説明

植物の成長を制御する組成物

植物の種子の発芽を促進する、および/または植物組織または植物器官の休眠を解除する方法であって、種子、植物、植物器官、植物組織のいずれかに一般式(I)の化合物(ただし、R1はアルキルまたはHであり;R2、R3、R4、R5は、独立に、H、ハロゲン化物、-NO2、-SO2R'(ここにR'はアルキルまたはアミノアルキルである)、-OH、-Oアルキルの中から選択でき、および/またはR1とR5が合わさって−O(CH2m−となり(ここに、mは、1、2、3、4のいずれかである);R6は、置換されたアルキル、置換されていないアルキル、置換されたアリール、置換されていないアリールのいずれかであり;nは1〜4の整数である)を適用する操作を含む方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、種子、組織、植物の発芽を促進し、休眠を解除するための新規な化合物と、新規な組成物と、その利用法に関する。
【背景技術】
【0002】
カロテノイドは、植物と微生物では光保護分子として合成され、動物の餌におけるカギとなる成分である。その一例は、β-カロテン(プロ-ビタミンA)である。カロテノイドの酸化的開裂が植物、動物、微生物で起こり、さまざまな機能を持ったシグナル伝達分子として機能するさまざまなアポカロテノイドが放出される(1)。カロテノイド開裂ジオキシゲナーゼ(CCD)1をコードしていることが同定された最初の遺伝子は、トウモロコシのVp14遺伝子であった。この遺伝子は、干魃ストレスに対する反応と植物成長の諸側面(例えば種子とつぼみの休眠)を媒介する重要なホルモンであるアブシジン酸(ABA)の形成に必要とされる(2)。Vp14酵素は、エポキシカロテノイドである9'-シス-ネオキサンチンおよび/または9-シス-ビオラキサンチンの11,12位(図1)で開裂させるため、現在では、より大きなCCDファミリーのサブクラスである9-シス-エポキシカロテノイドジオキシゲナーゼ(NCED)(3)として分類されている。
【0003】
Vp14の発見以来、他の多くのCCDがさまざまなアポカロテノイド(図1)の産生に関与することがわかってきている。昆虫では、β-カロテン-15,15'-ジオキシゲナーゼによるβ-カロテンの酸化的開裂によって視物質レチナールが形成される(4)。レチナールは、脊椎動物では、オルソログの酵素によって産生されてやはりレチノイン酸に変換される(5)。レチノイン酸は、胚発生における分化の調節因子である。哺乳動物の1つの明確なCCDがカロテノイドを9,10位で非対称に開裂させると考えられており(6)、その機能ははっきりしていないが、最近の証拠から、食物リコペンの代謝においてある役割を果たしていることが示唆されている(7)。植物の揮発成分であるβ-イオノンとゲラニルアセトンは、9,10位で開裂させる酵素から産生され(8)、香料のサフロンで見いだされ顔料α-クロシンは、7,8開裂酵素から生じる(9)。
【0004】
生物学的機能が未知の他のCCDも同定されている。例えばシアノバクテリアでは、さまざまな開裂特異性が報告されている(10〜12)。他のケースでは、既知の機能を持つアポカロテノイドが存在しているが、CCDの素性または関与状況はまだ報告されていない。例えばバッタのケトンは、ロマレア・ミクロプテラというイナゴの防御分泌物であり(13)、ミコラジシンは、樹枝状菌根との共生中に植物の根によって産生され(14)、ストリゴラクトン(15)は植物の代謝産物であり、寄生性雑草(例えばストリガやハマウツボ)にとっての発芽信号として作用する(16)。
【0005】
最近、ストリゴラクトンは植物で分岐ホルモンとしても機能することが発見された(17、18)。このような分岐ホルモンの存在はしばらく前から知られていたが、それが何であるかは明確にされていなかった。しかしこのホルモンは少なくとも2つのCCD、すなわちmax3とmax4(more axillary growth(より多くの腋芽生長))(19)の作用に由来することがわかった。なぜならシロイヌナズナでこれら遺伝子のどちらかを除去すると潅木の表現型になるからである(20、21)。大腸菌アッセイでは、AtCCD7(max3)がβ-カロテンを9,10位で開裂させ、その産物であるアポカロテノイド(10-アポ-β-カロテン)は、AtCCD8(max4)によってさらに13,14で開裂されて13-アポ-β-カロテンが生じることが報告されている(22)。また、最近の証拠から、AtCCD8は非常に特異的で10-アポ-β-カロテンだけを開裂させることが示唆されている(23)。13-アポ-β-カロテンの産生がストリゴラクトン複合体の合成にどのようにつながるかはわかっていない。植物では、これらの酵素が異なる特異性と開裂活性を有するという可能性が残っている。それに加え、シトクロムP450酵素(24)がストリゴラクトンの合成に関与していると考えられており、CCD遺伝子の下流に位置する経路で作用する。ストリゴラクトンは、オーキシンの輸送を調節することによって分岐を起こさせると考えられている(25)。ストリゴラクトンの合成にはCCDが関与するため、植物の構造と、寄生性雑草および菌根との相互作用は、CCD活性を操作することによって制御できるのではないかという可能性がある。
【0006】
簡単な遺伝子系を有する植物種または遺伝子組み換えが可能な植物種では特に、遺伝子からのアプローチを利用してCCDの機能と基質特異性を元の生物学的文脈で調べることで多くの成功が得られているとはいえ、遺伝子からのアプローチが困難だったり不可能だったりする系が多く存在している。また、組み換えCCDは、インビトロ・アッセイまたは異種インビボ・アッセイで研究するとき(例えばカロテノイドを蓄積するように操作した大腸菌株(26))、広い範囲の基質に対して活性であることがしばしばある(5、21、27)ため、生体内における特定のCCDのの真の基質は多くの場合わからないままである。したがって、アポカロテノイドとCCDの機能の両方を元の細胞環境で調べるのに追加の実験ツールが必要となる。
【0007】
逆化学的遺伝学のアプローチでは、既知の標的タンパク質に対して活性のある小分子が同定される。次いでその小分子を生物系に適用し、生体内におけるタンパク質の機能を調べる(28、29)。この方法は、従来の遺伝学と相補的である。なぜなら小分子は広い範囲の種に容易に適用でき、適用するときに投与量、時間、空間を制御して生物学的機能を詳細に研究することが可能であり、小分子の特異性を変えることによって個々のタンパク質またはタンパク質のクラス全体を標的にできるからである。植物ホルモンであるジベレリン、ブラシノステロイド、アブシジン酸の機能が、これらホルモンの代謝に関与する特定のシトクロムP450モノオキシゲナーゼを抑制するようにトリアゾールを改変することにより、この方法を利用してうまく調べられていることに注意されたい(30)。
【0008】
CCDファミリーの場合には、第三級アミンであるアバミン(31)とそれよりも活性なアバミンSG(32)が、NCEDの特異的阻害剤であることが報告されており、アバミンを用いてマメ科の根粒形成におけるアブシジン酸の新しい機能が示された(33)。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
発明者は、発芽を促進し、植物組織または植物器官の休眠を解除する一群の化合物を同定した。
【0010】
したがって本発明は、植物の種子の発芽および/または植物組織の休眠解除を促進する方法であって、種子、植物組織、植物器官、植物のいずれかに一般式(I)の化合物:
【化1】

を適用する操作を含む方法が提供される。ただし、
1はアルキルまたはHであり;
2、R3、R4、R5は、独立に、H、ハロゲン化物、-NO2、-SO2R'(ここにR'はアルキルまたはアミノアルキルである)、-OH、-Oアルキルの中から選択でき、および/または(アリール基に結合する基全体が−O(CH2m−であるようにするため)R1とR5が合わさって−O(CH2m−となり(ここに、mは、1、2、3、4のいずれかであり、特に1である);
R6は、置換されたアルキルか置換されていないアルキル、および/または置換されたアリールか置換されていないアリールであり;nは1〜4の整数である(nは1になろう)。そのアリール基を分子のヒドロキサム酸部分のカルボニル基に結合する基-(CH2)n-は、例えば-OH、ハロゲン化物、メチルで置換されていてもよい。
【0011】
1は、C1−C4アルキル(例えばメチル、エチル、プロピル、ブチル)であることが好ましい。R1はHでもよい。R2、R3、R4、R5は、すべてHにすることができる。あるいはこれら側鎖基のうちの1個、または2個、または3個をHにし、他の側鎖基を別の側鎖基にすることができる。-Oアルキル基のアルキル部分はC1−C4アルキル(例えばメチル、エチル、プロピル、ブチル)であることが好ましい。
【0012】
5としてOメチルが可能である。残りの置換基R2、R3、R4としてHが可能であり、その場合のR5は-Oメチルである。
【0013】
R6は疎水基であることが好ましい。R6としてC1〜C12アルキルが可能であり、C5〜C10アルキルが最も好ましい。R6として、C1アルキル、C2アルキル、C3アルキル、C4アルキル、C5アルキル、C6アルキル、C7アルキル、C8アルキル、C9アルキル、C10アルキル、C11アルキル、C12アルキルのうちのいずれかが可能である。R6として、アリール基または-(CH2)pアリール(ここにpは1〜4の整数である)も可能であり、アリールは、置換されているか、置換されていない。nは1であることが好ましい。
【0014】
R6として、置換されたアルキルまたは置換されたアリールが可能である。アルキル基またはアリール基は、1つ以上のハロゲン化物、-OH、-NO2、-SO2R'で置換されていてもよい。
【0015】
この化合物は、一般式(II):
【化2】

で表わされるR6を備えることが好ましい。ただし、R7は、-H、-OH、-NO2、-SO2R'、ハロゲン化物のいずれかである。
【0016】
この明細書では、“ハロゲン化物”という用語に、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素が含まれ、その中ではフッ素が最も好ましい。
【0017】
疎水基に対するヒドロキサム酸リンカーの長さが重要であることがわかっており、その長さが化合物の活性に影響を与える。
【0018】
