植物の木部発達調節RabG3b遺伝子及びその蛋白質、並びにそれを用いた植物バイオマスの増加方法及びその形質転換植物
【課題】RabG3bタンパク質またはその突然変異体を過発現させることにより、植物バイオマスを増加させる方法及び当該遺伝子を含むベクター、並びにそのベクターを含む形質転換植物体及びその形質転換植物体の製造方法の提供。
【解決手段】小さいGTP結合タンパク質であるRabG3bタンパク質またはそのタンパク質の突然変異体を過発現させる植物バイオマスの増加方法。植物バイオマス関連遺伝子の発現を促進可能な1つ以上の調節遺伝子に作動的に連結されたRabG3b遺伝子を暗号化する核酸配列を含む植物バイオマス増進用発現ベクター。
【解決手段】小さいGTP結合タンパク質であるRabG3bタンパク質またはそのタンパク質の突然変異体を過発現させる植物バイオマスの増加方法。植物バイオマス関連遺伝子の発現を促進可能な1つ以上の調節遺伝子に作動的に連結されたRabG3b遺伝子を暗号化する核酸配列を含む植物バイオマス増進用発現ベクター。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、RabG3b蛋白質を過発現させることにより、植物バイオマスを増加させる方法及び当該遺伝子を含むベクター、並びにそのベクターを含む形質転換植物体及びその形質転換植物体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
農業、園芸、バイオマス転換及び他の産業(例えば、製紙産業、蛋白質または他の化合物に対する生産因子としての植物)において、特に改善された植物は、分子技術を用いて収得可能である。例えば、作物栽培学の優れた有用性は、全体またはその任意の器官またはその任意の数の器官として植物の大きさを調節することから生じることができる。
【0003】
同様に、全体の植物の大きさ及び高さ、または植物の特定の部分、または成長速度、または苗木の生命力を制御することは、特定の産業においてより適切な植物の生産を可能とする。例えば、特定の農作物及び木の種における高さの減少は、より容易な収穫が可能なため有用である。代案的に、植物の増加した高さ及び厚さ、または器官の大きさ及び器官の数は、食品、飼料、燃料及び/または化学物質での処理に有用なより多くのバイオマスを提供することによって有効となり得る(エネルギー効率及び再生エネルギーに関する米国エネルギー部のウェブサイトを参照)。商業的に好ましい特性の別の例は、折花の茎の長さの増加、葉の大きさ及び形状の増加または変更及び種及び/または実の増進を含む。また、器官の大きさ、器官の数及びバイオマスにおける変化は、副生成物のような構成分子の重量における変化及び植物がこれらの化合物の製造への転換をもたらす。
【0004】
農耕科学、農業、作物学、園芸、及び森林科学分野の専門家及び研究者は、現在、増加している世界人口に食糧を供給し再生可能な原料の供給を保障するために、効能ある増加した成長を有する植物を探して生産するために、絶え間ない努力を重ねている。前記科学分野において高いレベルの研究は、集団において、食物、飼料、化学及びエネルギーの維持可能な供給源を提供するのに、全世界のすべての地理的環境及び気候において重要なリーダーのレベルであることを明示する。
【0005】
農作物性能の操作は、植物育種により、数世紀にわたって通常的に達成してきた。しかし、育種過程は、時間がかかり、労働集約的である。また、適切な育種プログラムは、各々の相対的な植物種に対して特異的に設計されなければならない。
【0006】
一方、優れた過程は、より良い農作物を提供するための植物を製作するために、分子遺伝学的なアプローチを試すのに用いられてきた。植物において組み換え核酸分子の導入及び発現により、研究者等は、現在、独特の地理学及び/または気候環境にもかかわらず、より効率よく成長し、より多くの産物を生産するために合わせられた植物種を有する集団を提供するための準備が整っている。このような新たなアプローチは、1つの植物種に限らず、複合的な他の植物種に適用可能であるという追加の利点がある(Zhang et al.(2004)Plant Physiol.135:615)。
【0007】
この過程にもかかわらず、現在、特定の環境条件に左右される特定の要求に合わせるための林業または農業の植物成長を改善させる一般的に適用可能な過程が高く要望されている。最後に、本発明は、植物が成長しなければならず、植物において組み換えDNA分子の発現により特定化される利益の追求及び特定の環境に左右される多様な農作物の利益を最大化するための植物の大きさ、器官の数、植物成長速度、植物構造及び/またはバイオマスを有用に操作することに関するものである。これらの分子は、植物自体に由来可能であり、単に高いか低いレベルで発現したり、分子が他の植物種に由来可能である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記の問題を解決し、上記の必要性によりなされたものであって、本発明の目的は、植物バイオマスの増加に関与するタンパク質を提供することである。
【0009】
また、本発明の他の目的は、植物バイオマスの増加に関与する遺伝子を提供することである。
【0010】
さらに、本発明のさらに他の目的は、前記遺伝子を用いた植物バイオマスの増加方法を提供することである。
【0011】
また、本発明のさらに他の目的は、前記遺伝子を含む形質転換植物の生産方法を提供することである。
【0012】
なお、本発明のさらなる目的は、前記形質転換植物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記の目的を達成するために、本発明は、小さいGTP結合タンパク質であるRabG3bタンパク質またはそのタンパク質の突然変異体及びそのタンパク質またはその突然変異体をコード化する遺伝子を過発現させることにより、植物バイオマスを増加させる方法を提供する。
【0014】
本願において、「バイオマス」は、対象の産物を含む有用な生物学的物質を言及し、この物質は、対象の産物を分離または濃縮する追加の過程で意図的に回収される。「バイオマス」は、実またはその部分または種、葉、または茎または根を含むことができ、ここで、これらは、産業的目的について特に関心のある植物の部分である。植物物質について言及したように、「バイオマス」は、対象の産物を含むか、または植物の任意の構造を含む。
【0015】
本願において、「形質転換」は、これを実行可能な手段の例を下記に述べ、アグロバクテリウム(Agrobacterium)を介した形質転換[双子葉植物の形質転換(Needleman及びWunsch(1970)J Mol.Biol 48:443;Pearson及びLipman(1988)Proc.Natl.Acad.Sci.(USA)85:2444)、単子葉植物の形質転換(Yamauchi et al.(1996)Plant Mol Biol.30:321−9;Xu et al.(1995)Plant Mol.Biol.27:237;Yamamoto et al.(1991)Plant Cell 3:371)]、及び生物学的(biolistic)方法(P.Tijessen、「Hybridization with Nucleic Acid Probes」In Laboratory Techniques in Biochemistry及びMolecular Biology、P.C.vand der Vliet、ed.,c.1993 by Elsevier、Amsterdam)、電気穿孔法、インプランタ(in planta)技術などを含む。外因性核酸を含む植物は、本願においては、第1の遺伝子導入植物については「T0」、第1の世代については「T1」として言及される。
【0016】
本発明の一具体例において、使用されたRabG3bタンパク質またはそのタンパク質をコード化する遺伝子配列は、シロイヌナズナ(arabidopsis thaliana)に由来するものであるが、関心の対象である異なる種からのRabG3b遺伝子または偽遺伝子も使用することができる。
【0017】
本発明の一具体例において、前記RabG3bタンパク質は、配列番号1に記載のアミノ酸配列を有することが好ましいが、配列番号1に記載のアミノ酸配列のいずれか1つ以上のアミノ酸を、置換、欠失、付加などの方法により突然変異させ、本発明が目的とするバイオマスの増加効果を有するすべての突然変異体が本発明の範囲内に属し、その例は、配列番号1に記載のアミノ酸のうち67番残基を、グルタミンからロイシンに置換した配列を有する突然変異体である。
【0018】
本発明は、前記本発明のタンパク質またはその突然変異体をコード化する遺伝子は、配列番号2または配列番号3に記載の核酸配列と実質的な同一性を有することが好ましいが、これに限定されない。
【0019】
本発明において、ポリヌクレオチド配列の「実質的な同一性」という用語は、ポリヌクレオチドが標準パラメータを用い、下記のプログラムを用いて、参照配列と比較して60%以上の配列同一性、通常は70%以上、より通常は80%以上、及び最も好ましくは、90%以上の配列同一性を有する配列を含むことを意味する。当該分野の熟練者は、これらの値が、コドン縮重、アミノ酸類似性、読取フレームの位置づけなどを考慮し、2つのヌクレオチド配列により暗号化されたタンパク質の相応する同一性を測定するように、適切に調節できることを認識するはずである。
【0020】
配列同一性パーセント及び配列類似性を測定するのに適したアルゴリズムの例は、文献(参照:Altschul et al.,J.Mol.Biol.215:403−410、1990)に記載されたブラスト(BLAST)アルゴリズムである。ブラスト分析を行うためのソフトウェアは、国立生物学情報センター(National Center for Biotechnology Information)のウェブサイトより利用可能である。
【0021】
本発明の一具体例において、前記遺伝子の発現は、プロモーターの調節下にあることが好ましい。
【0022】
本発明に記載された方法を用いて植物バイオマスの増加に関連する遺伝子に作動的に連結させて発現させるのに適したプロモーターは、形質転換される植物の同一種からまたは異種からのものを使用することができる。また、プロモーターは、本発明の遺伝子に対して同一種に由来するか、または異種に由来することができる。また、本発明の方法に使用するためのプロモーターは、1つ以上の下記に記載されたのと共通する発現プロファイルを有するプロモーターの組み合わせを含むことができるキメラプロモーターを含むことができる。
【0023】
植物ゲノムDNAにおいてプロモーター領域を確認し特性化する方法は、当該分野の熟練者に周知であり、例えば、文献[参照:Jordano et al,Plant Cell 1:855−866、1989;Bustos et al.,Plant Cell 1:839−854、1989;Green et al.,EMBO J.7:4035−4044、1988;Meier et al.,Plant Cell 3:309−316、1991;及びZhang et al.,Plant Physiol.110:1069−1079、1996]に記載されている。
【0024】
このプロモーター配列の例は、アミノ酸パーミアーゼ遺伝子に対するプロモーター(AAP1)(例:シロイヌナズナからのAAP1プロモーター)(参照:Hirner et al.,Plant J.14:535−544、1998)、オレイン酸12−ヒドロキシラーゼ:デサチュラーゼ遺伝子に対するプロモーター(例:レスクレラフェンドレリからLFAH12に指名されたプロモーター)(参照:Broun et al.,Plant J.13:201−210、1998)、2S2アルブミン遺伝子に対するプロモーター(例:シロイヌナズナからの2S2プロモーター)(参照:Guerche et al.,Plant cell 2:469−478、1990)、脂肪酸エロンガーゼ遺伝子プロモーター(FAEl)(例:シロイヌナズナからのFAE1プロモーター)(参照:Rossak et al.,Plant Mol.Biol.46:717−715、2001)、及び葉状の子葉遺伝子プロモーター(LEC2)(例:シロイヌナズナからのLEC2プロモーター)(参照:Kroj et al Development 130:6065−6073、2003)を含む。また、本発明の一実施例で使用されたCaMv(cauliflower mosaic virus)35Sプロモーターも含むことができる。
【0025】
また、本発明は、植物バイオマス関連遺伝子の発現を促進可能な1つ以上の調節遺伝子に作動的に連結されたRabG3b遺伝子を暗号化する核酸配列を含む植物バイオマス増進用発現ベクターを提供する。
【0026】
本発明において、「ベクター」または「発現ベクター」は、外因性DNAにこれを挿入可能な、通常二本鎖のDNA鎖をいう。ベクターまたはレプリコンは、例えば、プラスミドまたはウイルスに由来可能である。ベクターは、宿主細胞内でベクターの自己複製を促進させる「レプリコン」ポリヌクレオチド配列を含む。また、当該技術に関し、「レプリコン」という用語は、宿主染色体内にベクター配列の組み換えを標的化したり、あるいはその他の促進させるポリヌクレオチド配列を含む。
【0027】
また、外因性DNAが初期に、例えば、DNAウイルスベクター内に挿入できるとしても、ウイルスベクターDNAの宿主細胞内への形質転換は、ウイルスDNAのウイルスRNAベクター分子内への転換をもたらすことができる。外因性DNAは、異種DNAと定義され、これは、例えば、ベクター分子を複製し、選別可能または選別可能なマーカーまたは形質転換遺伝子を暗号化する、宿主細胞内で天然的に発見されないDNAである異種DNAと定義される。ベクターは、外因性または異種DNAを適した宿主細胞内に伝達するために用いられる。宿主細胞内において、ベクターは、宿主染色体DNAとは独立してまたは一致しないように複製可能であり、いくつかのベクターコピー及びその挿入DNAを生成させることができる。
【0028】
また、ベクターは、外因性または異種DNAの宿主染色体内への挿入を標的化することができる。また、ベクターは、挿入DNAのmRNA分子への転写を許容したり、または挿入DNAの多数のコピーのRNAへの複製を誘発する必須成分を含むことができる。一部の発現ベクターは、追加でタンパク質分子内にmRNAの解読を許容する挿入DNAに近接した配列成分を含有する。したがって、多くのmRNA分子及び挿入DNAによって暗号化されたポリペプチドは迅速に合成可能である。
【0029】
本発明の「形質転換遺伝子ベクター」という用語は、DNAの挿入断片、すなわち、宿主細胞内でmRNA内に挿入されるか、またはRNAとして複製される「形質転換遺伝子」をいう。
【0030】
本発明において、「形質転換遺伝子」という用語は、RNAに転換される挿入DNA断片のみを意味するのではなく、RNAの転写または複製に必要なベクターの部位を意味する。また、形質転換遺伝子は、タンパク質を生産可能な開放読取フレームを含有するポリヌクレオチド配列を必須的に含む必要がない。
【0031】
本発明において、「形質転換された宿主細胞」、「形質転換された」及び「形質転換」という用語は、DNAの細胞内への導入をいう。細胞は「宿主細胞」と名づけられ、これは原核または真核細胞であり得る。代表的な原核宿主細胞は、各種大腸菌(E.coli)の菌株を含む。代表的な真核宿主細胞は、植物細胞(例:キャノーラ、綿花、カメリナ、アルファルファ、大豆、稲、燕麦、小麦、大麦、またはトウモロコシ細胞など)、酵母細胞、昆虫細胞または動物細胞である。導入されたDNAは、一般的に、DNAが挿入された断片を含有するベクターの形態である。導入されたDNA配列は、宿主細胞と同一種、または宿主細胞とは異なる種に由来するか、または、これは宿主種由来の一部のDNA及び一部の外因性DNAを含有するハイブリッドDNA配列であり得る。
【0032】
本発明において、「植物」という用語は、全体の植物、植物器官(例:葉、茎、花、根など)、種及び植物細胞(組織培養細胞を含む)及びこれらの子孫を含む。本発明の方法に使用可能な植物の群は、一般的に、単子葉植物及び双子葉植物の両方を含む形質転換技術に適用可能な高等植物の群、及び藻類のような特定の下等植物などと広範囲である。これは、倍数体、二倍体及び半数体を含む各種の倍数性レベルの植物を含む。
【0033】
本発明のRabG3bを過発現させる形質転換植物は、例えば、植物内にRabG3b遺伝子に作動的に連結されたプロモーターを暗号化する遺伝子転移ベクター(例:プラスミド、ウイルスなど)を形質感染させることによって収得可能である。
【0034】
