説明

棒状化粧料繰出容器

【課題】棒状化粧料を保護しつつクラッチ機能を発揮させて部品の損傷を防止し、且つ、回転トルクを円滑に伝達でき、且つ、バネ部を長寿命化する。
【解決手段】雌螺子部材4の後端部に噛合部4bを設けると共に、容器後部2の内周面に凹溝部2bを設け、雌螺子部材4の後側にクラッチバネ部材5を配置し、クラッチバネ部材5を、その先端部に設けられ噛合部4bに噛合する噛合部5dと、噛合部5dより後側に設けられ噛合部5dを前方に向けて付勢するバネ部5bと、バネ部5bより前側の外周面に設けられて凹溝部2bに進入し容器後部2に対して軸線方向に移動可能且つ回転不能とされた凸部5eと、を有すると共に、バネ部5bより後側を容器後部2に対して軸線方向に移動不能とし、雌螺子部材4に螺合する移動体3に過大な回転トルクが作用したときに、バネ部5bが縮退することで両噛合部4b,5dの軸線周りの噛合を解除可能とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、棒状化粧料を出没可能とする棒状化粧料繰出容器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、棒状化粧料容器として、以下の特許文献1に記載のものが知られている。この棒状化粧料繰出容器は、容器前部及び容器後部を備えた筒状の容器内に、移動体及び雌螺子部材を収容し、雌螺子部材は、軸線方向前側から後側に向かって、移動体の外周面に設けられた雄螺子と螺合する雌螺子と、バネ部と、容器前部と容器後部の相対回転時に容器後部の第一の噛合部との軸線周りの噛合が可能となるようにバネ部により後方に向けて付勢された第二の噛合部と、を一体に備える構成とされている。
【0003】
そして、この棒状化粧料繰出容器にあっては、容器前部と容器後部が相対回転されると、容器後部の第一の噛合部と雌螺子部材の第二の噛合部とが軸線周りに噛合し、雌螺子部材が容器後部に軸線周りに回転不能に連結され、容器前部に対し軸線周りに回転不能且つ軸線方向に移動可能とされた移動体のその雄螺子、及び、容器前部に対し軸線周りに回転可能とされ上記噛合により容器後部に回転不能に連結された雌螺子部材のその雌螺子より成る螺合部が働いて移動体が進退し、移動体の先端に支持された棒状化粧料が容器先端の開口から出没する一方で、移動体が前進限又は後退限に達しさらに移動体をそれ以上進めようとする相対回転力が付与され移動体に過大な回転トルクが作用すると、雌螺子部材のバネ部が縮退し雌螺子部材の第二の噛合部が雌螺子部材のバネ部の付勢力に抗して前進しつつ両噛合部の軸線周りの噛合が解除され、続いて、雌螺子部材の第二の噛合部が雌螺子部材のバネ部の付勢力により後退して両噛合部の噛合が軸線周りの隣の噛合位置で復帰する所謂クラッチとして機能し、部品の損傷を防止し得るようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−178604号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記公報記載の棒状化粧料繰出容器にあっては、移動体が前進限又は後退限に達しさらに移動体をそれ以上進めようとする相対回転力が付与されると、雌螺子部材のバネ部が縮退し雌螺子部材の第二の噛合部が雌螺子部材のバネ部の付勢力に抗して前進しつつ両噛合部の軸線周りの噛合が解除されるわけであるが、このバネ部の縮退の際に、当該バネ部に相対回転による捩り力が作用して捩れ、この捩り力が、バネ部から前側の雌螺子に伝達され当該雌螺子に螺合している移動体に作用して、当該移動体の先端に支持されている棒状化粧料にも作用する結果、当該棒状化粧料が損傷する虞がある。
【0006】
