説明

棒状化粧料繰出容器

【課題】破損を防ぐためのクラッチ機構を有しながら、部品数が少なくて構造が簡単であり、径を細くすることができる棒状化粧品繰出容器の提供を課題とする。
【解決手段】雌ねじ部材5は雄ねじ部材4と螺合した状態で、操作筒3の内部の軸方向の定位置において、操作筒3に対して軸方向の移動が不可であって、かつ操作筒3と一体に回転可能に取り付けられる。雌ねじ部材5は、雄ねじ部材4の螺旋溝25に嵌る羽根状の突起(弾性を有する羽根状の突起33)を有する。螺旋条25と弾性を有する羽根状の突起33が螺合による接触部を構成し、接触部が通常の繰り出し及び引き込み時の負荷以上の過剰な負荷を受けるとき、弾性を有する羽根状の突起33が弾性変形することで過剰な負荷の伝達を避ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、棒状の口紅、アイブロウ、アイシャドウ等を収容し、必要な長さだけ繰り出して使用する棒状化粧料繰出容器に関する。
【背景技術】
【0002】
棒状化粧料は筒状の棒状化粧料繰出容器(以下、単に容器という)に収納して商品とする。そして、これを使用する際には容器の操作部を回動操作して必要な長さだけ容器先端から突出させ、使用後は前記の操作部を逆回転させて再度容器内に収納する。
棒状化粧料は基部側の一部が容器側に把持されるので、把持されている部分までは使いきれないのであるが、このような棒状化粧料を最後まで使い切ろうとして棒状化粧料が繰り出し限界まで達した後も容器の操作部を無理に回動させようとすることがある。このため、容器が過大な負荷を受けて破損してしまう恐れがある。
そこで、従来、棒状化粧料が繰り出し限界に達しているにもかかわらず容器を無理に回動すると容器の操作部が空回りして破損を未然に防止するクラッチ機構を備えた棒状化粧料繰出容器が提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、棒状化粧料を保持する芯チャックを本体筒の内部に摺動可能に設置し、芯チャックの後端部に筒状拡大部を設けると共に、筒状拡大部の外面と本体筒の内面とを螺合して成り、本体筒を回動操作することにより芯チャックを前進・後退させる棒状化粧料繰出容器が記載されている。この容器では、芯チャックが繰り出し限界を超えると筒状拡大部が弾性変形して縮径し、この結果、筒状拡大部と本体筒との螺合が外れて本体筒が空転する。
【0004】
また、特許文献2には、第一の棒状部材と第二の棒状部材を連結手段を介して連結して螺子棒を形成し、第一の棒状部材の前端に棒状化粧料を保持する芯チャックを設け、螺子棒をスリーブ内に回転不能かつ摺動自在に設置し、スリーブの後端部に回転可能に連結された筒状部材の内面と第二の棒状部材の外面とを螺合し、連結手段は過大トルクによって作動するクラッチ機構を有する棒状化粧料繰出容器が記載されている。
【0005】
さらに、特許文献3には、固形化粧料を繰り出し・引き込める進退軸の後端に突起を設け、これを軸筒と一体に回転するラセン筒に係合させ、軸筒を回転させると進退軸が前後に移動する構造において、繰り出し限界では前記の突起がラセン筒の前端から外れることによりクラッチ機能を発揮し、引き込み限界では、前記の突起がラセン筒を前方に押しやることで結果としてラセン筒の後端から外れることによりクラッチ機能を発揮する構成のものが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第3233900号公報
【特許文献2】特許第4257658号公報
【特許文献3】実公平2−33703号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1の技術は、シンプルな構造であるために、安価で頑丈なクラッチ機構を提供できる点で優れるが、クラッチ機構が作動したとき、筒状拡大部が径方向内側に変形するので、そのためのスペースを確保する必要があり、容器の径を小さくすることが難しい。