通常、ベクターがプラスミドの場合、当該ベクターは、選別性マーカー遺伝子、例えば、カナマイシンへの耐性を暗号化するカナマイシン遺伝子を含む。植物形質転換の最も一般的な方法は、標的形質転換遺伝子を植物形質転換ベクター内にクローン化させた後、文献[参照:Hoeckeme et al.,(Nature 303:179−181、1983)]に記載されたように、ヘルパーTiプラスミドを含有するアグロバクテリウムツメファシエンス(Agrobacterium tumifaciens)内に形質転換させる。追加の方法は、例えば、文献(参照:Maloney et al.,Plant Cell Reports 8:238、1989)に記載されている。形質転換遺伝子ベクターを含有するアグロバクテリウム細胞は、文献(参照:An et al.,Plant Physiol.81:301−305、1986;Hooykaas、Plant Mol.Biol.13:327−336、1989)に記載されたように形質転換される植物の葉断片と共に培養することができる。培養された植物宿主細胞の形質転換は、通常、前述したように、アグロバクテリウムツメファシエンスにより達成することができる。堅い細胞膜障壁を有さない宿主細胞の培養物は、一般的に、元々、文献(参照:Graham et al.,Virology 52:546、1978)に記載されており、文献(参照:Sambrook et al.,Molecular Cloning:A Laboratory Manual(2nd Ed.,1989 Cold Spring Harbor Laboratory Press、New York、NY))に記載されたように変形されたリン酸カルシウム方法を用いて形質転換させる。しかし、ポリブレン(参照:Kawai et al.,Mol.Cell.Biol.4:1172、1984)、原形質融合(参照:Schaffner、Proc.Natl.Acad.Sci.USA77:2163、1980)、電気穿孔(参照:Neumann et al.,EMBO J.1:841、1982)、及び核内への直接的な微細注射(参照:Capecchi、Cell 22:479、1980)のように、DNAを細胞内に導入するための他の方法も用いることができる。形質転換された植物細胞は、細胞を、例えば、カナマイシンと、適切な量の、カルス(callus)及び若枝部(shoot)を誘導するためのナフタレン酢酸及びベンジルアデニンのような光ホルモンを含有する培地上で成長させ、選別可能なマーカーにより選別することができる。その後、植物細胞を再生させて収得される植物は、当該分野の熟練者に公知の技術を用いて土壌に移すことができる。
【0035】
前述した方法のほか、クローン化DNAを裸子植物、胞子植物、単子葉及び双子葉植物を含む広範囲な植物種内に移すための複数の方法が当該分野に広く公知されている[参照:Glick and Thompson、eds.,Methods in Plant Molecular Biology and Biotechnology、CRC Press、Boca Raton、Florida、1993;Vasil、Plant Mol.Biol、25:925−937、1994;and Komai et al.,Current Opinions Plant Biol.1:161−165、1998(一般的な検討);Loopstra et al.,Plant Mol.Biol.15:1−9、1990;及びBrasileiro et al.,Plant Mol.Biol.17:441−452、1990(木の形質転換);Eimert et al.,Plant Mol.Biol.19:485−490、1992(ブラシカ(brassica)の形質転換);Hiei et al.,Plant J.6:271−282、1994;Hiei et al.,Plant Mol Biol.35:205−218、1997;Chan et al.,Plant Mol.Biol.22:491−506、1993;米国特許第5,516,668号及び第5,824,857号(稲の形質転換);及び米国特許第5,955,362号(小麦の形質転換);第5,969,213号(単子葉植物の形質転換);第5,780,798号(トウモロコシの形質転換);第5,959,179号及び第5,914,451号(大豆の形質転換)]。
【0036】
代表例は、原形質体による電気穿孔促進されたDNA吸収(参照:Rhodes et al.,Science 240:204−207、1988;Bates、Meth.MoL Biol.111:359−366、1999;DΗalluin et al.,Meth.MoL Biol.111:367−373、1999;米国特許第5,914,451号);ポリエチレングリコールを使用した原形質体の処理(参照:Lyznik et al.,Plant Mol.Biol.13:151−161、1989;Datta et al.,Meth.Mol.Biol.,111:335−334、1999);及びDNAを含む微細発射を用いた細胞の衝撃(bombardment)(参照:Klein et al.,Plant Physiol.91:440−444、1989;Boynton et al.,Science 240:1534−1538、1988;Register et al.,Plant MoL Biol.25:951−961、1994;Barcelo et al.,Plant J.5:583−592、1994;Vasil et al.,Meth.Mol.Biol.111:349−358、1999;Christou、Plant MoL Biol.35:197−203、1997;Finer et al.,Curr.Top.Microbiol.Immunol.240:59−80、1999)を含む。追加的に、植物形質転換ステップ及び技術は、文献(参照:Birch、Ann.Rev.Plant Phys.Plant MoL Biol.48:297、1997;Forester et al.,Exp.Agric.33:15−33、1997)で探すことができる。若干の変異は、当該技術が広範囲な植物種に適用可能である。
【0037】
単子葉植物形質転換の場合、粒子衝撃は、通常、選別方法である。しかし、トウモロコシのような単子葉植物は、米国特許第5,591,616号に記載されたようなアグロバクテリウム形質転換方法を用いて形質転換させることができる。
【0038】
単子葉植物、例えば、トウモロコシ形質転換を行うための他の方法は、胚形成懸濁液培養物からの細胞を繊維懸濁液[5%w/v、シラーSC−9ウィスカー(Silar SC−9 whiskers)]及びプラスミドDNA(1μg/μl)を混合した後、これをボルテックスジェニーII(Vortex GENIE II)ボールテックスミキサ[米国、ニューヨーク・ボヘミア所在のScientific Industries社製造]上の多数のサンプルヘッド内に直接置いたり、またはMIXOMAT歯のアマルガムミキサ[dental amalgam mixer;カナダ・オンタリオ・バーリントン所在ののDegussa Canada社製造]のホルダ内に水平に置くのである。その後、形質転換は約60秒(例えば、ボルテックスジェニーIIを用いる)の最高速度で混合したり、または1秒(MIXOMAT)間固定速度で振とうさせて行うことができる。当該過程により安定した形質転換体が選別可能な細胞集団が生産される。植物は安定的に形質転換されたカルスから再生され、これらの植物及びこれらの子孫は、サザンハイブリッド化分析により形質転換されたことが明らかになった。
【0039】
植物細胞、特に、トウモロコシの形質転換のための毛の使用は、例えば、米国特許第5,464,765号に記載されている。米国特許第5,968,830号は、大豆を形質転換させて再生させる方法を記載している。米国特許第5,969,215号は、サトウダイコンのような形質転換されたベターバルガリス(Beta vulgaris)植物を生産するための形質転換技術を記載している。
【0040】
各々の前記形質転換技術は利点・欠点を有する。各々の技術において、プラスミドからのDNAを遺伝子操作することにより、これが目的の遺伝子だけでなく、選別可能でふるい分け可能なマーカー遺伝子も含有するようにする。ふるい分け可能なマーカー遺伝子を用いてプラスミドの統合されたコピー(当該作製物は、目的の遺伝子及び選別可能な遺伝子が単位として形質転換されるようにする)を有する細胞のみを選別するのに用いられる。選別可能な遺伝子は、目的の遺伝子を有する細胞のみを成功的に培養するための他の点検を提供する。
【0041】
抗生剤耐性の選別可能なマーカーを用いた伝統的なアグロバクテリウム形質転換は、このような植物が動物及び人に対して抗生剤耐性を拡散させる過度の危険性を含むために問題となり得る。このような抗生剤マーカーは、植物を米国特許第5,731,179号に記載されたのと類似のアグロバクテリウム技術を用いた形質転換植物により、植物から除去可能である。抗生剤耐性問題は、米国特許第5,712,135号に記載されたようなバーまたはパット(pat)の暗号化配列を用いて効果的に避けることができる。このような好ましいマーカーDNAは、グルタミンシンテターゼ抑制剤、除草剤、ホスフィノスリシン(グルホシネート)及びグルホシネートアンモニウム塩(Basta、Ignite)の作用を抑制させたり中和させる第2タンパク質またはポリペプチドを暗号化する。
【0042】
1つ以上の前記遺伝子を含有するプラスミドは、前述した技術のいずれか1つにより植物原形質体またはカルス内に導入させる。マーカー遺伝子が選別可能な遺伝子の場合、DNAパッケージが混入された細胞のみが適切な植物毒素剤を使用した選別下に生存する。適切な細胞が確認されて増殖されると、植物が再生される。形質転換された植物からの子孫をテストすることにより、DNAパッケージが植物ゲノム内に成功的に統合されたことを確認しなければならない。
【0043】
形質転換の成功に影響を及ぼす複数の因子が存在する。外因性遺伝子作製物の設計及び作製、及びこれの調節成分は、外因性配列の植物核の染色体DNA内への統合及び細胞により発現する形質転換遺伝子の能力に影響を及ぼす。外因性遺伝子作製物を植物細胞核内に非致命的な方法で導入させるのに適した方法は必須的である。重要な点は、全体の植物が回収される場合に作製物が導入される細胞の類型が再生に対して補正可能な類型であるため、適切な再生プロトコールを提供しなければならないという点である。
【0044】
また、原核細胞は、本発明の初期のクローン化段階のための宿主細胞として使用可能である。方法、ベクター、プラスミド及び宿主細胞システムは、このような初期のクローン化及び拡張段階に使用可能な当該分野における熟練者に周知であり、本願では記載しないものとする。
【0045】
本発明の他の具体例において、プロモーターは、当該分野の熟練者に公知の方法を用いて形質転換される植物でRabG3bのような植物バイオマス増加関連遺伝子を暗号化する遺伝子に作動的に連結させることができる。プロモーターの挿入は、遺伝子形質転換植物の発達する種において遺伝子の発現を許容するはずである。
【0046】
本発明の方法において、形質転換植物は、単子葉及び双子葉植物を含むが、これらに限定されない。これらのうち、関心の対象である植物は、キャノラ、トウモロコシ、綿花、小麦、稲、大豆、大麦及びその他の種生産植物、及びアルファルファなどを含むが、これらに限定されない、その他の植物を含み、農業的、工業的、その他の産業的に関心の対象であるもののすべてを含む。
【0047】
本明細書において、「異種配列」は、異なる種に由来するか、または同一種に由来する場合、元々の形態から実質的に変形されたオリゴヌクレオチド配列である。例えば、構造遺伝子に作動的に連結された異種プロモーターは、構造遺伝子とは異なる種に由来するか、または同一種の場合、元々の形態から実質的に変形されたものに由来する。
【0048】
本明細書において、「プライマー」は、核酸混成化により相補的標的DNA鎖にアニールされ、プライマーと標的DNA鎖の間に混成体(hybrid)を形成し、次に、重合酵素、例えば、DNA重合酵素により標的DAN鎖に沿って延長される、分離された核酸である。本発明のプライマー対は、例えば、重合体連鎖反応(PCR)または他の従来の核酸増幅方法による標的核酸配列を増幅するための前記使用を示す。
【0049】
プローブとプライマーを製造して使用する方法は、例えば、Molecular Cloning:A Laboratory Manual、2nd ed.,vol.1−3、ed.Sambrook et al.,Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor、NY、1989(以下、「Sambrook et al.,1989」);Current Protocols in Molecular Biology、ed.Ausubel et al.,Greene Publishing and Wiley−Interscience、New York、1992(周期的に改訂される)(以下、「Ausubel et al.,1992」);及びInnis et al.,PCR Protocols:A Guide to Methods and Applications、Academic Press:San Diego、1990に説明されている。PCR−プライマー対は、例えば、この目的のために開発されたPrimer(Version0.5、(C)1991、Whitehead Institute for Biomedical Research、Cambridge、MA)のようなコンピュータプログラムを用いて、公知の配列から導き出すことができる。
【0050】
核酸の増幅は、重合酵素連鎖反応(PCR)を含む当業界で公知の多様な核酸増幅方法のいかなるものも利用可能である。多様な増幅方法が当業者に公知されており、特に、米国特許第4,683,195号と第4,683,202号及びPCR Protocols:A Guide to Methods and Applications、ed.Innis et al.,Academic Press、San Diego、1990に説明されている。PCR増幅方法は、最大22kbのゲノムDNA及び最大42kbのバクテリオファージDNAを増幅する程度に発展している(Cheng et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 91:5695−5699、1994)。
【0051】
以下、本発明を説明する。
【0052】
木部の導管(tracheary element、以下「TE」という)は、植物維管束系の水を運ぶ木部として作用する。これを行うために、TEは、2次的な細胞壁の肥厚(thickening)及び細胞死を進行する。TEの細胞死は、自食による典型的な発生学的にプログラム化された細胞死である。しかし、TE分化において、自食に関する証拠は知られていない。本発明は、小さいGTP結合タンパク質であるRabG3bが自食作用によりTE分化に関与することを明らかにした。野生型TE細胞の分化は、アラビドプシス培養システムで自食を経験することを発見した。自食とTE分化の両方は、持続的に活性化突然変異体(RabG3bCA)の過発現により顕著に促進され、優性ネガティブ突然変異体(RabG3bDN)またはRabG3b RNAi、ブラシノステロイド(brassinosteroid)インセンティブ突然変異体bri1−301、及び自食突然変異体atg5−1を過発現する形質転換植物体で阻害された。この結果により、本発明は、TE分化中に自食が起き、自食の構成要素としてRabG3bはTE分化を調節することを示唆する。
【0053】
木部の発達、特に、導管細胞の分化の最後の段階に起きる細胞死は、木部の完成に非常に重要な過程であり、この過程により、細胞質のすべての内容物が分解され、中空の木部を形成できるからである。本発明で確認したのは、自食がこの発達過程の細胞死を促進させるということである。結局、自食に関与するRabG3bの活性化された形態であるRabG3bCAを過発現したとき、木部発達過程中に自食が増幅され、これによって細胞死が促進され、窮極的に植物茎の木部の発達が促進されるということである。
【0054】
本発明の重要性は、次のとおりである。
【0055】
木部は、木の木材層を構成する組織である。したがって、本発明の過発現したRabG3bCAを木に過発現させ、シロイヌナズナで観察された同じ形質(すなわち、木部の増大)を形成できる場合、これは、産業的に応用可能な非常に重要な形質になる。なぜなら、これは、木のバイオマスの増加を意味するからである。現在、ポプラやユーカリの木などが代表的な木材原料となっている。木材は、パルプ、ペーパーの主な原料であり、さらに、現在最も大きな懸案になっているバイオエタノール(次世代の代替エネルギー)の生産における重要な原料として注目されている。
【0056】
以下、本発明を詳細に説明する。
木部の分化に対するRabG3bの作用
小さいGTP結合タンパク質であるRabG3bは、プロテオーム分析によりサリチル酸反応タンパク質として同定された(Oh et al.,2005)。マイクロアレイ分析は、RabG3bがブラシノライド(BL)/H3BO3処理に反応して高く発現した(図12)。
【0057】
本発明では、(1)RabG3bがTE分化に関与するか否か、(2)RabG3bが自食に関与するか否か、及び(3)自食がTE分化に関与するか否かを調査した。
【0058】
