説明

植物の耐アルカリ性向上剤及び耐アルカリ性向上方法

【課題】植物の耐アルカリ性を向上させる薬剤や方法の提供。
【解決手段】次の一般式(1):


(式中、R1及びR2は各々独立して、水素原子、アルキル基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリール基又はアラルキル基を示し;R3はヒドロキシ基、アルコキシ基、アシルオキシ基、アルコキシカルボニルオキシ基、アリールオキシ基、アラルキルオキシ基又はアミノ基を示す。)
で表される5−アミノレブリン酸もしくはその誘導体又はそれらの塩と、鉄化合物と、単体硫黄とを含有することを特徴とする植物の耐アルカリ性向上剤(但し、アルカリ性がpH8.5以上の強アルカリ性を除く)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植物の耐アルカリ性向上剤、及びこれを処理することを特徴とする植物の耐アルカリ性向上方法に関する。
【背景技術】
【0002】
爆発的に増加する人口に対し人類は開墾や農業技術の改善で対処してきたが農耕に耐える良好な土壌を持つ未開墾地はほとんど残っていない。劣悪な土壌環境を克服して農業生産を行う技術の開発が急務である。劣悪な土壌環境の代表がアルカリ土壌であり、世界では膨大な面積の未開のアルカリ土壌が残されている。農業生産はもちろん地球環境の面からもアルカリ土壌地帯の緑化は重要である。
【0003】
アルカリ土壌の改質には土壌の入れ替え(客土)、アルカリの原因となる塩類を多量の水で洗い流すリーチング、酸や硫黄の処理による中和などの手法が知られているが、客土はコストが高く大面積には適用できないし排出した土壌が問題となる、リーチングはアルカリ土壌が乾燥地に分布していることを考えると現実的でない、また、酸や硫黄による中和は弱いアルカリ土壌では有効であるが、強アルカリ土壌の場合、確かにアルカリは中和されて改善されるが、処理された土壌では植物の生育が芳しくないという問題がある。
【0004】
また、これらの手法はあくまでも土壌に物理化学的処理を行うものであり、植物自身に作用させるものではない。かかる実情において植物に直接作用して、植物の耐アルカリ性を向上させる耐アルカリ性向上剤の開発や耐アルカリ性向上剤による植物の耐アルカリ性向上方法が切望されてきた。
【0005】
5−アミノレブリン酸、その誘導体及びそれらの塩は、植物の生長を促進し、低温耐性を向上させることや(特許文献1)、低照度での生育を向上させること(特許文献2)が知られている。また、劣悪土壌の問題を解決する技術として、これらを用いて植物の耐塩性を向上させる技術が知られている(特許文献3)。さらに、5−アミノレブリン酸の散布により、アルカリ土壌における葉菜の収量低下を防止できることが知られている(非特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平4−338305号公報
【特許文献2】特開平7−184479号公報
【特許文献3】特開平8−151304号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】植物化学調節学会研究発表記録集,37:87−88,2002
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、5−アミノレブリン酸単独による耐アルカリ性効果は十分ではなく、また、強アルカリ土壌条件下において植物の生長にどのような影響を与えるかについては知られていない。
本発明は、植物の耐アルカリ性を向上させる薬剤や方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記非特許文献1において、5−アミノレブリン酸とキレート鉄併用散布についての報告があるが、両者の併用散布区の葉菜収量はいずれも散布しない水処理区よりも低く、これらの併用による耐アルカリ性向上効果は全く認められないことが示されている。
ところが本発明者らは、植物のアルカリ障害について深く研究する中、強アルカリ土壌では、5−アミノレブリン酸、その誘導体又はそれらの塩に特定量の鉄化合物を組み合わせることで植物の耐アルカリ性が顕著に向上することを見出した。そしてさらに、これらと単体硫黄を併用することで、より耐アルカリ性が向上することを見出し、本発明を完成した。
【0010】
すなわち、本発明は、5−アミノレブリン酸、その誘導体又はそれらの塩と鉄化合物とを含有することを特徴とする植物の耐アルカリ性向上剤を提供するものである。
また、本発明は、この植物の耐アルカリ性向上剤を植物又は植物の生育している土壌若しくは培地に処理することを特徴とする植物の耐アルカリ性向上方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、植物の耐アルカリ性を向上させることができ、強アルカリ土壌における農業生産やアルカリ土壌の緑化が可能になる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本明細書において、アルカリ条件とは、植物がアルカリ障害を受ける条件をいい、該条件下の土壌をアルカリ土壌という。ゆえに、アルカリ土壌の定義は厳密には植物種毎になされるべきで、土壌のpHによりアルカリ土壌が定義される訳ではないが、通常、多くの植物が障害を受けるpH7以上をアルカリ土壌と呼び、pH8以上、特にpH8.5以上を強アルカリ土壌と呼ぶ。
【0013】
本発明の耐アルカリ性向上剤は、pH7以上で効果を発揮し、好ましくはpH7.5以上、より好ましくはpH8以上、更に好ましくはpH8.5以上、特に好ましくはpH8.8以上で顕著な効果を発揮する。また、当該pHの上限は13であるのが好ましい。ただし、先述の通り、アルカリ土壌は厳密には植物別に規定されるべきで、ここにすべての植物についてのアルカリ条件を定義することはできないがその概念を理解するために以下に幾つかの例を示す。
【0014】
ホウレンソウ。ホウレンソウは、好アルカリ植物で生育に至適の土壌pHは7.5付近であり、通常の植物ではアルカリ土壌であるが、このpHでの生育が最も旺盛である。しかしながら、ホウレンソウにおいても土壌のpHが8を超えると極端に生育が低下し、葉面の緑色が失われる。すなわち、ホウレンソウにとってのアルカリ土壌は、通常の植物よりpHの高い8以上となる。
【0015】
ブルーベリー。ブルーベリーは、好酸性植物で生育に至適の土壌のpHは5.5付近である。ブルーベリーは通常の植物の好適土壌pHである6.5で既にアルカリ障害を受け、生育の低下や葉の黄化が観察される。つまり、ブルーベリーにとってのアルカリ土壌は通常の植物より低い6.5以上となる。
【0016】
本発明で用いられる5−アミノレブリン酸、その誘導体又はそれらの塩は、植物に害を及ぼさない限りすべて使用可能であり、例えば、以下の一般式(1)で表されるものが用いられる。
【0017】
【化1】