【0008】
特許文献2の容器は第一、第二の螺子棒を連結する部分にクラッチ機構を設けているので、クラッチの動作が軽く、また、断・接が確実であるという優れた点を有するが、螺子棒を第一、第二に分割する分、部品点数が多くなる不利な面がある。
【0009】
特許文献3の容器では、クラッチ機能が進退軸の後端に設けた突起とラセン筒との係合と離脱によっており、突起とラセン筒との再係合を確実なものとするために先筒とラセン筒との間に圧縮ばねを配置している。このため、圧縮ばねのような素材的に他の部分と異なる部品が必要となり、製品コスト的に不利であり、また、圧縮ばねを介在させる分、構造が複雑となっている。
【0010】
この発明は破損を防ぐためのクラッチ機構を有しながら、部品数が少なくて構造が簡単であり、径を細くすることができる棒状化粧品繰出容器の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記の課題を解決するために、棒状化粧料を繰り出し及び引き込み可能に収納する棒状化粧料繰出容器に関して、操作筒と先筒と雄ねじ部材と雌ねじ部材を備えたものとし、次の技術的手段を採用した。
操作筒の先端部に先筒が操作筒と共通の長手方向軸に沿って配置され、先筒に対して操作筒が回転可能であるが前記の軸方向に移動不可に取り付けられており、
先筒は棒状化粧料が出没する開口を有し、
雄ねじ部材は、前記の軸方向に長い棒形状であって、棒形状の全長に亘って外周に螺旋条で形成される螺旋溝を有しており、棒形状の先端部分に棒状化粧料取付け部を備え、先筒と操作筒にわたってこれらの内部に配置されると共に、先筒に対して前記軸方向での移動が可能であるが回転不可に取り付けられており、
雌ねじ部材は雄ねじ部材と螺合した状態で、操作筒の内部の軸方向の定位置において、操作筒に対して軸方向の移動が不可であって、かつ操作筒と一体に回転可能に取り付けられていると共に、雌ねじは雄ねじ部材の螺旋溝に嵌る羽根状の突起を内側へ突出させて有し、螺旋条に羽根状の突起が螺合することにより接触部を構成し、
接触部が通常の繰り出し及び引き込み時の負荷以上の過剰な負荷を受けるとき、羽根状の突起あるいは螺旋条が弾性変形して過剰な負荷の伝達を避ける構造。
羽根状の突起が複数個であったり、複数の羽根状の突起が操作軸の直径方向で対向して配置された構造となることがある。
【発明の効果】
【0012】
この発明によれば、繰り出し限界に達しているのにさらに繰り出し操作が行われても、雌ねじ部材と雄ねじ部材の螺合による接触部が変形してその操作力が操作筒から雄ねじ部材へ伝わらない。すなわち、このクラッチ機能により容器が破損してしまうことがない。これは引き込み限界においても同じであり、この発明の容器は繰り出し限界と引き込み限界の双方でクラッチ機能が発揮される。
クラッチ機能は、具体的には、操作筒側に設けた羽根状の突起あるいは雄ねじ部材側の螺旋条が変形することで発揮されるので、クラッチの断・接に格別な部品を要せず簡単な構造で目的を達成できる。さらに、前記の突起あるいは螺旋条の変形は主として軸方向の変形であるため、変形のために径方向のスペースを要さず、容器を細くすることができる。
雄ねじ部材を繰り出し方向、引き込み方向に移動させる機構は、羽根状の突起と螺旋条との係合(螺合)なので、雄ねじ部材側の螺旋条が複数条設けられたり、螺旋のピッチが途中から変っていても対応することができる。これにより、送り出しの当初はすばやく、棒状化粧料が容器から突出してからは慎重に突出させるなどのことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施形態に係る棒状化粧品繰出容器の縦断面図である。