RabG3bノックダウン植物体(RabG3bRNAi)を生成し、それは単にRabG3bの発現がテストされたRabG3系要素の中で減少し、RabG3bタンパク質がウェスタンブロット分析から分かるように検出されなかった(図13)。それぞれ持続的に活性を有する(CA)及び優性ネガティブ(DN)RabG3bCA及びRabG3bDNの2つの異なるRabG3b形質転換植物体を機能分析に用いた。また、維管束の欠失を示すBRインセンシティブ突然変異体bri1−301(Cano−Delgado、A.,等(2004)Development、131、5341−5351)、及び自食突然変異体atg5−1(Thompson、A.R.,等(2005)Plant Physiol.138、2097−2110)を使用した。
【0059】
植物の成長表現型を長周期条件(16/8h明/暗周期)下で調査した(図1)。顕著な表現型として、RabG3bCA植物は、すべての他のテストした植物体に比べて茎でより大きく成長し、WT植物体と比較して茎の肥厚が14%増加した(図1(b)、(c))。これに対し、atg5−1植物体は、WTより大きさがより短く、bri1−301植物体は、大きさが大きく減少したことを示した。抽薹(bolting)において、ロゼット葉の数と抽薹時間を決定した。RabG3bCA植物体は、他のものに比べて少し早く抽薹されたが(図14)、葉の数における顕著な差はテストした植物体の中では観察されなかった(図15)。この結果は、RabG3bCA植物体で観察された増加した茎の長さが開花時間の調節の変更というよりは、より早い茎の成長に起因することを示す。
【0060】
次に、維管束発達の変化と成長表現型間の可能な関連性を、3つの異なる位置からの花序(inflorescence)の茎の断面の組織分析により調査した(図2及び図3)。すべての植物の全体の維管束の表現型は正常であるのに対し、WTと比較して、木部細胞の数は、RabG3bCA花序の中間及び基底部で顕著に増加した(図2)。また、後生木部(metaxylem)及び原生木部(protoxylem)の2つの異なるタイプに分けられる木部細胞の数量化は、後生木部細胞がWTと比較してRabG3bCA植物体の維管束で大きく増加したことを示した(図3、図4及び図16)。
【0061】
これとは対照的に、RabG3bDN、RabG3bRNAi、及びatg5−1植物体は、花序の茎の基底部で原生木部及び後生木部とも数が大きく減少した。この結果は、増加した茎の成長は、RabG3bCA植物体で増加した木部の分化と関連があることを示す。また、atg5−1植物体において、木部細胞の減少は、ATG5及びATG5リンクされた自食が木部の分化に関連し得ることを示唆する。
【0062】
木部分化の指標である2次的な細胞壁の形成は、フロログルシノール−HClによるリグニン染色(図17(a)−(f))及びリグニンの自己蛍光(図17(g)−(l))により、花序の茎の断面で調査された。
【0063】
リグニン化された細胞壁は、WTと比較して、RabG3bCA植物体で膨張したが、RabG3bDN、RabG3bRNAi、bri1−301、及びatg5−1植物体ではやや減少した。
【0064】
花序の茎において、RabG3bの位置づけは、抗RabG3b抗体を使用した免疫金電子顕微鏡法によって調査した(図18)。RabG3bタンパク質は、主に、木部に位置している。皮層細胞において、金粒子が、原形質、液胞及び細胞壁を含む複数の位置で発見されたが(図18(e)−(h))、それらの原形質の内容物を欠失した木部TE細胞では、RabG3b免疫反応性が2次的細胞壁でのみ現れた(図18(m)−(p))。
木部分化中におけるRabG3bCA培養細胞でのTE形成の増加
木部の分化において、RabG3bの機能を定義するために、アラビドプシスs懸濁細胞の培養に対するインビトロ木部TE誘導システムを開発した。TE分化がBL及びH3BO3処理によって誘導されたとき、RabG3bCA細胞がTE誘導4日後、液胞の崩壊及び細胞内容物のロスを主に経験する(図19)。その後、WTと比較して、RabG3bCA細胞はTEでより顕著に発生した(図5)。対照的に、WTに比べて、RabG3bDN、RabG3bRNAi、atg5−1、及びbri1−301のTE誘導された培養で分化した細胞はほとんどなかった。強いリグニン染色は、RabG3bCA細胞で追加的に観察された(図20)。この結果は、RabG3bがTE分化でポジティブの役割を果たし、ATG5を介した自食もTE分化にポジティプな影響を与えることを示唆する。
TE分化中における自食の活性化
RabG3bが自食でその機能によりTE分化を調節するのかを決定するために、TE形成中に、自食の過程を酸性指向性染料LysoTracker Green(LTG)で自食胞/分解小体を染色して調査した(Via、L.E.,等(1998)J.Cell Sci.111、897−905)(図6)。TE誘導前、薄っすらと一部染色されたスポットを示すRabG3bCA細胞を除けば、テストされた植物の中でLTG染色された構造は検出されなかった(図6(a)−(e))。BL及びH3BO3処理は、WT細胞でLTG染色された自食胞/分解小体様構造の形成を誘導し、これは、RabG3bCA細胞で顕著に増加した(図6(k)−(l))。同一の誘導条件下において、LTG染色された構造は、RabG3bDN、RabG3bRNAi、またはatg5−1細胞で形成されなかった(図6(c)−(e)、(h)−(j)、(m)−(o))。これらの結果により、自食はTE分化中に発生し、これは、RabG3bのGTP結合形成により活性化可能であることが分かる。
TE分化中における数多くの自食構造を蓄積するRabG3bCA細胞
透過電子顕微鏡(TEM)分析は、TE分化中に細胞で微細構造的な変化を調査し、LTG染色結果を確認するために行った(図7)。非誘導細胞は、テストされた植物の間で形態学的な差がほとんどなかった(図7(a)−(e))。TE誘導に対して、BL/H3BO3処理4日後、WT細胞で細胞内容物の分解及び液胞の破壊が観察された(図7(f))。この時期の間、WT細胞は、分解される細胞構成要素を含む自食胞/分解小体様構造を示す(図7(f)、(p))。RabG3bCA細胞は、多数の自食胞/分解小体様構造を蓄積し、細胞器官及び細胞内容物のロスが速かに進行した(図7(g)、(q))。TE誘導7日後、RabG3bCA細胞は、成熟したTE細胞で完全に分解され、これは、空の原形質及び2次細胞壁の蓄積により証明され(図7(l))、WT細胞は、TE分化の最後の段階に向かって引き続き進行していた(図7(k))。対照的に、自食胞/分解小体様構造及びTE関連の形態学的な変化は、誘導期間中、RabG3bDN、RabG3bRNAi、またはatg5−1細胞では観察されなかった(図7(h)−(j)、(m)−(o))。
【0065】
TE分化過程中に、WT及びRabG3bCA細胞で自食構造の形成をさらに調査した(図8(a)−(h))。WT細胞は、前自食胞(preautophagosomal)構造または細胞膜(phagophores)を示し(図8(b))、自食胞/分解小体様構造を伴った(図8(c)、(d))。類似の自食構造がRabG3bCA細胞で観察されたが、WT細胞より早期に形成されてより豊富であった(図8(e)−(h))。原形質物質及び細胞小器官(例えば、ミトコンドリア)を含む多くの細胞膜がBL/H3BO3処理1日後に現れ(図8(e))、自食胞の蓄積は、2日後に処理されたRabG3bCA細胞で観察され、WT細胞では引き続き前自食胞構造が膨張していた。本発明者等は、追加的にRabG3bCA細胞で自食活性化が一般的な自食条件である栄養欠乏に対しても現れるのかをテストした(図8(i)−(p))。同様に、WT及びRabG3bCA細胞とも、砂糖欠乏に反応して自食形態を示し、WTに比べてRabG3bCA細胞で自食構造が時間的により早くそしてより豊富であった。この結果は、RabG3bが自食でポジティブ調節者であり、RabG3b活性化された自食は、細胞死の過程を促進してTE分化に寄与することを示唆する。
自食構造に位置するRabG3b
自食胞/分解小体構造に対するRabG3bタンパク質の位置づけは、TE誘導されたWT及びRabG3bCA細胞において、自食胞マーカータンパク質ATG8e及びRabG3bに対する抗血清を使用した免疫金EMによって分析した。WT及びRabG3bCA細胞とも、RabG3bタンパク質は、自食構造においてATG8eタンパク質と同時に位置づけられた(図9(a)−(d))。また、ATG8eタンパク質のレベルは、WTと比較してRabG3bCA細胞で増加し、BL/H3BO3処理されたRabG3bCA細胞で自食構造と大部分関連があり、さらに増加した(図9(e))。
自食及び木部分化関連遺伝子の発現分析
Genevestigatorでマイクロアレイデータにより、36の現在定義された自食遺伝子(ATGs)のうち、20以上がPCDまたはBL/H3BO3処理中に上方調節された。したがって、自食の複数の段階で関連する13ATG遺伝子が選択され、それらの発現レベルをTE分化中に調査した。テストされたATG遺伝子のうち9つは、顕著な増加は示していなかった(2倍以下)が、4つのATG遺伝子(ATG6、8g、18h、及びVPS34)は、BL/H3BO3処理に対して2倍以上上方調節され、これは、自食がTE分化に関与することをさらに裏付けるものである(図10(a))。また、TE分化の後期段階で特異的な2群の遺伝子の発現レベルを調査した(PCD関連遺伝子(BFN1、XCP1、AtXyn3、及びAtMC9)及び2次細胞壁関連遺伝子(IRX1、3、5、12、FRA8、CcOAOMT、及び4CL1)(図21及び22)。TE分化の初期段階を調節する維管束系関連転写因子遺伝子(AtHB8、AtHB15、PHB、PHV、REV、VND6、及びVND7)及びBR関連遺伝子(BRI1、BRL1、2、及び3)の発現も調査した(図23(a)及び図24(a))。多くのテストされた遺伝子の転写体レベルは、TE誘導に対して大きく増加した。
【0066】
上方調節されたATGs(ATG6、8g、18h、及びVPS34)の発現は、TE誘導中にWT、RabG3bCA、及びatg5−1cells細胞で比較し、複数の細胞株間に差は現れなかった(図10(b))。ATG8eタンパク質で大きな増加が未処理及びBL/H3BO3処理されたRabG3bCA細胞ですでに観察された(図9(e))ため、ATG8eの発現は、WT、RabG3bCA、及びatg5−1細胞で付加的に決定された(図25)。ATG8eの基底転写体のレベルは、WTよりRabG3bCA細胞でより高かった。
【0067】
上方調節されたPCD関連(AtMC9、XCP1、及びBFN1)、2次細胞壁関連(IRX1、5、12及びFRA8)、維管束系関連転写因子(AtHB8、REV、及びVND7)、及びBR関連(BRL2及びBRL3)遺伝子の発現は、WT、RabG3bCA、及びatg5−1細胞で調査した。テストされたPCD及び2次細胞壁関連遺伝子は、TE分化において、WTに比べてRabG3bCA細胞でより強く発現し(図11)、これは、PCD及び2次細胞壁の蓄積がRabG3bCA細胞で上方調節されることを示唆する。
【0068】
維管束系関連転写因子及びBR関連遺伝子の発現は、テストされた細胞間に顕著な差はなかった(図23(b)及び図24(b))。この結果は、RabG3bの機能が、初期の維管束の発生よりはTE分化後により重要であることを示す。
【発明の効果】
【0069】
本発明から分かるように、本発明のRabG3b遺伝子を過発現させた場合、野生型に比べてそのバイオマスが増加することを確認することができた。この効果は、RabG3bCA細胞において、GTP結合したRabG3bは、自食過程を持続的に活性化することができ、多数の自食胞及び分解小体の蓄積によって行う。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1(a)】WT、RabG3bCA、RabG3bDN、RabG3bRNAi、atg5−1、及びbri1−301植物体の表現型を示す図である。(a)は、WT、RabG3bCA、RabG3bDN、RabG3bRNAi、atg5−1、及びbri1−301植物体の成長表現型。6週齢植物体を撮影。
【図1(b)】WT、RabG3bCA、RabG3bDN、RabG3bRNAi、atg5−1、及びbri1−301植物体の表現型を示す図である。星印はWTとの留意的差を示す(tテスト;*P<0.05;**P<0.01;n=10)。実験は、類似の結果を有し、3回繰り返し行った。(b)は、(a)における植物体の茎の長さ。星印はWTとの留意的差を示す(tテスト;*P<0.05;**P<0.01;n=10)。実験は、類似の結果を有し、3回繰り返し行った。
【図1(c)】WT、RabG3bCA、RabG3bDN、RabG3bRNAi、atg5−1、及びbri1−301植物体の表現型を示す図である。星印はWTとの留意的差を示す(tテスト;*P<0.05;**P<0.01;n=10)。実験は、類似の結果を有し、3回繰り返し行った。(c)は、(a)の植物体の花序の茎の下端部で測定された茎の厚さ。
【図2】WT、RabG3bCA、RabG3bDN、RabG3bRNAi、atg5−1、及びbri1−301植物体において花序の茎の維管束組織の発生を示す図である。(a)−(r)は、トルイジンブルーで染色された6週齢のWT、RabG3bCA(#4−2)、RabG3bDN(#2−11)、RabG3bRNAi(#1−2)、atg5−1、及びbri1−301植物体から花序の茎の端((a)−(f))、中間((g)−(l))、及び基底((m)−(r))部位のレジン充填された横断面。Ic、維管束間形成層(interfascicular cambium);Pc、前形成層[(pro)cambium];Ph、師部;Xy、木部;Pi、髄(pith). バー=(a)−(f)で50μm、(g)−(r)で100μm。
【図3】WT、RabG3bCA、RabG3bDN、RabG3bRNAi、atg5−1、及びbri1−301植物体において花序の茎の維管束パターンを示す図である。(a)−(r)は、トルイジンブルーで染色された6週齢のWT、RabG3bCA(#4−2)、RabG3bDN(#2−11)、RabG3bRNAi(#1−2)、atg5−1、及びbri1−301植物体から花序の茎の端((a)−(f))、中間((g)−(l))、及び基底((m)−(r))部位のレジン充填された横断面。 Ic、維管束間形成層;Pc、前形成層[(pro)cambium];Ph、師部;Mx、後生木部;Px、原生木部;Pi、髄(pith)。 バー=(a)−(f)で20μm、(g)−(r)で50μm。
【図4】WT、RabG3bCA、RabG3bDN、RabG3bRNAi、atg5−1、及びbri1−301植物体において木部細胞の定量分析を示す図である。 (a)−(c)は、6週齢のWT、RabG3bCA(#4−2)、RabG3bDN(#2−11)、RabG3bRNAi(#1−2)、atg5−1、及びbri1−301植物体から花序の茎の端((a))、中間((b))及び基底((c))部位で原生木部及び後生木部細胞の数及びこれらの結合した木部細胞数の定量化を示す。 星印は各WT細胞との留意的差を示す(tテスト;*P<0.05;**P<0.01;***P<0.001;n=10)。
【図5】WT、RabG3bCA、RabG3bDN、RabG3bRNAi、atg5−1、及びbri1−301植物体において培養された細胞のTE分化を示す図である。 (a)−(f)は、TE分化培養された細胞の顕微鏡写真。2次的細胞壁の特性パターンを有する成熟したTEを星印で表した。バー=10μm。 (g)は、TE形成の定量分析。(a)−(f)でトルイジンブルー染色された培養細胞を撮影し、成熟したTEを、300−500細胞を含有する200μm2の面積で計数した。 結果を独立した3回の実験の平均±SEで示す。星印はWTとの留意的差を示す(tテスト;*P<0.01)。
【図6】TE分化する培養細胞において自食活性化を示す図である。 (a)−(o)は、WT、RabG3bCA(#4−2)、RabG3bDN(#2−11)、RabG3bRNAi(#1−2)、atg5−1、及びbri1−301植物体から培養された細胞で自食構造のLTG染色を示す。培養された細胞を、BL/H3BO3処理0((a)−(e))、2((f)−(j))、及び4((k)−(o))日後にLTG染色を行った。緑色のスポットは、自食胞/分解小体構造を示す。 バー=10μm。
【図7】TE分化する培養細胞において自食構造のTEMイメージを示す図である。 (a)−(o)は、WT、RabG3bCA(#4−2)、RabG3bDN(#2−11)、RabG3bRNAi(#1−2)、atg5−1、及びbri1−301植物体から培養された細胞で自食構造のLTG染色を示す。培養された細胞を、原形質のTEMイメージは、BL/H3BO3処理0((a)−(e))、2((f)−(j))、及び4((k)−(o))日後に撮影された。 (p)、(q)は、(f)及び(g)ボックスにおいて、イメージはそれぞれ(p)及び(q)で拡大される。 自食胞/分解小体様構造は矢印で表す。 バー=(a)−(o)で2μm、(p)、(q)で0.1μm。
