説明

棒材供給機

【課題】棒材供給機の構造を簡略化して、棒材をガイドレールに確実に供給することができる棒材供給機を提供する。
【解決手段】棒材供給機1は、材料棚8と、棒材Wを棒材加工機に給送するためのガイドレール4と、材料棚8から棒材Wを1本ずつ取り出してガイドレール4に補給する棒材補給機構32とを備える。棒材補給機構32は、材料棚8の最下流に位置する棒材Wを押し上げる押上部材40と、押し上げられた棒材Wを受け入れてガイドレール4に補給する棒材受入部材と、材料棚8上の次に供給するべき棒材Wを迎え入れるストッパ部材36とを備える。押上部材40及び棒材受入部材は、共通の移動手段44によって駆動され、押上部材40は、棒材受入部材の揺動運動に伴って上下直線運動する。押上部材40及び棒材受入部材が共通の移動手段44で駆動されるので、駆動部の部品点数を低減でき、構造を簡略化できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、棒材加工機に自動的に棒材を供給するための棒材供給機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の棒材供給機としては、例えば特許文献1に記載されるように、材料棚に載置された複数の棒材のうち1本を押上アームで上方に押し上げ、押し上げられた棒材を棒材搬送アームで受け入れ、棒材搬送アームを回動させることによって棒材をガイドレールに搬送する構造のものがある。この構造の棒材供給機では、棒材搬送アームによって棒材を受け入れてガイドレールに搬送するので、棒材が材料棚からガイドレールに落下することで棒材供給を行う場合に比べて、ガイドレールへの衝撃が少なく、棒材供給機の振動、騒音を低減することができる。
【0003】
【特許文献1】実用新案登録第2505419公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述のような棒材供給機では、押上アームの移動機構と棒材搬送アームの移動機構をそれぞれ取り付ける必要があり、棒材供給機の部品点数が多くなると共に、メンテナンス作業も繁雑となる。また、棒材をガイドレールに搬送する際には、押上アームから棒材搬送アームへの棒材の受け渡しを確実に行うために、先ず、棒材搬送アームを押上アームに隣接する位置に回動し、次に、押上アームを上方に移動させなければならない。したがって、このような棒材供給機では、押上アームの棒材搬送アームに対する動作タイミングを設定する必要がある。
【0005】
本発明は、棒材供給機の構造を簡略化して、棒材をガイドレールに確実に供給することができる棒材供給機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る棒材供給機は、給送軸線に沿って棒材を棒材加工機に給送する棒材供給機であって、棒材が載置される棒材載置面を有する材料棚と、材料棚から取り出された棒材を給送軸線に沿って案内するためのガイドレールと、材料棚から棒材を1本ずつ取り出してガイドレールに補給するための棒材補給機構と、を備え、棒材載置面は、ガイドレールから遠い載置面上流側からガイドレールに近い載置面下流側に向けて下方に傾斜しており、棒材補給機構は、載置面下流側において棒材載置面から上方に突出し棒材が棒材載置面から落下するのを防止するストッパ部材と、材料棚の載置面下流側縁部において下方から上方に移動してストッパ部材に隣接する最も載置面下流側の棒材を1本だけ押し上げる押上部材と、押上部材が連結され、押上部材で押し上げられた棒材を受け入れる受入部を有し、受入部に受け入れられた棒材をガイドレールに供給する棒材受入部材と、棒材載置面からストッパ部材の高さまで棒材を押し上げ且つ受入部が押上部材と整列する棒材受入位置と押上部材が棒材載置面以下の高さに退避し且つ受入部がガイドレールの高さ以下に位置する棒材補給位置との間で、棒材受入部材及び押上部材を移動させる移動手段と、押上部材が棒材補給位置にあるとき最も載置面下流側の棒材だけが押上部材上に位置する棒材取出位置と押上部材が棒材受入位置にあるとき次に供給すべき棒材に近づいて迎え受ける迎受位置との間で、ストッパ部材を棒材載置面に沿って往復運動させるストッパ部材往復動手段と、を含む、ことを特徴とする。
【0007】
