり、前記の場合と同様に製造コストが高くなるになるという課題があった。
【0008】
(発明の目的)
そこで、本発明の目的は、簡易な構造でありながら、移動機構を原因とする装置の破損を抑制しうる構造を備えた栽培装置を提供することにある。
【0009】
また、本発明の目的は、前記栽培装置を使用することで、作業通路のスペースを減じて栽培面積を増加させ、栽培装置の移動により必要に応じて作業通路を作ることができる園芸生産システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために講じた本発明の手段は次のとおりである。
本発明は、
園芸生産に用いる栽培装置であって、
前記栽培装置は、栽培対象植物の培地を直接収容するか又は培地を収容した栽培容器を保持又は載置するように形成された培地保持体と、培地保持体を載置すべく培地保持体の下方に設けられた載置台と、を備えており、
前記載置台は、
培地保持体を上面に載置し、水平方向に移動可能に構成されたスライド部と、
スライド部が取着された基台部と、
スライド部と基台部の間に設けられており、並行に配置された2以上の回動体と、各回動体の間を等間隔に保持するスペーサー部材を備えた移動機構と、
を備えている、
栽培装置である。
【0011】
本発明は、
園芸生産に用いる栽培装置であって、
前記栽培装置は、栽培対象植物の培地を直接収容するか又は培地を収容した栽培容器を保持又は載置するように形成された培地保持体と、培地保持体を載置すべく培地保持体の下方に設けられた載置台と、を備えており、
前記載置台は、
培地保持体を上面に載置し、水平方向に移動可能に構成されたスライド部と、
スライド部が取着された基台部と、
スライド部と基台部の間に設けられており、並行に配置された2以上の回動体と、各回動体の間を等間隔に保持するスペーサー部材を備えた移動機構と、
を備えており、
移動機構は、回動体である2本の円筒又は中実の円棒と、各回動体の間に所要間隔を空けて取着された複数のスペーサー部材を備え、前記各スペーサー部材は、その内径が回動体よりも径大であって、内部で回動体が回転可能に形成された一対の保持管と、各保持管を横方向に繋ぐ棒状のスペーサー桿を備え、前記回動体がスペーサー部材の各保持管にそれぞれ挿通された構造であり、
スライド部と基台部には、水平方向の移動を止めるストッパー部材と、スライド部の脱落防止部材がそれぞれ設けてあり、該各部材が協働することによって、スライド部の移動により重心が移動したとしても、スライド部が基台部から外れないか又は外れにくく構成されている、
栽培装置である。
【0012】
本発明は、
前記いずれかの栽培装置を、園芸生産を行う作業場に複数配置する園芸生産システムであって、
作業場において、前記栽培装置のスライド部がスライドする方向へ、前記栽培装置が並列に複数配置され、スライド部に載置した培地保持体には、栽培対象植物の培地が収容されるか又は培地を収容した栽培容器が保持又は載置されており、
作業がないときは、各栽培装置のスライド部は少なくとも一列の通路分のスペースを空けて、隣接させるか又はほぼ隙間を空けずに寄せておき、
栽培対象植物に園芸作業を行う際には、作業対象となる培地保持体の横に通路ができるように、培地保持体を載置したスライド部を水平方向にスライド移動させて、通路を作ることができるように構成されている、
園芸生産システムである。
【0013】
本明細書及び本願の特許請求の範囲にいう培地保持体は、例えば、培地保持体に1又は2以上の有底収容部が形成され、栽培対象植物の培地を直接収容するものであってもよいし、または、培地を収容した栽培容器を載置可能に形成された台状のもの、あるいは、培地を収容した栽培容器を保持可能に形成された枠状のものであってもよいし、前記構造を組み合わせたものであってもよい。
【0014】
本明細書及び本願の特許請求の範囲にいう培地としては、例えば、土、綿、スポンジ、不織布その他通気性及び通水性を有する連続気泡体、液体、またはこれらの組み合わせが挙げられる。
【0015】
本明細書及び本願の特許請求の範囲にいう回動体は、例えば、円筒又は中実の円棒が挙げられるが、これに限定するものではなく、車輪状の回動体等の公知部材であってもよい。
【0016】
(作 用)
本発明に係る栽培装置及びそれを使用した園芸生産システムの作用を説明する。
【0017】