また、雌螺子部材は、その第二の噛合部が容器後部の第一の噛合部に軸線周りに噛合しているが、第二の噛合部以外は容器後部に対して軸線周りに回転可能であるため、棒状化粧料を進退させるために容器前部と容器後部に対して与えられる相対回転力は、バネ部が捩れながら伝達されることになり、従って、棒状化粧料を進退させるための回転トルクを円滑に伝達できない(タイムラグが生じる)という問題がある。
【0007】
また、このようにバネ部に捩れ力が作用するため、バネ部の傷みが早いという問題もある。
【0008】
本発明は、このような課題を解決するために成されたものであり、移動体が前進限又は後退限に達しさらに移動体をそれ以上進めようとする相対回転力が付与され移動体に過大な回転トルクが作用しても、棒状化粧料に捩り力が作用せずに棒状化粧料を保護しつつ、クラッチ機能を発揮させて部品の損傷を防止し、且つ、棒状化粧料を進退させるための相対回転による回転トルクを円滑に伝達でき、且つ、バネ部を長寿命化できる棒状化粧料繰出容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明による棒状化粧料繰出容器は、容器前部及び容器後部を備えた筒状の容器と、容器前部に対し軸線周りに回転不能且つ軸線方向に移動可能とされ、先端に棒状化粧料を支持し外周部に雄螺子を備えた移動体と、容器前部に対し軸線周りに回転可能とされ、内周部に雄螺子に螺合する雌螺子を備えた雌螺子部材と、を具備し、容器前部と容器後部の相対回転によって、雄螺子及び雌螺子より構成された螺合部が働いて移動体が進退し棒状化粧料が容器先端の開口から出没する棒状化粧料繰出容器であって、雌螺子部材は、その後端部に第一の噛合部を備えると共に、容器後部は、その内周面に軸線方向に延びる凹溝部を備え、雌螺子部材の後側には、クラッチバネ部材が配置され、クラッチバネ部材は、先端部に設けられ第一の噛合部に対して軸線周りに噛合する第二の噛合部と、第二の噛合部より後側に設けられ相対回転時に第二の噛合部と第一の噛合部との軸線周りの噛合が可能となるように第二の噛合部を前方に向けて付勢する軸線方向に伸縮可能なバネ部と、バネ部より前側の外周面に設けられて凹溝部に進入し容器後部に対して軸線方向に移動可能且つ軸線周りに回転不能とされた凸部と、を有すると共に、バネ部より後側が容器後部に対して軸線方向に移動不能とされ、移動体に過大な回転トルクが作用したときに、バネ部が縮退することで両噛合部の軸線周りの噛合が解除されることを特徴としている。
【0010】
このような棒状化粧料用繰出容器によれば、棒状化粧料を支持し容器前部に対して軸線周りに回転不能且つ軸線方向に移動可能とされた移動体のその雄螺子と螺合する雌螺子が、容器前部に対して軸線周りに回転可能とされた雌螺子部材に設けられ、軸線方向に伸縮するバネ部が、雌螺子部材の後側に位置し容器後部に対して軸線周りに回転不能とされたクラッチバネ部材に設けられ、このバネ部の付勢力によりクラッチバネ部材の先端部の第二の噛合部が雌螺子部材の後端部の第一の噛合部に軸線周りに噛合し、このように雌螺子とバネ部とが別々の部品に設けられているため、移動体が前進限又は後退限に達しさらに移動体をそれ以上進めようとする相対回転力が付与され移動体に過大な回転トルクが作用しても、雌螺子部材が捩れることは無く棒状化粧料に捩り力が作用せずに棒状化粧料を保護しつつ、バネ部が縮退することで両噛合部の軸線周りの噛合が解除されるクラッチ機能を発揮し、部品の損傷を防止できる。また、バネ部より前側の外周面に設けられた凸部が、容器後部の凹溝部に進入することで、クラッチバネ部材が容器後部に回転不能とされるため、容器前部と容器後部の相対回転による移動体の進退時にあっては、回転トルクは、バネ部を介さずに当該バネ部より前側の凸部を介して伝達され、当該バネ部が捩れることは無く、タイムラグ無く円滑に伝達される。また、このように、回転トルクは、バネ部を介さずに当該バネ部より前側の凸部を介して伝達され、当該バネ部が捩れることは無いため、バネ部を長寿命化できる。
【0011】
