説明

棒鋼回転冷却床

【課題】太い棒鋼であっても真直ぐな形状に保持しつつ冷却を行うことができ、且つ設備として長大な設備を必要としない棒鋼回転冷却床を提供する。
【解決手段】固定溝70をラックの上面に長手方向に沿って複数有する固定ラック12と、移動溝74をラックの上面に長手方向に沿って複数有し、上下方向に回転運動を行う移動ラック14とを備え、固定溝70において固定ラック12に保持された棒鋼を移動ラック14の回転運動により移動溝74で受け取って持ち上げ、長手方向に移動させた後、更に固定ラック12へと戻す棒鋼回転冷却床10において、移動ラック14が、固定溝70の溝側面に沿った棒鋼の転動運動を伴って、回転運動により棒鋼を移動溝74で固定溝70から受け取って再び元の同じ固定溝70へと戻す動作を繰り返すアイドリングモードを実行するものとなす。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は断面円形の棒鋼を対象とした棒鋼回転冷却床に関する。
【背景技術】
【0002】
圧延を完了した直後の棒鋼は温度が1000℃近くの高温状態にあり、このような高温の棒鋼を平坦な場所に並べて放置し冷却を行うと、棒鋼の互いに向き合った側の面が相手側の棒鋼からの熱を受けて膨張し、反り返るような変形を生じてしまう。
【0003】
このような変形を防ぐ手段として、並べて配置した棒鋼のそれぞれを、長手方向に沿って配置した複数の溝にて保持し拘束しておいた場合(非回転状態で)、各棒鋼は見た目には真直ぐな形状を保持したまま冷却されるが、その形状保持は溝による拘束状態で表層が固まることにより得られるものであり、表層を削ると内部に残留していた熱応力によって棒鋼が曲りを生じてしまう。
【0004】
そこで、従来にあっては棒鋼の曲りを防止しつつ冷却及び搬送を行うための設備として、棒鋼を溝の内部で転動運動させつつ溝から溝へとピッチ送りし、冷却と搬送とを同時に行う棒鋼回転冷却床が広く用いられている。
例えば下記特許文献1,特許文献2に、この種の棒鋼回転冷却床の一例が開示されている。
【0005】
この種の棒鋼回転冷却床は、隣接する山部と山部との間の谷部にて形成される溝を棒鋼の保持溝且つ固定溝としてラックの上面に長手方向に沿って複数有する固定ラックと、上記の溝を棒鋼の保持溝且つ移動溝としてラックの上面に長手方向に沿って複数有し、偏心カムの回転運動により上下方向に回転運動する移動ラックとを備え、固定ラックの固定溝に保持された棒鋼を、移動ラックの回転運動により移動溝で受け取って持ち上げ、長手方向に移動させた後、更に固定ラックの次の固定溝へと戻し、そしてこれを繰り返すことで棒鋼を溝側面に沿って転動運動させつつ固定溝から固定溝へとピッチ送りし、冷却と搬送とを同時に行って行く。
【0006】
しかしながら、例えば直径がφ120〜310mmもあるような太い棒鋼の場合、1000℃近くの高温から200〜300℃程度の低温まで冷却を行うためには極めて長時間(5〜10時間)を要してしまう。
上記の棒鋼回転冷却床ではこの長時間かけての冷却を、棒鋼を搬送しながら行わなければならず、従って設備の長さが長大なものとなってしまう。
このような長大な設備を設置するといったことは実際上困難である。
従って太い棒鋼の場合には圧延完了後に山積みして放置し、冷却を行わざるを得ないのが実情である。
【0007】
この場合、山積みによって棒鋼がある程度拘束状態に保持されていたとしても、内部には熱応力が残留しており、表層を削ると棒鋼が曲り変形を生じてしまうため、内部応力除去のための熱処理を行うことで曲りの問題に対処しているのが実情である。
しかしながらこの場合には内部の残留応力除去のための熱処理工程を別途に行わなければならない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平8−90041号公報
【特許文献2】特開平8−141629号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は以上のような事情を背景とし、太い棒鋼であっても支障無く真直ぐな形状に保持しながら冷却を行うことができ、且つ設備として長大な設備を必要としない棒鋼回転冷却床を提供することを目的としてなされたものである。
また他の目的として、長大な設備とすることなく棒鋼を冷却しつつ搬送も行うことのできる棒鋼回転冷却床を提供することを目的としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
而して請求項1のものは、(a)隣接する山部と山部との間の谷部にて形成される溝を断面円形の棒鋼の保持溝且つ固定溝としてラックの上面に長手方向に沿って複数有する固定ラックと、(b)前記溝を前記棒鋼の保持溝且つ移動溝としてラックの上面に長手方向に沿って複数有し、上下方向に回転運動を行う移動ラックと、を備え、前記固定溝において前記固定ラックに保持された前記棒鋼を前記移動ラックの回転運動により前記移動溝で受け取って持ち上げ、前記長手方向に移動させた後、更に前記固定ラックへと戻す棒鋼回転冷却床であって、前記移動ラックが、前記固定溝の溝側面に沿った前記棒鋼の転動運動を伴って、回転運動により該棒鋼を前記移動溝で該固定溝から受け取って再び元の同じ固定溝へと戻す動作を繰り返すアイドリングモードを実行するものとなしてあることを特徴とする。