本発明においては、ストッパ部材が棒材取出位置にあるとき、移動手段によって棒材受入部材及び押上部材を移動させると、押上部材は上方に移動し、棒材受入部材の受入部が押上部材に整列する棒材受入位置まで移動する。この棒材受入位置では、押上部材によって棒材が1本押し上げられ、棒材受入部材の受入部に受け入れられる。次に、ストッパ部材往復動手段を駆動してストッパ部材を棒材取出位置から迎受位置まで移動させて、次に供給すべき棒材を迎え受ける。その状態で、移動手段によって棒材受入部材及び押上部材を棒材受入位置から棒材補給位置に移動させると、押上部材は、棒材載置面以下の高さに退避し、棒材受入部材の受入部は、ガイドレールの高さ以下に位置して、棒材をガイドレール内に供給する。
【0008】
本発明に係る棒材供給機によれば、押上部材及び棒材受入部材を共通の移動手段によって移動させるので、それぞれ個別に駆動装置を備えていた従来の棒材供給機に比べて、駆動部を少なくすることができ、棒材供給機の構造を簡単にすることができる。したがって、棒材供給機のメンテナンス作業も簡略化される。また、押上部材が棒材受入部材に連結し、これらの部材が共通の移動手段によって連動して移動するので、押上部材の棒材受入部材に対する動作タイミングを調整する必要がなく、確実に棒材をガイドレールに搬送することができる。さらに、ストッパ部材が棒材取出位置と迎受位置との間で往復動可能に設けられているので、押上部材が棒材載置面から棒材を1本だけ取り出す際に次の棒材がストッパ部材によって迎え受けられる。従って、次の棒材が材料棚の棒材載置面を転がり、ストッパ部材にぶつかって衝撃を受けるのが防止される。これにより、棒材への衝撃を緩和することができ、棒材の衝撃による棒材供給機の振動及び棒材の衝撃による騒音を低減することができる。
【0009】
また、本発明の実施の形態では、棒材受入部材は、揺動運動を行い、押上部材は、上下直線運動を行うことにより、棒材受入部材が棒材補給位置から棒材受入位置に移動するとき、受入部が押上部材に近づいて棒材受入位置において受入部が押上部材の棒材押上面に連続する、ことが好ましい。
この実施の形態においては、棒材受入部材が揺動運動を行い、押上部材が直線運動を行い、棒材受入位置において、受入部が押上部材の棒材押上面に連続するので、押上部材によって押し上げられた棒材がスムーズに受入部に受け入れられる。
したがって、この実施の形態によれば、棒材を傷つけたり、棒材供給機に衝撃を与えたりすることなく、棒材を受入部に受け入れることができる。
【0010】
また、本発明の別の実施の形態では、押上部材の棒材押上面は、ガイドレールの近傍まで下方に傾斜しており、受入部は、棒材受入位置において、棒材押上面に連続する傾斜面を有する、ことが好ましい。
この別の実施の形態においては、棒材押上面が、ガイドレールの近傍まで下方に傾斜し、受入部の傾斜面が棒材押上面に連続するので、押上部材によって押し上げられた棒材が、棒材押上面及び受入部の傾斜面上を移動して受入部に入る。
したがって、この別の実施の形態によれば、棒材を傷つけたり、棒材供給機に衝撃を与えたりすることなく、棒材を受入部に受け入れることができる。
【0011】
本発明の更に別の実施の形態では、棒材の径寸法に対応した距離を隔てて材料棚の上方に配置され、材料棚に載置された棒材を棒材載置面に沿って1列に整列させるための棒材規制部材と、棒材規制部材を棒材載置面に対して近接離間させる規制部材駆動手段と、を更に備える、ことが好ましい。
この更に別の実施の形態においては、材料棚に載置された棒材は、棒材規制部材によって上下の移動が規制される。これにより、棒材は、材料棚の棒材載置面に沿って1列に整列する。
したがって、この更に別の実施の形態によれば、棒材規制部材が設けられているので、材料棚の棒材載置面上で棒材が上下方向に重なってしまうのを防止することができる。また、これにより、棒材補給機構が、1列に整列された棒材の列から確実に棒材を1本ずつ取り出すことができる。
【0012】
本発明の他の実施の形態では、規制部材駆動手段の移動を制御するコントローラを有し、該コントローラは、加工すべき棒材の径寸法の入力に応じて、棒材載置面からの棒材規制部材の距離を決定する、ことが好ましい。
この他の実施の形態においては、棒材供給機がコントローラを有するので、コントローラは、入力された棒材の径寸法に応じて、棒材規制部材の距離を決定し、規制部材駆動手段が決定された距離に基づいて規制部材を移動させる。
したがって、この他の実施の形態によれば、棒材規制部材の距離を自動的に設定することができるので、操作者はコントローラに加工する棒材の径寸法を入力すればよいから、寸法変更作業を簡単且つ短時間で行うことができる。
【0013】
本発明の更に他の実施の形態では、ストッパ部材往復動手段の運動を制御するコントローラを有し、該コントローラは、加工すべき棒材の径寸法の入力に応じて、棒材取出位置及び迎受位置を決定する、ことが好ましい。