園芸生産を行う作業場に複数の栽培装置をスライド方向へ並列に配置し、スライド部の上に載置した培地保持体に、栽培対象植物の培地を直接収容するか、または、培地を収容した栽培容器を保持又は載置させる。
通常時(特に作業を行わない場合)、各栽培装置のスライド部は少なくとも一列の通路分のスペースを空けて(隣接させるか又はほぼ隙間を空けずに)寄せておく。
【0018】
播種、苗等の植栽、施肥、剪定、果実等の収穫等の作業(以下「園芸作業」という。)を行う場合には、作業対象となる培地保持体の横に通路ができるように、培地保持体を載置したスライド部を水平方向に移動(スライド)させる。
このとき、スペーサー部材により各回動体の間が等間隔に保持されるので、回動体がフレームに対して斜めになったり、回動体間の間隔が変わるような状況が生じないか又は生じにくい。
【0019】
この結果、栽培装置へ設計時に想定していないような負荷が加わらないか又は加わりにくく、移動機構を原因とする装置の破損が起こらないか又は起こりにくい。
【0020】
また、スライド部と基台部にストッパー部材とスライド部の脱落防止部材がそれぞれ設けてあるものは、スライド部のスライド移動によって重心が移動したとしても、スライド部と基台部との組み合わせ構造によってスライド部が基台部から外れない。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、栽培装置の移動機構が多数の軸受を不要とする簡易な構造でありながらも、移動機構である回動体が軌道に対して斜めになったり、回動体間の間隔が変わったりしないので、移動機構を原因とする装置の破損が起こらないか又は起こりにくい。また、移動機構が簡易な構造であるため製造コストを抑制することができる。
【0022】
また、スライド部と基台部にストッパー部材とスライド部の脱落防止部材がそれぞれ設けてあるものは、スライド部のスライド移動によって重心が移動したとしても、スライド部と基台部との組み合わせ構造によってスライド部が基台部から外れることがなく、安全に園芸作業ができる。
【0023】
また、本発明によれば、前記栽培装置を使用して、本来固定的な通路を設ける予定の分のスペースに栽培装置を配置して栽培面積を増加させることができ、必要に応じて栽培装置を移動させることで作業が必要な栽培装置への通路を作ることができるので、安全で効率的な園芸作業を行うことができる園芸生産システムを提供できる。特に、ビニールハウスその他建築物内で行う屋内園芸生産に好適に使用できる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明に係る栽培装置の分解斜視説明図。
【図2】図1の栽培装置の動作を示す側面視説明図。
【図3】図1の栽培装置の載置台からスライド部を取り外し、基台部と移動機構を示した斜視図。
【図4】図1の栽培装置の一の使用状態を示す説明図。
【図5】図1の栽培装置の他の使用状態を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明の実施の形態を図面に基づき更に詳細に説明する。
図1乃至図3に示す栽培装置1は、園芸生産に用いるものである。
栽培装置1は、栽培容器である水耕栽培用プランターCと、水耕栽培用プランターCを上面に載置する培地保持体である板状のパレットBと、パレットBを上部に載置する載置台Aと、を備えている。
【0026】
なお、栽培容器として水耕栽培用プランターを使用しているが、これに限定するものではなく、通常のプランター、鉢等の公知の栽培容器であってもよい。
【0027】
また、培地保持体であるパレットは、重量軽減の点から硬質の発泡プラスチックにより形成されたものが好適に使用されるが、これに限定するものではなく、他の高分子発泡体や、合成樹脂、ガラス繊維強化プラスチック(FRP)、木質材、紙質材、石膏ボードの板材、合成樹脂又は金属性の網状部材又はこれらを組み合わせたものであってもよい。更に、パレット自体の構造が培地を直接収容できるもの(パレットとプランターが一体となったもの)であってもよい。
【0028】
載置台Aについて説明する。
載置台Aは、パイプを格子状に組んで長尺に形成されたものであって、正面視四角型の枠体を長手方向に所要間隔を空けて複数連結した基台部2と、基台部2よりも短手方向に幅広であって該基台部2の上部に取着されたスライド部3と、基台部2とスライド部3の間へ配置された移動機構4と、を備えている。前記スライド部3は、移動機構4によって載置台Aの幅方向(短手方向)へスライド可能に構成されており、スライド部3上面にパレットBを載置可能に形成されている。
