説明

植物栽培容器および栽培方法

【課題】外部の温度変化に対して、良好な保温、断熱、遮熱効果を有し、植物を外気から保護する手段として最適な植物栽培用の容器を提供する。
【解決手段】容器表面に中空微粒子を有する表面層を有する植物栽培用の容器であり、該中空微粒子は内部隔壁を有するシリカ質の微粒子によって形成されており、該表面層は中空微粒子を含有するシートを表面に密着させ、あるいは中空微粒子を含有する塗料等を塗布して形成され、該表面層によって外部の温度変化に対して、良好な保温、断熱、遮熱効果を有し、植物の栽培に適することを特徴とする植物栽培容器、および該容器を用いる植物栽培方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、野外や室内での植物栽培において野菜や花等の育成が良好な植物栽培用の容器とその栽培方法に関する。
【背景技術】
【0002】
草花や野菜、樹木の栽培において、最近、家庭菜園による栽培が増加している。家庭菜園などの小規模の栽培には鉢やプランターに土、肥料を入れて、植物を生育させて栽培することが多い。プランターでの栽培は、小規模で多種多様な栽培に向いており、プランターでの栽培は家庭菜園のほかに業務用にも利用されている。
【0003】
庭やベランダで植物を栽培する際、多くの場合には室外で栽培しており、外気の気温や降雨、降雪、日射の変化によって植物が弱ったり、生育が遅れ、最悪の場合には枯れる場合がある。そのため、適正な栽培を行うためには、外気の変動を予測して、保護具で覆う、室内に入る、保温する等の処置を行う必要がある。
【0004】
また、寒さに弱い植物を栽培する場合、これを保護する方法として、マルチングといわれる表面に土の表面や株元をビニールフィルム、わら、廃材チップなどの自然素材で覆う方法がある。これにより地温の調節や土壌の跳ね返りが防止され、植物の損傷防止や病害抑制になる。
【0005】
一方、容器自体を保温、加温して温度を保つ方法があり、容器内部に保温するヒーターユニットを埋め込む方法(特許文献1)、保温容器自体を発泡樹脂で成形する方法がある(特許文献2)、容器にカバーをかぶせる方法等(特許文献3)がある。
【0006】
また、中空粒子や気泡を内包する園芸用シートや、これを貼付して断熱性や保温性を高めたけた容器が知られている(特許文献4、5)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平07−255282号公報
【特許文献2】特開平08−37936号公報
【特許文献3】特開2005−21096号公報
【特許文献4】特開2001−352843号公報
【特許文献5】特開2001−348076号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従来行われているマルチングは追肥に手間がかかり、使用後にごみが発生することなどの問題があり、手軽に実施するのは難しい。また、保温ユニットを埋め込む方法では、電気等を使用する設備が必要であり、またユニット自体も高価である。さらに、発泡樹脂を利用した容器では、使用に適する発泡樹脂製の容器を製造または用意する必要であり、一般家庭では製造できず、しかも発泡樹脂製の容器は強度が弱い。一方、容器にカバーをかぶせる方法では、容器の寸法に合わせてカバーを作成しなければならず、サイズの違う容器では使用できない。
【0009】
中空粒子や気泡を内包する園芸用シートや、これを貼付けた容器は、樹脂製の中空粒子を用いたものは薬品や肥料によって中空微粒子が劣化しやすいと云う問題がある。また、シリカやアルミナ等の無機質の中空粒子を用いたものは薬品や肥料による劣化の問題はないが、比重の小さい中空粒子の大部分は内部空間が単一の大きな気泡か連続気泡によって形成されているため、中空粒子が衝撃を受けて破損すると、破損箇所が部分的でも中空状態が失われ、十分な断熱性や保温性を維持することができなくなる。さらに、中空粒子の粒径が大きいものは断熱性や保温性が低い傾向がある。
【0010】