この方法は、化合物を1つ以上の種子に付着させた後にその種子を浸す操作を含むことができる。種子は、土、コンポストなどの媒体や、他の生育培地(growing medium)に浸した後にその場で処理してもよい。
【0019】
この組成物は、雑草の種子を処理し、その発芽を促進するのに使用できる。これは、その後、発芽したその種子を除草剤で処理して殺すことで、作物を植える前に地面から雑草をより容易に除去できるようになることを意味する。雑草は耕して殺すこともできる。
【0020】
他の植物材料(例えば塊茎、穀粒、球根)も、成長を促進するため植える前または植えた後に処理することができる。
【0021】
この方法は、植物組織、植物器官、植物のいずれかを処理して結実または開花を促進する操作を含むことができる。
【0022】
この化合物を利用することには、以下のように多数の利点がある。
(i)カロテノイドの合成に影響が及ぶという公知のいくつかの化合物の問題なしに、植物組織または植物器官の休眠が通常よりも早く解除されるため、植物の成長がより早く起こる可能性がある。
(ii)装飾用の花や果実の花などのつぼみを刺激できるため、つぼみの成長を刺激したり一様に制御したりすることが可能になる。
(iii)種子、塊茎、穀粒、球根や、他の増殖材料を刺激して発芽や成長をさせることができる。これは、種子において一次休眠を処理し、有利でない条件(例えば高温や、土の最適でない含水量)に起因する二次休眠を減らすのに利用できる。
(iv)発芽の一様性によって作物の価値と一様性が増大する。作物の成長が改善されることで葉が天蓋のように繁ると、裸の土からの水の喪失が阻止されて水の利用効率が向上し、その結果として雑草の成長が抑制される。
(v)この化合物を使用すると、植物の品種改良に影響がある可能性がある。
【0023】
強力な休眠は、迅速かつ一様な作物の定着と成長が必要な場合には負の性質である。しかし長期にわたる休眠は、作物の収穫可能な部分を保管する上で正の属性である。なぜなら保管した作物が発芽すると蓄えが動員されて代謝が変化し、その作物の品質と価値が低下するからである。
【0024】
品種改良計画によって天然の休眠が減(り、世代間の交代を早められ)ることがしばしばある。次いで化学的手段を利用し、保管されている作物の休眠中断を阻止する。例えばジャガイモの塊茎とタマネギの球根を長期にわたって保管するには、発芽を阻止するため、低温保管が、および/または有糸分裂式増殖の阻害剤の適用が必要とされる。穀物では、環境条件によっては種子が収穫前に芽を出す(収穫前発芽)ため、作物の品質が悪くなる。
【0025】
これら化合物は、この状況を逆転させるのに使用できよう。さまざまな作物に高レベルの休眠を導入することで、化学的な介入なしに良好な保管が可能になるであろうが、作物の定着と成長を促進するには休眠している組織(種子、穀粒、球根、つぼみ)に化合物を適用する必要があろう。このことは、Sp12というトマトの種子(ABAの含有量が多くなるように改変、下記参照)の場合に証明されている。種子の休眠期間が延長されており、それを化合物の適用によって逆転させる。保管されている作物や収穫した作物ではなく作物の定着段階で化学的に処理すると、消費者が農薬に曝されることが減るであろう。
【0026】
ABAの含有量をより多くするために植物の遺伝子が改変されており(従来のように品種改良することもできよう)、その結果として水の利用効率および/または干魃抵抗性が向上した。[Thompson, AJ.他、「アブシジン酸の過剰産生によって水の利用効率と根の水力学的コンダクタンスが向上し、葉の広がりに影響が及ぶ」、Plant Physiology, 2007年、第143巻:1905〜1917.7ページ]。しかしこのような植物は、より高度な休眠状態になっている可能性がある。これら化合物の適用によってそのような植物における休眠を克服することで、その植物の利用性をより高めることができよう。
【0027】
休眠相を克服するのが難しい作物の品種改良では、これら化合物が休眠を中断する能力によって品種改良プロセスを加速させることで、品種改良計画における世代時間(例えば種子から種子への時間)を短くできる。
【0028】
本発明により、一般式(I)の化合物を含む植物用組成物も提供される。本発明は、分離された一般式(I)の化合物にも関する。ただしこの化合物は上に定義したものである。
【0029】
本発明で用いる組成物と製剤は、1種類以上のアジュバントをさらに含んでいる。除草組成物で使用するアジュバントは、従来から一般に知られている。その中には、油をベースとしたアジュバントと混合物、有機シリコーンをベースとしたアジュバントと混合物、非イオンをベースとしたアジュバントと混合物、ポリマーをベースとしたアジュバントと混合物、脂肪酸をベースとしたアジュバントと混合物、ならびにこれらの組み合わせが含まれる。鉱物油をアジュバントとして添加することができる。アジュバントは、活性成分の1〜95重量%を添加することができる。
【0030】
除草組成物は、固体材料(例えば粘土、シリカや、従来から一般に知られている他の不活性な固体基剤)も含むこと、または追加して含むことができる。
【0031】
除草組成物は、固体または液体として適用することができる。使用する液体媒体として、例えばケロセン、キシレン、アルコール(エタノールなど)が可能である。このような液体の混合物も使用できる。これらを界面活性剤(例えば洗浄剤)と組み合わせて使用し、植物または種子の湿潤性を向上させることができる。
【0032】
本発明の組成物は、1種類以上の種子封止剤またはフィルム形成剤を含むことができる。このような化合物は一般に従来から知られており、一般式(I)の化合物と混合すること、または種子を処理した後に適用することができる。
【0033】
種子は、従来から一般に知られているドラム・プライミング法または種子被覆法によって本発明の化合物で処理した後、乾燥させることができる。
【0034】
種子の封止剤とフィルム形成剤は、石膏、珪藻土、ベントナイト粘土を結合剤とともに含んでいる。ポリマー、ゲル(例えばアルギン酸塩)、ポリビニルピロリドン/酢酸ビニルのコポリマー、核酸/アルキルビニルエーテルのコポリマーが一般に知られている。
【0035】
種子を充填材料と糊のマトリックスを用いてペレット化することもできる。公知のペレット化材料として、ローム、デンプン、ポリアクリレート/ポリアクリルアミド・ポリマーなどがある。殺真菌剤、および/または殺虫剤、および/または増量材料も添加することができる。
【0036】
本発明の組成物で処理した種子、植物組織、植物器官、植物も本発明によって提供される。
【0037】
植物として単子葉植物または双子葉植物が可能である。植物は、トマト、ジャガイモ、タマネギ、コムギ、オオムギ、オートムギ、モロコシ、トウモロコシ、イネ、アブラナ属、野菜およびサラダ菜(パースニップ、レタス、ホウレンソウ、チコリ、リーキなど)の種子と、あらゆる樹木および潅木の種の中から選択することが好ましい。
【0038】
除草組成物は、植物に直接適用すること、または土に適用することができる。
【0039】
この組成物は、例えば1mMの濃度で有効であることがわかっている。2mMを超える濃度だと効果が低下する可能性があるため、その濃度では使用しないことが好ましい。
【0040】
本発明の別の特徴により、上に定義した一般式(I)の分離された化合物が提供される。
【0041】
以下の図面を参照し、単なる例として本発明をこれから説明する。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】カロテノイド開裂ジオキシゲナーゼを触媒とした反応:a、NCEDによる9'-シス-ネオキサンチンの11,12-酸化的開裂;b、βカロテンとゼアキサンチンの酸化的開裂反応。
【図2】ヒドロキサム酸と阻害剤を調製するための合成経路。
【図3】阻害剤の設計。プロトン化アバミン(a)、カロテノイドカルボカチオン中間体(b)、ヒドロキサム酸阻害剤(c)がCCDの鉄(II)補因子に結合した状態を示してある。
【図4】大腸菌における4種類のCCDの相対的な抑制率。β-カロテンを産生する大腸菌株の中でCCD遺伝子を発現させた。阻害剤(100μM)の存在下でこれらの株を16時間にわたって増殖させた。阻害剤のこの濃度は、大腸菌が線形応答する範囲内であった。各クラスのCCDの相対的な抑制率は、阻害剤の存在下におけるβ-カロテンの蓄積の増加によって判断した。0という値は、阻害剤が存在していなかったときのβ-カロテンのレベルに等しいことを示し、100という値は、CCDが欠如した株で観察されるβ-カロテンの最大レベルに等しいことを示す(式に関しては、実験方法の項を参照)。誤差棒は、平均値の標準誤差を表わす(n=4)。浮いている黒い棒は、任意の2つの平均値を比較するための最小有意差(P<0.05)を表わす。
【図5】1μMのNAAの存在下において、切除したアラビドプシスの節に由来するつぼみの生長に対する阻害剤の効果。このグラフは、100μMの阻害剤の存在下または不在下においてCol-0(WT)でつぼみの生長が始まるまでの遅れ時間を示している。対照として、阻害剤なしのAtCCD71ヌル突然変異体(max3)を含めてある。数値は、5回の独立な実験からの平均値である;n=35(WT)、n=18(max3)、n=14〜16(WT+阻害剤)。浮いている黒い棒は、任意の2つの平均値を比較するための最小有意差を示し、*は、WTとは有意に異なっている値を示す(P<0.05)。
【図6】阻害剤D6を補足した寒天培地の中で45日間にわたって成長させたアラビドプシスの分岐の表現型。画像を以下のケースについて示してある:(a)阻害剤なしのCol-0(WT);(b)阻害剤なしのmax3-9突然変異体;(c)100μMのD6を使用したCol-0。ロゼット状分岐の数(d)を定量化した。誤差棒は、平均値の標準誤差を表わす(n=6〜12)。
【図7】CCDを発現するβ-カロテン蓄積大腸菌株に阻害剤の存在下で存在するβ-カロテンの量(培地1ml当たりのμgで表わす)。これらの株は、阻害剤(100μM)の存在下または不在下で16時間にわたって増殖させた(明細書の方法の項を参照)。誤差棒は、平均値の標準誤差を表わす(n=4)。(A)AtCCD7、(B)LeCCD1、(C)MmBCO2、(D)MmBCO1。