【図2】図1の棒状化粧品繰出容器を分解して示す縦断面図である。
【図3】先筒を後端側から先端側へ覗き込んだ姿勢とした斜視図である。
【図4】図2に示す操作筒のA−A線において破断して示す拡大断面図である。
【図5】図1の棒状化粧品繰出容器のB−B線において破断し、ねじ棒部を省略して示す拡大断面図である。
【図6】雄ねじ部材のねじ棒部と雌ねじ部材との螺合状態を示す斜視図である。
【図7】雌ねじ部材の斜視図である。
【図8】一部を破断して示す雌ねじ部材の斜視図である。
【図9】雌ねじ部材の正面図である。
【図10】雌ねじ部材の後部側面図である。
【図11】図8において雌ねじ部材をC−C線で破断して示す断面図である。
【図12】棒状化粧料の繰出限界位置を示す棒状化粧品繰出容器の縦断面図である。
【図13】(a)、(b)、(c)は、繰出限界位置における雌ねじ部材の弾性突片と雄ねじ部材の螺旋条との関連動作を説明するための概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の棒状化粧品繰出容器に係る実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、図では図4,5を除いて断面におけるハッチングを省略している。
図1は実施形態における棒状化粧品繰出容器の縦断面図であり、図2は図1の棒状化粧品繰出容器を分解して示す縦断面図である。図1乃至図2に示すように、本実施形態の棒状化粧品繰出容器1は、樹脂製の先筒2、同じく樹脂製の操作筒3、同じく樹脂製の雄ねじ部材4、雄ねじ部材4に螺合される雌ねじ部材5、付属具6、フロントキャップ7及びテイルキャップ8で構成されている。
【0015】
棒状化粧品繰出容器1は、概略として図1のように、操作筒3の先端部に先筒2が操作筒3と共通の長手方向軸に沿って配置され、先筒2に対して操作筒3が回転可能であるが軸方向に移動不可に取り付けられている。雄ねじ部材4は、先筒2と操作筒3に亘ってこれらの内部に配置されると共に、先筒2に対して軸方向での移動が可能であるが回転不可に取り付けられている。雌ねじ部材5は雄ねじ部材4と螺合した状態で、操作筒3の内部の軸方向の定位置において、操作筒3に対して軸方向の移動が不可であって、かつ操作筒3と一体に回転可能に取り付けられている。
【0016】
先筒2の内部には、図2のように、軸方向に延びて先筒2を貫通する貫通孔9が形成され、貫通孔9の先端は棒状化粧料10が出没する先端開口11に形成されている。貫通孔9の後端は雄ねじ部材4を挿通させるための後端開口12に形成されている。なお、貫通孔9の軸方向に直交する断面形状は、略三角形をなし(図3)、かつ三角形の各頂部を後述の3つの保持片27の円弧状をなした各外周面27b(図6)に一致するように円弧状に形成されている。先筒1の後部は小径部13に形成され、小径部13の外周には全周に亘って2条の環状凸部14が形成されている。この小径部13に対して、操作筒3の前部分を被せるように嵌め合わせて連結している(図1)。
【0017】
図4は図2に示す操作筒3のA−A線において破断して示す拡大断面図であり、図5は図1の棒状化粧品繰出容器1のB−B線において破断し、雄ねじ部材4のねじ棒部を省略して示す拡大断面図である。操作筒3の内部には、中間部と後端部との間に仕切壁15が設けられ、仕切壁15よりも前方から前端に亘って中空の収容部16が形成され、収容部16の前面が開口されている(図2)。収容部16の中間部から後端に亘って、図4示すように、操作筒3の内周面から径方向内方に向って突出する複数(この実施形態では4つ)の突条17が周方向に等間隔に設けられている。なお、複数の突条17の先端部は、後述する雄ねじ部材4のねじ棒部23に対して非接触で近接した状態となり、雄ねじ部材4の移動時にねじ棒部23の振れを抑止する。
