説明

植物の油脂生産性を増大させる遺伝子及びその利用方法

【課題】植物における油脂生産性を大幅に向上させる。
【解決手段】At1g36060遺伝子、At1g78080遺伝子及びAt1g22190遺伝子からなる群から選ばれる少なくとも1つの遺伝子若しくは当該遺伝子に機能的に等価な遺伝子を種子特異的プロモーターの制御下に導入する、又は内在する当該遺伝子のプロモーターを種子特異的プロモーターに改変する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所定の遺伝子を導入した、又は内在する当該遺伝子の発現制御領域を改変した植物体、及び所定の遺伝子を導入する又は内在する当該遺伝子の発現制御領域を改変することによる油脂生産性を増大させる方法、油脂生産性が増大した植物体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
植物は、その一部の組織自体(種子、根、葉茎など)を目的として栽培されたり、油脂などの種々の物質生産を目的として栽培されたりする。例えば、植物が生産する油脂としては、大豆油、ごま油、オリーブ油、椰子油、米油、綿実油、ひまわり油、コーン油、べに花油、パーム油及び菜種油等が古来より知られており、家庭用途や工業用途に広く利用されている。また、植物が生産する油脂は、バイオディーゼル燃料やバイオプラスチックの原料としても使用され、石油代替エネルギーとして適用性が広がっている。
【0003】
非特許文献1には、シロイヌナズナにおけるトリアシルグリセロール(TAG)合成遺伝子(DGAT1遺伝子)過剰発現株は種子における油脂含量及び種子重量の増加をもたらすことが報告されている。DGAT1遺伝子は、TAG合成の最終ステップの律速酵素の遺伝子である。DGAT1遺伝子の発現を活性化する転写因子などを同定できれば、種子における油脂貯蔵量を増大させることができ、油脂の生産性を向上できることが期待される。また、本技術を応用すればナタネなどの実用植物においても、油脂の生産性を向上できることが期待される。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Jako, C. et al, 2001 Plant Physiol., 126: 861-874
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、現在までDGAT1遺伝子の発現を活性化させるような技術は開発されておらず、DGAT1遺伝子の発現強化に基づく油脂の生産性向上技術は知られていなかった。そこで、上述したような実情に鑑み、植物における油脂生産性を大幅に向上させる新規な機能を有する遺伝子を探索し、植物における油脂生産性を大幅に増大できる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した目的を達成するため、本発明者らが鋭意検討した結果、特定の転写因子をコードする遺伝子を種子特異的プロモーターの制御下に導入する、又は内在する当該遺伝子のプロモーターを種子特異的プロモーターに改変することで、植物における油脂生産性を大幅に増大できるといった新規知見を見いだし、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、本発明に係る植物体は、At1g36060遺伝子、At1g78080遺伝子及びAt1g22190遺伝子からなる群から選ばれる少なくとも1つの遺伝子若しくは当該遺伝子に機能的に等価な遺伝子を種子特異的プロモーターの制御下に導入した、又は内在する当該遺伝子のプロモーターを種子特異的プロモーターに改変したものである。
【0008】
また、本発明に係る油脂生産性を増大させる方法は、At1g36060遺伝子、At1g78080遺伝子及びAt1g22190遺伝子からなる群から選ばれる少なくとも1つの遺伝子若しくは当該遺伝子に機能的に等価な遺伝子を種子特異的プロモーターの制御下に導入する、又は内在する当該遺伝子のプロモーターを種子特異的プロモーターに改変する方法である。
【0009】
さらに、本発明に係る植物体の製造方法は、At1g36060遺伝子、At1g78080遺伝子及びAt1g22190遺伝子からなる群から選ばれる少なくとも1つの遺伝子若しくは当該遺伝子に機能的に等価な遺伝子を種子特異的プロモーターの制御下に導入した、又は内在する当該遺伝子のプロモーターを種子特異的プロモーターに改変した形質転換植物を準備する工程と、前記形質転換植物の後代植物の油脂生産性を測定し、油脂生産性が有意に向上した系統を選抜する工程とを含む方法である。
【0010】
本発明において、上記遺伝子は、以下の(a)〜(c)のいずれかのタンパク質をコードするものであることが好ましい。
(a)配列番号2、4又は6に示すアミノ酸配列を含むタンパク質
(b)配列番号2、4又は6に示すアミノ酸配列において1又は複数個のアミノ酸が欠失、置換、付加又は挿入されたアミノ酸配列を含み、種子に特異的に発現し、DGAT1遺伝子の発現制御能を有するタンパク質
(c)配列番号1、3又は5に示す塩基配列の相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドに対してストリンジェントな条件下においてハイブリダイズするポリヌクレオチドによってコードされ、種子に特異的に発現し、種子内の種子合成に関与する機能を有するタンパク質
【0011】
また、本発明において、上記機能的に等価な遺伝子は、シロイヌナズナ以外の生物由来であって、種子に特異的に発現し、DGAT1遺伝子の発現制御能を有するタンパク質をコードする遺伝子を挙げることができる。
【0012】
本発明において、種子特異的プロモーターとしては、特に限定されず、貯蔵タンパク質遺伝子のプロモーター等を適宜使用することができる。種子特異的発現プロモーターとしては、例えば、ナタネのナピン(2Sアルブミン)遺伝子やクルシフェリン(11Sグロブリン)遺伝子、シロイヌナズナの2S(アルブミン)遺伝子、12S(グロブリン)遺伝子、イネのグルテリン遺伝子、グロブリン遺伝子、プロラミン遺伝子、ダイズのグロブリン遺伝子などの各植物種の主要種子貯蔵タンパク質遺伝子のプロモーターを挙げることができる。また種子の油脂貯蔵組織であるオイルボデイの構成タンパク質であるオレオシン遺伝子のプロモーターも、種子特異的プロモーターとして使用することができる。
【0013】
本発明において対象とする植物は、双子葉植物、例えばアブラナ科植物、アブラナ科植物の中でもシロイヌナズナやナタネを挙げることができる。一方、本発明において対象とする植物は、単子葉植物、例えばイネ科植物、イネ科植物の中でもイネやサトウキビを挙げることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る植物体は、野生型と比較して種子重量あたりの油脂含量が有意に増大するといった特徴を示すため油脂生産性が顕著に向上したものとなる。また、本発明に係る油脂生産性を増大させる方法は、対象とする植物の野生型と比較して、種子重量あたりの油脂含量を大幅に増大することができる。さらに、本発明に係る植物体の製造方法は、野生型と比較して油脂生産性が大幅に向上した植物体を製造することができる。したがって、本発明を適用することによって、例えば、植物に含まれる油脂を生産物としたときの生産性の向上を達成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】転写因子A2、A2L1及びA2L2をアミノ酸レベルでアライメント解析した結果を示す特性図である。
【図2】公開マイクロアレイデータよりA2遺伝子、A2L1遺伝子及びA2L2遺伝子の発現パターンを器官毎に解析した結果を示す特性図である。
【図3】公開マイクロアレイデータよりA2遺伝子、A2L1遺伝子及びA2L2遺伝子の発現パターンを種子登熟期毎に解析した結果を示す特性図である。