この更に他の実施の形態においては、棒材供給機がコントローラを有するので、コントローラは、入力された棒材の径寸法に応じて、ストッパ部材の棒材取出位置及び迎受位置を決定し、ストッパ部材往復動手段の往復動距離を変更する。
したがって、この更に他の実施の形態によれば、棒材取出位置及び迎受位置を自動的に設定することができるので、操作者はコントローラに加工する棒材の径寸法を入力すればよいから、寸法変更作業を簡単且つ短時間で行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の好ましい実施形態を添付図面を参照して説明する。
図1は、本発明の実施形態による棒材供給機1の全体を示す側面図であり、図2は、本発明の実施形態による棒材供給機1の全体を示す平面図である。なお、図2は、図1の棒材供給機1の上方を覆うカバー3を取り外した状態を示す。
【0015】
棒材供給機1は、棒材加工機100に隣接して配置され、棒材供給機1および棒材加工機100を備えて本発明の棒材加工システム200が構成されている。棒材加工機100は、例えば主軸固定型のNC旋盤であり、主軸Aを有する主軸台101と、主軸台101に支持された棒材を加工する加工部(図示せず)とを備える。棒材供給機1は、この棒材加工機100に、主軸Aと一致する給送軸線Bに沿って棒材Wを1本ずつ供給する。
【0016】
なお、棒材Wは棒材供給機1内で棒材加工機100に向かって供給されるから、本実施形態では、説明の簡略化のため、棒材供給機1において棒材加工機100から遠い側を上流側、棒材加工機100に近い側を下流側と称することとする。
【0017】
主に図2に示すように、棒材供給機1は、給送軸線Bに平行に延びる支持フレーム2と、支持フレーム2に支持され、棒材Wを給送軸線Bに沿って案内するガイドレール4と、ガイドレール4上の棒材Wを給送軸線Bに沿って棒材加工機100に給送する送り機構6と、ガイドレール4に供給される棒材Wを載置する材料棚8と、棒材供給機1の動作を制御するコントローラ10(図1)とを備える。
【0018】
ガイドレール4は、棒材供給機1の長手方向にわたって給送軸線Bに平行に延びており、上流側ガイドレール4A及び下流側ガイドレール4Bを有する。ガイドレール4は、上方に開口する断面円弧状に形成され、その内面に棒材Wを保持可能となっている。ガイドレール4の円弧形の形状により、棒材Wがガイドレール4に供給されると、棒材Wの径寸法にかかわらず、棒材Wの中心が常に幅方向に関して同じ位置に安定する。
下流側ガイドレール4Bには、下流側ガイドレール4Bの上面を覆う蓋12が設けられている。この蓋12には、長手方向に沿って間隔を隔てて複数の油供給孔(図示せず)が形成されており、これらの油供給孔には、油の供給管14がそれぞれ連結されている。これらの供給管14には、下流側ガイドレール4B内に油を供給するためのポンプ(図示せず)が接続されている。なお、油としては、通常切削油が使用される。また、下流側ガイドレール4Bと棒材加工機100との間には、棒材Wの加工中の棒材Wの回転による振動を抑制するための防振装置15が設けられている。なお、防振装置15が、下流側ガイドレール4Bと同様に、筒状部材の内部に油を供給することにより棒材Wの振動を抑制するものである場合には、この防振装置15にも、供給管14に接続する前述のポンプが接続される。
【0019】
図3は、本発明の第1実施形態による棒材供給機1の側断面図である。図3及び前述の図2に示すように、送り機構6は、上流側ガイドレール4A内に供給された棒材Wを下流側ガイドレール4Bに案内(一次送り)するための一次送り部材(図示せず)と、一次送りされた棒材Wを更に棒材加工機100側に給送するための送り矢16と、を有する。
【0020】
一次送り部材は、ブロック状に形成されており、上流側ガイドレール4Aの断面円弧形の内側に配置されている。一次送り部材は、上流側ガイドレール4Aの長手方向に沿って、ガイドレール4内を移動可能である。一次送り部材には、一次送り部材をガイドレール4の長手方向に沿って移動させる一次送り部材駆動機構(図示せず)が連結されている。
【0021】
送り矢16は、上流側の端部が羽根部材18に固定されることで片持ち支持されている。羽根部材18は、送り矢16を長手方向に沿って移動させる送り矢駆動機構20に連結している。送り矢駆動装置20は、サーボモータ22及び無端チェーン24を有し、無端チェーン24には羽根部材18が連結している。また、送り矢16は、図3に示すように、送り矢回動機構(図示せず)の駆動によって軸26を中心に回動可能であり、これにより、送り矢16は、ガイドレール4内に配置され、ガイドレール4内で棒材Wを給送する給送位置とガイドレール4の上方に退避する退避位置との間で移動可能となっている。
