説明

植物栽培用の保護フィルムおよびその製造方法

【課題】
フィルムの強度低下を招くことなく、不要時に容易に除去することができる植物栽培用の保護フィルム及び該保護フィルムの製造法の供給。
【解決手段】
長尺プラスチックフィルムの幅方向両端部付近に粘着層が設けられていると共に、粘着層の内側に強化層が設けられてなる植物栽培用の保護フィルム、並びに、粘着層と強化層を構成する粘着テープが一つの供給装置から供給される該保護フィルムの製造方法の提供。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植物栽培用の保護フィルムおよびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、たばこ等の植物を栽培する際には保温のために、図6のように、透孔の設けられたカバーフィルムを畝に被覆し、透孔の位置に植物の種苗を植えることが行われている。しかし、この方法では種苗が風雨や霜にさらされるため育成が思うようにいかないという欠点があった。
【0003】
これらの欠点を解消するために種々の提案がなされており、例えば、上記カバーフィルムの上に更に、側端部に粘着層が設けられている保護フィルムをかぶせて植物を保護することが提案されている。
【0004】
しかし、上記保護フィルムを使用した場合は、苗がある程度生長した段階で保護フィルムを除去する必要がある。通常、保護フィルムはカバーフィルムに粘着剤で貼付されているので、保護フィルムを取り除こうとすると、粘着層から引きはがすかもしくは保護フィルムを破断して取り除く必要があった。しかしながら、上記の方法では、保護フィルムをスムーズに取り除くことができず、大きな力を要したり、破断の方向が蛇行して蛇行を修正したり、残った部分を取り除くために腰をかがめる等の無理な姿勢で作業をする必要があったりして、作業者の肉体的負担が大きいばかりでなく作業効率も非常に悪かった。
【0005】
そこで、植物の生長を阻害しないように、保護フィルムの幅方向に折り込み部を設けると共にフィルムを容易に除去できるようにフィルムの粘着層が設けられた側端部とフィルム本体との境界部付近に沿ってミシン目やスジ状の凹部を設けることが提案されている(特許文献1)。
【0006】
【特許文献1】特開平07−111834号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし上記保護フィルムは、除去する際にミシン目や凹部に沿ってきれいに破断せずに、保護フィルムが柔らかいので取り除く際に、破断点への力の加わり方が一定ではないので、破断方向が蛇行し易いことがわかった。すなわち、ミシン目やスジ状の凹部が設けられたフィルムでは、ミシン目を大きくしたり、凹部でのフィルム厚さを薄くすれば上記欠点は完全に解決できるが、ミシン目や凹部のフィルムの強度が低下し、取り扱い時等に破損してしまう。取り扱い時に破損しない強度を保持するためには、ミシン目の大きさや凹部のフィルム厚さには限界があり上記欠点が十分に解決されていないことがわかった。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、除去の容易さを種々検討した結果、フィルム除去の際にフィルムを容易に破断するためには、必ずしもフィルムにミシン目やスジ状の凹部を設けて部分的にフィルムの強度を低下させなくても、破断時に破断部が蛇行することなく直線的に破断することができれば、上記欠点を解消でき、容易にフィルムを除去できることを見いだし本発明に至った。
すなわち本発明の目的は、フィルムの強度低下を招くことなく、不要時に容易に除去することができる植物栽培用の保護フィルム及び該保護フィルムの製造方法を提供する。
【0009】
請求項1記載の発明は、長尺プラスチックフィルムの幅方向両端部付近に粘着層が設けられていると共に、粘着層の内側に強化層が設けられている植物栽培用の保護フィルムである。
【0010】
請求項2記載の発明は、長尺プラスチックフィルムの幅方向に折り込み部が形成されている請求項1に記載の植物栽培用の保護フィルムである。
【0011】
請求項3記載の発明は、長尺プラスチックフィルムを巻きだしながら、粘着層用材料と強化層用材料とを一つの供給装置から同時に供給しながら保護フィルムに積層させる請求項1又は2に記載の保護フィルムの製造方法である。
【0012】
本発明の実施の形態を図面を参照しつつ説明する。図1は本発明の植物栽培用の保護フィルムの一例を示す一部切り欠き斜視図である。図中、1は植物栽培用の保護フィルムであり、長尺プラスチックフィルム11の幅方向両端部に、粘着層12が設けられ、その内側に強化層13が設けられている。
【0013】
長尺プラスチックフィルム11は、その幅方向に折り込み部14が形成されていると共に、複数個の小孔15、15・・が形成されている。
【0014】