本発明は、植物栽培用の容器について、従来の上記問題を解決したものであり、製造が容易であって、十分な断熱効果および保温効果を得ることができ、植物栽培用として好適な容器を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、以下の構成によって上記問題を解決した植物栽培用容器と該容器を用いた栽培方法に関する。
〔1〕植物栽培用の容器であって、内部隔壁を有するシリカ質の中空微粒子(中空微粒子と云う)を含有する表面層が設けられていることを特徴とする植物栽培用容器。
〔2〕中空微粒子の内部空間が隔壁によって区切られた複数の独立した空間によって成形されている上記[1]に記載する植物栽培容器。
〔3〕中空微粒子が、平均粒径100μm以下、容重0.35g/cm3以下、8MPa静水圧浮揚残存率50〜75%以上である上記[1]または上記[2]に記載する植物栽培容器。
〔4〕容器の表面層部分の空隙率が10〜50%である上記[1]〜上記[3]の何れかに記載する植物栽培容器。
〔5〕中空微粒子を含有する塗料を容器の表面に塗布し、あるいは接着剤と共に中空微粒子を容器の表面に塗布し、あるいは、中空微粒子を含有するフィルムを容器の表面に貼り付けて表面層が形成されている上記[1]〜上記[4]の何れかに記載する植物栽培用容器。
〔6〕中空微粒子を含有する表面層が設けられている植物栽培用の容器に中空微粒子を含む土壌を入れて使用することを特徴とする植物栽培方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明の植物栽培用容器は、シリカ質の中空微粒子を含有する表面層が設けられているので、容器内部の保温、断熱、遮熱効果に優れており、容器内部の温度差を緩和することができ、栽培する植物を保護し、生育を促進することができる。
【0013】
また、容器の表面層に含まれる中空微粒子は内部隔壁を有するので、中空体でありながら強度が大きく、破壊され難いので、植物の植え替えや土壌の入れ替えなどの作業に対して安定に使用することができる。
【0014】
さらに、本発明の容器表面層に含有されている中空微粒子は、内部空間が隔壁によって区切られた独立した空間によって形成されているので、粒子が部分的に破壊しても他の独立空間によって中空状態を維持することができる。
【0015】
また、中空微粒子はシリカ質であるので薬品などに対して耐久性に優れており、植物栽培のために使用する除草剤や殺虫剤によって変質し難く、長期間安定に使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】空隙率の測定方法を示す断面説明図
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を実施形態に基づいて具体的に説明する。
本発明の容器は、植物栽培用の容器であって、内部隔壁を有するシリカ質の中空微粒子を含有する表面層が設けられていることを特徴とする容器である。なお、本発明の説明において、内部隔壁を有するシリカ質の中空微粒子を単に中空微粒子と云う。
【0018】
本発明の容器は、好ましくは、内部空間が隔壁によって区切られた独立した空間によって形成された中空微粒子であって、平均粒径100μm以下、容重0.35g/cm3以下、8MPa静水圧浮揚残存率50〜75%以上の中空微粒子を用いることによって、空隙率10〜50%の表面層を容器表面に有する植物栽培用容器である。
【0019】
本発明の容器の表面層に含まれる中空微粒子は内部隔壁を有するので強度が大きく、加圧下でも亀裂が生じ難く、部分的に亀裂が生じても内部空間が隔壁によって区切られているので水などが浸透する範囲が限られ、他の内部空間によって中空状態を維持することができる。この内部隔壁は複数個あることが望ましい。複数の隔壁を有することによって、粒子の強度がさらに向上する。隔壁の厚さは本発明の効果を失わない範囲で制限されない。
【0020】
本発明の容器表面層に含まれる中空微粒子は、隔壁を有する粒子の割合が多いほど材料の強度が向上するので好ましい。例えば、粒子数で50%以上、好ましくは粒子数で80%以上の粒子の内部空間が隔壁によって区切られた複数の独立した空間によって形成されている中空微粒子が好ましい。隔壁を有する粒子の割合が多いと、外部圧力が加わっても中空微粒子の強度が大きいので壊れ難く、中空構造が維持されるので、効果を安定に維持することができる。具体的には、8MPa静水圧浮揚残存率50〜75%以上の中空微粒子が好ましい。
