説明

棒金硬貨処理装置

【課題】投出ユニットの投出レバーにより棒金硬貨を棒金トレイから取り出す際に棒金硬貨の包装紙が破損してしまった場合でも、バラ硬貨が装置本体内で飛散してしまうことを防止することができる棒金硬貨処理装置を提供する。
【解決手段】棒金硬貨処理装置10において、各棒金トレイ25の先端部分に沿って昇降可能となっている投出ユニット22に、収納部65に対して移動可能となるよう硬貨受け部材70が設けられている。硬貨受け部材70は、投出レバー50により棒金トレイ25から棒金硬貨Cを投出する際に、棒金トレイ25内の投出されるべき棒金硬貨Cの真下の位置に移動するようになっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、棒金硬貨(同一金種の硬貨を一定枚数だけ棒状にまとめて包装紙等により包装したもの)の処理を行う棒金硬貨処理装置に関し、とりわけ、投出ユニットの投出レバーにより棒金硬貨を棒金トレイから取り出す際に棒金硬貨の包装紙が破損してしまった場合でも、バラ硬貨が装置本体内で飛散してしまうことを防止することができる棒金硬貨処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、棒金硬貨の投出を行う装置として様々なタイプのものが知られている。例えば、特許文献1には、投出レバー方式による棒金硬貨の投出装置が開示されている。特許文献1による棒金硬貨の投出装置によれば、複数の棒金硬貨が一列に収納された棒金トレイが上下方向に複数配置されており、棒金トレイに収納された複数の棒金硬貨のうち最先端に位置する一の棒金硬貨を投出ユニットの投出レバーにより棒金トレイから投出し、この投出された棒金硬貨を投出ユニットの収納部に収納させるようになっている。そして、所定の量または金額の棒金硬貨が投出ユニットの収納部に収納されると、投出ユニットは投出装置の取出口に移動し、この取出口において投出ユニットの収納部に収納された棒金硬貨が操作者により取り出されるようになっている。また、投出ユニットの投出レバーにより棒金トレイから棒金硬貨を投出する際に、棒金硬貨が投出されるべき棒金トレイの真下に位置する他の棒金トレイを投出ユニットの押し上げ機構により後方に押し上げ、この棒金トレイ(他の棒金トレイ)を投出レバーの回転半径外に退避させるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−148044号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示されるような従来の棒金硬貨処理装置においては、投出ユニットの投出レバーにより棒金硬貨を棒金トレイから取り出す際に、この投出レバーにより棒金硬貨の包装紙が破損してしまい、バラ硬貨が棒金硬貨処理装置の装置本体内で飛散してしまうという問題があった。とりわけ、棒金トレイに収納されている棒金硬貨の包装紙が傷んでいるときには、投出ユニットの投出レバーにより棒金硬貨を棒金トレイから取り出す際に棒金硬貨の包装紙が破損されやすく、このような問題が生じやすい。
【0005】
本発明は、このような点を考慮してなされたものであり、収納部に対して移動可能となっており、投出レバーにより棒金硬貨を投出する際に、投出されるべき棒金硬貨の真下の位置に移動するような硬貨受け部を投出ユニットに設けることにより、投出ユニットの投出レバーにより棒金硬貨を棒金トレイから取り出す際に棒金硬貨の包装紙が破損してしまった場合でも、飛散するバラ硬貨を硬貨受け部により回収することができ、バラ硬貨が装置本体内で飛散してしまうことを防止することができる棒金硬貨処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の棒金硬貨処理装置は、上下方向に複数配設され、複数の棒金硬貨を一列に収納し、前傾姿勢となっているとともにその長手方向に移動可能となっているような棒金トレイと、前記各棒金トレイの先端部分に沿って昇降可能となっている投出ユニットであって、棒金硬貨を収納する収納部と、前記棒金トレイの最先端に位置する棒金硬貨を当該棒金トレイから投出させて前記収納部に収納させる投出レバーと、前記投出レバーの下方に設けられ、前記投出レバーにより前記棒金トレイから棒金硬貨を投出する際に前記棒金トレイ内の投出されるべき棒金硬貨の真下の位置に移動する硬貨受け部とを有する投出ユニットと、を備えたことを特徴とする。
