植物の育成方法
【課題】新鮮なままの植物を消費者等に提供することが可能な植物の育成方法を提供する。
【解決手段】本発明の植物の育成方法は、第1のエリア1にて植物を育てた後、当該植物を水耕栽培が可能な輸送装置104を用いて当該第1のエリア1から第2のエリア9まで輸送しながらさらに育てる。この後、第2のエリア9に設置され且つ植物の成長速度を抑制する成長抑制手段5を備えた水耕栽培が可能なディスプレイ装置4,110を用いて、第2のエリア9に搬入された植物を、前記成長抑制手段5により成長速度を抑制した状態でディスプレイしながらさらに育てる。
【解決手段】本発明の植物の育成方法は、第1のエリア1にて植物を育てた後、当該植物を水耕栽培が可能な輸送装置104を用いて当該第1のエリア1から第2のエリア9まで輸送しながらさらに育てる。この後、第2のエリア9に設置され且つ植物の成長速度を抑制する成長抑制手段5を備えた水耕栽培が可能なディスプレイ装置4,110を用いて、第2のエリア9に搬入された植物を、前記成長抑制手段5により成長速度を抑制した状態でディスプレイしながらさらに育てる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植物の育成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、植物を育成する様々な方法が知られている。例えば特許文献1には、水耕栽培装置を用いて植物を栽培する育成方法が記載されている。この特許文献1記載の育成方法は、水耕栽培装置が設置された植物栽培工場において、水耕栽培により植物を育て、当該植物が成長して成熟した後にこの植物を収穫して出荷する。通常、植物栽培工場において生育した植物は、特許文献1に記載されているように、根を切断して収穫される。そして収穫された植物は、根が切り離された状態で梱包され出荷される。
【0003】
この後、植物は、根が切断された状態のまま植物栽培工場等から出荷され、輸送装置等によって販売場所等に輸送される。輸送後の植物は、根が切り離された状態で陳列台にディスプレイされ、消費者等に販売・提供等される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−236764号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、根が切り離された状態の植物は、水分の吸収ができない上に、蒸散作用により水分を放出するため、萎れやすく、直ぐに新鮮さを失ってしまう。このため従来の方法では、植物栽培工場等で植物を育てて収穫した直後にすぐに出荷したとしても、収穫の際に根を切断してしまうことで、植物は輸送中に水分を放出してしまい、ディスプレイを開始した時点では既に新鮮さを失ってしまう。すなわち従来方法では、新鮮な植物を消費者等に提供することが難しいという問題があった。
【0006】
しかも根が切り離された植物は、根が切断されてから時間が経過するに従って、ますます萎れてしまう。すなわち、根が切断された植物は傷みが早いため、ディスプレイを開始してからそれほど時間が経過していないにもかかわらず、傷んでしまって廃棄しなければならない場合が多いという問題もあった。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、新鮮なままの植物を消費者等に提供することが可能な植物の育成方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の植物の育成方法は、第1のエリア1にて植物を育てた後、当該植物を水耕栽培が可能な輸送装置104を用いて当該第1のエリア1から第2のエリア9まで輸送しながらさらに育て、この後、第2のエリア9に設置され且つ植物の成長速度を抑制する成長抑制手段5を備えた水耕栽培が可能なディスプレイ装置4,110を用いて、第2のエリア9に搬入された植物を、前記成長抑制手段5により成長速度を抑制した状態でディスプレイしながらさらに育てることを特徴とする。
【0009】
このように植物を、第1のエリア1で育て、第1のエリア1から第2のエリア9までの輸送中に育て、さらに第2のエリア9で育てながらディスプレイすることで、消費者等に提供する直前まで植物を育て続けることができる。これにより新鮮なままの植物を消費者等に提供することができる。しかも、成長速度が抑制された状態で植物をディスプレイすることで、成熟期等の期間(すなわち消費者等に提供可能な期間)を長く保ちながら植物を陳列することができる。
【0010】
またこの植物の育成方法において、前記第1のエリア1において、前記植物が成熟するまで又はその直前まで植物を育て、その後、当該植物を前記第2のエリア9に輸送することが好ましい。
【0011】
またこの植物の育成方法において、前記第1のエリア1には水耕栽培装置2が設置されており、当該第1のエリア1ではこの水耕栽培装置2を用いて植物を育てることが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明の植物の育成方法によれば、新鮮なままのみずみずしい植物を消費者等に提供することができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本実施形態の植物の育成方法により育てた植物の成長度と日数との関係を示すグラフである。
【図2】本実施形態の植物の育成方法において、第1のエリアで使用する水耕栽培装置である。
【図3】本実施形態の植物の育成方法において、第1のエリアとしての植物工場を示す斜視図である。
【図4】本実施形態の植物の育成方法において、第2の育成ステップに使用する栽培容器を示す側断面図である。
【図5】本実施形態の植物の育成方法において、第2の育成ステップに使用する吸水体の装着方法を説明するための図である。
【図6】本実施形態の植物の育成方法において、第2のエリアで使用するディスプレイ装置を示す斜視図である。
【図7】本実施形態の植物の育成方法において、第2のエリアで使用するディスプレイ装置を示す側断面図である。
【図8】本実施形態のディスプレイ装置の変形例を示す図であり(a)は正面図であり(b)は側面図である。
【図9】本実施形態の植物の育成方法を使用した管理システムを示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について添付図面に基づいて説明する。
【0015】
本実施形態の植物の育成方法は、第1のエリア1において植物を成熟期(食に供される植物であれば、いわゆる食べ頃をいう)またはその直前まで育てる第1の育成ステップと、第1のエリア1から第2のエリア9へと植物を輸送しながら育てる第2の育成ステップと、第2のエリア9において植物を陳列しながら育てる第3の育成ステップとを含んでいる。本実施形態の植物の育成方法は、各ステップにおいて水耕栽培により植物の育成を行なう。
【0016】
第1の育成ステップは、第1のエリア1において行われる。第1の育成ステップは、植物の播種から成熟期又はその直前までの植物の育成を行なう。本実施形態の第1のエリア1は、播種・育苗・定植するための場所であり、具体的に植物工場10により構成されている。本実施形態の植物工場10は、水耕栽培装置2を備えている。
【0017】
水耕栽培装置2は、図2に示されるように、上下複数段となるよう棚板202が並設された栽培棚本体20と、棚板202に載置され且つ内部に液肥が収容される栽培ベッド21と、この栽培ベッド21に水耕栽培された植物に対し光を照射して当該植物の成長を促進する育成光照射部22とを備えている。またこの水耕栽培装置2は、栽培ベッド21内の液肥を循環させる液肥循環装置23をさらに備えている。本実施形態の水耕栽培装置2は、図3に示されるように、植物工場10内において、作業者の通行可能な通路11を介して、互いに対向するよう複数配置されている。
【0018】
栽培棚本体20は、図2に示されるように、横方向に一定の間隔をおいて並設された複数の支柱201と、この支柱201間に架設された複数の棚板202とを備えており、この支柱201と棚板202とが固着一体化されることで構成されている。
【0019】
栽培ベッド21は、水耕栽培が可能な液肥を内部に収容する栽培用槽211と、この栽培用槽211上に配設され且つ植物を挿入可能な栽培用孔213が複数穿設された栽培パネル212とを備えている。栽培用槽211は、栽培棚本体20の長手方向に沿って長く形成されており、上方が開口する有底箱形状となっている。栽培用槽211は、上下方向に内外を貫通するオーバーフロー管214が設けられており、このオーバーフロー管214により、当該栽培用槽211に収容された液肥の液面が一定の高さに保たれる。なおこの液肥の液面は、オーバーフロー管214の上開口と略同レベルとなる。
【0020】
栽培パネル212は、栽培用槽211を閉塞するよう設置される。本実施形態の栽培パネル212は、例えば発泡スチロール等からなる樹脂材により構成されている。栽培パネル212は、その形状が、栽培用槽211の開口に嵌まり込むよう形成されており、平面視略長矩形状となっている。栽培パネル212は、栽培用孔213が、長手方向に略同ピッチで複数配置され且つ、長手方向とは直角な方向に所定寸法離間して2列となるよう穿設されている。
【0021】
液肥循環装置23は、栽培ベッド21内に収容された液肥を循環させる機能を有する。液肥循環装置23は、図2に示されるように、液肥を収容する液肥タンク231と、この液肥タンク231と各栽培ベッド21とを連通接続する供給路232と、供給路232内に液肥が流通するよう液肥タンク231内の液肥を送出する循環ポンプ233とを備えている。さらに液肥循環装置23は、栽培ベッド21のオーバーフロー管214の下開口と液肥タンク231内とを連通接続する液戻し路234を備えている。
【0022】
液肥タンク231は、内部に循環用の液肥(培養液)が収容される。本実施形態の液肥タンク231は、栽培棚本体20の最下段に設置されている。本実施形態の液肥タンク231は、内部に収容される液肥のEC(電気伝導率;Electrical Conductivity)値を管理する濃度管理装置(図示せず)が取り付けられている。EC値を管理することで、液肥に含まれる塩類濃度を把握することができる。
【0023】
液肥は、例えばEC値が1.2〜3.0ms/cm、PHが6.6〜7となるよう作られる。液肥のEC値は、植物の種類や成長の度合いによって、適宜変化させることが好ましい。
【0024】
