説明

植物の日持ち向上剤

【課題】植物の根もしくは葉に処理することで乾燥条件下での日持ち性が向上し、かつ、乾燥条件から開放された後の植物の生育が未処理のものに比べ有意に向上する植物の日持ち向上剤を提供する。
【解決手段】天然型アブシジン酸及び/又はその誘導体を含有する水溶液であって、無機酸及び/又は有機酸の金属塩を1種又は2種以上含有し、該金属塩の少なくとも1種類がカリウム塩であるものとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植物の日持ち向上剤に関するものであり、特に定植前後における苗の萎れを防止し、成長を促進し得る日持ち向上剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来は、花や野菜苗等の育苗は個々の農家による生産が主体であった。近年、農業の近代化、さらに農家の高齢化等に伴い、セルトレイを中心としたポット苗の育苗体系が確立され、苗生産が農業協同組合や農家の集合体および苗生産業者に移行してきた。そして、苗の安定供給が可能となった現在において、苗生産とその後の栽培との分業化が急速に進んでいる。
【0003】
しかしながら、苗生産の分業化は、天候不良等の環境条件によって圃場の作業が計画通り進行しないと定植が遅延することから、苗に貯蔵性が求められるという課題を抱えている。
【0004】
また、ガーデニングを支える苗販売でも、計画通りに販売が進まないと、スーパーや小売販売の店頭で苗は何日かを過ごすことになる。この場合、管理者は1日何回かの潅水によって販売する苗の維持を図っているが、苗はそれによって徒長し軟弱化してしまうのが通例である。
【0005】
上記のような問題を解決する方法がいくつか開示されている。例えば特開2000−166380号公報にはアニオン性水溶性高分子と金属塩により保水ゲルを形成させる方法、特開平8−134447号公報、特開平10−14423号公報には高粘度の有機ポリマー水溶液をゲル化させて保水ゲルを形成させる方法、特開平9−309804号公報にはアブシジン酸とキトサンと天然高分子の組み合わせる方法、特開平2002−262680号公報、特開平2002−262681号公報にはアルカリケイ酸塩を中和させることにより保水ゲルを形成させる方法、特開平2004−081165号公報には電気伝導率が0.3〜10mS/cmであることを特徴とする保水ゲルを利用する方法が開示される等、高粘度の有機ポリマーや保水ゲルによって長期間継続的に給水する方法が主に提案されている。
【0006】
また、吸水性ポリマーをパック詰めしたものを植木鉢の内部に埋め込んだり(特開平10−127192号公報)、育苗ポットの底部に密封槽を設けて水分を含む有機ポリマー等を充填する方法(特開平9−248066号公報)といった有機ポリマーを充填した保水材を用いる方法により長期間継続的に給水する方法が開示されている。
【0007】
さらには、特開2002−356678号公報には糖類と界面活性剤の組み合わせによる植物用保水剤が開示されている。
【特許文献1】特開2000−166380号公報
【特許文献2】特開平8−134447号公報
【特許文献3】特開平10−14423号公報
【特許文献4】特開平9−309804号公報
【特許文献5】特開2002−262680号公報
【特許文献6】特開2002−262681号公報
【特許文献7】特開平2004−81165号公報
【特許文献8】特開平10−127192号公報
【特許文献9】特開平9−248066号公報