【0007】
このような棒金硬貨処理装置によれば、棒金トレイの先端部分に沿って昇降可能となっている投出ユニットに硬貨受け部が設けられており、この硬貨受け部は、投出レバーにより棒金トレイから棒金硬貨を投出する際に、棒金トレイ内の投出されるべき棒金硬貨の真下の位置に移動するようになっている。このことにより、投出レバーにより棒金トレイから棒金硬貨が投出される際に、棒金硬貨の包装紙が破損してしまった場合でも、バラ硬貨がこの硬貨受け部により受けられるようになり、バラ硬貨が棒金硬貨処理装置の装置本体内で飛散してしまうことを防止することができる。
【0008】
本発明の棒金硬貨処理装置においては、前記投出ユニットの前記硬貨受け部は、前記収納部に対して移動可能となっており、前記投出ユニットが昇降する際に、前記棒金トレイに衝突しないような位置に退避するようになっていてもよい。このことにより、投出ユニットが昇降する際に、硬貨受け部が投出ユニットの昇降動作の邪魔になってしまうことを防止することができる。
【0009】
本発明の棒金硬貨処理装置においては、前記投出ユニットの前記硬貨受け部は、前記投出レバーにより前記棒金トレイから棒金硬貨を投出する際に、当該硬貨受け部を上方から見て、投出されるべき棒金硬貨が収納された前記棒金トレイの先端部分および前記収納部の間の領域を含むような構成となっていてもよい。このことにより、投出レバーによりすくい上げられた棒金硬貨が収納部に送られる際に、この棒金硬貨からバラ硬貨が分離して落下した場合でも、硬貨受け部によりこのバラ硬貨を受けることができるようになる。
【0010】
本発明の棒金硬貨処理装置においては、前記投出ユニットは、前記投出レバーにより前記棒金トレイから棒金硬貨を投出する際にこの棒金トレイの真下に位置する他の棒金トレイを前記投出ユニットから遠ざける方向に押圧して移動させる押圧部を更に有し、前記硬貨受け部は前記押圧部に設けられており、前記押圧部が前記他の棒金トレイを押圧して移動させたときに前記硬貨受け部が前記棒金トレイ内の投出されるべき棒金硬貨の真下の位置に移動するようになっていてもよい。このような棒金硬貨処理装置によれば、硬貨受け部の移動を押圧部の移動に連動させることにより、硬貨受け部のための駆動部を新たに設置する必要がなくなり、装置の構成をよりシンプルなものとすることができる。
【0011】
あるいは、前記投出レバーにより前記棒金トレイから棒金硬貨を投出する際に、投出されるべき棒金硬貨が収納された前記棒金トレイが前記投出ユニットに向かって進出するようになっており、前記硬貨受け部は、進出した前記棒金トレイ内の投出されるべき棒金硬貨の真下の位置に移動するようになっていてもよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明の棒金硬貨処理装置によれば、投出ユニットの投出レバーにより棒金硬貨を棒金トレイから取り出す際に棒金硬貨の包装紙が破損してしまった場合でも、バラ硬貨が装置本体内で飛散してしまうことを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一の実施の形態による棒金硬貨処理装置の内部の構成を示す側面図である。
【図2】図1に示す棒金硬貨処理装置における棒金トレイを示す一部切欠斜視図である。
【図3】図1に示す棒金硬貨処理装置における投出ユニットの構成を示す、図1のA−A矢視による側面図である。
【図4】図1に示す棒金硬貨処理装置における投出ユニットの構成を示す、図3のB−B矢視による側面図である。
【図5】図4に示す投出ユニットについて、投出レバーにより棒金トレイから棒金硬貨を投出する際の状態を示す側面図である。
【図6】本発明による棒金硬貨処理装置の他の構成を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して本発明の一の実施の形態について説明する。図1乃至図5は、本実施の形態に係る棒金硬貨処理装置を示す図である。より詳細には、図1は、本実施の形態による棒金硬貨処理装置の内部の構成を示す側面図であり、図2は、図1に示す棒金硬貨処理装置における棒金トレイを示す一部切欠斜視図である。また、図3は、図1に示す棒金硬貨処理装置における投出ユニットの構成を示す、図1のA−A矢視による側面図である。また、図4および図5は、図1に示す棒金硬貨処理装置における投出ユニットの構成を示す、図3のB−B矢視による側面図である。
