説明

梱包用トレイ及びこれを用いた梱包体

【課題】搬送時における被梱包物の飛び出しを防止することができる梱包用トレイを提供する。
【解決手段】梱包用トレイ10は、被梱包物Pを収納するための収納凹部11が形成されている。収納凹部11の側壁部12には、収納凹部11の深さ方向dに沿って突出した突出部15が形成されている。突出部15は、収納凹部11の開口部11b側の端部15aが傾斜した傾斜面15dを形成している。そして、被梱包物Pを収納凹部11に収納する際に、突出部15は、被梱包物Pの側面によって押し潰されるように変形すると共に、該変形に対して復元力Fが生じるように構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機械部品等の被梱包物を収納するための梱包用トレイに係り、特に、被梱包物を収納した状態で保持し、これを搬送するのに好適な梱包用トレイに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、産業機械や車両を構成する機械部品などの被梱包物のうち、軽量で小型の被梱包物は、真空成型された梱包用トレイによって梱包される。梱包用トレイには、被梱包物の形状に応じて被梱包物を収納するための収納凹部が形成されている。このような被梱包物は、梱包用トレイの収納凹部に収納された状態で梱包体とされ、搬送される。
【0003】
しかしながら、梱包用トレイに梱包された被梱包物は、搬送時の振動等により、収納凹部から飛び出すことがある。このような点を鑑みて、図7に示すように、梱包用トレイ70の収納凹部75の側壁部75aには、被梱包物P1に係止するための内側に突出した突起部76が形成されている(例えば、特許文献1または特許文献2参照)。この突起部76により、搬送時に、収納凹部75において、被梱包物P1に突起部76が係止するので、収納凹部75からの被梱包物Pの飛び出しを防止することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−118560号公報
【特許文献2】特開2002−302114号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、このような突起部76を成形するには、突起部76の収納凹部75の底部75c側の端部76aが、収納凹部75の開口部75bから底部75cに向って広がるように成形されるべく、成形型にアンダーカットを設けなければならない。そして、成形型を離形する際に、いわゆる成形型を無理抜きして、突起部76が形成された梱包用トレイ70を成形することになる。この場合、成形型のアンダーカットにより突起部76の形状が変形し易い。このため、この変形による突起部76の形状の如何によっては、係止機能が働かない場合も多々ある。
【0006】
さらに、たとえ、所望の形状に突起部76を成形できたとしても、このような梱包用トレイの収納凹部75に被梱包物P1を収納する際、または、収納凹部75から被梱包物P1を取り出す際には、被梱包物P1は、これらの突起部76を乗り越えなければならない。しかしながら、突起部76の突起高さが高い場合、またはその数が多い場合には、収納凹部75から被梱包物P1を容易に出し入れすることができないことがある。
【0007】
本発明は、このような課題を解決すべくなされたものであり、その目的とするところは、搬送時などにおいて、収納凹部からの被梱包物の飛び出しを防止すると共に、成形がしやすく、被梱包物を収納凹部から出し入れし易い梱包用トレイを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決すべく、発明者らは、鋭意検討を重ねた結果、これまでの梱包用トレイは、被梱包物を収納する収納凹部の上部において、飛び出そうとする被梱包物を押える構造としていたので、上述した問題が発生したが、収納時に、被梱包物の側面を収納凹部の側壁部で押圧することにより、被梱包物を保持する構造にすれば、梱包用トレイの成形性も改善され、さらには、収納凹部からの被梱包物の出し入れも容易にすることができるとの新たな知見を得た。
【0009】
本発明は、この新たな知見に基づくものであり、本発明に係る梱包用トレイは、被梱包物を収納するための収納凹部が形成された梱包用トレイであって、前記収納凹部の側壁部には、前記収納凹部の深さ方向に沿って突出し、かつ、前記収納凹部の開口部側の端部が傾斜した突出部が形成されており、該突出部は、前記被梱包物を前記収納凹部に収納する際に、前記被梱包物の側面によって押し潰されるように変形すると共に、該変形に対して復元力が生じるように構成されている。
【0010】
