椅子
【課題】勤務者の持参する鞄等の荷物の好適な置き場所を提供できる椅子を実現する。
【解決手段】背凭れ11の背面側が、上端近傍の部位から下方に向かうにつれて徐々に前方に退避する形状をなす椅子において、上端近傍の部位よりも下方の領域を鞄等の手荷物その他の物品Bを配置する空間として利用可能とするべく、背凭れ11の背面側に当該物品Bの荷重を支持できる保持手段401、403、417を設けた。これにより、着座者の所持する鞄等を保持手段401、413、417を利用して背凭れ11の背面側に置いておくことが可能となる。
【解決手段】背凭れ11の背面側が、上端近傍の部位から下方に向かうにつれて徐々に前方に退避する形状をなす椅子において、上端近傍の部位よりも下方の領域を鞄等の手荷物その他の物品Bを配置する空間として利用可能とするべく、背凭れ11の背面側に当該物品Bの荷重を支持できる保持手段401、403、417を設けた。これにより、着座者の所持する鞄等を保持手段401、413、417を利用して背凭れ11の背面側に置いておくことが可能となる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オフィス等において使用されるハンガー付きの椅子に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、勤務者個々人の自席を固定せず、誰でも自由に利用できるデスク及び椅子を配したカフェスタイルのフロアを構築する、いわゆるフリーアドレスオフィスを採用する企業が増えつつある。勤務者は、必要書類やノート型PC等を持参し、空いている席の中から任意の席に着いて仕事をする。
【0003】
各勤務者の自席を定めず、またオフィス内に滞在する勤務者の数も流動的であるという都合上、フリーアドレスオフィスでは、例えば勤務者の着ている上着等を収納するクローゼット等を予め用意しておくことは少ない。このようなオフィスでの使用に適しているように、衣類を掛けておくことのできるハンガーを背凭れに取り付けた事務用(または、執務用)椅子が既に広く流通している(下記特許文献を参照)。
【0004】
一方で、各勤務者が持参した鞄等の荷物をどこに置いておくか、という問題は依然として解決されていない。無論、各勤務者の荷物を収納するロッカー等を配設することは容易に考えられるが、空間利用の効率化や配備する什器類の数の削減といったフリーアドレスオフィスの利点を打ち消すことになってしまう。加えて、持ち主から離れた場所にまとめて荷物を置くことは、利便性の低下や、荷物の紛失または盗難のおそれがあることから、勤務者は自分の荷物をできるだけ自身に近い所に置いておきたいと考えるはずである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−121403号公報
【特許文献2】特開2010−022573号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、勤務者の持参する鞄等の荷物の好適な置き場所を提供できる椅子を実現しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明では、背凭れの背面側が、上端近傍の部位から下方に向かうにつれて徐々に前方に退避する形状をなしている椅子であって、上端近傍の部位よりも下方の領域を鞄等の手荷物その他の物品を配置する空間として利用可能とするべく、背凭れの背面側に当該物品の荷重を支持できる保持手段を設けたことを特徴とする椅子を構成した。
【0008】
前記保持手段は、例えば、前記背凭れに取り付けられるハンガーに付属するものとする。
【0009】
より具体的には、前記ハンガーを、衣服を掛けることができるよう左右に拡張したハンガー本体と、ハンガー本体を支持するとともに前記背凭れの背面側に固定される支持体とを具備するものとし、前記保持手段を、前記支持体に設けた、前記物品の持ち手(リュックサックのベルト等を含む)を掛けることのできるフックとすることが好ましい。
【0010】
物品の持ち手や物品自体の寸法等は、種々異なる。前記フックが前記支持体に対して上下方向に変位可能であれば、様々な長さの持ち手、または様々な大きさの物品に対して、フックを適切な高さ位置を調整することが可能となる。
【0011】
前記フックは、非使用時に、前記支持体の内部に収容できるものとしてもよい。
【0012】
前記フックは、前方が開放しているものとすることが好ましい。背凭れの後傾動作時に、物品の持ち手がフックから外れることを予防するためである。
【0013】
前記保持手段を、前記背凭れの下方部位に付属させてもよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、勤務者の持参する鞄等の荷物の好適な置き場所を提供できる椅子が実現される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の第一実施形態を示す前方からの斜視図。
【図2】同実施形態の張地を分解して示す前方からの斜視図。
【図3】同実施形態の張地を一部省略して示す正面図。
【図4】同実施形態の張地を分解して示す左側面図。
【図5】同実施形態を示す背面図。
【図6】同実施形態の脚を省略して示す後方からの斜視図。
【図7】同実施形態の全体を一部省略して示す分解斜視図。
【図8】同実施形態の支持基部及び背支持アームの要部を拡大して示す前方からの斜視図。
【図9】同実施形態の支持基部及び背支持アームの要部を拡大して示す分解斜視図。
【図10】同実施形態の支持基部を一部省略して分解して示す後方からの斜視図。
【図11】同実施形態の支持基部を分解して示す正面図。
【図12】同実施形態の支持基部及び座を示す左側面図。
【図13】同実施形態のロッキング機構を示す図12に相当する作用説明図。
【図14】同実施形態の座と座受を示す分解斜視図。
【図15】図5における要部を示したA−A線断面図。
【図16】図4における要部を示したB−B線断面図。
【図17】図16における要部を示したC−C線断面図。
【図18】同実施形態の背凭れ支持体と背支持部材との取付構造を示した斜視図。
【図19】同実施形態の背シェル及び背支持部材を分解して示す斜視図。
【図20】同実施形態の背シェルの正面図。
【図21】同実施形態の背支持部材の正面図。
【図22】図3における要部を示したD−D線断面図。
【図23】図3における要部を示したE−E線断面図。
【図24】図5におけるF−F線拡大断面図。
【図25】図21におけるG−G線断面図。
【図26】同実施形態のハンガーを筒状部を省略して示す正面図。
【図27】同実施形態のハンガーの支持体を切断した底断面図。
【図28】同実施形態のハンガーの取付構造を筒状部を省略して示す分解斜視図。
【図29】同実施形態のハンガーの取付構造を筒状部を省略して示す側断面図。
【図30】同実施形態におけるハンガーを取り外した状態を示す後方からの斜視図。
【図31】同実施形態におけるハンガーを取り外した状態を示す側断面図。
【図32】同実施形態におけるハンガーに付属するフックを示す側断面図。
【図33】同実施形態におけるハンガーに付属するフックを示す側断面図。
【図34】同実施形態におけるハンガーに付属するフックを示す側断面図。
【図35】本発明の第二実施形態を示す背面図。
【図36】同実施形態の脚を省略して示す後方からの斜視図。
【図37】同実施形態におけるハンガーに付属するフックを示す側断面図。
【図38】同実施形態におけるハンガーに付属するフックを示す側断面図。
【図39】本発明の第三実施形態を示す左側面図。
【図40】同実施形態の背面図。
【図41】同実施形態における背フレームと補助シェルとの関係を示すH−H線要部平端面図。
【図42】同実施形態における背フレームと補助シェルとの関係を示すH−H線要部平端面図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照して説明する。各実施形態は、本発明を事務用回転椅子に適用した場合のものである。
【0017】
<第一実施形態>図1ないし図34に、第一実施形態の椅子を示す。この椅子は、脚1と、この脚1に支持された支持基部3と、この支持基部3上に配された座受5と、この座受5に支持された座7と、前記支持基部3に回動可能に支持された背凭れ支持体9と、この背凭れ支持体9に取付けた背凭れ11と、この背凭れ11の後傾動作に伴わせて前記座受5及び座7を上動及び傾動させるロッキング機構13と、前記背凭れ支持体9に設けられた肘掛け15と、背凭れ11の背後に設けられたハンガー0とを具備してなる。
【0018】
《脚の構成》
脚1は、図1ないし図7に示すように、脚ベース17と、この脚ベース17の中心部に設けられた脚支柱19を備えてなる。
【0019】
脚ベース17は、図1ないし図5及び図7に示すように、中心部に設けたハブ21から複数本の脚羽根23を放射状に突出させて設けたもので、前記脚羽根23先端にキャスタ25をそれぞれ設けている。
【0020】
前記脚支柱19は、図1ないし図5、図7及び図14に示すように、ガススプリングタイプのもので上下方向に弾性的に伸縮し、所望の位置においてロックすることができるようにした通常のものである。すなわち、この脚支柱19は前記脚ベース17のハブ21に嵌着されたガススプリング本体27と、このガススプリング本体27の上端から突出させたロッド29とを備えたもので、前記ロッド29の上端にロック解除用の操作ボタン31が突出させてある。そして、このロッド29の上端部に支持基部3を装着している。前記ロック解除用操作ボタン31は、後述する肘掛け15に設けられた昇降用の操作レバー295により操作される。
【0021】
《支持基部の構成》
支持基部3は、図7ないし図13に示すように、前記脚支柱19のロッド29に取付けられるメインフレーム33と、このメインフレーム33に取付けられた前リンク軸35及び支軸37を具備してなるものである。前リンク軸35は、前リンク39を介して前記座受5の前端部を支持するためのものである。支軸37は、前記背凭れ支持体9を支持するとともに後リンク41を介して座受5の略中間部を支持するためのものである。
【0022】
メインフレーム33は、図7ないし図13に示すように、前記脚支柱19におけるロッド29の上端部に嵌着されるボス部43と、このボス部43の上端側を囲う平面視半円弧状をなす後フレームメンバ45と、この後フレームメンバ45の左右の前端からそれぞれ前方に延出する一対の側フレームメンバ47と、これら側フレームメンバ47の前端部間を結合し前端に平坦な面を有する前フレームメンバ49とを備えたものである。これらボス部43、後フレームメンバ45、側フレームメンバ47、及び前フレームメンバ49は、アルミダイキャスト等により一体に成型されている。前フレームメンバ49の上面部には、前記前リンク軸35を支持する前の軸受部51が一体に設けられているとともに前記後フレームメンバ45と側フレームメンバ47との境界付近には前記支軸37を支持する後ろの軸受部53が一体に設けられている。なお、2つの軸受部51、53の軸心の床面からの高さが異なっており、前の軸受部51の方が後ろの軸受部53より高い位置に設定されている。
【0023】
そして、このメインフレーム33には、図12に示すように、背凭れ11を前方に付勢する傾動反力発生機構55が組み込まれている。
【0024】
傾動反力発生機構55は、図8ないし図13に示すように、基端部が前記支軸37に支持された左右対をなすトルク伝達用のブラケット57と、これら左右のトルク伝達用のブラケット57の先端部間に架設した可動軸59と、この可動軸59をメインフレーム33に設けたバネ受け61を足場として後方に弾性付勢するスプリング63とを具備してなる。また、符号64は、前記脚支柱19のロッド29に設けられたロック解除用の操作ボタン31を押圧するための昇降用ロック解除アームであり、図8ないし図10に示すように、符号297は、肘掛け15に設けた昇降用の操作レバー295の操作力を前記昇降用ロック解除アーム64に伝達するための昇降用のワイヤである。前記操作レバー295を操作することでワイヤ297を引くと、支軸37に外嵌された基端ボス部66が回動し、基端ボス部66を挟んでワイヤ297と反対側に一体に設けられたロック解除アーム64が下方に回動する。
【0025】
また、支持基部3は、図3ないし図6、図10及び図11に示すように、上カバー65と下カバー67とによって覆われている。
【0026】
上カバー65は、図10及び図11に示すように、支持基部3を上面側から覆うもので、支持基部3に係合するための下向きに突出した上係止爪69が設けられている。下カバー67は、支持基部3を下面側から覆うもので、支持基部3に係合するための上向きに突出した下係止爪71が設けられている。また、これら上カバー65と下カバー67とは、それら開口端縁73、75同士が突き合うように配されている。
【0027】
支持基部3のメインフレーム33の前側の外周面、換言すれば前フレームメンバ49の前端の平坦面には、図8、図10及び図11に示すように、前記上カバー65と下カバー67とを取付けるための上下共用取付部77とが設けられている。
【0028】
詳述すれば、前記支持基部3のメインフレーム33は、図8、図10及び図11に示すように、上カバー65の上係止爪69と下カバー67の下係止爪71とをそれぞれ係わり合わせるための上下共用取付部77を備えたものであり、前記上下共用取付部77が、前記上係止爪69が係わり合う係合端面79と、前記下係止爪71が係わり合う係合端面81と、前記上係止爪69の横ずれを係止する横ずれ防止用の係止端面83と、前記下係止爪71の横ずれを係止する横ずれ防止用の係止端面85とを備えている。
【0029】
前記上下共用取付部77は、図8、図10及び図11に示すように、メインフレーム33における前フレームメンバ49の前端の外周面87に設けられたもので、その前端の外周面87を長方形状に凹陥させたものである。この上下共用取付部77において、上辺が上カバー65の上係止爪69が係わり合う係合端面79であり、下辺が下カバー67の下係止爪71が係わり合う係合端面81である。また、上下共用取付部77において、左右両側辺が上カバー65及び下カバー67の上係止爪69及び下係止爪71に対する横ずれ防止用の係止端面83、85である。
【0030】
なお、メインフレーム33の外周における前後方向中間付近には、図8ないし図10、図12及び図13に示すように、上カバー65を取付けるための上専用取付部89と下カバー67を取付けるための下専用取付部91とが設けられている。上カバー65には上専用取付部89に係わり合う爪93が設けられ、下カバー67には下専用取付部91に係わり合う爪95が設けられている。
【0031】
また、メインフレーム33の外周における後端には、図10に示すように、上カバー65を取付けるための上専用取付部97と下カバー67を取付けるための下専用取付部99とが設けられている。上カバー65には上専用取付部97に係わり合う爪101が設けられ、下カバー67には下専用取付部99に係わり合う爪103が設けられている。換言すれば、メインフレーム33の後フレームメンバ45には、下専用取付部99である略水平な中央突条と、この下専用取付部99の両側に配置した一対の上専用取付部97である側突条とが設けられている。上専用取付部97は、前記下専用取付部99に対して高さを異ならせて配置されている。
【0032】
以上に加えて、上カバー65及び下カバー67の外周同士も突き合わせて嵌合するように、上下カバー65、67の開口端縁73、75には、回転軸の近傍部分を除いて溝、具体的には、上カバー65及び下カバー67の一方には嵌合凹部が外方に露出し、他方には嵌合凹部が内方に露出した互いに嵌合可能なL型溝が形成されている。これによって支持基部3の上下専用取付部89、91に係合するようにした上下カバー65、67の爪93、95を配するべく、支持基部3から一定間隔離れた位置を保ってカバーする構成をなしていても上下カバー65、67同士を確実に嵌合することができる。
【0033】
以上説明した支持基部3の前の軸受部51に前リンク軸35を介して左右の前リンク39を回動可能に取付けている。前リンク39の支持基部3への取付構造は次のようになっている。すなわち、前記支持基部3は、図8ないし図13に示すように、左右にそれぞれ前記前リンク軸35を支持する軸受部51と、軸方向に垂直な対向する一対の平面105とを備えたものであり、前記前リンク39は、椅子本来の機能を発揮し得る使用時回動範囲(U)では前記平面105間に位置し、前記前リンク39を支持基部3に対して挿脱し得る図示しない挿脱時回動範囲では前記平面105外に位置する平面対応部分107を備えたもので、支持基部3に前リンク軸35を介して前リンク39を回動可能に支持させている。
【0034】
換言すれば、前記支持基部3は、図8ないし図13に示すように、前リンク軸35を支持する前の軸受部51と、この軸受部51の軸方向に隣接する位置に前方及び上方に開口したリンクアーム収容部109とを備えている。リンクアーム収容部109は、前リンク軸35と直交する一対の平面105間に形成されたものである。前記前リンク39は、上端部に前連結軸111を保持する軸孔113を有するとともに基端部に前リンク軸35に外装されるボス部115を有しており、このボス部115の外周にリンクアーム117を備えている。このリンクアーム117は、前記リンクアーム収容部109に対応する平面対応部分107を有している。
【0035】
そして、前記使用時回動範囲(U)では、前記リンクアーム117の平面対応部分107が前記リンクアーム収容部109の対向する平面105間に位置する。そのため、左右の前リンク39が、前記前リンク軸35と前連結軸111とから外れることが禁止されている。一方、前記挿脱時回動範囲では、前記リンクアーム117の平面対応部分107が前記リンクアーム収容部109の対向する平面105外に位置する。そのため、左右の前リンク39が、前記前リンク軸35と前連結軸111とから外れ得るようになっている。組立状態においては、前リンク39が前記挿脱時回動範囲にまで回動できないように設定されている。組付け時には、前リンク39を後ろに寝かせて左右から、座受5の前リンク取付部121に通した前連結軸111と、メインフレーム33の前の軸受部51に通した前リンク軸35に嵌め込む。その状態で、前記前リンク39を前に倒してリンクアーム収容部109の対向する平面105間に前リンク39のリンクアーム117を嵌め込む。その後、座受5の略中間部に位置する後リンク取付部127に後連結軸123をそれぞれ嵌め込んで、左右から背支持アーム151を付けることにより、前述した組立状態となる。すなわち、ねじ等の抜け止め部品を用いることなしに、左右の前リンク39をメインフレーム33に取付けることができる。
【0036】
以上のようにしてなる支持基部3に、前リンク39及び後リンク41を介して座受5を支持させている。
【0037】
《座受の構成》
座受5は、図4ないし図6、図12、図13及び図15に示すように、アウターシェルと称し得る形態をなすもので、この実施形態においては合成樹脂により一体に成型されている。座受5の下面には、前連結軸111を介して前リンク39の回動端119を取付けるための前リンク取付部121と、後連結軸123を介して後リンク41の回動端125を取付けるための後リンク取付部127が設けられている。前記前リンク取付部121及び後リンク取付部127は、座受5に一体に設けられている。
【0038】
座受5の上面には、縦横にマス目状にリブ126が形成され、そのリブ126の一部平行な2つのものがそのまま座受5の下方に突出するように伸びて前リンク取付部121及び後リンク取付部127を構成している。前リンク取付部121及び後リンク取付部127の左右は、貫通孔を有した側壁128、130により塞がれている。これらの側壁128、130も前記リブ126の一部を下方に延長して形成してもよい。その他のリブ126はこれらのリブ126と複数箇所でつながるように形成され、座受5自体の強度だけでなく、前リンク取付部121、後リンク取付部127の強度にも寄与するように設計されている。すなわち、前記前リンク取付部121及び後リンク取付部127は、それぞれ前壁118、122と後壁120、124と左右の側壁128、130とを備えた中空体状のもので、前記前壁118、122、後壁120、124及び左右の側壁128、130の少なくとも1枚は、前記リブ126の一部を下方に延長することにより形成されている。
【0039】
《座の構成》
座7は、図7、図14及び図15に示すように、前記座受5の上面に取付けられたインナーシェル129と、このインナーシェル129の上に配設したクッション131と、このクッション131の外面に張設した張地133とを備えたものである。
【0040】
インナーシェル129は、図15に示すように、合成樹脂により一体に成型されたもので、図示しない爪等により、座受5に固定されている。このインナーシェル129は、前側に斜め下方になだらかに垂れ下がる前端垂れ下がり部分135を設けるとともに、前記中間部137と前記周縁部139との境界に中間部137が周縁部139よりも下方に膨出するような環状の段部141が形成されている。
【0041】
クッション131は、図14及び図15に示すように、発泡ウレタン等により作られたもので、前側に前記インナーシェル129の前端垂れ下がり部分135に沿うクッション垂れ下がり部分143を備えている。また座7の芯材であるクッション131の上面には一方向に並ぶ凹凸部、換言すれば、この実施形態では前後方向に並ぶ溝145を複数本設けている。
【0042】