【図8】TE分化及び砂糖欠乏に対するWT及びRabG3bCA細胞において自食構造のTEMイメージを示す図である。 (a)−(d)は、WT細胞において自食構造の形成に対するTE誘導の効果を示す。BL/H3BO3で1((a))、2((b))、及び4((c)、(d))日間処理されたWT培養細胞の原形質のTEMイメージを収集。 (e)−(h)は、RabG3bCA細胞において自食構造の形成に対するTE誘導の効果を示す。 BL/H3BO3で1((e))、2((f))、及び4((g)、(h))日間処理されたRabG3bCA培養細胞の原形質のTEMイメージを収集。 (i)−(l)は、WT細胞において自食構造の形成に対する砂糖欠乏の効果を示す。 砂糖欠乏後、0((i))、1((j))、及び2((k)、(l))日後、WT苗木の原形質のTEMイメージを収集。 (m)−(p)は、RabG3bCA細胞において自食構造の形成に対する砂糖欠乏の効果を示す。砂糖欠乏後、0((m))、1((n))、及び2((o)、(p))日後、RabG3bCA苗木の原形質のTEMイメージを収集。 M、ミトコンドリア;G、ゴルジ体;AL、自食胞/分解小体様構造;矢じり、前自食胞構造/隔離膜(phagophore);矢印、自食胞。バー=0.5μm。
【図9】自食構造においてRabG3b及びATG8eの同時位置づけを示す図である。 (a)−(d)は、BL/H3BO3で4日間処理された培養細胞においてRabG3b及びATG8eの同時位置づけに対する免疫金ラベリング。矢じり及び矢印は、それぞれRabG3b(20−nm金)及びATG8e(1−nm金)を示す。(a)及び(c)において、ボックスのイメージは(b)及び(d)で拡大される。 バー=(a)、(c)で0.2μm、(b)、(d)で0.1μm。 (e)BL/H3BO3で4日間処理または未処理のWT及びRabG3bCA培養細胞においてRabG3b及びATG8eタンパク質の定量分析。RabG3b及びATG8e金粒子は、(b)及び(d)で示すように、TEMイメージの1.5μm2の面積で計数された。結果を独立した6回の実験の平均±SEで示す。 星印は各WT細胞との留意的差を示す(tテスト;*P<0.05;**P<0.01;***P<0.001;n=10)。
【図10(a)】TE分化中に自食関連遺伝子の発現分析を示す図である。結果を独立した3回の実験の平均±SEで示す。 (a)は、BL/H3BO3で処理されたWT培養細胞においてATG遺伝子の相対的発現。
【図10(b)】TE分化中に自食関連遺伝子の発現分析を示す図である。結果を独立した3回の実験の平均±SEで示す。 (b)は、BL/H3BO3で処理されたWT、RabG3bCA、及びatg5−1培養細胞で選別されたATGs(ATG6、8g、18h、及びVPS34)遺伝子の相対的発現。
【図11(a)】TE分化中に2次細胞壁関連遺伝子及びPCD関連遺伝子の発現分析を示す図である。結果を独立した3回の実験の平均±SEで示す。 (a)、(b)は、BL/H3BO3で処理されたWT、RabG3bCA、及びatg5−1培養細胞で選別されたPCD関連(XCP1、AtMC9、及びBFN1) ((a))及び2次細胞壁関連(IRX1、5、12、及びFRA8)
【図11(b)】TE分化中に2次細胞壁関連遺伝子及びPCD関連遺伝子の発現分析を示す図である。結果を独立した3回の実験の平均±SEで示す。 (b)は、BL/H3BO3で処理されたWT、RabG3bCA、及びatg5−1培養細胞で選別されたPCD関連(XCP1、AtMC9、及びBFN1)((b))遺伝子の相対的発現。
【図12】EBL/H3BO3処理に対するアラビドプシスRabG遺伝子の発現分析を示す図である。1、RabG1 2、RabG2 3a、RabG3a 3b、RabG3b 3c、RabG3c 3d、RabG3d 3e、RabG3e 3f、RabG3fを意味する。
【図13(a)】WT及び2つの独立したRabG3bRNAiラインにおいてRabG3bの発現分析を示す図である。 (a)は、RabG3遺伝子系要素のRT−PCR分析。アクチンを対照群として使用する。
【図13(b)】WT及び2つの独立したRabG3bRNAiラインにおいてRabG3bの発現分析を示す図である。 (b)は、RabG3bタンパク質のウェスタンブロット分析。全体のタンパク質をSDS電気泳動により分離し、Ponceau S染色(下端)及びanti−RabG3b抗体でウェスタンブロット分析(上端)を行う。
【図14】WT、RabG3bCA、RabG3bDN、RabG3bRNAi、atg5−1、及びbri1−301植物体において抽薹時間を示す図である。実験は、類似の結果(n=10)を有し、3回繰り返し行った。
【図15】WT、RabG3bCA、RabG3bDN、RabG3bRNAi、atg5−1、及びbri1−301植物体において抽薹の全体の葉数を示す図である。 実験は、類似の結果(n=10)を有し、3回繰り返し行った。
【図16】RabG3bCA植物体の花序の茎の断面で細胞計数の例を示す図である。後生木部と原形木部細胞をそれぞれ桃色及び緑色で表した。 バー=50μm。
【図17】WT、RabG3bCA、RabG3bDN、RabG3bRNAi、atg5−1、及びbri1−301植物体において木部発生を示す図である。 (a)−(f)は、フロログルシノール−HClで染色されたリグニン化された木部細胞を示す6週齢植物体の花序の茎の断面。バー=0.2mm。 (g)−(l)は、リグニン自己蛍光により同定されたリグニン化された木部細胞を示す6週齢植物体の花序の茎の断面。バー=20μm。
【図18】WT植物体の花序の茎においてRabG3bの免疫位置づけを示す図である。 6週齢WT植物体の花序の茎の下端部で断面をRabG3bタンパク質の免疫位置づけに用いた。陰性対照群は、免疫前の血清をラベルとして用いた。矢じりは、RabG3bに結合された金粒子を表す。CW、細胞壁;V、液胞。バー=1μm((a)−(d))及び0.2μm((e)−(p))。
【図19】WT、RabG3bCA、RabG3bDN、RabG3bRNAi、atg5−1、及びbri1−301植物体において培養された細胞のTE分化を示す図である。 (a)−(l)は、TE分化培養細胞の顕微鏡写真。培養された細胞は、BL/H3BO3処理0日((a)−(f))及び4日((g)−(l))後、トルイジンブルーで染色した。バー=10μm。
【図20】WT、RabG3bCA、RabG3bDN、RabG3bRNAi、atg5−1、及びbri1−301植物体で培養された細胞のTE分化を示す図である。 (a)−(l)は、培養された細胞においてリグニン化されたTE。培養された細胞は、BL/H3BO3処理0日((a)−(f))及び7日((g)−(l))後、フロログルシノール−HClで染色した。バー=0.1mm。
【図21】TE分化中に2次細胞壁関連遺伝子の発現分析を示す図である。 結果を独立した3回の実験の平均±SEで示す。
【図22】TE分化中にPCD関連遺伝子の発現分析を示す図である。 結果を独立した3回実験の平均±SEで示す。
【図23(a)】TE分化中に維管束系関連転写因子の発現分析を示す図である。結果を独立した3回の実験の平均±SEで示す。 (a)は、BL/H3BO3で処理されたWT培養細胞において維管束系関連転写因子の相対的発現を示す。
【図23(b)】TE分化中に維管束系関連転写因子の発現分析を示す図である。結果を独立した3回の実験の平均±SEで示す。 (b)は、BL/H3BO3で処理されたWT、RabG3bCA、及びatg5−1の培養細胞において維管束系関連転写因子遺伝子(AtHB8、REV、及びVND7)の相対的発現を示す。
【図24(a)】TE分化中にBR関連遺伝子の発現分析を示す図である。結果を独立した3回の実験の平均±SEで示す。 (a)は、BL/H3BO3で処理されたWT培養細胞においてBR関連遺伝子の相対的発現を示す。
【図24(b)】TE分化中にBR関連遺伝子の発現分析を示す図である。結果を独立した3回の実験の平均±SEで示す。 (b)は、BL/H3BO3で処理されたWT、RabG3bCA、及びatg5−1の培養細胞でBR関連遺伝子(BRI1、BRL1、BRL2、及びBRL3)の相対的発現を示す。
【図25】TE分化中にATG8e遺伝子の発現分析を示す図である。 全体のRNAを、記載された時間の間、BL/H3BO3で処理されたWT、RabG3bCA、及びatg5−1の培養細胞から抽出し、リアルタイムでのqRT−PCR分析を行った。結果を独立した3回の実験の平均±SEで示す。
【図26】本発明の発現ベクターの開裂地図を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0071】
以下、非限定的な実施形態に基づいて本発明をより詳細に説明する。ただし、下記の実施形態は、本発明を例示するための意図で記載されたものであって、本発明の範囲は、下記の実施形態により制限されるものではない。
実施例1:植物材料及び成長条件
シロイヌナズナ植物を長周期条件(16−h明/8−h暗の周期下、24℃成長室で成長させた。アラビドプシスカルスは、誘導培地(Murashige and Skoog[MS]培地、pH5.8、3%スクロース、0.8%寒天及び2mg/lの2,4−ジクロロフェノキシ酢酸[2,4−D])上に若い苗木の子葉から生成した。懸濁細胞の培養は、3%スクロース及び1mg/lの2,4−Dが補なわれた50mlのMS培地で1〜2gのカルスを接種して開始し、24℃暗条件下で振とうしてサブ培養した。TE誘導のために、サブ培養された細胞を1μMのBL及び10mMのH3BO3を含有する2,4−D欠乏の新鮮培地に移した。部分標本(Aliquots)を、追加分析のために、所与の時期に取った。砂糖欠乏を誘導するために、MS(1%スクロース)培地上に成長した1週齢の苗木を砂糖のないMS培地に移し、暗条件下で成長させた。植物を移した後、0、1、及び2日後に取った。
実施例2:RabG3bノックダウン植物の生成
RabG3bのアグリコーラ(Agrikola)RNAiノックダウンデリバリークローン(CATMA1a21795)をNottingham Arabidopsis Stock Centre(NASC)から入手した。その構造を、アグロバクテリウムツメファシエンス菌株GV3101を用いて、真空浸透によりアラビドプシスに形質転換した(Clough and Bent、1998)。形質転換体(T1)をBASTA抵抗性に基づいて選別した。T3同型接合体を回収し、RabG3b発現の減少に対してテストを行った。2つの独立したライン(#1−2及び#3−16)の追加分析のために使用した。
実施例3:RNA分析
定量的リアルタイムでのRT−PCRをLightCycler480システム(Roche)でKAPA SYBR FAST qPCRを用いて行った。PCR反応は、製造業者のプロトコールによって行われた。本発明に使用された遺伝子特異的なプライマーは表1に示した。テストされた遺伝子の発現をUBQ5の持続的な発現レベルで標準化し、2−ΔΔt方法(Livak and Schmittgen、2001)を用いて計算された。実験は、生物学的に独立したサンプルで、少なくとも3回繰り返し行った。
【0072】
【表1】
【0073】
【0074】
実施例4:組織化学分析
植物サンプル(培養された細胞及び7週齢植物の花序の茎)を0.1Mリン酸緩衝液(pH7.4)内の2.5%グルタルアルデヒド及び4%パラホルムアルデヒドを含む溶液で、4℃で4時間固定し、0.1Mリン酸緩衝液(pH7.4)で洗い流し、常温で2時間、1%OsO4で固定した。0.1M緩衝液で洗い流した後、サンプルを脱水し、LRホワイトレジン(London Resin)に充填した。
【0075】
断面(1μm)を、超ミクロトーム(RMC MT X)を用いて製造し、ろ過した1%トルイジンブルーで短く染色した。これらの断面を光顕微鏡(Olympus、BX51TRF)を用いて撮影し、イメージを、茎の厚さを測定し、維管束(n=10)内の原生木部及び後生木部細胞を計数するために用いた。
【0076】
TEM分析のために、薄い断面(60〜70nm厚さ)を銅グリッド(1−GN、150メッシュ)上に収集し、酢酸ウラニル及びクエン酸鉛で染色し、TEM(Philips、Tecnai 12)で調査した。
【0077】
免疫位置づけのために、ニッケルグリッド上で収集された断面を、BSA−TBS緩衝液(500mMのNaCl、1%のBSA、0.3%のTween20、及び10mMのTris−HCl、pH7.4)で1時間ブロックした。その後、断面を、抗RabG3b抗血清(ラビット)及び/または抗ATG8e抗血清(ラット)で、常温で4時間培養した。BSA−TBSで洗い流した後、1次抗体結合を、抗ラビットIgG (20−nm金、Electron Microscopy Sciences)及び抗ラットIgG(1−nm金、Sigma)を用いて検出した。BSA−TBS及び脱イオン水で洗浄後、サンプルをTEM分析前に酢酸ウラニルで染色した。
実施例5:リグニン染色
リグニン染色は、Pomar、F.,等(2002)Protoplasma220、17−28に記載されたように行った。花序の茎を染色するために、6週齢植物から花序の茎の中央部からの断面をカミソリで切断して製造した。断面及び培養された細胞をフロログルシノール溶液(2%エタノール/水、95/5(v/v))で1分染色し、6NのHClに浸した。細胞培養サンプル及び染色された花序の茎サンプルの明視野(Bright field)写真は、それぞれ双眼顕微鏡(Leica EZ4D)及び光顕微鏡(Olympus、BX51TRF)を用いて収集した。リグニンの自己蛍光を、共焦点顕微鏡(Zeiss LSM 510 META)を用いて420/480 nm励起/発光で検出した。
実施例6:LTG染色
LTG染色は、Liu、Y.,等(2005)Cell、121、567−577に記載されたように行った。培養された細胞を、1μMのLTG DND−26(Molecular Probes)で、暗条件で1時間培養した。イメージを、488/505nm励起/発光で、共焦点顕微鏡(Zeiss LSM 510 META)を用いて得た。
【技術分野】
【0001】
本発明は、RabG3b蛋白質を過発現させることにより、植物バイオマスを増加させる方法及び当該遺伝子を含むベクター、並びにそのベクターを含む形質転換植物体及びその形質転換植物体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
農業、園芸、バイオマス転換及び他の産業(例えば、製紙産業、蛋白質または他の化合物に対する生産因子としての植物)において、特に改善された植物は、分子技術を用いて収得可能である。例えば、作物栽培学の優れた有用性は、全体またはその任意の器官またはその任意の数の器官として植物の大きさを調節することから生じることができる。
【0003】
同様に、全体の植物の大きさ及び高さ、または植物の特定の部分、または成長速度、または苗木の生命力を制御することは、特定の産業においてより適切な植物の生産を可能とする。例えば、特定の農作物及び木の種における高さの減少は、より容易な収穫が可能なため有用である。代案的に、植物の増加した高さ及び厚さ、または器官の大きさ及び器官の数は、食品、飼料、燃料及び/または化学物質での処理に有用なより多くのバイオマスを提供することによって有効となり得る(エネルギー効率及び再生エネルギーに関する米国エネルギー部のウェブサイトを参照)。商業的に好ましい特性の別の例は、折花の茎の長さの増加、葉の大きさ及び形状の増加または変更及び種及び/または実の増進を含む。また、器官の大きさ、器官の数及びバイオマスにおける変化は、副生成物のような構成分子の重量における変化及び植物がこれらの化合物の製造への転換をもたらす。
【0004】
農耕科学、農業、作物学、園芸、及び森林科学分野の専門家及び研究者は、現在、増加している世界人口に食糧を供給し再生可能な原料の供給を保障するために、効能ある増加した成長を有する植物を探して生産するために、絶え間ない努力を重ねている。前記科学分野において高いレベルの研究は、集団において、食物、飼料、化学及びエネルギーの維持可能な供給源を提供するのに、全世界のすべての地理的環境及び気候において重要なリーダーのレベルであることを明示する。
【0005】
農作物性能の操作は、植物育種により、数世紀にわたって通常的に達成してきた。しかし、育種過程は、時間がかかり、労働集約的である。また、適切な育種プログラムは、各々の相対的な植物種に対して特異的に設計されなければならない。
【0006】
一方、優れた過程は、より良い農作物を提供するための植物を製作するために、分子遺伝学的なアプローチを試すのに用いられてきた。植物において組み換え核酸分子の導入及び発現により、研究者等は、現在、独特の地理学及び/または気候環境にもかかわらず、より効率よく成長し、より多くの産物を生産するために合わせられた植物種を有する集団を提供するための準備が整っている。このような新たなアプローチは、1つの植物種に限らず、複合的な他の植物種に適用可能であるという追加の利点がある(Zhang et al.(2004)Plant Physiol.135:615)。