【図4】35Sプロモーターの制御下にA2遺伝子を発現する形質転換植物の葉におけるDGAT1遺伝子及びA2遺伝子のmRNA量を測定した結果を示す特性図である。
【図5】35Sプロモーターの制御下にA2遺伝子を発現する形質転換植物の種子に含まれるTAGを定量した結果を示す特性図である。
【図6】ナピン遺伝子の種子特異的プロモーターの制御下にA2遺伝子を発現する形質転換植物の写真及びLUC蛍光写真である。
【図7】ナピン遺伝子の種子特異的プロモーターの制御下にA2遺伝子を発現する形質転換植物の種子におけるDGAT1遺伝子及びA2遺伝子のmRNA量を測定した結果を示す特性図である。
【図8】ナピン遺伝子の種子特異的プロモーターの制御下にA2遺伝子を発現する形質転換植物の種子におけるTAGを定量した結果を示す特性図である。
【図9】A2遺伝子破壊株、A2L1遺伝子破壊株及びA2L2遺伝子破壊株におけるT-DNA挿入位置を示す概略構成図である。
【図10】A2遺伝子破壊株、A2L1遺伝子破壊株及びA2L2遺伝子破壊株におけるDGAT1遺伝子のmRNA量を測定した結果を示す特性図である。
【図11】A2遺伝子破壊株、A2L1遺伝子破壊株及びA2L2遺伝子破壊株の種子におけるTAGを定量した結果を示す特性図である。
【図12】DRE領域を有するDGAT1p::LUC又はDRE領域に変異を導入したシロイヌナズナ培養細胞において、A2遺伝子又はA2L2遺伝子を一過的に発現させたときのルシフェラーゼ蛍光を測定した結果を示す特性図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明に係る植物体は、シロイヌナズナにおけるAt1g36060遺伝子、At1g78080遺伝子及びAt1g22190遺伝子からなる群から選ばれる少なくとも1つの遺伝子若しくは当該遺伝子に機能的に等価な遺伝子を種子特異的プロモーターの発現制御下で植物体内に導入したもの、又は内在する当該遺伝子のプロモーターを種子特異的プロモーターに改変したものであり、野生型と比較して油脂生産性が有意に増大したものである。
【0017】
対象とする遺伝子を外来的に種子特異的プロモーターによる発現制御下で植物体内に導入するか、内在する遺伝子のプロモーターを種子特異的プロモーターに改変することによって、対象とする遺伝子の種子内発現量を野生型における種子内発現量と比較して有意に大とすることができる。
【0018】
ここで、油脂生産性が増大するとは、種子重量あたりに含まれる油脂量が増大すると言い換えることができる。すなわち、本発明に係る植物体は、At1g36060遺伝子、At1g78080遺伝子及びAt1g22190遺伝子からなる群から選ばれる少なくとも1つの遺伝子若しくは当該遺伝子に機能的に等価な遺伝子を植物体内に導入したもの、又は内在する当該遺伝子のプロモーターを種子特異的プロモーターに改変したものであり、野生型と比較して種子重量あたりに含まれる油脂量が有意に増大したものであると言い換えることができる。
【0019】
At1g36060遺伝子、At1g78080遺伝子及びAt1g22190遺伝子
At1g36060遺伝子、At1g78080遺伝子及びAt1g22190遺伝子におけるコーディング領域の塩基配列をそれぞれ配列番号1、3及び5に示し、At1g36060遺伝子、At1g78080遺伝子及びAt1g22190遺伝子によりコードされるタンパク質のアミノ酸配列をそれぞれ配列番号2、4及び6に示す。また、本発明において、これら遺伝子と機能的に等価な遺伝子とは、例えばシロイヌナズナ以外の生物由来であって、At1g36060遺伝子、At1g78080遺伝子又はAt1g22190遺伝子に相当する遺伝子の意味である。
【0020】
なお、これらAt1g36060遺伝子、At1g78080遺伝子及びAt1g22190遺伝子は、種子成熟後期にジアシルグリセロールアシルトランスフェラーゼ遺伝子(以下、DGAT遺伝子)と類似の発現パターンを示すDREBサブファミリーに属するAP2/ERF型転写因子をコードする。特に、At1g36060遺伝子、At1g78080遺伝子及びAt1g22190遺伝子は、それぞれAP2/ERF型転写因子A2、A2L1及びA2L2をコードしている。これらAP2/ERF型転写因子A2、A2L1及びA2L2は、後述する実施例に示すように、DGAT遺伝子における転写制御領域に含まれるDRE配列に結合して、DGAT1遺伝子の発現を正に制御する(すなわち、DGAT1遺伝子の発現を活性化する)。
【0021】
上記シロイヌナズナ以外の生物に由来するAt1g36060遺伝子、At1g78080遺伝子及びAt1g22190遺伝子と機能的に等価な遺伝子は、種々の生物に関する遺伝子配列を格納したデータベースを検索することで特定することができる。すなわち、配列番号1、3及び5に示した塩基配列又は配列番号2、4及び6に示した塩基配列をクエリー配列として、例えばDDBJ/EMBL/GenBank国際塩基配列データベースやSWISS-PROTデータベースを検索し、公知のデータベースから容易に検索・同定することができる。
【0022】
なお、本発明においてAt1g36060遺伝子、At1g78080遺伝子及びAt1g22190遺伝子としては、上述したような配列番号で特定される塩基配列及びアミノ酸配列からなる遺伝子に限定されるものではない。すなわち、At1g36060遺伝子、At1g78080遺伝子及びAt1g22190遺伝子としては、配列番号2、4及び6で特定されるアミノ酸配列において1又は複数個のアミノ酸配列が欠失、置換、付加又は挿入されたアミノ酸配列を含み、且つ、種子特異的に発現し、DGAT1遺伝子の発現制御能を有するタンパク質であっても良い。ここで、複数個のアミノ酸としては、例えば、1から40個、好ましくは1から20個、より好ましくは1から10個、さらに好ましくは1個から5個、特に好ましくは1個から3個を意味する。なお、アミノ酸の欠失、置換若しくは付加は、当該技術分野で公知の手法によって行うことができる。塩基配列に変異を導入するには、Kunkel法またはGapped duplex法等の公知手法又はこれに準ずる方法により行うことができ、例えば部位特異的突然変異誘発法を利用した変異導入用キット(例えばMutant-KやMutant-G(何れも商品名、TAKARA Bio社製))等を用いて、あるいはLA PCR in vitro Mutagenesisシリーズキット(商品名、TAKARA Bio社製)を用いて変異が導入される。また、変異導入方法としては、EMS(エチルメタンスルホン酸)、5-ブロモウラシル、2-アミノプリン、ヒドロキシルアミン、N-メチル-N’-ニトロ-Nニトロソグアニジン、その他の発ガン性化合物に代表されるような化学的変異剤を使用する方法でも良いし、X線、アルファ線、ベータ線、ガンマ線、イオンビームに代表されるような放射線処理や紫外線処理による方法でも良い。
【0023】
また、At1g36060遺伝子、At1g78080遺伝子及びAt1g22190遺伝子としては、上述したような配列番号で特定される塩基配列及びアミノ酸配列からなる遺伝子の相同遺伝子であってもよい。ここで、相同遺伝子とは、一般的に、共通の祖先遺伝子から進化分岐した遺伝子を意味しており、2種類の種の相同遺伝子(オルソログ(ortholog))及び同一種内で重複分岐により生じた相同遺伝子(パラログ(paralog))を含む意味である。換言すると、上述した「機能的に等価な遺伝子」にはオルソログやパラログといった相同遺伝子を含む意味である。但し、上述した「機能的に等価な遺伝子」には、共通遺伝子から進化せず、単に類似した機能を有する遺伝子も含まれている。
【0024】
