説明

椅子

【課題】座、背凭れ、肘掛及び天板を備え、背凭れ全体及び肘掛の機能を常時使用可能な椅子において、種々の着座姿勢において天板を使用可能にする。
【解決手段】座4、座4の後方から上方に延出する後部要素6、及び座4の一側方から上方に延出する側部要素7を備えてなり、着座者が前方を向く第1の着座状態P1をとる際に前記後部要素6が背凭れ、前記側部要素7が肘掛けとして機能し、着座者が前記側部要素7と反対側を向く第2の着座状態P2をとる際に前記後部要素6が肘掛け、前記側部要素7が背凭れとして機能する椅子本体2と、前記座4の前記側部要素7と反対側の縁部の上方に設けられ天板支持要素8を介して前記椅子本体2に支持させた天板3とを具備してなる構成を採用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メモ台等として使用可能な天板を備えた椅子に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、会議等の際に、テーブルを配置することなく多数の椅子を配置可能にしつつ、着座者が筆記を行う際やパーソナルコンピュータに代表される情報機器を使用する際等の便宜を図るべく、メモ台等として使用可能な天板を備えた椅子を用いることが広く知られている。このような椅子の一例として、脚、脚に支持される座及び座の後方から上方に延出する背凭れを備え前方に開放された椅子本体と、この椅子本体に支持されメモ台として使用可能な天板とを備えたものが考えられている(例えば、特許文献1を参照)。
【0003】
前記特許文献1記載のものは、前記天板を椅子本体の一側縁に天板を水平回転可能に支持させているとともに前記天板の前記椅子本体により支持されていない部位を補助脚により支持しており、この天板は前記補助脚に支持された状態で椅子本体の上方を覆う格納位置から着座者が使用に供し得る最大移動位置まで移動可能に構成されている。ここで、天板を最大移動位置に移動させた際には、天板は着座者の側方に位置する。
【0004】
ところが、着座者が天板を利用して筆記を行う際やパーソナルコンピュータに代表される情報機器を使用する際に、着座者の正面に天板を位置させる要望が存在するが、特許文献1記載の構成では、天板を収納位置に配した際に椅子本体の前方を被覆するカバーを設けているので、天板を収納位置から少なくとも座の前斜め側方に移動させない限り椅子本体の前方が開放されずこの椅子に着座することが不可能であるという問題が存在する。また、このカバーを取り除いた場合であっても、天板は椅子本体に蝶番を利用して回転移動可能に支持されているので、作業中に天板が回転する恐れがあり、この不具合を解消するには天板の回転を規制するストッパが別途必要であるという別の問題が存在する。
【0005】
その上、着座者が着座した際に着座者の肘を支持させる肘掛けを設ける要望が存在するが、特許文献1記載の椅子の椅子本体に肘掛けを設けた場合肘掛けが補助脚に干渉する可能性があるので設計の自由度が低下するという問題がある。
【0006】
そこで、背凭れ、肘掛及び天板を備えた椅子において、背凭れ及び肘掛の機能を常時使用可能にしつつ、種々の着座姿勢、換言すれば正面を向いた着座姿勢や側方を向いた着座姿勢等において天板を使用可能にする要望が存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平10−127415号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は以上の点に着目し、背凭れ及び肘掛の機能を常時使用可能な椅子において、種々の着座姿勢において天板を使用可能にすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
すなわち本発明に係る椅子は、座、座の後方から上方に延出する後部要素、及び座の一側方から上方に延出する側部要素を備えてなり、着座者が前方を向く第1の着座状態をとる際に前記後部要素が背凭れ、前記側部要素が肘掛けとして機能し、着座者が前記側部要素と反対側を向く第2の着座状態をとる際に前記後部要素が肘掛け、前記側部要素が背凭れとして機能する椅子本体と、前記座の前記側部要素と反対側の縁部の上方に設けられ天板支持要素を介して前記椅子本体に支持させた天板とを具備してなることを特徴とする。
【0010】
