説明

棚類の掛止金具装置

【課題】壁面に棚類が密着でき、上端部における掛止のみの取付けでも安定性が確保でき、一人の作業により据え付けができる、取付けが容易な棚類の掛止金具を提供する。
【解決手段】弾性変形可能な帯状基板9に一片又は複数片のL字形のフック12を一体に突設し、そのL字形の先端部としての起立片21の内側を傾斜縁23に形成した壁面5側の引掛け金具1と、弾性変形可能な帯板に部分的に屈折して張り出す凸形部28を形成するとともにフックの傾斜縁23に孔上縁で係合して掛かる窓孔29を設けた棚類7側の受け金具3とからなり、引掛け金具1は、フック12を挟む上方と下方の両部に止ビス10等を通す止孔15を設け、また、受け金具3は、凸形部28を挟む上方と下方の両部にビス26等で止めるための止孔30を設ける。引掛け金具1及び受け金具3とが弾性変形を生じ得るように構成し、その弾性変形に伴う弾性により棚類が壁面に密着する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、食器棚や本棚、陳列棚等の棚類を壁面に対して簡単に且つ安定して取り付けるための棚類の掛止金具装置に関する。
【0002】
棚類は一般的に床の上に設置されるが、例えば食器棚等では、台所のスペースや配置等の状況から壁面に張りつけるように掛止して高く設置されることがある。このときには掛止金具が用いられるが、従来の掛止金具は、帯板をL字形に折り曲げ形成したものであった。
【0003】
L字形の掛止金具にはその両片にビスの通し孔が設けられているので、使用するときには、一片を棚類の側面に、他片を壁面にそれぞれビス止めされる。しかし、この取付け方では、L字形の掛止金具は、上面だけでは不足し、左右側面、下面の各面に配置する必要があった。また、手順については、最初に棚類に一片をビス止めして取り付け、その棚類を持ち上げ壁面に押しつけながら他片のビス止を行っていた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような従来のL字形の掛止金具によれば、それが棚類の裏面と面一(または僅かに引っ込んだ状態)にして予め棚類に取り付けておかないと、壁面に密着しなかった。誤って出っ張った状態に取り付けたときには、壁面と棚類との間に隙間が生じるために見苦しく、また、ガタついて棚類の支持に安定性が得られない状態となりやすかった。まして、クロス張りのような壁面にはわずかに凹凸が生じていることが多く、その場合に凹凸にかかわらず均一に密着させることはできなかった。
【0005】
力学的に見た場合、壁面に対して物体を上端部でのみ左右一対で密着して止めてあると、それだけで(下端部を止めてなくとも)取り付けの安定性が確保される(後に図8で説明)。しかし、上記のようなL字形の掛止金具によると、棚類の上端部において取付強度および密着性が確保されないために、前屈みとなり、ガタつくことで不安定であることが多く、安全上から下端部においても掛止金具を使用する手数を要し、また、一人単独での作業が困難であることもあって、作業性が非常に悪かった。
【0006】
この発明は、上記のような実情に鑑みて、壁面に対して棚類が密着できるので、上端部における掛止のみの取付けでも安定性が確保でき、取付けが容易であり手数がかからなく、単独の作業により要領よく据え付けができる棚類の掛止金具を提供することを課題とした。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、この発明は、弾性変形可能な帯状基板に一片又は複数片においてL字形のフックを一体に突設するとともに、そのL字形の先端部としての起立片の内側を傾斜縁に形成した壁面側の引掛け金具と、弾性変形可能な帯板に部分的に屈折して張り出す張出面を形成するとともにその張出面にフックの傾斜縁に上孔縁で係合して掛かる窓孔を設けた棚類側の受け金具とからなり、引掛け金具は、フックを挟む上方と下方の両部に止ビス等を通す止孔を設けてあり、また、受け金具は、張出面を挟む上方と下方の両部にビス等の止具で止めるための止孔を設けてあって、引掛け金具及び受け金具とが、フックの傾斜縁と窓孔の上孔縁との係合に伴う倍力の引き合いにより止具間において互いに反る弾性変形を生じ得るように構成し、その弾性変形に伴う弾性により棚類が壁面に密着し得ることを特徴とする棚類の掛止金具装置を提供する。
【0008】
棚類の掛止金具装置を上記のように構成したから、壁面に棚類を掛止するには、まず、受け金具を棚類の上端部に有する左右一対の凹所に収めてビス止めして取り付ける一方、それに対応して壁面に引掛け金具をビス止めしてから、棚類を持ち上げながら引掛け金具のフックに受け金具の窓孔を引っ掛ける。そうすると、フックの傾斜縁に沿って窓孔の上孔縁が下降することにより、テーパーの倍力により受け金具が引掛け金具に引きつけられ、それが強力であるので微小に弾性変形を伴って弾力によっても棚類が壁面に密着する。そして、その上端部の掛止部分を支点として、棚類の荷重のモメントが働くために下端部でも壁面に圧接して密着する。