【0018】
(式中、R1及びR2は各々独立して、水素原子、アルキル基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリール基又はアラルキル基を示し;R3はヒドロキシ基、アルコキシ基、アシルオキシ基、アルコキシカルボニルオキシ基、アリールオキシ基、アラルキルオキシ基又はアミノ基を示す。)
【0019】
一般式(1)中、R1及びR2で示されるアルキル基としては、炭素数1〜24の直鎖又は分岐鎖のアルキル基が好ましく、より好ましくは炭素数1〜18のアルキル基、特に炭素数1〜6のアルキル基が好ましい。炭素数1〜6のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基等が挙げられる。アシル基としては、炭素数1〜12の直鎖又は分岐鎖のアルカノイル基、アルケニルカルボニル基又はアロイル基が好ましく、特に炭素数1〜6のアルカノイル基が好ましい。当該アシル基としては、ホルミル基、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基等が挙げられる。アルコキシカルボニル基としては、総炭素数2〜13のアルコキシカルボニル基が好ましく、特に炭素数2〜7のアルコキシカルボニル基が好ましい。当該アルコキシカルボニル基としては、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、n−プロポキシカルボニル基、イソプロポキシカルボニル基等が挙げられる。アルール基としては、炭素数6〜16のアリール基が好ましく、例えば、フェニル基、ナフチル基等が挙げられる。アラルキル基としては、炭素数6〜16のアリール基と上記炭素数1〜6のアルキル基とからなる基が好ましく、例えば、ベンジル基等が挙げられる。
【0020】
一般式(1)中、R3で示されるアルコキシ基としては、炭素数1〜24の直鎖又は分岐鎖のアルコキシ基が好ましく、より好ましくは炭素数1〜16のアルコキシ基、特に炭素数1〜12のアルコキシ基が好ましい。当該アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、オクチルオキシ基、デシルオキシ基、ドデシルオキシ基等が挙げられる。アシルオキシ基としては、炭素数1〜12の直鎖又は分岐鎖のアルカノイルオキシ基が好ましく、特に炭素数1〜6のアルカノイルオキシ基が好ましい。当該アシルオキシ基としては、アセトキシ基、プロピオニルオキシ基、ブチリルオキシ基等が挙げられる。アルコキシカルボニルオキシ基としては、総炭素数2〜13のアルコキシカルボニルオキシ基が好ましく、特に総炭素数2〜7のアルコキシカルボニルオキシ基が好ましい。当該アルコキシカルボニルオキシ基としては、メトキシカルボニルオキシ基、エトキシカルボニルオキシ基、n−プロポキシカルボニルオキシ基、イソプロポキシカルボニルオキシ基等が挙げられる。アリールオキシ基としては、炭素数6〜16のアリールオキシ基が好ましく、例えば、フェノキシ基、ナフチルオキシ基等が挙げられる。アラルキルオキシ基としては、前記アラルキル基を有するものが好ましく、例えば、ベンジルオキシ基等が挙げられる。
【0021】
一般式(1)中、R1及びR2としては水素原子が好ましい。R3としてはヒドロキシ基、アルコキシ基又はアラルキルオキシ基が好ましく、より好ましくはヒドロキシ基又は炭素数1〜12のアルコキシ基、特にメトキシ基又はヘキシルオキシ基が好ましい。
【0022】
5−アミノレブリン酸誘導体としては、5−アミノレブリン酸メチルエステル、5−アミノレブリン酸エチルエステル、5−アミノレブリン酸プロピルエステル、5−アミノレブリン酸ブチルエステル、5−アミノレブリン酸ペンチルエステル、5−アミノレブリン酸ヘキシルエステル等が挙げられ、特に5−アミノレブリン酸メチルエステル又は5−アミノレブリン酸ヘキシルエステルが好ましい。
【0023】
5−アミノレブリン酸又はその誘導体の塩としては、特に制限されないが、無機酸又は有機酸の酸付加塩が好ましい。無機酸の付加塩としては、塩酸塩、臭化水素酸塩、硫酸塩、硝酸塩、リン酸塩等が挙げられ、有機酸の付加塩としては、酢酸塩、乳酸塩、クエン酸塩、酒石酸塩、コハク酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、アスコルビン酸塩等が挙げられる。5−アミノレブリン酸又はその誘導体の塩としては、特に5−アミノレブリン酸塩酸塩、5−アミノレブリン酸リン酸塩が好ましい。
【0024】
これらの塩は、化学合成、微生物や酵素を用いる方法のいずれの方法によっても製造できる。例えば、特開昭48−92328号公報、特開昭62−111954号公報、特開平2−76841号公報、特開平6−172281号公報、特開平7−188133号公報、特開平11−42083号公報等に記載の方法に準じて製造することができる。上記のようにして製造された5−アミノレブリン酸、その塩又はそれらの誘導体、それらの精製前の化学反応溶液や発酵液は、植物に害を及ばさない限り、分離精製することなくそのまま用いることができる。また市販品なども使用することができる。
【0025】
これらの5−アミノレブリン酸、その誘導体又はそれらの塩は、1種又は2種以上を組み合わせて用いることもできる。
【0026】
本発明に用いられる鉄化合物としては、鉄を含有する化合物であれば植物に害を及ばさない限り何を使用しても良いが、具体的には、金属鉄のほか、鉄の塩、鉄のキレート錯体等が挙げられる。塩としては、有機酸塩、無機酸塩が挙げられる。有機酸としては、ヒドロキシカルボン酸等のカルボン酸が挙げられる。カルボン酸としては、総炭素数が、2〜8のものが挙げられる。鉄のキレート錯体としては、以下の一般式(2)で表される化合物が挙げられる。
【0027】
【化2】

