説明

植物成長促進剤

N-(2-フェニルエチル)スクシンアミド酸又はその塩による処置を、種子の処置に適用し、又は苗木の根の領域に直接又はその近傍に適用することにより、ネオニコチノイド化合物による成長阻害から保護する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ネオニコチノイド化合物の存在下、N-(2-フェニルエチル)スクシンアミド酸(PESA)又はその塩を用いて、植物の成長及び収穫高を改善することに向けられている。これは、PESA又はその塩及びネオニコチノイド化合物を組み合わせて種子の処置に適用し、又は苗木又は育成植物の根の領域に直接又はその近傍に適用して達成される。
【背景技術】
【0002】
種子は、昆虫、線虫、及び病原菌、例えば菌類及びバクテリアを制御するため、一般に農薬により処置される。ネオニコチノイド化合物は、一般に種子を処置するために用いられる殺虫剤の活性成分である。市販されているネオニコチノイド化合物には、クロチアニジン(商品名ポンチョ(登録商標))、イミダクロプリド(商品名ガウチョ(登録商標))、チアメトキサム(商品名クルーザー(登録商標))、及びジノテフラン(商品名サファリ(登録商標))がある。N-(2-フェニルエチル)スクシンアミド酸は、根の成長促進剤である(Soejima, H., et al., Plant Cell Physiol., 2000. 41: p. 197; Itagaki, M., et al., 6th Symposium of the International Society of Root Research, 2001. C1-8; Itagaki, M., et al., Plant Soil, 2003. 255: p. 67-75)。これまで、植物の成長においてネオニコチノイド化合物及びPESA又はその塩の組み合わせによる効果は、試されたことがなかった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、ネオニコチノイド化合物の存在下、N-(2-フェニルエチル)スクシンアミド酸(PESA)又はその塩を用いて、植物の成長及び収穫高を改善することに向けられている。
【課題を解決するための手段】
【0004】
これは、PESA又はその塩及び少なくとも1つのネオニコチノイド化合物を組み合わせて処置することを用いて、種子の処置に適用し、又は苗木又は育成植物の根の領域に直接又はその近傍に適用して達成される。あるいは、本発明の組み合わせによる処置は、植物の芽又は葉にも用いられうる。本発明は、ネオニコチノイド化合物を高い割合で使用することを可能とする。組み合わせによる処置は、PESA又はその塩及びネオニコチノイド化合物を含む組成物を適用することだけでなく、PESA又はその塩及びネオニコチノイド化合物を別々に適用することによっても行われる。
【発明を実施するための形態】
【0005】
種子の処置は、害虫を制御するため多くの種類の農作物に用いられている。種子の処置は一般に、病害や昆虫から保護することにより、立木の均一さを確実にするために用いられる。浸透性農薬による種子の処置により、特定の季節初旬の病害及び昆虫のための殺菌剤又は殺虫剤の葉面散布の代わりを提供しうる。
【0006】
従来のコーティング手段は、種子の処置製剤のコーティングを行うために用いられうる。様々なコーティング機及び方法が、当該分野における当業者に利用可能である。よく知られた技術には、ドラムコーター及び流動層技術を用いることが含まれる。他の方法としては、例えば噴流層も有用である。
【0007】