本発明によれば、収納凹部に被梱包物を収納する際に、収納凹部の開口部側における突出部の端部が傾斜しているので、この傾斜した部分が、被梱包物を収納凹部内に導入するためのスロープとして作用する。その後、被梱包物を収納凹部の底部に向ってさらに移動させることにより、被梱包物の側面によって押し潰されるように突出部を変形させながら、被梱包物を収納することができる。この際に、変形した突出部が元の形状に戻ろうとする復元力により、被梱包物の側面において、突出部により収納した被梱包物が押圧される。
【0011】
このような結果、被梱包物が収納されたトレイ(梱包体)を搬送する場合、復元力により収納凹部内において被梱包物が収納凹部内において保持されているので、搬送時においてトレイから被梱包物が飛び出すことを防止することができる。
【0012】
また、突出部の開口部側の端部が傾斜していることにより、容易に収納凹部内に被梱包物を収納することができる。一方、収納された被梱包物は、被梱包物の側面に作用する復元力のみで収納凹部内に保持されているので、収納凹部から被梱包物を容易に取り出すことができる。
【0013】
さらに、このような突出部は、アンダーカットとなるような無理抜きによる成形をすること無しに、成形型により成形することができる。これにより、収納凹部の側壁部において、安定した形状の突出部を容易に製造することができる。
【0014】
ここで本発明にいう「被梱包物を収納凹部に収納する際に、突出部は、被梱包物の側面によって押し潰されるように変形すると共に、変形に対して復元力が生じるように構成されている」とは、突出部が、被梱包物を収納した状態で、被梱包物の側面により押し潰されるように変形することができる肉厚、材質(例えば硬さ)、大きさ、及び形状等を有しており、かつ、このように押し潰されるように変形したときに、この変形した突出部が元の形状に戻ろうとする復元力(変形に対する反発力)を被梱包物の側面に作用することができる肉厚、材質(例えば硬さ)、大きさ、及び形状等を有することをいう。
【0015】
ここで、梱包用トレイの収納凹部の肉厚のうち、突出部の肉厚は、上述した変形により復元力を発生することができるのであれば、特にその肉厚が限定されるものではない。しかしながら、より好ましい態様としては、前記突出部の肉厚は、該突出部以外の前記収納凹部の側壁部の肉厚よりも薄い。
【0016】
このような態様によれば、突出部以外の収納凹部に側壁部の肉厚をより薄くすることにより、突出部は、被梱包物の側面により容易に変形しやすくなり、収納凹部内への被梱包物の出し入れを容易にすることができる。また、突出部以外の収納凹部の側壁部の肉厚を突出部の肉厚よりも厚くしたことにより、収納凹部内に収納された被梱包物を好適に保護することができる。
【0017】
ここで、梱包用トレイを、例えば真空成形、プレス成形などにより成形型を用いた成形により製造する際には、成形後の成形型の離形性(梱包用トレイの成形性)を考慮すると、収納凹部の壁面およびその一部を構成する突出部の壁面も、収納凹部の底部から開口部に向って広がるように傾斜させるのが一般的である。
【0018】
しかしながら、より好ましい態様としては、前記梱包用トレイは、成形型を用いて成形されたものであり、前記突出部の壁面は、前記収納凹部の前記深さ方向に対して平行な面を有している。
【0019】
本発明によれば、突出部の壁面を、前記収納凹部の深さ方向に対して平行な面(成形型の引き抜き方向に対して平行な面)にすることにより、成形時において突出部の壁部の肉厚を他の傾斜した側壁部の肉厚よりも薄くすることができる。これにより、突出部は、被梱包物により容易に変形しやすくなり、収納凹部内への被梱包物の出し入れをさらに容易にすることができる。
【0020】
また、突出部の形状は、例えば、幅方向に沿って三角形状、多角形状に突出していたり、湾曲していたりした形状を挙げることができ、被梱包物を収納したときに、被梱包物の側面により突出部が変形すると共に、この変形による復元力が生じる形状であれば特に限定されるものではない。
【0021】
しかしながら、より好ましい態様としては、前記突出部は、前記収納凹部の幅方向に沿って湾曲していることがより好ましい。この態様によれば、収納凹部の幅方向に沿って湾曲した突出部は、被梱包物を収納する際に変形し易く、さらに元の形状に復元し易いので、被梱包物により大きな復元力を作用させることができる。
【0022】
より好ましい態様としては、前記突出部の肉厚は、0.3〜2mmであり、突出部の高さが、1〜2mmであることがより好ましい。本発明によれば、突出部をこのような範囲の肉厚及び高さにすることにより、収納凹部に被梱包物を収納する際に、突出部を変形させて、その復元力により被梱包物を収納凹部内に保持することができる。