【0011】
請求項2のものは、請求項1において、前記アイドリングモードの下では、前記固定溝の一対の溝側面にて挟まれた位置の保持位置にある棒鋼を、前記移動ラックの回転運動により前記移動溝の一方の溝側面と、該一方の溝側面に対向する前記固定溝の一方の溝側面とで挟みながら該棒鋼を該固定溝の該一方の溝側面に沿って転動させつつ上向きに移動させた後、該棒鋼を前記移動溝の一対の溝側面の両方で支持して前記固定溝から持ち上げ離間させた後、該固定溝の上方で長手方向に移動させ、しかる後該棒鋼を該固定溝の他方の溝側面に降ろして、その後該他方の溝側面に沿って自重により下向きに移動させ、前記保持位置へと到らしめる動作を行うものとなしてあることを特徴とする。
【0012】
請求項3のものは、請求項1,2の何れかにおいて、前記固定ラックと、前記移動ラックの回転運動の中心位置との長手方向の相対位置を変更する位置変更手段が備えてあり、該相対位置の変更により、前記移動ラックが、前記固定溝の溝側面に沿った前記棒鋼の転動運動を伴って、前記アイドリングモードの実行時と同じ回転運動により、該棒鋼を前記移動溝で該固定溝から受け取って、長手方向に隣接した次の固定溝へとピッチ送りする動作を繰り返す搬送モードの実行に切替可能となしてあることを特徴とする。
【0013】
請求項4のものは、請求項1〜3の何れかにおいて、前記移動ラックの回転運動に伴って前記移動溝が前記固定溝から前記棒鋼を受け取ってから前記固定ラックに戻すまでの長手方向の移動距離が、前記固定溝の長手方向の溝幅よりも小さいことを特徴とする。
【0014】
請求項5のものは、請求項4において、前記移動溝が前記固定溝から前記棒鋼を受け取ってから前記固定ラックに戻すまでの長手方向の移動距離が、前記固定溝の溝底から該固定溝の溝側面の上端までの長手方向距離よりも大であることを特徴とする。
【発明の作用・効果】
【0015】
以上のように本発明の棒鋼回転冷却床は、移動ラックが、固定溝の溝側面に沿った棒鋼の転動運動を伴って、回転運動により棒鋼を移動溝で固定溝から受け取り、そして受け取った棒鋼を、固定ラックにおける次の固定溝へと受け渡さずに、再び元の同じ固定溝へと戻す動作を繰り返すアイドリングモードを実行するようになしたもので、本発明によれば、棒鋼回転冷却床がアイドリングモードを実行することによって、即ち固定ラックの固定溝に保持された棒鋼が、移動ラックの回転運動によって転動運動しつつ同じ固定溝内に保持されるようになすことで、棒鋼を真直ぐな形状に保持しつつ同じ固定溝内でこれを冷却進行させることができる。
従って少なくともこのアイドリングモード実行時においては、棒鋼をピッチ送りするために必要な長さを設備が必要としない。
【0016】
この場合において、アイドリングモードの下では、固定溝の一対の溝側面にて挟まれた位置の保持位置にある棒鋼を、移動ラックの回転運動により移動溝の一方の溝側面と、その溝側面に対向する固定溝の一方の溝側面とで挟みながら、棒鋼を固定溝の一方の溝側面に沿って転動させつつ上向きに移動させた後、棒鋼を移動溝の一対の溝側面の両方とで支持して固定溝から持ち上げ離間させた後、その固定溝の上方で長手方向に移動させ、しかる後棒鋼を固定溝の他方の溝側面に降ろして、その後他方の溝側面に沿って自重により下向きに移動させ、上記保持位置へと到らしめるようになすことができる(請求項2)。
このようにすることで、棒鋼を効果的に溝側面に沿って転動させつつ、移動ラックの回転運動にも拘らず棒鋼を固定ラックの同じ固定溝内に保持し続けることができる。
【0017】
本発明では、棒鋼回転冷却床を単に上記のアイドリングモードのみを実行するように構成するといったことも可能であるが、請求項3に従って、このアイドリングモードと、棒鋼を1つの固定溝から次の固定溝へとピッチ送りする搬送モードの実行とに切替可能となしておくことが望ましい。
【0018】
具体的には、請求項3では、固定ラックと移動ラックの回転運動の中心位置との長手方向の相対位置を変更する位置変更手段を棒鋼回転冷却床に備えて、それによる上記の相対位置の変更により、溝側面に沿った棒鋼の転動運動を伴って移動ラックの回転運動(アイドリングモードの実行時と同じ回転運動)により、棒鋼を1つの固定溝から長手方向の次の固定溝へとピッチ送りする搬送モードを実行する。
【0019】
この請求項3によれば、搬送モードの実行により棒鋼を転動運動させながらの棒鋼の冷却と搬送とを併せて行うことができる。
またアイドリングモードと搬送モードとの時間配分を適正に配分することで、棒鋼を最終の搬送先まで搬送する間に十分に冷却することができる。しかもそのことを設備を長大化することなく行うことが可能となる。