【図8】NCEDを過剰発現するトマトの種子(SP12系)の発芽に対する100μMのD4の効果。いくつかの処理では、3.3μMのノルフルラゾンを添加した。上のグラフと下のグラフは、2つの独立な実験を示している。それぞれの発芽アッセイにおいて1つのペトリ皿に種を20個入れた。誤差棒は、2つ用意した皿の間の変動幅を表わす。D4処理には、D4貯蔵溶液のための溶媒である1%DMSOも含まれていた。対照処理は、1%DMSOだけであった。
【図9】D4をさまざまな濃度にしたときの野生型種子(WT;Ailsa Craig Tm2a)またはSP12種子の発芽。それぞれの発芽アッセイにおいて1つのペトリ皿に種を20個入れた。誤差棒は、2つ用意した皿の間の変動幅を表わす。すべてのD4処理に1%DMSOも含まれていた。対照処理は、D4なしの1%DMSOであった。
【発明を実施するための形態】
【0043】
実験方法
第三級アミン阻害剤の合成 - アバミンを公開されている手続き(31、34)に従って合成した。
ヒドロキサム酸阻害剤の合成 - 合成法を図2に示してあり、構造を表1に与えてある。DMFの中でN-Boc, O-ベンジル-ヒドロキシルアミンをNaHで処理した後、適切な臭化ベンジルまたは臭化アルキルで処理した(35)。1%トリフルオロ酢酸を含むジクロロメタンで処理することによって脱保護を行なうと、N置換されたヒドロキシルアミンが得られた。DCC(1.1当量)と4-ジメチルアミノピリジン(0.2当量)と適切なカルボン酸をジクロロメタンの中で用いてヒドロキサム酸を形成した。生成したヒドロキサム酸をシリカゲル・カラム・クロマトグラフィによって精製した。THFの中でクロロギ酸メチルとトリエチルアミンを用いてその適切な酸を活性化し、ヒドロキシルアミンヒドロクロリドと反応させることにより、B1、D12、D13を調製した。B1を合成するための中間体はβ-イオノンから合成した(36)。B1は、E/Z異性体の2:1混合物として分離した。類似体D1〜D13、F1〜4、B1の分光学的データと収率は、補足データの項に記載してある。
【0044】
インビトロNCEDアッセイ - 大腸菌の中でLeNCED1をHis6融合タンパク質として過剰発現させた(方法の補足)。組み換えLeNCED1を含む無細胞抽出液を100mMのビス-トリス緩衝液(pH6.7)の中に調製した。氷の上で硫酸鉄(II)(20mM、1μl)とアスコルビン酸(20mM、1μl)を添加することによって15μlの抽出液を2分間にわたってあらかじめ活性化した後、使用した。次に、酵素のこのアリコートを、100mMのビス-トリス緩衝液(pH6.7)と、0.05%v/vのトリトンX-100と、1.0mg/mlのカタラーゼと、3μgの9'-シス-ネオキサンチンを含むアッセイ溶液(全体積150μl)に添加した。基質である9'-シス-ネオキサンチンは、方法の補足に記載したようにして調製した。この酵素アッセイ溶液を暗所で20℃にて15分間にわたってインキュベートした。次に水(700μl)を添加し、生成物を酢酸エチルで抽出した(3×1ml)。有機溶媒を減圧下で除去し、残留物をメタノール(200μl)に溶かした後、100μlをフェノメネックスC18逆相HPLCカラムに注入し、5〜10%の勾配のメタノールを含むアセトニトリル/0.05%トリエチルアミンを0.5ml/分の速度で20分間かけて適用し、440nmで検出した。NCED抑制アッセイには1〜100μMの阻害剤が含まれていた。15分後に形成される生成物から抑制率を計算し、阻害剤なしの対照アッセイと比較した。保持時間:9'-シス-ネオキサンチン、10.2分;C25生成物、6.5分。
【0045】
インビトロLeCCDIa酵素アッセイ - 大腸菌の中でLeCCDIaをGST融合タンパク質として過剰発現させた(方法の補足)。インビトロLeCCDIaアッセイは報告されている方法(37)に基づいており、96ウエルの微量滴定プレートの中で合計体積200μlで実施し、信号を485nmで検出した。各アッセイ用の基質溶液を調製するため、5μlの4%(エタノール中のw/v)アポ-8'-カロテナール(シグマ社)を25μlの4%(エタノール中のw/v)β-オクチルグルコシド(シグマ社)と混合した後、エタノールを窒素雰囲気下で蒸発させ、10mMのアスコルビン酸ナトリウムを含む150μlのPBS緩衝液に残留物を溶かし、20℃にて30分間にわたってインキュベートした。組み換えLeCCDIaを含む50μlの無細胞抽出液を添加し、反応を20℃で30分以上モニターした。
【0046】
大腸菌でのインビボ酵素アッセイ - 興味の対象である遺伝子(補足の表S1)をタグなしの開始コドンATGに直接融合させたベクターpET30c(ノヴァジェン社)、またはpGEX-4tに入れてクローニングし、この遺伝子をN末端のGSTタグに融合させた。葉緑体シグナル配列を除去しておいたAtCCD7を除き、どの遺伝子も完全長であった(方法の補足)。この遺伝子は、pGEX-4tベクター(GEヘルスケア社)の中でGSTと融合すると、タグなしのpETベクターの中で発現するときよりも大きなCCD活性を示した。したがってこのコンストラクトを続くアッセイで使用した。プラスミドをpAC-BETA(38)が含まれた大腸菌発現株BL21(DE3)に移すことで、β-カロテンを産生させた。
【0047】
それぞれの阻害剤アッセイに関し、適切な抗生物質(25μg/mlのクロラムフェニコールと、50μg/mlのカナマイシンまたは100μg/mlののアンピリシン)と2.5μMのIPTGを含む2.5mlのLB培地を調製した。阻害剤(100%エタノール中に0.1M)を培地に添加して最終濃度を100μMにした。次に、(適切な抗生物質とともに37℃で増殖させて)一晩経過した培養物0.25mlをこの培地に接種し、28℃で振盪させながら(200rpm)16時間にわたってインキュベートした。培養物1mlをマイクロ遠心分離によって回収し、0.2%トリトンX-100を含む1mlのエタノールの中に再び完全に懸濁させた。撹拌した後、抽出液を暗所で室温にて3時間にわたってインキュベートし、再度撹拌した後、マイクロ遠心分離機の中で13000rpmにて5分間にわたって回転させた。上清を取り出し、O.D.453- O.D.550を測定した。0.2%トリトンX-100を含むエタノールの中に希釈した一連のβ-カロテン(シグマ社)から生成させた基準曲線を用いてβ-カロテンの量を計算した。β-カロテンの絶対レベルを図7に示す。相対的抑制は、式:(Ci- Cc)/(CI-Cc)×100によって計算した。ただしCiは、阻害剤とCCDの存在下におけるカロテノイドのレベルであり、Ccは、CCDは存在するが阻害剤なしでのレベルであり、CIは、CCDの代わりにlacZが発現していて阻害剤は存在していない株におけるレベルである。そこでCCDの抑制に起因するβ-カロテンの増加(Ci - Cc)は、CCDが不在であるときの可能な最大のβ-カロテン含有量(CI - Cc)に対する割合として表現した。
【0048】
シロイヌナズナの茎部における腋芽生長アッセイ - このアッセイは、主に(40)に記載されているようにして実施したが、以下のように変更した。1%寒天と1%スクロースを補足した10mlのATS(39)を小さなペトリ皿(直径50mm、深さ20mm)に満たした。阻害剤とα-ナフタレン酢酸(NAA)をそれぞれ100μMと1μMにした後に寒天に注いで添加した。したがって寒天から中央のストリップを切り出すとき、培地の頂部と底部の両方にNAAと阻害剤の両方が含まれていた。上端がカールして培地の外に出ていた節や、つぼみの長さが実験の終了時に2mm未満である節は、すべて無視した。新芽の長さを24時間ごとに測定した。各アッセイについて、曲線フィット命令を備えるGenstat(第10版、VSNインターナショナル社)を用いてロジスティック曲線をフィットさせ、曲線の直線部と初期平坦部を外挿することによって遅滞期を計算した(方法の補足を参照)。これら2本の線が交わるxの値が遅滞期を表わしていた。
【0049】
統計的分析 - 図4と図5に示したデータを、Genstat10において残差最尤法(REML)により分析した。両方の場合に、F検定から、全体として処理効果は非常に有意であることがわかった(P<0.001)。最小有意差(LSD)の最大値は、差の最大標準誤差にt値(P=0.05)を掛けることによって計算し、グラフ上に表示してある。図4と図5に示したLSDには自由度がそれぞれ105と157ある。個々のLSDは変動するため最大LSDを使用したが、最大値を用いて平均値間の差が有意である場合には、選択した任意の2つの平均値についてLSDは個々の値のレベルでも有意に異なっていた。
【0050】
種子材料
使用した種子は“野生型”トマト(タバコ・モザイク・ウイルス耐性遺伝子Tm2aを含むトマト cv. Ailsa craig準同質遺伝子系)であった。それに加え、9-シス-エポキシカロテノイドジオキシゲナーゼをコードしている遺伝子LeNCED1を過剰発現するよう設計したコンストラクトを用いて形質転換したトランスジェニック・トマトの種子(Solanum lycopersicum cv. Ailsa craig)も使用した。このトランスジェニック種子は、D9として知られている[Thompson, A.J.他、「トマトの9-シス-エポキシカロテノイドジオキシゲナーゼ遺伝子の異所性発現がアブシジン酸の過剰産生を引き起こす」、Plant Journal, 2000年、第23巻(3):363〜74.5ページ]が、後に名称がSP12に変更された[Thompson, AJ.他、「根におけるABA生合成の調節と操作」、Plant Cell and Environment, 2007年、第30巻:67〜78.6ページ]。この種子は、LeNCED1の過剰発現によって起こるアブシジン酸の過剰産生のために最終的な発芽が遅くて発芽の割合が低いことが以前に明らかにされている[Thompson, AJ.他、「トマトの9-シス-エポキシカロテノイドジオキシゲナーゼ遺伝子の異所性発現がアブシジン酸の過剰産生を引き起こす」、Plant Journal, 2000年、第23巻(3):363〜74.5ページ]。
【0051】
発芽アッセイ
各アッセイは、1mlの試験溶液に浸した直径8.5cmの円形のホワットマン・グレード1の濾紙(ホワットマン・インターナショナル社、メイドストーン、イギリス国)を収容した10cmの通気性ペトリ皿からなる。種子の表面を30%家庭用漂白剤で30分間にわたって殺菌し、蒸留水の中で洗浄した後、種子20個を各ペトリ皿の中の濾紙の上に置いた。ペトリ皿を暗所で25℃にて高い相対湿度(95%超)でインキュベートした。種子の発芽(幼根の出現が目に見えること、と定義される)を毎日記録した。複製のプレートをそれぞれの化学処理のために使用した。