上述したような配列番号1、3及び5の塩基配列及び配列番号2、4及び6のアミノ酸配列で特定されるAt1g36060遺伝子、At1g78080遺伝子及びAt1g22190遺伝子に類似する遺伝子としては、これらアミノ酸配列に対する類似度(Similarity)が例えば70%以上、好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上、最も好ましくは95%以上であるアミノ酸配列を有し、種子特異的に発現し、DGAT1遺伝子の発現制御能を有するタンパク質をコードする遺伝子を挙げることができる。ここで、類似度の値は、BLAST(Basic Local Alignment Search Tool)プログラムを実装したコンピュータプログラム及び遺伝子配列情報を格納したデータベースを用いてデフォルトの設定で求められる値を意味する。
【0025】
また、配列番号1、3及び5の塩基配列及び配列番号2、4及び6のアミノ酸配列で特定されるAt1g36060遺伝子、At1g78080遺伝子及びAt1g22190遺伝子に類似する遺伝子は、植物ゲノム情報が明らかとなっていない場合には、対象となる植物からゲノムを抽出するか或いは対象となる植物のcDNAライブラリーを構築し、配列番号1、3又は5の塩基配列からなるポリヌクレオチドの少なくとも一部に対して、ストリンジェントな条件下でハイブリダイズするゲノム領域或いはcDNAを単離することで同定することができる。ここで、ストリンジェントな条件とは、いわゆる特異的なハイブリッドが形成され、非特異的なハイブリッドが形成されない条件をいう。例えば、45℃、6×SSC(塩化ナトリウム/クエン酸ナトリウム)でのハイブリダイゼーション、その後の50〜65℃、0.2〜1×SSC、0.1%SDSでの洗浄が挙げられ、或いはそのような条件として、65〜70℃、1×SSCでのハイブリダイゼーション、その後の65〜70℃、0.3×SSCでの洗浄を挙げることができる。ハイブリダイゼーションは、J. Sambrook et al. Molecular Cloning, A Laboratory Manual, 2nd Ed., Cold Spring Harbor Laboratory(1989)に記載されている方法等、従来公知の方法で行うことができる。
【0026】
本発明に係る植物体は、At1g36060遺伝子、At1g78080遺伝子及びAt1g22190遺伝子若しくは当該遺伝子に機能的に等価な遺伝子を種子特異的プロモーターの発現制御下で植物体内に導入するか、内在する当該遺伝子のプロモーターを種子特異的プロモーターに改変することによって、油脂生産性(種子重量あたりの油脂含量)が野生型と比較して有意に向上したものとなる。遺伝子を植物体内に導入する手法としては、植物種子内で特異的に発現誘導するプロモーターの下流に外因的に遺伝子を配置した発現ベクターを導入する手法をあげることができる。内在する当該遺伝子のプロモーターを改変する手法としては、対象とする植物体における内在性の遺伝子のプロモーターを相同組換え等の手法により改変する手法を挙げることができる。
【0027】
一例としては、種子特異的プロモーターの制御下に上述した遺伝子を配置した発現ベクターを対象の植物体に導入する手法が好ましい。
【0028】
発現ベクター
発現ベクターは、種子特異的プロモーターと、当該種子特異的プロモーターの制御下で発現するように配置した上記遺伝子とを含むように構築する。発現ベクターの母体となるベクターとしては、従来公知の種々のベクターを用いることができる。例えば、プラスミド、ファージ、またはコスミド等を用いることができ、導入される植物細胞や導入方法に応じて適宜選択することができる。具体的には、例えば、pBR322、pBR325、pUC19、pUC119、pBluescript、pBluescriptSK、pBI系のベクター等を挙げることができる。特に、植物体へのベクターの導入法がアグロバクテリウムを用いる方法である場合には、pBI系のバイナリーベクターを用いることが好ましい。pBI系のバイナリーベクターとしては、具体的には、例えば、pBIG、pBIN19、pBI101、pBI121、pBI221等を挙げることができる。
【0029】
種子特異的プロモーターは、導入対象の植物における種子内で特異的に発現誘導するものであれば特に限定されず、公知の種子特異的プロモーターを用いることができる。種子特異的プロモーターとしては、特に限定されず、貯蔵タンパク質遺伝子のプロモーター等を適宜使用することができる。種子特異的発現プロモーターとしては、例えば、ナタネのナピン(2Sアルブミン)遺伝子やクルシフェリン(11Sグロブリン)遺伝子、シロイヌナズナの2S(アルブミン)遺伝子、12S(グロブリン)遺伝子、イネのグルテリン遺伝子、グロブリン遺伝子、プロラミン遺伝子、ダイズのグロブリン遺伝子などの各植物種の主要種子貯蔵タンパク質遺伝子のプロモーターを挙げることができる。また種子の油脂貯蔵組織であるオイルボデイの構成タンパク質であるオレオシン遺伝子のプロモーターも、種子特異的プロモーターとして使用することができる。
【0030】
上記各プロモーターを用いれば、植物種子において上記遺伝子を特異的に発現誘導することができ、種子内のDGAT1遺伝子の発現を正に制御することができる。すなわち、上記各プロモーターの制御下に上記遺伝子を導入した植物体は、上記遺伝子を導入していない植物由来の種子と比較して、種子において上記遺伝子が過剰に発現することとなる。その結果、上記遺伝子を導入した植物体では、種子におけるDGAT1遺伝子の発現量が向上することとなる。
【0031】
なお、発現ベクターは、種子特異的プロモーター及び上記遺伝子に加えて、さらに他のDNAセグメントを含んでいてもよい。当該他のDNAセグメントは特に限定されるものではないが、ターミネーター、選別マーカー、エンハンサー、翻訳効率を高めるための塩基配列等を挙げることができる。また、上記組換え発現ベクターは、さらにT−DNA領域を有していてもよい。T−DNA領域は特にアグロバクテリウムを用いて上記組換え発現ベクターを植物体に導入する場合に遺伝子導入の効率を高めることができる。
【0032】
転写ターミネーターは転写終結部位としての機能を有していれば特に限定されるものではなく、公知のものであってもよい。例えば、具体的には、ノパリン合成酵素遺伝子の転写終結領域(Nosターミネーター)、カリフラワーモザイクウイルス35Sの転写終結領域(CaMV35Sターミネーター)等を好ましく用いることができる。この中でもNosターミネーターをより好ましく用いることできる。上記組換えベクターにおいては、転写ターミネーターを適当な位置に配置することにより、植物細胞に導入された後に、不必要に長い転写物を合成し、強力なプロモーターがプラスミドのコピー数を減少させるといった現象の発生を防止することができる。
【0033】
形質転換体選別マーカーとしては、例えば薬剤耐性遺伝子を用いることができる。かかる薬剤耐性遺伝子の具体的な一例としては、例えば、ハイグロマイシン、ブレオマイシン、カナマイシン、ゲンタマイシン、クロラムフェニコール等に対する薬剤耐性遺伝子を挙げることができる。これにより、上記抗生物質を含む培地中で生育する植物体を選択することによって、形質転換された植物体を容易に選別することができる。
【0034】
翻訳効率を高めるための塩基配列としては、例えばタバコモザイクウイルス由来のomega配列を挙げることができる。このomega配列をプロモーターの非翻訳領域(5’UTR)に配置させることによって、上記融合遺伝子の翻訳効率を高めることができる。このように、上記組換え発現ベクターには、その目的に応じて、さまざまなDNAセグメントを含ませることができる。
【0035】
