説明

椅子

【課題】 アームレストの側板の間の距離が広がることを抑制することができる椅子を提供する。
【解決手段】 シャワー用折畳み椅子は、前脚4及び後脚と、該前脚4及び後脚に支持された座部と、該前脚4の取付部4Cに取り付けられたアームレスト3とを備える。該アームレスト3は、対向する一対の側板32,32で該取付部4Cを挟むようにして回動自在に取り付けられる。さらに、側板32の段部とストッパーピン38が互いに当接することにより、該アームレスト3は略水平所定で位置決め支持されるようになっている。加えて、該一対の側板32,32の間に架設材39が取り付けられ、該架設材39が各側板32,32にそれぞれ固定されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、浴室などで使用されるアームレストを有する椅子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、上記のようなアームレストを有する椅子として、例えば特許文献1,特許文献2に示すものが挙げられる。この従来の椅子において、アームレスト(肘掛け)は、一対の基端部(内側板)の間に脚を挟むようにして、ピンを用いて該脚に回動自在に取り付けられている。また、該脚に取り付けられたストッパーピンにアームレスト(肘掛け)に設けられた段部を当接させることにより、該アームレスト(肘掛け)を水平状態に保持できるようになっている。
【0003】
【特許文献1】特開2004−261328号公報
【特許文献1】特開2005−87584号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、上記従来の椅子にあっては、アームレスト(肘掛け)の一対の基端部(内側板)の間の距離が広がってしまうおそれがあり、このような場合にはストッパーピンに段部が当接しづらくなって、該アームレスト(肘掛け)を水平状態に保持できなくなる可能性があるという問題があった。
本発明は、このような従来技術に存在する問題点に着目してなされたものである。その目的とするところは、アームレストの側板の間の距離が広がることを抑制することができる椅子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の目的を達成するために、請求項1に記載の椅子の発明は、脚部と、該脚部に支持された座部と、該脚部又は該座部の所定位置に設けられた取付部と、該取付部に取り付けられたアームレストとを備える椅子であって、該アームレストの基部には対向する一対の側板が設けられており、該一対の側板で該取付部を挟むようにして該一対の側板が該取付部に回動自在に取り付けられることにより、該アームレストは該脚部又は該座部に対して回動自在とされており、さらに、該取付部及び該側板にはそれぞれストッパが設けられており、該アームレストを回動させる際に該取付部及び該側板の各ストッパが互いに当接することにより、該アームレストは所定の回動角度で位置決め可能とされているとともに、該一対の側板の間に架設材が取り付けられており、該架設材が各側板にそれぞれ固定されていることを要旨とする。
上記構成によれば、アームレストは、一対の側板を取付部に回動自在に取り付けたことにより、使用していない状態で邪魔にならないように跳ね上げる等することができる。また、該取付部及び該側板にそれぞれストッパを設けたことにより、使用する状態で該アームレストを所定位置に保持することができる。そして、該アームレストにおいては、該一対の側板の間に架設材が取り付けられ、かつ該架設材が各側板にそれぞれ固定されているため、該架設材によって該一対の側板の間の距離が一定に維持される。その結果、アームレストの側板の間の距離が広がることを抑制することができる。
【0006】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の椅子の発明において、該脚部は、第一脚と、該第一脚に回動自在に取り付けられた第二脚とからなり、該第二脚には座部取付具が取り付けられており、該座部取付具には該座部の基端縁部が回動自在に取り付けられているとともに、該第一脚には座部支持具が取り付けられており、使用状態では、該第一脚と該第二脚とが開かれ、かつ該座部が水平状態とされて該座部支持部材によって支持され、折畳み状態では、該第一脚と該第二脚とが閉じられ、かつ該座部が跳ね上げ状態とされることを要旨とする。
上記構成によれば、椅子全体をコンパクトな折畳み状態とすることができ、利便性の向上を図ることができる。
【0007】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は請求項2に記載の椅子の発明において、該架設材を覆うカバー部材を設けたことを要旨とする。