【0015】
図1に示すように、棒金硬貨処理装置10は略直方体形状の筐体20を備えており、この筐体20内には棒金硬貨収納ユニット21が設置されている。また、筐体20内において棒金硬貨収納ユニット21の前方(図1における右方)には投出ユニット22が昇降自在に配設されている。
【0016】
棒金硬貨収納ユニット21において、その枠体23に、断面が浅い上向きコ字状を有する多数のガイドレール24が前傾姿勢として上下方向に並ぶよう配設されている。各ガイドレール24には棒金トレイ25が当該ガイドレール24に沿って移動可能となるよう装着されている。また、図2に示すように、棒金トレイ25の前端近傍の側面にはストッパ26が突設されており、このストッパ26が各ガイドレール24の前端に設けられた各ストッパ27に当接することにより(図1参照)、棒金トレイ25の装着位置が定められるようになっている。
【0017】
図2に示すように、棒金トレイ25は、棒金硬貨Cを径方向に整列して収納し得る幅を有している。棒金トレイ25は、その後方部所要範囲の上面が開放されておりそこに棒金硬貨装填用開口部28が形成されている。また、棒金トレイ25の先端の上面は少なくとも1本の棒金硬貨Cが脱出し得る大きさに開口された取出口29とされている。そして、取出口29の前端側の立壁30により棒金硬貨Cの下降限が定められている。また、この取出口29の近傍で、立壁30には一対のスリット31が形成されている。図2に示すように、これらのスリット31は、取出口29の下方において棒金トレイ25の底部にまで延びるようになっている。また、棒金トレイ25の後端には上面板32が設けられており、この上面板32の末端は下方に屈曲されており、この屈曲部分は棒金トレイ25の装脱時の手掛け33とされている。
【0018】
図1に示すように、棒金硬貨収納ユニット21の後部には、棒金トレイ25の装脱時に開閉する扉35が設けられている。この扉35は、棒金硬貨処理装置10の筐体20の後面に設けられた扉20aを開けることにより開閉操作することができるようになっている。
【0019】
本実施の形態の棒金硬貨収納ユニット21においては、図1には表されていないが図3に示すように2個の棒金トレイ25が横並び状に並列して収納されるようになっている。
【0020】
図1に示すように、棒金硬貨収納ユニット21の枠体23の前端位置において、装填された各棒金トレイ25の各取出口29に対応する側部には、棒金トレイ25内に棒金硬貨が存在するか否かを検出する反射型のセンサSが配設されている。
【0021】
ちなみに図1に示す実施の形態においては、上部の2段の棒金トレイ25が1円硬貨用、以下1段分の棒金トレイ25が5円硬貨用、以下5段分の棒金トレイ25が10円硬貨用、以下1段分の棒金トレイ25が50円硬貨用、以下4段分の棒金トレイ25が100円硬貨用、以下1段分の棒金トレイ25が500円硬貨用とされており、500円硬貨用の棒金トレイ25は他の金種のものに比べて若干厚く形成されている。
【0022】
投出ユニット22は、棒金硬貨処理装置10の筐体20の前部側(図1における右側)の内部において各棒金トレイ25の先端に沿って昇降自在に設けられている。以下、このような投出ユニット22の構成について具体的に説明する。図3に示すように、投出ユニット22を構成する枠体39の一方の側枠39aの外面にはブロック40が取り付けられている。このブロック40は、垂直方向に延びるよう棒金硬貨処理装置10の筐体20内に配設されたガイドロッド41に摺動自在に嵌挿されている。また、枠体39の他方の側枠39b側には一対のローラ43が設けられており、これらのローラ43は、垂直方向に延びるよう棒金硬貨処理装置10の筐体20内に配設されたガイドレール42上でそれぞれ移動するよう回転するようになっている。このことにより、投出ユニット22は水平状態を保ちながらガイドロッド41やガイドレール42に沿って昇降されるようになっている。
【0023】