液肥タンク231内の液肥は、循環ポンプ233により供給路232内を流通して各栽培ベッド21に送られる。液肥は、各栽培ベッド21に送られると、当該栽培ベッド21内の液肥の液面を上昇させ、オーバーフロー管214から流出する。オーバーフロー管214から流出した液肥は、下開口から液戻し路234を介して液肥タンク231内に戻るようになっている。
【0025】
育成光照射部22は、栽培ベッド21に水耕栽培された植物に向けて、一定以上の照度の光を照射することで、当該植物の成長を促進する機能を有する。本実施形態の育成光照射部22は、長管状の発光体により構成されており、具体的には蛍光灯により構成されている。育成光照射部22は、栽培棚本体20の棚板202又は天板の下面に取り付けられており、栽培ベッド21に栽培された植物を上方から光照射する。
【0026】
育成光照射部22は、その照度が、栽培ベッド21に栽培される植物の種類に応じて設定される。育成光照射部22から照射される光の照度は、例えば、光飽和点×75%以上で且つ光飽和点以下の値にて設定され、好ましくは、植物の光飽和点の80%前後の値に設定される。具体的に育成光照射部22は、例えばレタス(光飽和点:25000Lx 光補償点:1500〜2000Lx)に対して、20000Lx程度の照度に保つことが好ましい。
【0027】
このような構成の水耕栽培装置2は、図3に示されるように、第1のエリア1としての植物工場10内に配設される。作業者は、この水耕栽培装置2を用いて、第1の育成ステップを実施する。このとき作業者は、第1の育成ステップとして、次に述べるように第1の栽培工程と第2の栽培工程とを順に実施する。具体的には、例えば次のようにして植物を育てる。
【0028】
第1の栽培工程は、植物の播種から苗を得るまでの工程である。この第1の栽培工程は、水耕栽培装置2とは別の場所で行なわれる。第1の栽培工程は、複数の育苗ポットに植物の種を蒔き、その後発芽した苗を定植することができる状態になるまで育苗する。このように第1の栽培工程により、植物の苗が定植可能な状態にまで育てられたら、次に第2の栽培工程を実施する。
【0029】
第2の栽培工程は、第1の栽培工程により得られた定植可能な苗を育苗ポットから取り出して、水耕栽培装置2の栽培ベッド21に定植し、この苗を成熟期又はその直前まで育てる工程である。このように第2の栽培工程により得られた成熟期又はその直前期の植物は、次いで第2の育成ステップに移る。
【0030】
第2の育成ステップは、第1の育成ステップにより得られた成熟期又はその直前の植物を、第1のエリア1から第2のエリア9に輸送するに際し、この植物を育てながら輸送を行なう工程である。第2の育成ステップでは、第1のエリア1から第2のエリア9に植物を輸送するために、水耕栽培が可能な輸送装置104が用いられる(図9のブロック図参照)。
【0031】
輸送装置104は、第1の育成ステップにより得られた植物を積載して、第1のエリア1から第2のエリア9へ移動することができる装置である。本実施形態の輸送装置104は、例えばトラックや自動車等により構成されている。輸送装置104は、水耕栽培が可能な栽培容器3(図4参照)と、栽培容器3に栽培された植物の成長速度を抑制する成長抑制手段5(図示せず)とを備えている。
【0032】
栽培容器3は、輸送装置104に搭載されて、当該輸送装置104の移動中において植物を育てる機能を有している。栽培容器3は、図4に示されるように、上方が開口する有底箱形状に形成され且つ水耕栽培用の液肥を収容可能な可搬容器31と、この可搬容器31の開口を閉塞するよう設置された保持プレート32と、植物を保護する移動用ポット33とを備えている。
【0033】
可搬容器31は、内部に植物を栽培した状態で搬送できるよう構成されている。可搬容器31は、例えば金属製の容器61により形成されており、輸送中の振動に耐えることができるような強度となっている。
【0034】
保持プレート32は、その外形が、可搬容器31の上方の開口の内周縁に略一致するような形状となっており、当該可搬容器31の上方の開口を覆うようにして設置される。保持プレート32は、厚み方向に貫通すると共に移動用ポット33を挿通可能な保持孔321が、複数穿設されている。保持プレート32は、例えば発泡スチロールからなる樹脂プレートにより構成されている。
【0035】
移動用ポット33は、内部に植物を収容して、移動中でも植物を保護する機能を有している。移動用ポット33は、植物の外側を囲むよう形成されて当該植物を保護する外郭体331と、この外郭体331内に収容され且つ植物の根を覆う吸水体335とを備えている。移動用ポット33は、内部に植物が収容された状態で、保持プレート32の保持孔321に嵌入される。これにより移動用ポット33は、保持プレート32に着脱自在に保持される。
【0036】
外郭体331は、植物を収容する植物収容部332と、この植物収容部332の上端から上方に向けて延出されたガイド片333とを備えており、全体としていわゆるメガホン形状に形成されている。外郭体331は、合成樹脂により成形されており、例えば射出成形や注型成形等により成形される。植物収容部332は、有底円筒状に形成されており、底面に貫通孔334が穿設されている。本実施形態のガイド片333は、上方ほど大径となるよう傾斜しており、植物を植物収容部332に収容する際にガイドとして機能する。なおガイド片333は、植物収容部332が保持孔321に嵌入した状態で、隣接する別の移動用ポット33のガイド片333に当接するよう構成されていてもよい。これにより移動用ポット33は、安定して載設され、輸送中にがたつきにくくなっている。
【0037】
吸水体335は、植物の根を覆うことができるよう袋状に形成されている。本実施形態の吸水体335は、例えばスポンジにより構成されている。吸水体335は、液肥が収容された可搬容器31内に浸されることで液肥を吸い上げて保持し、これにより植物の根の略全体に亘って液肥を供給する。
【0038】
本実施形態の植物の育成方法は、第1の育成ステップが、水耕栽培により植物を生育させるものであるため、根に土が付着していない。このため、輸送中に土がこぼれてしまうことがない。一方、仮に第1の育成ステップにおいて、露地栽培等により植物を育てる場合、根に土が付着しているため、輸送中に土がこぼれてしまうおそれがある。これを防ぐため、本実施形態の袋状の吸水体335は、内部に植物の根を収容した状態で、上端の開口縁を小径にさせる紐などの締結手段によって締めることができるよう構成されている。したがって、第1の育成ステップにおける育成方法に応じて、締結手段を使用するか又は使用しないかを使い分けることができる。
【0039】
輸送装置104は、このような栽培容器3に栽培された植物の成長スピードを抑制する成長抑制手段(図示せず)を備えている。本実施形態の成長抑制手段は、冷房装置により構成されている。冷房装置は、輸送装置104における栽培容器3を収容する収納空間(例えばトラックの荷台等)の温度を一定以下の温度に保つ機能を有する。冷房装置は、この収納空間の温度を、例えば5℃以上23℃以下に保ち、好ましくは5℃以上10℃以下に保つことで、成長抑制効果を発揮することができる。温度を低温に保つことで蒸散作用を減らすことができるため、植物をみずみすしく保つことができる。
【0040】
第2の育成ステップは、このような輸送装置104を用いて、例えば次のようにして植物を育てる。
【0041】
第1の育成ステップによって得られた成熟期又はその直前の植物は、栽培ベッド21から取り出されて移動用ポット33内に収容される。作業者は、植物工場10の水耕栽培装置2から植物を取り出して直ぐに、袋状の吸水体335を用いて植物の根を包み込む(図5参照)。次いで、この吸水体335によって根が包まれた植物を外郭体331内に納める。このようにして植物を移動用ポット33に装着する。
【0042】
作業者は、可搬容器31内に水耕栽培用の液肥を貯留した上で、保持プレート32を当該可搬容器31の開口に嵌め込む。この状態で作業者は、植物を収容した移動用ポット33を、保持プレート32の保持孔321に順次装着してゆく。なおこのとき、作業者は図4に示すように、可搬容器31内の液肥を、吸水体335の下部が浸る程度に供給すればよい。これにより液肥は、移動用ポット33の貫通孔334を通過して吸水体335に供給され、この吸水体335を介して植物の根に供給される。この吸水体335によれば、少量の液肥でも効果的に植物の根に対して液肥を供給することができる。これにより可搬容器31内の液肥を最小限にすることができて、輸送中に液肥がこぼれるのを防止することができる。
【0043】
このとき作業者は、栽培容器3を第1のエリア1の水耕栽培装置2の近傍に載置した状態で、植物を収容した移動用ポット33を装着することができる。この後、作業者は、植物が栽培された栽培容器3を、水耕栽培装置2近傍から輸送装置104内の収納空間(例えば、トラックの荷台)内まで運搬する。そして作業者は、栽培容器3と一緒に植物を輸送装置104内に搭載する。この収容空間内の温度は、例えば5℃以上10℃以下に設定される。
【0044】
なお、植物を輸送装置104内に移植するに当たっては、上記のように栽培容器3に植物を移植した上で、栽培容器3ごと植物を輸送装置104内に運搬して搭載してもよいし、予め栽培容器3を輸送装置104内に搭載した上で、栽培容器3内に植物を移植してもよい。
【0045】
この状態で、栽培容器3に栽培された植物を、輸送装置104を用いて第1のエリア1から第2のエリア9に輸送する。輸送中において植物は、成長抑制手段により成長速度が抑制されているため、常温で輸送した場合よりも成長スピードが遅くなる。なお第1のエリア1から第2のエリア9までの距離が短く、輸送時間が短時間である場合にも、根を切り離さないため植物は生きたままであり、したがって、僅かだが植物は成長するといえる。
【0046】
この後、第2のエリア9に輸送された植物は、作業者により、栽培容器3と一緒に輸送装置104から取り出されると共に所定の場所まで搬送され、その後、第2のエリア9に設置されたディスプレイ装置4にディスプレイされる。そしてこのディスプレイ装置4により、第3の育成ステップが実行される。
【0047】
第3の育成ステップは、第2のエリア9において、植物をディスプレイしながら育てる工程である。第2のエリア9は、植物を展示・販売等することができる場所であり、例えば、八百屋・果物屋等のショップやレストラン,デパート,スーパーマーケット,ホテルや旅館の厨房等が例として挙げられる。第3の育成ステップは、成長抑制手段5を備えたディスプレイ装置4を用いて、成長速度を抑制して植物を生育させる。
【0048】