組換え発現ベクターの構築方法についても特に限定されるものではなく、適宜選択された母体となるベクターに、上記種子特異的プロモーター、上記遺伝子及び必要に応じて上記他のDNAセグメントを所定の順序となるように導入すればよい。例えば、種子特異的プロモーターと上記遺伝子(必要に応じて転写ターミネーター等)とを連結して発現カセットを構築し、これをベクターに導入すればよい。発現カセットの構築では、例えば、各DNAセグメントの切断部位を互いに相補的な突出末端としておき、ライゲーション酵素で反応させることで、当該DNAセグメントの順序を規定することが可能となる。なお、発現カセットにターミネーターが含まれる場合には、上流から、種子特異的プロモーター、上記遺伝子、ターミネーターの順となっていればよい。また、発現ベクターを構築するための試薬類、すなわち制限酵素やライゲーション酵素等の種類についても特に限定されるものではなく、市販のものを適宜選択して用いればよい。
【0036】
また、上記発現ベクターの増殖方法(生産方法)も特に限定されるものではなく、従来公知の方法を用いることができる。一般的には大腸菌をホストとして当該大腸菌内で増殖させればよい。このとき、ベクターの種類に応じて、好ましい大腸菌の種類を選択してもよい。
【0037】
形質転換
上述した発現ベクターは、一般的な形質転換方法によって対象の植物内に導入される。発現ベクターを植物細胞に導入する方法(形質転換方法)は特に限定されるものではなく、植物細胞に応じた適切な従来公知の方法を用いることができる。具体的には、例えば、アグロバクテリウムを用いる方法や直接植物細胞に導入する方法を用いることができる。アグロバクテリウムを用いる方法としては、例えば、Bechtold, E., Ellis, J. and Pelletier, G. (1993) In Planta Agrobacterium-mediated gene transfer by infiltration of adult Arabidopsis plants. C.R. Acad. Sci. Paris Sci. Vie, 316, 1194-1199. あるいは、Zyprian E, Kado Cl, Agrobacterium-mediated plant transformation by novel mini-T vectors in conjunction with a high-copy vir region helper plasmid. Plant Molecular Biology, 1990, 15(2), 245-256.に記載された方法を用いることができる。
【0038】
発現ベクターを直接植物細胞に導入する方法としては、例えば、マイクロインジェクション法、エレクトロポレーション法(電気穿孔法)、ポリエチレングリコール法、パーティクルガン法、プロトプラスト融合法、リン酸カルシウム法等を用いることができる。
【0039】
また、DNAを直接植物細胞に導入する方法を採るなら、対象とする遺伝子の発現に必要な転写ユニット、例えばプロモーターや転写ターミネーターと、対象とする遺伝子を含んだDNAであれば十分であり、ベクター機能は必須ではない。
【0040】
上記発現ベクターや、発現ベクターを含まず対象となる遺伝子を含んだ発現カセットが導入される植物細胞としては、例えば、花、葉、根等の植物器官における各組織の細胞、カルス、懸濁培養細胞等を挙げることができる。ここで、発現ベクターは、生産しようとする種類の植物体に合わせて適切なものを適宜構築してもよいが、汎用的な発現ベクターを予め構築しておき、それを植物細胞に導入してもよい。
【0041】
発現ベクターの導入対象となる植物、換言すると油脂生産性(種子重量あたりの油脂含量)を増大させる対象の植物としては、特に限定されない。すなわち、上述した遺伝子を発現させることによって、あらゆる植物体について油脂生産性(種子重量あたりの油脂含量)の増大効果を期待することができる。対象となる植物としては、例えば、双子葉植物、単子葉植物、例えばアブラナ科、イネ科、ナス科、マメ科、ヤナギ科等に属する植物(下記参照)が挙げられるが、これらの植物に限定されるものではない。
【0042】
アブラナ科:シロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)、キャベツ(Brassica oleracea var. capitata)、ナタネ(Brassica rapa、Brassica napus)、ハクサイ(Brassica rapa var. pekinensis)、チンゲンサイ(Brassica rapa var. chinensis)、カブ(Brassica rapa var. rapa)、ノザワナ(Brassica rapa var. hakabura)、ミズナ(Brassica rapa var. lancinifolia)、コマツナ(Brassica rapa var. peruviridis)、パクチョイ(Brassica rapa var. chinensis)、ダイコン(Raphanus sativus)、ワサビ(Wasabia japonica)など。
【0043】
ナス科:タバコ(Nicotiana tabacum)、ナス(Solanum melongena)、ジャガイモ(Solanum tuberosum)、トマト(Lycopersicon lycopersicum)、トウガラシ(Capsicum annuum)、ペチュニア(Petunia)など。
【0044】
マメ科:ダイズ(Glycine max)、エンドウ(Pisum sativum)、ソラマメ(Vicia faba)、フジ(Wisteria floribunda)、ラッカセイ(Arachis. hypogaea)、ミヤコグサ(Lotus corniculatus var. japonicus)、インゲンマメ(Phaseolus vulgaris)、アズキ(Vigna angularis)、アカシア(Acacia).など。
【0045】
キク科:キク(Chrysanthemum morifolium)、ヒマワリ(Helianthus annuus)など。
【0046】
ヤシ科:アブラヤシ(Elaeis guineensis、Elaeis oleifera)、ココヤシ(Cocos nucifera)、ナツメヤシ(Phoenix dactylifera)、ロウヤシ(Copernicia)
【0047】
ウルシ科:ハゼノキ(Rhus succedanea)、カシューナットノキ(Anacardium occidentale)、ウルシ(Toxicodendron vernicifluum)、マンゴー(Mangifera indica)、ピスタチオ(Pistacia vera)
【0048】
ウリ科:カボチャ(Cucurbita maxima、Cucurbita moschata、Cucurbita pepo)、キュウリ(Cucumis sativus)、カラスウリ(Trichosanthes cucumeroides)、ヒョウタン(Lagenaria siceraria var. gourda)
【0049】
バラ科:アーモンド(Amygdalus communis)、バラ(Rosa)、イチゴ(Fragaria)、サクラ(Prunus)、リンゴ(Malus pumila var. domestica)など。
【0050】
ナデシコ科:カーネーション(Dianthus caryophyllus)など。
【0051】
ヤナギ科:ポプラ(Populus trichocarpa、Populus nigra、Populus tremula)
【0052】
イネ科:トウモロコシ(Zea mays)、イネ(Oryza sativa)、オオムギ(Hordeum vulgare)、コムギ(Triticum aestivum)、タケ(Phyllostachys)、サトウキビ(Saccharum officinarum)、ネピアグラス(Pennisetum pupureum)、エリアンサス(Erianthus ravenae)、ミスキャンタス(ススキ)(Miscanthus virgatum)、ソルガム(Sorghum)スイッチグラス(Panicum)など。
【0053】