送り矢16は、棒材Wの上流側の端部を保持するチャック(図示せず)を有する。また、支持フレーム2には、送り矢16のチャックが棒材Wを保持する際に、棒材Wをガイドレール4内で固定するためのクランプ部28(図2)が取り付けられている。
【0022】
材料棚8は、給送軸線Bに直交する方向に配置された複数の材料棚フレーム30と、材料棚フレーム30から棒材Wを1本取り出してガイドレール4に補給する棒材補給機構32とを有する。
各材料棚フレーム30は、図3に示すように、ガイドレール4側の端部が支持フレーム2に固定されており、ガイドレール4から遠い載置面上流側8Aからガイドレール4に近い載置面下流側8Bに向けて斜め下方に傾斜しており、これらの上面に傾斜した棒材載置面34を形成している。
また、棒材載置面34の上方には、棒材Wを上から規制して、棒材Wを材料棚8上に1列に整列させる棒材規制板(棒材規制部材)35が設けられる。棒材規制板35の棒材載置面34に対する高さ位置は、モータ等を用いた調節機構37によって調整可能となっている。
【0023】
棒材補給機構32は、材料棚8の載置面下流側8Bにおいて棒材載置面34から棒材Wが落下するのを防止するストッパ部材36と、ストッパ部材36を棒材載置面34に沿って往復動させるストッパ部材往復動手段38(図4)と、ストッパ部材36に隣接する最も載置面下流側8Bの棒材Wを1本だけ押し上げる押上部材40と、押上部材40で押し上げられた棒材Wを受け入れてガイドレール4に供給する棒材受入部材42と、押上部材40及び棒材受入部材42を、材料棚8から棒材Wを一本受け入れる棒材受入位置と受け入れた棒材Wをガイドレール4に供給する棒材補給位置との間で移動させる移動手段44と、を有する。
【0024】
図4は、本発明の実施形態による棒材供給機1のストッパ部材36及びストッパ部材往復動手段38を示す図である。
ストッパ部材36は、各材料棚フレーム30の側面に設けられ、材料棚フレーム30の棒材載置面34に沿って複数配置されている。ストッパ部材36には、長手方向に沿って2箇所の長孔46が形成されており、材料棚フレーム30から突出する突起30Aが長孔46内に配置されることにより、ストッパ部材36は、長孔46に沿って、即ち材料棚フレーム30の棒材載置面34に沿ってスライド可能に取り付けられている。また、ストッパ部材36の長手方向略中央には、突起48が設けられている。
【0025】
ストッパ部材36の載置面下流側8Bの端部には、鉤状の保持部50が形成されており、この保持部50は、棒材載置面34に対してほぼ垂直に上方に突出している。この保持部50によって材料棚8に載置された棒材Wが棒材載置面34上に係止される。
【0026】
ストッパ部材36の長手方向略中央には、軸52を中心に回動可能な回動アーム54が連結されている。回動アーム54の基端は軸52に固定され、また回動アーム54の先端には、突起48が係合する凹部56が形成されている。ここで、軸52は、ストッパ部材36の下方に位置し、これにより、回動アーム54の長手方向は、上下方向に延び、ストッパ部材36及び回動アーム54は、全体として略T字形に配置される。また、複数の材料棚8に設けられた複数のストッパ部材36は、それぞれ軸52に固定されており、この軸52によって互いに連結されている。
【0027】
ストッパ部材往復動手段38は、軸52に固定された作動部材58と、作動部材58の一端に連結され、ストッパ部材36を、最も載置面下流側8Bの棒材Wだけが押上部材40に位置する棒材取出位置と次に供給すべき棒材Wに近づいて迎え受ける迎受位置との間で移動させるシリンダ60と、作動部材58の他端に当接可能に設けられ、作動部材58の回動角度、即ちストッパ部材36の移動距離を規制するストッパ62と、を備える。
作動部材58は、長手方向略中央で軸52に固定され、シリンダ60側の一端に、シリンダ60のピストンロッド64と係合する凹部66が形成されている。また、作動部材58のストッパ62側の他端には、ストッパ62に当接する当接部68が形成されている。
【0028】
ストッパ62は、当接部68に対向して設けられ、ねじ70に連結している。ここで、ストッパ62の高さ位置、即ち当接部68に対する距離は、図示しない調整機構によってねじ70を回転させることによって調整可能に構成されている。ストッパ62の高さ位置を調整することにより、軸52の回動角度、即ちストッパ部材36のスライド距離が調整可能となっている。