【特許文献10】特開2002−356678号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、これらの高粘度の有機ポリマーや保水ゲルあるいは保水材を用いることが必ずしも植物の鮮度保持にとって好ましくない場合がある。例えば、高粘度の有機ポリマーや保水ゲルあるいは保水材を用いる方法は水分の移動を緩やかにし、水持ちを良くする効果がある反面、植物にとっては根部が過湿状態になりやすくなるという問題がある。そのような場合には逆に透水が妨げられ、根圏への酸素の供給が制限されて正常な呼吸が行われないようになり、その結果、根は生長を停止し、水分・養分の吸収が妨げられ、地上部の生育も抑制され、葉身の先端から始まる茎葉の黄化となって影響が現れる。
【0009】
また、通例ポット苗が定植される土壌の水分はポット内培土の水分よりも少ないため、定植の際に急激な乾燥条件に曝されることがあり、その場合に植物の生育は思うように進まず、枯死にいたることがある。
【0010】
一方、アブシジン酸は特開平9−309804号公報に開示されているように気孔閉鎖作用があり、気孔を閉じることで植物体内の水分の蒸散を抑え、植物の延命(萎れ防止)が図れる。しかし、その後の生育にとって必ずしもプラスに働かず、例えば、生育初期に処理された場合は葉の縁から葉肉部に向かって黄化する額縁症が発生し、生育最盛期には中位葉付近の葉の先端から褐色に変化し、葉が枯れるといった現象が認められる。また、他の植物ホルモンであるオーキシン、ジベレリン、サイトカイニン等と拮抗してそれらの作用を打ち消す植物の生育抑制作用も有するため、その使用には注意を有する。
【0011】
また、特開2002−356678号公報に開示されているような糖類を使用する場合は、施与後のカビや細菌の発生に注意が必要となる。
【0012】
本発明は上記に鑑みてなされたものであり、乾燥条件下での植物の日持ち性の向上を図れるだけでなく、乾燥条件から開放された後に植物を健全に成長させることができる植物の日持ち向上剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは、アブシジン酸で処理する際にカリウム塩を同時に施与した後、乾燥条件下に植物を曝すと萎れが防止されるのみならず、その後植物に水を与え、乾燥条件から開放された後の植物の生育において、アブシジン酸とカリウム塩をそれぞれ別々に処理した植物と比べて有意に生育が向上することを見出し、本発明の完成に至った。
【0014】
即ち、植物の日持ち向上剤は、アブシジン酸及び/又はその誘導体を含有する水溶液であって、無機酸及び/又は有機酸の金属塩を1種又は2種以上含有し、該金属塩の少なくとも1種類がカリウム塩であるものとする。
【0015】
上記において、無機酸としては、炭酸、塩酸、オルトホウ酸、メタホウ酸、三メタホウ酸、次ホウ酸、シアン酸、イソシアン酸、雷酸、硝酸、ペルオキソ硝酸、亜硝酸、ペルオキソ亜硝酸、ニトロキシル酸、次亜硝酸、(オルト)リン酸、ピロリン酸、三リン酸、メタリン酸、三メタリン酸、四メタリン酸、ペルオキソ一リン酸、ペルオキソ二リン酸、亜リン酸、ピロ亜リン酸、次亜リン酸、ホスフィン酸、硫酸、ピロ硫酸、ペルオキソ一硫酸、ペルオキソ二硫酸、チオ硫酸、二チオン酸、亜硫酸、ピロ亜硫酸、チオ亜硫酸、亜二チオン酸及びスルホキシル酸からなる群から選ばれた1種又は2種以上を用いることができる。
【0016】
有機酸としては、グリシン、アラニン、フェニルアラニン、グルタミン酸、アスパラギン酸、プロリン、ヒドロキシプロリン、リジン、アルギニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、セリン、メチオニン、スレオニン、ヒスチジン等の各種アミノ酸、蟻酸、酢酸、乳酸、ピルビン酸、クエン酸、コハク酸、フマル酸、リンゴ酸、酒石酸、グルコン酸、ニコチン酸、サリチル酸、アルギン酸、アスコルビン酸、ソルビン酸、安息香酸からなる群から選ばれた1種又は2種以上を用いることができる。
【0017】
本発明の日持ち向上剤における天然型アブシジン酸及び/又はその誘導体の濃度は0.001mmol/l〜20mmol/lであることが好ましい。
【0018】