【0023】
すなわち、突出部の肉厚が、0.3mm未満の場合、または突出部の高さが1mm未満の場合には、被梱包物の接触により突出部が変形したとしても、収納凹部内において被梱包物の保持するに充分な復元力をえることができないことがある。一方、突出部の肉厚が、2mmを超えた場合、または突出部の高さが2mmを超えた場合には、被梱包物により突出部を変形させ難く、簡単に被梱包物を収納凹部から容易に出し入れできないことがある。
【0024】
さらに、突出部を変形させることにより、変形に対して復元力を生じさせ、被梱包物を安定的に収納凹部に保持することができるのであれば、1つの収納凹部内に、形成される突出部の数は特に限定されるものではない。
【0025】
しかしながら、より好ましくは、前記収納凹部の側壁部には、前記突出部が少なくとも2つ形成されている。このように、突出部を少なくとも2つ形成することにより、収納凹部内において被梱包物を2点で挟持することができる。
【0026】
また、収納凹部の深さ方向に沿った突出部の長さは、搬送時等における飛び出しを防止することができる復元力を被梱包物に作用させることができるのであれば、特に限定されるものではない。しかしながら、より好ましい態様としては、前記深さ方向に沿った前記突出部の長さは、前記被梱包物の前記側面における前記被梱包物の厚さよりも長い。この態様によれば、突出部の長さを被梱包物の厚さよりも大きく(長く)することにより、被梱包物の側面を復元力により確実に押圧することができ、さらに突出部のうち変形していない上方の部分を、被梱包物に係止する凸部として作用させることができる。
【0027】
このようにして、上述した梱包用トレイの前記収納凹部に、前記被梱包物を収納することによって梱包体とすることにより、トレイの収納凹部から被梱包物が飛び出すことなく、梱包体を搬送することができる。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、搬送時における被梱包物の飛び出しを防止すると共に、成形がしやすく、被梱包物を収納凹部から出し入れし易くなる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】第1の形態に係る梱包用トレイを説明するための模式的斜視図。
【図2】図1に示す梱包用トレイの収納凹部の上面図であり、(a)は、収納凹部に、被梱包物を収納する前の上面図であり、(b)は、収納凹部に、被梱包物を収納した後の上面図。
【図3】図1に示す側壁部に形成された突出部近傍の模式的な拡大斜視図であり、(a)は、被梱包物を収納する前の斜視図であり、(b)は、被梱包物を収納した状態の斜視図。
【図4】図1に示す梱包用トレイの収納凹部に被梱包物を収納する方法を説明するための模式的断面図であり、(a)は、被梱包物を収納する前の状態を示す断面図であり、(b)は、(a)の被梱包物を収納する途中の状態を示す断面図であり、(c)は、被梱包物を収納した後の状態を示す断面図。
【図5】図2に示す突出部の変形例を示す模式的な拡大斜視図であり、(a)は、第1の変形例を示す斜視図であり、(b)は、第2の変形例を示す斜視図であり、(c)は、第3の変形例を示す斜視図。
【図6】図1に示す突出部の変形例を示す模式的断面図であり、(a)は、第1の変形例を示す断面図であり、(b)は、第2の変形例を示す図。
【図7】従来の梱包用トレイを説明するための、収納凹部の模式的断面図。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下に、図面に基づき、本発明に係る梱包用トレイの実施形態を説明する。図1は、第1の形態に係る梱包用トレイを説明するための模式的斜視図である。図2は、図1に示す梱包用トレイの収納凹部の上面図であり、(a)は、収納凹部に、被梱包物を収納する前の上面図であり、(b)は、収納凹部に、被梱包物を収納した後の上面図である。
【0031】
図3は、図1に示す側壁部に形成された突出部近傍の模式的な拡大斜視図であり、(a)は、被梱包物を収納する前の斜視図であり、(b)は、被梱包物を収納した状態の斜視図である。
【0032】
図4は、図1に示す梱包用トレイの収納凹部に被梱包物を収納する方法を説明するための模式的断面図であり、(a)は、被梱包物を収納する前の状態を示す断面図であり、(b)は、(a)の被梱包物を収納する途中の状態を示す断面図であり、(c)は、被梱包物を収納した後の状態を示す断面図である。
【0033】
図1に示す梱包用トレイ10(以下トレイ10という)は、被梱包物Pを梱包するためのトレイである。トレイ10は、シート状の例えば熱可塑性樹脂を素材として、これを真空成形等の熱成形手段により一体成形してなる。