【0052】
ヒドロキサム酸をジメチルスルホキシド(DMSO)に溶かし、DMSOの最終濃度が1%v/vになるようにして水性試験溶液を調製した。対照溶液は、1%v/v DMSOを含む水で構成した。貯蔵溶液として、20mg/mlのノルフルラゾンを含むエタノールを調製した後、水で希釈して最終濃度を5mg/mlにした。エタノールは、0.025% v/vの割合で存在している。
【0053】
方法の補足
株の構成
Qiaprepプラスミド・ミニ・スピン・キット(キアジェン社)とPCR産物を利用してプラスミドを調製し、切断したベクターをQiaQuickカラム(キアジェン社)を製造者の指示に従って利用して精製した。HiFiエキスパンド(ロシュ社)DNAポリメラーゼを製造者の指示に従って利用してPCRを実施した。T4 DNAリガーゼ(インヴィトロジェン社)を25℃にて1時間用いて連結させた。コンストラクトを最初に大腸菌DH10B細胞(ストラタジーン社)に入れてクローニングし、PCRのエラーが起こっていないことを確認するため配列を調べた。
【0054】
LeCCD1a遺伝子(AY576001)は、プライマーLeCCD1a-FCl:- TACGAATTCCATATGGGGAGAAAAGAAGATGとLeCCD1a-RCl:-TAGTCTCGAGTCACAGTTTGGCTTGTTCを用い、(ゲノム研究所(TIGR)トマト遺伝子インデックスから入手した)cLET29I6から増幅した。生成物をNdeIとXhoIで切断し、同様にして切断したpET30c(ノヴァジェン, VWRインターナショナル社)に連結した。それに加え、生成物をEcoRIとXhoIで切断し、同様にして切断したpGEX-4t(GEヘルスケア社)に連結した。
【0055】
AtCCD7遺伝子は、プライマーAtCCD7-FC3 TATGCTCGAGGAGATCTGGATTAATGGCCGCAATATCAATATCとAtCCD7-RCl TAGTCTCGAGTCAGTCGCTAGCCCATAAACを用い、親切にもOttoline Leyser(ヨーク大学)から提供されたpCR2.1-AtCCD7から増幅した。PCR産物をBglIIとXhoIで切断し、BamΗI/SalIで切断した pGEX-4tに入れてクローニングした。
【0056】
MmBCO1(AF294899)は、プライマーMmBCO1-FC1 TACTGAATTCCATATGGAGATAATATTTGGCとMmBCO1-RC1 TACTCTCGAGTGAGTGTTAGGATTAAAGを用い、ジーンサービス社(ケンブリッジ、イギリス国)から入手したクローンIMGCLO2192191から増幅した。PCR産物をNdeI/XhoIで切断し、同様にして切断したpET30cに入れてクローニングした。
【0057】
MmBCO2遺伝子(AJ290392)は、プライマーMmBCO2-FC1 TATCGGATCCCATATGTTGGGACCGAAGCAGAGと、MmBCO2-RC1 TATCCTCGAG TCAGATAGGCACAAAGGTを用い、クローンIMGCLO2536812(ジーンサービス社)から増幅した。生成物をNdeI/XhoIで切断し、同様にして切断したpET30cに入れてクローニングした。
【0058】
LeNCED1 cDNA(Z97215)はIan Taylor(ノッティンガム大学)から供給され、それをベクターpET14b(ノヴァジェン, VWRインターナショナル社)のNdeI部位とBpu1102部位に入れてクローニングし、N末端にHis6タグを融合した。このプラスミドを大腸菌Rosetta (DE3) 細胞(ノヴァジェン, VWRインターナショナル社)の中で発現させた。
【0059】
大腸菌における阻害剤アッセイで使用した株の詳細は、以下に示す補足の表S1にも与えてある。
【0060】
無細胞抽出液の調製
LeCCD1aとLeNCED1の無細胞抽出液を製造するため、ODが0.6になるまで培養物を37℃で増殖させた後、イソプロピル β-D-1-チオガラクトピラノシド(IPTG)を0.2mMになるまで添加し、培養物を20℃にて一晩増殖させた。細胞(200mlの培養物)を遠心分離(5000rpm、10分間)によって回収し、ペレットを、0.1%トリトン-X100を含む4mlのPBSに再び懸濁させた。リゾチームを添加して最終濃度を25μ/mlにし、溶液を室温にて15分間にわたってインキュベートした後、氷の上で超音波処理した(18Ωで3×30秒)。次にライセートを遠心分離し(13000rpm、15分間、4℃)、上清をアッセイに使用した。
【0061】
新芽伸長アッセイのための遅滞期の計算
それぞれの新芽についてGenStat(第10版)を使用し、ロジスティック曲線y = A + C/(1+e-B(t-m))をデータにフィットさせた。次に、式m - (2/B)を用いて遅滞期を計算した。この式は、曲線の直線部と初期平坦部から外挿した2本の線の交点のt値(時間)を実際に与えた。
【0062】
9'-シス-ネオキサンチンの調製
新鮮なホウレンソウ(20g)を洗浄し、暗所で乳棒と乳鉢を用いてBHT(0.03g)と炭酸水素ナトリウム(0.3g)を含む冷たいメタノール(30ml)とともに3分間にわたってつぶし、この混合物を吸引下で濾過した。保持液がほぼ無色になるまでこの操作を6回繰り返した。1つにまとめた抽出液を冷たいジエチルエーテルと飽和塩化ナトリウムに分けた。エーテル抽出液を回収し、水層を冷たいジエチルエーテルでさらに2回抽出した。そのエーテル抽出液を1つにまとめ、32℃未満で溶媒を回転蒸発によって除去した。暗所にて、6%のKOHを含む9mlのメタノールと1mlのジエチルエーテルを用いて4℃で16時間にわたって残留物を鹸化した。飽和塩化ナトリウム水溶液(50ml)を添加し、ジエチルエーテルで抽出し(100ml×3)、Na2SO4上で乾燥させ、溶媒を上記のようにして除去した。次に、失活したアルミナ(10gのアルミナを5分間にわたって1mlの蒸留水および10mlの石油エーテルと混合したもの)を用いて9'-シス-ネオキサンチンをカラム・クロマトグラフィによって精製した。固体ホウレンソウ抽出液をジエチルエーテル/石油エーテル(1:5)の中に入れ、カラムをジエチルエーテル/石油エーテル(1:1、50ml)で洗浄し、ジエチルエーテル(50ml)で洗浄し、5%のエタノールを含むジエチルエーテル(50ml)で洗浄すると、最終的に9'-シス-ネオキサンチンが溶離した。その9'-シス-ネオキサンチン画分を窒素で乾燥させ、窒素雰囲気下にてホイルで包んだバイアルの中に-20℃で保管した。データ:Rf 0.09(シリカ、Et2O);lmax415、439、467nm;C40H56O4に関するm/z (FAB+) 600.33、計算値600.87。
【0063】
結果
阻害剤の設計と合成 - NCEDはジオキシゲナーゼであることが提案された(3)。メカニズム反応には、カルボカチオン中間体に続いてジオキセタン環の形成またはクリーゲー再配置が起こった後に開裂するという反応が含まれる(41)。このようなメカニズムは、AtCCD1を用いた18O標識実験によって支持された(37)。このようなメカニズムは、ACO結晶構造の計算実験に基づく最もありそうなメカニズムでもあった(42)。
【0064】
第三級アミンであるアバミン(構造に関しては図3a参照)は、組み換えNCEDの可逆的な競合性阻害剤(Ki=39μM)であることと、植物で産生されるアブシジン酸を50〜100μMの濃度で抑制することが報告されている(31)。メチルエステルと窒素原子の間に延びる3炭素リンカーを有するアバミンSGがその後開発され、これは改善された活性(Ki=18.5μM)を持っていた(32)。アバミンの正確な作用メカニズムははっきりしていないが、われわれの仮説は、図3に示してあるように、触媒メカニズムにおいてプロトン化されたアミンがカルボカチオン中間体をまねて、酸素化された芳香族環が、カロテノイド基質のヒドロキシ-シクロヘキシル末端の代わりに結合するというものである(41)。抑制の一部は、必須な金属イオン補因子がアバミンのメチルエステルによってキレート化することに起因する可能性がある。しかしメチルエステルの代わりに酸基(COOH)を含むアバミンの誘導体は、理論上は鉄補因子に結合する際により有効であるはずであるにもかかわらず、活性ではなかった(32)。
【0065】
ヒドロキサム酸は、必須な金属イオン補因子のキレート化によっていくつかの異なるクラスの金属酵素(例えばマトリックスメタロプロテイナーゼ)の阻害剤として作用することが知られている(43)。したがって、カロテノイド基質のヒドロキシシクロヘキシル末端が酸素化された芳香族環によって上記のようにまねされていて、ヒドロキサム酸官能基が芳香族環からさまざまな距離に位置するいろいろなヒドロキサム酸類似体を合成した。そこで一群のアリール-C3N類似体(D8〜D13)、アリール-C2N類似体(D1〜D7)、アリール-C1N類似体(F1〜F4)も合成した(表1)。一連のアバミンにおいて活性を促進することが見いだされている4-フルオロベンジル置換基(31)をヒドロキサム酸のコレクションに含めた。図2に示した合成経路には、置換されたO-ベンジルヒドロキシルアミンに適切な酸をカップリングさせた後、脱保護する操作が含まれている。シクロヘキシル部分からのより長いC5スペーサを含む1つのヒドロキサム酸(B1)もβ-イオノンから合成した。次に、これら18種類のヒドロキサム酸のセットを阻害剤のスクリーニングに使用した。化合物の記号は表1に示してある。
【0066】
表1
インビトロ・アッセイを利用した組み換え酵素LeCCD1aとLeNCEDlの抑制。
最初に、組み換えCCDを含む大腸菌細胞抽出液を用いた酵素アッセイを、阻害剤の濃度を100μMにして実施した。この濃度でLeCCD1aの抑制が90%以上である化合物に関しては、IC50の値も決定した。NTは試験せずを意味する。ヒドロキサム酸阻害剤の化学構造を下に示してある。XとYは表に与えてある。アバミンの構造は図3に示してある。
【0067】
【表1】

a:100μMにおける2回の独立した抑制測定により、20%と49%という値が得られた。
【化3】

【0068】