種子の外套用フィルム形成組成物は、当該分野においてよく知られており、本発明のコーティングされた種子に、任意にフィルムオーバーコート(film overcoat)を用いることができる。フィルムオーバーコートは、コーティング層を保護し、処置された種子の容易な特定を可能としうる。一般に添加物は、通常、ポリマーである液体接着剤に溶解又は分散し、その中に又はそれとともに種子を浸け又はスプレーし、乾燥する。あるいは、粉末接着剤も用いることができる。オーバーコートには、多様な材料が適切であり、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、デキストリン、ゴム、ワックス、植物油又は灯油;水溶性又は水に分散させた多糖類及びそれらの誘導体、例えば、アルギン酸塩、デンプン、及びセルロース;及び合成ポリマー、例えばポリエチレンオキシド、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、及びそれらの共重合体、関連するポリマー、及びこれらの混合物が含まれるが、これらに限定されない。
【0008】
さらなる材料をオーバーコートに加えうるが、それには任意に可塑剤、着色剤、光沢剤及び界面活性剤、例えば分散剤、乳化剤、及びフロー剤、例えばステアリン酸カルシウム、タルク及びバーミキュライトが含まれる。加えて、農薬、例えば殺菌剤をフィルムオーバーコートに添加しうる。しかし、殺菌剤を最初に添加しておいた方が、オーバーコートに添加した場合よりもよい結果となることが観察された。上述の流動層及びドラムによるフィルムコーティング技術も、フィルムオーバーコートに用いることができる。
【0009】
輸送用容器又はトラックからプランターボックスまで、種子はオージェを通過するため、液体又は乾燥製剤に適用される、農場での使用のための多くの種子処置材料が利用可能である。これらの製剤は、植える直前に大量の種子の処置を行うための簡便な方法を提供する。従来の乾燥処置は一般に処置化学薬品を、種子と接着するタルク又はグラファイトとともに用いて製剤されてきた。従来の液体ホッパーボックス処置は、一般に、迅速な乾燥製剤として利用されてきた。どんな場合でも、あらゆる種子処置製剤からの利益を最大限にするために、優れた種子のカバーが必要である。
【0010】
この出願については、PESAは、国際公開第99/45774号パンフレットに記載された方法により調整されるN-(2-フェニルエチル)スクシンアミド酸であると定義される。クロチアニジンは、(E)-1-(2-クロロ-1,3-チアゾール-5-イルメチル)-3-メチル-2-ニトログアニジン、イミダクロプリドは、(EZ)-1-(6-クロロ-3-ピリジルメチル)-N-ニトロイミダゾリジン-2-イリデンアミン、チアメトキサムは、(EZ)-3-(2-クロロ-1,3-チアゾール-5-イルメチル)-5-メチル-1,3,5-オキサゾリジナン-4-イリデン(ニトロ)アミン、及び、ジノテフランは、(EZ)-(RS)-1-メチル-2-ニトロ-3-(テトラヒドロ-3-フリルメチル)グアニジンであると定義される。
適切なネオニコチノイド化合物は、クロチアニジン、イミダクロプリド、チアメトキサム、ジノテフラン、アセタミプリド、ニテンピラム、及びチアクロプリドが含まれるが、これらに限定されない。
【0011】
PESAの適切な塩は、以下に限られないが、カルシウム、マグネシウム、カリウム、ナトリウム又はアンモニウム塩が含まれるが、これらに限定されない。ここで好ましい塩は、ナトリウム塩である。アンモニウム塩は、酸を中和したアンモニアそれ自体により形成される塩、又は1、2、又は3の低級アルキル基及び/又はヒドロキシ-低級アルキル基を有するアミンを含み、ここで低級アルキルは1ないし4炭素からなる直鎖又は分岐鎖と定義される。適切なアミンは、トリメチルアミン、イソプロピルアミン、エタノールアミン、ジメチルエタノールアミン、ジエタノールアミン又はトリエタノールアミンが含まれるが、これらに限定されない。
【0012】
用語「苗木又は植物の根の領域(the root zone of a seedling or plant)」は、根が広がる地下の領域、一般には、苗木又は育成植物の中心から直径1ないし100cmの領域を意味する。
【0013】
PESA塩の調製
PESAの塩は、遊離酸を水中で攪拌し、この溶液に当モル量の適切な塩基を加えることにより生産される。PESAナトリウム塩の場合、水酸化ナトリウムが用いられる。この方法は、0.01%ないし少なくとも40%の濃度の範囲の塩溶液の生産を可能とする。
【0014】
PESA又はPESA塩の用途