【発明の効果】
【0009】
以上説明したように、この発明によれば、棚類の上端部で壁面に金具を引っ掛けるだけで、壁面に対して棚類が言わば全面的に密着し、上端部における掛止のみの取付けでもガタつくこともなく堅固に保持され、安定性が確保でき、また、取付けが容易であり手数がかからなく、棚類を持ち上げる操作による引っ掛け作業となるため、一人単独の作業で要領よく据え付けができるという優れた効果がある。
【0010】
また、請求項2及び3によれば、壁面がビスの効かない石膏ボード壁等であっても安定して且つ強力に引掛け金具を止めることができ、ピンを差すことでその作業性も良好である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】この発明の棚類の掛止金具装置を示す分解斜視図である。
【図2】同掛止金具の使用状態を示す断面図である。
【図3】他の実施例を示す引掛け金具の斜視図である。
【図4】他の実施例を示す差ピンピースの斜視図である。
【図5】同差ピンピースの正面図である。
【図6】同差ピンピースの使用状態を示す断面図である。
【図7】この発明に係る凹所としての縦溝を説明するための棚類の裏面を示す説明図である。
【図8】棚類が壁面に密着する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
この発明の棚類の掛止金具装置は、掛止金具Pが壁面5に固着する引掛け金具1と棚類7に固着する受け金具3とからなる。そのうち、受け金具3を納める凹所としては縦溝8,8が考えられるが、これに限定されるものではなく、また、縦溝8,8は、側板31の端面に形成したが、押出形材で形成することもできる。
【0013】
金具の弾性変形を得るには、材料として金属又はプラスチック等を使用する。また、弾性変形の強弱は、幅や厚みを調整する、盗み孔29や切欠部13を設ける等の調整の仕方を取ることができる。
【実施例1】
【0014】
図1および図2は一実施例を示したもので、その棚類の掛止金具Pは、壁面5に固定される引掛け金具1と、棚類7に取り付けられる受け金具3とからなり、それぞれ金属に帯状にプレス加工を施すことにより形成される。この棚類の掛止金具Pは、棚類7の上端部においてのみ使用される。そのため、棚類7には受け金具3,3が納まる縦溝8,8が設けられる(図7,図8参照)。
【0015】
引掛け金具1は、壁面5に密着する帯状基板9に上下一対のフック12,12を突設したもので、フック12,12を幅中央に切り起こしにより形成するために、帯状基板9には起こし側に切欠部13,13が設けられる。フック12,12およびその切り起こし切欠部13,13は、それぞれ両端から距離をおいて形成される。
【0016】
帯状基板9には、上端部と、両フック12,12の間とに、上下に等間隔に止ビス10、釘、ピン等を通す3個の大の止孔15,15,15が設けられ、これが最も大きい孔であるが,その他に補助的な中孔17および小孔19が配列される(図1参照)。なお、この配列は様々となる。
【0017】
フック12,12は、上向き先端部としての起立片21が偏った楔形であって、その内側に帯状基板9との間が徐々に狭くなるよう傾斜縁23を有し、下端に受け金具3が厚みで嵌まる最小間隔を有する。
【0018】
次に、受け金具3は、棚類7の両縦溝8,8に納めて固定することにより、引掛け金具1に引っ掛けるもので、金属の帯板にプレス加工を施して、縦溝8,8の底に定着する底受部25を中央部に段落で屈折形成し、両端には、同じ深さの落ち込みによりL字形に屈折した端底受け27,27が形成される。また、底受部25の両端部と端底受け27,27とにビス26等の止具を通す止孔30,30,・・が設けられる。受け金具3にはさらに、中央の底受部25と両端の端底受け27,27との間に生じている両凸形部28,28に、フック12,12に掛ける窓孔29,29が広く矩形に形成される。これによっても弾性変形しやすくなっている。
【0019】
棚類7は、この場合食器棚であって、左右側板31,31と上下板33,33とにより箱型の枠組みがなされ、この枠組みが壁面5に密着するように、これに奥板40がやゝ引っ込んで嵌着される。なお、縦溝8,8を側板31,31の上端部においてのみ形成しても良い。
【0020】
図2は、棚類7を壁面5に取り付けた状態を示したもので、引掛け金具1の上下フック12,12に受け金具3の上下窓孔29,29がその上縁で引っ掛かり、フック12,12の傾斜縁23,23に係合して壁面5へ向かう引き付の倍力が生じ、棚類7の両側板31,31が壁面5に密着している。また、倍力による引き合いにより、掛止金具Pには、引掛け金具1の止具間Lと受け金具3の止具間Mとに、ミクロに出っ張る弾性変形が生じている。