ここで、クラッチバネ部材の第二の噛合部は、上方視において左右対称を成し前方に突出する山型形状を、周方向に複数並設したものであると、移動体が前進限又は後退限の何れの位置に達した場合でも、クラッチ機能を発揮できる。
【発明の効果】
【0012】
このように本発明によれば、移動体が前進限又は後退限に達しさらに移動体をそれ以上進めようとする相対回転力が付与され移動体に過大な回転トルクが作用しても、棒状化粧料に捩り力が作用せずに棒状化粧料を保護しつつ、クラッチ機能を発揮させて部品の損傷を防止し、且つ、棒状化粧料を進退させるための相対回転による回転トルクを円滑に伝達でき、且つ、バネ部を長寿命化できる棒状化粧料繰出容器を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施形態に係る棒状化粧料繰出容器の初期状態を示す縦断面図である。
【図2】図1に示す状態から使用者の操作により棒状化粧料支持体が前進限に達したときの縦断面図である。
【図3】図1及び図2中の棒状化粧料カートリッジを示す斜視図である。
【図4】図3に示す棒状化粧料カートリッジの分解斜視図である。
【図5】図1及び図2中の本体筒を示す縦断面図である。
【図6】図1及び図2中の本体筒を示す背面図である。
【図7】図1及び図2中のクラッチバネ部材を示す斜視図である。
【図8】図1及び図2中のクラッチバネ部材を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明による棒状化粧料繰出容器の好適な実施形態について図1〜図8を参照しながら説明する。なお、各図において、同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0015】
図1は、本発明の実施形態に係る棒状化粧料繰出容器の初期状態を示す縦断面図、図2は、図1に示す状態から使用者の操作により棒状化粧料支持体が前進限に達したときの縦断面図、図3及び図4は、棒状化粧料カートリッジを示す図、図5及び図6は、本体筒を示す図、図7及び図8は、クラッチバネ部材を示す図であり、本実施形態の棒状化粧料繰出容器は、例えば、アイライナー、アイブロー、リップライナー、コンシーラー等を始めとした種々の棒状化粧料を収容し、使用者が必要に応じて適宜出没可能とするものである。
【0016】
図1に示すように、棒状化粧料繰出容器100は、全体形状が筆記具の如き細長い丸棒状(スティック状)を成し良好な外観を呈するもので、容器前部を構成する棒状化粧料カートリッジ1(図3参照)と、容器後部を構成する本体筒2と、を外形構成として具備し、これらの棒状化粧料カートリッジ1及び本体筒2内に、棒状化粧料Mと、これを支持する移動体である棒状化粧料支持体3と、クラッチ機構の一方及び螺合部(螺合機構)を構成する雌螺子部材4と、クラッチ機構の他方を構成するクラッチバネ部材5とを収容して成る。
【0017】
本体筒2は、図5及び図6に示すように、円筒状を成し、その後半部の内周面で周方向の四等配位置に、軸線方向に延びる突条2aが形成され、これらの突条2aが形成されることで突条2a,2a間に軸線方向に延びる凹溝部2bが形成されている。この凹溝部2bは、クラッチバネ部材5を回転方向に係合するためのものである。また、本体筒2は、図5に示すように、その後端部の内周面に、クラッチバネ部材5の後端部を軸線方向に係合するための係合部2cを備えると共に、その内周面で突条2aより多少前側の位置に、棒状化粧料カートリッジ1を軸線方向に係合するための突起2hを備えている。
【0018】
図1、図3及び図4に示すように、棒状化粧料カートリッジ1は、棒状化粧料Mを収容する段付き円筒形状の先筒11と、先筒11内に配置されて軸線方向に延在し棒状化粧料Mを支持する棒状化粧料支持体3と、この棒状化粧料支持体3と螺合する雌螺子部材4と、を備えている。
【0019】