【0034】
素材としては、例えば、ポリプロピレン(PP)やポリエチレン(PE)等のポリオレフィン系樹脂、耐衝撃性ポリスチレン(HiPS)等のポリスチレン(PS)系樹脂、若しくは、ポリエチレンテレフタラート(PET)等のポリエステル系樹脂からなる発泡材、又は非発泡材からなるシート状の樹脂を挙げることができ、熱成形が可能な樹脂であれば、素材は特に限定されない。
【0035】
図1〜3に示すように、成形された梱包用トレイ10の内部には、被梱包物Pの下部Paの形状に応じて、4つの被梱包物Pを収納する複数(図では、2×2個)の収納凹部11が形成されており、収納凹部11の深さは、被梱包物Pの高さよりも深くなっている。
【0036】
各収納凹部11には、収納凹部11の側壁部11aから張り出した凹部が設けられている。凹部は、隣接した収納凹部11間を連結するように張り出した凹部12bと、外周周縁17に向かって張り出した凹部12aとから構成される。凹部12a,12bにより、収納凹部11に収納された被梱包物Pの側面を作業者が指先または手で係止して、梱包用トレイ10から被梱包物Pを容易に取り出すことができる。
【0037】
また、図1及び図2(a)に示すように、梱包用トレイ10の各収納凹部11の側壁部11aには、対向する位置に一対の突出部15,15が4組形成されている。より具体的には、図3(a)に示すように、突出部15は、収納凹部11の側壁部11aにおいて、深さ方向dに沿って底部11cまで突出している。
【0038】
さらに、収納凹部11の開口部11b側の突出部15の端部15aは、傾斜している。すなわち、突出部15の端部15aには、傾斜面15dが形成されている。収納凹部11の深さ方向dに沿った突出部15の胴部15cの長さLは、収納する際に突出部15に接触する被梱包物Pの側面Pbにおける被梱包物Pの厚さtよりも長くなっている。
【0039】
ここで、この長さLは、傾斜面15dの下方先端部15fから収納凹部11の底部11c側の端部15bまでの突出部15の長さであり、被梱包物Pを収納凹部11に移動させながら接触する突出部15の接触長さ(傾斜面15dを除く)に相当する。
【0040】
そして、図3(a)から(b)の状態となるように、被梱包物Pを、収納凹部11の上方から収納凹部11に収納する際には、突出部15は、被梱包物Pの側面Pbによって押し潰されるように変形すると共に、変形に対して弾性変形分の復元力Fが生じるように構成されている。
【0041】
具体的には、本実施形態の場合、梱包用トレイ10は、上述した樹脂のうち、より好適な樹脂としてポリプロピレン樹脂またはポリエチレンテレフタラート樹脂により真空成形された成形体であり、突出部15の肉厚は、突出部15以外の収納凹部11の側壁部11aの肉厚よりも薄くなっている。
【0042】
詳細には、突出部の肉厚は、0.3〜2mmの範囲であり、突出部15以外の収納凹部11の側壁部11aの肉厚は、0.5〜3mmの範囲であることが好ましい。また、収納凹部11の側壁部11aの表面から、突出部15の頂部までの突出部の高さHが、1〜2mmであることが好ましい。
【0043】
このような関係を満たすためには、梱包用トレイ10は、上述したように成形型を用いた成形により製造される場合、突出部15の胴部15cの壁面は、収納凹部11の深さ方向d(底部11cから開口部11bに沿った方向)に対して平行な面となることが好ましい。
【0044】
すなわち、深さ方向dは、トレイ10の成形型の引き抜き方向に一致しているので、成形時には、突出部15の肉厚を、突出部15以外の収納凹部11の側壁部11aの肉厚よりも薄くすることができる。
【0045】
突出部15をこのような範囲の肉厚および高さにすることにより、収納凹部11に被梱包物Pを収納する際に、突出部15を容易に変形させて、その復元力Fにより被梱包物Pを収納凹部11内に保持することができる。
【0046】
さらに、突出部15の端部15aの傾斜面15dと、突出部15の胴部15cの壁面との境界部15eは、構造的に他の部分に比べて突出部の高さ方向に対する強度は強くなる。このような結果、成形時ばかりでなく、被梱包物Pの収納時においても突出部15の形状を保持するので、上述した復元力Fを安定的に確保することができる。
【0047】
ここで、突出部15の肉厚が、0.3mm未満の場合、または突出部の高さHが1mm未満の場合、被梱包物Pの接触により突出部15が変形したとしても、収納凹部11内において被梱包物Pの保持するに充分な復元力Fを得ることができないことがある。
【0048】
一方、突出部15の肉厚が、2mmを超えた場合、または突出部の高さHが2mmを超えた場合には、被梱包物Pにより突出部15を変形させ難く、簡単に被梱包物Pを収納凹部11に被梱包物Pを出し入れ難くなる。
