説明

植物栽培用の発光装置

【課題】簡単な構成で青色光と赤色光との光量割合を容易に調整できる植物栽培用の発光装置を提供する。
【解決手段】植物栽培用の発光装置100は、基板上に、少なくとも1個の青色LEDチップ102、及び、当該青色LEDチップ102を覆う赤色蛍光体109を分散した樹脂からなる基板型の赤色発光用の第1発光部と、少なくとも1個の青色LEDチップ102からなる基板型の青色発光用の第2発光部とが形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のスペクトルの光を発光することができる植物栽培用の発光装置とその製造方法に関する。特に、光合成を行う特定の生物を、効率的に栽培培養を行うことができる植物栽培用の発光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、植物栽培用光源として、複数種類のLEDを用いた発光装置が用いられている。なお、植物を効率よく生育させるには、単光よりも複数光が好ましい。
【0003】
そこで、従来、発光装置による、複数光を生成する方法として、赤色LED、青色LED、および緑色LEDからなる三種類のLEDの組み合わせにより複数光を生成する方法や、青色LEDと蛍光体を組み合わせ、それぞれの光を混色させることで、複数光を生成する方法が知られている。
【0004】
例えば、特許文献1には、図14(a)に示すように、基板405上に、異なるスペクトル光を発する複数種類のLED407を多数設置した、植物育成用の発光装置401が開示されている。この発光装置401では、対象とする植物の方に向かって、光を発するように、各LED407が設置されている。
【0005】
また、特許文献2には、図14(b)に示すように、赤色LED502と青色LED503を基板上に配置した、育成容器の蓋501を植物育成用の発光装置とする技術が開示されている。この蓋501においては、植物の種類に応じて、赤色LED502の光量と青色LED503の光量との割合が調整できるようになっている。例えば、青色LED503の光量は、赤色LED502の光量に対して50%以下の割合となるように用いられており、植物によって赤色LED502を単独で用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−344114号公報(2004年12月9日公開)
【特許文献2】特開平9−252651号公報(1997年9月30日公開)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来の赤色LEDと青色LEDを用いた植物育成用の発光装置において、以下の(1)および(2)に示す課題を有している。
【0008】
(1)対象とする植物に応じて、青色域と赤色域との光量割合を調整する必要があるが、青色LED又は赤色LEDの個数の調整によって光量割合を合わせる場合には、長期的な駆動を考慮すると、青色LEDと赤色LEDとの劣化特性の違いにより、発光時間にしたがって光量割合のずれが生じる。
【0009】
(2)青色LEDと赤色LEDとの混色は困難であり、植物育成に必要な混合色を得ることは困難である。具体的には、青色LEDと赤色LEDとの個別の素子を複数使用する場合に、所定の光量割合を満足しかつ同時に空間的に色むらなく一様な混色光を実現するのは非常に難しい。
【0010】
また、特許文献2のように青色LED光の光量を赤色LED光の光量における50%以下の割合とするには、(A)〜(C)に示す措置などが必要となる。
【0011】
(A)赤色LEDを高輝度発光させる(駆動電流を増加する)。
【0012】
(B)各LEDに搭載するLEDチップ数を増やす。
【0013】
(C)赤色LEDの個数を増やす。
【0014】
しかしながら、(A)の場合は、青/赤LEDチップ間の劣化特性差が助長され、長期的な駆動時における光量割合のずれがより大きくなる。また、電気的な方法で光量調整する場合には、電気駆動回路等を設置する必要があるため、複雑な構成となる。
【0015】
(B)の場合には、赤色LEDの大きさが大きくなり、広角の指向特性の制御が難しい等問題が生じる。
【0016】
(C)の場合には、青色LEDの個数が少なく、均等配置をしても、或いは青色LEDを広角の指向特性のものとしても赤色光及び青色光の混色が不十分であり、色むらが生じ易い懸念が生じる。
【0017】
本発明は、上記従来の問題点に鑑みなされたものであって、その目的は、青色LEDチップの設置面積を増大させることなく、簡単な構成で青色光と赤色光との光量割合を容易に調整できる植物栽培用の発光装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明の植物栽培用の発光装置は、基板と、上記基板上に形成された赤色発光用の第1発光部及び青色発光用の第2発光部を備え、上記第1発光部から発光された赤色光と、上記第2発光部から発光された青色光との混色光を放出する植物栽培用の発光装置であって、上記第1発光部は、青色光を発光する少なくとも1個の青色LEDチップ、及び、当該青色LEDチップを覆い、かつ当該青色LEDチップからの励起光により赤色光を発光する赤色蛍光体を分散した樹脂からなる基板型の発光部であり、上記第2発光部は、青色光を発光する少なくとも1個の青色LEDチップからなる基板型の発光部であることを特徴としている。
【発明の効果】
【0019】
青色光を発光する青色発光用の第2発光部、青色光と赤色光を発光する赤色発光用の第1発光部が、それぞれ、個別に発光の制御を行うことが可能であり、LEDの設置面積を増大させることなく、簡単な構成で青色光と赤色光との光量割合を容易に調整することできる植物栽培用の発光装置を提供するという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施形態1に係る渦巻型発光装置の発光面の構成例を示す平面図である。
【図2】本発明の実施形態2に係る横縞型発光装置の発光面の構成例を示す平面図である。
【図3】本発明の実施形態3に係る交差型発光装置の発光面の構成例を示す平面図である。
【図4】本発明の実施形態4に係る二重円型発光装置の発光面の構成例を示す平面図である。
【図5】本発明の前提技術に係る基板型発光装置の構成例を示す断面図である。(a)は赤色系蛍光体が(b)は前提技術における発光装置の一形態を示すものであって、発光装置の構成を示す断面図である。
【図6】(a)は前提技術における発光装置の樹脂層形成前の構成を示す平面図であり、(b)は前提技術における発光装置の樹脂層形成後の構成を示す平面図である。
【図7】前提技術における発光装置の樹脂配合比別に示した発光スペクトルを示すグラフであり、(a)は樹脂配合比を樹脂:赤色蛍光体=1:0.05としたときのグラフであり、(b)は樹脂配合比を樹脂:赤色蛍光体=1:0.10としたときのグラフであり、(c)は樹脂配合比を樹脂:赤色蛍光体=1:0.15としたときのグラフであり、(d)は樹脂配合比を樹脂:赤色蛍光体=1:0.20としたときのグラフである。
【図8】クロロフィルの吸収スペクトルと、前提技術における発光装置の適用例を示す図である。
【図9】前提技術における発光装置の温度特性を従来の発光装置との比較において示すグラフである。
【図10】(a)(b)は前提技術における照明用の発光装置の構成を示す平面図であり、(c)は前提技術における照明用の発光装置における発光スペクトルを示すグラフである。
【図11】前提技術における発光装置の植物工場への適用例を示す説明図である。
【図12】(a)は比較技術における砲弾型LEDランプにおいて配合比を樹脂:赤色蛍光体=1:0.05としたときの構成を示す断面図であり、(b)は比較技術における砲弾型LEDランプにおいて樹脂配合比を樹脂:赤色蛍光体=1:0.20としたときの構成を示す断面図である。
【図13】(a)は前提技術の他の一形態を示すものであって、青色複合型発光装置の構成を示す断面図であり、(b)は青色複合型発光装置における樹脂層形成前の構成を示す平面図である。
【図14】従来の発光装置の発光面の構成例を示す平面図であり、(a)は、特許文献1の平面図、(b)は、特許文献2の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
〔実施形態1〕
(発光装置の基本構成)
図1は、本実施形態の植物栽培用の発光装置100(以下、単に、発光装置100と称する)の一構成例を示す平面図である。
【0022】
図1に示すように、発光装置100は、基板101、青色LEDチップ102(発光素子)、印刷抵抗素子104(保護素子)、第1樹脂ダム105(樹脂性枠)、第2樹脂ダム106(樹脂性隔壁)、蛍光体含有樹脂層107、透光性樹脂層108、および、赤色蛍光体109を備えている。
【0023】
基板101は、セラミックからなる基板である。基板101は、平面視長方形の形状を有している。基板101の一方の面(以下、上面と定義する。)には、LEDチップ102、印刷抵抗素子104、第1樹脂ダム105、第2樹脂ダム106、蛍光体含有樹脂層107、透光性樹脂層108、および、赤色蛍光体109が設けられている。さらに、基板101の上面には、外部接続用の電極ランド110〜113とが形成されている。
【0024】
電極ランド110、112はアノード電極として機能し、電極ランド111、113はカソード電極として機能する。電極ランド110〜113は、基板101の上面の、第1樹脂ダム105で囲まれた領域の外側であって上面における4隅付近にそれぞれ配置されている。電極ランド110〜113の表面は露出しており、外部端子と接続可能となっている。
【0025】
また、電極ランド110〜113と電気的に接続した配線が形成されている。本実施形態では上記配線は印刷配線であるが、これに限定されない。電極ランド110、113と電気的に接続している配線は、第一樹脂ダム105が形成されている位置の一部に、形成され、埋められている。一方、電極ランド111、112と電気的に接続している配線は、第一樹脂ダム105が形成されている位置の一部に、形成され埋められているとともに、当該埋められている配線の一端から、基板101の中心に向かって、基板101上を、中心の手前まで延びている。すなわち、中心で他の配線と接続しない。
【0026】
LEDチップ102は、各青色LEDチップ102間および青色LEDチップ102−配線間がワイヤ103によって電気的に接続されている。具体的には、電極ランド113と電気的に接続している配線と、一つの青色LEDチップ102が一箇所ワイヤ103によって電気的に接続されており、一方の青色LEDチップ102と、他方の青色LEDチップ102にワイヤ103によって電気的に接続されており、電極ランド112と電気的に接続している配線と、さらに一つの青色LEDチップ102が一箇所ワイヤ103によって電気的に接続されている。
【0027】
これにより、電極ランド113と電極ランド112とは、青色LEDチップ102とワイヤ103を介して、当該LEDチップ102が発光可能に、接続されている。また、電極ランド111と電極ランド110についても、上記同様の構成をとり、別の青色LEDチップ102と別のワイヤ103を介して、当該青色LEDチップ102が発光可能に、接続されている。
【0028】
各青色LEDチップ102は、二重の渦巻線(スパイラル)上を等間隔に配置されている。特に限定はしないが、前記渦巻線は、一様螺旋の形状、いわゆる、アルキメデスの螺旋の形状であって、周間距離が一定であり、二重の渦巻線がお互いに等間隔であることが好ましい。
【0029】
本実施形態では、LEDチップ102が、1.5周分の渦巻線上に形成されている。また、本実施形態では、二重の渦巻線それぞれに、26個のLEDチップ102が等間隔に設置されている。一方で、ワイヤ103の材質として、高い導電性を有する金属、合金、素材であれば特に限定はしない。例えば、ワイヤ103の材質として、金(Au)が挙げられる。
【0030】
第1樹脂ダム105および第2樹脂ダム106は、蛍光体含有樹脂層107および透光性樹脂層108の形成領域を規定する部材である。すなわち、第1樹脂ダム105および第2樹脂ダム106は、蛍光体含有樹脂層107および透光性樹脂層108の形成時の樹脂漏れを防ぐためのダム(塞き止め部材)として機能する。
【0031】
第1樹脂ダム105は、予め定められた青色LEDチップ102の実装領域(複数の発光部を形成する領域)を囲むように設けられている。これにより、第1樹脂ダム105は、平面視で正円の環状(リング状)の形状を有している。
【0032】
第2樹脂ダム106は、第1樹脂ダム105で囲まれた部分を、上記蛍光体含有樹脂層107の形成領域と透光性樹脂層108の形成領域とに仕切るように設けられている。これにより、第2樹脂ダム106は、第1樹脂ダム105から実装領域の中心に向かって、二重の渦巻線状に形成され、実装領域の中心領域で二つの渦巻線を結合させるように形成されている。上記二重の渦巻線における曲線は、一様螺旋の形状をとり、それぞれ、他方の渦巻き線に対して等間隔に形成されていることが好ましい。
【0033】
この構成により、本実施形態に係る発光装置の発光する領域である二種類の発光部(下記で説明する)が、1箇所に集まった形状ではなく、一方の発光部に他方の発光部が入り組んだ形状で形成される。ゆえに、同等の配光特性が入り組んで近接していることになるため、各発光部を同時に点灯した場合に混色を得やすく、非常に良好な混色が可能となる。さらには、各発光部が近接しているため、各発光部に及ぼす熱の影響が同じとなり、生成された光の明るさおよび色調が熱および経時変化に影響されることが少なく、また、ピーク波長の変動および演色性の大きな変動を低減することが可能となる。
【0034】
このとき、本実施形態において、第2樹脂ダム106は、リング状に形成された第1樹脂ダム105と、二箇所接触している。このとき、第1樹脂ダム105と第2樹脂ダム106は点対称に形成されている。