ディスプレイ装置4は、輸送装置104により第2のエリア9に搬入された植物が、水耕栽培により栽培可能となっており、これにより植物を栽培した状態で陳列することができるようになっている。ディスプレイ装置4は、図6に示されるように、内部が複数の棚板41により仕切られた装置本体40と、棚板41上に載置され且つ内部に液肥を収容する槽部6と、この槽部6内の液肥を循環させるための液循環装置7とを備えている。またディスプレイ装置4は、槽部6に栽培された植物に光照射を行なう発光部51と、装置本体40内の植物収容空間の温度管理を行なう空調装置8とをさらに備えている。
【0049】
装置本体40は、植物を栽培した状態で陳列可能な第1の収容部42と、植物を栽培した状態で陳列可能な第2の収容部43と、液循環装置7の溶液タンク71を収容する第3の収容部44とを備えている。
【0050】
装置本体40は、後面に背面板(図示せず)が配設され且つ前面に透明な透過板46が配設されている。透過板46は、図6に示されるように、第1の収容部42と第2の収容部43とを開閉自在に閉塞し、且つ、収容部42,43ごとに独立して開閉することができるよう構成されている。なお第3の収容部44は、不透明の遮蔽板により閉塞されており、内部が見えないようになっている。
【0051】
装置本体40は、図7に示されるように、空調装置8の空気吹き出し口91と第1の収容部42内及び第2の収容部43内の空間とを連通する通風路47を備えている。この通風路47は、第1の収容部42及び第2の収容部43に面する空気供給口48に連通している。装置本体40は、通風路47内の空気を各収容部42,43に向けて流通させる送風ファン49をさらに備えている。
【0052】
空調装置8から吹き出された空気は、通風路47内を流通して、各空気供給口48に至る。そしてその空気は、各空気供給口48から各収容部42,43内に流入する。その後、収容部42,43内の空気は、空気供給口48が設けられた側とは反対側の側板の内面に沿って上昇し、再び空調装置8に流入する。
【0053】
槽部6は、図7に示されるように、植物を栽培した状態で陳列することができるよう構成されている。槽部6は、図7に示されるように、内部に水耕栽培用の液肥を収容する容器61と、この容器61の開口を覆う栽培板63により構成されている。容器61は、左右方向に長く形成されており、長手方向の一方側の端部に一定の水位を保つためのオーバーフロー部62を有している。このオーバーフロー部62は、筒状に形成されており、その上開口の端面が容器61内の液面と略同レベルとなる。オーバーフロー部62は、上開口に連通する下開口が、容器61の底面よりも下方に位置しており、上開口から流入した液肥が下開口から流出するようになっている。
【0054】
栽培板63は、容器61の上方開口を閉塞するようにして設置されている。本実施形態の栽培板63は、発泡スチロールにより構成されている。栽培板63は、植物を栽培する部分となる上下に貫通する栽培孔64が複数箇所に穿設されている。本実施形態の栽培孔64は、左右方向に所定のピッチで複数箇所に穿設されている。
【0055】
液循環装置7は、液肥が収容された溶液タンク71を備えており、この溶液タンク71と槽部6との間で液肥を循環させる機能を有している。液循環装置7は、溶液タンク71と、この溶液タンク71と各槽部6とを連通接続する供給路72と、供給路72内に液肥が流通するよう溶液タンク71から当該液肥を送出する循環ポンプ73とを備えている。さらに液循環装置7は、槽部6のオーバーフロー部62の下開口と溶液タンク71内とを連通接続する液戻し路74を備えている。供給路72は、容器61の長手方向において、オーバーフロー部62とは反対側の端部に配設される。供給路72は、その端部が液肥の液面と離間するようにして設置されている。
【0056】
溶液タンク71は、内部に循環用の液肥(培養液)が収容される。溶液タンク71は、内部に収容される液肥のEC値を管理する管理装置(図示せず)が取り付けられている。
【0057】
なお溶液タンク71については、徒長の発生を防ぐため、EC値を詳細に管理することがより好ましい。本実施形態の溶液タンク71のEC値は、例えば、通常は2.0〜2.5ms/cm程度に設定されるのが好ましい。また栄養過多である場合は、例えば0.3〜0.7ms/cm程度に設定される。
【0058】
溶液タンク71内の液肥は、循環ポンプ73により供給路72内を流通して第1の収容部42内の槽部6と第2の収容部43内の槽部6とにそれぞれ送られる。液肥は、各槽部6に送られると各槽部6の液面を上昇させ、オーバーフロー部62から流出する。オーバーフロー部62から流出した液肥は、下開口から液戻し路74を介して溶液タンク71内に戻る。
【0059】
本実施形態のディスプレイ装置4は、槽部6に水耕栽培された植物の成長の速度を遅らせるための成長抑制手段5を備えている。本実施形態の成長抑制手段5は、発光部51と調光器52とを備えている。また本実施形態の成長抑制手段5は空調装置8もさらに備えている。
【0060】
発光部51は、槽部6に水耕栽培された植物に一定以下の照度の光を照射することで当該植物の成長を抑制する機能を有する。発光部51は、第1の収容部42と第2の収容部43の上方に設けられており、第1の収容部42と第2の収容部43に栽培された植物を上方から光照射できるよう配置されている。本実施形態の発光部51は各収容部42,43の長手方向の略全長に沿って配設されている。本実施形態の発光部51は、長管状の発光体により構成されており、具体的には、Hf蛍光灯により構成されている。発光部51は、長手方向とは直角な方向に2列となるよう並設されている。
【0061】
発光部51は、装置本体40に取り付けられた調光器52に電気的に接続されており、この調光器52によって、照射する光の照度が調節できるよう構成されている。本実施形態においては、この調光器52が照度可変手段を構成する。
【0062】
発光部51は、その照度を、槽部6に栽培される植物の種類に応じて設定される。一般的に、植物の光飽和点の80%の照度が、植物の成長を促進するために適切な照度とされるが、本実施形態の発光部51は、その適切な照度よりも小さい照度に設定される。なおこの照度は、少なくとも光補償点以上の照度に設定される。具体的に発光部51は、例えばレタス(光飽和点:25000Lx 光補償点:1500〜2000Lx)に対して、2000Lx以上5000Lx以下の照度に保つことが好ましい。
【0063】
なお本実施形態の発光部51は蛍光灯により構成されているが、例えばLEDにより構成されていてもよく、特に限定されない。指向性を有するLEDを用いる場合、光路の途中に光拡散部材を配設して光を拡散させ、広範囲に光照射を行なうようにしてもよい。
【0064】
調光器52は、発光部51に電気的に接続されており、発光部51から照射された光の照度を調節可能とする。調光器52は、図6に示されるように、装置本体40の前面に取り付けられている。なお図6中の符号53は、発光部51の発光時間を設定するタイマーである。
【0065】
空調装置8は、植物が栽培された第1の収容部42及び第2の収容部43の内部空間の温度を調節したり管理したりする装置である。空調装置8は、その吹き出し口81が通風路47を介して各収容部42,43内に連通しており、冷気を通風路47内に放出することで、各収容部42,43内を冷却する。本実施形態の空調装置8は、空調装置8の前面に設けられた操作部を操作することで、吹き出し口81から吹き出す空気の温度を自在に変更できるよう構成されている。
【0066】
本実施形態の空調装置8は、植物を陳列する各収容部42,43内の温度を低温状態に保つことで、植物の成長の速度を抑制することができる。空調装置8は、各収容部42,43の温度を、例えば5℃以上23℃以下に保ち、好ましくは5℃以上10℃以下に保つことで、成長抑制効果を発揮することができる。
【0067】
なお本実施形態にいう植物の成長抑制とは、発光部51による成長抑制に対しては、太陽光のもとで水耕栽培された植物よりも、成長の速度を遅くすることをいい、空調装置8による成長抑制に対しては、常温で水耕栽培された植物よりも、成長の速度を遅くすることをいう。
【0068】
このようなディスプレイ装置4が設置された第2のエリア9において、第3の育成ステップを実行するには、例えば次のようにして行われる。
【0069】
作業者は、第2の育成ステップにより得られた植物を、ディスプレイ装置4における植物陳列用の槽部6に栽培する。この状態で、成長抑制手段5としての発光部51から光照射を行い、栽培した植物に一定以下の照度の光を照射する。この状態で植物を陳列して販売等のためのディスプレイを行なう。このとき、空調装置8の操作部を操作して、第1の収容部42と第2の収容部43との温度を5℃以上10℃以下に保つようにすればより好ましい。
【0070】
このように本実施形態の植物の育成方法は、第1の育成ステップによって育てた植物を、第2の育成ステップによってさらに育て、第2の育成ステップにより得られた植物を第3のステップによりさらに育てるため、当該植物を、播種から販売・展示等に至るまで、連続して育て続けることができる。これにより植物を、消費者等に対し収穫と同時に提供することができ、つまり収穫直後の新鮮な植物を消費者等に提供することができる。
【0071】
しかも本実施形態の植物の育成方法は、第1のエリア1(本実施形態では植物工場10)において植物が成熟するまで又はその直前まで植物を育てた上で、当該植物を第2のエリア9(本実施形態では販売用の店舗等)に輸送するため、ディスプレイを開始する時点から最適な状態で植物をディスプレイすることができる。
【0072】
また本実施形態の植物の育成方法は、第1のエリア1において、水耕栽培装置2を用いて植物を育てるようになっているため、周年栽培を行なうことができる。しかも、本実施形態の植物の育成方法は、第1の育成ステップで植物の成長を促進させると共に第3の育成ステップで植物の成長を抑制するため、播種から成熟期またはその直前までの期間については成長を促進しつつ、ディスプレイされる成熟期からの期間については成長を抑制することができる。これにより、新鮮な植物を消費者等に提供しつつ、傷んで捨てなければならない植物を減らすことができ、その上、早いサイクルで植物を提供することができる。
【0073】
ここで、本実施形態の植物の育成方法において、植物の成長度とその成長に掛かる日数との関係をグラフ化すると図1に示すような関係となる。なお、比較例として、単に水耕栽培により植物を育てた従来の育成方法(以下、従来方法という)を破線にて併記する。
【0074】
図1に示すように、本実施形態の育成方法によれば、植物は、成熟期またはこの直前から成長抑制した育成ステップが開始されるため、従来方法の収穫可能期間L2よりも、収穫可能期間L1が長くなる。なおこの場合の収穫可能期間は、図1に示すように成熟期から終期までの期間を言うこととする。