上記構成によれば、該架設材の近傍等に指等が入り込んでしまうことを防止することができ、指詰め等に対する安全対策を図ることができ、加えて、該架設材を外部から見えづらくすることで、見栄えを向上させることができる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、アームレストの側板の間の距離が広がることを抑制することにより、アームレストを所定の回動角度で好適に位置決めすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の椅子を浴室で使用するシャワー用折り畳み椅子に具体化した一実施形態について説明する。
図1及び図2に示すように、シャワー用折畳み椅子1にあっては、第一脚である左右の前脚4,4の上部に三角ブラケット41,41を介して第二脚である後脚5,5の上端が枢着されており、かくして前脚4,4と後脚5,5とは開閉により折畳み可能に構成されている。
該左右の前脚4,4は、上端において上辺部4Aを介して一体的に連結されており、左右の前脚4,4と上辺部4Aとでコの字形を形成している。該上辺部4Aの前側には、背もたれ2が取付けられている。また、前脚4,4の中間部には、補強棒4Bが差渡されており、該左右の後脚5,5の中間部にも、補強棒5Bが差渡されている。
【0010】
該後脚5,5の上部からは、前方に向かって座部取付具である三角形状の取付ブラケット51,51が差出されている。該取付ブラケット51,51の頂部間には、座部取付具であるである枢軸61が差渡されている。一方、該左右の前脚4,4の中間部と該左右の後脚5,5の中間部との間には、座部6が配置されており、この座部6の下面で基端部(図1中で奥側の端部)には軸受け(図示略)が設けられている。該枢軸61は、該軸受けに嵌着され、かくして該座部6は該枢軸61を中心として上方に跳ね上げ回動可能に後脚5,5間に取り付けられている。
【0011】
該前脚4,4の中間部からは、前方に向かって座部支持具である三角形状の棒受ブラケット42,42が差出されている。該棒受ブラケット42,42の頂部間には、座部支持具である支持棒62が差渡されている。そして、該座部6の下面で略中央部には、該座部6を水平に使用する状態(以下、「水平使用状態」と云う)で該支持棒62を把持するよう該支持棒62に係合されるばねクリップ(図示略)が取り付けられている。
該座部6の下面と該前脚4との間には、水平使用状態における該前脚4,4と該後脚5,5との開度を規制するため、左右一対のリンク64,64が差渡されている。すなわち、該リンク64,64の一端は、前脚4,4の棒受ブラケット42,42に支持棒62と共軸的に枢着されており、また該リンク64,64の他端は、該座部6の下面で基端部に設けられた軸受けに枢着されている。
【0012】
該前脚4,4及び該後脚5,5の下端部には、摺動脚部7,7がそれぞれ外挿されている。該摺動脚部7,7には、複数個のピン孔71,71が上下に列設されており、また該ピン孔71内には、スプリング(図示せず)によって内側から付勢された位置決めピン72が挿入されている。かくして該位置決めピン72を指で押し込み、該摺動脚部7を上下摺動させて所定長さに調整した状態で、該ピン孔71内に該位置決めピン72を係合して固定することにより、該前脚4及び該後脚5は、長さ調節可能とされている。したがって、該前脚4,4と該後脚5,5は、それぞれ長さ調節可能に構成されているため、使用者の体型に合わせ、該座部6の上面である座面の高さを調節することが可能となっている。
各摺動脚部7の下端部には、ゴム脚8がそれぞれ挿着されている。該ゴム脚8は、水平使用状態でその底面が水平になるように設定されており、該シャワー用折畳み椅子1が滑るのを防止している。また、該ゴム脚8の中央部には、水抜き孔(図示略)が設けられており、該ゴム脚8内に水が溜まるのを防止している。
【0013】
該左右の前脚4,4の上部を取付部4Cとして、該取付部4Cにはアームレスト3,3の基端部が枢軸33を介してそれぞれ上方へ跳ね上げ可能に取り付けられている。
図3に示すように、該アームレスト3は、本体31と、該本体31の内側に取り付けられた左右一対の側板32,32とを備えている。該本体31の基端側には、前脚4を通す切欠き34が形成されている。更に該本体31の先端部上面には、肘掛けパッド39が取り付けられている。
【0014】
該一対の側板32,32には、先端部において左右に差渡される天板32Aが一体的に形成されている。該一対の側板32,32は、該天板32Aを介してビス等により、該本体31の内側に取り付けられ、固定されている。また該本体31の内側に取り付けられた該一対の側板32,32は、前脚4の取付部4Cを挟むようにして配置されている。