尚、従来の棒鋼回転冷却床において、偏心カムによる偏心量を変えることで、つまり移動ラックの長手方向の移動距離を調整することで、上記のアイドリングモードの実行と搬送モードの実行とを切り替えるようにするといったことも考えられる。
しかしながらこのような機能を従来の既設の設備に持たせようとすると、偏心カムを含む移動ラックの駆動機構その他の内部構造を改変しなければならず、そのために多額のコスト必要としてしまう。
【0020】
しかしながらこの請求項3では、移動ラックの同一の回転運動を維持しながら、アイドリングモードの実行と搬送モードの実行とを切替可能であるため、移動ラックの回転運動のための駆動機構を何等改変しなくても良く、アイドリングモードの実行と搬送モードの実行及びその切替えの機能を安価なコストで設備に付与することができる。
【0021】
本発明では移動ラックの回転運動に伴って、移動溝が固定溝から棒鋼を受け取ってから戻すまでの長手方向の移動距離を、固定溝の長手方向の溝幅よりも小さくしておくことができる(請求項4)。
このようにすることで、上記のアイドリングモードを良好に実行することができる。
【0022】
更にこの場合において、移動溝が固定溝から棒鋼を受け取ってから戻すまでの長手方向の移動距離を、固定溝の溝底から溝側面の上端までの長手方向距離よりも大としておくことができる(請求項5)。
このようにすることで、移動ラックの回転運動を同一に維持しつつ、アイドリングモードの実行と搬送モードの実行との両方をともに容易に実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の一実施形態の棒鋼回転冷却床の概略全体構成を示した平面図である。
【図2】図1の棒鋼回転冷却床の側面図である。
【図3】図1の移動ラックの回転運動機構の説明図である。
【図4】図2及び図3のリンク機構の作用説明図である。
【図5】図1の固定ラックの位置変更機構の説明図である。
【図6】アイドリングモード及び搬送モードにおける固定ラックと移動ラックとの位置関係を示した図である。
【図7】アイドリングモード実行時の動作説明図である。
【図8】図7に続く動作説明図である。
【図9】アイドリングモード実行時の棒鋼の位置変化を示した図である。
【図10】搬送モード実行時の動作説明図である。
【図11】図10に続く動作説明図である。
【図12】搬送モード実行時の棒鋼の位置変化を示した図である。
【図13】アイドリングモードから搬送モードへの切替えの原理説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
次に本発明の実施形態を図面に基づいて詳しく説明する。
図1は、本実施形態の棒鋼回転冷却床(以下単に冷却床とする)10の概略全体構成(平面構成)を示したもので、この冷却床10は後述する棒鋼15(図6参照)の送り方向、ここでは図中左右方向に直線状に延びる板状の固定ラック12と移動ラック14とをそれぞれ複数有している。
ここで固定ラック12及び移動ラック14は、それぞれ図中左右方向即ち棒鋼の送り方向と直角方向に複数列に配列されている。
この冷却床10では、固定ラック12と移動ラック14とが組を成しており、ここではそれら固定ラック12と移動ラック14との組が図1中上下方向に全体で8組設けられている。
【0025】
16は、図1中矢印方向に供給されて来た棒鋼15をガイド板18と18との間において図中下向きに送る送りローラで、それぞれにモータ20が連結されている。
供給されて来た棒鋼15は、モータ20による送りローラ16の回転駆動により、その先端がストッパ22に当接する位置まで図中下向きに送られる。
【0026】
一対のガイド板18,送りローラ16及びモータ20は全体が昇降可能とされており、そしてそれらが上昇位置から下降することで、一対のガイド板18の間で送りローラ16上に保持されていた棒鋼15が、板状のシュート24(図2参照)の上面の傾斜面に沿って図中右向きに転動し、固定ラック12上に供給される。
【0027】
図2において、26は固定ラック12を支持する支持フレームで、支柱となる縦フレーム28と、図1において上下方向の水平方向に延びる横フレーム30とを有している。
固定ラック12用の支持フレーム26は、図5(B)に示しているように一対のガイド板32を有していて、それらガイド板32と32との間において、固定ラック12を摺動部材34上に摺動可能に保持している。
【0028】
図5(A)に示しているように、この固定ラック12にはブラケット36がその下面から下向きに突出する状態に設けられており、そしてそのブラケット36に対して、支持フレーム26に取り付けられた移動シリンダ38が連結されている。
固定ラック12は、この移動シリンダ38により摺動部材34上を摺動せしめられ、その位置が変更可能とされている。
【0029】
図2において、40は連結フレームで、上記の移動ラック14は、この連結フレーム40によって昇降フレーム42に連結され、この昇降フレーム42と一体に移動ラック14が回転運動させられるようになっている。