【0049】
また、突出部15は、収納凹部11の幅方向wに沿って湾曲しており、本実施形態では、幅方向に円弧状に湾曲している。収納凹部11の幅fは、上述した復元力Fを生じさせることができるのであれば、特に限定されるものではないが、好ましくは、5〜30mmの範囲にある。
【0050】
このように、構成されたトレイ10の作用について以下に示す。まず、図4(a)から(b)の状態へ、収納凹部11に被梱包物Pを収納する。この際に、傾斜面15dに沿って、被梱包物Pを収納凹部11内に誘導することができる。
【0051】
次に、図4(b)から(c)の状態へ、収納凹部11の突出部15を被梱包物Pの側面Pbに押し潰すように突出部15を変形させながら(歪ませながら)、被梱包物Pを収納する。この際に、突出部の一部の弾性変形により、変形した突出部15が元の形状に戻ろうとする復元力(反発力)Fにより、被梱包物Pの側面において、突出部15が被梱包物Pを押圧する。
【0052】
なお、上述した突出部15の肉厚、材質(例えば硬さ)、大きさ、及び形状等は、被梱包物Pを収納した状態で、被梱包物Pの側面Pbにより押し潰されるように変形することができ、かつ、この変形した突出部が元の形状に戻ろうとする復元力(反発力)を被梱包物の側面に作用することができるように、設定されており、これらのうちいずれかを変更すれば、その変更に応じて、その他のものを変更すればよい。
【0053】
このような結果、被梱包物が収納されたトレイ(梱包体)10を搬送する場合であっても、さらには、トレイ10を反転させた場合であっても、復元力Fにより収納凹部11内において被梱包物Pが挟持されているので、トレイ10から被梱包物が飛び出すことを防止することができる。
【0054】
さらに、収納凹部11の深さ方向dに沿った突出部15の長さLは、被梱包物Pの側面Pbにおける被梱包物Pの厚さtよりも長いので、深さ方向dにわたって、被梱包物Pの側面Pbを突出部15の復元力Fにより押圧することができ、さらに突出部15のうち収納時に変形していない上方の部分が、被梱包物に係止する凸部15gとして作用させることができる(図4(c)参照)。
【0055】
また、突出部15の開口部11b側の端部15aが傾斜していることにより、容易に収納凹部11内に被梱包物Pを収納することができる。一方、収納された被梱包物Pは、被梱包物Pの側面Pbに作用する復元力Fのみで収納凹部11内に保持されているので、収納凹部11から被梱包物Pを容易に取り出すことができる。
【0056】
さらに、突出部15は、アンダーカットとなるような無理抜きによる成形をすること無しに、成形型により成形することができる。これにより、収納凹部11の側壁部11aにおいて、安定した形状の突出部15を容易に製造することができる。
【0057】
このように、収納凹部11の幅方向wに沿って湾曲した突出部15は、被梱包物Pを収納する際に変形し易く、さらにこの変形に対して元の形状に復元し易いので、被梱包物Pに容易に復元力を作用させることができる。
【0058】
しかしながら、このような突出部15の他にも、図5に示すような突出部であってもよい。図5は、図2に示す突出部の変形例を示す模式的斜視図であり、(a)は、第1の変形例を示す図であり、(b)は、第2の変形例を示す図であり、(c)は、第3の変形例を示す図である。
【0059】
例えば、上述した突出部15は、円弧状となるような断面であったが、図5(a)に示すように、突出部15Aの幅方向wに沿った断面形状を三角形状にしてもよい。このような形状にすることにより、被梱包物に応じて局所的に復元力を作用することができる。
【0060】
また、図5(b)に示すように、突出部15Bの幅方向wに沿った断面形状を矩形状にしてもよく、図5(c)に示すように、突出部15Cの幅方向wに沿った断面形状を台形状にしてもよい。このような突出部15B及び15Cとすることにより、被梱包物との接触面積を増やし、より均一な分布の復元力を被梱包物Pに作用させることができる。
【0061】
さらに、図5(c)の如く、深さ方向dに沿った突出部15Cの角部15hをアール形状にすることにより、収納後に変形した突出部15Cを、元の形状に戻り易くすることができる。
【0062】
図6は、図1に示す突出部の変形例を示す模式的断面図であり、(a)は、第1の変形例を示す断面図であり、(b)は、第2の変形例を示す図である。
【0063】
図1に示す実施形態では、収納凹部の深さ方向に沿った突出部の長さLは、被梱包物の側面における被梱包物の厚さtよりも長かったが、収納凹部11内において被梱包物PAを保持するに充分な復元力Fを与えることができるのであれば、図6(a)に示すように、収納凹部11の深さ方向dに沿った突出部15Dの長さLは、被梱包物PAの側面Pbにおける被梱包物Pの厚さtよりも短くてもよい。