【0007】
この過程にもかかわらず、現在、特定の環境条件に左右される特定の要求に合わせるための林業または農業の植物成長を改善させる一般的に適用可能な過程が高く要望されている。最後に、本発明は、植物が成長しなければならず、植物において組み換えDNA分子の発現により特定化される利益の追求及び特定の環境に左右される多様な農作物の利益を最大化するための植物の大きさ、器官の数、植物成長速度、植物構造及び/またはバイオマスを有用に操作することに関するものである。これらの分子は、植物自体に由来可能であり、単に高いか低いレベルで発現したり、分子が他の植物種に由来可能である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記の問題を解決し、上記の必要性によりなされたものであって、本発明の目的は、植物バイオマスの増加に関与するタンパク質を提供することである。
【0009】
また、本発明の他の目的は、植物バイオマスの増加に関与する遺伝子を提供することである。
【0010】
さらに、本発明のさらに他の目的は、前記遺伝子を用いた植物バイオマスの増加方法を提供することである。
【0011】
また、本発明のさらに他の目的は、前記遺伝子を含む形質転換植物の生産方法を提供することである。
【0012】
なお、本発明のさらなる目的は、前記形質転換植物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記の目的を達成するために、本発明は、小さいGTP結合タンパク質であるRabG3bタンパク質またはそのタンパク質の突然変異体及びそのタンパク質またはその突然変異体をコード化する遺伝子を過発現させることにより、植物バイオマスを増加させる方法を提供する。
【0014】
本願において、「バイオマス」は、対象の産物を含む有用な生物学的物質を言及し、この物質は、対象の産物を分離または濃縮する追加の過程で意図的に回収される。「バイオマス」は、実またはその部分または種、葉、または茎または根を含むことができ、ここで、これらは、産業的目的について特に関心のある植物の部分である。植物物質について言及したように、「バイオマス」は、対象の産物を含むか、または植物の任意の構造を含む。
【0015】
本願において、「形質転換」は、これを実行可能な手段の例を下記に述べ、アグロバクテリウム(Agrobacterium)を介した形質転換[双子葉植物の形質転換(Needleman及びWunsch(1970)J Mol.Biol 48:443;Pearson及びLipman(1988)Proc.Natl.Acad.Sci.(USA)85:2444)、単子葉植物の形質転換(Yamauchi et al.(1996)Plant Mol Biol.30:321−9;Xu et al.(1995)Plant Mol.Biol.27:237;Yamamoto et al.(1991)Plant Cell 3:371)]、及び生物学的(biolistic)方法(P.Tijessen、「Hybridization with Nucleic Acid Probes」In Laboratory Techniques in Biochemistry及びMolecular Biology、P.C.vand der Vliet、ed.,c.1993 by Elsevier、Amsterdam)、電気穿孔法、インプランタ(in planta)技術などを含む。外因性核酸を含む植物は、本願においては、第1の遺伝子導入植物については「T0」、第1の世代については「T1」として言及される。
【0016】
本発明の一具体例において、使用されたRabG3bタンパク質またはそのタンパク質をコード化する遺伝子配列は、シロイヌナズナ(arabidopsis thaliana)に由来するものであるが、関心の対象である異なる種からのRabG3b遺伝子または偽遺伝子も使用することができる。
【0017】
本発明の一具体例において、前記RabG3bタンパク質は、配列番号1に記載のアミノ酸配列を有することが好ましいが、配列番号1に記載のアミノ酸配列のいずれか1つ以上のアミノ酸を、置換、欠失、付加などの方法により突然変異させ、本発明が目的とするバイオマスの増加効果を有するすべての突然変異体が本発明の範囲内に属し、その例は、配列番号1に記載のアミノ酸のうち67番残基を、グルタミンからロイシンに置換した配列を有する突然変異体である。
【0018】
本発明は、前記本発明のタンパク質またはその突然変異体をコード化する遺伝子は、配列番号2または配列番号3に記載の核酸配列と実質的な同一性を有することが好ましいが、これに限定されない。
【0019】
本発明において、ポリヌクレオチド配列の「実質的な同一性」という用語は、ポリヌクレオチドが標準パラメータを用い、下記のプログラムを用いて、参照配列と比較して60%以上の配列同一性、通常は70%以上、より通常は80%以上、及び最も好ましくは、90%以上の配列同一性を有する配列を含むことを意味する。当該分野の熟練者は、これらの値が、コドン縮重、アミノ酸類似性、読取フレームの位置づけなどを考慮し、2つのヌクレオチド配列により暗号化されたタンパク質の相応する同一性を測定するように、適切に調節できることを認識するはずである。
【0020】
配列同一性パーセント及び配列類似性を測定するのに適したアルゴリズムの例は、文献(参照:Altschul et al.,J.Mol.Biol.215:403−410、1990)に記載されたブラスト(BLAST)アルゴリズムである。ブラスト分析を行うためのソフトウェアは、国立生物学情報センター(National Center for Biotechnology Information)のウェブサイトより利用可能である。
【0021】
本発明の一具体例において、前記遺伝子の発現は、プロモーターの調節下にあることが好ましい。
【0022】
本発明に記載された方法を用いて植物バイオマスの増加に関連する遺伝子に作動的に連結させて発現させるのに適したプロモーターは、形質転換される植物の同一種からまたは異種からのものを使用することができる。また、プロモーターは、本発明の遺伝子に対して同一種に由来するか、または異種に由来することができる。また、本発明の方法に使用するためのプロモーターは、1つ以上の下記に記載されたのと共通する発現プロファイルを有するプロモーターの組み合わせを含むことができるキメラプロモーターを含むことができる。
【0023】
植物ゲノムDNAにおいてプロモーター領域を確認し特性化する方法は、当該分野の熟練者に周知であり、例えば、文献[参照:Jordano et al,Plant Cell 1:855−866、1989;Bustos et al.,Plant Cell 1:839−854、1989;Green et al.,EMBO J.7:4035−4044、1988;Meier et al.,Plant Cell 3:309−316、1991;及びZhang et al.,Plant Physiol.110:1069−1079、1996]に記載されている。
【0024】
このプロモーター配列の例は、アミノ酸パーミアーゼ遺伝子に対するプロモーター(AAP1)(例:シロイヌナズナからのAAP1プロモーター)(参照:Hirner et al.,Plant J.14:535−544、1998)、オレイン酸12−ヒドロキシラーゼ:デサチュラーゼ遺伝子に対するプロモーター(例:レスクレラフェンドレリからLFAH12に指名されたプロモーター)(参照:Broun et al.,Plant J.13:201−210、1998)、2S2アルブミン遺伝子に対するプロモーター(例:シロイヌナズナからの2S2プロモーター)(参照:Guerche et al.,Plant cell 2:469−478、1990)、脂肪酸エロンガーゼ遺伝子プロモーター(FAEl)(例:シロイヌナズナからのFAE1プロモーター)(参照:Rossak et al.,Plant Mol.Biol.46:717−715、2001)、及び葉状の子葉遺伝子プロモーター(LEC2)(例:シロイヌナズナからのLEC2プロモーター)(参照:Kroj et al Development 130:6065−6073、2003)を含む。また、本発明の一実施例で使用されたCaMv(cauliflower mosaic virus)35Sプロモーターも含むことができる。
【0025】
また、本発明は、植物バイオマス関連遺伝子の発現を促進可能な1つ以上の調節遺伝子に作動的に連結されたRabG3b遺伝子を暗号化する核酸配列を含む植物バイオマス増進用発現ベクターを提供する。
【0026】
本発明において、「ベクター」または「発現ベクター」は、外因性DNAにこれを挿入可能な、通常二本鎖のDNA鎖をいう。ベクターまたはレプリコンは、例えば、プラスミドまたはウイルスに由来可能である。ベクターは、宿主細胞内でベクターの自己複製を促進させる「レプリコン」ポリヌクレオチド配列を含む。また、当該技術に関し、「レプリコン」という用語は、宿主染色体内にベクター配列の組み換えを標的化したり、あるいはその他の促進させるポリヌクレオチド配列を含む。
【0027】
また、外因性DNAが初期に、例えば、DNAウイルスベクター内に挿入できるとしても、ウイルスベクターDNAの宿主細胞内への形質転換は、ウイルスDNAのウイルスRNAベクター分子内への転換をもたらすことができる。外因性DNAは、異種DNAと定義され、これは、例えば、ベクター分子を複製し、選別可能または選別可能なマーカーまたは形質転換遺伝子を暗号化する、宿主細胞内で天然的に発見されないDNAである異種DNAと定義される。ベクターは、外因性または異種DNAを適した宿主細胞内に伝達するために用いられる。宿主細胞内において、ベクターは、宿主染色体DNAとは独立してまたは一致しないように複製可能であり、いくつかのベクターコピー及びその挿入DNAを生成させることができる。
【0028】
また、ベクターは、外因性または異種DNAの宿主染色体内への挿入を標的化することができる。また、ベクターは、挿入DNAのmRNA分子への転写を許容したり、または挿入DNAの多数のコピーのRNAへの複製を誘発する必須成分を含むことができる。一部の発現ベクターは、追加でタンパク質分子内にmRNAの解読を許容する挿入DNAに近接した配列成分を含有する。したがって、多くのmRNA分子及び挿入DNAによって暗号化されたポリペプチドは迅速に合成可能である。
【0029】
本発明の「形質転換遺伝子ベクター」という用語は、DNAの挿入断片、すなわち、宿主細胞内でmRNA内に挿入されるか、またはRNAとして複製される「形質転換遺伝子」をいう。
【0030】
本発明において、「形質転換遺伝子」という用語は、RNAに転換される挿入DNA断片のみを意味するのではなく、RNAの転写または複製に必要なベクターの部位を意味する。また、形質転換遺伝子は、タンパク質を生産可能な開放読取フレームを含有するポリヌクレオチド配列を必須的に含む必要がない。
【0031】
本発明において、「形質転換された宿主細胞」、「形質転換された」及び「形質転換」という用語は、DNAの細胞内への導入をいう。細胞は「宿主細胞」と名づけられ、これは原核または真核細胞であり得る。代表的な原核宿主細胞は、各種大腸菌(E.coli)の菌株を含む。代表的な真核宿主細胞は、植物細胞(例:キャノーラ、綿花、カメリナ、アルファルファ、大豆、稲、燕麦、小麦、大麦、またはトウモロコシ細胞など)、酵母細胞、昆虫細胞または動物細胞である。導入されたDNAは、一般的に、DNAが挿入された断片を含有するベクターの形態である。導入されたDNA配列は、宿主細胞と同一種、または宿主細胞とは異なる種に由来するか、または、これは宿主種由来の一部のDNA及び一部の外因性DNAを含有するハイブリッドDNA配列であり得る。
【0032】
本発明において、「植物」という用語は、全体の植物、植物器官(例:葉、茎、花、根など)、種及び植物細胞(組織培養細胞を含む)及びこれらの子孫を含む。本発明の方法に使用可能な植物の群は、一般的に、単子葉植物及び双子葉植物の両方を含む形質転換技術に適用可能な高等植物の群、及び藻類のような特定の下等植物などと広範囲である。これは、倍数体、二倍体及び半数体を含む各種の倍数性レベルの植物を含む。
【0033】
本発明のRabG3bを過発現させる形質転換植物は、例えば、植物内にRabG3b遺伝子に作動的に連結されたプロモーターを暗号化する遺伝子転移ベクター(例:プラスミド、ウイルスなど)を形質感染させることによって収得可能である。
【0034】
通常、ベクターがプラスミドの場合、当該ベクターは、選別性マーカー遺伝子、例えば、カナマイシンへの耐性を暗号化するカナマイシン遺伝子を含む。植物形質転換の最も一般的な方法は、標的形質転換遺伝子を植物形質転換ベクター内にクローン化させた後、文献[参照:Hoeckeme et al.,(Nature 303:179−181、1983)]に記載されたように、ヘルパーTiプラスミドを含有するアグロバクテリウムツメファシエンス(Agrobacterium tumifaciens)内に形質転換させる。追加の方法は、例えば、文献(参照:Maloney et al.,Plant Cell Reports 8:238、1989)に記載されている。形質転換遺伝子ベクターを含有するアグロバクテリウム細胞は、文献(参照:An et al.,Plant Physiol.81:301−305、1986;Hooykaas、Plant Mol.Biol.13:327−336、1989)に記載されたように形質転換される植物の葉断片と共に培養することができる。培養された植物宿主細胞の形質転換は、通常、前述したように、アグロバクテリウムツメファシエンスにより達成することができる。堅い細胞膜障壁を有さない宿主細胞の培養物は、一般的に、元々、文献(参照:Graham et al.,Virology 52:546、1978)に記載されており、文献(参照:Sambrook et al.,Molecular Cloning:A Laboratory Manual(2nd Ed.,1989 Cold Spring Harbor Laboratory Press、New York、NY))に記載されたように変形されたリン酸カルシウム方法を用いて形質転換させる。しかし、ポリブレン(参照:Kawai et al.,Mol.Cell.Biol.4:1172、1984)、原形質融合(参照:Schaffner、Proc.Natl.Acad.Sci.USA77:2163、1980)、電気穿孔(参照:Neumann et al.,EMBO J.1:841、1982)、及び核内への直接的な微細注射(参照:Capecchi、Cell 22:479、1980)のように、DNAを細胞内に導入するための他の方法も用いることができる。形質転換された植物細胞は、細胞を、例えば、カナマイシンと、適切な量の、カルス(callus)及び若枝部(shoot)を誘導するためのナフタレン酢酸及びベンジルアデニンのような光ホルモンを含有する培地上で成長させ、選別可能なマーカーにより選別することができる。その後、植物細胞を再生させて収得される植物は、当該分野の熟練者に公知の技術を用いて土壌に移すことができる。
【0035】
前述した方法のほか、クローン化DNAを裸子植物、胞子植物、単子葉及び双子葉植物を含む広範囲な植物種内に移すための複数の方法が当該分野に広く公知されている[参照:Glick and Thompson、eds.,Methods in Plant Molecular Biology and Biotechnology、CRC Press、Boca Raton、Florida、1993;Vasil、Plant Mol.Biol、25:925−937、1994;and Komai et al.,Current Opinions Plant Biol.1:161−165、1998(一般的な検討);Loopstra et al.,Plant Mol.Biol.15:1−9、1990;及びBrasileiro et al.,Plant Mol.Biol.17:441−452、1990(木の形質転換);Eimert et al.,Plant Mol.Biol.19:485−490、1992(ブラシカ(brassica)の形質転換);Hiei et al.,Plant J.6:271−282、1994;Hiei et al.,Plant Mol Biol.35:205−218、1997;Chan et al.,Plant Mol.Biol.22:491−506、1993;米国特許第5,516,668号及び第5,824,857号(稲の形質転換);及び米国特許第5,955,362号(小麦の形質転換);第5,969,213号(単子葉植物の形質転換);第5,780,798号(トウモロコシの形質転換);第5,959,179号及び第5,914,451号(大豆の形質転換)]。
【0036】
