説明

植物の緑化抑制技術

【課題】黄ニラは、青ニラの軟白栽培としての高付加価値が評価されているが、まだ一般的に普及されるまでに至っていない。その理由として、黄ニラは収穫後に光に当たると葉緑体が誘導され、緑色に変色するため、流通が難しいことがあげられる。現在の対策としては、暗所で栽培された黄ニラを強力な太陽光にさらす方法がとられている。しかし、収穫時に強力な太陽光を必要とするため、天候に左右されるという欠点があった。
【解決手段】
あらかじめ地上部を切除した黄ニラ等に弱い紫外線を照射すると、葉緑体の生成が抑制されることを発見した。紫外線源としてはUV殺菌灯(UV−C,200〜280nm)を使用し、照度60μW/cmから500μW/cmの紫外線を植物体に10分間から120分間照射する。黄ニラ以外にホワイトアスパラ、ひろっこ、白ネギの緑化防止、2から4分割した白菜やキャベツの緑化防止、各種のもやしやスプライト等の植物の緑化防止に応用することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は黄ニラ等の植物の緑色変化を抑制する技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
食用とされるニラには、一般的に食されている葉ニラ、花軸を食用とするハナニラ、そして葉ニラの軟白栽培の黄ニラの3種類がある。黄ニラは、葉を刈り取った直後から、光線を当てないように筒などで覆っておくと、根の貯蔵養分だけで萌芽発育する。このような栽培方法から、別名ニラモヤシとも呼ばれている。また、光線が当たらないことから葉緑素は形成されないで、美しい黄白色の葉となり、しかも急速に発育するので軟らかく繊維も発達しない。そのため、葉ニラより歯ざわりが柔らかく、香りも淡くて上品であり、ほのかに甘いことが特徴である。料理の仕方もこの特性を生かして、軽く熱湯を通したものを魚料理への添え物やスープや蒸し料理の具などの多方面に使われている。
黄ニラは、中国や台湾では、重要な野菜として、しかも高級品として古くから栽培が行われている。わが国でもいくつかの地域で昔から栽培されていたようである。最近では、中国野菜の一つとして市場でも見られるようになった。新しい産地別の面積、収量の統計はマイナークロップであることから不明であるが、関東では栃木、関西では広島、岡山などで栽培が多い。特に岡山は、黄ニラを地域振興作物としており、栽培が盛んである。しかし、栽培方法や緑化を防止する方法については明らかにされていない。
黄ニラの栽培方法については以下のような報告があり、紫外線をきのこに利用した特許文献がある。
【先行技術文献】
【0003】
【非特許文献】
【非特許文献】1)田口多喜子、田村晃、ニラ冬期伏込み軟化(黄ニラ)栽培技術の確立、第1報品種比較、東北農業研究、51、177−178(1998) 2)田口多喜子、田村晃、ニラ冬期伏込み軟化(黄ニラ)栽培技術の確立、第2報軟化温度と品質・収量、東北農業研究、51、179−180(1998) 3)内海修一、世界の野菜日本の野菜(107)黄ニラ編、野菜園芸技術、30号、p4−5(2003)
【特許文献】
【特許文献】1)青井すなお、黄にらの栽培方法、特許出願公告平成6−53027 2)月浦栄裕、紫外線照射きのこ及び紫外線照射きのこの製造方法、特許出願公開2004−222627
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
黄ニラは、青ニラの軟白栽培としての高付加価値が評価されているが、まだ一般的に普及されるまでに至っていない。その理由として、黄ニラは収穫後に光線に当てると葉緑体が形成され、緑色に変色するため、流通が難しいことがあげられる。現在の対策としては、暗所で栽培された黄ニラを急激に太陽光にさらすことで、葉緑体形成を抑え、美しい黄白色の状態を保っている。しかし、所定の期間に所要の太陽光に暴露しなければならないため、天候に左右されるところが大きかった。そのため収穫期を過ぎた場合に長さを調整する必要があり、流通過程では黄色が緑色に変化するなど苦情があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
あらかじめ地上部を切除した黄ニラ等に弱い紫外線を照射すると、葉緑体の生成を抑制することを発見した。本発明はこの発見に基づくものである。実際の紫外線源としてはUV殺菌灯(UV−C,200〜280nm)を使用し、照度60μW/cmから500μW/cmの紫外線を植物体に10分間から120分間照射することを特徴とする植物の緑化防止方法である。黄ニラ以外にホワイトアスパラや白ネギの緑化防止、2から4分割した白菜の緑化防止、各種のもやしやスプライト等の植物の緑化防止に応用することができる。
【発明の効果】
【0006】
黄ニラを収穫した後に強力な太陽光に暴露しなければないため、黄ニラの収穫は天候に左右されるところが大きくかった。本発明の方法を活用することにより、天候に左右されずに確実に黄色が保持される高級商品にすることができる。また、店頭においてホワイトアスパラや白ネギの緑化防止、分割した白菜やキャベツの緑化防止、各種のもやしやスプライト等の野菜の緑化を防止することができる。
【実施例1】
【0007】
収穫直後の黄ニラ(宮城県名取市北釜で栽培)を紫外線殺菌灯(東芝ライテックGL−1515W,UV−C)の下56cm離れた位置に置き、15分、30分、45分、60分、90分及び120分間紫外線を照射した。この時の紫外線照度をUVメーター(カスタム製UV−C254)で測定したところ130μW/cmであった。紫外線処理した黄ニラと対照の黄ニラを室内で蛍光灯(東芝ライテックF120SSEX−D)の下2.5mに24時間静置した。対照の0時間静置と24時間後の黄ニラの葉の部分を色彩色差計(ミノルタ社製CR250)でL、a、bを測定した。
【表1】