【0030】
図1に示しているように、本実施形態において固定ラック12及び移動ラック14は、図中左側のゾーン1と右側のゾーン2とに分かれており、これに対応して図2に示す昇降フレーム42もまたゾーン1とゾーン2とに分かれている。
【0031】
図2に示しているように図中左側のゾーン1の昇降フレーム42の右端部,右側のゾーン2の昇降フレーム42の左端部とのそれぞれには、ブラケット44が下向きに突出する状態で設けられており、そこにサポートローラ46が回転可能に取り付けられている。
【0032】
そしてゾーン1の昇降フレーム42の右端部に取り付けられたサポートローラ46が、偏心カム48の外周面に対して下向きに当接せしめられ、またゾーン2の昇降フレーム42の左端部に取り付けられたサポートローラ46が、上記とは別途の偏心カム52の外周面に対して下向きに当接せしめられている。
ゾーン1の昇降フレーム42は、偏心カム48の回転運動によって回転運動(円運動)させられ、またゾーン2の昇降フレーム42は偏心カム52の回転運動によって回転運動(円運動)させられる。
【0033】
ここで偏心カム48,52は軸方向の異なった位置で且つ中心から偏心した位置で、回転駆動軸50に一体回転状態に取り付けられており、全体が回転駆動軸50の軸心周りに回転運動する。
但し偏心カム48と52とは偏心方向が互いに逆方向となっており、従って偏心カム48が上向きに回転運動するときには、偏心カム52は下向きに回転運動する。
【0034】
上記サポートローラ46は、偏心カム48,52の外周面を図2において左右両側から挟む状態に当接させられており、偏心カム48,52の回転によりゾーン1の昇降フレーム42及びゾーン2の昇降フレーム42のそれぞれが、図中上下及び左右の位置を変化させながら回転運動を行い、その動きをゾーン1の移動ラック14,ゾーン2の移動ラック14へとそれぞれ伝達する。
【0035】
偏心カム52に対しては図4に示すように、ゾーン1側のリンク機構54-1の図中右端のローラ61-1が図中上向きに当接させられており、また他方の偏心カム48に対しては、ゾーン2側のリンク機構54-2の図中左端のローラ61-2が図中上向きに当接させられている。
【0036】
リンク機構54-1は、偏心カム52の回転運動をゾーン1の昇降フレーム42に伝達するためのもので、図2中左右方向に延びる長い棒状のリンク56-1と、この棒状のリンク56-1に対して偏心カム52の側、つまり図中右端側に相対回転可能に連結されたクランク形状のリンク58-1とを有している。
【0037】
リンク58-1は図4にも示しているように軸60周りに回転可能とされており、そしてこのリンク58-1の一端に上記のローラ61-1が設けられている。
棒状のリンク56-1の、偏心カム52とは反対側の図2中左端側には、クランク形状をなす上記とは別のリンク62-1が相対回転可能に連結されている。
リンク62-1は、軸64周りに回転可能とされており、そしてその一端にローラ66-1が設けられていて、このローラ66-1が、ゾーン1の昇降フレーム42の図中左端側の下面に当接させられている。
【0038】
一方ゾーン2側のリンク機構54-2は、偏心カム48の回転運動をゾーン2の昇降フレーム42に伝達するためのもので、左右方向に延びる棒状のリンク56-2と、この棒状のリンク56-2に対して偏心カム48側、つまり図中左端側の一端に相対回転可能に連結されたクランク形状のリンク58-2とを有している。
【0039】
リンク58-2は軸60周りに回転可能とされており、そしてこのリンク58-2の一端に、上記のローラ61-2が設けられている。
リンク56-2の、偏心カム48とは反対側の図2中右端側には、クランク形状をなすリンク62-2が相対回転可能に連結されている。
リンク62-2は軸64周りに回転可能とされており、そしてその一端にローラ66-2が設けられていて、このローラ66-2がゾーン2の昇降フレーム42の図中右端側の下面に当接させられている。
【0040】
これらリンク機構54-1,54-2は次のように作用する。
ゾーン1の昇降フレーム42は、図2中右端側が偏心カム48の上向きの回転運動に伴って上向きに押し上げられる。
このとき、ゾーン2の昇降フレーム42を回転運動させるための別の偏心カム52は、回転駆動軸50の軸心周りに図中下向きに回転運動する。
このように偏心カム52が下向きに回転運動すると、リンク機構54-1におけるローラ61-1が下向きに押し下げられて、クランク形状をなすリンク58-1が軸60周りに右向き(時計回り)に回転運動する。
【0041】
すると棒状をなすリンク56-1が図中右向きに引張られて移動し、またこれに伴って左端側のクランク形状のリンク62-1が軸64周りに左向き(時計回り)に回転運動し、ローラ66-1がゾーン1の昇降フレーム42の図中左端側を押し上げる。
即ち、偏心カム48とローラ66-1とが同期してゾーン1の昇降フレーム42の右端部と左端部とを上向きに上昇させる。
【0042】