【0035】
また、第1樹脂ダム105および第2樹脂ダム106は、光反射性または光遮光性を有する樹脂、例えば白色のシリコーン樹脂などにより構成されている。特に、上記白色のシリコーン樹脂は、透光性のシリコーン樹脂を母材とし、光拡散フィラーとして酸化チタン(TiO)を含有させたものであることが好ましい。これにより、エポキシ樹脂などを用いたものに比べ、樹脂劣化が少なく信頼性が向上する。
【0036】
また、上記光拡散フィラーとして使用できる化合物は、酸化チタン(TiO)に限定されるものではなく、シリカ(SiO)、アルミナ(Al)、炭酸カルシウム(CaCO)、硫酸バリウム(BaSO)、水酸化アルミニウム(Al(OH))などでもよい。
【0037】
蛍光体含有樹脂層107は、分散した粒子状の赤色蛍光体109を含有する樹脂からなる封止樹脂層である。蛍光体含有樹脂層107は、第1樹脂ダム105および第2樹脂ダム106により囲まれた二つの領域のうち、一方の領域に充填されて、当該領域に配置されたLEDチップ102およびワイヤ103を埋め込むように形成されている。つまり、蛍光体含有樹脂層107は、青色LEDチップ102を一括封止して、平面視で渦巻線を描くように形成されている。
【0038】
発光装置100は、第1樹脂ダム105および第2樹脂ダム106により囲まれた渦巻状の2つの領域に、青色LEDチップ102および蛍光体含有樹脂層107により構成される第1発光部と、青色LEDチップ102および透光性樹脂層108により構成される第2発光部とがそれぞれ形成されている構成を有している。
【0039】
透光性樹脂層108は、樹脂からなる封止樹脂である。第1樹脂ダム105および第2樹脂ダム106により囲まれた、蛍光体含有樹脂層107が形成されていない、他方の領域に充填されて、当該領域に配置された青色LEDチップ102およびワイヤ103を埋め込むように形成されている。つまりは、透光性樹脂層108は、青色LEDチップ102を一括封止して、平面視で渦巻線を描くように形成されている。
【0040】
これにより、発光装置100においては、第2樹脂ダム106によって仕切られた領域に蛍光体含有樹脂層107および透光性樹脂層108が設けられていることにより、各発光面が近接している。また、各発光面の境界部分(渦巻線状)は、第1樹脂ダム105の内側領域の全域にわたってほぼ一様に存在している。
【0041】
上記構成によれば、各発光部が、一箇所に集まった形状ではなく、一方の発光部が他方の発光部に入り組んだ形状で形成される構成を有するので、更なる混色性を得ることができる。
【0042】
また、発光装置100では、発光部の数は2つに限らず、3つ以上とすることができる。このとき、発光部の数に応じて第2樹脂ダム106の形状を随時変えればよい。3つ以上の発光部を備える場合は、カソード電極として機能する電極ランドと、アノード電極として機能する電極ランドを、それぞれ発光部と同数設けることが望ましい。これにより、各発光部を独立して駆動することが可能となる。
【0043】
すなわち、3つ以上備えることが可能な各発光部の形状は、基板101の上面に垂直な方向から見て該上面における複数の発光部の形成領域の中心を基準点とするとき、上記基準点を通る該上面に垂直な一断面において、各発光部の樹脂層が、異なる発光部の樹脂層と隣接するように、複数箇所に配置されているように、設定されていればよい。
【0044】
また、発光装置100においては、電極ランド110〜113に外部端子を接続して電力を供給することで、蛍光体含有樹脂層107からの発光と、透光性樹脂層108からの発光とを、独立に駆動することができる。
【0045】
具体的には、蛍光体含有樹脂層107の領域において形成されている青色LEDと赤色蛍光体とを含んだ発光部を第1発光部とし、透光性樹脂層108の領域において形成されている青色LEDのみからなる第2発光部とする場合、第1発光部の青色LEDチップ102に電気的に接続された電極ランド110、111と、第2発光部の青色LEDチップ102に電気的に接続された電極ランド112、113とを利用して、第1発光部と第2発光部とを個別に駆動することが可能となっている。
【0046】
(青色LEDチップ)
次に、生物栽培培養用の発光装置を提供するにあたり、前提となる光合成を行う生物について簡単に説明し、青色LEDチップについて説明する。生物の中には、光エネルギーを吸収し、エネルギーとして利用する生物が存在する。これらの生物のほとんどが、光合成において中心的な役割を担う、クロロフィル(葉緑素)などの光合成色素化合物を有していることが知られている。
【0047】
クロロフィルは、植物のみならず、細菌類などを含めた多様な生物が有していることが知られ、クロロフィルを有する生物は、クロロフィルを介して光エネルギーを吸収し、そのエネルギーを利用して育成、増殖する。このことからクロロフィルが効率的に吸収できる光を照射することで、効率的な生物栽培培養用の発光装置を提供することができる。
【0048】
本発明のLEDチップは、青色LEDチップを使用しているが、これは、クロロフィルが、青色領域に吸収ピークを有するためである。
【0049】
クロロフィルは赤色の光も吸収するが、赤色LEDチップは、一般的に青色LEDチップに比べ劣化しやすく、発光効率も悪いため、本実施形態では青色LEDチップを使用し、赤色の光については赤色蛍光体の発光を利用することにしている。
【0050】
具体的には、クロロフィルは、B帯(ソーレー帯)と呼ばれる青色領域(波長400〜480nm)と、Q帯と呼ばれる赤色領域に光吸収ピークを有する。例えば、植物や一部の藻類に多く見られる、クロロフィルaとクロロフィルbと呼ばれるクロロフィルの一種が知られており、それぞれ光吸収特性が異なっている。具体的には、クロロフィルaは430〜440nmに青色領域の光吸収ピークを有し、クロロフィルbは450〜460nmに青色領域の光吸収ピークを有する。
【0051】
また、クロロフィルaやクロロフィルb以外にも多様なクロロフィルが知られている。例えば、クロロフィルc、クロロフィルc、クロロフィルd、クロロフィルf、バクテリオクロロフィルa、バクテリオクロロフィルb、バクテリオクロロフィルc、バクテリオクロロフィルd、バクテリオクロロフィルe、バクテリオクロロフィルf、バクテリオクロロフィルgなどが挙げられ、すべて青色領域に吸収ピークを有することが知られている。さらに、光エネルギーを吸収する光合成色素として、クロロフィルの他にもカロテノイドなどが知られており、カロテノイドも青色領域に光吸収ピークを有していることが知られている。
【0052】
そのようなことから、青色LEDチップ102は、発光ピーク波長が400〜480nmの範囲内の青色LEDチップであることが好ましい。特に、発光ピーク波長は、430〜460nmの範囲内であることがより好ましい。
【0053】
これにより、より効率的に生物の栽培培養に好適な光を提供することができる。特に、植物が有するクロロフィルの青色領域のピークが450nm付近に存在するため。植物栽培や特定の藻類の培養に好適な発光装置を提供することができる。
【0054】
また、各青色LEDチップ102は、蛍光体含有樹脂層107に覆われている青色LEDチップ102、と、透光性樹脂層108に覆われている青色LEDチップ102とが、異なる発光ピーク波長を有するものであってもよい。
【0055】
例えば、発光ピーク波長が430〜440nmであるLEDチップ102(タイプI)と、発光ピーク波長が450〜460nmであるLEDチップ102(タイプII)とし、タイプIのLEDチップ102と、タイプIIのLEDチップ102をそれぞれ、上記蛍光体含有樹脂層107における上記第1発光部と、上記透光性樹脂層108における上記第2発光部に形成する。
【0056】
この構成により、蛍光体含有樹脂層107に覆われる領域(第1発光部)と透光性樹脂層108に覆われる領域(第2発光部)において、それぞれのLEDチップ102に流れる電流量は調節でき、発光量が調節できるため、さまざまなクロロフィルa(青色領域の光吸収ピークが430〜440nm)とクロロフィルb(青色領域の光吸収ピークが450〜460nm)の比率を有する、対象とする特定の植物や藻類に適した光量に任意に調整することができ、より適切な光成分を発する発光装置を提供することができる。
【0057】
また、タイプIの青色LEDチップ102と、タイプIIの青色LEDチップ102を、蛍光体含有樹脂層107と透光性樹脂層108にそれぞれ覆われる同一領域において、混合させておいても良い。
【0058】
例えば、一方のタイプの青色LEDチップ102に対して、他方のタイプのLEDチップ102を二つごと、三つごと、四つごとといった具合に上記LEDチップ102を配列させていくことができる。
【0059】
これにより、対象とする特定の植物や藻類のクロロフィルa(青色領域の光吸収ピークが430〜440nm)とクロロフィルb(青色領域の光吸収ピークが450〜460nm)の吸収スペクトルの比に合わせて配列させることにより、一定のクロロフィルaとクロロフィルbの比率を有する、特定の植物や藻類に適した光量の適切な光成分を発する発光装置を提供することができる。
【0060】
一方、発光装置100では、青色LEDチップ102として、全て同一形状のものを搭載したが、これに限るものではなく、異なる形状やサイズのものを適宜搭載してもよい。例えば、青色LEDチップ102の上面は、長方形に限らず、正方形であってもよい。これにより、青色LEDチップ102の配置の自由度を上げることが可能となる。
【0061】
なお、本実施形態に用いる青色LEDチップ102として、一般に市販されているLEDチップを用いることができる。
【0062】
(赤色蛍光体)
一方、上述したように、クロロフィルにはQ帯と呼ばれる赤色領域に光吸収ピークを有している。具体的には、クロロフィルaは赤色領域の650〜660nmに光吸収ピークを有し、クロロフィルbは赤色領域の620〜630nmに光吸収ピークを有する。
【0063】
そこで、本発明では、上記蛍光体含有樹脂層107において、青色の上記LEDチップ102とともに、上記赤色蛍光体109を分散させ、蛍光体含有樹脂層107に覆われている、青色のLEDチップ102から発せられる光エネルギーを利用し、赤色の光も同時に発光できるようにした。すなわち、上記赤色蛍光体109は、青色の上記LEDチップ102の光成分により励起されて赤色の発光を呈する蛍光体である。
【0064】
したがって、本発明の生物栽培培養用発光装置を、植物栽培に用いる場合は、クロロフィルaやクロロフィルbの光吸収ピーク波長に近い発光ピーク波長を有する、赤色蛍光体の(Sr,Ca)AlSiN:Eu系蛍光体、または/および、CaAlSiN:Eu系蛍光体が用いられることが好ましい。
【0065】
なお、CaAlSiN:Euは、ユーロピウム(Eu)を付活材とする窒化物赤色蛍光体であり、温度特性が安定かつ高発光効率の蛍光体の1つである。
【0066】
(Sr,Ca)AlSiN:Eu系蛍光体は、CaAlSiN:Eu系蛍光体における、Caの一部をSrとし、発光ピークの波長を短波長側にシフトさせた蛍光体であり、CaAlSiN:Eu系蛍光体とともに、温度特性が高く、高発光効率の蛍光体である。
【0067】
特に、クロロフィルaを多く含む植物の栽培や藻類の培養に用いる場合は、CaAlSiN:Eu系蛍光体を用いることがより好ましい。これにより、クロロフィルaの赤色領域である650〜660nmの範囲にある光吸収ピークと、CaAlSiN:Eu系蛍光体の650〜660nmの範囲にある発光ピークが対応し、クロロフィルaを多く含む生物の栽培や培養に好適な発光装置を提供できる。
【0068】
また、クロロフィルbを多く含む植物の栽培や藻類の培養に用いる場合は、(Sr,Ca)AlSiN:Eu系蛍光体であることがより好ましい。これにより、クロロフィルbの赤色領域の620〜630nmの範囲にある光吸収ピークと、(Sr,Ca)AlSiN:Eu系蛍光体の620〜630nmの範囲にある発光ピークが対応し、クロロフィルbを多く含む生物の栽培や培養に好適な発光装置を提供できる。
【0069】
また、粒子状蛍光体として、特に限定されないが、赤色蛍光体の3.5MgO・0.5MgF・GeO:Mn、LaS:Eu、YS:Eu、LiEuW、(Y,Gd,Eu)、(Y,Gd,Eu)BO、YVO:Eu、または/および、CaS:Eu,Ce,Kを使用することも可能である。
【0070】
さらに、複数の赤色蛍光体109を、任意の特定の割合で混合して用いても良い。これにより、クロロフィルa、クロロフィルb、その他クロロフィル類などを、特有の割合で有する、ぞれぞれの生物に適合した発光装置を提供することができる。
【0071】
また、本発明の発光装置は、クロロフィルの一種であるバクテリオクロロフィルを有する、特定の細菌類の培養にも用いることができる。バクテリオクロロフィルは、クロロフィルaやクロロフィルbなどのクロロフィルの赤色領域の光吸収ピークよりも、長波長側の800nm以上に光吸収ピークを有することが知られている。
【0072】
この場合、赤色蛍光体の発光ピークより、長波長側に発光ピークを有する赤色蛍光体を用いる。すなわち、バクテリオクロロフィルの光吸収ピークに対応する発光ピークを有する赤色蛍光体を選択し、蛍光体含有樹脂層に分散、導入ことで、より好適なバクテリオクロロフィルを有する特定の細菌類の培養用発光装置を提供することもできる。
【0073】
本実施形態では、蛍光体含有樹脂層107における樹脂と赤色蛍光体109との配合比(重量比)は1:0.05〜1:0.40としている。この結果、植物の発芽・育苗及び栽培や、特定の藻類の培養に適した発光装置とすることが可能となる。
【0074】