【0029】
なお、載置台Aを構成するパイプは、強度、製造コストの点から金属パイプが好適に使用されるが、例えば、合成樹脂、繊維強化プラスチック等その他公知材料により形成されたものであってもよいし、金属又は強化プラスチック等のパイプを組み合わせたもの等であってもよい。また、パイプの形状は、円管のほか、例えば三角管、四角管その他多角管又はこれらの組み合わせであってもよい。
【0030】
(基台部2)
基台部2は、正面視四角型に形成された複数の枠体20と、各枠体20の側部に固着して複数の枠体20を長手方向に所要間隔を空けて連結する一対の連結枠21により形成されている。
【0031】
枠体20は、垂直に設けられた一対の基台縦枠202と、各基台縦枠202の上端に横架して固着された基台上枠204と、各基台縦枠202の下端に横架して固着された基台下枠206により形成されている。
【0032】
各連結枠21は、それぞれが枠体20の左右側部(即ち、各基台縦枠202)の同じ高さの位置に固着されており、所要間隔を空けて配置された各枠体20の側部(基台縦枠202)に横架されている。前記連結枠21の固着位置(高さ)は、基台上枠204から所要間隔を開けた下方の箇所である。
【0033】
なお、図面には特に示していないが、載置台が転倒しにくいようにより安定させるため、載置台の基台下枠の一部又は全部をコンクリートで埋設するか又は基台下枠にアンカーユニット等の公知の固定手段を用いることで、設置箇所に固定してもよい。
【0034】
(スライド部3)
スライド部3は、複数の短辺枠31と各短辺枠31の各端部を固着するように横架された一対の長辺枠32とを備える平面視長方形に形成された主枠30と、主枠30の上面に設けられた複数の載置枠33と、主枠30の各角部に形成されたストッパー枠34と、を備えている。
【0035】
前記各短辺枠31は、基台部2の基台上枠204よりも長尺に形成されている。
前記各長辺枠32は、枠体20の連結枠21よりもやや短い長さに形成されている。
【0036】
前記載置枠33は、短辺枠31上面に所要間隔を空けて複数設けられており、長辺枠32と平行に且つほぼ同じ長さで横架されている。
【0037】
ストッパー枠34は、スライド部3の長手方向両端に位置する短辺枠31に形成されており、該短辺枠31の各角部から垂直上方に延設された一対の上部ストッパー枠342と、該短辺枠31の各角部から垂直下方に延設された一対の下部ストッパー枠344と、各下部ストッパー枠344の先端に固着され、短辺枠31と平行に且つほぼ同じ長さで横架されている下部ストッパー下枠346と、を備えている。
【0038】
(移動機構4)
移動機構4は、回動体である2本の転パイプ41a,41bと、各転パイプの間に所要間隔を空けて取着された複数のスペーサー部材42を備えている(図3参照)。
【0039】
各スペーサー部材42は、一対の保持管422と、各保持管422を横方向に繋ぐ棒状のスペーサー桿424を備えており、前記転パイプ41a,41bは、スペーサー部材42の各保持管422にそれぞれ挿通される。前記保持管422は、その内径が転パイプよりも径大であって、管内で転パイプが回転可能に形成されている。
【0040】
(基台部2、スライド部3及び移動機構4の組み合わせ構造)
基台部2、スライド部3及び移動機構4の組み合わせ構造について、以下説明する。
スライド部3は基台部2の上部へ組み合わせて取着されており、基台部2とスライド部3の間に配置された移動機構4により載置台Aの幅方向(短手方向)へスライド可能に構成されている。
【0041】
前記移動機構4は、転パイプ41a,41bの下面が基台部2の各基台上枠204上面と当接し、転パイプ41a,41bの上面がスライド部3の各短辺枠31下面に当接しており、各基台上枠204と各短辺枠31の間に挟まるように配置されている(図1及び図2参照)。
【0042】
基台部2とスライド部3の組み合わせ構造の細部については以下の通りである。なお、下記(1)〜(3)の構造は、図面に現れていないが載置台Aの反対側においても同様である。
【0043】
(1)スライド部3のストッパー枠34は、基台部2の枠体20よりもやや長手方向中央側(図1〜3において奥側)に位置するように組み合わされている。
【0044】