一方偏心カム52が上向きに回転運動すると、これに伴ってゾーン2の昇降フレーム42の左端部が上向きに押し上げられる。
このとき偏心カム48は下向きに回転運動し、そしてこの偏心カム48の下向きの回転運動に伴って、ゾーン2側のリンク機構54-2が上記と同様の作用でゾーン2側の昇降フレーム42の右端部をローラ66-2において上向きに押し上げる。
即ち、偏心カム52とローラ66-2とが同期してゾーン2の昇降フレーム42の左端部と右端部とを上向きに上昇させる。
【0043】
尚この実施形態において、上昇位置にあるゾーン1の昇降フレーム42,移動ラック14及びそれらを連結する連結フレーム40等は、その自重を、ゾーン2の昇降フレーム42,移動ラック14,連結フレーム40等に対して押上げ方向の力として作用させ、同様に上昇位置にあるゾーン2の昇降フレーム42,移動ラック14,連結フレーム40等は、その自重を、ゾーン1の昇降フレーム42,移動ラック14,連結フレーム40等に対して押上げ方向の力として作用させる。
従ってこの実施形態では、小さな駆動力でゾーン1とゾーン2との各移動ラック14を、対応する昇降フレーム42等とともに回転運動させることができる。
【0044】
尚、昇降フレーム42の端部のサポートローラ46は、偏心カム48,52の回転運動に伴って、上下方向の移動と図3中左右方向の移動を伴った回転運動を行ってゾーン1,ゾーン2の昇降フレーム42をともに偏心カム48,52と同じ方向に移動させるが、リンク機構54-1,54-2におけるローラ66-1,66-2は昇降フレーム42を上下方向に移動させるのみである。
昇降フレーム42の回転運動に伴う図中左右方向の移動は、昇降フレーム42をローラ66-1,66-2に対して、これを回転させながら左右方向に相対移動させることによって行われる。
そのようにしているのは、後述する棒鋼15からの熱を受けて昇降フレーム42が長手方向に膨張したとき、その膨張をローラ66-1,66-2に対する昇降フレーム42の相対移動によって吸収するためである。
【0045】
図3(A)に示しているように、上記固定ラック12は、ラック上面に、隣接する山部68と68との間の谷部にて形成される固定溝70を後述の棒鋼15の保持溝として有しており、この固定溝70がラック長手方向に沿って図6に示す一定ピッチP(ここではP=170mm)で連続的に多数形成されている。
尚この実施形態ではピッチPは固定溝70における長手方向の溝幅Wと同一である。
【0046】
同様に移動ラック14もまた、図3(B)に示しているようにラック上面に、隣接する山部72と72との間の谷部にて形成される移動溝74を棒鋼15の保持溝として有しており、この移動溝74が、ラック長手方向に沿って固定溝70と同じ一定のピッチPで連続的に多数形成されている。
【0047】
尚この実施形態において、固定ラック12の山部68と移動ラック14の山部72の形状は同形状であり、従って固定溝70と移動溝74の形状も同形状である。
【0048】
この実施形態において、移動ラック14は上記の偏心カム48,52の回転運動によって、図6に示しているように上下に回転運動(円運動)を行う。図中Qは移動ラック14の特定部位、ここでは移動溝74における溝底74aの回転軌跡を、またOは回転中心を示している。尚図6(A)では固定溝70における溝底70aと、移動溝74における溝底74aの回転中心Oとがたまたま一致している。
【0049】
また図中Dは回転軌跡Qの直径、即ち移動ラック14の回転運動の直径(つまり移動溝74の回転直径)を示している。この実施形態においてD=120mmである。
更に15は断面円形の棒鋼を表しており、ここでは棒鋼15の直径dは例えばd=120mmである(長さは12m)。
【0050】
図6(A)は、アイドリングモード実行時の固定ラック12と移動ラック14との長手方向の相対的な位置関係を示している。
一方図6(B)は、搬送モード実行時の固定ラック12と移動ラック14との長手方向の相対的な位置関係を示している。
図示のように搬送モード実行時においては、固定ラック12がアイドリングモード実行時に比べて距離Lだけ位置が変更されており、固定ラック12と移動ラック14との長手方向の相対的な位置関係が、図6(A)に示すアイドリングモード実行時に比べて変化せしめられている。
【0051】
図7及び図8は、図6(A)に示すアイドリングモード実行時の動作を示している。
図7(I)は、棒鋼15が固定ラック12における固定溝70の一対の溝側面70b,70cにて挟まれ保持された状態、即ち棒鋼15が固定溝70による保持位置にある状態を、また移動ラック14が回転運動の下端に位置した状態を示している。
【0052】
移動ラック14は、この状態から上向きに回転運動を開始し、このとき移動溝74の溝底74aは、回転軌跡Qに沿ってその下端から上向きに回転運動開始する。
そして溝底74aが一定量上向きに回転移動したところで、移動溝74における一方の溝側面、即ち図中右側の溝側面74cが棒鋼15に当接するに到る。図7(II)はこのときの状態を表している。
