説明

植物栽培キット

【課題】 植物栽培容器と、植物種子と、用土とにより構成される植物栽培セットは、これまでにも種々提案されているが、栽培容器をほぼワンタッチの動作で容器として完成させ得ることが条件となっているため、面白みに欠ける形状の容器となっているし、組み立て作業を楽しむというものとはかけ離れた構造となっている。
【解決手段】 予め印刷された折罫(21)に従って折り曲げることで容器部付き構造体を形成するものであって防水性を有する矩形の折り紙シート(2)と、人工培土(3)、及び植物種子(4)とを含んで成るもの。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、灌水するだけで植物の発芽・生育がなされ、廉価であって、使用前には全体の厚みが小さく、例えば定型郵便物として郵送することも容易な植物栽培キットの構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
植物栽培容器と、植物種子と、用土とにより構成される植物栽培セットは、これまでにも種々提案され、特許文献中にも散見できる。例えば、特許文献1(特開2002−223642)、特許文献2(特開平11−332387号)、特許文献3(特開2002−335767)がそうである。
【0003】
或いは、ほぼ四角形状の原紙を手で折り曲げて育苗用紙ポットとする技術も、例えば特許文献4(特開2002−281833)に見ることができる。
【0004】
そして特許文献1乃至3に共通して言えることは、必須部材である植物栽培用容器を簡単に組み立てるための工夫が凝らされており、栽培容器をほぼワンタッチの動作で容器として完成させ得ることが、重要な効果として提案されている。そのためこれらの容器は、予め切断がなされており、接着さえなされたものもある。また特許文献4に記載された容器は、用土を充填し種子を蒔き、灌水して発芽を待つという点では、特許文献1〜3と共通するが、発芽後ある程度成育した状態で容器ごと土壌に植えることを前提とするものである。そのため、長期の保形は不必要であり、特許文献1〜3のように予め切断して成形しておくというコストをも削減するという意味で、ほぼ四角形状の紙を材料とし、これを簡単に折って組み立てることで容器としている。しかし、組み立ての容易さは追求されており、そのため保形性は充分とは言えず、組み立てた後にホッチキスやクリップで係止したり、接着剤で留めたりするのが好ましい、と記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−223642
【特許文献2】特開平11−332387号
【特許文献3】特開2002−335767
【特許文献4】特開2002−281833
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一方、我が国には古くから「折り紙」が存在する。最も親しまれているのが千羽鶴の構成単位となっている「折り鶴」であり、正方形紙を切断も接着もせずに、容易とは言えない作業手順で組み立ててゆくものである。この面倒で細かい連続作業の中に、勝利や病気恢復への思いを込め、競技者や病人にそれを伝えるという形態が、国民性と合致しているのか、様々な場面で目にすることができる。折り鶴以外にも様々な折り方があるが、概ねこれらは集中力が求められる作業であるし、手先を巧みに動かす必要があるので、知育やボケ防止、リラクゼーションの効果もあると言われており、老若男女を問わず熱烈な支持者が存在している。
【0007】
そうした観点で上記特許文献1〜4を見ると、ここに登場する容器はいずれも組み立ての容易性を重視するあまり、面白みに欠ける形状の容器となっているし、組み立て作業を楽しむというものとはかけ離れた構造となっている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
そこで本発明者は、この点に鑑み鋭意研究の結果遂に本発明を成したものであり、その特徴とするところは、予め印刷された折罫に従って折り曲げることで容器部付き構造体を形成するものであって防水性を有する矩形の折り紙シートと、人工培土、及び植物種子とを含んで成る点にある。
【0009】
即ち本発明は、植物を栽培する楽しみと、折り紙を作って飾る楽しみとを一挙に味わうことができるものである。折り紙シートは組み立てられていない状態(展開状態)では非常に薄いものであるので、人工培土と植物種子とを伴ってもこれら全体は薄くて軽量なものとし易いため、全体形状をコンパクトにでき、例えば定型郵便物として郵送することも容易であるし、雑誌等の付録として、或いは直接配る景品などにも好適に用いることができるものである。
【0010】