特に、本発明の発光装置を、植物栽培に用いる場合には、蛍光体含有樹脂層107における樹脂と赤色蛍光体109との配合比(重量比)は1:0.30〜1:0.40となっていることが好ましい。
【0075】
上記構成により、葉を備え光合成が活発となる栽培段階において、青色及び赤色の両方の光成分を有する光を容易に出射する植物栽培用としての発光装置を提供することができる。
【0076】
(光合成光量子束)
以上の構成により、第1発光部は、「青色LEDチップ+赤色蛍光体」により青色光および赤色光を発光する。第2発光部は、「青色LEDチップ」により、青色光を発光する。
【0077】
各発光部を個別に駆動することが可能であるので、各発光部を単独に点灯させることが可能となったり、上記各発光部の点灯条件(発光強度)を調整することで、各発光部を単独に点灯させることが可能となったり、上記各発光部の点灯条件(発光強度)を調整することで、波長400nm〜480nmの青色域における光合成光量子束と、波長620nm〜700nmの赤色域における光合成光量子束との比が、1:1.3〜1:10になるように容易に調整することが可能となる。
【0078】
この結果、植物の発芽、育苗および栽培や、特定の藻類や細菌の培養に適した発光装置を提供することができる。
【0079】
特に、植物栽培用の発光装置とする場合は、波長400nm〜480nmの青色領域における光合成光量子束と、波長620nm〜700nmの赤色領域における光合成光量子束との比が、1:7.5〜1:10となっていることが好ましい。この構成により、植物の栽培により適した発光装置を提供することができる。
【0080】
植物発芽用または育苗用の発光装置とする場合には、波長400nm〜480nmの青色域における光合成光量子束と、波長620nm〜700nmの赤色域における光合成光量子束との比が、1:1.3〜1:3.5であることが好ましい。これにより、植物の発芽・育苗に適した発光装置とすることができる。
【0081】
(自動発光制御手段)
一方、上述のように、植物の光合成において中心的な役割を担うクロロフィルは、青色領域と赤色領域に明確な光吸収ピークを有している。つまり、葉を備え光合成が活発となる栽培段階では、青色領域および赤色領域両方の光成分の発光ピークを有することが生育に対して有効である。
【0082】
これに対して、青色領域の光は植物の高エネルギー反応系と呼ばれる光反応系にも影響を及ぼし、特定の植物の健全な形態形成に必要不可欠である。したがって、発芽・育苗の段階では、青色領域の光成分の重要性が増す。
【0083】
このことから、特定の植物の栽培方法として、発芽・育苗段階に対して、葉を備え光合成が活発となる栽培段階で、第1発光部(青色光および赤色光を発光)のLEDチップの発光強度を強め、第2発光部(青色光を発光)のLEDチップの発光強度を弱める操作をすることができる。これにより、特定の植物の栽培において、一つの発光装置により、発芽・育苗段階と葉を備え光合成が活発となる栽培段階で最適な光成分を提供することができる。
【0084】
また、植物工場に適用する場合、発芽・育苗・栽培面積や設置面積を増大させること無く、一つの発光装置で、各段階に合わせて光量割合を調整することができる。
【0085】
そこで、対象とする植物の発芽・育苗段階と葉を備え光合成が活発となる栽培段階の時間情報を予め調べておき、そして、予めその時間情報を入力し、その時間情報に従って、自動的に第1発光部の発光強度を強め、第2発光部の発光強度を弱める発光制御手段を備えておくことが好ましい。上記発光制御手段は、例えば、シーケンサーによるものなどが考えられる。
【0086】
これにより、人の手をかけずに、一つの発光装置により、自動的に、特定の植物の発芽・育苗段階と葉を備え光合成が活発となる栽培段階で最適な光成分を提供することができる。
【0087】
また、発光制御手段は、発芽・育苗段階と葉を備え光合成が活発となる栽培段階の間の発光制御だけには限らず、さらに、植物の細かい成長段階にあわせて、発光強度の制御を行う発光制御手段であっても良い。
【0088】
(基板)
一方、基板101の上面の形状は、長方形に限らず、多角形、正方形や円形などであってもよい。さらに、本実施形態における発光装置100では、基板101として、セラミックからなる基板を使用しているが、これに限らず、セラミックの基板の代わりに、例えば、金属基板表面に絶縁層を形成したメタルコア基板を使用してもよい。
【0089】
この場合、絶縁層は、印刷抵抗素子104、配線および電極ランド110〜113を形成するエリアにのみ形成し、複数の青色LEDチップ102を金属基板表面に直に搭載する構成とすることができる。
【0090】
また、印刷抵抗素子104は、可能な限り第1樹脂ダム105に覆われることが好ましいが、この限りではない。また、電圧を制御するためのツエナーダーオードを形成してもよく、この場合も、可能な限り第1樹脂ダム105に覆われることが好ましいが、この限りではない。
【0091】
なお、発光装置100は印刷抵抗素子104を必ずしも備える必要はない。印刷抵抗素子104の大きさ(抵抗値)や回路設置は、搭載する青色LEDチップ102の数や、使用環境(青色LEDチップ102に印加される可能性のある静電耐圧値の大きさなど)に応じて決められる。
【0092】
一方、本実施形態では、基板101の上面の反対側(以下、裏面と定義する。)には何も設けられていないが、特にこれに限定されるものではなく、何らかの冷却手段を備えていることが好ましい。
【0093】
例えば、基板型の発光装置の放熱板を兼ねる基板101の裏面側に、フィン付きヒートシンクを取り付けることが可能である。これにより、例えば、本発明の発光装置を生物栽培培養工場の室内に設置する場合、当該室内において、エアーフローを利用することにより、上記フィン付きヒートシンクにて基板101を冷却することが可能となる。なお、この場合、フィン付きヒートシンクの開口部はエアーフローの方向と同じ方向であることが好ましい。
【0094】
また、基板101の裏面に、液体培養液を循環させる管を設けた構成とすることも可能である。これにより、発光装置100を好適に冷却することが可能となり、安定したクロロフィルの光吸収特性の光吸収ピークに合う光とを照射することができる。
【0095】
(対象生物)
本発明の発光装置は主に、光照射により生物の栽培、培養を行うことができる発光装置である。本発明が対象とする栽培、培養できる生物は、光合成を行う生物である。当該生物としては、例えば、光によって栽培、培養できる生物であって、ヨモギ、ナス、キャベツ、マリーゴールド、キュウリ、ヒマワリ、カリフラワー、ブロッコリー、コマツナなどの緑色植物、ワカメなどの褐藻類、コケなどの珪藻類、ハプト藻などのハプト藻類、渦鞭毛藻などのクリプト藻類、アオサやアオミドロなどの緑藻類、スピルリナなどの藍藻類、および、いわゆる光合成細菌と呼ばれる細菌類を挙げることができるが、これらに限定されない。
【0096】
(照明用発光部)
上述した発光装置100は、主に生物栽培培養用の発光装置であり、この発光装置をそのまま用いて、人間が作業するために必要な照明用の発光装置とすることは不適当である。
【0097】
上述したように、本発明では発光部は二つとは限らず、複数の発光部を形成することが可能である。
【0098】
ここで、上述した発光装置100に、さらに、一つの照明用の発光部を形成し、人間が作業するために必要な照明用の光と、生物栽培培養用の光を同時に放出する発光装置の構成を示す。
【0099】
例えば、発光部を3領域形成するにする場合の発光装置の構造として、電極ランドを3セット形成し、さらに二重の渦巻状に構築した発光部を、三重の渦巻状にする構造が挙げられるが、これに限定しない。
【0100】
すなわち、第1発光部、第2発光部に加えて、照明用発光部として、複数の青色LEDチップ2の上側を被覆する樹脂層の樹脂に、赤色蛍光体7bに加えて緑色蛍光体7cが追加して樹脂7aに混合分散されている発光部を形成する。
【0101】
緑色蛍光体は、上記の青色領域(波長400nm〜480nm)の光を吸収し、発光ピーク波長が500〜600nmの領域である光を発光する、従来公知の蛍光体を用いればよく、特に限定はしない。例えば、(Ba,Sr)SiO:Euなどが挙げられる。
【0102】
ここで、照明用発光部は、第1発光部、第2発光部とは独立して発光量を調整できる。
【0103】
照明用発光部では、樹脂7aと赤色蛍光体7bと緑色蛍光体7cとの配合比(重量比)は、例えば1:0.01:0.10となっていることが好ましい。
【0104】
こうすることで、クロロフィルの吸収スペクトルに適合した青色光や赤色光を発光するとともに、人間が最も明るく感じる波長550nm付近の光量を増加することができる。したがって、照明用発光部は生物栽培培養する空間内において、人間が作業するための照明光源として有効である。
【0105】
この照明用発光部は、上記の第1発光部と第2発光部とともに発光させてもよいし、単独で発光させてもよい。
【0106】
(発光装置の製造方法)
次に、本実施形態に係る発光装置の製造方法について説明する。なお、以下に提示する各部材の寸法は、単なる一例であり、発光装置100はその寸法に限定されるものではない。
【0107】
<配線電極ランド形成工程>
まず、基板101の上面に、配線および電極ランド110〜113を形成する。所定の大きさの基板101(外形サイズ:24mm×20mm、厚み:1mm)を準備する。そして、基板101の上面に、印刷配線によって金(Au)からなる導電体パターンを形成することで、配線(幅:300μm,厚み:10μm)を形成する。その後、同じ面に、印刷配線によって銀(Ag)−白金(Pt)からなる導電体パターンを形成することで、電極ランド110〜113(長さ:3.5mm,幅:1.4mm,厚み:20μm)を形成する。これにより、上配線および電極ランド110〜113が、所定の位置に形成される。
【0108】
<印刷抵抗素子形成工程>
続いて、抵抗成分を含むペーストをスクリーン印刷した後、その基板101を電気炉で焼いてペーストを定着させることにより、保護素子としての印刷抵抗素子104(幅:0.2μm,厚さ:10μm,抵抗値:1MΩ)を形成する。上記ペーストは、酸化ルテニウム(RuO)を主成分として構成される。これにより、印刷抵抗素子104が、所定の位置に形成される。
【0109】
<ボンディング工程>
続いて、青色LEDチップ102を、基板101の上面に実装する。具体的には、まず、52個の青色LEDチップ102を、それぞれ所定の位置に(外側から中心に向けて)、例えば、シリコーン樹脂を用いてダイボンディングする。なお、あらかじめ青色LEDチップ102の上面には、アノード用およびカソード用の2つのチップ電極が設けられている。そして、青色LEDチップ102間のアノード用チップ電極とカソード用チップ電極をワイヤ103を用いてワイヤボンディングを行い、青色LEDチップ102間を電気的に接続する。
【0110】
さらに、アノード用チップ電極と、電極ランド(カソード電極)と電気的に接続した配線をワイヤ103を用いてワイヤボンディングを行い、上記カソード用チップ電極と、電極ランド(アノード電極)と電気的に接続した配線をワイヤ103を用いてワイヤボンディングを行い、それぞれ、電気的に接続する。
【0111】
<樹脂ダム形成工程>
続いて、第1樹脂ダム105および第2樹脂ダム106を、基板101の上面に形成する。具体的には、例えばディスペンサーを用いて、液状の白色シリコーン樹脂(光拡散フィラーTiOを含有)を所定の位置に描画する。すなわち、第1樹脂ダム105の形成位置に描画した後、第2樹脂ダム106の形成位置に描画する。このとき、第2樹脂ダム106形成の始点は上記第1樹脂ダム105に接触し、その終点も第1樹脂ダム105に接触することを特徴としている。第2樹脂ダム106は、青色LEDチップ102に接触させない。
【0112】
そして、温度:150℃、時間:60分の条件で熱硬化させることにより、第1樹脂ダム105(幅:1mm,リング径:16mm)および第2樹脂ダム106(幅:0.5mm)を形成する。なお、上記の温度および時間は一例であり、これに限定されない。
【0113】
<蛍光体含有樹脂層形成工程>
続いて、蛍光体含有樹脂層107を、基板101の上面に形成する。具体的には、液状の透明のシリコーン樹脂に粒子状の赤色蛍光体109を分散させた蛍光粒子入り樹脂をあらかじめ製造し、その赤色蛍光体を含む樹脂を第1樹脂ダム105および第2樹脂ダム106により囲まれた一方の領域を満たすよう注入する。
【0114】
赤色蛍光体を含む樹脂を注入した後は、温度:150℃、時間:30分の条件で熱硬化させることにより、蛍光体含有樹脂層107を形成する。なお、上記の温度および時間は一例であり、これに限定されない。シリコーン樹脂を用いることにより、エポキシ樹脂などを用いたものに比べ、樹脂劣化が少なく信頼性が向上する。
【0115】
<透光性樹脂層形成工程>
続いて、透光性樹脂層108を、基板101の上面に形成する。具体的には、液状の透明のシリコーン樹脂を第1樹脂ダム105および第2樹脂ダム106により囲まれた他方の領域を満たすよう注入する。その後は、温度:150℃、時間:5時間の条件で熱硬化させることにより、透光性樹脂層108を形成する。
【0116】
これにより、透光性樹脂層108が、所定の位置に形成される。すなわち、透光性樹脂層108が、青色LEDチップ102を一括封止して、平面視で渦巻線を描くように形成される。こうして、図1に示した発光装置100を作製し得ることができる。
【0117】
〔実施形態2〕
図2は、本実施形態の植物栽培用の発光装置200(以下、単に発光装置200と称する)の一構成例を示す平面図である。以下、発光装置200の構成および形態についてするが、記載していない構成または形態については、実施形態1における発光装置100と同一構成または同一形態をとっているものとする。
【0118】
(発光装置の基本構成)