また、無機酸及び/又は有機酸のカリウム塩の濃度は0.1mmol/l〜100mmol/lであることが好ましい。
【発明の効果】
【0019】
本発明の植物の日持ち向上剤によれば、カリウム塩の使用により、乾燥条件下での植物の日持ち性の向上を図れるだけでなく、乾燥条件から開放された際の生育も向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明の植物の日持ち向上剤は、天然型アブシジン酸及び/又はその誘導体と無機酸及び/または有機酸の金属塩を含有する水溶液であり、少なくとも1種の金属塩がカリウム塩であることを特徴とする。
【0021】
天然型アブシジン酸及び/又はその誘導体の濃度は0.001mmol/l〜20mmol/l(飽和濃度20mmol/l、20℃)が好ましく、2種以上含む場合はトータルでこの濃度となるようにする。但し、天然型アブシジン酸や天然型アブシジン酸の誘導体の処理濃度が低い場合には目的とする効果が得られず、高い場合には植物の生育を阻害することがあるので、0.004mmol/l〜0.4mmol/lでの使用がより好ましい。
【0022】
本発明で用いられる無機酸の例としては、炭酸、塩酸、オルトホウ酸、メタホウ酸、三メタホウ酸、次ホウ酸、シアン酸、イソシアン酸、雷酸、硝酸、ペルオキソ硝酸、亜硝酸、ペルオキソ亜硝酸、ニトロキシル酸、次亜硝酸、(オルト)リン酸、ピロリン酸、三リン酸、メタリン酸、三メタリン酸、四メタリン酸、ペルオキソ一リン酸、ペルオキソ二リン酸、亜リン酸、ピロ亜リン酸、次亜リン酸、ホスフィン酸、硫酸、ピロ硫酸、ペルオキソ一硫酸、ペルオキソ二硫酸、チオ硫酸、二チオン酸、亜硫酸、ピロ亜硫酸、チオ亜硫酸、亜二チオン酸及びスルホキシル酸等が挙げられる。
【0023】
本発明で用いられる有機酸の例としては、グリシン、アラニン、フェニルアラニン、グルタミン酸、アスパラギン酸、プロリン、ヒドロキシプロリン、リジン、アルギニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、セリン、メチオニン、スレオニン、ヒスチジン等の各種アミノ酸、蟻酸、酢酸、乳酸、ピルビン酸、クエン酸、コハク酸、フマル酸、リンゴ酸、酒石酸、グルコン酸、ニコチン酸、サリチル酸、アルギン酸、アスコルビン酸、ソルビン酸、安息香酸等が挙げられる。なかでも、グリシン、ソルビン酸、安息香酸等防腐効果のあるものを使用することがより好ましい。
【0024】
本発明で用いられるカリウム塩以外の金属塩としては、ナトリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩、亜鉛塩等が挙げられる。
【0025】
無機酸及び/又は有機酸のカリウム塩の濃度は0.1mmol/l〜100mmol/lが好ましく、0.5mmol/l〜90mmol/lがより好ましい。2種以上のカリウム塩を含む場合はトータルでこの濃度となるようにする。
【0026】
本発明の植物の日持ち向上剤には、さらに、例えばポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、カルボキシメチルセルロース等の水溶性高分子の低粘度品やアクリル系樹脂やウレタン系樹脂等のエマルジョンを含有させることができる。天然型アブシジン酸やその誘導体は土壌に吸着されやすいが、水溶性高分子や樹脂エマルジョンなどを同時に加えることで、その吸着が緩やかになるため、効果が持続しやすい。これらを使用する場合の含有量は0.1〜10wt%が好ましい。
【0027】
またこれ以外に低級アルコール、界面活性剤、防腐剤、農薬、肥料、植物活力剤、植物抽出物等を必要に応じて含有させることができる。
【0028】
本発明の植物の日持ち向上剤のpHは、生育に障害のない4〜9であることが好ましい。pHの調整剤としては、上記有機酸あるいは無機酸、それらの金属塩等を用いることができる。
【0029】