先筒11は、本体筒2から突出し指で摘まれる大径部11aと、この大径部11aの後端に連設されて本体筒2内に収容される小径部11bと、を有する。図1に示すように、先筒11の筒孔は、その前半部が、棒状化粧料Mを収容し摺動を可能とする棒状化粧料孔11cとされ、筒孔の後半部が、段差部を介して大径とされ雌螺子部材4を収容するための孔とされている。
【0020】
先筒11には、棒状化粧料孔11cの先端近傍から当該棒状化粧料孔11cの後端に亘って当該棒状化粧料孔11cの周面の複数箇所(本実施形態では四等配の位置)に、棒状化粧料支持体3の後述する支持片3d(図4参照)を収容し摺動を可能とする支持片溝11dが連設され、これらの棒状化粧料孔11c及び支持片溝11dにより、棒状化粧料M及び支持片3dが摺動する進退孔11eが構成されている。
【0021】
また、先筒11の雌螺子部材4を収容するための孔の軸線方向略中央には、雌螺子部材4を軸線方向に係合するための係合部11gが形成されると共に、その小径部11bの後端部の外周面には、本体筒2の突起2hに軸線方向に係合する環状凹部11hが形成されている。
【0022】
雌螺子部材4は、円筒形状を成し、筒孔の内周面に、軸線方向に沿って雌螺子4aを備えている。この雌螺子部材4には、その軸線方向略中央の外周面に、先筒11の係合部11gに軸線方向に係合する係合部4gが形成されている。
【0023】
また、雌螺子部材4の後端部には、図1、図3及び図4に示すように、その外周面で周方向の八等配の位置に、軸線方向に沿って延びるリブ4bが設けられている。このリブ4bは、軸線方向視において左右対称の山型形状を成すと共に、その後端面に、上端面から下端面に向けて45°の下り勾配で傾斜する傾斜面4cを備えている。そして、これらのリブ4bが第一の噛合部を構成し、クラッチ機構の一方を構成する。
【0024】
この雌螺子部材4は、図1及び図4に示すように、先筒11の筒孔の後側から内挿され、その環状鍔部4dが先筒11の後端面に突き当てられ、その係合部4gが先筒11の係合部11gに軸線方向に係合することで、図3に示すように、先筒11に対して軸線周りに回転可能且つ軸線方向に移動不能に装着されている。
【0025】
棒状化粧料支持体3は、図1及び図4に示すように、棒状化粧料Mの後端部を支持するための支持部3aと、この支持部3aより後側の軸体部3bと、を備えている。軸体部3bは、軸線方向に延在する軸体であり、当該軸体部3bの後端部の外周面には、雄螺子として機能する螺合突起3eが設けられている。支持部3aは、棒状化粧料Mの後端面を突き当てるための基部3cと、この基部3cに突き当てられた棒状化粧料Mの後端部を支持するための複数の支持片3dと、を備えている。支持片3dは、基部3cにおける外周面の周方向の複数位置(本実施形態では四等配の位置)に先端側に向かって突出するように設けられ、これらの支持片3d,3d同士の間に、棒状化粧料Mの後端部が嵌め込まれて支持される。
【0026】
この支持部3a及び軸体部3bを有する棒状化粧料支持体3は、図1に示すように、その基部3cが先筒11の棒状化粧料孔11cに進入すると共にその支持片3dが先筒11の支持片溝11dに進入するようにして、進退孔11eに内挿され、支持片溝11dが、棒状化粧料支持体3の回り止めとされて棒状化粧料支持体3を軸線周りに回転不能且つ軸線方向に移動可能に係合すると共に、その軸体部3bが雌螺子部材4に内挿され、軸体部3bの後端部の螺合突起3eが雌螺子部材4の内周面の雌螺子4aに螺合した状態とされている。
【0027】
そして、支持片溝11dの先端面が、棒状化粧料支持体3の支持片3dの先端面が突き当たる棒状化粧料支持体3の前進限とされ、雌螺子部材4の先端面が、棒状化粧料支持体3の基部3c(支持部3a)の後端面が突き当たる棒状化粧料支持体3の後退限とされている。なお、棒状化粧料支持体3の軸体部3bの後端面が、雌螺子部材4の内側の後端面(内側の底面)に突き当たることで、棒状化粧料支持体3の後退限とする場合もある。
【0028】