【0021】
この引きつけによる取付けがあると(図8参照)、壁面5に対する棚類7の摩擦が大きくなることでも下降する荷重に対する支持力が生じる。また、上端部のみの支持によれば、取付部分Pを支点とする荷重が壁面5に下端部でも密着するモメントとして働くので(矢印参照)、下端部において支持金具を用いる必要は全くなく、用いると支点が下端に変じて却って逆効果となる。
【実施例2】
【0022】
図3は、壁面5に固定する手段として止ビス10の代わりに差ピンピース11を用いたものである。引掛け金具1には、上端部と中間部とにそれぞれ3個の大止孔15,15,15が配列されているので、3個の止孔15,15,15について対となる押え14として形成した。また、これには裏面に止孔15,15,15に嵌まる嵌合部32,32,32が設けられる。
【0023】
押え14は、上下に長い板状であるとともに上面に両端部と中央部に隆起面を設け、裏面のほゞ中央に主ピン34が一体に突設され、表面の各隆起面において上向き傾斜となる部分に左右一対ずつ差ピン35,35の通し孔37,37が設けられる。各一対の差ピン35,35は、押え14の内部で交差して上から斜めに壁面5に差し付けられるように、内部で交差して嵌合部32,32,32の先端から通し孔37,37の出口が開口している。なお、主ピン34は直角に押え14から突出し、小孔19に通して壁面5に差しつけられる。
【0024】
このように、両差ピン35,35が抜けがたく交差しているが、さらに壁面5に差し込まれると荷重に耐えやすく下向きに傾斜しいる。この差ピン35,35に傾斜があるために、棚類7の荷重が差ピン35,35を掛止方向に向かわせている。これらの差ピン35,35及び通し孔37,37の形態については、次の類例実施例と同じである。
【実施例3】
【0025】
図4,図5,図6は、次の類例実施例として他の差ピンピース11を示したもので、押え14が単独の頭部形であって、その裏面に止孔15に対する嵌合部32が設けられ、その部分に主ピン34が突出し左右一対の差ピン35,35の通し孔37,37が形成される。主ピン34が嵌合部32から突出して大きな止孔15から通される点が実施例2の場合と異なっている。
【符号の説明】
【0026】
P 棚類の掛止金具
1 引掛け金具
3 受け金具
7 棚類
8 凹所としての縦溝
9 帯状基板
10 止具としての止ビス
11 止具としての差ピンピース
12 フック
14 押え
15 止孔
19 小孔
21 起立片
23 傾斜縁
26 止具としての止ビス
28 凸形部
29 窓孔
30 止孔
32 嵌合部
34 主ピン
35 差ピン
37 通し孔
L 引掛け金具の止具間
M 受け金具の止具間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
弾性変形可能な帯状基板に一片又は複数片においてL字形のフックを一体に突設するとともに、そのL字形の先端部としての起立片の内側を傾斜縁に形成した壁面側の引掛け金具と、弾性変形可能な帯板に部分的に屈折して張り出す張出面を形成するとともにその張出面にフックの傾斜縁に上孔縁で係合して掛かる窓孔を設けた棚類側の受け金具とからなり、引掛け金具は、フックを挟む上方と下方の両部に止ビス等を通す止孔を設けてあり、また、受け金具は、張出面を挟む上方と下方の両部にビス等の止具で止めるための止孔を設けてあって、引掛け金具及び受け金具とが、フックの傾斜縁と窓孔の上孔縁との係合に伴う倍力の引き合いにより止具間において互いに反る弾性変形を生じ得るように構成し、その弾性変形に伴う弾性により棚類が壁面に密着し得ることを特徴とする棚類の掛止金具装置。
【請求項2】
止孔で止める止具は、主ピン付きの押えの裏面に止孔との嵌合部が突設された差ピンピースであって、さらに押えには、主ピンを突設するとともに、別途差ピンが少なくとも左右一対において傾斜し且つ交差して嵌合部から壁面に差し込まれるよう、その通し孔を設けたことを特徴とする請求項1記載の棚類の掛止金具装置。
【請求項3】
引掛け金具には小孔が止孔に隣接して設けられ、差ピンピースは、押えが複数の止孔にわたる上下長に形成され、主ピンが小孔に通すように突設され、また、各止孔に応じてその嵌合部が形成され、各嵌合部ごとに一対の差ピンピースの通し孔が設けられていることを特徴とする請求項2記載の棚類の掛止金具装置。







【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−161540(P2012−161540A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−25586(P2011−25586)
【出願日】平成23年2月9日(2011.2.9)
【出願人】(391045336)オリジン工業株式会社 (8)
【Fターム(参考)】