なお、本発明の日持ち向上剤は、1倍を超えて濃縮した濃縮液にして、必要に応じて希釈して使用するようにすることもできる。
【0030】
本発明の植物の日持ち向上剤の施与方法としては、葉面散布やジョウロ等での上部からの散水、ポット苗の場合は底面潅水等が用いられ、特に制限はない。また、本発明の植物の日持ち向上剤が施与される培土は、植物を栽培することが可能な培土であれば特に制限はなく、乾燥しやすい砂やレキ等が多く含まれるような培土では特に効果が発揮される。
【0031】
本発明の植物の日持ち向上剤がポット苗に施与される場合、その鉢に特に制限はなく、例えば、素焼き鉢、プラスチック製のポットあるいはポットが連結されたセルトレイ、プランター、紙筒状のポット等が挙げられる。
【0032】
本発明の植物の日持ち向上剤が施与される植物に特に制限はなく、例えば、トマト、キュウリ、キャベツ、レタス、タマネギ等の野菜類、イネ、テンサイ等の農作物、パンジー、ペチュニア等の草花類、ドラセナ、トラノオラン等の観葉植物類、芝苗、果樹や植林用樹木等が挙げられる。
【実施例】
【0033】
以下に実施例を挙げて本発明について説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0034】
1.生育試験1(対象:パンジー及びビオラ)
以下の実施例1〜6、比較例1〜4として示した処理液を用い、下記の条件・方法によりパンジー及びビオラの生育試験を行った。
【0035】
[実施例1]
天然型アブシジン酸を0.008mmol/l、塩化カリウムを0.1mmol/lとなるように水溶液を調製し、水酸化カリウムでpHを7に調製することで本発明の植物の日持ち向上剤を得た。
【0036】
[実施例2]
天然型アブシジン酸を0.008mmol/l、塩化カリウムを0.5mmol/lとなるように水溶液を調製し、水酸化カリウムでpHを7に調製することで本発明の植物の日持ち向上剤を得た。
【0037】
[実施例3]
天然型アブシジン酸を0.008mmol/l、塩化カリウムを0.5mmol/l、さらにカルボキシメチルセルロースを0.1%となるように水溶液を調製し、水酸化カリウムでpHを7に調製することで本発明の植物の日持ち向上剤を得た。また、このときの粘度は15mPa・s/20℃となるような品種のカルボキシメチルセルロースを選定した。
【0038】
[実施例4]
天然型アブシジン酸を0.2mmol/l、リン酸二水素カリウムを10mmol/lとなるように水溶液を調製し、水酸化カリウムでpHを7に調整することで本発明の植物の日持ち向上剤を得た。
【0039】
[実施例5]
天然型アブシジン酸を0.08mmol/l、塩化カリウムを90mmol/lとなるように水溶液を調製し、水酸化カリウムでpHを7に調製することで本発明の植物の日持ち向上剤を得た。
【0040】
[実施例6]
天然型アブシジン酸を0.08mmol/l、塩化カリウムを100mmol/lとなるように水溶液を調製し、水酸化カリウムでpHを7に調製することで本発明の植物の日持ち向上剤を得た。
【0041】
[比較例1]
比較のため、蒸留水(pH6)を用いた。
【0042】
[比較例2]
塩化カリウムを10mmol/lとなるように水溶液を調製し、水酸化カリウムでpHを7に調整することで、比較用の液剤を得た。
【0043】
[比較例3]
天然型アブシジン酸を0.0005mmol/l、塩化カリウムを10mmol/lとなるように水溶液を調製し、水酸化カリウムでpHを7に調整することで、比較用の液剤を得た。
【0044】
[比較例4]
天然型アブシジン酸を0.08mmol/lppm、塩化カリウムを200mmol/lとなるように水溶液を調製し、水酸化カリウムでpHを7に調整することで、比較用の液剤を得た。
【0045】
〈試験場所〉アクリル温室(気温:15〜30℃)。
【0046】