【0064】
図1に示す実施形態では、突出部の胴部の壁面は、収納凹部の底部から開口部に沿った方向に対して平行な面であったが、図6(b)に示すように、この変形例では、突出部15Eの壁面は、収納凹部11の底部11cから開口部11bに沿った方向に広がるように傾斜し、突出部15Eの傾斜面15dよりも緩やかに傾斜してもよい。
【0065】
このような変形例によれば、例えば図6(a)に示すように、被梱包物PAの側面Pbに対して、充分な長さの突起部が形成できないような場合であっても、突出部15Eの厚さを厚くすることにより、復元力Fを増加させることができる。このように、突出部15Eの胴部15cの壁面の傾斜角度を適宜選択すれば、突出部15Eの胴部15cの長さに合わせて、復元力Fを調整することができる。
【0066】
以上、本発明の実施形態について詳述したが、本発明は、前記の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の精神を逸脱しない範囲で、種々の設計変更を行うことができるものである。
【0067】
例えば、本実施形態では、収納凹部の側壁部には、前記突出部が少なくとも8つ形成されていたが、突出部を変形させることにより、変形に対して復元力を生じさせ、被梱包物を安定的に収納凹部に保持することができるのであれば、この個数は、特に限定されるものではないが、1つの収納凹部に対して、突出部は、少なくとも2つ以上形成されていることが好ましい。
【符号の説明】
【0068】
10:トレイ(トレイ)、11:収納凹部、11a:側壁部、11b:開口部、11c:底部、12a,12b:凹部、15、15A〜15E:突出部、15a,15b:端部、15c:胴部、15d:傾斜面、15e:境界部、15f:下方先端部、15g:凸部、15h:17:外周周縁、d:深さ方向、F:復元力、P,PA:被梱包物、Pb:被梱包物の側面、w:幅方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被梱包物を収納するための収納凹部が形成された梱包用トレイであって、
前記収納凹部の側壁部には、前記収納凹部の深さ方向に沿って突出し、かつ、前記収納凹部の開口部側の端部が傾斜した突出部が形成されており、
該突出部は、前記被梱包物を前記収納凹部に収納する際に、前記被梱包物の側面によって押し潰されるように変形すると共に、該変形に対して復元力が生じるように構成されていることを特徴とする梱包用トレイ。
【請求項2】
前記突出部の肉厚は、該突出部以外の前記収納凹部の側壁部の肉厚よりも薄いことを特徴とする請求項1に記載の梱包用トレイ。
【請求項3】
前記梱包用トレイは、成形型を用いて成形されたものであり、前記突出部の壁面は、前記収納凹部の前記深さ方向に対して平行な面を有することを特徴とする請求項1または2に記載の梱包用トレイ。
【請求項4】
前記突出部は、前記収納凹部の幅方向に沿って湾曲していることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の梱包用トレイ。
【請求項5】
前記突出部の肉厚は、0.3〜2mmであり、前記突出部の高さは、1〜2mmであることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の梱包用トレイ。
【請求項6】
前記収納凹部の側壁部には、前記突出部が少なくとも2つ形成されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の梱包用トレイ。
【請求項7】
前記深さ方向に沿った前記突出部の長さは、前記被梱包物の前記側面における前記被梱包物の厚さよりも長いことを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の梱包用トレイ。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかに記載の梱包用トレイの前記収納凹部に、前記被梱包物が収納されたことを特徴とする梱包体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−153377(P2012−153377A)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−12015(P2011−12015)
【出願日】平成23年1月24日(2011.1.24)
【出願人】(000002440)積水化成品工業株式会社 (1,335)
【Fターム(参考)】