【0028】
(式中、m1、m2、m3及びm4は、それぞれ独立して1〜4の数を示し;R4、R5、R6及びR7はそれぞれ独立して−COO-又は−SO3-基を示し;Aは−(CH2m5−又は−(CH2m6−N[−(CH2m7−R8]−(CH2m8−で表される基を示し(ここで、m5、m6、m7及びm8は、それぞれ独立して1〜4の数を示し、R8は、−COO-又は−SO3-基を示す。);pは2又は3の数を示し;qは1〜3の数を示し;rは0〜2の数を示し;LはNH4又はアルカリ金属を示す。但し、Aが−(CH2m5−で表される基のとき、p+q+r=4であり、Aが−(CH2m6−N[−(CH2m7−R8]−(CH2m8−で表される基のとき、p+q+r=5である。)
【0029】
一般式(2)で表される化合物は、式中のR4、R5、R6及びR7が−COO-であるのが、より好ましい。また、式中のm1、m2、m3及びm4が1であるのが、より好ましい。一般式(2)で表される化合物は、式中のAが−(CH2m5−で表される基であり、かつp=3、q=1、r=0であるのが好ましく、中でも前記m5が2又は3であるのがより好ましい。また、一般式(2)で表される化合物は、式中のAが−(CH2m6−N[−(CH2m7−R8]−(CH2m8−で表される基であり、かつp=3、q=1、r=1であるのが好ましく、中でもm6、m7及びm8が1又は2であり、R8が−COO-基であり、LがNH4であるのがより好ましい。
【0030】
本発明で用いられる鉄化合物としては、例えば、酸化鉄、クエン酸鉄、コハク酸鉄、クエン酸鉄ナトリウム、クエン酸鉄アンモニウム、酢酸鉄、シュウ酸鉄、リンゴ酸鉄、コハク酸クエン酸鉄ナトリウム、ピロリン酸第一鉄、ピロリン酸第二鉄、デキストラン鉄、乳酸鉄、グルコン酸鉄、エチレンジアミン四酢酸鉄ナトリウム、エチレンジアミン四酢酸鉄カリウム、エチレンジアミン四酢酸鉄アンモニウム、ジエチレントリアミン五酢酸鉄ナトリウム、ジエチレントリアミン五酢酸鉄カリウム、ジエチレントリアミン五酢酸鉄アンモニウム、フルボ酸鉄、フミン酸鉄、リグニンスルホン酸鉄、塩化鉄、硝酸鉄、硫酸鉄、硫酸アンモニウム鉄、グリセロ燐酸鉄、酒石酸鉄、グリコール酸鉄等を挙げることができる。これら化合物から選ばれる1種又は2種以上の化合物を組み合わせることもできる。
【0031】
本発明の耐アルカリ性向上剤における、5−アミノレブリン酸、その誘導体又はそれらの塩と鉄化合物との濃度比は、その用途により異なるが、5−アミノレブリン酸、その誘導体又はそれらの塩100質量%に対して、鉄化合物は鉄換算で1〜10000質量%であればよい。特に強アルカリ土壌における耐アルカリ性を向上させる点から、5−アミノレブリン酸、その誘導体又はそれらの塩100質量%に対して、好ましくは20〜1000質量%であり、より好ましくは50〜1000質量%、更に好ましくは50〜300質量%であり、特に好ましくは80〜200質量%である。
【0032】
本発明の耐アルカリ性向上剤には、より植物の耐アルカリ性を向上させるために単体硫黄を配合するのが好ましい。ここで、単体硫黄は、硫黄原子のみによって構成される物質(S8、S6、S4、S2等)を意味するものでありその形態は限定されない。具体的には、単体硫黄は局法医薬品として市販されているものもあるが、本発明においては、汎用的に入手することができるものであれば、S8やS6等の混合物であってもよく、特にその純度も限定されない。また、固体であれば、粒形状、粉末状であってもよく、その粒径も限定されないが、粒子径が0.001〜10mm、さらに0.01〜5mm、特に0.01〜3mmが好ましい。
【0033】
本発明の単体硫黄を含む耐アルカリ性向上剤における、5−アミノレブリン酸、その誘導体又はそれらの塩と単体硫黄との濃度比は、その用途により異なるが、5−アミノレブリン酸、その誘導体又はそれらの塩1質量部に対して、単体硫黄は、質量比で100〜10000000倍であればよく、好ましくは1000〜1000000倍であり、更に好ましくは5000〜1000000倍である。
【0034】
本発明の耐アルカリ性向上剤には、5−アミノレブリン酸、その誘導体又はそれらの塩と鉄化合物、単体硫黄以外に、他の植物成長調節剤、糖類、アミノ酸、核酸、有機酸、アルコール、ビタミン、単体硫黄以外の硫黄、ミネラル等を配合することができる。ここで用いられる他の植物成長調節剤としては、例えば、エピブラシノライド等のブラシノライド類、塩化コリン、硝酸コリン等のコリン剤、インドール酪酸、インドール酢酸、エチクロゼート剤、1−ナフチルアセトアミド剤、イソプロチオラン剤、ニコチン酸アミド剤、ヒドロキシイソキサゾール剤、過酸化カルシウム剤、ベンジルアミノプリン剤、メタスルホカルブ剤、オキシエチレンドコサノール剤、エテホン剤、クロキンホナック剤、ジベレリン、ストレプトマイシン剤、ダミノジット剤、ベンジルアミノプリン剤、4−CPA剤、アンシミドール剤、イナベンフィド剤、ウニコナゾール剤、クロルメコート剤、ジケブラック剤、ダミノジット剤、メフルイジド剤、炭酸カルシウム剤、ピペロニルブトキシド剤等を挙げることができる。
【0035】
糖類としては、例えば、グルコース、シュクロース、キシリトール、ソルビトール、ガラクトース、キシロース、マンノース、アラビノース、マジュロース、スクロース、リボース、ラムノース、フラクトース、マルトース、ラクトース、マルトトリオース等が挙げられる。
【0036】
アミノ酸としては、例えば、アスパラギン、グルタミン、ヒスチジン、チロシン、グリシン、アルギニン、アラニン、トリプトファン、メチオニン、バリン、プロリン、ロイシン、リジン、イソロイシン、エクトイン等を挙げることができる。
【0037】
核酸としては、RNA、DNA等が挙げられる。
【0038】
有機酸としては、例えば、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、シュウ酸、フタル酸、安息香酸、乳酸、クエン酸、酒石酸、マロン酸、リンゴ酸、コハク酸、グリコール酸、グルタミン酸、アスパラギン酸、マレイン酸、カプロン酸、カプリル酸、ミリスチン酸、ステアリン酸、パルミチン酸、ピルビン酸、α−ケトグルタル酸、レブリン酸等を挙げることができる。
【0039】
アルコールとしては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、グリセロール等が挙げられる。
【0040】
ビタミン類としては、例えば、ニコチン酸アミド、ビタミンB6、ビタミンB12、ビタミンB5、ビタミンC、ビタミンB13、ビタミンB1、ビタミンB3、ビタミンB2、ビタミンK3、ビタミンA、ビタミンD2、ビタミンD3、ビタミンK1、α−トコフェロール、β−トコフェロール、γ−トコフェロール、δ−トコフェロール、p−ヒドロキシ安息香酸、ビオチン、葉酸、ニコチン酸、パントテン酸、α−リポニック酸等を挙げることができる。
【0041】
また、本願発明の一部を構成する単体硫黄以外の硫黄としては、例えば、硫酸、亜硫酸、チオ硫酸、硫酸水素、亜硫酸水素、スルホン酸等を挙げることができる。