【0018】
また、突条17の前方には、突条17の前端面に連続すると共に、図4に示すように、操作筒3の内周面から径方向内方に向って、突条17の突出長さよりも小さい僅かな突出長さで三角形状に突出する複数(この実施形態では4つ)の突条18が周方向に等間隔に設けられている。突条18は、後述の雌ねじ部材5に対する軸中心位置への位置決め用と、操作筒3の回転時に操作筒3と一体に回転可能とするための回転時係合用とを兼ねるものである。
【0019】
収容部16における突条18の前方には、先筒2に形成された2条の環状凸部14と嵌合する2条の環状凹部19が操作筒3の内周面の全周に亘って形成されている。なお、操作筒3の前部の外周には、中央部分に対して段差を以って小径部20が形成されている。該小径部20に対して、フロントキャップ7の後部分が外側から被せるように嵌め込まれて装着される(図1)。
【0020】
また、操作筒3の仕切壁15よりも後方から後端に亘って中空の収容部21が形成され、収容部21の後面が開口されている(図2)。収容部21の後端寄りには、操作筒3の内周面の全周に亘って環状凹部22が形成されている。この環状凹部22には、後述の付属具6における支持体の外周に形成された環状凸部が嵌合により係止される。
【0021】
図6は雄ねじ部材4のねじ棒部と雌ねじ部材5との螺合状態を示す斜視図である。また、図7は雌ねじ部材5の斜視図であり、図8は一部を破断して示す雌ねじ部材5の斜視図であり、図9は雌ねじ部材5の正面図であり、図10は雌ねじ部材5の後部側面図であり、図11は図9において雌ねじ部材5をC−C線で破断して示す断面図である。
【0022】
雄ねじ部材4は、軸方向に長い棒形状であって、棒形状のねじ棒部23の先端部分に棒状化粧料取付け部24を備えている。ねじ棒部23は、全長に亘って外周に螺旋条25で形成される螺旋溝26を有している。棒状化粧料取付け部24は、棒状化粧料10の基端を保持するための保持片27が設けられている。この保持片27は、ねじ棒部23の先端に、ねじ棒部23の径よりも径大に形成された支持板27aの外周から軸方向に沿って先端が突出して延びる3本の弾性片で構成され、各保持片27は互いに等間隔に配置されている。棒状化粧料取付け部24の直径は、先筒2の貫通孔9の最大内径よりも僅かに小さく形成されている。
【0023】
雌ねじ部材5は、円筒形状の本体28を有し、本体28の軸方向の中央部よりも後側は、軸方向の中央部から前側の直径よりも径が小さい径小部29に形成されている(図7)。径小部29の外周面には、図9及び図10に示すように、軸方向に沿って径方向外方に向って突出する複数(この実施形態では8つ)の係合突条30が周方向に等間隔に設けられている。
【0024】
本体28の軸方向の中央部から前側の内部には、前方に開口する筒状の中空部31に形成され、本体28の軸方向の中央部には、円筒の対面の2箇所をカットして2つのスリット32、32が形成されている。中空部31の内周面の後端部には、図7乃至図10に示すように、内周面から径方向中央に向って突出する複数(この実施形態では4つ)の弾性を有する羽根状の突起33が周方向に等間隔に設けられ、操作軸3の直径方向で対向して配置されている。
【0025】
図6に示すように、4つの弾性を有する羽根状の突起33の各先端部分が雄ねじ部材4のねじ棒部23の螺旋溝26に螺合されており、螺旋条26と弾性を有する羽根状の突起33が螺合による接触部を構成している。また、弾性を有する羽根状の突起33は、基部に対して先端部が軸方向に弾性変形可能な肉厚に形成されている。
本体28には、その軸方向の中央部から後端に亘って、軸と同心にスリット32に連通させた雄ねじ部材4のねじ棒部23を挿通するための挿通孔34が設けられている。