また、棒金硬貨処理装置10の筐体20内の上下部にそれぞれ軸支されたプーリ44、45間にベルト46が張架されており、このベルト46が投出ユニット22のブロック40に設けられたベルト固定部47に取り付けられている。また、下部のプーリ45はモータ48により回転駆動させられるようになっている。このように、モータ48が下部のプーリ45を回転駆動することにより、ベルト46を介して投出ユニット22が昇降されるようになっている。また、投出ユニット22を各棒金トレイ25に対応した位置に停止させるための位置決めセンサ(図示せず)が、棒金硬貨処理装置10の筐体20内に設けられている。
【0024】
投出ユニット22の枠体39における棒金トレイ25に面する側には、投出レバー50および押上げ機構51が設けられている。ここで、投出レバー50および押上げ機構51は、左右に並設される一対の棒金トレイ25にそれぞれ対応して左右一対となるよう設けられている。
【0025】
より詳細には、投出ユニット22の枠体39の左右の側枠39a、39b間において棒金トレイ25に面する側の所要範囲の中央位置には中間枠39cが設けられている。そして、側枠39a、39bと中間枠39cとの間に、左右の棒金トレイ25用の各投出レバー50の各軸52が同一軸線上においてそれぞれ回転自在に設けられている。そして、これらの各軸52における、各棒金トレイ25の各スリット31に対応する位置に、各投出レバー50が左右一対ずつ固着されている(図3参照)。
【0026】
より具体的に説明すると、図4および図5に示すように、軸52の直径線上に対称的に2つの投出レバー50が設けられており、軸52の180°の回転で1つの棒金硬貨を各投出レバー50により投出することができるようになっている。ここで、投出レバーの回転半径Rは、投出されるべき棒金硬貨が収納された棒金トレイ25の真上に位置する一段上位の棒金トレイ25には干渉せず、一方、この棒金トレイ25の真下に位置する一段下位の棒金トレイ25には干渉するように設定されている。また、各投出レバー50が回転する際に、これらの投出レバー50は棒金トレイ25の先端に形成されたスリット31を通過するようになっている。
【0027】
図3に示すように、各軸52は、投出ユニット22の枠体39の左右側枠39a、39bの下部内面側に支持された各モータ53により各ベルト54を介して個々独立して回転駆動されるようになっている。なお、各投出レバー50の近傍には、これらの投出レバー50の位置を検知するセンサ(図示せず)が設けられている。
【0028】
押上げ機構51は、投出されるべき棒金硬貨が収納された棒金トレイ25の真下に位置する一段下位の棒金トレイ25を後方へ押し上げて、その取出口29に位置する棒金硬貨Cを投出レバー50の回転半径外に退避させるものである。図3に示すように、各押上げ機構51は、投出ユニット22の枠体39の中間枠39cを間にしてその左右位置に設けられている。
【0029】
押上げ機構51は、図4および図5に示されるように、棒金トレイ25の前傾角と等しい傾斜角をもって進退移動する押上げ部材55を有している。押上げ部材55は、棒金トレイ25の前端に当接してこれを押動する押上げ面55aと、側板55bと、上板55cとを有しており、側板55bの長手方向に長穴56が形成されている。そして、押上げ部材55の長穴56には、中間枠39cに突設されたピン57およびギヤ58の軸59がそれぞれ嵌挿されており、これらのピン57および軸59をガイドとして押上げ部材55が進退移動されるよう支持されている。
【0030】
押上げ部材55を進退移動させる作動機構について以下説明する。図4および図5に示すように、押上げ部材55の上板55cの下面に形成されたラック60(はすばラック)にギヤ58(はすばギヤ)が噛合されている。また、図3に示すように、このギヤ58には、枠体39に搭載されたモータ61の出力軸上のウォーム62に噛み合うウォームギヤ63が噛合されている。このことにより、モータ61の駆動によってギヤ58が回転し、ラック60を介して押上げ部材55が進退移動される。そして、図5に示すように押上げ部材55を押し上げた状態でモータ61を停止させてもウォーム62とウォームギヤ63との噛み合いによりこの押上げ部材55が棒金トレイ25により押し戻されることはない。
【0031】