【0029】
図3に戻って、押上部材40及び棒材受入部材42は、各材料棚フレーム30の側面に設けられ、材料棚フレーム30の棒材載置面34に沿って複数配置されている。
押上部材40は、載置面下流側8Bの縁部に配置され、長手方向が棒材載置面34にほぼ垂直に、上下に延びている。押上部材40には、2箇所の長孔72が形成され、材料棚フレーム30に固定されたボルト74が長孔72に挿通されることで、押上部材40は上下方向に直線移動可能となっている。長孔72の間には、押上部材40が棒材受入部材42に対して回動可能に連結するための突起76が形成されている。
押上部材40の上端は、棒材Wを押し上げる棒材押上面78となっており、押上部材40は、棒材押上面78が棒材載置面34から突出しない退避位置と、ストッパ部材36の保持部50の高さになる押上位置との間でスライド可能となっている。
【0030】
棒材受入部材42は、略L字形に形成されたアーム部80と、アーム部80のガイドレール4側の先端に連結され、棒材Wを1本受け入れる受入部82とを有する。
アーム部80の基端は、軸84に回動可能に取り付けられている。また、アーム部80の略L字形の角部付近には、押上部材40の突起76が挿通される長孔86が形成されている。このように押上部材40が棒材受入部材42にリンクすることにより、押上部材40は、棒材受入部材42の移動に連動して移動可能となる。また、棒材受入部材42の軸84への取付位置と長孔86の形成位置の間には、移動手段44に連結する長孔88が形成されている。
【0031】
受入部82は、断面V字形に形成され、アーム部80から遠い側の傾斜面82Aと、アーム部80に近い側の傾斜面82Bと、を有する。受入部82は、棒材受入部材42が棒材補給位置にあるとき、傾斜面82A,82Bが、ガイドレール4の断面円弧形の凹部を横切らないように位置する。
【0032】
移動手段44は、支持フレーム2に固定されたシリンダであり、ピストンロッドに取り付けられた突起90が棒材受入部材42の長孔88に挿通されている。
【0033】
コントローラ10は、一次送り部材駆動機構、送り矢駆動機構20、送り矢回動機構、調節機構37、ストッパ部材往復動手段38、移動手段44等の駆動機構や、供給管14に接続されたポンプに接続され、これらの動作を制御する。また、コントローラ10には、棒材Wの種類(径寸法)に対応して、棒材規制板35の棒材載置面34からの距離、ストッパ部材36の往復動位置、一次送り部材の移動距離等の各種部材の設定位置、設定距離や、ポンプによる油の供給量が、表や演算式などの形式で記憶されている。これらの記憶情報に基づいて、各種部材の移動距離等の設定値が決定される。さらに、コントローラ10は、棒材加工機100にも接続され、棒材加工機100から棒材Wの供給を要求する棒材供給信号を入力する。
【0034】
次に、本実施形態による棒材加工システム200の動作について説明する。
まず、棒材補給機構32を作動させ、材料棚8に載置された複数の棒材Wから棒材Wを1本取り出し、ガイドレール4内に配置する。
図5乃至図8は、本発明の実施形態による棒材供給機1の棒材補給機構32の動作を示す。図5に示すように、棒材供給機1の初期位置では、ストッパ部材36は、保持部50がガイドレール4側に近く、棒材載置面34の最も下流側の1本の棒材Wだけが押上部材40の上に位置する棒材取出位置にある。また、押上部材40及び棒材受入部材42は、押上部材40の棒材押上面78が棒材載置面34から突出せず、棒材受入部材42の受入部82の上面がガイドレール4から突出しない、棒材補給位置にある。
【0035】
次に、図6に示すように、移動手段44を作動させて、押上部材40及び棒材受入部材42を棒材補給位置から棒材受入位置まで移動させる。即ち、移動手段44であるシリンダを作動させてピストンロッドを上方に移動させると、それに伴ってシリンダに固定された突起90によって、棒材受入部材42が軸84を中心に揺動して受入部82が押上部材40に近づく。棒材受入位置においては、受入部82の傾斜面82Bは、ストッパ部材36の保持面50の高さに位置する。
押上部材40は、突起76及び長孔86によって棒材受入部材42に連結しているため、棒材受入部材42が揺動すると、長孔72に沿って上方に直線移動する。棒材受入位置においては、押上部材40の棒材押上面78は、ストッパ部材36の保持面50の高さに位置し、受入部82の傾斜面82Bと連続した傾斜面を形成する。