トマトの遺伝子LeNCED1とLeCCD1aに対する試験管内での抑制の特異性 - カロテノイドを9,10位で開裂させる酵素に対する阻害剤をスクリーニングするため、トマトの組み換えLeCCD1aタンパク質を使用した(44)。なぜならこのタイプの酵素は、基質としてβ-アポ-8'-カロテナールを用いたインビトロ比色アッセイを利用して研究できるからである(37)。阻害剤の特異性を明確にするため、9-シス-カロテノイドを11,12位で開裂させるトマトの組み換えLeNCED1に対しても阻害剤をテストした(45)。この酵素に関しては、9'-シス-ネオキサンチンを基質として用い、開裂反応をC18逆相HPLCによってモニターした。別の研究者によって報告されているように(46)、各酵素の活性は、保管または精製に関して不安定であることが見いだされた(寿命が24時間未満)。したがって、組み換え無細胞抽出液を用いて酵素アッセイを実施した(組み換えCCD遺伝子のない大腸菌抽出液を用いると、開裂活性は観察されなかった)。
【0069】
LeNCED1に対しては、いくつかのヒドロキサム酸(特にD8、D7、D4)が、NCED阻害剤として指定したアバミン(31)(われわれの実験では100μMの濃度で20%の抑制しか示さなかった)よりも1.5〜2倍大きな抑制活性を示した(表1参照)。LeCCD1に対しては、すべてのアリール-C2Nと他のいくつかのヒドロキサム酸による強力な抑制が観察された。4-メトキシアリールヒドロキサム酸は各シリーズで有効な阻害剤であったが、最も強力な抑制は、4-ヒドロキシアリールヒドロキサム酸D1、D2、D3で観察され、これらはIC50の値が0.8〜0.9μMであった。アバミンは、100μMでLeCCD1を50%しか抑制しなかった。
【0070】
LeNCED1とLeCCD1aに関する抑制データの比較から、活性な化合物はすべて、LeCCD1aに対する選択性をいくらか示すことがわかる。化合物D3、F1、F2はLeCCD1抑制のレベルが高く、LeNCED1をほとんど、またはまったく抑制しない(表1)。
【0071】
CCDを発現する大腸菌に適用した阻害剤の生体内活性 - カロテノイドを合成する酵素の発現により、さまざまなカロテノイドを産生する着色大腸菌株を構成することができる(26)。細菌は、適切なCCDを同時発現させると、カロテノイドの開裂が原因で無色の産物になって色を失う(4、6、27)。この技術をここで使用し、阻害剤の特異性をさらに調べるとともに、生体内での活性をテストした。CCDを発現する各株におけるカロテノイドのレベルを、β-カロテンを産生するがあらゆるCCD遺伝子を欠いている対照株におけるカロテノイドのレベルと比較した。カロテノイドのレベルの差は、CCD活性の1つの指標を与えてくれた。この活性の抑制は、生育培地に阻害剤を添加することによって測定した。
【0072】
β-カロテンを産生する4種類の大腸菌株に対して阻害剤をテストした(補足の表S1)。3つの株は、9,10位を開裂させる非常に多彩なCCDを発現した。シロイヌナズナからのAtCCD7(21)とマウスからのMmBCO2(6)は両方とも単一の部位(9,10または9',10'の一方で、両方ではない)を開裂させ、トマトの酵素LeCCD1a(44)は同じ基質分子内の両方の部位を開裂させる(9,10/9',10'活性)。4番目の株は、マウスの別のCCDであるMmBCO1(47)を発現した。これは、主に15,15'を開裂させる。われわれ自身と他の研究者(48)は、CCD(と、おそらくは他のタンパク質)を発現させると非特異的な手段によってカロテノイドの喪失につながる可能性のあることを見いだした。しかし大腸菌細胞と培地でHPLCによって開裂産物を検出することで、ここで用いた4つの株すべてでCCD開裂がカロテノイド喪失の原因であることが確認された。NCED活性は、大腸菌細胞では研究できなかった。なぜならNCEDの9-シス・カロテノイド基質の産生に必要な酵素はまだ同定されていないからである。われわれは、遺伝子CsZCD(9)とBoLCD(49)を合成して大腸菌の中で発現させ、試験管内と大腸菌細胞内の両方で、報告されている5,6開裂活性と7,8開裂活性を調べた。しかし活性を検出できなかったため、5,6と7,8の開裂の特異性に対する阻害剤の試験は不可能であった。
【0073】
これら化合物は、3種類の9,10酵素に対して異なる抑制パターンを示した(図4)。生体内でのLeCCD1aに対するこれら化合物の活性(図4)は、試験管内で観察された活性の反映であった(表1)。D5とD6は他のD化合物と比べて弱い抑制活性を示し、F3は実質的に活性を示さなかった。大腸菌系の中のAtCCD7では、LeCCD1aに対して優れた活性を示した化合物F1とF2で異なるパターンが得られ、抑制が弱かった(図4)。逆に、F1とF2は、MmBCO2を抑制する最も有効な化合物であった(図4)。15,15'開裂酵素MmBCO1は、テストしたどの化合物によっても有意には抑制されなかった(図4)。
【0074】
阻害剤の適用によるシロイヌナズナ茎部における新芽分岐の促進 - オーキシンは、野生型シロイヌナズナで腋芽の生長を抑制する。AtCCD7ヌル突然変異体とAtCCD8ヌル突然変異体(それぞれmax3、max4)では、オーキシンに対する応答が低下する、これはおそらく、分岐を抑制するアポカロテノイド・ホルモン(ストリゴラクトンまたは関連化合物であることが最近わかった(17、18))(19)の形成が阻止されるためであろう。すると腋芽がより早く延び、側枝の形成につながる。分離したシロイヌナズナの茎区画からの腋芽の生長を利用してmax突然変異体を調べるインビトロ・アッセイが以前に開発された(40)。このようなアッセイでは、max4-1突然変異体(AtCCD8)のつぼみの生長が野生型よりも2日早かったこと(20)と、同様の表現型が高度に分岐するmax3-9突然変異体で予想されること(21)が報告されている。われわれは、このアッセイでヒドロキサム酸を100μMでテストし、D1〜D6とF3がすべて、野生型におけるつぼみの生長の時期を1日(D1)〜3日(D3)の範囲で有意に(P<0.05)早めることを見いだした(図5)。つぼみのこのより早い生長は、AtCCD7ヌル突然変異体max3-9で観察されたこと(図5)と同等であり、この組織におけるAtCCD7の抑制および/またはおそらくはAtCCD8の抑制を示している。このアッセイにおける阻害剤の効果は、大腸菌アッセイにおける活性を一部しか反映しておらず、化合物F1とF2は、つぼみ生長アッセイ(図5)と大腸菌AtCCD7アッセイ(図4)の両方において比較的小さな活性を示した。しかしF3の場合には食い違いがあった。なぜならF3は大腸菌アッセイではAtCCD7に対して不活性であったが、つぼみの生長促進に関しては活性だったからである。この場合の1つの可能性は、F3がAtCCD7ではなく(インビトロ・アッセイまたは大腸菌アッセイではテストしなかった)AtCCD8を抑制することによって分岐を促進したというものである。
【0075】
シロイヌナズナの苗全体における新芽の分岐の促進 - 寒天内で無菌条件下で生長しているシロイヌナズナの苗全体にも阻害剤を適用した。max3-9の苗(図6b)と、D2、D4、D5、D6で処理した苗(図6cは、D6で処理した苗を示している)は、処理していない野生型対照(図6a)と比べて潅木のような外観を示した。この潅木のような外観は、ロゼット状の節からの側枝の数が増えたことに起因していた。max3-9の苗は、側枝が野生型での平均値0.25と比べて3〜4本であった。阻害剤で処理した苗は中間であり(平均値は枝が約2本)、一部がmax3-9に似ていた(図6d)。
【0076】
植物ホルモンであるアブシジン酸(ABA)は、多くの植物構造体において休眠を促進する。その中には、種子[Finch-Savage, W.E.とG. Leubner-Metzger「種子の休眠と発芽の制御」、New Phytologist、2006年、第171巻(3):501〜523ページ]、塊茎 [Suttle, L.C.、「ジャガイモ塊茎の休眠の生理学的調節」、American Journal of Potato Research、2004年、第81巻(4)、253〜262ページ]、球根 [Chope, G.A.、L.A. Terry、P.J. White、「タマネギ球根のアブシジン酸濃度と他の生化学的属性に対する制御された大気圧下保管の効果」、Postharvest Biology and Technology、2006年、第39巻(3):233〜242ページ]、つぼみ[Le Bris, M.他、「試験管内で培養したローザ・ヒブリダの分離したつぼみでABAを操作することによるつぼみの休眠調節」、Australian Journal of Plant Physiology、1999年、第26巻(3):273-281ページ]が含まれる。9-シス-エポキシカロテノイドジオキシゲナーゼ(NCED)は、ABAの生合成においてカギとなる1つの速度制限ステップである[Thompson, AJ.他、「トマトの9-シス-エポキシカロテノイドジオキシゲナーゼ遺伝子の異所性発現がアブシジン酸の過剰産生を引き起こす」、Plant Journal、2000年、第23巻(3):363〜74.5ページ]。表1に、多数のヒドロキサム酸化合物が試験管内でNCEDに対する抑制活性をいくらか示すことと、化合物D4、D7、D8が試験管内でNCEDを最も抑制することを示してある。
【0077】
発明者は、トランスジェニックSP12トマトの種子を作り出した。この種子はABAのレベルが高く、休眠が増大している[Thompson, AJ.他、「トマトの9-シス-エポキシカロテノイドジオキシゲナーゼ遺伝子の異所性発現がアブシジン酸の過剰産生を引き起こす」、Plant Journal、2000年、第23巻(3):363〜74.5ページ;Thompson, AJ.他、「根におけるABA生合成の調節と操作」、Plant Cell and Environment、2007年、第30巻:67〜78ページ]。われわれはこの種子をアッセイ系(NCED阻害剤の添加によって発芽が促進されるはずである)として使用して化合物D1〜D7をテストし、D4とD7が発芽の促進に関して最も活性な化合物であることを見いだした。化合物D4は、SP12種子の発芽を投与量に依存して(図9)促進した(図8)。われわれは、D4を野生型トマトの種子(cv. Ailsa Craig)にも適用し、この種子の発芽も投与量に依存して促進されることを見いだした(図9)。D4の濃度が1mM未満のときには、D4を野生型またはSP12種子に適用した後に正常な苗の成長が観察された。D4が2mMだと、成長のいくらかの遅れが明らかに見られた。
