説明

棚からの物品落下防止装置

【課題】本震前に物品保護網を棚前面に張り物品を確実に保持し、この作動は停電時でも確実で、また一旦張った保護網の緩みを防止でき、且つ物品収納棚に後付けで装着し得る棚からの物品の落下を防止する。
【解決手段】棚板支持部材2で棚板3を支持する物品収納棚1の、棚板3前部に物品保護網4の一端を固定し、他端を筒状にして支持軸5を通し、その両端を支持ブッシュ6を介してワイヤ7に連結し、ワイヤを非作動時には棚1上に置く錘8に連結し、錘を前震時作動するソレノイド9で落下させて、保護網4を棚板3正面に位置するようにしたので、本震前に保護網を棚の前面に張れる、これは停電時でも装置の作動が確実で、且つ保護網を幅方向に隙間なく下方から上方へ張って物品を確実に保持でき、一旦張った保護網を緩まぬよう保持でき、収納棚には後付けで簡単に装着し得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物品収納棚の棚板上に載置された物品の落下を防止する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
四本柱等の棚板支持部材により複数の棚板を支持した物品収納棚は多用されており、この収納棚自体の大地震に対する転倒防止策は種々採られているが、転倒に至らない場合でも、概して背の高いこれらの収納棚に載置された物品が地震の激しい揺れによって落下することはしばしば経験されており、これが対策も案出されている。
【0003】
その一例として、特開平11−196962号公報、同11−196363号公報にそれぞれ示されたものがあり、前者は棚板の前面近くに収納でき、棚板前面に張設可能なネットと、該ネットを張設する付勢手段と、ネットの一部を棚板の端部近傍に保持するガイドと、前記付勢手段を所定箇所に保持する係止装置と、振動を感知して前記係止装置と付勢手段の係止を解除する感震装置とを備える物品落下防止装置である。
【0004】
また、後者は物品棚の前部左右端に、水平な収納位置から垂直な立設位置まで回動自在に軸着され、かつ立設方向に弾性付勢された回動部材と、該回動部材に両端部が固着され、回動部材が立設位置にあるときに左右の回動部材間に張設されるネットと、回動部材を収納位置に保持する係止装置と、振動を感知して係止装置と回動部材との係合を解除する感震装置とを備える物品落下防止装置である。
【0005】
しかしながら、上記前、後者とも感震装置、ソレノイドがONのときのみピストンが作動して必要な動作をするように構成されているため、停電時には作動不能である。また、補助的に振り子式の感震装置も設けられているが、物品落下防止装置の正確な作動に期待がもてない。更に、前、後者における感震装置は地震の揺れの種類を識別できないので、誤動作を起こすおそれがある。
【0006】
上記前者ではネットを上方から下方に移動して張設するので、閉じ切るまでの間ネットの下方から物品が飛び出したり、挟まってしまうおそれがある。また、後者では、回動部材の完全立設までにネットのたるみが生じ、ここから物品が飛び出す可能性が高い。
【特許文献1】特開平11−196962号公報
【特許文献2】特開平11−196963号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、必ず本震前に物品保護網を棚の前面に張ることができ、停電時でも装置の作動を確実に行い得、且つ物品保護網を下方から上方へ張って物品の確実な保持ができ、また、一旦張った保護網を緩まないように保持でき、さらに設置後の物品収納棚に後付けで簡単に装着し得る棚からの物品の落下を防止する装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するための本発明は、棚板支持部材により複数の棚板を支持する物品収納棚における、棚板前部に物品保護網(ネット)の一端側を固定する一方、他端側を筒状に形成して支持軸を通し、該軸の両端を支持ブッシュを介してワイヤに連結せしめ、該ワイヤを非作動時には前記棚上に置かれる錘に連結するとともに、該錘を前震時作動するソレノイドにより落下せしめて、物品保護網を棚板正面に位置せしめるよう構成したことを特徴とする棚からの物品の落下を防止する装置である。
【発明の効果】
【0009】