【0075】
しかも従来方法では、第2のエリアに輸送される前に収穫されて根が切断されるため、第2のエリアに輸送された時点では、図1のグラフで示すよりも早く終期が到来することになる。つまり本実施形態の育成方法によれば、従来方法よりも新鮮で良い状態の植物を長い間ディスプレイすることができ、この結果、収穫率を上げることができる。
【0076】
本実施形態の第3の育成ステップでは、次のようなディスプレイ装置110を用いて、植物を育成することも可能である。以下、上記実施形態のディスプレイ装置4の変形例を図8に基づいて説明する。なお、本変形例のディスプレイ装置110は上記実施形態のディスプレイ装置4と大部分において共通するため、同じ部分においては説明を省略し、主に異なる部分について説明する。
【0077】
変形例のディスプレイ装置110は、上記実施形態のディスプレイ装置4と同様に、植物を陳列するための装置である。
【0078】
このディスプレイ装置110は、植物陳列用の槽部6が配設される陳列台111と、この陳列台111を内部に収容するディスプレイルーム112とを備えている。またディスプレイ装置110は、槽部6に栽培された植物の成長を遅らせる成長抑制手段5をさらに備えている。
【0079】
ディスプレイルーム112は、その前側の側壁113に、消費者等が出入り可能な出入り口114が設けられており、この出入り口114に、開閉自在な扉115が設けられている。本実施形態のディスプレイルーム112は、前側の側壁113や扉115が、透明部材により構成されている。このディスプレイルーム112は、内部が陳列台111の収容空間116となっており、消費者等が出入り自在な大きさに構成されている。
【0080】
なお、このディスプレイルーム112は、建物の躯体により構成されていてもよいし、ユニット化されたユニットルームであってもよい。また、本実施形態のディスプレイルームは、一つの陳列台111を収容するものであるが、複数の陳列台111を収容するものであってもよい。
【0081】
陳列台111は、複数の支柱117間に複数の棚板118を架設することで構成されている。陳列台111は、上記実施形態のディスプレイ装置4と同様の液循環装置7を備えている。陳列台111は、棚板118の下面に、上記実施形態のディスプレイ装置4と同様の発光部51が設けられている。
【0082】
発光部51は、上記実施形態のディスプレイ装置4と同様に、槽部6に水耕栽培された植物に一定以下の照度の光を照射することで当該植物の成長を抑制する機能を有している。本変形例の発光部51は、蛍光灯により構成されているが、LEDにより構成されていてもよい。また発光部51には、上記実施形態のものと同様、照度可変手段としての調光器52が取り付けられている。
【0083】
槽部6は、植物を水耕栽培するためのものである。槽部6は、上記実施形態のディスプレイ装置4と同様の構成の槽部6が用いられている。
【0084】
本変形例のディスプレイ装置110は、空調装置119を備えている。この空調装置119は、ディスプレイルーム112に取り付けられており、陳列台111とは別体となっている。空調装置119は、ディスプレイルーム112の収容空間116内を冷却する。本変形例の空調装置119は、収容空間116内の温度を低温状態に保つことで、植物の成長の速度を抑制することができる。空調装置119は、収容空間116内の温度を、例えば5℃以上23℃以下に保ち、好ましくは5℃以上10℃以下に保つことで、成長抑制効果を発揮することができる。
【0085】
本変形例の成長抑制手段5は、発光部51と調光器52と空調装置119とにより構成されており、これらにより植物の成長を抑制することができる。
【0086】
本変形例のディスプレイ装置110は、上記実施形態と同様、植物を水耕栽培したまま陳列することで、生きたままの植物をディスプレイすることができ、消費者等に新鮮な植物を提供することができる。しかも本変形例のディスプレイ装置110は、成長抑制手段5を備えているため、良い状態のまま長い間陳列しておくことができ、植物が傷むのを遅らせることができる。つまり、植物を栽培した状態で陳列しておくことができる上に植物の成長速度を抑制することができるので、生きたままの状態で且つ長い間、植物をみずみずしい状態で陳列しておくことができる。
【0087】
このような植物の育成方法を用いれば、次のような流通管理システムを構築することができる。
【0088】
このシステムは、図9に示されるように、植物工場10により構成された第1のエリア1と、販売用の店舗等により構成された第2のエリア9と、第1のエリア1から第2のエリア9へと植物を輸送する輸送装置104を管理する輸送管理部102と、第2のエリア9のディスプレイ装置4,110に陳列された植物の量に応じて植物を供給する旨の指令を第1のエリア1に送る監視制御部103とを備える流通管理システムである。
【0089】
第2のエリア9には、不足した植物や新たに供給を望む植物の管理情報を送信する送受信装置91が設置される。この送受信装置91は、ディスプレイ装置4,110に取り付けられてもよいし、ディスプレイ装置4,110とは別の場所に設置されてもよい。ディスプレイ装置4,110に設置された場合、送受信装置91は、植物の残数を自動で管理してその情報を送信するよう構成されていてもよい。
【0090】
監視制御部103は、第2のエリア9の送受信装置91により送信された管理情報を取得し、この管理情報に基づいて、第1のエリア1に対し、所定の第2のエリア9に所定の植物を供給する旨の信号を送信する。つまり監視制御部103は、第2のエリア9への植物の供給をコントロールする。監視制御部103は、上記信号の送信と共に、輸送管理部102に対して信号を送り、輸送装置104を第1のエリア1に手配する。
【0091】
第1のエリア1には、監視制御部103からの信号を受信する送受信装置12が設置される。監視制御部103からの信号を受信した送受信装置12を備える第1のエリア1は、受信した情報に基づき、所定の種類の植物を所定の量だけ輸送装置104に積載する。そして輸送装置104は、水耕栽培したまま植物を第2のエリア9に輸送する。
【0092】
植物が輸送された第2のエリア9は、不足分の植物や供給を望む植物を、所望の量だけ供給を受けることができる。これにより第2のエリア9では植物が品切れになりにくい上に、消費者等は新鮮な植物を購入等することができる。
【0093】
本実施形態の植物の育成方法において、育成される植物は、水耕栽培が可能な植物であればよい。この植物としては、主に野菜であり、特にレタスやねぎやサラダ菜といった葉菜類が好ましい。またイチゴやトマト等のような果実をつける植物も適用可能である。
【0094】
なお上記ディスプレイ装置4,110における成長抑制手段5は、発光部51と調光器52と空調装置8,119とを備えていたが、一定の照度以下の光を発する発光部51だけで構成されていてもよい。また成長抑制手段5は、発光部51を備えず、空調装置8,119だけで構成されたものであってもよい。すなわち本発明の成長抑制手段は、本実施形態の態様に限定されない。
【0095】
また本実施形態の第1のエリア1は、水耕栽培装置2が設置された植物工場10であったが、本発明の第1のエリアは、露地栽培を行なう屋外の畑等などにより構成されていてもよい。
【0096】
また、第1の育成ステップにおける水耕栽培装置2や第3の育成ステップにおけるディスプレイ装置は、いわゆる湛液型水耕方式(DFT;Deep Flow Technique)による水耕栽培を採用していたが、本発明の育成方法では、水耕栽培の方式は特に限定されない。水耕栽培の方式として、例えば、湛液型水耕方式の他、いわゆる薄膜水耕方式(NFT;Nutrient Film Technique)や,ロックウール・礫・砂・もみがら・軽石等を培養液に浸して水耕栽培を行なうものでもよい。
【0097】
以下、本発明の育成方法において、特に、第3の育成ステップにより植物を成長抑制を行いながら生育させた実施例につき説明する。
【0098】
(実施例)
本実施例は、植物としてコスレタスを使用し、液肥として大塚ハウス肥料1号及び2号(大塚化学(株)製)をおよそ3:2の割合で調合して生成した。このとき液肥のEC値は2.6ms/cm、PHは6.6〜7にて設定した。コスレタスを収容した収容部の温度は、約15℃に設定した。
【0099】
発光部から発せられる光の照度を5000Lxに設定し、上記液肥に水耕栽培されたコスレタスに光照射しながら、15日間陳列した。一方、比較例として、上記液肥に水耕栽培されたコスレタスに、10000Lxの照度の光を照射し、15日間陳列した。なお、陳列するコスレタスの初期の重量は、いずれも160gである。
【0100】
この結果、次のような値が得られた。
【0101】
5000Lxの光を照射しながら陳列したコスレタスは、15日間で160gから200gに成長した。一方、10000Lxの光を照射しながら陳列したコスレタスは、15日間で160gから310gに成長した。
【0102】
この結果から明らかなように、10000Lxの光を照射して陳列したコスレタスは、15日間で150g成長したのに対し、5000Lxの光を照射して陳列したコスレタスは15日間で40gの成長にとどまった。つまり、植物に照射する光の照度を小さくすることで、植物の成長を抑制できることが分かる。
【符号の説明】
【0103】
1 第1のエリア
10 植物工場
11 通路
2 水耕栽培装置
20 栽培棚本体
21 栽培ベッド
22 育成光照射部
23 液肥循環装置
231 液肥タンク
3 栽培容器
33 移動用ポット
4 ディスプレイ装置
40 装置本体
47 通風路
48 空気供給口
49 送風ファン
5 成長抑制手段
51 発光部
6 槽部
7 液循環装置
71 溶液タンク
8 空調装置
9 第2のエリア
104 輸送装置
【技術分野】
【0001】
本発明は、植物の育成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、植物を育成する様々な方法が知られている。例えば特許文献1には、水耕栽培装置を用いて植物を栽培する育成方法が記載されている。この特許文献1記載の育成方法は、水耕栽培装置が設置された植物栽培工場において、水耕栽培により植物を育て、当該植物が成長して成熟した後にこの植物を収穫して出荷する。通常、植物栽培工場において生育した植物は、特許文献1に記載されているように、根を切断して収穫される。そして収穫された植物は、根が切り離された状態で梱包され出荷される。
【0003】