このようなものであれば、着座者が第1の着座状態をとる際には、着座者の一側方に天板が配され、この天板を着座者の肘を載せることができる肘掛として機能させつつ、着座者が天板側を向くことによりこの天板をメモ台等として使用することもでき、さらに、前記後部要素を背凭れ、前記側部要素を肘掛けとしてそれぞれ利用することができる。一方、着座者が第2の着座状態をとる際には、着座者の前方に天板が配され、この天板をメモ台等として使用できるとともに、前記後部要素を肘掛け、前記側部要素を背凭れとしてそれぞれ利用することができる。すなわち、着座者が第1の着座状態及び第2の着座状態のいずれをとる場合であっても、着座者は天板、背凭れ及び肘掛けを利用することができる。なお、本発明において、「前方」とは、着座者が第1の着座状態をとる際に着座者が向く方向を示す概念である。同様に、「後方」及び「側方」とは、着座者が第1の着座状態をとる際に着座者が向く方向の反対側及び着座者の側方をそれぞれ示す概念である。
【0011】
このような椅子の外観を整えるための態様として、前記椅子本体が、前記後部要素及び側部要素によって前方及び天板を有する側の側方に開放された部分筒状をなす構造体を形成したものであり、これら後部要素及び側部要素の上端縁を滑らかに連続させているものが挙げられる。
【0012】
部品点数の増加を抑えつつ外観をさらに整えるための態様として、前記天板支持要素を前記後部要素上部の前記側部要素と反対側の側縁から前方に延出させて一体的に設けているとともに、この天板支持要素の上端縁を前記後部要素及び前記側部要素の上端縁と滑らかに連続させているものが挙げられる。
【0013】
加えて、このような椅子において、部品点数の増加を抑えつつ外観を整えるための態様として、前記天板と、前記後部要素及び側部要素の上面に設けられその上面が前記天板の天板面と同一平面上にある後被覆部材及び側被覆部材とを一体に形成しているものが挙げられる。
【0014】
そして、部品点数の増加を抑えつつ外観をさらに整えるための態様として、前記後部要素に前記天板支持要素が片持ち支持され、前記天板支持要素に前記天板が片持ち支持されているものも挙げられる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、背凭れ及び肘掛の機能を常時使用可能な椅子において、着座者が前方を向く第1の着座状態及び側方を向く第2の着座状態のいずれをとる場合であっても、天板が使用可能な構成を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一実施形態に係る椅子を示す正面斜視図。
【図2】同実施形態に係る椅子を示す背面斜視図。
【図3】同実施形態に係る椅子の使用態様を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の一実施形態を図1〜図3を参照しつつ以下に説明する。
【0018】
本実施形態の椅子1は、図1〜図3に示すように、座4、座4を支持する脚5、座4の後方から上方に延出する後部要素6、座4の一側方、本実施形態では右側方から上方に延出する側部要素7及び前記座4の側部要素7と反対側の側縁すなわち左側縁の上方に配してなる天板支持要素8を備えてなり前方及び一側方、換言すれば左方に向けて開放された椅子本体2と、この椅子本体2に支持され該椅子本体2の左側に、換言すれば前記座4の前記側部要素7と反対側の縁部の上方に位置する天板3とを具備し、着座者が前方を向く図1に示すような第1の着座状態P1、及び着座者が左側方を向く図3に示すような第2の着座状態P2をとることを許容するものである。
【0019】
椅子本体2は、図1及び図2に示すように、座4と、この座4を支持する脚5と、この脚5の後上方に設けられた後部要素6と、この後部要素6の右端から前方に延出する側部要素7と、前記後部要素6の上部の左端から前方に延出する天板支持要素8とを備えている。ここで、脚5と、後部要素6と、側部要素7と、天板支持要素8とは、前方及び左方に開放された部分筒状をなし全体が一体をなす構造体21を形成している。
【0020】
座4は、図1に示すように、下端面を形成する図示しないシェルと、このシェルの上方に配してなりクッションを主体として構成した座本体41とを利用して形成している。また、この座4は、脚5に設けた座支持部5aにより脚5に支持させている。
【0021】
脚5は、図1及び図2に示すように、前方及び左方に開口した内部空間Sを有し部分筒状をなす。また、この脚5は、下方に向かうにつれ径が大きくなる平断面形状を有する。この脚5の下端には接地体51を備えているとともに、前記内部空間Sの下部にはかばん等の物品を載置可能な棚板52を設けている。さらに、この脚5の上端には、前記内部空間Sを閉塞し上面で前記座4を支持する座支持部5aを設けている。そして、この脚5の後上方、より詳述すればこの脚5の後部の直上には、上述したように後部要素6を設けている。
【0022】