〈試験植物〉タキイ育苗培土(タキイ種苗(株)製、肥料成分の窒素、リン酸、カリウムはそれぞれ、400mg/L、680mg/L、540mg/L含有される)で栽培した開花直前のパンジー(3号ポット)とビオラ(3号ポット)をそれぞれ5鉢準備した。
【0047】
〈試験方法〉ポット苗は水分量を一定にさせるため一旦底面潅水し、その後2日程水遣りなしで乾燥させた。パンジー苗についてはさらに底面潅注により100gの上記処理液を吸水させた。また、ビオラ苗については再度底面潅水し、霧吹きで葉面に約5g程度処理液を噴霧した。その後、水遣りなしで萎れの有無、薬害の有無を観察し、比較例1が萎れた時点でそれぞれの処理による苗の状態を目視により評価した。その後タキイ育苗培土と山砂を8:2で混合した培土に植え替え、約一ヶ月間植物の生育の状況を観察した。
【0048】
〈試験評価〉
萎れの評価 5:萎れなし(葉に張りがある)、4:軽微な萎れあり(葉に張りがない)、3:萎れあり(植物が倒れる)、2:甚大な萎れあり(葉に萎縮した部分があり、回復しない)、1:薬害により枯死。
薬害の評価 ○:なし、△:葉身の黄変あり、×:葉身の枯れあり。
生育の評価 ○:比較例1よりも大きく生育した、△:比較例1と同等であった、×:比較例1よりも生育が悪かった、または枯死した。
【0049】
【表1】

【0050】
2.生育試験2(対象:トマト苗)
上記実施例2、次の実施例7,8、上記比較例1,2、次の比較例5,6として示した処理液を用い、下記の条件・方法によりトマト苗の生育試験を行った。
【0051】
[実施例7]
天然型アブシジン酸を0.02mmol/l、塩化カリウム5mmol/l、ソルビン酸カリウムを5mmol/l、塩化ナトリウムを10mmol/lとなるように水溶液を調製し、水酸化カリウムでpHを7に調整することで本発明の植物の日持ち向上剤を得た。
【0052】
[実施例8]天然型アブシジン酸を0.02mmol/l、塩化カリウム5mmol/l、ソルビン酸カリウムを5mmol/l、塩化カルシウムを10mmol/lとなるように水溶液を調製し、水酸化カリウムでpHを7に調整することで本発明の植物の日持ち向上剤を得た。
【0053】
[比較例5]
天然型アブシジン酸を0.02mmol/l、塩化ナトリウムを10mmol/lとなるように水溶液を調製し、水酸化ナトリウムでpHを7に調整することで、比較用の液剤を得た。
【0054】
[比較例6]
天然型アブシジン酸を0.02mmol/l、塩化ナトリウムを10mmol/l、塩化カルシウムを10mmol/lとなるように水溶液を調製し、水酸化ナトリウムでpHを7に調整することで、比較用の液剤を得た。
【0055】
〈試験場所〉アクリル温室(気温:15〜30℃)
〈試験植物〉タキイ育苗培土で混合した培土で栽培した本葉6枚目が出るまで栽培したトマト苗(ハウス桃太郎、3号ポット)をそれぞれ3鉢準備した。
【0056】
〈試験方法〉ポット苗は水分量を一定にさせるため一旦底面潅水し、その後2日程水遣りなしで乾燥させた。さらに底面潅注により100gの上記処理液を吸水させた。その後、水遣りなしで萎れの有無、薬害の有無を観察し、比較例1が萎れた時点でそれぞれの処理による苗の状態を目視により評価した。その後潅水して復活させ、定植後の植物の生育状況を観察した。
【0057】
〈試験評価〉
萎れの評価 5:萎れなし(葉に張りがある)、4:軽微な萎れあり(葉に張りがない)、3:萎れあり(植物が倒れる)、2:甚大な萎れあり(葉に萎縮した部分があり、回復しない)、1:薬害により枯死。
薬害の評価 ○:なし、△:葉身の黄変あり、×:葉身の枯れあり。
生育の評価 定植から14日後の草丈を測定し、比較例1のものを基準(100%)として%で示した。
【0058】
【表2】

【0059】
3.生育試験3(対象:スイカ苗)
以下に上記実施例2,3、上記比較例1,2,5として示した処理液を用い、下記の条件・方法によりスイカ苗の生育試験を行った。
【0060】