【0042】
ミネラルとしては、例えば、チッソ、リン酸、カリウム、ホウ素、マンガン、マグネシウム、亜鉛、銅、モリブデン等を挙げることができる。
【0043】
本発明の耐アルカリ性向上剤の剤型としては、粉剤、粒剤、液剤、フロアブル剤等が挙げられるが、これらの剤型とするには溶剤、分散媒、増量剤等を用いて、常法に従って製造することができる。特に本発明の単体硫黄を含む耐アルカリ性向上剤においては粉剤、粒剤等固体剤型が好ましい。
【0044】
本発明の耐アルカリ性向上剤の適用対象となる植物としては、特に限定されず、穀物類、野菜類、果樹類、花卉類、樹木類、豆類、芝類、イモ類、ネギ類、牧草類等が挙げられる。
【0045】
具体的には、コマツナ等のアブラナ科植物、ワタ等のアオイ科植物、トウモロコシ等のイネ科植物、ヒマワリ等のキク科植物、トマト等のナス科植物のほか、ダイズ、インゲン、ソラマメ、ハクサイ、シソ、メンドウフェスク、リードカナリー、アルサイククローバ、シロクローバ、ラジノクローバ、パンゴラグラス、カラードギニアグラス、ギニアグラス、ダリスグラス、グリーンリーフデスモディム、クズ、タマネギ、アスパラガス、エンドウ、キャベツ、カラシナ、ニンジン、シュンギク、アカクローバ、クリムソンクローバ、レンゲ、ローズグラス、グリーンパニック、オオムギ、ソルガム、ミズナ、ヘチマ、ビート、ホウレンソウ、ナス、トウガラシ、レタス、ゴボウ、アルファルファ、ブッフェルグラス、アワ、カボチャ、カブ、ピーマン、ミカン、リンゴ、カキ、ウメ、ナシ、ブドウ、モモ、サツキ、クヌギ、スギ、ヒノキ、ナラ、ブナ、アズキ、ラッカセイ、エンドウ、コウライシバ、ベントグラス、ノシバ、ジャガイモ、サツマイモ、サトイモ、ヤマイモ、タロイモ、ネギ、ラッキョウ、キク、バラ、ユリ、シクラメン、ポインセチア、フクシア、ハナショウブ、キンギョソウ、パフィオペディルム、シンビジウム、カーネーション、ストック、ペチュニア、チューリップ、ジニア、マリーゴールド、プリムラ類、マーガレット、アスター、キンセンカ、シネラリア、ゼラニウム、ガーベラ、スイートピー、ジャーマンアイリス、パンジー、ラン、シャクヤク等が挙げられる。
【0046】
特に、好酸性土壌の植物では通常の土壌でもアルカリストレスを受けているので、アルカリ土壌のみならず、通常土壌でも効果が見えやすい。このような作物としては、イネ、エンバク、ライムギ、ソバ、茶、クランベリー、オーチャードグラス、トールフフェスク、イタリアンライグライス、トールオートグラス、バードフットトレフォイル、ハギ、バーミューダグラス、モラッセスグラス、マイルズロトノニス、スタイロ、コムギ、トウモロコシ、ヒエ、キビ、ダイコン、ルタバガ、ウイーピングラブグラス、バヒアグラス、ネピアグラス、セントロ、ブルーベリー、リンゴ、ツツジ、アザレア、ガーデニア、ベゴニア類、アジアンタム、ネフレロピス、アナナス、スズラン、アゲラータム、カラー、クレマチス等が挙げられる。
【0047】
本発明の耐アルカリ性向上剤を植物に適用するには、茎葉処理用(茎葉処理剤)として、土壌処理用(土壌処理剤)として、又は煙霧処理用(煙霧処理剤)として用いることができる。特に単体硫黄を含む本発明の耐アルカリ性向上剤を植物に適用する場合、土壌処理用(土壌処理剤)として用いるのが好ましい。また、植物の植えつけや、挿し木等をする前に植物に吸収させてもよい。さらに、水耕栽培時に水中に添加しておいてもよい。
なお、単体硫黄を含むか否かに関わらず、本発明の耐アルカリ性向上剤は、植物又は植物の生育している土壌や培地に対し複数回処理することができ、また、5−アミノレブリン酸、その誘導体又はそれらの塩と鉄化合物、単体硫黄とを個別に処理することできる。個別に処理する場合の処理方法は、同一でも異なっていてもよい。この場合、耐アルカリ性向上剤と単体硫黄の用いる順序及び時間間隔も特に限定されず、また個別に複数回用いることもできる。
以下に、各適用方法における耐アルカリ性向上剤の使用方法を記載するが、5−アミノレブリン酸類の濃度等を基準にしているものの、鉄化合物、さらには単体硫黄も前記比率で組み合わせて用いるのが好ましい。
【0048】
本発明の耐アルカリ性向上剤を茎葉処理剤として用いる場合、5−アミノレブリン酸、その誘導体又はそれらの塩を0.1〜1000ppm、好ましくは0.5〜500ppm、特に好ましくは0.5〜300ppmの濃度で溶媒に含有せしめ、これを10アール当り10〜1000L、特に50〜300L用いるのが好ましい。単子葉植物等の葉面に薬剤が付着しにくい植物に対して用いる場合には、展着剤を併用することが望ましい。用いる展着剤の種類及び使用量については、特に制限されない。
【0049】
本発明の耐アルカリ性向上剤を土壌処理剤として用いる場合、5−アミノレブリン酸、その誘導体又はそれらの塩として10アール当り1〜1000g、特に10〜500g用いるのが好ましい。水耕栽培では、これらの半量を用いるのが好ましい。
【0050】
本発明の耐アルカリ性向上剤を煙霧処理剤として用いる場合、5−アミノレブリン酸、その誘導体又はそれらの塩を0.1〜1000ppm、好ましくは0.5〜500ppmの濃度で溶媒に含有せしめ、これを10アール当り10〜1000L、特に50〜300L用いるのが好ましい。
【0051】
本発明の耐アルカリ性向上剤を植えつけ前に植物につけ込んで5−アミノレブリン酸、その誘導体又はそれらの塩を吸収させるような方法をとる場合、つけ込む液中の5−アミノレブリン酸、その誘導体又はそれらの塩の濃度は0.001〜10ppm、特に0.01〜5ppmであることが好ましく、つけ込み時間は1時間以上1週間以内、特に3時間以上1日以内が好ましい。
【0052】
いずれの処理も植物の成育のどのフェーズで行っても効果が得られるが、特に幼苗期や子実充実期に行うと効果が大きい。処理は1回処理でも十分な効果が得られるが、複数回処理することにより、さらに効果を高めることができる。複数回処理する場合は、先に述べた各方法を組み合わせることもできる。使用上の簡便性により、他の農薬、肥料等と混合して用いる場合は、本発明の耐アルカリ性向上剤の効果を失わせるものでない限りどのようなものと混合してもよい。
【実施例】
【0053】
以下、実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0054】
実施例1〜6並びに比較例1〜3
1/5000aのポットに黒ぼく土壌を充填し、コマツナ(品種;カルビタ、野原種苗(株))を播種し本葉3枚の時点で一鉢あたり良くそろった5株を残し間引きを行った。表1に示す組成の薬剤の0.05重量%水溶液を一鉢当たり各5mL茎葉処理(硫黄については、表1に示す量を粉末硫黄(和光純薬工業(株)製「硫黄、粉末」以下、同じ。)にて別途、土壌処理)し、3日後に0.5mol/L濃度の炭酸ナトリウム/炭酸水素ナトリウム水溶液緩衝液(pH9.0)を底面灌水した。その後1週間に地上部生体重を測定し、生育状況を調べた。
結果を表1に併せて示す。なお、比較例1では、薬剤の水溶液の代わりに水を用いた。
【0055】
【表1】