【0021】
本発明の容器に用いる中空微粒子は、内部空間が粒子表面に開口しない独立した空間によって形成されているものが好ましい。このような中空微粒子は、吸水率が低く、風雨などによって周囲に水が存在する場合でも、水が内部に浸入せず、中空状態を維持することができる。また、地中に雨水が浸っても中空状態を維持し、断熱効果や保温効果を維持することができる。
【0022】
なお、内部空間が閉口気孔の粒子でも、内部空間が連続した空間の中空粒子は、部分的に亀裂が生じると、粒子内部の空間全体に液体が浸透して充満し、中空状態を維持できなくなり、十分な断熱効果や保温効果が得られなくなる。
【0023】
本発明の容器に用いる中空微粒子は、平均粒径100μm以下が適当であり、50μm以下が好ましい。平均粒径が100μmより大きいと、保温・断熱効果が低く、また塗料と混合して塗布した時の平滑性および曲げに対する抵抗性が低くなる。平均粒径が50μmより小さい粒子は特に保温・断熱性が高い。
【0024】
本発明の容器に用いる中空微粒子は、容重0.35g/cm3以下の軽量なものが好ましい。容重が0.35g/cm3gを超えるシリカ質微粒子を使用した場合には、保温効果や断熱効果が小さい傾向がある。具体的には、例えば、容重0.15〜0.35g/cm3の中空微粒子が好ましい。容重が0.15g/cm3を下回ると、殻および隔壁の厚さが薄くなるため強度が弱くなり、担体として必要な強度を維持できなくなる場合がある。
【0025】
本発明の容器に用いる中空微粒子は、シリカ含有量70〜90%が好ましい。シリカ含有量が70%未満であると不純物が多くなり、均一な発泡状態のものになり難いため好ましくない。またシリカ含有量が90%を超えると融点が高くなるため発泡温度が高くなり、もしくは高温でも発泡しなくなるため、適当ではない。
【0026】
シリカ質の中空微粒子はシリカ(化学成分としてSiO2)を主成分とする無機系材料から製造することができる。具体的には、シラス、真珠岩、黒曜石、松脂岩などのシリカ含有量70〜90%の天然ガラス質岩石を平均粒径100μm以下の微粒子に粉砕し、該岩石微粒子を900℃〜1500℃に加熱して発泡させて中空微粒子にし、この中空微粒子から内部空間が隔壁によって区切られたものを選択することによって製造することができる。また、シリカ質中空微粒子は、天然ガラス質岩石に限らず、例えば、岩石粉末に発泡原料を混合して造粒し、加熱発泡させることによって製造することもできる。
【0027】
上記シリカ質中空微粒子は、内部に大きな空間を有するシリカガラス質粒子であるので、光学顕微鏡によって内部空間や隔壁構造を確認することができる。
【0028】
また、上記中空微粒子はシリカ質の無機材料なので、耐水性、耐酸性に優れている。従って、風雨にさらされても劣化せず、中空状態を維持するため長期間効果を維持することができる。さらに、除草剤や殺虫剤、肥料などよって劣化されず、長期間安定である。
【0029】
本発明の植物栽培用容器において、表面層の厚さ、中空微粒子の含有率は、1日の外部気温の変化に対して、容器内部の温度変化が概ね10℃以内の温度範囲を形成できるものであれば良い。具体的には、例えば、容重0.15〜0.35g/cm3の中空微粒子を用いる場合、容器表面層部分の空隙率は10〜50%が好ましい。空隙率がこれより小さいと断熱性および保温性が低くなる。
【0030】
本発明の容器の表面層は以下のようにして形成することができる。
〔イ〕中空微粒子を含有する塗料を容器表面に塗布して表面層を形成する。
〔ロ〕中空微粒を含有するフィルムを容器表面に貼り付けて表面層を形成する。
〔ハ〕中空微粒子を接着剤と共に容器表面に塗布して表面層を形成する。あるいは、容器表面に接着剤を塗布し、この上に中空微粒子を接着させて表面層を形成する。接着剤としてセメントペーストやモルタルなどの水硬性材料を用いれば、耐久性に優れた表面層を形成することができる。
〔二〕中空微粒子を混合した塗料をテープに塗布し、このテープを容器表面に張付ける。