この後、植物は、根が切断された状態のまま植物栽培工場等から出荷され、輸送装置等によって販売場所等に輸送される。輸送後の植物は、根が切り離された状態で陳列台にディスプレイされ、消費者等に販売・提供等される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−236764号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、根が切り離された状態の植物は、水分の吸収ができない上に、蒸散作用により水分を放出するため、萎れやすく、直ぐに新鮮さを失ってしまう。このため従来の方法では、植物栽培工場等で植物を育てて収穫した直後にすぐに出荷したとしても、収穫の際に根を切断してしまうことで、植物は輸送中に水分を放出してしまい、ディスプレイを開始した時点では既に新鮮さを失ってしまう。すなわち従来方法では、新鮮な植物を消費者等に提供することが難しいという問題があった。
【0006】
しかも根が切り離された植物は、根が切断されてから時間が経過するに従って、ますます萎れてしまう。すなわち、根が切断された植物は傷みが早いため、ディスプレイを開始してからそれほど時間が経過していないにもかかわらず、傷んでしまって廃棄しなければならない場合が多いという問題もあった。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、新鮮なままの植物を消費者等に提供することが可能な植物の育成方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の植物の育成方法は、第1のエリア1にて植物を育てた後、当該植物を水耕栽培が可能な輸送装置104を用いて当該第1のエリア1から第2のエリア9まで輸送しながらさらに育て、この後、第2のエリア9に設置され且つ植物の成長速度を抑制する成長抑制手段5を備えた水耕栽培が可能なディスプレイ装置4,110を用いて、第2のエリア9に搬入された植物を、前記成長抑制手段5により成長速度を抑制した状態でディスプレイしながらさらに育てることを特徴とする。
【0009】
このように植物を、第1のエリア1で育て、第1のエリア1から第2のエリア9までの輸送中に育て、さらに第2のエリア9で育てながらディスプレイすることで、消費者等に提供する直前まで植物を育て続けることができる。これにより新鮮なままの植物を消費者等に提供することができる。しかも、成長速度が抑制された状態で植物をディスプレイすることで、成熟期等の期間(すなわち消費者等に提供可能な期間)を長く保ちながら植物を陳列することができる。
【0010】
またこの植物の育成方法において、前記第1のエリア1において、前記植物が成熟するまで又はその直前まで植物を育て、その後、当該植物を前記第2のエリア9に輸送することが好ましい。
【0011】
またこの植物の育成方法において、前記第1のエリア1には水耕栽培装置2が設置されており、当該第1のエリア1ではこの水耕栽培装置2を用いて植物を育てることが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明の植物の育成方法によれば、新鮮なままのみずみずしい植物を消費者等に提供することができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本実施形態の植物の育成方法により育てた植物の成長度と日数との関係を示すグラフである。
【図2】本実施形態の植物の育成方法において、第1のエリアで使用する水耕栽培装置である。
【図3】本実施形態の植物の育成方法において、第1のエリアとしての植物工場を示す斜視図である。
【図4】本実施形態の植物の育成方法において、第2の育成ステップに使用する栽培容器を示す側断面図である。
【図5】本実施形態の植物の育成方法において、第2の育成ステップに使用する吸水体の装着方法を説明するための図である。
【図6】本実施形態の植物の育成方法において、第2のエリアで使用するディスプレイ装置を示す斜視図である。
【図7】本実施形態の植物の育成方法において、第2のエリアで使用するディスプレイ装置を示す側断面図である。
【図8】本実施形態のディスプレイ装置の変形例を示す図であり(a)は正面図であり(b)は側面図である。
【図9】本実施形態の植物の育成方法を使用した管理システムを示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について添付図面に基づいて説明する。
【0015】
本実施形態の植物の育成方法は、第1のエリア1において植物を成熟期(食に供される植物であれば、いわゆる食べ頃をいう)またはその直前まで育てる第1の育成ステップと、第1のエリア1から第2のエリア9へと植物を輸送しながら育てる第2の育成ステップと、第2のエリア9において植物を陳列しながら育てる第3の育成ステップとを含んでいる。本実施形態の植物の育成方法は、各ステップにおいて水耕栽培により植物の育成を行なう。
【0016】
第1の育成ステップは、第1のエリア1において行われる。第1の育成ステップは、植物の播種から成熟期又はその直前までの植物の育成を行なう。本実施形態の第1のエリア1は、播種・育苗・定植するための場所であり、具体的に植物工場10により構成されている。本実施形態の植物工場10は、水耕栽培装置2を備えている。
【0017】
水耕栽培装置2は、図2に示されるように、上下複数段となるよう棚板202が並設された栽培棚本体20と、棚板202に載置され且つ内部に液肥が収容される栽培ベッド21と、この栽培ベッド21に水耕栽培された植物に対し光を照射して当該植物の成長を促進する育成光照射部22とを備えている。またこの水耕栽培装置2は、栽培ベッド21内の液肥を循環させる液肥循環装置23をさらに備えている。本実施形態の水耕栽培装置2は、図3に示されるように、植物工場10内において、作業者の通行可能な通路11を介して、互いに対向するよう複数配置されている。
【0018】
栽培棚本体20は、図2に示されるように、横方向に一定の間隔をおいて並設された複数の支柱201と、この支柱201間に架設された複数の棚板202とを備えており、この支柱201と棚板202とが固着一体化されることで構成されている。
【0019】
栽培ベッド21は、水耕栽培が可能な液肥を内部に収容する栽培用槽211と、この栽培用槽211上に配設され且つ植物を挿入可能な栽培用孔213が複数穿設された栽培パネル212とを備えている。栽培用槽211は、栽培棚本体20の長手方向に沿って長く形成されており、上方が開口する有底箱形状となっている。栽培用槽211は、上下方向に内外を貫通するオーバーフロー管214が設けられており、このオーバーフロー管214により、当該栽培用槽211に収容された液肥の液面が一定の高さに保たれる。なおこの液肥の液面は、オーバーフロー管214の上開口と略同レベルとなる。
【0020】
栽培パネル212は、栽培用槽211を閉塞するよう設置される。本実施形態の栽培パネル212は、例えば発泡スチロール等からなる樹脂材により構成されている。栽培パネル212は、その形状が、栽培用槽211の開口に嵌まり込むよう形成されており、平面視略長矩形状となっている。栽培パネル212は、栽培用孔213が、長手方向に略同ピッチで複数配置され且つ、長手方向とは直角な方向に所定寸法離間して2列となるよう穿設されている。
【0021】
液肥循環装置23は、栽培ベッド21内に収容された液肥を循環させる機能を有する。液肥循環装置23は、図2に示されるように、液肥を収容する液肥タンク231と、この液肥タンク231と各栽培ベッド21とを連通接続する供給路232と、供給路232内に液肥が流通するよう液肥タンク231内の液肥を送出する循環ポンプ233とを備えている。さらに液肥循環装置23は、栽培ベッド21のオーバーフロー管214の下開口と液肥タンク231内とを連通接続する液戻し路234を備えている。
【0022】
液肥タンク231は、内部に循環用の液肥(培養液)が収容される。本実施形態の液肥タンク231は、栽培棚本体20の最下段に設置されている。本実施形態の液肥タンク231は、内部に収容される液肥のEC(電気伝導率;Electrical Conductivity)値を管理する濃度管理装置(図示せず)が取り付けられている。EC値を管理することで、液肥に含まれる塩類濃度を把握することができる。
【0023】
液肥は、例えばEC値が1.2〜3.0ms/cm、PHが6.6〜7となるよう作られる。液肥のEC値は、植物の種類や成長の度合いによって、適宜変化させることが好ましい。
【0024】
液肥タンク231内の液肥は、循環ポンプ233により供給路232内を流通して各栽培ベッド21に送られる。液肥は、各栽培ベッド21に送られると、当該栽培ベッド21内の液肥の液面を上昇させ、オーバーフロー管214から流出する。オーバーフロー管214から流出した液肥は、下開口から液戻し路234を介して液肥タンク231内に戻るようになっている。
【0025】
育成光照射部22は、栽培ベッド21に水耕栽培された植物に向けて、一定以上の照度の光を照射することで、当該植物の成長を促進する機能を有する。本実施形態の育成光照射部22は、長管状の発光体により構成されており、具体的には蛍光灯により構成されている。育成光照射部22は、栽培棚本体20の棚板202又は天板の下面に取り付けられており、栽培ベッド21に栽培された植物を上方から光照射する。
【0026】
育成光照射部22は、その照度が、栽培ベッド21に栽培される植物の種類に応じて設定される。育成光照射部22から照射される光の照度は、例えば、光飽和点×75%以上で且つ光飽和点以下の値にて設定され、好ましくは、植物の光飽和点の80%前後の値に設定される。具体的に育成光照射部22は、例えばレタス(光飽和点:25000Lx 光補償点:1500〜2000Lx)に対して、20000Lx程度の照度に保つことが好ましい。
【0027】
このような構成の水耕栽培装置2は、図3に示されるように、第1のエリア1としての植物工場10内に配設される。作業者は、この水耕栽培装置2を用いて、第1の育成ステップを実施する。このとき作業者は、第1の育成ステップとして、次に述べるように第1の栽培工程と第2の栽培工程とを順に実施する。具体的には、例えば次のようにして植物を育てる。
【0028】
第1の栽培工程は、植物の播種から苗を得るまでの工程である。この第1の栽培工程は、水耕栽培装置2とは別の場所で行なわれる。第1の栽培工程は、複数の育苗ポットに植物の種を蒔き、その後発芽した苗を定植することができる状態になるまで育苗する。このように第1の栽培工程により、植物の苗が定植可能な状態にまで育てられたら、次に第2の栽培工程を実施する。
【0029】