【0056】
表1より明らかなように、5−アミノレブリン酸塩酸塩と鉄化合物の組み合わせにより、植物の耐アルカリ性が向上し、アルカリ障害が回避されることがわかった。特に、これはEDTA鉄やDTPA鉄といったキレート鉄との組み合わせで顕著であることがわかった。また、さらに硫黄と組合せることで、より植物の耐アルカリ性が向上し、アルカリ障害が回避されることもわかった。
【0057】
実施例7
Ca換算で5質量%になるように畑土壌に炭酸カルシウムを追加し、さらに炭酸ナトリウム水溶液を適量添加して、よく混合し、pHが8.8のアルカリ土壌を作製した。得られたアルカリ土壌に、元肥として化成肥料をN換算10kg/10aで施し、1/5000aのポットに充填して、コマツナ(品種;カルビタ、野原種苗(株))を10粒播種し、温室内で栽培した。10日後によくそろった大きさの苗を各ポットあたり5本ずつ残して間引きし、表2に示す組成の薬剤の0.05質量%水溶液を間引き後より2週間に1回の頻度で、各ポットあたり5mLずつスプレーで茎葉散布した。その後通常の管理を行い、播種27日後に土壌を水で洗い流して収穫し、地上部長を測定した。その後80℃の乾燥機で24時間乾燥させ、地上部重を1本ずつ測定した。
測定したものの平均値を、実験条件とともに表2に併せて示す。
【0058】
実施例8
薬剤の量を変えたこと以外は実施例7と同様に試験を実施した。結果を表2に示す。
【0059】
実施例9
さらに硫黄を他の薬剤を茎葉散布と同時に土壌処理したこと以外は実施例7と同様に試験を実施した。結果を表2に示す。
【0060】
比較例4
薬剤を処理しなかったこと以外は実施例7と同様に試験を実施した。結果を表2に示す。
【0061】
比較例5
薬剤を代えた以外は実施例7と同様に試験を実施した。結果を表2に示す。
【0062】
比較例6
薬剤を代えた以外は実施例7と同様に試験を実施した。結果を表2に示す。
【0063】
比較例7
薬剤を代えた以外は実施例7と同様に試験を実施した。結果を表2に示す。
【0064】