発光装置200は、基板101、LEDチップ102、第1樹脂ダム105、蛍光体含有樹脂層107(樹脂層)、赤色蛍光体109および透光性樹脂層108(樹脂層)を備えている。
【0119】
実施形態1と同様、電極ランド110、112はアノード電極として機能する。電極ランド111、113はカソード電極として機能する。第1樹脂ダム105の内側の領域には、蛍光体含有樹脂層107、および透光性樹脂層108が形成されている。ただし、実施形態1とは異なり、第2樹脂ダムは形成されていない。
【0120】
上記構成によれば、第2樹脂ダムが形成されておらず、蛍光体含有樹脂層107および透光性樹脂層108が直接隣接して形成されているため、効率的に発光することができ、より混色性を得ることができる。
【0121】
蛍光体含有樹脂層107は、赤色蛍光体109を含有する樹脂からなる樹脂層である。透光性樹脂層108は、円形の第1樹脂ダム105の内側の領域であって、領域に配置されたLEDチップ102およびワイヤ103を埋め込むように形成されている。
【0122】
本実施形態において、蛍光体含有樹脂層107は、LEDチップ102を複数グループに分けてそれぞれ封止するように形成されている。これにより、蛍光体含有樹脂層107は、平面視で帯状に、三つの領域(3領域)に形成されている。
【0123】
具体的には、図2の左右方向を横方向、上下を上下方向または上下と定義すると、第1樹脂ダム105が形成する円内を横方向に、第1樹脂ダム105と接触するように蛍光体含有樹脂層107が帯状に上記3領域が形成されている。上記3領域の蛍光体含有樹脂層107の一つのは第1樹脂ダム105が形成する円の中心上に形成され、残りの二つの領域の蛍光体含有樹脂層107は、当該円の中心上に形成された蛍光体含有樹脂層107の領域の上下に、それぞれ、当該円の中央に対象に形成されている。
【0124】
透光性樹脂層108は、樹脂からなる封止樹脂層である。透光性樹脂層108は、第1樹脂ダム105の内側の領域であって、当該領域に配置されたLEDチップ102およびワイヤ103を埋め込むように形成されている。つまりは、透光性樹脂層108は、青色LEDチップ102を複数グループに分けてそれぞれ封止するように形成されている。
【0125】
これにより、透光性樹脂層108は、第1樹脂ダム105と接触するように、平面視で帯状に、四つの領域に形成されている。すなわち、透光性樹脂層108は、第1樹脂ダム105と蛍光体含有樹脂層107に囲まれた、四つの領域を満たすように形成されている。
【0126】
本実施形態において、蛍光体含有樹脂層107が形成する三つの領域、および、透光性樹脂層108が形成する四つの領域の、七つの領域において、それぞれLEDチップ102およびワイヤ103は二列に形成されている。
【0127】
電極ランド110〜113と電気的に接続する配線は、第1樹脂ダム105に埋められている。
【0128】
本実施形態における粒子状蛍光体には、650nm付近にピーク発光波長を有する赤色蛍光体109として、CaAlSiN:Eu系蛍光体が用いられている。
【0129】
これにより、蛍光体含有樹脂層107が形成された領域は、「青色LEDチップ+赤色蛍光体」により、青色光および赤色光を発光する第1発光部となる。透光性樹脂層108が形成された領域は、「青色LEDチップ」により青色光を発光する第2発光部となる。
【0130】
(発光装置の製造方法)
上記構成を有する発光装置200は、図1を用いて説明した実施形態1の発光装置100の製造方法と、同様の工程で、同様の順序で行うことができる。
【0131】
蛍光体含有樹脂層形成工程において、図2に明示するように、蛍光体含有樹脂層107を、基板101の上面に形成する。具体的には、透明のシリコーン樹脂に上記赤色蛍光体を分散させたものである蛍光体粒子入り樹脂を、所定の位置に載せることにより、蛍光体含有樹脂層107を形成する。
【0132】
なお、蛍光体含有樹脂層107のシリコーン樹脂は、チクソ性が高く流動性のないシリコーン樹脂にて形成した。このチクソ性が高く流動性のないシリコーン樹脂は、例えば、チクソ性付加剤を樹脂に混入させることによって実現することができる。
【0133】
これにより、蛍光体含有樹脂層107は、基板101の上面に載せた後、熱硬化することなく、粘度が上がり固化する。つまりは、蛍光体含有樹脂層107が、青色LEDチップ102を封止して、平面視で帯状に形成される。
【0134】
このように、蛍光体含有樹脂層107として、透光性樹脂層108よりもチクソ性が高い(粘度が高い)樹脂を用いることで、この時点で蛍光体含有樹脂層107を熱硬化させる必要がなくなる。
【0135】
透光性樹脂層形成工程において、蛍光体含有樹脂層107は、透光性樹脂層108を形成するための、いわゆる実施形態における樹脂ダム(樹脂壁)として機能する。すなわち、蛍光体含有樹脂層107は、硬化させることなく、ダム材として用いることができる。この蛍光体含有樹脂層107の間に、透光性樹脂層108を形成する。
【0136】
こうして、図2に示した発光装置200を作製し得る。発光装置200においては、電極ランド110〜113に外部端子を接続して電力を供給することで、蛍光体含有樹脂層107からの発光と、透光性樹脂層108からの発光とを、独立に駆動することができる。
【0137】
ゆえに、各発光部を個別に駆動することが可能であるので、各発光部を単独に点灯させることが可能となり、各発光部の点灯条件(発光強度)を調整することで、波長450nmの青色域における光合成光量子束と、波長650nmの赤色域における光合成光量子束との比が、およそ1:10になるように容易に調整することが可能となる。
【0138】
本実施形態の発光装置は、特に藻類の培養に向いている。
〔実施形態3〕
図3は、本実施の形態の植物栽培用の発光装置300(以下、単に発光装置300と称する)の一構成例を示す平面図である。以下、実施形態3における発光装置300の構成および形態についてするが、記載していない構成または形態については、実施形態1おける発光装置100と同一構成または同一形態をとっているものとする。
【0139】
(発光装置の基本構成)
蛍光体含有樹脂層107は、LEDチップ102を複数の領域に分けてそれぞれ封止するように形成されている。本実施形態では二つの領域で形成されている。
【0140】
透光性封止樹脂層108は、LEDチップ102を複数の領域に分けてそれぞれ封止するように形成されている。本実施形態では二つの領域で形成されている。第1樹脂ダム105および第2樹脂ダム106は平面視で、上下方向、左右方向に平行な帯を有する田の字状に形成されている。具体的には、田の字状に形成された樹脂ダムのうち、第1樹脂ダム105が、口の字状に形成され、第2樹脂ダム106が、第1樹脂ダム106に連続して十の字状に形成されている。
【0141】
また、蛍光体含有樹脂層107および透光性封止樹脂層108は、第1樹脂ダム105および第2樹脂ダム106により囲まれる領域において形成されている。
【0142】
また、田の字状に形成された第1樹脂ダム105において、電極ランド110〜113に近接した四つの角は曲線を描いて形成されている。すなわち、第1樹脂ダム105および第2樹脂ダム106は、平面視で、四つの角が丸まった田の字状に形成されている。
【0143】
田の字状に形成された第1樹脂ダム105および第2樹脂ダム106に囲まれる四つの領域において、電極ランド110、113側に位置する領域には上記透光性封止樹脂層108が形成され、電極ランド111、112側に位置する領域には上記蛍光体含有樹脂層107が形成されている。
【0144】
これにより、蛍光体含有樹脂層107が形成された領域は、「青色LEDチップ+赤色蛍光体」により、青色光および赤色光を発光する第1発光部となる。透光性封止樹脂層108が形成された領域は、「青色LEDチップ」により青色光を発光する第2発光部となる。
【0145】
各発光部では、青色LEDチップ102は、上下方向に6列に均等間隔で並んで設置されている。青色LEDチップ102はワイヤ103により、発光可能に、上下方向に接続されている。同じ発光部となる二つの領域を電気的に接続するために、縦横付近に二つの領域に跨る配線が形成されている。第1発光部を接続する配線と第2発光部を接続する配線の二つの配線は、中央部で電気的に接触しないように、例えば、高さを変えてクロスするように形成されている。
【0146】
蛍光体含有樹脂層107の粒子状の赤色蛍光体109には、620〜630nmの領域に発光ピーク波長を有する(Sr,Ca)AlSiN:Eu系蛍光体が用いられている。
【0147】
発光装置300では、LEDチップ102を接続している。具体的には、蛍光体含有樹脂層107が形成された各領域には、タイプIのLEDチップ102(発光ピーク波長は430〜440nmの領域内)が封止されている。また、透光性封止樹脂層108が形成された各領域には、タイプIIのLEDチップ102(発光ピーク波長は450〜460nmの領域内)が封止されている。
【0148】
一方、実施形態1に記載したように、450〜460nmの領域内の発光ピーク波長を有する青色光は植物の高エネルギー反応系と呼ばれる光反応系にも影響を及ぼし、植物の健全な形態形成に必要不可欠である。したがって、発芽・育苗の段階では、青色光の成分の重要性が増す。
【0149】
このため、透光性封止樹脂層108が形成された領域は、「青色LEDチップ」により青色光を発光する第2発光部のみを発光させることにより、または、第1発光部よりも第2発光部を強く発光させることにより、発芽・育苗の段階において植物の健全な形態形成に必要不可欠である青色光の成分の光を容易に出射する植物栽培用LED光源としての発光装置を提供することができる。
【0150】
〔実施形態4〕
図4は、本実施形態の植物栽培用の発光装置400(以下、単に発光装置400と称する)の一構成例を示す平面図である。以下、実施形態4における発光装置400の構成および形態についてするが、記載していない構成または形態については、実施形態3おける発光装置300と同一構成または同一形態をとっているものとする。
【0151】
(発光装置の基本構成)
発光装置400は、図に示すように電気的に接続された複数のLEDチップ102を備えるものである。
【0152】
蛍光体含有樹脂層107は、青色LEDチップ102をそれぞれ封止するように形成されている。透光性封止樹脂層108は、青色LEDチップ102をそれぞれ封止するように形成されている。よって、上記蛍光体含有樹脂層107および上記透光性封止樹脂層108は、平面視で、上記第1樹脂ダム105の内側の領域において円模様を形成している。
【0153】
蛍光体含有樹脂層107の粒子状の赤色蛍光体には、650nm付近に発光ピーク波長を有する赤色蛍光体109として、CaAlSiN:Eu系蛍光体が用いられている。
【0154】
これにより、蛍光体含有樹脂層107が形成された領域は、「青色LED(クロロフィルbに対応)+赤色蛍光体」により、青色光、および赤色光を発光する第1発光部となる。透光性樹脂層108が形成された領域は、「青色LED(クロロフィルaに対応)」により青色光を発光する第2発光部となる。
【0155】
ここで、本実施形態では、上記蛍光体含有樹脂層107で覆われている青色のLED102(タイプII)の波長はクロロフィルbに対応する450〜460nmに発光ピークを持ち、上記透光性樹脂層108で覆われている青色のLED102(タイプI)の波長はクロロフィルaに対応する430〜440nmに発光ピークを持つ構成としている。
【0156】
一方、美白・美顔・ニキビ防止・肌の炎症防止用としてクロロフィルを使用することが知られている。そこで、本発明の発光装置の使用方法の一例として、本発明の発光装置を用いて、培養または栽培した、ワカメ、キク科ヨモギ属植物、スピルリナなどからクロロフィルを抽出し、クロロフィルを提供することができる。
【0157】
なお、本発明は、上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【0158】
なお、本発明は、下記に示す前提技術に基づいて発明された技術である。すなわち、本発明は、下記に示す前提技術の構成の青色LEDと赤色蛍光体とを含んだ発光部を第1発光部とし、さらに、この第1発光部に、青色LEDのみからなる第2発光部を含んだ発光装置の発明である。第一発光部のみからなる前提技術を以下に示す。
〔前提技術〕
本発明の前提となる技術について図5〜11,13に基づいて説明すれば、以下のとおりである。すなわち、本発明は以下に示す前提技術に基づいて発明された技術である。
【0159】
(前提技術の発光装置の構成)
本前提技術の植物栽培用の発光装置の構成について、図6(a)(b)に基づいて説明する。図6(a)は赤色蛍光体含有樹脂を注入する前の植物栽培用の発光装置を示す平面図であり、図6(b)は赤色蛍光体含有樹脂を注入した後の植物栽培用の発光装置を示す平面図である。
【0160】
本前提技術の植物栽培用の発光装置としての基板型の発光装置10は、図6(a)に示すように、基板1上に複数の青色LEDチップ2が搭載され、その周囲に樹脂からなる樹脂ダム3が設けられている。
【0161】
本前提技術では、青色LEDチップ2は、例えば、電気的に直列接続されて直列に3個ずつ並んだものが、隣接する各列間で青色LEDチップ2同士が電気的に並列接続されるように並列に8列並んだ24個からなっている。なお、本発明においては、青色LEDチップ2の個数は必ずしも複数に限らず、1個でもよく、また、複数においても24個に限らない。さらに、複数個における並べ方についても問わない。電気的な接続方法もこれに限るものではない。
【0162】
上記各青色LEDチップ2は、樹脂ダム3の内側において、各列の青色LEDチップ2の両側に設けられた配線4aと配線4bとにそれぞれ導電性のワイヤ5にて接続されている。そして、配線4aと配線4bとは、基板1上において樹脂ダム3の外側に搭載されたカソード電極ランド6aとアノード電極ランド6bとにそれぞれ接続されている。