PESA又はPESA塩の濃度は、好ましくは組成物の、0.021ないし20.1体積%の範囲であり、ネオニコチノイド化合物の濃度は、好ましくは組成物の、0.3ないし30.0重量%の範囲である。
【0015】
本発明の組成物中、PESA又はPESA塩に対するネオニコチノイド化合物の重量比は、1:40ないし1:1、好ましくは1:20ないし1:2、及び最も好ましくは1:10ないし1:3である。
【0016】
本発明において用いられる水性組成物は、一般に界面活性剤の、少なくとも約2重量%ないし約10重量%である。1つの態様としては、水性組成物は約3重量%ないし約7重量%の界面活性剤を含む。
【0017】
また水性組成物は、一般に陰イオン界面活性剤を含んでいてもよい。一般に、陰イオン界面活性剤は、当該分野において知られた陰イオン界面活性剤である。適切な陰イオン界面活性剤は、一般にはオリゴマー又はポリマー並びに重縮合ポリマーであり、ここで、これらはその水溶性を確実にするための十分な数の陰イオン性官能基を含む。適切な陰イオン界面活性剤は、アルコール硫酸塩、アルコールエーテル硫酸塩、アルキルアリールエーテル硫酸塩、アルキルアリールスルホン酸塩、例えばアルキルベンゼンスルホン酸及びアルキルナフタレンスルホン酸、及びそれらの塩、アルキルスルホン酸塩、ポリアルコキシアルキルアルコール又はアルキルフェノールのモノ-、又はジ-リン酸エステル、C12-C15アルカノールのモノ-、又はジ-スルホコハク酸エステル、又はポリアルコキシC12-C15アルカノール、アルコールエーテルカルボン酸塩、フェノール性エーテルカルボン酸塩、オキシブチレン又はテトラヒドロフラン部分からなるエトキシ化ポリオキシアルキレングリコールのポリ塩基酸エステル、スルホアルキルアミド、及びそれらの塩、例えばN-メチル-N-オレオイルタウリン酸ナトリウム塩、ポリオキシアルキレンアルキルフェノールカルボン酸塩、ポリオキシアルキレンアルコールカルボン酸塩、アルキルポリグリコシド//アルケニルコハク酸無水物縮合生成物、アルキル硫酸エステル塩、ナフタレンスルホン酸塩、ナフタレンホルムアルデヒド縮合物、アルキルスルホンアミド、スルホン化脂肪族ポリエステル、スチリルフェニルアルコキシレート硫酸エステル、及びスチリルフェニルアルコキシレートのスルホン酸エステル、及び対応するナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、亜鉛、アンモニウム、アルキルアンモニウム、ジエタノールアンモニウム、又はトリエタノールアンモニウム塩、リグニンスルホン酸塩、例えばナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、又はアンモニウム塩、ポリアリールフェノールポリアルコキシエーテル硫酸塩、及びポリアリールフェノール、ポリアルコキシエーテルリン酸塩、及び硫酸化アルキルフェノールエトキシレート、及びリン酸化アルキルフェノールエトキシレートを含む。
【0018】
また、水性組成物は、一般に、水-溶性、及び水-分散型-フィルム形成ポリマーから選択される少なくとも1つのポリマーを含む。適切なポリマーは、平均分子量が少なくとも約1,000ないし約100,000まで;より具体的には少なくとも約5,000ないし約100,000までである。水性組成物は一般に、組成物の約0.01重量%ないし約10重量%、好ましくは約0.05ないし約8重量%、より好ましくは約0.1重量%ないし約5重量%、特に約0.5重量%ないし約4重量%のポリマーを含む。具体的な態様としては、組成物は約1.0重量%ないし約4重量%のフィルム形成ポリマーを含む。別の態様としては、組成物は約0.05ないし1重量%のフィルム形成ポリマーを含む。
【0019】