なお、ウォームギヤ63の軸上に通常の平ギヤを設け、ギヤ58も平ギヤとして通常のラックに噛み合わせるようにしてもよい。また、ギヤ伝達による方法以外にクランク機構、レバー機構等によるものであってもよい。
【0032】
また、投出ユニット22の枠体39内には、投出レバー50によりすくい上げられた棒金硬貨Cをガイド部材64上から受け入れる収納部65が形成されている。また、ガイド部材64の上方位置には、投出される棒金硬貨Cが投出されるべき金種であるか否かをその外径でチェックする径判別用揺動板66が設けられている。そして、径判別用揺動板66の揺動量をロータリーエンコーダE(図3参照)により検出するようになっている。また、径判別用揺動板66の下方位置には、投出される棒金硬貨Cの孔の有無を判別するセンサSが設けられている。
【0033】
また、図4および図5に示すように、投出ユニット22には略水平方向に延びる平板状の硬貨受け部材70が設けられている。図4および図5に示すように、この硬貨受け部材70は押上げ部材55の近傍に設けられており、押上げ部材55の進退移動に連動して水平方向に往復移動を行うようになっている。より詳細には、押上げ部材55の上板55cの上部には突出部材55dが取り付けられており、この突出部材55dには、上下方向に延びる長穴55eが形成されている。また、硬貨受け部材70の上面にも突出部材71が取り付けられており、この突出部材71にはピン72が突設されている。そして、押上げ部材55に設けられた突出部材55dには、硬貨受け部材70に設けられた突出部材71のピン72が嵌挿されている。さらに、投出ユニット22の枠体39には、突出部材55dと突出部材71との間でピン72が嵌挿される、水平方向に延びる長穴75が形成されたガイド板(図示せず)が設けられている。このような構成により、押上げ部材55が進退移動を行うと、この押上げ部材55に設けられた突出部材55dがピン72を押動することによりこのピン72はガイド板の長穴75に沿って水平方向に移動し、これに伴ってピン72が嵌挿されている突出部材71およびこの突出部材71が取り付けられた硬貨受け部材70も水平方向に移動する。このようにして、硬貨受け部材70は押上げ部材55の進退移動に連動して水平方向に往復移動を行うようになる。
【0034】
また、図3に示すように、硬貨受け部材70は、投出ユニット22の側枠39a、39bと中間枠39cとの間にそれぞれ左右一対となるよう設けられている。このように、硬貨受け部材70は、側枠39a、39bと中間枠39cとの間において略水平方向に延びる平板状のものとなっているので、投出レバー50により棒金トレイ25から棒金硬貨Cが投出される際に、棒金硬貨Cの包装紙が破損してしまった場合でも、バラ硬貨がこの硬貨受け部材70により受けられるようになる。
【0035】
次に、このような構成からなる棒金硬貨処理装置10の動作について説明する。
【0036】
まず、棒金硬貨処理装置10に棒金硬貨を補充する動作について説明する。このような棒金硬貨の補充動作を行うにあたり、棒金トレイ25を棒金硬貨処理装置10の筐体20から取り出し、この棒金トレイ25に所定金種の棒金硬貨Cを径方向に整列状態として収納する。そして、筐体20の後面の扉20aおよび棒金硬貨収納ユニット21の後部の扉35を開き、対応する各段のガイドレール24に棒金トレイ25を装填する。これにより、棒金トレイ25はガイドレール24の傾斜によってストッパ26、27が互いに当接するまで下降して停止する。その後、棒金硬貨収納ユニット21の後部の扉35および筐体20の後面の扉20aを閉じる。このようにして、棒金硬貨処理装置10において棒金硬貨Cの投出が可能な状態となる。
【0037】
棒金硬貨処理装置10に対して棒金硬貨Cの投出指令が入力されると、各棒金トレイ25の各取出口29に位置する各センサSにより棒金硬貨Cが存在する棒金トレイ25が検出される。そして、予め設定されている各段の金種情報に基づいて、投出されるべき金種の棒金硬貨が収納されている棒金トレイ25が割り出される。その後、待機位置にある投出ユニット22が、投出されるべき金種の棒金硬貨が収納されている棒金トレイ25に対応する位置まで下降するよう、モータ48の駆動によりベルト46が回動される。この際に、投出ユニット22の押上げ部材55および硬貨受け部材70は、図4に示すように各棒金トレイ25に衝突しないような位置にそれぞれ退避している。