【0163】
そして、本前提技術の基板型の発光装置10には、図6(b)に示すように、樹脂ダム3の内側に充填されて上記複数の青色LEDチップ2の上側を被覆する樹脂層7が設けられており、この樹脂層7には、赤色蛍光体7bが混合分散されている。
【0164】
そして、本前提技術の青色LEDチップ2は、クロロフィルの青色域吸収ピークに対応する青色光としての波長400nm〜480nmの光を発生する。また、赤色蛍光体7bは、青色LEDチップ2の光を吸収してクロロフィルの赤色域吸収ピークに対応する発光ピークが波長620〜700nmの赤色光を発光するものとなっている。
【0165】
なお、青色LEDチップ2は、青色域吸収ピークに対応する青色光としての波長400nm〜480nmのみでなく、紫外色を含む青紫外色領域まで出力するものであってもよい。
【0166】
(青色光と赤色光との光量割合の調整)
本前提技術の基板型の発光装置10における青色域と赤色域との光量割合の調整方法について、図5(a)(b)及び図7に基づいて説明する。図5(a)(b)は、それぞれ、赤色蛍光体とシリコーン樹脂との配合比が互いに異なる基板型LED光源10(10A)・10(10D)の構成を模式的に示す断面図である。
【0167】
図5(a)に示すように、本前提技術の基板型の発光装置10では、樹脂層7は樹脂としてのシリコーン樹脂からなる樹脂7aに赤色蛍光体7bが含有されたものからなっている。したがって、この樹脂7aに対する赤色蛍光体7bの割合を変更することによって、互いに異なる波長の光が出射できるものとなる。
【0168】
例えば、赤色蛍光体7bとして、CaAlSiN:Euを使用し、前述したように、青色LEDチップ2から波長が400〜480nmの範囲で発光ピークを有する光を出射する。これによって、発光ピーク波長400〜480nmの青色光と発光ピーク波長620〜700nmの赤色光とを出射する。
【0169】
具体的には、図5(a)に示すように、配合比(重量比)を樹脂7a:赤色蛍光体7b=1:0.05とした基板型の発光装置10Aの場合には、図7(a)に示すように、波長440nmに発光強度1.0のピーク波長と波長640nmに発光強度0.3のピーク波長とを有する発光スペクトルが得られる。
【0170】
また、配合比(重量比)を樹脂7a:赤色蛍光体7b=1:0.10とした基板型LED光源10Bの場合には、図7(b)に示すように、波長440nmに発光強度1.0のピーク波長と波長640nmに発光強度0.8のピーク波長とを有するスペクトルが得られる。
【0171】
さらに、配合比(重量比)を樹脂7a:赤色蛍光体7b=1:0.15とした基板型LED光源10Cの場合には、図7(c)に示すように、波長440nmに発光強度0.56のピーク波長と波長640nmに発光強度1.0のピーク波長とを有するスペクトルが得られる。
【0172】
そして、図5(b)に示すように、配合比(重量比)を樹脂7a:赤色蛍光体7b=1:0.20とした基板型の発光装置10Dとした場合には、図7(d)に示すように、波長440nmに発光強度0.4のピーク波長と波長640nmに発光強度1.0のピーク波長とを有するスペクトルが得られる。
【0173】
このように樹脂7aと赤色蛍光体7bとの配合比(重量比)を変更することによって、容易に青色域と赤色域との光量割合を調整することが可能となる。
【0174】
(植物の成長において必要な光の波長)
次に、植物の成長においてどのような波長の光を照射すればよいのかについて、図8に基づいて説明する。図8は、クロロフィルの光吸収スペクトルと本前提技術の基板型の発光装置10の発光スペクトルを示す図である。
【0175】
まず、上述のように、植物の光合成において中心的な役割を担う葉緑素(クロロフィル)は、光を一様に吸収するのではなく、図8に示すように、赤色660nm付近と青色450nm付近とに明確な吸収ピークを示し、これに関係して、光合成の波長特性は660nm付近に第一ピークを有すると共に、450nm付近に第二のピークを有している。
【0176】
したがって、植物が葉を備え光合成が活発となる栽培段階では、赤色及び青色の両方の光成分を有することが生育に対して有効になる。
【0177】
一方、450nm付近の青色光は、植物の高エネルギー反応系と呼ばれる光反応系にも影響を及ぼし、植物の健全な形態形成に必要不可欠である。このため、発芽・育苗の段階では、青色光の成分の重要性が増す。
【0178】
これに対して、本前提技術の基板型の発光装置10においては、図8に示すように、クロロフィルの青色域吸収帯には、本前提技術の基板型の発光装置10Aが適していると共に。クロロフィルの赤色域吸収帯には本前提技術の基板型の発光装置10Dが適していることが分かる。
【0179】
このように、本前提技術の基板型の発光装置10においては、樹脂7aと赤色蛍光体7bとの配合比(重量比)を変更するのみでクロロフィルの光吸収特性に容易に合わせることができることがわかる。
【0180】
ところで、光の分野では、光量の単位として例えば光量子束密度が用いられる。ここで、光量子束密度は、ある対象物に、1秒間に照射される光子の数をその対象物の受光面積で割った値をいう。
【0181】
しかし、光量子束密度という場合には、光子の数を数えるので、赤外光又は紫外光のいずれが来ても1個は1個である。一方、光化学反応は、色素が吸収できる光子が来たときだけに引き起こされる。例えば、植物の場合、クロロフィルに吸収されない光がいくら来ても、それは存在しないのと同じである。そこで、光合成の分野では、クロロフィルが吸収できる400nm〜700nmまでの波長領域だけの光合成有効光量子束密度又は光合成光量子束が定義されている。なお、光合成光量子束とは、光合成光量子束とは、光合成有効光量子束密度(PPFD:photosynthetic photon flux density)に光照射面積をかけたものをいう。
【0182】
この値は、単にクロロフィルの赤域及び青域の吸収ピーク波長のエネルギーで表現した値ではなく、植物の成長に必要な光強度を求めるために、赤域及び青域の各吸収スペクトルに対応するエネルギー(すなわち光合成に必要なエネルギー)を光量子の量で表現した値である。
【0183】
また、光合成光量子束は、発光装置からの発光スペクトル特性と、各波長の光量子1個のエネルギーとから求めることができる。
【0184】
そして、図7(a)に示す基板型の発光装置10Aでは、波長400nm〜480nmの青色域における光合成光量子束と、波長620nm〜700nmの赤色域における光合成光量子束との比が、1:1.3となる。
【0185】
また、図7(b)に示す基板型の発光装置10Bでは、波長400nm〜480nmの青色域における光合成光量子束と、波長620nm〜700nmの赤色域における光合成光量子束との比が、1:3.5となる。
【0186】
また、図7(c)に示す基板型LED光源10Cでは、波長400nm〜480nmの青色域における光合成光量子束と、波長620nm〜700nmの赤色域における光合成光量子束との比が、1:7.5となる。
【0187】
また、図7(d)に示す基板型の発光装置10Dでは、波長400nm〜480nmの青色域における光合成光量子束と、波長620nm〜700nmの赤色域における光合成光量子束との比が、1:10となる。
【0188】
したがって、本前提技術では、波長400nm〜480nmの青色域における光合成光量子束と、波長620nm〜700nmの赤色域における光合成光量子束との比が、1:1.3〜1:10となっている。この結果、植物の発芽・育苗及び栽培に適した基板型の発光装置10とすることが好ましい。
【0189】
具体的には、植物育成において、発芽棚又は育苗棚に設置されることを目的とする場合には、波長400nm〜480nmの青色域における光合成光量子束と、波長620nm〜700nmの赤色域における光合成光量子束との比が、1:1.3〜1:3.5となる基板型の発光装置10A・10Bが好ましい。これにより、植物の発芽・育苗に適した基板型LED光源10A・10Bとすることができる。
【0190】
また、本前提技術では、植物育成において、栽培棚に設置されることを目的とする場合には、波長400nm〜480nmの青色域における光合成光量子束と、波長620nm〜700nmの赤色域における光合成光量子束との比が、1:7.5〜1:10となる基板型の発光装置10C・10Dが好ましい。これにより、植物の栽培に適した基板型LED光源10C・10Dすることができる。
【0191】
また、本前提技術の基板型の発光装置10と、従来の単独の植物育成用の赤色LEDとの相対全光束における温度特性を図9に示す。図9において、横軸は搭載チップのジャンクション温度を示し、縦軸は相対全光束値を示している。図9に示すように、基板型の発光装置10(図9において実線)と従来の単独の植物育成用の赤色LED(図9において破線)とでは、100℃付近の高温領域において約10%の温度特性の差があることが判る。この理由は、赤色LEDの温度特性が悪いことに起因している。なおここで示す、従来の赤色砲弾型LEDランプとは上記特許文献2の「発明の実施の形態」や図1、2に基づいて作製した発光装置である。
【0192】
これにより、本前提技術の基板型の発光装置10は従来の従来の赤色砲弾型LEDランプよりも、低温から高温まで安定した光成分の光を発光することができるということがわかる。
【0193】
これに対して、本前提技術の基板型の発光装置10では赤色LEDの代わりに赤色蛍光体7bにて構成しているため温度特性が向上している。延いては、基板型の発光装置10及び後述する砲弾型LEDランプ40は、クロロフィルの光吸収特性の光吸収ピークによくあわせることができる。
【0194】
(赤色蛍光体)
ここで、上記の説明において、前提技術の基板型の発光装置10では、赤色蛍光体7bとして、CaAlSiN:Euを使用しているが、必ずしもこれに限らず、例えば、(Sr,Ca)AlSiN:Euを使用することも可能である。この(Sr,Ca)AlSiNは、CaAlSiN:Euにおいて、Caの一部をSrに置換えて発光ピーク波長を短波長にシフトさせたものであり、CaAlSiN:Euと同様に温度特性が安定かつ高発光効率の蛍光体である。
【0195】
具体的には、特に、クロロフィルa(Q帯と呼ばれる赤色領域)を多く含む植物等に対しては、赤色蛍光体7bとしてCaAlSiN:Eu(発光ピーク波長650〜660nm)を使用することが好ましい。また、クロロフィルbを多く含む植物などに対しては赤色蛍光体7bとしてより短波長側に発光ピーク(620〜630nm)をもつ(Sr,Ca)AlSiN:Euを使用することが好ましい。
【0196】
また、赤色蛍光体7bとして、3.5MgO・0.5MgF・GeO:Mn、LaS:Eu、YS:Eu、LiEuW、(Y,Gd,Eu)、(Y,Gd,Eu)BO、及び/又はYVO:Eu、CaS:Eu,Ce,Kを使用することも可能である。
【0197】
勿論、CaAlSiN:Euと(Sr,Ca)AlSiN:Euとを使用する等、赤色蛍光体7bを2種類併用してもよいことはいうまでもない。クロロフィルaとクロロフィルbとが共存している植物の栽培にとって有効である。
【0198】
また、クロロフィルの青色領域の光吸収特性に対しても青色LEDチップ2のピーク波長を、クロロフィルa及びクロロフィルbの吸収ピークに合致するように適宜選定してもよい。例えば、クロロフィルaを多く含む植物では430〜440nmにピークを有する青色LEDチップ2(タイプI)を使用し、クロロフィルbを多く含む植物では450〜460nmにピークを有する青色LEDチップ2(タイプII)を使用することが好ましい。
【0199】
さらに、青色LEDチップ2と赤色蛍光体7bの組み合わせを、クロロフィルa及びクロロフィルbの各タイプに合致した組み合わせの基板型LED光源10としてもよい。
【0200】
例えば、タイプIの青色LEDチップ2と、CaAlSiN:Euからなる赤色蛍光体7bとの組み合わせや、タイプIIの青色LEDチップ2と(Sr,Ca)AlSiN:Euからなる赤色蛍光体7bとの組み合わせ等、それぞれの組み合わせ構成の基板型LED光源10とすることが可能である。
【0201】
この場合、それぞれ樹脂7aと赤色蛍光体7bとの配合比(重量比)を所望の光量割合になるように適宜調整する。
【0202】
(照明用の発光装置)
上述した基板型の発光装置10は、植物栽培用の発光装置であり、その発光装置をそのまま用いて、人間が作業するために必要な照明用の発光装置とすることは不適当である。
【0203】
そこで、この基板型の発光装置10を改良して人間が作業するために必要な照明用の発光装置20とする方法を以下に示す。
【0204】
すなわち、前述した基板型LED光源10の構成に加えて、図7(a)(b)(c)に示すように、複数の青色LEDチップ2の上側を被覆する樹脂層7には、赤色蛍光体7bに加えて緑色蛍光体7cが追加して樹脂7aに混合分散されている。
【0205】
ここで、用いることができる緑色蛍光体としては、青色LEDチップから発光される光を吸収して、550付近を中心とした発光ピークを有する光を発光する蛍光体であれば特に限定はしない。緑色蛍光体として、例えば、(Ba,Sr)SiO:Eu、(Si,Al)(O,N):Euなどが挙げられる。
【0206】
また、具体的に、照明用の発光装置20は、基板1上に複数の青色LEDチップ2が搭載され、その周囲に樹脂ダム3が立設されている。
【0207】
本前提技術では、青色LEDチップ2は、例えば、直列に12個ずつ並んだものが、並列に13列並んだ156個からなっている。なお、本発明においては、青色LEDチップ2の個数は必ずしも複数に限らず、1個でもよく、また、複数においても156個に限らない。さらに、複数個における並べ方についても問わない。