該前脚4の取付部4Cにおいて、上部には軸受け36が貫設されており、下部にはストッパであるストッパーピン38が該前脚4の表面から突出するように取り付けられている。該アームレスト3は、該本体31の基端部に設けられた軸孔31B及び該側板32の基端部に設けられた軸孔32Bに挿通された前記枢軸33(図3中では省略する)が、該軸受け36に支持されることにより、該前脚4,4に対して上下方向に回動自在とされている。また該側板32の基端部において、下縁にはストッパである段部37が形成されている。該アームレスト3を回動させて水平使用状態とした場合、該側板32の段部37が該前脚4のストッパーピン38に透設し、係止されることにより、該アームレスト3は、所定の回動角度(該本体31が略水平となる角度)で位置決めされるようになっている(図4(b)を参照)。
【0015】
さらに、該一対の側板32,32において、基端部の間には、架設材39が取り付けられている。該架設材39は、その両端が一対の側板32,32にそれぞれ固定されている(図4(a)を参照)。即ち、該架設材39は、各側板32,32にそれぞれ固定さることにより、該アームレスト3の回動等に伴って一対の側板32,32の間の長さが変化することを規制している。
上記のように該架設材39によって一対の側板32,32間の長さが変化することを規制したことにより、該シャワー用折畳み椅子1は、ストッパであるストッパーピン38と段部37が確実に当接できるように構成されている。なお、該架設材39を設けない場合、一対の側板32,32の間の長さが変わってしまい、ストッパーピン38と段部37とが当接不能となってしまうおそれがある。
【0016】
該前脚4の取付部4Cには、カバー部材40が取り付けられている。該カバー部材40は、該枢軸33及びストッパーピン38の該前脚4への挿通によって取付部4Cに固定されている。該カバー部材40を設けることにより、該アームレスト3を水平使用状態とした場合、該切欠き34の大半が塞がれ、該切欠き34内に指等が入り込んでしまうことを防止している。また、該カバー部材40の両側壁には、該架設材39が挿通される円弧状のガイド孔40Aがそれぞれ形成されている。該ガイド孔40A内を該架設材39が移動することにより、該アームレスト3は、ぐらつくことなく円滑に回動させることができるようになっている。さらに、該カバー部材40は、該架設材39が外部に露出しないように、該架設材39を覆っている。その結果、該アームレスト3の跳ね上げ、跳ね下ろし時において、該カバー部材40は、該架設材39の近傍等に指等が入り込んでしまうことを防止することにより、指詰め等に対する安全対策に効果を発揮しており、加えて、該架設材39を外部から視認しづらくすることで見栄え向上にも効果を発揮している。
【0017】
該シャワー用折畳み椅子1を使用するには、該前脚4,4と該後脚5,5とを開き、該前脚4,4の棒受ブラケット42,42の間に差渡されている支持棒62に該座部6の下面のばねクリップを押し付けると、該ばねグリップが該支持棒62に係合固定され、該座部6が水平使用状態に支持されるようになる。なお前脚4と床面Fとの前後方向の開き角度αは56.5°、後脚5と床面Fとの前後方向の開き角度βは70°程度とするのが望ましい。
【0018】
該シャワー用折畳み椅子1を使用状態とした場合において、該前脚4,4の棒受ブラケット42,42の間に差渡されている支持棒62に該座部6のばねクリップが固定されて該座部6が水平支持されるため、着座時に該座部6が不安定となるのを防ぐことが出来、該シャワー用折畳み椅子1が不意に後方へ回動して使用者が転倒するのを防ぐことが出来る。
更に該シャワー用折畳み椅子1を使用状態とした場合において、該前脚4,4と該後脚5,5との開度は該座部6と該前脚4,4との間のリンク64,64によって規制されるため、該前脚4,4と該後脚5,5が過度に開くのを防止することが出来る。
また更に該背もたれ2は、使用者が腰掛けた時、使用者の背中の少なくとも上半部が露出するように低く設定されているため、使用者または介助者は該背もたれ2に干渉されることなく使用者の背中を容易に洗うことが可能となる。
また該アームレスト3,3を設けたことにより、使用者は該アームレスト3,3に肘を支持させて安楽にすることが出来、また立ち座りの際には該アームレスト3,3を掴んで体を安定させることが出来る。
加えて、該シャワー用折畳み椅子1を使用状態とした場合にあって、該座部6の位置は、従来のものよりも前方にずれており、前脚4,4からの突出長Lは20cm以上とされている。このため、使用者は、前脚4,4に干渉されることなく、斜め前方あるいは横方向から該シャワー用折畳み椅子1に容易に移乗出来る。なお、該座部6を前方にずらして突出長Lを長くした場合、該座部6に及ぼされる使用者の体重等の負荷によるモーメントが大きくなるため、該座部6の裏面にU字形の補強パイプなどを装着し、該座部6が負荷によって撓んだり破損したりすることを抑制することが望ましい。