〔ホ〕両面粘着テープを容器表面に貼り付け、この上に中空微粒子を接着させて表面層を形成する。
テープを用いる態様によれば、表面層の形成が容易であり、使用後にテープを取り外すことによって表面層の無い容器に戻すことができる。
【0031】
中空微粒子を含有する塗料等の材料は本発明の効果を阻害しないものであれば限定されない。例えば、塗料に使用される公知の溶剤や樹脂、増粘剤、糊剤、分散剤、着色顔料などと併用してもよい。また、ガラス繊維等の断熱材と併用しても効果が高い。塗料とともに使用する場合の色は、暑さを保護するためには白いほうが効果が高く、また寒さを保護するためには黒いほうが効果が高い。
【0032】
本発明の植物栽培用容器は、シリカ質の中空微粒子を含有する表面層が設けられているので、容器内部の保温、断熱、遮熱効果に優れており、容器内部の温度差を緩和することができる。このため、植物を外気の急激な温度変化から保護して生育を促進することができる。
【0033】
本発明の容器を用いて植物を栽培する場合、容器に入れる土壌に中空微粒子を混合することにって、さらに生育を促進することができる。土壌に中空微粒子を混合することによって土壌の保水性および通気性が改善され、植物栽培容器の保温性や断熱性と相まって、その相乗効果により生育が飛躍的に向上する。また、土壌に中空微粒子を混合することによって、土壌を入れたプランター全体を軽量化するができる。
【0034】
土壌に混合する中空微粒子の量は、土100質量部に対して、中空微粒子2質量部以上混合するのが好ましく、2〜20質量部がより好ましい
【実施例】
【0035】
以下、本発明を実施例によって具体的に示す。なお、粒子の平均粒径、容重、8MPa静水圧浮揚残存率は以下の方法によって測定した。
【0036】
〔平均粒径〕
レーザー回折粒度分布測定装置を用い、日機装社製測定器(マイクロトラック)によって測定した。
【0037】
〔容重〕
一定容積S(cm3)の容重枡に試料を充填し、開口からはみ出た部分をすり切り、全体の重量G1を測定し、これから容器の重量G2を差し引いて粉末重量G3(g)を求め、上記容積Sに対する粉末重量G3〔G3/S〕g/cm3を容重とした。
【0038】
〔8MPa静水圧浮揚残存率〕
試料を試料容器と共に加圧容器内へ入れ,8MPaで1分間加圧する。加圧後、加圧した試料を全量取り出してメスシリンダー(容量200ml)に入れ、水を200mlまで添加する。静置後、水に濁りがなくなったら、浮いた試料の体積を計測して浮水量とする。加圧試料と同量の非加圧試料の浮水量を同様の測定方法で測定し、加圧試料浮水量/非加圧試料浮水量×100の式に基づき8MPa静水圧浮揚残存率とした。なお、静水圧での浮揚残存率は、外部圧力による破壊に対する抵抗性であり、この値が高いほど強度が高い。
【0039】
〔表面層の空隙率〕
表面層を含む容器の断面を顕微鏡観察し、表面層の断面において、表面層の層厚L(容器本体表面と表面層と境界Lxから表面層の表面Lyまでの距離L)と、この層厚Lに対して直角な距離Lによって囲まれる正方形の面積Saを基準とし、この基準面積Saに対する中空微粒子の占める面積Sb(各中空微粒子の占める面積の合計量)の比([Sb/Sa]×100)で示した。なお、層厚Lは実施例2では400μmである。図1参照。
【0040】
〔使用材料〕
真珠岩〔化学成分含有率(質量%)SiO2 74%、Al2O3 13%、Fe2O3 1%、CaO1%、ig.loss 2.2%〕を発泡させてシリカ質中空微粒子を製造し、内部隔壁を有し、容重0.13〜0.38g/cm3、平均粒径50〜200μm、8MPa静水圧非浮揚残存率50〜75%のものを選択した。選択した中空微粒子(A1〜A5)を表1に示した。また、ガラス質の中空微粒子1(フライアッシュバルーン:フライアッシュを水中に沈めて浮いてきたもの、平均粒径約130μm、表2のB1)、ガラス質の中空微粒子2(シラスバルーン、シラスの加熱発泡品、平均粒径約100μm、表2のB2)、樹脂製の中空微粒子(松本油脂製薬社製、商品名マツモトマイクロスフェアーM、表2のB3)を比較として使用した。
【0041】
〔実施例1〕