適切なポリマーは、ランダム型及びブロック型アルキレンオキシド共重合体、例えば、EO-PO-EO及びPO-EO-POブロック共重合体の両方を含むエチレンオキシド-プロピレンオキシドブロック共重合体(EO/POブロック共重合体);ランダム型及びブロック型エチレンオキシド-ブチレンオキシド共重合体、ランダム型及びブロック型エチレンオキシド-プロピレンオキシド共重合体のC2-6アルキル付加体、ランダム型及びブロック型エチレンオキシド-ブチレンオキシド共重合体のC2-6アルキル付加体、ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンモノアルキルエーテル、例えばメチルエーテル、エチルエーテル、プロピルエーテル、ブチルエーテル又はそれらの混合物;ビニル酢酸塩/ビニルピロリドン共重合体;アルキル化ビニルピロリドン共重合体;ポリビニルピロリドン;及びポリプロピレングリコール及びポリエチレングリコールを含むポリアルキレングリコール、を含む。
【0020】
また水性組成物は一般に、少なくとも約3ないし約25%の、少なくとも1つの不凍剤を含む。1つの態様としては、不凍剤は約6重量%ないし約20重量%である。
【0021】
適切な不凍剤の具体例には、エチレングリコール、1,2-プロピレングリコール、1,3-プロピレングリコール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,4-ペンタンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2,3-ジメチル-2,3-ブタンジオール、トリメチロールプロパン、マンニトール、ソルビトール、グリセロール、ペンタエリスリトール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、キシレノール、ビスフェノール、例えばビスフェノールA等がある。加えて、エーテルアルコール、例えばジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリオキシエチレン、又は分子量約4000までのポリオキシプロピレングリコール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、ブトキシエタノール、ブチレングリコールモノブチルエーテル、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、テトラペンタエリスリトール、ジグリセロール、トリグリセロール、テトラグリセロール、ペンタグリセロール、ヘキサグリセロール、ヘプタグリセロール、オクタグリセロール等がある。
【0022】
加えて、種子のコーティングには、種子に処置がされたかを観察者がすぐに見分けられるように、着色剤、例えば染料又は顔料が含まれうる。また染料は、適用されたコーティングの均一性の程度を使用者に対して示すためにも有用である。
【0023】
本発明の製剤は、合計の重量を100%とするための十分な水を含んでいる。
【0024】
本発明の製剤は、1ないし2000gの活性成分/エーカーの割合、及び好ましくは5ないし200gの活性成分/エーカーの割合で、種子又は根の領域に適用される。
【0025】
PESA又はその塩を活性成分として含む製剤、及びネオニコチノイド化合物を活性成分として含む他の製剤は、種子に適用し、又は根の領域に別々に適用することもできる。本製剤の適用割合の合計は、1ないし2000gの活性成分/エーカーであり、及び好ましくは5ないし200gの活性成分/エーカーである。適用されるPESA又はPESA塩のネオニコチノイド化合物に対する重量比は、1:40ないし1:1、好ましくは1:20ないし1:2、及び最も好ましくは1:10ないし1:3である。
【0026】
特に適切な標的農作物は、穀草類(例えば、小麦、大麦、ライ麦、オーツ麦、米)、トウモロコシ、テンサイ、綿花、キビ、ソルガム、ヒマワリ、豆、エンドウ、油脂植物(例えば、キャノーラ、菜種、及び大豆)、ジャガイモ、トマト、ナス、コショウ、及び他の野菜(例えば、ウリ科植物及びアブラナ科植物)及び香辛料、並びに木本多年生植物、観賞用低木、果樹、ブドウ、果実(例えば、イチゴ及びブルーベリー)、芝生、イネ科植物、牧草、及び花が含まれる。
【0027】