(2)スライド部3の下部ストッパー下枠346が、基台部2の連結枠21の下側に位置するよう組み合わせてあり、下部ストッパー下枠346の上面と連結枠21下面は摺動可能に接するか又はやや隙間(1〜10mm以下)を空けて組み合わされている(図1及び図2参照)。
【0045】
(3)スライド部3の各下部ストッパー枠344(の下端近傍)が、基台部2の各連結枠21の側部に当たって当該箇所で止まる(それ以上スライドしない)ように組み合わされている(図1及び図2参照)。
【0046】
なお、本実施の形態では、載置台の基台部の各枠体は、正面視四角型に形成されているが、これに限定するものではなく、例えば、正面視で下方に向かって拡がった略台形又は基台下枠の無い正面視門型等の形状であってもよい。
【0047】
また、本実施の形態及び図面には、移動機構4の各転パイプ41a,41bに回転力を加える手段を特に記載していないが、例えば、各転パイプ41a,41bのいずれか又は両方にハンドルを設けて、該ハンドルによって転パイプを回動させてスライド部3を移動させる手段を設けてもよい。同様の作用を奏するのであれば、転パイプを回動させる他の公知手段(例えば、各転パイプ41a,41bのいずれか又は両方に平歯車又はプーリーを取着し、チェーン、ベルト等を介しモーター等の動力によって転パイプを回動させてスライド部3を移動させる構造等)であってもよい。
【0048】
(作 用)
図1〜図3を参照して、栽培装置1の作用を説明する。
前記の通り、栽培装置1の載置台Aは、そのスライド部3が載置台Aの幅方向(短手方向)へスライド移動する。
【0049】
このとき、移動機構4の転パイプ41a,41bがそれぞれ基台部2の基台上枠204上面で回転し、スライド部3の短辺枠31下面と当接しながら、スライド部3が左右いずれかへスライド移動するが、転パイプ41a,41bの間にはスペーサー桿424が設けられているので、これによって各転パイプ41a,41bの間が等間隔に保持され、各転パイプ41a,41bがレール状のフレームである基台上枠204に対して斜めになったり、各転パイプ間の間隔が変わるような状況が生じないか又は生じにくい。
【0050】
つまり、栽培装置1は、移動機構4に多数の軸受を必要としない簡易な構造でありながらも、栽培装置1へ設計時に想定していないような負荷が加わらないか又は加わりにくいので、移動機構4を原因とする装置の破損が起こらないか又は起こりにくい。また、簡易な構造であるので、製造コストが抑制することができる。
【0051】
スライド部3が左右いずれかの端部までスライド移動すると、移動方向と反対側の(左右いずれか一方)の下部ストッパー枠344と基台部2の移動方向と反対側の連結枠21とが当たってスライド移動が止まり、それ以上は進まない(図2参照)。
【0052】
そして、スライド部3が左右いずれかの端部までスライド移動し、重心が左右いずれかの方向に移動したとしても、スライド部3の下部ストッパー下枠346を基台部2の連結枠21の下側に配置しているので、スライド部3が基台部2から外れることがなく、安全である(図1及び図2参照)。
【0053】
図4及び図5を参照して、栽培装置1を使用した屋内での園芸生産システムの作用を説明する。
なお、本実施の形態では、園芸生産を行う作業場はビニールハウスD内であるが、他の構造物の内部であってもよいし、屋外であってもよい。
【0054】
ビニールハウスD内に複数の栽培装置1をそのスライド方向に並列に配置する。載置台Aのスライド部3の上にパレットBを載置すると、パレットBは載置枠33により支持される(図2参照)。パレットB上に培地を収容した水耕栽培用プランターCを載置させる(図4及び図5参照)。
【0055】
通常時(特に作業を行わない場合)、各栽培装置のスライド部は少なくとも一列の通路分のスペースE1を空けて(隣接させるか又はほぼ隙間を空けずに)寄せておく(図4参照)。
これにより、本来固定的な通路を設ける予定の分のスペースに栽培装置1を配置することができ、栽培面積を増加させることができるので、土地効率が良い。
【0056】
園芸作業を行う場合には、作業対象となる水耕栽培用プランターCの横に通路ができるように、任意の栽培装置1のスライド部3を水平方向にスライド移動させて、前記スペースE1と異なる箇所に通路のスペースE2を作る(図5参照)。
【0057】
この作業の際には、前記の通り、移動機構4を原因とする装置の破損が起こらないか又は起こりにくく、また、スライド部3のスライド移動によって重心が移動したとしても、スライド部3と基台部2との組み合わせ構造によってスライド部3が基台部2から外れることがなく、安全に園芸作業ができる(図1及び図2参照)。