なおここで「折り紙シート」は、予め折罫が印刷されていること、折り曲げることで容器部付き構造体を形成するものであること、防水性を有すること、矩形であること、を要件とする部材である。「折り紙」であるので基本的には、矩形紙を折るだけで組み立てることができる。しかし、特に近時提案されている折り紙においては、補助的にハサミや接着剤を用いるものもあるので、本発明における折り紙シートの要件とはしない。
【0011】
折り紙シートには、予め折罫が印刷されている。印刷の形態については何ら限定しないし、折罫以外の印刷、例えば折り方手順を図解を交えて説明した記載、広告文、等々を設けても良い。また美観を求めて、シート全体に彩色を施したり、模様やイラスト等を設けても良い。
【0012】
本発明キット製作は、まずこの折罫に従って折り紙シートを組み立てることから開始する。即ち、折り紙作りである。当然折り紙の構造(折り方)は、栽培用容器として機能する「容器部」が付いたものである。無蓋有底の「箱」が代表であるが、要は容器部を有するものであれば良いので、乗り物折り紙、動物折り紙その他種々採用可能である。勿論一種に限らず複数種設けておいて選択できるようにしておいても良い。
【0013】
組み立てが完成した折り紙シートは、通常の折り紙と異なり容器部に用土が充填され、この用土部分に灌水されることで常時湿っている。また灌水作業も、用土箇所にのみ行なうとは言え時には折り紙シートを濡らすこともある。しかも、植物栽培期間が数週間、場合によっては数ヶ月に及ぶものであるので、これに耐えるだけの充分な防水性が付与されていなければならない。防水性付与のための方策については特には限定しないが、通常のパルプ紙の片面又は両面にプラスチックフィルムをラミネートしたもの、或いは、折り紙として機能するに必要なコシを備えており、しかも簡単に「折り癖」の付く性質(ある種の塑性)を有するプラスチックシートが好ましい。更に好適であるのは、栽培する植物毎に異なるであろう栽培期間を超えた頃には強度を失い、土壌内で容易に生分解する性質を有するシートである。これに関しては、紙の場合であれば採用するラミネートプラスチック、紙を使用せずプラスチックシートのみの構造であればそのプラスチック、をそうした性質のものにすることで可能かと思われるが、特に例示はしない。
【0014】
また折り紙シートは矩形(直角四角形)である。基本的には正方形であるが、長方形の紙で組み立てる折り紙も存在しており、正方形には限定しない。
【0015】
「人工培土」は本発明の場合、用土の軽量化・小容積化を目的として選択されるものである。勿論、植物体の根張りを阻害しないこと、植物体保持力が充分であること、保水性を有すること、といった基本性状は備えているものでなければならない。人工培土の詳細に関しては特に限定するものではないが、例えば調整ピートモスとヤシ殻を用いると、従来の花壇苗用用土と比較して保水性をほぼ維持したまま軽量化が図れることが知られており、好ましい。使用前はこの人工培土を乾燥状態にしておくが、圧縮して容積を小さくした状態で気密を保って包装しておくと、用土の軽量化・小容積化が同時に図れることになり更に好適である。また、発芽から開花或いは結実までの成長に必要な肥料、根腐れ防止剤、防かび剤、等について設けておく必要があれば、この人工培土に添加しておいても良いし、別体で付帯させておいても良いものとする。
【0016】
「植物種子」は、花や葉を楽しむもの、ハーブや果実等の収穫を伴うもの、等々種々の植物が採用可能である。発明者は、ペチュニア、アリッサム、バジル、タイム、レモンパーム、タカノツメ、プチトマトの植物種子を試作し、いずれの場合も順調に生育した。なお本発明において採用する植物は、例示したものに限定しない。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る植物栽培キットは、以下の効果を有する極めて高度な発明である。
(1) 組み立て前の容器は単なる矩形のシートであるので、人工培土と植物種子を含めたキット全体の大きさ(特に厚み)を小さくできる。そのため、搬送保管容積が小さくなる、郵送したり雑誌の付録としやすい。
(2) 容器が単なる矩形のシートであるので、従来のワンタッチ組み立ての容器のような予備的な切断加工というものがない。故に製造コストを低く抑えることができる。
(3) 容器は、折り紙作りの要領で組み立てられるものであるので、知育やボケ防止、リラクゼーションの効果も期待できる。
(4) 用土として人工培土を用いているので、軽量化・小容積化が図りやすい。また、天然土壌に見られる衛生上の問題も気にしなくて良い。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明に係る植物栽培キットの一例を示す概略斜視図である。
【図2】(a)(b)は本発明に係る植物栽培キットの中、折り紙シートの一例目を示すものであり、同図(a)は平面図、同図(b)は組み立て後の斜視図である。
【図3】(a)(b)は本発明に係る植物栽培キットの中、折り紙シートの二例目を示すものであり、同図(a)は平面図、同図(b)は組み立て後の斜視図である。