また、適切な標的農作物には、上述の農作物の非-遺伝子組み換え又は遺伝子組み換え作物を含む。本発明の有用な遺伝子組み換え作物には、植物又はそれらの伝播物質があり、ここでそれらは、特定の所望の特徴を導入するためにDNA組換え技術により形質転換されたものであり、例えば、毒素産生無脊椎動物、特に節足動物門から得られる;バチルス・チューリンゲンシス(Bacillus thuringiensis)株から得られる;レクチンのような植物から得られる;あるいは除草作用又は殺菌剤耐性を有する、選択的作用を有する毒素の合成があるが、これらに限定されない。
【0028】
組成物は特に植物伝播物質への適用に適切である。後者の用語は、全ての種類の種子(例えば、果物、塊茎、又は穀物の粒)、挿し木、刈り桑等を包括する。適用の好ましい分野は、上述で特定した標的農作物におけるすべての種類の種子の処置であり、特にキャノーラ、トウモロコシ、穀草類、大豆、及び他の豆科植物及び農作物である。
【0029】
種子サンプルの実験室での処置のプロセス
種子は、壊れた種子及び小さいクズを除くのに適切な穴の大きさのスクリーンで篩にかけた。割れた、又は損傷した種子を除いた。種子を十分に混合し、50gサンプルを小さいプラスチックトレーに計りとった。種子の処置スラリーは、測定された用量の活性成分を水に加え、標準体積、典型的には2mlとすることにより調製した。殺菌剤(Maxim XL; Syngenta Agricultural Products社, Greensboro, NC)、ポリマー性結合剤(CF-Clear; Becker-Underwood社, Ames, IA)、及び着色剤(Color Coat Red; Becker-Underwood社, Ames, IA)も、表示の割合でスラリーに含めた。この少量のスラリーを、6-インチボウルを有するHege 11コーター(Wintersteiger社, Salt Lake City, UT)を用いて種子に適用した。スラリーは、シリンジを用いてスピニングディスクアトマイザー(spinning disk atomizer)に滴下した。
【0030】
パウチアッセイ
種子を、滅菌水を含水させた発芽紙を入れた16×14cmのガス透過性プラスチックパウチからなる発芽パウチに設置した(CYG Pouch; Mega International社, St. Paul, MN)。パウチ溶液評価における、これらの実施例中、クロチアニジン及びPESAナトリウム塩をパウチ中の滅菌水に加えた。あるいは、イミダクロプリド又はジノテフラン及びPESAナトリウム塩をパウチ中の滅菌水に加えた。パウチは、成長ラックにおいて完全にランダム化されたブロックデザインに配置し、19-Lポリカーボネート製食物貯蔵コンテナ(Rubbermaid Commercial Products社, Winchester, VA)中に設置した。コンテナを閉じ、25℃において12時間ごとの明暗の光周期で、縦型成長キャビネットに設置した。6日後、コンテナを成長キャビネットから外し、根及び芽の長さを測定した。
【0031】
野外試験
野外試験のために、種子は、クロチアニジン含有種子処置製剤で処置した。クロチアニジンの割合は、農作物の種類による。種子処置製剤は、PESAであるかPESAのナトリウム塩であるかにより、適切な濃度に修正した。
【0032】
農作物は、標準的な農業実践のもと、植えて成長させ、示した時間に評価した。
以下の実施例は、本発明を説明する意図であり、当該分野における通常の熟練を有する者が本発明の組成物を製造し、使用する方法を教示するためのものである。それらは、どのような意味においても限定的なものであることを意図しない。
【実施例1】
【0033】
調製例
全ての%が重量%である以下の代表的な製剤が調製されうる:
製剤A(PESA塩及びネオニコチノイドのボトル内製剤):
PESAナトリウム塩: 5%
クロチアニジン: 30%
Tween 20: 5%
N-メチルピロリドン: 20%
ポリ酢酸ビニル: 2%
ソルビン酸カリウム: 1%
水: 37%。
【0034】
クロチアニジンは、N-メチルピロリドン及びTween 20と室温で混合して濃縮液としうる。これとは別に、PESAのナトリウム塩は、水溶液中でポリ酢酸ビニル及びソルビン酸カリウムと混合し、水性混合物としうる。水性混合物の攪拌中にクロチアニジン含有濃縮液を加えてもよい。これにより、種子、植物の処置に用いる、又は苗木又は植物の根の領域に適用するための製剤を調製しうる。