代表例は、原形質体による電気穿孔促進されたDNA吸収(参照:Rhodes et al.,Science 240:204−207、1988;Bates、Meth.MoL Biol.111:359−366、1999;DΗalluin et al.,Meth.MoL Biol.111:367−373、1999;米国特許第5,914,451号);ポリエチレングリコールを使用した原形質体の処理(参照:Lyznik et al.,Plant Mol.Biol.13:151−161、1989;Datta et al.,Meth.Mol.Biol.,111:335−334、1999);及びDNAを含む微細発射を用いた細胞の衝撃(bombardment)(参照:Klein et al.,Plant Physiol.91:440−444、1989;Boynton et al.,Science 240:1534−1538、1988;Register et al.,Plant MoL Biol.25:951−961、1994;Barcelo et al.,Plant J.5:583−592、1994;Vasil et al.,Meth.Mol.Biol.111:349−358、1999;Christou、Plant MoL Biol.35:197−203、1997;Finer et al.,Curr.Top.Microbiol.Immunol.240:59−80、1999)を含む。追加的に、植物形質転換ステップ及び技術は、文献(参照:Birch、Ann.Rev.Plant Phys.Plant MoL Biol.48:297、1997;Forester et al.,Exp.Agric.33:15−33、1997)で探すことができる。若干の変異は、当該技術が広範囲な植物種に適用可能である。
【0037】
単子葉植物形質転換の場合、粒子衝撃は、通常、選別方法である。しかし、トウモロコシのような単子葉植物は、米国特許第5,591,616号に記載されたようなアグロバクテリウム形質転換方法を用いて形質転換させることができる。
【0038】
単子葉植物、例えば、トウモロコシ形質転換を行うための他の方法は、胚形成懸濁液培養物からの細胞を繊維懸濁液[5%w/v、シラーSC−9ウィスカー(Silar SC−9 whiskers)]及びプラスミドDNA(1μg/μl)を混合した後、これをボルテックスジェニーII(Vortex GENIE II)ボールテックスミキサ[米国、ニューヨーク・ボヘミア所在のScientific Industries社製造]上の多数のサンプルヘッド内に直接置いたり、またはMIXOMAT歯のアマルガムミキサ[dental amalgam mixer;カナダ・オンタリオ・バーリントン所在ののDegussa Canada社製造]のホルダ内に水平に置くのである。その後、形質転換は約60秒(例えば、ボルテックスジェニーIIを用いる)の最高速度で混合したり、または1秒(MIXOMAT)間固定速度で振とうさせて行うことができる。当該過程により安定した形質転換体が選別可能な細胞集団が生産される。植物は安定的に形質転換されたカルスから再生され、これらの植物及びこれらの子孫は、サザンハイブリッド化分析により形質転換されたことが明らかになった。
【0039】
植物細胞、特に、トウモロコシの形質転換のための毛の使用は、例えば、米国特許第5,464,765号に記載されている。米国特許第5,968,830号は、大豆を形質転換させて再生させる方法を記載している。米国特許第5,969,215号は、サトウダイコンのような形質転換されたベターバルガリス(Beta vulgaris)植物を生産するための形質転換技術を記載している。
【0040】
各々の前記形質転換技術は利点・欠点を有する。各々の技術において、プラスミドからのDNAを遺伝子操作することにより、これが目的の遺伝子だけでなく、選別可能でふるい分け可能なマーカー遺伝子も含有するようにする。ふるい分け可能なマーカー遺伝子を用いてプラスミドの統合されたコピー(当該作製物は、目的の遺伝子及び選別可能な遺伝子が単位として形質転換されるようにする)を有する細胞のみを選別するのに用いられる。選別可能な遺伝子は、目的の遺伝子を有する細胞のみを成功的に培養するための他の点検を提供する。
【0041】
抗生剤耐性の選別可能なマーカーを用いた伝統的なアグロバクテリウム形質転換は、このような植物が動物及び人に対して抗生剤耐性を拡散させる過度の危険性を含むために問題となり得る。このような抗生剤マーカーは、植物を米国特許第5,731,179号に記載されたのと類似のアグロバクテリウム技術を用いた形質転換植物により、植物から除去可能である。抗生剤耐性問題は、米国特許第5,712,135号に記載されたようなバーまたはパット(pat)の暗号化配列を用いて効果的に避けることができる。このような好ましいマーカーDNAは、グルタミンシンテターゼ抑制剤、除草剤、ホスフィノスリシン(グルホシネート)及びグルホシネートアンモニウム塩(Basta、Ignite)の作用を抑制させたり中和させる第2タンパク質またはポリペプチドを暗号化する。
【0042】
1つ以上の前記遺伝子を含有するプラスミドは、前述した技術のいずれか1つにより植物原形質体またはカルス内に導入させる。マーカー遺伝子が選別可能な遺伝子の場合、DNAパッケージが混入された細胞のみが適切な植物毒素剤を使用した選別下に生存する。適切な細胞が確認されて増殖されると、植物が再生される。形質転換された植物からの子孫をテストすることにより、DNAパッケージが植物ゲノム内に成功的に統合されたことを確認しなければならない。
【0043】
形質転換の成功に影響を及ぼす複数の因子が存在する。外因性遺伝子作製物の設計及び作製、及びこれの調節成分は、外因性配列の植物核の染色体DNA内への統合及び細胞により発現する形質転換遺伝子の能力に影響を及ぼす。外因性遺伝子作製物を植物細胞核内に非致命的な方法で導入させるのに適した方法は必須的である。重要な点は、全体の植物が回収される場合に作製物が導入される細胞の類型が再生に対して補正可能な類型であるため、適切な再生プロトコールを提供しなければならないという点である。
【0044】
また、原核細胞は、本発明の初期のクローン化段階のための宿主細胞として使用可能である。方法、ベクター、プラスミド及び宿主細胞システムは、このような初期のクローン化及び拡張段階に使用可能な当該分野における熟練者に周知であり、本願では記載しないものとする。
【0045】
本発明の他の具体例において、プロモーターは、当該分野の熟練者に公知の方法を用いて形質転換される植物でRabG3bのような植物バイオマス増加関連遺伝子を暗号化する遺伝子に作動的に連結させることができる。プロモーターの挿入は、遺伝子形質転換植物の発達する種において遺伝子の発現を許容するはずである。
【0046】
本発明の方法において、形質転換植物は、単子葉及び双子葉植物を含むが、これらに限定されない。これらのうち、関心の対象である植物は、キャノラ、トウモロコシ、綿花、小麦、稲、大豆、大麦及びその他の種生産植物、及びアルファルファなどを含むが、これらに限定されない、その他の植物を含み、農業的、工業的、その他の産業的に関心の対象であるもののすべてを含む。
【0047】
本明細書において、「異種配列」は、異なる種に由来するか、または同一種に由来する場合、元々の形態から実質的に変形されたオリゴヌクレオチド配列である。例えば、構造遺伝子に作動的に連結された異種プロモーターは、構造遺伝子とは異なる種に由来するか、または同一種の場合、元々の形態から実質的に変形されたものに由来する。
【0048】
本明細書において、「プライマー」は、核酸混成化により相補的標的DNA鎖にアニールされ、プライマーと標的DNA鎖の間に混成体(hybrid)を形成し、次に、重合酵素、例えば、DNA重合酵素により標的DAN鎖に沿って延長される、分離された核酸である。本発明のプライマー対は、例えば、重合体連鎖反応(PCR)または他の従来の核酸増幅方法による標的核酸配列を増幅するための前記使用を示す。
【0049】
プローブとプライマーを製造して使用する方法は、例えば、Molecular Cloning:A Laboratory Manual、2nd ed.,vol.1−3、ed.Sambrook et al.,Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor、NY、1989(以下、「Sambrook et al.,1989」);Current Protocols in Molecular Biology、ed.Ausubel et al.,Greene Publishing and Wiley−Interscience、New York、1992(周期的に改訂される)(以下、「Ausubel et al.,1992」);及びInnis et al.,PCR Protocols:A Guide to Methods and Applications、Academic Press:San Diego、1990に説明されている。PCR−プライマー対は、例えば、この目的のために開発されたPrimer(Version0.5、(C)1991、Whitehead Institute for Biomedical Research、Cambridge、MA)のようなコンピュータプログラムを用いて、公知の配列から導き出すことができる。
【0050】
核酸の増幅は、重合酵素連鎖反応(PCR)を含む当業界で公知の多様な核酸増幅方法のいかなるものも利用可能である。多様な増幅方法が当業者に公知されており、特に、米国特許第4,683,195号と第4,683,202号及びPCR Protocols:A Guide to Methods and Applications、ed.Innis et al.,Academic Press、San Diego、1990に説明されている。PCR増幅方法は、最大22kbのゲノムDNA及び最大42kbのバクテリオファージDNAを増幅する程度に発展している(Cheng et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 91:5695−5699、1994)。
【0051】
以下、本発明を説明する。
【0052】
木部の導管(tracheary element、以下「TE」という)は、植物維管束系の水を運ぶ木部として作用する。これを行うために、TEは、2次的な細胞壁の肥厚(thickening)及び細胞死を進行する。TEの細胞死は、自食による典型的な発生学的にプログラム化された細胞死である。しかし、TE分化において、自食に関する証拠は知られていない。本発明は、小さいGTP結合タンパク質であるRabG3bが自食作用によりTE分化に関与することを明らかにした。野生型TE細胞の分化は、アラビドプシス培養システムで自食を経験することを発見した。自食とTE分化の両方は、持続的に活性化突然変異体(RabG3bCA)の過発現により顕著に促進され、優性ネガティブ突然変異体(RabG3bDN)またはRabG3b RNAi、ブラシノステロイド(brassinosteroid)インセンティブ突然変異体bri1−301、及び自食突然変異体atg5−1を過発現する形質転換植物体で阻害された。この結果により、本発明は、TE分化中に自食が起き、自食の構成要素としてRabG3bはTE分化を調節することを示唆する。
【0053】
木部の発達、特に、導管細胞の分化の最後の段階に起きる細胞死は、木部の完成に非常に重要な過程であり、この過程により、細胞質のすべての内容物が分解され、中空の木部を形成できるからである。本発明で確認したのは、自食がこの発達過程の細胞死を促進させるということである。結局、自食に関与するRabG3bの活性化された形態であるRabG3bCAを過発現したとき、木部発達過程中に自食が増幅され、これによって細胞死が促進され、窮極的に植物茎の木部の発達が促進されるということである。
【0054】
本発明の重要性は、次のとおりである。
【0055】
木部は、木の木材層を構成する組織である。したがって、本発明の過発現したRabG3bCAを木に過発現させ、シロイヌナズナで観察された同じ形質(すなわち、木部の増大)を形成できる場合、これは、産業的に応用可能な非常に重要な形質になる。なぜなら、これは、木のバイオマスの増加を意味するからである。現在、ポプラやユーカリの木などが代表的な木材原料となっている。木材は、パルプ、ペーパーの主な原料であり、さらに、現在最も大きな懸案になっているバイオエタノール(次世代の代替エネルギー)の生産における重要な原料として注目されている。
【0056】
以下、本発明を詳細に説明する。
木部の分化に対するRabG3bの作用
小さいGTP結合タンパク質であるRabG3bは、プロテオーム分析によりサリチル酸反応タンパク質として同定された(Oh et al.,2005)。マイクロアレイ分析は、RabG3bがブラシノライド(BL)/H3BO3処理に反応して高く発現した(図12)。
【0057】
本発明では、(1)RabG3bがTE分化に関与するか否か、(2)RabG3bが自食に関与するか否か、及び(3)自食がTE分化に関与するか否かを調査した。
【0058】
RabG3bノックダウン植物体(RabG3bRNAi)を生成し、それは単にRabG3bの発現がテストされたRabG3系要素の中で減少し、RabG3bタンパク質がウェスタンブロット分析から分かるように検出されなかった(図13)。それぞれ持続的に活性を有する(CA)及び優性ネガティブ(DN)RabG3bCA及びRabG3bDNの2つの異なるRabG3b形質転換植物体を機能分析に用いた。また、維管束の欠失を示すBRインセンシティブ突然変異体bri1−301(Cano−Delgado、A.,等(2004)Development、131、5341−5351)、及び自食突然変異体atg5−1(Thompson、A.R.,等(2005)Plant Physiol.138、2097−2110)を使用した。
【0059】
植物の成長表現型を長周期条件(16/8h明/暗周期)下で調査した(図1)。顕著な表現型として、RabG3bCA植物は、すべての他のテストした植物体に比べて茎でより大きく成長し、WT植物体と比較して茎の肥厚が14%増加した(図1(b)、(c))。これに対し、atg5−1植物体は、WTより大きさがより短く、bri1−301植物体は、大きさが大きく減少したことを示した。抽薹(bolting)において、ロゼット葉の数と抽薹時間を決定した。RabG3bCA植物体は、他のものに比べて少し早く抽薹されたが(図14)、葉の数における顕著な差はテストした植物体の中では観察されなかった(図15)。この結果は、RabG3bCA植物体で観察された増加した茎の長さが開花時間の調節の変更というよりは、より早い茎の成長に起因することを示す。
【0060】
次に、維管束発達の変化と成長表現型間の可能な関連性を、3つの異なる位置からの花序(inflorescence)の茎の断面の組織分析により調査した(図2及び図3)。すべての植物の全体の維管束の表現型は正常であるのに対し、WTと比較して、木部細胞の数は、RabG3bCA花序の中間及び基底部で顕著に増加した(図2)。また、後生木部(metaxylem)及び原生木部(protoxylem)の2つの異なるタイプに分けられる木部細胞の数量化は、後生木部細胞がWTと比較してRabG3bCA植物体の維管束で大きく増加したことを示した(図3、図4及び図16)。
【0061】
これとは対照的に、RabG3bDN、RabG3bRNAi、及びatg5−1植物体は、花序の茎の基底部で原生木部及び後生木部とも数が大きく減少した。この結果は、増加した茎の成長は、RabG3bCA植物体で増加した木部の分化と関連があることを示す。また、atg5−1植物体において、木部細胞の減少は、ATG5及びATG5リンクされた自食が木部の分化に関連し得ることを示唆する。
【0062】
木部分化の指標である2次的な細胞壁の形成は、フロログルシノール−HClによるリグニン染色(図17(a)−(f))及びリグニンの自己蛍光(図17(g)−(l))により、花序の茎の断面で調査された。
【0063】
リグニン化された細胞壁は、WTと比較して、RabG3bCA植物体で膨張したが、RabG3bDN、RabG3bRNAi、bri1−301、及びatg5−1植物体ではやや減少した。
【0064】
花序の茎において、RabG3bの位置づけは、抗RabG3b抗体を使用した免疫金電子顕微鏡法によって調査した(図18)。RabG3bタンパク質は、主に、木部に位置している。皮層細胞において、金粒子が、原形質、液胞及び細胞壁を含む複数の位置で発見されたが(図18(e)−(h))、それらの原形質の内容物を欠失した木部TE細胞では、RabG3b免疫反応性が2次的細胞壁でのみ現れた(図18(m)−(p))。
木部分化中におけるRabG3bCA培養細胞でのTE形成の増加