張地133は、図1ないし図7、図14及び図15に示すように、クッション131及びインナーシェル129の周縁部139を覆う袋状のものである。張地133の外周縁147は筒状に縫製し、その内に紐148を通してある。張地133の縁147は、インナーシェル129の下面側に巻き込み、紐148を引っ張ることで、紐148とともにインナーシェル129の下面側に設けた段部141に掛け止める。これにより、張地133の縁147は、インナーシェル129の段部141の端面に沿って配される。さらに、インナーシェル129の段部141及び張地133の縁147は、前記座受5により下方から隠されるように覆われる。因みに、インナーシェル129の四隅において、張地133をインナーシェル129に対してタッカ止め、接着等により固着するようにしてもよい。特に、本実施形態のインナーシェル129の前側は垂れ下がっていることから、張地133の前側の隅角部をこのようにして固定することで確実な外れ止めになる。
【0043】
この張地133には、前記クッション131に形成された溝145に関連させて視覚的特徴部分が形成されている。この実施形態において視覚的特徴部分は、前記張地133にエンボス加工(例えば、張地133となる布や皮革等を、視覚的特徴部分に対応した凹凸模様を形成した押し型を以て強圧する。張地133が合成繊維製品である場合、型押しとともに加熱する。張地133がレーヨンや木綿等である場合、当該生地に樹脂加工を施してから型押しして加熱する)を施してなる線条149である。線条149は、張地133の上面から若干凹み、張地133の下面から下方に突出している。線条149は、この実施形態では前後方向に並ぶように複数本存在しており、張地133をクッション131に被せたときに平面視クッション131の溝145に上方から重なり合う位置に存在している。ただし、線条149が着座者やその他の者の視覚に認識されることが重要なのであり、クッション131の溝145と張地133の線条149とは、必ずしも平面視重なり合うとは限られない。
【0044】
クッション131の上面側に張られた張地133及びその視覚的特徴部分149と、クッション131との間には、凹凸部145による空隙が介在する。この凹凸部145が、着座面の通気性の確保に寄与し、座り心地の向上をもたらす。
【0045】
《背凭れ支持体の構成》
背凭れ支持体9は、図7ないし図9、図16及び図17に示すように、前記支持基部3から後上方に延出させた左右の背支持アーム151と、これら左右の背支持アーム151の上端部169同士を連結する上連結材153と、前記トルク伝達用のブラケット57の基端から一体に後上方に向けて延設され前記背支持アーム151の基端部内側面に添接する左右の背支持ブラケット155と、これら左右の背支持ブラケット155の後端を連結する下連結材157とを具備してなる。
【0046】
左右の背支持アーム151は、図1ないし図9、図13、図16ないし図18に示すように、それぞれ前記支持基部3に回動可能に支持された樹脂製のものであり、前後方向に延びる前後方向延出部159と、この前後方向延出部159の後端から連続して上方に伸びる起立部161とを備えたものである。図示例では、前後方向延出部159と起立部161とは、側面視略くの字状をなしている。各背支持アーム151は、その基端部、すなわち前記前後方向延出部159の前端部163に、前記支持基部3に設けられた支軸37の端部165に外側から嵌め合わせるための軸装部167を備えている。また、各背支持アーム151は、その先端部、すなわち前記起立部161の上端部169に、上連結材153を取付けるためのアーム突出部171を備えている。
【0047】
各背支持アーム151の軸装部167は、図3ないし図9及び図16に示すように、前記支軸37の端部165を嵌合させるべく内方にのみ開口させた軸穴173を備えている。具体的には、この軸穴173にブッシュ175を介して前記支軸37の端部165が相対回転可能に嵌合されるようになっている。ブッシュ175は、支軸37を装着する前に背支持ブラケット155の内側面側から貫装させたものであり、このブッシュ175の内周に前記支軸37が相対回転可能に嵌入される。ブッシュ175の鍔部177は、前記背支持ブラケット155とメインフレーム33との間に位置している。このブッシュ175の外周に前記軸装部167が外嵌されており、この軸装部167によって前記支軸37の端部165がカバーされるようになっている。前記軸穴173は開口端部側が大径となるテーパー状をなしており、前記支軸37は円柱状をなしている。ブッシュ175は、前記軸穴173の内周面と前記軸37の外周面との間を埋める形状をなしている。すなわち、ブッシュ175の外周面はテーパー状をなし、内周面は各部同一断面形状をなす円柱形状をなしている。
【0048】
なお、前記軸装部167の外周には、図3ないし図9、図16及び図17に示すように、前記後リンク41が一体に設けられている。また、この軸装部167の近傍における前記各背支持アーム151の内側面には、前記下連結材157の片半部179をカバーするカバー部材181がそれぞれ一体に突設されている。カバー部材181には、ねじ挿通孔183が設けられており、このねじ挿通孔183に挿通されたねじ187を前記下連結材157に設けられたねじ孔185に螺着することにより、左右の背支持アーム151が下連結材157に取付けられる。
【0049】
この状態では、左右の背支持アーム151が下連結材157を介して相互に結合されるので、軸装部167が支軸37から抜け出ることがなくなる。すなわち、後端を下連結材157により連結された左右の背支持ブラケット155を支軸37を介して支持基部3に支持させ、前記支軸37の前記背支持ブラケット155よりも外側に突出する両端部165に前記背支持ブラケット155と共に回動する左右の背支持アーム151を支持させているので、前記左右の背支持アーム151を前記背支持ブラケット155の左右外方から取付けることで、前記支軸37、背支持ブラケット155及び下連結材157をカバーすることができる。この実施形態においては、左右の背支持アーム151のカバー部材181の端部189同士が組立状態において密に突き合うようになっている。
【0050】
背支持アーム151のアーム突出部171は、図7及び図18に示すように、上連結材153の端部を取付けるためのもので、ねじ挿通孔191とこのねじ挿通孔191に連続するねじ孔を有した図示しないナットとを備えている。
【0051】
上連結材153は、図7及び図18に示すように、チャネル状をなす金属製のもので、左右の背支持アーム151のアーム突出部171間に架設した上で、前記ナットに螺着されるねじ195により前記各背支持アーム151に取付けられる。すなわち、上連結材153は、後方に開口する形状をなし、前記アーム突出部171に前側から嵌め合わせて背支持アーム151の上端部169間に架設される。
【0052】
背支持ブラケット155は、図9、図12、図13、図16及び図17に示すように、金属製のもので、前記トルク伝達用ブラケット57と一体に作られており、前記支軸37を介してメインフレーム33に回動可能に支持されている。
【0053】
下連結材157は、図9、図16及び図17に示すように、金属製のもので、その両端部が、前記背支持ブラケット155の後端に溶接により剛結されている。この下連結材157は、背支持ブラケット155と協働して合成樹脂製の背支持アーム151の骨格的な機能を有している。また、左右から嵌め付けられる背支持アーム151が左右に離脱するのを防止するための土台としての機能も有している。さらに、下連結材157は、背凭れ11に作用する後傾方向の荷重を背支持アーム151を介して受け止め、その荷重を背支持ブラケット155を介して傾動反力発生機構55のトルク伝達用のブラケット57に伝える機能をも有している。
【0054】
以上のようにしてなる背凭れ支持体9に背凭れ11を支持させてなる。
【0055】
《背凭れの構成》
背凭れ11は、図1ないし図7に示すように、頂部201において略水平になるまで湾曲させてなりほぼ中間部に弾性変形助長用の開口部203を有した樹脂製の背シェル205と、この背シェル205の頂部201よりも後方に位置する先端縁207を支持する背支持部材209と、前記背シェル205の表面側に添設された張地206とを具備してなる。
【0056】
背シェル205は、図2ないし図7、図19、図20、図22ないし図24に示すように、背凭れ支持体9に支持された樹脂製のものであり、頂部201において略水平になるまで湾曲させてなりほぼ中間部に弾性変形助長用の開口部203を有したものである。すなわち、この背シェル205は、上部領域211に上下方向に伸びる複数の帯状部材213が左右に並び、それら帯状部材213間に前記開口部203が形成されている。また、背シェル205は、正面視において、着座者の腰部に対応する部分、すなわち腰部対応部分215が左右幅が広く、上に行くほど漸次幅狭となる形状をなしている。
【0057】
上部領域211は、図2ないし図7、図19、図20、図22、図24に示すように、着座者の背中を受ける前面部分217と、この前面部分217の上縁に連続して設けられ頂部201において略水平になるまで湾曲した上湾曲部分219と、この上湾曲部分219の後縁に連続して設けられ下方に湾曲して垂れ下がる背面部分221とを備えている。そして、背面部分221の先端縁207には、下方に開口する溝223が形成されている。
【0058】
この溝223は、前記背支持部材209を嵌合させるための主嵌入部225と、この主嵌入部225に背支持部材209を嵌合させた状態で背支持部材209の背面側に開口する副嵌入部227とを備えたものである。すなわち、背シェル205の先端縁207に設けられた溝223は、主嵌入部225と副嵌入部227を連続的に形成した段付き溝状のものであり、この主嵌入部225に背支持部材209の後述する上取付部251を挿入すると、前記副嵌入部227のみが外方に開口して残ることとなる。この副嵌入部227は、後述する側縁溝235と連続しており、これら副嵌入部227及び側縁溝235を用いて張地206を取り付けることにより、背シェル205の前面から上部背面側に向かって張地206でカバーできるようになっている。
【0059】
なお、背シェル205の上部領域211における背面部分221に位置する帯状部材213の一部には、弾性変形調整用のリブ228が設けられている。リブ228は、背面部分221に位置する帯状部材213の左右両側縁から後方に延び出しており、その両リブ228の間がちょうど前方に凹んだ凹部222となっている。
【0060】
リブ228の存在により、背面部分221に位置する帯状部材213の部分は、前面部分217や上湾曲部分219に位置する帯状部材213の他の部分よりも弾性変形しにくいものとなっている。背シェル205は、この背面部分221の下側で剛性を有する背支持部材209に接続されているので、仮に、背面部分221における帯状部材213の厚み寸法が、前面部分217や上湾曲部分219における帯状部材213の厚み寸法と同じであるとすると、着座者の荷重がかかった際に背面部分221が積極的に撓み変形してしまい、背シェル205の前面部分217側を支持することが難しくなるおそれがある。逆に、凹部224を完全に埋めてしまうように背面部分221の帯状部材213の厚み寸法を増すと、背面部分221及び上湾曲部分219の弾性変形ないし変位の妨げとなってしまう。そこで、リブ228及び凹部222を成形することにより、背面部分221の弾性変形量(固さ)を適度に調整している。無論、リブ228及び凹部222によらずに、帯状部材213の厚み寸法を大きくすることで弾性変形量を調整してもよい。
【0061】
背シェル205の下部領域229は、図2ないし図7、図19、図20及び図23に示すように、左右両側が左右方向中間よりも前方に突出した凹型をなしている。この下部領域229には、前記帯状部材213に連続した突条231が形成されており、隣接する突条231間に前記開口部203に連続した薄肉部233が形成されている。背シェル205の下部領域229は、着座者の腰部に対応する部分215を側面視前方に隆起させており、平面視中央が凹むように湾曲させている。
【0062】
なお、背シェル205は、図1、図2、図4、図6、図19、図22及び図23に示すように、左右両側縁にそれぞれ外方に開口した側縁溝235を有しており、これら側縁溝235と前記溝223における副嵌入部227とが連続している。また、前記背シェル205の下端には、前記側縁溝235に連続する下縁溝237が設けられている。
【0063】
この背シェル205は、図1ないし図6に示すように、その下部239が前記背支持アーム151の前面に取り付けられるとともに、その上部243が前記背支持部材209に支持される。背シェル205の下部239の取付けについて述べると、左右の背支持アーム151の起立部161の前面側には、上下に離間させて複数のナット孔204が形成されている。他方、背シェル205の下部239の左右両側部には、これらナット孔204に各々対応したビス挿通孔が設けられている。したがって、取付け用のビス241を前記ビス挿通孔に前方から挿し通した上、前記ナット孔204に螺合緊締することにより、背シェル205の下部239の左右両側部を左右の背支持アーム151の起立部161の前面に固定することができる。ビス241は、張地206を張り設けた際に、覆い隠される。
【0064】
背支持部材209は、図1、図2、図4ないし図7、図19、図21、図22、図24及び図25に示すように、前記背シェル205の裏面に左右及び下方に開放された空間245を形成するように対面配置された板状のものであり、前記背凭れ支持体9に支持され前記背シェル205の前後方向へのたわみを制御するものである。背支持部材209は、左右両側が左右方向中間よりも前方に突出した前方から見て凹型をなし前記背シェル205の上部領域211の前面部分217及び下部領域229の幅寸法よりも小さな幅寸法を有した支持部材本体247と、この支持部材本体247の下端に設けられ前記上連結材153に取付けられる下取付部249と、前記支持部材本体247の上端に設けられ前記溝223の主嵌入部225に嵌合する上取付部251と、この上取付部251、前記支持部材本体247及び下取付部249に亘って形成されたリブ253とを有している。なお、背支持部材の左右両端縁は、中間部より厚くなっており、ここが周辺補強材として機能分担している。
【0065】
支持部材本体247は、図4ないし図7、図18、図19、図21、図22、図24及び図25に示すように、板状のもので、左右両側が左右方向中間よりも前方に突出した湾曲形状をなしており、上取付部251の下側に屈曲部255が形成されている。この屈曲部255は、該屈曲部255の上側が下側に対して前方に傾斜するような形状をなしている。換言すれば、この屈曲部255は、側面視くの字状に屈曲している。
【0066】
上取付部251は、図4ないし図7、図19、図21及び図24に示すように、前記主嵌入部225に密に嵌合し得る厚み寸法を有しているもので、嵌合状態においてねじ263を用いて背シェル205に取付けられる。すなわち、この上取付部251は、支持部材本体247の上端から上方に延出された板状のもので、その前面に前記リブ253の上端部が位置している。この上取付部251の前面において、隣接するリブ253間に板ナット257を配した上で、その上端部を溝223の主嵌入部225に嵌合させることによって、前記板ナット257を位置決め保持することができるようになっている。そして、この板ナット257のねじ孔259に背シェル205のねじ孔261を通して背面側から挿通させたねじ263を螺着することによって、この背支持部材209を前記背シェル205に取付けることができるようになっている。この状態では、前記板ナット257が、前記背シェル205及び前記背支持部材209によって隠されている。
【0067】
下取付部249は、図4ないし図7、図19、図21及び図25に示すように、前記支持部材本体247の下端から下方に連続して延出する後壁265と、この後壁265の上端から前方に延出し前記中間に位置するリブ253を相互に連結する天壁267と、この天壁267の前縁から下方に垂下させた前壁269とを備えたもので、前記上連結材153に上側から嵌合し得るように下方に開放された形状をなしている。前記下取付部249の前壁269には、背支持部材209を前記上連結材153に取付けるためのねじ271を挿通させるためのねじ挿通孔273が形成されている。
【0068】
リブ253は、図7、図19、図21、図22、図24及び図25に示すように、上下方向に亘って伸びるもので、背支持部材209の前面に複数枚設けられている。これらのリブ253は、上側に向かって漸次突出寸法が小さくなるような形状をなしている。また、これらのリブ253は、左右に略一定の間隔をあけて配されている。なお、左右両側に位置するリブ275は、支持部材本体247の下端においてとぎれており、下取付部249まで延出しておらず、この左右両側に位置するリブ275の下方には、前記天壁267及び前壁269は設けられていない。一方、中間に位置するリブ277は、下取付部249の前壁269の前面にまで延出している。なお、左右両側に位置するリブ275の突出寸法は、中間に位置するリブ277の突出寸法に比べて小さくなるように設定されている。また、背支持部材209の下方において、左右両側に位置するリブ275の厚み寸法は、中間に位置するリブ277の厚み寸法に比べて大きくしてある。具体的には、中間に位置するリブ277よりも上下方向の長さの短い左右両側に位置するリブ275は、下方において厚み寸法を約6ミリメートルとしており、一方中間に位置するリブ277は下方において厚み寸法を約4ミリメートルとしている。そのため、背支持部材209を背面側から見た際に、左右両側には縦方向に延びるフレームが存在するように見える。
【0069】
張地206は、図1ないし図7、図22ないし図24に示すように、通気性及び透光性を有した布材を主体に構成されたもので、背シェル205のほぼ全域を覆い隠し得る寸法を有したほぼ長方形状をなしており、端部279を背シェル205の外周縁に止着している。詳述すれば、前記張地206の下端部281を前記背シェル205の下縁溝237に押し込んで止着するとともに、左右両側の端部283を前記背シェル205の側縁溝235に押し込んで止着している。また、張地206の上部285を背シェル205の上湾曲部分219及び背面部分221の外面に被せ、その端部279を前記溝223の副嵌入部227に押し込んで止着している。具体的には、前記張地206の端部全周縁には、図示しない押し込み材が縫製されており、この押し込み材とともに前記張地206の端部279、下端部281、及び左右両側の端部283を、背シェル205の溝223の副嵌入部227、下縁溝237、及び側縁溝235にそれぞれ取付けるようにしている。なお、張地206を背シェル205に取付けた状態で、前記背シェル205と背支持部材209とを結合するねじ263の頭をカバーするようになっている。
【0070】
以上説明したような背凭れ11は、背面視において前記背シェル205の両側縁が、前記背支持部材209の両側縁よりも外側にはみ出した状態で視認可能となっている。また、斜め後方からの視線において、前記張地206の裏側が、背シェル205の開口部203を介して視認可能であり、斜め前方からの視線において、前記背支持部材209のリブ253が視認可能である。
【0071】
以上のようにしてなる背凭れ11と前記座7とをロッキング機構13により連動させるようにしている。
【0072】
《ロッキング機構の構成》
このロッキング機構13は、図4ないし図13に示すように、背凭れ11の後傾動作に伴わせて座7を傾動させつつ上動させるようにした体重感知式のものである。
【0073】
詳述すれば、このロッキング機構13は、図4ないし図13に示すように、前側に前リンク軸35を保持するとともに後側に支軸37を保持する支持基部3と、下端部を前記前リンク軸35を介して前記支持基部3に回動可能に支持させた前リンク39と、下端部を前記支軸37に支持された背支持アーム151の軸装部167に一体化させてなる後リンク41と、前リンク取付部121を前連結軸111を介して前記前リンク39の回動端119に連結するとともに後リンク取付部127を後連結軸123を介して後リンク41の回動端125に連結してなる座受5とを主体に構成されたものである。
【0074】
すなわち、このロッキング機構13は、図4ないし図13に示すように、座7を支持する座受5を同一方向に傾斜する前リンク39と後リンク41とによって支持基部3に支持させ、その支持基部3に支持された背支持アーム151の後傾動作に伴わせて、前記前リンク39及び後リンク41を起立方向に回動させて前記座受5を上方に持ち上げるように構成した体重感知式のものであり、前記背凭れ11の後傾時に、前記座7の前部を座7の後部に比べてより多く持ち上げるように構成されたものである。すなわち、通常の背凭れ及び座のシンクロロッキング機構では、背凭れの後傾動作に伴わせて座を下方側にのみ傾動させるものであるが、本実施形態に示すような体重感知式のロッキング機構13は、通常のロッキング機構とは異なり、図13に二点鎖線で示すように、背凭れ11の後傾動作に伴わせて座7を傾動させつつ着座者の荷重に抗して座7を持ち上げるように構成している。
【0075】
具体的に説明すれば、図13に示すように、前記背凭れ11を後傾させていない背起立時において、前リンク39の前傾度合いが後リンク41の前傾度合いよりも大きくなるように設定されている。換言すれば、前記背凭れ11を後傾させていない背起立時において、前リンク39における水平線に対する傾斜角度αが、後リンク41における水平線に対する傾斜角度βよりも小さく設定されている。また、前記前リンク39の支持基部3に対する回転中心を、前記後リンク41の支持基部3に対する回転中心よりも高い位置に設定している。換言すれば、前記前リンク軸35の軸心を前記支軸37の軸心よりも距離h分高い位置に設定している。前記前リンク39の有効長さ寸法、すなわち前記前リンク軸35と前記前連結軸111との軸心間距離L1と、前記後リンク41の有効長さ寸法、すなわち後リンク軸である前記支軸37と前記後連結軸123との軸心間距離L2とは略同じ距離に設定されている。また、前記背支持アーム151が、前記支持基部3における脚支柱19よりも前側の部位に枢支されている。換言すれば、前記背支持アーム151の軸装部167が、側面視において前記脚支柱19よりも前側に位置する支軸37に支持されている。