【0036】
押上部材40が上方に移動すると、棒材載置面34上に載置された棒材Wのうち、最も載置面下流側8Bにある棒材Wが1本だけ、押し上げられる。棒材受入位置においては、押上部材40は、ストッパ部材36の保持面50の高さにあり、棒材押上面78はガイドレール4側に下方に傾斜しているので、押し上げられた棒材Wは、ストッパ部材36の保持面50を越え、棒材押上面78及びこれに連続する傾斜面82B上を転がって、受入部82に受け入れられる。
【0037】
次に、押上部部材40及び棒材受入部材42を棒材受入位置に位置させた状態で、ストッパ部材往復動手段38を作動させ、図7に示すように、ストッパ部材36を棒材取出位置から迎受位置に移動させる。具体的には、シリンダ60を駆動してピストンロッド64を引っ込めて情報に移動させると、作動部材58のシリンダ60側の端部が上方に持ち上がる。これにより、軸52が回動し、回動アーム54が図7中時計回りに回動する。ストッパ部材36は、長孔46に沿って、即ち棒材載置面34に沿って、載置面下流側8Bから載置面上流側8Aに向かってスライドする。迎受位置においては、保持部50の上流側端は、押上部材40の上流側端面と一致する位置にあり、次に供給すべき棒材Wの下流側端部を支持して迎え受ける。
【0038】
次に、ストッパ部材36を迎受位置に位置させた状態で、移動手段44を駆動し、図8に示すように、押上部材40及び棒材受入部材42を棒材受入位置から棒材補給位置まで移動させる。棒材補給位置では、図5と同様に、押上部材40の棒材押上面78は、棒材載置面34の高さ以下に下がり、棒材受入部材42の傾斜面82A,82Bは、ガイドレール4の高さ以下に下がる。受入部82は、棒材Wを1本受け入れているので、受け入れられた棒材Wは、ガイドレール4に供給される。
【0039】
そして、ストッパ部材往復動手段38を駆動して、ストッパ部材36を迎受位置から棒材取出位置まで戻す。この時、ストッパ部材36の保持部50は、最下流の棒材Wを保持しているので、ストッパ部材36の下流側への移動と共に、材料棚8上の棒材Wは、下流側に移動する。棒材規制板35は棒材Wを上方から規制して、棒材Wが隣接する棒材Wの上下方向に重ならないように棒材Wを材料棚8に1列に整列させる。
以上のような動作により、棒材Wをガイドレール4に供給するための1サイクルを終了し、棒材補給機構32は、次の棒材Wの供給動作のために待機する。
【0040】
次に、一次送り部材駆動機構を作動させて、一次送り部材を上流側ガイドレール4A内で長手方向に沿って移動させる。一次送り部材は、その移動に伴って、棒材Wの上流側端部を押し、棒材Wを棒材供給機1の下流側ガイドレール4Bに一次送りする。
【0041】
棒材Wの一次送りが終了すると、一次送り部材は上流側に移動して元の位置に戻ると共に、クランプ部28が棒材Wを固定する。その状態で、送り矢回動機構を駆動し、送り矢16を軸26を中心に回動させてガイドレール4内の棒材Wの上流側に配置し、棒材Wの上流側端部をチャックで保持する。
クランプ部28による棒材Wの固定を解除した後、送り矢駆動機構20を駆動して、送り矢16を軸26に沿って、即ち給送軸線Bに沿って移動させ、棒材Wを下流側に給送する。棒材Wは、下流側ガイドレール4B上を移動し、棒材加工機100に入る。
【0042】
扱う棒材Wの径寸法を変更する場合には、操作者が操作盤等を操作して棒材Wの種類あるいは棒材Wの径寸法を入力する。コントローラ10は、入力された棒材Wの情報に対応する棒材供給機1の各部材の設定値を決定する。具体的には、コントローラ10は、予め記憶された棒材Wの径寸法に対する各部材の設定値の情報に基づいて、ストッパ部材36の迎受位置(棒材取出位置からの移動距離)、棒材規制板35の棒材載置面34からの距離等の位置または距離を決定し、また下流側ガイドレール4Bや防振装置15に供給する油の量を決定する。そして、ストッパ部材往復動手段38の調節機構及び棒材規制板35の調節機構37や、ポンプにそれぞれ調節信号を送信する。ストッパ部材往復動手段38の調節機構は、コントローラ10からの調節信号に基づいて、ねじ70を回転させてストッパ62の位置を変更する。これにより、軸52の回動角度を変更して、ストッパ部材36の移動距離を変更する。また、棒材規制板35の調節機構37は、コントローラ10からの調節信号に基づいて、棒材規制板35を上下移動させて、棒材載置面34からの距離を変更する。そして、ポンプは、コントローラ10から調節信号に基づいて、ポンプの送油流量を変更する。