このような先筒11、棒状化粧料M、棒状化粧料支持体3、雌螺子部材4を有する棒状化粧料カートリッジ1は、本体筒2の筒孔の前側から内挿され、先筒11の大径部11aと小径部11bとの間の段差面11fが、本体筒2の先端面に突き当てられ、その環状凹部11hが本体筒2の突起2hに軸線方向に係合することで、本体筒2に対して着脱可能且つ軸線周りに回転可能に装着されている。
【0029】
クラッチバネ部材5は、図1、図7及び図8に示すように、略円筒状に構成された樹脂による一体成形品であり、その先端部のクラッチ筒部5aと、その後端側の装着部5cと、これらのクラッチ筒部5aと装着部5cを接続し軸線方向に伸縮可能なバネ部5bと、を具備する。
【0030】
クラッチ筒部5aは、その先端の外周面で周方向の四等配の位置に、先端から前方に突出する突起部5dを有する。この突起部5dは、上方視において左右対称を成し前方に突出する山型形状を呈している。これらの突起部5dは、本体筒2の第一の噛合部であるリブ4bに軸線周りに噛合するための第二の噛合部である。
【0031】
また、クラッチ筒部5aは、その外周面に、突起部5dの後端を後側のバネ部5bまで延ばした凸部(突条)5eを備えている。これらの突起部5d及びこれに連設されて後方に延びる凸部5eは、本体筒2の凹溝部2bに進入し回転方向に係合するためのものである。
【0032】
バネ部5bは、ほぼ螺旋状のスリットを備えるものであり、このスリットにより、クラッチ筒部5aの第二の噛合部である突起部5dを前方に付勢する圧縮バネとして機能し、これらのバネ部5b及び突起部(第二の噛合部)5dがクラッチ機構の他方を構成する。
【0033】
装着部5cは、バネ部5bの後端に連設された円筒部であり、その外周面で、クラッチ筒部5aの突起部5dの後方に離間した位置に、本体筒2の凹溝部2bに進入し回転方向に係合する凸部(突条)5fを有している。また、装着部5cの後部には、本体筒2の係合部2cに軸線方向に係合する係合部5gが形成されている。
【0034】
これらのクラッチ筒部5a、バネ部5b及び装着部5cを有するクラッチバネ部材5は、図1に示すように、本体筒2の筒孔の後側から、その突起部5dと本体筒2の凹溝部2bとが合うようにして内挿され、装着部5cの後部の環状鍔部5hが、本体筒2の後端面に形成された環状凹部2d(図5参照)内に進入し突き当てられ、その突起部5d及び凸部5e,5fが本体筒2の凹溝部2bに進入して回転方向に係合し、さらに、その装着部5cの係合部5gが本体筒2の係合部2cに軸線方向に係合することで、その装着部5cが本体筒2に対して回転不能且つ軸線方向に移動不能とされると共に、そのクラッチ筒部5a、バネ部5bが本体筒2に対して回転不能且つ軸線方向に移動可能とされる。
【0035】
そして、この状態で、クラッチバネ部材5の突起部5dが、そのバネ部5bにより前側に付勢されることにより、雌螺子部材4のリブ4b,4b同士の間に進入し、先筒11と本体筒2との相対回転時において軸線周りに噛合可能とされている。
【0036】
このような本実施形態の棒状化粧料繰出容器100にあっては、使用者により先筒11と本体筒2とが一方向である繰り出し方向に相対回転されると、雌螺子部材4のリブ4bとクラッチバネ部材5の突起部5dが軸線周りに噛合して雌螺子部材4がクラッチバネ部材5を介して本体筒2に軸線周りに回転不能(同期回転可能)に連結され、先筒11に対し軸線周りに回転不能且つ軸線方向に移動可能とされた棒状化粧料支持体3のその螺合突起3e、及び、先筒11に対し軸線周りに回転可能とされると共に上記噛合により本体筒2に回転不能に連結された雌螺子部材4のその雌螺子4aより成る螺合部が働き、図2に示すように、棒状化粧料支持体3が前進し、棒状化粧料Mが先筒11の先端の開口から出現し使用状態とされる。
【0037】
また、使用者により先筒11と本体筒2とが一方向の反対方向である繰り戻し方向に相対回転されると、棒状化粧料支持体3が後退し、棒状化粧料Mが先筒1の先端の開口から没入する。