外部からの衝撃による中空微粒子の抵抗性を確認するため、1Lのプラスチック製の密閉容器に、試料(中空微粒子)を100cm3、土壌(市販の園芸用培養土)を100cm3入れ、振幅巾50mm、振幅回数約200回/分で、30分間連続して振動させたのち、取り出して光学顕微鏡を用いて中空微粒子の破壊状況を観察した。この耐久性試験の結果を表1に示す。表1の値は中空粒子の残存個数を相対値(A1を100)によって示した。この結果に示すように、本発明の中空微粒子(A1〜A5)は曝露での外部からの衝撃による破壊に対する抵抗が高い。一方、比較試料の中空微粒子(フライアッシュB1、シラスバルーンB2)は外部衝撃に対して弱く壊れやすい。なお、樹脂質の中空微粒子(B3)は弾性があるため、衝撃による破壊が殆ど見られなかった。
【0042】
〔実施例2〕
次に、上記中空微粒子を含む表面層を形成し、その耐久性を調べた。
ポリプロピレン(以下PP)の正方形板(厚さ約2mm、10cm×10cm、白色)に中空微粒子を混合した塗料(水性塗料100質量部に表1の中空微粒子5質量部混合した塗料)を塗布して表面層(層厚400μm、空隙率10%〜18%)を形成した。水性塗料には市販水性塗料(商品名が水性スーパーコート白のアサヒペン社製品)を使用した。このPP板について、紫外線による照射試験を実施した。紫外線照射試験は、PP板に紫外線(紫外線カーボンアーク灯、電圧50V、電流60A)を積算で300時間照射してPP板の劣化状況を観察した。この結果を表1に示した。
【0043】
本発明の中空粒子を用いた表面層を有するPP板は変化が見られなかった。一方、比較試料の中空粒子(B1、B2)を用いたものは表面のひび割れが確認された。また、樹脂質の中空粒子(B3)を用いたものは表面のひび割れと共にPP板が劣化して脆くなっていることが確認された。
【0044】
【表1】

【0045】
〔実施例3〕
PP製のプランター(幅62cm×奥行22cm×高さ17cm)に土壌(市販の園芸用培養土、約10kg)を入れ、内部の温度変化を測定した。サンプルとして以下のC1〜C4を用いた。
C1:表面層のない通常のプランターに市販培養土を入れたもの。
C2:中空微粒子(表1のA3)を混合した塗料〔水性塗料100質量部に中空微粒子(表1のA3)5質量部混合した塗料〕を塗布して表面層(層厚400μm)を形成したプランターを用い、これに市販培養土を入れたもの。
C3:中空粒子(表1のA3)を混合した調合土壌(市販培養土100質量部にA3を5質量部混合したもの)を表面層のない通常のプランターに入れたもの。
C4:C2のプランターにC3の調合土壌を入れたもの。
【0046】
プランター中心部の表層から10cm下側の温度を測定した。外気温20℃から外気温30℃に移動し、あるいは5℃の恒温室に移動して、3時間後の土の内部温度を測定した。この結果を表2に示す。
【0047】
表2に示すように、通常のプランターでは外部の温度変化に対して内部の温度変化は大きく、外気温に近づく(C1)。しかし、プランター表面に中空微粒子を含む表面層を有するもの(C2)、および中空微粒子を混合した調合土壌を用いたもの(C3)は外部の温度変化に対して内部温度変化が小さくなる。表面層を有するプランターに調合土壌を入れたもの(C4)はさらに温度変化が小さい。
【0048】
【表2】

【0049】
〔実施例4〕
PP製のプランター(幅62cm×奥行22cm×高さ17cm)の周面に、中空微粒子を混合した塗料(水性塗料100質量部に表1の中空微粒子5質量部混合した塗料)を塗布して表面層(層厚400μm、空隙率10%〜18%)を形成した。水性塗料には市販水性塗料(商品名が水性スーパーコート白のアサヒペン社製品)を使用した。このプランターに土壌(市販の園芸用培養土)を入れてイチゴを栽培し、生育状況を観察した。イチゴは5月に苗を植え付け、通常の栽培方法で翌年5月まで栽培して収穫した。プランターで栽培したイチゴの生育状況(葉,茎の大きさ)を観察した。また,収穫量(果数,量)を相対値によって表した。相対値は、通常のプランター(中空微粒子の表面層を有しないもの)を用いて栽培したものを100とした。栽培方法は、すべて同じ条件で栽培した。苗を植え付けたプランターを日当たりの良い場所に置き、水は土が乾燥しない程度に与えた。また,肥料は植付け後に化成肥料を与えた。