【0038】
投出ユニット22が、投出されるべき金種の棒金硬貨が収納されている棒金トレイ25に対応する位置に到達すると、押上げ機構51のモータ61が起動して、ウォーム62、ウォームギヤ63、ギヤ58、ラック60等を介して押上げ部材55が図4に示すような位置からその長穴56とピン57、軸59とをガイドとして斜め上方へ移動し、図5に示すような位置に到達する。この際に、押上げ部材55の押上げ面55aが棒金トレイ25の前端に当接してこれを投出レバー50の回転半径R外へ押し出す(図5参照)。
【0039】
また、押上げ部材55の移動に伴って硬貨受け部材70も棒金トレイ25に向かう方向に水平移動する。より詳細には、前述のように、押上げ部材55が斜め上方へ移動すると、この押上げ部材55に設けられた突出部材55dがピン72を押動することによりこのピン72はガイド板の長穴75に沿って図4における左方向に水平移動し、これに伴ってピン72が嵌挿されている突出部材71およびこの突出部材71が取り付けられた硬貨受け部材70も図4における左方向に水平移動する。そして、硬貨受け部材70が図5に示すような位置に達すると、この硬貨受け部材70を上方から見て、投出されるべき棒金硬貨Cが収納された棒金トレイ25の先端および収納部65の間の領域が硬貨受け部材70に含まれるようになる。
【0040】
次いで、投出レバー50がモータ53により図5における時計回りの方向に回動し、180°回動する間に棒金トレイ25の取出口29に位置する棒金硬貨Cを1本だけすくい上げてガイド部材64上へ移行させる。投出レバー50の180°回転は、センサSによって停止位置が定められる。この際に、図5に示すように、棒金トレイ25内の投出されるべき棒金硬貨Cの真下の位置に硬貨受け部材70が移動していることにより、棒金硬貨Cの包装紙が破損してしまった場合でも、バラ硬貨がこの硬貨受け部材70により受けられるようになる。
【0041】
ガイド部材64上へ移行した棒金硬貨Cは径判別用揺動板66を押し上げながら通過し、その径判別用揺動板66の揺動量がロータリーエンコーダEにより検知されて適正な金種の棒金硬貨であるか否かがチェックされる。また、ガイド部材64上へ移行した棒金硬貨Cが孔あき硬貨であるか否かもセンサS3によりチェックされる。その後、棒金硬貨Cが収納部65に送られてこの収納部65に収納される。
【0042】
必要な量または金額の棒金硬貨Cが投出ユニット22の収納部65に収納されるまでこのような動作を繰り返し行う。そして、必要な量または金額の棒金硬貨Cが投出ユニット22の収納部65に収納されると、投出ユニット22は最上昇位置へ上昇し、シャッタ68が開く。そして、操作者は取出口67から投出ユニット22の収納部65内の棒金硬貨Cを取り出すことができるようになる。
【0043】
以上のように本実施の形態の棒金硬貨処理装置10によれば、各棒金トレイ25の先端部分に沿って昇降可能となっている投出ユニット22に、収納部65に対して移動可能となるよう硬貨受け部材70が設けられている。そして、この硬貨受け部材70は、投出レバー50により棒金トレイ25から棒金硬貨Cを投出する際に、図5に示すように棒金トレイ25内の投出されるべき棒金硬貨Cの真下の位置に移動するようになっている。このような硬貨受け部材70が設けられていることにより、投出レバー50により棒金トレイ25から棒金硬貨Cが投出される際に、棒金硬貨Cの包装紙が破損してしまった場合でも、バラ硬貨がこの硬貨受け部材70により受けられるようになり、バラ硬貨が棒金硬貨処理装置10の筐体20内で飛散してしまうことを防止することができる。
【0044】
また、本実施の形態の棒金硬貨処理装置10においては、硬貨受け部材70は、投出ユニット22が昇降する際に、図4に示すように各棒金トレイ25に衝突しないような位置に退避するようになっている。このことにより、投出ユニット22が上下方向に移動する際に、硬貨受け部材70が投出ユニット22の昇降動作の邪魔になってしまうことを防止することができる。
【0045】