後部要素6は、図1及び図2に示すように、座4の後方、換言すれば脚5の上端5bから一体をなして後上方に延出しており、平面視部分円弧状をなしている。この後部要素6の上面6aの外周部には上方及び後方に開口する切り欠き6xを設けていて、この切り欠き6xの内部に該切り欠き6xを被覆する後被覆部材61を収納している。ここで、この後被覆部材61は板状の部材であり、その上面の内側縁61aが、後部要素6の上端縁6bと一致させた状態で配されている。また、この後部要素6の上部の左側端6cからは、天板支持要素8が一体をなして延出している。一方、この後部要素6の右側端6dからは、側部要素7が一体をなして延出している。
【0023】
側部要素7は、上述したように、また図1及び図2に示すように、後部要素6の右側端6cから前方に延出しており、平面視部分円弧状をなしている。また、この側部要素7は、脚5の上端5bから一体をなして外上方に延出している。この側部要素7の上面7aの外周部には上方及び右側方に開口する切り欠き7xを設けていて、この切り欠き7xの内部に該切り欠き7xを被覆する側被覆部材71を収納している。ここで、この側被覆部材71は板状の部材であり、その上面の内側縁71aが、側部要素7の上端縁7bと一致させた状態で配されている。また、この側被覆部材71は前記後被覆部材61と一体をなし、その上面が前記後被覆部材61の上面と同一平面上で連続しているとともに、この側被覆部材71の内側縁71a及び外側縁71bも、前記後被覆部材61の内側縁61a及び外側縁61bと滑らかに連続している。そして、この側部要素7の上端縁7aも、前記後部要素6の上端縁6aと滑らかに連続しているとともに同一平面上に配されている。この側部要素7が配された側と反対側の側部すなわち左側部には、前記天板支持要素8が配されている。
【0024】
天板支持要素8は、上述したように、また図1及び図2に示すように、後部要素6の上部の左側端6bから一体をなして前方に延出しており、平面視部分円弧状をなしている。この天板支持要素8は後部要素6に片持ち支持されており、延出端すなわち前端に向かうにつれその厚さ寸法が漸次小さくなるように形成している。また、この天板支持要素8の上端縁8bは、前記後部要素6の上端縁6b及び前記側部要素7の上端縁7bと同一平面上で滑らかに連続している。さらに、この天板支持要素8の上面8aの外周部には上方及び左側方に開口する切り欠き8xを設けていて、この切り欠き8xの内部に天板3を収納した状態で該天板3を支持させている。
【0025】
天板3は、板状をなす部材であり、図1及び図2に示すように、天板支持要素8の上面8aに使用端縁3a側を片持ち支持させている。さらに詳述すると、この天板3はその使用端縁3aを前記天板支持要素8の上端縁8bと一致させた状態で前記天板支持要素8の切り欠き8xの内部にその一部が配されており、反使用端縁3b側は前記天板支持要素8の外側縁8cを越えて外方すなわち左側方に突出している。また、この天板3は、前記後被覆部材61と一体に形成されており、天板面が前記後被覆部材61の上面と同一平面上で連続しているとともに、この天板3の使用端縁3a及び反使用端縁3bも、前記後被覆部材61の内側縁61a及び外側縁61bと滑らかに連続している。すなわち、この天板3と、前記後被覆部材61と、前記側被覆部材71とは一体に形成されており、天板の使用端縁3aと前記後被覆部材61及び前記側被覆部材71の内側縁61a、71aとが滑らかに連続している曲線形状をなしているとともに、天板の反使用端縁3bと前記後被覆部材61及び前記側被覆部材71の外側縁61b、71bとも滑らかに連続している曲線形状をなしている。
【0026】
ここで、着座者が前方を向く図1に示すような第1の着座状態P1をとる際には、着座者の左側方に天板3が配される。このとき、この天板3は着座者の肘を載せることができる肘掛として機能する。その上で、着座者が天板3側すなわち左側に体をねじることによりこの天板3をメモ台等として使用することもできる。また、前記後部要素6は着座者の後方に配され、背凭れとして機能する。そして、前記側部要素7は着座者の右側方に配され、着座者の肘を載せることができる肘掛けとして機能する。一方、着座者が左側方を向く図3に示すような第2の着座状態P2をとる際には、着座者の前方に天板3が配され、着座者が体をねじらずにこの天板3をメモ台等として使用できる。また、前記後部要素6は着座者の左側方に配され、着座者の肘を載せることができる肘掛けとして機能する。そして、前記側部要素7は着座者の後方に配され、背凭れとして機能する。
【0027】