【図4】(a)(b)は本発明に係る植物栽培キットの中、折り紙シートの三例目を示すものであり、同図(a)は平面図、同図(b)は組み立て後の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0019】
図1は、本発明に係る植物栽培キット1(以下本発明キット1という)の一例を示すものである。図より明らかなように本発明キット1は、折り紙シート2、人工培土3、植物種子4とにより構成されている。
人工培土3は、調整ピートモスとヤシ殻の混合物を気密性保持の図れるプラスチック袋31に入れた上で圧縮して薄くしたものである。この袋31を破ればある程度容積が復元し、灌水すれば更に膨らむ。なお本例の人工培土3には、根腐れ防止剤と肥料も含まれている。
植物種子4は本例の場合、代表的なハーブの一つであるバジルの種子を約30個、プラスチック袋41に入れている。
【0020】
本例の折り紙シート2は、1辺約20cmの正方形でありこれを四つ折りにしている。また、原料としてラミネート紙(パルプ紙の両面にプラスチックをラミネートしたもの)を採用した。
折り紙シート2の一面には単色による彩色が施されており、その反対側面には折罫21が印刷されている。単色で全面を彩色する代わりに、模様を印刷するようにしても良い(図示せず)。
【0021】
また、四つ折りされた折り紙シート2の展開図を図2(a)、これを組み立てた状態を同図(b)に示す。本例で組み立てられる植物栽培用容器は、折り紙としては古典的なものに多少の変形を加えたものであり、四角錐台形状をしているため強度があり、接着剤などを使用することなく形状が維持されるものである。
【0022】
使用者(植物栽培者)の組み立て作業を助けるために、解説(組立手順図)を添えるのが好ましい。この解説は、製品パッケージの裏面などに印刷しても良いし、別体の印刷物として添えても良い。或いは、折り紙シート2自体に印刷しておいても良い。
【0023】
容器が組み立てられたら、この容器部分に人工培土3を入れる。植物種子4の播種と前後して灌水するわけであるが、灌水によって人工培土3は膨らみ所定の厚さになる。一方種子は、その種類毎に最適な播種深さがあるので、そうした点も注意書きとして説明していると好適である。
【0024】
以後使用者は、当該植物の成長、即ち発芽、開花、結実等を順に楽しむわけであるが、使用者に課せられているのは「適切な灌水」のみであるので、ガーデニング技術を要することもなく、児童や高齢者であっても充分楽しむことができる。
【0025】
なお本発明者が想定している本発明キット1の利用期間は、10〜15週間程度であるので、この時期を過ぎると、植物体が大きくなりすぎて培土量が不十分となるし、想定期間に合わせた量の肥料しか投与していないため栄養不足に陥ることとなる。
そこでこの時期を過ぎてもなお植物を栽培し続けようとする場合には、植え替えが必要となる。植え替えの状況としては、大きな容積の植木鉢やプランターへの移植、畑や庭地への移植、等が考えられる。そこで、折り紙シート2の素材を生分解性のものとしておけば、容器ごと植えることができ簡便であってエコにも貢献することとなる。
【実施例2】
【0026】
折り紙シート2についての他の例を実施例2として以下説明する。
図3(a)(b)は実施例2として、折り紙シート2の展開図を同図(a)に、これを組み立てた状態を同図(b)に示す。
【0027】
図から明らかなように本例で組み立てられる植物栽培用容器も、古典的な箱であり、実施例1に比較すると組み立てはやや簡単であって、全体形状は直方体であるが、保形性は良好であり、接着その他を要することなく堅固な容器となる。
【実施例3】
【0028】
折り紙シート2についての更に他の例を実施例3として以下説明する。
図4(a)(b)は実施例3として、折り紙シート2の展開図を同図(a)に、これを組み立てた状態を同図(b)に示す。
【0029】
図から明らかなように本例で組み立てられる植物栽培用容器は「鶴小鉢」と呼ばれる古典的な箱であって、組み立てはやや面倒であり、鶴の頭や翼等が表現された動物折り紙の一種でもある。
【0030】
本発明において組み立てられる植物栽培用容器は、上記した例に限られるものではないし、また上記した正方形紙に限らず、長方形紙であっても良い(図示せず)。
【符号の説明】
【0031】
1 本発明に係る植物栽培キット
2 折り紙シート
21 折罫
3 人工培土
31 プラスチック袋
4 植物種子
41 プラスチック袋

【特許請求の範囲】
【請求項1】
予め印刷された折罫に従って折り曲げることで容器部付き構造体を形成するものであって防水性を有する矩形の折り紙シートと、人工培土、及び植物種子とを含んで成ることを特徴とする植物栽培キット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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