【0076】
前リンク39の前傾度合いを後リンク41の前傾度合いよりも大きくしている点は、後傾時に座7の前側を後側よりも相対的に大きく持ち上げることを目的としたもので、前リンク39と後リンク41との前傾度合いを相互に大きく異ならせることにより、後傾時の座7の前側の持ち上がりを大きく設定することが可能になる。つまり、前リンク39は座7の前部すなわち座面7aの前部7a1を上方に持ち上げる動作が多く、後リンク41は座7を後方に移動させる動作が中心となる。これによって、座面7aは前部7a1を多く持ち上げながら座面7aの後部7a2は後方移動し、後傾する背凭れ11に追従するように後方に移動していくこととなる。その結果、座面7aを相対的に後傾させることで座7の後端部と背凭れ11の下端部との相対的な位置関係の変化が有効に抑えられたものとなっている。
【0077】
前リンク39と後リンク41の回転中心位置を上下方向に異ならせる点は、主に背起立時の座7の水平度合いを調整することを目的としたものであり、前述した前後リンク39、41の前傾度合い差と組み合わせることにより、背凭れ11起立時の座7の姿勢と背凭れ11後傾時の座7の姿勢を共に最適な状態に設定している。前リンク39の有効長さ寸法L1と後リンク41の有効長さ寸法L2とを略同寸法とすることにより、前記設定をより適切なものにすることができる。
【0078】
なお、一般に前記背支持アームが、前記支持基部における脚支柱よりも前側の部位に枢支されている椅子においては、背凭れ後傾時に背凭れが下方に沈みこむ傾向にあるため、背凭れ後傾時に座全体が平均的に上方に持ち上がるようにした通常の体重感知式ロッキング機構を採用した場合には大きな違和感、より具体的には、着座者の予想に反して、座の後側部分を含む座全体が上方に持ち上がる結果、着座者の腰部近傍に、背凭れの沈み込み動作とこの沈み込み動作と相反する座の持ち上がり動作とが同時に発生することによって与えられる違和感が発生するが、本実施形態の構成によればその違和感が緩和されるものとなる。すなわち、本実施形態のものは体重感知式ではあるが背凭れ11後傾時にも座7の後側が大きく持ち上がることがないので大きな違和感を与えにくいものとなる。
【0079】
また本実施形態では、この後リンク41は背支持アーム151の回動中心である支軸37を中心に、背支持アーム151及びトルク伝達用のブラケット57とともに一体的に回動するものとしている。これにより、背凭れ11の後傾動作に伴う座7の連動動作のみならず、後リンク41を介した支持基部3による座7の正確な位置決めを併せて実現している。さらに本実施形態では、背凭れ11の回動範囲を20度に設定しているとともに、背凭れ11を最大限後傾させた状態における座面7aのなす角度は、背凭れ11起立時に比べて4度後傾するように設定している。すなわち本実施形態では、主に後リンク41による背凭れ11後傾時の座受5の略中央部の持ち上げによって起こる座面7aの後部7a2が持ち上がる寸法γ2よりも、前リンク39による背凭れ11後傾時の座面7aの前部7a1が持ち上がる寸法γ1をより大きく設定する結果、背凭れ11の最大後傾時の座面7aの角度を背凭れ11起立時よりも4度後傾するようにしている。加えて本実施形態では、後リンク41を座受5の前後方向における略中央部に接続しているため、背凭れ11の後傾時前後リンク39、41共に座受5を持ち上げるような構成にしても、前リンク39が後リンク41よりも多く座受5を持ち上げるので、相対的に座受5の後端部は前端部よりも下がるように設定でき、座受5の前端部が上昇した際に座受5の後端部の高さ位置を、背凭れ11の起立時と後傾時で殆ど変わらないようにしている。
【0080】
《肘掛けの構成》
肘掛け15は、図1ないし図7及び図18に示すように、前記背凭れ支持体9の背支持アーム151における上端部前面から一体に前方に突出させた肘支持部287と、この肘支持部287の上に設けた肘当て289とを具備してなる。
【0081】
肘支持部287は、図3ないし図6及び図18に示すように、上方に開放した有底舟形をなしている。一方の肘支持部287、本実施形態では着座者から見て右側の肘支持部287の前端部位の底壁291には、貫通した窓293を形成しており、その窓293を介して下方に操作レバー295を突出させている。操作レバー295は、脚支柱のロック解除用の操作ボタン31を操作するためのものである。この操作レバー295と前記操作ボタン31との間はワイヤ297で接続しており、操作レバー295に加えられた操作力をワイヤ297によって操作ボタン31に伝達することで、操作ボタン31の操作、ひいては脚支柱のロック/ロック解除の切換えを行い得る。操作レバー295の基端部及び操作レバー295に接続するワイヤ297の一端部は、前記肘支持部287の内部に収まっている。
【0082】
肘支持部287の内部空間は、前記背支持アーム151の起立部161に形成されたワイヤ案内空間298に連通している。ワイヤ案内空間298は、上下方向に延伸し、かつ、その一部または全部が前方に開口する。ワイヤ案内空間298の下端部は、前後方向延出部159の直上まで到達しており、背シェル205の下部239を起立部161に取付けた状態で背シェル205の下端よりも若干下方に位置して前方に開通している。そのため、操作レバー295に接続されたワイヤ297は、肘支持部287の内部空間からワイヤ案内空間298の下端部へと導き出され、そこから前後方向延出部159に沿って支持基部3へと到る。
【0083】
肘当て289は、図1ないし図5、図7及び図18に示すように、前記肘支持部287に対して着脱可能である。これにより、共通の肘支持部287に取付可能な複数種類の肘当て289の中から任意のものを選んで使用することができる。本実施形態で示している肘当て289は、肘支持部287に対して直接取付けられる取付ベース299と、この取付ベース299に支持され着座者の腕が載せ置かれる肘当て本体301とが一体的に設けられているものである。
【0084】
取付ベース299は、肘支持部287及び背支持アーム151の上端部169に蓋着される基体303と、この基体303の内方端から略水平に延出するスペーサ305とを具備してなる。基体303は、前側が図示しない係止機構により肘支持部287に掛け止めされるとともに、後側がビス307を用いて背支持アーム151の前面側に取付けられる。肘当て289のスペーサ305は、リブ275の直下の天壁267が存在していない空隙を埋めるためのもので、背支持部材209の下取付部249の天壁267にほぼ連続する板状をなしている。このスペーサ305は、前記上連結材153の上面と、背支持部材209の左右両側に位置するリブ275の下端面との間に密に介設される。
【0085】
《ハンガーの構成》
ハンガー0は、図26ないし図28等に示すように、衣服を掛けることができるように左右に拡張したハンガー本体345と、ハンガー本体345に接合し、背凭れ11の後向面に接するとともに、背凭れ11の後向面に臨む前向面359を貫いてねじ入れられるボルト355により背凭れ11に対して固定される支持体357とを具備してなる。
【0086】
このハンガー0は、ハンガー本体345及び支持体357を樹脂一体成形または金属一体成形した部材である。
【0087】
ハンガー本体345は、衣類、例えば上着の肩部等を直に支える。ハンガー本体345は、剛体であってもよく、多少の弾性変形を許容するものであってもよいが、ここでは殆ど変形しない剛性の高いものとする。ハンガー本体345は、衣服を掛けることができるように左右に拡張した上辺347と、その上辺347から下方に離間している下辺349と、上辺347の左端部と下辺349の左端部とを連接する左側辺351と、上辺347の右端部と下辺349の右端部とを連接する右側辺353とを有しており、背面視閉ループ状となっている。
【0088】
ハンガー本体345の上辺347、下辺349及び左右の側辺351、353は、そのループの全周に亘って略相似した断面形状(概ね等断面形状)をなしている。これら上辺347、下辺349及び左右の側辺351、353はそれぞれ、その断面形状の前後寸法が上下の厚み寸法よりも大きくなっており、上下に薄い板状である。上辺347、下辺349及び左右の側辺351、353の上向面は、側面視若干上方に膨出している。上辺347、下辺349及び左右の側辺351、353の下向面もまた、側面視若干下方に膨出している。但し、下辺349の下面側は、当該下辺349の側端部を除き、支持体357に接合して埋没しているために露わとなっていない。
【0089】
図26ないし図29に示すように(なお、図27は底断面図であり、図中上方が椅子の正面側、下方が背面側である)上辺347は、平面視前縁及び後縁が若干後方に凹むように湾曲しながら左右方向に延伸している。加えて、上辺347は、左右方向の中央部位が最も高く、側端部に向かうにつれて徐々に低くなってゆくように緩やかに湾曲している。
【0090】
下辺349は、上辺347の中央部位における下向面が鉛直下方を向くようにハンガー0の姿勢を位置づけたときに、その上向面が鉛直上方を向くように、略水平に左右方向に延伸している。上辺347と異なり、下辺349は略真っ直ぐであり、前後にも上下にも殆ど湾曲していない。下辺349は、上辺347よりも前方に位置するように、上辺347に対してオフセットしている。下辺349の左右方向の長さは上辺347のそれよりも短く、図示例では上辺347の三分の一程度である。
【0091】
左側辺351は、左上方から右下方、並びに後上方から前下方に向けて傾斜して延伸している。左側辺351の左端部と上辺347の左端部との連接部分は、大きな曲率で湾曲ないし屈曲している。左側辺351の左端部と下辺349の左端部との連接部分は、小さな曲率で湾曲ないし屈曲している。
【0092】
右側辺353は、右上方から左下方、並びに後上方から前下方に向けて傾斜して延伸している。右側辺353の右端部と上辺347の右端部との連接部分は、大きな曲率で湾曲ないし屈曲している。右側辺353の左端部と下辺349の右端部との連接部分は、小さな曲率で湾曲ないし屈曲している。
【0093】
ハンガー0は左右対称形状となっている。そして、ハンガー本体345の上辺347、下辺349及び左右の側辺351、353は、背面視左右対称形状の逆台形状を形成している。このハンガー本体345の内周面、すなわち上辺347の下向面、下辺349の上向面、左右の側辺351、353の上向面は一貫して連続している。
【0094】
支持体357は、ハンガー本体345が椅子の背凭れ11に対して揺動しないようにこれを固く支持する剛体であるとともに、ハンガー0を背凭れ11に固着するブロック状の部位である。支持体357は、ハンガー本体345の下辺349の直下に接合している。支持体357は、ハンガー本体345の下辺349の左右方向の寸法よりも若干小さい左右幅をなしており、ハンガー本体345の下辺349はその左右両側端のみが支持体357の外側面よりも外側方に突き出す。また、ハンガー本体345の下辺349に接合する支持体357の上端部の前縁は、ハンガー本体345の下辺349の前縁よりも多少前方に飛び出している。
【0095】
支持体357は、背凭れ11の背面側、より具体的には背シェル205の上部領域211の背面部分221の後向面と背支持部材209の屈曲部255の上方(かつ、上取付部251の直下)の部位の後向面とに跨って(張地206越しに)当接する。支持体357における、背シェル205の上部領域211の背面部分221に当接する前向面359、背支持部材209の屈曲部255の上方の部位に当接する前向面361は、それぞれやや前傾している。前者の前向面359の後背にあたる後向面は後傾しており、支持体357を側面視概ね逆三角形状をなすように見せている。なお、背シェル205の上部領域211の背面部分221と、背支持部材209の屈曲部255の上方の部位との間には段差が存在する。従って、後者の前向面361を包含する支持体357の下端部は、前者の前向面359の下縁から前方に突出しており、当該下端部の上向面が、背シェル205の先端縁207に当接ないし近接する。要するに、両前向面359、361を介して、支持体357が段差のある背凭れ11の後背にぴったりと沿う。
【0096】
支持体357の後向面には、後方に開口し前方に凹む凹部363が形成されている。凹部363の後端部の開口縁は、背面視左右方向に長尺な略方形状をなす。この凹部363の底は全体的には浅く、後述するキャップ377の前後厚さ程度の深さしかないが、一部を(他の部位と比較して前方に大きく凹む)深底365としている。図示例では、略円筒状の内周をなす深底部365が左右一対、凹部363の左右の両側縁からやや内側方に偏倚した箇所に存在している。凹部363の深底部365の底面、換言すれば前端面は、支持体357の前向面359と表裏の関係にある。そして、この凹部363の深底部365の底を前後に貫通して、ハンガー0固定用のボルト355の軸部を挿通するためのボルト挿通孔367が穿たれている。ボルト挿通孔367は、支持体357の前向面359に開口し、凹部363(特に、深底部365)内を前向面359、361の前方に連通せしめる。ボルト挿通孔367は複数、図示例では左右の深底部365にそれぞれ一つづつ存在している。
【0097】
因みに、支持体357を正面側から見たとき、左右のボルト挿通孔367の間には、前方に開口し後方に凹んだ凹陥369が形成されている。この凹陥369の裏側は、上記の凹部363における左右の深底部365間の底の浅い部位に該当する。加えて、左右のボルト挿通孔367の外側方には、スロット孔371が形成されている。スロット孔371は、上下方向に長く左右方向に細い略方形状をなし、支持体357を前後に貫通している。スロット孔371の上端部は、ハンガー本体345の下辺349にまで達しており、下辺349を極一部であるが切り欠いている。このスロット孔371の後端部は、凹部363内の側端近傍に開口している。
【0098】
また、当該支持体357の下方部位、ちょうど凹陥369やスロット孔371の下端よりも下方にある領域は、左右方向に間欠的に複数本のリブ373が並ぶ形状に成形してあり、リブ373間の肉を盗んでいる。各リブ373は、形状が互いに相似している。リブ373は、側面視略L字形をなす左右に薄い薄板体であり、背凭れ11の背面側の段差部分と係わり合う。すなわち、リブ373の上部は、背シェル205の上部領域211の背面部分221に当接する前向面359の一部を構成する。リブ373の下部は、支持体357の下端部、すなわち背支持部材209の屈曲部255の上方の部位に当接する前向面361の一部を構成する。各リブ373の下端部は、支持体357の下壁375の上向面に連接している。この下壁375の前端面もまた、背支持部材209の屈曲部255の上方の部位に当接する前向面361の一部となる。
【0099】
支持体357の凹部363には、キャップ377を装着することができる。キャップ377は、凹部363の後端部の開口を閉塞して凹部363内を後方から遮蔽し得る板状体である。キャップ377は、凹部363に対して着脱自在とする。例えば、図38に示しているように、キャップ377の外側縁部から、当該キャップ377の板厚よりも薄い薄片379を左右に突出させる一方、この薄片379を受け入れる係合溝383を凹部363の開口の左右両側縁付近に形成しておき、薄片379と係合溝383との係合を通じてキャップ377を支持体357に止着するものとする。図29に示しているように、キャップ377を支持体357に装着している状態で、キャップ377の後面は支持体357の後面と略面一になる。
【0100】
キャップ377の前向面には、突起381が設けられている。突起381は、キャップ377の前向面に対して略直交する方向に突出している。突起381は複数、図示例ではキャップ377の左右の両側縁からやや内側方に偏倚した箇所に一対存在している。それら左右の突起381間の距離は、支持体357に穿たれた左右のボルト挿通孔367間の距離に略等しい。突起381は、円柱状の外形をなしており、その周面には凹凸が形成される。突起381の周面の凹凸は、例えば、ボルト355の軸部の雄ねじのねじ山の高さと同程度の深さ、雄ねじのピッチと同程度の溝幅を有する環状溝を、突起381の軸心方向に沿って多数本並べたような形状のものとする。
【0101】
背凭れ11の側には、ハンガー0固定用のボルト355と螺合する雌ねじが予め設けられる。本実施形態では、背シェル205及び背支持部材209とは別体をなすナット327を、背シェル209と背支持部材209との間に収めるようにしている。このナット327を収める構造は、背シェル205と背支持部材209との連結に利用されるナット257を収める構造に類似している。
【0102】
ナット327は、例えば、内周に雌ねじ孔を切った薄板状の板ナットである。無論、六角ナット等を用いても構わない。
【0103】
これに対し、背支持部材209の上取付部251の前面、隣接するリブ253間には、前方に厚みを増した肉厚部分が成形されており、この肉厚部分に、前後に貫通した貫通孔252が穿たれ、さらにその前面側に、ナット327を収容できるように貫通孔252から上下及び左右に拡張した座ぐり254が形成されている。貫通孔252及び座ぐり254は、ハンガー0の支持体357のボルト挿通孔367に対応して複数、図示例では左右一対存在している。
【0104】
座ぐり254に挿入されて配置されたナット327は、背支持部材209の上取付部251を背シェル205の溝223の主嵌入部225に嵌合させることにより、脱落しないよう保持されると同時に背シェル205に覆い隠される。また、背シェル205の上部領域211の背面部分221には、主嵌入部225を背面部分221の後背に連通せしめるように背面部分221の後壁を前後に貫通したボルト孔226が穿たれている。背支持部材209の上取付部251を背シェル205の溝223の主嵌入部225に嵌合させた状態で、このボルト孔226と貫通孔252及びナット327の内周の雌ねじ孔とは(軸心方向から見て)略同心軸上に重なり合う。背シェル205に穿たれたボルト孔226、背支持部材209に穿たれた貫通孔252及びナット327の雌ねじ孔は、総体として、ボルト355の軸部がねじ入れられる螺入穴になる。
【0105】
加えて、張地206の上部285を背シェル205の背面部分221に被せる都合上、この張地206の上部285にも、ボルト355を通すための、前記ボルト孔226と重なり合う貫通孔286を穿っておく必要がある。この貫通孔286は、工場で組み立てられた当初の椅子0、ハンガー0を装備しない仕様の椅子、またはハンガー0がオプションである椅子においては開通しておらず、背凭れ11に初めてハンガー0を取り付ける段になって開けられる。つまり、ハンガー0が一度も取り付けられたことのない椅子では、ボルト孔226、貫通孔252及びナット327の雌ねじ孔が張地206によって後方から隠蔽された状態となっている。
【0106】
ハンガー0を背凭れ11に取り付けるにあたっては、張地206の上部285に貫通孔286を開設した後、支持体357を背シェル205の上部領域211の背面部分221及び背支持部材209の屈曲部255の上方の部位に当接させ、支持体357の前向面359を前記ボルト孔226が穿たれた背面部分221の後向面に臨ませ、かつ支持体357の下端部の前向面361を屈曲部255の上方の部位の後向面に臨ませる。次いで、支持体357の後方から、ボルト355を凹部363内、さらに言えば深底部365)内に挿入し、ボルト355の軸部を支持体357のボルト挿通孔367、張地206の上部285の貫通孔286、背シェル205の背面部分221のボルト孔226、及び背支持部材209の上取付部251の貫通孔252に挿通する。その上で、当該ボルト355の軸部を、背支持部材209の上取付部251に設けたナット327に螺合緊締する。しかる後、凹部363の後端部の開口にキャップ377を装着すれば、ハンガー0の取り付けが完了する。凹部363に装着したキャップ377は、支持体357の後向面と略面一となるように後傾姿勢をとる。このとき、キャップ377の前向面から突出する突起381は前上方を向いて凹部363の深底部365内に収まり、深底部365の内周やボルト355の頭部に干渉することはない。
【0107】
背凭れ11からハンガー0を取り外すにあたっては、凹部363の後端部の開口からキャップ377を外して凹部363を開放し、ナット327に螺合緊締しているボルト355を緩めて抜き取ればよい。なお、背凭れ11からハンガー0を取り外して椅子を使用する場合、そのままでは張地206の貫通孔286や背シェル205のボルト孔226、背支持部材209の貫通孔252、あるいはナット327の雌ねじ孔が露わとなってしまう。そこで、ハンガー0の支持体357の後面側の凹部363に装着するキャップ377を流用して、張地206の貫通孔286等を隠蔽できるようにすることが好ましい。既に述べた通り、このハンガー0の支持体357のキャップ377には突起381が設けられている。この突起381の外径は、ボルト355がねじ入れられる螺入穴(背シェル205のボルト孔226、背支持部材209の貫通孔252及びナット327の雌ねじ孔の総体)の内径に略等しい。突起381の突出長さは、前記螺入穴の軸方向に沿った奥行長さに略等しいか、それよりも多少短い。従って、図30及び図31に示すように、ハンガー0を取り外した際に露出する部位に所在している螺入穴を嵌合穴として利用し、この螺入穴にキャップ377の突起381を嵌め入れることにより、キャップ377を背凭れ11の背面側、背シェル205の上部領域211の背面部分221に(張地206越しに)当接させた状態に装着することが可能である。キャップ377を背凭れ11の背面側に装着すれば、張地206の貫通孔286等を好適に隠蔽でき、ハンガー0を取り外して椅子を使用する場合にも家具としての格調、美観を保つことができる。