以上に述べたように、本実施形態に係る椅子1の構成によれば、着座者が前方を向く第1の着座状態P1及び着座者が左側方を向く第2の着座状態P2をとることを許容しつつ、着座者がこれら第1の着座状態P1及び第2の着座状態P2のいずれをとる場合であっても、着座者は後部要素6及び側部要素7を背凭れ及び肘掛けを利用することができるとともに、これら2つの着座状態P1、P2のいずれをとる場合であっても、天板3をメモ台として使用することができる。
【0028】
前記椅子本体2が、前記後部要素6、前記側部要素7及び前記天板支持要素8を一体に有し前方及び左側方に開放された部分筒状をなす構造体21を具備するものであり、これら後部要素6、側部要素7及び天板支持要素8の上端縁6b、7b、8bを滑らかに連続させているので、このような椅子の外観を整えることができる。
【0029】
前記天板3と、前記後部要素6及び側部要素7の上面に設けられその上面が前記天板3の天板面と同一平面上にある後被覆部材61及び側被覆部材71とを一体に形成しているので、このような椅子において、部品点数の増加を抑えつつ外観をさらに整えることができる。
【0030】
そして、前記後部要素6に前記天板支持要素8が片持ち支持され、前記天板支持要素8に前記天板3が片持ち支持されているので、この点からも部品点数の増加を抑えつつ外観をさらに整えることができる。
【0031】
なお、本発明は以上に述べた実施形態に限らない。
【0032】
例えば、脚、後部要素及び側部要素のそれぞれを別体に構成した椅子に本発明を適用してもよく、また、脚、後部要素及び側部要素のうちのいずれか2つだけを一体に構成した椅子に本発明を適用してもよい。
【0033】
また、上述した実施形態では、天板支持要素の上縁、後部要素の上縁及び前記側部要素の上縁を同一平面上に配しているが、これらが同一平面上でなく、滑らかに連続させている形状であってもこの椅子の外観を整える効果は得られる。但し、天板支持要素の上縁、後部要素の上縁及び前記側部要素の上縁を滑らかに連続させている形状でなくともこれらの床面の高さ寸法が背凭れ及び肘掛けとしての使用に好適なものであれば本発明の最も主要な効果を得ることはもちろんである。
【0034】
さらに、上述した実施形態では、後部要素の前面及び側部要素の内側面を滑らかに連続させた曲面状に形成しているが、これら後部要素の前面及び側部要素の内側面を平面状に形成する等、他の形状を採用してももちろんよい。
【0035】
加えて、上述した実施形態では、前記天板と、前記後部要素及び側部要素の上方に設けられその上面が前記天板の天板面と同一平面上にある被覆部とを一体に形成しているが、これらを別体に形成してももちろんよく、また、被覆部は省略してももちろんよい。
【0036】
その他、本発明の趣旨を損ねない範囲で種々に変形してよい。
【符号の説明】
【0037】
1…椅子
2…椅子本体
3…天板
4…座
6…後部要素
7…側部要素
8…天板支持要素

【特許請求の範囲】
【請求項1】
座、座の後方から上方に延出する後部要素、及び座の一側方から上方に延出する側部要素を備えてなり、着座者が前方を向く第1の着座状態をとる際に前記後部要素が背凭れ、前記側部要素が肘掛けとして機能し、着座者が前記側部要素と反対側を向く第2の着座状態をとる際に前記後部要素が肘掛け、前記側部要素が背凭れとして機能する椅子本体と、前記座の前記側部要素と反対側の縁部の上方に設けられ天板支持要素を介して前記椅子本体に支持させた天板とを具備してなることを特徴とする椅子。
【請求項2】
前記椅子本体が、前記後部要素及び側部要素によって前方及び天板を有する側の側方に開放された部分筒状をなす構造体を形成したものであり、これら後部要素及び側部要素の上端縁を滑らかに連続させている請求項1記載の椅子。
【請求項3】
前記天板支持要素を前記後部要素上部の前記側部要素と反対側の側縁から前方に延出させて一体的に設けているとともに、この天板支持要素の上端縁を前記後部要素及び前記側部要素の上端縁と滑らかに連続させている請求項2記載の椅子。
【請求項4】
前記天板と、前記後部要素及び側部要素の上面に設けられその上面が前記天板の天板面と同一平面上にある後被覆部材及び側被覆部材とを一体に形成している請求項1、2又は3記載の椅子。
【請求項5】
前記後部要素に前記天板支持要素が片持ち支持され、前記天板支持要素に前記天板が片持ち支持されている請求項1、2、3又は4記載の椅子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−70828(P2013−70828A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−211769(P2011−211769)
【出願日】平成23年9月28日(2011.9.28)
【出願人】(000001351)コクヨ株式会社 (961)
【Fターム(参考)】