ユリ科:チューリップ(Tulipa)、ユリ(Lilium)など。
【0054】
なかでも、ナタネ等の油脂生産の原料となりうる作物を対象とすることが好ましい。植物由来の種子生産の低コスト化を実現できるからである。
【0055】
また、上述したように、上述した遺伝子は、種々の植物から単離して使用することができるが、油脂生産性(種子重量あたりの油脂含量)を増大する対象の植物の種類に応じて、適宜選択して用いることができる。すなわち、油脂生産性(種子重量あたりの油脂含量)を増産する対象の植物が単子葉植物である場合には、上記遺伝子として単子葉植物から単離したものを発現させることが好ましい。
【0056】
なお、本発明においては、油脂生産性(種子重量あたりの油脂含量)を増大する対象の植物が単子葉植物であったとしても、双子葉植物由来の上記遺伝子を導入しても良い。すなわち、例えば、シロイヌナズナ由来の上記遺伝子(配列番号1、3又は5)は、双子葉植物に限らず、広く単子葉植物に分類される植物に発現するように導入されてもよい。
【0057】
その他の工程、その他の方法
上述した形質転換処理後、植物体のなかから適切な形質転換体を選抜する選抜工程を、従来公知の方法で行うことができる。選抜の方法は特に限定されるものではなく、例えば、使用した発現ベクターに応じてハイグロマイシン耐性等の薬剤耐性を基準として選抜してもよいし、形質転換体を育成した後に、採取した種子に含まれる油脂を定量して有意に増産している系統を選抜してもよい。
【0058】
また、形質転換処理で得られた形質転換植物から定法に従って後代植物を得ることができる。種子特異的プロモーターの制御下に上記遺伝子が導入された形質又は内在する当該遺伝子のプロモーターが種子特異的プロモーターに改変された形質を保持した後代植物を、その油脂生産性(種子重量あたりの油脂含量)を基準として選抜することによって、上記形質を有することで油脂生産性(種子重量あたりの油脂含量)が増大した安定的な植物系統を作出することができる。なお、形質転換植物やその子孫から、植物細胞や種子、果実、株、カルス、塊茎、切穂、塊等の繁殖材料を得て、これらを基に上記形質を有することで油脂生産性(種子重量あたりの油脂含量)が増大した安定的な植物系統を量産することも可能である。
【0059】
なお、本発明における植物体とは、成育した植物個体、植物細胞、植物組織、カルス、種子の少なくとも何れかが含まれる。つまり、本発明では、最終的に植物個体まで成育させることができる状態のものであれば、全て植物体とみなす。また、上記植物細胞には、種々の形態の植物細胞が含まれる。かかる植物細胞としては、例えば、懸濁培養細胞、プロトプラスト、葉の切片等が含まれる。これらの植物細胞を増殖・分化させることにより植物体を得ることができる。なお、植物細胞からの植物体の再生は、植物細胞の種類に応じて、従来公知の方法を用いて行うことができる。
【0060】
以上説明したように、本発明によれば、種子特異的プロモーターの制御下に上記遺伝子を植物体内に導入する、又は内在する当該遺伝子のプロモーターを種子特異的プロモーターに改変することで、野生型の植物体と比較して、油脂生産性(種子重量あたりの油脂含量)が有意に増大した植物体を提供することができる。ここで、油性量が有意に増大するとは、野生型と比較して一個体あたりに生産される油脂の総重量又は種子重量に含まれる油脂の総重量が統計的に有意に大となっていることを意味する。
【0061】
本発明によれば、植物体の油脂生産性(種子重量あたりの油脂含量)が増大するため、例えば、種子に含まれる油脂を生産目的とした場合、作付け面積あたりで回収できる油脂量を大幅に向上させることができる。ここで油脂としては、特に限定されず、例えば、大豆油、ごま油、オリーブ油、椰子油、米油、綿実油、ひまわり油、コーン油、べに花油及び菜種油等の植物由来の油脂(トリアシルグリセロール、中性脂肪)を例示することができる。また、製造した油脂は、家庭用途や工業用途に広く利用することができ、更にはバイオディーゼル燃料の原料としても使用することができる。すなわち、本発明によれば上記遺伝子が種子特異的プロモーターの制御下に導入された、又は内在する当該遺伝子のプロモーターを種子特異的プロモーターに改変された植物体を利用することによって、上述した家庭用途又は工業用途の油脂や、バイオディーゼル燃料等を低コストに製造することができる。
【実施例】
【0062】
以下、実施例により本発明をより詳細に説明するが、本発明の技術的範囲はこれら実施例に限定されるものではない。
【0063】
〔実施例1〕
DGAT1を活性化しうる転写因子の選抜
シロイヌナズナの推定転写因子遺伝子の中から種子成熟期での発現パターンがDGAT1(At2g19450)の発現パターンと似た遺伝子を公開マイクロアレイデータ(AtGenExpress)をもとに解析ソフトウェアDART(http://pmg.agr.nagoya-u.ac.jp/dart/)により選別し、さらに培養細胞を用いた一過的発現系により、DGAT1を活性化する遺伝子を選別した結果、DREB様転写因子A2(At1g36060)を見いだした。A2には相同性の高い2つの近縁遺伝子A2L1(At1g78080)及びA2L2(At1g22190))が存在し、公開マイクロアレイデータを確認したところ、A2を含むこれら3つの遺伝子はいずれも登熟種子で発現していた。これら連射因子A2(At1g36060)、A2L1(At1g78080)及びA2L2(At1g22190)のアミノ酸配列についてアライメント解析した結果を図1に示す。なお、アライメント解析において、「!」はイソロイシン又はバリンのいずれかを意味しており、「$」はロイシン又はメチオニンのいずれかを意味しており、「%」はフェニルアラニン又はチロシンのいずれかを意味し、「#」はアスパラギン、アスパラギン酸、グルタミン又はグルタミン酸のいずれかを意味している。なお、公開マイクロアレイデータからこれら遺伝子の発現パターンを解析した結果を図2及び3に示す。
【0064】
DGAT1p::LUC導入植物の作製
A2によるDGAT1遺伝子の植物体での活性化を調べるために、DGAT1p::LUC導入植物を作製した。DGAT1p::LUC導入植物を使用することにより、内在DGAT1遺伝子のmRNAの挙動をLUC発光レベルで追跡することが可能である。
【0065】
先ず、DGAT1遺伝子の翻訳開始点上流+1から+2076を含むようCol-0のゲノムを鋳型にPrimeSTAR (TAKARA Bio社製)を使用してDGAT1遺伝子のプロモーター領域をPCR増幅した。PCR増幅にはTAG1p(Xba)attB1(ggggACAAGTTTGTACAAAAAAGCAGGCTctagattaatattccacttactacttcc(配列番号7))及びTAG1p-attab2(ggggACCACTTTGTACAAGAAAGCTGGGTtcgccatttcgaaaagggttg(配列番号8))をプライマーとして使用した。
【0066】
増幅したDNA断片及びInvitorogen社のGATEWAYシステムを利用して、エントリークローンを得た。バイナリーベクターpGWB435(GenBank AB294498)とともに反応させ、DGAT1p::LUCバイナリープラスミドを作製した。DGAT11p::LUC バイナリープラスミドをエレクトロポレーションにより、アグロバクテリウムC58C1株に導入し、Floral dip法にてシロイヌナズナCol-0をDGAT1p::LUCで形質転換した。
【0067】
DGAT1p::LUCを導入した植物体からとれた種子(T1:T-DNA挿入へテロ)を抗生物質カナマイシン(Km)耐性で選抜し、生育させてT2種子(T-DNA挿入ホモ、ヘテロ、なしの混合)を得た。T2種子をKm培地で発芽させ、抗生物質耐性がおよそ3:1の比になるラインからさらに数個体ずつを生育させ、T3種子を得た。T3種子がすべてKm耐性を示したラインをT-DNA挿入ホモライン、DGAT1p::LUC導入植物として用いた。