【0053】
この状態から、溝底74aが更に上向きに移動すると、棒鋼15は固定溝70の図中左側の溝側面70bと、移動溝74の右側の溝側面74cとで保持された状態となり、その状態で棒鋼15が固定溝70の図中左側の溝側面70bに沿って図中左向き(半時計方向に転動)転動しながら上向きに押し上げられて行く。図7(III)はこのときの状態を表している。
【0054】
そして溝底74aの更なる上向きの回転運動により、棒鋼15は、図7(IV)に示しているように移動ラック14の移動溝74の一対の溝側面74b,74cにて挟まれ支持された状態となり、以後棒鋼15は、移動ラック14の更なる上向きの回転運動、即ち溝底74aの上向きの回転運動に伴って、固定溝70の一方の溝側面70b、つまり固定溝70から離間して浮き上がり、移動溝74に保持された状態で、移動溝74と一体に回転運動する。
図7(V)は、このようにして棒鋼15が回転運動の上端に持ち来された状態(つまり溝底74aが回転運動の上端に到った状態)を表している。
【0055】
図8は、移動ラック14が回転運動の上端から下降に転じたときの動作を示している。
図8(VI)は、移動ラック14が回転運動の上端からある程度下降したときの状態、つまり溝底74aが回転運動の上端から図中右向きに回転しつつ下降したときの状態を表している。
このとき棒鋼15は、固定溝70の図中右側の溝側面70cに当接し、その後溝底74aが更に下降すると、棒鋼15は、固定溝70における図中右側の溝側面70cと、移動溝74における図中左側の溝側面74bとで挟まれて支持される。
そして溝底74aの更なる下降に伴って、棒鋼15は固定溝70の図中右側の溝側面70cに沿って図中左向きに、即ち反時計方向に転動しながら、固定溝70の溝底70aに向って降りて行く。図8(VII)はこのときの状態を表している。
【0056】
そして移動溝74の溝底74aが更に下降すると、あるところで固定溝70における左右一対の溝側面70b,70cが、棒鋼15に当接するに至り、つまり棒鋼15が固定溝70の左右一対の溝側面70b,70cで挟まれた当初の保持位置に到る。
図8(VIII)はこのときの状態を表している。
【0057】
この状態から溝底74aが更に下降すると、移動溝74の溝側面74bは棒鋼15から下方に離れ、棒鋼15は固定溝70のみにて支持された状態、つまり元の同じ固定溝70内の当初の保持位置に戻って、そこで固定溝70のみにて保持された状態となる。
図8(IX)は、その後溝底74aが回転運動の下端に到ったときの状態を表している。
【0058】
以上の説明から明らかなように、棒鋼15は移動ラック14の一回転の間の一連の動きによって、転動運動を生じつつ固定ラック12の固定溝70から持ち上げられた後、再び元の固定溝70へと戻される。
具体的には、棒鋼15は、移動ラック14の上向きの回転運動により、固定溝70における図中左側の溝側面70bに沿って上向きに転動した後、移動ラック14の移動溝74により固定溝70から持ち上げられて浮き上がり、その後移動ラック14の下向きの回転運動により、今度は固定溝70における図中右側の溝側面70cに降ろされて、以後移動ラック14の更なる下向きの回転運動により溝側面70cを、今度は下向きに転動運動して、最終的に固定溝70の長手方向中心の保持位置へと到り、そこで固定溝70の一対の溝側面70b,70cにて挟まれ、保持された状態となる。
【0059】
図9は、移動ラック14が一回転する間の棒鋼15の位置変化を示している。図中Xは、棒鋼15の中心の移動軌跡を矢印とともに示している。
この図7〜図9に示すアイドリングモードの実行時には、棒鋼15は移動ラック14の回転運動にも拘わらず、隣接する次の固定溝70へとピッチ送りされずに、転動運動しながら同じ固定溝70に保持され続ける。
【0060】
そしてその間、棒鋼15は真直ぐな形状に保持されつつ主として輻射により、またその他に伝熱や対流などによって冷却が進められる。
このアイドリングモード実行時においては、従来の設備のように棒鋼15の冷却時間を稼ぐための設備長さを必要としない。
【0061】
図10〜図12は、図6(B)に示す搬送モード実行時、即ち移動ラック14の回転運動により棒鋼15を固定ラック12の固定溝70から次の固定溝70へとピッチ送りする際の動作を詳しく示している。
図10(I)は、棒鋼15が固定ラック12における固定溝70によって保持位置に保持され、また移動ラック14が回転運動の下端に位置している状態を示している。
【0062】
この状態から移動ラック14全体とともに移動溝74における溝底74aが上向きに回転運動すると、図10(II)に示すようにあるところで移動溝74の図中左右一対の溝側面74b,74cが棒鋼15に当接してこれを保持するに到る。
尚ここでは移動溝74における一対の溝側面74b,74cが棒鋼15に対して同時に当るように位置設定されているため、棒鋼15の保持が固定ラック12の固定溝70から移動ラック14の移動溝74に切り替るまでの過程で、棒鋼15は転動運動を生じない。