【0026】
図1に示すように、雌ねじ部材5は雄ねじ部材4と螺合した状態で、操作筒3の内部の収容部16に配置され、さらに先筒2の小径部13に対して、操作筒3の前部分を被せるようにして2条の環状凸部14と2条の環状凹部19と嵌め合わせて連結されている。これにより、操作筒3は先筒2に対して同心軸上に軸を中心として回転可能に連結され、かつ軸方向に移動不可に取り付けられている。
【0027】
雄ねじ部材4のねじ棒部23の後端は仕切壁15に当接され、雄ねじ部材4の軸方向の移動における引き込み位置が規制されている。雄ねじ部材4の先端に設けられた棒状化粧料取付け部24及び棒状化粧料10は、先筒2の貫通孔9内に軸方向での移動が可能に配置され、棒状化粧料取付け部24の3つの保持片27の円弧状をなした各外周面27bが貫通孔9の内周面に当接し、これにより、軸中心に対して回転不可とされている。また、雌ねじ部材5は、本体28の後端面が突条17(図2)の前端面に当接し、本体28の前端面が先筒2の後端面に当接しており、これにより、雌ねじ部材5は、操作筒3の内部において、操作筒3に対して軸方向の移動が不可能に軸方向の定位置に配置される。
【0028】
また、図5に示すように、操作筒3の収容部16の内周面に形成された4つの突条18の先端が雌ねじ部材5の径小部29の外周面に当接し、これにより、雌ねじ部材5が操作筒3と同心軸上の軸中心位置に位置決めされる。また、周方向において、操作筒3の収容部16の内周面に形成された4つの突条18の各突条18、18の間に、雌ねじ部材5の径小部29の外周面に形成された8つの係合突条30のうちの2本ずつが配置される。そして、先筒2に対して操作筒3を回転させた時に、突条18の回転軌跡上に干渉する位置に雌ねじ部材5の係合突条30が配置されており、突条18が係合突条30に当接することにより、雌ねじ部材5は操作筒3と一体に回転可能に配置されている。
【0029】
なお、付属具6は、その支持体35の先端にゴム製のチップ36を備えると共に、支持体35の後端にシャープナー37を備える。支持体35の外周面の全周に亘って形成された環状凸部38が操作筒3の収納部21の内周面に形成された環状凹部22(図2)に嵌合により係止される。また、支持体35の後部外周に、テイルキャップ8の前部分が外側から被せるように嵌め込まれて装着される(図1)。支持体35は中間部の外周にフランジ40を備える。フランジ40は操作筒3と同じ外径であり、付属具6を操作筒3の収納部21に差し込むときのストッパーになるとともに、テールキャップ8のストッパーともなる。
【0030】
以上のように構成された棒状化粧料繰出容器1において、操作筒3を先筒2に対して例えば右回りに回転操作すると、図5に示すように、突条18が雌ねじ部材5の外周面に形成された係合突条30に当接することにより、雌ねじ部材5は操作筒3と一体に軸方向において定位置で回転する。これにより、雌ねじ部材5と螺合する雄ねじ部材4のねじ棒部23が前方に向けて送られ、雄ねじ部材4が先端側へ移動して棒状化粧料10が先筒2の先端開口11から繰り出される。また、操作筒3を先筒2に対して左回りに回転させると雄ねじ部材4が後退して先筒2内に収納される。
【0031】
図12は棒状化粧料の繰出限界位置を示す棒状化粧品繰出容器の縦断面図である。棒状化粧料10を繰出限界位置まで突出させると、棒状化粧料取付け部24の保持片27の先端部が貫通孔9の先端部に段差を以って形成された周壁39(図3)に当接してそれ以上の繰出操作は不可能となる。
【0032】
そして、棒状化粧料10を例えば最後まで充分に使用しようとして操作筒3を限界以上に回し過ぎた場合、螺旋条25と弾性を有する羽根状の突起33との螺合による接触部が通常の繰り出し及び引き込み時の負荷以上の過剰な負荷を受ける。