【表2】

【0065】
表2より明らかなように、5−アミノレブリン酸塩酸塩と鉄化合物との組み合わせにより、植物の耐アルカリ性向上効果が認められた。5−アミノレブリン酸塩酸塩単剤処理である比較例5との比較から、これらの効果が単に公知の5−アミノレブリン酸塩酸塩の植物成長促進効果とは異なることは明らかである。また、実施例7と8の比較により、強アルカリ土壌では、5−アミノレブリン酸塩酸塩に鉄化合物を特定量添加することでより顕著な耐アルカリ性向上効果が認められた。さらに、硫黄との組合せにより、5−アミノレブリン酸塩酸塩の効果と相乗するような植物の顕著な耐アルカリ性向上効果が認められた。
【0066】
実施例10
pHが7.6の土壌を作製したこと以外は実施例7と同様に試験を実施した。結果を表3に示す。
【0067】
実施例11
薬剤の量を変えたこと以外は実施例10と同様に試験を実施した。結果を表3に示す。
【0068】
実施例12
さらに硫黄を他の薬剤を茎葉散布と同時に土壌処理したこと以外は実施例10と同様に試験を実施した。結果を表3に示す。
【0069】
比較例8
薬剤を処理しなかったこと以外は実施例10と同様に試験を実施した。結果を表3に示す。
【0070】
【表3】

【0071】
表3より明らかなように、pHが7.6の土壌を用いた場合にも、5−アミノレブリン酸塩酸塩と鉄化合物、さらに硫黄との組み合わせによる植物の耐アルカリ性向上効果が認められた。
【0072】
実施例13
Ca換算で5質量%になるように畑土壌に炭酸カルシウムを追加し、さらに炭酸ナトリウム水溶液を適量添加して、よく混合し、pHが8.8のアルカリ土壌を作製した。得られたアルカリ土壌に、元肥として化成肥料をN換算10kg/10aで施し、1/5000aのポットに充填して、9月22日にワタ(品種;ドワーフコットン、(株)サカタのタネ)を6粒播種し、温室内で栽培した。10日後によくそろった大きさの苗を各ポットあたり3本ずつ残して間引きし、表4に示す組成の薬剤の0.05質量%水溶液を間引き後より2週間に1回の頻度で、各ポットあたり5mLずつスプレーで茎葉散布した。その後通常の管理を行い、11月7日に土壌を水で洗い流して収穫し、地上部長を測定した。その後80℃の乾燥機で24時間乾燥させ、地上部重を1本ずつ測定した。
測定したものの平均値を、実験条件とともに表4に併せて示す。
【0073】
実施例14
さらに硫黄を他の薬剤を茎葉散布した1日後に土壌処理したこと以外は実施例13と同様に試験を実施した。結果を表4に示す。
【0074】
比較例9
薬剤を処理しなかったこと以外は実施例13と同様に試験を実施した。結果を表4に示す。
【0075】
比較例10
薬剤を代えた以外は実施例13と同様に試験を実施した。結果を表4に示す。
比較例11
薬剤を代えた以外は実施例13と同様に試験を実施した。結果を表4に示す。
【0076】
【表4】