【0068】
一過的発現用のレポータープラスミドの作製
DGAT1pエントリークローンとpUGW35(pUC119のマルチクローニングサイトにpGWB435のゲートウェイカセットを挿入したもの)からDGAT1p::LUC/pUCを作製した。DGAT1プロモーターの翻訳開始点上流1076bpに存在するDREB結合配列(3’-ATGTCGGTT-5’)に変異(3’-CGTGATTGG-5’)を導入したmDGAT1p(2.1k):LUCについては、DGAT1p::LUC/pUCを鋳型に、プライマー(DGAT1pro-Dr2:CACGGATTTAATTAGGGAAGTACTTTAG(配列番号9)及びDGAT1pro-Df2:CGTGATTGGGAAAAAGCTCAATGAATGTTTGAAATTTGG(配列番号10))を用いてPCR増幅(PrimeSTAR(TAKARA))後、T4ポリヌクレオチドキナーゼ(PNK)処理し、セルフライゲーションにより作製した。
【0069】
A2遺伝子のクローニングと35S:A2の調整
A2遺伝子の全長cDNA断片を、Arabidopsis DNABookTM (RIKEN)のスポットを鋳型とし、Pyrobest(TAKARA Bio社製)酵素により増幅した。増幅反応には、f-At1g36060[Xba1];GCATCTAGAATGGCGGATCTCTTCGG(配列番号11)及びr-At1g36060[Kpn1];AACGGTACCTCACGATAAAATTGAAGCCCAATCT(配列番号12)をプライマーとして使用した。pUC119のマルチプルクローニングサイトに、SalIサイトに35Sプロモーターを、EcoRIとSacIサイトにNOSターミネーターをそれぞれ導入したベクターに、増幅断片を制限酵素処理しcDNAを挿入した。ライゲーションにはDNA ligation kit 〈Mighty Mix〉(TaKaRa)を用いた。このプラスミド35Sp::A2/pUCを一過的発現系で使用した。
【0070】
次に、35Sp::A2/pUCを鋳型に、プライマーA2-CDS-B1(ggggACAAGTTTGTACAAAAAAGCAGGCTcgATGGCGGATCTCTTCGGTG(配列番号13))及びA2-CDS-B2(GGGGACCACTTTGTACAAGAAAGCTGGgtaCGATAAAATTGAAGCCCAATC(配列番号14))を使用して増幅(PrimeSTAR(TAKARA))した断片と、pDONR201(Invitrogen)及びBP Clonase II(Invitrogen)を用いてエントリークローンを得た。
【0071】
次に、上記エントリークローンをpGWB502Ω(GenBank AB294470)及びLR Clonase II (Invitrogen)を反応させ、35Sp::A2バイナリープラスミドを作製した。
【0072】
A2L2遺伝子のクローニングと35S:A2L2の調整
シロイヌナズナ野生型ゲノムを鋳型に、Pyrobest(TAKARA Bio社製)酵素により増幅した。増幅反応には、A2-L2 CDS-B1(ggggACAAGTTTGTACAAAAAAGCAGGCTcgATGACAACTTCTATGGATTTTTACAG(配列番号15))及びA2-L2 CDS-B2(GGGGACCACTTTGTACAAGAAAGCTGGgtaATTTACAAGACTCGAACACTGAA(配列番号16))をプライマーとして使用した。得られたPCR断片とpDONR201(Invitrogen)及びBP Clonase II(Invitrogen)を用いてエントリークローンを得た。上記エントリークローンとpUGW2(35SプロモーターとNOSターミネータの間にゲートウェイカセット挿入されたpUCプラスミド)とLR Clonase II(Invitrogen)を反応させ、35Sp::A2L2プラスミドを作製した。
【0073】
DGAT1p::LUC植物への35Sp::A2の導入
35Sp::A2 バイナリープラスミドをエレクトロポレーションにより、アグロバクテリウムC58C1株に導入し、Floral dip法にてシロイヌナズナDGAT11p::LUC植物を35Sp::A2で形質転換した。得られた種子をハイグロマイシン耐性により選抜し、35Sp::A2/DGAT1p::LUC形質転換体(T1植物)を獲得し、独立した6個体の本葉2枚から、RN easy Plant Mini Kit(QIAGEN)用いて、その使用方法に従って、RNAを抽出、精製した。DNase I (TaKaRa) 処理後、SuperScriptTMIII RNaseH- Reverse Transcriptase (Invitrogen)を用い、cDNAを合成し、リアルタイムPCRの材料とした。Power SYBR Green PCR Master Matrix (Applied Biosystems)を使用し、7500 Real Time PCR System(Applied Biosystems)により解析した。
【0074】
リアルタイムPCRに使用した各遺伝子のプライマーを以下にしめす。
DGAT1遺伝子:TAG1-F;GCATCCTTTGAAAGGCGATCTTCTAT(配列番号17)及びTAG1-R;GAAGCAGAGAAGCTCTGCCAATATGT(配列番号18)
A2遺伝子:A2-realF;ACCGACTTCGGATGTTATGGTGC(配列番号19)及びA2-realR;GCCCAATCTATCTCATAAGAAGGACAC(配列番号20)
PDF2遺伝子:PDF2-F;TAACGTGGCCAAAATGATGC(配列番号21)及びPDF2-R;GTTCTCCACAACCGCTTGGT(配列番号22)
【0075】
なお、DGAT1遺伝子及びA2遺伝子のmRNA量は、PDF2遺伝子のmRNA量で補正した。葉でのRNA解析の結果を図4に示す。図4(A)はA2遺伝子のmRNA量を測定した結果であり、図4(B)はDGAT1遺伝子のmRNA量を測定した結果である。図4に示すように、A2遺伝子の過剰発現は確認されたが、これに伴うDGAT1遺伝子の発現増強は確認できなかった。
【0076】
また、独立した形質転換体15株の種子のTAG含量をパルスNMRにて測定した結果を図5に示す。図5に示すように、形質転換体の種子に含まれるTAG量は増加しなかった。35Sプロモーターによる異所発現は、生育にも影響し、A2によるDGAT1発現増強に至らなかったことから、ナピン遺伝子の種子特異的プロモーターを使用した種子特異的過剰発現を試みた。
【0077】
種子特異的発現のためのゲートウェイベクター作製
ナタネ(ウェスター種)のゲノムを鋳型に、プライマーHind-napin;caccaagctttcttcatcggtgattg(配列番号23)及びnapin-Xba;gcTCTAGAtcgtgtatgtttttaatcttg(配列番号24)を用いてPCR増幅(PrimeSTAR(TAKARA))した断片と、pGWB402を制限酵素HindIIIとXbaIで処理後、ライゲーション(DNA ligation kit 〈Mighty Mix〉(TaKaRa))し、ナピン遺伝子の種子特異的プロモーターによる種子特異的発現ベクターを作製した。ナピンはナタネの主要種子タンパク質であり、種子登熟期に強く発現することが知られている。なお、ナピン遺伝子の種子特異的プロモーターの塩基配列を配列番号25に示した。
【0078】
DGAT1p::LUC植物へのNapinp::A2の導入