これにより、棒材Wの種類の変更による棒材供給機1の各種設定値の自動調整が完了する。
【0043】
以上の実施形態によれば、次のような優れた効果が得られる。
押上部材40及び棒材受入部材42が共通の移動手段44によって駆動されるので、それぞれ別個の駆動手段によって駆動していた従来の棒材供給機に比べて、棒材供給機1の部品点数を低減し、構造を簡単にすることができる。したがって、棒材供給機1のメンテナンスもより容易に行うことができる。また、押上部材40が棒材受入部材42の動作に連動するので、押上部材40と棒材受入部材42の動作タイミングを設定する必要がなく、棒材Wのガイドレール4への供給を確実に行うことができる。これは、棒材供給機1の供給能力をより高くする場合に特に有利である。
【0044】
ストッパ部材36が、迎受位置に移動して材料棚8上の次に供給すべき棒材Wを迎え受けるので、棒材Wが棒材載置面34上を下流側に転がって、材料棚8に衝撃を与えるのを防止することができる。したがって、棒材Wの損傷を防止することができると共に、棒材Wによる棒材供給機1の振動や、振動によって生じる騒音を低減することができる。
【0045】
押上部材40が上下に直線運動を行い、棒材受入部材42が軸84を中心に揺動運動を行うので、押上部材40及び棒材受入部材42が棒材補給位置から棒材受入位置に移動するとき、棒材受入部材42が押上部材40に近づく。そして、棒材受入位置においては、棒材受入部材42の受入部82の傾斜面82Bが押上部材40の棒材押上面78の傾斜面に連続する。したがって、押上部材40によって押し上げられた棒材Wを棒材押上面78から傾斜面82Bにスムーズに移動させることができ、棒材Wへの損傷を低減することができる。
【0046】
棒材受入部材42が、棒材受入れ位置から棒材補給位置まで揺動することにより、受入部82に受け入れた棒材Wをガイドレール4に補給する。したがって、材料棚8から取り出した棒材をガイドレールに落下させる構造の従来の棒材供給機に比べて、より少ない衝撃で棒材を供給することができる。よって、棒材Wの損傷を低減することができると共に、棒材供給機1の振動、騒音を低減することができる。
【0047】
コントローラ10によって、棒材Wの種類(径寸法)の変更によって調節が必要になる部材の設定変更を全自動で行うことができる。従来では、棒材Wの種類を変更する場合には、操作者が、設定の変更が必要な全ての部材に対して、それぞれ設定変更及び微調整を行っており、設定作業が煩雑であった。これに対して、本実施形態では、これらの調整が全自動で行われる。したがって、操作者は、操作盤で棒材Wの種類や径寸法を入力するだけで、棒材Wの種類の変更を非常に簡単に行うことができ、各部材の設定変更に費やされる時間を大幅に短縮することができる。
【0048】
本発明は、以上の実施の形態に限定されることなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内で種々の変更が可能であり、それらも本発明の範囲内に包含されるものであることはいうまでもない。
押上部材及び棒材受入部材は、それぞれ上下直線運動及び揺動運動するものに限らず、互いに連動し、棒材受入位置において押上部材に押し上げられた棒材を棒材受入部材が受け入れることができる構造であれば、その構造は任意である。また、移動手段は、棒材受入部材に取り付けられるものに限らず、押上部材に取り付けられ、棒材受入部材が押上部材に連動するように取り付けられていてもよい。
【0049】
前述の実施形態では、下流側ガイドレール4B及び防振装置15内に油を供給するポンプは共通であったが、これに限らず、それぞれ別々のポンプに接続されていてもよい。この場合には、コントローラ10は、棒材の径寸法の入力に応じて、それぞれのポンプの流量を調整すればよい。
また、下流側ガイドレール4Bまたは防振装置15内に供給する油の量を調整する手段は、前述の実施形態のように、ポンプの流量を変更するものに限らず、例えば、油の供給管にバルブを取り付け、コントローラ10によってそのバルブの開度を調整するものであってもよい。
【0050】
コントローラは、棒材供給機側に設けられているものに限らず、棒材加工機側に設けられていてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明の実施形態による棒材供給機の全体を示す側面図である。
【図2】本発明の実施形態による棒材供給機の全体を示す平面図である。
【図3】本発明の実施形態による棒材供給機の棒材補給機構を示す横断面図である。