【0208】
上記各青色LEDチップ2は、樹脂ダム3の内側において、各列の青色LEDチップ2の両側に設けられた配線4aと配線4bとにそれぞれ導電性のワイヤ5にて電気的に接続されている。そして、配線4aと配線4bとは、基板1上において樹脂ダム3の外側に搭載されたカソード電極ランド6aとアノード電極ランド6bとにそれぞれ電気的に接続されている。
【0209】
そして、本前提技術の照明用の発光装置20には、図10(b)に示すように、樹脂ダム3の内側に充填されて上記複数の青色LEDチップ2の上側を被覆する樹脂層7が設けられており、この樹脂層7には、赤色蛍光体7bと緑色蛍光体7cとがシリコーン樹脂からなる樹脂7aに混合分散されている。
【0210】
ここで、照明用の発光装置20では、樹脂7aと赤色蛍光体7bと緑色蛍光体7cとの配合比(重量比)は、例えば1:0.01:0.10となっている。この配合比(重量比)により、図10(c)に示す発光スペクトルが得られる。図10(c)に示す発光スペクトルにおいては、人間が最も明るく感じる波長550nm付近の光量が増加しているのが把握できる。したがって、照明用LED光源20は人間が作業するための照明光源として有効であることが判る。
【0211】
(植物工場への適用)
次に、本前提技術の基板型の発光装置10の植物工場への適用例について、図11に基づいて説明する。図11は本前提技術の基板型の発光装置10及び照明用の発光装置20を使用する植物工場30の一例を示す図である。
【0212】
本前提技術の植物工場30においては、図11に示すように、発芽棚には基板型の発光装置10Aを例えば1300個設置する。また、育苗棚には基板型の発光装置10Aを4600個設置する。さらに、栽培棚には基板型の発光装置10Dを17000個設置する。また、出荷室では、人間が作業を行うので、照明用の発光装置20を370個設置する。
【0213】
このように、本前提技術の植物栽培用の発光装置は、クロロフィルの青色域吸収ピークに対応すべく波長が400〜480nmの範囲で発光ピークを有する少なくとも1個の青色LEDチップ2と、青色LEDチップ2からの励起光により、クロロフィルの赤色域吸収ピークに対応すべく発光ピークが波長620〜700nmの光を発光する赤色蛍光体7bと、赤色蛍光体7bを分散して上記少なくとも1個の青色LEDチップ2を覆う樹脂層7とが設けられている。
【0214】
上記の構成によれば、植物育成用の発光装置は、少なくとも1個の青色LEDチップ2とこの青色LEDチップ2を覆う赤色蛍光体7bを分散した樹脂層7とからなっている。そして、この構成において、青色LEDチップ2にてクロロフィルの青色域吸収ピークに対応すべく波長が400〜480nmの範囲で光を出力することができる。そして、赤色蛍光体7bは、青色LEDチップ2からの励起光により、クロロフィルの赤色域吸収ピークに対応すべく発光ピークが波長620〜700nmの光を発光する。
【0215】
この結果、独立した青色LEDチップ2と独立した赤色LEDチップとの2種類のLEDチップを使用しなくても、1種類の青色LEDチップ2にて植物の成長に必要なクロロフィルの青色域吸収ピークと赤色域吸収ピークとに対応する光を出射することができる。このため、設置面積を増大することがない。そして、この構成においては、赤色蛍光体7bは樹脂層に分散されていることから、赤色蛍光体7bを樹脂に所定の配合比(重量比)にて分散させることが可能であり、その配合比(重量比)に応じて青色域と赤色域における光量を変化させることができる。
【0216】
したがって、設置面積を増大させることなく、簡単な構成で青色域と赤色域との光量割合を容易に調整し得ると同時に空間的に色むらの少ない青色光及び赤色光の混色光を放出し得る植物栽培用LED光源を提供することができる。
【0217】
また、本前提技術の基板型の発光装置10では、波長400nm〜480nmの青色域における光合成光量子束と、波長620nm〜700nmの赤色域における光合成光量子束との比が、1:1.3〜1:10となっていることが好ましい。この結果、植物の発芽・育苗及び栽培に適した基板型の発光装置10とすることが可能となる。
【0218】
また、本前提技術の基板型の発光装置10では、樹脂層7における樹脂7aと赤色蛍光体7bとの配合比(重量比)は1:0.05〜1:0.20となっている。この結果、植物の発芽・育苗及び栽培に適した基板型の発光装置10とすることが可能となる。
【0219】
また、本前提技術の基板型の発光装置10では、発芽棚又は育苗棚に設置されることを目的とする場合には、樹脂層7における樹脂7aと赤色蛍光体7bとの配合比(重量比)は1:0.05〜1:0.10となっていることが好ましい。
【0220】
すなわち、植物の光合成において中心的な役割を担うクロロフィル(葉緑素)は、光を一様に吸収するのではなく、赤色660nm付近と青色450nm付近に明確な吸収ピークを示し、これに関係して光合成の波長特性は660nm付近に第一ピークを有する一方、450nm付近に第二のピークを有している。
【0221】
つまり、葉を備え光合成が活発となる栽培段階では、青色及び赤色の両方の光成分を有することが生育に対して有効になる。一方、450nm付近の青色光は植物の高エネルギー反応系と呼ばれる光反応系にも影響を及ぼし、植物の健全な形態形成に必要不可欠である。したがって、発芽・育苗の段階では、青色光の成分の重要性が増す。
【0222】
この点、本前提技術では、樹脂層7における樹脂7aと赤色蛍光体7bとの配合比(重量比)は1:0.05〜1:0.10となっている。このため、この配合比(重量比)とすることによって、発芽・育苗の段階において植物の健全な形態形成に必要不可欠である青色光の成分の光を容易に出射する基板型の発光装置10を提供することができる。
【0223】
また、本前提技術の基板型の発光装置10では、栽培棚に設置されることを目的とする場合には、樹脂層7における樹脂7aと赤色蛍光体7bとの配合比(重量比)は1:0.15〜1:0.20となっている。これにより、葉を備え光合成が活発となる栽培段階において、青色及び赤色の両方の光成分を有する光を容易に出射する基板型LED光源10を提供することができる。
【0224】
また、本前提技術の基板型の発光装置10では、発芽棚又は育苗棚に設置されることを目的とする場合には、波長400nm〜480nmの青色域における光合成光量子束と、波長620nm〜700nmの赤色域における光合成光量子束との比が、1:1.3〜1:3.5となっていることが好ましい。これにより、植物の発芽・育苗に適した基板型の発光装置10とすることが可能となる。
【0225】
また、本前提技術の基板型の発光装置10では、栽培棚に設置されることを目的とする場合には、波長400nm〜480nmの青色域における光合成光量子束と、波長620nm〜700nmの赤色域における光合成光量子束との比が、1:7.5〜1:10となっていることが好ましい。これにより、植物の栽培に適した基板型の発光装置10することが可能となる。
【0226】
また、本前提技術の基板型の発光装置10では、赤色蛍光体7bは、クロロフィルbよりもクロロフィルaを多く含む植物栽培には、CaAlSiN:Eu系の成分を有してなっていることが好ましい。
【0227】
すなわち、植物は、クロロフィルaとクロロフィルbとを有している。ここで、クロロフィルaとクロロフィルbとはそれぞれ光吸収特性が異なっている。具体的には、クロロフィルaは赤色領域では650〜660nmに吸収ピークを有し、クロロフィルbは赤色領域では620〜630nmに吸収ピークを有している。
【0228】
そこで、本前提技術では、赤色蛍光体7bは、クロロフィルbよりもクロロフィルaを多く含む植物栽培には、CaAlSiN:Eu系の成分を有してなっている。すなわち、CaAlSiN:Eu系の成分を有する赤色蛍光体は、発光ピーク650〜660nmの波長を出射することができる。
【0229】
したがって、クロロフィルbよりもクロロフィルaを多く含む植物栽培には、CaAlSiN:Eu系の成分を有する赤色蛍光体7bを使用するのが好ましい。
【0230】
また、本前提技術の基板型の発光装置10では、赤色蛍光体7bは、クロロフィルaよりもクロロフィルbを多く含む植物栽培には、(Sr,Ca)AlSiN:Eu系の成分を有してなっていることが好ましい。
【0231】
すなわち、クロロフィルbは赤色領域では620〜630nmに吸収ピークを有していると共に、(Sr,Ca)AlSiN:Eu系の成分を有する赤色蛍光体は、発光ピーク620〜630nmの波長を出射することができる。
【0232】
したがって、クロロフィルaよりもクロロフィルbを多く含む植物栽培には、(Sr,Ca)AlSiN:Eu系の成分を有する赤色蛍光体7bを使用するのが好ましい。
【0233】
また、本前提技術の基板型の発光装置10では、基板1上に複数の青色LEDチップ2が搭載され、その周囲に樹脂ダム3が設けられていると共に、樹脂ダム3の内側には赤色蛍光体7bを分散した樹脂7aが充填されている。
【0234】
したがって、1個の基板型の発光装置10によって、少ない設置面積にて大光量の光を出射することが可能となる。
【0235】
また、本前提技術の基板型の発光装置10では、波長400〜480nmの青色光と波長620〜700nmの赤色光とが出射される。
【0236】
これにより、植物育成に必要な青色及び赤色の両ピークを1個の基板型LED光源10にて生成することができることになる。このように、1個の基板型の発光装置10とすることによって、基板型の発光装置10の設置面積の縮小が可能となり、信頼性が高まり、植物工場等での使用に適した光源とすることができる。
【0237】
また、本前提技術の基板型の発光装置10では、青色光は青色LEDチップ2からの光であり、赤色光は赤色蛍光体7bから放出される光である。すなわち、基板型の発光装置10では、発光部の近傍でクロロフィルの光吸収特性の光吸収ピークが生成されている。このことから基板型の発光装置10からの青色光と赤色光が均一に照射される。すなわち、基板型の発光装置10では、発光部の近傍でクロロフィルの光吸収特性の光吸収ピークが生成されている。このことから基板型の発光装置10からの青色光と赤色光が均一に照射される。
【0238】
具体的には、青色LEDチップ2から出射される青色光は、一部は赤色蛍光体7bに吸収されて当該赤色蛍光体7bから赤色光が出射され、残りは赤色蛍光体7bにより散乱される。そして、赤色蛍光体7bは蛍光体1個1個が点光源であるので、青色光又は赤色光が均一に発光する。
【0239】
この結果、植物育成に必要な青色及び赤色の両ピークを1個の基板型の発光装置10にて生成することができることになる。このように、1個の基板型の発光装置10とすることによって、基板型の発光装置10の設置面積の縮小が可能となり、信頼性が高まり、植物工場等での使用に適した発光装置とすることができる。
【0240】
また、本前提技術の植物工場30は、上記基板型の発光装置10A及び/又は基板型の発光装置10B、並びに基板型の発光装置10C及び/又は基板型の発光装置10Dを備えている。
【0241】
それゆえ、設置面積を増大させることなく、簡単な構成で青色域と赤色域との光量割合を容易に調整し得る基板型の発光装置10を備えた植物工場30を提供することができる。
【0242】
例えば、図5(a)(b)においては、基板1の裏面には何も設けられていないが、特にこれに限定するものではない。例えば、基板型LED光源10の放熱板を兼ねる基板1の裏面側、つまり青色LEDチップ2を搭載した面とは反対側に、フィン付きヒートシンクを取り付けることが可能である。これにより、植物工場の室内において、エアーフローを利用することにより、フィン付きヒートシンクにて基板1を冷却することが可能となる。なお、この場合、フィン付きヒートシンクの開口部はエアーフローの方向と同じ方向であることが好ましい。
【0243】
また、基板1の裏面に、液体培養液を循環させる管を設けた構成とすることも可能である。すなわち、例えば、生物を培養栽培するための液体培養液を冷却用に使用し、その後、生物栽培培養するために使用するというような構成が挙げられる。これにより、基板型LED光源10を好適に冷却することが可能となり、安定したクロロフィルの光吸収特性の光吸収ピークに合う青色光と赤色光とを照射することができる。
【0244】
このように、本前提技術の基板型の発光装置10では、基板1の裏面には、冷却手段としてのフィン付きヒートシンクが設けられていることが好ましい。
【0245】
これにより、高温になった青色LEDチップ2を冷却することが可能となる。
【0246】
(青色複合型発光装置)
青色複合型発光装置について図13に基づいて説明すれば、以下のとおりである。
【0247】
上記の基板型の発光装置10は、クロロフィルの青色域吸収ピークに対応すべく波長が400〜480nmの範囲で発光ピークを有する少なくとも1個の青色LEDチップを有している。
【0248】
ここで説明する青色複合型発光装置では、青色LEDチップは、クロロフィルaの青色域吸収ピークに対応すべく波長が400〜450nmの範囲で発光ピークを有する少なくとも1個のクロロフィルa用青色LEDチップと、クロロフィルbの青色域吸収ピークに対応すべく波長が400〜480nmの範囲で発光ピークを有する少なくとも1個のクロロフィルb用青色LEDチップとからなっている点が異なっている。
【0249】
すなわち、植物栽培用の発光装置としての基板型の発光装置50は、図13(a)に示すように、基板1上に複数の青色LEDチップ2と青色LEDチップ52とが搭載され、その周囲に樹脂からなる樹脂ダム3が設けられている。
【0250】