【0019】
一方、該シャワー用折畳み椅子1を折畳み状態にするには、アームレスト3,3を跳ね上げた後、該前脚4,4の棒受ブラケット42,42の間に差渡されている支持棒62から該座部6のばねクリップを取り外し、該前脚4,4と該後脚5,5とを閉じ、かつ該座部6を跳ね上げる。
該アームレスト3,3は、該シャワー用折畳み椅子1を折畳み状態あるいは使用状態とするのみならず、例えば使用者が移乗する際などにも跳ね上げあるいは跳ね下ろしされる。このように該アームレスト3,3の跳ね上げあるいは跳ね下ろしを繰り返した場合、従来は一対の側板32,32間が開き、段部37がストッパーピン38に当接されず、該アームレスト3,3を水平位置に支持できなくなるおそれがあった。しかし、該シャワー用折畳み椅子1によれば、該架設材39によって一対の側板32,32間が一定の長さに維持されているため、該アームレスト3,3を確実に水平位置で支持することができる。
【0020】
なお、上記実施形態では、本発明の椅子をシャワー用折畳み椅子1に具体化したが、該シャワー用折畳み椅子1に限らず、跳ね上げあるいは跳ね下ろし可能なアームレストを有している椅子であれば、例えば折畳み機能を有しないシャワー用椅子など、何れの椅子に具体化してもよい。またアームレスト3,3は、実施形態では該前脚4,4に取り付けたが、例えば座部6に取り付けてもよい。また該カバー部材40を省略し、ゴム、エラストマー等からなるシート材で該切欠き34を塞いでもよい。
【産業上の利用可能性】
【0021】
本発明のシャワー用折畳み椅子は、アームレストが回動するため、狭い浴室やシャワー室内でも、使用者が該椅子に斜め前方からあるいは横方向から容易に移乗することが出来るとともに、アームレストが確実に水平位置に支持されるため、該アームレストに肘を支持させやすく、また立ち座りの際に該アームレスを掴んで体を安定させやすいため、老人や身障者にとって極めて使い勝手が良い。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】実施形態のシャワー用折畳み椅子の斜視図。
【図2】実施形態のシャワー用折畳み椅子の側面図。
【図3】アームレストの分解斜視図。
【図4】(a)はアームレストの底面図、(b)はアームレストの断面図。
【符号の説明】
【0023】
1 シャワー用折畳み椅子
3 アームレスト
4 前脚
4C 取付部
5 後脚
6 座部
32 側板
37 段部
38 ストッパーピン
39 架設材


【特許請求の範囲】
【請求項1】
脚部と、該脚部に支持された座部と、該脚部又は該座部の所定位置に設けられた取付部と、該取付部に取り付けられたアームレストとを備える椅子であって、
該アームレストの基部には対向する一対の側板が設けられており、該一対の側板で該取付部を挟むようにして該一対の側板が該取付部に回動自在に取り付けられることにより、該アームレストは該脚部又は該座部に対して回動自在とされており、さらに、該取付部及び該側板にはそれぞれストッパが設けられており、
該アームレストを回動させる際に該取付部及び該側板の各ストッパが互いに当接することにより、該アームレストは所定の回動角度で位置決め可能とされているとともに、
該一対の側板の間に架設材が取り付けられており、該架設材が各側板にそれぞれ固定されていることを特徴とする椅子。
【請求項2】
該脚部は、第一脚と、該第一脚に回動自在に取り付けられた第二脚とからなり、該第二脚には座部取付具が取り付けられており、該座部取付具には該座部の基端縁部が回動自在に取り付けられているとともに、該第一脚には座部支持具が取り付けられており、
使用状態では、該第一脚と該第二脚とが開かれ、かつ該座部が水平状態とされて該座部支持部材によって支持され、
折畳み状態では、該第一脚と該第二脚とが閉じられ、かつ該座部が跳ね上げ状態とされる請求項1に記載の椅子。
【請求項3】
該架設材を覆うカバー部材を設けた請求項1又は請求項2に記載の椅子。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2008−154764(P2008−154764A)
【公開日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−346504(P2006−346504)
【出願日】平成18年12月22日(2006.12.22)
【出願人】(000000505)アロン化成株式会社 (317)