明度(L*)と目視により、45分間以上の紫外線処理により黄ニラの黄色が保存されることが分かった(表1)。医学分野では紫外線は、UA−A(315〜400nm),UV−B(280〜315nm)、UV−C(200〜280nm)の3種類に分類される。UV−AとUV−Bについても同様な調査を行ったが緑化防止効果が認められなかった。
【実施例2】
【0008】
湯沢市産の黄色い「ひろっこ」の入ったビニール袋の上側と下側に、紫外線(UV−C,220μW/cm)を片側に15分間ずつ合計30分間照射した。この「ひろっこ」を室内の明るい場所で静置し、上部の2メートルから蛍光灯(東芝ライテックF120SSEX−D)を72時間照射し続けたが、黄色のままとどまった。
【実施例3】
【0009】
収穫直後の黄ニラを紫外線殺菌灯(東芝ライテックGL−15 15W,UV−C)の下26cm離れた位置に置き20分間紫外線(400μW/cm)を照射した。紫外線処理した黄ニラと対照の黄ニラを室内で蛍光灯(東芝ライテックF120SSEX−D)の下2.5mに24時間静置したが、緑色変化は認められなかった。
【実施例4】
【0010】
収穫直後の黄ニラを紫外線殺菌灯(東芝ライテックGL−15 15W)の下80cm離れた位置に置き120分間紫外線(60μW/cm)を照射した。紫外線処理した黄ニラと対照の黄ニラを室内で蛍光灯(東芝ライテックF120SSEX−D)の下2.5mに24時間静置したが、緑色変化は認められなかった。
【実施例4】
【0010】
市販の白菜を半球に分割し一方の半球を紫外線殺菌灯(東芝ライテックGL−15 15W)の下36cm離れた位置に置き、紫外線(220μW/cm)を30分間照射した。紫外線処理した白菜をサランラップで包んだ状態で、直射日光の当たらない明るい場所に72時間静置した。白菜は緑に変化はしなかった。
【産業上の利用可能性】
【0011】
ホワイトアスパラ、白ネギ、「ひろっこ」の緑化防止、2から4分割した白菜やキャベツの緑化防止、各種のもやしやスプライト等の色々な野菜や植物の緑化防止に応用することができる。特にスーパーマーケット等の野菜販売の店頭で威力を発揮する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
照度60μW/cmから500μW/cmの紫外線(200〜280nm)を植物体に10分間から120分間照射することを特徴とする野菜や植物の緑化防止方法

【公開番号】特開2013−48615(P2013−48615A)
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−202364(P2011−202364)
【出願日】平成23年8月30日(2011.8.30)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.サランラップ
【出願人】(391046344)
【Fターム(参考)】