【0033】
図13は、この様子を示したものであり、繰出限界位置における雌ねじ部材5の弾性を有する羽根状の突起33と雄ねじ部材4の螺旋条25との関連動作を説明するための概略図である。図13(a)に示すように、雌ねじ部材5が回転すると弾性を有する羽根状の突起33は螺旋条25に向けて図中の右方に移動する。螺旋条25に接触した羽根状の突起33は、通常であれば、螺旋条25を回転方向に押し、その分力(操作筒3の軸線方向)で雄ねじ部材4、すなわち、棒状化粧料10を前記の軸方向に押出す。しかし、繰出限界位置では、雄ねじ部材4が軸方向に移動できないので、図13(b)に示すように、弾性を有する羽根状の突起33は螺旋条25に当接して螺旋条25から通常の繰り出し時の負荷以上の過剰な負荷を受け、図13(b)において向こう側から手前側に向う力により、弾性を有する羽根状の突起33は基部に対して先端部が捻じれるように軸方向に弾性変形し、弾性変形した状態で螺旋条25を乗り越えてしまい、図12(c)に示すように、弾性を有する羽根状の突起33は元の形状に復帰する。このように、弾性を有する羽根状の突起33が弾性変形することで過剰な負荷の伝達を避け、その操作力が操作筒3から雄ねじ部材4へ伝わらないので、このクラッチ機能により容器が破損してしまうことがない。
【0034】
また、操作筒3の回転操作により棒状化粧料10が収納される後退限界位置(引き込み限界位置)まで雄ねじ部材4を後退移動させると、図1に示すように、雄ねじ部材4のねじ棒部23の後端が仕切壁15に当接し、それ以上の引込操作は不可能となる。
【0035】
そして、操作筒3を限界以上に回し過ぎた場合、螺旋条25と弾性を有する羽根状の突起33との螺合による接触部が通常の引き込み時の負荷以上の過剰な負荷を受ける。繰り出し限界の場合と同じように、弾性を有する羽根状の突起33は螺旋条25から通常の繰り出し時の負荷以上の過剰な負荷を受け、弾性を有する羽根状の突起33は基部に対して先端部が捻じれるように軸方向に弾性変形し、弾性変形した状態で螺旋条25を乗り越えてしまい、弾性を有する羽根状の突起33は元の形状に復帰する。なお、弾性を有する羽根状の突起33の先端は、円筒の対面を2箇所をカットしたスリット32に向けて弾性変形する。このように、弾性を有する羽根状の突起33が弾性変形することで過剰な負荷の伝達を避け、その操作力が操作筒3から雄ねじ部材4へ伝わらないので、このクラッチ機能により容器が破損してしまうことがない。
【0036】
以上、実施形態の棒状化粧料繰出容器1について説明したが、実施形態では、螺旋条25と弾性を有する羽根状の突起33との螺合による接触部が通常の繰り出し及び引き込み時の負荷以上の過剰な負荷を受けるときに、弾性を有する羽根状の突起33が弾性変形することで過剰な負荷の伝達を避ける構造としているが、変形する側を逆にして、接触部が通常の繰り出し及び引き込み時の負荷以上の過剰な負荷を受けるとき、螺旋条25が弾性変形することで過剰な負荷の伝達を避ける構造としてもよい。また、雄ねじ部材4の螺旋条25は複数条としてもよい。さらに、弾性を有する羽根状の突起33あるいは螺旋条25の変形は主として軸方向の変形であるため、変形のために径方向のスペースを要さず、容器を細くすることができる。
【符号の説明】
【0037】
1 棒状化粧品繰出容器
2 先筒
3 操作筒
4 雄ねじ部材
5 雌ねじ部材
6 付属具
7 フロントキャップ
8 テイルキャップ
9 貫通孔
10 棒状化粧料
11 先端開口
12 後端開口
13 小径部
14 環状凸部
15 仕切壁
16 収容部
17 突条
18 突条
19 環状凹部
20 小径部
21 収容部
22 環状凹部
23 ねじ棒部
24 棒状化粧料取付け部
25 螺旋条
26 螺旋溝