【0063】
但し移動ラック14の上向きの回転運動に伴って、移動溝74の図中右側の溝側面74cが先ず棒鋼15に当り、その後続いて左側の溝側面74bが棒鋼15に当るように位置設定しておいた場合、棒鋼15は移動ラック14の移動溝74にて保持されるに到るまで、若干図7に示すのと同じ方向に転動運動を生じ、その後において棒鋼15が移動ラック14の移動溝74にて保持されるに到る。
【0064】
棒鋼15を保持した移動ラック14の保持溝74は、その後更に回転運動し、回転運動上端に到る。同時にこのとき棒鋼15もまた回転運動の上端に到る。図10(III)はこのときの状態を表している。
図10(III)に示す回転運動の上端に到った移動ラック14は、その後下向きの回転運動に方向を転換し、これに伴って棒鋼15を図中右向きに移動させながら下降させて行く。
【0065】
そしてその過程で、図10(IV)に示しているように棒鋼15が、それまで保持されていた固定ラック12の固定溝70に対して1ピッチ先の固定溝70、即ち長手方向に隣接した次の固定溝70の図中左側の溝側面70bに当接するに到り、図11(V)に示しているように更に移動ラック14が下向きに回転運動すると、ここにおいて棒鋼15が1ピッチ先の固定溝70の図中左側の溝側面70bと、移動溝74の図中右側の溝側面74cとで挟まれ、支持されるに到る。
【0066】
その後移動ラック14が更に下降運動すると、棒鋼15は溝側面70bに沿って図中右向きに転動しながら固定溝70の溝底70aに向って下降し、図11(VI)に示すように最終的に1ピッチ先の固定溝70の一対の溝側面70bと70cとで挟まれる保持位置に到ってそこに保持される。
移動ラック14は、更にその後に下向きに回転運動し、図11(VII)に示す当初の位置、即ち回転運動の下端に到る。
【0067】
図12は、この搬送モード実行時における移動ラック14の一回転の間の棒鋼15の移動の様子を表している。図中Yは棒鋼15の中心の移動軌跡を矢印とともに表している。
【0068】
以上のように本実施形態では、移動ラック14の回転運動を同一に維持しながら、棒鋼15を移動させないアイドリングモードの実行と、棒鋼15を固定溝70から次の固定溝70へとピッチ送りする搬送モードの実行とを切り替えて行うことが可能である。
図13はこれを模式的に表している。但し図13は原理を示したもので、先の図6に示したものとは同一ではない。
【0069】
同図中Yは、移動ラック14の移動溝74が棒鋼15を固定ラック12から持ち上げ離隔させる位置を表しており、またYは一旦持ち上げられた棒鋼15が図中右方向に移動させられた後、続く下降運動によって固定溝70における溝側面70cに降ろされ、移動溝74による保持が解かれるときの位置を表している。
この図から明らかなように、移動溝74が固定溝70から棒鋼15を受け取ってから戻すまでの長手方向の移動距離を、固定溝70の長手方向の溝幅W即ちピッチPよりも小さくしておくことで、アイドリングモードと搬送モードの実行及び切替えを行うことが可能である。
【0070】
詳しくは、図13(イ)に示すように移動ラック14の移動溝74が、固定ラック12の固定溝70の溝幅Wの範囲内で棒鋼15を受け取って、再び溝幅Wの範囲内で棒鋼15を戻すことで、つまり固定溝70の図中左側の山部68の頂点の右内側で棒鋼15を受け取って、その後図中右側の山部68の頂点の左内側に戻すことによって、棒鋼15は移動ラック14の回転運動に拘わらず、ピッチ送りされないで同じ固定溝70に保持され続ける。即ちアイドリングモードの運転が行われる。
【0071】
一方図13(ロ)に示しているように、図13(イ)に示す状態から固定ラック12を移動させ(ここでは距離Lだけ左向きに移動)、そのことによって移動ラック14の回転運動に伴って棒鋼15を固定ラック12側に戻す位置Yを、図中右側の山部68の頂点を超えた右側位置とすることによって、移動ラック14の1回転の回転運動により、棒鋼15を図中左側の固定溝70から1ピッチ先の図中右側の隣の固定溝70へと移し変えること、即ちピッチ送りすることができる。つまり搬送モードの運転を行うことができる。
この搬送モードの下では、移動ラック14を1回転させる度に棒鋼15は固定溝70から70へと順送りされて行く。
【0072】
本実施形態において、図13のYからYまでの長手方向距離を、固定溝70の溝幅Wの半分より大としておくことで、図13(ロ)に示す搬送モードの実行を可能ならしめることができる。
具体的には、固定溝70における溝底70aの上方に保持されている棒鋼15を、その位置で移動溝74で受け取り、その後これを溝側面70cの上端、つまり山部68の頂点を超える位置まで移動させ得れば、搬送モードを実行可能である。
【0073】