〈試験場所〉タキイ研究農場内(4月下旬、最低気温9.6℃以上、最高気温18.3℃以下)、アクリル温室
〈試験植物〉タキイ育苗培土で栽培した本葉8枚目が出るまで栽培したスイカ苗(秀山、5号ポット)をそれぞれ3鉢準備した。
【0061】
〈試験方法〉ポット苗は水分量を一定にさせるため一旦底面潅水し、その後2日程水遣りなしで乾燥させた。さらに霧吹きで葉面に約50g程度処理液を噴霧し、アクリル温室内で3日間放置し、その後圃場に定植し、7日間植物の生育の状況を観察した。
【0062】
〈試験評価〉
萎れの評価 5:萎れなし(葉に張りがある)、4:軽微な萎れあり(葉に張りがない)、3:萎れあり(植物が倒れる)、2:甚大な萎れあり(葉に萎縮した部分があり、回復しない)、1:薬害により枯死。
生育の評価 ○:変化なし、△:変化あり(葉の黄化)、×:変化あり(葉先枯れ)。
【0063】
【表3】

【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明の植物の日持ち向上剤は、食用、観賞用等の各種植物の苗の日持ち性を向上させるに用いられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
天然型アブシジン酸及び/又はその誘導体を含有する水溶液であって、
無機酸及び/又は有機酸の金属塩を1種又は2種以上含有し、該金属塩の少なくとも1種類がカリウム塩である
ことを特徴とする植物の日持ち向上剤。
【請求項2】
前記無機酸が、炭酸、塩酸、オルトホウ酸、メタホウ酸、三メタホウ酸、次ホウ酸、シアン酸、イソシアン酸、雷酸、硝酸、ペルオキソ硝酸、亜硝酸、ペルオキソ亜硝酸、ニトロキシル酸、次亜硝酸、(オルト)リン酸、ピロリン酸、三リン酸、メタリン酸、三メタリン酸、四メタリン酸、ペルオキソ一リン酸、ペルオキソ二リン酸、亜リン酸、ピロ亜リン酸、次亜リン酸、ホスフィン酸、硫酸、ピロ硫酸、ペルオキソ一硫酸、ペルオキソ二硫酸、チオ硫酸、二チオン酸、亜硫酸、ピロ亜硫酸、チオ亜硫酸、亜二チオン酸及びスルホキシル酸からなる群から選ばれた1種又は2種以上であることを特徴とする、請求項1に記載の植物の日持ち向上剤。
【請求項3】
前記有機酸が、グリシン、アラニン、フェニルアラニン、グルタミン酸、アスパラギン酸、プロリン、ヒドロキシプロリン、リジン、アルギニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、セリン、メチオニン、スレオニン、ヒスチジン等の各種アミノ酸、蟻酸、酢酸、乳酸、ピルビン酸、クエン酸、コハク酸、フマル酸、リンゴ酸、酒石酸、グルコン酸、ニコチン酸、サリチル酸、アルギン酸、アスコルビン酸、ソルビン酸、安息香酸からなる群から選ばれた1種又は2種以上であることを特徴とする、請求項1に記載の植物の日持ち向上剤。
【請求項4】
前記天然型アブシジン酸及び/又はその誘導体の濃度が0.001mmol/l〜20mmol/lであることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の植物の日持ち向上剤。
【請求項5】
前記無機酸及び/又は有機酸のカリウム塩の濃度が0.1mmol/l〜100mmol/lであることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載の植物の日持ち向上剤。

【公開番号】特開2007−91611(P2007−91611A)
【公開日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−280801(P2005−280801)
【出願日】平成17年9月27日(2005.9.27)
【出願人】(390028130)タキイ種苗株式会社 (7)
【出願人】(594003104)株式会社テイエス植物研究所 (5)
【出願人】(000003506)第一工業製薬株式会社 (491)
【Fターム(参考)】