27 保持片
27a 支持板
27b 外周面
28 本体
29 径小部
30 係合突条
31 中空部
32 スリット
33 羽根状の突起
34 挿通孔
35 支持体
36 チップ
37 シャープナー
38 環状凸部
39 周壁
40 フランジ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
棒状化粧料を繰り出し及び引き込み可能に収納する棒状化粧料繰出容器であって、
操作筒と先筒と雄ねじ部材と雌ねじ部材を備え、
操作筒の先端部に先筒が操作筒と共通の長手方向軸に沿って配置され、先筒に対して操作筒が回転可能であるが前記の軸方向に移動不可に取り付けられており、
先筒は棒状化粧料が出没する開口を有し、
雄ねじ部材は、前記の軸方向に長い棒形状であって、棒形状の全長に亘って外周に螺旋条で形成される螺旋溝を有しており、棒形状の先端部分に棒状化粧料取付け部を備え、先筒と操作筒にわたってこれらの内部に配置されると共に、先筒に対して前記軸方向での移動が可能であるが回転不可に取り付けられており、
雌ねじ部材は雄ねじ部材と螺合した状態で、操作筒の内部の軸方向の定位置において、操作筒に対して軸方向の移動が不可であって、かつ操作筒と一体に回転可能に取り付けられていると共に雄ねじ部材の螺旋溝に嵌る羽根状の突起を内側へ突出させて有し、螺旋条に羽根状の突起を螺合させることによる接触部を構成し、
接触部が通常の繰り出し及び引き込み時の負荷以上の過剰な負荷を受けるとき、羽根状の突起が弾性変形することで過剰な負荷の伝達を避ける構造であることを特徴とした棒状化粧料繰出容器。
【請求項2】
棒状化粧料を繰り出し及び引き込み可能に収納する棒状化粧料繰出容器であって、
操作筒と先筒と雄ねじ部材と雌ねじ部材を備え、
操作筒の先端部に先筒が操作筒と共通の長手方向軸に沿って配置され、先筒に対して操作筒が回転可能であるが前記の軸方向に移動不可に取り付けられており、
先筒は棒状化粧料が出没する開口を有し、
雄ねじ部材は、前記の軸方向に長い棒形状であって、棒形状の全長に亘って外周に螺旋条で形成される螺旋溝を有しており、棒形状の先端部分に棒状化粧料取付け部を備え、先筒と操作筒にわたってこれらの内部に配置されると共に、先筒に対して前記軸方向での移動が可能であるが回転不可に取り付けられており、
雌ねじ部材は前記の雄ねじ部材と螺合した状態で、操作筒の内部の軸方向の定位置において、操作筒に対して軸方向の移動が不可であって、かつ操作筒と一体に回転可能に取り付けられていると共に雄ねじ部材の螺旋溝に嵌る羽根状の突起を内側へ突出させて有し、螺旋条に羽根状の突起を螺合させることによる接触部を構成し、
接触部が通常の繰り出し及び引き込み時の負荷以上の過剰な負荷を受けるとき、螺旋条が弾性変形することで過剰な負荷の伝達を避ける構造であることを特徴とした棒状化粧料繰出容器。
【請求項3】
前記の羽根状の突起が複数個設けられていることを特徴として請求項1又は2に記載の棒状化粧料繰出容器。
【請求項4】
複数の羽根状の突起は操作軸の直径方向で対向して配置されていることを特徴とした請求項3に記載の棒状化粧料繰出容器。
【請求項5】
雄ねじ部材の螺旋条は複数条であることを特徴とした請求項1〜4のいずれか一つに記載の棒状化粧料繰出容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−45152(P2012−45152A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−189437(P2010−189437)
【出願日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【出願人】(591147339)株式会社トキワ (141)