本実施形態の冷却床10においては、上記のアイドリングモードの実行と搬送モードの実行とを、移動シリンダ38による固定ラック12の位置の変更により切り替えることで、またアイドリングモードの実行の時間と搬送モードの実行の時間との時間配分を適宜設定することで、太い棒鋼15であっても搬送開始点から搬送終了点まで移動させる間に、1000℃近くある棒鋼の温度を200〜300℃程度の低温まで十分に冷却することができ、且つ同時に目的とする位置まで搬送を行うことができる。
【0074】
加えてこの実施形態では、アイドリングモードの実行の時間中、棒鋼15を固定ラック12の同じ固定溝70に保持しながら冷却することができるため、太い棒鋼を高温から低温まで冷却させるために著しく長い距離に亘って棒鋼15を搬送しなくても良く、冷却床10の設備長さを短く抑えることができる。
【0075】
以上本発明の実施形態を詳述したが、これはあくまで一例示である。
例えば上記実施形態では固定ラック12の位置を長手方向に変更することでアイドリングモードから搬送モードへの切替えを行うようになしているが、移動ラック14の位置(静止位置、例えば回転中心の位置)を長手方向に変更することで搬送モードへの切替えをなすようにすることも可能である。
また上記例示した固定ラック12,移動ラック14のそれぞれの溝形状はあくまで一例であり、本発明においてはそれぞれの溝形状を上例以外の他の様々な形状となすことが可能である。
更に上記した棒鋼15の太さはあくまで一例示であり、本発明においてはこれよりも更に太い棒鋼、例えば310mm程度の太い棒鋼の冷却及び搬送に際しても適用可能である等、本発明はその趣旨を逸脱しない範囲において種々変更を加えた形態で構成可能である。
【符号の説明】
【0076】
10 棒鋼回転冷却床
12 固定ラック
14 移動ラック
15 棒鋼
38 移動シリンダ
68 山部
70 固定溝
70b,70c,74b,74c 溝側面
74 移動溝

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)隣接する山部と山部との間の谷部にて形成される溝を断面円形の棒鋼の保持溝且つ固定溝としてラックの上面に長手方向に沿って複数有する固定ラックと、(b)前記溝を前記棒鋼の保持溝且つ移動溝としてラックの上面に長手方向に沿って複数有し、上下方向に回転運動を行う移動ラックと、を備え、前記固定溝において前記固定ラックに保持された前記棒鋼を前記移動ラックの回転運動により前記移動溝で受け取って持ち上げ、前記長手方向に移動させた後、更に前記固定ラックへと戻す棒鋼回転冷却床であって、
前記移動ラックが、前記固定溝の溝側面に沿った前記棒鋼の転動運動を伴って、回転運動により該棒鋼を前記移動溝で該固定溝から受け取って再び元の同じ固定溝へと戻す動作を繰り返すアイドリングモードを実行するものとなしてあることを特徴とする棒鋼回転冷却床。
【請求項2】
請求項1において、前記アイドリングモードの下では、前記固定溝の一対の溝側面にて挟まれた位置の保持位置にある棒鋼を、前記移動ラックの回転運動により前記移動溝の一方の溝側面と、該一方の溝側面に対向する前記固定溝の一方の溝側面とで挟みながら該棒鋼を該固定溝の該一方の溝側面に沿って転動させつつ上向きに移動させた後、該棒鋼を前記移動溝の一対の溝側面の両方で支持して前記固定溝から持ち上げ離間させた後、該固定溝の上方で長手方向に移動させ、しかる後該棒鋼を該固定溝の他方の溝側面に降ろして、その後該他方の溝側面に沿って自重により下向きに移動させ、前記保持位置へと到らしめる動作を行うものとなしてあることを特徴とする棒鋼回転冷却床。
【請求項3】
請求項1,2の何れかにおいて、前記固定ラックと、前記移動ラックの回転運動の中心位置との長手方向の相対位置を変更する位置変更手段が備えてあり、
該相対位置の変更により、前記移動ラックが、前記固定溝の溝側面に沿った前記棒鋼の転動運動を伴って、前記アイドリングモードの実行時と同じ回転運動により、該棒鋼を前記移動溝で該固定溝から受け取って、長手方向に隣接した次の固定溝へとピッチ送りする動作を繰り返す搬送モードの実行に切替可能となしてあることを特徴とする棒鋼回転冷却床。
【請求項4】
請求項1〜3の何れかにおいて、前記移動ラックの回転運動に伴って前記移動溝が前記固定溝から前記棒鋼を受け取ってから前記固定ラックに戻すまでの長手方向の移動距離が、前記固定溝の長手方向の溝幅よりも小さいことを特徴とする棒鋼回転冷却床。
【請求項5】
請求項4において、前記移動溝が前記固定溝から前記棒鋼を受け取ってから前記固定ラックに戻すまでの長手方向の移動距離が、前記固定溝の溝底から該固定溝の溝側面の上端までの長手方向距離よりも大であることを特徴とする棒鋼回転冷却床。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate


【公開番号】特開2012−40582(P2012−40582A)
【公開日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−182573(P2010−182573)
【出願日】平成22年8月17日(2010.8.17)
【出願人】(000003713)大同特殊鋼株式会社 (916)