前述の種子特異的ゲートウェイベクターとA2エントリークローンをLR Clonase II (Invitrogen)を反応させ、Napin::A2バイナリープラスミドを作製した。Napin::A2プラスミドをエレクトロポレーションにより、アグロバクテリウムC58C1株に導入し、Floral dip法にてシロイヌナズナDGAT11p::LUCをNapin::A2で形質転換した。得られた種子をハイグロマイシン耐性により選抜し、Napin::A2/DGAT1p::LUC形質転換体(T1植物)を獲得し、独立した8個体の開花後8日目の果実からRNAを抽出しRNA解析をし、独立した形質転換体23個体から種子を収穫し、TAG含量を測定した。RNA解析は35Sp::A2/DGAT1p::LUC形質転換植物と同様な過程で行ない、A2遺伝子、DGAT1遺伝子及びPDF2遺伝子について、mRNA量を定量した。mRNA量は、PDF2遺伝子のmRNA量にて補正した。
【0079】
Napin::A2/DGAT1p::LUC形質転換体を撮像した写真及びLUC蛍光写真をそれぞれ図6(A)及び(B)に示す。図6(A)に示すように、Napin::A2/DGAT1p::LUC形質転換体は優良に生育した。また、図6(B)に示すように、Napin::A2/DGAT1p::LUC形質転換体における登熟果実ではLUC発光量が増加した。この結果から、A2遺伝子を種子特異的プロモーターの制御下に導入した場合には生育阻害は起こらず、種子におけるDGAT1遺伝子の発現量を向上できることが明らかとなった。また、リアルタイムPCRの結果を図7に示す。図7(A)はA2遺伝子のmRNA量を測定した結果であり、図7(B)はDGAT1遺伝子のmRNA量を測定した結果である。図7の結果から、Napin::A2/DGAT1p::LUC形質転換体では、種子におけるA2遺伝子とDGAT1遺伝子の発現量を大幅に増強できることが明らかになった。また、Napin::A2/DGAT1p::LUC形質転換体から採取した種子に含まれるTAGを定量した結果を図8に示す。図8に示すように、Napin::A2/DGAT1p::LUC形質転換体では、種子に含まれるTAG量が有意に増加することが明らかになった(T-test、P=0.003)。
【0080】
〔実施例2〕
本実施例では、A2遺伝子破壊株、A2L1遺伝子破壊株及びA2L2遺伝子破壊株を確立し、これら破壊株におけるDGAT1遺伝子の発現量及び種子に含まれるTAG量を測定した。
【0081】
A2遺伝子、A2L1遺伝子、A2L2遺伝子破壊株の確立
図9に示すT-DNA挿入株の種子をABRC(Arabidopsis Biological Resource Center)から購入した。以下に示すジェノタイピング用プライマーを使用し、T-DNA挿入ホモ個体を確定した。
【0082】
A2遺伝子破壊株ジェノタイピング用プライマー:
gA2-066681-g1;GAGGTTGCTTATTTCAAACCTCGTTGAT(配列番号26)
gA2-066681-PL11;GTTGGGTCATAAAACCCGGTTG(配列番号27)
PL11;TTTCGCCTGCTGGGGCAAACCAG(配列番号28)
A2L2遺伝子破壊株ジェノタイピング用プライマー(a1-1) :
gA1-PL11;CGGAGATCAGGGAAATTAAGC(配列番号29)
A1-f(f-At1g22190[BamH1]2);CTCGGATCCATGACAACTTCTATGGATTTTTACAGTA(配列番号30)
A2L2遺伝子破壊株ジェノタイピング用プライマー(a1-2) :
A1-r(r-At1g22190[kpn1]2):AACGGTACCCTAATTTACAAGACTCGAACACTGA(配列番号31)
gA1-PL11r:AGGAAGCTGCTTTAGCTTATGAC(配列番号32)
A2L1遺伝子破壊株ジェノタイピング用プライマー(A2L1) :
gA2L1-PL11;TTGGGCTGAGAAGATTCGAGA(配列番号33)
A2-L1-f(f-At1g78080[xbaI]);GCATCTAGAATGGCAGCTGCTATGAATTTGTA(配列番号34)
【0083】
それぞれのT-DNA挿入ホモ個体は以下に示すプライマーを使用したRT-PCRによりそれぞれの遺伝子由来の増幅がないことを確認し、破壊株と確定した。
【0084】
A2遺伝子破壊株確認用プライマー(RT-PCR):
A2-CDS-B1:ggggACAAGTTTGTACAAAAAAGCAGGCTcgATGGCGGATCTCTTCGGTG(配列番号35)
A2-CDS-B2:GGGGACCACTTTGTACAAGAAAGCTGGgtaCGATAAAATTGAAGCCCAATC(配列番号36)
A2L2遺伝子破壊株確認用プライマー(RT-PCR):
A2-L2 CDS-B1:ggggACAAGTTTGTACAAAAAAGCAGGCTcgATGACAACTTCTATGGATTTTTACAG(配列番号37)
A2-L2 CDS-B2:GGGGACCACTTTGTACAAGAAAGCTGGgtaATTTACAAGACTCGAACACTGAA(配列番号38)
A2L1遺伝子破壊株確認用プライマー(RT-PCR):
A2L1-2f:TGGCAGCTGCTATGAATTTG(配列番号39)
A2L1-632r:CGTAGGTTAGGGAAGTTAAG(配列番号40)
【0085】
以上のようにして確立したA2遺伝子破壊株、A2L1遺伝子破壊株及びA2L2遺伝子破壊株におけるDGAT1遺伝子のmRNA量を測定した。なおmRNA量は、野生型株と各破壊株の8DAF果実からRNAを抽出し、リアルタイムPCRにより実施例1と同様にして測定した(n=2、PDF2遺伝子のmRNA量で補正)。結果を図10に示す。図10に示すように、すべての破壊株において、DGAT1遺伝子の発現量が野生型と比較して低減していた。この結果から、A2遺伝子、A2L1遺伝子及びA2L2遺伝子は、DGAT1遺伝子の発現を正に制御する転写因子であることが強く示唆された。
【0086】
種子中のTAG含量の測定
また、以上のようにして確立したA2遺伝子破壊株、A2L1遺伝子破壊株及びA2L2遺伝子破壊株から採取した種子に含まれるTAGを定量した。油脂の定量分析はMARAN-23 (Resonance Insturuments Ltd., UK) H-NMRと、解析ソフト RI-NMR Ver. 2.0を用い、2〜10mgのシロイヌナズナ種子を測定した。油脂の標準物質にはオリーブオイルを用いて検量線を作製し、種子中の油脂含量(重量%)を求めた。
【0087】
測定した結果を図11に示した。図11から判るように、A2遺伝子破壊株、A2L1遺伝子破壊株及びA2L2遺伝子破壊株のいずれにおいても、種子に含まれるTAG量は野性型と比較して有意に変動していなかった。図10に示した結果と併せて考察すると、A2遺伝子、A2L1遺伝子及びA2L2遺伝子は機能が重複していることが強く示唆された。
【0088】
〔実施例3〕
本実施例では、A2遺伝子又はA2L2遺伝子を一過的に発現するシロイヌナズナ培養細胞を作製し、DGAT1遺伝子の発現を解析した。
【0089】
シロイヌナズナT87細胞の培養
MS無機塩、B5ビタミン(100mg/L ミオイノシトール、10mg/L チアミン塩酸塩、1mg/L ニコチン酸、1mg/L ピリドキシン塩酸塩)、0.2g/L KH2PO4、2%スクロース、2ng/ml 2,4-Dを含む液体培地95mlに、同様に1週間培養したT87細胞を5ml植え継ぎ、135rpm、22℃、暗所にて振盪培養した。
【0090】
一過的発現解析