【0077】
表4より明らかなように、5−アミノレブリン酸塩酸塩と鉄化合物、さらに硫黄との組合せによる植物の顕著な耐アルカリ性向上効果が認められた。
【0078】
実施例15
pHが8.5の土壌を作製し、かつ薬剤の量を変えたこと以外は実施例13と同様に試験を実施した。結果を表5に示す。
【0079】
実施例16
薬剤の量を変えた以外は実施例15と同様に試験を実施した。結果を表5に示す。
【0080】
比較例12
薬剤を処理しなかったこと以外は実施例15と同様に試験を実施した。結果を表5に示す。
【0081】
【表5】

【0082】
表5より明らかなように、pHが8.5の土壌を用いた場合にも、5−アミノレブリン酸塩酸塩と鉄化合物、特に特定量の鉄化合物との組み合わせによる植物の耐アルカリ性向上効果が認められた。
【0083】
実施例17
Ca換算で5質量%になるように畑土壌に炭酸カルシウムを追加し、さらに炭酸ナトリウム水溶液を適量添加して、よく混合し、pHが8.7のアルカリ土壌を作製した。得られたアルカリ土壌に、元肥として化成肥料をN換算10kg/10aで施し、1/5000aのポットに充填して、11月15日にトウモロコシ(品種;あまいバンタム90、(株)トーホク)を4粒播種し、温室内で栽培した。12日後によくそろった大きさの苗を各ポットあたり2本ずつ残して間引きし、表6に示す組成の薬剤の0.05質量%水溶液を間引き後より2週間に1回の頻度で、各ポットあたり5mLずつスプレーで茎葉散布した。その後通常の管理を行い、12月26日に土壌を水で洗い流して収穫し、地上部長を測定した。その後80℃の乾燥機で24時間乾燥させ、地上部重を1本ずつ測定した。測定したものの平均値を、実験条件とともに表6に併せて示す。
【0084】
実施例18
さらに硫黄を他の薬剤を茎葉散布と同時に土壌処理したこと以外は実施例17と同様に試験を実施した。結果を表6に示す。
【0085】
比較例13
薬剤を処理しなかったこと以外は実施例17と同様に試験を実施した。結果を表6に示す。
【0086】
比較例14
薬剤を代えた以外は実施例17と同様に試験を実施した。結果を表6に示す。
【0087】
比較例15
薬剤を代えた以外は実施例17と同様に試験を実施した。結果を表6に示す。
【0088】
【表6】

【0089】
表6より明らかなように、5−アミノレブリン酸塩酸塩と鉄化合物、さらに硫黄との組合せによる植物の顕著な耐アルカリ性向上効果が認められた。
【0090】
実施例19
培養土(たねまき倍土、(株)タキイ、440mg−N/L 390mg−P/L 410mg−K/L)に芝の目土を1:1の割合で混ぜた土壌に、Ca換算で5質量%になるように炭酸カルシウムを追加し、さらに炭酸ナトリウム水溶液を適量添加して、よく混合し、pHが8.8のアルカリ土壌を作製した。得られたアルカリ土壌を6号鉢(表面積177cm2)に充填して、6月13日にヒマワリ(品種;パチノゴールド、(株)タキイ)を4粒播種し、温室内で栽培した。14日後によくそろった大きさの苗を各ポットあたり2本ずつ残して間引きし、表7に示す組成の薬剤の0.05質量%水溶液を間引き後より2週間に1回の頻度で、各ポットあたり5mLずつスプレーで茎葉散布した。その後通常の管理を行い、8月10日に地上部長と乾燥地上部重を測定した。測定したものの平均値を、実験条件とともに表7に併せて示す。
【0091】
実施例20
さらに硫黄を他の薬剤を茎葉散布と同時に土壌処理したこと以外は実施例19と同様に試験を実施した。結果を表7に示す。
【0092】
比較例16
薬剤を処理しなかったこと以外は実施例19と同様に試験を実施した。結果を表7に示す。
【0093】
比較例17
薬剤を代えたこと以外は実施例19と同様に試験を実施した。結果を表7に示す。
【0094】
比較例18
薬剤を代えた以外は実施例19と同様に試験を実施した。結果を表7に示す。
【0095】
【表7】

【0096】
表7より明らかなように、5−アミノレブリン酸塩酸塩と鉄化合物、さらに硫黄との組合せによる植物の顕著な耐アルカリ性向上効果が認められた。
【0097】
実施例21
Ca換算で5質量%になるように畑土壌に炭酸カルシウムを追加し、さらに炭酸ナトリウム水溶液を適量添加して、よく混合し、pHが8.8のアルカリ土壌を作製した。得られたアルカリ土壌に、元肥として化成肥料をN換算10kg/10aで施し、1/5000aのポットに充填して、6月6日にトマト苗(品種;強力米寿、野原種苗(株))を定植し、温室内で栽培した。定植後より2週間に1回の頻度で、表8に示す組成の薬剤の0.05質量%水溶液を各ポットあたり5mLずつスプレーで茎葉散布した。その後通常の管理を行い、7月6日に土壌を水で洗い流して収穫し、その後80℃の乾燥機で24時間乾燥させ、地上部重を1本ずつ測定した。測定したものの平均値を、実験条件とともに表8に併せて示す。
【0098】
実施例22
さらに硫黄を他の薬剤を茎葉散布と同時に土壌処理したこと以外は実施例21と同様に試験を実施した。結果を表8に示す。
【0099】
比較例19
薬剤を処理しなかったこと以外は実施例21と同様に試験を実施した。結果を表8に示す。
【0100】
比較例20
薬剤を代えた以外は実施例21と同様に試験を実施した。結果を表8に示す。
【0101】
比較例21
薬剤を代えた以外は実施例21と同様に試験を実施した。結果を表8に示す。
【0102】
【表8】