木部の分化において、RabG3bの機能を定義するために、アラビドプシスs懸濁細胞の培養に対するインビトロ木部TE誘導システムを開発した。TE分化がBL及びH3BO3処理によって誘導されたとき、RabG3bCA細胞がTE誘導4日後、液胞の崩壊及び細胞内容物のロスを主に経験する(図19)。その後、WTと比較して、RabG3bCA細胞はTEでより顕著に発生した(図5)。対照的に、WTに比べて、RabG3bDN、RabG3bRNAi、atg5−1、及びbri1−301のTE誘導された培養で分化した細胞はほとんどなかった。強いリグニン染色は、RabG3bCA細胞で追加的に観察された(図20)。この結果は、RabG3bがTE分化でポジティブの役割を果たし、ATG5を介した自食もTE分化にポジティプな影響を与えることを示唆する。
TE分化中における自食の活性化
RabG3bが自食でその機能によりTE分化を調節するのかを決定するために、TE形成中に、自食の過程を酸性指向性染料LysoTracker Green(LTG)で自食胞/分解小体を染色して調査した(Via、L.E.,等(1998)J.Cell Sci.111、897−905)(図6)。TE誘導前、薄っすらと一部染色されたスポットを示すRabG3bCA細胞を除けば、テストされた植物の中でLTG染色された構造は検出されなかった(図6(a)−(e))。BL及びH3BO3処理は、WT細胞でLTG染色された自食胞/分解小体様構造の形成を誘導し、これは、RabG3bCA細胞で顕著に増加した(図6(k)−(l))。同一の誘導条件下において、LTG染色された構造は、RabG3bDN、RabG3bRNAi、またはatg5−1細胞で形成されなかった(図6(c)−(e)、(h)−(j)、(m)−(o))。これらの結果により、自食はTE分化中に発生し、これは、RabG3bのGTP結合形成により活性化可能であることが分かる。
TE分化中における数多くの自食構造を蓄積するRabG3bCA細胞
透過電子顕微鏡(TEM)分析は、TE分化中に細胞で微細構造的な変化を調査し、LTG染色結果を確認するために行った(図7)。非誘導細胞は、テストされた植物の間で形態学的な差がほとんどなかった(図7(a)−(e))。TE誘導に対して、BL/H3BO3処理4日後、WT細胞で細胞内容物の分解及び液胞の破壊が観察された(図7(f))。この時期の間、WT細胞は、分解される細胞構成要素を含む自食胞/分解小体様構造を示す(図7(f)、(p))。RabG3bCA細胞は、多数の自食胞/分解小体様構造を蓄積し、細胞器官及び細胞内容物のロスが速かに進行した(図7(g)、(q))。TE誘導7日後、RabG3bCA細胞は、成熟したTE細胞で完全に分解され、これは、空の原形質及び2次細胞壁の蓄積により証明され(図7(l))、WT細胞は、TE分化の最後の段階に向かって引き続き進行していた(図7(k))。対照的に、自食胞/分解小体様構造及びTE関連の形態学的な変化は、誘導期間中、RabG3bDN、RabG3bRNAi、またはatg5−1細胞では観察されなかった(図7(h)−(j)、(m)−(o))。
【0065】
TE分化過程中に、WT及びRabG3bCA細胞で自食構造の形成をさらに調査した(図8(a)−(h))。WT細胞は、前自食胞(preautophagosomal)構造または細胞膜(phagophores)を示し(図8(b))、自食胞/分解小体様構造を伴った(図8(c)、(d))。類似の自食構造がRabG3bCA細胞で観察されたが、WT細胞より早期に形成されてより豊富であった(図8(e)−(h))。原形質物質及び細胞小器官(例えば、ミトコンドリア)を含む多くの細胞膜がBL/H3BO3処理1日後に現れ(図8(e))、自食胞の蓄積は、2日後に処理されたRabG3bCA細胞で観察され、WT細胞では引き続き前自食胞構造が膨張していた。本発明者等は、追加的にRabG3bCA細胞で自食活性化が一般的な自食条件である栄養欠乏に対しても現れるのかをテストした(図8(i)−(p))。同様に、WT及びRabG3bCA細胞とも、砂糖欠乏に反応して自食形態を示し、WTに比べてRabG3bCA細胞で自食構造が時間的により早くそしてより豊富であった。この結果は、RabG3bが自食でポジティブ調節者であり、RabG3b活性化された自食は、細胞死の過程を促進してTE分化に寄与することを示唆する。
自食構造に位置するRabG3b
自食胞/分解小体構造に対するRabG3bタンパク質の位置づけは、TE誘導されたWT及びRabG3bCA細胞において、自食胞マーカータンパク質ATG8e及びRabG3bに対する抗血清を使用した免疫金EMによって分析した。WT及びRabG3bCA細胞とも、RabG3bタンパク質は、自食構造においてATG8eタンパク質と同時に位置づけられた(図9(a)−(d))。また、ATG8eタンパク質のレベルは、WTと比較してRabG3bCA細胞で増加し、BL/H3BO3処理されたRabG3bCA細胞で自食構造と大部分関連があり、さらに増加した(図9(e))。
自食及び木部分化関連遺伝子の発現分析
Genevestigatorでマイクロアレイデータにより、36の現在定義された自食遺伝子(ATGs)のうち、20以上がPCDまたはBL/H3BO3処理中に上方調節された。したがって、自食の複数の段階で関連する13ATG遺伝子が選択され、それらの発現レベルをTE分化中に調査した。テストされたATG遺伝子のうち9つは、顕著な増加は示していなかった(2倍以下)が、4つのATG遺伝子(ATG6、8g、18h、及びVPS34)は、BL/H3BO3処理に対して2倍以上上方調節され、これは、自食がTE分化に関与することをさらに裏付けるものである(図10(a))。また、TE分化の後期段階で特異的な2群の遺伝子の発現レベルを調査した(PCD関連遺伝子(BFN1、XCP1、AtXyn3、及びAtMC9)及び2次細胞壁関連遺伝子(IRX1、3、5、12、FRA8、CcOAOMT、及び4CL1)(図21及び22)。TE分化の初期段階を調節する維管束系関連転写因子遺伝子(AtHB8、AtHB15、PHB、PHV、REV、VND6、及びVND7)及びBR関連遺伝子(BRI1、BRL1、2、及び3)の発現も調査した(図23(a)及び図24(a))。多くのテストされた遺伝子の転写体レベルは、TE誘導に対して大きく増加した。
【0066】
上方調節されたATGs(ATG6、8g、18h、及びVPS34)の発現は、TE誘導中にWT、RabG3bCA、及びatg5−1cells細胞で比較し、複数の細胞株間に差は現れなかった(図10(b))。ATG8eタンパク質で大きな増加が未処理及びBL/H3BO3処理されたRabG3bCA細胞ですでに観察された(図9(e))ため、ATG8eの発現は、WT、RabG3bCA、及びatg5−1細胞で付加的に決定された(図25)。ATG8eの基底転写体のレベルは、WTよりRabG3bCA細胞でより高かった。
【0067】
上方調節されたPCD関連(AtMC9、XCP1、及びBFN1)、2次細胞壁関連(IRX1、5、12及びFRA8)、維管束系関連転写因子(AtHB8、REV、及びVND7)、及びBR関連(BRL2及びBRL3)遺伝子の発現は、WT、RabG3bCA、及びatg5−1細胞で調査した。テストされたPCD及び2次細胞壁関連遺伝子は、TE分化において、WTに比べてRabG3bCA細胞でより強く発現し(図11)、これは、PCD及び2次細胞壁の蓄積がRabG3bCA細胞で上方調節されることを示唆する。
【0068】
維管束系関連転写因子及びBR関連遺伝子の発現は、テストされた細胞間に顕著な差はなかった(図23(b)及び図24(b))。この結果は、RabG3bの機能が、初期の維管束の発生よりはTE分化後により重要であることを示す。
【発明の効果】
【0069】
本発明から分かるように、本発明のRabG3b遺伝子を過発現させた場合、野生型に比べてそのバイオマスが増加することを確認することができた。この効果は、RabG3bCA細胞において、GTP結合したRabG3bは、自食過程を持続的に活性化することができ、多数の自食胞及び分解小体の蓄積によって行う。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1(a)】WT、RabG3bCA、RabG3bDN、RabG3bRNAi、atg5−1、及びbri1−301植物体の表現型を示す図である。(a)は、WT、RabG3bCA、RabG3bDN、RabG3bRNAi、atg5−1、及びbri1−301植物体の成長表現型。6週齢植物体を撮影。
【図1(b)】WT、RabG3bCA、RabG3bDN、RabG3bRNAi、atg5−1、及びbri1−301植物体の表現型を示す図である。星印はWTとの留意的差を示す(tテスト;*P<0.05;**P<0.01;n=10)。実験は、類似の結果を有し、3回繰り返し行った。(b)は、(a)における植物体の茎の長さ。星印はWTとの留意的差を示す(tテスト;*P<0.05;**P<0.01;n=10)。実験は、類似の結果を有し、3回繰り返し行った。
【図1(c)】WT、RabG3bCA、RabG3bDN、RabG3bRNAi、atg5−1、及びbri1−301植物体の表現型を示す図である。星印はWTとの留意的差を示す(tテスト;*P<0.05;**P<0.01;n=10)。実験は、類似の結果を有し、3回繰り返し行った。(c)は、(a)の植物体の花序の茎の下端部で測定された茎の厚さ。
【図2】WT、RabG3bCA、RabG3bDN、RabG3bRNAi、atg5−1、及びbri1−301植物体において花序の茎の維管束組織の発生を示す図である。(a)−(r)は、トルイジンブルーで染色された6週齢のWT、RabG3bCA(#4−2)、RabG3bDN(#2−11)、RabG3bRNAi(#1−2)、atg5−1、及びbri1−301植物体から花序の茎の端((a)−(f))、中間((g)−(l))、及び基底((m)−(r))部位のレジン充填された横断面。Ic、維管束間形成層(interfascicular cambium);Pc、前形成層[(pro)cambium];Ph、師部;Xy、木部;Pi、髄(pith). バー=(a)−(f)で50μm、(g)−(r)で100μm。
【図3】WT、RabG3bCA、RabG3bDN、RabG3bRNAi、atg5−1、及びbri1−301植物体において花序の茎の維管束パターンを示す図である。(a)−(r)は、トルイジンブルーで染色された6週齢のWT、RabG3bCA(#4−2)、RabG3bDN(#2−11)、RabG3bRNAi(#1−2)、atg5−1、及びbri1−301植物体から花序の茎の端((a)−(f))、中間((g)−(l))、及び基底((m)−(r))部位のレジン充填された横断面。 Ic、維管束間形成層;Pc、前形成層[(pro)cambium];Ph、師部;Mx、後生木部;Px、原生木部;Pi、髄(pith)。 バー=(a)−(f)で20μm、(g)−(r)で50μm。
【図4】WT、RabG3bCA、RabG3bDN、RabG3bRNAi、atg5−1、及びbri1−301植物体において木部細胞の定量分析を示す図である。 (a)−(c)は、6週齢のWT、RabG3bCA(#4−2)、RabG3bDN(#2−11)、RabG3bRNAi(#1−2)、atg5−1、及びbri1−301植物体から花序の茎の端((a))、中間((b))及び基底((c))部位で原生木部及び後生木部細胞の数及びこれらの結合した木部細胞数の定量化を示す。 星印は各WT細胞との留意的差を示す(tテスト;*P<0.05;**P<0.01;***P<0.001;n=10)。
【図5】WT、RabG3bCA、RabG3bDN、RabG3bRNAi、atg5−1、及びbri1−301植物体において培養された細胞のTE分化を示す図である。 (a)−(f)は、TE分化培養された細胞の顕微鏡写真。2次的細胞壁の特性パターンを有する成熟したTEを星印で表した。バー=10μm。 (g)は、TE形成の定量分析。(a)−(f)でトルイジンブルー染色された培養細胞を撮影し、成熟したTEを、300−500細胞を含有する200μm2の面積で計数した。 結果を独立した3回の実験の平均±SEで示す。星印はWTとの留意的差を示す(tテスト;*P<0.01)。
【図6】TE分化する培養細胞において自食活性化を示す図である。 (a)−(o)は、WT、RabG3bCA(#4−2)、RabG3bDN(#2−11)、RabG3bRNAi(#1−2)、atg5−1、及びbri1−301植物体から培養された細胞で自食構造のLTG染色を示す。培養された細胞を、BL/H3BO3処理0((a)−(e))、2((f)−(j))、及び4((k)−(o))日後にLTG染色を行った。緑色のスポットは、自食胞/分解小体構造を示す。 バー=10μm。
【図7】TE分化する培養細胞において自食構造のTEMイメージを示す図である。 (a)−(o)は、WT、RabG3bCA(#4−2)、RabG3bDN(#2−11)、RabG3bRNAi(#1−2)、atg5−1、及びbri1−301植物体から培養された細胞で自食構造のLTG染色を示す。培養された細胞を、原形質のTEMイメージは、BL/H3BO3処理0((a)−(e))、2((f)−(j))、及び4((k)−(o))日後に撮影された。 (p)、(q)は、(f)及び(g)ボックスにおいて、イメージはそれぞれ(p)及び(q)で拡大される。 自食胞/分解小体様構造は矢印で表す。 バー=(a)−(o)で2μm、(p)、(q)で0.1μm。
【図8】TE分化及び砂糖欠乏に対するWT及びRabG3bCA細胞において自食構造のTEMイメージを示す図である。 (a)−(d)は、WT細胞において自食構造の形成に対するTE誘導の効果を示す。BL/H3BO3で1((a))、2((b))、及び4((c)、(d))日間処理されたWT培養細胞の原形質のTEMイメージを収集。 (e)−(h)は、RabG3bCA細胞において自食構造の形成に対するTE誘導の効果を示す。 BL/H3BO3で1((e))、2((f))、及び4((g)、(h))日間処理されたRabG3bCA培養細胞の原形質のTEMイメージを収集。 (i)−(l)は、WT細胞において自食構造の形成に対する砂糖欠乏の効果を示す。 砂糖欠乏後、0((i))、1((j))、及び2((k)、(l))日後、WT苗木の原形質のTEMイメージを収集。 (m)−(p)は、RabG3bCA細胞において自食構造の形成に対する砂糖欠乏の効果を示す。砂糖欠乏後、0((m))、1((n))、及び2((o)、(p))日後、RabG3bCA苗木の原形質のTEMイメージを収集。 M、ミトコンドリア;G、ゴルジ体;AL、自食胞/分解小体様構造;矢じり、前自食胞構造/隔離膜(phagophore);矢印、自食胞。バー=0.5μm。
【図9】自食構造においてRabG3b及びATG8eの同時位置づけを示す図である。 (a)−(d)は、BL/H3BO3で4日間処理された培養細胞においてRabG3b及びATG8eの同時位置づけに対する免疫金ラベリング。矢じり及び矢印は、それぞれRabG3b(20−nm金)及びATG8e(1−nm金)を示す。(a)及び(c)において、ボックスのイメージは(b)及び(d)で拡大される。 バー=(a)、(c)で0.2μm、(b)、(d)で0.1μm。 (e)BL/H3BO3で4日間処理または未処理のWT及びRabG3bCA培養細胞においてRabG3b及びATG8eタンパク質の定量分析。RabG3b及びATG8e金粒子は、(b)及び(d)で示すように、TEMイメージの1.5μm2の面積で計数された。結果を独立した6回の実験の平均±SEで示す。 星印は各WT細胞との留意的差を示す(tテスト;*P<0.05;**P<0.01;***P<0.001;n=10)。
【図10(a)】TE分化中に自食関連遺伝子の発現分析を示す図である。結果を独立した3回の実験の平均±SEで示す。 (a)は、BL/H3BO3で処理されたWT培養細胞においてATG遺伝子の相対的発現。
【図10(b)】TE分化中に自食関連遺伝子の発現分析を示す図である。結果を独立した3回の実験の平均±SEで示す。 (b)は、BL/H3BO3で処理されたWT、RabG3bCA、及びatg5−1培養細胞で選別されたATGs(ATG6、8g、18h、及びVPS34)遺伝子の相対的発現。
【図11(a)】TE分化中に2次細胞壁関連遺伝子及びPCD関連遺伝子の発現分析を示す図である。結果を独立した3回の実験の平均±SEで示す。 (a)、(b)は、BL/H3BO3で処理されたWT、RabG3bCA、及びatg5−1培養細胞で選別されたPCD関連(XCP1、AtMC9、及びBFN1) ((a))及び2次細胞壁関連(IRX1、5、12、及びFRA8)
【図11(b)】TE分化中に2次細胞壁関連遺伝子及びPCD関連遺伝子の発現分析を示す図である。結果を独立した3回の実験の平均±SEで示す。 (b)は、BL/H3BO3で処理されたWT、RabG3bCA、及びatg5−1培養細胞で選別されたPCD関連(XCP1、AtMC9、及びBFN1)((b))遺伝子の相対的発現。
【図12】EBL/H3BO3処理に対するアラビドプシスRabG遺伝子の発現分析を示す図である。1、RabG1 2、RabG2 3a、RabG3a 3b、RabG3b 3c、RabG3c 3d、RabG3d 3e、RabG3e 3f、RabG3fを意味する。
【図13(a)】WT及び2つの独立したRabG3bRNAiラインにおいてRabG3bの発現分析を示す図である。 (a)は、RabG3遺伝子系要素のRT−PCR分析。アクチンを対照群として使用する。