植え継ぎ後4〜5日目のシロイヌナズナT87細胞の培養液100mlの細胞から酵素液(0.4M マンニトール、10mg/ml Cellulase Y-C、0.5mg/ml Pectolyase、EGTA、KOHにてpH5.7に調製)を用いて調製したプロトプラスト150μl(107プロトプラスト/ml)にエフェクタープラスミド(35Sp::A2/pUC又は35Sp::A2L2/pUC)10μg、実施例1で作製したレポーター・プラスミド(DGAT1p::LUC又はDGAT1p(mDRE)::LUC)10μg、コントロール・プラスミド(35S:hRLUC)5μgをPEG法(Kovtun, Y., Chiu, W.L., Tena, G. and Sheen, J. (2000) Functional analysis of oxidative stress-activated mitogen-activated protein kinase cascade in plants. Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 97, 2940-2945)によって導入した。プラスミドDNA導入後のプロトプラストを22℃暗所で20時間静置した後、Extraction Buffer(100mM Potassium Phosphate、1mM DTT、pH=7.5)を用いたホモジナイズ処理によって可溶性タンパク質を抽出し、15,000rpm、4℃、10分間の遠心分離により得られた上清をタンパク質抽出液とした。この抽出液のLUC酵素活性の定量的な測定はDual-Luciferase Reporter Assay System (Promega)を用いて行った。添付のプロトコルに従って試料を混合し、化学発光をルミノメーター(Labsystems, Luminoskan Ascent)で定量し、レポーターであるLUCの発光値をhRLUC発光量で補正し、活性化度合をエフェクタープラスミドのかわりに空ベクターを使用した時の値を1として算出した。
【0091】
測定した結果を図12に示す。なお、図12(A)はDGAT1p::LUCを使用したときの測定結果であり、図12(B)はDRE領域に変異を導入したDGAT1p(mDRE)::LUCを使用したときの測定結果である。図12(A)及び(B)に示すように、A2遺伝子及びA2L2遺伝子は、ともにDGAT1p::LUCを活性化し、DRE配列に変異を導入したDGAT1p(mDRE)::LUCは活性化しなかった。この結果から、A2遺伝子及びA2L2遺伝子ともに、DRE領域への結合を介してDGAT1遺伝子の発現を正に制御する転写因子であることが示された。また、A2L1遺伝子については、図1に示すように、転写因子A2及びA2L2とアミノ酸レベルでの相同性が非常に高いため、同様にDGAT1遺伝子の発現を正に制御する転写因子である蓋然性が非常に高いといえる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
At1g36060遺伝子、At1g78080遺伝子及びAt1g22190遺伝子からなる群から選ばれる少なくとも1つの遺伝子若しくは当該遺伝子に機能的に等価な遺伝子を種子特異的プロモーターの制御下に導入した、又は内在する当該遺伝子のプロモーターを種子特異的プロモーターに改変した植物体。
【請求項2】
上記遺伝子は、以下の(a)〜(c)のいずれかのタンパク質をコードすることを特徴とする請求項1記載の植物体。
(a)配列番号2、4及び6のうちいずれかのアミノ酸配列を含むタンパク質
(b)配列番号2、4及び6のうちいずれかのアミノ酸配列において1又は複数個のアミノ酸が欠失、置換、付加又は挿入されたアミノ酸配列を含み、種子に特異的に発現し、DGAT1遺伝子の発現制御能を有するタンパク質
(c)配列番号1、3及び5のうちいずれかの塩基配列の相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドに対してストリンジェントな条件下においてハイブリダイズするポリヌクレオチドによってコードされ、種子に特異的に発現し、DGAT1遺伝子の発現制御能を有するタンパク質
【請求項3】
上記種子特異的プロモーターはナピン遺伝子のプロモーターであることを特徴とする請求項1記載の植物体。
【請求項4】
上記機能的に等価な遺伝子は、シロイヌナズナ以外の生物由来であって種子に特異的に発現し、DGAT1遺伝子の発現制御能を有するタンパク質をコードする遺伝子であることを特徴とする請求項1記載の植物体。
【請求項5】
At1g36060遺伝子、At1g78080遺伝子及びAt1g22190遺伝子からなる群から選ばれる少なくとも1つの遺伝子若しくは当該遺伝子に機能的に等価な遺伝子を種子特異的プロモーターの制御下に導入する、又は内在する当該遺伝子のプロモーターを種子特異的プロモーターに改変する、油脂生産性を増大させる方法。
【請求項6】
上記遺伝子は、以下の(a)〜(c)のいずれかのタンパク質をコードすることを特徴とする請求項5記載の方法。
(a)配列番号2、4及び6のうちいずれかのアミノ酸配列を含むタンパク質
(b)配列番号2、4及び6のうちいずれかのアミノ酸配列において1又は複数個のアミノ酸が欠失、置換、付加又は挿入されたアミノ酸配列を含み、種子に特異的に発現し、DGAT1遺伝子の発現制御能を有するタンパク質
(c)配列番号1、3及び5のうちいずれかの塩基配列の相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドに対してストリンジェントな条件下においてハイブリダイズするポリヌクレオチドによってコードされ、種子に特異的に発現し、DGAT1遺伝子の発現制御能を有するタンパク質
【請求項7】
上記種子特異的プロモーターはナピン遺伝子のプロモーターであることを特徴とする請求項5記載の方法。
【請求項8】
上記機能的に等価な遺伝子は、シロイヌナズナ以外の生物由来であって種子に特異的に発現し、DGAT1遺伝子の発現制御能を有するタンパク質をコードする遺伝子であることを特徴とする請求項5記載の方法。
【請求項9】
At1g36060遺伝子、At1g78080遺伝子及びAt1g22190遺伝子からなる群から選ばれる少なくとも1つの遺伝子若しくは当該遺伝子に機能的に等価な遺伝子を種子特異的プロモーターの制御下に導入した、又は内在する当該遺伝子のプロモーターを種子特異的プロモーターに改変した形質転換植物を準備する工程と
前記形質転換植物の後代植物の種子に含まれる油脂生産性を測定し、当該油脂生産性が有意に向上した系統を選抜する工程とを含む、植物体の製造方法。
【請求項10】
上記遺伝子は、以下の(a)〜(c)のいずれかのタンパク質をコードすることを特徴とする請求項9記載の製造方法。
(a)配列番号2、4及び6のうちいずれかのアミノ酸配列を含むタンパク質
(b)配列番号2、4及び6のうちいずれかのアミノ酸配列において1又は複数個のアミノ酸が欠失、置換、付加又は挿入されたアミノ酸配列を含み、種子に特異的に発現し、DGAT1遺伝子の発現制御能を有するタンパク質
(c)配列番号1、3及び5のうちいずれかの塩基配列の相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドに対してストリンジェントな条件下においてハイブリダイズするポリヌクレオチドによってコードされ、種子に特異的に発現し、DGAT1遺伝子の発現制御能を有するタンパク質
【請求項11】
上記種子特異的プロモーターはナピン遺伝子のプロモーターであることを特徴とする請求項9記載の製造方法。
【請求項12】
上記機能的に等価な遺伝子は、シロイヌナズナ以外の生物由来であって種子に特異的に発現し、DGAT1遺伝子の発現制御能を有するタンパク質をコードする遺伝子であることを特徴とする請求項9記載の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−187046(P2012−187046A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−53361(P2011−53361)
【出願日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【出願人】(598014814)株式会社コンポン研究所 (24)
【出願人】(504139662)国立大学法人名古屋大学 (996)
【Fターム(参考)】