また、本実施の形態の棒金硬貨処理装置10においては、硬貨受け部材70は、投出レバー50により棒金トレイ25から棒金硬貨Cを投出する際に、図5に示すように、硬貨受け部材70を上方から見て、投出されるべき棒金硬貨Cが収納された棒金トレイ25の先端および収納部65の間の領域を含むような構成となっている。より詳細には、硬貨受け部材70を上方から見て、棒金トレイ25の先端とガイド部材64との間の領域や、ガイド部材64における、投出レバー50のための開口が設けられている領域(図5において白抜きで表示される部分)が硬貨受け部材70に含まれるようになる。このことにより、投出レバー50によりすくい上げられた棒金硬貨Cが収納部65に送られる際に、この棒金硬貨Cからバラ硬貨が分離して落下した場合でも、硬貨受け部材70によりこのバラ硬貨を受けることができるようになる。
【0046】
また、本実施の形態の棒金硬貨処理装置10においては、投出ユニット22は、投出レバー50により棒金トレイ25から棒金硬貨Cを投出する際にこの棒金トレイ25の真下に位置する他の棒金トレイ25を投出ユニット22から遠ざける方向に押圧して移動させる押上げ部材55(押圧部)を更に有しており、硬貨受け部材70は押上げ部材55に設けられている。そして、押上げ部材55が他の棒金トレイ25を押圧して移動させたときに、硬貨受け部材70が棒金トレイ25内の投出されるべき棒金硬貨Cの真下の位置に移動するようになっている。このように、本実施の形態の棒金硬貨処理装置10では、硬貨受け部材70の移動を押上げ部材55の移動に連動させることにより、硬貨受け部材70のための駆動部を新たに設置する必要がなくなり、装置の構成をよりシンプルなものとすることができる。
【0047】
なお、本発明による棒金硬貨処理装置は、上記の態様に限定されるものではなく、様々の変更を加えることができる。
【0048】
例えば、各棒金トレイの先端部分に沿って昇降可能となっている投出ユニットに、棒金トレイの押上げを行う押上げ機構が設けられていなくともよい。このような構成の棒金硬貨処理装置について図6を用いて説明する。なお、図6に示す棒金硬貨処理装置について、図1乃至図5に示す棒金硬貨処理装置と同一の構成要素については同一の参照符号を付してその説明を省略する。また、図6に示す棒金硬貨処理装置の投出ユニットについて、図1乃至図5に示す棒金硬貨処理装置の投出ユニットと共通する構成要素については一部図示を省略している。
【0049】
図6に示すような棒金硬貨処理装置10aにおいては、各棒金トレイ25は投出ユニット22aに向かって進出することができるようになっている。具体的には、投出ユニット22aの投出レバー50により棒金トレイ25から棒金硬貨Cを投出する際に、図6(b)に示すように、投出されるべき棒金硬貨Cが収納された棒金トレイ25が投出ユニット502に向かって進出する。
【0050】
また、図6に示すような棒金硬貨処理装置10aにも硬貨受け部材80が設けられている。この硬貨受け部材80は投出ユニット22aの収納部65に対して水平方向に移動可能となっている。より具体的には、硬貨受け部材80は、投出ユニット22aの投出レバー50により棒金トレイ25から棒金硬貨Cを投出する際に、図6(b)に示すように、進出した棒金トレイ25内の投出されるべき棒金硬貨Cの真下の位置に移動するようになっている。
【0051】
図6に示すような棒金硬貨処理装置10aによれば、図1乃至図5に示すような棒金硬貨処理装置10と同様に、各棒金トレイ25の先端部分に沿って昇降可能となっている投出ユニット22aに、収納部65に対して移動可能となるよう硬貨受け部材80が設けられている。そして、この硬貨受け部材80は、投出レバー50により棒金トレイ25から棒金硬貨Cを投出する際に、図6(b)に示すように棒金トレイ25内の投出されるべき棒金硬貨Cの真下の位置に移動するようになっている。このような硬貨受け部材80が設けられていることにより、投出レバー50により棒金トレイ25から棒金硬貨Cが投出される際に、棒金硬貨Cの包装紙が破損してしまった場合でも、バラ硬貨がこの硬貨受け部材80により受けられるようになり、バラ硬貨が棒金硬貨処理装置10aの筐体20内で飛散してしまうことを防止することができる。
【0052】