【0078】
市販されている除草剤であるノルフルラゾンとフルリドンはフィトエンデサチュラーゼを阻止するため、あらゆるカロテノイドの合成を阻止することによってABAの生合成も阻止する(ABAはカロテノイドに由来する)。ノルフルラゾンとフルリドンは、植物組織の休眠を解除するのに市場で利用されてはいない。なぜならカロテノイドの合成阻止は致死的だからである(そのため、種子の発芽を促進し、発芽した植物を漂白によって殺すために発芽前除草剤として使用される)。ノルフルラゾンピラジノン除草剤とフルリドンピリデンは、ヨーロッパの殺虫剤産業によってサポートされていないため、両方とも放棄された殺虫剤のリストに載っており(2003年7月)、ヨーロッパでは今や登録が不可能であった。
【0079】
補足データ
合成阻害剤に関する分光学的データ
D1.N-ベンジル-4-ヒドロキシフェニルアセチルヒドロキサム酸。収量0.59g(カップリング54%、脱保護74%)。δH (400 MHz, CD3OD) 3.77 (2H, s, CH2CO)、4.78 (2H, s, CH2N)、6.77 (2H, d, J = 8.0 Hz)、7.13 (2H, d, J = 8.0 Hz)、7.25〜7.35 (5H, m)。δc (100 MHz, CD3OD) 39.2、53.1、116.3、127.5、128.6、129.3、129.5、131.6、137.7、157.2、174.7 ppm。 MS (ES) 280.1 (MNa+)、C15H15NO3Naに関するHRMSの観測値280.0949、計算値280.0944。
【0080】
D2.N-(4-フルオロベンジル)-4-ヒドロキシフェニルアセチルヒドロキサム酸。収量0.12g(カップリング93%、脱保護55%)。δH (400 MHz, CD3OD) 3.72 (2H, s, CH2CO)、4.78 (2H, s, CH2N)、6.73 (2H, d, J = 8.0 Hz)、7.06 (2H, t, J = 8.0 Hz)、7.11 (2H, d, J = 8.0 Hz)、7.30 (2H, m)。δc (100 MHz, CD3OD) 39.2、52.3、114.9、116.0、116.2、128.5、129.5、131.3、131.5、142.4 (カルボニルは見られず) ppm。 MS (ES) 298.1 (MNa+)、C15H14NO3Naに関するHRMSの観測値298.0860、計算値298.0850。
【0081】
D3.N-(4-フルオロベンジル)-3,4-ジヒドロキシフェニルアセチルヒドロキサム酸。収量0.08g(カップリング50%、脱保護78%)。δH (300 MHz, CD3OD) 3.68 (2H, s, CH2CO)、4.74 (2H, s, CH2N)、6.60 (1H, dd, J = 2.0, 8.0 Hz)、6.72 (1H, d, J = 8.0 Hz)、6.78 (1H, d, J = 2.0 Hz)、7.03 (2H, t, J = 8.0 Hz)、7.28 (2H, m)。δc (75 MHz, CD3OD) 39.4、52.3、116.0、116.3、117.7、121.9、127.9、131.3、145.1、146.2、162.1、165.3、174.1 ppm。 MS (ES) 314.3 (MNa+)。
【0082】
D4.N-(4-フルオロベンジル)-4-メトキシフェニルアセチルヒドロキサム酸。収量0.24g(カップリング78%、脱保護83%)。δH (400 MHz, CDCl3) 3.70 (2H, s, CH2CO)、3.73 (3H, s, CH3O)、4.69 (2H, s, CH2N)、6.77 (2H, d, J = 8.0 Hz)、6.94 (2H, t, J = 8.0 Hz)、7.13 (2H, d, J = 8.0 Hz)、7.20 (2H, m)。δc (100 MHz, CDCl3) 38.9、40.4、52.0、114.5、115.7、115.9、128.2、131.1、131.3、159.3、163.7 (カルボニルは見られず) ppm。 MS (ES) 312.2 (MNa+)、C16H16NO3FNaに関するHRMSの観測値312.1004、計算値312.1006。
【0083】
D5.N-ベンジル-3,4-ジメトキシフェニルアセチルヒドロキサム酸。収量0.23g(カップリング62%、脱保護66%)。δH (300 MHz, CDCl3) 3.64 (2H, s, CH2CO)、3.70 (3H, s, OCH3)、3.76 (3H, s, OCH3)、4.65 (2H, s, CH2N)、6.63〜6.73 (3H, m)、7.15〜7.30 (5H, m)。δc (75 MHz, CDCl3) 38.0、51.4、55.1、55.2、110.5、111.9、121.0、126.9、127.1、127.8、128.3、135.4、147.1、148.1、172.1 ppm。 MS (ES) 324.2 (MNa+)、C17H19NO4Naに関するHRMSの観測値324.1216、計算値324.1206。
【0084】
D6.N-(4-フルオロベンジル)-3,4-ジメトキシフェニルアセチルヒドロキサム酸。収量0.22g(カップリング100%、脱保護69%)。δH (400 MHz, CD3OD) 3.40 (2H, s, CH2CO)、3.80 (3H, s, OCH3)、3.84 (3H, s, OCH3)、4.76 (2H, s, CH2N)、6.81 (1H, d, J = 8.0 Hz)、6.89 (1H, d, J = 8.0 Hz)、6.91 (1H, s)、7.04 (2H, t, J = 8.0 Hz)、7.30 (2H, m)。δc (100 MHz, CD3OD) 39.5、52.3、56.4、56.6、113.1、114.4、116.3、123.0、129.4、131.5、133.9、149.4、162.5、164.9、174.3 ppm。 MS (ES) 342.2 (MNa+)、C17H18NO4FNaに関するHRMSの観測値342.1110、計算値342.1112。
【0085】
D7.N-(4-フルオロベンジル)-3,4-メチレンオキシフェニルアセチルヒドロキサム酸。収量0.26g(カップリング51%、脱保護100%)。δH (400 MHz, CD3OD) 3.45 (2H, s, CH2CO)、4.86 (2H, s, CH2N)、6.05 (2H, s, OCH2O)、6.85 (2H, s)、6.91 (1H, s)、7.08 (2H, t, J = 8.0 Hz)、7.33 (2H, m)。δc (100 MHz, CD3OD) 39.7、52.5、102.4、109.2、111.0、116.3、123.7、130.3、131.5、133.6、149.7、162.7、165.1、175.0 ppm。 MS (ES) 304.1 (MH+)、C16H15NO4Fに関するHRMSの観測値304.0980、計算値304.0980。
【0086】
D8.N-ベンジル-3,4-ジメトキシフェニルプロピオニルヒドロキサム酸。収量0.15g(カップリング71%、脱保護94%)。δH (400 MHz, CDCl3) 2.60 (4H, m)、3.73 (6H, s, 2×OCH3)、4.68 (2H, s, CH2N)、6.63〜6.73 (3H, m)、7.15〜7.30 (5H, m)。δc (100 MHz, CDCl3) 30.4、34.3、51.9、55.8、55.9、111.3、111.9、120.3、126.9、128.0、128.8、133.9、136.2、147.3、148.8 (カルボニルは見られず) ppm。 MS (ES) 316.2 (MH+)、C18H21NO4に関するHRMSの観測値316.1547、計算値316.1549。
【0087】
D9.N-ベンジル-4-メトキシフェニルプロピオニルヒドロキサム酸。収量0.13g(カップリング82%、脱保護82%)。δH (400 MHz, CDCl3) 2.82 (4H, m)、3.68 (3H, s, OCH3)、4.68 (2H, s, CH2N)、6.67 (2H, d, J = 8.0 Hz)、7.01 (2H, d, J = 8.0 Hz)、7.15〜7.30 (5H, m)。δc (100 MHz, CDCl3) 28.0、32.3、50.9、54.2、112.9、120.3、126.6、127.5、128.3、134.3、136.3、147.5 (カルボニルは見られず) ppm。 MS (ES) 286.2 (MH+)、C17H19NO3に関するHRMSの観測値286.1447、計算値286.1443。
【0088】
D10.N-オクチル-3,4-ジメトキシフェニルプロピオニルヒドロキサム酸。収量0.10g(カップリング57%、脱保護85%)。δH (400 MHz, CDCl3) 0.88 (3H, t, J = 7.0 Hz)、1.25〜1.35 (12H, m)、2.61 (2H, t, J = 7.0 Hz)、2.89 (2H, t, J = 7.0 Hz)、3.39 (2H, t, J = 7.0 Hz, CH2N)、3.88 (6H, s, 2× OCH3)、6.63〜6.73 (3H, m)、7.15〜7.30 (5H, m)。δc (100 MHz, CDCl3) 14.5、23.0、26.9、28.0、29.6、31.0、31.4、32.2、32.3、36.4、56.2、56.3、111.6、112.1、120.6、133.4、148.0、149.3 (カルボニルは見られず) ppm。 MS (ES) 338.2 (MH+)、C19H31NO4に関するHRMSの観測値337.2262、計算値337.2253。
【0089】