上記各青色LEDチップ2及び各青色LEDチップ52は、図13(b)に示すように、樹脂ダム3の内側において、各列の青色LEDチップ2・52の両側に設けられた配線4aと配線4bとにそれぞれ導電性のワイヤ5にて接続されている。そして、配線4aと配線4bとは、基板1上において樹脂ダム3の外側に搭載されたカソード電極ランド6aとアノード電極ランド6bとにそれぞれ接続されている。
【0251】
上記樹脂ダム3の内側には、図13(a)に示すように、複数の青色LEDチップ2・52の上側を被覆する樹脂層7が設けられている。この樹脂層7は、充填された樹脂7aに赤色蛍光体7bが混合分散されたものからなっている。
【0252】
そして、青色LEDチップ2は、クロロフィルbの青色域吸収ピークに対応する青色光としての波長400nm〜480nmの青色領域長波長の光を発生する。したがって、青色領域長波長用の青色LEDチップ2は、本発明のクロロフィルb用青色LEDチップとして機能している。
【0253】
一方、青色LEDチップ52は、クロロフィルaの青色域吸収ピークに対応する青色光としての波長400nm〜450nmの青色領域短波長の光を発生する。したがって、青色領域短波長用の青色LEDチップ52は、本発明のクロロフィルa用青色LEDチップとして機能している。
【0254】
また、赤色蛍光体7bは、青色LEDチップ2及び青色LEDチップ52の光を吸収してクロロフィルa及びクロロフィルbの赤色域吸収ピークに対応する発光ピークが波長620〜700nmの赤色光を発光するものとなっている。
【0255】
すなわち、植物は、クロロフィルaとクロロフィルbとを有している。ここで、クロロフィルaとクロロフィルbとは青色領域における光吸収特性がそれぞれ異なっている。具体的には、上記で説明した図8に示すように、クロロフィルaは青色領域においては400〜450nmに吸収ピークを有し、クロロフィルbは青色領域においては400〜480nmに吸収ピークを有している。
【0256】
そこで、本前提技術の植物栽培用の発光装置としての基板型の発光装置50では、青色LEDチップは、クロロフィルaの青色領域の吸収ピークに対応すべく波長が400〜450nmの範囲で発光ピークを有する少なくとも1個のクロロフィルa用青色LEDチップとしての青色領域短波長用の青色LEDチップ52と、クロロフィルbの青色領域吸収ピークに対応すべく波長が400〜480nmの範囲で発光ピークを有する少なくとも1個のクロロフィルb用青色LEDチップとしての青色領域長波長用の青色LEDチップ2とからなっている。
【0257】
この結果、クロロフィルa及びクロロフィルbを有する植物に、より適した植物栽培用LED光源を提供することができる。
【0258】
なお、上記の説明では、基板型LED光源10の構成を一部変更した植物栽培用LED光源としての基板型LED光源50について説明した。しかし、本発明の植物栽培用LED光源については、必ずしもこれに限らず、以下の比較技術にて説明する砲弾型LEDランプ40の構成を一部変更した砲弾型LEDランプについても適用が可能である。
〔比較技術〕
比較技術について図12に基づいて説明すれば、以下のとおりである。なお、本比較技術において説明すること以外の構成は、上記前提技術で示した構成と同じである。
【0259】
(比較技術の発光装置の構成)
上記前提技術にて説明した基板型の発光装置10及び照明用の発光装置20は、基板1上に少なくとも1個以上の青色LEDチップ2が搭載されたものからなっていた。しかし、図12(a)(b)に示すように、本比較技術の植物栽培用の発光装置は、形状が一般的な砲弾型の形態を有している点が異なっている。
【0260】
本比較技術の植物栽培用の発光装置の構成について、図12(a)(b)に基づいて説明する。図12(a)(b)は、砲弾型LEDランプの構成を示す模式的断面図である。
【0261】
本比較技術の植物栽培用の発光装置としての砲弾型LEDランプ40は、図12(a)(b)に示すように、カップとしてのマウントリードカップ41内に接着された青色LEDチップ2と、シリコーン樹脂からなる樹脂7a及び赤色蛍光体7bからなる樹脂層7と、導線としての導電性のワイヤ5と、アノードリードとしてのアノードリードフレーム42と、カソードリードとしてのカソードリードフレーム43と、砲弾型に形成し、上記アノードリードフレーム42及びカソードリードフレーム43の先端を除いて全体を砲弾型に封止するエポキシ樹脂からなる封止樹脂44とからなっている。赤色蛍光体7bは、例えば、CaAlSiN:Euを使用することができる。
【0262】
上記砲弾型LEDランプ40を製造するときには、マウントリードカップ41内に、青色LEDチップ2を接着する。次いで、青色LEDチップ2と図示しないマウントリード、及び青色LEDチップ2と図示しないインナーリードとは、それぞれ導電性ワイヤ5にて導通する。その後、赤色蛍光体7bを樹脂7aに混合、分散させ、マウントリードカップ41内に流し込むことにより樹脂層7を形成する。この結果、樹脂層7にて青色LEDチップ2を被覆し、固定している。最後に、全体をエポキシ樹脂からなる封止樹脂44によるモールド部材で被覆及び保護する。
【0263】
上記砲弾型LEDランプ40では、青色LEDチップ2は、青色光としての波長400nm〜480nmの光を発生する。この青色光は、クロロフィルの青色領域の吸収ピークに対応する。一方、赤色蛍光体7bは、青色LEDチップ2の光を吸収して発光ピークが波長620〜700nmの赤色光を発光する。この赤色光がクロロフィルの赤色域吸収ピークに対応する。
【0264】
そして、本比較技術では、図12(a)に示す砲弾型LEDランプ40では、樹脂7aと赤色蛍光体7bとの配合比が1:0.05とした砲弾型LEDランプ40Aとなっており、前提技術の基板型LED光源10Aと同じ図7(a)に示すスペクトルを出力するようになっている。
【0265】
したがって、砲弾型LEDランプ40Aはクロロフィルの青色領域の吸収ピークに対応しており、発芽・育苗用に使用するのが好ましい。ただし、必ずしもこれに限らず、樹脂7aと赤色蛍光体7bとの配合比が1:0.10〜1:0.15とした砲弾型LEDランプ40をすることも可能である。
【0266】
一方、図12(b)に示す砲弾型LEDランプ40は、樹脂7aと赤色蛍光体7bとの配合比が1:0.20とした砲弾型LEDランプ40Dとなっている。したがって、この砲弾型LEDランプ40Dは、上記前提技術の基板型の発光装置10Dと同じ図7(d)に示す発光スペクトルを出力するようになっている。これにより、砲弾型LEDランプ40Dは、クロロフィルの赤色域吸収ピークに対応しており、栽培用に使用するのが好ましいものとなっている。
【0267】
このような砲弾型LEDランプ40は、上記前提技術にて説明した基板1に青色LEDチップ2を搭載した基板型の発光装置10が取り付けることが難しい箇所に取り付ける。このことからすると、基板型の発光装置10が取り付けることが難しい箇所は少ないと考えられるので、上記前提技術の基板型の発光装置10と本比較技術の砲弾型LEDランプ40とを併用を行ってもよい。
【0268】
最後に、上記前提技術の基板型の発光装置10と本比較技術の砲弾型LEDランプ40と従来の赤色砲弾型LEDランプと青色砲弾型LEDランプとを組み合わせたものとの比較を表1に示す。なおここで示す、従来の赤色砲弾型LEDランプとは上記特許文献2の「発明の実施の形態」や図1、2に基づいて作製した発光装置である。
【0269】
【表1】

【0270】
表1に示すように、上記前提技術の基板型の発光装置10、および本比較技術の砲弾型LEDランプ40は、従来の赤色砲弾型LEDランプと青色砲弾型LEDランプとを組み合わせたものと比べて、信頼性、コスト、特性、設置面積、寿命の全ての点で優れていることが把握される。
【0271】
具体的には、設置面積については、従来技術である青色砲弾型LEDと赤色砲弾型LEDとを組み合わせたときの設置面積を1とすると、砲弾型LEDランプ40では1/3となり、基板型LED光源10及び照明用LED光源20では1/6となる。このため、本前提技術の基板型の発光装置10及び照明用の発光装置20並びに砲弾型LEDランプ40では、設置面積が少なくてすむという特徴がある。
【0272】
また、コストについても、本前提技術の基板型の発光装置10及び照明用の発光装置20並びに砲弾型LEDランプ40では、従来に比べてコストメリットがあることが明らかである。
【0273】
さらに、基板型の発光装置10及び照明用の発光装置20の寿命はおよそ3〜4万時間と、電熱型ランプ(電球)はいうまでもなく、蛍光灯ランプに比べても十倍以上も長寿命である。
【0274】
このように、本比較技術の植物栽培用の発光装置としての砲弾型LEDランプ40では、カソードリードフレーム43と、カソードリードフレーム43に接続されたマウントリードカップ41と、マウントリードカップ41内に搭載された少なくとも1個の青色LEDチップ2と、マウントリードカップ41内に搭載された青色LEDチップ2から導電性のワイヤ5を介して接続されたアノードリードフレーム42と、マウントリードカップ41内で、青色LEDチップ2を覆うように充填された、赤色蛍光体7bを分散した樹脂層7と、カソードリードフレーム43とアノードリードフレーム42との各端部を露出した状態で、マウントリードカップ41全体を砲弾状に封止した封止樹脂44とを備えている。
【0275】
これにより、いわゆる砲弾型の砲弾型LEDランプ40とすることができる。そして、このような砲弾型の砲弾型LEDランプ40は設置面積が狭いので、植物栽培のスポット照射に適している。
【0276】
〔まとめ〕
本発明の態様1は、基板と、上記基板上に形成された赤色発光用の第1発光部及び青色発光用の第2発光部を備え、上記第1発光部から発光された赤色光と、上記第2発光部から発光された青色光との混色光を放出する植物栽培用の発光装置であって、上記第1発光部は、青色光を発光する少なくとも1個の青色LEDチップ、及び、当該青色LEDチップを覆い、かつ当該青色LEDチップからの励起光により赤色光を発光する赤色蛍光体を分散した樹脂からなる基板型の発光部であり、上記第2発光部は、青色光を発光する少なくとも1個の青色LEDチップからなる基板型の発光部であることを特徴としている。
【0277】
本発明の態様2は、上記態様1において、上記青色LEDチップは、400〜480nmの範囲に発光ピーク波長を有する光を発光し、かつ、上記赤色蛍光体は、620〜700nmの範囲に発光ピーク波長を有する光を発光することを特徴としている。
【0278】
本発明の態様3は、上記態様2において、上記基板上に、さらに、第3発光部が形成され、上記第3発光部は、青色光を発光する少なくとも1個の青色LEDチップ、及び、当該青色LEDチップを覆い、かつ当該青色LEDチップからの励起光により少なくとも緑色光を発光する緑色蛍光体を分散した樹脂からなる基板型の発光部であることを特徴としている。
【0279】
本発明の態様4は、上記態様3において、上記第3発光部は、赤色光を発光する赤色蛍光体をさらに分散した樹脂からなることを特徴としている。
【0280】
本発明の態様5は、上記態様3または態様4において、上記緑色蛍光体は、上記青色光を発光する青色LEDチップの青色領域波長400nm〜480nmの光を吸収し、上記緑色蛍光体は500〜600nmの範囲に発光ピーク波長を有する光を発光することを特徴としている。
【0281】
本発明の態様6は、上記態様3〜5の何れか1つの態様において、上記第1発光部、第2発光部、第3発光部は、それぞれ独立して駆動されていることを特徴としている。
【0282】
本発明の態様7は、上記態様6において、上記第3発光部は、上記の第1発光部と第2発光部とともに青緑混色光を発光するか、または、単独で青緑混色光を発光することを特徴としている。
【0283】
本発明の態様8は、上記態様7において、上記少なくとも第3発光部が駆動した植物栽培用の発光装置において、500〜600nmの範囲に発光ピーク波長を有する光を発光することを特徴としている。
【0284】
本発明の態様9において、植物栽培用の発光装置は、上記課題を解決するために、基板と、上記基板上に互いに隣接して形成された赤色発光用の第1発光部及び青色発光用の第2発光部とを備え、上記第1発光部から発光された赤色光と、上記第2発光部から発光された青色光との混色光を放出する植物栽培用の発光装置であって、上記第1発光部は、青色光を発光する少なくとも1個の青色LEDチップ、及び、当該青色LEDチップを覆い、かつ当該青色LEDチップからの励起光により赤色光を発光する赤色蛍光体を分散した樹脂からなり、上記第2発光部は、青色光を発光する少なくとも1個の青色LEDチップからなることを特徴としている。
【0285】
上記構成における青色光とは、可視光領域(波長380〜800nm)において、波長380〜550nm領域の光成分が優勢な光である。また、赤色光とは、可視光領域において、波長550〜800nm領域の光成分が優勢である光である。
【0286】
上記構成によれば、上記第1発光部において、赤色蛍光体の樹脂層内の分散濃度を調整することで、青色と赤色の光量を調整することができるので、更なる青色と赤色の混色性を向上させることが可能となる。また、第1発光部は、赤色と青色の両方を発光できるので、LEDの設置面積を増大させることなく、簡単な構成で青色光と赤色光との光量割合を容易に調整できる。
【0287】
しかも、青色LEDのみからなる第2発光部が上記第1発光部に隣接して設けられているので、第1発光部を主に赤色光の発光用、第2発光部を青色光の発光用として分けることが可能となり、それぞれの発光部を独立して駆動制御することが可能となるので、青色と赤色の発光量の調整が容易となる。この結果、第1発光部と第2発光部とで形成される混色光において、赤色光と青色光との割合を自由に変えることが可能となるので、赤色と青色の混色性を更に向上させることができる。
【0288】