製剤B(PESA及びネオニコチノイドのボトル内製剤):
製粉したPESA: 5%
クロチアニジン: 30%
Tween 20: 5%
N-メチルピロリドン: 16%
ポリ酢酸ビニル: 2%
ソルビン酸カリウム: 1%
硫酸リグニン: 1%
水: 40%。
【0035】
クロチアニジンは、N-メチルピロリドン及びTween 20と室温で混合して濃縮液としうる。これとは別に、PESAを硫酸リグニン、Tween 20及び水と混合し、湿式粉砕機で1-2時間、粒子サイズを小さくするために製粉しうる。製粉したPESAは、ポリ酢酸ビニル及びソルビン酸カリウムと混合し、水性混合物としうる。水性混合物の攪拌中にクロチアニジン含有濃縮液を加えてもよい。これにより、種子、植物の処置に用いる、又は苗木又は植物の根の領域に適用するための製剤を調製しうる。
製剤C(PESA塩及びネオニコチノイドの分離ボトル製剤):
ボトル1:
PESAナトリウム塩: 10%
Tween 20: 10%
ポリ酢酸ビニル: 2%
ソルビン酸カリウム: 1%
水: 77%。
【0036】
PESAのナトリウム塩は、水溶液中でポリ酢酸ビニル、Tween 20及びソルビン酸カリウムと混合し、水性混合物としうる。
ボトル2:
クロチアニジン: 60%
Tween 20: 5%
N-メチルピロリドン: 35%。
【0037】
クロチアニジンは、N-メチルピロリドン及びTween 20と室温で混合して濃縮液としうる。
ボトル1の水性混合物の攪拌中に、ボトル2のクロチアニジン含有濃縮液を加えてもよい。これにより、種子、植物の処置に用いる、又は苗木又は植物の根の領域に適用するための製剤を調製しうる。
製剤D(PESA及びネオニコチノイドの分離ボトル製剤):
ボトル1:
製粉したPESA: 10%
Tween 20: 10%
硫酸リグニン: 1%
ポリ酢酸ビニル: 2%
ソルビン酸カリウム: 1%
水: 76%。
【0038】
PESAは、硫酸リグニン、Tween 20及び水と混合し、湿式粉砕機で1-2時間、粒子サイズを小さくするために製粉しうる。製粉したPESAは、ポリ酢酸ビニル及びソルビン酸カリウムと混合し、水性混合物としうる。
ボトル2:
クロチアニジン: 60%
Tween 20: 5%
N-メチルピロリドン: 35%。
【0039】
クロチアニジンは、N-メチルピロリドン及びTween 20と室温で混合して濃縮液としうる。
ボトル1の水性混合物の攪拌中に、ボトル2のクロチアニジン含有濃縮液を加えてもよい。これにより、種子、植物の処置に用いる、又は苗木又は植物の根の領域に適用するための製剤を調製しうる。
【実施例2】
【0040】
182又は364g/種子100ポンドにおける、クロチアニジン単独での種子の処置の場合には、綿花の根の長さは減少した(表1)。クロチアニジンとPESA塩を組み合わせて種子を処置した場合には、綿花の根の長さは増加した。10gのPESA塩/種子100ポンドという低い割合で、182又は364gクロチアニジン/種子100ポンドと組み合わせて綿花を処置した場合、根の長さは、コントロール、PESA塩単独、又はクロチアニジン単独でのそれぞれの割合よりも増加した。25gのPESA塩/種子100ポンドという高い割合で、182又は364gクロチアニジン/種子100ポンドと組み合わせて綿花を処置した場合、根の長さは、コントロール、又はクロチアニジン単独でのそれぞれの割合よりも増加した。
このことは、PESA塩が、綿花においてクロチアニジン誘導性の根の成長阻害から保護したことを示す。
【表1】

クロチアニジン単独、PESA塩、及びクロチアニジンとPESA塩を組み合わせて処置した場合、綿花の芽の長さは増加した(表2)。
【表2】

【実施例3】
【0041】
継続的なパウチ暴露試験において、クロチアニジン単独では、根の長さは減少した(表3)。PESA塩処置により、根の長さは用量依存的に増加した。クロチアニジン及び100mg/LのPESA塩を組み合わせた場合、無処置のコントロールと比較して、根の長さは増加した。これは、PESA塩が、クロチアニジン誘導性の根の成長阻害から保護したことを示す。