D11.N-オクチル-4-メトキシフェニルプロピオニルヒドロキサム酸。収量0.12g(カップリング62%、脱保護92%)。δH (400 MHz, CDCl3) 0.78 (3H, t, J = 7.0 Hz)、1.20〜1.35 (12H, m)、2.60 (2H, t, J = 7.0 Hz)、2.85 (2H, t, J = 7.0 Hz)、3.53 (2H, t, J = 7.0 Hz, CH2N)、3.72 (3H, s, OCH3)、6.72 (2H, d, J = 8.0 Hz)、7.05 (2H, d, J = 8.0 Hz)。δc (100 MHz, CDCl3) 13.7、22.6、26.8、27.0、29.1、29.4、31.3、32.3、32.3、36.4、55.1、113.7、129.2、137.2、156.7、172.7 ppm。 MS (ES) 308.2 (MH+)、C18H29NO3に関するHRMSの観測値308.2237、計算値308.2226。
【0090】
F1.N-ベンジル-4-メトキシベンゾイルヒドロキサム酸。収量55mg(13%)。δH (300 MHz, CDCl3) 3.70 (3H, s, OCH3)、4.75 (2H, s, CH2N)、6.75 (2H, d, J = 8.0 Hz)、7.20〜7.30 (5H, m)、7.45 (2H, d, J = 8.0 Hz)。δc (100 MHz, CDCl3) 54.9、55.4、113.8、124.3、127.5、128.6、129.5、130.1、135.6、161.8、168.4 ppm。 MS (ES) 258.2 (MH+)、C15H16NO3に関するHRMSの観測値258.1128、計算値258.1130。
【0091】
F2.N-(4-フルオロベンジル)-4-メトキシベンゾイルヒドロキサム酸。収量38mg(カップリング50%、脱保護60%)。δH (300 MHz, CDCl3) 3.80 (3H, s, OCH3)、4.75 (2H, s, CH2N)、6.80 (2H, d, J = 8.0 Hz)、6.95 (2H, t, J = 9.0 Hz)、7.15 (2H, m)、7.40 (2H, d, J = 8.0 Hz)。δc (100 MHz, CDCl3) 54.5、55.4、113.7、115.5、121.3、128.4、129.1、129.9、159.9、162.0、169.6 ppm。 MS (ES) 276.2 (MH+)、C15H15NO3Fに関するHRMSの観測値276.1039、計算値276.1036。
【0092】
F3.N-ベンジル-3,4-ジメトキシベンゾイルヒドロキサム酸。収量0.23g(53%)。δH (300 MHz, CDCl3) 3.65 (3H, s, OCH3)、3.85 (3H, s, OCH3)、4.80 (2H, s, CH2N)、6.80 (1H, d, J = 8.0 Hz)、7.03 (1H, d, J = 2.0 Hz)、7.10 (1H, dd, J = 2.0, 8.0 Hz)、7.25〜7.35 (5H, m)。δc (100 MHz, CDCl3) 55.2、55.9、56.0、110.5、111.1、121.3、123.9、127.1、128.6、128.8、135.6、148.9、151.5、168.0 ppm。 MS (ES) 288.2 (MH+)、C16H18NO4に関するHRMSの観測値288.1242、計算値288.1236。
【0093】
F4.N-(4-フルオロベンジル)-3,4-ジメトキシベンゾイルヒドロキサム酸。収量9mg(35%)。δH (300 MHz, CDCl3) 3.45 (6H, s, OCH3)、4.55 (2H, s, CH2N)、6.75 (1H, d, J = 8.0 Hz)、6.95 (2H, t, J = 9.0 Hz)、7.25〜7.35 (4H, m)。MS (ES) 306.2 (MH+)、C16H17NO4Fに関するHRMSの観測値306.1140、計算値306.1136。
【0094】
B1.(2E)-3-メチル-5-(2,6,6-トリメチル-シクロヘキセン-1-エニル)-ペンタ-2,4-ジエノイルヒドロキサム酸。0.09g(62%)。δH (400 MHz, CDCl3) 1.02 (3H, s)、1.08 (3H, s)、1.48 (2H, m)、1.62 (2H, m)、1.71 (3H, s, E異性体)、1.78 (3H, s, Z異性体)、5.68 (1H, s, Z異性体)、5.78 (1H, s, E異性体)、6.12 (1H, d, J = 15.0 Hz)、6.62 (1H, d, J = 15.0 Hz)。δc (100 MHz, CDCl3) 13.7、18.9、20.8、21.5、28.7、32.9、39.3、115.0、116.8、129.8、133.7、134.5、135.8 (カルボニルは見られず) ppm。 MS (ES) 273.2 (MNa+)。
【0095】
D12.3,4-ジメトキシフェニルプロペノイルヒドロキサム酸。収量0.18g(54%)。δH (400 MHz, CDCl3) 3.79 (6H, s, 2×OCH3)、6.25 (1H, d, J = 16.0 Hz)、6.85 (1H, d, J = 8.0 Hz)、7.03 (2H, m)、7.42 (1H, d, J = 16.0 Hz). MS (ES) 246.1 (MNa+)。
【0096】
D13.4-メトキシフェニルプロペノイルヒドロキサム酸。収量1.07g(50%)。δH (400 MHz, CD3OD) 3.78 (3H, s, OCH3)、6.38 (1H, d, J = 16.0 Hz)、6.89 (2H, d, J = 8.0 Hz)、7.48 (2H, d, J = 8.0 Hz)、7.56 (1H, d, J = 16.0 Hz)。δc (100 MHz, CD3OD) 55.9、115.5、118.4、128.8、130.8、141.6、145.1、167.0 ppm。 MS (ES) 194.2 (MH+)、C10H12NO3に関するHRMSの観測値194.0816、計算値194.0818。
【0097】
E1.N-ベンジル-N-(4-メトキシベンジル)-グリシンメチルエステル。δH (300 MHz, CDCl3) 3.40 (2H, s, CH2N)、3.81 (3H, s, OCH3)、3.86 (2H, s, CH2N)、3.90 (3H, s, CO2CH3)、6.97 (2H, d, J = 8.0 Hz)、7.25〜7.50 (7H, m)。δc (75 MHz, CDCl3) 50.7、52.6、54.6、56.5、57.0、113.1、126.5、127.7、128.3、129.5、130.4、135.3、137.6、171.4 ppm。 m/z 322.1 (MNa+)。
【0098】
補足の表
【表2】

【0099】
考察
発明者は、活性部位内に鉄キレート化ヒドロキサム酸基が位置する基質との構造的類似性に基づいてカロテノイド開裂ジオキシゲナーゼ・ファミリーの阻害剤の新しいクラスを設計し、テストした。ヒドロキサム酸と芳香族環の距離を変化させ、その距離がカロテノイド基質内での近位環末端基と開裂部位の距離と合致するように位置を決めた。シアノバクテリアのCCDであるACOの結晶構造は、開裂位置がFe(II)触媒中心と、カロテノイド基質へのアクセスを可能にする長い非極性トンネルの開口部との間の距離によって決まるらしいことを示している(11)。このアイディアは、(Nostoc種PCC 7120からの)NosCCDでは単環式γ-カロテンの開裂が、近位末端が直線状であるときには7',8'位で起こるが、近位末端がよりコンパクトな環状末端基を有するときには9,10位で起こるという観察結果によって支持される(48)。実際、環状末端基は、トンネルの入口に拘束される可能性のあることが示唆された(48)。
【0100】
発明者は、この結晶構造と、開裂メカニズムに関するわれわれのモデル(図3)から、アリール-C1N化合物、アリール-C2N化合物、アリール-C3N化合物が、それぞれ7,8開裂反応、9,10開裂反応、11,12開裂反応に関して選択的であるだろうと予測した。そこでわれわれは、9,10特異性、11,12特異性、15,15'特異性を有する酵素に対してこれらのクラスをテストした。いくつかのアリール-C1N化合物(F1、F2)は、9,10酵素の強力な阻害剤だったが、中程度の11,12抑制活性も持っていた。アリール-C3N化合物は、9,10酵素に対してはるかに弱かった。このグループは最強の11,12阻害剤(D8)を含んでいたとはいえ、それでもどれも、9,10開裂に対してそれよりもいくらか大きな選択性を維持していた。比較例として、別の類似体であるアバミンSGは、9,10開裂よりも11,12開裂に対してより活性であることが報告されており、100μMでAtNCED3を78%抑制し、AtCCD1を20%以下抑制した(32)。テストしたどの化合物も、15,15'酵素は抑制しなかった。それはおそらく、間隔が狭すぎるからであろう。したがってヒドロキサム酸基の位置を変える戦略は、クラス間にいくらか重複が存在するためにある程度しかうまくいかなかったというのがわれわれの結論である。それにもかかわらず、個々の化合物は、試験管内で9,10開裂に対して非常に大きな特異性を持つことが確認された。例えばF1のIC50は2.0μMだが、LeNCED1の抑制は検出されなかった。
【0101】
阻害剤は、大腸菌において、9,10開裂活性を持つ3つの異なる酵素に対して異なる活性パターンも示した。例えばF1とF2はLeCCD1とMmBCO2に対する大きな抑制活性を持っていたが、AtCCD7に対しては相対的に効果がなかった。MmBCO2は植物の2つの9,10酵素(LeCCD1aとAtCCD7)と17〜23%しかアミノ酸が共通していないため、このような差は驚くことではない。これらの酵素そのものが互いに非常に異なっていて、19%しか一致していない。これは、ヒドロキサム酸阻害剤の変異体が、活性は似ているが一次構造は大きく異なる酵素同士を区別できることを示している。
【0102】
大腸菌系は、生体内での阻害剤の効果測定に有用であることがわかった。例えば大腸菌アッセイから、F1とF2はAtCCD7に対する弱い阻害剤であることがわかった。これは、AtCCD7活性および/またはAtCCD8活性を測定するシロイヌナズナのつぼみ生長アッセイで確認された(図5)。それに対してD5とD6は大腸菌アッセイにおいて弱かったが、シロイヌナズナの苗全体に対しては最大の効果を示し、側枝の数は最大になった。またD1とD3は、インビトロ・アッセイ験管内(表1)、大腸菌アッセイ(図4)、つぼみ生長アッセイ(図5)において9,10酵素の優れた阻害剤であるように見えたが、D3は、成長に対して負の効果を持っていて苗全体での分岐アッセイを混乱させた。それに対してD1で処理した植物は、正常に、分岐の増加なしに成長した。D1とD3は両方ともより極性のあるヒドロキシル基をアリール環に含んでいたため、これらの化合物は、植物内に移すと活性がより大きくなること、またはより迅速に代謝されることが可能である。