本発明の棚からの物品の落下を防止する装置は、棚板支持部材により複数の棚板を支持する物品収納棚における、棚板前部に物品保護網(ネット)の一端側を固定する一方、他端側を筒状に形成して支持軸を通し、該軸の両端を支持ブッシュを介してワイヤに連結せしめ、該ワイヤを非作動時には前記棚上に置かれる錘に連結するとともに、該錘を前震時作動するソレノイドにより落下せしめて、物品保護網を棚板正面に位置せしめるよう構成したことを特徴とするので、本震前に物品保護網を棚の前面に張ることができ、停電時でも装置の作動を確実に行い得、且つ物品保護網を幅方向に隙間なく下方から上方へ張って物品の確実な保持ができ、また、一旦張った保護網を緩まないように保持でき、さらに設置後の物品収納棚に後付けで簡単に装着し得る効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の好ましい実施の形態を図1乃至図5により説明すると、本発明物品の落下を防止する装置は、棚板支持部材2により複数の棚板3を支持する物品収納棚1における、棚板3前部に網受け3’を設けて、ここに物品保護網4の一端側4aを固定する一方、他端側4bを筒状に形成して支持軸5を通し、該軸5の両端を支持ブッシュ6を介してワイヤ7に連結せしめ、該ワイヤ7を非作動時には前記棚上に置かれる錘8に連結するとともに、該錘8を前震時作動するソレノイド9により落下せしめて、物品保護網4を棚板3正面に位置せしめるよう構成したものである。
【実施例1】
【0011】
図に示す実施例について更に詳細に説明すると、1は物品収納棚で、長方形に立設した4本のアングル材201を左右側板202、裏板203及び上板204及び下板205により連結して棚板支持部材2を構成するとともに、主としてアングル材201に設けたス
トッパ(図示せず)により複数の棚板3(301、302、303、304)を取付け
取外し可能に設置したものである。
【0012】
4は物品保護網(ネット)で、各棚板301、302、303、304毎に1枚を用意するが、その幅は前記物品収納棚1の幅方向の内法よりやや短くするとともに、長さ方向の一端4aは例えば図2に示すように、棚板301、302の前部に設けた網受け3’−1、3’−2に固定する一方、保護網の他端4bは筒状に形成するのである。
【0013】
前記物品保護網4の他端筒状部4bには、ほぼ前記物品収納棚1の幅に等しい長さの支持軸5を挿通し、該軸5の前記物品保護網4より突出させてその両端に支持ブッシュ6を取り付ける。
【0014】
上記支持ブッシュ6は、前記支持軸5を左右で回転自在に支持するが、その外側の上下に次のようにワイヤ7を取り付ける。即ち、図示の例の場合、最下部の前記棚304に属する物品保護網4の支持軸5に取り付けたブッシュ6の上側と第3段目の前記棚303に属する物品保護網4の支持軸5に取り付けたブッシュ6の下側、この第3段目の前記棚303に属する物品保護網4の支持軸5に取り付けたブッシュ6の上側と第2段目の前記棚302に属する物品保護網4の支持軸5に取り付けたブッシュ6の下側、この第2段目の前記棚302に属する物品保護網4の支持軸5に取り付けたブッシュ6の上側と第1段目の前記棚301に属する物品保護網4の支持軸5に取り付けたブッシュ6の下側とを順次連結し、更にこの第1段目の前記棚301に属する物品保護網4の支持軸5に取り付けたブッシュ6の上側から前記棚301上のガイドパイプ10を通してワイヤ7を物品収納棚1の裏面に垂下させ、錘8に連結するのである。
【0015】
そして、上記ワイヤ7をブッシュ6の上側又は下側に取り付けるに際しては、図4に示すように、ブッシュ6を左右の割り型として上下にワイヤ挟持部6aを形成し、該挟持部6aにてワイヤ7を挟持して、ボルトナット6bにて挟持するようにした。
【0016】
前記錘8は鉄系の例えばパイプとし、後記する作動によって図2に示すように前記各物品保護網4を引き上げつつ落下したとき、前記保護網4の戻りを防止する機構、例えばフック11に引っ掛かるようにする。
【0017】
前記9は前記錘8を落下させるソレノイドで、常時通電してそのロッド9aを引っ込めて置き、通電が断たれたとき内蔵するバネによってピストンロッド9aを突出させるよう構成されており、図4に示すように電気回線の中に常時ON型のP波感知器12と直列に接続されている。
【0018】
本発明の棚からの物品の落下を防止する装置では、平常時は錘8を物品収納棚1の上の前記ソレノイド9のロッド9a前に置き、各段の物品保護網4の他端筒状部4bを図1の状態より図2、図3の位置まで下げ、網受け3’内に保持しておく。
【0019】
上記状態で大地震が発生したときは、図5に示すように、P波感知器12がP波を検出して前記ソレノイド9への電流を遮断するから、ソレノイド9のピストンロッド9aが突出して錘8を落下せしめる。
【0020】