【0108】
図4等に示しているように、背凭れ11の背面側は、背凭れ11をロッキングさせずに引き起こしている状態で、その背支持部材209の屈曲部255が最も後方に突出している。つまり、背凭れ11の背面側は、ハンガー0の支持体357が固定される上端近傍の部位よりも下方、即ち屈曲部255の下側において、前方に退避する形状をなしている。そこで、この上端近傍の部位よりも下方の領域を、着座者が持参した鞄等の手荷物その他の物品Bを配置する空間として利用できるようにしている。
【0109】
即ち、本実施形態では、ハンガー0の支持体357、及び背凭れ11の下方部位にそれぞれ、物品Bの荷重を支持できる保持手段401、403、417を設けている。
【0110】
支持体357に付属する保持手段は、物品Bの持ち手を掛けることのできるフック401、403である。本実施形態において、フックは、前方に突き出した形状のもの401と、後方に突き出した形状のもの403とが並存している。前者401は前方に開放しており、後者403は後方に開放している。これらフック401、403には、一つの物品Bに備わっている二つ以上の持ち手(特に、鞄の持ち手)を別々に掛けてもよいし、複数の物品Bの各々の持ち手を掛けてもよい。
【0111】
フック401、403は、支持体357の下方に配置している。フック401、403は、支持体357に対して上下方向に変位することが可能である。フック401、403の昇降機構について詳述すると、フック401、403を有するフック部材は、支持体357とは別体をなしており、フック部材の上部は、支持体357の下方部位に取着または成形している、下方に開口した筒状部409に挿入される。筒状部409は上下方向に伸長しており、フック部材の上部は当該筒状部409の内で上下方向に昇降する。
【0112】
そして、フック401は、支持体357の筒状部409から下方に突出して昇降する前記フック部材の下部に形成され、当該フック部材よりも前方で上向きに開放している。従って、この前側のフック401に鞄等の物品Bの持ち手を掛けた場合において、背凭れ11が後傾したとしても、持ち手はフック401の底部またはフック部材に当たるためフック401から外れて脱落することはない。並びに、後側のフック403は、同フック部材の下部に形成され、当該フック部材よりも後方で上向きに開放している。
【0113】
筒状部409の周壁(図示例では、後壁421)には、上下方向に沿って複数の係止孔411を穿ってある。これに対し、フック部材の上部の対応する側の面(図示例では、後面)には、係止孔411に係合する爪405を成形してある。筒状部409に挿入されるフック部材の上部は、例えば樹脂等の材料を用いて成形されているので、その弾性変形を通じ、簡易な構造ながら爪405を突没動作させることが可能である。
【0114】
爪405は、フック部材を筒状部409に対して持ち上げる外力が作用したときに、筒状部409の周壁に摺動し、弾性変形して没入、係止孔411から脱出する。一方、フック部材を筒状部409に対して引き下ろす外力が作用したときには、爪405は没入することなく、係止孔411から脱出し得ない。つまり、フック部材は、上昇可能であるが下降不能であり、上昇に伴って爪405が係合する係止孔411が一個づつ上にずれる。
【0115】
筒状部409の係止孔411を穿った周壁の内向面(後壁421の前向面)における、最上位の係止孔411よりも上方の箇所には、フック部材の爪405に接触してこれを大きく没入させる突起413を設けている。フック部材の上部には、爪405が突起に押されて大きく没入した場合にこの爪405を没入状態に維持する保定体407を設けている。さらに、筒状部409の、係止孔411を穿った周壁とは反対側の周壁の内向面(前壁の後向面)における、最下位の係止孔411よりも下方の箇所には、没入状態の爪405に接触してこれを再度押し出す突起415を設けている。
【0116】
図33に示すように、フック部材を上昇させ、その爪405を最上位の係止孔411よりも上方に位置させれば、突起413に押された爪405が保定体407に係合して没入したままとなり、何れの係止孔411にも掛からなくなる。つまり、フック部材を下降させることが可能となる。そして、図34に示すように、フック部材を下降させ、その爪405を最下位の係止孔411よりも下方に位置させれば、突起415に押された爪405が保定体407から脱離して突出した状態となる。従って、再び爪405が係止孔411に係合するようになる。総じて言えば、フック部材は、上下動範囲の上端に達するまでは上方向にのみ変位し、上端に達して初めて下方向に変位することが可能となる。そして、上下動範囲の下端に達した後は、図32等に示すように、再び爪405を何れかの係止孔411に係合させ、以てフック部材の高さ位置を固定することができるのである。
【0117】
背凭れ11の下方部位に付属する保持手段は、物品Bを支え持つことのできる棚417である。本実施形態において、棚417は、後方に延出した底壁419と、底部の後端から上方に延出した後壁421とを有するもので、その後壁421が背凭れ11の背面から後方に離間し、背凭れ11と後壁421との間に物品Bを収納することができる。棚417は、背凭れ11の背面を形作るアウターシェルたる背支持部材209に固定、または一体成形している。この棚417は、背支持部材209の下端部から延出しており、底壁419及び後壁421を含めて側面視略J字型をなす。棚417は、弾性変形可能とすることが好ましい。
【0118】
背凭れ11の背面、底壁419及び後壁421に包囲される物品Bの収納空間は、左右の側方に開放している。
【0119】
本実施形態によれば、背凭れ11の背面側が、上端近傍の部位255から下方に向かうにつれて徐々に前方に退避する形状をなしている椅子において、上端近傍の部位255よりも下方の領域を鞄等の手荷物その他の物品Bを配置する空間として利用可能とするべく、背凭れ11の背面側に当該物品Bの荷重を支持できる保持手段401、403、417を設けたため、着座者の所持する鞄等を保持手段401、403、417を利用して背凭れ11の背面側に置いておくことができる。
【0120】
前記保持手段401、403が前記背凭れ11に取り付けられるハンガー0に付属しているため、この保持手段401、403がハンガー0とともに椅子のオプションとして好適な美観を呈する。また、ハンガー0を背凭れ11から取り外すことで、保持手段401、403を撤去することもできる。物品Bが比較的小さな手荷物等である場合には、保持手段417のみによってこの物品Bを保持することが可能であって、保持手段401、403を設けなくとも所期の目的を達成し得る。
【0121】
前記保持手段401、403が、前記支持体357に設けた、前記物品Bの持ち手を掛けることのできるフックであるため、持ち手を有する鞄等を保持させるために有効に機能し、利便性が高い。
【0122】
前記フック401、403が前記支持体357に対して上下方向に変位可能であるため、持ち手の長さや物品B自体の寸法等に応じて、フック401、403を適切な高さ位置に調整することができる。
【0123】
前記フック(のうち一方401)は前方が開放し、後方は開放していないものであるため、物品Bの持ち手をフック401に掛けた状態で背凭れ11を後傾させたとしても、持ち手がフック401から外れにくい。
【0124】
背凭れ11の下方部位に保持手段417が付属していることから、物品B自体をこの保持手段417によって保持することができる。しかも、本実施形態では、背凭れ11の上下に保持手段401、403、417を両備している。従って、物品Bの荷重を確実に支持でき、また、背凭れ11を大きくロッキングさせた場合にも、物品Bが床に擦ってしまうおそれは小さくなる。
【0125】
<第二実施形態>図35ないし図38に示す第二実施形態の椅子は、ハンガー0に付属する保持手段401の態様を変更したものである。以降、上記第一実施形態との相異を中心に述べる。明記しない要素については、第一実施形態と同様の構成を採用することができる。
【0126】
本実施形態におけるハンガー0は、その支持体357の細部が第一実施形態のそれと異なっている。本実施形態では、ハンガー0の下辺349を中央部で分断しており、その間に介在する支持体357を中空な箱体としている。そして、この支持体357の内部に、ハンガー0に付属する保持手段たるフック401を配している。
【0127】
フック401は、略水平な軸402周りに回動可能であるように支持させてあり、図37に示しているように、下方に回動させて支持体357内部から引き出すことができ、また、図38に示しているように、上方に回動させて支持体357内部に収容することができる。フック401の回転軸402は、支持体357の下端近傍に位置する。フック401を支持体357から引き出したとき、このフック401は前方が開放している状態となる。
【0128】
箱状をなす支持体357の外郭を形作る蓋358は、フック401が収容される支持体357内部を遮蔽するものである。蓋358は、略水平な軸360周りに回動可能であるように支持させてあり、下方に回動させて支持体357内部を遮蔽し、また上方に回動させて支持体357内部を開放することができる。蓋358の回転軸360は、支持体357の上端近傍に位置する。蓋358は、支持体357とは別体の部材としてもよいし、支持体357に一体成形してもよい。蓋358を支持体357に一体成形する場合、回転軸360は例えば樹脂ヒンジとする。蓋358の下縁には、支持体357から引き出したフック401との干渉を避けるための切欠362を形成してある。
【0129】
支持体357は、第一実施形態と同様、背凭れ11の後向面に接するとともに、ボルト355により背凭れ11に対して固定される。このボルト355の頭部は、フック401が収容される支持体357内部に所在する。つまり、蓋358は、ボルト355を隠蔽する機能をも果たしている。
【0130】
背凭れ11の下方部位には、第一実施形態において述べた、物品Bを支え持つことのできる保持手段417を設けておくことが好ましい。
【0131】
本実施形態によれば、背凭れ11の背面側が、上端近傍の部位255から下方に向かうにつれて徐々に前方に退避する形状をなしている椅子において、上端近傍の部位255よりも下方の領域を鞄等の手荷物その他の物品Bを配置する空間として利用可能とするべく、背凭れ11の背面側に当該物品Bの荷重を支持できる保持手段401、417を設けたため、着座者の所持する鞄等を保持手段401、417を利用して背凭れ11の背面側に置いておくことができる。
【0132】
前記保持手段401が前記背凭れ11に取り付けられるハンガー0に付属しているため、この保持手段401がハンガー0とともに椅子のオプションとして好適な美観を呈する。また、ハンガー0を背凭れ11から取り外すことで、保持手段401を撤去することもできる。
【0133】
前記保持手段401が、前記支持体357に設けた、前記物品Bの持ち手を掛けることのできるフックであるため、持ち手を有する鞄等を保持させるために有効に機能し、利便性が高い。
【0134】
前記フック401は前方が開放し、後方は開放していないものであるため、物品Bの持ち手をフック401に掛けた状態で背凭れ11を後傾させたとしても、持ち手がフック401から外れにくい。
【0135】
非使用時には前記フック401を前記支持体357の内部に収容して、家具としての格調を一層高めることができる。
【0136】
背凭れ11の下方部位に保持手段417が付属していることから、物品B自体をこの保持手段417によって保持することができる。しかも、本実施形態では、背凭れ11の上下に保持手段401、417を両備している。従って、物品Bの荷重を確実に支持でき、また、背凭れ11を大きくロッキングさせた場合にも、物品Bが床に擦ってしまうおそれは小さくなる。
【0137】
<第三実施形態>図39及び図40に示す第三実施形態の椅子は、背凭れ11の構造、ハンガー0に付属する保持手段の態様、並びに背凭れ11の下方部位に付属する保持手段の態様を変更したものである。以降、上記第一、第二実施形態との相異を中心に述べる。明記しない要素については、第一実施形態または第二実施形態と同様の構成を採用することができる。
【0138】
本実施形態における背凭れ11は、正面視または背面視枠体状(図示例では、四方枠)をなす背フレーム423の中空な中央領域に、撓み変形可能及び/または伸縮可能な張り地425、特にメッシュ地を張り設けてなる。背フレーム423は、その上端部が最も後方に位置しており、上端部から下方に遷移するに従い前方に退避した側面視形状をなす。そして、着座者の腰部付近に当たる高さ位置にて弓なり状に湾曲し、そこから後下方に向かって延びている。第一、第二実施形態と同様に、この背凭れ11の下部は、左右に両立する背支持アーム151によって支持基部3に連結している。
【0139】
本実施形態におけるハンガー0は、左右方向に延伸する棒状のハンガー本体345と、ハンガー本体345に下方から連接してこれを支持するとともに背フレーム423の上端部に固定される支持体357と具備する。その上で、支持体357における、背フレーム423に固着する部位の中央部から下方に向けて、保持手段たるフック401を突出させている。本実施形態では、これらハンガー本体345、支持体357及びフック401を一体成形している。このフック401は、前方が開放している。
【0140】
本実施形態における、背凭れ11の下方部位に付属する保持手段427は、背フレーム423に張り設けている張り地425に似た性質のメッシュ地またはその他の布地、網等を用いた袋状のものである。この袋状の保持手段427の後背部を構成するメッシュ地等の左右の側縁部は、背フレーム423の左右の端縁部に形成した凹溝(図示せず)に嵌め入れることにより背フレーム423に支持させる。並びに、同メッシュ地等の下縁部もまた、背フレーム423の下端縁部に形成した凹溝(図示せず)に嵌め入れることによって背フレーム423に支持させる。但し、袋状の保持手段427の後背部を構成するメッシュ地等の側縁部及び下縁部を背フレーム423に支持させるのではなく、背凭れ面を構成する張り地425に縫い付けたり、溶着したりすることを妨げない。
【0141】
袋状の保持手段427の後背部を構成するメッシュ地等の上縁部、換言すれば袋の開口縁部に、張力を発揮するゴム紐等を縫い付けてもよい。あるいは、同メッシュ地等の上縁部に部分的に弾性糸を使用し、袋の開口部が窄まるような弾性力を発揮させることも考えられる。
【0142】
袋状の保持手段427の後背部を構成するメッシュ地等自体を(袋縫い等により)袋とし、その内側に保形のための部材、例えば樹脂製の薄帯または薄板部材を収容する等してもよい。
【0143】
保持手段427となる袋の内部、即ち張り地425と上記のメッシュ地等との間には、弾性変形可能な補助シェル429を設ける。補助シェル429の上部は、着座者の腰部に近い高さに達しており、その上部が後方に湾曲して張り地425の背面から離間している。鞄等の物品Bを保持手段427に保持させる場合、この物品Bは袋の内部であって補助シェル429の後背に収めることとなる。
【0144】
保持手段427による物品Bの収納空間は、後上方に開放している。この保持手段427または物品Bの収納空間、さらには補助シェル429は、背凭れ11と支持基部3とを連結する左右の背支持アーム151の間に位置しており、収納空間に収納した物品Bが側方に落下することは背支持アーム151によって(ある程度以上)抑制される。
【0145】
補助シェル429は、収納空間に収めた物品Bが着座者の身体の背面に直に当たって違和感を覚えさせることを防ぐ働きをする。さらには、補助シェル429が着座者の腰部をバックアップするランバーサポートにもなり得る。補助シェル429をランバーサポートとしても有効に機能させるためには、図41に示すように補助シェル429の左右両端縁の少なくとも一部(左右の背支持アーム151間に位置している部分)を凹凸係合構造等によって背フレーム423に係合させる、あるいは、図42に示すように背フレーム423に一体成形する等して、着座者の腰部の位置における前後方向の弾性を高めることが考えられる。
【0146】
本実施形態によれば、背凭れ11の背面側が、上端近傍の部位から下方に向かうにつれて徐々に前方に退避する形状をなしている椅子において、上端近傍の部位よりも下方の領域を鞄等の手荷物その他の物品Bを配置する空間として利用可能とするべく、背凭れ11の背面側に当該物品Bの荷重を支持できる保持手段401、427を設けたため、着座者の所持する鞄等を保持手段401、427を利用して背凭れ11の背面側に置いておくことができる。
【0147】
前記保持手段401が前記背凭れ11に取り付けられるハンガー0に付属しているため、この保持手段401がハンガー0とともに椅子のオプションとして好適な美観を呈する。また、ハンガー0を背凭れ11から取り外すことで、保持手段401を撤去することもできる。
【0148】
前記保持手段401が、前記支持体357に設けた、前記物品Bの持ち手を掛けることのできるフックであるため、持ち手を有する鞄等を保持させるために有効に機能し、利便性が高い。
【0149】
前記フック401は前方が開放し、後方は開放していないものであるため、物品Bの持ち手をフック401に掛けた状態で背凭れ11を後傾させたとしても、持ち手がフック401から外れにくい。
【0150】
背凭れ11の下方部位に保持手段427が付属していることから、物品B自体をこの保持手段427によって保持することができる。しかも、本実施形態では、背凭れ11の上下に保持手段401、427を両備している。従って、物品Bの荷重を確実に支持でき、また、背凭れ11を大きくロッキングさせた場合にも、物品Bが床に擦ってしまうおそれは小さくなる。
【0151】
なお、本発明は以上に詳述した実施形態に限られるものではない。
【0152】
列挙すると、ハンガーに付属する保持手段は、前方に開放するフックには限定されない。閉じた閉ループを形成できる開閉可能なリング(いわゆるスナップフック、スイベルフック、アイスナップ、カラビナフック、シャックル、ナスカン等々)を保持手段として採用する場合、これは後方に開放するものであっても構わない。ハンガーに付属する保持手段たるフック類が、左側方または右側方に開放していてもよい。
【0153】
上記実施形態の椅子は何れも、ハンガーに付属する保持手段と、背凭れの下端部位に付属する保持手段とを両備していたが、何れか一方を省略することも許される。ハンガーに付属する保持手段が存在していれば、鞄等の物品の持ち手を当該保持手段に保持させることにより、背凭れの背面側に物品を置いておくことができる。背凭れの下端部位に付属する保持手段が存在していれば、鞄等の物品を当該保持手段に保持させることにより、やはり背凭れの背面側に物品を置いておくことができる。
【0154】
ハンガーに付属する保持手段たるフック類は、ねじ止めその他任意の止着手段により、ハンガー(の支持体)に対して着脱自在であってもよい。さらに、物品の種類や持ち手の形状に合わせて、フック類を交換(手提げ鞄用フック、リュックサック用フック、肩掛け鞄用フック等)できるようにすることも好ましい。
【0155】
保持手段たるフック類は、必ずハンガーに付随するものであるとは限られない。フック類を、背凭れの背面(第一、第二実施形態における背支持部材209や、第三実施形態における背フレーム423等の背面)に取着してもよい。
【0156】
背凭れの下方部位に付随する保持手段の高さ位置を、上下させ得るように構成してもよい。例えば、第一、第二実施形態における棚417を背支持部材209とは別体の部材とし、当該部材417を背支持部材に対し上下スライド可能であるように背支持部材209に支持させる。あるいは、第三実施形態における保持手段たる袋427を、背フレーム423に対し上下スライド可能であるように背フレーム423に支持させる。
【0157】
その他各部の具体的構成は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0158】
本発明は、例えばオフィス等において使用される事務用椅子として利用することができる。
【符号の説明】
【0159】
0…ハンガー
11…背凭れ
401、403…保持手段(フック)
417、427…保持手段(棚、袋)
B…鞄等の物品
【技術分野】
【0001】
本発明は、オフィス等において使用されるハンガー付きの椅子に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、勤務者個々人の自席を固定せず、誰でも自由に利用できるデスク及び椅子を配したカフェスタイルのフロアを構築する、いわゆるフリーアドレスオフィスを採用する企業が増えつつある。勤務者は、必要書類やノート型PC等を持参し、空いている席の中から任意の席に着いて仕事をする。
【0003】
各勤務者の自席を定めず、またオフィス内に滞在する勤務者の数も流動的であるという都合上、フリーアドレスオフィスでは、例えば勤務者の着ている上着等を収納するクローゼット等を予め用意しておくことは少ない。このようなオフィスでの使用に適しているように、衣類を掛けておくことのできるハンガーを背凭れに取り付けた事務用(または、執務用)椅子が既に広く流通している(下記特許文献を参照)。
【0004】