【図13(b)】WT及び2つの独立したRabG3bRNAiラインにおいてRabG3bの発現分析を示す図である。 (b)は、RabG3bタンパク質のウェスタンブロット分析。全体のタンパク質をSDS電気泳動により分離し、Ponceau S染色(下端)及びanti−RabG3b抗体でウェスタンブロット分析(上端)を行う。
【図14】WT、RabG3bCA、RabG3bDN、RabG3bRNAi、atg5−1、及びbri1−301植物体において抽薹時間を示す図である。実験は、類似の結果(n=10)を有し、3回繰り返し行った。
【図15】WT、RabG3bCA、RabG3bDN、RabG3bRNAi、atg5−1、及びbri1−301植物体において抽薹の全体の葉数を示す図である。 実験は、類似の結果(n=10)を有し、3回繰り返し行った。
【図16】RabG3bCA植物体の花序の茎の断面で細胞計数の例を示す図である。後生木部と原形木部細胞をそれぞれ桃色及び緑色で表した。 バー=50μm。
【図17】WT、RabG3bCA、RabG3bDN、RabG3bRNAi、atg5−1、及びbri1−301植物体において木部発生を示す図である。 (a)−(f)は、フロログルシノール−HClで染色されたリグニン化された木部細胞を示す6週齢植物体の花序の茎の断面。バー=0.2mm。 (g)−(l)は、リグニン自己蛍光により同定されたリグニン化された木部細胞を示す6週齢植物体の花序の茎の断面。バー=20μm。
【図18】WT植物体の花序の茎においてRabG3bの免疫位置づけを示す図である。 6週齢WT植物体の花序の茎の下端部で断面をRabG3bタンパク質の免疫位置づけに用いた。陰性対照群は、免疫前の血清をラベルとして用いた。矢じりは、RabG3bに結合された金粒子を表す。CW、細胞壁;V、液胞。バー=1μm((a)−(d))及び0.2μm((e)−(p))。
【図19】WT、RabG3bCA、RabG3bDN、RabG3bRNAi、atg5−1、及びbri1−301植物体において培養された細胞のTE分化を示す図である。 (a)−(l)は、TE分化培養細胞の顕微鏡写真。培養された細胞は、BL/H3BO3処理0日((a)−(f))及び4日((g)−(l))後、トルイジンブルーで染色した。バー=10μm。
【図20】WT、RabG3bCA、RabG3bDN、RabG3bRNAi、atg5−1、及びbri1−301植物体で培養された細胞のTE分化を示す図である。 (a)−(l)は、培養された細胞においてリグニン化されたTE。培養された細胞は、BL/H3BO3処理0日((a)−(f))及び7日((g)−(l))後、フロログルシノール−HClで染色した。バー=0.1mm。
【図21】TE分化中に2次細胞壁関連遺伝子の発現分析を示す図である。 結果を独立した3回の実験の平均±SEで示す。
【図22】TE分化中にPCD関連遺伝子の発現分析を示す図である。 結果を独立した3回実験の平均±SEで示す。
【図23(a)】TE分化中に維管束系関連転写因子の発現分析を示す図である。結果を独立した3回の実験の平均±SEで示す。 (a)は、BL/H3BO3で処理されたWT培養細胞において維管束系関連転写因子の相対的発現を示す。
【図23(b)】TE分化中に維管束系関連転写因子の発現分析を示す図である。結果を独立した3回の実験の平均±SEで示す。 (b)は、BL/H3BO3で処理されたWT、RabG3bCA、及びatg5−1の培養細胞において維管束系関連転写因子遺伝子(AtHB8、REV、及びVND7)の相対的発現を示す。
【図24(a)】TE分化中にBR関連遺伝子の発現分析を示す図である。結果を独立した3回の実験の平均±SEで示す。 (a)は、BL/H3BO3で処理されたWT培養細胞においてBR関連遺伝子の相対的発現を示す。
【図24(b)】TE分化中にBR関連遺伝子の発現分析を示す図である。結果を独立した3回の実験の平均±SEで示す。 (b)は、BL/H3BO3で処理されたWT、RabG3bCA、及びatg5−1の培養細胞でBR関連遺伝子(BRI1、BRL1、BRL2、及びBRL3)の相対的発現を示す。
【図25】TE分化中にATG8e遺伝子の発現分析を示す図である。 全体のRNAを、記載された時間の間、BL/H3BO3で処理されたWT、RabG3bCA、及びatg5−1の培養細胞から抽出し、リアルタイムでのqRT−PCR分析を行った。結果を独立した3回の実験の平均±SEで示す。
【図26】本発明の発現ベクターの開裂地図を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0071】
以下、非限定的な実施形態に基づいて本発明をより詳細に説明する。ただし、下記の実施形態は、本発明を例示するための意図で記載されたものであって、本発明の範囲は、下記の実施形態により制限されるものではない。
実施例1:植物材料及び成長条件
シロイヌナズナ植物を長周期条件(16−h明/8−h暗の周期下、24℃成長室で成長させた。アラビドプシスカルスは、誘導培地(Murashige and Skoog[MS]培地、pH5.8、3%スクロース、0.8%寒天及び2mg/lの2,4−ジクロロフェノキシ酢酸[2,4−D])上に若い苗木の子葉から生成した。懸濁細胞の培養は、3%スクロース及び1mg/lの2,4−Dが補なわれた50mlのMS培地で1〜2gのカルスを接種して開始し、24℃暗条件下で振とうしてサブ培養した。TE誘導のために、サブ培養された細胞を1μMのBL及び10mMのH3BO3を含有する2,4−D欠乏の新鮮培地に移した。部分標本(Aliquots)を、追加分析のために、所与の時期に取った。砂糖欠乏を誘導するために、MS(1%スクロース)培地上に成長した1週齢の苗木を砂糖のないMS培地に移し、暗条件下で成長させた。植物を移した後、0、1、及び2日後に取った。
実施例2:RabG3bノックダウン植物の生成
RabG3bのアグリコーラ(Agrikola)RNAiノックダウンデリバリークローン(CATMA1a21795)をNottingham Arabidopsis Stock Centre(NASC)から入手した。その構造を、アグロバクテリウムツメファシエンス菌株GV3101を用いて、真空浸透によりアラビドプシスに形質転換した(Clough and Bent、1998)。形質転換体(T1)をBASTA抵抗性に基づいて選別した。T3同型接合体を回収し、RabG3b発現の減少に対してテストを行った。2つの独立したライン(#1−2及び#3−16)の追加分析のために使用した。
実施例3:RNA分析
定量的リアルタイムでのRT−PCRをLightCycler480システム(Roche)でKAPA SYBR FAST qPCRを用いて行った。PCR反応は、製造業者のプロトコールによって行われた。本発明に使用された遺伝子特異的なプライマーは表1に示した。テストされた遺伝子の発現をUBQ5の持続的な発現レベルで標準化し、2−ΔΔt方法(Livak and Schmittgen、2001)を用いて計算された。実験は、生物学的に独立したサンプルで、少なくとも3回繰り返し行った。
【0072】
【表1】
【0073】
【0074】
実施例4:組織化学分析
植物サンプル(培養された細胞及び7週齢植物の花序の茎)を0.1Mリン酸緩衝液(pH7.4)内の2.5%グルタルアルデヒド及び4%パラホルムアルデヒドを含む溶液で、4℃で4時間固定し、0.1Mリン酸緩衝液(pH7.4)で洗い流し、常温で2時間、1%OsO4で固定した。0.1M緩衝液で洗い流した後、サンプルを脱水し、LRホワイトレジン(London Resin)に充填した。
【0075】
断面(1μm)を、超ミクロトーム(RMC MT X)を用いて製造し、ろ過した1%トルイジンブルーで短く染色した。これらの断面を光顕微鏡(Olympus、BX51TRF)を用いて撮影し、イメージを、茎の厚さを測定し、維管束(n=10)内の原生木部及び後生木部細胞を計数するために用いた。
【0076】
TEM分析のために、薄い断面(60〜70nm厚さ)を銅グリッド(1−GN、150メッシュ)上に収集し、酢酸ウラニル及びクエン酸鉛で染色し、TEM(Philips、Tecnai 12)で調査した。
【0077】
免疫位置づけのために、ニッケルグリッド上で収集された断面を、BSA−TBS緩衝液(500mMのNaCl、1%のBSA、0.3%のTween20、及び10mMのTris−HCl、pH7.4)で1時間ブロックした。その後、断面を、抗RabG3b抗血清(ラビット)及び/または抗ATG8e抗血清(ラット)で、常温で4時間培養した。BSA−TBSで洗い流した後、1次抗体結合を、抗ラビットIgG (20−nm金、Electron Microscopy Sciences)及び抗ラットIgG(1−nm金、Sigma)を用いて検出した。BSA−TBS及び脱イオン水で洗浄後、サンプルをTEM分析前に酢酸ウラニルで染色した。
実施例5:リグニン染色
リグニン染色は、Pomar、F.,等(2002)Protoplasma220、17−28に記載されたように行った。花序の茎を染色するために、6週齢植物から花序の茎の中央部からの断面をカミソリで切断して製造した。断面及び培養された細胞をフロログルシノール溶液(2%エタノール/水、95/5(v/v))で1分染色し、6NのHClに浸した。細胞培養サンプル及び染色された花序の茎サンプルの明視野(Bright field)写真は、それぞれ双眼顕微鏡(Leica EZ4D)及び光顕微鏡(Olympus、BX51TRF)を用いて収集した。リグニンの自己蛍光を、共焦点顕微鏡(Zeiss LSM 510 META)を用いて420/480 nm励起/発光で検出した。
実施例6:LTG染色
LTG染色は、Liu、Y.,等(2005)Cell、121、567−577に記載されたように行った。培養された細胞を、1μMのLTG DND−26(Molecular Probes)で、暗条件で1時間培養した。イメージを、488/505nm励起/発光で、共焦点顕微鏡(Zeiss LSM 510 META)を用いて得た。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
小さいGTP結合タンパク質であるRabG3bタンパク質またはそのタンパク質の突然変異体を過発現させることを特徴とする植物バイオマスの増加方法。
【請求項2】
前記RabG3bタンパク質は、配列番号1に記載のアミノ酸配列を有することを特徴とする請求項1に記載の植物バイオマスの増加方法。
【請求項3】
前記RabG3bタンパク質の突然変異体は、配列番号1に記載のアミノ酸のうち67番残基を、グルタミンからロイシンに置換した配列を有することを特徴とする請求項1に記載の植物バイオマスの増加方法。
【請求項4】
RabG3b遺伝子を過発現させることを特徴とする植物バイオマスの増加方法。
【請求項5】
前記RabG3b遺伝子は、配列番号2または配列番号3に記載の塩基配列を有することを特徴とする請求項4に記載の植物バイオマスの増加方法。
【請求項6】
前記増加は、植物の木部発達を調節して行うことを特徴とする請求項4に記載の植物バイオマスの増加方法。
【請求項7】
植物バイオマス関連遺伝子の発現を促進可能な1つ以上の調節遺伝子に作動的に連結されたRabG3b遺伝子を暗号化する核酸配列を含むことを特徴とする植物バイオマス増進用発現ベクター。
【請求項8】
前記RabG3b遺伝子は、配列番号2または配列番号3に記載の塩基配列を有することを特徴とする請求項7に記載の植物バイオマス増進用発現ベクター。
【請求項9】
前記発現ベクターは、図26に示す開裂地図を有することを特徴とする請求項7または8に記載の植物バイオマス増進用発現ベクター。
【請求項10】
(a)植物または植物細胞内に請求項7または8に記載の発現ベクターを導入させるステップと、
(b)前記発現ベクターを含む植物または植物細胞を植物バイオマスを増進する条件下に培養するステップとを含むことを特徴とする植物バイオマス増進用形質転換植物の製造方法。
【請求項11】
請求項7または8に記載の発現ベクターを含み、相応する野生型植物と比較して植物バイオマスが増加していることを特徴とする形質転換植物。
【請求項12】
前記植物は、全体の植物、植物器官、種、植物細胞またはこれらの子孫であることを特徴とする請求項11に記載の形質転換植物。
【請求項1】
小さいGTP結合タンパク質であるRabG3bタンパク質またはそのタンパク質の突然変異体を過発現させることを特徴とする植物バイオマスの増加方法。
【請求項2】
前記RabG3bタンパク質は、配列番号1に記載のアミノ酸配列を有することを特徴とする請求項1に記載の植物バイオマスの増加方法。
【請求項3】
前記RabG3bタンパク質の突然変異体は、配列番号1に記載のアミノ酸のうち67番残基を、グルタミンからロイシンに置換した配列を有することを特徴とする請求項1に記載の植物バイオマスの増加方法。
【請求項4】
RabG3b遺伝子を過発現させることを特徴とする植物バイオマスの増加方法。
【請求項5】
前記RabG3b遺伝子は、配列番号2または配列番号3に記載の塩基配列を有することを特徴とする請求項4に記載の植物バイオマスの増加方法。
【請求項6】
前記増加は、植物の木部発達を調節して行うことを特徴とする請求項4に記載の植物バイオマスの増加方法。
【請求項7】
植物バイオマス関連遺伝子の発現を促進可能な1つ以上の調節遺伝子に作動的に連結されたRabG3b遺伝子を暗号化する核酸配列を含むことを特徴とする植物バイオマス増進用発現ベクター。
【請求項8】
前記RabG3b遺伝子は、配列番号2または配列番号3に記載の塩基配列を有することを特徴とする請求項7に記載の植物バイオマス増進用発現ベクター。
【請求項9】
前記発現ベクターは、図26に示す開裂地図を有することを特徴とする請求項7または8に記載の植物バイオマス増進用発現ベクター。
【請求項10】
(a)植物または植物細胞内に請求項7または8に記載の発現ベクターを導入させるステップと、
(b)前記発現ベクターを含む植物または植物細胞を植物バイオマスを増進する条件下に培養するステップとを含むことを特徴とする植物バイオマス増進用形質転換植物の製造方法。
【請求項11】
請求項7または8に記載の発現ベクターを含み、相応する野生型植物と比較して植物バイオマスが増加していることを特徴とする形質転換植物。
【請求項12】
前記植物は、全体の植物、植物器官、種、植物細胞またはこれらの子孫であることを特徴とする請求項11に記載の形質転換植物。
【図1(a)】
【図1(b)】
【図1(c)】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10(a)】
【図10(b)】
【図11(a)】
【図11(b)】
【図12】
【図13(a)】
【図13(b)】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23(a)】
【図23(b)】
【図24(a)】
【図24(b)】
【図25】
【図26】
【図1(b)】
【図1(c)】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10(a)】
【図10(b)】
【図11(a)】
【図11(b)】
【図12】
【図13(a)】
【図13(b)】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23(a)】
【図23(b)】
【図24(a)】
【図24(b)】
【図25】
【図26】
【公開番号】特開2012−50424(P2012−50424A)
【公開日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−11343(P2011−11343)
【出願日】平成23年1月21日(2011.1.21)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 「PubMed」で当該公開情報が掲載されたページ、「The Plant Journal」のホームページのトップページ、同ホームページの当該公開情報が掲載されたページ、及び同ホームページの当該公開の内容が掲載されたページのプリントアウト
【出願人】(511019661)高麗大学産学協力団 (1)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年1月21日(2011.1.21)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 「PubMed」で当該公開情報が掲載されたページ、「The Plant Journal」のホームページのトップページ、同ホームページの当該公開情報が掲載されたページ、及び同ホームページの当該公開の内容が掲載されたページのプリントアウト
【出願人】(511019661)高麗大学産学協力団 (1)
【Fターム(参考)】
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