上述するいずれの実施の形態においても、硬貨受け部材70、80は投出ユニット22aに設けられているが、ここに設けることに限らず、投出する際の上面視において棒金トレイの先端部分および収納部の間の領域を含めば、棒金硬貨収納ユニット21の下方に一つ設けたり、棒金トレイ毎に設けたりすることも可能である。
【符号の説明】
【0053】
10、10a 棒金硬貨処理装置
20 筐体
20a 扉
21 棒金硬貨収納ユニット
22、22a 投出ユニット
23 枠体
24 ガイドレール
25 棒金トレイ
26 ストッパ
27 ストッパ
28 棒金硬貨装填用開口部
29 取出口
30 立壁
31 スリット
32 上面板
33 手掛け
35 扉
39 枠体
39a、39b 側枠
39c 中間枠
40 ブロック
41 ガイドロッド
42 ガイドレール
43 ローラ
44、45 プーリ
46 ベルト
47 ベルト固定部
48 モータ
50 投出レバー
51 押上げ機構
52 軸
53 モータ
54 ベルト
55 押上げ部材
55a 押上げ面
55b 側板
55c 上板
55d 突出部材
55e 長穴
56 長穴
57 ピン
58 ギヤ
59 軸
60 ラック
61 モータ
62 ウォーム
63 ウォームギヤ
64 ガイド部材
66 径判別用揺動板
67 取出口
68 シャッタ
70 硬貨受け部材
71 突出部材
72 ピン
75 長穴
80 硬貨受け部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下方向に複数配設され、複数の棒金硬貨を一列に収納し、前傾姿勢となっているとともにその長手方向に移動可能となっているような棒金トレイと、
前記各棒金トレイの先端部分に沿って昇降可能となっている投出ユニットであって、棒金硬貨を収納する収納部と、前記棒金トレイの最先端に位置する棒金硬貨を当該棒金トレイから投出させて前記収納部に収納させる投出レバーと、前記投出レバーの下方に設けられ、前記投出レバーにより前記棒金トレイから棒金硬貨を投出する際に前記棒金トレイ内の投出されるべき棒金硬貨の真下の位置に移動する硬貨受け部とを有する投出ユニットと、
を備えたことを特徴とする棒金硬貨処理装置。
【請求項2】
前記投出ユニットの前記硬貨受け部は、前記収納部に対して移動可能となっており、前記投出ユニットが昇降する際に、前記棒金トレイに衝突しないような位置に退避するようになっていることを特徴とする請求項1記載の棒金硬貨処理装置。
【請求項3】
前記投出ユニットの前記硬貨受け部は、前記投出レバーにより前記棒金トレイから棒金硬貨を投出する際に、当該硬貨受け部を上方から見て、投出されるべき棒金硬貨が収納された前記棒金トレイの先端部分および前記収納部の間の領域を含むような構成となっていることを特徴とする請求項1または2記載の棒金硬貨処理装置。
【請求項4】
前記投出ユニットは、前記投出レバーにより前記棒金トレイから棒金硬貨を投出する際にこの棒金トレイの真下に位置する他の棒金トレイを前記投出ユニットから遠ざける方向に押圧して移動させる押圧部を更に有し、
前記硬貨受け部は前記押圧部に設けられており、前記押圧部が前記他の棒金トレイを押圧して移動させたときに前記硬貨受け部が前記棒金トレイ内の投出されるべき棒金硬貨の真下の位置に移動することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の棒金硬貨処理装置。
【請求項5】
前記投出レバーにより前記棒金トレイから棒金硬貨を投出する際に、投出されるべき棒金硬貨が収納された前記棒金トレイが前記投出ユニットに向かって進出するようになっており、
前記硬貨受け部は、進出した前記棒金トレイ内の投出されるべき棒金硬貨の真下の位置に移動するようになっていることを特徴とすることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の棒金硬貨処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−108600(P2012−108600A)
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−254964(P2010−254964)
【出願日】平成22年11月15日(2010.11.15)
【出願人】(000001432)グローリー株式会社 (1,344)
【Fターム(参考)】