第2の栽培工程は、第1の栽培工程により得られた定植可能な苗を育苗ポットから取り出して、水耕栽培装置2の栽培ベッド21に定植し、この苗を成熟期又はその直前まで育てる工程である。このように第2の栽培工程により得られた成熟期又はその直前期の植物は、次いで第2の育成ステップに移る。
【0030】
第2の育成ステップは、第1の育成ステップにより得られた成熟期又はその直前の植物を、第1のエリア1から第2のエリア9に輸送するに際し、この植物を育てながら輸送を行なう工程である。第2の育成ステップでは、第1のエリア1から第2のエリア9に植物を輸送するために、水耕栽培が可能な輸送装置104が用いられる(図9のブロック図参照)。
【0031】
輸送装置104は、第1の育成ステップにより得られた植物を積載して、第1のエリア1から第2のエリア9へ移動することができる装置である。本実施形態の輸送装置104は、例えばトラックや自動車等により構成されている。輸送装置104は、水耕栽培が可能な栽培容器3(図4参照)と、栽培容器3に栽培された植物の成長速度を抑制する成長抑制手段5(図示せず)とを備えている。
【0032】
栽培容器3は、輸送装置104に搭載されて、当該輸送装置104の移動中において植物を育てる機能を有している。栽培容器3は、図4に示されるように、上方が開口する有底箱形状に形成され且つ水耕栽培用の液肥を収容可能な可搬容器31と、この可搬容器31の開口を閉塞するよう設置された保持プレート32と、植物を保護する移動用ポット33とを備えている。
【0033】
可搬容器31は、内部に植物を栽培した状態で搬送できるよう構成されている。可搬容器31は、例えば金属製の容器61により形成されており、輸送中の振動に耐えることができるような強度となっている。
【0034】
保持プレート32は、その外形が、可搬容器31の上方の開口の内周縁に略一致するような形状となっており、当該可搬容器31の上方の開口を覆うようにして設置される。保持プレート32は、厚み方向に貫通すると共に移動用ポット33を挿通可能な保持孔321が、複数穿設されている。保持プレート32は、例えば発泡スチロールからなる樹脂プレートにより構成されている。
【0035】
移動用ポット33は、内部に植物を収容して、移動中でも植物を保護する機能を有している。移動用ポット33は、植物の外側を囲むよう形成されて当該植物を保護する外郭体331と、この外郭体331内に収容され且つ植物の根を覆う吸水体335とを備えている。移動用ポット33は、内部に植物が収容された状態で、保持プレート32の保持孔321に嵌入される。これにより移動用ポット33は、保持プレート32に着脱自在に保持される。
【0036】
外郭体331は、植物を収容する植物収容部332と、この植物収容部332の上端から上方に向けて延出されたガイド片333とを備えており、全体としていわゆるメガホン形状に形成されている。外郭体331は、合成樹脂により成形されており、例えば射出成形や注型成形等により成形される。植物収容部332は、有底円筒状に形成されており、底面に貫通孔334が穿設されている。本実施形態のガイド片333は、上方ほど大径となるよう傾斜しており、植物を植物収容部332に収容する際にガイドとして機能する。なおガイド片333は、植物収容部332が保持孔321に嵌入した状態で、隣接する別の移動用ポット33のガイド片333に当接するよう構成されていてもよい。これにより移動用ポット33は、安定して載設され、輸送中にがたつきにくくなっている。
【0037】
吸水体335は、植物の根を覆うことができるよう袋状に形成されている。本実施形態の吸水体335は、例えばスポンジにより構成されている。吸水体335は、液肥が収容された可搬容器31内に浸されることで液肥を吸い上げて保持し、これにより植物の根の略全体に亘って液肥を供給する。
【0038】
本実施形態の植物の育成方法は、第1の育成ステップが、水耕栽培により植物を生育させるものであるため、根に土が付着していない。このため、輸送中に土がこぼれてしまうことがない。一方、仮に第1の育成ステップにおいて、露地栽培等により植物を育てる場合、根に土が付着しているため、輸送中に土がこぼれてしまうおそれがある。これを防ぐため、本実施形態の袋状の吸水体335は、内部に植物の根を収容した状態で、上端の開口縁を小径にさせる紐などの締結手段によって締めることができるよう構成されている。したがって、第1の育成ステップにおける育成方法に応じて、締結手段を使用するか又は使用しないかを使い分けることができる。
【0039】
輸送装置104は、このような栽培容器3に栽培された植物の成長スピードを抑制する成長抑制手段(図示せず)を備えている。本実施形態の成長抑制手段は、冷房装置により構成されている。冷房装置は、輸送装置104における栽培容器3を収容する収納空間(例えばトラックの荷台等)の温度を一定以下の温度に保つ機能を有する。冷房装置は、この収納空間の温度を、例えば5℃以上23℃以下に保ち、好ましくは5℃以上10℃以下に保つことで、成長抑制効果を発揮することができる。温度を低温に保つことで蒸散作用を減らすことができるため、植物をみずみすしく保つことができる。
【0040】
第2の育成ステップは、このような輸送装置104を用いて、例えば次のようにして植物を育てる。
【0041】
第1の育成ステップによって得られた成熟期又はその直前の植物は、栽培ベッド21から取り出されて移動用ポット33内に収容される。作業者は、植物工場10の水耕栽培装置2から植物を取り出して直ぐに、袋状の吸水体335を用いて植物の根を包み込む(図5参照)。次いで、この吸水体335によって根が包まれた植物を外郭体331内に納める。このようにして植物を移動用ポット33に装着する。
【0042】
作業者は、可搬容器31内に水耕栽培用の液肥を貯留した上で、保持プレート32を当該可搬容器31の開口に嵌め込む。この状態で作業者は、植物を収容した移動用ポット33を、保持プレート32の保持孔321に順次装着してゆく。なおこのとき、作業者は図4に示すように、可搬容器31内の液肥を、吸水体335の下部が浸る程度に供給すればよい。これにより液肥は、移動用ポット33の貫通孔334を通過して吸水体335に供給され、この吸水体335を介して植物の根に供給される。この吸水体335によれば、少量の液肥でも効果的に植物の根に対して液肥を供給することができる。これにより可搬容器31内の液肥を最小限にすることができて、輸送中に液肥がこぼれるのを防止することができる。
【0043】
このとき作業者は、栽培容器3を第1のエリア1の水耕栽培装置2の近傍に載置した状態で、植物を収容した移動用ポット33を装着することができる。この後、作業者は、植物が栽培された栽培容器3を、水耕栽培装置2近傍から輸送装置104内の収納空間(例えば、トラックの荷台)内まで運搬する。そして作業者は、栽培容器3と一緒に植物を輸送装置104内に搭載する。この収容空間内の温度は、例えば5℃以上10℃以下に設定される。
【0044】
なお、植物を輸送装置104内に移植するに当たっては、上記のように栽培容器3に植物を移植した上で、栽培容器3ごと植物を輸送装置104内に運搬して搭載してもよいし、予め栽培容器3を輸送装置104内に搭載した上で、栽培容器3内に植物を移植してもよい。
【0045】
この状態で、栽培容器3に栽培された植物を、輸送装置104を用いて第1のエリア1から第2のエリア9に輸送する。輸送中において植物は、成長抑制手段により成長速度が抑制されているため、常温で輸送した場合よりも成長スピードが遅くなる。なお第1のエリア1から第2のエリア9までの距離が短く、輸送時間が短時間である場合にも、根を切り離さないため植物は生きたままであり、したがって、僅かだが植物は成長するといえる。
【0046】
この後、第2のエリア9に輸送された植物は、作業者により、栽培容器3と一緒に輸送装置104から取り出されると共に所定の場所まで搬送され、その後、第2のエリア9に設置されたディスプレイ装置4にディスプレイされる。そしてこのディスプレイ装置4により、第3の育成ステップが実行される。
【0047】
第3の育成ステップは、第2のエリア9において、植物をディスプレイしながら育てる工程である。第2のエリア9は、植物を展示・販売等することができる場所であり、例えば、八百屋・果物屋等のショップやレストラン,デパート,スーパーマーケット,ホテルや旅館の厨房等が例として挙げられる。第3の育成ステップは、成長抑制手段5を備えたディスプレイ装置4を用いて、成長速度を抑制して植物を生育させる。
【0048】
ディスプレイ装置4は、輸送装置104により第2のエリア9に搬入された植物が、水耕栽培により栽培可能となっており、これにより植物を栽培した状態で陳列することができるようになっている。ディスプレイ装置4は、図6に示されるように、内部が複数の棚板41により仕切られた装置本体40と、棚板41上に載置され且つ内部に液肥を収容する槽部6と、この槽部6内の液肥を循環させるための液循環装置7とを備えている。またディスプレイ装置4は、槽部6に栽培された植物に光照射を行なう発光部51と、装置本体40内の植物収容空間の温度管理を行なう空調装置8とをさらに備えている。
【0049】
装置本体40は、植物を栽培した状態で陳列可能な第1の収容部42と、植物を栽培した状態で陳列可能な第2の収容部43と、液循環装置7の溶液タンク71を収容する第3の収容部44とを備えている。
【0050】
装置本体40は、後面に背面板(図示せず)が配設され且つ前面に透明な透過板46が配設されている。透過板46は、図6に示されるように、第1の収容部42と第2の収容部43とを開閉自在に閉塞し、且つ、収容部42,43ごとに独立して開閉することができるよう構成されている。なお第3の収容部44は、不透明の遮蔽板により閉塞されており、内部が見えないようになっている。
【0051】
装置本体40は、図7に示されるように、空調装置8の空気吹き出し口91と第1の収容部42内及び第2の収容部43内の空間とを連通する通風路47を備えている。この通風路47は、第1の収容部42及び第2の収容部43に面する空気供給口48に連通している。装置本体40は、通風路47内の空気を各収容部42,43に向けて流通させる送風ファン49をさらに備えている。
【0052】
空調装置8から吹き出された空気は、通風路47内を流通して、各空気供給口48に至る。そしてその空気は、各空気供給口48から各収容部42,43内に流入する。その後、収容部42,43内の空気は、空気供給口48が設けられた側とは反対側の側板の内面に沿って上昇し、再び空調装置8に流入する。
【0053】