図2は粘着層の積層状態を示す説明図であり(強化層は省略)、粘着層12は図2(a)の様に長尺プラスチックフィルム11の上面にその一部が外方に突き出し且つ粘着層が下方になるように設けられていてもよいし、図2(b)の様に長尺プラスチックフィルム11の下面に設けられていてもよい。図2(a)の場合は、粘着層の外方に突き出した部分でカバーフィルムに貼り付けられ、図2(b)の場合は粘着層全体でカバーフィルムに貼る付けられる。一般的には、粘着層には粘着層を保護したり、巻重体にした際に粘着層により巻出しが困難にならないようにセパレータフィルムが積層されるが、本発明においては、セパレーターは設けられていてもよいが、長尺プラスチックフィルムがセパレーターの役目を果たすのでセパレーターは設けられていなくてもよい。セパレーターを設けないことにより、後述の施工の際に、セパレーターを除去する必要がないので作業が容易になり、さらには、経済的にも有利になる。
【0015】
上記粘着層としては、特に限定されず、例えば、粘着テープを用いてもよいし、プラスチックフィルム11に直接粘着剤が積層されていてもよいが、製造のし易さ等から粘着テープが好適に用いられる。
粘着テープとしては、従来公知の任意の粘着テープが使用でき、例えば、塩化ビニル樹脂フィルム、エチレン樹脂フィルム、プロピレン樹脂フィルム、ポリエステルフィルム等の基材フィルムの一面に、ゴム系粘着剤、アクリル系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ウレタン系粘着剤等の粘着剤が積層されてなる粘着テープが挙げられる。
【0016】
直接積層される粘着剤としては、特に限定されず、上記粘着テープに使用される粘着剤が使用され得る。
【0017】
粘着層の内側に設けられる強化層としては、長尺プラスチックフィルムに他のフィルムが積層されたり、粘着テープが積層されたりしてフィルムを破断する際に破断方向が蛇行したり、長尺プラスチックフィルムの幅方向に破断するのを押さえる程度に強度が向上した層が設けられていれば良い。
上記強化層の厚さ、幅、及び強度については特に限定されず、本発明のフィルムを除去する際にフィルムが粘着層と強化層との間で破断されて蛇行を起こさないだけの補強効果があればよい。 一般的には厚さは10μ以上が好ましく、幅は3mm以上が好ましい。
また、上記粘着層と強化層との間隙は、特に限定されず、本発明のフィルムを除去する際にフィルムが粘着層と強化層との間で破断されて蛇行を防止できればよく、破断のし易さ、製造の容易さ等から0.5〜10mmが好ましい。
【0018】
上記強化層は、長尺プラスチックフィルムの粘着層と同じ側の面に設けられてもよいし、反対側の面に設けられてもよいが、除去時の引き裂き易さ、製造の容易さ等から同じ側の面に設けられるのが好ましい。
上記強化層を設ける方法としては、特に限定されず、例えば、上記の粘着テープを積層しても良いし、粘着剤或いは接着剤を用いて他のフィルムが積層されていても良い。製造の容易さ等から上記粘着層を設ける際に同時に粘着剤を積層して強化層を設けるのが好ましい。粘着層と強化層は同じ粘着テープであってもよいし異なった粘着テープであっても良い。
【0019】
上記プラスチックフィルム11の材料は、一般に農業用フィルムとして使用されているプラスチックであればよく、例えば、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリエチレン樹脂(特に、高密度ポリエチレン樹脂)、ポリプロピレン樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体等が挙げられる。
【0020】
上記プラスチックフィルム11は、種苗の育成のため太陽光線が透過するのが好ましく、透明及び半透明が好ましい。又、その色は無色、赤色、青色、黄色等適宜決定されればよいが、青色が保温効果、防露効果、葉焼け防止効果等が優れているので好ましい。
【0021】
又、上記プラスチックフィルム11の厚さは必要に応じ適宜決定されればよいが、一般に5〜40μmであり、好ましくは10〜15μmである。
【0022】
尚、上記プラスチックフィルム11には、必要に応じて、防曇剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、アンチブロッキング剤、防霧剤、防錆剤、可塑剤、無機充填剤等が添加されてもよい。
【0023】
本発明の保護フィルムを製造する方法としては、特に限定されないが、粘着層及び強化層用材料として粘着テープを用いる例を、図3、図4を用いて説明する。
図3は全体の概略図であり、図4は粘着テープの供給装置の概略図である。
図3において長尺フィルム11は巻重体から連続的に供給され、圧着ロール21で粘着層12及び強化層13を形成する粘着テープがフィルムの両端部に積層されて、保護フィルムとして巻き取られる。この際、片方の側の粘着層12と強化層13を形成する粘着テープは1つの粘着テープ供給装置22から供給される。粘着テープ供給装置は、図4に示したように2つの溝が形成されており、各層を形成する粘着テープは粘着テープ供給装置の溝の部分にそれぞれ装填され連続的に供給される。
【0024】
図5は保護フィルムの使用状態を示す説明図である。図5(a)に示すように、畝2に苗3が植えられている。4は、塩化ビニル樹脂、エチレン樹脂、プロピレン樹脂等のプラスチックフィルムからなるカバーフィルムである。