また、第1発光部も第2発光部も、劣化特性が同じ青色LEDのみで構成されているので、長期的な駆動時においても、同じように劣化する。従って、従来のように、劣化特性の異なる青色LEDと赤色LEDとを混在させた場合のように、長期的な駆動時にける光量の割合のずれが大きくなるという問題は生じない。
【0289】
さらに、赤色光の発光源として、発光効率の悪い赤色LEDチップを使用せずに、赤色蛍光体を利用しており、赤色LEDチップを使用する発光装置に比べ、発光コストを減らすことができ、寿命が大幅に改善される。さらに、温度特性の悪い赤色LEDチップを用いないことにより、温度特性が改善される。
【0290】
また、発光効率のよい、青色LEDチップが配置されている同一領域に赤色蛍光体が分散されているので、より混色性の高い、発光部の設置面積を大幅に抑えた植物栽培用の発光装置を提供することができる。
【0291】
本発明の態様10において、植物栽培用の発光装置では、上記青色LEDチップは、400〜480nmの範囲に発光ピーク波長を有する光を発光し、かつ、上記赤色蛍光体は、620〜700nmの範囲に発光ピーク波長を有する光を発光することが好ましい。
【0292】
生物が光合成を行うために必要な光を吸収するクロロフィルは、青色領域(波長400〜480nmの範囲)と、赤色領域(波長620〜700nmの範囲)に光吸収ピークを有することが知られている。
【0293】
上記構成によれば、クロロフィルの青色領域の光吸収ピークと、青色LEDチップが発光する光の発光ピークが対応するとともに、クロロフィルの赤色領域の光吸収ピークと、青色LEDチップからの励起光により発光する赤色蛍光体が発光する光の発光ピークが対応するため、より効率的に特定の生物を栽培、培養することができる植物栽培用の発光装置を提供することができる。
【0294】
本発明の態様11の植物栽培用の発光装置では、上記第1発光部に備えられた青色LEDチップから発光される光の発光ピーク波長と、上記第2発光部に備えられた青色LEDチップから発光される光の発光ピーク波長とが異なることが好ましい。
【0295】
例えば、植物や一部の藻類に多く見られる、クロロフィルaとクロロフィルbと呼ばれるクロロフィルの一種が知られており、それぞれ光吸収特性が異なっている。具体的には、青色領域において、クロロフィルaは430〜440nmの光吸収ピークを有し、クロロフィルbは450〜460nmの光吸収ピークを有する。
【0296】
上記構成によれば、上記第1発光部と上記第2発光部において、独立して発光量が調節できるため、例えば、さまざまなクロロフィルaとクロロフィルbの比率を有する、対象とする特定の生物に適した光量に任意に調整することができ、当該対象とする特定の生物により適切な光成分を発する植物栽培用の発光装置を提供することができる。
【0297】
当然として、生物が光合成を行うために必要な光を吸収する化合物はクロロフィルaやクロロフィルbに限られず、多岐にわたっているため、青色LEDチップを、それに合わせて適宜選択する必要がある。
【0298】
本発明の態様12において、植物栽培用の発光装置では、400nm〜480nmの波長領域における光合成光量子束と、波長620nm〜700nmの波長領域における光合成光量子束との比が、1:1.3〜1:10となっていることが好ましい。
【0299】
一般に、光量子束密度という場合には、光子の数を数えるので、赤外光又は紫外光のいずれが来ても1個は1個である。しかし、光化学反応は、色素が吸収できる光子が来たときだけに引き起こされる。例えば、植物の場合、クロロフィルに吸収されない光がいくら来ても、それは存在しないのと同じである。そこで、光合成の分野では、クロロフィルが吸収できる400nm〜700nmまでの波長領域だけの光合成有効光量子束密度又は光合成光量子束が定義されている。
【0300】
上記構成によれば、植物の発芽、育苗および栽培や、特定の藻類や細菌の培養に適した植物栽培用の発光装置を提供することができる。
【0301】
本発明の態様13において、植物栽培用の発光装置では、上記赤色蛍光体は、(Sr,Ca)AlSiN:Eu系、または/および、CaAlSiN:Eu系の成分を有していることが好ましい。
【0302】
CaAlSiN:Eu系蛍光体の650〜660nmの範囲にある発光ピークは、クロロフィルaの赤色領域である650〜660nmの範囲にある光吸収ピークに対応する。また、(Sr,Ca)AlSiN:Eu系蛍光体の620〜630nmの範囲にある発光ピークは、クロロフィルbの赤色領域の620〜630nmの範囲にある光吸収ピークに対応する。
【0303】
従って、上記構成によれば、植物や藻類に多く見られるクロロフィルaやクロロフィルbの赤色領域の光吸収ピークに対応する発光ピークを与える光を発光することができ、クロロフィルaやクロロフィルbを多く含む植物や藻類の栽培や培養に好適な植物栽培用の発光装置を提供できる。
【0304】
本発明の態様14において、植物栽培用の発光装置では、上記青色LEDチップは、430〜440nmの範囲に発光ピーク波長を有する光を発光する少なくとも1つの青色LEDチップ、450〜460nmの範囲に発光ピーク波長を有する光を発光する少なくとも1つの青色LEDチップの少なくとも一方の青色LEDチップであることが好ましい。
【0305】
上記構成によれば、上記二種類の青色LEDチップにより、ある一定のクロロフィルaとクロロフィルbの比率を有する、対象とする特定の生物に適した光成分の光を発光することができる植物栽培用の発光装置を提供することができる。
【0306】
本発明の態様15において、植物栽培用の発光装置では、上記青色LEDチップが形成された領域を囲むように形成された樹脂壁を備え、上記第1発光部における上記樹脂壁に囲まれた領域において、上記赤色蛍光体を分散させた樹脂が充填され、上記第2発光部における上記樹脂壁に囲まれた領域において、青色LEDチップを封止する透光性の樹脂が充填されていることが好ましい。この構成により、基板型の発光装置として、発光部を適確に形成することができる。
【0307】
本発明の態様16において、植物栽培用の発光装置では、上記基板の発光部が形成されている面とは反対側の面に、フィン付きヒートシンクが取り付けられていることが好ましい。
【0308】
この構成により、植物栽培用の発光装置を設置する室内のエアーフローを利用することにより、フィン付きヒートシンクにより基板を効率的に冷却することができる。さらに、効率的に冷却することによって、青色LEDチップや、赤色蛍光体の発光特性が安定するので、赤色光と青色光の光組成を安定させることができる。
【0309】
本発明の態様17において、植物栽培用の発光装置では、上記基板の発光部が形成されている面とは反対側の面に、液体培養液を循環させる管が形成されていることが好ましい。
【0310】
この構成により、植物栽培用の発光装置を効率的に冷却することができる。さらに、効率的に冷却することによって、青色LEDチップや、赤色蛍光体の発光特性が安定するので、赤色光と青色光の光組成を安定させて発光することができる。
【0311】
本発明の態様18において、植物栽培用の発光装置の製造方法は、基板上に、青色光を発光する複数の青色LEDチップを形成するボンディング工程と、基板上の第1の領域において、当該領域に含まれる少なくとも1個の上記青色LEDチップを、当該青色LEDチップからの励起光により赤色光を発光する赤色蛍光体を分散させた樹脂により封止し、赤色発光用の第1発光部を形成する蛍光体含有樹脂層形成工程とを含み、基板上の上記第1の領域に隣接した第2の領域に含まれる少なくとも1個の青色LEDチップから形成される発光部を青色発光用の第2発光部とした植物栽培用の発光装置を製造することを特徴とすることを特徴としている。
【0312】
上記の方法によれば、赤色蛍光体が分散した混合発光部を形成することができ、混色性が高く、赤色光と青色光の光成分を容易に調整することができる植物栽培用の発光装置を製造することができる。
【0313】
また、発光効率のよい青色LEDチップを利用し、赤色光を発光する構成であるので、効率的に、青色光と赤色光を発光することが可能であり、発光部の設定面積の拡大を防ぐことができるとともに、製造コストを抑えることができる。
【0314】
本発明の態様19において、植物栽培用の発光装置の製造方法は、上記ボンディング工程と蛍光体含有樹脂層形成工程との間に、上記第1の領域及び第2の領域のそれぞれを囲むように樹脂壁を形成する樹脂ダム形成工程を含み、さらに、上記第2発光部において、青色LEDチップを透光性の樹脂により封止する透光性樹脂層形成工程を含み、上記蛍光体含有樹脂層形成工程において、上記樹脂壁で囲まれた上記第1の領域に、当該第1の領域に含まれている青色LEDチップを覆うように、上記赤色蛍光体を分散させた樹脂を充填し、上記透光性樹脂層形成工程において、上記樹脂壁で囲まれた上記第2の領域に、当該第2の領域に含まれている青色LEDチップを覆うように、透光性の樹脂を充填することを特徴としている。
【0315】
上記の方法によれば、粘性の低い樹脂層の樹脂を使用することもでき、より効率的に樹脂層を形成することができる。
【0316】
本発明の態様20において、植物栽培用の発光装置の製造方法は、上記樹脂層は、シリコーン樹脂で形成されており、上記第1発光部に形成される樹脂層のシリコーン樹脂は、チクソ性が高く流動性のない樹脂であることを特徴としている。
【0317】
上記の方法によれば、シリコーン樹脂で形成されており、従来のエポキシ樹脂で形成されたものに比べ、樹脂劣化が少なく信頼性が向上する。さらに、第1発光部に形成される樹脂層のシリコーン樹脂が、チクソ性が高く流動性のない樹脂であるため、発光部間に樹脂壁を形成しなくても、容易に、混合発光部に形成される樹脂層を形成することができる。さらに、発光部間に樹脂壁を形成しないことにより、発光部の面積を広げることができ、効率的に発光することができる植物栽培用の発光装置を提供することができる。
【産業上の利用可能性】
【0318】
本発明は、複数のLEDを用いた発光装置や、光合成を利用する生物の培養栽培に使われる植物栽培用の発光装置として利用することができる。さらに、本発明は、植物を育成するための植物工場や、光合成を行う藻類や細菌を培養する培養工場、光合成を行う植物、藻類や細菌から得られる化合物を必要とする化粧品メーカー、食品メーカーや医薬品メーカーにおいての利用が可能である。
【符号の説明】
【0319】
100 発光装置(渦巻型)
1、101 基板
102 青色LEDチップ(発光素子)
105 第1樹脂ダム(樹脂壁)
106 第2樹脂ダム(樹脂壁)
107 蛍光体含有樹脂層
108 透光性樹脂層
7b、109 赤色蛍光体
110〜113 電極ランド
200 発光装置(横縞型)
300 発光装置(交差型)
400 発光装置(二重円型)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
上記基板上に形成された赤色発光用の第1発光部及び青色発光用の第2発光部を備え、上記第1発光部から発光された赤色光と、上記第2発光部から発光された青色光との混色光を放出する植物栽培用の発光装置であって、
上記第1発光部は、
青色光を発光する少なくとも1個の青色LEDチップ、及び、当該青色LEDチップを覆い、かつ当該青色LEDチップからの励起光により赤色光を発光する赤色蛍光体を分散した樹脂からなる基板型の発光部であり、
上記第2発光部は、
青色光を発光する少なくとも1個の青色LEDチップからなる基板型の発光部であることを特徴とする植物栽培用の発光装置。
【請求項2】
上記青色LEDチップは、400〜480nmの範囲に発光ピーク波長を有する光を発光し、かつ、
上記赤色蛍光体は、620〜700nmの範囲に発光ピーク波長を有する光を発光することを特徴とする請求項1に記載の植物栽培用の発光装置。
【請求項3】
上記基板上に、さらに、第3発光部が形成され、
上記第3発光部は、
青色光を発光する少なくとも1個の青色LEDチップ、及び、当該青色LEDチップを覆い、かつ当該青色LEDチップからの励起光により少なくとも緑色光を発光する緑色蛍光体を分散した樹脂からなる基板型の発光部であることを特徴とする請求項2に記載の植物栽培用の発光装置。
【請求項4】
上記第3発光部は、
赤色光を発光する赤色蛍光体をさらに分散した樹脂からなることを特徴とする請求項3に記載の植物栽培用の発光装置。
【請求項5】
上記緑色蛍光体は、上記青色光を発光する青色LEDチップの青色領域波長400nm〜480nmの光を吸収し、上記緑色蛍光体は500〜600nmの範囲に発光ピーク波長を有する光を発光することを特徴とする請求項3または4に記載の植物栽培用の発光装置。
【請求項6】
上記第1発光部、第2発光部、第3発光部は、それぞれ独立して駆動されていることを特徴とする請求項3〜5の何れか1項に記載の植物栽培用の発光装置。
【請求項7】
上記第3発光部は、上記第1発光部と第2発光部とともに青緑混色光を発光するか、または、単独で青緑混色光を発光することを特徴とする請求項6に記載の植物栽培用の発光装置。
【請求項8】
上記少なくとも第3発光部が駆動した植物栽培用の発光装置において、500〜600nmの範囲に発光ピーク波長を有する光を発光することを特徴とする請求項7に記載の植物栽培用の発光装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2013−78336(P2013−78336A)
【公開日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−283564(P2012−283564)
【出願日】平成24年12月26日(2012.12.26)
【分割の表示】特願2011−201034(P2011−201034)の分割
【原出願日】平成23年9月14日(2011.9.14)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】