槽部6は、図7に示されるように、植物を栽培した状態で陳列することができるよう構成されている。槽部6は、図7に示されるように、内部に水耕栽培用の液肥を収容する容器61と、この容器61の開口を覆う栽培板63により構成されている。容器61は、左右方向に長く形成されており、長手方向の一方側の端部に一定の水位を保つためのオーバーフロー部62を有している。このオーバーフロー部62は、筒状に形成されており、その上開口の端面が容器61内の液面と略同レベルとなる。オーバーフロー部62は、上開口に連通する下開口が、容器61の底面よりも下方に位置しており、上開口から流入した液肥が下開口から流出するようになっている。
【0054】
栽培板63は、容器61の上方開口を閉塞するようにして設置されている。本実施形態の栽培板63は、発泡スチロールにより構成されている。栽培板63は、植物を栽培する部分となる上下に貫通する栽培孔64が複数箇所に穿設されている。本実施形態の栽培孔64は、左右方向に所定のピッチで複数箇所に穿設されている。
【0055】
液循環装置7は、液肥が収容された溶液タンク71を備えており、この溶液タンク71と槽部6との間で液肥を循環させる機能を有している。液循環装置7は、溶液タンク71と、この溶液タンク71と各槽部6とを連通接続する供給路72と、供給路72内に液肥が流通するよう溶液タンク71から当該液肥を送出する循環ポンプ73とを備えている。さらに液循環装置7は、槽部6のオーバーフロー部62の下開口と溶液タンク71内とを連通接続する液戻し路74を備えている。供給路72は、容器61の長手方向において、オーバーフロー部62とは反対側の端部に配設される。供給路72は、その端部が液肥の液面と離間するようにして設置されている。
【0056】
溶液タンク71は、内部に循環用の液肥(培養液)が収容される。溶液タンク71は、内部に収容される液肥のEC値を管理する管理装置(図示せず)が取り付けられている。
【0057】
なお溶液タンク71については、徒長の発生を防ぐため、EC値を詳細に管理することがより好ましい。本実施形態の溶液タンク71のEC値は、例えば、通常は2.0〜2.5ms/cm程度に設定されるのが好ましい。また栄養過多である場合は、例えば0.3〜0.7ms/cm程度に設定される。
【0058】
溶液タンク71内の液肥は、循環ポンプ73により供給路72内を流通して第1の収容部42内の槽部6と第2の収容部43内の槽部6とにそれぞれ送られる。液肥は、各槽部6に送られると各槽部6の液面を上昇させ、オーバーフロー部62から流出する。オーバーフロー部62から流出した液肥は、下開口から液戻し路74を介して溶液タンク71内に戻る。
【0059】
本実施形態のディスプレイ装置4は、槽部6に水耕栽培された植物の成長の速度を遅らせるための成長抑制手段5を備えている。本実施形態の成長抑制手段5は、発光部51と調光器52とを備えている。また本実施形態の成長抑制手段5は空調装置8もさらに備えている。
【0060】
発光部51は、槽部6に水耕栽培された植物に一定以下の照度の光を照射することで当該植物の成長を抑制する機能を有する。発光部51は、第1の収容部42と第2の収容部43の上方に設けられており、第1の収容部42と第2の収容部43に栽培された植物を上方から光照射できるよう配置されている。本実施形態の発光部51は各収容部42,43の長手方向の略全長に沿って配設されている。本実施形態の発光部51は、長管状の発光体により構成されており、具体的には、Hf蛍光灯により構成されている。発光部51は、長手方向とは直角な方向に2列となるよう並設されている。
【0061】
発光部51は、装置本体40に取り付けられた調光器52に電気的に接続されており、この調光器52によって、照射する光の照度が調節できるよう構成されている。本実施形態においては、この調光器52が照度可変手段を構成する。
【0062】
発光部51は、その照度を、槽部6に栽培される植物の種類に応じて設定される。一般的に、植物の光飽和点の80%の照度が、植物の成長を促進するために適切な照度とされるが、本実施形態の発光部51は、その適切な照度よりも小さい照度に設定される。なおこの照度は、少なくとも光補償点以上の照度に設定される。具体的に発光部51は、例えばレタス(光飽和点:25000Lx 光補償点:1500〜2000Lx)に対して、2000Lx以上5000Lx以下の照度に保つことが好ましい。
【0063】
なお本実施形態の発光部51は蛍光灯により構成されているが、例えばLEDにより構成されていてもよく、特に限定されない。指向性を有するLEDを用いる場合、光路の途中に光拡散部材を配設して光を拡散させ、広範囲に光照射を行なうようにしてもよい。
【0064】
調光器52は、発光部51に電気的に接続されており、発光部51から照射された光の照度を調節可能とする。調光器52は、図6に示されるように、装置本体40の前面に取り付けられている。なお図6中の符号53は、発光部51の発光時間を設定するタイマーである。
【0065】
空調装置8は、植物が栽培された第1の収容部42及び第2の収容部43の内部空間の温度を調節したり管理したりする装置である。空調装置8は、その吹き出し口81が通風路47を介して各収容部42,43内に連通しており、冷気を通風路47内に放出することで、各収容部42,43内を冷却する。本実施形態の空調装置8は、空調装置8の前面に設けられた操作部を操作することで、吹き出し口81から吹き出す空気の温度を自在に変更できるよう構成されている。
【0066】
本実施形態の空調装置8は、植物を陳列する各収容部42,43内の温度を低温状態に保つことで、植物の成長の速度を抑制することができる。空調装置8は、各収容部42,43の温度を、例えば5℃以上23℃以下に保ち、好ましくは5℃以上10℃以下に保つことで、成長抑制効果を発揮することができる。
【0067】
なお本実施形態にいう植物の成長抑制とは、発光部51による成長抑制に対しては、太陽光のもとで水耕栽培された植物よりも、成長の速度を遅くすることをいい、空調装置8による成長抑制に対しては、常温で水耕栽培された植物よりも、成長の速度を遅くすることをいう。
【0068】
このようなディスプレイ装置4が設置された第2のエリア9において、第3の育成ステップを実行するには、例えば次のようにして行われる。
【0069】
作業者は、第2の育成ステップにより得られた植物を、ディスプレイ装置4における植物陳列用の槽部6に栽培する。この状態で、成長抑制手段5としての発光部51から光照射を行い、栽培した植物に一定以下の照度の光を照射する。この状態で植物を陳列して販売等のためのディスプレイを行なう。このとき、空調装置8の操作部を操作して、第1の収容部42と第2の収容部43との温度を5℃以上10℃以下に保つようにすればより好ましい。
【0070】
このように本実施形態の植物の育成方法は、第1の育成ステップによって育てた植物を、第2の育成ステップによってさらに育て、第2の育成ステップにより得られた植物を第3のステップによりさらに育てるため、当該植物を、播種から販売・展示等に至るまで、連続して育て続けることができる。これにより植物を、消費者等に対し収穫と同時に提供することができ、つまり収穫直後の新鮮な植物を消費者等に提供することができる。
【0071】
しかも本実施形態の植物の育成方法は、第1のエリア1(本実施形態では植物工場10)において植物が成熟するまで又はその直前まで植物を育てた上で、当該植物を第2のエリア9(本実施形態では販売用の店舗等)に輸送するため、ディスプレイを開始する時点から最適な状態で植物をディスプレイすることができる。
【0072】
また本実施形態の植物の育成方法は、第1のエリア1において、水耕栽培装置2を用いて植物を育てるようになっているため、周年栽培を行なうことができる。しかも、本実施形態の植物の育成方法は、第1の育成ステップで植物の成長を促進させると共に第3の育成ステップで植物の成長を抑制するため、播種から成熟期またはその直前までの期間については成長を促進しつつ、ディスプレイされる成熟期からの期間については成長を抑制することができる。これにより、新鮮な植物を消費者等に提供しつつ、傷んで捨てなければならない植物を減らすことができ、その上、早いサイクルで植物を提供することができる。
【0073】
ここで、本実施形態の植物の育成方法において、植物の成長度とその成長に掛かる日数との関係をグラフ化すると図1に示すような関係となる。なお、比較例として、単に水耕栽培により植物を育てた従来の育成方法(以下、従来方法という)を破線にて併記する。
【0074】
図1に示すように、本実施形態の育成方法によれば、植物は、成熟期またはこの直前から成長抑制した育成ステップが開始されるため、従来方法の収穫可能期間L2よりも、収穫可能期間L1が長くなる。なおこの場合の収穫可能期間は、図1に示すように成熟期から終期までの期間を言うこととする。
【0075】
しかも従来方法では、第2のエリアに輸送される前に収穫されて根が切断されるため、第2のエリアに輸送された時点では、図1のグラフで示すよりも早く終期が到来することになる。つまり本実施形態の育成方法によれば、従来方法よりも新鮮で良い状態の植物を長い間ディスプレイすることができ、この結果、収穫率を上げることができる。
【0076】
本実施形態の第3の育成ステップでは、次のようなディスプレイ装置110を用いて、植物を育成することも可能である。以下、上記実施形態のディスプレイ装置4の変形例を図8に基づいて説明する。なお、本変形例のディスプレイ装置110は上記実施形態のディスプレイ装置4と大部分において共通するため、同じ部分においては説明を省略し、主に異なる部分について説明する。
【0077】
変形例のディスプレイ装置110は、上記実施形態のディスプレイ装置4と同様に、植物を陳列するための装置である。
【0078】
このディスプレイ装置110は、植物陳列用の槽部6が配設される陳列台111と、この陳列台111を内部に収容するディスプレイルーム112とを備えている。またディスプレイ装置110は、槽部6に栽培された植物の成長を遅らせる成長抑制手段5をさらに備えている。
【0079】
ディスプレイルーム112は、その前側の側壁113に、消費者等が出入り可能な出入り口114が設けられており、この出入り口114に、開閉自在な扉115が設けられている。本実施形態のディスプレイルーム112は、前側の側壁113や扉115が、透明部材により構成されている。このディスプレイルーム112は、内部が陳列台111の収容空間116となっており、消費者等が出入り自在な大きさに構成されている。
【0080】
なお、このディスプレイルーム112は、建物の躯体により構成されていてもよいし、ユニット化されたユニットルームであってもよい。また、本実施形態のディスプレイルームは、一つの陳列台111を収容するものであるが、複数の陳列台111を収容するものであってもよい。