【表3】

継続的なパウチ暴露試験において、クロチアニジン単独では、綿花の芽の長さには影響を与えなかった(表4)。300mg/L(最高割合)のPESA塩単独による処置において芽の長さは減少したが、クロチアニジンと300mg/LのPESA塩を組み合わせた場合には効果はなかった。
【表4】

【実施例4】
【0042】
継続的なパウチ暴露試験において、イミダクロプリド(1000mg/L)単独による処置により根の長さは減少した(表5)。イミダクロプリドとPESA塩を組み合わせた場合の根の長さは、イミダクロプリド単独による処置における根の長さにおけるよりも、より大きく増加した。コントロール及びイミダクロプリドと100mg/LのPESA塩を組み合わせた場合には根の長さは、同等であった。
このことは、PESA塩が、綿花においてイミダクロプリド誘導性の根の成長阻害から保護したことを示す。
【表5】

綿花の芽の長さは、イミダクロプリド単独では、影響はなかった(表6)。イミダクロプリドと最高用量のPESA塩(300mg/L)を組み合わせて処置した場合、芽の長さは減少した。
【表6】

【実施例5】
【0043】
PESA塩溶液による継続的パウチ暴露試験を行った場合、イミダクロプリド単独による種子の処置により、根の長さは用量依存的に減少した(表7)。パウチ中にPESA塩(50mg/L)を含んだ場合、イミダクロプリド処置した種子からの根の長さは増加した。コントロール、及び200gのイミダクロプリド/種子100ポンドと50mg/LのPESA塩を組み合わせて処置した場合、芽の長さは同様であった。
このことは、PESA塩が、米においてイミダクロプリド誘導性の根の成長阻害から保護したことを示す。
【表7】

【0044】
イミダクロプリド単独及びPESA塩との組み合わせにおける米の芽の長さは同等であった(表8)。
【表8】

【実施例6】
【0045】
PESAのナトリウム塩を上述に記載した通りに調製し、単独又はクロチアニジンの存在下、種子の処置を行った。大豆の種子を、0又は50gのクロチアニジン/種子100kg(220ポンド)を、0、22、55、又は137.5gのPESA塩/種子100kgとともに処置した。コントロールに比べ、クロチアニジン単独では、植物丈は減少した。クロチアニジン及び22及び55g/100kgのPESA塩を組み合わせて処置した場合、植物丈は、クロチアニジン単独処置の場合よりも、ずっと大きかった(表9)。
このことは、PESA塩が、大豆においてクロチアニジン誘導性の根の成長阻害から保護したことを示す。
【表9】

【実施例7】
【0046】
PESAのナトリウム塩を上述に記載した通りに調製し、単独で又はクロチアニジンの存在下、種子を処置した。ソルガムの種子を0又は200gのクロチアニジン/種子100kg(220ポンド)、及び0、22、55、又は137.5gのPESA塩/種子100kgで処置した。クロチアニジン単独では、根の乾燥重量は、コントロールに比べ減少した。クロチアニジン及び22及び55g/100kgのPESA塩で処置した種子の根の乾燥重量は、クロチアニジン単独における場合よりも、より増加した(表10)。
このことは、PESA塩が、ソルガムにおいてクロチアニジン誘導性の根の成長阻害から保護したことを示す。
【表10】

【実施例8】
【0047】
PESAのナトリウム塩を上述に記載したとおりに調製し、単独で又はクロチアニジンの存在下、種子を処置した。キャノーラ(学名Brassica napus)の種子を、0又は400gのクロチアニジン/種子100kg(220ポンド)、及び0、22、55、又は137.5gのPESA塩/種子100kgで処置した。クロチアニジン単独では、コントロールに比較して植物の草勢が減少した。クロチアニジン及びPESA塩で処置した場合、全ての割合において、クロチアニジン単独の場合よりも草勢が上昇した(表11)。
このことは、PESA塩が、キャノーラにおいてクロチアニジン誘導性の根の草勢の減少から保護したことを示す。
【表11】

【実施例9】