【0058】
また、必要に応じて栽培装置1を移動させることで作業が必要な栽培装置への通路を作ることができるので、効率的な園芸作業を行うことができる。
【0059】
本明細書及び特許請求の範囲で使用している用語と表現は、あくまでも説明上のものであって、なんら限定的なものではなく、本明細書及び特許請求の範囲に記述された特徴およびその一部と等価の用語や表現を除外する意図はない。また、本発明の技術思想の範囲内で、種々の変形態様が可能であるということは言うまでもない。
【符号の説明】
【0060】
1 栽培装置
A 載置台
B パレット
C 水耕栽培用プランター
D ビニールハウス
E1,E2 スペース
2 基台部
20 枠体
202 基台縦枠
204 基台上枠
206 基台下枠
21 連結枠
3 スライド部
30 主枠
31 短辺枠
32 長辺枠
33 載置枠
34 ストッパー枠
342 上部ストッパー枠
344 下部ストッパー枠
346 下部ストッパー下枠
4 移動機構
41a,41b 転パイプ
42 スペーサー部材
422 保持管
424 スペーサー桿

【特許請求の範囲】
【請求項1】
園芸生産に用いる栽培装置であって、
前記栽培装置は、栽培対象植物の培地を直接収容するか又は培地を収容した栽培容器を保持又は載置するように形成された培地保持体と、培地保持体を載置すべく培地保持体の下方に設けられた載置台と、を備えており、
前記載置台は、
培地保持体を上面に載置し、水平方向に移動可能に構成されたスライド部と、
スライド部が取着された基台部と、
スライド部と基台部の間に設けられており、並行に配置された2以上の回動体と、各回動体の間を等間隔に保持するスペーサー部材を備えた移動機構と、
を備えている、
栽培装置。
【請求項2】
園芸生産に用いる栽培装置であって、
前記栽培装置は、栽培対象植物の培地を直接収容するか又は培地を収容した栽培容器を保持又は載置するように形成された培地保持体と、培地保持体を載置すべく培地保持体の下方に設けられた載置台と、を備えており、
前記載置台は、
培地保持体を上面に載置し、水平方向に移動可能に構成されたスライド部と、
スライド部が取着された基台部と、
スライド部と基台部の間に設けられており、並行に配置された2以上の回動体と、各回動体の間を等間隔に保持するスペーサー部材を備えた移動機構と、
を備えており、
移動機構は、回動体である2本の円筒又は中実の円棒と、各回動体の間に所要間隔を空けて取着された複数のスペーサー部材を備え、前記各スペーサー部材は、その内径が回動体よりも径大であって、内部で回動体が回転可能に形成された一対の保持管と、各保持管を横方向に繋ぐ棒状のスペーサー桿を備え、前記回動体がスペーサー部材の各保持管にそれぞれ挿通された構造であり、
スライド部と基台部には、水平方向の移動を止めるストッパー部材と、スライド部の脱落防止部材がそれぞれ設けてあり、該各部材が協働することによって、スライド部の移動により重心が移動したとしても、スライド部が基台部から外れないか又は外れにくく構成されている、
栽培装置。
【請求項3】
請求項1又は2記載の栽培装置を、園芸生産を行う作業場に複数配置する園芸生産システムであって、
作業場において、前記栽培装置のスライド部がスライドする方向へ、前記栽培装置が並列に複数配置され、スライド部に載置した培地保持体には、栽培対象植物の培地が収容されるか又は培地を収容した栽培容器が保持又は載置されており、
作業がないときは、各栽培装置のスライド部は少なくとも一列の通路分のスペースを空けて、隣接させるか又はほぼ隙間を空けずに寄せておき、
栽培対象植物に園芸作業を行う際には、作業対象となる培地保持体の横に通路ができるように、培地保持体を載置したスライド部を水平方向にスライド移動させて、通路を作ることができるように構成されている、
園芸生産システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−152193(P2012−152193A)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−16606(P2011−16606)
【出願日】平成23年1月28日(2011.1.28)
【出願人】(505361749)株式会社プランツ (2)
【Fターム(参考)】