一方で、各勤務者が持参した鞄等の荷物をどこに置いておくか、という問題は依然として解決されていない。無論、各勤務者の荷物を収納するロッカー等を配設することは容易に考えられるが、空間利用の効率化や配備する什器類の数の削減といったフリーアドレスオフィスの利点を打ち消すことになってしまう。加えて、持ち主から離れた場所にまとめて荷物を置くことは、利便性の低下や、荷物の紛失または盗難のおそれがあることから、勤務者は自分の荷物をできるだけ自身に近い所に置いておきたいと考えるはずである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−121403号公報
【特許文献2】特開2010−022573号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、勤務者の持参する鞄等の荷物の好適な置き場所を提供できる椅子を実現しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明では、背凭れの背面側が、上端近傍の部位から下方に向かうにつれて徐々に前方に退避する形状をなしている椅子であって、上端近傍の部位よりも下方の領域を鞄等の手荷物その他の物品を配置する空間として利用可能とするべく、背凭れの背面側に当該物品の荷重を支持できる保持手段を設けたことを特徴とする椅子を構成した。
【0008】
前記保持手段は、例えば、前記背凭れに取り付けられるハンガーに付属するものとする。
【0009】
より具体的には、前記ハンガーを、衣服を掛けることができるよう左右に拡張したハンガー本体と、ハンガー本体を支持するとともに前記背凭れの背面側に固定される支持体とを具備するものとし、前記保持手段を、前記支持体に設けた、前記物品の持ち手(リュックサックのベルト等を含む)を掛けることのできるフックとすることが好ましい。
【0010】
物品の持ち手や物品自体の寸法等は、種々異なる。前記フックが前記支持体に対して上下方向に変位可能であれば、様々な長さの持ち手、または様々な大きさの物品に対して、フックを適切な高さ位置を調整することが可能となる。
【0011】
前記フックは、非使用時に、前記支持体の内部に収容できるものとしてもよい。
【0012】
前記フックは、前方が開放しているものとすることが好ましい。背凭れの後傾動作時に、物品の持ち手がフックから外れることを予防するためである。
【0013】
前記保持手段を、前記背凭れの下方部位に付属させてもよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、勤務者の持参する鞄等の荷物の好適な置き場所を提供できる椅子が実現される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の第一実施形態を示す前方からの斜視図。
【図2】同実施形態の張地を分解して示す前方からの斜視図。
【図3】同実施形態の張地を一部省略して示す正面図。
【図4】同実施形態の張地を分解して示す左側面図。
【図5】同実施形態を示す背面図。
【図6】同実施形態の脚を省略して示す後方からの斜視図。
【図7】同実施形態の全体を一部省略して示す分解斜視図。
【図8】同実施形態の支持基部及び背支持アームの要部を拡大して示す前方からの斜視図。
【図9】同実施形態の支持基部及び背支持アームの要部を拡大して示す分解斜視図。
【図10】同実施形態の支持基部を一部省略して分解して示す後方からの斜視図。
【図11】同実施形態の支持基部を分解して示す正面図。
【図12】同実施形態の支持基部及び座を示す左側面図。
【図13】同実施形態のロッキング機構を示す図12に相当する作用説明図。
【図14】同実施形態の座と座受を示す分解斜視図。
【図15】図5における要部を示したA−A線断面図。
【図16】図4における要部を示したB−B線断面図。
【図17】図16における要部を示したC−C線断面図。
【図18】同実施形態の背凭れ支持体と背支持部材との取付構造を示した斜視図。
【図19】同実施形態の背シェル及び背支持部材を分解して示す斜視図。
【図20】同実施形態の背シェルの正面図。
【図21】同実施形態の背支持部材の正面図。
【図22】図3における要部を示したD−D線断面図。
【図23】図3における要部を示したE−E線断面図。
【図24】図5におけるF−F線拡大断面図。
【図25】図21におけるG−G線断面図。
【図26】同実施形態のハンガーを筒状部を省略して示す正面図。
【図27】同実施形態のハンガーの支持体を切断した底断面図。
【図28】同実施形態のハンガーの取付構造を筒状部を省略して示す分解斜視図。
【図29】同実施形態のハンガーの取付構造を筒状部を省略して示す側断面図。
【図30】同実施形態におけるハンガーを取り外した状態を示す後方からの斜視図。
【図31】同実施形態におけるハンガーを取り外した状態を示す側断面図。
【図32】同実施形態におけるハンガーに付属するフックを示す側断面図。
【図33】同実施形態におけるハンガーに付属するフックを示す側断面図。
【図34】同実施形態におけるハンガーに付属するフックを示す側断面図。
【図35】本発明の第二実施形態を示す背面図。
【図36】同実施形態の脚を省略して示す後方からの斜視図。
【図37】同実施形態におけるハンガーに付属するフックを示す側断面図。
【図38】同実施形態におけるハンガーに付属するフックを示す側断面図。
【図39】本発明の第三実施形態を示す左側面図。
【図40】同実施形態の背面図。
【図41】同実施形態における背フレームと補助シェルとの関係を示すH−H線要部平端面図。
【図42】同実施形態における背フレームと補助シェルとの関係を示すH−H線要部平端面図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照して説明する。各実施形態は、本発明を事務用回転椅子に適用した場合のものである。
【0017】
<第一実施形態>図1ないし図34に、第一実施形態の椅子を示す。この椅子は、脚1と、この脚1に支持された支持基部3と、この支持基部3上に配された座受5と、この座受5に支持された座7と、前記支持基部3に回動可能に支持された背凭れ支持体9と、この背凭れ支持体9に取付けた背凭れ11と、この背凭れ11の後傾動作に伴わせて前記座受5及び座7を上動及び傾動させるロッキング機構13と、前記背凭れ支持体9に設けられた肘掛け15と、背凭れ11の背後に設けられたハンガー0とを具備してなる。
【0018】
《脚の構成》
脚1は、図1ないし図7に示すように、脚ベース17と、この脚ベース17の中心部に設けられた脚支柱19を備えてなる。
【0019】
脚ベース17は、図1ないし図5及び図7に示すように、中心部に設けたハブ21から複数本の脚羽根23を放射状に突出させて設けたもので、前記脚羽根23先端にキャスタ25をそれぞれ設けている。
【0020】
前記脚支柱19は、図1ないし図5、図7及び図14に示すように、ガススプリングタイプのもので上下方向に弾性的に伸縮し、所望の位置においてロックすることができるようにした通常のものである。すなわち、この脚支柱19は前記脚ベース17のハブ21に嵌着されたガススプリング本体27と、このガススプリング本体27の上端から突出させたロッド29とを備えたもので、前記ロッド29の上端にロック解除用の操作ボタン31が突出させてある。そして、このロッド29の上端部に支持基部3を装着している。前記ロック解除用操作ボタン31は、後述する肘掛け15に設けられた昇降用の操作レバー295により操作される。
【0021】
《支持基部の構成》
支持基部3は、図7ないし図13に示すように、前記脚支柱19のロッド29に取付けられるメインフレーム33と、このメインフレーム33に取付けられた前リンク軸35及び支軸37を具備してなるものである。前リンク軸35は、前リンク39を介して前記座受5の前端部を支持するためのものである。支軸37は、前記背凭れ支持体9を支持するとともに後リンク41を介して座受5の略中間部を支持するためのものである。
【0022】
メインフレーム33は、図7ないし図13に示すように、前記脚支柱19におけるロッド29の上端部に嵌着されるボス部43と、このボス部43の上端側を囲う平面視半円弧状をなす後フレームメンバ45と、この後フレームメンバ45の左右の前端からそれぞれ前方に延出する一対の側フレームメンバ47と、これら側フレームメンバ47の前端部間を結合し前端に平坦な面を有する前フレームメンバ49とを備えたものである。これらボス部43、後フレームメンバ45、側フレームメンバ47、及び前フレームメンバ49は、アルミダイキャスト等により一体に成型されている。前フレームメンバ49の上面部には、前記前リンク軸35を支持する前の軸受部51が一体に設けられているとともに前記後フレームメンバ45と側フレームメンバ47との境界付近には前記支軸37を支持する後ろの軸受部53が一体に設けられている。なお、2つの軸受部51、53の軸心の床面からの高さが異なっており、前の軸受部51の方が後ろの軸受部53より高い位置に設定されている。
【0023】
そして、このメインフレーム33には、図12に示すように、背凭れ11を前方に付勢する傾動反力発生機構55が組み込まれている。
【0024】
傾動反力発生機構55は、図8ないし図13に示すように、基端部が前記支軸37に支持された左右対をなすトルク伝達用のブラケット57と、これら左右のトルク伝達用のブラケット57の先端部間に架設した可動軸59と、この可動軸59をメインフレーム33に設けたバネ受け61を足場として後方に弾性付勢するスプリング63とを具備してなる。また、符号64は、前記脚支柱19のロッド29に設けられたロック解除用の操作ボタン31を押圧するための昇降用ロック解除アームであり、図8ないし図10に示すように、符号297は、肘掛け15に設けた昇降用の操作レバー295の操作力を前記昇降用ロック解除アーム64に伝達するための昇降用のワイヤである。前記操作レバー295を操作することでワイヤ297を引くと、支軸37に外嵌された基端ボス部66が回動し、基端ボス部66を挟んでワイヤ297と反対側に一体に設けられたロック解除アーム64が下方に回動する。
【0025】
また、支持基部3は、図3ないし図6、図10及び図11に示すように、上カバー65と下カバー67とによって覆われている。
【0026】
上カバー65は、図10及び図11に示すように、支持基部3を上面側から覆うもので、支持基部3に係合するための下向きに突出した上係止爪69が設けられている。下カバー67は、支持基部3を下面側から覆うもので、支持基部3に係合するための上向きに突出した下係止爪71が設けられている。また、これら上カバー65と下カバー67とは、それら開口端縁73、75同士が突き合うように配されている。
【0027】
支持基部3のメインフレーム33の前側の外周面、換言すれば前フレームメンバ49の前端の平坦面には、図8、図10及び図11に示すように、前記上カバー65と下カバー67とを取付けるための上下共用取付部77とが設けられている。
【0028】
詳述すれば、前記支持基部3のメインフレーム33は、図8、図10及び図11に示すように、上カバー65の上係止爪69と下カバー67の下係止爪71とをそれぞれ係わり合わせるための上下共用取付部77を備えたものであり、前記上下共用取付部77が、前記上係止爪69が係わり合う係合端面79と、前記下係止爪71が係わり合う係合端面81と、前記上係止爪69の横ずれを係止する横ずれ防止用の係止端面83と、前記下係止爪71の横ずれを係止する横ずれ防止用の係止端面85とを備えている。
【0029】
前記上下共用取付部77は、図8、図10及び図11に示すように、メインフレーム33における前フレームメンバ49の前端の外周面87に設けられたもので、その前端の外周面87を長方形状に凹陥させたものである。この上下共用取付部77において、上辺が上カバー65の上係止爪69が係わり合う係合端面79であり、下辺が下カバー67の下係止爪71が係わり合う係合端面81である。また、上下共用取付部77において、左右両側辺が上カバー65及び下カバー67の上係止爪69及び下係止爪71に対する横ずれ防止用の係止端面83、85である。
【0030】
なお、メインフレーム33の外周における前後方向中間付近には、図8ないし図10、図12及び図13に示すように、上カバー65を取付けるための上専用取付部89と下カバー67を取付けるための下専用取付部91とが設けられている。上カバー65には上専用取付部89に係わり合う爪93が設けられ、下カバー67には下専用取付部91に係わり合う爪95が設けられている。
【0031】
また、メインフレーム33の外周における後端には、図10に示すように、上カバー65を取付けるための上専用取付部97と下カバー67を取付けるための下専用取付部99とが設けられている。上カバー65には上専用取付部97に係わり合う爪101が設けられ、下カバー67には下専用取付部99に係わり合う爪103が設けられている。換言すれば、メインフレーム33の後フレームメンバ45には、下専用取付部99である略水平な中央突条と、この下専用取付部99の両側に配置した一対の上専用取付部97である側突条とが設けられている。上専用取付部97は、前記下専用取付部99に対して高さを異ならせて配置されている。
【0032】
以上に加えて、上カバー65及び下カバー67の外周同士も突き合わせて嵌合するように、上下カバー65、67の開口端縁73、75には、回転軸の近傍部分を除いて溝、具体的には、上カバー65及び下カバー67の一方には嵌合凹部が外方に露出し、他方には嵌合凹部が内方に露出した互いに嵌合可能なL型溝が形成されている。これによって支持基部3の上下専用取付部89、91に係合するようにした上下カバー65、67の爪93、95を配するべく、支持基部3から一定間隔離れた位置を保ってカバーする構成をなしていても上下カバー65、67同士を確実に嵌合することができる。
【0033】
以上説明した支持基部3の前の軸受部51に前リンク軸35を介して左右の前リンク39を回動可能に取付けている。前リンク39の支持基部3への取付構造は次のようになっている。すなわち、前記支持基部3は、図8ないし図13に示すように、左右にそれぞれ前記前リンク軸35を支持する軸受部51と、軸方向に垂直な対向する一対の平面105とを備えたものであり、前記前リンク39は、椅子本来の機能を発揮し得る使用時回動範囲(U)では前記平面105間に位置し、前記前リンク39を支持基部3に対して挿脱し得る図示しない挿脱時回動範囲では前記平面105外に位置する平面対応部分107を備えたもので、支持基部3に前リンク軸35を介して前リンク39を回動可能に支持させている。
【0034】
換言すれば、前記支持基部3は、図8ないし図13に示すように、前リンク軸35を支持する前の軸受部51と、この軸受部51の軸方向に隣接する位置に前方及び上方に開口したリンクアーム収容部109とを備えている。リンクアーム収容部109は、前リンク軸35と直交する一対の平面105間に形成されたものである。前記前リンク39は、上端部に前連結軸111を保持する軸孔113を有するとともに基端部に前リンク軸35に外装されるボス部115を有しており、このボス部115の外周にリンクアーム117を備えている。このリンクアーム117は、前記リンクアーム収容部109に対応する平面対応部分107を有している。
【0035】
そして、前記使用時回動範囲(U)では、前記リンクアーム117の平面対応部分107が前記リンクアーム収容部109の対向する平面105間に位置する。そのため、左右の前リンク39が、前記前リンク軸35と前連結軸111とから外れることが禁止されている。一方、前記挿脱時回動範囲では、前記リンクアーム117の平面対応部分107が前記リンクアーム収容部109の対向する平面105外に位置する。そのため、左右の前リンク39が、前記前リンク軸35と前連結軸111とから外れ得るようになっている。組立状態においては、前リンク39が前記挿脱時回動範囲にまで回動できないように設定されている。組付け時には、前リンク39を後ろに寝かせて左右から、座受5の前リンク取付部121に通した前連結軸111と、メインフレーム33の前の軸受部51に通した前リンク軸35に嵌め込む。その状態で、前記前リンク39を前に倒してリンクアーム収容部109の対向する平面105間に前リンク39のリンクアーム117を嵌め込む。その後、座受5の略中間部に位置する後リンク取付部127に後連結軸123をそれぞれ嵌め込んで、左右から背支持アーム151を付けることにより、前述した組立状態となる。すなわち、ねじ等の抜け止め部品を用いることなしに、左右の前リンク39をメインフレーム33に取付けることができる。
【0036】
以上のようにしてなる支持基部3に、前リンク39及び後リンク41を介して座受5を支持させている。
【0037】
《座受の構成》
座受5は、図4ないし図6、図12、図13及び図15に示すように、アウターシェルと称し得る形態をなすもので、この実施形態においては合成樹脂により一体に成型されている。座受5の下面には、前連結軸111を介して前リンク39の回動端119を取付けるための前リンク取付部121と、後連結軸123を介して後リンク41の回動端125を取付けるための後リンク取付部127が設けられている。前記前リンク取付部121及び後リンク取付部127は、座受5に一体に設けられている。
【0038】
座受5の上面には、縦横にマス目状にリブ126が形成され、そのリブ126の一部平行な2つのものがそのまま座受5の下方に突出するように伸びて前リンク取付部121及び後リンク取付部127を構成している。前リンク取付部121及び後リンク取付部127の左右は、貫通孔を有した側壁128、130により塞がれている。これらの側壁128、130も前記リブ126の一部を下方に延長して形成してもよい。その他のリブ126はこれらのリブ126と複数箇所でつながるように形成され、座受5自体の強度だけでなく、前リンク取付部121、後リンク取付部127の強度にも寄与するように設計されている。すなわち、前記前リンク取付部121及び後リンク取付部127は、それぞれ前壁118、122と後壁120、124と左右の側壁128、130とを備えた中空体状のもので、前記前壁118、122、後壁120、124及び左右の側壁128、130の少なくとも1枚は、前記リブ126の一部を下方に延長することにより形成されている。
【0039】
《座の構成》
座7は、図7、図14及び図15に示すように、前記座受5の上面に取付けられたインナーシェル129と、このインナーシェル129の上に配設したクッション131と、このクッション131の外面に張設した張地133とを備えたものである。
【0040】
インナーシェル129は、図15に示すように、合成樹脂により一体に成型されたもので、図示しない爪等により、座受5に固定されている。このインナーシェル129は、前側に斜め下方になだらかに垂れ下がる前端垂れ下がり部分135を設けるとともに、前記中間部137と前記周縁部139との境界に中間部137が周縁部139よりも下方に膨出するような環状の段部141が形成されている。
【0041】
クッション131は、図14及び図15に示すように、発泡ウレタン等により作られたもので、前側に前記インナーシェル129の前端垂れ下がり部分135に沿うクッション垂れ下がり部分143を備えている。また座7の芯材であるクッション131の上面には一方向に並ぶ凹凸部、換言すれば、この実施形態では前後方向に並ぶ溝145を複数本設けている。
【0042】
張地133は、図1ないし図7、図14及び図15に示すように、クッション131及びインナーシェル129の周縁部139を覆う袋状のものである。張地133の外周縁147は筒状に縫製し、その内に紐148を通してある。張地133の縁147は、インナーシェル129の下面側に巻き込み、紐148を引っ張ることで、紐148とともにインナーシェル129の下面側に設けた段部141に掛け止める。これにより、張地133の縁147は、インナーシェル129の段部141の端面に沿って配される。さらに、インナーシェル129の段部141及び張地133の縁147は、前記座受5により下方から隠されるように覆われる。因みに、インナーシェル129の四隅において、張地133をインナーシェル129に対してタッカ止め、接着等により固着するようにしてもよい。特に、本実施形態のインナーシェル129の前側は垂れ下がっていることから、張地133の前側の隅角部をこのようにして固定することで確実な外れ止めになる。
【0043】
この張地133には、前記クッション131に形成された溝145に関連させて視覚的特徴部分が形成されている。この実施形態において視覚的特徴部分は、前記張地133にエンボス加工(例えば、張地133となる布や皮革等を、視覚的特徴部分に対応した凹凸模様を形成した押し型を以て強圧する。張地133が合成繊維製品である場合、型押しとともに加熱する。張地133がレーヨンや木綿等である場合、当該生地に樹脂加工を施してから型押しして加熱する)を施してなる線条149である。線条149は、張地133の上面から若干凹み、張地133の下面から下方に突出している。線条149は、この実施形態では前後方向に並ぶように複数本存在しており、張地133をクッション131に被せたときに平面視クッション131の溝145に上方から重なり合う位置に存在している。ただし、線条149が着座者やその他の者の視覚に認識されることが重要なのであり、クッション131の溝145と張地133の線条149とは、必ずしも平面視重なり合うとは限られない。
【0044】
クッション131の上面側に張られた張地133及びその視覚的特徴部分149と、クッション131との間には、凹凸部145による空隙が介在する。この凹凸部145が、着座面の通気性の確保に寄与し、座り心地の向上をもたらす。
【0045】
《背凭れ支持体の構成》
背凭れ支持体9は、図7ないし図9、図16及び図17に示すように、前記支持基部3から後上方に延出させた左右の背支持アーム151と、これら左右の背支持アーム151の上端部169同士を連結する上連結材153と、前記トルク伝達用のブラケット57の基端から一体に後上方に向けて延設され前記背支持アーム151の基端部内側面に添接する左右の背支持ブラケット155と、これら左右の背支持ブラケット155の後端を連結する下連結材157とを具備してなる。