【0103】
表8より明らかなように、5−アミノレブリン酸塩酸塩と鉄化合物、さらに硫黄との組合せによる植物の顕著な耐アルカリ性向上効果が認められた。
【0104】
実施例23
Ca換算で5質量%になるように畑土壌に炭酸カルシウムを追加し、さらに炭酸ナトリウム水溶液を適量添加して、よく混合し、pHが8.8のアルカリ土壌を作製した。得られたアルカリ土壌に、元肥として化成肥料をN換算10kg/10aで施し、1/5000aのポットに充填して、コマツナ(品種;カルビタ、野原種苗(株))を10粒播種し、温室内で栽培した。10日後によくそろった大きさの苗を各ポットあたり5本ずつ残して間引きし、表9に示す組成の薬剤の0.05質量%水溶液を間引き後より2週間に1回の頻度で、各ポットあたり10mLずつ土壌表面から処理した。その後通常の管理を行い、播種27日後に土壌を水で洗い流して収穫し、地上部長を測定した。その後80℃の乾燥機で24時間乾燥させ、地上部重を1本ずつ測定した。測定したものの平均値を、実験条件とともに表9に併せて示す。
【0105】
実施例24
さらに硫黄を他の薬剤を茎葉散布と同時に土壌処理したこと以外は実施例23と同様に試験を実施した。結果を表9に示す。
【0106】
比較例22
薬剤を処理しなかったこと以外は実施例23と同様に試験を実施した。結果を表9に示す。
【0107】
比較例23
薬剤を代えた以外は実施例23と同様に試験を実施した。結果を表9に示す。
【0108】
比較例24
薬剤を代えた以外は実施例23と同様に試験を実施した。結果を表9に示す。
【0109】
比較例25
薬剤を代えた以外は実施例23と同様に試験を実施した。結果を表9に示す。
【0110】
【表9】

【0111】
表9より明らかなように、土壌処理した場合でも、5−アミノレブリン酸塩酸塩と鉄化合物、さらに硫黄との組合せによる植物の顕著な耐アルカリ性向上効果が認められた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の一般式(1):
【化1】

(式中、R1及びR2は各々独立して、水素原子、アルキル基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリール基又はアラルキル基を示し;R3はヒドロキシ基、アルコキシ基、アシルオキシ基、アルコキシカルボニルオキシ基、アリールオキシ基、アラルキルオキシ基又はアミノ基を示す。)
で表される5−アミノレブリン酸もしくはその誘導体又はそれらの塩と、鉄化合物と、単体硫黄とを含有することを特徴とする植物の耐アルカリ性向上剤(但し、アルカリ性がpH8.5以上の強アルカリ性を除く)。
【請求項2】
5−アミノレブリン酸もしくはその誘導体又はそれらの塩100質量%に対して、鉄化合物を鉄換算で20〜1000質量%含有する請求項1記載の植物の耐アルカリ性向上剤。
【請求項3】
5−アミノレブリン酸もしくはその誘導体又はそれらの塩1質量部に対して、単体硫黄を質量比で100〜10000000倍含有する請求項1又は2記載の植物の耐アルカリ性向上剤。
【請求項4】
鉄化合物が、酸化鉄、クエン酸鉄、コハク酸鉄、クエン酸鉄ナトリウム、クエン酸鉄アンモニウム、酢酸鉄、シュウ酸鉄、リンゴ酸鉄、コハク酸クエン酸鉄ナトリウム、ピロリン酸第一鉄、ピロリン酸第二鉄、デキストラン鉄、乳酸鉄、グルコン酸鉄、エチレンジアミン四酢酸鉄ナトリウム、エチレンジアミン四酢酸鉄カリウム、エチレンジアミン四酢酸鉄アンモニウム、ジエチレントリアミン五酢酸鉄ナトリウム、ジエチレントリアミン五酢酸鉄カリウム、ジエチレントリアミン五酢酸鉄アンモニウム、フルボ酸鉄、フミン酸鉄、リグニンスルホン酸鉄、塩化鉄、硝酸鉄、硫酸鉄、硫酸アンモニウム鉄、グリセロ燐酸鉄、酒石酸鉄及びグリコール酸鉄から選ばれる1種又は2種以上である請求項1〜3のいずれか1項記載の植物の耐アルカリ性向上剤。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項記載の植物の耐アルカリ性向上剤を、植物又は植物の生育している土壌若しくは培地に処理することを特徴とする植物の耐アルカリ性向上方法。

【公開番号】特開2013−56936(P2013−56936A)
【公開日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−268974(P2012−268974)
【出願日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【分割の表示】特願2009−508896(P2009−508896)の分割
【原出願日】平成20年3月28日(2008.3.28)
【出願人】(000105567)コスモ石油株式会社 (443)
【Fターム(参考)】