【0038】
ここで、図2に示すように、棒状化粧料支持体3の支持片3dの先端面が支持片溝11dの先端面に突き当たって棒状化粧料支持体3が前進限に達し、また、図1に示すように、棒状化粧料支持体3の基部3cの後端面が雌螺子部材4の先端面に突き当たって棒状化粧料支持体3が後退限に達し(又は、棒状化粧料支持体3の軸体部3bの後端面が、雌螺子部材4の内側の後端面(内側の底面)に突き当たって棒状化粧料支持体3が後退限に達し)、これらの進退限でさらに棒状化粧料支持体3をそれ以上進めようとする相対回転力が付与され棒状化粧料支持体3に過大な回転トルクが作用した場合には、クラッチバネ部材5のバネ部5bが縮退しクラッチ筒部5aが後退しつつ第一の噛合部(雌螺子部材4のリブ4b)と第二の噛合部(クラッチバネ部材5の突起部5d)の軸線周りの噛合が解除され、続いて、クラッチバネ部材5のクラッチ筒部5aがバネ部5bの付勢力により前進して両噛合部4b,5dの噛合が回転方向の隣の噛み合い位置で復帰し、所謂クラッチとして機能する。
【0039】
このとき、本実施形態の棒状化粧料繰出容器100においては、棒状化粧料支持体3の螺合突起3eに螺合する雌螺子4aとバネ部5bとが別々の部品に設けられていることから、雌螺子部材4が捩れることは無く棒状化粧料Mに捩り力が作用せずに棒状化粧料Mを保護しつつ、クラッチ機能を発揮して部品の損傷を防止できる。因みに、従来においては、雌螺子とバネ部が一つの部品に設けられていたため、バネ部が捩れ、この捩り力がバネ部から前側の雌螺子に伝達され当該雌螺子に螺合している移動体に作用して、当該移動体の先端に支持されている棒状化粧料にも作用する結果、当該棒状化粧料が損傷する虞があった。
【0040】
また、本実施形態においては、クラッチバネ部材5のバネ部5bより前側の外周面に設けられた突起部5d及び凸部5eが、本体筒2の凹溝部2bに進入し、クラッチバネ部材5が本体筒2に回転不能とされているため、使用者により先筒11と本体筒2とが繰り出し又は繰り戻し方向に相対回転されて棒状化粧料Mを進退させる状態にあっては、回転トルクは、バネ部5bを介さずに当該バネ部5bより前側の突起部5d及び凸部5eを介して伝達され、当該バネ部5bが捩れることは無く、タイムラグ無く円滑に伝達できる。また、このように、回転トルクが、バネ部5bを介さずに当該バネ部5bより前側の突起部5d及び凸部5eを介して伝達され、当該バネ部5bが捩れることが無いため、バネ部5bを長寿命化できる。
【0041】
なお、ここでは、突起部5dも本体筒2の凹溝部2bに進入するようにしているが、突起部5dを、この実施形態よりも軸線方向内側に設けて本体筒2の凹溝部2bに進入しないようにし、凸部5eのみが凹溝部2bに進入するように構成しても良く、また、凸部5eを無くし、突起部5dが凹溝部2bに進入する凸部とされて本体筒2に対する回転方向の係合機能を有すると共に噛合部の機能を有するようにしても良い。
【0042】
また、本実施形態においては、クラッチバネ部材5の第二の噛合部は、上方視において左右対称を成し前方に突出する山型形状を、周方向に複数並設したものであるから、棒状化粧料支持体3が前進限又は後退限の何れの位置に達した場合でも、クラッチ機能を発揮できる。
【0043】
また、本実施形態においては、本体筒2に対してクラッチバネ部材5を軸線周りに回転不能とするための構成を、本体筒2に凹溝部2bを設ける構成としているため、本体筒2の外径を大きくせず、小径化が図られている。
【0044】