【0046】
左右の背支持アーム151は、図1ないし図9、図13、図16ないし図18に示すように、それぞれ前記支持基部3に回動可能に支持された樹脂製のものであり、前後方向に延びる前後方向延出部159と、この前後方向延出部159の後端から連続して上方に伸びる起立部161とを備えたものである。図示例では、前後方向延出部159と起立部161とは、側面視略くの字状をなしている。各背支持アーム151は、その基端部、すなわち前記前後方向延出部159の前端部163に、前記支持基部3に設けられた支軸37の端部165に外側から嵌め合わせるための軸装部167を備えている。また、各背支持アーム151は、その先端部、すなわち前記起立部161の上端部169に、上連結材153を取付けるためのアーム突出部171を備えている。
【0047】
各背支持アーム151の軸装部167は、図3ないし図9及び図16に示すように、前記支軸37の端部165を嵌合させるべく内方にのみ開口させた軸穴173を備えている。具体的には、この軸穴173にブッシュ175を介して前記支軸37の端部165が相対回転可能に嵌合されるようになっている。ブッシュ175は、支軸37を装着する前に背支持ブラケット155の内側面側から貫装させたものであり、このブッシュ175の内周に前記支軸37が相対回転可能に嵌入される。ブッシュ175の鍔部177は、前記背支持ブラケット155とメインフレーム33との間に位置している。このブッシュ175の外周に前記軸装部167が外嵌されており、この軸装部167によって前記支軸37の端部165がカバーされるようになっている。前記軸穴173は開口端部側が大径となるテーパー状をなしており、前記支軸37は円柱状をなしている。ブッシュ175は、前記軸穴173の内周面と前記軸37の外周面との間を埋める形状をなしている。すなわち、ブッシュ175の外周面はテーパー状をなし、内周面は各部同一断面形状をなす円柱形状をなしている。
【0048】
なお、前記軸装部167の外周には、図3ないし図9、図16及び図17に示すように、前記後リンク41が一体に設けられている。また、この軸装部167の近傍における前記各背支持アーム151の内側面には、前記下連結材157の片半部179をカバーするカバー部材181がそれぞれ一体に突設されている。カバー部材181には、ねじ挿通孔183が設けられており、このねじ挿通孔183に挿通されたねじ187を前記下連結材157に設けられたねじ孔185に螺着することにより、左右の背支持アーム151が下連結材157に取付けられる。
【0049】
この状態では、左右の背支持アーム151が下連結材157を介して相互に結合されるので、軸装部167が支軸37から抜け出ることがなくなる。すなわち、後端を下連結材157により連結された左右の背支持ブラケット155を支軸37を介して支持基部3に支持させ、前記支軸37の前記背支持ブラケット155よりも外側に突出する両端部165に前記背支持ブラケット155と共に回動する左右の背支持アーム151を支持させているので、前記左右の背支持アーム151を前記背支持ブラケット155の左右外方から取付けることで、前記支軸37、背支持ブラケット155及び下連結材157をカバーすることができる。この実施形態においては、左右の背支持アーム151のカバー部材181の端部189同士が組立状態において密に突き合うようになっている。
【0050】
背支持アーム151のアーム突出部171は、図7及び図18に示すように、上連結材153の端部を取付けるためのもので、ねじ挿通孔191とこのねじ挿通孔191に連続するねじ孔を有した図示しないナットとを備えている。
【0051】
上連結材153は、図7及び図18に示すように、チャネル状をなす金属製のもので、左右の背支持アーム151のアーム突出部171間に架設した上で、前記ナットに螺着されるねじ195により前記各背支持アーム151に取付けられる。すなわち、上連結材153は、後方に開口する形状をなし、前記アーム突出部171に前側から嵌め合わせて背支持アーム151の上端部169間に架設される。
【0052】
背支持ブラケット155は、図9、図12、図13、図16及び図17に示すように、金属製のもので、前記トルク伝達用ブラケット57と一体に作られており、前記支軸37を介してメインフレーム33に回動可能に支持されている。
【0053】
下連結材157は、図9、図16及び図17に示すように、金属製のもので、その両端部が、前記背支持ブラケット155の後端に溶接により剛結されている。この下連結材157は、背支持ブラケット155と協働して合成樹脂製の背支持アーム151の骨格的な機能を有している。また、左右から嵌め付けられる背支持アーム151が左右に離脱するのを防止するための土台としての機能も有している。さらに、下連結材157は、背凭れ11に作用する後傾方向の荷重を背支持アーム151を介して受け止め、その荷重を背支持ブラケット155を介して傾動反力発生機構55のトルク伝達用のブラケット57に伝える機能をも有している。
【0054】
以上のようにしてなる背凭れ支持体9に背凭れ11を支持させてなる。
【0055】
《背凭れの構成》
背凭れ11は、図1ないし図7に示すように、頂部201において略水平になるまで湾曲させてなりほぼ中間部に弾性変形助長用の開口部203を有した樹脂製の背シェル205と、この背シェル205の頂部201よりも後方に位置する先端縁207を支持する背支持部材209と、前記背シェル205の表面側に添設された張地206とを具備してなる。
【0056】
背シェル205は、図2ないし図7、図19、図20、図22ないし図24に示すように、背凭れ支持体9に支持された樹脂製のものであり、頂部201において略水平になるまで湾曲させてなりほぼ中間部に弾性変形助長用の開口部203を有したものである。すなわち、この背シェル205は、上部領域211に上下方向に伸びる複数の帯状部材213が左右に並び、それら帯状部材213間に前記開口部203が形成されている。また、背シェル205は、正面視において、着座者の腰部に対応する部分、すなわち腰部対応部分215が左右幅が広く、上に行くほど漸次幅狭となる形状をなしている。
【0057】
上部領域211は、図2ないし図7、図19、図20、図22、図24に示すように、着座者の背中を受ける前面部分217と、この前面部分217の上縁に連続して設けられ頂部201において略水平になるまで湾曲した上湾曲部分219と、この上湾曲部分219の後縁に連続して設けられ下方に湾曲して垂れ下がる背面部分221とを備えている。そして、背面部分221の先端縁207には、下方に開口する溝223が形成されている。
【0058】
この溝223は、前記背支持部材209を嵌合させるための主嵌入部225と、この主嵌入部225に背支持部材209を嵌合させた状態で背支持部材209の背面側に開口する副嵌入部227とを備えたものである。すなわち、背シェル205の先端縁207に設けられた溝223は、主嵌入部225と副嵌入部227を連続的に形成した段付き溝状のものであり、この主嵌入部225に背支持部材209の後述する上取付部251を挿入すると、前記副嵌入部227のみが外方に開口して残ることとなる。この副嵌入部227は、後述する側縁溝235と連続しており、これら副嵌入部227及び側縁溝235を用いて張地206を取り付けることにより、背シェル205の前面から上部背面側に向かって張地206でカバーできるようになっている。
【0059】
なお、背シェル205の上部領域211における背面部分221に位置する帯状部材213の一部には、弾性変形調整用のリブ228が設けられている。リブ228は、背面部分221に位置する帯状部材213の左右両側縁から後方に延び出しており、その両リブ228の間がちょうど前方に凹んだ凹部222となっている。
【0060】
リブ228の存在により、背面部分221に位置する帯状部材213の部分は、前面部分217や上湾曲部分219に位置する帯状部材213の他の部分よりも弾性変形しにくいものとなっている。背シェル205は、この背面部分221の下側で剛性を有する背支持部材209に接続されているので、仮に、背面部分221における帯状部材213の厚み寸法が、前面部分217や上湾曲部分219における帯状部材213の厚み寸法と同じであるとすると、着座者の荷重がかかった際に背面部分221が積極的に撓み変形してしまい、背シェル205の前面部分217側を支持することが難しくなるおそれがある。逆に、凹部224を完全に埋めてしまうように背面部分221の帯状部材213の厚み寸法を増すと、背面部分221及び上湾曲部分219の弾性変形ないし変位の妨げとなってしまう。そこで、リブ228及び凹部222を成形することにより、背面部分221の弾性変形量(固さ)を適度に調整している。無論、リブ228及び凹部222によらずに、帯状部材213の厚み寸法を大きくすることで弾性変形量を調整してもよい。
【0061】
背シェル205の下部領域229は、図2ないし図7、図19、図20及び図23に示すように、左右両側が左右方向中間よりも前方に突出した凹型をなしている。この下部領域229には、前記帯状部材213に連続した突条231が形成されており、隣接する突条231間に前記開口部203に連続した薄肉部233が形成されている。背シェル205の下部領域229は、着座者の腰部に対応する部分215を側面視前方に隆起させており、平面視中央が凹むように湾曲させている。
【0062】
なお、背シェル205は、図1、図2、図4、図6、図19、図22及び図23に示すように、左右両側縁にそれぞれ外方に開口した側縁溝235を有しており、これら側縁溝235と前記溝223における副嵌入部227とが連続している。また、前記背シェル205の下端には、前記側縁溝235に連続する下縁溝237が設けられている。
【0063】
この背シェル205は、図1ないし図6に示すように、その下部239が前記背支持アーム151の前面に取り付けられるとともに、その上部243が前記背支持部材209に支持される。背シェル205の下部239の取付けについて述べると、左右の背支持アーム151の起立部161の前面側には、上下に離間させて複数のナット孔204が形成されている。他方、背シェル205の下部239の左右両側部には、これらナット孔204に各々対応したビス挿通孔が設けられている。したがって、取付け用のビス241を前記ビス挿通孔に前方から挿し通した上、前記ナット孔204に螺合緊締することにより、背シェル205の下部239の左右両側部を左右の背支持アーム151の起立部161の前面に固定することができる。ビス241は、張地206を張り設けた際に、覆い隠される。
【0064】
背支持部材209は、図1、図2、図4ないし図7、図19、図21、図22、図24及び図25に示すように、前記背シェル205の裏面に左右及び下方に開放された空間245を形成するように対面配置された板状のものであり、前記背凭れ支持体9に支持され前記背シェル205の前後方向へのたわみを制御するものである。背支持部材209は、左右両側が左右方向中間よりも前方に突出した前方から見て凹型をなし前記背シェル205の上部領域211の前面部分217及び下部領域229の幅寸法よりも小さな幅寸法を有した支持部材本体247と、この支持部材本体247の下端に設けられ前記上連結材153に取付けられる下取付部249と、前記支持部材本体247の上端に設けられ前記溝223の主嵌入部225に嵌合する上取付部251と、この上取付部251、前記支持部材本体247及び下取付部249に亘って形成されたリブ253とを有している。なお、背支持部材の左右両端縁は、中間部より厚くなっており、ここが周辺補強材として機能分担している。
【0065】
支持部材本体247は、図4ないし図7、図18、図19、図21、図22、図24及び図25に示すように、板状のもので、左右両側が左右方向中間よりも前方に突出した湾曲形状をなしており、上取付部251の下側に屈曲部255が形成されている。この屈曲部255は、該屈曲部255の上側が下側に対して前方に傾斜するような形状をなしている。換言すれば、この屈曲部255は、側面視くの字状に屈曲している。
【0066】
上取付部251は、図4ないし図7、図19、図21及び図24に示すように、前記主嵌入部225に密に嵌合し得る厚み寸法を有しているもので、嵌合状態においてねじ263を用いて背シェル205に取付けられる。すなわち、この上取付部251は、支持部材本体247の上端から上方に延出された板状のもので、その前面に前記リブ253の上端部が位置している。この上取付部251の前面において、隣接するリブ253間に板ナット257を配した上で、その上端部を溝223の主嵌入部225に嵌合させることによって、前記板ナット257を位置決め保持することができるようになっている。そして、この板ナット257のねじ孔259に背シェル205のねじ孔261を通して背面側から挿通させたねじ263を螺着することによって、この背支持部材209を前記背シェル205に取付けることができるようになっている。この状態では、前記板ナット257が、前記背シェル205及び前記背支持部材209によって隠されている。
【0067】
下取付部249は、図4ないし図7、図19、図21及び図25に示すように、前記支持部材本体247の下端から下方に連続して延出する後壁265と、この後壁265の上端から前方に延出し前記中間に位置するリブ253を相互に連結する天壁267と、この天壁267の前縁から下方に垂下させた前壁269とを備えたもので、前記上連結材153に上側から嵌合し得るように下方に開放された形状をなしている。前記下取付部249の前壁269には、背支持部材209を前記上連結材153に取付けるためのねじ271を挿通させるためのねじ挿通孔273が形成されている。
【0068】
リブ253は、図7、図19、図21、図22、図24及び図25に示すように、上下方向に亘って伸びるもので、背支持部材209の前面に複数枚設けられている。これらのリブ253は、上側に向かって漸次突出寸法が小さくなるような形状をなしている。また、これらのリブ253は、左右に略一定の間隔をあけて配されている。なお、左右両側に位置するリブ275は、支持部材本体247の下端においてとぎれており、下取付部249まで延出しておらず、この左右両側に位置するリブ275の下方には、前記天壁267及び前壁269は設けられていない。一方、中間に位置するリブ277は、下取付部249の前壁269の前面にまで延出している。なお、左右両側に位置するリブ275の突出寸法は、中間に位置するリブ277の突出寸法に比べて小さくなるように設定されている。また、背支持部材209の下方において、左右両側に位置するリブ275の厚み寸法は、中間に位置するリブ277の厚み寸法に比べて大きくしてある。具体的には、中間に位置するリブ277よりも上下方向の長さの短い左右両側に位置するリブ275は、下方において厚み寸法を約6ミリメートルとしており、一方中間に位置するリブ277は下方において厚み寸法を約4ミリメートルとしている。そのため、背支持部材209を背面側から見た際に、左右両側には縦方向に延びるフレームが存在するように見える。
【0069】
張地206は、図1ないし図7、図22ないし図24に示すように、通気性及び透光性を有した布材を主体に構成されたもので、背シェル205のほぼ全域を覆い隠し得る寸法を有したほぼ長方形状をなしており、端部279を背シェル205の外周縁に止着している。詳述すれば、前記張地206の下端部281を前記背シェル205の下縁溝237に押し込んで止着するとともに、左右両側の端部283を前記背シェル205の側縁溝235に押し込んで止着している。また、張地206の上部285を背シェル205の上湾曲部分219及び背面部分221の外面に被せ、その端部279を前記溝223の副嵌入部227に押し込んで止着している。具体的には、前記張地206の端部全周縁には、図示しない押し込み材が縫製されており、この押し込み材とともに前記張地206の端部279、下端部281、及び左右両側の端部283を、背シェル205の溝223の副嵌入部227、下縁溝237、及び側縁溝235にそれぞれ取付けるようにしている。なお、張地206を背シェル205に取付けた状態で、前記背シェル205と背支持部材209とを結合するねじ263の頭をカバーするようになっている。
【0070】
以上説明したような背凭れ11は、背面視において前記背シェル205の両側縁が、前記背支持部材209の両側縁よりも外側にはみ出した状態で視認可能となっている。また、斜め後方からの視線において、前記張地206の裏側が、背シェル205の開口部203を介して視認可能であり、斜め前方からの視線において、前記背支持部材209のリブ253が視認可能である。
【0071】
以上のようにしてなる背凭れ11と前記座7とをロッキング機構13により連動させるようにしている。
【0072】
《ロッキング機構の構成》
このロッキング機構13は、図4ないし図13に示すように、背凭れ11の後傾動作に伴わせて座7を傾動させつつ上動させるようにした体重感知式のものである。
【0073】
詳述すれば、このロッキング機構13は、図4ないし図13に示すように、前側に前リンク軸35を保持するとともに後側に支軸37を保持する支持基部3と、下端部を前記前リンク軸35を介して前記支持基部3に回動可能に支持させた前リンク39と、下端部を前記支軸37に支持された背支持アーム151の軸装部167に一体化させてなる後リンク41と、前リンク取付部121を前連結軸111を介して前記前リンク39の回動端119に連結するとともに後リンク取付部127を後連結軸123を介して後リンク41の回動端125に連結してなる座受5とを主体に構成されたものである。
【0074】
すなわち、このロッキング機構13は、図4ないし図13に示すように、座7を支持する座受5を同一方向に傾斜する前リンク39と後リンク41とによって支持基部3に支持させ、その支持基部3に支持された背支持アーム151の後傾動作に伴わせて、前記前リンク39及び後リンク41を起立方向に回動させて前記座受5を上方に持ち上げるように構成した体重感知式のものであり、前記背凭れ11の後傾時に、前記座7の前部を座7の後部に比べてより多く持ち上げるように構成されたものである。すなわち、通常の背凭れ及び座のシンクロロッキング機構では、背凭れの後傾動作に伴わせて座を下方側にのみ傾動させるものであるが、本実施形態に示すような体重感知式のロッキング機構13は、通常のロッキング機構とは異なり、図13に二点鎖線で示すように、背凭れ11の後傾動作に伴わせて座7を傾動させつつ着座者の荷重に抗して座7を持ち上げるように構成している。
【0075】
具体的に説明すれば、図13に示すように、前記背凭れ11を後傾させていない背起立時において、前リンク39の前傾度合いが後リンク41の前傾度合いよりも大きくなるように設定されている。換言すれば、前記背凭れ11を後傾させていない背起立時において、前リンク39における水平線に対する傾斜角度αが、後リンク41における水平線に対する傾斜角度βよりも小さく設定されている。また、前記前リンク39の支持基部3に対する回転中心を、前記後リンク41の支持基部3に対する回転中心よりも高い位置に設定している。換言すれば、前記前リンク軸35の軸心を前記支軸37の軸心よりも距離h分高い位置に設定している。前記前リンク39の有効長さ寸法、すなわち前記前リンク軸35と前記前連結軸111との軸心間距離L1と、前記後リンク41の有効長さ寸法、すなわち後リンク軸である前記支軸37と前記後連結軸123との軸心間距離L2とは略同じ距離に設定されている。また、前記背支持アーム151が、前記支持基部3における脚支柱19よりも前側の部位に枢支されている。換言すれば、前記背支持アーム151の軸装部167が、側面視において前記脚支柱19よりも前側に位置する支軸37に支持されている。
【0076】
前リンク39の前傾度合いを後リンク41の前傾度合いよりも大きくしている点は、後傾時に座7の前側を後側よりも相対的に大きく持ち上げることを目的としたもので、前リンク39と後リンク41との前傾度合いを相互に大きく異ならせることにより、後傾時の座7の前側の持ち上がりを大きく設定することが可能になる。つまり、前リンク39は座7の前部すなわち座面7aの前部7a1を上方に持ち上げる動作が多く、後リンク41は座7を後方に移動させる動作が中心となる。これによって、座面7aは前部7a1を多く持ち上げながら座面7aの後部7a2は後方移動し、後傾する背凭れ11に追従するように後方に移動していくこととなる。その結果、座面7aを相対的に後傾させることで座7の後端部と背凭れ11の下端部との相対的な位置関係の変化が有効に抑えられたものとなっている。
【0077】
前リンク39と後リンク41の回転中心位置を上下方向に異ならせる点は、主に背起立時の座7の水平度合いを調整することを目的としたものであり、前述した前後リンク39、41の前傾度合い差と組み合わせることにより、背凭れ11起立時の座7の姿勢と背凭れ11後傾時の座7の姿勢を共に最適な状態に設定している。前リンク39の有効長さ寸法L1と後リンク41の有効長さ寸法L2とを略同寸法とすることにより、前記設定をより適切なものにすることができる。
【0078】
なお、一般に前記背支持アームが、前記支持基部における脚支柱よりも前側の部位に枢支されている椅子においては、背凭れ後傾時に背凭れが下方に沈みこむ傾向にあるため、背凭れ後傾時に座全体が平均的に上方に持ち上がるようにした通常の体重感知式ロッキング機構を採用した場合には大きな違和感、より具体的には、着座者の予想に反して、座の後側部分を含む座全体が上方に持ち上がる結果、着座者の腰部近傍に、背凭れの沈み込み動作とこの沈み込み動作と相反する座の持ち上がり動作とが同時に発生することによって与えられる違和感が発生するが、本実施形態の構成によればその違和感が緩和されるものとなる。すなわち、本実施形態のものは体重感知式ではあるが背凭れ11後傾時にも座7の後側が大きく持ち上がることがないので大きな違和感を与えにくいものとなる。