これによってワイヤ7が引かれ、各棚301、……に属する物品保護網4がブッシュ6及び支持軸5を介して急速に引き上げられ、図1のように各棚301、…の前面を覆う。錘8は落下後、前記保護網4の戻りを防止する機構、例えばフック11に引っ掛かるので、前記保護網4による各棚301、…の前面を覆う作用は保たれる。
【0021】
従って、各棚301、…上に置かれた物品は各物品保護網4に遮蔽されて、棚上に保持されることになり、これら物品の落下による二次的事故は未然に防止される。
【0022】
なお、物品保護網4の材質、網目の大きさ等は棚への収容物によって適宜選定する。また、前記保護網4の収納箇所は、物品収納棚の前面下側に設けることも考えられる。更に、錘の落下箇所は物品収納棚の直ぐ後に限らず離れた場所でもよく、要はワイヤを介して物品保護網4を引き出して棚の前面を有効に遮蔽できればよい。
【産業上の利用可能性】
【0023】
本発明棚からの物品の落下を防止する装置は、構造簡単で安価に製作できるので、工場のみでなく、一般倉庫、コンビニエンスストア、一般商店等で広く利用される可能性がある。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明棚からの物品の落下を防止する装置の一例を、作動中乃至作動後について示す全体斜視図である。
【図2】本発明棚からの物品の落下を防止する装置の一例を、作動前について示す半載正面図である。
【図3】本発明棚からの物品の落下を防止する装置の一例を、作動前について示す一部省略縦断面図である。
【図4】本発明棚からの物品の落下を防止する装置における物品保護網の網受け付近の一部省略断面図である。
【図5】本発明棚からの物品の落下を防止する装置におけるP波感知器とソレノイドとの電気結線図である。
【図6】本発明棚からの物品の落下を防止する装置における作動順序を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0025】
1 物品収納棚
2(201〜205) 棚板支持部材
3(301〜304) 棚板
3’ 網受け
4 物品保護網(ネット)
5 支持軸
6 支持ブッシュ
7 ワイヤ
8 錘
9 ソレノイド
10 ガイドパイプ
11 フック(物品保護網の戻り防止機構)
12 P波感知器。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
棚板支持部材により複数の棚板を支持する物品収納棚における、棚板前部に物品保護網(ネット)の一端側を固定する一方、他端側を筒状に形成して支持軸を通し、該軸の両端を支持ブッシュを介してワイヤに連結せしめ、該ワイヤを非作動時には前記棚上に置かれる錘に連結するとともに、該錘を前震時作動するソレノイドにより落下せしめて、物品保護網を棚板正面に位置せしめるよう構成したことを特徴とする棚からの物品落下防止装置。
【請求項2】
棚板支持部材により複数の棚板を支持する物品収納棚における、棚板前部に物品保護網(ネット)の一端側を固定する一方、他端側を筒状に形成して支持軸を通し、該軸の両端を支持ブッシュを介してワイヤに連結せしめ、該ワイヤを物品収納棚上の両端に固定したワイヤガイドに挿通して非作動時には前記棚上に置かれる錘に連結するとともに、該錘を前震時作動するソレノイドにより落下せしめて、物品保護網を棚板正面に位置せしめるよう構成したことを特徴とする棚からの物品落下防止装置。
【請求項3】
前記物品保護網(ネット)の一端側の収納を前記棚板の前部に設けた網受けにより行うことを特徴とする請求項1または請求項2記載の棚からの物品落下防止装置。
【請求項4】
前記ソレノイドはP波感知器により作動することを特徴とする請求項1または請求項2記載の棚からの物品落下防止装置。
【請求項5】
前記ソレノイドは前記感知器のOFF信号により作動することを特徴とする請求項1または請求項2または請求項4記載の棚からの物品落下防止装置。
【請求項6】
前記錘がソレノイドにより落下せしめられ、ワイヤを介して物品保護網を所定位置まで引き上げた際、その位置からの錘の戻りを防止する手段を備えたことを特徴とする請求項1または請求項2または請求項4または請求項5記載の棚からの物品落下防止装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−252462(P2007−252462A)
【公開日】平成19年10月4日(2007.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−78128(P2006−78128)
【出願日】平成18年3月22日(2006.3.22)
【出願人】(390001579)プレス工業株式会社 (173)
【Fターム(参考)】