【0050】
収穫後、プランターの表面層の劣化状況を観察した。また収穫後のプランターを切断し、断面を光学顕微鏡で観察して、表面層の空隙率を測定した。この結果を表3に示した。表3に示すように、本発明の容器を用いたものは、比較例B1〜B3に比べて生育状態が良好であった。また、ガラス質中空微粒子(B1、B2)は外部からの衝撃に弱いため、栽培後に観察するとこの中空微粒子(B1、B2)は一部が破損しており、生育状態が良くない。これは栽培過程で破損したと考えられる。また、樹脂製の中空微粒子(B3)は、暴露による紫外線によって劣化し、部分的にひび割れが生じている。
【0051】
【表3】

【0052】
〔実施例5〕
中空微粒子を含む表面層を形成したプランターを用い、これに調合土壌を入れてイチゴを栽培し、生育状況を観察した。
表面層の中空微粒子は表1のA2を用い、水性塗料100質量部に中空微粒子(A2)を5質量部混合した塗料を用い、表面層(層厚400μm)を形成した。
調合土壌は市販培養土100質量部に中空微粒子(A2)を5質量部混合したものを用い、比較例として、僅かに中空粒子を含むフライアッシュ(中部電力社製品、平均粒径13μm)を用い、または中空粒子を全く含まない真珠岩粉末(平均粒径95μm)を用いた。イチゴの栽培は実施例4と同様に行った。この結果を表4に示した。
【0053】
培養土に中空微粒子を混合すると、イチゴの生育状況が良くなることが分かる(F1〜F5)。添加量は、培養土100質量部に対して中空微粒子が20質量部までが良く,それ以上に添加すると保水力が逆に落ちるので生育は低下する傾向にある。また,土壌自体が軽量化するのでプランター全体の質量が軽くなり、移動が容易になった。一方、中空微粒子が少ないフライアッシュ、もしくは全く含まない未発泡の真珠岩を混合しても、生育状況および収穫量は通常のものと変わらず、効果はない(G1、G2)。
【0054】
【表4】

【0055】
〔実施例6〕
中空微粒子(表1のA2)を混合した塗料(水性塗料100質量部に中空微粒子A2を5質量部混合した塗料)をテープ(布テープ市販品)に塗布し、これを容器の表面に張り付けて表面層を形成した。塗膜の厚さはおよそ300μmである。テープは容器外周すべてに1層もしくは2層に張り付けた(H2、H3)。比較基準として表面層を形成しない容器を用いた。この容器に市販培養土を入れ、イチゴを栽培し、その生育状況を観察した。イチゴの栽培は実施例4と同様に行った。この結果を表5に示した。
表面層を形成した容器を用いた場合の生育状況は良好であった(H2、H3)。また、表面層は厚いほうが(1層よりも2層)が生育状況は良かった。保温効果が高くなるので生育状況が向上したと考えられる。
【0056】
【表5】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
植物栽培用の容器であって、内部隔壁を有するシリカ質の中空微粒子(中空微粒子と云う)を含有する表面層が設けられていることを特徴とする植物栽培用容器。
【請求項2】
中空微粒子の内部空間が隔壁によって区切られた複数の独立した空間によって成形されている請求項1に記載する植物栽培容器。
【請求項3】
中空微粒子が、平均粒径100μm以下、容重0.35g/cm3以下、8MPa静水圧浮揚残存率50〜75%以上である請求項1または請求項2に記載する植物栽培容器。
【請求項4】
容器の表面層部分の空隙率が10〜50%である請求項1〜請求項3の何れかに記載する植物栽培容器。
【請求項5】
中空微粒子を含有する塗料を容器の表面に塗布し、あるいは接着剤と共に中空微粒子を容器の表面に塗布し、あるいは、中空微粒子を含有するフィルムを容器の表面に貼り付けて表面層が形成されている請求項1〜請求項4の何れかに記載する植物栽培用容器。
【請求項6】
中空微粒子を含有する表面層が設けられている植物栽培用の容器に中空微粒子を含む土壌を入れて使用することを特徴とする植物栽培方法。

【図1】
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