【0103】
アリール-C1N阻害剤F1とF2(両者は1個のフッ素だけが異なっている)は、シロイヌナズナの苗全体に適用したときに葉を漂白した。例えばフィトエンデサチュラーゼの阻害剤である除草剤の適用によって起こる(50)光保護カロテノイドの欠損により、クロロフィルの光酸化性性分解が起こり、したがって葉の漂白が起こることが知られている。さらに、試験管内でAtCCD4と相互作用することが報告されているシロイヌナズナ斑入り変異体3(vaR3)突然変異体は、漂白された表現型と、葉緑体の発達遅延を示す(51)。アリール-C1N化合物は、7,8活性を有するCCDの抑制を促進することが予想された。AtCCD4配列は7,8開裂酵素CsZCD(9)と非常に関係が深いため、F1とF2の効果に関して可能な1つの説明は、VaR3/AtCCD4複合体の作用を抑制し、そのことによってvaR3突然変異体に似た表現型を与えるのであろうというものである。F1またはF2による漂白に対する抵抗性のあるシロイヌナズナ突然変異体のスクリーニングにより、標的タンパク質を同定することが可能になろう。これは、他の小分子で証明されている(52)。
【0104】
結局、異なるアッセイにおいて観察された異なる活性は、取り込み、代謝といった因子や、標的としないプロセスに対する効果が、植物内における阻害剤の適切さと有効性の決定にある役割を果たしている可能性があることを示唆している。われわれの結果は、化合物を使用する生物系で二次的スクリーニングを実施することの重要さを示している。ここでは、テストしたすべてのアッセイ(植物内も含む)で、D2、D4、D5、D6は、苗全体に対する予期せぬ負の効果なしにCCDを抑制するように見えることを証明できた。これらの化合物は、植物、動物、微生物の内部でCCDの機能を探索する有用な化学的遺伝子剤である。
【0105】
この明細書に記載した阻害剤を用いると、今や、広い範囲の植物種において分岐に関与するCCDを抑制し、カロテノイドとアポカロテノイドの変化を探すことが可能になろう。それにより、ストリゴラクトンの前駆体や他の活性なストリゴラクトン関連化合物を同定する強力な方法が提供され、生合成経路がさらに解明されることになろう。阻害剤を利用して種間でのストリゴラクトンの役割の違いを調べることもできよう。分岐促進化合物には、例えば果樹園の作物(53)におけるようにコンパクトな植物構造であることが非常に望ましいことがしばしばある園芸での応用があろう。
【0106】
遺伝子操作が実際的ではない他の生物系として、関係するCCDの生体内基質が明確でないクロッカスとベニノキにおけるそれぞれサフロン(9)とビキシン(49)の産生と、菌根(54)および寄生性雑草(15)との相互作用における植物でのそれぞれミコラジシンおよびストリゴラクトンの機能の研究がある。最後に、ヒトにBCO2の阻害剤を医薬として応用できる可能性がある。なぜならカロテノイドの9,10が開裂することによる産物は、DNA損傷とがん発生に関与することがわかっているからである(55、56)。
【0107】
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【0108】
脚注
*本研究は、イギリス生物科学・バイオテクノロジー科学研究カウンシルのSCIBSイニシアティブによるサポートを受けた(プロジェクトBB/D005787)。
1.使用した略号:CCD、カロテノイド開裂ジオキシゲナーゼ;NCED、9-シス-エポキシカロテノイドジオキシゲナーゼ;max、より多くの腋芽生長;IC50、50%抑制する抑制濃度;WT、野生型;GST、グルタチオンS-トランスフェラーゼ;PBS、リン酸緩衝化生理食塩水;HPLC、高性能液体クロマトグラフィ;IPTG、イソプロピル β-D-1-チオガラクトピラノシド;NAA、α-ナフタレン酢酸;ACO、アポカロテノイド-15,15'-オキシゲナーゼ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
植物の種子の発芽を促進するか、および/または植物組織または植物器官の休眠を解除する方法であって、種子、植物、植物器官、又は植物組織に、式(I)の化合物:
【化1】

{式中、
1はアルキルまたはHであり;
2、R3、R4、R5は、独立に、H、ハロゲン化物、−NO2、−SO2R’(ここでR’はアルキルまたはアミノアルキルである)、−OH、−Oアルキルから選択でき、および/または
1とR5が、合わさって−O(CH2m−となり(ここで、mは、1、2、3、又は4である);
6は、置換又は非置換のアルキル、及び/又は置換又は非置換アリールであり;
nは1、2、3又は4である}
を施用することを含む、前記方法。
【請求項2】
2、R3、R4、及びR5がHである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
1がC1−C4アルキルである、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
1がC1−C4アルキルである、請求項1または3に記載の方法。
【請求項5】
6のアルキルがC1−C12アルキルである、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
6が、置換されたアルキルまたは置換されたアリールであり、ここで、1又は複数のハロゲン化物、−OH、−NO2、又は−SO2R’で置換されている、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
6が、式:−(CH2)pアリールで表わされる置換または非置換のアリールである(ただしpは0〜4の整数である)、請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
6が、式(II):
【化2】

を有する、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
1がMeであり;R2、R3、R4、及びR5がHであり;nが1であり;そしてR6が式(II):
【化3】

を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
播く前に、前記化合物を1又は複数の種子に施用することを含む、請求項1〜9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記種子を生育培地に浸して前記化合物をその生育培地の中で種子と接触させる、請求項1〜10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記種子が雑草の種子であり、その雑草の種子を前記化合物と接触させて、雑草種子が発芽して発芽雑草を発生させることを促進し阻害し、その後に続いて除草剤を当該発芽雑草に施用するか、又はその発芽した雑草を耕す、請求項1〜11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記化合物を塊茎、穀粒、又は球根に接触させて、その塊茎、穀粒、又は球根の成長を刺激する、請求項1〜9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記化合物を植物組織、植物器官、又は植物に施用して、1又は複数の植物組織の休眠を解除する、請求項1〜9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
結実および/または開花を促進する、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
式(I)の化合物:
【化4】

(式中、
1はアルキルまたはHであり;
2、R3、R4、及びR5は、独立に、H、ハロゲン化物、-NO2、-SO2R'(ここでR'はアルキルまたはアミノアルキルである)、-OH、-Oアルキルの中から選択でき;および/または
1とR5が合わさって−O(CH2m−となり(ここで、mは、1、2、3、又は4である)
を含む、植物処理用組成物。
【請求項17】
1種類以上のアジュバントをさらに含む、請求項16に記載の植物処理用組成物。
【請求項18】
請求項16または17に記載の組成物と、1又は複数のカプセル化剤またはフィルム剤とを含む種子被覆用組成物。
【請求項19】
請求項16または17に記載の植物処理用組成物で処理された植物組織および/または植物。
【請求項20】
請求項16〜18のいずれか1項に記載の植物処理用組成物で被覆した種子、塊茎、穀粒、球根。
【請求項21】
単離された一般式(I)の化合物:
【化5】

(式中、
1はアルキルまたはHであり;
2、R3、R4、及びR5は、独立に、H、ハロゲン化物、−NO2、−SO2R’(ここでR’はアルキルまたはアミノアルキルである)、-OH、-Oアルキルの中から選択でき;および/または
1とR5が合わさって−O(CH2m−となり(ここで、mは、1、2、3、又は4である)
6が、置換又は非置換アルキルであり、及び/又は置換又は非置換アリールであり;そして
nが1〜4の整数である)。
【請求項22】
6が式(II):
【化6】

を有する、請求項21に記載の化合物。
【請求項23】
1がMeであり;R2、R3、R4、及びR5がHであり;nが1であり;そしてR6が式(II):
【化7】

を有する、請求項21に記載の化合物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2012−508788(P2012−508788A)
【公表日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−543809(P2011−543809)
【出願日】平成21年11月17日(2009.11.17)
【国際出願番号】PCT/GB2009/002686
【国際公開番号】WO2010/055316
【国際公開日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【出願人】(500584309)シンジェンタ パーティシペーションズ アクチェンゲゼルシャフト (352)
【Fターム(参考)】