なお、先筒11の係合部11gに対する雌螺子部材4の係合部4gの軸線方向の係合において、その係合を軸線方向に積極的に隙間(ガタ)を有する係合としても良い。このような構成を採用し、雌螺子部材4の軸線方向の若干の移動を可能とすることにより、例えば棒状化粧料繰出容器100の落下等による衝撃や振動等の外力作用時に棒状化粧料Mに作用する衝撃を、棒状化粧料支持体3、雌螺子部材4を介してクラッチバネ部材5のバネ部5bが伸縮することで吸収・緩和でき、当該棒状化粧料Mの棒状化粧料支持体3の支持部3aからの抜けを防止できる。また、棒状化粧料Mが被塗布部に塗布される際にあっては、棒状化粧料支持体3、雌螺子部材4を介してクラッチバネ部材5のバネ部5bが伸縮するため、適度な筆圧となり、使用感を向上できると共に、適度な筆圧とすることにより棒状化粧料Mの折れを防止できる。
【0045】
以上、本発明をその実施形態に基づき具体的に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、例えば、上記実施形態においては、棒状化粧料カートリッジ1を本体筒2に対して着脱可能としているが、離脱不能としても良く、また、カートリッジの形を採らなくても良い。
【0046】
また、雄螺子、雌螺子は、間欠的に配される突起群又は螺旋状且つ間欠的に配される突起群のように螺子山と同様な働きをするものであっても良く、また、螺合突起は、連続する螺子山であっても良い。
【符号の説明】
【0047】
1…棒状化粧料カートリッジ、2…本体筒(容器後部)、2b…凹溝部、3…棒状化粧料支持体(移動体)、3e…螺合突起(雄螺子)、4…雌螺子部材、4a…雌螺子、4b…リブ(第一の噛合部)、5…クラッチバネ部材、5b…バネ部、5d…突起部(第二の噛合部)、5e…凸部、11…先筒(容器前部)、100…棒状化粧料繰出容器、M…棒状化粧料。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器前部及び容器後部を備えた筒状の容器と、前記容器前部に対し軸線周りに回転不能且つ軸線方向に移動可能とされ、先端に棒状化粧料を支持し外周部に雄螺子を備えた移動体と、前記容器前部に対し軸線周りに回転可能とされ、内周部に前記雄螺子に螺合する雌螺子を備えた雌螺子部材と、を具備し、前記容器前部と前記容器後部の相対回転によって、前記雄螺子及び前記雌螺子より構成された螺合部が働いて前記移動体が進退し前記棒状化粧料が容器先端の開口から出没する棒状化粧料繰出容器であって、
前記雌螺子部材は、その後端部に第一の噛合部を備えると共に、前記容器後部は、その内周面に軸線方向に延びる凹溝部を備え、
前記雌螺子部材の後側には、クラッチバネ部材が配置され、
前記クラッチバネ部材は、
先端部に設けられ前記第一の噛合部に対して軸線周りに噛合する第二の噛合部と、
前記第二の噛合部より後側に設けられ前記相対回転時に前記第二の噛合部と前記第一の噛合部との軸線周りの噛合が可能となるように前記第二の噛合部を前方に向けて付勢する軸線方向に伸縮可能なバネ部と、
前記バネ部より前側の外周面に設けられて前記凹溝部に進入し前記容器後部に対して軸線方向に移動可能且つ軸線周りに回転不能とされた凸部と、を有すると共に、前記バネ部より後側が前記容器後部に対して軸線方向に移動不能とされ、
前記移動体に過大な回転トルクが作用したときに、前記バネ部が縮退することで前記両噛合部の軸線周りの噛合が解除されることを特徴とする棒状化粧料繰出容器。
【請求項2】
前記クラッチバネ部材の前記第二の噛合部は、上方視において左右対称を成し前方に突出する山型形状を、周方向に複数並設したものであることを特徴とする請求項1記載の棒状化粧料繰出容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−172802(P2011−172802A)
【公開日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−40343(P2010−40343)
【出願日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【出願人】(591147339)株式会社トキワ (141)