【0079】
また本実施形態では、この後リンク41は背支持アーム151の回動中心である支軸37を中心に、背支持アーム151及びトルク伝達用のブラケット57とともに一体的に回動するものとしている。これにより、背凭れ11の後傾動作に伴う座7の連動動作のみならず、後リンク41を介した支持基部3による座7の正確な位置決めを併せて実現している。さらに本実施形態では、背凭れ11の回動範囲を20度に設定しているとともに、背凭れ11を最大限後傾させた状態における座面7aのなす角度は、背凭れ11起立時に比べて4度後傾するように設定している。すなわち本実施形態では、主に後リンク41による背凭れ11後傾時の座受5の略中央部の持ち上げによって起こる座面7aの後部7a2が持ち上がる寸法γ2よりも、前リンク39による背凭れ11後傾時の座面7aの前部7a1が持ち上がる寸法γ1をより大きく設定する結果、背凭れ11の最大後傾時の座面7aの角度を背凭れ11起立時よりも4度後傾するようにしている。加えて本実施形態では、後リンク41を座受5の前後方向における略中央部に接続しているため、背凭れ11の後傾時前後リンク39、41共に座受5を持ち上げるような構成にしても、前リンク39が後リンク41よりも多く座受5を持ち上げるので、相対的に座受5の後端部は前端部よりも下がるように設定でき、座受5の前端部が上昇した際に座受5の後端部の高さ位置を、背凭れ11の起立時と後傾時で殆ど変わらないようにしている。
【0080】
《肘掛けの構成》
肘掛け15は、図1ないし図7及び図18に示すように、前記背凭れ支持体9の背支持アーム151における上端部前面から一体に前方に突出させた肘支持部287と、この肘支持部287の上に設けた肘当て289とを具備してなる。
【0081】
肘支持部287は、図3ないし図6及び図18に示すように、上方に開放した有底舟形をなしている。一方の肘支持部287、本実施形態では着座者から見て右側の肘支持部287の前端部位の底壁291には、貫通した窓293を形成しており、その窓293を介して下方に操作レバー295を突出させている。操作レバー295は、脚支柱のロック解除用の操作ボタン31を操作するためのものである。この操作レバー295と前記操作ボタン31との間はワイヤ297で接続しており、操作レバー295に加えられた操作力をワイヤ297によって操作ボタン31に伝達することで、操作ボタン31の操作、ひいては脚支柱のロック/ロック解除の切換えを行い得る。操作レバー295の基端部及び操作レバー295に接続するワイヤ297の一端部は、前記肘支持部287の内部に収まっている。
【0082】
肘支持部287の内部空間は、前記背支持アーム151の起立部161に形成されたワイヤ案内空間298に連通している。ワイヤ案内空間298は、上下方向に延伸し、かつ、その一部または全部が前方に開口する。ワイヤ案内空間298の下端部は、前後方向延出部159の直上まで到達しており、背シェル205の下部239を起立部161に取付けた状態で背シェル205の下端よりも若干下方に位置して前方に開通している。そのため、操作レバー295に接続されたワイヤ297は、肘支持部287の内部空間からワイヤ案内空間298の下端部へと導き出され、そこから前後方向延出部159に沿って支持基部3へと到る。
【0083】
肘当て289は、図1ないし図5、図7及び図18に示すように、前記肘支持部287に対して着脱可能である。これにより、共通の肘支持部287に取付可能な複数種類の肘当て289の中から任意のものを選んで使用することができる。本実施形態で示している肘当て289は、肘支持部287に対して直接取付けられる取付ベース299と、この取付ベース299に支持され着座者の腕が載せ置かれる肘当て本体301とが一体的に設けられているものである。
【0084】
取付ベース299は、肘支持部287及び背支持アーム151の上端部169に蓋着される基体303と、この基体303の内方端から略水平に延出するスペーサ305とを具備してなる。基体303は、前側が図示しない係止機構により肘支持部287に掛け止めされるとともに、後側がビス307を用いて背支持アーム151の前面側に取付けられる。肘当て289のスペーサ305は、リブ275の直下の天壁267が存在していない空隙を埋めるためのもので、背支持部材209の下取付部249の天壁267にほぼ連続する板状をなしている。このスペーサ305は、前記上連結材153の上面と、背支持部材209の左右両側に位置するリブ275の下端面との間に密に介設される。
【0085】
《ハンガーの構成》
ハンガー0は、図26ないし図28等に示すように、衣服を掛けることができるように左右に拡張したハンガー本体345と、ハンガー本体345に接合し、背凭れ11の後向面に接するとともに、背凭れ11の後向面に臨む前向面359を貫いてねじ入れられるボルト355により背凭れ11に対して固定される支持体357とを具備してなる。
【0086】
このハンガー0は、ハンガー本体345及び支持体357を樹脂一体成形または金属一体成形した部材である。
【0087】
ハンガー本体345は、衣類、例えば上着の肩部等を直に支える。ハンガー本体345は、剛体であってもよく、多少の弾性変形を許容するものであってもよいが、ここでは殆ど変形しない剛性の高いものとする。ハンガー本体345は、衣服を掛けることができるように左右に拡張した上辺347と、その上辺347から下方に離間している下辺349と、上辺347の左端部と下辺349の左端部とを連接する左側辺351と、上辺347の右端部と下辺349の右端部とを連接する右側辺353とを有しており、背面視閉ループ状となっている。
【0088】
ハンガー本体345の上辺347、下辺349及び左右の側辺351、353は、そのループの全周に亘って略相似した断面形状(概ね等断面形状)をなしている。これら上辺347、下辺349及び左右の側辺351、353はそれぞれ、その断面形状の前後寸法が上下の厚み寸法よりも大きくなっており、上下に薄い板状である。上辺347、下辺349及び左右の側辺351、353の上向面は、側面視若干上方に膨出している。上辺347、下辺349及び左右の側辺351、353の下向面もまた、側面視若干下方に膨出している。但し、下辺349の下面側は、当該下辺349の側端部を除き、支持体357に接合して埋没しているために露わとなっていない。
【0089】
図26ないし図29に示すように(なお、図27は底断面図であり、図中上方が椅子の正面側、下方が背面側である)上辺347は、平面視前縁及び後縁が若干後方に凹むように湾曲しながら左右方向に延伸している。加えて、上辺347は、左右方向の中央部位が最も高く、側端部に向かうにつれて徐々に低くなってゆくように緩やかに湾曲している。
【0090】
下辺349は、上辺347の中央部位における下向面が鉛直下方を向くようにハンガー0の姿勢を位置づけたときに、その上向面が鉛直上方を向くように、略水平に左右方向に延伸している。上辺347と異なり、下辺349は略真っ直ぐであり、前後にも上下にも殆ど湾曲していない。下辺349は、上辺347よりも前方に位置するように、上辺347に対してオフセットしている。下辺349の左右方向の長さは上辺347のそれよりも短く、図示例では上辺347の三分の一程度である。
【0091】
左側辺351は、左上方から右下方、並びに後上方から前下方に向けて傾斜して延伸している。左側辺351の左端部と上辺347の左端部との連接部分は、大きな曲率で湾曲ないし屈曲している。左側辺351の左端部と下辺349の左端部との連接部分は、小さな曲率で湾曲ないし屈曲している。
【0092】
右側辺353は、右上方から左下方、並びに後上方から前下方に向けて傾斜して延伸している。右側辺353の右端部と上辺347の右端部との連接部分は、大きな曲率で湾曲ないし屈曲している。右側辺353の左端部と下辺349の右端部との連接部分は、小さな曲率で湾曲ないし屈曲している。
【0093】
ハンガー0は左右対称形状となっている。そして、ハンガー本体345の上辺347、下辺349及び左右の側辺351、353は、背面視左右対称形状の逆台形状を形成している。このハンガー本体345の内周面、すなわち上辺347の下向面、下辺349の上向面、左右の側辺351、353の上向面は一貫して連続している。
【0094】
支持体357は、ハンガー本体345が椅子の背凭れ11に対して揺動しないようにこれを固く支持する剛体であるとともに、ハンガー0を背凭れ11に固着するブロック状の部位である。支持体357は、ハンガー本体345の下辺349の直下に接合している。支持体357は、ハンガー本体345の下辺349の左右方向の寸法よりも若干小さい左右幅をなしており、ハンガー本体345の下辺349はその左右両側端のみが支持体357の外側面よりも外側方に突き出す。また、ハンガー本体345の下辺349に接合する支持体357の上端部の前縁は、ハンガー本体345の下辺349の前縁よりも多少前方に飛び出している。
【0095】
支持体357は、背凭れ11の背面側、より具体的には背シェル205の上部領域211の背面部分221の後向面と背支持部材209の屈曲部255の上方(かつ、上取付部251の直下)の部位の後向面とに跨って(張地206越しに)当接する。支持体357における、背シェル205の上部領域211の背面部分221に当接する前向面359、背支持部材209の屈曲部255の上方の部位に当接する前向面361は、それぞれやや前傾している。前者の前向面359の後背にあたる後向面は後傾しており、支持体357を側面視概ね逆三角形状をなすように見せている。なお、背シェル205の上部領域211の背面部分221と、背支持部材209の屈曲部255の上方の部位との間には段差が存在する。従って、後者の前向面361を包含する支持体357の下端部は、前者の前向面359の下縁から前方に突出しており、当該下端部の上向面が、背シェル205の先端縁207に当接ないし近接する。要するに、両前向面359、361を介して、支持体357が段差のある背凭れ11の後背にぴったりと沿う。
【0096】
支持体357の後向面には、後方に開口し前方に凹む凹部363が形成されている。凹部363の後端部の開口縁は、背面視左右方向に長尺な略方形状をなす。この凹部363の底は全体的には浅く、後述するキャップ377の前後厚さ程度の深さしかないが、一部を(他の部位と比較して前方に大きく凹む)深底365としている。図示例では、略円筒状の内周をなす深底部365が左右一対、凹部363の左右の両側縁からやや内側方に偏倚した箇所に存在している。凹部363の深底部365の底面、換言すれば前端面は、支持体357の前向面359と表裏の関係にある。そして、この凹部363の深底部365の底を前後に貫通して、ハンガー0固定用のボルト355の軸部を挿通するためのボルト挿通孔367が穿たれている。ボルト挿通孔367は、支持体357の前向面359に開口し、凹部363(特に、深底部365)内を前向面359、361の前方に連通せしめる。ボルト挿通孔367は複数、図示例では左右の深底部365にそれぞれ一つづつ存在している。
【0097】
因みに、支持体357を正面側から見たとき、左右のボルト挿通孔367の間には、前方に開口し後方に凹んだ凹陥369が形成されている。この凹陥369の裏側は、上記の凹部363における左右の深底部365間の底の浅い部位に該当する。加えて、左右のボルト挿通孔367の外側方には、スロット孔371が形成されている。スロット孔371は、上下方向に長く左右方向に細い略方形状をなし、支持体357を前後に貫通している。スロット孔371の上端部は、ハンガー本体345の下辺349にまで達しており、下辺349を極一部であるが切り欠いている。このスロット孔371の後端部は、凹部363内の側端近傍に開口している。
【0098】
また、当該支持体357の下方部位、ちょうど凹陥369やスロット孔371の下端よりも下方にある領域は、左右方向に間欠的に複数本のリブ373が並ぶ形状に成形してあり、リブ373間の肉を盗んでいる。各リブ373は、形状が互いに相似している。リブ373は、側面視略L字形をなす左右に薄い薄板体であり、背凭れ11の背面側の段差部分と係わり合う。すなわち、リブ373の上部は、背シェル205の上部領域211の背面部分221に当接する前向面359の一部を構成する。リブ373の下部は、支持体357の下端部、すなわち背支持部材209の屈曲部255の上方の部位に当接する前向面361の一部を構成する。各リブ373の下端部は、支持体357の下壁375の上向面に連接している。この下壁375の前端面もまた、背支持部材209の屈曲部255の上方の部位に当接する前向面361の一部となる。
【0099】
支持体357の凹部363には、キャップ377を装着することができる。キャップ377は、凹部363の後端部の開口を閉塞して凹部363内を後方から遮蔽し得る板状体である。キャップ377は、凹部363に対して着脱自在とする。例えば、図38に示しているように、キャップ377の外側縁部から、当該キャップ377の板厚よりも薄い薄片379を左右に突出させる一方、この薄片379を受け入れる係合溝383を凹部363の開口の左右両側縁付近に形成しておき、薄片379と係合溝383との係合を通じてキャップ377を支持体357に止着するものとする。図29に示しているように、キャップ377を支持体357に装着している状態で、キャップ377の後面は支持体357の後面と略面一になる。
【0100】
キャップ377の前向面には、突起381が設けられている。突起381は、キャップ377の前向面に対して略直交する方向に突出している。突起381は複数、図示例ではキャップ377の左右の両側縁からやや内側方に偏倚した箇所に一対存在している。それら左右の突起381間の距離は、支持体357に穿たれた左右のボルト挿通孔367間の距離に略等しい。突起381は、円柱状の外形をなしており、その周面には凹凸が形成される。突起381の周面の凹凸は、例えば、ボルト355の軸部の雄ねじのねじ山の高さと同程度の深さ、雄ねじのピッチと同程度の溝幅を有する環状溝を、突起381の軸心方向に沿って多数本並べたような形状のものとする。
【0101】
背凭れ11の側には、ハンガー0固定用のボルト355と螺合する雌ねじが予め設けられる。本実施形態では、背シェル205及び背支持部材209とは別体をなすナット327を、背シェル209と背支持部材209との間に収めるようにしている。このナット327を収める構造は、背シェル205と背支持部材209との連結に利用されるナット257を収める構造に類似している。
【0102】
ナット327は、例えば、内周に雌ねじ孔を切った薄板状の板ナットである。無論、六角ナット等を用いても構わない。
【0103】
これに対し、背支持部材209の上取付部251の前面、隣接するリブ253間には、前方に厚みを増した肉厚部分が成形されており、この肉厚部分に、前後に貫通した貫通孔252が穿たれ、さらにその前面側に、ナット327を収容できるように貫通孔252から上下及び左右に拡張した座ぐり254が形成されている。貫通孔252及び座ぐり254は、ハンガー0の支持体357のボルト挿通孔367に対応して複数、図示例では左右一対存在している。
【0104】
座ぐり254に挿入されて配置されたナット327は、背支持部材209の上取付部251を背シェル205の溝223の主嵌入部225に嵌合させることにより、脱落しないよう保持されると同時に背シェル205に覆い隠される。また、背シェル205の上部領域211の背面部分221には、主嵌入部225を背面部分221の後背に連通せしめるように背面部分221の後壁を前後に貫通したボルト孔226が穿たれている。背支持部材209の上取付部251を背シェル205の溝223の主嵌入部225に嵌合させた状態で、このボルト孔226と貫通孔252及びナット327の内周の雌ねじ孔とは(軸心方向から見て)略同心軸上に重なり合う。背シェル205に穿たれたボルト孔226、背支持部材209に穿たれた貫通孔252及びナット327の雌ねじ孔は、総体として、ボルト355の軸部がねじ入れられる螺入穴になる。
【0105】
加えて、張地206の上部285を背シェル205の背面部分221に被せる都合上、この張地206の上部285にも、ボルト355を通すための、前記ボルト孔226と重なり合う貫通孔286を穿っておく必要がある。この貫通孔286は、工場で組み立てられた当初の椅子0、ハンガー0を装備しない仕様の椅子、またはハンガー0がオプションである椅子においては開通しておらず、背凭れ11に初めてハンガー0を取り付ける段になって開けられる。つまり、ハンガー0が一度も取り付けられたことのない椅子では、ボルト孔226、貫通孔252及びナット327の雌ねじ孔が張地206によって後方から隠蔽された状態となっている。
【0106】
ハンガー0を背凭れ11に取り付けるにあたっては、張地206の上部285に貫通孔286を開設した後、支持体357を背シェル205の上部領域211の背面部分221及び背支持部材209の屈曲部255の上方の部位に当接させ、支持体357の前向面359を前記ボルト孔226が穿たれた背面部分221の後向面に臨ませ、かつ支持体357の下端部の前向面361を屈曲部255の上方の部位の後向面に臨ませる。次いで、支持体357の後方から、ボルト355を凹部363内、さらに言えば深底部365)内に挿入し、ボルト355の軸部を支持体357のボルト挿通孔367、張地206の上部285の貫通孔286、背シェル205の背面部分221のボルト孔226、及び背支持部材209の上取付部251の貫通孔252に挿通する。その上で、当該ボルト355の軸部を、背支持部材209の上取付部251に設けたナット327に螺合緊締する。しかる後、凹部363の後端部の開口にキャップ377を装着すれば、ハンガー0の取り付けが完了する。凹部363に装着したキャップ377は、支持体357の後向面と略面一となるように後傾姿勢をとる。このとき、キャップ377の前向面から突出する突起381は前上方を向いて凹部363の深底部365内に収まり、深底部365の内周やボルト355の頭部に干渉することはない。
【0107】
背凭れ11からハンガー0を取り外すにあたっては、凹部363の後端部の開口からキャップ377を外して凹部363を開放し、ナット327に螺合緊締しているボルト355を緩めて抜き取ればよい。なお、背凭れ11からハンガー0を取り外して椅子を使用する場合、そのままでは張地206の貫通孔286や背シェル205のボルト孔226、背支持部材209の貫通孔252、あるいはナット327の雌ねじ孔が露わとなってしまう。そこで、ハンガー0の支持体357の後面側の凹部363に装着するキャップ377を流用して、張地206の貫通孔286等を隠蔽できるようにすることが好ましい。既に述べた通り、このハンガー0の支持体357のキャップ377には突起381が設けられている。この突起381の外径は、ボルト355がねじ入れられる螺入穴(背シェル205のボルト孔226、背支持部材209の貫通孔252及びナット327の雌ねじ孔の総体)の内径に略等しい。突起381の突出長さは、前記螺入穴の軸方向に沿った奥行長さに略等しいか、それよりも多少短い。従って、図30及び図31に示すように、ハンガー0を取り外した際に露出する部位に所在している螺入穴を嵌合穴として利用し、この螺入穴にキャップ377の突起381を嵌め入れることにより、キャップ377を背凭れ11の背面側、背シェル205の上部領域211の背面部分221に(張地206越しに)当接させた状態に装着することが可能である。キャップ377を背凭れ11の背面側に装着すれば、張地206の貫通孔286等を好適に隠蔽でき、ハンガー0を取り外して椅子を使用する場合にも家具としての格調、美観を保つことができる。
【0108】
図4等に示しているように、背凭れ11の背面側は、背凭れ11をロッキングさせずに引き起こしている状態で、その背支持部材209の屈曲部255が最も後方に突出している。つまり、背凭れ11の背面側は、ハンガー0の支持体357が固定される上端近傍の部位よりも下方、即ち屈曲部255の下側において、前方に退避する形状をなしている。そこで、この上端近傍の部位よりも下方の領域を、着座者が持参した鞄等の手荷物その他の物品Bを配置する空間として利用できるようにしている。
【0109】
即ち、本実施形態では、ハンガー0の支持体357、及び背凭れ11の下方部位にそれぞれ、物品Bの荷重を支持できる保持手段401、403、417を設けている。
【0110】
支持体357に付属する保持手段は、物品Bの持ち手を掛けることのできるフック401、403である。本実施形態において、フックは、前方に突き出した形状のもの401と、後方に突き出した形状のもの403とが並存している。前者401は前方に開放しており、後者403は後方に開放している。これらフック401、403には、一つの物品Bに備わっている二つ以上の持ち手(特に、鞄の持ち手)を別々に掛けてもよいし、複数の物品Bの各々の持ち手を掛けてもよい。
【0111】
フック401、403は、支持体357の下方に配置している。フック401、403は、支持体357に対して上下方向に変位することが可能である。フック401、403の昇降機構について詳述すると、フック401、403を有するフック部材は、支持体357とは別体をなしており、フック部材の上部は、支持体357の下方部位に取着または成形している、下方に開口した筒状部409に挿入される。筒状部409は上下方向に伸長しており、フック部材の上部は当該筒状部409の内で上下方向に昇降する。
【0112】