【図4】本発明の実施形態による棒材供給機のストッパ部材及びストッパ部材往復動手段を示す横断面図である。
【図5】本発明の実施形態による棒材供給機の動作を示す図である。
【図6】本発明の実施形態による棒材供給機の動作を示す図である。
【図7】本発明の実施形態による棒材供給機の動作を示す図である。
【図8】本発明の実施形態による棒材供給機の動作を示す図である。
【符号の説明】
【0052】
1 棒材供給機
4 ガイドレール
6 材料棚
6A 載置面上流側
6B 載置面下流側
10 コントローラ
32 棒材補給機構
34 棒材載置面
35 棒材規制板
37 調節機構
36 ストッパ部材
38 ストッパ部材往復動手段
40 押上部材
42 棒材受入部材
44 移動手段
82 受入部
100 棒材加工機
W 棒材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
給送軸線に沿って棒材を棒材加工機に給送する棒材供給機であって、
前記棒材が載置される棒材載置面を有する材料棚と、
前記材料棚から取り出された前記棒材を前記給送軸線に沿って案内するためのガイドレールと、
前記材料棚から棒材を1本ずつ取り出して前記ガイドレールに補給するための棒材補給機構と、を備え、
前記棒材載置面は、前記ガイドレールから遠い載置面上流側から前記ガイドレールに近い載置面下流側に向けて下方に傾斜しており、
前記棒材補給機構は、前記載置面下流側において前記棒材載置面から上方に突出し前記棒材が前記棒材載置面から落下するのを防止するストッパ部材と、前記材料棚の前記載置面下流側縁部において下方から上方に移動して前記ストッパ部材に隣接する最も載置面下流側の棒材を1本だけ押し上げる押上部材と、前記押上部材が連結され、前記押上部材で押し上げられた前記棒材を受け入れる受入部を有し、前記受入部に受け入れられた前記棒材を前記ガイドレールに供給する棒材受入部材と、前記棒材載置面から前記ストッパ部材の高さまで前記棒材を押し上げ且つ前記受入部が前記押上部材と整列する棒材受入位置と前記押上部材が前記棒材載置面以下の高さに退避し且つ前記受入部が前記ガイドレールの高さ以下に位置する棒材補給位置との間で、前記棒材受入部材及び前記押上部材を移動させる移動手段と、前記押上部材が前記棒材補給位置にあるとき最も載置面下流側の棒材だけが前記押上部材上に位置する棒材取出位置と前記押上部材が前記棒材受入位置にあるとき次に供給すべき前記棒材に近づいて迎え受ける迎受位置との間で、前記ストッパ部材を前記棒材載置面に沿って往復運動させるストッパ部材往復動手段と、を含む、
ことを特徴とする棒材供給機。
【請求項2】
前記棒材受入部材は、揺動運動を行い、前記押上部材は、上下直線運動を行うことにより、前記棒材受入部材が前記棒材補給位置から前記棒材受入位置に移動するとき、前記受入部が前記押上部材に近づいて前記棒材受入位置において前記受入部が前記押上部材の棒材押上面に連続する、
請求項1に記載の棒材供給機。
【請求項3】
前記押上部材の棒材押上面は、前記ガイドレールの近傍まで下方に傾斜しており、前記受入部は、前記棒材受入位置において、前記棒材押上面に連続する傾斜面を有する、
請求項1または2に記載の棒材供給機。
【請求項4】
棒材の径寸法に対応した距離を隔てて前記材料棚の上方に配置され、前記材料棚に載置された棒材を前記棒材載置面に沿って1列に整列させるための棒材規制部材と、前記棒材規制部材を前記棒材載置面に対して近接離間させる規制部材駆動手段と、を更に備える、
請求項1から3のいずれか1項に記載の棒材供給機。
【請求項5】
前記規制部材駆動手段の移動を制御するコントローラを有し、該コントローラは、加工すべき棒材の径寸法の入力に応じて、前記棒材載置面からの前記棒材規制部材の距離を決定する、
請求項4に記載の棒材供給機。
【請求項6】
前記ストッパ部材往復動手段の運動を制御するコントローラを有し、該コントローラは、加工すべき棒材の径寸法の入力に応じて、前記棒材取出位置及び前記迎受位置を決定する、
請求項1から5の何れか1項に記載の棒材供給機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−166178(P2009−166178A)
【公開日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−7146(P2008−7146)
【出願日】平成20年1月16日(2008.1.16)
【出願人】(507351850)育良精機株式会社 (10)
【Fターム(参考)】