【0048】
PESA又はPESAのナトリウム塩を上述に記載した通りに調製し、単独で又はクロチアニジンの存在下、種子の処置に用いた。トウモロコシ(学名Zea mays)の種子を0又は0.25mgのクロチアニジン/種子、及び0、22、55、又は137.5gのPESA塩/種子100kgで処置した。クロチアニジン単独では、コントロールに比較して植物の草勢が減少した。クロチアニジン及びPESA又はPESAのナトリウム塩で処置した場合、クロチアニジン単独の場合よりも草勢が、より上昇した(表12)。
このことは、PESA塩が、トウモロコシにおいてクロチアニジン誘導性の根の草勢の減少から保護したことを示す。
【表12】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
N-(2-フェニルエチル)スクシンアミド酸又はその塩、及び少なくとも1つのネオニコチノイド化合物を含む植物成長促進のための組成物。
【請求項2】
N-(2-フェニルエチル)スクシンアミド酸塩がナトリウム塩である請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
ネオニコチノイド化合物がクロチアニジンである請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
ネオニコチノイド化合物がイミダクロプリドである請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
ネオニコチノイド化合物がチアメトキサムである請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
ネオニコチノイド化合物がジノテフランである請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
ネオニコチノイド化合物がニテンピラムである請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
N-(2-フェニルエチル)スクシンアミド酸塩の濃度が、組成物の0.021体積%ないし20.1体積%である請求項2に記載の組成物。
【請求項9】
ネオニコチノイド化合物の濃度が、組成物の0.3重量%ないし30重量%である請求項1に記載の組成物。
【請求項10】
有効量のN-(2-フェニルエチル)スクシンアミド酸又はその塩及びネオニコチノイド化合物を、種子、又は苗木又は植物の根の領域に適用することによる植物の成長促進方法。
【請求項11】
N-(2-フェニルエチル)スクシンアミド酸又はその塩及びネオニコチノイド化合物を種子に適用する請求項10に記載の方法。
【請求項12】
有効量の請求項1に記載の組成物を、種子、又は苗木又は植物の根の領域に適用することによる植物の成長促進方法。
【請求項13】
組成物を種子に適用する請求項10に記載の方法。
【請求項14】
有効量のN-(2-フェニルエチル)スクシンアミド酸又はその塩を種子、又は苗木又は植物の根の領域に適用することにより、ネオニコチノイド化合物誘導性成長阻害に対し、植物を保護する方法。

【公表番号】特表2011−500812(P2011−500812A)
【公表日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−531051(P2010−531051)
【出願日】平成20年10月24日(2008.10.24)
【国際出願番号】PCT/US2008/012136
【国際公開番号】WO2009/055044
【国際公開日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【出願人】(509319074)バレント・バイオサイエンシーズ・コーポレイション (5)
【氏名又は名称原語表記】VALENT BIOSCIENCES CORPORATION
【出願人】(510114804)バレント・ユーエスエイ・コーポレイション (2)
【氏名又は名称原語表記】VALENT U.S.A., CORPORATION
【Fターム(参考)】