そして、フック401は、支持体357の筒状部409から下方に突出して昇降する前記フック部材の下部に形成され、当該フック部材よりも前方で上向きに開放している。従って、この前側のフック401に鞄等の物品Bの持ち手を掛けた場合において、背凭れ11が後傾したとしても、持ち手はフック401の底部またはフック部材に当たるためフック401から外れて脱落することはない。並びに、後側のフック403は、同フック部材の下部に形成され、当該フック部材よりも後方で上向きに開放している。
【0113】
筒状部409の周壁(図示例では、後壁421)には、上下方向に沿って複数の係止孔411を穿ってある。これに対し、フック部材の上部の対応する側の面(図示例では、後面)には、係止孔411に係合する爪405を成形してある。筒状部409に挿入されるフック部材の上部は、例えば樹脂等の材料を用いて成形されているので、その弾性変形を通じ、簡易な構造ながら爪405を突没動作させることが可能である。
【0114】
爪405は、フック部材を筒状部409に対して持ち上げる外力が作用したときに、筒状部409の周壁に摺動し、弾性変形して没入、係止孔411から脱出する。一方、フック部材を筒状部409に対して引き下ろす外力が作用したときには、爪405は没入することなく、係止孔411から脱出し得ない。つまり、フック部材は、上昇可能であるが下降不能であり、上昇に伴って爪405が係合する係止孔411が一個づつ上にずれる。
【0115】
筒状部409の係止孔411を穿った周壁の内向面(後壁421の前向面)における、最上位の係止孔411よりも上方の箇所には、フック部材の爪405に接触してこれを大きく没入させる突起413を設けている。フック部材の上部には、爪405が突起に押されて大きく没入した場合にこの爪405を没入状態に維持する保定体407を設けている。さらに、筒状部409の、係止孔411を穿った周壁とは反対側の周壁の内向面(前壁の後向面)における、最下位の係止孔411よりも下方の箇所には、没入状態の爪405に接触してこれを再度押し出す突起415を設けている。
【0116】
図33に示すように、フック部材を上昇させ、その爪405を最上位の係止孔411よりも上方に位置させれば、突起413に押された爪405が保定体407に係合して没入したままとなり、何れの係止孔411にも掛からなくなる。つまり、フック部材を下降させることが可能となる。そして、図34に示すように、フック部材を下降させ、その爪405を最下位の係止孔411よりも下方に位置させれば、突起415に押された爪405が保定体407から脱離して突出した状態となる。従って、再び爪405が係止孔411に係合するようになる。総じて言えば、フック部材は、上下動範囲の上端に達するまでは上方向にのみ変位し、上端に達して初めて下方向に変位することが可能となる。そして、上下動範囲の下端に達した後は、図32等に示すように、再び爪405を何れかの係止孔411に係合させ、以てフック部材の高さ位置を固定することができるのである。
【0117】
背凭れ11の下方部位に付属する保持手段は、物品Bを支え持つことのできる棚417である。本実施形態において、棚417は、後方に延出した底壁419と、底部の後端から上方に延出した後壁421とを有するもので、その後壁421が背凭れ11の背面から後方に離間し、背凭れ11と後壁421との間に物品Bを収納することができる。棚417は、背凭れ11の背面を形作るアウターシェルたる背支持部材209に固定、または一体成形している。この棚417は、背支持部材209の下端部から延出しており、底壁419及び後壁421を含めて側面視略J字型をなす。棚417は、弾性変形可能とすることが好ましい。
【0118】
背凭れ11の背面、底壁419及び後壁421に包囲される物品Bの収納空間は、左右の側方に開放している。
【0119】
本実施形態によれば、背凭れ11の背面側が、上端近傍の部位255から下方に向かうにつれて徐々に前方に退避する形状をなしている椅子において、上端近傍の部位255よりも下方の領域を鞄等の手荷物その他の物品Bを配置する空間として利用可能とするべく、背凭れ11の背面側に当該物品Bの荷重を支持できる保持手段401、403、417を設けたため、着座者の所持する鞄等を保持手段401、403、417を利用して背凭れ11の背面側に置いておくことができる。
【0120】
前記保持手段401、403が前記背凭れ11に取り付けられるハンガー0に付属しているため、この保持手段401、403がハンガー0とともに椅子のオプションとして好適な美観を呈する。また、ハンガー0を背凭れ11から取り外すことで、保持手段401、403を撤去することもできる。物品Bが比較的小さな手荷物等である場合には、保持手段417のみによってこの物品Bを保持することが可能であって、保持手段401、403を設けなくとも所期の目的を達成し得る。
【0121】
前記保持手段401、403が、前記支持体357に設けた、前記物品Bの持ち手を掛けることのできるフックであるため、持ち手を有する鞄等を保持させるために有効に機能し、利便性が高い。
【0122】
前記フック401、403が前記支持体357に対して上下方向に変位可能であるため、持ち手の長さや物品B自体の寸法等に応じて、フック401、403を適切な高さ位置に調整することができる。
【0123】
前記フック(のうち一方401)は前方が開放し、後方は開放していないものであるため、物品Bの持ち手をフック401に掛けた状態で背凭れ11を後傾させたとしても、持ち手がフック401から外れにくい。
【0124】
背凭れ11の下方部位に保持手段417が付属していることから、物品B自体をこの保持手段417によって保持することができる。しかも、本実施形態では、背凭れ11の上下に保持手段401、403、417を両備している。従って、物品Bの荷重を確実に支持でき、また、背凭れ11を大きくロッキングさせた場合にも、物品Bが床に擦ってしまうおそれは小さくなる。
【0125】
<第二実施形態>図35ないし図38に示す第二実施形態の椅子は、ハンガー0に付属する保持手段401の態様を変更したものである。以降、上記第一実施形態との相異を中心に述べる。明記しない要素については、第一実施形態と同様の構成を採用することができる。
【0126】
本実施形態におけるハンガー0は、その支持体357の細部が第一実施形態のそれと異なっている。本実施形態では、ハンガー0の下辺349を中央部で分断しており、その間に介在する支持体357を中空な箱体としている。そして、この支持体357の内部に、ハンガー0に付属する保持手段たるフック401を配している。
【0127】
フック401は、略水平な軸402周りに回動可能であるように支持させてあり、図37に示しているように、下方に回動させて支持体357内部から引き出すことができ、また、図38に示しているように、上方に回動させて支持体357内部に収容することができる。フック401の回転軸402は、支持体357の下端近傍に位置する。フック401を支持体357から引き出したとき、このフック401は前方が開放している状態となる。
【0128】
箱状をなす支持体357の外郭を形作る蓋358は、フック401が収容される支持体357内部を遮蔽するものである。蓋358は、略水平な軸360周りに回動可能であるように支持させてあり、下方に回動させて支持体357内部を遮蔽し、また上方に回動させて支持体357内部を開放することができる。蓋358の回転軸360は、支持体357の上端近傍に位置する。蓋358は、支持体357とは別体の部材としてもよいし、支持体357に一体成形してもよい。蓋358を支持体357に一体成形する場合、回転軸360は例えば樹脂ヒンジとする。蓋358の下縁には、支持体357から引き出したフック401との干渉を避けるための切欠362を形成してある。
【0129】
支持体357は、第一実施形態と同様、背凭れ11の後向面に接するとともに、ボルト355により背凭れ11に対して固定される。このボルト355の頭部は、フック401が収容される支持体357内部に所在する。つまり、蓋358は、ボルト355を隠蔽する機能をも果たしている。
【0130】
背凭れ11の下方部位には、第一実施形態において述べた、物品Bを支え持つことのできる保持手段417を設けておくことが好ましい。
【0131】
本実施形態によれば、背凭れ11の背面側が、上端近傍の部位255から下方に向かうにつれて徐々に前方に退避する形状をなしている椅子において、上端近傍の部位255よりも下方の領域を鞄等の手荷物その他の物品Bを配置する空間として利用可能とするべく、背凭れ11の背面側に当該物品Bの荷重を支持できる保持手段401、417を設けたため、着座者の所持する鞄等を保持手段401、417を利用して背凭れ11の背面側に置いておくことができる。
【0132】
前記保持手段401が前記背凭れ11に取り付けられるハンガー0に付属しているため、この保持手段401がハンガー0とともに椅子のオプションとして好適な美観を呈する。また、ハンガー0を背凭れ11から取り外すことで、保持手段401を撤去することもできる。
【0133】
前記保持手段401が、前記支持体357に設けた、前記物品Bの持ち手を掛けることのできるフックであるため、持ち手を有する鞄等を保持させるために有効に機能し、利便性が高い。
【0134】
前記フック401は前方が開放し、後方は開放していないものであるため、物品Bの持ち手をフック401に掛けた状態で背凭れ11を後傾させたとしても、持ち手がフック401から外れにくい。
【0135】
非使用時には前記フック401を前記支持体357の内部に収容して、家具としての格調を一層高めることができる。
【0136】
背凭れ11の下方部位に保持手段417が付属していることから、物品B自体をこの保持手段417によって保持することができる。しかも、本実施形態では、背凭れ11の上下に保持手段401、417を両備している。従って、物品Bの荷重を確実に支持でき、また、背凭れ11を大きくロッキングさせた場合にも、物品Bが床に擦ってしまうおそれは小さくなる。
【0137】
<第三実施形態>図39及び図40に示す第三実施形態の椅子は、背凭れ11の構造、ハンガー0に付属する保持手段の態様、並びに背凭れ11の下方部位に付属する保持手段の態様を変更したものである。以降、上記第一、第二実施形態との相異を中心に述べる。明記しない要素については、第一実施形態または第二実施形態と同様の構成を採用することができる。
【0138】
本実施形態における背凭れ11は、正面視または背面視枠体状(図示例では、四方枠)をなす背フレーム423の中空な中央領域に、撓み変形可能及び/または伸縮可能な張り地425、特にメッシュ地を張り設けてなる。背フレーム423は、その上端部が最も後方に位置しており、上端部から下方に遷移するに従い前方に退避した側面視形状をなす。そして、着座者の腰部付近に当たる高さ位置にて弓なり状に湾曲し、そこから後下方に向かって延びている。第一、第二実施形態と同様に、この背凭れ11の下部は、左右に両立する背支持アーム151によって支持基部3に連結している。
【0139】
本実施形態におけるハンガー0は、左右方向に延伸する棒状のハンガー本体345と、ハンガー本体345に下方から連接してこれを支持するとともに背フレーム423の上端部に固定される支持体357と具備する。その上で、支持体357における、背フレーム423に固着する部位の中央部から下方に向けて、保持手段たるフック401を突出させている。本実施形態では、これらハンガー本体345、支持体357及びフック401を一体成形している。このフック401は、前方が開放している。
【0140】
本実施形態における、背凭れ11の下方部位に付属する保持手段427は、背フレーム423に張り設けている張り地425に似た性質のメッシュ地またはその他の布地、網等を用いた袋状のものである。この袋状の保持手段427の後背部を構成するメッシュ地等の左右の側縁部は、背フレーム423の左右の端縁部に形成した凹溝(図示せず)に嵌め入れることにより背フレーム423に支持させる。並びに、同メッシュ地等の下縁部もまた、背フレーム423の下端縁部に形成した凹溝(図示せず)に嵌め入れることによって背フレーム423に支持させる。但し、袋状の保持手段427の後背部を構成するメッシュ地等の側縁部及び下縁部を背フレーム423に支持させるのではなく、背凭れ面を構成する張り地425に縫い付けたり、溶着したりすることを妨げない。
【0141】
袋状の保持手段427の後背部を構成するメッシュ地等の上縁部、換言すれば袋の開口縁部に、張力を発揮するゴム紐等を縫い付けてもよい。あるいは、同メッシュ地等の上縁部に部分的に弾性糸を使用し、袋の開口部が窄まるような弾性力を発揮させることも考えられる。
【0142】
袋状の保持手段427の後背部を構成するメッシュ地等自体を(袋縫い等により)袋とし、その内側に保形のための部材、例えば樹脂製の薄帯または薄板部材を収容する等してもよい。
【0143】
保持手段427となる袋の内部、即ち張り地425と上記のメッシュ地等との間には、弾性変形可能な補助シェル429を設ける。補助シェル429の上部は、着座者の腰部に近い高さに達しており、その上部が後方に湾曲して張り地425の背面から離間している。鞄等の物品Bを保持手段427に保持させる場合、この物品Bは袋の内部であって補助シェル429の後背に収めることとなる。
【0144】
保持手段427による物品Bの収納空間は、後上方に開放している。この保持手段427または物品Bの収納空間、さらには補助シェル429は、背凭れ11と支持基部3とを連結する左右の背支持アーム151の間に位置しており、収納空間に収納した物品Bが側方に落下することは背支持アーム151によって(ある程度以上)抑制される。
【0145】
補助シェル429は、収納空間に収めた物品Bが着座者の身体の背面に直に当たって違和感を覚えさせることを防ぐ働きをする。さらには、補助シェル429が着座者の腰部をバックアップするランバーサポートにもなり得る。補助シェル429をランバーサポートとしても有効に機能させるためには、図41に示すように補助シェル429の左右両端縁の少なくとも一部(左右の背支持アーム151間に位置している部分)を凹凸係合構造等によって背フレーム423に係合させる、あるいは、図42に示すように背フレーム423に一体成形する等して、着座者の腰部の位置における前後方向の弾性を高めることが考えられる。
【0146】
本実施形態によれば、背凭れ11の背面側が、上端近傍の部位から下方に向かうにつれて徐々に前方に退避する形状をなしている椅子において、上端近傍の部位よりも下方の領域を鞄等の手荷物その他の物品Bを配置する空間として利用可能とするべく、背凭れ11の背面側に当該物品Bの荷重を支持できる保持手段401、427を設けたため、着座者の所持する鞄等を保持手段401、427を利用して背凭れ11の背面側に置いておくことができる。
【0147】
前記保持手段401が前記背凭れ11に取り付けられるハンガー0に付属しているため、この保持手段401がハンガー0とともに椅子のオプションとして好適な美観を呈する。また、ハンガー0を背凭れ11から取り外すことで、保持手段401を撤去することもできる。
【0148】
前記保持手段401が、前記支持体357に設けた、前記物品Bの持ち手を掛けることのできるフックであるため、持ち手を有する鞄等を保持させるために有効に機能し、利便性が高い。
【0149】
前記フック401は前方が開放し、後方は開放していないものであるため、物品Bの持ち手をフック401に掛けた状態で背凭れ11を後傾させたとしても、持ち手がフック401から外れにくい。
【0150】
背凭れ11の下方部位に保持手段427が付属していることから、物品B自体をこの保持手段427によって保持することができる。しかも、本実施形態では、背凭れ11の上下に保持手段401、427を両備している。従って、物品Bの荷重を確実に支持でき、また、背凭れ11を大きくロッキングさせた場合にも、物品Bが床に擦ってしまうおそれは小さくなる。
【0151】
なお、本発明は以上に詳述した実施形態に限られるものではない。
【0152】
列挙すると、ハンガーに付属する保持手段は、前方に開放するフックには限定されない。閉じた閉ループを形成できる開閉可能なリング(いわゆるスナップフック、スイベルフック、アイスナップ、カラビナフック、シャックル、ナスカン等々)を保持手段として採用する場合、これは後方に開放するものであっても構わない。ハンガーに付属する保持手段たるフック類が、左側方または右側方に開放していてもよい。
【0153】
上記実施形態の椅子は何れも、ハンガーに付属する保持手段と、背凭れの下端部位に付属する保持手段とを両備していたが、何れか一方を省略することも許される。ハンガーに付属する保持手段が存在していれば、鞄等の物品の持ち手を当該保持手段に保持させることにより、背凭れの背面側に物品を置いておくことができる。背凭れの下端部位に付属する保持手段が存在していれば、鞄等の物品を当該保持手段に保持させることにより、やはり背凭れの背面側に物品を置いておくことができる。
【0154】
ハンガーに付属する保持手段たるフック類は、ねじ止めその他任意の止着手段により、ハンガー(の支持体)に対して着脱自在であってもよい。さらに、物品の種類や持ち手の形状に合わせて、フック類を交換(手提げ鞄用フック、リュックサック用フック、肩掛け鞄用フック等)できるようにすることも好ましい。
【0155】
保持手段たるフック類は、必ずハンガーに付随するものであるとは限られない。フック類を、背凭れの背面(第一、第二実施形態における背支持部材209や、第三実施形態における背フレーム423等の背面)に取着してもよい。
【0156】
背凭れの下方部位に付随する保持手段の高さ位置を、上下させ得るように構成してもよい。例えば、第一、第二実施形態における棚417を背支持部材209とは別体の部材とし、当該部材417を背支持部材に対し上下スライド可能であるように背支持部材209に支持させる。あるいは、第三実施形態における保持手段たる袋427を、背フレーム423に対し上下スライド可能であるように背フレーム423に支持させる。
【0157】
その他各部の具体的構成は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0158】
本発明は、例えばオフィス等において使用される事務用椅子として利用することができる。
【符号の説明】
【0159】
0…ハンガー
11…背凭れ
401、403…保持手段(フック)
417、427…保持手段(棚、袋)
B…鞄等の物品
【特許請求の範囲】
【請求項1】
背凭れの背面側が、上端近傍の部位から下方に向かうにつれて徐々に前方に退避する形状をなしている椅子であって、
上端近傍の部位よりも下方の領域を鞄等の手荷物その他の物品を配置する空間として利用可能とするべく、背凭れの背面側に当該物品の荷重を支持できる保持手段を設けたことを特徴とする椅子。
【請求項2】
前記保持手段が前記背凭れに取り付けられるハンガーに付属している請求項1記載の椅子。
【請求項3】
前記ハンガーが、衣服を掛けることができるよう左右に拡張したハンガー本体と、ハンガー本体を支持するとともに前記背凭れの背面側に固定される支持体とを具備しており、
前記保持手段が、前記支持体に設けた、前記物品の持ち手を掛けることのできるフックである請求項2記載の椅子。
【請求項4】
前記フックが前記支持体に対して上下方向に変位可能である請求項3記載の椅子。
【請求項5】
前記フックを前記支持体の内部に収容することができる請求項3記載の椅子。
【請求項6】
前記フックは前方が開放しているものである請求項3、4または5記載の椅子。
【請求項7】
前記保持手段が前記背凭れの下方部位に付属している請求項1、2、3、4、5または6記載の椅子。
【請求項1】
背凭れの背面側が、上端近傍の部位から下方に向かうにつれて徐々に前方に退避する形状をなしている椅子であって、
上端近傍の部位よりも下方の領域を鞄等の手荷物その他の物品を配置する空間として利用可能とするべく、背凭れの背面側に当該物品の荷重を支持できる保持手段を設けたことを特徴とする椅子。
【請求項2】
前記保持手段が前記背凭れに取り付けられるハンガーに付属している請求項1記載の椅子。
【請求項3】
前記ハンガーが、衣服を掛けることができるよう左右に拡張したハンガー本体と、ハンガー本体を支持するとともに前記背凭れの背面側に固定される支持体とを具備しており、
前記保持手段が、前記支持体に設けた、前記物品の持ち手を掛けることのできるフックである請求項2記載の椅子。
【請求項4】
前記フックが前記支持体に対して上下方向に変位可能である請求項3記載の椅子。
【請求項5】
前記フックを前記支持体の内部に収容することができる請求項3記載の椅子。
【請求項6】
前記フックは前方が開放しているものである請求項3、4または5記載の椅子。
【請求項7】
前記保持手段が前記背凭れの下方部位に付属している請求項1、2、3、4、5または6記載の椅子。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【図37】
【図38】
【図39】
【図40】
【図41】
【図42】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【図37】
【図38】
【図39】
【図40】
【図41】
【図42】
【公開番号】特開2012−135452(P2012−135452A)
【公開日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−290103(P2010−290103)
【出願日】平成22年12月27日(2010.12.27)
【出願人】(000001351)コクヨ株式会社 (961)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年12月27日(2010.12.27)
【出願人】(000001351)コクヨ株式会社 (961)
【Fターム(参考)】
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