【0081】
陳列台111は、複数の支柱117間に複数の棚板118を架設することで構成されている。陳列台111は、上記実施形態のディスプレイ装置4と同様の液循環装置7を備えている。陳列台111は、棚板118の下面に、上記実施形態のディスプレイ装置4と同様の発光部51が設けられている。
【0082】
発光部51は、上記実施形態のディスプレイ装置4と同様に、槽部6に水耕栽培された植物に一定以下の照度の光を照射することで当該植物の成長を抑制する機能を有している。本変形例の発光部51は、蛍光灯により構成されているが、LEDにより構成されていてもよい。また発光部51には、上記実施形態のものと同様、照度可変手段としての調光器52が取り付けられている。
【0083】
槽部6は、植物を水耕栽培するためのものである。槽部6は、上記実施形態のディスプレイ装置4と同様の構成の槽部6が用いられている。
【0084】
本変形例のディスプレイ装置110は、空調装置119を備えている。この空調装置119は、ディスプレイルーム112に取り付けられており、陳列台111とは別体となっている。空調装置119は、ディスプレイルーム112の収容空間116内を冷却する。本変形例の空調装置119は、収容空間116内の温度を低温状態に保つことで、植物の成長の速度を抑制することができる。空調装置119は、収容空間116内の温度を、例えば5℃以上23℃以下に保ち、好ましくは5℃以上10℃以下に保つことで、成長抑制効果を発揮することができる。
【0085】
本変形例の成長抑制手段5は、発光部51と調光器52と空調装置119とにより構成されており、これらにより植物の成長を抑制することができる。
【0086】
本変形例のディスプレイ装置110は、上記実施形態と同様、植物を水耕栽培したまま陳列することで、生きたままの植物をディスプレイすることができ、消費者等に新鮮な植物を提供することができる。しかも本変形例のディスプレイ装置110は、成長抑制手段5を備えているため、良い状態のまま長い間陳列しておくことができ、植物が傷むのを遅らせることができる。つまり、植物を栽培した状態で陳列しておくことができる上に植物の成長速度を抑制することができるので、生きたままの状態で且つ長い間、植物をみずみずしい状態で陳列しておくことができる。
【0087】
このような植物の育成方法を用いれば、次のような流通管理システムを構築することができる。
【0088】
このシステムは、図9に示されるように、植物工場10により構成された第1のエリア1と、販売用の店舗等により構成された第2のエリア9と、第1のエリア1から第2のエリア9へと植物を輸送する輸送装置104を管理する輸送管理部102と、第2のエリア9のディスプレイ装置4,110に陳列された植物の量に応じて植物を供給する旨の指令を第1のエリア1に送る監視制御部103とを備える流通管理システムである。
【0089】
第2のエリア9には、不足した植物や新たに供給を望む植物の管理情報を送信する送受信装置91が設置される。この送受信装置91は、ディスプレイ装置4,110に取り付けられてもよいし、ディスプレイ装置4,110とは別の場所に設置されてもよい。ディスプレイ装置4,110に設置された場合、送受信装置91は、植物の残数を自動で管理してその情報を送信するよう構成されていてもよい。
【0090】
監視制御部103は、第2のエリア9の送受信装置91により送信された管理情報を取得し、この管理情報に基づいて、第1のエリア1に対し、所定の第2のエリア9に所定の植物を供給する旨の信号を送信する。つまり監視制御部103は、第2のエリア9への植物の供給をコントロールする。監視制御部103は、上記信号の送信と共に、輸送管理部102に対して信号を送り、輸送装置104を第1のエリア1に手配する。
【0091】
第1のエリア1には、監視制御部103からの信号を受信する送受信装置12が設置される。監視制御部103からの信号を受信した送受信装置12を備える第1のエリア1は、受信した情報に基づき、所定の種類の植物を所定の量だけ輸送装置104に積載する。そして輸送装置104は、水耕栽培したまま植物を第2のエリア9に輸送する。
【0092】
植物が輸送された第2のエリア9は、不足分の植物や供給を望む植物を、所望の量だけ供給を受けることができる。これにより第2のエリア9では植物が品切れになりにくい上に、消費者等は新鮮な植物を購入等することができる。
【0093】
本実施形態の植物の育成方法において、育成される植物は、水耕栽培が可能な植物であればよい。この植物としては、主に野菜であり、特にレタスやねぎやサラダ菜といった葉菜類が好ましい。またイチゴやトマト等のような果実をつける植物も適用可能である。
【0094】
なお上記ディスプレイ装置4,110における成長抑制手段5は、発光部51と調光器52と空調装置8,119とを備えていたが、一定の照度以下の光を発する発光部51だけで構成されていてもよい。また成長抑制手段5は、発光部51を備えず、空調装置8,119だけで構成されたものであってもよい。すなわち本発明の成長抑制手段は、本実施形態の態様に限定されない。
【0095】
また本実施形態の第1のエリア1は、水耕栽培装置2が設置された植物工場10であったが、本発明の第1のエリアは、露地栽培を行なう屋外の畑等などにより構成されていてもよい。
【0096】
また、第1の育成ステップにおける水耕栽培装置2や第3の育成ステップにおけるディスプレイ装置は、いわゆる湛液型水耕方式(DFT;Deep Flow Technique)による水耕栽培を採用していたが、本発明の育成方法では、水耕栽培の方式は特に限定されない。水耕栽培の方式として、例えば、湛液型水耕方式の他、いわゆる薄膜水耕方式(NFT;Nutrient Film Technique)や,ロックウール・礫・砂・もみがら・軽石等を培養液に浸して水耕栽培を行なうものでもよい。
【0097】
以下、本発明の育成方法において、特に、第3の育成ステップにより植物を成長抑制を行いながら生育させた実施例につき説明する。
【0098】
(実施例)
本実施例は、植物としてコスレタスを使用し、液肥として大塚ハウス肥料1号及び2号(大塚化学(株)製)をおよそ3:2の割合で調合して生成した。このとき液肥のEC値は2.6ms/cm、PHは6.6〜7にて設定した。コスレタスを収容した収容部の温度は、約15℃に設定した。
【0099】
発光部から発せられる光の照度を5000Lxに設定し、上記液肥に水耕栽培されたコスレタスに光照射しながら、15日間陳列した。一方、比較例として、上記液肥に水耕栽培されたコスレタスに、10000Lxの照度の光を照射し、15日間陳列した。なお、陳列するコスレタスの初期の重量は、いずれも160gである。
【0100】
この結果、次のような値が得られた。
【0101】
5000Lxの光を照射しながら陳列したコスレタスは、15日間で160gから200gに成長した。一方、10000Lxの光を照射しながら陳列したコスレタスは、15日間で160gから310gに成長した。
【0102】
この結果から明らかなように、10000Lxの光を照射して陳列したコスレタスは、15日間で150g成長したのに対し、5000Lxの光を照射して陳列したコスレタスは15日間で40gの成長にとどまった。つまり、植物に照射する光の照度を小さくすることで、植物の成長を抑制できることが分かる。
【符号の説明】
【0103】
1 第1のエリア
10 植物工場
11 通路
2 水耕栽培装置
20 栽培棚本体
21 栽培ベッド
22 育成光照射部
23 液肥循環装置
231 液肥タンク
3 栽培容器
33 移動用ポット
4 ディスプレイ装置
40 装置本体
47 通風路
48 空気供給口
49 送風ファン
5 成長抑制手段
51 発光部
6 槽部
7 液循環装置
71 溶液タンク
8 空調装置
9 第2のエリア
104 輸送装置
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のエリアにて植物を育てた後、
当該植物を水耕栽培が可能な輸送装置を用いて当該第1のエリアから第2のエリアまで輸送しながらさらに育て、
この後、第2のエリアに設置され且つ植物の成長速度を抑制する成長抑制手段を備えた水耕栽培が可能なディスプレイ装置を用いて、第2のエリアに搬入された植物を、前記成長抑制手段により成長速度を抑制した状態でディスプレイしながらさらに育てる
ことを特徴とする植物の育成方法。
【請求項2】
前記第1のエリアにおいて、前記植物が成熟するまで又はその直前まで植物を育て、その後、当該植物を前記第2のエリアに輸送する
ことを特徴とする請求項1記載の植物の育成方法。
【請求項3】
前記第1のエリアには水耕栽培装置が設置されており、
当該第1のエリアではこの水耕栽培装置を用いて植物を育てる
ことを特徴とする請求項1又は請求項2のいずれかに記載の植物の育成方法。
【請求項1】
第1のエリアにて植物を育てた後、
当該植物を水耕栽培が可能な輸送装置を用いて当該第1のエリアから第2のエリアまで輸送しながらさらに育て、
この後、第2のエリアに設置され且つ植物の成長速度を抑制する成長抑制手段を備えた水耕栽培が可能なディスプレイ装置を用いて、第2のエリアに搬入された植物を、前記成長抑制手段により成長速度を抑制した状態でディスプレイしながらさらに育てる
ことを特徴とする植物の育成方法。
【請求項2】
前記第1のエリアにおいて、前記植物が成熟するまで又はその直前まで植物を育て、その後、当該植物を前記第2のエリアに輸送する
ことを特徴とする請求項1記載の植物の育成方法。
【請求項3】
前記第1のエリアには水耕栽培装置が設置されており、
当該第1のエリアではこの水耕栽培装置を用いて植物を育てる
ことを特徴とする請求項1又は請求項2のいずれかに記載の植物の育成方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【公開番号】特開2012−231729(P2012−231729A)
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−102124(P2011−102124)
【出願日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【出願人】(594095936)藤澤建機株式会社 (2)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【出願人】(594095936)藤澤建機株式会社 (2)
【Fターム(参考)】
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