【0025】
1は本発明の保護フィルムであり、両端部の粘着テープ12、12をカバーフィルム4に押圧することにより、カバーフィルム4に貼付されている。保護フィルムをカバーフィルムに貼付する方法は、特に限定されず、保護フィルムの両端部に形成された粘着層をカバーフィルムに押し圧して貼付される。例えば、特開平07−111834号公報に記載されている方法等により貼付されて良い。
【0026】
このように、苗3をカバーフィルム4と保護フィルム1でカバーすることにより、保温すると同時に風雨や霜の被害からたばこの苗を保護することができる。
更に、保護フィルムには小孔が設けられており、小孔を通じて空気の出入りがあるので、保護フィルム内の空間が異常な高温になったりして苗の生育が妨げられることはない。
【0027】
苗3が生長すると、図5(b)に示すように、苗3が保護フィルム1の折り込み部14を持ち上げ、保護フィルム1によりトンネル状の空間が形成される。
空間ができることにより苗3の生長は阻害されないが、更に生長すると、苗3の先端が保護フィルム1に衝突し生長が阻害されるようになるので、保護フィルム1は粘着層と強化層の間で切断されて取り除かれる。図5(c)は保護フィルムが除去された状態を示す。
【発明の効果】
【0028】
本発明の植物栽培用の保護フィルムは、上述の通りフィルムの端部付近に長さ方向に粘着層と強化層が設けられているのでフィルムの強度低下を招きことがなく、容易に施設でき、また不要になった際には容易に除去でき、多数の畝の保護フィルムを同時に除去できるので作業性も優れている。さらに、折り込み部を形成することによりある程度苗が成長するまで保護保温することができる。また、上述の製造方法により植物栽培用の保護フィルムが容易に製造できる。
【実施例】
【0029】
以下に実施例を掲げて本発明の態様を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
図1に示すごとく、ポリエチレンフィルム(幅450mm、厚さ10μm)の両端部に幅15mmの粘着テープ(粘着層厚20μm)を用いて粘着層と強化層を設けた保護フィルム(A)を作製した。粘着層は半分が外方に突き出しており、粘着層と強化層の間隙が2mmである。
(比較例1)
ポリエチレンフィルム(幅450mm、厚さ10μm)の両端部に幅15mmの粘着テープ(粘着層厚20μm)を用いて、粘着層は半分が外方に突き出している粘着層を形成し、粘着層に沿って、切り込み長さ3mm、間隔3mmのミシン目を設けて保護フィルム(B)を作成した。
(評価)
上記で得られた保護フィルム(A)、(B)を実際のタバコ栽培に用いてテストを行った。実施例1の保護フィルム(A)は、引きはがしが容易で五つの畝について同時に引きはがしても破断方向は蛇行せず容易に取り除くことができた。一方、比較例1の保護フィルム(B)は、一つの畝について引きはがした際には、破断方向が時々蛇行したけれども取り除くことができたが、二つの畝について同時に取り除こうとした際には、破断方向が畝と直角の方向に蛇行し容易に除去できなかった。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の保護フィルムの一例を示す一部切り欠き斜視図。
【図2】本発明の保護フィルムの粘着層の位置を示す模式的説明図。
【図3】本発明の保護フィルムの製造方法を模式的に示す斜視図。
【図4】本発明の粘着層、強化層形成用材料の供給装置を示す図。
【図5】本発明の保護フィルムの使用状態を示す説明図。
【図6】従来のカバーフィルムの使用状態を示す説明図。
【符号の説明】
【0031】
1 保護フィルム
11 長尺プラスチックフィルム
12 粘着層
13 強化層
14 折り込み部
15 小孔
21 圧着ロール
22 粘着テープ供給装置







【特許請求の範囲】
【請求項1】
長尺プラスチックフィルムの幅方向両端部付近に粘着層が設けられてなると共に、粘着層の内側に該粘着層に略平行に強化層が形成されてなることを特徴とする植物栽培用の保護フィルム。
【請求項2】
長尺プラスチックフィルムにおいて、幅方向に折り込まれた折り込み部が長手方向に形成されていることを特徴とする請求項1記載の植物栽培用の保護フィルム。
【請求項3】
巻重体からなる長尺プラスチックフィルムを巻きだしながら、粘着層用材料と強化層用材料とを一つの供給装置から同時に供給しながら上記フィルムに積層せしめることを特徴とする請求項1又は2記載の植物栽培用の保護フィルムの製造方法。




【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−25667(P2006−25667A)
【公開日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−207567(P2004−207567)
【出願日】平成16年7月14日(2004.7.14)
【出願人】(596111276)積水フイルム株式会社 (133)
【Fターム(参考)】